特許異議申立
2023-701335
静電チャック、基板固定装置
- 審判番号
- 2023-701335
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-222739
- 登録番号
- 7296869
- 請求日
- 2023年12月19日
- 審決日
- 2024年03月06日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】新光電気工業株式会社
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【権利者代理人】伊東 忠彦
- 【異議申立人】佐藤 義光
- 審判長/審判官
- 審判長 恩田 春香
- 審判官 市川 武宜
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P1651.121-Y (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7296869号発明「静電チャック、基板固定装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7296869号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7296869号の請求項1~6に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和1年12月10日を出願日とする出願であって、令和5年6月15日にその特許権の設定登録がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~6に係る特許に対して、同年12月19日に特許異議申立人佐藤義光(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ順に「本件発明1」~「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
静電電極が内蔵された基体に吸着対象物を載置し、前記吸着対象物を吸着保持する静電チャックであって、
前記吸着対象物の裏面にガスを供給するガス孔を有し、
前記静電電極は、正極及び負極を含み、
平面視で、前記ガス孔の周辺において、前記正極と前記負極は第1の隙間を空けて対向配置され、前記第1の隙間は前記ガス孔で前記正極側の第1の経路と前記負極側の第2の経路に分かれ、前記第1の経路と前記第2の経路は前記ガス孔を挟んで前記ガス孔の外周に沿って延伸し、合流して1つの第2の隙間となり、
平面視で、前記第1の隙間が前記第1の経路と前記第2の経路に分かれる箇所、及び前記第1の経路と前記第2の経路が合流する箇所において、前記正極及び前記負極が形成する角部は丸みを帯びており、
平面視で、前記丸みを帯びた部分を除く前記第1の経路において前記ガス孔と前記正極との第1の距離は一定であり、前記丸みを帯びた部分を除く前記第2の経路において前記ガス孔と前記負極との第2の距離は一定であり、前記第1の距離と前記第2の距離が等しい静電チャック。
【請求項2】
前記第1の隙間における前記正極と前記負極との短手方向の第3の距離と、前記第2の隙間における前記正極と前記負極との短手方向の第4の距離とが等しい請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記第1の距離と、前記第2の距離と、前記第3の距離と、前記第4の距離とが全て等しい請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記ガス孔には、連通する複数の気孔を備えた多孔質体が配置されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記多孔質体は、球状酸化物セラミックス粒子と、前記球状酸化物セラミックス粒子を結着する混合酸化物と、を含む請求項4に記載の静電チャック。
【請求項6】
ベースプレートと、
前記ベースプレートの一方の面に搭載された請求項1乃至5の何れか一項に記載の静電チャックと、を有する基板固定装置。」
第3 申立理由の概要
1 申立人は、証拠として甲第1号証~甲第6号証(以下、「甲1」~「甲6」という。)を提出し、以下の理由により、請求項1~6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由(進歩性)
ア 本件発明1~3、6は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 本件発明4~5は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<証拠方法>
甲1:特開2010-272730号公報
甲2:特開2001-223260号公報
甲3:特開2002-231793号公報
甲4:特開平7-257751号公報
甲5:特開2017-218352号公報
甲6:特開2019-29384号公報
第4 当審の判断
1 甲号証の記載、甲号証に記載された発明
(1)甲1の記載、甲1発明
ア 甲1の記載(下線は合議体が付加した。以下同じ。)
「【0001】
本発明は静電チャックに係り、さらに詳しくは、半導体ウェハプロセスなどで基板の温度を制御するために各種製造装置に採用される静電チャックに関する。
・・・
【0014】
【図1】 図1は関連技術の静電チャックを示す断面図である。
【図2】 図2は本発明の実施形態の静電チャックを示す断面図である。
【図3】 図3は本発明の実施形態の静電チャックを示す平面図である。
【図4】 図4(a)~(d)は本発明の実施形態の双極タイプのESC電極を示す平面図である。
・・・
【0027】
(実施の形態)
図2は本発明の実施形態の静電チャックを示す断面図、図3は同じく静電チャックを示す平面図である。
【0028】
図2に示すように、本実施形態の静電チャック1では、アルミニウムベース10の上にセラミックスチャック部20が配置されている。セラミックスチャック部20は、セラミックス部22とその中に内蔵されたESC電極24とにより構成される。セラミックスチャック部20の上にウェハ5(基板)が載置される。
・・・
【0043】
また、セラミックスチャック部20及びアルミニウムベース10の中央部には、ウェハを上下に移動するためのリフトピンが挿通されるリフトピン用開口部16が3つ設けられている。リフトピンでウェハを上下に移動することにより、搬送ロボットによってウェハを自動搬送することができる。
【0044】
また、リフトピン用開口部16からヘリウム(He)などの不活性ガスをセラミックスチャック部20の上側に供給してもよい。セラミックスチャック部20とウェハとの間に不活性ガスを流すことにより、加熱された静電チャックの熱を効率よくウェハに伝導することができる。あるいは、不活性ガスを供給するガス用開口部を別途設けるようにしてもよい。
【0045】
図2及び図3の例では、セラミックスチャック部20に内蔵されるESC電極24(図3の円状破線部)は単極タイプであり、セラミックスチャック部20の主要部に1つの電極として設けられる。
【0046】
あるいは、図4(a)~(d)に示すような双極タイプのESC電極を使用してもよい。図4(a)~(d)ではESC電極のみが示されている。図4(a)では、図3のセラミックスチャック部20の左右に2つのESC電極24a,24bが分離されて配置されている。図4(b)では、図3のセラミックスチャック部20の中心側と周縁側で2つのESC電極24a,24bが分離されて配置されている。
【0047】
図4(c)では、図3のセラミックスチャック部20の左右側から2つのESC電極24a,24bがくし歯状に延在して分離されて配置されている。また、図4(d)では、図3のセラミックスチャック部20に渦巻状に2つのESC電極24a,24bが湾曲して分離されて配置されている。
【0048】
図4(a)~(d)に示すような双極タイプのESC電極24a,24bを採用する場合は、2つの分離されたESC電極24a,24bにプラス(+)及びマイナス(-)の電圧がそれぞれ印加される。」
・・・
【0065】
本実施形態の静電チャック1では、セラミックスチャック部20の上にウェハ5(基板)が載置され、ESC電極24に所定の電圧が印加され、両者の間に発生した力によってウェハ5がセラミックスチャック部20の上に静電吸着される。さらに、ヒータ部60又はヒータ電極62に所定の電圧が印加されて熱が発生し、ウェハ5が加熱されて所定の温度に制御される。」
「【図2】
[図:0001409176000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001409176000002.jpg]
」
「【図4】
[図:0001409176000003.jpg]
」
イ 甲1の記載事項
甲1には、次の技術事項が記載されている。
(ア)上記アの【0028】、【0065】によれば、静電チャック1は、アルミニウムベース10の上にセラミックスチャック部20が配置され、セラミックスチャック部20は、セラミックス部22と、セラミックス部22中に内蔵されたESC電極24とにより構成され、セラミックスチャック部20の上にウェハ5が載置され、ESC電極24に所定の電圧が印加されて、ウェハ5がセラミックスチャック部20の上に静電吸着されるものである。
(イ)上記アの【0043】、【0044】によれば、セラミックスチャック部20及びアルミニウムベース10の中央部には、リフトピン用開口部16が設けられ、リフトピン用開口部16からヘリウム(He)などの不活性ガスをセラミックスチャック部20の上側に供給し、セラミックスチャック部20とウェハとの間に不活性ガスを流すことにより、加熱された静電チャックの熱を効率よくウェハに伝導するものである。
(ウ)上記アの【0045】~【0048】によれば、セラミックスチャック部20に内蔵されるESC電極24は、双極タイプのESC電極を使用し、上記アの図4(c)では、2つのESC電極24a、24bがくし歯状に延在して分離されて配置され、2つの分離されたESC電極24a、24bにプラス(+)及びマイナス(-)の電圧がそれぞれ印加されるものであり、上記アの【0014】によれば、図4は、双極タイプのESC電極を示す平面図であるから、セラミックスチャック部20に内蔵されるESC電極24は、プラス(+)の電圧が印加されるESC電極24aと、マイナス(-)の電圧が印加されるESC電極24bとを有し、平面視において、2つのESC電極24a、24bがくし歯状に延在して分離されて配置されるものである。
(エ)上記アの図2から、ウェハ5は、セラミックスチャック部20のセラミックス部22の上に載置されることが見て取れる。
ウ 甲1発明
上記イから、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「アルミニウムベース10の上にセラミックスチャック部20が配置された静電チャック1において、
セラミックスチャック部20は、セラミックス部22と、セラミックス部22中に内蔵されたESC電極24とにより構成され、
ウェハ5が、セラミックス部22の上に載置され、ESC電極24に所定の電圧が印加されて、セラミックス部22の上に静電吸着され、
セラミックスチャック部20及びアルミニウムベース10の中央部には、リフトピン用開口部16が設けられ、リフトピン用開口部16からヘリウム(He)などの不活性ガスをセラミックスチャック部20の上側に供給し、セラミックスチャック部20とウェハとの間に不活性ガスを流すことにより、加熱された静電チャックの熱を効率よくウェハに伝導し、
セラミックスチャック部20に内蔵されるESC電極24は、プラス(+)の電圧が印加されるESC電極24aと、マイナス(-)の電圧が印加されるESC電極24bとを有し、平面視において、2つのESC電極24a、24bがくし歯状に延在して分離されて配置されるものである、
静電チャック1。」
(2)甲2の記載
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に半導体産業において使用される静電チャックに関し、特には、耐電圧が高く、シリコンウエハの吸着力が大きな静電チャックに関する。
・・・
【0010】本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、対向電極の角部に電場が集中しにくく、これに起因して誘電体膜等にクラックが発生することのない静電チャックを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、セラミック基板上に電極が形成され、前記電極上にセラミック誘電体膜が設けられた静電チャックにおいて、上記電極は、一対の対向電極からなり、上記対向電極の角部の輪郭は、曲線により構成されてなることを特徴とする。
・・・
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の静電チャックは、セラミック基板上にチャック力を誘起するための電極(以下、静電電極と呼ぶ)が形成され、上記静電電極上にセラミック誘電体膜が設けられた静電チャックにおいて、上記静電電極は、一対の対向電極からなり、上記対向電極の角部の輪郭の少なくとも一部は、曲線により構成されてなることを特徴とする。
【0014】本発明の静電チャックでは、対向電極の角部の輪郭の全部または一部が曲線により構成されており、曲線部分は、直線を組み合わせた屈曲形状のものと比較すると、角部に電場が集中しにくいため、電場の影響によりセラミック誘電体膜に歪みが発生することはなく、これに起因して、クラックが発生することもない。従って、本発明の静電チャックでは、セラミック誘電体膜の耐電圧も結果的に高くなり、静電電極に1~10kV等の高電圧を印加することができるため、シリコンウエハの吸着力が大きくなる。
【0015】図1は、本発明の静電チャックの一実施形態を模式的に示した縦断面図であり、図2は、図1に示した静電チャックにおけるA-A線断面図であり、図3は、図1に示した静電チャックにおけるB-B線断面図である。
【0016】この静電チャック101では、平面視円形状のセラミック基板1の表面に、半円弧状部2aと櫛歯部2bとからなるチャック正極静電層2と、同じく半円弧状部3aと櫛歯部3bとからなるチャック負極静電層3とから構成される静電電極層が形成され、この静電電極層上にセラミック誘電体膜4が形成されている。
【0017】また、このチャック正極静電層2およびチャック負極静電層3には、それぞれ直流電源の+側と-側とが接続され、直流電圧V2が印加されるようになっている。一方、この静電チャック101上には、シリコンウエハ9が載置され、接地されている。
【0018】この静電電極は、その形状が従来の場合と異なっている。すなわち、チャック正極静電層2及びチャック負極静電層3の角部は、その輪郭が滑らかな曲線により構成されており、尖った部分が存在しない。従って、チャック正極静電層2とチャック負極静電層3との間に、1~10kVの直流電圧V2を印加した際にも、電場が角部に集中することはない。
【0019】一方、セラミック基板1の内部には、シリコンウエハ9の温度をコントロールするために、図3に示したような平面視同心円形状の抵抗発熱体5が設けられており、抵抗発熱体5の両端には、外部端子ピン6が接続、固定され、電圧V1が印加されるようになっている。また、図1、2には示していないが、このセラミック基板1には、図3に示したように、測温素子を挿入するための有底孔11とシリコンウエハ9を支持して上下させる支持ピン(図示せず)を挿通するための貫通孔12が形成されている。なお、抵抗発熱体5は、セラミック基板の底面に形成されていてもよい。」
「【図1】
[図:0001409176000004.jpg]
」
「【図2】
[図:0001409176000005.jpg]
」
「【図3】
[図:0001409176000006.jpg]
」
(3)甲3の記載
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に、プラズマCVD、減圧CVD、光CVD、PVD等の成膜装置や、プラズマエッチング、光エッチング等のエッチング装置に用いられるウエハ支持部材に関するものである。
・・・
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、図5(a)~(c)に示すようなパタ―ン形状を有する内部電極34を埋設してなり、隣り合う導体膜35a,35b間の間隔が狭いウエハ支持部材31を熱サイクルが加わる環境下で使用すると、板状セラミック体32中に、導体膜35a,35bのコーナー部を起点としたクラックが発生し、酷いときには板状セラミック体32が破損するといった課題があった。
・・・
【0010】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は上記課題に鑑み、請求項1に係る発明は、板状セラミック体の一方の主面を、ウエハを載せる載置面とするとともに、上記板状セラミック体中に帯状の導体膜を埋設したウエハ支持部材であって、上記帯状の導体膜にはその一部にコーナー部を設けて相対向する領域を形成し、かつ上記コーナー部での相対向する領域の最短距離を25mm以下とするとともに、上記コーナー部の角部を円弧状としたことを特徴とする。
・・・
【0018】図2は本発明に係るウエハ支持部材の他の例である静電チャックを示す図で、(a)はその斜視図、(b)は(a)のY-Y線断面図、(c)は内部電極のパターン形状を示す平面図である。
【0019】この静電チャックとしてのウエハ支持部材11は、円盤状をした板状セラミック体12の上面を、ウエハWを載せる載置面13とするとともに、板状セラミック体12中の載置面13側近傍には、同図(c)に示すような、櫛歯形状をした一対の導体膜15a,15bを互いの歯部が交互に配置されたパターン形状を有する内部電極14を同一深さに埋設したもので、上記板状セラミック体12の下面には上記一対の導体膜15a,15bと電気的に接続される給電端子16をそれぞれ接合してある。
【0020】また、内部電極14をなす一対の導体膜15a,15bは、載置面13において均一な静電吸着力を発現させるため、導体膜15a,15b間の距離はできるだけ狭くなるように設計してあり、少なくとも相対向する一方の導体膜15bのコーナー部から他方の導体膜15aまでの最短距離Lを25mm以下とするとともに、上記最短距離Lが25mm以下である部位に位置する導体膜115bのコーナー部の角部を円弧状Pに形成してある。」
「【図2】
[図:0001409176000007.jpg]
」
(4)甲4の記載
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、静電吸引力を用いた浮上体の静電浮上搬送装置及びその静電浮上用電極に関するものである。
・・・
【0020】なお、これは、静電浮上搬送装置の一例に過ぎず、多種多様の搬送工程や搬送位置の変更を行うことができることは言うまでもない。このような静電浮上装置に用いる静電浮上用電極について、以下に説明する。図3は本発明の第1の実施例を示す静電浮上用電極の平面図である。図3に示すように、この実施例の静電浮上用電極10は、外形はシリコンウエハなどの円板形状を有する浮上体と同様の直径を有する円形状の絶縁基板4からなっている。そして、形も面積も同じ、扇状になっている4つの電極10a,10b,10c,10dが、絶縁基板4上に分離帯11a,11bを挟んで、4等分に配置されている。換言すれば、分離帯11a,11bにより、均等に4分割されている。
【0021】そこで、4つの扇状の電極10a,10b,10c,10dに、正電圧と負電圧とが交互に印加されるようになっている。また、電荷の集中を防ぐために、これらの扇状の電極10a,10b,10c,10dの角部にはR13が形成されている。更に、これらの扇状の電極10a,10b,10c,10dの外側面には、前記電圧を印加するためのリード線が接続されている。すなわち、扇状の電極10aの外側面にはリード線12aが、扇状の電極10bの外側面にはリード線12bが、扇状の電極10cの外側面にはリード線12cが、扇状の電極10dの外側面にはリード線12dがそれぞれ接続されている。」
「【図3】
[図:0001409176000008.jpg]
」
(5)甲5の記載
「【0001】
本発明は、焼結体及びその製造方法とその焼結体を備えた静電チャックに関する。
・・・
【0008】
セラミック基板の貫通孔に多孔質体を信頼性よく配置できる新規な構造の焼結体及びその製造方法と静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の開示の一観点によれば、酸化物粒子が焼結されたセラミック基板と、前記セラミック基板に形成された貫通孔であって、前記貫通孔の内壁に露出する前記酸化物粒子の各側面が面一となって配置された前記貫通孔と、前記貫通孔に配置され、球状酸化物セラミック粒子と、前記球状酸化物セラミック粒子を結着する混合酸化物とから形成された多孔質体とを有する焼結体が提供される。
・・・
【0122】
次に、前述した図2(a)及び(b)の焼結体1を使用する静電チャックについて説明する。図6に示すように、実施形態の静電チャック2は、アルミニウムなどから形成されるベース基板40の上に、前述した図2(a)及び(b)と同様な構造の焼結体1が配置されている。
【0123】
前述したように、焼結体1は、セラミック基板10と、その厚み方向に貫通して配置された多孔質体20からなるガス導管部Gとを備えている。
【0124】
図6に示すように、実施形態の焼結体1を静電チャック2のチャック部として使用する場合は、セラミック基板10の内部に静電電極30及びそれに接続される配線端子32が配置されている。配線端子32は、静電電極30の下面からセラミック基板10の下面まで延在している。
【0125】
静電電極30及び配線端子32が内蔵されたセラミック基板10は、セラミック基板10を形成するためのグリーンシート内に静電電極30及び配線端子32となる材料を配置し、その積層体を焼成することにより得られる。静電電極30及び配線端子32の材料としては、タングステンペーストなどが使用される。
【0126】
ベース基板40には、セラミック基板10に形成された多孔質体20に連通するガス供給穴42が貫通して形成されている。また、ベース基板40には、セラミック基板10の下面に露出する配線端子32に接続される中継配線44が形成されている。
【0127】
ベース基板40と焼結体1のセラミック基板10とはシリコーン接着剤などによって固定される。
【0128】
そして、静電チャック2のセラミック基板10の上に被吸着物としてウェハ50が載置される。さらに、外部電源からベース基板40の中継配線44及びセラミック基板10の配線端子32を介して静電電極30に所定の電圧が印加される。
【0129】
ウェハ50とセラミック基板10との間に発生した力によってウェハ50が静電チャック2に静電吸着される。
【0130】
そして、ベース基板40のガス供給穴42からセラミック基板10に形成された多孔質体20からなるガス導管部Gに熱伝導用ガスが供給される。熱伝導用ガスとしては、ヘリウム(He)などの不活性ガスが使用される。
【0131】
静電チャック2の裏面に接するように冷却ジャケット又はヒータなどの温度調節手段が設けられ、この温度調節手段により静電チャック2を介してウェハ50が所定の温度に調整される。
【0132】
このとき、静電チャック2とウェハ50との間に熱伝導用ガスを供給することにより、静電チャック2によって効率よくウェハ50を冷却したり、加熱された静電チャック2の熱を効率よくウェハ50に伝導することができる。」
「【図2】
[図:0001409176000009.jpg]
」
「【図6】
[図:0001409176000010.jpg]
」
(6)甲6の記載
「【0001】
本発明は、セラミックス混合物、多孔質体及びその製造方法、静電チャック及びその製造方法、基板固定装置に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラミックスの多孔質体を作製する従来の方法では、加熱前後での(焼成前後での)成形体の収縮率は考慮されていなかった。そのため、例えば、貫通孔内に多孔質体を配置する用途の場合に、多孔質体が貫通孔内から抜け落ちるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、焼成前後での収縮率を低減可能なセラミックス混合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本セラミックス混合物は、酸化物セラミックス粒子、前記酸化物セラミックス粒子の焼成温度よりも低い温度で燃焼して消失する燃焼消失粒子、及び焼成助剤が混合されたペースト状のセラミックス混合物であって、前記酸化物セラミックス粒子に対する前記燃焼消失粒子の体積割合が0%より大きく20%以下であることを要件とする。
・・・
【0010】
[基板固定装置の構造]
図1は、本実施の形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図であり、図1(a)は全体図、図1(b)は図1(a)のA部の部分拡大図である。
【0011】
図1を参照するに、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、ベースプレート10上に接着層(図示せず)等を介して設けられた静電チャック20とを有している。
【0012】
なお、図1では、ベースプレート10の上面10aと平行な平面に含まれる互いに直交する方向をX方向及びY方向、X方向及びY方向に垂直な方向(基板固定装置1の厚さ方向)をZ方向とする。又、ベースプレート10及び静電チャック20が積層される方向(Z方向)を積層方向、積層方向(Z方向)に垂直な方向を平面方向(XY方向)と称する場合がある。
・・・
【0015】
ベースプレート10には、ベースプレート10をZ方向に貫通する貫通孔14が設けられている。貫通孔14の個数は、任意に設定することができる。貫通孔14は、静電チャック20上に吸着された基板を冷却する不活性ガスを導入するガス流路の一部をなしている。貫通孔14の平面形状は例えば円形であり、貫通孔14の直径は、例えば、1mm~3mm程度とすることができる。なお、平面形状とは、ベースプレート10の上面10aの法線方向(Z方向)から視た対象物の形状を指す。
・・・
【0017】
静電チャック20は、基体21と、静電電極22と、配線23と、貫通孔24と、多孔質体25とを有している。静電チャック20は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック20は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
・・・
【0019】
静電電極22は、薄膜電極であり、基体21に内蔵されている。配線23は、上端が静電電極22と接続され、下端が基体21の下面から露出してベースプレート10内の配線13の上端と接続されている。静電電極22は、配線23及び13を介して基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、所定の電圧が印加されると、基板との間に静電気による吸着力が発生し、基体21上に基板を吸着保持することができる。吸着保持力は、静電電極22に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極22は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極22及び配線23の材料としては、例えば、タングステン、モリブデン等を用いることができる。
【0020】
貫通孔24は、基体21をZ方向に貫通し、ベースプレートの貫通孔14と連通している。貫通孔24の平面形状は例えば円形であり、貫通孔24の直径は、貫通孔14の直径と同等とすることができる。
【0021】
多孔質体25は、セラミックスを主成分とし、貫通孔24内に配置されている。多孔質体25は、複数の酸化物セラミックス粒子26と、焼成助剤27と、気孔28とを有している。
・・・
【0025】
このように、ベースプレート10の貫通孔14、及び貫通孔24内設けられた多孔質体25の気孔28により、静電チャック20上に吸着された基板を冷却する不活性ガスをベースプレート10の外部から導入するガス流路を形成することができる。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウムガス等を用いることができる。」
「【図1】
[図:0001409176000011.jpg]
」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する
ア 甲1発明において、「ESC電極24」は、「ウェハ5が、セラミックス部22の上に載置され、ESC電極24に所定の電圧が印加されて、セラミックス部22の上に静電吸着され」るから、甲1発明の「ウェハ5」、「ESC電極24」は、それぞれ、本件発明1の「吸着対象物」、「静電電極」に相当する。
また、甲1発明の「セラミックス部22」は、「ESC電極24」を「内蔵する」から、本件発明1の「静電電極が内蔵された基体」に相当する。
イ 甲1発明の「静電チャック1」は、「ウェハ5が、セラミックス部22の上に載置され」「セラミックス部22の上に静電吸着され」るものであるところ、セラミックス部22に「ウェハ5」を載置し、ウェハ5を吸着保持するものであるといえるから、本件発明1の「静電電極が内蔵された基体に吸着対象物を載置し、前記吸着対象物を吸着保持する静電チャック」に相当する。
ウ 甲1発明の「リフトピン用開口部16」は、「セラミックスチャック部20及びアルミニウムベース10の中央部に」「設けられ、リフトピン用開口部16からヘリウム(He)などの不活性ガスをセラミックスチャック部20の上側に供給し、セラミックスチャック部20とウェハとの間に不活性ガスを流すことにより、加熱された静電チャックの熱を効率よくウェハに伝導」することから、セラミックスチャック部20の上側であるウェハの面、すなわち、ウェハの裏面に不活性ガスを供給するガス孔といえ、本件発明1の「前記吸着対象物の裏面にガスを供給するガス孔」に相当する。
エ 甲1発明の「セラミックスチャック部20に内蔵されるESC電極24は、プラス(+)の電圧が印加されるESC電極24aと、マイナス(-)の電圧が印加されるESC電極24bとを有」することは、「ESC電極24」が、正極となる「ESC電極24a」と、負極となる「ESC電極24b」を含むといえるから、本件発明1の「前記静電電極は、正極及び負極を含」むことに相当する。
オ 以上によれば、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「静電電極が内蔵された基体に吸着対象物を載置し、前記吸着対象物を吸着保持する静電チャックであって、
前記吸着対象物の裏面にガスを供給するガス孔を有し、
前記静電電極は、正極及び負極を含む、
静電チャック。」
<相違点>
相違点1:本件発明1は、「平面視で、前記ガス孔の周辺において、前記正極と前記負極は第1の隙間を空けて対向配置され、前記第1の隙間は前記ガス孔で前記正極側の第1の経路と前記負極側の第2の経路に分かれ、前記第1の経路と前記第2の経路は前記ガス孔を挟んで前記ガス孔の外周に沿って延伸し、合流して1つの第2の隙間とな」るのに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているかどうか不明な点。
相違点2:本件発明1は、「平面視で、前記第1の隙間が前記第1の経路と前記第2の経路に分かれる箇所、及び前記第1の経路と前記第2の経路が合流する箇所において、前記正極及び前記負極が形成する角部は丸みを帯びており、平面視で、前記丸みを帯びた部分を除く前記第1の経路において前記ガス孔と前記正極との第1の距離は一定であり、前記丸みを帯びた部分を除く前記第2の経路において前記ガス孔と前記負極との第2の距離は一定であり、前記第1の距離と前記第2の距離が等しい」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているかどうか不明な点。
(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
(ア)引用発明の「ESC電極24」は、「プラス(+)の電圧が印加されるESC電極24aと、マイナス(-)の電圧が印加されるESC電極24bとを有し、平面視において、2つのESC電極24a,24bがくし歯状に延在して分離されて配置される」ものである。
そして、上記1(1)アの図4(c)の2つのESC電極24a、24bの間に挟まれるリフトピン用開口部16及びその周辺の拡大図は、以下のとおりである。(なお図中の「第1の隙間」、「第2の隙間」、「第1の経路」、「第2の経路」、「電極24a」、「電極24b」、「リフトピン用開口部16」の文字及び引き出し線は、合議体にて付記した。)
「拡大図
[図:0001409176000012.jpg]
」
(イ)上記拡大図から、平面視で、「リフトピン用開口部16」の周辺において、正極となる「ESC電極24a」と、負極となる「ESC電極24b」とが、「第1の隙間」を空けて対向配置されていることが見て取れる。
よって、引用発明と本件発明1とは、「平面視で、前記ガス孔の周辺において、前記正極と前記負極は第1の隙間を空けて対向配置され」る点で共通する。
(ウ)さらに、同拡大図から、「第1の隙間」は、「リフトピン用開口部16」で、正極となる「ESC電極24a」側の「第1の経路」と、負極となる「ESC電極24b」側の「第2の経路」に分岐し、「第1の経路」と「第2の経路」は「リフトピン用開口部16」を挟んで「リフトピン用開口部16」の外周に沿って延伸し、合流して「第2の隙間」となることが見て取れる。
したがって、引用発明と本件発明1とは、「前記第1の隙間は前記ガス孔で前記正極側の第1の経路と前記負極側の第2の経路に分かれ、前記第1の経路と前記第2の経路は前記ガス孔を挟んで前記ガス孔の外周に沿って延伸し、合流して1つの第2の隙間とな」る点で共通する。
(エ)よって、上記相違点1は、実質的なものではない。
イ 相違点2についての判断
甲1には、平面視で、「第1の隙間」が「第1の経路」と「第2の経路」に分かれる箇所、及び「第1の経路」と「第2の経路」が合流する箇所において、正極となる「ESC電極24a」及び負極となる「ESC電極24b」が形成する角部が丸みを帯びることは記載も示唆もされておらず、上記拡大図からも見て取ることはできず、また、このことが本件特許の出願日前における技術常識であるともいえない。
さらに、甲2~6には、静電チャックにおいて、平面視で、ガス孔周辺における、正極と負極の静電電極の角部を丸みを帯びた形状とする点、すなわち、上記相違点2のうち「平面視で、前記第1の隙間が前記第1の経路と前記第2の経路に分かれる箇所、及び前記第1の経路と前記第2の経路が合流する箇所において、前記正極及び前記負極が形成する角部は丸みを帯びて」いる構成は記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明に、甲2~6に記載された事項を適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成は得られない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、特許異議申立書の11ページ第20行~最終行において、甲1には、ESC電極24aやESC電極24bの角部に丸みを形成することについては記載されていないが、静電チャックに内蔵された静電電極において、放電の抑制等を目的としてその角部に丸みを形成することは、甲2~4に記載されているように周知技術であるから、甲1の図4(c)に示される構成に上記周知技術を適用し、第1の隙間が 第1の経路と第2の経路に分かれる箇所、及び第1の経路と第2の経路が合流する箇所において、ESC電極24a及びESC電極24bが形成するそれぞれの角部を、丸みを帯びた形状とすることは、当業者が適宜なし得たことである旨主張している。
イ しかし、上記(2)イのとおり、甲2~6には、静電チャックにおいて、平面視で、ガス孔周辺における、正極と負極の静電電極の角部を丸みを帯びた形状とする点は記載されておらず、また、この点が本件特許の出願日前における技術常識であるともいえない。
よって、申立人の前記主張は採用できない。
(4)小括
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明2~6について
本件発明2~6は、相違点2に係る本件発明1の構成を有しているから、上記(2)イで検討したのと同様の理由により、本件発明2~6は、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~6に係る発明を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~6に係る発明を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり、決定する。
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2023-701335