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特許異議申立

2023-701311

ノイズ低減回路、負荷システム、電力変換装置及び冷凍装置

審判番号
2023-701311
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-157967
登録番号
7295483
請求日
2023年12月13日
審決日
2024年03月01日
公報発行日
2024年03月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ダイキン工業株式会社
  • 【権利者代理人】古部 次郎
  • 【権利者代理人】岸 真太郎
  • 【権利者代理人】久保 洋之
  • 【異議申立人】角田 朗
審判長/審判官
  • 審判長 須田 勝巳
  • 審判官 脇岡 剛
  • 審判官 打出 義尚
分類
P1651.121-Y (H02M) / P1651.536-Y (H02M) / P1651.537-Y (H02M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7295483号発明「ノイズ低減回路、負荷システム、電力変換装置及び冷凍装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7295483号の請求項1ないし20に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1.手続の経緯 特許第7295483号の請求項1ないし20に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和4年9月30日(優先権主張 令和3年9月30日 日本国)に出願され、令和5年6月13日にその特許権の設定登録がなされ、令和5年6月21日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和5年12月13日に特許異議申立人 角田 朗(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされた。 第2.本件特許発明 特許第7295483号の請求項1ないし20に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明20」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 交流電源に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入することによって低減するノイズキャンセラと、 前記ノイズキャンセラに電力を供給する直流電源と を備え、 前記直流電源の電圧Vccは、 前記電力変換器のDCリンク電圧のピーク値の2/3未満であり、 前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路と前記電力ラインとの接続点を第1の接続点、当該経路と前記アースとの接続点を第2の接続点とし、 前記交流電源側から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記第1の接続点よりも前記交流電源側の前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流をIg(t)とし、 前記第2の接続点から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記経路に流れる前記補償電流をIo(t)とし、 前記経路のインピーダンスをZ1とし、 前記第1の接続点及び前記第2の接続点よりも前記交流電源側であって当該第1の接続点と当該第2の接続点との間のインピーダンスをZ2とし、 V(t)=2*(Z1*Io(t)-Z2*Ig(t))としたとき、 前記電圧Vccは、 前記V(t)の準尖頭値の最大値、又は、前記V(t)の実効値の√2倍以上となるように設定されている、ノイズ低減回路。 【請求項2】 前記電圧Vccは、前記V(t)の絶対値の最大値以上となるように設定されている、請求項1に記載のノイズ低減回路。 【請求項3】 前記第1の接続点よりも前記交流電源側の前記電力ラインに発生するコモンモードノイズを検出するノイズ検出手段を備え、 前記ノイズ検出手段は、前記アースに対する電圧の変動を用いてコモンモードノイズ電圧を検出する、請求項1又は請求項2に記載のノイズ低減回路。 【請求項4】 前記第1の接続点よりも前記交流電源側の前記電力ラインに発生するコモンモードノイズを検出するノイズ検出手段を備え、 前記ノイズ検出手段は、前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流Ig(t)を検出する、請求項1又は請求項2に記載のノイズ低減回路。 【請求項5】 前記電圧Vccは、250V以下である、請求項1又は請求項2に記載のノイズ低減回路。 【請求項6】 前記電圧Vccは、100V以下である、請求項1又は請求項2に記載のノイズ低減回路。 【請求項7】 前記電圧Vccは、30V以下である、請求項1又は請求項2に記載のノイズ低減回路。 【請求項8】 前記電力変換器は、前記DCリンク電圧を生成するために、前記交流電源からの交流電圧を整流する整流部を備え、 前記経路の前記第1の接続点及び前記第2の接続点の一方は、 前記整流部よりも前記交流電源側の前記電力ライン及び前記アースの一方と前記直流電源とが、カップリングコンデンサを介して接続され、 前記経路の前記第1の接続点及び前記第2の接続点の他方は、 前記電力ライン及び前記アースの他方と前記ノイズキャンセラの補償電流を出力する出力部とが、出力コンデンサを介して接続される、請求項1又は請求項2に記載のノイズ低減回路。 【請求項9】 前記V(t)は、前記Ig(t)=0とする、請求項1又は請求項2に記載のノイズ低減回路。 【請求項10】 請求項1又は請求項2に記載のノイズ低減回路が搭載された負荷システムであって、 補償後の前記コモンモードノイズ電流Ig(t)は、前記負荷システムのコモンモードノイズを測定するための擬似電源回路網が前記交流電源と前記負荷システムの間に接続された状態で、当該負荷システムの所定の負荷条件で前記電力変換器が動作する際に測定されたノイズ電流であり、 前記Z2は、前記擬似電源回路網を含むインピーダンスである、負荷システム。 【請求項11】 前記負荷システムは、冷房運転及び暖房運転の少なくとも一方の運転が可能である、室内機及び室外機を備えた空調機であり、 前記所定の負荷条件は、 前記冷房運転の場合は、前記室内機の吸い込み温度が25~35度、かつ前記室内機の設定温度が設定可能な最低温度での前記冷房運転であり、 前記暖房運転の場合は、前記室内機の吸い込み温度が10~20度、かつ前記室内機の設定温度が設定可能な最高温度での前記暖房運転である、請求項10に記載の負荷システム。 【請求項12】 交流電源に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入することによって低減するノイズキャンセラと、 前記ノイズキャンセラに電力を供給する直流電源と を備え、 前記直流電源の電圧Vccは、 前記電力変換器のDCリンク電圧のピーク値の2/3未満であり、 前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路と前記電力ラインとの接続点を第1の接続点、当該経路と前記アースとの接続点を第2の接続点とし、 前記第1の接続点から前記電力変換器側に流れる方向を正方向とした、前記第1の接続点よりも前記電力変換器側の前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流をIc’(t)とし、 前記第2の接続点から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記経路に流れる前記補償電流をIo(t)とし、 前記経路のインピーダンスをZ1とし、 前記第1の接続点及び前記第2の接続点よりも前記電力変換器側であって当該第1の接続点と当該第2の接続点との間のインピーダンスをZ3とし、 V(t)=2*(Z1*Io(t)+Z3*Ic’(t))としたとき、 前記電圧Vccは、 前記V(t)の準尖頭値の最大値、又は、前記V(t)の実効値の√2倍以上となるように設定されている、ノイズ低減回路。 【請求項13】 前記第1の接続点よりも前記電力変換器側の前記電力ラインに発生するコモンモードノイズを検出するノイズ検出手段を備え、 前記ノイズ検出手段は、前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流Ic’(t)を検出する、請求項12に記載のノイズ低減回路。 【請求項14】 交流電源に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入することによって低減するノイズキャンセラと、 前記ノイズキャンセラに電力を供給する直流電源と を備え、 前記直流電源は、前記電力変換器よりも前記交流電源側でカップリングコンデンサを介して前記電力ラインに接続されており、 前記直流電源の電圧Vccは、前記電力変換器のDCリンク電圧のピーク値の2/3未満であり、 前記電力ラインに流れる前記コモンモードノイズ電流を検出するノイズ検出手段を備え、 前記交流電源と前記電力変換器との間に、コモンモードチョークコイル又はYコンデンサで構成されるノイズフィルタを備え、 前記ノイズ検出手段及び前記カップリングコンデンサは、前記ノイズフィルタよりも前記交流電源側で前記電力ラインに接続されており、 前記ノイズ検出手段の前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスが、前記ノイズフィルタのコモンモードチョークコイルの前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスよりも低い、電力変換装置。 【請求項15】 前記ノイズ検出手段の前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスが、前記ノイズフィルタのコモンモードチョークコイルの前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスの1/10以下である、請求項14に記載の電力変換装置。 【請求項16】 前記ノイズ検出手段の前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスが、前記ノイズフィルタのコモンモードチョークコイルの前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスの1/100以下である、請求項15に記載の電力変換装置。 【請求項17】 前記直流電源の電圧は、250V以下である、請求項14に記載の電力変換装置。 【請求項18】 前記直流電源の電圧は、100V以下である、請求項14に記載の電力変換装置。 【請求項19】 前記直流電源の電圧は、30V以下である、請求項14に記載の電力変換装置。 【請求項20】 請求項1又は請求項12に記載のノイズ低減回路、又は、請求項14乃至 請求項19の何れかに記載の電力変換装置を備える、冷凍装置。」 第3.申立理由の概要及び証拠 1.申立理由の概要 申立人による申立理由の概要及び申立人が提出した証拠は以下のとおりである。(特許異議申立書第1頁ないし第10頁「(1) 申立ての理由の要約」、第79頁ないし第82頁「(5) むすび」など) (1)申立理由1-1(甲第1号証を主引例とする進歩性欠如) 本件特許発明1ないし13、20は、甲1発明、及び周知技術に基づいて容易想到である。 よって、上記特許発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)申立理由1-2(甲第3号証を主引例とする進歩性欠如) 本件特許発明1ないし13、20は、甲3発明、及び周知技術に基づいて容易想到である。 よって、上記特許発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)申立理由1-3(甲第4号証を主引例とする進歩性欠如) 本件特許発明1ないし20は、甲4発明、及び周知技術に基づいて容易想到である。 よって、上記特許発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (4)申立理由1-4(甲第12号証を主引例とする進歩性欠如) 本件特許発明14ないし20は、甲12発明1、及び周知技術に基づいて容易想到である。 よって、上記特許発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (5)申立理由2(明確性要件違反) 本件特許の請求項14-19の記載は不明確である。 よって、上記請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (6)申立理由3(実施可能要件違反) 本件特許発明14-19について、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 よって、上記特許発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 2.証拠方法 甲第1号証: 特開2002-252985号公報 甲第2号証: 電気回路(1) 甲第3号証: 特開2019-030183号公報 甲第4号証: 特開2010-057268号公報 甲第5号証: 特開2019-080469号公報 甲第6号証: 特開平9-266677号公報 甲第7号証: 特開2000-236672号公報 甲第8号証: 特開2000-201044号公報 甲第9号証: 特開2013-110836号公報 甲第10号証: 特開2016-73025号公報 甲第11号証: 家庭用電気機器、電動工具及び類似品機器からの妨害波の許容値と測定法 甲第12号証: 特表2004-534500号公報 甲第13号証: 特開2006-333647号公報 甲第14号証: 特開2017-038500号公報 甲第15号証: 特開2002-252985号公報 甲第16号証: ノーマルモードとコモンモードの伝導ノイズを低減するアクティブノイズフィルタ 甲第17号証: プログラム学習による基礎電気工学 磁気・静電気編 第4.甲号証の記載事項 以下、甲第1号証ないし甲第17号証に記載された発明を、それぞれ「甲1発明」ないし「甲17発明」という。 1.甲第1号証 (1)甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0012】 【課題を解決するための手段】上記の目的を解決するため、請求項1記載の発明は、交流電源に接続されたコンバータと、このコンバータの直流出力側に接続されたインバータと、直流中間回路に接続された直流平滑コンデンサとを有する電力変換装置を対象としており、インバータを構成する半導体スイッチング素子のオン・オフによって流れるコモンモードノイズ電流やノーマルモードノイズ電流を低減させるための装置である。すなわち、請求項1記載の発明では、前記ノイズ電流を検出するノイズ電流検出手段と、検出ノイズ電流を低減させるためのノイズ補償電流を生成して電力変換装置に供給するノイズ補償電流供給手段とを備えている。そして、前記ノイズ補償電流供給手段は、ノイズ電流検出手段の検出信号により出力電流が制御される素子であって前記直流中間回路の電圧より低い耐圧を有する電流制御素子と、直流定電圧源とを直列接続した回路を備えている。 ・・(中略)・・ 【0024】 【発明の実施の形態】以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の第1実施形態を示しており、図5と同一の構成要素には同一の符号を付してある。図1において、1は単相交流電源、2は単相ブリッジ整流回路、3はIGBT等の半導体スイッチング素子Q1~Q6及びそれらの逆並列ダイオードからなる三相インバータ回路、4はインバータ回路3の負荷としての三相誘導電動機、5は環状コア5aと一対の一次巻線5b、5cと二次巻線5dとからなる零相変流器等のノイズ電流検出器、C2、C3はフィルタコンデンサ、C0は直流平滑コンデンサである。 【0025】図1の実施形態が図5の従来技術と異なるのは、ノイズ補償電流供給回路6Aの構成である。この実施形態では、ノイズ補償電流供給回路6A内の電流制御素子としてのトランジスタTr1のコレクタとコンデンサC0の正側端子との間に、第1の直流定電圧源としてのツェナーダイオードZD1が接続され、同じく電流制御素子としてのトランジスタTr2のコレクタとコンデンサC0の負側端子との間に、第2の直流定電圧源としてのツェナーダイオードZD2がそれぞれ接続されている。これらのツェナーダイオードの向きは、ZD1のアノードがトランジスタTr1のコレクタに接続され、ZD2のカソードがトランジスタTr2のコレクタに接続される向きである。 【0026】ここで、図2は三相インバータの等価回路を示している。図示するように、インバータ回路3の各相上下アームの接続点から誘導電動機4までの各相出力線が持つ配線インダクタンスをL1~L3、抵抗をR1~R3、誘導電動機4が持つ対接地間の浮遊容量をC1~C3とする。ここで、誘導電動機4の巻線は便宜上、図示を省略してある。また、インバータの直流電圧をEd(図1におけるVdc)とし、Ed/2の電位点が接地されていると考える。 ・・(中略)・・ 【0039】つまり、三相インバータのスイッチング素子が動作するとき、交流中性点の対地間電位vCGは直流電圧Edの1/3だけ変化することになる。このため、図1に示したノイズ補償電流供給回路6AのトランジスタTr1、Tr2のコレクタ、エミッタ間の電圧も直流電圧Ed(つまりVdc)の1/3の大きさで変化する。よって、トランジスタTr1、Tr2としては、Ed/3の耐圧を持つ素子であれば良いことになる。このようにトランジスタに印加される電圧が低下したとしても、直流定電圧源であるツェナーダイオードZD1、ZD2のツェナー電圧を直流電圧Edの2/3に設定すれば、ノイズ補償電流iC1を従来と同様に流すことができる。 ・・(中略)・・ 【0041】なお、ノイズ電流を補償する基本的な動作は従来技術と同様である。すなわち、インバータ回路3のスイッチング動作によってノイズ電流iCが図1の矢印の向きに流れるとき、ノイズ電流検出器5の一次巻線5b5cには電流iC’が流れる。これらの電流iC’の差によって二次巻線5dに流れるiB1によりトランジスタTr2がオンし、結合コンデンサC1を介してノイズ補償電流iC1が流れる。その結果、ノイズ電流iCのほとんどがiC1として電流制御素子へ流れるため、iC’(=iC-iC1)が低減され、整流回路2の入力側へ流れる電流も低減されて、整流回路2の入力端子のノイズ電圧も減少する。 【0042】ここで、トランジスタTr2がオンする際には、ツェナーダイオードZD2の作用により、トランジスタTr2のコレクタ-エミッタ間の電圧は直流電圧Vdcの1/3程度となる。 ・・(中略)・・ 【0046】この実施形態では、ノイズ電流検出器5A内の一次巻線5cの極性を図1とは逆にし、一次巻線5b、5cを流れる電流の和を二次巻線5dによりノーマルモードノイズ電流として検出する。このノーマルモードノイズ電流とは、インバータ回路3のスイッチング素子Q1~Q6のオン・オフにより、交流電源1と誘導電動機4との間で電力変換装置(整流回路2、直流平滑コンデンサCO及びインバータ回路3)を介して流れるノイズ電流であり、通常の負荷電流と同一の経路をとる。」 「【図1】 [図:0001407890000001.jpg] 【図3】 [図:0001407890000002.jpg] 」 (2)甲1発明 ア.上記段落0024、0041、図1によると、甲第1号証には、コモンモードノイズ電流やノーマルモードノイズ電流であるノイズ電流iCに対して、ノイズ補償電流iC1を生成するノイズ補償電流供給回路6Aと直流電流源とを備えたノイズ低減装置が記載されているといえる。 イ.上記段落0041、図1によると、甲第1号証のノイズ補償電流回路6Aは、単相交流電源1に接続される単相ブリッジ整流回路2からインバータ回路3との間の電力ライン及びアースに接続され、上記電力ライン又はアースに対してノイズ補償電流iC1を注入することが記載されているといえる。 ウ.コモンモードノイズ電流やノーマルモードノイズ電流は、電源と負荷を接続する電力ライン又は負荷から電源を接続するアースを流れるものであることが、本願優先日前の技術常識であるところ、上記ア、イによると、ノイズ補償電流供給回路6Aは、単相交流電源1に接続される単相ブリッジ整流回路2からインバータ回路3との間の電力ライン又はアースに流れるノイズ電流iCを対象として、ノイズ補償電流iC1を当該電力ライン又はアースに注入するものと解されることからすると、甲第1号証には、「単相交流電源1に接続される単相ブリッジ整流回路2から電力ライン又はアースを通じてインバータ回路3に流れるノイズ電流iCを、ノイズ補償電流iC1を電力ライン又はアースに注入することによって低減するノイズ補償電流供給回路6A」が記載されているといえる。 エ.上記段落0025、0039、0042、図1によると、甲第1号証には、直流定電流源としてツェナーダイオードZD1、ZD2を備え、当該ツェナーダイオードZD1、ZD2を設けたことでトランジスタTr1、Tr2のコレクタ-エミッタ間の電圧は直流電圧Vdcの1/3になることが記載されているといえる。 オ.上記アないしエによると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「単相交流電源1に接続される単相ブリッジ整流回路2から電力ライン又はアースを通じてインバータ回路3に流れるノイズ電流iCを、ノイズ補償電流iC1を電力ライン又はアースに注入することによって低減するノイズ補償電流供給回路6Aと、 ノイズ補償電流供給回路6Aの直流定電圧源であるツェナーダイオードZD1、ZD2とを備え、 ツェナーダイオードZD1、ZD2を設けたことでトランジスタTr1、Tr2のコレクタ-エミッタ間の電圧は直流電圧Vdcの1/3になる 電力変換装置のノイズ低減装置。」 2.甲第2号証 (1)甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「 [図:0001407890000003.jpg] 」(47頁) (2)甲2技術 上記(1)によると、甲第2号証には、次の技術が記載されていると認められる。 「インピーダンスが直列に接続されている場合、各インピーダンスにおける電圧降下のベクトル和が回路に加わる全電圧と平衡すること。」 3.甲第3号証 (1)甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところで、特許文献1のように、高圧電源やインバータ等の高圧回路にノイズ電流検出回路やノイズキャンセル回路等を設けると、これらの回路の絶縁保護や、フェールセーフ等を実現するために、体積の増加、重量の増加、あるいはコストアップ等を招く。また、特許文献2のように、モータを支持する部材に絶縁物を適用することもコストアップを招く。また、特許文献3のようにスナバ回路を設けたとしても、ノイズを充分に抑制することは困難である。 この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、ノイズ抑制能力に優れ、小型軽量かつ安価に構成できるノイズキャンセルシステムおよび電動車両を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記課題を解決するため本発明のノイズキャンセルシステムは、ロータと、ステータコアと、前記ステータコアに巻回されたステータコイルと、を有する回転電機と、第1の直流電圧を変調し、変調波を前記ステータコイルに印加するインバータと、前記回転電機によって回転駆動される被駆動体と、前記ステータコアに接触する接触子と、前記接触子に現れる電位の交流成分を打ち消すノイズキャンセラと、を備えることを特徴とする。 ・・(中略)・・ 【0009】 [第1実施形態] 〈第1実施形態の構成〉 図1は、本発明の第1実施形態によるノイズキャンセルシステムSのブロック図である。なお、本実施形態のノイズキャンセルシステムSは、電動車両の駆動に適用されるものである。 図1において、ノイズキャンセルシステムSは、モータ20(回転電機)と、ノイズキャンセラ40と、高圧電源50(第1の電源)と、インバータ60と、低圧電源70(第2の電源)と、AMラジオ80(無線受信機)と、を有している。低圧電源70は、例えばバッテリであり、出力する直流電圧V2(第2の直流電圧)は、例えば12Vである。AMラジオ80は、低圧電源70からの電力によって作動する。図1において、ノイズキャンセルシステムSが設けられている電動車両(図示せず)のフレームの電位を接地電位とする。低圧電源70の負極は、該フレームに接続されている。 【0010】 高圧電源50は、交流電圧を出力する発電機52と、該交流電圧を整流する整流回路53と、整流回路53の出力電圧を平滑化するフィルタ回路54と、フィルタ回路54から出力された直流電圧で充電されるバッテリ56と、を有している。なお、高圧電源50が出力する直流電圧V1(第1の直流電圧)は、例えば300Vである。 ・・(中略)・・ 【0016】 ノイズキャンセルシステムSにおける漏洩電流の主な経路は、図1に示すように、浮遊容量58、浮遊容量62、支持部材38、を通る経路LPになると考えられる。この経路LPを介して高周波電流が流れると、これによってAMラジオ80の受信信号にノイズを発生させる。また、ドライブシャフト34は、ノイズ電流が流れていない状態であっても、高周波電圧が印加されている状態であれば、やはりノイズを発生させる。このノイズを「軸電圧放射ノイズ」と呼ぶ。 ・・(中略)・・ 【0022】 〈第1実施形態の動作〉 図3は、本実施形態の高周波成分における等価回路の回路図である。 図3において、モータ20は、ノイズ源20aおよび内部抵抗20bを有するものとして考えることができる。ノイズ源20aから内部抵抗20bを介して出力されたノイズ電流は、支持部材38を介して接地電位に流れる。 ところで、図1について説明したように、本実施形態によれば、ノイズキャンセラ40内の接続点41の電位を、ほぼ接地電位に等しい値に維持することができる。これは、図1に示す、ステータコア21の接続点28の電位の交流成分の振幅をほぼ「0」にすることに等しい。 【0023】 従って、図3においてノイズキャンセラ40は、ノイズ源20aが発生させる電位の交流成分に対して、同一振幅で位相が180°異なる電圧を発生させるものと考えることができる。これにより、支持部材38を流れるノイズ電流をキャンセルすることができるとともに、ミッション部32およびドライブシャフト34の電位の振幅を抑制することにより、ミッション部32およびドライブシャフト34からの軸電圧放射ノイズも抑制することができる。 ・・(中略)・・ 【0026】 図5は、本比較例の高周波成分における等価回路の回路図である。図5において、ノイズキャンセラ140以外の要素は、図3に示したものと同様である。 本比較例の構成によれば、経路LP1に沿って流れるノイズ電流はキャンセルすることが可能である。しかし、このノイズ電流の振幅が零値であったとしても、ミッション部32およびドライブシャフト34の電位の振幅は零値にはならない。従って、本比較例の構成によれば、特にドライブシャフト34からの軸電圧放射ノイズを抑制することが困難である。さらに、本比較例においては、高電圧を扱うインバータ60の入力端子にキャンセル電流を流すため、そのための配線の絶縁保護や、フェールセーフ等を実現するために、体積の増加、重量の増加、あるいはコストアップ等を招く。 【0027】 〈第1実施形態の効果〉 以上のように、本実施形態によれば、ステータコア(21)に接触する接触子(146)と、接触子(146)に現れる電位の交流成分を打ち消すノイズキャンセラ(40)と、を備えるため、ステータコア(21)に現れる電位の交流成分を打ち消すことができ、被駆動体(32,34)に現れる電位変動を抑制することができる。 ・・(中略)・・ 【0029】 さらに、本実施形態によれば、ノイズキャンセラ(40)は、第1の直流電圧(V1)よりも低い第2の直流電圧(V2)を発生する第2の電源(70)によって駆動される。これにより、配線の絶縁保護や、フェールセーフ等を実現するための部材を簡素にすることができる。これにより、ノイズキャンセラ(40)および周辺回路を小型軽量で安価に構成することができる。 ・・(中略)・・ 【0036】 (1)上記各実施形態において、直流電圧V1は300Vであり、直流電圧V2は12Vであったが、直流電圧V1、V2の値はこれに限らず、所望の電圧値を採用してもよい。但し、直流電圧V2は、60V未満であることが好ましい。これは、直流電圧V2が60V以上になると、安全対策のコストアップが大きくなるためである。」 「【図1】 [図:0001407890000004.jpg] 【図3】 [図:0001407890000005.jpg] 【図5】 [図:0001407890000006.jpg] 」 (2)甲3発明 上記(1)によると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「ノイズ源20aが発生させる電位の交流成分に対して、同一振幅で位相が180°異なる電圧を発生させて、ステータコア(21)に接触する接触子に現れる電位の交流成分を打ち消すノイズキャンセラ40(段落0009、0016、0023、0027、図1、3)を備え、 ノイズキャンセラ(40)は第1の直流電圧(V1)よりも低い第2の直流電圧(V2)を発生する第2の電源(70)によって駆動され(段落0029、図1)、 直流電圧Vlは300Vであり、直流電圧V2は12Vであるが、直流電圧V2は60V未満であることが好ましい(段落0036)、 ノイズキャンセルシステムS。」 4.甲第4号証 (1)甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0018】 図1において、三相交流電源1の交流出力は、伝導性ノイズを測定するために設けられたLISN(line impedance stabilization network;擬似電源回路網)2と、ケーブル3とを介して整流器4に入力され、この整流器4によって直流に変換される。そして、整流器4の直流出力は、平滑用コンデンサ5によって平滑された後、電圧形PWMインバータ6に入力され、このPWMインバータ6に設けられた電力用半導体素子のスイッチング動作によって三相の交流電圧に変換される。そして、このインバータ6の三相交流出力が誘導電動機7に供給される。なお、誘導電動機7のフレームは接地線を介して接地端子に接続されている。 【0019】 制御電圧源8は、コモンモードトランス9と、プッシュプル形のエミッタフォロワ回路10と、オペレーショナルアンプ11と、エミッタフォロワ回路10およびオペレーショナルアンプ11に電源を供給する正側電源12、負側電源13とを備えている。 コモンモードトランス9は、一次コイルが電源12、13の中性点とエミッタフォロワ回路10の出力との間に介装され、二次コイルがケーブル3の途中に介装されている。エミッタフォロワ回路10は、コンプリメンタリトランジスタTr1、Tr2によって構成され、その入力にオペレーショナルアンプ11の出力が接続されている。オペレーショナルアンプ11は、接地ラインが電源12、13の中性点と接続されている。 【0020】 次に、保護回路15について説明する。上記三相ケーブル3には、互いに等しい容量を有する3つの接地コンデンサ14の一端が接続されている。保護回路15は、上記各接地コンデンサ14の他端と接地点との間に介装された分圧用コンデンサ16と、この分圧用コンデンサ16に並列接続された分圧用コンデンサ17、18の直列回路と、分圧用コンデンサ17に並列接続されたツェナダイオード19、20の直列回路とを備えている。ツェナダイオード19、20は、互いの方向が逆となる形態で接続されているので、正負の過大電圧がオペレーショナルアンプ11の入力に加わるのを防止する。なお、接地コンデンサ14は、通常は設置点に直接接続されるが、本実施形態ではこの接地コンデンサ14をコモンモード電圧の検出手段として用いているので、上記するように、分圧用コンデンサ16~18を介して接地されている。 なお、この保護回路15は、接地コンデンサ14で検出されるコモンモード電圧によってオペレーショナルアンプ11、トランジスタTr1、Tr2などの能動素子が破壊されるのを防止するために設けられている。 ・・(中略)・・ 【0023】 保護回路15から出力される分圧電圧は、オペレーショナルアンプ11によって反転増幅された後、エミッタフォロワ回路10を介してコモンモードトランス9の一次巻線に入力される。オペレーショナルアンプ11には、差動増幅型のものや反転増幅型のものなどを用いることができる。コモンモードトランス9は、このときに、接地コンデンサ14で検出される電圧とは極性が逆で大きさが等しい電圧が二次巻線に誘起されるようにその巻線比が設定されている。コモンモードトランス9の二次巻線に誘起されたこの電圧は、ケーブル3におけるコモンモード電圧に重畳され、この結果、このコモンモード電圧が相殺されて、電源1側への漏れ電流が補償される。 ここで、オペレーショナルアンプ11のゲイン値を調整することにより、コモンモードトランス9の巻数比を変更することができる。 例えば、オペレーショナルアンプ11のゲイン値を1、コモンモードトランスの一次側:二次側の巻数比を1:4としていたものに対し、オペレーショナルアンプ11のゲイン値を2に変更すれば、コモンモードトランス9の一次側:二次側の巻数比を1:2とすることができる。 このように、オペレーショナルアンプ11のゲインの変更により、コモンモードトランス9の巻数比を変更することができるため、コモンモードトランス9の設計の自由度が高くなる。特に、巻数が少ないとトランスが設計しやすい。 ・・(中略)・・ 【0026】 本実施形態に係る伝導性ノイズフィルタは、コモンモード電圧をコモンモードトランスの出力で打ち消すという原理において、図11に示したノイズキャンセラ107と共通している。しかし、電源1側のケーブル3に接続された接地コンデンサ14をコモンモード電圧の検出手段として用いているので、上述したように、接地コンデンサ14(Cy)と電動機の浮遊容量Cmとの分圧作用によって打ち消すべきコモンモード電圧V1がPWMインバータ6から出力されるコモンモード電圧Vinvよりも低電圧になる。 【0027】 この結果、コモンモード電圧V1を打ち消すためのコモンモードトランス9の出力電圧V2も低電圧で良いことになり、これは、エミッタフォロワ回路10に印加する電源電圧が低くて良いこと、換言すれば、トランジスタTr1、Tr2に低耐圧のものを使用できることを意味している。低耐圧のトランジスタTr1、Tr2の使用は、コストの低減を図る上でかつ制御電圧源8等の集積化を図る上で有利となる。もちろん、打消し電圧V2が低圧で良いことは、コモンモードトランス9の小型化にも寄与する。 なお、本実施形態に係る伝導性ノイズフィルタによれば、前記従来のノイズキャンセラ回路では補償できない、デバイスの浮遷容量Cbを介して流れる漏れ電流をも検出して補償することができるため、高いノイズの低減効果が得られる。」 「【図1】 [図:0001407890000007.jpg] 」 (2)甲4発明、甲4技術 上記(1)によると、甲第4号証には、次の発明及び技術が記載されていると認められる。 ア.甲4発明 「三相交流電源1に接続される電力用半導体素子を備えたPWMインバータ6に発生するコモンモード電圧を、相殺用電圧をケーブル3に印加することによって低減する制御電圧源8(段落0018、0023、図1)と、 制御電圧源8に電力を供給する正側電源12と負側電源13(段落0019、図1)と、 コモンモード電圧の検出手段として用いられる接地コンデンサ14(段落0020)と、 を備え、 制御電圧源8は、低耐圧のトランジスタTr1、Tr2を備える(段落0026、0027)、 伝導性ノイズフィルタ。」 イ.甲4技術 「コモンモードトランス9の一次コイルが電源12、13の中性点とエミッタフォロワ回路10の出力との間に介装され、二次コイルがケーブル3の途中に介装されていること。」(段落0019、図1) 5.甲第5号証 (1)甲第5号証の記載事項 甲第5号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0010】 実施の形態1. 以下に、この発明の実施の形態1を図1から図5に基づいて説明する。図1は、実施の形態1におけるノイズ低減装置の接続例を示す接続図であり、図2は、実施の形態1におけるノイズ低減装置の構成を示す図である。ノイズ低減装置100は、図1に示すように交流電源40と三相モータ43とを接続する接続線上において、交流電源40と三相モータ43との間に接続されているもので、その入力側(以下、電源側)は交流電源40からの接続線91a~91cが接続され、出力側(以下、負荷側)は三相モータ43に延びる接続線92a~92cに接続されている。ノイズ低減装置100と三相モータ43の間には、ノイズ低減装置100からの交流電流を直流電流に変換するコンバータ41と、直流母線49P、49Nを介してコンバータ41と接続され、コンバータ41から入力された直流電流をパルス幅変調方式により交流電流に変換するインバータ42が接続されている。インバータ42の出力は、三相フィルタ45及び接続線93a~93cを通って三相モータ43に送られる。また、直流母線49P、49Nの間には、母線コンデンサ44が接続されている。なお、実施の形態1では三相交流を用いる例を説明するが、単相交流でもよい。また、ノイズ低減装置100とパッシブフィルタを直列に接続して併用してもよい。 ・・(中略)・・ 【0026】 カレントトランス1の検出巻線12A及び12Bは、主巻線11を流れるノイズ電流I1により発生する検出電圧V1及びV4をそれぞれ検出する。なお、一般に検出巻線により検出される電圧の大きさはインダクタンス及び周波数に比例するが、ここでは周波数はノイズ電流I1の周波数で共通しており、インダクタンスは検出巻線12A、12Bの巻き数に比例するため、検出電圧V1及びV4は、それぞれの検出巻線の巻き数比に比例する。上述したように、主巻線11、検出巻線12A、検出巻線12Bの巻き数比は1:2:1であるため、検出電圧V1は検出電圧V4よりも大きい。」 「【図2】 [図:0001407890000008.jpg] 」 (2)甲5技術 上記(1)によると、甲第5号証には、次の技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。 「主巻線11を流れるノイズ電流I1により発生する検出電圧Vl及びV4をそれぞれ検出するカレントトランス1の検出巻線12A及び12Bを用いたノイズ低減装置。」 6.甲第6号証 (1)甲第6号証の記載事項 甲第6号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところでインバ-タ回路5の出力電圧V0 はパルス的電圧であるので、誘導電動機6の各巻線とグランドとの間の静電容量即ちストレ-トキャパシタンスCに洩れ電流Ic がC・dv/dtで流れる。スイッチング素子Qが第三世代IGBTの場合、dv/dtは3000v/μs程度なので、静電容量を1000pFとすれば約3Aのパルス電流が流れる。このパルス電流は高周波のコモンモ-ドノイズとして交流電源1と誘導電動機6とグランドから成る回路を流れる。ラインフィルタ2はノイズ除去の作用を有するが、スイッチング素子Qのオン・オフ周波数の上昇にともないノイズ除去効果を十分に得ることができなくなる。図1の電源1は三相であるが、単相の場合においても同様にコモンモ-ドのノイズが発生する。また、三相誘導電動機6の中点が接地されている場合にも洩れ電流即ち零相電流がコモンモ-ドノイズとして流れる。上述のようなコモンモ-ドノイズは感電の発生や、地絡ブレ-カの動作の原因になる。なお、スイッチング素子を含む電力変換装置においては、電源1から負荷としての電動機6に至る回路を循還して流れるノ-マルモ-ドも問題になる。ノイズはリアクトルまたはリアクトルとコンデンサの組み合せから成るフィルタによってある程度除去することができるが、ノイズ除去効果を高めるためには大きなリアクトルを使うことが必要になり、ノイズフィルタが大型且つ高価になる。 【0004】そこで、本発明の目的は、電力変換装置のノイズ低減装置の小型化、低コスト化及び高性能化を図ることにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明は、スイッチング素子のオン・オフに基づいて電力を変換する電力変換装置におけるノイズ低減装置であって、電力ラインのノイズ電流を検出するノイズ検出手段と、前記ノイズ検出手段で検出されたノイズ電流に応答して前記ノイズ電流と逆向きのノイズ補償電流を形成し、このノイズ補償電流を前記電力変換装置のノイズ電流の流れているラインに供給するノイズ補償電流供給回路とを備えていることを特徴とするノイズ低減装置に係わるものである。なお、請求項2に示すように、コモンモ-ドノイズを低減するように構成することができる。また、請求項3に示すようにノ-マルモ-ドノイズを低減するように構成することができる。 【0006】 【発明の作用効果】各請求項の発明によれば、第1及び第2の電流制御素子の一方又は両方の働きによってノイズ成分を打ち消すための補償電流を注入することができる。即ちアクテイブフィルタ動作によってノイズを低減することができる。従って、各請求項の発明によれば、リアクトル等の受動素子に基づくフィルタに比べて、ノイズ低減装置の小型化、低コスト化及び高性能化が可能になる。また、請求項2の発明によれば、コモンモ-ドノイズの低減を容易且つ良好に達成することができる。また、請求項3の発明によれば、ノ-マルモ-ドノイズの低減を容易且つ良好に達成することができる。 ・・(中略)・・ 【0010】図2のインバ-タ装置は、ノイズ検出手段としての洩れ電流検出器8と、ノイズ補償電流供給回路9とから成るノイズ低減装置を有する。洩れ電流検出器8はフエライトから成る環状コア13と2つの1次巻線n1a、n1bと1つの2次巻線n2 とから成る零相CTであって、一対の電源ラインの電流の差から成る洩れ電流(零相電流成分)Iseを検出する。このため。2つの1次巻線n1a、n1bは交流電源1と整流回路3との間の一対の電源ラインにそれぞれ直列に接続されている。なお、コア13の断面積は50mm2であり、1次巻線n1a、n1b及び2次巻線n2のタ-ン数は10である。」 「【図2】 [図:0001407890000009.jpg] 」 (2)甲6技術 上記(1)によると、甲第6号証には、次の技術が記載されていると認められる。 ア.甲6技術1 「洩れ電流(零相電流成分)Iseを検出する洩れ電流検出器8を用いたノイズ低減装置。」 イ.甲6技術2 「従来のパッシブフィルタのリアクトルのサイズが大きいことを課題として、アクティブノイズキャンセラを使うことで小型化を実現すること。」 7.甲第7号証 (1)甲第7号証の記載事項 甲第7号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0005】この電動機の駆動系では、共通の交流電源1から三相交流電圧が複数の全波整流回路2に夫々供給される。なお、全波整流回路2から後段のインバータ装置3及び電動機4までのn個の組A1~Anは、互いに同一構成のため、組A1の回路を例に挙げて説明する。 【0006】全波整流回路2は、三相ブリッジ接続されたダイオード素子D1~D6からなり、この三相交流電圧を直流電圧に変換し、この直流電圧を正側入力ラインPと負側入力ラインNとの間からインバータ装置3に供給する。 ・・(中略)・・ 【0014】各トランジスタTr1、Tr2のうち、npn型トランジスタTr1は、コレクタが正側入力ラインPに接続され、エミッタがpnp型トランジスタTr2のエミッタ及び結合コンデンサの一端に接続されている。pnp型トランジスタのコレクタは負側入力ラインNに接続されている。結合コンデンサC1の他端はアースに接続されている。 【0015】すなわち、各トランジスタTr1、Tr2は、増幅器7から出力信号をベースに受けると、互いに逆にオン・オフ動作し、正側入力ラインP又は負側入力ラインNを結合コンデンサC1を介してアースに接続する。 ・・(中略)・・ 【0073】図3は本発明の第3の実施形態に係る電力変換システムの適用された電動機の駆動系の構成を示す回路図である。本実施形態は、図示するように、交流電源1に代えて、アースされた中性点12をもつY結線の交流電源1aと、漏洩電流検出器5と全波整流回路2との間の三相交流入力ラインに一端が個別に接続され、他端が互いに中性点Piに接続されたY結線の3つのコンデンサC2~C4とを備えている。なお、コンデンサC2~C4の中性点Piは、ノイズ低減回路のコンデンサCp、Cnの直列接続点11に接続されている。」 「【図3】 [図:0001407890000010.jpg] 」 (2)甲7技術 上記(1)によると、甲第7号証には、次の技術(以下、「甲7技術1」、「甲7技術2」、「甲7技術3」という。)が記載されていると認められる。 ア.甲7技術1 「交流電源1aからの三相交流電圧を直流電圧に変換する全波整流回路2。」(段落0005、0006、図3)。 イ.甲7技術2 「全波整流回路2よりも交流電源1a側の三相交流入力ラインとコンデンサCp、Cn(ノイズ低減回路8bの直流電源に相当)の直列接続点11とがコンデンサC2~C4を介して接続されること。」(段落0073、図3)。 ウ.甲7技術3 「アースとノイズ低減回路8bの補償電流を出力する出力部とが結合コンデンサC1を介して接続されること。」(段落0014-0015、図3)。 8.甲第8号証 (1)甲第8号証の記載事項 甲第8号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0037】実施の形態2.次に図6にて上記ローパスフィルタ13の次数がどのようにコモンモード電圧抑制に影響するかを説明する。インバータなどの装置が系統電源に向かって発生するノイズの測定、いわゆる雑音端子電圧の測定の際には、標準インピーダンスを装置と系統の間に挿入する。これはLISN(LineImpedanceStabilizationNetwork:擬似電源回路網)と呼ばれるものであり図6中21で示す。上記LISN21は接地線との間にインピーダンスZ6をもつものである。ここで説明を簡単にするためにコモンモード電圧測定器M3が上記LISN21と電圧型インバータ2の間に接続されているものとする。 【0038】図7は図6の回路のうち、コモンモード電圧補償回路を含むコモンモードの等価回路を模式的に表したものである。図7に記されたすべての記号はラプラス領域で記されている。ここで、Zcinは上記浮遊インピーダンスZ1~Z3及び上記LISN21のインピーダンスZ6の並列接続されたインピーダンスを表し、Zcoutは上記浮遊インピーダンスZ4、Z5の並列接続されたインピーダンスを表す。ローパスフィルタのラプラス変換をTLPとして表す。電圧型インバータのコモンモード電圧v0と上記測定器M3で測定されるコモンモード電圧Vcmの関係は以下のように表される。 Vcm=(-Zcin/(Zcin+Zcout))*v0*TLP(7)」 「【図6】 [図:0001407890000011.jpg] 【図7】 [図:0001407890000012.jpg] 」 (2)甲8技術 上記(1)によると、甲第8号証には、次の技術(以下、「甲8技術1」、「甲8技術2」という。)が記載されていると認められる。 ア.甲8技術1 「インバータが電源に向かって発生するノイズを測定するための擬似電源回路網21が電源と装置の間に接続されること。」(段落0037、図6) イ.甲8技術2 「コモンモード電圧補償回路を含むコモンモードの等価回路である図7において擬似電源回路網21のインピーダンスZ6が考慮されていること。」(段落0038、図6、7) 9.甲第9号証 (1)甲第9号証の記載事項 甲第9号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0015】 本実施形態における電力供給装置100は、図1に示すように、3相4線式電源(相間電圧が380V以上)である3相交流電源300に接続されて、例えば空調機などの冷凍サイクルを構成する圧縮機のモータ等の電動機200に3相交流電力を供給するものである。」 「【図1】 [図:0001407890000013.jpg] 」 (2)甲9技術 上記(1)によると、甲第9号証には、次の技術が記載されていると認められる。 「電力供給装置100が、空調機などの冷凍サイクルを構成する圧縮機のモータ等の電動機200に3相交流電力を供給すること。」(段落0015、図1) 10.甲第10号証 (1)甲第10号証の記載事項 甲第10号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0025】 上記冷媒回路(90)は、圧縮機(CM)と、四路切換弁(93)と、空冷ファン(94a)を有する空冷室内熱交換器(94)と、弁体がパルスモータによって駆動される開度可変な電動膨張弁(95)と、空冷ファン(96a)を有する空冷室外熱交換器(96)とを備え、これ等機器が冷媒配管(97)により順に閉回路に接続して冷凍サイクルを構成している。そして、暖房運転モード時には、上記四路切換弁(93)を実線の如く切り換えることにより、冷媒を実線矢印のように流して、室外熱交換器(96)で吸熱した熱量を室内熱交換器(94)で室内に放熱して暖房する一方、冷房運転モード時には、上記四路切換弁(93)を破線の如く切り換えることにより、冷媒を破線矢印のように流して、室内熱交換器(94)で室内から吸熱した熱量を室外熱交換器(96)で外気に放熱して室内を冷房する。」 「【図2】 [図:0001407890000014.jpg] 」 (2)甲10技術 上記(1)によると、甲第10号証には、次の技術が記載されていると認められる。 「室内熱交換器94、室外熱交換器96、四路切換弁93等が接続されて冷凍サイクルを構成し、冷房運転と暖房運転を切り換えること。」(段落0025、図2) 11.甲第11号証 (1)甲第11号証の記載事項 甲第11号証には、次の事項が記載されている。 「7.3.1.20.1 空気温度を圧縮機モータの運転時間を変化させて制御する機器、又は、サーモスタットによって制御される加熱装置を有する機器は7.3.4.14と同様の運転条件にしたがって測定する。 7.3.1.20.2 インバータ回路によって送風機又は圧縮機モータの回転数を変化させて能力を可変できる機器にあっては、温度調節器を、冷房運転のときは最低温度に暖房運転のときは最高温度に設定して測定する。 7.3.1.20.3 7.3.1.20.1、7.3.1.20.2の試験時の機器の周囲温度は、暖房運転時は(15±5)℃とし、冷房運転時は(30±5)℃とする。もし、この範囲の周囲温度が維持できない時は、安定して機器の運転が可能な別の温度でもよい。 周囲温度は、室内機の吸い込み温度によって規定する。」(25頁) (2)甲11技術 上記(1)によると、甲第11号証には、次の技術が記載されていると認められる。 「試験時の機器の周囲温度を暖房運転時は(15±5)℃とし、冷房運転時は(30±5)℃とすること。」(25頁) 12.甲第12号証 (1)甲第12号証の記載事項 甲第12号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0008】図5は、PWMインバーターシステムに対して考案された能動形コモンモードEMIフィルタを図示したものである。図5a及び図5bは電圧検出、電圧補償の能動形コモンモードEMIフィルタであり、図5cは電流検出、電流補償の能動形コモンモードEMIフィルタである。 ・・(中略)・・ 【0023】図9は、本発明による能動形EMIフィルタの具現例として3相交流機器用フィルタの例である。即ち、図9は三相交流機器の入力端に本発明による能動形EMIフィルタを装着した例である。図9に図示された具現例では三相電源と増幅器電源の間を高周波から短絡させるために三相の各相に連結されたカップリングキャパシタ(C0)を介して増幅器電源に連結する。インダクタLCMが機器の電源入力と機器内部の入力端整流器(またはコンバータ)の間に設けられ、機器は大地と接地されている。インダクタLCMを介して流れるコモンモード漏洩電流を検出して増幅器をしてカップリングキャパシタ(C0)、出力端キャパシタ(Cc)を介して反対方向の補償電流を発生させて機器の接地と本発明によるフィルタ回路の間にのみ漏洩電流が循環するようにし、電源からの漏洩電流の流入を抑制する。この際に、カップリングキャパシタ(C0)は機器入力端の電源端電圧と増幅器の電源電圧の間に、低い周波数では高いインピーダンスを提供して増幅器電源を入力電源と分離し、高い周波数では低いインピーダンスを提供して漏洩電流の閉回路を構成する。」 「【図5a】 [図:0001407890000015.jpg] 【図9】 [図:0001407890000016.jpg] 」 (2)甲12発明 上記(1)によると、甲第12号証には、次の発明(以下、「甲12発明1」、「甲12発明2」という。)が記載されていると認められる。 ア.甲12発明1 「インダクタLCMを介して流れるコモンモード漏洩電流を検出して、カップリングキャパシタ(C0、出力端キャパシタ(Cc)を介して反対方向の補償電流を発生させる能動型EMIフィルタと、 増幅器電源とを備え、 増幅器電源は、三相電源と三相交流機器との間の電源ラインに、カップリングキャパシタ(C0)を介して接続される、電力変換装置。」(段落0023、図9) イ.甲12発明2 「従来の能動形EMIフィルタが使用される回路として、三相交流が入力される整流器とDCリンクとスイッチング素子を有することが自明なインバータからなる交流機器を有するPWMインバータシステム。」(段落0008、図5a) 13.甲第13号証 (1)甲第13号証の記載事項 甲第13号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 上記した特許文献1のコモンモードノイズキャンセル回路装置をハイブリッド車などの車載用高電圧モータ装置に適用する場合、インバータ制御モータ駆動装置に印加する電源電圧が上述のように極めて高いため、コモンモードノイズキャンセル回路に用いるスイッチング素子の高耐圧化が必須となる。しかしながら、高耐圧(数百V以上)のトランジスタは、通常の低耐圧(例えば30V)トランジスタに比べて格段に高価である。そのうえ、高耐圧(数百V以上)のトランジスタのオン抵抗は通常の低耐圧(例えば30V)トランジスタに比べて大きい。上記インバータ制御モータ駆動装置のコモンモードノイズ電流を高速に低減するためには、コモンモードノイズキャンセル回路を構成するスイッチング素子はインバータ制御モータ駆動装置の容量を急速に充放電するために小さなオン抵抗を必要とするが、このような小さなオン抵抗をもつ高耐圧(数百V以上)のトランジスタは、極めて高価となり、許容される費用で実用に供することが困難である。更に、コモンモードノイズキャンセル回路のトランジスタの損失発熱は、トランジスタに印加する電源電圧が高いために大きくなり、このトランジスタの冷却を十分に考慮する必要も生じた。 ・・(中略)・・ 【0016】 (実施形態1) (回路構成) 第1の実施形態を図1を参照して説明する。1はハイブリッド車の走行動力発生用の三相同期モータ、2はこの三相同期モータ1に三相交流電力を給電する三相インバータ回路であり、三相同期モータ1及び三相インバータ回路2は本発明で言う車載用高電圧モータ装置を構成している。三相インバータ回路2はそれぞれ周知のように上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子とを直列接続してなる3つのハーフブリッジ3により構成されている。4は、三相インバータ回路2のスイッチングノイズ電圧を低減するための入力平滑コンデンサであって、その一対の端子は三相インバータ回路2の一対の直流電源端子に接続されている。三相同期モータ1の外殻は接地されている。 【0017】 5は車載用高電圧モータ装置に高電圧の直流電源電力を給電する直流高電圧電源であり、たとえば200V以上のバッテリ(組電池)により構成されている。なお、直流高電圧電源5はバッテリの他、燃料電池などを多段直列接続して構成しても良い。6は高周波電圧吸収用の一対の高電圧接地コンデンサであり、直流高電圧電源5の両端と接地とを個別に接続している。 【0018】 7は、この実施例の特徴をなす車載用高電圧モータ装置用コモンモードノイズキャンセル回路装置であって、コモンモードノイズ検出回路8と、コモンモードノイズキャンセル回路9とからなる。10は通常の鉛バッテリからなる車載の低電圧バッテリであり、その定格電圧は12Vである。」 「【図1】 [図:0001407890000017.jpg] 」 (2)甲13技術 上記(1)によると、甲第13号証には、次の技術が記載されていると認められる。 「低電圧バッテリ10の電圧を、直流高電圧電源5と同じ電圧が印加されていることが自明な入力平滑コンデンサ4の両端の電圧に対して12Vとすること。」(段落0005、0016-0018、図1) 14.甲第14号証 (1)甲第14号証の記載事項 甲第14号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0024】 インバータ装置100は、伝導性ノイズを抑制する抑制部10、交流電源200から供給される交流を直流に整流する整流部20を備える。また、インバータ装置100は、整流部20から出力された直流を平滑化する平滑化部30を備える。そして、インバータ装置100は、平滑化された直流を三相交流に変換して、モータ300に供給するインバータ部40を備える。 なお、図1に示すように、一部の端子は接地されている。 ・・(中略)・・ 【0044】 インダクタであるコイルL2R、L2S、L2T、L2Nは、第1のコイル部11と同様に、コモンモード電流に対して抵抗として働く。よって、コイルL2R、L2S、L2T、L2Nは、コモンモードノイズを抑制(低減)する。しかし、第1のコイル部11と同様に、第2のコイル部13でも、コモンモードノイズは除去しきれない。 また、トロイダルコアに巻き回されたコイルL2R、L2S、L2T、L2Nは、ノーマルモードノイズを互いに打ち消すように機能する。」 「【図1】 [図:0001407890000018.jpg] 」 (2)甲14技術 上記(1)によると、甲第14号証には、次の技術(以下、「甲14技術」という。)が記載されていると認められる。 「コイルL2R、L2S、L2T、L2Nを整流部20、平滑化部30、インバータ部40の直前に設けることでコモンモードノイズを低減すること。」(段落0024、0044、図1) 15.甲第15号証 (1)甲第15号証の記載事項 甲第15号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0024】 【発明の実施の形態】以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の第1実施形態を示しており、図5と同一の構成要素には同一の符号を付してある。図1において、1は単相交流電源、2は単相ブリッジ整流回路、3はIGBT等の半導体スイッチング素子Q1~Q6及びそれらの逆並列ダイオードからなる三相インバータ回路、4はインバータ回路3の負荷としての三相誘導電動機、5は環状コア5aと一対の一次巻線5b、5cと二次巻線5dとからなる零相変流器等のノイズ電流検出器、C2,C3はフィルタコンデンサ、C0は直流平滑コンデンサである。」 「【図1】 [図:0001407890000019.jpg] 」 (2)甲15技術 上記(1)によると、甲第15号証には、次の技術(以下、「甲15技術」という。)が記載されていると認められる。 「フィルタコンデンサC2,C3を単相ブリッジ整流回路2及び三相インバータ回路3の直前に設けることでコモンモードノイズを低減すること。」(段落0024、図1) 16.甲第16号証 (1)甲第16号証の記載事項 甲第16号証には、次の事項が記載されている。 「・・・EMIノイズを低減する手法としては、一般的に受動フィルタを接続することが挙げられるが、インバータシステム全体の体積及びコストのアップは避けられない。 ・・・ところで受動フィルタ以外による対策として、能動素子を適用した「アクティブコモンノイズキャンセラ(3)」や「アクティブEMIフィルタ(4)」が提案されている。 ・・・アクティブEMIフィルタはインバータの入力となる系統側のコモンモード電流を検出して該電流をゼロとするようにトランジスタが動作する。コモンモード電流検出用のトランスも比較的小さなものでよい・・・」(893頁) (2)甲16技術 上記(1)によると、甲第16号証には、次の技術が記載されていると認められる。 「受動フィルタを用いるとインバータシステムが大きくなるのに対し、アクティブEMIフィルタのコモンモード電流検出用のトランスは小さくできること。」(893頁) 17.甲第17号証 (1)甲第17号証の記載事項 甲第17号証には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001407890000020.jpg] 」(第52頁) 「 [図:0001407890000021.jpg] 」(第53頁) (2)甲17技術 上記(1)によると、甲第17号証には、次の技術が記載されていると認められる。 「インダクタンスLが、透磁率μ、巻き数Nの2乗、断面積Aに比例し、磁路長さに反比例すること。」(52、53頁)。 第5.当審の判断 1.申立理由1-1(甲第1号証を主引例とする進歩性欠如)について (1)本件特許発明1 ア.対比 (ア)甲1発明の「ノイズ電流iC」、「ノイズ補償電流iC1」、「ノイズ補償電流供給回路6A」は、それぞれ本件特許発明1の「コモンモードノイズ電流」、「補償電流」、「ノイズキャンセラ」に相当する。 (イ)交流電源と電力変換器との間の電力ラインは、「交流の電力ライン」であることが本願優先日前の技術常識であることからすると、本件特許発明1の「交流電源に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入する」ことは、「交流電源」と「交流電源に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器」との間の「交流の電力ライン」及びアースに流れるコモンノードノイズ電流に対して、補償電流を当該「交流の電力ライン」又は当該アースに注入することであると解される。 (ウ)また、整流回路とインバータ回路との間の電力ラインは、「直流の電力ライン」であることが本願優先日前の技術常識であることからすると、甲1発明の「単相交流電源1に接続される単相ブリッジ整流回路2から電力ライン及びアースを通じてインバータ回路3に流れるノイズ電流iCを、ノイズ補償電流iC1を電力ライン又はアースに注入すること」は、単相ブリッジ整流回路2からインバータ回路3への「直流の電力ライン」及びアースに流れるコモンノードノイズ電流に対して、補償電流を当該「直流の電力ライン」又は当該アースに注入することであるといえる。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)によると、本件特許発明1の「交流電源に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入することによって低減するノイズキャンセラ」を備える「ノイズ低減回路」と、甲1発明の「単相交流電源1に接続される半導体スイッチング素子Q1~Q6を備えたインバータ回路3から電力ライン及びアースを通じてインバータ回路3に流れるノイズ電流iCを、ノイズ補償電流iC1を電力ライン又はアースに注入することによって低減するノイズ補償電流供給回路6A」を備える「ノイズ低減装置」とは、「アースを通じて交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流をアースに注入することにより低減するノイズキャンセラ」を備える「ノイズ低減回路」で共通すると認められる。 (オ)以上のとおりであるから、本件特許発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、また、相違する。 【一致点】 「アースを通じて交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流をアースに注入することにより低減するノイズキャンセラを、備えるノイズ低減回路。」 【相違点】 a.相違点1-1 上記(イ)で説示したとおり、本願特許発明1の「交流電源に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入する」ことは、「交流の電力ライン」及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該「交流の電力ライン」又はアースに注入するものであるのに対して、甲1発明は、インバータ回路3に流れる「直流の電力ライン」及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該「直流の電力ライン」又はアースに注入するものである点。 b.相違点1-2 本件特許発明1は、「交流の電力ライン」に対して補償電流を発生させるための独立した「前記ノイズキャンセラに電力を供給する直流電源」を備えているのに対して、甲1発明は、直流の電力ラインに接続された「ツェナーダイオードZD1、ZD2」を備えている点。 c.相違点1-3 本件特許発明1において、直流電源の電圧Vccは、「前記電力変換器のDCリンク電圧のピーク値の2/3未満」であるのに対して、甲1発明は「トランジスタTr1、Tr2のコレクタ-エミッタ間の電圧は直流電圧Vdcの1/3」である点。 d.相違点1-4 本件特許発明1の「前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路と前記電力ラインとの接続点を第1の接続点、当該経路と前記アースとの接続点を第2の接続点」において、上記経路に接続される「電力ライン」は、「交流の電力ライン」であるのに対して、甲1発明の当該「電力ライン」は、「直流の電力ライン」である点。 e.相違点1-5 本件特許発明1において、直流電源の電圧Vccは、上記相違点1-3に加え、「前記交流電源側から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記第1の接続点よりも前記交流電源側の前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流をIg(t)とし、前記第2の接続点から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記経路に流れる前記補償電流をIo(t)とし、前記経路のインピーダンスをZ1とし、前記第1の接続点及び前記第2の接続点よりも前記交流電源側であって当該第1の接続点と当該第2の接続点との間のインピーダンスをZ2とし、V(t)=2*(Z1*Io(t)-Z2*Ig(t))としたとき」、「前記V(t)の準尖頭値の最大値、又は、前記V(t)の実効値の√2倍以上となるように設定されている」のに対して、甲1発明では、当該事項が特定されていない点。 イ.判断 まず、相違点1-1について検討する。 「交流の電力ライン」と「直流の電力ライン」とに接続される回路は、それぞれ、電力が「交流」と「直流」とに起因する特有の構成を備えるものであって、その作用効果は異なるものであることが本願優先日前の技術常識といえることからすると、本件特許発明1の「交流の電力ライン」及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該「交流の電力ライン」又はアースに注入することと、甲1発明のインバータ回路3に流れる「直流の電力ライン」及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該「直流の電力ライン」又はアースに注入することとは、作用効果が等しいものであるとはいえない。 そして、甲5技術、甲7技術2ないし3、甲12発明1、甲14技術に示されているように、「交流の電力ライン及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該交流の電力ライン又はアースに注入する」ことが、周知技術(以下、「周知技術1」という。)であるとしても、甲1発明における「ノイズ電流iC」を、「直流の電力ライン」を用いて検出・補償することに代えて上記周知技術1を適用するための技術課題が、甲第1号証ないし甲第17号証に記載あるいは示唆されているともいえないことからすると、甲1発明において、「交流の電力ライン及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該交流の電力ライン又はアースに注入する」構成とすることに係る動機付けは認められない。 よって、本件特許発明1の上記相違点1-1に係る構成は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 以上のとおりであるから、相違点1-2ないし1-5については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明2ないし11、20 本件特許発明2ないし11、20は、本件特許発明1の構成を全て含むものである。 よって、本件特許発明2ないし11、20は、本件特許発明1と同様の理由により、甲1発明、及び、甲第2号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件特許発明12 ア.対比 (ア)本件特許発明12は、本件特許発明1の「前記直流電源の電圧Vcc」について、「前記電力変換器のDCリンク電圧のピーク値の2/3未満であり、前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路と前記電力ラインとの接続点を第1の接続点、当該経路と前記アースとの接続点を第2の接続点とし、前記交流電源側から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記第1の接続点よりも前記交流電源側の前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流をIg(t)とし、前記第2の接続点から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記経路に流れる前記補償電流をIo(t)とし、前記経路のインピーダンスをZ1とし、前記第1の接続点及び前記第2の接続点よりも前記交流電源側であって当該第1の接続点と当該第2の接続点との間のインピーダンスをZ2とし、V(t)=2*(Z1*Io(t)-Z2*Ig(t))としたとき、前記電圧Vccは、前記V(t)の準尖頭値の最大値、又は、前記V(t)の実効値の√2倍以上となるように設定」することを、「前記電力変換器のDCリンク電圧のピーク値の2/3未満であり、前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路と前記電力ラインとの接続点を第1の接続点、当該経路と前記アースとの接続点を第2の接続点とし、前記第1の接続点から前記電力変換器側に流れる方向を正方向とした、前記第1の接続点よりも前記電力変換器側の前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流をIc’(t)とし、前記第2の接続点から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記経路に流れる前記補償電流をIo(t)とし、前記経路のインピーダンスをZ1とし、前記第1の接続点及び前記第2の接続点よりも前記電力変換器側であって当該第1の接続点と当該第2の接続点との間のインピーダンスをZ3とし、V(t)=2*(Z1*Io(t)+Z3*Ic’(t))としたとき、前記電圧Vccは、前記V(t)の準尖頭値の最大値、又は、前記V(t)の実効値の√2倍以上となるように設定」するものとし、本件特許発明1のその余の構成を全て備えるものである。 (イ)以上のとおりであるところ、上記(1)の検討をふまえれば、本件特許発明12と甲1発明とは、上記(1)ア.で説示した一致点で一致し、相違点1-1ないし1-4に加え、以下の相違点1-6で相違する。 a.相違点1-6 本件特許発明12において、直流電源の電圧Vccは、上記(1)の相違点1-3に加え、「前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路と前記電力ラインとの接続点を第1の接続点、当該経路と前記アースとの接続点を第2の接続点とし、前記第1の接続点から前記電力変換器側に流れる方向を正方向とした、前記第1の接続点よりも前記電力変換器側の前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流をIc’(t)とし、前記第2の接続点から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記経路に流れる前記補償電流をIo(t)とし、前記経路のインピーダンスをZ1とし、前記第1の接続点及び前記第2の接続点よりも前記電力変換器側であって当該第1の接続点と当該第2の接続点との間のインピーダンスをZ3とし、V(t)=2*(Z1*Io(t)+Z3*Ic’(t))としたとき、前記電圧Vccは、前記V(t)の準尖頭値の最大値、又は、前記V(t)の実効値の√2倍以上となるように設定」するのに対して、甲1発明では、当該事項が特定されていない点。 イ.判断 上記(1)で説示したとおりであるから、本件特許発明12の上記相違点1-1に係る構成は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、相違点1-2ないし1-4、相違点1-6については検討するまでもなく、本件特許発明12は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件特許発明13 本件特許発明13は、本件特許発明12の構成を全て含むものである。 よって、本件特許発明13は、本件特許発明12と同様の理由により、甲1発明、及び、甲第2号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書(第45頁ないし第51頁)において、本件特許発明1(及び、本件特許発明2ないし13、20)と甲1発明とについて、「交流電源(1)に接続されるスイッチング素子(Q1~Q6)を備えた電力変換器(3)から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源(1)に流れるコモンモードノイズ電流(iC)を、補償電流(iC1)を当該電力ライン又は当該アースに注入することによって低減するノイズキャンセラ(6A)」を一致点とし、本件特許発明1は、甲1発明、及び、周知技術(甲2技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。 しかし、上記(1)で説示したとおり、本件特許発明1は、「交流の電力ライン」及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該「交流の電力ライン」又はアースに注入するものであるのに対して、甲1発明は、インバータ回路3に流れる「直流の電力ライン」及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該「直流の電力ライン」又はアースに注入するものである点で相違する(相違点1-1)と認められるところ、本件特許発明1の上記相違点に係る構成は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、上記申立人の主張は認められない。 2.申立理由1-2(甲第3号証を主引例とする進歩性欠如)について (1)本件特許発明1 ア.対比 (ア)甲3発明の「ノイズキャンセラ40」は、本件特許発明1の「ノイズキャンセラ」に相当する。 (イ)交流電源と電力変換器との間の電力ラインは、「交流の電力ライン」であることが本願優先日前の技術常識であることからすると、本件特許発明1の「交流電源に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入する」ことは、「交流電源」と「交流電源に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器」との間の「交流の電力ライン」及びアースに流れるコモンノードノイズ電流に対して、補償電流を当該「交流の電力ライン」又は当該アースに注入することであると解される。 (ウ)甲3発明の「ノイズ源20aが発生させる電位の交流成分に対して、同一振幅で位相が180゜異なる電圧を発生させて、ステータコア(21)に接触する接触子に現れる電位の交流成分を打ち消すノイズキャンセラ40」は、「ステータコア(21)に接触する接触子に現れる電位の交流成分」に対して、「同一振幅で位相が180゜異なる電圧を発生」させるものであると解される。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)によると、本件特許発明1の「交流電源に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入することによって低減するノイズキャンセラ」を備える「ノイズ低減回路」と、甲3発明とは、「ノイズキャンセラ」を備える「ノイズ低減回路」で共通すると認められる。 (オ)甲3発明の「第2の直流電圧(V2)を発生する第2の電源(70)」は、本件特許発明1の「前記ノイズキャンセラに電力を供給する直流電源」に相当する。 (カ)以上のとおりであるから、本件特許発明1と甲3発明とは、次の点で一致し、また、相違する。 【一致点】 「ノイズキャンセラと、 前記ノイズキャンセラに電力を供給する直流電源とを備える、 ノイズ低減回路。」 【相違点】 a.相違点2-1 本件特許発明1のノイズキャンセラは、「交流の電力ライン」及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該「交流の電力ライン」又はアースに注入するものであるのに対して、甲3発明のノイズキャンセラ(40)は、「ステータコア(21)に接触する接触子に現れる電位の交流成分を打ち消す」ために、「同一振幅で位相が180゜異なる電圧を発生」させるものである点。 b.相違点2-2 本件特許発明1は、「前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路」を備えているのに対して、甲3発明は、当該事項が特定されていない点。 c.相違点2-3 本件特許発明1において、直流電源の電圧Vccは、「前記電力変換器のDCリンク電圧のピーク値の2/3未満」であるのに対して、甲3発明は、当該事項が特定されていない点。 d.相違点2-4 本件特許発明1において、直流電源の電圧Vccは、上記相違点2-3に加え、「前記交流電源側から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記第1の接続点よりも前記交流電源側の前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流をIg(t)とし、前記第2の接続点から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記経路に流れる前記補償電流をIo(t)とし、前記経路のインピーダンスをZ1とし、前記第1の接続点及び前記第2の接続点よりも前記交流電源側であって当該第1の接続点と当該第2の接続点との間のインピーダンスをZ2とし、V(t)=2*(Z1*Io(t)-Z2*Ig(t))としたとき」、「前記V(t)の準尖頭値の最大値、又は、前記V(t)の実効値の√2倍以上となるように設定されている」のに対して、甲3発明では、当該事項が特定されていない点。 イ.判断 まず、相違点2-1について検討する。 甲第3号証の段落0016、0022-0023によると、甲3発明は、「浮遊容量58、浮遊容量62、支持部材38、を通る経路LPの漏洩電流によるノイズ」(「コモンモードノイズ電流」)だけではなく、「軸電圧放射ノイズ」の発生を防止するために、「ステータコア(21)に接触する接触子に現れる電位の交流成分を打ち消す」ものであるところ、本願優先日前の技術常識を参酌したとしても、本件特許発明1の「交流の電力ライン」及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該「交流の電力ライン」又はアースに注入することと、甲3発明の「ステータコア(21)に接触する接触子に現れる電位の交流成分を打ち消す」ために、「同一振幅で位相が180゜異なる電圧を発生」させることとは、作用効果が等しいものであるとはいえない。 そして、甲3発明において、上記「ステータコア(21)に接触する接触子に現れる電位の交流成分を打ち消す」ことに代えて、上記周知技術1を用いるようにするための技術課題について、甲第1号証ないし甲第17号証のいずれにも記載も示唆もないことからすると、甲3発明において、「交流の電力ライン及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該交流の電力ライン又はアースに注入する」構成とすることに係る動機付けは認められない。 さらに甲第3号証の段落0005、0026によると、甲3発明は、「高圧電源やインバータ等の高圧回路にノイズ電流検出回路やノイズキャンセル回路等を設けると、これらの回路の絶縁保護や、フェールセーフ等を実現するために、体積の増加、重量の増加、あるいはコストアップ等を招く」との問題を解決することを課題とするものであると認められるところ、仮に、甲3発明において「交流の電力ライン及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該交流の電力ライン又はアースに注入する」構成とする場合、「高圧電源やインバータ等の高圧回路にノイズ電流検出回路やノイズキャンセル回路等を設ける」こととなり、体積の増加、重量の増加、あるいはコストアップを招くものとなることから、阻害要因が存在するというべきである。 よって、本件特許発明1の上記相違点2-1に係る構成は、甲3発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 以上のとおりであるから、相違点2-2ないし2-4については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明2ないし11、20 本件特許発明2ないし11、20は、本件特許発明1の構成を全て含むものである。 よって、本件特許発明2ないし11、20は、本件特許発明1と同様の理由により、甲3発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件特許発明12 ア.対比 上記1.(3)、及び上記(1)の検討をふまえれば、本件特許発明12と甲3発明とは、上記(1)ア.で説示した一致点で一致し、相違点2-1ないし2-3に加え、以下の相違点2-5で相違する。 a.相違点2-5 本件特許発明12において、直流電源の電圧Vccは、上記(1)の相違点2-3に加え、「前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路と前記電力ラインとの接続点を第1の接続点、当該経路と前記アースとの接続点を第2の接続点とし、前記第1の接続点から前記電力変換器側に流れる方向を正方向とした、前記第1の接続点よりも前記電力変換器側の前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流をIc’(t)とし、前記第2の接続点から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記経路に流れる前記補償電流をIo(t)とし、前記経路のインピーダンスをZ1とし、前記第1の接続点及び前記第2の接続点よりも前記電力変換器側であって当該第1の接続点と当該第2の接続点との間のインピーダンスをZ3とし、V(t)=2*(Z1*Io(t)+Z3*Ic’(t))としたとき、前記電圧Vccは、前記V(t)の準尖頭値の最大値、又は、前記V(t)の実効値の√2倍以上となるように設定」するのに対して、甲3発明では、当該事項が特定されていない点。 イ.判断 上記(1)で説示したとおりであるから、本件特許発明12の上記相違点2-1に係る構成は、甲3発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、相違点2-2ないし2-3、相違点2-5については検討するまでもなく、本件特許発明12は、甲3発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件特許発明13 本件特許発明13は、本件特許発明12の構成を全て含むものである。 よって、本件特許発明13は、本件特許発明12と同様の理由により、甲3発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書(第51頁ないし第53頁)において、本件特許発明1(及び、本件特許発明2ないし13、20)と甲3発明とについて、「交流電源(50)に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器(60)から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源(50)に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入することによって低減するノイズキャンセラ(40)」を一致点とし、本件特許発明1は、甲3発明、及び、周知技術(甲2技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。 しかし、上記(1)で説示したとおり、本件特許発明1は、「交流の電力ライン」及びアースに流れるコモンモードノイズ電流を対象として、補償電流を当該「交流の電力ライン」又はアースに注入するものであるのに対して、甲3発明は、「ステータコア(21)に接触する接触子に現れる電位の交流成分を打ち消す」ものである点で相違する(相違点2-1)と認められるところ、本件特許発明1の上記相違点に係る構成は、甲3発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、上記申立人の主張は認められない。 3.申立理由1-3(甲第4号証を主引例とする進歩性欠如)について (1)本件特許発明1 ア.対比 (ア)甲4発明の「制御電圧源8」は、甲第4号証の段落0023の記載によると、電源1側への漏れ電流を補償するためのものであるから、本件特許発明1の「当該交流電源に流れるコモンモードノイズ電流」を低減する「ノイズキャンセラ」に相当する。また、甲4発明の「制御電圧源8」を備える「伝導性ノイズフィルタ」は、本件特許発明1の「ノイズキャンセラ」を備える「ノイズ低減回路」に相当する。 (イ)甲4発明の「正側電源12と負側電源13」とは、制御電圧源8に直流電力を供給するものであるから、本件特許発明1の「前記ノイズキャンセラに電力を供給する直流電源」に相当する。 (ウ)本件特許発明1の「ノイズキャンセラ」は、「前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路と前記電力ラインとの接続点を第1の接続点、当該経路と前記アースとの接続点を第2の接続点とし、前記交流電源側から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記第1の接続点よりも前記交流電源側の前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流をIg(t)とし、前記第2の接続点から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記経路に流れる前記補償電流をIo(t)」とするものであることからすると、「前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路」に対して、補償電流を注入するものであると解される。 (エ)甲第4号証の段落0019、0026、0027によると、甲4発明の「制御電圧源8」は、コモンモードトランス9を用いて相殺用電圧をケーブル3に印加するものであるといえる。 (オ)以上のとおりであるから、本件特許発明1と甲4発明とは、次の点で一致し、また、相違する。 【一致点】 「交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を低減するノイズキャンセラと、 前記ノイズキャンセラに電力を供給する直流電源と、を備えたノイズ低減回路。」 【相違点】 a.相違点3-1 本件特許発明1の「ノイズキャンセラ」は、「前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路」に対して、補償電流を注入するものであるのに対して、甲4発明の「制御電圧源8」は、「コモンモード電圧を、相殺用電圧をケーブル3に印加することによって低減する」ものである点。 b.相違点3-2 本件特許発明1において、直流電源の電圧Vccは、「前記電力変換器のDCリンク電圧のピーク値の2/3未満」であるのに対して、甲4発明では、当該事項が特定されていない点。 c.相違点3-3 本件特許発明1において、直流電源の電圧Vccは、上記相違点3-2に加え、「前記交流電源側から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記第1の接続点よりも前記交流電源側の前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流をIg(t)とし、前記第2の接続点から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記経路に流れる前記補償電流をIo(t)とし、前記経路のインピーダンスをZ1とし、前記第1の接続点及び前記第2の接続点よりも前記交流電源側であって当該第1の接続点と当該第2の接続点との間のインピーダンスをZ2とし、V(t)=2*(Z1*Io(t)-Z2*Ig(t))としたとき」、「前記V(t)の準尖頭値の最大値、又は、前記V(t)の実効値の√2倍以上となるように設定されている」のに対して、甲4発明では、当該事項が特定されていない点。 イ.判断 まず、相違点3-1について検討する。 本件特許発明1の「ノイズキャンセラ」の「前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路」に対して、補償電流を注入することと、甲4発明の「制御電圧源8」の「コモンモード電圧を、相殺用電圧をケーブル3に印加することによって低減する」こととは、本願優先日前の技術常識を参酌したとしても、作用効果が等しいものであるとはいえず、また、甲4発明において、上記「コモンモード電圧を、相殺用電圧をケーブル3に印加することによって低減する」ことに代えて、上記周知技術1を用いるようにするための技術課題について、甲第1号証ないし甲第17号証のいずれにも記載も示唆もないことからすると、甲4発明の「制御電圧源8」を、「前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路」に対して、補償電流を注入するように構成することに係る動機付けがあるとはいえない。 よって、本件特許発明1の上記相違点3-1に係る構成は、甲4発明、及び、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、相違点3-2、3-3を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明、及び、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明2ないし11、20 本件特許発明2ないし11、20は、本件特許発明1の構成を全て含むものである。 よって、本件特許発明2ないし11、20は、本件特許発明1と同様の理由により、甲4発明、及び、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件特許発明12 ア.対比 上記1.(3)、及び上記(1)の検討をふまえれば、本件特許発明12と甲4発明とは、上記(1)ア.で説示した一致点で一致し、相違点3-1ないし3-2に加え、以下の相違点3-4で相違する。 a.相違点3-4 本件特許発明12において、直流電源の電圧Vccは、上記(1)の相違点3-2に加え、「前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路と前記電力ラインとの接続点を第1の接続点、当該経路と前記アースとの接続点を第2の接続点とし、前記第1の接続点から前記電力変換器側に流れる方向を正方向とした、前記第1の接続点よりも前記電力変換器側の前記電力ラインに流れる補償後の前記コモンモードノイズ電流をIc’(t)とし、前記第2の接続点から前記第1の接続点に流れる方向を正方向とした、前記経路に流れる前記補償電流をIo(t)とし、前記経路のインピーダンスをZ1とし、前記第1の接続点及び前記第2の接続点よりも前記電力変換器側であって当該第1の接続点と当該第2の接続点との間のインピーダンスをZ3とし、V(t)=2*(Z1*Io(t)+Z3*Ic’(t))としたとき、前記電圧Vccは、前記V(t)の準尖頭値の最大値、又は、前記V(t)の実効値の√2倍以上となるように設定」するのに対して、甲4発明では、当該事項が特定されていない点。 イ.判断 上記(1)で説示したとおりであるから、本件特許発明12の上記相違点3-1に係る構成は、甲4発明、及び、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、相違点3-2、3-4については検討するまでもなく、本件特許発明12は、甲4発明、及び、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件特許発明13 本件特許発明13は、本件特許発明12の構成を全て含むものである。 よって、本件特許発明13は、本件特許発明12と同様の理由により、甲4発明、及び、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件特許発明14 ア.対比 (ア)甲4発明の「制御電圧源8」は、甲第4号証の段落0023の記載によると、電源1側への漏れ電流を補償するためのものであるから、本件特許発明14の「当該交流電源に流れるコモンモードノイズ電流」を低減する「ノイズキャンセラ」に相当する。また、甲4発明の「制御電圧源8」を備える「伝導性ノイズフィルタ」は、甲第4号証の段落0018-0019、図1によると、誘導電動機のための電源変換装置に備えられるものであるといえるところ、当該「導電性ノイズフィルタ」を備える「電源変換装置」は、本件特許発明14の「ノイズキャンセラ」を備える「電力変換装置」に相当するといえる。 (イ)甲4発明の「正側電源12と負側電源13」とは、制御電圧源の直流電力を供給するものであるから、本件特許発明14の「前記ノイズキャンセラに電力を供給する直流電源」に相当する。 (ウ)本願明細書の段落0068等によると、本件特許発明14の直流電源が「前記電力変換器よりも前記交流電源側でカップリングコンデンサを介して前記電力ラインに接続される」ことは、補償電流を流す経路として用いられるものであると解される。 (エ)甲第4号証の段落0019、0026、0027によると、甲4発明の「制御電圧源8」は、コモンモードトランス9を介して相殺用電圧をケーブル3に印加するものであるといえる。 (オ)甲4発明の「コモンモード電圧の検出手段として用いられる接地コンデンサ14」は、交流電力ライン上のノイズを検出するための手段として用いられるものであるといえるところ、本件特許発明14の「前記電力ラインに流れる前記コモンモードノイズ電流を検出するノイズ検出手段」と、甲4発明の「コモンモード電圧の検出手段として用いられる接地コンデンサ14」とは、「ノイズ検出手段」で共通するといえる。 (オ)以上のとおりであるから、本件特許発明14と甲4発明とは、次の点で一致し、また、相違する。 【一致点】 「交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を低減するノイズキャンセラと、 前記ノイズキャンセラに電力を供給する直流電源と、 ノイズ検出手段と、を備えた電力変換装置。」 【相違点】 a.相違点3-5 本件特許発明14の「ノイズキャンセラ」は、直流電源が補償電流を流す経路として、「前記電力変換器よりも前記交流電源側でカップリングコンデンサを介して前記電力ラインに接続される」のに対して、甲4発明の「制御電圧源8」は、コモンモードトランス9を介して相殺用電圧をケーブル3に印加するものである点。 b.相違点3-6 本件特許発明14は、「前記直流電源の電圧Vccは、前記電力変換器のDCリンク電圧のピーク値の2/3未満」であるのに対して、甲4発明では、当該事項が特定されていない点。 c.相違点3-7 本件特許発明14の「ノイズ検出手段」は、「前記電力ラインに流れる前記コモンモードノイズ電流を検出する」ためのものであるのに対して、甲4発明の「コモンモード電圧の検出手段として用いられる接地コンデンサ14」は、「コモンモード電圧を検出する」ためのものである点。 d.相違点3-8 本件特許発明14は、「前記交流電源と前記電力変換器との間に、コモンモードチョークコイル又はYコンデンサで構成されるノイズフィルタ」を備えるのに対して、甲4発明は、当該「ノイズフィルタ」に係る構成を備えていない点。 e.相違点3-9 本件特許発明14は、「前記ノイズ検出手段及び前記カップリングコンデンサは、前記ノイズフィルタよりも前記交流電源側で前記電力ラインに接続」されているのに対して、甲4発明は、当該構成を備えていない点。 f.相違点3-10 本件特許発明14では、「前記ノイズ検出手段の前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスが、前記ノイズフィルタのコモンモードチョークコイルの前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスよりも低い」のに対して、甲4発明は、当該構成を備えていない点。 イ.判断 事案に鑑みて、まず、相違点3-8、3-9について検討する。 甲14技術、及び、甲15技術には、アクティブノイズキャンセラとノイズフィルタとを備えるノイズ低減回路が開示されていると認められる。 ここで、ノイズ低減回路は、発生するノイズに応じて、当該ノイズを低減するために最適化された構成とすることが、本願優先日前の技術常識であるところ、甲4発明の「伝導性ノイズフィルタ」の構成も、発生するノイズを低減するために最適化されたものと解するのが合理的である。 そうすると、上記発生するノイズを低減するために最適化された構成を備える甲4発明において、さらに、甲14技術又は甲15技術のノイズフィルタを設けることに動機付けがあるとはいえない。 したがって、本件特許発明14の相違点3-8に係る構成は、甲4発明、及び、甲14技術、甲15技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 加えて、仮に甲4発明に、甲14技術又は甲15技術のノイズフィルタを設ける動機付けがあるとしても、甲4発明に当該ノイズフィルタを設ける際の配置に関し、甲4発明の「前記ノイズ検出手段及び前記カップリングコンデンサは、前記ノイズフィルタよりも前記交流電源側で前記電力ラインに接続」されるようにすることは、当業者にとって容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、本件特許発明14の相違点3-9に係る構成は、甲4発明、及び、甲14技術、甲15技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 また、本件特許発明14の相違点3-8、及び、3-9に係る構成に関し、その他の甲号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとする理由は見いだせない。 以上のとおりであるから、相違点3-5ないし3-7、3-10を検討するまでもなく、本件特許発明14は、甲4発明、及び、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件特許発明15-19 本件特許発明15ないし19は、本件特許発明14の構成を全て含むものである。 よって、本件特許発明15ないし19は、本件特許発明14と同様の理由により、甲4発明、及び、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)申立人の主張について ア.本件特許発明1ないし13、20 申立人は、特許異議申立書(第53頁ないし第55頁)において、本件特許発明1(及び、本件特許発明2ないし13、20)と甲4発明とについて、「交流電源(1)に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器(6)から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源(1)に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入することによって低減するノイズキャンセラ(8)」を一致点とし、本件特許発明1は、甲4発明、及び、周知技術(甲第1号証ないし甲第3号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。 しかし、上記(1)で説示したとおり、本件特許発明1の「ノイズキャンセラ」は、「前記ノイズキャンセラを介して前記電力ラインと前記アースとを接続する経路」に対して、補償電流を注入するものであるのに対して、甲4発明の「制御電圧源8」は、「コモンモード電圧を、相殺用電圧をケーブル3に印加する」ものである点で相違する(相違点3-1)と認められるところ、本件特許発明1の上記相違点に係る構成は、甲4発明、及び、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、上記申立人の主張は認められない。 イ.本件特許発明14ないし19 申立人は、特許異議申立書(第67頁ないし第71頁)において、本件特許発明14と甲4発明とについて、「交流電源(1)に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器(6)から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源(1)に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入することによって低減するノイズキャンセラ(8)」を備え、前記直流電源(12,13)は、前記電力変換器(6)よりも前記交流電源(1)側でカップリングコンデンサ(14)を介して前記電力ラインに接続されており、前記電力ラインに流れる前記コモンモードノイズ電流を検出するノイズ検出手段を備える」ことを一致点とし、本件特許発明14は、甲4発明、及び周知技術(甲第1、3、6、14-17号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。 しかし、上記(5)で説示したとおり、本件特許発明14と甲4発明とは、相違点3-5ないし3-10で相違するものと認められるところ、本件特許発明14の相違点3-8、3-9に係る構成は、甲4発明、及び、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、上記申立人の主張は認められない。 4.申立理由1-4(甲第12号証を主引例とする進歩性欠如)について (1)本件特許発明14 ア.対比 (ア)甲12発明1の「インダクタLCMを介して流れるコモンモード漏洩電流を検出して、カップリングキャパシタ(C0)、出力端キャパシタ(Cc)を介して反対方向の補償電流を発生させる能動型EMIフィルタ」は、本願特許発明14の「交流電源に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入することによって低減するノイズキャンセラ」に相当する。 (イ)甲12発明1の「増幅器電源」は、能動型EMIフィルタに直流電力を供給するものであると認められるから、本件特許発明14の「前記ノイズキャンセラに電力を供給する直流電源」に相当する。 (ウ)甲第12号証の段落0023によると、三相交流機器内部には入力端整流器(またはコンバータ)が設けられているといえるところ、甲12発明1の「増幅器電源」が「三相電源と三相交流機器との間の電源ラインに、カップリングキャパシタ(C0)を介して接続される」ことは、上記入力端整流器よりも三相電源側であるから、本願特許発明14の「前記直流電源は、前記電力変換器よりも前記交流電源側でカップリングコンデンサを介して前記電力ラインに接続」されることに相当するといえる。 (エ)甲12発明1の「インダクタLCM」は、三相電源と三相交流機器との間の電源ラインに流れるコモンモード漏洩電流を検出するものであるといえるから、本件特許発明14の「前記電力ラインに流れる前記コモンモードノイズ電流を検出するノイズ検出手段」に相当する。 (オ)以上のとおりであるから、本件特許発明14と甲12発明1とは、次の点で一致し、また、相違する。 【一致点】 「交流電源に接続されるスイッチング素子を備えた電力変換器から電力ライン及びアースを通じて当該交流電源に流れるコモンモードノイズ電流を、補償電流を当該電力ライン又は当該アースに注入することによって低減するノイズキャンセラと、 前記ノイズキャンセラに電力を供給する直流電源と を備え、 前記直流電源は、前記電力変換器よりも前記交流電源側でカップリングコンデンサを介して前記電力ラインに接続されており、 前記電力ラインに流れる前記コモンモードノイズ電流を検出するノイズ検出手段を備えた、電力変換装置。」 【相違点】 a.相違点4-1 本件特許発明14の「前記直流電源の電圧Vccは、前記電力変換器のDCリンク電圧のピーク値の2/3未満」であるのに対して、甲12発明1では、当該事項が特定されていない点。 b.相違点4-2 本件特許発明14の「前記交流電源と前記電力変換器との間に、コモンモードチョークコイル又はYコンデンサで構成されるノイズフィルタ」を備えるのに対して、甲12発明1は、当該「ノイズフィルタ」に係る構成を備えていない点。 c.相違点4-3 本件特許発明14では、「前記ノイズ検出手段及び前記カップリングコンデンサは、前記ノイズフィルタよりも前記交流電源側で前記電力ラインに接続」されているのに対して、甲12発明1は、当該構成を備えていない点。 d.相違点4-4 本件特許発明14では、「前記ノイズ検出手段の前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスが、前記ノイズフィルタのコモンモードチョークコイルの前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスよりも低い」のに対して、甲12発明1は、当該構成を備えていない点。 イ.判断 事案に鑑みて、まず、相違点4-2、4-3について検討する。 能動型EMIフィルタは、発生するノイズに応じて、当該ノイズを低減するために最適化された構成とすることが、本願優先日前の技術常識であるところ、甲12発明1の「能動型EMIフィルタ」の構成も、発生するノイズを低減するために最適化されたものと解するのが合理的である。 そうすると、上記発生するノイズを低減するために最適化された構成を備える甲12発明1において、さらに、甲14技術又は甲15技術のノイズフィルタを設けることに動機付けがあるとはいえない。 したがって、本件特許発明14の相違点4-2に係る構成は、甲12発明1、及び、甲14技術、甲15技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 よって、本件特許発明14の相違点4-3に係る構成は、甲12発明1、及び、甲14技術、甲15技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 また、本件特許発明14の相違点4-2、及び、4-3に係る構成に関し、その他の甲号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとする理由は見いだせない。 以上のとおりであるから、相違点4-1、4-4を検討するまでもなく、本件特許発明14は、甲12発明1、及び、甲第1号証ないし甲11号証、甲第13号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明15ないし19 本件特許発明15ないし19は、本件特許発明14の構成を全て含むものである。 よって、本件特許発明15ないし19は、本件特許発明14と同様の理由により、甲12発明1、及び、甲第1号証ないし甲11号証、甲第13号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書(第71頁ないし第74頁)において、本件特許発明14は、甲12発明1、及び周知技術(甲第6、13-17号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。 しかし、上記(1)で説示したとおり、本件特許発明14と甲12発明1とは、相違点4-1ないし4-4で相違するものと認められるところ、本件特許発明14の相違点4-2、4-3に係る構成は、甲12発明1、及び、甲第1号証ないし甲11号証、甲第13号証ないし甲第17号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、上記申立人の主張は認められない。 5.申立理由2(明確性要件違反)、3(実施可能要件違反)について (1)明確性要件及び実施可能要件についての判断 本件特許発明14の「前記ノイズ検出手段の前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスが、前記ノイズフィルタのコモンモードチョークコイルの前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスよりも低い」との事項は、その文言、並びに、本願優先日前の技術常識によると、検出対象とするコモンモードノイズ電流に対応する周波数成分のインピーダンスに関し、「前記ノイズ検出手段」のインピーダンスは、「前記ノイズフィルタのコモンモードチョークコイル」のインピーダンスよりも低いことが規定されていると解されることからすると、「前記ノイズ検出手段」は「前記ノイズフィルタのコモンモードチョークコイル」よりも、全周波数帯で「インピーダンスが低い」こと、及び、検出対象とするコモンモードノイズ電流に対応する周波数帯だけが「インピーダンスが低い」ことのいずれも包含するものであるといえる。 よって、本件特許発明14は明確であるといえる。 また、ノイズ検出手段やノイズフィルタに含まれるコイルのインピーダンスを任意に設定することは、本願優先日前の技術常識であると認められることからすると、「前記ノイズ検出手段」は「前記ノイズフィルタのコモンモードチョークコイル」よりも、全周波数帯で「インピーダンスが低い」こと、及び、検出対象とするコモンモードノイズ電流に対応する周波数帯だけが「インピーダンスが低い」ことについて、本願明細書の発明の詳細な説明には、当業者が実施することができる程度に記載したものではないということはできない。 したがって、本件特許発明14について、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。 以上のとおりであるから、本件特許発明14は、明確であり、また、本件特許発明14について、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。 そして、同様の理由によって、本件特許発明14を引用する本件特許発明15ないし19も明確であり、また、本件特許発明15ないし19について、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。 (2)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書(第78頁ないし第79頁)において、本件特許発明14ないし19の「前記ノイズ検出手段の前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスが、前記ノイズフィルタのコモンモードチョークコイルの前記コモンモードノイズ電流に対するインピーダンスよりも低い」との事項は、明確ではなく、また、当該事項について、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないと主張している。 しかし、上記(1)で説示したとおりであるから、本件特許発明14ないし19は明確であり、また、本件特許発明14ないし19について、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないということはできない。 よって、上記申立人の主張は認められない。 6.まとめ 上記1ないし5のとおり、上記申立理由1-1ないし1-4、及び、上記申立理由2、3には、理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし20に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701311

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