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特許異議申立

2023-701352

毛髪観察方法及び位相差顕微鏡システム

審判番号
2023-701352
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-514427
登録番号
7297204
請求日
2023年12月21日
審決日
2024年05月09日
公報発行日
2024年05月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】国立研究開発法人理化学研究所
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】杉村 光嗣
  • 【権利者代理人】河合 隆慶
  • 【権利者代理人】片岡 憲一郎
  • 【権利者】株式会社オーガンテック
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】杉村 光嗣
  • 【権利者代理人】河合 隆慶
  • 【権利者代理人】片岡 憲一郎
  • 【権利者】京セラ株式会社
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】河合 隆慶
  • 【権利者代理人】片岡 憲一郎
  • 【異議申立人】戸塚 竜一
審判長/審判官
  • 審判長 秋田 将行
  • 審判官 齋藤 卓司
  • 審判官 山村 浩
分類
P1652.121-Y (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7297204号発明「毛髪観察方法及び位相差顕微鏡システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7297204号の請求項1、7に係る特許を維持する。

理由

理 由 1 手続の経緯 特許第7297204号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成30年4月18日(優先権主張 平成29年4月24日)に出願され、令和5年6月16日にその特許権の設定登録がされ、令和5年6月26日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年12月21日に特許異議申立人戸塚竜一(以下「申立人」という。)は、請求項1、7に係る特許に対して特許異議の申立てを行った。 2 本件発明 本件特許の請求項1、7に係る発明(以下「本件発明1」、「本件発明7」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1、7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 毛髪の内部を観察する毛髪観察方法であって、 前記毛髪に赤外線照射光源により赤外線を照射して位相差観察を行い、 前記毛髪に可視光線照射光源により可視光線を照射して明視野観察を行い、 赤外線を検出可能な撮像素子により前記毛髪の赤外線による像を撮像し、 前記撮像素子の撮像画像を表示装置に表示して前記毛髪の内部を観察し、 前記可視光線照射光源は、前記赤外線の光路に沿って前記赤外線照射光源の下流側に配置され、 前記可視光線照射光源および前記赤外線照射光源は、前記毛髪が配置されたステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されていることを特徴とする毛髪観察方法。 【請求項7】 試料を位相差観察する位相差顕微鏡システムであって、 試料が配置されるステージと、 前記ステージに配置された前記試料に赤外線を照射する赤外線照射光源と、 前記ステージに配置された前記試料に可視光線を照射する可視光線照射光源と、 赤外線を検出可能であり、前記試料の赤外線による像を撮像する撮像素子と、 前記撮像素子の撮像画像を表示する表示装置と、を有し、 前記可視光線照射光源は、前記赤外線の光路に沿って前記赤外線照射光源の下流側に配置され、 前記可視光線照射光源および前記赤外線照射光源は、前記ステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されていることを特徴とする位相差顕微鏡システム。 3 申立て理由の概要 申立人は、主たる証拠として甲第2号証又は甲第6号証を提出し、さらに、従たる証拠として甲第3~5号証、甲第7~9号証、甲第10~12号証を提出した上で、請求項1、7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるため、同法第113条第1項第2号により取り消されるべきである旨主張している。 甲第2号証:特開2014-043403号公報 甲第3号証:国際公開第2013/047315号 甲第4号証:国際公開第2014/038408号 甲第5号証:特開2017-072700号公報 甲第6号証:特開2015-072303号公報 甲第7号証:特開2015-118196号公報 甲第8号証:国際公開第2013/132734号 甲第9号証:特公昭62-045965号公報 甲第10号証:特開2016-038335号公報 甲第11号証:特開2009-186455号公報 甲第12号証:特開2015-190989号公報 (当審注:甲第1号証は、本件特許に係る特許掲載公報である。) 4 文献の記載 (1)甲第2号証について ア 甲第2号証には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、電気分解によって生成される電解水(還元水及び酸化水)に関し、毛髪のメデュラ(毛髄質)を修復し、コルテックス(毛皮質)とキューティクル(毛小皮)を整えて毛髪の形を保つと同時に、サラサラ感を出すことが可能な毛髪処理用電解水、及びこれを用いた毛髪処理方法に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 毛髪は、メデュラ(毛髄質)細胞、コルテックス(毛皮質)細胞及びキューティクル(毛小皮)細胞から主に構成されている。それぞれ、毛髪の中心側から外側にむけて組織化され、中心側からメデュラ領域、コルテックス領域、キューティクル領域を形成している。この毛髪に対し、例えば、塩素イオンや界面活性剤、紫外線等は、これらの細胞を変形させたり、脱落させたりする等、一般的に“傷める”と表現されるような影響を及ぼす(キューティクルのめくれ上がり、脱落などが有名であり、一般にリフトアップと称されている。)。 【0009】 従来の電解水は、水に塩化ナトリウム、塩化カリウム等の支持電解質を添加し、電気分解することで得られるので、生成した酸化水に塩素イオンが含まれる。したがって、従来の電解水は毛髪を傷めるので、そのまま毛髪処理に適用することに支障があり、新たな種類の電解水を検討する必要がある。特に、電解水の毛髪に対する生理活性を理解した上で効率的に毛髪に作用させることで、電解水の効果的な利用を検討していく必要がある。 【0010】 本発明は、上記実情に鑑み提案され、毛髪に効果的に作用する電解水を新規に創作し、毛髪のメデュラを修復又は膨潤し、コルテックスとキューティクルを整える等により、毛髪の形を保つと同時に、サラサラ感を出すことが可能な毛髪処理用電解水、及びこれを用いた毛髪処理方法を提供することを目的とする。」 「【0028】 (実施例1) 実施例1は、還元水のメデュラ領域への作用効果を確認した例である。 【0029】 62歳、男性の白髪を、本実施形態において得られたpH11.5,ORP-500mVの還元水に通して、位相差顕微鏡(有限会社イポナコロジー製、ビジュアル位相差顕微鏡ODEO-2001、対物レンズ40倍)により観察した。映像はIO DATA製のUSB接続ビデオキャプチャー(GV-USB2)をかいして、DELL製のコンピュータで処理し、DELL製の19インチ液晶ディスプレーに表示した。なお、ビジュアル位相差顕微鏡ODEO-2001の主な仕様は[表1]に示す。 【0030】 【表1】 [図:0001410243000001.jpg] 【0031】 その結果、図2(a)に示す還元水添加前画像に比べ、図2(c)に示す還元水添加後画像において、メデュラ領域の膨潤が確認される。特に、図2(b)は、メデュラ領域の膨潤そのもの(瞬間)を捕らえた画像であり、毛髪へ還元水に通された(触れた)方向に膨潤が進む様子が理解される。メデュラの膨潤は、還元水が毛髪に触れた瞬間に起こることも分かる。一方、図示を省略するが、水道水を用いて他の条件を同一とした比較実験では、メデュラ領域の膨潤が起こるまでに10分以上を要した。 【0032】 なお、このような膨潤は、メデュラ領域の90%以上で起こり、コルテックス領域、キューティクル領域においてほとんど発生していない。膨潤後のメデュラ領域は、膨潤前に比べ、直径比で30%~50%の増加がみられた。」 「【0033】 (実施例2) 実施例2は、還元水のメデュラ領域への作用効果を確認した他の例である。 【0034】 62歳、男性の白髪を、本実施形態において得られたpH11.7,ORP-700mVの還元水に通して、位相差顕微鏡(有限会社イポナコロジー製、ビジュアル位相差顕微鏡NewODEO-2003とりぷる、対物レンズ20倍)により観察した。なお、ビジュアル位相差顕微鏡NewODEO?2003とりぷるの主な仕様は[表2]に示す。) 【0035】 【表2】 [図:0001410243000002.jpg] 【0036】 その結果、図3(a)に示す還元水添加前画像に比べ、図3(b)に示す還元水添加後画像において、メデュラ領域におけるメデュラ細胞の修復が確認される。特に図3中「1」で示す領域の修復は、毛髪を還元水に通してから約30秒後に始まった。図3中「2」で示す領域は、毛髪を還元水に通してから約3分後に修復した。」 「【図2】 [図:0001410243000003.jpg] 」 「【図3】 [図:0001410243000004.jpg] 」 イ 上記アの記載から、甲第2号証には、実施例1又は2等で行われている毛髪を位相差顕微鏡で観察する方法に関して、次の観察方法の発明(以下「甲2発明1」という。)及び位相差顕微鏡の発明(以下「甲2発明2」という。)が記載されていると認められる。(なお、括弧内は認定の根拠とした段落番号などを参考までに示す。以下同じ。) (ア)甲2発明1 「毛髪を、位相差顕微鏡により観察し、(【0001】、【0029】) 映像は、液晶ディスプレーに表示し、(【0029】) カメラはCCD組込であり、光源は白熱電球光源または高輝度LED光源であり、(【0030】、【0035】、【表1】、【表2】) 毛髪のメデュラ領域の膨潤が確認される、(【0001】、【0031】) 観察方法。」 (イ)甲2発明2 「毛髪を観察するための、位相差顕微鏡であって、(【0001】、【0029】) 映像は、液晶ディスプレーに表示し、(【0029】) カメラはCCD組込であり、光源は白熱電球光源または高輝度LED光源であり、(【0030】、【0035】、【表1】、【表2】) 毛髪のメデュラ領域の膨潤が確認される、(【0001】、【0031】) 位相差顕微鏡。」 (2)甲第6号証について ア 甲第6号証には、以下の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ステージに配置した試料の像を撮像素子により撮像してモニタ等の表示装置に表示する顕微鏡に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 化粧品の販売は、店頭だけでなく、訪問販売により行なわれることがある。この場合、訪問先において、顧客の皮膚から採取した角質等の細胞を観察するためには、顕微鏡を訪問先にまで持ち運ぶ必要がある。 【0009】 しかしながら、従来の顕微鏡は、観察光学系とデジタルカメラとをステージの上方に一直線上に並べて配置した構成となっているので、その高さ寸法が大きくなっている。また、ステージ上方に配置された観察光学系やデジタルカメラの重量を安定的に支えるために、土台が大きく重く形成されている。そのため、従来の顕微鏡は、その持ち運びが容易ではなかった。 【0010】 本発明の目的は、軽量コンパクトで持ち運びが容易な顕微鏡を提供することにある。」 「【0036】 図1に示す本発明の一実施の形態である顕微鏡1は光学式の顕微鏡であり、例えば、皮膚から採取した角質等の細胞を試料とし、それを視覚的に拡大して観察する際に用いられる。この顕微鏡1は、プラスチック等の樹脂材料や金属板等により形成されるケース(筐体)2に収容されて1つのユニットとされており、ケース2ごと持ち運びが可能な可搬タイプとなっている。 【0037】 ケース2の側面カバー2aには試料差込口3が設けられている。この試料差込口3にはプレパラート4に構成された試料が差し込まれる。プレパラート4が差し込まれると、顕微鏡1は試料の像を拡大し、試料の拡大画像が表示装置であるモニタ5に表示される。このように、この顕微鏡1は、モニタ5上で試料の拡大画像を観察することができるモニタタイプとなっている。 【0038】 なお、顕微鏡1は、図1、図2に示すように、側面カバー2aが垂直となり、試料差込口3に差し込まれたプレパラート4が水平となる正規姿勢で用いられる。以下の説明においては、顕微鏡1が正規姿勢とされているものとする。 【0039】 図2に示すように、この顕微鏡1は、ステージ装置6、照明装置7、観察光学装置8、撮像素子9および制御基板10を備えている。 【0040】 ステージ装置6は、ケース2に固定された支持枠体11と、支持枠体11に収容されたステージ12とを備えている。支持枠体11の側面にはケース2の試料差込口3に連なる開口11aが設けられ、ケース2の試料差込口3(図1参照)から差し込まれたプレパラート4は、この開口11aを通ってステージ12に配置される。つまり、試料差込口3からプレパラート4を差し込むことで、試料がステージ12に配置される。この顕微鏡1の正規姿勢においては、ステージ12つまりステージ12のプレパラート4が配置される面は水平である。 【0041】 支持枠体11には駆動ユニット(駆動手段)13が取り付けられている。ステージ12は、この駆動ユニット13により駆動されて、水平方向(XY方向)と垂直方向(Z軸方向)とに移動することができる。ステージ12が移動すると、当該ステージ12に載せられたプレパラート4もステージ12とともに移動する。駆動ユニット13としては、例えば、XYZの各方向に対応した3つの電動モータ(不図示)を備え、これらの電動モータの回転運動をねじ機構により各方向の直線運動に変換してステージ12に伝達する構成のものを用いることができるが、他の構造の駆動ユニットを用いてもよい。 【0042】 図2と共に図3を参照して、照明装置7は、光源14と照明光学系15とを備え、ステージ12の上方に配置されている。本実施の形態においては、照明装置7つまり光源14と照明光学系15とは、試料に向けて均一に光を照射するケーラー照明を構成している。 【0043】 照明光学系15は、軸方向を水平にして配置される円筒状の照明ケース16を備えている。支持枠体11の上方には接続アダプタ17と上側ミラーユニット18とが固定され、照明ケース16は、その一端において上側ミラーユニット18に固定されている。 【0044】 光源14は、照明ケース16の上側ミラーユニット18とは反対側となる端部に取り付けられている。本実施の形態においては、光源14として、基板14aに搭載された発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)14bを用いるようにしているが、フィラメントを用いた電球などを用いることもできる。 【0045】 図3に示すように、照明ケース16の内部には、光源14に隣接する光源レンズ19とフィールドレンズ20とが配置され、光源レンズ19とフィールドレンズ20との間には板状の視野絞り21が配置されている。また、ステージ12の上方には、軸方向を垂直つまり照明ケース16の軸方向と直交するようにコンデンサレンズ22が配置されている。このコンデンサレンズ22は接続アダプタ17に固定されている。照明光学系15は、このように、光源レンズ19、視野絞り21、フィールドレンズ20およびコンデンサレンズ22を備えて、光源14とステージ12との間に設けられている。 【0046】 上側ミラーユニット18には、ステージ12に垂直な方向と照明ケース16の軸方向との双方に対して45度傾けられた上側ミラー23が設けられている。光源14から照明ケース16内に向けて水平に照射された光の光軸は、光源14とステージ12との間で、上側ミラー23で反射して、下方に向けて90度曲げられる。したがって、光源14から照射された光は、上側ミラー23で反射されてステージ12に配置された試料に垂直に照射される。 【0047】 このように、照明装置7は、光源14とステージ12との間で、その光軸の方向が上側ミラー23により90度曲げられたL字形状のケーラー照明に構成されている。」 「【0058】 照明光学系15にはリング絞り31が配置され、観察光学装置8には位相板32が配置されている。リング絞り31は上側ミラー23とコンデンサレンズ22との間の、コンデンサレンズ22の焦点と一致する位置に配置されている。一方、位相板32は、対物レンズ24の射出瞳位置に固定されており、当該対物レンズ24と下側ミラー27との間の、リング絞り31に対して光学的に共役となる位置に配置されている。したがって、ケーラー照明に構成された照明装置7、リング絞り31および位相板32を用いることにより、この顕微鏡1で試料を位相差観察することができる。つまり、この顕微鏡1を、位相差顕微鏡として使用することができる。顕微鏡1を位相差顕微鏡として使用することにより、皮膚から採取した角質等の細胞を、染色することなく、光の位相差をコントラストに変換して明瞭に観察することができる。 【0059】 通常、位相差顕微鏡に使用する対物レンズ24は出射光が平衡となるアフォーカル光学系を採用し、出射側には位相板32に加えて位相差リング33を備えている。そして結像レンズ25には、この位相差リング33の存在が撮像面に結像される像に影響を与えないような設計を行っている。 【0060】 一方、本発明の顕微鏡1における変倍機能を有する結像レンズ25は、対物レンズ24との間に光軸を90度曲げるためのミラー27を有しているために、この配置空間を確保しつつ、上述した位相差リング33の影響を防止することが必要となる。そこで、結像レンズ25の入射瞳位置P1を、ミラー27に対して対物レンズ24の側であって、対物レンズ24に設けられた位相差リング33に略一致させて位置づけると共に、位相板32の共役点P2を撮像素子9の撮像面よりも図中右側、つまり結像レンズ25とは反対側に位置づけるように設計することが望ましい。本実施例では、結像レンズ25として、焦点距離23mmから160mmのズーム光学系を使用し、第1群レンズ28の物体側(対物レンズ24側)レンズ前面より20mmの位置に当該結像レンズ25の入射瞳位置を位置づけるよう設計している。なお、位相差リング33は、対物レンズ24の射出瞳位置に設けられており、したがって、結像レンズ25の入射瞳位置P1は対物レンズ24の射出瞳位置と一致もしくは略一致している。 【0061】 このような構成により、撮像素子9として1/4インチサイズの小型のものを使用し、結像レンズ25の焦点距離が短かい分、結像レンズ25の入射瞳を長くしつつ、変倍動作によってもその入射瞳位置が変動しないようにして、この顕微鏡1の小型化と幅広い変倍率の確保とを両立させることができる。 【0062】 また、顕微鏡1の倍率は、対物レンズ24の光学倍率と結像レンズ25の光学倍率との積で決まるが、本発明のように、撮像面に結像させ、それをモニタ5に表示させる場合には、観察者が視認する倍率は、撮像素子9の大きさや使用するモニタ5の大きさとの総合的な関係で決まる。 【0063】 それゆえ、本発明では例えば対物レンズ24として20倍のものを使用し、結像レンズ25の変倍率(ズーム比)を7倍程度(焦点距離を約23mmから160mm)とし、その光学倍率を3から20倍に設計し、撮像素子9として1/4インチ(500万画素)のCCDもしくはCMOSに取り込んで14インチのモニタ5に表示する場合には、200倍から1400倍程度の拡大率を確保することが可能となる。さらに、対物レンズ24の倍率を20倍から40倍に変更し、結像レンズ25と撮像素子9との間に、2倍のコンバージョンレンズを装着することで、最大5600倍程度の拡大率を得ることが可能となる。 【0064】 コンデンサレンズ22とリング絞り31との間には一対の明視野用透過光源34が設けられており、照明装置7を用いず、明視野用透過光源34のみを用いることにより、この顕微鏡1で試料を明視野で観察することができる。また、ステージ12の上側には一対の暗視野用透過光源35aが設けられ、ステージ12の下側には一対の暗視野用反射光源35bが設けられており、照明装置7を用いず、これらの暗視野用の光源35a,35bのみを用いることにより、この顕微鏡1で試料を暗視野で観察することができる。このように、この顕微鏡1は、観察環境を、位相差観察、明視野観察または暗視野観察に切替えて試料の観察を行うことができるようになっている。 【0065】 なお、本実施の形態においては、観察環境を、位相差観察、明視野観察、暗視野観察に切り替えることができる構成とされているが、少なくともいずれか1つの観察ができればよく、例えば、この顕微鏡1を位相差顕微鏡に構成することもできる。 【0066】 制御基板10は、この顕微鏡1を構成する各装置等を制御するものであり、ケース2の内面に沿って縦に配置されている。制御基板10には、照明装置7の光源14、ステージ12を駆動する駆動ユニット13、結像レンズ25を駆動する電動モータおよび撮像素子9等が接続されている。また、制御基板10は、図示しない配線により、商用電源等の外部電源に接続されている。なお、制御基板10に電力を供給するためのバッテリ等の電源をケース2内に設けるようにしてもよい。 【0067】 表示装置であるモニタ5は、ケーブル36(図1参照)により制御基板10に接続される。撮像素子9が撮像した試料の拡大画像は、制御基板10とケーブル36とを介してモニタ5に出力される。制御基板10にはモニタ5と接続されるコネクタユニット37が設けられるが、このコネクタユニット37は、照明装置7、ステージ装置6および結像レンズ25に囲まれたコの字の内側のスペースに配置されている。」 「【図2】 [図:0001410243000005.jpg] 」 「【図3】 [図:0001410243000006.jpg] 」 イ 上記アの記載から、甲第6号証には、実施の形態に係る顕微鏡1(図3等)を用いて皮膚から採取した細胞を試料として(【0036】)観察する方法について、次の観察方法の発明(以下「甲6発明1」という。)及び顕微鏡の発明(以下「甲6発明2」という。)が記載されていると認められる。 (ア)甲6発明1 「皮膚から採取した細胞を試料とし、(【0036】) 顕微鏡1は、ステージ装置6、照明装置7、観察光学装置8、撮像素子9および制御基板10を備え、(【0039】) 照明装置7は、位相差観察用の光源14である「発光ダイオード」または「フィラメントを用いた電球など」と照明光学系15とを備え、ステージ12の上方に配置され、(【0042】、【0044】) 光源14から照射された光は、上側ミラー23で反射されてステージ12に配置された試料に垂直に照射され、(【0046】) リング絞り31は上側ミラー23とコンデンサレンズ22との間の、コンデンサレンズ22の焦点と一致する位置に配置され、(【0058】) 顕微鏡1で試料を位相差観察することができ、(【0058】) コンデンサレンズ22とリング絞り31との間には一対の明視野用透過光源34が設けられており、照明装置7を用いず、明視野用透過光源34のみを用いることにより、この顕微鏡1で試料を明視野で観察することができ、(【0064】) 位相差観察、明視野観察または暗視野観察に切替えて試料の観察を行うことができ、(【0064】) 撮像素子9が撮像した試料の画像は、モニタ5に出力される、(【0067】) 観察方法。」 (イ)甲6発明2 「皮膚から採取した細胞を試料として観察するための顕微鏡であって、(【0001】、【0036】) 顕微鏡1は、ステージ装置6、照明装置7、観察光学装置8、撮像素子9および制御基板10を備え、(【0039】) 照明装置7は、位相差観察用の光源14である「発光ダイオード」または「フィラメントを用いた電球」と照明光学系15とを備え、ステージ12の上方に配置され、(【0042】、【0044】) 光源14から照射された光は、上側ミラー23で反射されてステージ12に配置された試料に垂直に照射され、(【0046】) リング絞り31は上側ミラー23とコンデンサレンズ22との間の、コンデンサレンズ22の焦点と一致する位置に配置され、(【0058】) 顕微鏡1で試料を位相差観察することができ、(【0058】) コンデンサレンズ22とリング絞り31との間には一対の明視野用透過光源34が設けられており、照明装置7を用いず、明視野用透過光源34のみを用いることにより、この顕微鏡1で試料を明視野で観察することができ、(【0064】) 位相差観察、明視野観察または暗視野観察に切替えて試料の観察を行うことができ、(【0064】) 撮像素子9が撮像した試料の画像は、モニタ5に出力される、(【0067】) 顕微鏡1。」 5 当審の判断 (1)本件発明1について ア 甲2発明1を主引例とした場合 (ア)本件発明1と甲2発明1との対比、一致点及び相違点の認定 a 本件発明1の「毛髪の内部を観察する毛髪観察方法であ」る「毛髪観察方法」との特定事項について 甲2発明1の「毛髪のメデュラ領域」は、毛髪の内部であることから、本件発明1の「毛髪の内部」に相当する。甲2発明1の「観察方法」は、「毛髪のメデュラ領域の膨潤が確認される」ものであることから、本件発明1の「毛髪の内部を観察する」「毛髪観察方法」に相当する。 よって、甲2発明1は、本件発明1の上記特定事項を備えるものである。 b 本件発明1の「前記毛髪に赤外線照射光源により赤外線を照射して位相差観察を行い、前記毛髪に可視光線照射光源により可視光線を照射して明視野観察を行い」との特定事項について 甲2発明1は、「白熱電球光源または高輝度LED光源」で「毛髪を、位相差顕微鏡により観察し」ていることから、毛髪に位相差観察用の光源による光線を照射して位相差観察を行うものであることは明らかである。 そうすると、甲2発明1が「白熱電球光源または高輝度LED光源」により「毛髪を、位相差顕微鏡により観察」するために、毛髪に位相差観察用の光源による光線を照射して「位相差観察を行う」ことと、本件発明1が「前記毛髪に赤外線照射光源により赤外線を照射して位相差観察を行」うこととは、「前記毛髪に位相差観察用の光源により光線を照射して位相差観察を行」う点で共通するが、甲2発明1は、「位相差観察用の光源」が赤外線を照射しているか不明であるし、毛髪の明視野観察を行うものでもない。 c 本件発明1の「赤外線を検出可能な撮像素子により前記毛髪の赤外線による像を撮像し、前記撮像素子の撮像画像を表示装置に表示して前記毛髪の内部を観察し」との特定事項について 甲2発明1の「CCD」は、本件発明1の「撮像素子」に相当する。そして、甲2発明1は、「CCD組込」の「カメラ」で「毛髪のメデュラ領域の膨潤が確認される」ことから、位相差観察用の光源による光線を検出可能な撮像素子により毛髪の像を撮像し、撮像素子の撮像画像を表示装置に表示して毛髪の内部を観察するものである。 そうすると、甲2発明1が「CCD組込」の「カメラ」により「毛髪」の「映像」を得るとともに、当該「映像を液晶ディスプレーに表示」して、「毛髪のメデュラ領域の膨潤を確認」することと、本件発明1の「赤外線を検出可能な撮像素子により前記毛髪の赤外線による像を撮像し、前記撮像素子の撮像画像を表示装置に表示して前記毛髪の内部を観察」することとは、「位相差観察用の光源による光線を検出可能な撮像素子により前記毛髪の像を撮像し、前記撮像素子の撮像画像を表示装置に表示して前記毛髪の内部を観察」する点で共通するが、甲2発明1は、「CCD」が赤外線を検出可能なものであるか不明である。 d 本件発明1の「前記可視光線照射光源は、前記赤外線の光路に沿って前記赤外線照射光源の下流側に配置され、前記可視光線照射光源および前記赤外線照射光源は、前記毛髪が配置されたステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されている」との特定事項について 本件発明1における「可視光線照射光源」は、毛髪の明視野観察用の光源であるところ、甲2発明1は、上記bのとおり、明視野観察を行うものではないから、本件発明1の上記特定事項を備えていない。 e 以上より、本件発明1と甲2発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「毛髪の内部を観察する毛髪観察方法であって、 前記毛髪に位相差観察用の光源により光線を照射して位相差観察を行い、 位相差観察用の光源による光線を検出可能な撮像素子により前記毛髪の像を撮像し、 前記撮像素子の撮像画像を表示装置に表示して前記毛髪の内部を観察する 毛髪観察方法。」 <相違点1> 「位相差観察用の光源」及び「位相差観察用の光源による光線を検出可能な撮像素子」について、本件発明1は、「位相差観察」用に「赤外線照射光源」により「赤外線を照射」するとともに、「赤外線を検出可能な撮像素子」であるのに対し、甲2発明1は、光源が1種類しか備えられておらず、赤外線を照射しているか不明であるし、「CCD組込」の「カメラ」は、赤外線を検出可能なものであるか不明である点。 <相違点2> 本件発明1は、「可視光線照射光源」により、毛髪の「明視野観察」を行うのに対して、甲2発明1は、位相差観察用の光源による光線とは異なる波長の光源による光線を用いて明視野観察を行うものではない点。 (イ)検討 a 相違点1について (a)甲2発明1における「位相差観察用の光源」である「白熱電球光源または高輝度LED素子」による光線が、赤外線を含む可能性はあるものの、一般的にこれらの光源は赤外線照射光源と理解されるものではない。そして、毛髪の観察をする際に赤外線照射光源を用いて位相差観察を行うことを示唆する証拠はないから、甲2発明1において「位相差観察用の光源」である「白熱電球光源」及び「高輝度LED素子」等の光源を「赤外線照射光源」とすることを当業者が動機づけられるとはいえない。 また、甲2発明1の「白熱電球光源または高輝度LED素子」による光線を検出する「CCD組込」の「カメラ」は、赤外線を検出可能である可能性はあるものの、前記のとおり甲2発明1において、「位相差観察用の光源」である「白熱電球光源または高輝度LED素子」を「赤外線照射光源」とすることを当業者が動機づけられるとはいえず、そうである以上、甲2発明1における「CCD組込」の「カメラ」を「赤外線を検出可能な撮像素子」として構成することを当業者が動機づけられるともいえない。 そうすると、甲2発明1において、「位相差観察用の光源」である「白熱電球光源または高輝度LED素子」を「赤外線照射光源」とすることも、「CCD組込」の「カメラ」を「赤外線を検出可能な撮像素子」として構成することも当業者が容易に想到できたということはできない。 よって、甲2発明1において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たということはできない。 (b)申立人の主張について 申立人は、甲2発明に、甲7~9に記載された赤外線照射光源を用いて位相差観察を行う周知技術、及び甲3~5に記載された位相差観察及び明視野観察を行う周知技術を適用することにより、当業者は相違点1に係る構成に至る旨主張する。 しかしながら、甲7~9には、毛髪へ赤外線を照射して観察することは記載されていないし、甲2発明1の観察対象は毛髪であることから、赤外線照射光源を用いて位相差観察を行うことが周知技術である(甲7の【0012】、甲9の【請求項1】参照。)としても、毛髪を観察対象とする甲2発明1から出発した当業者が甲7~9に記載された赤外線照射光源を用いて位相差観察を行う周知技術を適用することを動機づけられるものとはいえないことは、上記(a)のとおりである。 b 相違点2について (a)甲6発明1においては、皮膚から採取した細胞を試察する方法において、明視野用透過光源34と位相差観察用の光源14を備え、観察用位相差観察と明視野観察を切り換えて観察を行っており、明視野用透過光源34は、位相差観察用の光源14の下流側に配置され、明視野用透過光源34及び光源14は、試料が配置されたステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されていることが記載されているところ、甲2発明1と甲6発明1は「生体から得られた試料」を「位相差観察」により観察するという点で技術分野が関連するとはいえる。 しかしながら、甲6発明1は毛髪を観察する方法ではないし、甲6発明1は、位相差観察用の光源による光線の波長と明視野観察用の光源による光線の波長を異ならせることの記載も示唆もないから、甲2発明1と甲6発明1が「生体から得られた試料」を「位相差観察」により観察するという点で技術分野が関連するといえるからといって、そのことが、甲2発明1において、甲6発明1のように位相差観察と明視野観察を切り換えて観察するように、位相差観察用の光源と明視野観察用の光源を備えるようにすることを当業者が動機づけられると考えるべき事情はないし、それに加えて、さらに、位相差観察用の光源による光線の波長と明視野観察用の光源による光線の波長を異ならせることを当業者が動機づけられると考えるべき事情もない。 そうすると、甲2発明1において、甲6発明1のように、明視野用透過光源34と位相差観察用の光源14を備え、観察用位相差観察と明視野観察を切り換えて観察を行うようにし、明視野用透過光源34は、位相差観察用の光源14の下流側に配置され、明視野用透過光源34及び光源14は、試料が配置されたステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されるようにし、それに加えて、さらに、位相差観察用の光源による光線の波長と明視野観察用の光源による光線の波長を異ならせて、相違点2に係る本件発明1の構成を備えるように構成することを当業者が容易に想到し得たということはできない。 (b)申立人の主張について 申立人は、甲10~12により、本件発明1の「前記可視光線照射光源および前記赤外線照射光源は、前記毛髪が配置されたステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されていること」が開示されていると主張するが、甲10~12により、そのような事項が開示されているとは認められない。 (ウ)小括 そして、甲2~12の他の記載をみても、前記の認定判断を左右するものとはいえない。 以上によれば、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲2~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 甲6発明1を主引例とした場合 (ア)本件発明1と甲6発明1との対比、一致点及び相違点の認定 a 本件発明1の「毛髪の内部を観察する毛髪観察方法であ」る「毛髪観察方法」との特定事項について 甲6発明1は、「皮膚から採取した細胞を試料」として「観察する」方法であり、毛髪の内部を観察するものではないから、甲6発明1と本件発明1の上記の特定事項は、「生体から採取した試料を観察する方法」である点で共通する。 b 本件発明1の「前記毛髪に赤外線照射光源により赤外線を照射して位相差観察を行い、前記毛髪に可視光線照射光源により可視光線を照射して明視野観察を行い」との特定事項について 甲6発明1は、「光源14」で「位相差観察」を行い、「明視野用透過光源34」で「明視野観察」を行うものであるが、「光源14」が赤外線を照射しているか不明であり、「明視野用透過光源34」が可視光を照射しているか不明である。 よって、甲6発明1が、「位相差観察用の光源14」である「発光ダイオード」及び「フィラメントを用いた電球など」と、明視野用透過光源34を備え、「皮膚から採取した細胞を試料」として「観察する」ことと、本件発明1の上記特定事項とは、「生体から採取した試料に位相差観察用の光源により光線を照射して位相差観察を行い、前記試料に明視野観察用の光源により光線を照射して明視野観察を行」う点で共通する。 c 本件発明1の「赤外線を検出可能な撮像素子により前記毛髪の赤外線による像を撮像し、前記撮像素子の撮像画像を表示装置に表示して前記毛髪の内部を観察し」との特定事項について 甲6発明1の「撮像素子9」、「モニタ5」は、本件発明1の「撮像素子」、「表示装置」に相当する。甲6発明1は、「撮像素子9が撮像した試料の画像は、モニタ5に出力される」ことから、撮像素子により試料の像を撮像し、前記撮像素子の撮像画像を表示装置に表示して試料を観察するものである。 一方、甲6発明1は、「撮像素子9」が赤外線を検出可能なものであるか不明であり、上記aと同様に、観察対象が毛髪の内部ではない。 そうすると、甲6発明1が、「位相差観察用の光源14」を用いて「皮膚から採取した細胞の試料」を「位相差観察」して「撮像素子9」により「画像」を取得し、「モニタ5に出力」することと、本件発明1の上記特定事項とは、「位相差観察用の光源の光線を検出可能な撮像素子により前記試料の前記光線による像を撮像し、前記撮像素子の撮像画像を表示装置に表示して前記試料の内部を観察」する点で共通する。 d 本件発明1の「前記可視光線照射光源は、前記赤外線の光路に沿って前記赤外線照射光源の下流側に配置され、前記可視光線照射光源および前記赤外線照射光源は、前記毛髪が配置されたステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されている」との特定事項について 甲6発明1の「ステージ12」は、本件発明1の「ステージ」に相当する。甲6発明1は、「光源14から照射された光は、上側ミラー23で反射されてステージ12に配置された試料に垂直に照射され」るものであるところ、「上側ミラー23とコンデンサレンズ22との間」に「明視野用透過光源34が設けられ」ることから、明視野用透過光源34は、光源14の下流側に配置され、明視野用透過光源34及び光源14は、試料が配置されたステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されているものである。 よって、甲6発明1が「明視野用透過光源34」及び「位相差観察用の光源14」を備え、「光源14から照射された光は、上側ミラー23で反射されてステージ12に配置された試料に垂直に照射され」るものであり、「上側ミラー23とコンデンサレンズ22との間」に「明視野用透過光源34が設けられ」ることと、本件発明1の上記特定事項とは、「前記位相差観察用の光源は、前記位相差観察用の光線の光路に沿って前記位相差観察用の光源の下流側に配置され、前記明視野観察用の光源および前記前記位相差観察用の光源は、前記試料が配置されたステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されている」点で共通する。 しかしながら、上記bと同様に、甲6発明1は、「位相差観察用の光源14」が赤外線を照射しているか不明であり、「明視野用透過光源34」が可視光を照射しているか不明である。 e 以上より、本件発明1と甲6発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「生体から採取した試料を観察する観察方法であって、 前記試料に位相差観察用の光源により光線を照射して位相差観察を行い、 前記試料に明視野観察用の光源により光線を照射して明視野観察を行い、 位相差観察用の光線を検出可能な撮像素子により前記試料の像を撮像し、 前記撮像素子の撮像画像を表示装置に表示して前記試料を観察し、 前記明視野観察用の光源は、前記位相差観察用の光線の光路に沿って前記位相差観察用の光源の下流側に配置され、 前記明視野観察用の光源および前記位相差観察用の光源は、前記試料が配置されたステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されている 試料観察方法。」 <相違点A> 観察対象の「試料」について、本件発明1は、「毛髪の内部」であるのに対し、甲6発明1は、「皮膚から採取した細胞の試料」である点。 <相違点B> 「位相差観察用の光源」、「明視野観察用の光源」及び「撮像素子」について、本件発明1は、「赤外線を照射して位相差観察を行」う光源、「可視光線を照射して明視野観察を行」う光源及び「赤外線を検出可能な撮像素子」であるのに対し、甲6発明1は、赤外線を照射して位相差観察を行う光源であるか不明であり、可視光線を照射して明視野観察を行う光源であるか不明であり、また、赤外線を検出可能なものであるか不明である点。 (イ)検討 a 相違点Aについて 甲6発明1は、「皮膚から採取した細胞を試料」として観察するものであるところ、甲6には、観察対象の試料として、毛髪を試料とすることは記載も示唆もされていない。また、甲2発明1においては毛髪の内部を位相差観察しているが、甲6発明1は皮膚から採取した細胞の試料を観察する方法であるところ、甲6発明1における位相差観察用の光源によって毛髪も観察可能であることを示す証拠はないから、甲6発明1から出発した当業者が甲2発明1を適用する動機付けがあるとはいえず、当業者が相違点Aに係る本件発明1の構成に至るとはいえない。 b 相違点Bについて 甲6発明1において、明視野用透過光源34の光線の波長と位相差観察用の光源14の光線の波長を異なるようにすることは記載も示唆もない。 また、甲6発明1において、観察対象である「皮膚から採取した細胞」の「試料」が、位相差観察用の光源として赤外線照射光源を用いても観察可能であることを示す証拠はないし、技術常識から明らかであるともいえない。 そうすると、甲6発明1において、位相差観察用の光源の光線の波長と明視野観察用の光源の波長を異なる波長とすることを当業者が動機づけられるということはできないし、それに加えて、さらに、位相差観察用の光源を赤外線照射光源とし、明視野観察用の光源を可視光線照射光源とすることを当業者が動機づけられると考えるべき事情もない。 また、甲6発明1の「撮像素子」が赤外線を検出可能である可能性はあるものの、前記のとおり甲6発明1において、「位相差観察用の光源」と「明視野観察用の光源」の波長を異なるものとすることや、「位相差観察用の光源」を「赤外線照射光源」とし、「明視野観察用の光源」を「可視光線照射光源」とすることを当業者が動機づけられるとはいえないにも関わらず、甲6発明1における「撮像素子」を「赤外線を検出可能な撮像素子」として構成することを当業者が動機づけられるとはいえない。 よって、甲6発明1において、相違点Bに係る本件発明1の構成を備えるように構成することを当業者が容易に想到し得たということはできない。 c 申立人の主張について 申立人は、前記ア(イ)a(b)及びア(イ)b(b)で甲2発明1について主張した内容を、甲6発明1についても主張しているが、いずれも採用できないことは、前記のとおりである。 (ウ)小括 そして、甲2~12の他の記載をみても、前記の認定判断を左右するものとはいえない。 以上によれば、本件発明1は、甲6に記載された発明及び甲2~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明7について ア 甲2発明2を主引例とした場合 (ア)本件発明7と甲2発明2との対比、一致点及び相違点の認定 a 本件発明7の「試料を位相差観察する位相差顕微鏡システムであ」る「位相差顕微鏡システム」との特定事項について 甲2発明2の「毛髪」は、「観察」されるものであることから、本件発明7の「試料」に相当する。甲2発明2の「位相差顕微鏡」は、「毛髪を観察するための」ものであることから、本件発明7の「試料を位相差観察する位相差顕微鏡システム」に相当する。 よって、甲2発明2は、本件発明7の上記特定事項を備えるものである。 b 本件発明7の「試料が配置されるステージと、前記ステージに配置された前記試料に赤外線を照射する赤外線照射光源と、前記ステージに配置された前記試料に可視光線を照射する可視光線照射光源と」との特定事項について 甲2発明2は、「白熱電球光源または高輝度LED光源」で「毛髪を観察するための、位相差顕微鏡」であることから、試料に光線を照射する位相差観察用の光源を備えるものであることは明らかである。 そうすると、甲2発明2が「白熱電球光源または高輝度LED光源」により「毛髪を観察するため」に、試料に光線を照射する位相差観察用の光源を備えることと、本件発明7が「試料に赤外線を照射する赤外線照射光源」を有することとは、「試料に光線を照射する位相差観察用の光源」を備える点で共通するが、「位相差観察用の光源」が赤外線を照射しているか不明であるし、甲2発明2は、「ステージ」を備えているかも不明である。 c 本件発明7の「赤外線を検出可能であり、前記試料の赤外線による像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の撮像画像を表示する表示装置と、を有し、」との特定事項について 甲2発明2の「CCD」は、本件発明7の「撮像素子」に相当する。そして、甲2発明2は、「CCD組込」の「カメラ」で「毛髪のメデュラ領域の膨潤が確認される」ことから、位相差観察用の光源による光線を検出可能な撮像素子により試料の像を撮像し、撮像素子の撮像画像を表示装置に表示して試料を観察するものである。 そうすると、甲2発明2が「CCD組込」の「カメラ」により「毛髪」の「映像」を得るとともに、当該「映像を液晶ディスプレーに表示」して、「毛髪のメデュラ領域の膨潤を確認」することと、本件発明7の「赤外線を検出可能であり、前記試料の赤外線による像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の撮像画像を表示する表示装置と、を有」することとは、「位相差観察用の光源による光線を検出可能であり、前記試料の光線による像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の撮像画像を表示する表示装置と、を有」する点で共通するが、甲2発明2は、「CCD」が赤外線を検出可能なものであるか不明である。 d 本件発明7の「前記可視光線照射光源は、前記赤外線の光路に沿って前記赤外線照射光源の下流側に配置され、前記可視光線照射光源および前記赤外線照射光源は、前記ステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されている」との特定事項について 本件発明7における「可視光線照射光源」は、試料の明視野観察用の光源であるところ、甲2発明2は、上記bのとおり、明視野観察を行うものではないから、本件発明1の上記特定事項を備えていない。 e 以上より、本件発明7と甲2発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「試料を位相差観察する位相差顕微鏡システムであって、 前記試料に光線を照射する位相差観察用の光源と、 位相差観察用の光源による光線を検出可能であり、前記試料の像を撮像する撮像素子と、 前記撮像素子の撮像画像を表示する表示装置と、を有する、 位相差顕微鏡システム。」 <相違点3> 「位相差観察用の光源」及び「位相差観察用の光源による光線を検出可能な撮像素子」について、本件発明7は、「位相差観察」用に「赤外線照射光源」により「赤外線を照射」するとともに、「赤外線を検出可能であ」る「撮像素子」であるのに対し、甲2発明2は、光源が1種類しか備えられておらず、赤外線を照射しているか不明であるし、「CCD組込」の「カメラ」は、赤外線を検出可能なものであるか不明であるし、ステージを備えているかも不明である点。 <相違点4> 本件発明7は、「可視光線照射光源」により、「試料を」「観察する」のに対して、甲2発明2は、位相差観察用の光源による光線とは異なる波長の光源による光線を用いて観察を行うものではない点。 (イ)検討 a 相違点3について (a)上記相違点1と同様な相違点であるところ、相違点1に係る構成を当業者が容易に想到するといえないことは、上記(1)ア(イ)a(a)の説示のとおりであり、甲2発明2において、相違点3に係る本件発明7の構成を備えるように構成することを当業者が容易に想到し得たということはできない。 (b)申立人の主張について 申立人は、甲2発明に、甲7~9に記載された赤外線照射光源を用いて位相差観察を行う周知技術、及び甲3~5に記載された位相差観察及び明視野観察を行う周知技術を適用することにより、当業者は相違点3に係る構成に至る旨主張する。 しかしながら、上記(1)ア(イ)a(b)の説示と同様に、毛髪を観察対象とする甲2発明2から出発した当業者が甲7~9に記載された赤外線照射光源を用いて位相差観察を行う周知技術を適用することを動機づけられるものとはいえない。 b 相違点4について (a)上記相違点2と同様な相違点であるところ、相違点2に係る構成を当業者が容易に想到するといえないことは、上記(1)ア(イ)b(a)の説示のとおりであり、甲2発明2において、相違点4に係る本件発明7の構成を備えるように構成することを当業者が容易に想到し得たということはできない。 (b)申立人の主張について 申立人は、甲10~12により、本件発明7の「前記可視光線照射光源および前記赤外線照射光源は、前記ステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されていること」が開示されていると主張するが、甲10~12により、そのような事項が開示されているとは認められない。 (ウ)小括 そして、甲2~12の他の記載をみても、前記の認定判断を左右するものとはいえない。 以上によれば、本件発明7は、甲2に記載された発明及び甲2~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 甲6発明2を主引例とした場合 (ア)本件発明7と甲6発明2との対比、一致点及び相違点の認定 a 本件発明7の「試料を位相差観察する位相差顕微鏡システムであ」る「位相差顕微鏡システム」との特定事項について 甲6発明2の「顕微鏡1」は、「試料を位相差観察する」ものであることから、本件発明7の「試料を位相差観察する位相差顕微鏡システム」に相当する。 よって、甲6発明2は、本件発明7の上記特定事項を備えるものである。 b 本件発明7の「試料が配置されるステージと、前記ステージに配置された前記試料に赤外線を照射する赤外線照射光源と、前記ステージに配置された前記試料に可視光線を照射する可視光線照射光源と」との特定事項について 甲6発明2の「ステージ12」は、本件発明1の「ステージ」に相当する。甲6発明2は、「光源14」で「位相差観察」を行い、「明視野用透過光源34」で「明視野観察」を行うものであるが、「光源14」が赤外線を照射しているか不明であり、「明視野用透過光源34」が可視光を照射しているか不明である。 よって、甲6発明2が、「位相差観察用の光源14」である「発光ダイオード」及び「フィラメントを用いた電球など」と、明視野用透過光源34を備え、「皮膚から採取した細胞を試料」として「観察する」ことと、本件発明7の上記特定事項とは、「試料が配置されるステージと、前記ステージに配置された前記試料に光線を照射する位相差観察用の光源と、前記ステージに配置された前記試料に光線を照射する明視野観察用の光源」である点で共通する。 c 本件発明7の「赤外線を検出可能であり、前記試料の赤外線による像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の撮像画像を表示する表示装置と、を有し」との特定事項について 甲6発明2の「撮像素子9」、「モニタ5」は、本件発明7の「撮像素子」、「表示装置」に相当する。甲6発明2は、「撮像素子9が撮像した試料の画像は、モニタ5に出力される」ことから、試料の像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の撮像画像を表示する表示装置と、を有するものである。 一方、甲6発明2は、「撮像素子9」が赤外線を検出可能なものであるか不明である。 そうすると、甲6発明2が、「位相差観察用の光源14」を用いて「皮膚から採取した細胞を試料として」「位相差観察」して「撮像素子9」により「画像」を取得し、「モニタ5に出力」することと、本件発明7の上記特定事項とは、「位相差観察用の光源の光線を検出可能であり、前記試料の像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の撮像画像を表示する表示装置と、を有」する点で共通する。 d 本件発明7の「前記可視光線照射光源は、前記赤外線の光路に沿って前記赤外線照射光源の下流側に配置され、前記可視光線照射光源および前記赤外線照射光源は、前記ステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されている」との特定事項について 甲6発明2は、「光源14から照射された光は、上側ミラー23で反射されてステージ12に配置された試料に垂直に照射され」るものであるところ、「上側ミラー23とコンデンサレンズ22との間」に「明視野用透過光源34が設けられ」ることから、明視野用透過光源34は、光源14の下流側に配置され、明視野用透過光源34及び光源14は、試料が配置されたステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されているものであるが、上記bと同様に、甲6発明2は、「光源14」が赤外線を照射しているか不明であり、「明視野用透過光源34」が可視光を照射しているか不明である。 e 以上より、本件発明7と甲6発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「試料を位相差観察する位相差顕微鏡システムであって、 試料が配置されるステージと、 前記ステージに配置された前記試料に光線を照射する位相差観察用の光源と、 前記ステージに配置された前記試料に光線を照射する明視野観察用の光源と、 位相差観察用の光線を検出可能であり、前記試料の像を撮像する撮像素子と、 前記撮像素子の撮像画像を表示する表示装置と、を有し、 前記明視野観察用の光源は、前記位相差観察用の光線の光路に沿って前記位相差観察用の光源の下流側に配置され、 前記明視野観察用の光源および前記位相差観察用の光源は、前記ステージに対し、前記ステージに垂直な方向の一方側に配置されている 位相差顕微鏡システム。」 <相違点C> 「位相差観察用の光源」、「明視野観察用の光源」及び「撮像素子」について、本件発明7は、「赤外線を照射する赤外線照射光源」、「可視光線を照射する可視光線照射光源」及び「赤外線を検出可能であ」る「撮像素子」であるのに対し、甲6発明2は、赤外線を照射する光源であるか不明であり、可視光線を照射する光源であるか不明であり、また、赤外線を検出可能なものであるか不明である点。 (イ)検討 相違点Cについて a 上記相違点Bと同様な相違点であるところ、相違点Bに係る構成を当業者が容易に想到するといえないことは、上記(1)イ(イ)bの説示のとおりであり、甲6発明2において、相違点Cに係る本件発明7の構成を備えるように構成することを当業者が容易に想到し得たということはできない。 b 申立人の主張について 申立人は、前記ア(イ)a(b)及びア(イ)b(b)で甲2発明2について主張した内容を、甲6発明2についても主張しているが、いずれも採用できないことは、前記のとおりである。 (ウ)小括 そして、甲2~12の他の記載をみても、前記の認定判断を左右するものとはいえない。 以上によれば、本件発明7は、甲6に記載された発明及び甲2~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701352

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