特許異議申立
2025-700007
ミリ波反射建装材
- 審判番号
- 2025-700007
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-173327
- 登録番号
- 7505533
- 請求日
- 2024年12月23日
- 審決日
- 2025年02月25日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】鈴木 史朗
- 【権利者代理人】清水 雄一郎
- 【権利者代理人】大槻 真紀子
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 寺谷 大亮
- 審判官 丸山 高政
- 分類
- P1651.537-Y (H01Q) / P1651.536-Y (H01Q) / P1651.113-Y (H01Q) / P1651.121-Y (H01Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7505533号発明「ミリ波反射建装材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7505533号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7505533号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和4年10月28日(優先権主張 令和4年2月24日)の出願であって、令和6年6月17日にその特許権の設定登録がされ、同年6月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その全請求項(請求項1~5)に係る特許に対し、令和6年12月23日に特許異議申立人 藤江 桂子(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
前記特許異議の申立てのために提出された特許異議申立書を、以下では単に「申立書」という。
第2 本件発明
本件の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、その請求項に記載されたとおりのものと認める。
以下に本件特許請求の範囲の請求項1~5を示す。なお、後の参照の便宜のために、本件発明1については、以下に示すようにA~Hに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A 面状の誘電体と、
B 前記誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属パターンを有するスーパーセルと、
C 前記誘電体において、前記第一面と反対側の第二面上に設けられた金属層と、
D 前記スーパーセルを覆うように配置され、表面における純水接触角が90°以上である防汚層と、
E 前記誘電体と前記防汚層との間、および前記スーパーセルと前記防汚層との間に位置する接着層と、
を備え、
F 前記防汚層および前記接着層のトータルの誘電率εrが2.9以下であり、
G 平面視において、前記防汚層により前記スーパーセルが視認できなくなっている、
H ミリ波反射建装材。
【請求項2】
前記防汚層がフッ素系材料またはシリコーン系材料を含有する、
請求項1に記載のミリ波反射建装材。
【請求項3】
前記防汚層は、
表面における純水接触角が90°未満の基材と、
前記基材上に設けられ、表面における純水接触角が90°以上の表層と、を有する、
請求項1に記載のミリ波反射建装材。
【請求項4】
前記基材が多孔質構造を有する、
請求項3に記載のミリ波反射建装材。
【請求項5】
前記防汚層の表面ヘイズが70%以上である、
請求項1に記載のミリ波反射建装材。
第3 証拠方法及び申立理由
申立人は、申立書とともに以下の1に示す甲第1号証の1~甲第11号証(以下、それぞれ「甲1の1」~「甲11」という。)を提出し、以下の2に示す申立理由により、本件発明に係る特許を取消すべきものである旨主張する。
1 証拠方法
甲1の1 国際公開第2021/156099号
甲1の2 特表2023-512699号公報
甲2 特開2008-67069号公報
甲3 特開平10-36707号公報
甲4 特開2008-41687号公報
甲5 実用新案登録第3152883号公報
甲6 特開平10-163720号公報
甲7 特開2022-25624号公報
甲8 特開平7-183842号公報
甲9 「比誘電率表」と題されたWebページ(URL https://www.yei-jp.com/tech-infor/dielectric/dielectric02.html)
甲10 「EVONIK」と題されたWebページ(URL https://performance-foams.evonik.com/en/products-and-solutions/rohacell)
甲11 特開平11-251784号公報
2 申立理由
申立書に記載された申立ての理由は、(i)特許法29条1項3号、(ii)同条2項並びに(iii)同法36条6項1号、2号及び4項1号である(申立書1頁)が、(ii)については、主たる証拠が甲1の1のものと、甲4のものに大別でき、(iii)については、同法36条6項1号のものと、同項2号のものと、同条4項1号のものに大別できる。
そうすると、本件の申立理由は、概略、以下の理由1~3Cのとおりである。(申立書39~40頁)
理由1 本件発明1及び2は、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当する甲4に記載された発明と同一であるから、本件発明1及び2についての特許は、同項の規定に違反してされたものである。(同法113条1項2号)
理由2A 本件発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条1項2号)
理由2B 本件発明は、甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条1項2号)
理由3A 本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件発明についての特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条1項4号)
理由3B 本件発明は明確ではないから、本件発明についての特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条1項4号)
理由3C 本件の発明の詳細な説明は、本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、本件発明についての特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条1項4号)
第4 申立理由についての判断
以下では、まず、本件発明が明確であるか(理由3B)を判断し、次いで、本件発明が発明の詳細な説明に記載したものであるか(理由3A)を判断し、次いで、本件の発明の詳細な説明が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているか(理由3C)を判断し、次いで、本件発明1及び2が甲4に記載された発明(以下「甲4発明」という。)と同一であるか(理由1)及び本件発明が甲4発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるか(理由2B)を判断し、最後に、本件発明が甲1の1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)に基づいて容易に発明をすることができたものであるか(理由2A)を判断する。
1 理由3Bについての判断
発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そして、請求項1~5の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
これについて、申立人は、以下の主張3B1~3B5を主張する。
〈主張3B1〉
本件発明1は、「ミリ波」と特定しているが、その定義が不明確である。
一般に、「ミリ波」は30~300GHzを意味すると考えられるが、他方で、10GHzにおける誘電率を特定しており、本件発明1における「ミリ波」とはどの周波数を意味するのか不明確であり、また、10GHzにおける誘電率とどのような関係にあるのか不明確である。
本件発明2~5についても同様である。
〈主張3B2〉
本件発明1は、「トータルの誘電率」と特定しているが、その定義及び測定方法が不明確である。
技術常識からみて、複数層からなる誘電体の誘電率は、相互の影響を受ける可能性があるが、本件発明1における「トータルの誘電率」とは、各層毎の誘電率から計算されたものなのか、複数層の誘電率を測定装置により測定したものなのか、凹凸のある接着層の誘電率をどのように求めたのか不明瞭であり、そのため、発明の範囲が不明確である。
本件発明2~5についても同様である。
〈主張3B3〉
本件発明1は、「平面視において、前記防汚層により前記スーパーセルが視認できなくなっている、」と特定しているが、「視認できなくなっている」とはその程度が不明瞭である。
本件発明2~5についても同様である。
〈主張3B4〉
本件発明1は「ミリ波反射建装材」と特定しているが、「建装材」とは何を意味するのか不明である。
本件発明2~5についても同様である。
〈主張3B5〉
本件発明5は、「表面ヘイズ」と特定しているが、その測定方法が不明確である。
一般的に、ヘイズの測定方法に対応する規格として、例えばJIS K 7136が用いられているが、「表面ヘイズ」のみを切り分けて測定する手法については定型方法がなく、どのように測定した数値なのかが不明確であり、そのため、発明の範囲が不明確である。
(1)主張3B1について
主張3B1については、以下のとおりである。
ア 発明の詳細な説明には「28GHz帯のミリ波」(【0028】)との記載があり、本件発明における「ミリ波」が28GHz帯を含むことは明らかである。
これに関し、国際的な移動通信システムの標準化団体である3GPPにおいて、2018年6月に策定が完了した第5世代移動通信システム(5G)に関する標準仕様であるRelease 15では、28GHz帯であるn258等の周波数帯が規定されており、当該28GHz帯がmmW (millimeter Wave:ミリ波)と呼び習わされていることは、文献を挙げるまでもなく周知の事項である。
よって、本件発明における「ミリ波」は、学術的に定義された30~300GHzだけでなく、28GHz帯をも包含すると解される。
イ 本件発明における「ミリ波」は、「ミリ波反射建装材」として反射する周波数帯として特定されるものであって、当該建装材を構成する各種材料の誘電率によって特定されるものではない。さらにいえば、本件発明において、誘電率がどの周波数においての誘電率であるかは特定されていない。
本件明細書に記載された各実施例においては、各種フィルム、接着層の誘電率として、10GHzの誘電率について言及があるが、これは各実施例において使用した材料を説明したに過ぎず、誘電率がどの周波数での値であるかよって本件発明が反射する周波数帯が左右されるものではない。
ウ 前記ア及びイによれば、申立人の主張は採用できない。
(2)主張3B2について
誘電率は、電場を与えたときの誘電分極の度合いと理解され、誘電率の実際の測定方法がどのようなものであるかは、前記理解を左右しない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(3)主張3B3について
本件明細書には、「各例の建装材を、アクリル系接着剤を用いてスチール製のパーティションに貼り付けた。10人の試験員が各例の建装材を目視し、化粧シートあるいは壁材として違和感を覚えるか否か評価した。違和感なしと評価した試験員が6名以上の場合を合格とし、5名以下の場合を不合格とした。」(【0041】)との記載があり、当該記載によれば、本件発明における「前記防汚層により前記スーパーセルが視認できなくなっている」とは、人間が建装材を目視した際に化粧シート又は壁材として違和感を覚えない程度に防汚層が不透明であることをいうと、明確に理解できる。
よって、申立人の主張は採用できない。
(4)主張3B4について
建築分野における「建装材」は、文献を示すまでもない一般的な用語であり、建材の表面に貼って見た目をよくするような化粧シートなどを意味することは明らかである。
よって、申立人の主張は採用できない。
(5)主張3B5について
「ヘイズ」は、全光線透過率の中の拡散光成分の割合を指すと解されるところ、「表面ヘイズ」は、全光線透過率の中の表面における拡散光成分の割合を指すと理解される。
そして、「表面ヘイズ」の実際の測定方法がどのようなものであるかは、前記理解を左右しない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(6)理由3Bについての小括
以上によれば、理由3Bには理由がない。
2 理由3Aについての判断
特許請求の範囲の記載が、サポート要件を定めた特許法36条6項1号に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
そして、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものである。
これについて、申立人は、以下の主張3A1及び3A2を主張する。
〈主張3A1〉
本件発明1は「ミリ波」と特定しており、一般的に、「ミリ波」は30~300GHzを意味すると考えられるが、発明の詳細な説明には「28GHz帯のミリ波」(【0028】)と記載され、両者は矛盾しており、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されたものではない。
本件発明2~5についても同様である。
〈主張3A2〉
本件発明1は、「トータルの誘電率εrが2.9以下」と特定しているが、発明の詳細な説明の実施例には、トータルの誘電率が2.1~2.74で反射特性が良好であったことが記載されているのみで、本件発明1は、発明の課題を達成しえない態様を包含している。
本件発明2~5についても同様である。
(1)主張3A1について
本件の発明の詳細な説明には「28GHz帯のミリ波」(【0028】)との記載がある以上、「ミリ波反射建装材」である本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
そして、本件発明が課題を解決できると認識できない事情はない。(以下の(2)も参照。)
なお、前記1(1)アで触れたように、3GPPの仕様において規定された28GHz帯の周波数帯がミリ波と呼び習わされていることは、文献を挙げるまでもなく周知の事項であるから、28GHz帯を「ミリ波」と呼ぶことに矛盾はない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(2)主張3A2について
本件の発明の詳細な説明には、「ミリ波は、入射する際と反射波として出射される際との2回、防汚層および接着層を通過する。したがって、防汚層および接着層の誘電率が高いと、ミリ波は防汚層および接着層を通過する間に大きく減衰するため、防汚層や接着層が存在しない状態に比して反射特性が大きく低下する。」(【0021】)との記載があり、当該記載によれば、防汚層及び接着層の誘電率が高いとミリ波が大きく減衰するという事項が理解される。
ここで、本件の発明の詳細な説明全体を参照するに、前記事項は、本件発明において初めて発見された事項ではないと認められる。したがって、前記事項を詳細な実験結果によって裏付ける必要はない。
そして、本件の発明の詳細な説明には、「防汚層50全体としては誘電率εrが2.9以下と、樹脂層としては比較的誘電率の低い層とでき、入射したミリ波の減衰を抑制できる。」(【0022】)との記載があり、前記事項に鑑みれば、誘電率を2.9以下とすることでミリ波の減衰を抑制できることは首肯でき、これを詳細な実験結果によって裏付ける必要も認められない。
さらには、発明の詳細な説明に記載された各実施例及び各比較例において、反射特性が不合格となったのは、比較例1のみであり、「比較例1では、塩化ビニルの誘電率が高いため、反射特性が著しく低下した。」(【0050】)と記載されており、かつ、比較例1の誘電率が3.0であることが記載されている(【0038】)。そうすると、反射特性が唯一不合格となった比較例1の誘電率である3.0よりも低い誘電率である2.9以下であれば、反射特性に合格することは首肯できる。
以上によれば、「前記防汚層および前記接着層のトータルの誘電率εrが2.9以下であ」ること(発明特定事項F)を規定した本件発明は、「良好な反射特性」(【0008】)を持つと認められ、課題を解決できると認識される。
よって、申立人の主張は採用できない。
(3)理由3Aについての小括
以上によれば、理由3Aには理由がない。
3 理由3Cについての判断
本件の発明の詳細な説明は、本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる。
これについて、申立人は、以下の主張3C1及び3C2を主張する。
〈主張3C1〉
本件発明1は、「トータルの誘電率」と特定しているが、発明の詳細な説明には、その測定方法が、当業者が実施できる程度に記載されているといえない。
試料の誘電率測定方法は周波数により大別され、発明の詳細な説明の【0028】に記載されたスプリットシリンダ共振器を用いた測定は、共振法に分類される。
スプリットシリンダ共振器は、2枚の板の間に試料を挟んで測定するが、接着層は2枚の板を接着してしまい装置を破損してしまうことから、接着層を測定することはできない。接着層を別のフィルムで挟んで測定する場合、フィルムと接着層の積層構造となり、接着層自体の誘電率を測定することができない。
よって、本件発明1で特定された「トータルの誘電率」は、発明の詳細な説明に、その測定方法が、当業者が実施できる程度に記載されているといえない。
本件発明2~5についても同様である。
〈主張3C2〉
本件発明5は、「表面ヘイズ」と特定しているが、発明の詳細な説明には、その測定方法が一切記載されていない。
一般的に、ヘイズの測定方法に対応する規格として、例えばJIS K 7136が用いられるが、「表面ヘイズ」のみを切り分けて測定する手法については定型方法がなく、どのように測定した数値なのか、当業者が実施できる程度に記載されているといえない。
よって、本件発明5で特定された「表面ヘイズ」は、発明の詳細な説明に、その測定方法が、当業者が実施できる程度に記載されているといえない。
(1)主張3C1について
一般に、接着剤は、硬化前には流動性があり、これを接着面に塗布して接着面同士を接触させた後、接着剤が硬化することにより、接着面同士が接着するものである。
本件発明の実施例においても、当然、接着剤を硬化させて接着していると解され、本件発明における「前記防汚層および前記接着層のトータルの誘電率」は、接着層が硬化した後の値であると解される。
そうすると、申立人が主張するスプリットシリンダ共振器による測定であっても、接着剤の硬化後の試料を挟むことになるから、装置を破損することはない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(2)主張3C2について
前記1(5)で触れたように、「表面ヘイズ」は、全光線透過率の中の表面における拡散光成分の割合を指すと理解される。
本件の発明の詳細な説明の「防汚層の少なくとも一方の面をサンドブラストや転写等により粗面化し、粗面化した面において入射光の乱反射を生じさせる。」(【0023】)との記載を参照すれば、粗面化される前後の試料を得ることは可能と解されるので、粗面化する前の防汚層のヘイズと、粗面化後の防汚層のヘイズとをそれぞれ測定することにより、粗面化された表面の「表面ヘイズ」を求めることが可能であると理解される。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(3)理由3Cについての小括
以上によれば、理由3Cには理由がない。
4 理由1及び理由2Bについての判断
以下では、本件発明の甲4発明に対する新規性及び進歩性の有無(理由1及び2B)について検討する。
(1)甲4の記載
甲4には、以下の記載がある。なお、下線は甲4発明の認定に使用する箇所を示す(以下同様)。
ア 「【0010】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1は本発明に係る電磁波遮蔽材の第1実施形態を示す拡大断面図であり、図2は第1実施形態の平面図である。
図1に示すように、本発明の電磁波遮蔽材は、同一平面状に配設された多数個のアンテナ素子10を有する反射層1と、反射層の一面に重ね合わされた低誘電率のスペーサ層2とを、有する。
【0011】
反射層1は、シート状又はフィルム状の基材3と、基材3の表て面(図の上面)に付着した極薄のアンテナ素子10とから成っている。アンテナ素子10は周波数選択性を有するものであり、言い換えれば、アンテナ素子10は特定周波数の電磁波(電波)を選択的に反射するものである。この場合、アンテナ素子10は、略Y字形に形成され(図2参照)、基材3上に等間隔に配設されている。また、基材3とスペーサ層2とは粘着層4を介して接着されている。
【0012】
スペーサ層2は、誘電率の低い部材から形成され、例えば、炭酸カルシウム(発泡体も含む)、発泡スチロール、タルク、ポリテトラフルオロエチレン、PEキューブ、絹、象牙、紙等が挙げられる。
スペーサ層2の誘電率は1以上2以下に設定され、好ましくは誘電率が1に近い値がよい。スペーサ層2の誘電率が2を越える場合は、アンテナ素子10がスペーサ層2の影響を受けて良好な電磁波遮蔽特性を維持できないからである。
【0013】
また、スペーサ層2の厚さ寸法Tは1mm以上 100mm以下に形成されている。さらに、下限値としては5mmが好ましく、上限値としては30mmが好ましい。この厚さ寸法Tが1mm未満であると、アンテナ素子10がスペーサ層2の裏面(図1に於て下面)に配設される相手部材の影響を受けて良好な電磁波遮蔽特性を維持できなくなり、厚さ寸法Tが 100mmを越えると不必要に厚くなって付設するのに必要なスペースが大きくなるからである。
【0014】
さらに詳しく説明すると、アンテナ素子10は導電材料で形成され、導電材料としては、アルミニウム、銀、銅、金、白金、鉄、カーボン、黒鉛、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、これらの混合物又は合金等が挙げられる。
また、基材3の材料として、例えば、樹脂、紙、布等が挙げられる。
【0015】
本発明の電磁波遮蔽材の製造方法は、図3に示すように、まず、粉末状の導電材料を含ませた導電塗料を、基材3の表て面3aに所定パターン(略Y字形)に塗布(スクリーン印刷)し、その後、乾燥させて上記反射層1を作製する。そして、基材3の裏面3b又はスペーサ層2の表て面2aに粘着剤を塗布し、基材3とスペーサ層2とを接着して完成する。また、アンテナ素子10は、上記方法以外に、エッチング法、パターン圧着法、スパッタ法、蒸着法等によって基材3の表面に形成してもよい。」
イ 「【0018】
図6は本発明の第4実施形態であり、図に示すように、電磁波遮蔽材は2個の反射層1,1を有している。そして、2個の反射層1,1はスペーサ層2(及び粘着層4,4)を介して積層され、さらに、各反射層1,1の外面側にそれぞれスペーサ層2が(粘着層4を介して)重ね合わされている。
また、反射層1を3個以上有している場合は、各反射層1をスペーサ層2を介して積層し、両外面側の反射層1,1にそれぞれスペーサ層2を重ね合わせる。
また、2個ある反射層1,1の各アンテナ素子10,10を、(同じ周波数の電磁波を遮蔽する)同じ形状・配置にしてもよく、(異なる周波数の電磁波を遮蔽する)相違する形状・配置にしてもよい。
なお、図6に於て、図1と同一の符号は図1と同様の構成であるので説明を省略する。
【0019】
また、本発明の電磁波遮蔽材は設計変更自由であり、アンテナ素子10の形状や配置の仕方を遮蔽(反射)する電磁波の周波数に応じて変更自由である。例えば、図7に示すように、相似する大小2種類のアンテナ素子10a,10bを交互に配設してもよい。大きい第1アンテナ素子10aと、小さい第2アンテナ素子10bとは、それぞれ相違する周波数選択性を有するものである。つまり、第1アンテナ素子10aと第2アンテナ素子10bとで2種類の周波数の電磁波を選択的に反射し、それ以外の周波数の電磁波を透過させる。
【0020】
無線LANでは、2.45GHzと5.2 GHzとの2種類の周波数の電磁波が使用されている。例えば、この無線LAN用の2種類の電磁波を選択的に遮蔽し、それ以外の周波数の電磁波(携帯電話用通信電磁波・テレビ放送用電磁波等)を透過させる通信環境に使用する電磁波遮蔽材として、図7の実施例は好適である。
また、このことは、図6に示す2個ある反射層1,1の各アンテナ素子10,10を、(異なる周波数の電磁波を遮蔽する)相違する形状・配置にしても可能となる。
なお、アンテナ素子10を上述した形状・配置以外の形状・配置にしても自由である。
【0021】
また、図5と図6に於て、アンテナ素子10を直接スペーサ層2に付着してもよい(図4参照)。具体的には、図5と図6に於て、基材3と、基材3の下面の粘着層4とを、省略してアンテナ素子10(と残った粘着層4)が下方のスペーサ層2に付着した状態になる。
【0022】
上述した本発明の電磁波遮蔽材の使用(付設)方法について説明する。
図1に示す第1実施形態の電磁波遮蔽材の使用方法を、図8に於て説明する。
図8に於て、5は室内の壁・天井・間仕切り(パーティション)等の相手部材である。この相手部材5の表面に電磁波遮蔽材のスペーサ層2を重ね合わせる(貼着する)。つまり、アンテナ素子10は相手部材5と離れた表側に配置する。
【0023】
また、図5に示す第3実施形態の電磁波遮蔽材の使用方法を、図9に於て説明する。
この場合、電磁波遮蔽材は、例えば、壁パネル等の第1相手部材5と、他の壁パネル又は壁紙等の第2相手部材6との間に介装される。
つまり、図9に於て、5が第1相手部材、6が第2相手部材であり、相手部材5の表面に、電磁波遮蔽材のどちらか一方のスペーサ層2を重ね合わせる(貼着する)。そして、表側(他方)のスペーサ層2に第2相手部材6を重ね合わせる(貼着する)。
また、第1相手部材5に貼り付けた(図5に示す)電磁波遮蔽材に、第2相手部材6を貼り付けない場合は、表側のスペーサ層2はアンテナ素子10の保護層としての役割を果たす。」
ウ 図6
[図:0001421403000001.jpg]
エ 図7
[図:0001421403000002.jpg]
(2)甲4発明の認定
甲4の「図6に於て、図1と同一の符号は図1と同様の構成であるので説明を省略する。」との記載によれば、【0010】~【0014】におけるスペーサ層2及びアンテナ素子10の記載は、図6にも該当すると解される。
甲4の「図6に於て、基材3と、基材3の下面の粘着層4とを、省略してアンテナ素子10(と残った粘着層4)が下方のスペーサ層2に付着した状態になる。」(【0021】)との記載と、図6によれば、甲4には次図(以下「図6変形例」という。)が実質的に記載されている。
【図6変形例】
[図:0001421403000003.jpg]
図6変形例において、スペーサ層2は図中上のものと中のものと下のものがあるので、以下では必要に応じて「スペーサ層2上」のように呼び分ける。粘着層4及びアンテナ素子10についても同様である。
図6変形例によれば、スペーサ層2中の上面上に設けられた複数のアンテナ素子10上を備えることと、スペーサ層2下の上面上に設けられた複数のアンテナ素子10下を備えることと、スペーサ層2中とスペーサ層2上との間及びアンテナ素子10上とスペーサ層2上との間に位置する粘着層4上を備えることとが認定(以下「甲4認定1」という。)される。
また、甲4の「また、第1相手部材5に貼り付けた(図5に示す)電磁波遮蔽材に、第2相手部材6を貼り付けない場合は、表側のスペーサ層2はアンテナ素子10の保護層としての役割を果たす。」(【0023】)との記載は、図5についての記載であるが、表側のスペーサ層2上及び裏側のスペーサ層2下を備える図6変形例においても同様であると解されるため、甲4には、表側のスペーサ層2上はアンテナ素子10の保護層としての役割を果たすことが、実質的に記載されていると認定(以下「甲4認定2」という。)される。
以上によれば、甲4には、図6変形例の発明として次に示す甲4発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲4発明を以下に示すように4a~4iに分説し、「構成4a」のようにして参照する。
〈甲4発明〉
4a スペーサ層2は、誘電率の低いポリテトラフルオロエチレンから形成され、誘電率は1以上2以下に設定され、好ましくは誘電率が1に近い値がよく、(【0012】)
4b スペーサ層2中の上面上に設けられた複数のアンテナ素子10上を備え、(甲4認定1)
4c アンテナ素子10は導電材料で形成され、導電材料としては、銅が挙げられ、(【0014】)
4d アンテナ素子10は、相似する大小2種類のアンテナ素子10a,10bを交互に配設し、第1アンテナ素子10aと第2アンテナ素子10bとで2種類の周波数の電磁波を選択的に反射し、それ以外の周波数の電磁波を透過させ、(【0019】)
4e スペーサ層2下の上面上に設けられた複数のアンテナ素子10下を備え、(甲4認定1)
4f スペーサ層2中とスペーサ層2上との間及びアンテナ素子10上とスペーサ層2上との間に位置する粘着層4上を備え、(甲4認定1)
4g 表側のスペーサ層2上はアンテナ素子10の保護層としての役割を果たし、(甲4認定2)
4h アンテナ素子10は特定周波数の電磁波(電波)を選択的に反射するものであり、(【0011】)
4i 無線LANでは、2.45GHzと5.2GHzとの2種類の周波数の電磁波が使用され、この無線LAN用の2種類の電磁波を選択的に遮蔽し、それ以外の周波数の電磁波を透過させる通信環境に使用する電磁波遮蔽材。(【0020】)
(3)申立人の主張についての判断
申立人は、甲4発明を、当審の認定のように図6変形例から認定せず、図6に基づいて認定し、「第1のスペーサ層2の第一面上に設けられ」た「アンテナ素子10(区別のため「第1のアンテナ素子10」という。)と、第1のスペーサ層2の第一面と反対側の第二面上に設けられたアンテナ素子10(区別のため「第2のアンテナ素子10」という。)と、第1のアンテナ素子10を覆うように配置され、ポリテトラフルオロエチレンを含むスペーサ層(区別のため「第2のスペーサ層2」という。)と、第1のスペーサ層2と第2のスペーサ層2との間、及び第1のアンテナ素子10と第2のスペーサ層2との間に位置する粘着層4とを備えることが記載されている」と主張する。(申立書27~30頁、なお、申立人の主張する「第1のスペーサ層2」、「第1のアンテナ素子10」、「第2のアンテナ素子10」及び「第2のスペーサ層2」は、それぞれ、当審の認定する「スペーサ層2中」、「アンテナ素子10上」、「アンテナ素子10下」及び「スペーサ層2上」に対応する。)
そこで、甲4の図6を参照すると、「アンテナ素子10下」は、「スペーサ層2中」の下面上に設けられたものではなく、「基材3下」の上面上に設けられたものであると解される。
さらにいえば、「アンテナ素子10上」は、「スペーサ層2中」の上面上に設けられたものではなく、「基材3上」の上面上に設けられたものである。
以上によれば、申立人の認定する甲4発明は、「アンテナ素子10下」及び「アンテナ素子10上」が設けられる位置を誤認しており、採用できない。
(4)本件発明1と甲4発明との対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると、以下のとおりである。
ア 発明特定事項Aについて
発明特定事項Aは、「面状の誘電体と、」というものである。
甲4発明の「スペーサ層2中」(構成4b)は、「ポリテトラフルオロエチレンから形成され」ている(構成4a)ので、誘電体である。
よって、本件発明1と甲4発明とは、「誘電体」を備える点で共通するものの、本件発明1の「誘電体」が「面状」のものであるのに対し、甲4発明の「スペーサ層2中」は、面状であるか否かが明らかでない点で相違する。
イ 発明特定事項Bについて
発明特定事項Bは、「前記誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属パターンを有するスーパーセルと、」というものである。
(ア)甲4発明は、「スペーサ層2中の上面上に設けられた複数のアンテナ素子10上を備え」ており(構成4b)、「上面」を「第一面」と呼ぶことは任意である。
そして、甲4発明の「アンテナ素子10」は、銅で形成され(構成4c)、「相似する大小2種類のアンテナ素子10a,10bを交互に配設し」たもの(構成4d)であるから、甲4発明の「複数のアンテナ素子10上」は、本件発明1の「形状の異なる複数の金属パターン」に相当する。
(イ)本件明細書の「スーパーセル10は、大きさの異なる十字型の金属パターン11、12、13の三つの金属パターンを有しており、金属パターン11、12、13が一方向に並べて配置されている。」(【0013】)との記載を参照すると、本件発明1の「スーパーセル」には、大きさの異なる複数の金属パターンが一方向に並べて配置されたものを包含すると解される。
(ウ)甲4発明の「アンテナ素子10上」は、「相似する大小2種類のアンテナ素子10a,10bを交互に配設し」たもの(構成4d)であるから、大小2つの金属パターンが一方向に並べて配置されたものといえる。
そうすると、甲4発明の「アンテナ素子10上」は、前記(イ)の意味で、本件発明1の「スーパーセル」に相当する。
(エ)前記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲4発明とは、「前記誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属パターンを有するスーパーセル」を備える点で一致する。
ウ 発明特定事項Cについて
発明特定事項Cは、「前記誘電体において、前記第一面と反対側の第二面上に設けられた金属層と、」というものである。
甲4発明の「複数のアンテナ素子10下」(構成4e)は、銅で形成される(構成4c)から、本件発明1の「金属層」に対応し、本件発明1と甲4発明とは、「金属層」を備える点で共通するものの、本件発明1の「金属層」は「前記誘電体において、前記第一面と反対側の第二面上に設けられた」ものであるのに対し、甲4発明の「複数のアンテナ素子10下」は、「スペーサ層2中」において設けられたものではなく、「スペーサ層2下の上面上に設けられた」ものである点で相違する。
エ 発明特定事項Dについて
発明特定事項Dは、「前記スーパーセルを覆うように配置され、表面における純水接触角が90°以上である防汚層と、」というものである。
甲4発明の「表側のスペーサ層2上」は、「アンテナ素子10の保護層としての役割を果た」すもの(構成4g)であるから、「アンテナ素子10」を覆うように配置されていると解される。
甲4発明の「スペーサ層2」は「ポリテトラフルオロエチレンから形成され」(構成4a)、ポリテトラフルオロエチレンの純水接触角は90°以上であることが周知である(甲3、甲6等)。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは、「前記スーパーセルを覆うように配置され、表面における純水接触角が90°以上である層」を備える点で共通するものの、本件発明1が備えるのは「防汚層」であるのに対し、甲4発明が備えるのは「ポリテトラフルオロエチレンから形成され」た「表側のスペーサ層2上」である点で相違する。
オ 発明特定事項Eについて
発明特定事項Eは、「前記誘電体と前記防汚層との間、および前記スーパーセルと前記防汚層との間に位置する接着層と、」というものである。
甲4発明は、「スペーサ層2中とスペーサ層2上との間及びアンテナ素子10上とスペーサ層2上との間に位置する粘着層4上を備え」(構成4f)、甲4発明の「粘着層4上」は、本件発明1の「接着層」に相当するから、本件発明1と甲4発明とは、「前記誘電体と前記層との間、および前記スーパーセルと前記層との間に位置する接着層」を備える点で共通する。(本件発明1の「防汚層」に係る相違点は、前記エのとおり。)
カ 発明特定事項Fについて
発明特定事項Fは、「前記防汚層および前記接着層のトータルの誘電率εrが2.9以下であり、」というものである。
甲4発明の「表側のスペーサ層2上」(構成4g)は、「誘電率は1以上2以下に設定され、好ましくは誘電率が1に近い値がよ」い(構成4a)とされ、技術常識により「粘着層4上」は「表側のスペーサ層2上」よりも薄くて誘電率への寄与が軽微であると評価できるから、「表側のスペーサ層2上」及び「粘着層4上」のトータルの誘電率は、大きくても2程度であると解される。
よって、本件発明1と甲4発明とは、「前記層および前記接着層のトータルの誘電率εrが2.9以下であ」る点で共通する。(本件発明1の「防汚層」に係る相違点は、前記エのとおり。)
キ 発明特定事項Gについて
発明特定事項Gは、「平面視において、前記防汚層により前記スーパーセルが視認できなくなっている、」というものである。
甲4発明において、「表側のスペーサ層2上」により「アンテナ素子10上」が視認できなくなっているか否かは不明である。
ク 発明特定事項Hについて
発明特定事項Hは、「ミリ波反射建装材。」というものである。
甲4発明では「アンテナ素子10は特定周波数の電磁波(電波)を選択的に反射するものであり」(構成4h)、甲4発明は「2.45GHzと5.2GHzとの2種類の周波数の電磁波」を「選択的に遮蔽」する「電磁波遮蔽材」である(構成4i)から、甲4発明は、2.45GHzと5.2GHzとの2種類の周波数の電磁波を選択的に反射する電磁波遮蔽材である。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは、「電磁波反射材」でる点で共通するものの、本件発明1が反射するのは「ミリ波」であるのに対し、甲4発明が反射するものは「2.45GHzと5.2GHzとの2種類の周波数の電磁波」である点で相違するとともに、本件発明1は「建装材」であるのに対し、甲4発明は「電磁波遮蔽材」であって、建装材ではない点で相違する。
ケ 本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点
前記ア~クによれば、本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「誘電体と、
前記誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属パターンを有するスーパーセルと、
金属層と、
前記スーパーセルを覆うように配置され、表面における純水接触角が90°以上である層と、
前記誘電体と前記層との間、および前記スーパーセルと前記層との間に位置する接着層と、
前記層および前記接着層のトータルの誘電率εrが2.9以下である、
電磁波反射材。」である点。
〈相違点4-1〉
本件発明1の「誘電体」が「面状」のものであるのに対し、甲4発明の「スペーサ層2中」は、面状であるか否かが明らかでない点。
〈相違点4-2〉
本件発明1の「金属層」は「前記誘電体において、前記第一面と反対側の第二面上に設けられた」ものであるのに対し、甲4発明の「複数のアンテナ素子10下」は、「スペーサ層2中」において設けられたものではなく、「スペーサ層2下の上面上に設けられた」ものである点。
〈相違点4-3〉
本件発明1が備えるのは「防汚層」であるのに対し、甲4発明が備えるのは「ポリテトラフルオロエチレンから形成され」た「表側のスペーサ層2上」である点。
〈相違点4-4〉
本件発明1は、「平面視において、前記防汚層により前記スーパーセルが視認できなくなっている」のに対し、甲4発明は、「表側のスペーサ層2上」により「アンテナ素子10上」が視認できなくなっているか否かは不明である点。
〈相違点4-5〉
本件発明1が反射するのは「ミリ波」であるのに対し、甲4発明が反射するものは「2.45GHzと5.2GHzとの2種類の周波数の電磁波」である点。
〈相違点4-6〉
本件発明1は「建装材」であるのに対し、甲4発明は「電磁波遮蔽材」であって、建装材ではない点。
(5)相違点についての判断(新規性及び進歩性)
事案に鑑み、相違点4-2に基づいて、本件発明1の甲4発明に対する新規性及び進歩性の有無を判断する。
ア 新規性について
相違点4は、「金属層」が設けられる位置に関する相違点であり、その位置は甲4発明のものと明確に異なるから、相違点4は実質的な相違点である。
よって、その他の相違点について判断するまでもなく、本件発明1と甲4発明とは同一ではない。
イ 進歩性について
甲4発明は、「図6に於て、基材3と、基材3の下面の粘着層4とを、省略してアンテナ素子10(と残った粘着層4)が下方のスペーサ層2に付着した状態になる。」(【0021】)との記載に基づき、「基材3」及びその下面の「粘着層4」を省略して得られたものである。
甲4発明の省略前においては、図6に示されるとおり、「アンテナ素子10上」は「基材3上」の上面上にあり、「アンテナ素子10下」は「基材3下」の上面上にある。
そして、これら「アンテナ素子10」は、「粉末状の導電材料を含ませた導電塗料を、基材3の表て面3aに所定パターン(略Y字形)に塗布(スクリーン印刷)し、その後、乾燥させて」形成するか、又は「エッチング法、パターン圧着法、スパッタ法、蒸着法等によって基材3の表面に形成し」た(【0015】)ものである。
上記に鑑みれば、甲4発明における「アンテナ素子10上」及び「アンテナ素子10下」は、元来、別々の「基材3上」及び「基材3下」のそれぞれの上面に適宜の方法で形成されたものであるから、基材3を省略した場合、「アンテナ素子10上」は「スペーサ層2中」の上面に作成され、「アンテナ素子10下」は「スペーサ層2下」の上面に作成されるよう動機付けられており、「スペーサ層2中」の上面と下面にそれぞれ「アンテナ層10上」及び「アンテナ層10下」を形成することには動機付けられていない。
そして、単一の誘電体材料の両面にそれぞれアンテナ素子を作成することを動機付ける証拠は存在しないし、技術常識とも認められない。
したがって、甲4発明において、「複数のアンテナ素子10下」を、上面に「複数のアンテナ素子10上」が形成された「スペーサ層2中」の下面に形成するよう変更することは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。
なお、申立人は相違点4-2を看過しているため、相違点4-2に係る容易想到性についての主張をしていない。
以上によれば、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲4発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。
(6)本件発明2~5の甲4発明に対する新規性及び進歩性の有無
本件発明2~5は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明2~5と甲4発明との相違点には、相違点4-2が少なくとも含まれる。
よって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5は、甲4発明と同一ではなく、かつ、当業者が甲4発明から容易に発明をすることができたものとは認められない。
(7)理由1及び理由2Bについての小括
以上のとおり、本件発明1及び2は、いずれも、甲4発明と同一ではないから、理由1には理由がない。
また、本件発明は、いずれも、当業者が甲4発明から容易に発明をすることができたものとは認められないから、理由2Bには理由がない。
5 理由2A(甲1発明に基づく進歩性)についての判断
最後に、本件発明の甲1発明に対する進歩性の有無(理由2A)について検討する。
(1)甲1の1の記載
甲1の1には、以下の記載がある。なお、甲1の1の和訳は、甲1の1の日本語ファミリである甲1の2を参考に当審で作成した。
ア 「[0036] In various examples, the reflectarray antenna 106 can serve as a passive relay or active relay between BS 102 and UE 104A-H. The reflectarray antenna 106 receives a signal from the BS 102 at an incident angle (or direction) and reflects the signal into one or more directional beams aimed for the UE 104A-H. Cutout 108 depicts the incident beam coming from an incident angle with elevation angle θIN and azimuth angle φIN, and depicts the reflected beam radiating at a reflected angle with elevation angle θOUT and azimuth angle φ0UT. The directivity of the reflectarray antenna 106 is achieved by considering the geometrical configurations of the wireless network 100 (e.g., placement of BS 102, distance relative to the reflectarray antenna 106, etc.) as well as antenna specifications for the reflectarray antenna 106 in network 100, as described in more detail below. Various configurations, shapes, and dimensions may be used to implement specific designs and meet specific coverage area constraints. The reflectarray antenna 106 can be placed in any wireless network environment, be it in a suburban quiet area or a high traffic area, such as a high density city block. Use of a reflectarray such as the reflectarray antenna 106 and designed as disclosed herein can result in a significant performance improvement of even 10 times current 5G data rates. The reflectarray antenna 106 is a low cost, easy to manufacture and set up reflectarray, and may be self-calibrated without requiring manual adjustment to its operation.」
(和訳:
[0036] 様々な例において、リフレクトアレイアンテナ106は、BS102とUE104A~Hの間において受動型中継器又は能動型中継器として機能することができる。リフレクトアレイアンテナ106は、所定の入射角度(又は方向)においてBS102から信号を受け取り、この信号をUE104A~Hについて狙いが定められた1つ又は複数の指向性ビームとして反射している。カットアウト108は、仰角θIN及び方位角φINを有する入射角度から到来する入射ビームを描いており、仰角θOUT及び方位角φOUTを有する反射角度において放射する反射ビームを描いている。リフレクトアレイアンテナ106の指向性は、更に詳しく後述するように、無線ネットワーク100の幾何学的構成(例えば、BS102の配置、リフレクトアレイアンテナ106との関係における距離、など)のみならず、ネットワーク100内のリフレクトアレイアンテナ106のアンテナ仕様を検討することにより、実現されている。特定の設計を実装するために及び特定のカバレージエリア制約を充足するために、様々な構成、形状、及び寸法を使用することができる。リフレクトアレイアンテナ106は、郊外の静かなエリアであろうと、高密度の都市ブロックなどの交通量の多いエリアであろうと、任意の無線ネットワーク環境内において配置することができる。リフレクトアレイアンテナ106などの及び本明細書において開示されているように設計されたリフレクトアレイの使用は、場合によっては現時点の5Gデータレートの10倍の大きな性能改善を結果的にもたらし得る。リフレクトアレイアンテナ106は、低費用の、製造及びセットアップが容易なリフレクトアレイであり、その動作に対する手動調節を必要とすることなしに自己較正することができる。)
イ 「[0038] In various examples, the cells in the reflectarray antenna 200 include conductive printed patches of different shapes. In other examples, the reflectarray cells may be composed of microstrips, gaps, patches, dipoles, and so forth. Various configurations, shapes, and dimensions may be used to implement specific designs and meet specific constraints. As illustrated, reflectarray antenna 200 is a rectangular reflectarray with a length / and a width w. In other examples, the reflectarray antenna 200 may be circular with a radius r. Each cell in the reflectarray antenna 200 has a conductive printed element. The conductive printed elements may also have different configurations, such as a square patch, a rectangular patch, a dipole, multiple dipoles, and so on. Other shapes (e.g., trapezoid, hexagon, etc.) may also be designed to satisfy design criteria for a given 5G or other wireless application, such as the location of the reflectarray antenna 200 relative to a BS, the desired gain and directivity performance, and so on.」
(和訳:
[0038] 様々な例において、リフレクトアレイアンテナ200内のセルは、様々な形状の導電性印刷パッチを含む。その他の例において、リフレクトアレイセルは、マイクロストリップ、ギャップ、パッチ、ダイポール、などから構成することができる。特定の設計を実装するために及び特定の制約を充足するために、様々な構成、形状、及び寸法を使用することができる。図示のように、リフレクトアレイアンテナ200は、長さl及び幅wを有する矩形のリフレクトアレイである。その他の例においては、リフレクトアレイアンテナ200は、半径rを有する円形であってよい。リフレクトアレイアンテナ200内のそれぞれのセルは、導電性印刷要素を有する。また、導電性印刷要素は、正方形パッチ、矩形パッチ、ダイポール、複数のダイポール、などのような異なる構造を有することもできる。また、BSとの関係におけるリフレクトアレイアンテナ200の場所、望ましい利得及び指向性性能、などのような所与の5G又はその他の無線用途用の設計基準を充足するために、その他の形状(例えば、平行四辺形、六角形、など)を設計することもできる。)
ウ 「[0042] For explanatory purposes, the step of determining the antenna specifications will be discussed in reference to an example of a reflectarray configuration 400 as shown in FIG. 4. Attention is now directed to FIG. 4, which illustrates a schematic diagram of an example of a planar reflectarray antenna and a considered unit cell in accordance with various implementations of the subject technology. The reflectarray configuration 400 includes a reflectarray antenna 404 that is illuminated by a feed 402 generating an incident electric field on its surface. The feed 402 may be a BS with a wireless radio in some implementations, or may be a horn antenna in other implementations. In some examples, the reflectarray antenna 404 is rectangular and comprised of about 7,744 elements in a rectangular grid of 88 x 88. In other examples, the reflectarray antenna 404 is comprised of about 4,356 elements in a rectangular grid of 66 x 66. The reflectarray antenna 400 may include a different shape with a grid having a different number of elements from that illustrated in FIG. 4 without departing from the scope of the present disclosure. The feed 402 may be placed a predetermined distance with regard to the center of the reflectarray antenna 404. In some aspects, the feed 402 may be modeled as a cosqθ function.」
(和訳:
[0042] 説明を目的として、アンテナ仕様を判定するステップについては、図4に示されるリフレクトアレイ構造400の一例を参照して説明することとする。次に図4を参照すれば、これは、本技術の様々な実装形態による平面リフレクトアレイアンテナ及び対象の単位セルの一例の概略図を示している。リフレクトアレイ構造400は、その表面上において入射電界を生成する給電器402によって照らされたリフレクトアレイアンテナ404を含む。給電器402は、いくつかの実装形態においては、無線送受信機を有するBSであってもよく、又はその他の実装形態においては、ホーンアンテナであってもよい。いくつかの例においては、リフレクトアレイアンテナ404は、矩形であり、88×88の矩形グリッドにおいて約7744個の要素から構成されている。その他の例においては、リフレクトアレイアンテナ404は、66×66の矩形グリッドにおいて約4356個の要素から構成されている。リフレクトアレイアンテナ400は、本開示の範囲を逸脱することなしに、図4に示されているものとは異なる数の要素を有するグリッドを有する異なる形状を含み得る。給電器402は、リフレクトアレイアンテナ404の中心に関して既定の距離に配置することができる。いくつかの態様においては、給電器402は、cosqθ関数としてモデル化することができる。)
エ 「[0043] The cutout 410 shown in FIG. 4 includes a subarray of cells, namely cells 412, 414, 416 and 418. Each cell is comprised of a patterned layer that includes a set of multiple parallel dipoles for each linear polarization. The length (along the x-axis) and width (along the y-axis) of each cell is depicted as PX and PY, respectively. The length may be in a range of 3.0 mm to 5.0 mm, and the width may be in a range of 3.0 mm to 5.0 mm. The periodicity of the cells within the cutout 410 is in a range of 3.0 mm to 5.0 mm in both axes (e.g., x, y), which is less than half a wavelength at a working frequency of about 28 GHz to avoid grating lobes. The working frequency is in a range of 27.5 GHz to 28.5 GHz, and more particular, at a center frequency of about 28 GHz.」
(和訳:
[0043] 図4に示されているカットアウト410は、セルのサブアレイ、即ち、セル412、414、416及び418を含む。それぞれのセルは、それぞれの直線偏波ごとに複数の平行ダイポールの組を含むパターン化された層から構成されている。それぞれのセルの(x軸に沿った)長さ及び(y軸に沿った)幅は、それぞれ、PX及びPYとして描かれている。長さは、3.0mm~5.0mmの範囲であってよく、幅は、3.0mm~5.0mmの範囲であってよい。カットアウト410内のセルの周期は、両方の軸(例えば、x、y)において、3.0mm~5.0mmの範囲であり、これは、グレーティングローブを回避するために、約28GHzの動作周波数における波長の半分未満である。動作周波数は、27.5GHz~28.5GHzの範囲であり、更に詳しくは、約28GHzの中心周波数を有する。)
オ 「[0044] The separation between dipoles is set to SA for separations along the y-axis and SB for separations along the x-axis. In some aspects, the separation (SA, SB) may be set in a range of 0.4 mm to 1.1 mm, depending on the dimensions of the dipoles. The cutout 410 includes a first element type with dipoles that extend laterally along the x-axis (e.g., 420), and a second element type with dipoles that extend laterally along the y-axis (e.g., 422). In some implementations, each element type includes two parallel dipoles with a first length (denoted as lA1, lB1) and one dipole with a second length (denoted as lA2, lB2) that is interposed between the two first-length dipoles in a parallel arrangement. In some aspects, the second length is greater than the first length, such that the first length is a predetermined fraction of the second length. For example, the predetermined fraction is set to a fraction value that is in a range of 0.5 to 0.8. The width of each of the dipoles may be in a range of 0.2 mm to 0.4 mm. The cutout 410 includes the first element type in each of the cells 412, 414, 416 and 418, and the second element type located at a center of the cutout 410 that is centered between the cells 412, 414, 416 and 418. In some implementations, the arrangement of the first element type (e.g., 420) is orthogonal to that of the second element type (e.g., 422), in which the first element type runs parallel to the x-axis and the second element type runs parallel to the y-axis. As depicted in FIG. 4, the cutout 410 includes a single substrate layer with a relative permittivity, εr, that is in a range of 3.64 to 3.72 and a loss tangent, δ, in a range of 0.0072 to 0.0095, at the working frequency. In some examples, the substrate layer has a thickness (or height, h) in a range of 0.254 mm (or 10 mils) to 1.524 mm (or 60 mils).」
(和訳:
[0044] ダイポール間の間隔は、y軸に沿った間隔の場合にはSAに設定され、x軸に沿った間隔の場合にはSBに設定されている。いくつかの態様においては、間隔(SA、SB)は、ダイポールの寸法に応じて0.4mm~1.1mmの範囲において設定することができる。カットアウト410は、x軸に沿って横方向において延在するダイポールを有する第1要素タイプ(例えば、420)と、y軸に沿って横方向において延在するダイポールを有する第2要素タイプ(例えば、422)と、を含む。いくつかの実装形態において、それぞれの要素タイプは、第1長さ(lA1、lB1として表記されている)を有する2つの平行ダイポールと、平行構成において2つの第1長さダイポールの間に挿入された第2長さ(lA2、lB2と表記されている)を有する1つのダイポールと、を含む。いくつかの態様において、第2長さは第1長さよりも長く、第1長さは第2長さの規定の比となる。例えば、既定の比は、0.5~0.8の範囲の比の値に設定されている。各ダイポールの幅は、0.2mm~0.4mmの範囲であってよい。カットアウト410は、セル412、414、416及び418のそれぞれの中にある第1要素タイプと、カットアウト410の中央に配置され、セル412、414、416及び418の間の中心に配置された第2要素タイプと、を含む。いくつかの実装形態において、第1要素タイプ(例えば、420)の並べ方は、第2要素タイプ(例えば、422)のものに直交しており、この場合に、第1要素タイプは、x軸に平行に延在しており、第2要素タイプは、y軸に平行に延在している。図4に描かれているように、カットアウト410は、動作周波数において、3.64~3.72の範囲である比誘電率εrと、0.0072~0.0095の範囲である損失正接δと、を有する単一の基材層を含む。いくつかの例において、基材層は、0.254mm(又は10ミル)~1.524mm(又は60ミル)の範囲の厚さ(又は高さh)を有する。)
カ 「[0045] Attention is now directed to FIGS. 5A and 5B, which illustrate schematic diagrams with cross-sectional views of different reflectarray antenna stack-up configurations in accordance with various implementations of the subject technology. In some implementations, the substrate layer depicted in FIG. 4 may correspond to, or at least a portion of, one of the stack-up configurations depicted in FIGS. 5A and 5B. FIG. 5A illustrates a cross-sectional view of a first stack-up configuration 500, and FIG. 5B illustrates a cross-sectional view of a second stack-up configuration 550. Not all of the depicted components may be used, however, and one or more implementations may include additional components not shown in the figure. Variations in the arrangement and type of the components may be made without departing from the scope of the claims set forth herein. Additional components, different components, or fewer components may be provided.」
(和訳:
[0045] 次に図5A及び図5Bを参照すれば、これは、本技術の様々な実装形態による様々なリフレクトアレイアンテナの積層構造の断面図を有する概略図を示している。いくつかの実装形態において、図4に描かれている基材層は、図5A及び図5Bに描かれている積層構造の1つに又はその少なくとも一部分に対応し得る。図5Aは、第1積層構造500の断面図を示し、図5Bは、第2積層構造550の断面図を示している。但し、描かれている構成要素のすべてが使用されなくてもよく、1つ又は複数の実装形態は、図に示されてはいない更なる構成要素を含むことができる。本明細書において記述されている特許請求の範囲を逸脱することなしに、構成要素の配置及びタイプの変形を実施することができる。更なる構成要素、異なる構成要素又は更に少ない数の構成要素を提供することができる。)
キ 「[0046] In FIG. 5A, the first stack-up configuration 500 includes superstate 502, bonding layer 504, substrate 508 and conductive layers 506 and 510. In some implementations, the superstate 502 has a dielectric constant = 1.1 and loss tangent = 0.003, at 10 GHz, which corresponds to commercially available ROHACELL HF71, and with a thickness in a range of 0.508 mm (or 20 mils) to 1.524 mm (or 60 mils).The bonding layer 504 is a pre-impregnated composite material that includes an ethylene-acrylic acid thermoplastic copolymer, with a dielectric constant = 2.32 and a loss tangent = 0.0013, at 10 GHz, which corresponds to commercially available CuClad 6250, and with a thickness of about 0.064 mm (or about 2.5 mils). In some implementations, the substrate 508 has a dielectric constant = 3.65 and loss tangent = 0.0125, at 10 GHz, which corresponds to commercially available ISOLA FR408, and with a thickness of about 1.5 mm (or 59 mils). In some implementations, the conductive layers 506 and 510 include a Copper density lesser than 1.0. In some aspects, the conductive layer 506 is a patterned layer that serves as a signal plane and the conductive layer 510 serves as a ground plane.
(和訳:
[0046] 図5Aにおいて、第1積層構造500は、上層502と、接合層504と、基材508と、導電層506及び510と、を含む。いくつかの実装形態において、上層502は、10GHzにおいて誘電率=1.1及び損失正接=0.003を有しており、これは、市販のROHACELL HF71に対応し、0.508mm(又は20ミル)~1.524mm(又は60ミル)の厚さを有する。接合層504は、10GHzにおいて誘電率=2.32及び損失正接=0.0013を有するエチレンアクリル酸熱可塑性コポリマーを含む予め含浸された複合材料であり、これは、市販のCuClad 6250に対応し、約0.064mm(又は約2.5ミル)の厚さを有する。いくつかの実装形態において、基材508は、10GHzにおいて誘電率=3.65及び損失正接=0.0125を有し、これは、市販のISOLA FR408に対応し、約1.5mm(又は59ミル)の厚さを有する。いくつかの実装形態において、導電層506及び510は、1.0未満の銅密度を含む。いくつかの態様において、導電層506は、信号プレーンとして機能するパターン化された層であり、導電層510は、接地プレーンとして機能している。)
ク 「[0092] Wireless coverage can be significantly improved to users outside of the LOS zone by the installation of reflectarray antennas on a surface of a structure (e.g., roof, wall, post, window, etc.). As depicted in FIG. 20, reflectarray antennas 2010 and 2012 are placed at distinct locations of the stadium 2030. For example, each reflectarray antenna may be placed on a roofline edge.」
(和訳:
[0092] 無線カバレージは、構造物(例えば、屋根、壁、柱、窓、など)の表面上にリフレクトアレイアンテナを設置することにより、LOSゾーンの外側のユーザーについて大幅に改善することができる。図20に描かれているように、リフレクトアレイアンテナ2010及び2012は、スタジアム2030の個別の場所において配置されている。例えば、それぞれのリフレクトアレイアンテナは、ルーフラインのエッジ上に配置することができる。)
ケ 「[0093] Each of the reflectarray antennas 2010 and 2012 is a robust and low-cost passive relay antenna that is positioned at an enhanced location to significantly improve network coverage. As illustrated, each of the reflectarray antennas 2010 and 2012 is formed, placed, configured, embedded, or otherwise connected to a portion of the stadium 2030. Although multiple reflectarrays are shown for illustration purposes, a single reflectarray may be placed in external and/or internal surfaces of the stadium 2030 depending on implementation.」
(和訳:
[0093] リフレクトアレイアンテナ2010及び2012のそれぞれは、ネットワークカバレージを大幅に改善するために、改善された場所において位置決めされた安定した且つ低費用の受動型リレーアンテナである。図示のように、リフレクトアレイアンテナ2010及び2012のそれぞれは、スタジアム2030の一部として形成されているか、配置されているか、構成されているか、埋め込まれているか、又はその他の方法で接続されている。複数のリフレクトアレイが例示を目的として示されているが、実装形態に応じて、単一のリフレクトアレイをスタジアム2030の外部及び/又は内部表面内において配置することができる。)
コ FIG.2
[図:0001421403000004.jpg]
サ FIG.4
[図:0001421403000005.jpg]
FIG.4によれば、リフレクトアレイアンテナ404は、多数のカットアウト410を備えると解される。
シ FIG.5A
[図:0001421403000006.jpg]
(和訳:
[図:0001421403000007.jpg]
)
FIG.5Aによれば、導電層506は、基材508の上面上に設けられ、導電層510は、基材508の上面と反対側の下面上に設けられ、上層502は接合層504を介して導電層506を覆っていると解される。
ス FIG.20
[図:0001421403000008.jpg]
(2)甲1発明の認定
甲1の1には、「リフレクトアレイアンテナ200内のそれぞれのセルは、導電性印刷要素を有する。また、導電性印刷要素は、正方形パッチ、矩形パッチ、ダイポール、複数のダイポール、などのような異なる構造を有することもできる。」([0038])との記載があり、FIG.2は、導電性印刷要素が「正方形パッチ」及び十字形であるものを示していると解され、FIG.4の「リフレクトアレイアンテナ404」は、導電性印刷要素が「複数のダイポール」であるものを示していると解される。
甲1の1には「図4に描かれている基材層は、図5A及び図5Bに描かれている積層構造の1つに又はその少なくとも一部分に対応し得る。」([0045])との記載があり、FIG.4及びFIG.5A並びに甲1の1のその他の記載を参照すると、FIG.4における「カットアウト410」の「基材層」([0044])は、FIG.5Aにおける「基材508」に対応すると解される。
また、「リフレクトアレイアンテナ404」の「複数のダイポール」構造をなす「導電性印刷要素」は、FIG.5Aにおける「導電層506」([0046])であり、図4に関する[0044]に記載された「ダイポール」は、「導電性印刷要素」すなわち「導電層506」により形成されたものであると認められる。
加えて、「様々な例」の「リフレクトアレイアンテナ106」([0036])には、「リフレクトアレイアンテナ404」が含まれると解されるから、[0036]における「リフレクトアレイアンテナ106」についての記載は、「リフレクトアレイアンテナ404」についてもあてはまると解される。
以上により、「カットアウト410」の「基材層」を「基材508」と読み替え、「リフレクトアレイアンテナ106」を「リフレクトアレイアンテナ404」と読み替え、「ダイポール」が「導電層506」により形成されると認定すること(以下「甲1認定」という。)により、甲1の1には、次に示す甲1発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明を以下に示すように1a~1qに分説し、「構成1a」のようにして参照する。
〈甲1発明〉
1a 所定の入射角度においてBS102から信号を受け取り、この信号を1つ又は複数の指向性ビームとして反射するリフレクトアレイアンテナ404であって、([0036])
1b リフレクトアレイアンテナ404は、多数のカットアウト410を備え、(FIG.4)
1c カットアウト410は、セル412、414、416及び418を含み、([0043])
1d それぞれのセルの長さ及び幅は、長さは、3.0mm~5.0mmの範囲であり、幅は、3.0mm~5.0mmの範囲であり、([0043])
1e カットアウト410は、x軸に沿って延在するダイポールを有する第1要素タイプ420と、y軸に沿って延在するダイポールを有する第2要素タイプ422とを含み、([0044])
1f カットアウト410は、単一の基材508を含み、([0044])
1g ダイポールが導電層506により形成され、(甲1認定)
1h 導電層506は、基材508の上面上に設けられ、(FIG.5A)
1i 導電層510は、基材508の上面と反対側の下面上に設けられ、(FIG.5A)
1j 上層502は接合層504を介して導電層506を覆い、(FIG.5A)
1k 上層502は、10GHzにおいて誘電率=1.1を有しており、これは、市販のROHACELL HF71に対応し、0.508mm~1.524mmの厚さを有し、([0046])
1l 接合層504は、10GHzにおいて誘電率=2.32有し、([0046])
1m 基材508は、10GHzにおいて誘電率=3.65を有し、約1.5mmの厚さを有し、([0046])
1n 導電層506及び510は、1.0未満の銅密度を含み、([0046])
1o 導電層506は、パターン化された層であり、([0046])
1p 動作周波数は、27.5GHz~28.5GHzの範囲である、([0043])
1q リフレクトアレイアンテナ404。
(3)本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりである。
ア 発明特定事項Aについて
発明特定事項Aは、「面状の誘電体と、」というものである。
(ア)甲1発明の「基材508」は、「10GHzにおいて誘電率=3.65を有し」ている(構成1m)から、誘電体であると解され、本件発明1の「誘電体」に相当する。
(イ)甲1発明において、甲1発明の「カットアウト410」は、「セル412、414、416及び418を含」んでおり(構成1c)、それぞれのセルについて、「長さは、3.0mm~5.0mmの範囲であり、幅は、3.0mm~5.0mmの範囲であ」る(構成1d)から、FIG.4も参照すると、「カットアウト410」は、6.0mm~10mm四方の矩形であると解される。
(ウ)「カットアウト410」は、「単一の基材508を含み」(構成1f)、「基材508」は、「約1.5mmの厚さを有」する(構成1m)から、前記(イ)も考慮すると、「カットアウト410」に含まれる「基材508」は、6.0mm~10mm四方で厚さが約1.5mmであると解されるから、「面状」であるといえる。
(エ)前記(ア)及び(ウ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、「面状の誘電体」を備える点で一致する。
イ 発明特定事項Bについて
発明特定事項Bは、「前記誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属パターンを有するスーパーセルと、」というものである。
(ア)甲1発明の「導電層506」は、「1.0未満の銅密度を含み」(構成1n)、「パターン化された層であ」る(構成1o)から、金属を含むパターンであると解される。
(イ)甲1発明の「導電層506」は、「基材508の上面上に設けられ」(構成1h)、単一の「基材508」は、「カットアウト410」に含まれる(構成1f)から、「カットアウト410」は、「基材508」の上面上に設けられた「導電層506」を含むと解される。ここで、「上面」を「第一面」と呼ぶことは任意である。
(ウ)甲1発明の「導電層506」は、「ダイポール」を形成しており(構成1g)、「カットアウト410」は、「x軸に沿って延在するダイポールを有する第1要素タイプ420と、y軸に沿って延在するダイポールを有する第2要素タイプ422とを含」む(構成1e)から、「カットアウト410」は、形状の異なる(延在する方向の異なる)複数の「ダイポール」すなわち「導電層506」を含むと解される。
(エ)前記(イ)及び(ウ)によれば、甲1発明の「カットアウト410」は、「基材508」の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の「導電層506」を含むと解される。
(オ)甲1発明の「カットアウト410」は、「セル412、414、416及び418を含」んでいる(構成1c)から、「カットアウト410」をセルよりも大きな単位として「スーパーセル」と呼ぶことは任意である。
(カ)前記(ア)、(エ)及び(オ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属を含むパターンを有するスーパーセル」を備える点で共通するものの、本件発明1の「パターン」が「金属パターン」であるのに対し、甲1発明の「導電層506」は、「金属を含むパターン」である点で相違する。
ウ 発明特定事項Cについて
発明特定事項Cは、「前記誘電体において、前記第一面と反対側の第二面上に設けられた金属層と、」というものである。
甲1発明の「導電層510」は、「1.0未満の銅密度を含」む(構成1n)から、金属を含む層であると解される。
甲1発明の「導電層510」は、「基材508の上面と反対側の下面上に設けられ」(構成1i)、「下面」を「第二面」と呼ぶことは任意である。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「前記誘電体において、前記第一面と反対側の第二面上に設けられた金属を含む層」を備える点で共通するものの、本件発明1の「層」が「金属層」であるのに対し、甲1発明の「導電層510」は、「金属を含む層」である点で相違する。
エ 発明特定事項Dについて
発明特定事項Dは、「前記スーパーセルを覆うように配置され、表面における純水接触角が90°以上である防汚層と、」というものである。
甲1発明の「上層502」は、「接合層504を介して導電層506を覆」っている(構成1j)ので、本件発明1と甲1発明とは、「前記スーパーセルを覆うように配置された層」を備える点で共通するものの、本件発明1と甲1発明とは、前記層が、本件発明1では「表面における純水接触角が90°以上である防汚層」であるのに対し、甲1発明では「上層」であって、その機能及び純水接触角が不明である点で相違する。
オ 発明特定事項Eについて
発明特定事項Eは、「前記誘電体と前記防汚層との間、および前記スーパーセルと前記防汚層との間に位置する接着層と、」というものである。
甲1発明の「上層502」は、「接合層504を介して導電層506を覆」っている(構成1j)ので、「接合層504」は、「カットアウト410」に含まれる「導電層506」と「上層502」との間に位置する接着層であるといえる。
また、甲1発明の「カットアウト410」において、「ダイポール」すなわち「導電層506」が形成されていない部分においては、「カットアウト410」に含まれる「基材508」と「上層502」との間に「接合層504」が位置すると解される。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「前記誘電体と前記層との間、および前記スーパーセルと前記層との間に位置する接着層」を備える点で共通する。(本件発明1の「防汚層」に係る相違点は、前記エのとおり。)
カ 発明特定事項Fについて
発明特定事項Fは、「前記防汚層および前記接着層のトータルの誘電率εrが2.9以下であり、」というものである。
甲1発明の「上層502」の誘電率は1.1であり(構成1k)、「接合層504」の誘電率は2.32である(構成1l)から、「上層502」及び「接合層504」のトータルの誘電率は、1.1超2.32未満と評価でき、これは、2.9以下の値である。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「前記層および前記接着層のトータルの誘電率εrが2.9以下であ」る点で共通する。(本件発明1の「防汚層」に係る相違点は、前記エのとおり。)
キ 発明特定事項Gについて
発明特定事項Gは、「平面視において、前記防汚層により前記スーパーセルが視認できなくなっている、」というものである。
甲1発明において、「上層502」により「カットアウト410」が視認できなくなっているか否かは不明である。
ク 発明特定事項Hについて
発明特定事項Hは、「ミリ波反射建装材。」というものである。
甲1発明の「リフレクトアレイアンテナ404」は、「所定の入射角度においてBS102から信号を受け取り、この信号を1つ又は複数の指向性ビームとして反射する」(構成1a)から、電磁波反射材である。
本件明細書の「28GHz帯のミリ波」(【0028】)との記載によれば、本件発明1の「ミリ波」には28GHz帯の電磁波が包含されると解される。
そして、甲1発明の動作周波数は、「27.5GHz~28.5GHzの範囲である」(構成1p)である。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「ミリ波反射材」である点で共通するものの、本件発明1のミリ波反射材は、「ミリ波反射建装材」であるのに対し、甲1発明の「リフレクトアレイ404」は、建装材であるか否かが不明である点で相違する。
ケ 本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点
前記ア~クによれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「面状の誘電体と、
前記誘電体の第一面上に設けられ、形状の異なる複数の金属を含むパターンを有するスーパーセルと、
前記誘電体において、前記第一面と反対側の第二面上に設けられた金属を含む層と、
前記スーパーセルを覆うように配置された層と、
前記誘電体と前記防汚層との間、および前記スーパーセルと前記防汚層との間に位置する接着層と、
を備え、
前記層および前記接着層のトータルの誘電率εrが2.9以下である、
ミリ波反射材。」である点。
〈相違点1-1〉
本件発明1の「パターン」が「金属パターン」であるのに対し、甲1発明の「導電層506」は、「金属を含むパターン」である点。(発明特定事項B)
〈相違点1-2〉
本件発明1の「層」が「金属層」であるのに対し、甲1発明の「導電層510」は、「金属を含む層」である点。(発明特定事項C)
〈相違点1-3〉
前記層が、本件発明1では「表面における純水接触角が90°以上である防汚層」であるのに対し、甲1発明では「上層」であって、その機能及び純水接触角が不明である点。(発明特定事項D、F)
〈相違点1-4〉
本件発明1は、「平面視において、前記防汚層により前記スーパーセルが視認できなくなっている」のに対し、甲1発明においては、「上層502」により「カットアウト410」が視認できなくなっているか否かは不明である点。(発明特定事項G)
〈相違点1-5〉
本件発明1のミリ波反射材は、「ミリ波反射建装材」であるのに対し、甲1発明の「リフレクトアレイ404」は、建装材であるか否かが不明である点。(発明特定事項H)
(4)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1-3~相違点1-5について判断する。
ア 本件明細書の「ミリ波反射板は、その原理上、比較的大きい面積の建装材として建造物の内面や外面に取り付けることで、不感地帯を効率よく解消することが期待できる。」「しかしながら、屋外に設置される場合、特許文献1に記載のリフレクトアレイを建装材に適用するには、防汚性を良好にする必要がある。さらに、金属パターンが劣化すると、反射特性が著しく低下したり消失したりするため、これを長期間にわたり保護することも必要になる。」(【0007】)との記載、及び、「各例の建装材を、アクリル系接着剤を用いてスチール製のパーティションに貼り付けた。10人の試験員が各例の建装材を目視し、化粧シートあるいは壁材として違和感を覚えるか否か評価した。違和感なしと評価した試験員が6名以上の場合を合格とし、5名以下の場合を不合格とした。」(【0041】)との記載を参照すると、本件発明はリフレクトアレイを屋外に設置される建装材(相違点1-5)に適用するにあたり(【0007】)、化粧シート又は壁材として違和感を覚えないようにする目的で(【0041】)、防汚層によりスーパーセルを視認できなくしている(相違点1-4)とともに、長期間にわたり金属パターンの劣化を防止する目的で(【0007】)、防汚層の表面における純水接触角が90°以上としている(相違点1-3)と解される。すなわち、相違点1-3及び1-4は、いずれも、リフレクトアレイを屋外に設置される建装材に適用すること、すなわち、相違点1-5を前提として生じるものである。
よって、相違点1-3~1-5は、一体的に判断する必要がある。
イ 甲1の1の[0092]、[0093]及びFIG.20を参照すると、リフレクトアレイアンテナ2010及び2012を、構造物(例えば、屋根、壁、柱、窓、など)の表面上に配置すること、より具体的には、スタジアム2023のルーフラインのエッジ上に配置することについて開示があるものの、甲1の1には、リフレクトアレイアンテナを建装材に適用することについては開示も示唆もされていない。むしろ、FIG.20では、リフレクトアレイアンテナ2010及び2012は、スタジアム2023から際立っており、化粧シート又は壁材として違和感を覚えるものであるから、甲1発明の「リフレクトアレイアンテナ404」を建装材に適用することは想定されていないと解される。
甲2には、「屋外用のアンテナには、直射日光、雨、雪、鳥などからの保護を目的として、一般に、レドームと称される、誘電体からなるカバーが設けられている。」(【0002】)との記載があり、アンテナを屋外に設置する際にレドームを設け、直射日光、雨、雪、鳥などからアンテナを保護することは周知であったと認められるが、リフレクトアレイアンテナを建装材に適用することについては記載も示唆もなく、レドームを化粧シート又は壁材として違和感を覚えないものとすることについても記載も示唆もない。
また、その他の証拠を参照しても、リフレクトアレイアンテナを建装材に適用することや、レドームを建装材とすることについては記載も示唆もない。
したがって、相違点1-5に係る構成は、甲1発明から容易に想到し得たものとは認められない。
ウ 加えて、甲1発明の「上層502」は、「ROHACELL HF71に対応し、0.508mm~1.524mmの厚さを有」する(構成1k)が、この「上層502」によって導電層506が視認できないようになっているかは不明である。
甲10によれば、ROHACELLは、フォームすなわち発泡性の材料であるから、透過光を散乱する作用があるとは解されるものの、不透明度がどの程度であるのかは不明であり、0.508mm~1.54mmの厚さのROHACELL HF71によって、導電層506が視認できなくなるかも不明である。
また、甲10によれば、ROHACELL HF71の用途にレドームがあるが、これは周知のレドームの用途に過ぎず、建装材としての用途を想定したものとは認められないから、「上層502」は、化粧シート又は壁材として違和感を覚えないように、「カットアウト410」の導電層506を視認できなくする目的で設けられたものとは認められない。
その他の証拠を参照しても、レドームを、化粧シート又は壁材として違和感を覚えないものとすることについては記載も示唆もない。
したがって、相違点1-4に係る構成は、甲1発明から容易に想到し得たものとは認められない。
エ さらに、レドームは、「直射日光、雨、雪、鳥などからの保護を目的」としたものである(甲2【0002】)が、汚れの防止は必ずしも目的としていない。
したがって、甲1発明の「上層502」のROHACELL HF71が、「防汚」を目的として設けられているということはできないし、「上層502」を「防汚層」とする動機付けもないため、相違点1-3に係る構成は、甲1発明から容易に想到し得たものとは認められない。
オ 前記イ~エによれば、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。
(5)申立人の主張についての判断
申立人は、防汚層表面の純水接触角を90°以上とすることは、従来周知の事項にすぎないと主張し、その証拠として甲2、甲3、甲5、甲6及び甲8を挙げている。(申立書22~24頁)
しかしながら、申立人の主張は、周知のレドームを「防汚層」と同一視することに立脚しているが、前記(4)エで触れたように、レドームは必ずしも「防汚」を目的としないため、申立人の主張は採用できない。
(6)本件発明1の甲1発明に対する進歩性の有無
以上のとおりであるから、本件発明1は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。
(7)本件発明2~5の甲1発明に対する進歩性の有無
本件発明2~5は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明2~5と甲1発明との相違点には、相違点1-3~1-5が少なくとも含まれる。
よって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5は、当業者が甲1発明から容易に発明をすることができたものとは認められない。
(8)理由2Aについての小括
以上のとおり、本件発明は、いずれも、当業者が甲1発明から容易に発明をすることができたものとは認められないから、理由2Aには理由がない。
6 申立理由についての総括
前記1~5のとおりであるから、申立人が主張する申立理由(理由1~理由3C)のいずれにも理由がない。
第5 むすび
前記第4によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700007