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特許異議申立

2022-701095

電力変換器

審判番号
2022-701095
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-047169
登録番号
7068873
請求日
2022年11月10日
審決日
2023年03月03日
公報発行日
2023年03月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】東洋電機製造株式会社
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】福尾 誠
  • 【権利者代理人】鈴木 俊樹
  • 【異議申立人】角田 朗
審判長/審判官
  • 審判長 須田 勝巳
  • 審判官 山崎 慎一
  • 審判官 山澤 宏
分類
P1651.121-Y (H02M) / P1651.536-Y (H02M) / P1651.537-Y (H02M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7068873号発明「電力変換器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7068873号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7068873号の請求項1ないし2に係る特許についての出願は、平成30年3月14日に出願され、令和4年5月9日にその特許権の設定登録がされ、令和4年5月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年11月10日に特許異議申立人角田朗(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件特許発明 特許第7068873号の請求項1ないし2の特許に係る発明(以下、「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」といい、これらをまとめて「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(なお、各構成要件の前に付した、「1A」~「2B」の記号は、各構成要件を区別するために当審で付したものであり、それぞれ「構成要件1A」~「構成要件2B」などという。) 「【請求項1】 1A 単相交流電流源からの電流を入力とする単相ハーフブリッジ回路と、 1B 前記電流の極性を検出する電流検出器と、 1C 前記単相ハーフブリッジ回路が備える直列に接続された第1のコンデ ンサおよび第2のコンデンサの中間点と異なる端子間の電圧を検出す る電圧検出器と、 1D 前記単相ハーフブリッジ回路と並列に設けられた単相フルブリッジ回 路と、 1E 前記電流検出器が検出した極性、前記電圧検出器が検出した電圧、お よび、直流電圧指令値に基づいて、前記単相ハーフブリッジ回路のス イッチングを制御する整流制御器と、 1F 三相モータのトルク指令値に基づいて、前記単相フルブリッジ回路の スイッチングを制御するベクトル制御器と、を備え、 1G 前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサの中間点が、前記 単相交流電流源の一端と接続されて、 1H 前記単相フルブリッジ回路の2つの出力、および、前記第1のコンデ ンサおよび前記第2のコンデンサの中間点が、前記三相モータに接続 され、 1I 前記整流制御器は、 前記電圧検出器が検出した電圧と前記直流電圧指令値との差分を算出 して、 前記電流検出器が検出した極性と前記差分に基づく極性とに基づいて 、前記単相ハーフブリッジ回路のスイッチングを制御する、 1J 電力変換器。 【請求項2】 2A 前記単相ハーフブリッジ回路は、前記第1のコンデンサおよび前記第 2のコンデンサと並列に設けられた、直列に接続された第1のスイッ チおよび第2のスイッチを備え、 2B 前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチの中間点は、前記単相 交流電流源の他端と接続される、請求項1に記載の電力変換器。」 第3 申立理由の概要 1 異議申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性欠如)について 本件特許発明1ないし本件特許発明2は、甲第1号証(特開2017-163802号公報)に記載された発明、及び甲第2号証~甲第6号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 したがって、本件特許発明1及び本件特許発明2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号の規定により取り消されるべきものである。 2 異議申立理由2(実施可能要件違反)について 本件特許発明1ないし2に対応する発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、本件特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 3 異議申立理由3(サポート要件違反)について 本件特許発明1ないし2は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、本件特許の請求項1ないし2に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 4 異議申立理由4(明確性要件違反)について 本件特許の請求項1ないし2の記載は明確でなく、本件特許の請求項1ないし2に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 第4 文献の記載 申立人が異議申立書(以下、「申立書」という。)において、証拠として提示する、甲第1号証~甲第8号証(以下、「甲1」~「甲8」などとする場合がある。)には、以下の1~8に示す事項の記載が認められる。 1 甲第1号証(特開2017-163802号公報) (1)甲第1号証に記載された事項 甲第1号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。) ア 「【0001】 本発明は、一次共振回路を備える一次側装置との間で電力伝送を行う電力伝送装置に関する。」 イ 「【0013】 単相電圧形インバータ22は、入力部にはコンデンサ23が接続され、出力部には二次共振回路21が接続される。単相電圧形インバータ22は、それぞれダイオードが逆並列接続されたスイッチング素子Q5~Q8を備える。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6とが直列に接続されて直列体を構成し、スイッチング素子Q7とスイッチング素子Q8とが直列に接続されて直列体を構成し、この2つの直列体が、コンデンサ23と並列に接続される。また、スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6との接続点がコンデンサ212の他端に接続され、スイッチング素子Q7とスイッチング素子Q8との接続点がインダクタ211の他端に接続される。 …中略… 【0017】 三相インバータ25は、入力部にはコンデンサ23が接続され、出力部には電動機2が接続される。三相インバータ25は、力行時には、コンデンサ23から電動機2に電力を供給し、回生時には、電動機2からコンデンサ23に電力を供給する。このように、コンデンサ23と負荷である電動機2との間で、三相インバータ25を介して電力がやり取りされる。」 ウ 「【0020】 CPU203は、無線機202を介して受信したトルク指令T*に基づき、三相インバータ25を制御し、電動機2に電力を供給する。また、CPU203は、速度検出器201により検出された電動機2の角速度ωを無線機202に出力し、一次側装置100へ送信させる。」 エ 「【0037】 図1に示すワイヤレス電力伝送システム1は、一次側装置10と、負荷である電動機2に接続された二次側装置20(電力伝送装置)とを備え、一次側装置10と二次側装置20との間で無線にて電力を伝送する。ここで、図1に示すワイヤレス電力伝送システム1においては、電動機2の力行時には一次側装置10から二次側装置20に電力が伝送され、電動機2の回生時には二次側装置20から一次側装置10に電力が伝送される。 【0038】 図1に示すワイヤレス電力伝送システム1は、図6に示すワイヤレス電力伝送システムと比較して、無線機101、CPU102、速度検出器201、無線機202およびCPU203を削除した点と、電流検出器26と、指令生成器27と、インバータ制御器28と、反転回路29a、29bを追加した点とが異なる。ただし、図1においては、バッテリ11、昇降圧形DC-DCコンバータ12、コンデンサ13および単相電圧形インバータ14が一次電圧源16に相当するものとしている。 【0039】 すなわち、本実施形態に係るワイヤレス電力伝送システム1は、電動機2と、一次電圧源16と、一次共振回路15と、二次共振回路21と、単相電圧形インバータ22と、コンデンサ23と、電圧検出器24と、三相インバータ25と、電流検出器26と、指令生成器27と、インバータ制御器28と、反転回路29a、29bとを備える。一次電圧源16および一次共振回路15は一次側装置10を構成する。電動機2、二次共振回路21、単相電圧形インバータ22、コンデンサ23、電圧検出器24、三相インバータ25、電流検出器26、指令生成器27、インバータ制御器28および反転回路29a、29bは、二次側装置20を構成する。 【0040】 一次電圧源16は、交流電圧(出力電圧V1)を一次共振回路15に出力する交流電圧源である。出力電圧V1は、一次共振回路15の共振周波数と同じ周波数であり、一次共振回路15と二次共振回路21との間で伝送すべき電力を満たす電圧である。 【0041】 電流検出器26は、二次共振回路21を流れる電流I2を検出し、検出結果をインバータ制御器28に出力する。 【0042】 指令生成器27は、電圧検出器24から単相電圧形インバータ22の入力電圧E2(コンデンサ23の両端の電圧)の検出結果が入力され、入力電圧E2の検出結果に基づき、コンデンサ23の電圧(入力電圧E2)を調整するように、伝送すべき電力を指示する電力指令P*を生成し、インバータ制御器28に出力する。 【0043】 図2は、指令生成器27の構成例を示す図である。 【0044】 図2に示すように、指令生成器27は、減算器271と、PI(Proportinal Integral)制御器272とを備える。 【0045】 減算器271は、入力電圧E2の値を指示する電圧指令値E2*と電圧検出器24により検出された入力電圧E2との差分を算出し、PI制御器272に出力する。 【0046】 PI制御器272は、減算器271により算出された差分がゼロとなるような電力指令P*を生成し、インバータ制御器28に出力する。 【0047】 図1を再び参照すると、インバータ制御器28は、指令生成器27から出力された電力指令P*および電流検出器26による電流I2の検出結果に基づき、スイッチング素子Q5のゲート信号G5を生成し、スイッチング素子Q5および反転回路29aに出力する。また、インバータ制御器28は、電力指令P*および電流I2の検出結果に基づき、スイッチング素子Q7のゲート信号G7を生成し、スイッチング素子Q7および反転回路29bに出力する。」 オ 「【0054】 電力指令P*が正の場合(力行状態の場合)、インバータ制御器28は、α≧0とする。α≧0では、図3に示すように、出力電圧V2は、電流I2が正のとき、パルス幅がαTs/2で大きさがE2となり、I2が負のとき、パルス幅がαTs/2で大きさが-E2となる。すなわち、インバータ制御器28は、電力指令P*が正のとき、出力電圧V2の基本波の位相を電流I2の位相と一致させる。そして、インバータ制御器28は、αを電力指令P*の絶対値に応じた値とする。こうすることで、電力指令P*相当の電力をコンデンサ23に伝送することができる。 【0055】 電力指令P*が負の場合(回生状態の場合)、インバータ制御器28は、α≦0とする。α≦0では、図4に示すように、出力電圧V2は、電流I2が正のとき、パルス幅がαTs/2で大きさが-E2となり、I2が負のとき、パルス幅がαTs/2で大きさがE2となる。すなわち、インバータ制御器28は、電力指令P*が負のとき、出力電圧V2の基本波の位相を電流I2の位相に対して反転させる。そして、インバータ制御器28は、αを電力指令P*の絶対値に応じた値とする。こうすることで、電力指令P*相当の電力を一次電圧源16に伝送することができる。 【0056】 このように本実施形態によれば、二次側装置20は、一次共振回路15と同じ共振周波数を有し、一次共振回路15と磁気的に結合する二次共振回路21と、直流電圧源として機能するコンデンサ23と、コンデンサ23からの直流電圧を交流電圧に変換して二次共振回路21に出力する単相電圧形インバータ22と、伝送すべき電力を指示する電力指令P*を生成する指令生成器27と、単相電圧形インバータ22の出力電圧V2のパルス幅を、電力指令P*の絶対値に応じた幅とし、出力電圧V2の位相を、電力指令P*が正のときは二次共振回路21に流れる電流I2の位相と一致させ、電力指令P*が負のときは電流I2の位相に対して反転するように単相電圧形インバータ22を制御するインバータ制御器28とを備える。」 カ 「【0066】 なお、上述した第1および第2の実施形態においては、一次側装置10は電圧源(一次電圧源16)を備える例を用いて説明したが、これに限られるものではなく、一次側装置10は電流源(交流電源)を備え、この電流源からの出力により一次共振回路15を共振させるようにしてもよい。この場合、一次共振回路15および二次共振回路21をインダクタとコンデンサとが並列に接続された共振回路とすることで、第1および第2の実施形態にて説明した手法により、同様の効果を得ることができる。」 キ 「【図1】 [図:0001395256000001.jpg] 」 ク 「【図2】 [図:0001395256000002.jpg] 」 ケ 「【図3】 [図:0001395256000003.jpg] 」 コ 「【図6】 [図:0001395256000004.jpg] 」 (2)甲1発明 ア 上記(1)アの「本発明は、一次共振回路を備える一次側装置との間で電力伝送を行う電力伝送装置に関する」(【0001】)との記載より、甲1には、「一次共振回路を備える一次側装置との間で電力伝送を行う電力伝送装置」が記載されているといえる。 イ 上記(1)エの「ワイヤレス電力伝送システム1は、一次側装置10と、負荷である電動機2に接続された二次側装置20(電力伝送装置)とを備え、一次側装置10と二次側装置20との間で無線にて電力を伝送する。ここで、図1に示すワイヤレス電力伝送システム1においては、電動機2の力行時には一次側装置10から二次側装置20に電力が伝送され、電動機2の回生時には二次側装置20から一次側装置10に電力が伝送される。」(【0037】)との記載、及び、「ワイヤレス電力伝送システム1は、電動機2と、一次電圧源16と、一次共振回路15と、二次共振回路21と、単相電圧形インバータ22と、コンデンサ23と、電圧検出器24と、三相インバータ25と、電流検出器26と、指令生成器27と、インバータ制御器28と、反転回路29a、29bとを備える。一次電圧源16および一次共振回路15は一次側装置10を構成する」(【0039】)との記載から、甲1には、「ワイヤレス電力伝送システム1は、一次側装置10と、負荷である電動機2に接続された二次側装置20(電力伝送装置)とを備え、電動機2の力行時には一次側装置10から二次側装置20に電力が伝送され、電動機2と、一次電圧源16と、一次共振回路15と、二次共振回路21と、単相電圧形インバータ22と、コンデンサ23と、電圧検出器24と、三相インバータ25と、電流検出器26と、指令生成器27と、インバータ制御器28と、反転回路29a、29bとを備え、一次電圧源16および一次共振回路15は一次側装置10を構成」することが記載されているといえる。 ウ 上記(1)イの「単相電圧形インバータ22は、それぞれダイオードが逆並列接続されたスイッチング素子Q5~Q8を備える」(【0013】)との記載から、甲1には、「単相電圧形インバータ22は、それぞれダイオードが逆並列接続されたスイッチング素子Q5~Q8を備え」ることが記載されているといえる。 エ 上記(1)エの「電流検出器26は、二次共振回路21を流れる電流I2を検出し、検出結果をインバータ制御器28に出力する」(【0041】)との記載から、甲1には、「電流検出器26は、二次共振回路21を流れる電流I2を検出し、検出結果をインバータ制御器28に出力」することが記載されているといえる。 オ 上記(1)エの「指令生成器27は、電圧検出器24から単相電圧形インバータ22の入力電圧E2(コンデンサ23の両端の電圧)の検出結果が入力され、入力電圧E2の検出結果に基づき、コンデンサ23の電圧(入力電圧E2)を調整するように、伝送すべき電力を指示する電力指令P*を生成し、インバータ制御器28に出力する」(【0042】)との記載から、甲1には、「指令生成器27は、電圧検出器24から単相電圧形インバータ22のコンデンサ23の両端の電圧の検出結果が入力され、検出結果に基づき、コンデンサ23の電圧を調整するように、伝送すべき電力を指示する電力指令P*を生成し、インバータ制御器28に出力」することが記載されているといえる。 カ 上記(1)エの「指令生成器27は、減算器271と、PI(Proportinal Integral)制御器272とを備える」(【0044】)との記載から、甲1には、「指令生成器27は、減算器271と、PI制御器272とを備え」ることが記載されているといえる。 キ 上記(1)エの「減算器271は、入力電圧E2の値を指示する電圧指令値E2*と電圧検出器24により検出された入力電圧E2との差分を算出し、PI制御器272に出力する」(【0045】)との記載から、甲1には、「減算器271は、入力電圧E2の値を指示する電圧指令値E2*と電圧検出器24により検出された入力電圧E2との差分を算出し、PI制御器272に出力」することが記載されているといえる。 ク 上記(1)エの「PI制御器272は、減算器271により算出された差分がゼロとなるような電力指令P*を生成し、インバータ制御器28に出力する」(【0046】)との記載から、甲1には、「PI制御器272は、減算器271により算出された差分がゼロとなるような電力指令P*を生成し、インバータ制御器28に出力」することが記載されているといえる。 ケ 上記(1)エの「インバータ制御器28は、指令生成器27から出力された電力指令P*および電流検出器26による電流I2の検出結果に基づき、スイッチング素子Q5のゲート信号G5を生成し、スイッチング素子Q5および反転回路29aに出力する。また、インバータ制御器28は、電力指令P*および電流I2の検出結果に基づき、スイッチング素子Q7のゲート信号G7を生成し、スイッチング素子Q7および反転回路29bに出力する」(【0047】)との記載から、甲1には、「インバータ制御器28は、指令生成器27から出力された電力指令P*および電流検出器26による電流I2の検出結果に基づき、スイッチング素子Q5のゲート信号G5を生成し、スイッチング素子Q5および反転回路29aに出力するとともに、電力指令P*および電流I2の検出結果に基づき、スイッチング素子Q7のゲート信号G7を生成し、スイッチング素子Q7および反転回路29bに出力」することが記載されているといえる。 コ 上記(1)オの「電力指令P*が正の場合(力行状態の場合)、インバータ制御器28は、α≧0とする。α≧0では、図3に示すように、出力電圧V2は、電流I2が正のとき、パルス幅がαTs/2で大きさがE2となり、I2が負のとき、パルス幅がαTs/2で大きさが-E2となる。すなわち、インバータ制御器28は、電力指令P*が正のとき、出力電圧V2の基本波の位相を電流I2の位相と一致させる」(【0054】)との記載、及び上記(1)ケ(図3)から、甲1には、「電力指令P*が正の場合、出力電圧V2は、電流I2が正のとき、大きさがE2となり、電流I2が負のとき、大きさが-E2となり、インバータ制御器28は、電力指令P*が正のとき、出力電圧V2の基本波の位相を電流I2の位相と一致させ」ることが記載されているといえる。 サ 上記(1)カの「一次側装置10は電圧源(一次電圧源16)を備える例を用いて説明したが、これに限られるものではなく、一次側装置10は電流源(交流電源)を備え、この電流源からの出力により一次共振回路15を共振させるようにしてもよい」(【0066】)との記載から、甲1には、「一次側装置10は電圧源に代えて電流源を備えてもよい」ことが記載されているといえる。 シ 以上、上記ア~サより、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「一次共振回路を備える一次側装置との間で電力伝送を行う電力伝送装置であって(【0001】)、 ワイヤレス電力伝送システム1は、一次側装置10と、負荷である電動機2に接続された二次側装置20(電力伝送装置)とを備え、電動機2の力行時には一次側装置10から二次側装置20に電力が伝送され、電動機2と、一次電圧源16と、一次共振回路15と、二次共振回路21と、単相電圧形インバータ22と、コンデンサ23と、電圧検出器24と、三相インバータ25と、電流検出器26と、指令生成器27と、インバータ制御器28と、反転回路29a、29bとを備え、一次電圧源16および一次共振回路15は一次側装置10を構成し(【0037】、【0039】、【図1】)、 単相電圧形インバータ22は、それぞれダイオードが逆並列接続されたスイッチング素子Q5~Q8を備え(【0013】、【図1】)、 電流検出器26は、二次共振回路21を流れる電流I2を検出し、検出結果をインバータ制御器28に出力し(【0041】)、 指令生成器27は、電圧検出器24から単相電圧形インバータ22のコンデンサ23の両端の電圧の検出結果が入力され、検出結果に基づき、コンデンサ23の電圧を調整するように、伝送すべき電力を指示する電力指令P*を生成し、インバータ制御器28に出力し(【0042】)、 指令生成器27は、減算器271と、PI制御器272とを備え(【0044】)、 減算器271は、入力電圧E2の値を指示する電圧指令値E2*と電圧検出器24により検出された入力電圧E2との差分を算出し、PI制御器272に出力し(【0045】)、 PI制御器272は、減算器271により算出された差分がゼロとなるような電力指令P*を生成し、インバータ制御器28に出力し(【0046】)、 インバータ制御器28は、指令生成器27から出力された電力指令P*および電流検出器26による電流I2の検出結果に基づき、スイッチング素子Q5のゲート信号G5を生成し、スイッチング素子Q5および反転回路29aに出力するとともに、電力指令P*および電流I2の検出結果に基づき、スイッチング素子Q7のゲート信号G7を生成し、スイッチング素子Q7および反転回路29bに出力し(【0047】)、 電力指令P*が正の場合、出力電圧V2は、電流I2が正のとき、大きさがE2となり、電流I2が負のとき、大きさが-E2となり、インバータ制御器28は、電力指令P*が正のとき、出力電圧V2の基本波の位相を電流I2の位相と一致させ(【0054】、【図3】)、 一次側装置10は電圧源に代えて電流源を備えてもよい(【0066】) 電力伝送装置。」 2 甲第2号証(特開2009-254124号公報) (1)甲第2号証に記載された事項 甲第2号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0057】 次に、図4に制御手段10に備えた第一アーム2の変調率を決定する制御ブロックを示す。図に示すように、第一アーム2の変調率は、平滑用コンデンサ6の電圧(Vdc)の目標値(Vdc目標値)と検出値(Vdc(t))の偏差を演算し、比例積分制御器へ入力する。出力した電流指令値は、リミッタ回路を経由して瞬時目標値(位相角により決定される電流瞬時指令値)を演算する。演算した瞬時目標値と、電流検出値(電流瞬時値、Iac(t))の偏差を演算し、比例積分制御器へ入力する。前記比例積分制御器から出力した変調率は三角波と比較されてゲートドライバ回路の駆動信号となる。」 イ 「【図1】 [図:0001395256000005.jpg] 」 3 甲第3号証(特開2010-279117号公報) (1)甲第3号証に記載された事項 甲第3号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0029】 図1は実施例1の3相電力変換装置の構成図である。図1に示す3相電力変換装置は、交流入力端子101~103、入力フィルタリアクトル104、交流出力端子201~203、出力フィルタリアクトル204、出力フィルタコンデンサ205、第1交流スイッチ105、第2交流スイッチ106、PWMコンバータを構成するIGBT111、112、131、132、PWMインバータを構成するIGBT211、212、231、232、直流コンデンサ300、301、電圧均等回路を構成するIGBT311、312、リアクトル302を有し、これらで主回路を構成する。」 イ 「【0039】 電圧検出器403は、直流コンデンサ300の直流端子電圧と直流コンデンサ301の直流端子電圧とを検出して直流電圧検出信号vDをPWMコンバータ制御装置501aに出力する。電圧検出器404は、交流出力端子201~203の交流出力電圧を検出して交流出力電圧検出信号vUV、vWVをPWMインバータ制御装置502に出力する。」 ウ 「【0044】 また、交流入力が正常時には、交流スイッチSW1、SW2をオンさせ交流系統から交流電力を供給し、交流入力が異常時には、交流スイッチSW1、SW2をオフさせ交流スイッチSW3、SW4をオンさせて、第1変換アーム110と第2変換アーム130とを、直流コンデンサ300、301から陽極端子P及び中性点端子O間又は中性点端子O及び陰極端子N間又は陽極端子P及び陰極端子N間への電力変換手段として用いる。なお、第1変換アーム110と第2変換アーム130とのいずれか一方を、電力変換手段として用いても良い。」 エ 「【図1】 [図:0001395256000006.jpg] 」 オ 「【図3】 [図:0001395256000007.jpg] 」 4 甲第4号証(特開2006-296098号公報) (1)甲第4号証に記載された事項 甲第4号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0002】 図4に従来技術による装置の回路構成を示す。 図4において、1、2はフィルタコンデンサ、3、4はリアクトル、5~8は半導体スイッチング素子、9~12はダイオード、14、15は平滑コンデンサである。 フィルタコンデンサ1、リアクトル3、スイッチング素子5、6、ダイオード9、10、平滑コンデンサ15、15からなる回路はハーフブリッジ構成による整流回路としてよく知られており、スイッチング素子5、6のスイッチングにより交流を直流に変換する。また、フィルタコンデンサ2、リアクトル4、スイッチング素子7、8、ダイオード11、12、平滑コンデンサ14、15からなる回路はハーフブリッジ構成によるインバータとしてよく知られており、スイッチング素子7、8のスイッチングにより直流を交流に変換する。 この交流-交流変換装置は、下記のように用いられている。 (1)交流入力の電圧変動または周波数変動を補償し、一定電圧、一定周波数の交流電力を負荷に供給する。 (2)交流入力の停電時に、図示しない蓄電手段により直流電力を供給することにより無停電化された交流電力を負荷に供給する。」 イ 「【図1】 [図:0001395256000008.jpg] 」 ウ 「【図4】 [図:0001395256000009.jpg] 」 5 甲第5号証(特開2004-080903号公報) (1)甲第5号証に記載された事項 甲第5号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0002】 【従来の技術】 図6は従来技術を示す回路図であり、図において、101は交流電源、102は負荷、11~14は半導体スイッチング素子等からなるスイッチ、55、56はリアクトル、72、75、76はコンデンサである。 【0003】 上記従来技術の動作を説明すると、交流電源101からリアクトル55を介してスイッチ11、12に交流電力を供給し、これらのスイッチ11、12をPWM(パルス幅変調)制御して整流動作を行わせる。これによりコンデンサ75、76にエネルギーを蓄積し、コンデンサ75、76の電圧(直流中間電圧)を一定かつ平滑な直流電圧に維持する。 その後、スイッチ13、14をPWM制御してインバータとして動作させ、コンデンサ75、76の平滑された一定の直流電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に変換して負荷102に供給する。 ここで、リアクトル56及びコンデンサ72はフィルタを構成している。」 イ 「【図6】 [図:0001395256000010.jpg] 」 6 甲第6号証(特開2017-175772号公報) (1)甲第6号証に記載された事項 甲第6号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0017】 図1に示すように、インバータ10は、インバータ制御装置20により制御される。インバータ制御装置20は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されている。例えば、インバータ制御装置20は、車両ECU90等の他の制御装置等から提供される回転電機80の目標トルクTMに基づいて、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ10を介して回転電機80を制御する。回転電機80の各相のステータコイル8を流れる実電流は電流センサ12により検出され、インバータ制御装置20はその検出結果を取得する。また、回転電機80のロータの各時点での磁極位置は、例えばレゾルバなどの回転センサ13により検出され、インバータ制御装置20はその検出結果を取得する。インバータ制御装置20は、電流センサ12及び回転センサ13の検出結果を用いて、電流フィードバック制御を実行する。インバータ制御装置20は、電流フィードバック制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。」 イ 「【図1】 [図:0001395256000011.jpg] 」 7 甲第7号証(昭和電線レビューVol.62(2016)) (1)甲第7号証に記載された事項 甲第7号証には、次の事項が記載されている。 ア 「ワイヤレス電力伝送における伝送効率の低下は損失が増えるだけでなく、発熱の原因となる。そのため、そのシステム設計において伝送効率を上げることが最優先の課題となる。」(32ページ右欄17~20行) 8 甲第8号証(特開2010-280458号公報) (1)甲第8号証に記載された事項 甲第8号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0044】 図4はこの発明の実施の形態2におけるエレベータの制御装置が利用されるエレベータの速度とノーマルモード電流との関係を示す図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。 【0045】 図4には、エレベータの力行加速時の場合の各種波形が示される。具体的には、図4(1)は、R相電源側ノーマルモード電流iRの波形である。また、図4(2)は、エレベータの速度vの波形である。さらに、図4(3)は、U相モータ側ノーマルモード電流iUの波形である。ここで、図4(1)~(3)の横軸は、時間を表す。また、図4(1)、(3)の縦軸は、電流値を表す。また、図4(2)の縦軸は、エレベータの速度を表す。」 イ 「【図4】 [図:0001395256000012.jpg] 」 第5 当審の判断 1 異議申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性欠如)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)構成要件1Aについて 甲1発明の「一次側装置10を構成」する「一次電圧源16」は、単相交流電圧源であるところ、「電圧源に代えて電流源を備えてもよい」ものであるから、構成要件1Aの「単相交流電流源」に対応するものといえる。 また、甲1発明の、「単相電圧形インバータ22」は、「それぞれダイオードが逆並列接続されたスイッチング素子Q5~Q8を備え」るとともに、「電動機2の力行時に」、「一次側装置10から…電力が伝送され」る、「負荷である電動機2に接続された二次側装置20」に設けられるものであって、単相交流を直流に変換する、“単相ブリッジ回路”であるといえ、本件特許発明1と甲1発明とは、下記の点(相違点1)で相違するものの、“単相交流電流源からの電流を入力とする単相ブリッジ回路”を備える点で一致する。 (イ)構成要件1Bについて 甲1発明の「電流検出器26」は、「二次共振回路21を流れる電流I2を検出」するものであるから、構成要件1Bの「電流検出器」に対応する。 また、甲1発明の「出力電圧V2」は、「電流I2が正のとき、大きさがE2となり、電流I2が負のとき、大きさが-E2とな」るものであり、甲1発明の「出力電圧V2」の「大きさが-E2とな」るためには、「電流検出器26」は、当該「電流I2」の“極性を検出”しているといえるので、甲1発明は、構成要件1Bに相当する構成を有する。 (ウ)構成要件1Cについて 甲1発明の「コンデンサ23」は、上記(ア)の認定を踏まえると、“前記単相ブリッジ回路に接続されたコンデンサ”であるといえる。 甲1発明の「指令生成器27」は、「電圧検出器24から単相電圧形インバータ22のコンデンサ23の両端の電圧の検出結果が入力され」るものであるところ、当該「電圧検出器24」は、「単相電圧形インバータ22のコンデンサ23の両端の電圧の検出結果」を「指令生成器27」に出力するものであるから、構成要件1Cの「電圧検出器」に対応するものといえる。 したがって、以上を総合すると、甲1発明は、構成要件1Cに関し、下記の点(相違点2)で相違するものの、“前記単相ブリッジ回路に接続されたコンデンサの端子間の電圧を検出する電圧検出器”を備える点で一致する。 (エ)構成要件1Dについて 甲1発明は、構成要件1Dの「単相フルブリッジ回路」に対応する構成を有しないので、構成要件1Dを有するものとはいえない。(相違点3) (オ)構成要件1Eについて 甲1発明の「インバータ制御器28」は、「指令生成器27から出力された電力指令P*および電流検出器26による電流I2の検出結果に基づき、スイッチング素子Q5のゲート信号G5を生成し、スイッチング素子Q5および反転回路29aに出力する」ものであることから、構成要件1Eの「整流制御器」に対応するものといえる。 甲1発明の「電流検出器26」で検出される、「二次共振回路21を流れる電流I2」の極性は、上記(イ)の認定を踏まえると、構成要件1Eの「前記電流検出器が検出した極性」に対応するといえる。 また、甲1発明の「電圧検出器24」で検出される、「単相電圧形インバータ22のコンデンサ23の両端の電圧」は、上記(ウ)の認定を踏まえると、構成要件1Eの「前記電圧検出器が検出した電圧」に対応する。 以上を総合して、上記(ア)~(ウ)の認定を踏まえると、甲1発明は、構成要件1Eに関し、下記の点(相違点4)で相違するものの、“前記電流検出器が検出した極性、および前記電圧検出器が検出した電圧に基づいて、前記単相ブリッジ回路のスイッチングを制御する制御器”を備える点で一致する。 (カ)構成要件1F~1Iについて 甲1発明は、構成要件1Fの「三相モータのトルク指令値」及び「ベクトル制御器」、構成要件1Gの「前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサの中間点」、構成要件1Hの「単相フルブリッジ回路の2つの出力、および、前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサの中間点」、並びに、構成要件1Iの「整流制御器」に対応する構成を有しないので、甲1発明は、構成要件1F~1Iに対応する構成を有するものとはいえない。(相違点4) (キ)構成要件1Jについて 甲1発明の「電力伝送装置」は、“電力変換器”といえることから、甲1発明は、構成要件1Jに相当する構成を有する。 (ク)一致点及び相違点について 上記(ア)~(キ)の対比により、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 単相交流電流源からの電流を入力とする単相ブリッジ回路と、 前記電流の極性を検出する電流検出器と、 前記単相ブリッジ回路に接続されたコンデンサの端子間の電圧を検出する電圧検出器と、 前記電流検出器が検出した極性、および前記電圧検出器が検出した電圧に基づいて、前記単相ブリッジ回路のスイッチングを制御する制御器と、 を備える、電力変換器。 〈相違点1〉 本件特許発明1は、「単相ハーフブリッジ回路」を備えるのに対し、甲1発明は、「ダイオードが逆並列接続されたスイッチング素子Q5~Q8を備え」る「単相電圧形インバータ22」を備える点。 〈相違点2〉 本件特許発明1の「電圧検出器」は、「前記単相ハーフブリッジ回路が備える直列に接続された第1のコンデンサおよび第2のコンデンサの中間点と異なる端子間の電圧を検出する」ものであるのに対し、甲1発明の「電圧検出器24」は、「単相電圧形インバータ22のコンデンサ23の両端の電圧」を検出するものである点。 〈相違点3〉 本件特許発明1が、「前記単相ハーフブリッジ回路と並列に設けられた単相フルブリッジ回路」(構成要件1D)を備えるのに対し、甲1発明は、構成要件1Dに相当する構成を備えない点。 〈相違点4〉 本件特許発明1の制御器が、「前記電流検出器が検出した極性、前記電圧検出器が検出した電圧、および、直流電圧指令値に基づいて、前記単相ハーフブリッジ回路のスイッチングを制御する整流制御器」(構成要件1E)であり、「三相モータのトルク指令値に基づいて、前記単相フルブリッジ回路のスイッチングを制御するベクトル制御器」を備え(構成要件1F)、「前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサの中間点が、前記単相交流電流源の一端と接続されて」(構成要件1G)、「前記単相フルブリッジ回路の2つの出力、および、前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサの中間点が、前記三相モータに接続され」(構成要件1H)るとともに、「前記整流制御器は、前記電圧検出器が検出した電圧と前記直流電圧指令値との差分を算出して、前記電流検出器が検出した極性と前記差分に基づく極性とに基づいて、前記単相ハーフブリッジ回路のスイッチングを制御する」(構成要件1I)のに対し、甲1発明の制御器は、「指令生成器27から出力された電力指令P*および電流検出器26による電流I2の検出結果に基づき、スイッチング素子Q5のゲート信号G5を生成し、スイッチング素子Q5および反転回路29aに出力するとともに、電力指令P*および電流I2の検出結果に基づき、スイッチング素子Q7のゲート信号G7を生成し、スイッチング素子Q7および反転回路29bに出力」する「インバータ制御器28」であって、ベクトル制御器や整流制御器などを備えることが特定されていない点。 イ 判断 上記相違点1~4についてまとめて検討する。 本件特許発明は、電力変換器に関するものであって(【0001】)、従来、電動機(モータ)の駆動装置として用いられるインバータ等の電力変換器は、電圧源を入力として用いることが多く、これは、電流源電源を用いるよりも、電圧源電源を用いる方が比較的容易であるためであるところ(【0002】)、近年、磁界または電界を用いて送電側と受電側との間で電力の授受を行う無線電力伝送(ワイヤレス電力伝送)の技術が着目されていて、ワイヤレス電力伝送において、受電側は、定常状態では電流源電源を用いるものとして扱うことができ(【0003】)、ワイヤレス電力伝送は、例えば電気自動車(EV:Electric Vehicle)に適用され、ワイヤレス電力伝送を使用するEVは、ケーブルを用いずに無線で電力を得ることが可能であり、ここで、ホイール側に駆動源(電動機、モータ)を配置し、車体側からホイール側に電力を伝送して駆動源を動作させるシステム(インホイールモータシステム)があったことを背景とし(【0004】)、インホイールモータシステムにおいて、受電側の回路が配置される空間は限られているところ、従来技術では、受電側の回路は10個の半導体スイッチを含むため、電流源電源を用いると扱われる受電側の回路について、更なる小型化への要求があったことを解決しようとする課題(【0006】)とするものである。 一方、甲1発明は、「一次側装置10は電圧源に代えて電流源を備えてもよい」ものではあるものの、本件特許発明1の「単相ハーフブリッジ回路」に対応するところの、「単相電圧形インバータ22」は、「ダイオードが逆並列接続されたスイッチング素子Q5~Q8」を備え、さらに、その具体的な構成は明らかでは無いものの、「三相インバータ25」には、通常、三相各相毎に少なくとも2つのスイッチング素子が設けられるものと推定されるところ、甲1発明の半導体スイッチは、合計で10個設けられることとなり、本件特許発明の従来例に相当するものといえる。 このような甲1発明において、「単相電圧形インバータ22」を単相ハーフブリッジ回路に変更した上、単相フルブリッジ回路を接続し、これをベクトル制御器によって制御するとともに、単相フルブリッジ回路の2つの出力、および、第1のコンデンサおよび第2のコンデンサの中間点を三相モータに接続し、電圧検出器が検出した電圧と直流電圧指令値との差分を算出して、前記電流検出器が検出した極性と前記差分に基づく極性とに基づいて、単相ハーフブリッジ回路のスイッチングを制御する整流制御器を設けることは、当業者といえども、容易になし得たとまではいうことができない。 この点につき申立人は、令和4年11月10日付け申立書において、 「構成要件lA、lC、1D、lG、lHについて、直列に接続された第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを有する単相ハーフブリッジ回路を備えるのに対し、甲1発明はフルブリッジ回路である単相電圧形インバータ22によって交流を直流に変換している(段落0039及び図1)点。」(相違点1)及び、「構成要件1Fについて、三相モータのトルク指令値に基づいて、単相フルブリッジ回路のスイッチングを制御するベクトル制御を行っているのに対し、甲1発明は三相モータのトルク指令に基づいてインバータ制御を行う(段落0020及び図1、6)がベクトル制御を行うかどうか不明な点。」(相違点2)を、甲1発明との相違点として認定した上、「直列に接続された2つのコンデンサとアームを並列に接続した回路によって交流を直流に変換するハーフブリッジ回路は周知技術である」こと(甲第3号証の明細書の段落0029、0044及び図1、図3、甲第4号証の段落0002及び図1、4、甲第5号証の段落0002-0003及び図6)や「回転電機の目標トルクに基づいてインバータをベクトル制御することは周知技術である」こと(甲第6号証の段落0017及び図1)などを根拠として、本件特許発明1は甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得た旨主張するものの(申立書14ページ下から10行~16ページ上から12行)、上記に示したとおり、そもそも甲1発明及び甲第1号証には、「単相電圧形インバータ22」を単相ハーフブリッジ回路に変更する動機付けとなる記載は無く、仮に第1のコンデンサ及び第2のコンデンサを有する単相ハーフブリッジ回路自体が周知な回路であったとしても、さらに単相フルブリッジ回路との接続関係や、ベクトル制御を行うことの記載も示唆も甲第1号証にはみあたらず、上記申立人が主張する「相違点1」及び「相違点2」に係る構成は、さらに上記第4の2~6に示した甲第2号証~甲第6号証にも記載が認められないから、かかる申立人の主張は理由がない。 したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第6号証に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2は、本件特許発明1に対して、さらに構成要件2A及び2Bを追加したものである。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第6号証に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (3)小括 以上のとおり、本件特許発明1及び本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第6号証に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 2 異議申立理由2(実施可能要件違反)について (1)申立人の主張 申立人は、申立書において、異議申立理由2に関し、次のとおり主張する。 「本件特許発明1-2は「単相交流電流源」を使用している。特許権者は、令和3年9月28日に提出された意見書において、「本願の請求項1-2に係る発明は、定常状態では電流源電源を用いるものとして扱うことができるワイヤレス電力伝送の受電側に適しており、電気自動車などに好適に適用され得ます(段落0003-0004)。」と主張した。従って、トランスの2次側の巻線が電流源1を示していることになる。この場合、送電側と共振させて電力伝送するので、受電側で電流源1と直列にコンデンサを挿入して共振を発生させる等が必要となる。受電側の電流源1と直列にコンデンサが接続されなければ、共振回路として成り立たず、共振することができないため電力伝送できないことになる。しかし、本件特許の明細書にはそのような記載はなく、どのように共振させているのか不明確である。 また、ワイヤレス電力伝送の場合、出力電力確保と共に伝送効率低下を抑制する必要がある。数百W以上の電力伝送を行う際、伝送効率の低下は損失が増えるだけでなく、発熱の原因ともなることから、通常高周波(60kHz程度~MHz帯域)で電力伝送を行うことが技術常識として知られている(甲7号証の32頁、図3~図4)。しかし、本件特許の明細書の段落0017にはIGBTを使用することが記載されている。IGBTは発熱の問題があるので、一般的には通常20kHz程度までの使用範囲となり、ワイヤレス電力伝送のような高周波領域では使用できない。高周波から20kHzに対応する交流電源にどのように周波数変換し、またどこまで周波数を落とすのかの仕組みや方法等が記載されておらず、どのようにしてワイヤレス電力伝送の回路にIGBTを適用するのか不明確である。 また、一般的にモータドライプの場合は起動から一定負荷ということはなく、回転数などの運転条件に応じて負荷は変動する。定常状態の一定負荷であれば電流源から装置回路に流れる電流が一定となるが、負荷が変動すると当該電流も変動することになる。電流源から装置回路に流れる電流は一定となるため、負荷が変動する際には電流源を適用できない。本件特許の明細書には電流源の記載しかなく、負荷が変動しても電流源から装置回路に流れる電流は一定になるので、どのように起動するのかの記載もなく、負荷変動の際にどのような動作となるのか不明確である。 なお、通常、モータ停止時はトルク0のためR相電源電流(本件特許の「単相交流電流源からの電流」に相当)もU相モータ電流も0となる(甲8号証の段落0044-0045及び図4)。即ち、モータ始動前は電流0となっており、モータ始動に伴って電流が流れることになる。このようにモータ始動時に駆動回路内の電流が変動することは当業者に周知である。上述の通り、本件特許は電流源を備えているが、電流源は定電流の供給になるため、モータ停止時にどのように電流を消費するのか、また始動時の電流変動に対して、どのようにして電流源を適用するのか技術的に理解することができず、どのように実施するのか不明確である。一般的に定電流源を用いてモータ駆動する場合、負荷変動が起こると電流が変化するのに対して、定電流源からは定電流が流れるため、駆動回路は異常停止することになり、実施できない。 上記ではモータ始動時について記載しているが、モータ始動時に限らず、負荷変動がある場合にも同様である。特にモータ始動時(停止⇒始動)、停止時(運転⇒停止)に関しては、技術常識を鑑みて必ず負荷変動が起こることになるので、当業者が負荷変動を伴うモータドライブの場合に電流源を適用することは考えられない。従って、本件特許のように電流源を用いた回路を構成することは、出願時の技術常識を考慮しても当業者にとって実施可能ではない。 よって、本件特許発明1-2は当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されてはいない。」(申立書17ページ6行~18ページ7行) (2)当審の判断 ア 共振回路について 申立人は、本件明細書に受電側の共振回路として、コンデンサが挿入されておらず、どのようにして共振させるのか、実施可能に記載されていない旨を主張しているが、本件特許発明は、共振回路を発明の構成要件として備えることを特定するものではないから、特許請求の範囲に記載された事項に基づかないものであり、かかる主張は理由が無い。 イ IGBTを用いることについて 申立人は、IGBTは通常、20kHz程度までの使用範囲であるから、どのようにしてワイヤレス電力伝送の回路にIGBTを適用するのか、本件明細書に実施可能に記載されていない旨を主張しているが、本件特許発明は、IGBTを発明の構成要件として備えることを特定するものではないから、特許請求の範囲に記載された事項に基づかないものであり、かかる主張は理由が無い。 ウ 電流源を用いることについて 申立人は、概略、電流源から装置回路に流れる電流は一定となるため、負荷が変動するモータを制御する場合に、どのような制御を行うのか、本件明細書に実施可能に記載されていない旨を主張しているが、本件特許発明は、「単相交流電流源」については特定されているものの、当該「単相交流電流源」が一定の交流電流を出力する定電流源であることを特定するものではないから、特許請求の範囲に記載された事項に基づかないものであり、かかる主張は理由が無い。 (3)むすび 以上検討したとおり、申立人が主張する異議申立理由2については、いずれも理由が無く、請求項1及び2に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 3 異議申立理由3(サポート要件違反)について (1)申立人の主張 申立人は、申立書において、異議申立理由3に関し、次のとおり主張する。 「本件特許発明1-2は「単相交流電流源」を使用している。一方、負荷である三相モータは、通常負荷変動するものである。上記の実施可能要件違反の説明でも記載の通り、電流源の場合、入力電流は一定となるため、モータ停止時や負荷変動の際には使用できなくなる。即ち、電流源を使用する場合は定常負荷に限定されることになるが、本件特許発明1-2にはそのような記載は無い。従って、本件特許発明1-2では、定常負荷以外の負荷変動時も含まれると解釈されるが、請求項1-2及び発明の詳細な説明を参照しても、そのような記載は無い。電流源を用いて三相モータの負荷変動の際にどのように動作させるのかは本件特許の発明の詳細な説明に記載されておらず、当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できるものではない。よって、本件特許発明1-2は発明の詳細な説明に記載されたものではない」(申立書18ページ9~19行) (2)当審の判断 上記2(2)ウでも指摘したとおり、本件特許発明は、「単相交流電流源」については特定されているものの、当該「単相交流電流源」が一定の交流電流を出力する定電流源であることは特定されていないから、負荷である三相モータが負荷変動した場合に電流源を用いて本件特許の回路をどのように動作させているのか不明であるとはいえない。 また、本件明細書の段落【0022】~【0023】には、次の記載が認められる。 「【0022】 ベクトル制御器10は、三相モータ12のトルク指令値11に基づいて、単相フルブリッジ回路9のスイッチングを制御する。ここで、トルク指令値11は、例えば電力変換器30を含むシステム全体の制御装置によって生成されてもよい。 【0023】 ここで、図1に示すように、単相フルブリッジ回路9の2つの出力(交流信号)、および、第1のコンデンサ3および第2のコンデンサ4の中間点が、三相モータ12に接続される。第1のコンデンサ3および第2のコンデンサ4の中間点には、単相交流電流源1からの交流信号が入力される。つまり、単相交流電流源1からの交流信号が三相モータ12へ供給される一つの信号となる。また、単相フルブリッジ回路9の2つの出力は、ベクトル制御器10によって、単相交流電流源1からの交流信号と適切な位相差を有するように調整される。ここで、単相交流電流源1からの交流信号の周波数は例えば数十[kHz](一例として85[kHz])である。ベクトル制御器10は、例えばキャリア周波数を数[kHz]とする公知の制御を実行してもよい。」 上記記載事項より、電流源を用いて三相モータの負荷変動の際にどのように動作させるのかについては、本件明細書に記載があるものといえる。 そして、本件明細書の段落【0041】には、「図4に示すように、比較例の電力変換器30Aは、10個のスイッチ(コンバータ18が4つおよび三相インバータ19が6つ)を含む。これに対し、図1に示すように、本実施形態に係る電力変換器30は、6個のスイッチで構成される。よって、必要なスイッチの数が減少することによって、本実施形態の電力変換器30は回路が小型化している。」と記載されているように、本件特許発明が課題(上記第5の1(1)イ参照)とするところの、インホイールモータシステムの電力変換器を小型化する点についても、本件特許発明1及び2は、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できるものと認識できる範囲のものであるといえる。 (3)小括 以上のとおり、本件特許発明1及び本件特許発明2は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できるものと認識できる範囲のものといえるから、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 4 異議申立理由4(明確性要件違反)について (1)申立人の主張 申立人は、申立書において、異議申立理由4に関し、次のとおり主張する。 「本件特許発明1-2は「単相交流電流源」を使用している。一方、負荷である三相モータは、通常負荷変動するものである。上記の実施可能要件違反の説明でも記載の通り、電流源の場合、入力電流は一定となるため、モータ停止時や負荷変動の際には使用できなくなる。即ち、電流源を使用する場合は定常負荷に限定されることになるが、本件特許発明1-2にはそのような記載は無い。従って、本件特許発明1-2では、定常負荷以外の負荷変動時も含まれると解釈されるが、請求項1-2及び発明の詳細な説明を参照しても、そのような記載は無い。出願時の技術常識を勘案しても、負荷変動の場合に電流源を用いて本件特許の回路をどのように動作させているのか、当業者が理解することができず、その動作原理は不明確である。よって、本件特許発明1-2の記載は不明確である。」(申立書18ページ21~30行) (2)当審の判断 上記2(2)ウでも指摘したとおり、本件特許発明は、「単相交流電流源」については特定されているものの、当該「単相交流電流源」が一定の交流電流を出力する定電流源であることは特定されていないから、負荷である三相モータが負荷変動した場合に電流源を用いて本件特許の回路をどのように動作させているのか不明であるとはいえず、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項は不明確とはいえないので、かかる主張は理由が無い。 (3)むすび 以上検討したとおり、申立人が主張する異議申立理由4については理由が無く、請求項1及び2に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701095

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