特許異議申立
2023-701191
美容組成物
- 審判番号
- 2023-701191
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-044136
- 登録番号
- 7270996
- 請求日
- 2023年11月10日
- 審決日
- 2024年11月20日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社東洋新薬
- 【権利者代理人】▲高▼津 一也
- 【異議申立人】金枝 禎二
- 審判長/審判官
- 審判長 前田 佳与子
- 審判官 吉田 佳代子
- 審判官 田中 耕一郎
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7270996号発明「美容組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7270996号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第7270996号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7270996号(以下「本件特許」という。)に係る特願2021-44136号は、平成27年6月18日に出願された特願2019-104548号の一部を、令和3年3月17日に分割して新たな特許出願としたものであって、令和5年4月28日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年5月11日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年11月10日に異議申立人 金枝 禎二(以下「申立人」という。)により請求項1~3に係る本件特許に対する特許異議の申立てがされた。
以後の主な経緯は以下のとおりである。
令和5年11月10日 異議申立書の提出
令和6年 1月24日付け 取消理由通知書
同年 3月27日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 5月21日 意見書の提出(申立人)
同年 6月13日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 8月 7日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年10月 1日 意見書の提出(申立人)
なお、令和6年3月27日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正について
1 訂正の内容
令和6年8月7日にされた訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、一群の請求項である請求項1~3について請求するものであって、次の訂正事項1からなるものである(なお、下線は訂正箇所を示す。)
<訂正事項1>
特許請求の範囲の請求項1に
「 セラミド類と、リシンとを含有することを特徴とする経口用美容組成物(ただし、アガリクス茸を含有する経口用組成物を除く)。」と記載されているのを、
「 セラミド類と、リシンとを含有することを特徴とする経口用美容組成物(ただし、以下の(1)~(6)の経口用組成物を除く)。
(1)アガリクス茸を含有する経口用組成物
(2)コンドロイチン硫酸を含有する経口用組成物
(3)ローヤルゼリーを含有する経口用組成物
(4)卵殻膜を含有する経口用組成物
(5)ハトムギを含有する経口用組成物
(6)プラセンタを含有する経口用組成物」
に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1に係る特許発明の「経口用美容組成物(ただし、アガリクス茸を含有する経口用組成物を除く。)」から、除外される経口用組成物として、「(2)コンドロイチン硫酸を含有する経口用組成物、(3)ローヤルゼリーを含有する経口用組成物、(4)卵殻膜を含有する経口用組成物、(5)ハトムギを含有する経口用組成物、(6)プラセンタを含有する経口用組成物」を追加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
なお、本件においては、訂正前の全ての請求項1~3について特許異議申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
上記のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 訂正発明
本件訂正は、上記第2のとおり認められるので、請求項1~3に係る発明(以下、請求項の番号に従い、「訂正発明1」などといい、まとめて「訂正発明」という。)は、令和6年8月7日提出の訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次のとおりのものと認める(下線は訂正箇所を示す。)。
「【請求項1】
セラミド類と、リシンとを含有することを特徴とする経口用美容組成物(ただし、以下の(1)~(6)の経口用組成物を除く)。
(1)アガリクス茸を含有する経口用組成物
(2)コンドロイチン硫酸を含有する経口用組成物
(3)ローヤルゼリーを含有する経口用組成物
(4)卵殻膜を含有する経口用組成物
(5)ハトムギを含有する経口用組成物
(6)プラセンタを含有する経口用組成物
【請求項2】
肌の保湿力を高めるために用いる肌保湿用組成物であることを特徴とする請求項1記載の経口用美容組成物。
【請求項3】
皮膚バリア機能改善又は向上させるために用いる皮膚バリア機能改善又は向上用組成物であることを特徴とする請求項2記載の経口用美容組成物。」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由及び取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
1 特許異議の申立ての理由の概要
本件特許の設定登録時の請求項1~3に係る特許について、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由の概要は以下のとおりである。
〔申立理由1:サポート要件〕
請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
〔申立理由2:実施可能要件〕
請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
〔申立理由3:新規性〕
請求項1~3に係る発明は、甲第1号証~甲第8号証(枝番号を含む。以下、各甲号証の番号に従い「甲1」などという。)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
〔申立理由4:進歩性〕
請求項1~3に係る発明は、以下の甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~3に係る特許は、同法113条第2号に該当し取り消されるべきものである。(甲号証の順に記す。)
・甲1
・甲2、又は、甲2及び技術常識(甲1、甲13~甲16)
・甲3及び技術常識(甲10-1、甲11及び甲12)、あるいは更なる技術常識(甲1、甲13~甲16)
・甲4-1及び技術常識(甲9)
・甲5及び技術常識(甲9、甲10-1及び甲18)、あるいは更なる技術常識(甲1、甲13~16)
・甲6及び技術常識(甲9、甲11、甲12及び甲18)、あるいは更なる技術常識(甲1、甲13~甲16)
・甲7及び技術常識(甲10-1)、あるいは更なる技術常識(甲1、甲13~甲16)
・甲8及び技術常識(甲10-1)、あるいは更なる技術常識(甲1、甲13~甲16)
〔証拠方法〕
甲1:米国特許出願公開第2005/0089501号明細書(2005年4月28日公開)
甲2:株式会社アルマード、「TO-II BEAUTY EVOLUTION」発売のニュースリリース、2014年12月4日発表
甲3:HEALTH & BEAUTY 健康美容EXPO、「ファスティング理論を応用した全身ケアの美容食品「日焼け予防ゼリー」」製品紹介サイトのページのアーカイブ、2015年4月18日掲載、https://web.archive.org/web/20150418202020/http://www.e-expo.net/information/jelly/
甲4-1:株式会社資生堂、SHISEIDO NEWS RELEASE「のむ、生む、減らさない。きれいがリッチな毎日へ。「ベネフィーク コラーゲン ロイヤルリッチ」誕生」、2011年9月20日公開
甲4-2:株式会社資生堂サイトページ、https://corp.shiseido.com/jp/news/search.html?k1=&ca=ALL&ci=&pa=ALL&pu=&yf=2011&mf=1&df=1&yt=2011&mt=12&dt=31&p=2
甲5:京都薬品ヘルスケア株式会社、「美しさと輝きを プラセンタ Beauty Care」の製品紹介サイトのページのアーカイブ、2014年8月15日掲載、https://web.archive.org/web/20140815190127/http://item.rakuten.co.jp:80/kyhc/beautycare/
甲6:株式会社 廣貫堂、「うつくし堂シーセレクト」の製品紹介サイトのページのアーカイブ、2010年11月13日掲載、https://web.archive.org/web/20101113081319/http://www.koukandou.co.jp:80/product/p_list/detail.php?pcode=17
甲7:「エクスプラセンタ」の製品紹介サイトページのアーカイブ、2015年4月11日掲載、https://web.archive.org/web/20150411093104/http://www.itohkampo.co.jp:80/products/1148952.html
甲8:「LANIE-EX(レニエ-EX)」の製品紹介サイトページのアーカイブ、2015年2月20日掲載、https://web.archive.org/web20150220014741/http:/www.sun-health.co.jp:80/contents/product/lanie.html
甲9:日本食品保蔵科学会誌、2010年、Vol.36、No.4、p.173-176
甲10-1:食品と開発、2009年、Vol.44、No.9、p.61-64
甲10-2:https://jglobal.jst.go.jp/en/detail?JGLOBAL_ID=200902219390141266
甲11:ミツバチ科学、1982年、Vol.3、No.2、p.69-74
甲12:ミツバチ科学、1998年、Vol.19、No.1、p.1-8
甲13:特開平11-113530号公報
甲14:特開2005-295995号公報
甲15:FRAGRANCE JOURNAL、1995年、第23巻第1号、p.81-89
甲16:日本栄養・食糧学会誌、2013年、第66巻第4号、p.177-183
甲17:特許第3308433号公報
甲18:naturie(ナチュリエ)紹介サイトページ、https://www.naturie-net.jp/coixseed
(以上、特許異議申立書に添付)
参考資料1:「プラセンタ食品 品質規格基準 Placenta(公示 No.65)」、公益財団法人 日本健康・栄養食品協会、平成25年9月20日、p.1-11
参考資料2:再公表特許WO2012/157734号
参考資料3:「グルコサミン・コンドロイチン・コラーゲン等を含んだ食品の広告について」、内閣府 食品安全委員会 食品安全総合情報システムのサイトページ 2008年10月17日、https://www.fsc.go.jp/fsciis/questionAndAnswer/show/mob07018000025
参考資料4:医薬品添付文書「コンドロイチンZ錠」、ゼリア新薬工業株式会社、2011年4月改訂(第5版)
参考資料5:特開昭55-19073号公報
(以上、令和6年5月21日提出の意見書に添付)
参考資料6:化粧品事典、丸善株式会社、平成15年12月15日、p.381~383、p.614~615
参考資料7:特開2009-73775号公報
参考資料8:特開平11-308977号公報
参考資料9:健康産業新聞、2014年8月13日、第1541号、p.9~13
参考資料10:近畿大学農学部紀要、2011年3月、第44号、p.1~8
参考資料11:ジャパンフードサイエンス:食品加工と包装技術、2008年7月、第47巻第7号(通号556)、p.28~33
(以上、令和6年10月1日提出の意見書に添付)
2 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
本件訂正前の、令和6年3月27日にされた訂正の請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~3に係る特許について、当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。
〔取消理由3:新規性〕
請求項1~3に係る発明は、以下の甲号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項3号の規定に違反してなされたものであるから、請求項1~3に係る特許は、同法113条第2号に該当し取り消されるべきものである。(甲号証の順に記す。)
・甲7及び技術常識(参考資料1及び2)
・甲8及び技術常識(参考資料1及び2)
〔取消理由4:進歩性〕
請求項1~3に係る発明は、以下の甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~3に係る特許は、同法113条第2号に該当し取り消されるべきものである。(甲号証の順に記す。)
・甲1及び技術常識(参考資料3及び4)
・甲7及び技術常識(参考資料1及び2)並びに周知技術(甲14~甲16)
・甲8及び技術常識(参考資料1及び2)
3 令和6年1月24日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要
本件特許の設定登録時の請求項1~3に係る特許について、当審が令和6年1月24日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。
〔取消理由1:新規性〕
請求項1~3に係る発明は、以下の甲号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項3号の規定に違反してなされたものであるから、請求項1~3に係る特許は、同法113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
〔取消理由2:進歩性〕
請求項1~3に係る発明は、以下の甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~3に係る特許は、同法113条第2号に該当し取り消されるべきものである。(甲号証の順に記す。)
・甲1及び技術常識(甲16)
・甲2及び技術常識(甲11)並びに周知技術(甲14~甲16)
・甲3及び技術常識(甲11)
・甲4及び技術常識(甲9)並びに周知技術(甲14~甲16)
・甲5及び技術常識(甲9)並びに周知技術(甲14~甲16)
・甲6及び技術常識(甲9及び甲11)並びに周知技術(甲14~甲16)
第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 引用文献
(1) 甲1に記載された事項及び発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。なお、甲1は外国語の文献であるため、文章については原文と合議体による翻訳文とを併記し、表については原文のみを記載した。なお、下線は合議体が付したものであり、以下他の甲号証及び参考資料についても同様である。
(甲1-1)
「1.Composition based on natural substances, useful in the maintenance of the correct skin hydration and in the prevention and/or the treatment of the effects of skin ageing, in particular wrinkles, comprising in combination:
ceramides in the form of extract of Oryza sativa,
fish cartilage hydrolysate, and one or more amino acids selected from L-proline, L-lysine, L-valine and L-cysteine.
・・・
6. Composition according to claim 1, which is in a dosage form for oral administration.
7. Composition according to claim 6, wherein the dosage form for oral administration is designed for the administration of:
from 4 to 80 mg/day of ceramides from rice,
from 100 to 1000 mg/day of fish cartilage hydrolysate, and
from 20 to 200 mg/day of one or more amino acids selected from L-proline, L-lysine, L-valine and L-cysteine.
・・・
9. Use of a composition according to claim 1 for the preparation of a cosmetic product or a food supplement for the maintenance of the correct skin hydration and the prevention and/or the treatment of the effects of skin ageing, in particular wrinkles.
1.適切な皮膚の水分量の維持、並びに皮膚の老化、特にシワの影響の予防及び/又は治療に有効な、天然物質に基づく組成物であって、
イネ抽出物の形態のセラミド、
魚由来の軟骨加水分解物、及び
L-プロリン、L-リシン、L-バリン及び L-システインから選択される1つ又は複数
のアミノ酸と、
を含む組成物。
・・・
6.経口投与用の剤形である、請求項1に記載の組成物。
7.前記経口投与用の剤形が、
4~80mg/日の米由来セラミド、
100~1000mg/日の魚由来の軟骨加水分解物、並びに
20~200mg/日の L-プロリン、L-リシン、L-バリン及び L-システイン
から選択される1つ又は複数のアミノ酸と、を投与するように設計されている、請求項6に記載の組成物。
・・・
9.皮膚の適切な水分量を維持し、皮膚の老化、特にしわの予防及び/又は治療するための化粧品又は栄養補助食品の製造のための、請求項1に記載の組成物の使用。」(特許請求の範囲)
(甲1-2)
「[0002] Hydration of the horny layer of the epidermis is an essential condition for keeping the skin smooth and soft, with no opacity or tendency for desquamation. Moreover, the maintenance of a correct skin hydration makes it possible to prevent and/or combat some of the effects of skin ageing, in particular wrinkles.
[0003] The term skin hydration is used to refer to the water present in the horny layer. This consists of broad, flat cells (the corneocytes) im mersed in a lipid matrix, which gives rise to an elastic cushion. On average, the horny layer consists of about 10 layers of cells about 1 micrometer thick, whose size depends on age, sex and various factors, both internal and environmental. The cytoplasm of the corneocytes consists almost exclusively of a network of keratin bound together by large numbers of disulphide bonds.
[0002] 表皮の角質層の水分量は、透明感のなさや皮膚剥離の傾向のない滑らかで柔らかい肌を保つために不可欠な条件である。さらに、正しい皮膚の水分量を維持することにより、皮膚の老化の影響の一部、特にシワを予防及び/又は対処することが可能になる。
[0003] 皮膚の水分量という用語は、角質層に存在する水分を指すのに使用される。これは、脂質マトリックスに浸された扁平細胞(角質細胞)で構成されており、弾力性のあるクッションが形成される。平均して、角質層は厚さ約1マイクロメートルの約10層の細胞で構成されており、そのサイズは年齢、性別、内部及び環境の両方のさまざまな要因によって異なる。角質細胞の細胞質は、ほとんど独占的に、多数のジスルフィド結合によって結合されたケラチンのネットワークから構成される。」
(甲1-3)
「[0016]In particular, the extract of rice (Oryza sativa) is rich in ceramides, in other words lipids in which sphyngosine (a long-chain aliphatic amino alcohol) is bound to a molecule of fatty acid by an amide linkage. Clinical studies have demonstrated that the resistance of the cutaneous barrier to external agents diminishes with increasing age, in parallel with the diminution in the ceramides content. The hydrating effect of the ceramides has also been demonstrated; these are absorbed along the digestive tract and via the blood stream reach the horny layer where they improve the hydration and the barrier effect of the skin.
・・・
[0018]The fish cartilage hydrolysate used in the context of the invention contains as the active principle chondroitin sulphate which consists of a mixture of acidic mucopolysaccharides, formed from a linear repetitive unit containing various sulphate groups. The basic units are made up of N-acetyl-galactosamine and glucuronic acid.
[0019] In a particularly preferred embodiment of the invention, the fish cartilage hydrolysate is a ray cartilage hydrolysate.
[0020] For the preparation of the composition of the invention, standardised, commercially available fish cartilage hydrolysates can be used.
[0021]The amino acids used in the composition of the invention, as mentioned above, form part of the NMF, increasing the hygroscopicity of the horny layer of the epidermis and hence its ability to retain water. These components are also readily available commercially.
[0022] The trials performed by the applicant have made it possible to confirm that the combination of the above-mentioned active principles exerts an effective action in the maintenance of the correct skin hydration and in the prevention and/or in the cosmetic and/or therapeutic treatment of the effects of skin ageing. The composition of the invention can thus be used for the preparation of a cosmetic product, a food supplement or a medicament for the abovementioned treatments.
[0016]特に、米(Oryza sativa)の抽出物にはセラミド、つまりスフィンゴシン(長鎖脂肪族アミノアルコール)がアミド結合によって脂肪酸分子に結合した脂質が豊富に含まれている。臨床研究では、加齢に伴いセラミド含有量の減少と並行して、外部因子に対する皮膚バリアの抵抗力が低下することが実証されている。セラミドによる保湿効果も実証されている。これらは消化管に沿って吸収され、血流を介して角質層に到達し、皮膚の水分量とバリア効果を向上させる。
・・・
[0018]本発明の文脈で使用される魚軟骨加水分解物は、様々な硫酸基を含む直鎖状反復単位から形成される酸性ムコ多糖の混合物からなるコンドロイチン硫酸を活性成分として含有する。基本単位はN-アセチルガラクトサミンとグルクロン酸からなる。
[0019]本発明の特に好ましい実施形態では、魚軟骨加水分解物はエイ軟骨加水分解物である。
[0020]本発明の組成物の調製には、標準化された市販の魚軟骨加水分解物を使用することができる。
[0021]本発明の組成物に使用されるアミノ酸は、上述したように、NMF(合議体注:「Natural Moisturizing Factors(天然保湿因子)」の略([0009]を参照。))の一部を形成し、表皮の角質層の吸湿性を高め、したがって保水能力を高める。これらの成分は市販でも容易に入手可能である。
[0022]本出願人により実施された試験により、上記の活性成分の組み合わせが、適切な皮膚の保持の維持、皮膚の老化の影響の予防及び/又は美容的及び/又は治療的処置において有効な作用を発揮することが確認された。したがって、本発明の組成物は、上記の治療のための化粧品、食品サプリメント又は医薬品の調製に使用することができる。」
(甲1-4)
「[0038] Capsules with a soft gelatine envelope were used, which contained:
[0039] rice ceramides: 14 mg/cap
[0040] ray cartilage hydrolysate: 150 mg/cap
[0041] L-proline: 40 mg/cap
[0042] L-lysine base: 40 mg/cap
[0043] L-valine: 40 mg/cap
[0044] L-cysteine base: 20 mg/cap
[0045] concentrated natural tocopherols: 25 mg/cap
[0046] lycopene: 10 mg/cap
[0047] borage oil: 60 mg/cap
[0048] fish oil: 180 mg/cap
[0049] wheat germ oil: 127 mg/cap
[0050] soya lecithin: 7 mg/cap
[0051] glyceryl monostearate: 17 mg/cap
[0052]The experiment was performed on a total of 32 subjects, 16 of whom were treated with the product under test and 16 with a placebo. The daily dosage was 2 caps (morning and evening). The experiment was performed for a total of 40 days, with an intermediate visit after 20 days.
[0053] During the visits, the subjects in the experiment were subjected to two types of instrument evaluation: evaluation of the skin hydration by corneometry and analysis of the image of the face by Visioscan which, through processing of the parameters shown in the notes to Table 2, makes it possible to obtain information both on the skin hydration and on the fine structure of the skin.
[0054] Further, the subjects were asked to express a judgement, with a number from 0 to 10, on the following parameters: hydration, tension, desquamation, elasticity, make-up, colour, tone and sebum.
[0054] The results obtained are illustrated in Tables 1 (corneometry), 2 (Visioscan) and 3 (Self-assessment).
[0055]
[図:0001419329000001.jpg]
[0056]
[図:0001419329000002.jpg]
[図:0001419329000003.jpg]
[0057]
[図:0001419329000004.jpg]
[0058] While the subjects treated with placebo did not display significant changes in the skin hydration, in the group treated with the composition of the invention a significant increase in skin hydration as measured by corneometry was recorded.
[0059] Moreover, analysis of the image of the face with the Visioscan showed a decrease in the depth of the microrelief, of the microwrinkliness, of the wrinkliness and of the desquamation index, and a concomitant increase in the smoothness and the homogeneity of the skin and in the hydration of the horny layer.
[0060] These instrument results indicate that the combination of the active principles characteristic of the composition of the invention exerts an effective hydration action on the skin which is also reflected in an improvement of the parameters correlated with the fine structure of the skin.
[0061] The instrument results obtained are moreover confirmed in the self-assessment test.
[0038] 以下の成分が含まれる、ソフトゼラチン外皮を備えたカプセルが使用された:
[0039] 米セラミド:14mg/カプセル
[0040] エイ軟骨の加水分解物:150mg/カプセル
[0041] L-プロリン:40mg/カプセル
[0042] L-リシン塩基:40mg/カプセル
[0043] L-バリン:40mg/カプセル
[0044] L-システイン塩基:20mg/カプセル
[0045] 濃縮天然トコフェロール:25mg/カプセル
[0046] リコピン:10mg/カプセル
[0047] ルリヂサ油:60mg/カプセル
[0048] 魚油:180mg/カプセル
[0049] 小麦胚芽油:127mg/カプセル
[0050] 大豆レシチン:7mg/カプセル
[0051] モノステアリン酸グリセリル:17mg/カプセル
[0052] 実験は合計32人の被験者に対して行われ、そのうち16人には試験対象の製品が投与され、16人にはプラセボが投与された。1日の摂取量は2カプセル(朝夕)であった。実験は合計40日間行われ、20日後に中間訪問が行われた。
[0053] 訪問中、実験の対象者は2種類の機器評価を受けた。1つは角質測定法による肌の水分量の評価、もう1つはVisioscanによる顔の画像分析であり、肌の水分量と肌の微細構造の両方の情報を得ることができる。
[0054] さらに、被験者は、水分量、張り、剥離、弾力性、メイクアップ、色、色合い、皮脂のパラメータについて、0から10までの数字で判断をするように求められた。
[0055] 得られた結果を表1(角質測定)、表2(Visioscan)、及び表3(自己評価)に示す。
・・・
[0058] プラセボで治療した被験者は皮膚水分量に有意な変化を示さなかったが、本発明の組成物で治療したグループでは角質測定法で測定した皮膚水分量の有意な増加が記録された。
[0059] さらに、Visioscanによる顔の画像分析では、微細凹凸の深さ、微細なしわ、しわの深さ、剥離指数が減少し、同時に皮膚の滑らかさと均質性と角質層の水分量とが増加していることが示された。
[0060] これらの機器分析による結果は、本発明の組成物に特徴的な有効成分の組合せが皮膚に効果的な水分補給作用を及ぼし、これが皮膚の微細構造と相関するパラメータの改善にも反映されることを示している。
[0061] さらに、得られた機器の結果は自己評価テストで確認される。」
イ 甲1に記載された発明
上記アの甲1に記載された事項からみて、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「適切な皮膚の水分量の維持、並びに皮膚の老化、特にシワの影響の予防及び/又は治療のための、天然物質に基づく経口投与用の組成物であって、
イネ抽出物の形態のセラミドと、
魚由来の軟骨加水分解物と、
L-プロリン、L-リシン、L-バリン及びL-システインから選択される1つ又は複数のアミノ酸と、
を含む組成物。」
(2) 甲7に記載された事項及び発明
ア 甲7に記載された事項
甲7には以下の事項が記載されている。
(甲7-1)
「ワンランク上の美へ。高濃度プラセンタエキス配合の美容ドリンク。
毎日忙しいけれど、キレイにこだわりたい女性のために。純度100%の高濃度プラセンタエキスを配合した美容ドリンクで、手軽に続けられる「飲むエステ」はいかが?内側からあなたのキレイと元気をサポートします。0kalで、すっきりおいしいレモン&ライム味。」(本文1~6行)
その主要成分である「プラセンタエキス」を除く動機付けはない。
よって、訂正発明1は、当業者が甲7発明から容易に発明をすることができたものではない。
(甲7-2)
「清涼飲料水として、1日1本を目安に、そのままお飲みください。」(「お召し上がり方」の項、1行)
(甲7-3)
「1本(50ml)中:プラセンタエキス 100mg(生換算2,600mg)/コラーゲン300mg/低分子ヒアルロン酸 5mg、セラミド 200μg及びコエンザイムQ10 3mg」(「主要成分」の項、1~3行)
イ 甲7に記載された発明
上記アの甲7に記載された事項からみて、甲7には、以下の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されている。
「50ml中、プラセンタエキス100mg(生換算2,600mg)、コラーゲン300mg、低分子ヒアルロン酸5mg、セラミド200μg及びコエンザイムQ10 3mgを含む美容ドリンク。」
(3) 甲8に記載された事項及び発明
ア 甲8に記載された事項
甲8には以下の事項が記載されている。
(甲8-1)
「1.粉末のコラーゲンを使用せず、原料より抽出したコラーゲンを濃縮、低分子化し、そのまま使用しています。
2.コラーゲン以外にヒアルロン酸、セラミド、プラセンタ、トレハロース、ビオチン、ビタミンC、ビタミンB1、B2、B6の9つの成分を質と量にこだわって配合しています。
3.保健機能食品(栄養機能食品)です。
・・・
●ヒアルロン酸
体内に存在する成分(多糖類)で、水分をゲル化する能力に優れ、減少すると水分維持が困難になり、ハリ・キメに影響がでます。みずみずしさの素です。
●セラミド
肌の角質の細胞と細胞の間にある脂質で、お肌の貯水量をアップしバリアーの役目を支援するうるおい成分です。
●プラセンタ
アミノ酸やミネラルなどを含み、ターンオーバーを支える美容の強い味方です。」(「●特徴」の項、3~17行)
(甲8-2)
「コラーゲンペプチド 8,000mg
ヒアルロン酸 12mg
セラミド 1.2mg
プラセンタエキス粉末 100mg
トレハロース 3,500mg
ビオチン 85μg
ビタミンC 700mg
ビタミンB1 1.7mg
ビタミンB2 1.7mg
ビタミンB6 1.8mg 」(「●栄養成分[30ml中]」の項、1~10行)
イ 甲8に記載された発明
上記アの甲8に記載された事項からみて、甲8には以下の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されていると認められる。
「肌の貯水量をアップしバリアーの役目を支援し、ターンオーバーを支えるための、30ml中、コラーゲンペプチド8,000mg、ヒアルロン酸12mg、セラミド1.2mg、プラセンタエキス粉末100mg、トレハロース3,500mg、85μg、ビタミンC700mg、ビタミンB1 1.7mg、ビタミンB2 1.7mg及びビタミンB6 1.8mgを含む保健機能食品。」
(4) 参考資料1に記載された事項
申立人が令和6年5月21日に提出した意見書に添付した参考資料1には、以下の事項が記載されている。
(参考1-1)
「1 適用範囲(注1)
この規格基準は「プラセンタエキス含有食品」であって、形状が粉末状、顆粒状、粒状、ペースト状、ゼリー状、液状、錠型、カプセル型等のもの、またはこれらの品質保持のためゼラチン、糖類、等で被包したものに適用する。」(1頁1~4行)
(参考1-2)
「4 原材料規格◆
異物、有害物質の混入がなく、衛生的な取り扱いがなされているものであり、下記の原材料規格に適合するものであること。
(1) プラセンタエキス
[1]定義(注15)(合議体注:「[1]」は、原文では丸囲いの「1」を示す。以下同様である。)
ここでいう「プラセンタエキス」とは、「プラセンタ」を原料として酵素分解・酸分解などの方法で抽出して得られたもので、液体またはペースト状のものをいう。
・・・
[6]遊離アミノ酸(注20)
アミノ酸分析機により測定した、遊離アミノ酸18種、アスパラギン及びタウリンのモル当量の総合計に対して、以下の条件を満たすこと。
・・・
ホ.トレオニン・バリン・メチオニン・ロイシン・イソロイシン・フェニルアラニン・ヒスチジン・リシンのピークをクロマトグラム上に認める。
・・・
(2) プラセンタエキス純末
[1] 定義(注26)
ここでいう「プラセンタエキス純末」とは、プラセンタエキスを凍結乾燥・噴霧乾燥などの方法で粉末化したものをいう。
・・・
[6]遊離アミノ酸(注30)
アミノ酸分析機により測定した、遊離アミノ酸18種、アスパラギン及びタウリンのモル当量の総合計に対して、以下の条件を満たすこと。
・・・
ホ.トレオニン・バリン・メチオニン・ロイシン・イソロイシン・フェニルアラニン・ヒスチジン・リシンのピークをクロマトグラム上に認める。」(2頁6行
~3頁15行)
(5) 参考資料2に記載された事項
申立人が令和6年5月21日に提出した意見書に添付した参考資料2には、以下の事項が記載されている。
(参考2-1)
「【0040】
評価試験1:高圧抽出プラセンタエキスと水溶性プラセンタエキスの成分比較試験
高圧抽出プラセンタエキスと水溶性プラセンタエキスの成分として、蒸発残留物(固形分量)、総窒素量(日本薬局方一般試験法 窒素定量法)、ヒアルロン酸量(ELISA法、ヒアルロン酸測定キット・生化学バイオビジネス株式会社)の定量分析を行い、表1に示した。また、遊離アミノ酸の分析も行い、表2に示した。」(【0040】)
(参考2-2)
「【表2】
[図:0001419329000005.jpg]
」(【0043】)
(6) 参考資料3の記載事項
申立人が令和6年5月21日に提出した意見書に添付した参考資料3には、以下の事項が記載されている。
(参考3-1)
「[2]コンドロイチン硫酸は、軟骨、結合組織、粘液に含まれるムコ多糖類の一種で、動植物性の食品に少量存在する。俗に「骨の形成を助ける」、「動脈硬化や高血圧を予防する」などといわれている。ヒトでの有効性については、骨関節炎の緩和に対する検討が行われているが、見解が一致しておらず、まれに上腹部痛、吐き気、などの副作用がみられる。安全性については、適切に用いれば経口摂取でもおそらく安全と思われるが、妊娠中・授乳中の安全性については十分なデータがないので使用は避ける。」(コメント元「食品安全委員会」の直後のコメントの[2]の項)
(7) 参考資料4の記載事項
申立人が令和6年5月21日に提出した意見書に添付した参考資料4には、以下の事項が記載されている。
(参考4-1)
「■用法・用量
コンドロイチン硫酸エステルナトリウムとして,通常成人1回0.3~1.2gを1日3回
経口投与する。なお,年齢,症状により適宜増減する。
■使用上の注意
1.副作用
総症例1,887例中37例(1.96%)に副作用が認められ,その主なものは発疹等の過敏症,食欲不振,下痢等の胃腸障害で重篤なものはなかった。・・・
[図:0001419329000006.jpg]
*:発現した場合は投与を中止すること。
・・・
3.妊婦,産婦,授乳婦等への投与
妊娠中の投与に関する安全性は確立されていないので,妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」
(8) 甲14に記載された事項
甲14には以下の記載がある。
「【0019】
実施例1 糖セラミド配合食品の製造
表1に示す組成の糖セラミド配合食品を製造した。
すなわち、ニップンセラミド(日本製粉製)、ジアシルグリセロール(DAG:花王製)、カゼイン、DL-メチオニン、コーンスターチ、α化コーンスターチ、シュークロース、セルロースパウダー、コーン油、AIN-76ミネラル混合、AIN-76Aビタミン混合、重酒石酸コリン(以上、オリエンタル酵母製)に、水を添加して加熱混和した後、押し出し成型後乾燥して、本発明品1を製造した。また、ジアシルグリセロールを除いて比較品1を、ジアシルグリセロールとニップンセラミドを除いてコントロール食を同様に作製した。
・・・
【0021】
実施例2 皮膚バリア機能改善効果、角質水分量の増加効果、セラミド量増加効果
HR1マウス、6週齢、♀、実験開始前1週間は予備飼育として基本食餌(AIN-76A配合:固形試料)と水の自由摂食を行った。体重により群分けを実施(各群8匹)、表1に示した試験食を投与開始したのち更に5週間飼育した。
1)皮膚バリア回復率:
ハイドロメーター(MEECO社)により、初期TEWL値(経表皮水分損失量)を測定したマウス皮膚同一部位に、ニチバンPPSテープを貼り付けてはがす作業を5回実施し(以下、テープストリッピング)、直後のTEWL値及び2時間後のTEWL値から各群の回復率を求めた。
2)角層水分量:
SKICON-200(IBS社)で測定した。
3)セラミド量(角層1mgあたりのセラミド量):
各配合食を8週間摂取させたマウス(各群8匹ずつ)をと殺後背部皮膚を剥離し、60℃水浴中で1分間加熱後表皮を摂取した。直ちにトリプシン溶液中で37℃1時間処理し、角層を得た。凍結乾燥後角層重量を測定し、Blibh and Dyer法(「生物化学実験法9脂質・酸化脂質分析法入門」宮沢陽夫・藤野泰郎編著p45、2000年1月30日改訂版初刷)により脂質を抽出し、TLC法によりセラミド量を求めた。
結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
[図:0001419329000007.jpg]
【0023】
これより、糖セラミドを含む比較品1の投与群ではコントロール投与群と比較して、角層水分量増加作用及びバリア回復能の改善作用が小さいのに対し、糖セラミドとジアシルグリセロールを併用した本発明品1の投与群では、角層セラミド量が増加し、角層水分量増加作用及びバリア回復促進作用がいずれも顕著に認められた。」(【0019】~【0023】)
(9) 甲15の記載事項
甲15には以下の記載がある。
「c)植物性セラミドの水和特性:
経口で毎日摂取する植物性セラミドの,皮膚に対する水和作用をin vivoで試験するための実験が行われ,その分析は,プラシーボと比較して行われました。
角質計で得られた結果は,植物性セラミドを1日20mgの割合で摂取する治療を1ヵ月続けた場合,身体の水和が改善されるというものでした。
走査電子顕微鏡を用いて,皮膚の圧痕によりその水和を調べる実験では,一次皺で範囲が限定されている部分の膨張面が増大していることが明らかになり,初日の点数(+)が,30日目では(++)になっており,これは上皮全体の水和が良好なことを示すものです。表面で観察できる落屑途上にある角質細胞の隆起は,30日目では明らかにより顕著なものとなり(擬小胞面),これは角質層の水和改善を示すものです(写真1~3;3名の女性の上腕部内側部位)。」(85頁右欄下から4行~87頁左欄最終行)
(10) 甲16の記載事項
甲16には以下の記載がある。
(甲16-1)
「・・・グルコシルセラミドやスフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質は,小腸内で消化を受け,その構成要素であるスフィンゴイド塩基にまで加水分解された後に小腸上皮細胞に取り込まれる。しかし,その分解効率は低く,吸収率も低い。・・・」(177頁要旨)
(甲16-2)
「また、スフィンゴ脂質の一種であるセラミドは,皮膚角質層の主要な細胞間脂質として約50%を占め,バリア機能や保湿機能に重要であることから,美肌を目的とした機能性食品素材としても注目されており,その効果に関する知見も集まってきている5-9)」(177頁左欄15~19行)
(甲16-3)
「4.スフィンゴ脂質の経口摂取による皮膚バリア機能向上効果
スフィンゴ脂質の骨格成分であるセラミドが角層(合議体注:「皮膚角質層」と同義(甲16-2)))の細胞間脂質として存在し,保湿性に深く関わることから,スフィンゴ脂質の経口摂取が皮膚バリア機能の向上に寄与すると考えられ,実際に皮膚疾患モデル動物やアトピー性皮膚炎患者に対する改善作用が報告されている。しかしながら,前述のようにその消化管吸収率は極めて悪いため,皮膚に到達し,再利用されている可能性は低いと予想される。そこで著者らは,ヘアレスマウスを用いた検討を行った7)。
ヘアレスマウスを特殊資料(HR-AD)で10週間飼育し,アトピー性皮膚炎モデルマウスを作成した後,通常食に切り替え,経皮水分蒸散量の回復に与える植物由来グルコシルセラミドや動物由来スフィンゴミエリン摂取の影響を調べた結果,試料にスフィンゴ脂質を0.1%添加することで,有意な回復促進効果が示された。また,テープストリッピング法による角層破壊モデルでも同様の効果が確認された。さらに正常なヘアレスマウスでも,スフィンゴ脂質の摂取による経皮水分蒸散量の低下,すなわち皮膚バリア機能向上作用が示された。このとき,表皮におけるセラミド合成酵素の発現がスフィンゴ脂質の摂取により2倍程度に増加していたことや,ヒト表皮角化細胞(ケラチノサイト)に対して,ごく低濃度のスフィンゴイド塩基(0.001から0.1μM)を添加することにより,セラミド合成酵素の発現亢進が認められた。以上の結果から,詳細を検討する必要は残されているが,摂取されたスフィンゴ脂質が表皮角層細胞間脂質のセラミドとして供給されるのではなく,内因性のスフィンゴ脂質代謝を高めることがスフィンゴ脂質の摂取による皮膚バリア機能向上作用の機構の一つである可能性が考えられた。」(181頁左欄12~43行)
2 甲1を主引用例とする取消理由4(進歩性)の判断
(1) 訂正発明1について
ア 対比
訂正発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「イネ抽出物の形態のセラミド」及び「L-リシン」は、訂正発明1における「セラミド類」及び「リシン」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明における「魚由来の軟骨加水分解物」は、前記(甲1-3)の[0018]に記載されるように、「コンドロイチン硫酸を活性成分として含有する」から、甲1発明の「魚由来の軟骨加水分解物」を含む「経口投与用の組成物」は、訂正発明1における「コンドロイチン硫酸を含有する」「経口用組成物」に相当する。
さらに、本件特許明細書において、「本発明の美容組成物は、セラミド類及び所定の他成分を含有し、美容に用いられる点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、・・・「肌をバリアする」、「肌を守る」、「肌のバリア機能を高める」、「肌の保湿力を高める」等を表示したものを例示することができる。」(【0025】)と説明されていることから、甲1発明における「適切な皮膚の水分量の維持、並びに皮膚の老化、特にシワの影響の予防及び/又は治療のため」は、訂正発明1における「美容」に相当する。
そうすると、訂正発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「セラミド類と、リシンとを含有することを特徴とする経口用美容組成物」
<相違点>
「経口用美容組成物」について、訂正発明1では、「(1)アガリクス茸を含有する経口用組成物」、「(2)コンドロイチン硫酸を含有する経口用組成物」、「(3)ローヤルゼリーを含有する経口用組成物」、「(4)卵殻膜を含有する経口用組成物」、「(5)ハトムギを含有する経口用組成物」及び「(6)プラセンタを含有する経口用組成物」を除くもの(以下「(1)~(6)の経口用組成物を除くもの」という。)であるのに対し、甲1発明は「コンドロイチン硫酸を含有する経口用組成物」である点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
甲1発明は、訂正発明1で除かれている(1)、(3)~(6)の経口用組成物には該当しないが、「(2)コンドロイチン硫酸を含有する経口用組成物」に該当する。
ここで、甲1発明は、前記(甲1-1)及び(甲1-3)の記載から明らかなように、「イネ抽出物の形態のセラミド」、「コンドロイチン硫酸を活性成分として含有する」「魚由来の軟骨加水分解物」及び「L-プロリン、L-リシン及びL-システインから選択される1つ又は複数のアミノ酸」の3成分を必須の成分として含有する組成物の発明である。
そして、前記(甲1-3)の[0022]に「本出願人により実施された試験により、上記の活性成分の組み合わせが、適切な皮膚の保持の維持、皮膚の老化の影響の予防及び/又は美容的及び/又は治療的処置において有効な作用を発揮することが確認された。」と記載されるように、前記(甲1-4)に記載される臨床試験において、上記「3成分を含む組成物」を用いて、「適切な皮膚の保持の維持、皮膚の老化の影響の予防及び/又は美容的及び/又は治療的処置」における有効性を確認したことによって完成された発明であるところ、上記3成分のうち、いずれかの成分が除かれた場合にも、上記臨床試験で確認された上記3成分を含む組成物と同様に、「適切な皮膚の保持の維持、皮膚の老化の影響の予防及び/又は美容的及び/又は治療的処置」において有効といえる程度の十分な作用を発揮する組成物とはいえない。
そうすると、甲1発明の記載に接した当業者に対し、甲1発明において「適切な皮膚の保持の維持、皮膚の老化の影響の予防及び/又は美容的及び/又は治療的処置において有効な」「組成物」を構成するために必須の成分として含有される3成分のうちの一つである、「コンドロイチン硫酸を活性成分として含有する」「魚由来の軟骨加水分解物」について、敢えて組成物から取り除き、「適切な皮膚の保持の維持、皮膚の老化の影響の予防及び/又は美容的及び/又は治療的処置」における有効性が十分に発揮されるとはいえない組成物を構成することが、動機づけられるものとはいえない。
したがって、訂正発明1は、当業者が甲1発明から容易に想到し得るものとはいえない。
(2)訂正発明2及び3について
訂正発明2は、訂正発明1を「肌の保湿力を高めるために用いる肌保湿用組成物であることを特徴とする」ものに限定するものであり、訂正発明3は、訂正発明2をさらに「皮膚バリア機能改善又は向上させるために用いる皮膚バリア機能改善又は向上用組成物であることを特徴とする」ものに限定するものである。
したがって、訂正発明2及び訂正発明3は、それらの上位概念の発明である訂正発明1と同様に、当業者が甲1発明から容易に想到し得るものとはいえない。
(3) 申立人の主張について
ア 異議申立書及び意見書において、申立人は以下の点(ア)~(オ)を主張している。
(ア) 当業者は、甲1発明の組成物において、アミノ酸が角層細胞のNMFの機能を維持し、セラミドが角層細胞間脂質の機能を維持することで、「角層保湿機能」を改善するという、甲1発明の技術的思想を明確に理解し、軟骨加水分解物(又は、コンドロイチン硫酸)を含まなくても、甲1発明の組成物が「セラミドとアミノ酸とを組み合わせて、角層保湿機能を改善する」ことができることを十分に理解する(令和6年10月1日提出の意見書、3~5頁(3-2)、(3-5))。
(イ) 参考資料3及び4には、コンドロイチン硫酸による副作用があることが報告されており、副作用や安全性を考慮して、甲1発明の組成物からコンドロイチン硫酸の配合を除く動機付けは十分にあり、甲1発明から、軟骨加水分解物(コンドロイチン硫酸)を含有しない組成物を得ることに困難性はない(令和6年5月21日提出の意見書、7頁19~27行、令和6年10月1日提出の意見書、4頁(3-3))。
(ウ) セラミド類を含む組成物を経口摂取したときの肌の保湿力やバリア機能への効果は、in-vivo試験で確認することが技術常識であるところ、本件特許明細書の実施例の試験は、経口摂取されたグルコシルセラミドによる皮膚バリア機能向上作用を評価する試験系ではなく、本件特許明細書の図4に示される細胞培養試験の結果から、本件特許発明の「経口用美容組成物」の皮膚バリア機能等の向上を確認することはできず、本件特許発明に格別な効果は皆無である(異議申立書、32頁(カ)~33頁(ケ)、令和6年10月1日提出の意見書、5~6頁(3-6))。
(エ) 経口摂取されるコンドロイチン硫酸が皮膚の保湿に役立つことがよく知られていることであり、甲1発明においても皮膚の保湿を高める意図でコンドロイチン硫酸が使用されているものと当業者が理解するならば、コンドロイチン硫酸に代えて、経口摂取されることで「皮膚の保湿に役立つことがよく知られている成分」であるコラーゲンやヒアルロン酸などを配合することは非常に容易である(令和6年10月1日提出の意見書、6~8頁(4))。
(オ) 訂正発明は、甲1発明から、その一部の構成要件(魚由来の軟骨加水分解物を含有する点)を削除した発明に相当し、甲1発明と比べて効果が退化した発明であるといえ、甲1発明に対して、退化した技術的思想であるから、進歩性が認められない(令和6年10月1日提出の意見書、8頁(5))。
イ 上記主張について検討する。
(ア)主張(ア)、(イ)及び(エ)について
上記イにおいて説示したとおり、そもそも甲1発明は、臨床試験においてその有効性を確認することによって完成された発明であって、「3成分を含む組成物」を必須の構成とするものであり、甲1の記載から、アミノ酸とセラミドが、それぞれ単独で「角層保湿機能」を改善する機能を有することが理解できるというだけでは、軟骨加水分解物(又は、コンドロイチン硫酸)を含まない組成物が、「3成分を含む組成物」と同程度に、十分な臨床効果を発揮するとはいえないから、甲1発明において、必須の構成である3成分のうち、軟骨加水分解物(又は、コンドロイチン硫酸)を敢えて除くことが動機づけられるとはいえない。
主張(イ)における副作用等の存在についても、コンドロイチン硫酸に限らず、多くの医薬や食品において、副作用やアレルギーに関する情報を表示して注意喚起しつつ、販売を継続することは通常のことであって、「3成分を含む組成物」を必須の構成とする甲1発明において、副作用等の存在により軟骨加水分解物(又は、コンドロイチン硫酸)を除いた組成物を構成することまでが動機づけられるものとはいえない。
主張(エ)の、軟骨加水分解物(又は、コンドロイチン硫酸)を他の「皮膚の保湿に役立つことがよく知られている成分」に置き換えることについても、「3成分を含む組成物」と同程度に、十分な臨床効果を発揮するとはいえず、「3成分を含む組成物」を必須の構成とする甲1発明において動機づけられるものとはいえない。
(イ)主張(ウ)について
セラミド類を経口摂取した場合であっても、体内に吸収されて皮膚に到達し、保湿機能等の生理作用を発揮することは、申立人自身が提出した各甲号証(甲1~甲6、甲13~16)の記載からも明らかなように、食品分野における技術常識である。
したがって、本件特許明細書の実施例において細胞培養試験の結果しか示されていなくても、上記技術常識を踏まえた当業者であれば、経口摂取されたセラミド類とリシンが、体内に吸収されて皮膚に到達し、インビトロと同様にインビボにおいても相乗的な効果を発揮することは十分推認できるものといえる。
(ウ)主張(オ)について
訂正発明が甲1発明から退化した発明であるという主張(オ)は、甲1発明において魚由来の軟骨加水分解物(又はコンドロイチン硫酸)を除くことに阻害事由があり、上記(ア)において説示した、訂正発明が甲1発明からは容易に想到し得ないことをむしろ補強する主張といえる。
そして、本件特許明細書には、セラミド類とリシン単独の組み合わせによる相乗的な効果が示されており、訂正発明は甲1発明及び申立人の提出した各甲号証の記載からは予測できない効果を有するものである。
(エ) よって、申立人の主張(ア)~(オ)はいずれも採用することができず、訂正発明は、当業者が甲1発明から容易に発明することができたものとはいえない。
(オ)小括
以上によれば、甲1を主引用例とする取消理由4(進歩性)は、理由がない。
3 甲7を主引用例とする取消理由3(新規性)及び4(進歩性)の判断
(1)訂正発明1について
訂正発明1と甲7発明とを対比すると、甲7発明における「セラミド」及び「美容ドリンク」は、訂正発明1における「セラミド類」及び「経口用美容組成物」に相当する。
ここで、参考資料1及び2(上記第5の4及び5)に記載されるように、甲7発明における「プラセンタエキス」には、遊離アミノ酸のリシンが含まれるものであるから、甲7発明の美容ドリンクはリシンを含むものといえる。
そうすると、訂正発明1と甲7発明とは、「セラミド類と、リシンとを含有することを特徴とする経口用美容組成物」で一致し、訂正発明1では、「(1)~(6)の経口用組成物を除くもの」であることが特定されるのに対し、甲7発明は「プラセンタを含有する経口用組成物」である点で相違する。
よって、訂正発明1は、甲7に記載された発明ではない。
また、前記(甲7-2)に記載されるように、甲7発明は、「高濃度プラセンタエキス配合」と謳った美容ドリンクであり、甲7発明においてその主要成分である「プラセンタエキス」を除く動機付けはない。
さらに、甲7発明において、「プラセンタエキス」は「リシン」を含有する成分であるところ、甲7発明における主要成分である「プラセンタエキス」を敢えて除いたうえで、その一成分である「リシン」のみに着目し、それを配合する動機づけが全くないことは明らかである。
よって、訂正発明1は、当業者が甲7発明から容易に発明をすることができたものではない。
(2)訂正発明2及び3について
前記2(2)で指摘したように、訂正発明2及び訂正発明3は、それらの上位概念の発明である訂正発明1と同様に、甲7に記載された発明ではなく、当業者が甲7発明から容易に想到し得るものではない。
(3)小括
以上によれば、甲7を主引用例とした取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性)には理由がない。
4 甲8を主引用例とする取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性)の判断
(1)訂正発明1について
訂正発明1と甲8発明とを対比すると、甲8発明における「セラミド」及び「保健機能食品」は、本件発明1における「セラミド類」及び「経口用組成物(ただし、(1)~(5)を除く)」に相当する。
また、本件特許明細書において、「本発明の美容組成物は、セラミド類及び所定の他成分を含有し、美容に用いられる点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、・・・「肌をバリアする」、「肌を守る」、「肌のバリア機能を高める」、「肌の保湿力を高める」等を表示したものを例示することができる。」(【0025】)と説明されていることから、甲8発明における「肌の貯水量をアップしバリアーの役目を支援し、ターンオーバーを支えるため」は、訂正発明1における「美容」に相当する。
さらに、参考資料1及び2(上記第5の4及び5)に記載されるように、甲8発明における「プラセンタエキス粉末」には、遊離アミノ酸のリシンが含まれるものであるから、甲8発明の保健機能食品はリシンを含むものといえる。
そうすると、訂正発明1と甲8発明とは、「セラミド類と、リシンとを含有することを特徴とする経口用美容組成物」で一致し、訂正発明1では、「(1)~(6)の経口用組成物を除くもの」であることが特定されるのに対し、甲8発明は「プラセンタを含有する経口用組成物」である点で相違する。
よって、訂正発明1は、甲8に記載された発明ではない。
また、前記(甲8-1)に記載されるように、甲8発明は、プラセンタを含めた「9つの成分を質と量にこだわって配合」する食品であるから、甲8発明においてそのこだわって配合した成分である「プラセンタ」を除く動機付けはない。
さらに、甲8発明において、「プラセンタ」は「リシン」を含有する成分であるところ、甲8発明において配合される「プラセンタ」を敢えて除いたうえで、その一成分である「リシン」のみに着目し、それを配合する動機づけが全くないことは明らかである。
よって、訂正発明1は、当業者が甲8発明から容易に発明をすることができたものではない。
(2)訂正発明2及び3について
前記2(2)で指摘したように、訂正発明2及び訂正発明3は、それらの上位概念の発明である訂正発明1と同様に、甲8に記載された発明ではなく、当業者が甲8発明から容易に想到し得るものではない。
(3)小括
以上によれば、甲8を主引用例とした取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性)には理由がない。
第6 令和6年1月24日付け取消理由通知に記載した取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についての当審の判断
令和6年1月24日付け取消理由通知に記載した取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)は、いずれも、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明に対して示した判断であるが、本件訂正後の訂正発明1~3に対する取消理由1及び2についての判断を以下に記す。
1 引用文献
(1)甲1に記載された事項及び発明
甲1に記載された事項及び発明は、前記第5の1(1)ア及びイに記載したとおりである。
(2)甲2に記載された事項及び発明
ア 甲2には以下の事項が記載されている。
(甲2-1)
「飲むだけでかなう全身美容サプリメント」(標題)
(甲2-2)
「肌にハリ・弾力を与えるのに大きな役割をはたすコラーゲンだが、加齢とともに徐々に減少してくことが分かっている。・・・卵殻膜がハリ・弾力、潤い、透明感のある若々しい肌に必要とされるこの「III型コラーゲン」をサポートすることが、細胞レベルの研究で明らかに。」(第2頁「III型コラーゲン」と「卵殻膜」の欄)
(甲2-3)
「
[図:0001419329000008.jpg]
」(第2頁【主な成分】の欄)
イ 甲2に記載された発明
上記アの甲2に記載された事項からみて、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認める。
「肌にハリ・弾力、潤い及び透明感を与えるための、
卵殻膜粉末、乾燥ローヤルゼリー、モロヘイヤ粉末、米胚芽抽出物、鶏胸肉抽出物、アセロラパウダー、エラスチンペプチド(豚由来)、梅肉エキス、セラミド含有とうもろこし胚芽抽出物、卵殻カルシウム、ヒアルロン酸、リコピン含有トマト粉末抽出カロチン、ビタミンE含有植物油、ビタミンC、プロテオグリカン含有サケ鼻軟骨抽出物、鶏軟骨エキス、ビタミンB2及びビオチンを含む美容サプリメント。」
(3)甲3に記載された事項及び発明
ア 甲3には、以下の記載がある。
(甲3-1)「ファスティング理論を応用した全身ケア対応の美容食品 日焼け予防ゼリー」(標題)
(甲3-2)
「日焼け予防ゼリーはなぜ「角質層」に着目するのか。それは「角質層」が肌のバリアであり、肌の水分維持をする保湿機能を備えるから。最も外側にある部分へアプローチするから、スピーディーに肌への作用を実感できる。」(第1頁「point」の欄)
(甲3-3)
「それだけでもすぐれるフルーツ由来のセラミドに加え、美容3大成分のコラーゲン、ヒアルロン酸、プラセンタを黄金比率で配合。・・・
これらの消化吸収を促進し、細胞の新陳代謝を促す植物性乳酸菌酵素を配合。
・・・さらにアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を豊富に含む生ロイヤルゼリーとプロポリスを配合する。
⇒その結果「美白、保湿、シワ抑制に優れた効果」が期待」(第2頁「植物性乳酸菌BIO酵素との奇跡の組合せ」の欄)
イ 甲3に記載された発明
上記アの甲3に記載された事項からみて、甲3には以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「肌のバリアであり、保湿機能を備える角質層へアプローチし、美白、保湿、シワ抑制のための、フルーツ由来のセラミド、コラーゲン、ヒアルロン酸、プラセンタ、植物性乳酸菌酵素、生ロイヤルゼリー及びプロポリスを含有する美容食品。」
(4)甲4-1に記載された事項及び発明
ア 甲4-1には、以下の事項が記載されている。
(甲4-1-1)
「【商品特長】
のむ、生む、減らさない。キレイがリッチな毎日へ
内からめぐって、はりのある毎日のための美容飲料
・新配合の美容果実「プラチナベリー(クロマメノキ)」を含め、カラダをめぐる19種の美容成分を贅沢に配合
・ウルトラハリアップ成分(杜仲葉+高麗人参+ハトムギ+アムラ果実エキス+ユズ種子エキス)配合
・特許取得美容食品
※特許第3308433号:配合成分の美容効果についての特許」(商品特長欄)
(甲4-1-2)
「
[図:0001419329000009.jpg]
」(商品特長欄)
イ甲4-1に記載された発明
上記アの甲4-1に記載された事項からみて、甲4-1には以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。
「プラチナベリー(クロマメノキ)、低分子コラーゲン、杜仲葉、高麗人参、ハトムギ、アムラ果実エキス、ユズ種子エキス、モイスチャーペプチド、セラミド、エラスチン、コエンザイムQ10、ヒアルロン酸、N-アセチルグルコサミン、コンドロイチン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB2、ビタミンB6及び黒胡椒エキスを含む美容飲料。」
(5)甲5に記載された事項及び発明
ア 甲5の「Product Details」欄には、以下の事項が記載されている。
(甲5-1)
「
[図:0001419329000010.jpg]
」
(甲5-2)
「
[図:0001419329000011.jpg]
」
(甲5-3)
「
[図:0001419329000012.jpg]
」
イ 甲5に記載された発明
上記アの甲5に記載された事項からみて、甲5には以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されている。
「豚プラセンタエキス末、ぶどう種子油、スクワレン、ハトムギエキス末、高麗人参エキス末、酵素処理燕窩、セラミド含有米抽出物、ゼラチン、グリセリン、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、植物レシチン(大豆由来)、ビタミンE、ビタミンB2、ヒアルロン酸、ビタミンB6及びビタミンB1を含む、美容サプリメント。」
(6)甲6に記載された事項及び発明
ア 甲6には以下の事項が記載されている。
(甲6-1)
「
[図:0001419329000013.jpg]
」
(甲6-2)
「
[図:0001419329000014.jpg]
」
イ 甲6に記載された発明
上記アの甲6に記載された事項からみて、甲6には以下の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されている。
「マルチトール、コラーゲンペプチド(魚ゼラチン由来)、ローヤルゼリー、ハトムギエキス末、酵母エキス、トウモロコシ抽出物(セラミド含有)、ビタミンC、荒涼、甘味料(アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物)、ビタミンE、ビタミンB2、ヒアルロン酸を含む、美容のための健康補助食品。」
(7)甲9に記載された事項
甲9には以下の記載がある。
(甲9-1)「また供試ハトムギとして,福田龍製の市販ハトムギを用いた。この供試ハトムギは,精白していても胚芽が残っている状態もので,米に比べ粒体が大きく硬質である。」(174頁左欄7~9行)
(甲9-2)「遊離アミノ酸は,サンプルの乾燥粉末を10倍量の60%エタノールに3日間浸漬し,濾過(φ0.20μm)したものを,アミノ酸分析計(JLC-500/V,日本分光製)を用いて分析した。」(174頁左欄下から5~最終行)
(甲9-3)
「
[図:0001419329000015.jpg]
」(表1)
(8)甲11に記載された事項
甲11には、以下の記載がある。
「ローヤルゼリー中の遊離アミノ酸についてはかなり多くの報告がなされている(飯塚・小山1961;Rembold,1964)が,・・・ローヤルゼリーの全アミノ酸のうちアスパラギン酸が最も多く17.1%を占め,以下リジン,セリン,グルタミン酸がほぼ同含量で約9%弱であった.・・・又遊離アミノ酸含量は全アミノ酸含量の割合とは,かなり異りプロリンとリジンが著しく多く両者で全遊離アミノ酸の約70%を占めている.」(合議体注:「リジン」は「リシン」と同義である。)(71頁右欄5行~72頁左欄14行)
(9)甲14に記載された事項
甲14に記載された事項は、前記第5の1(8)に記載したとおりである。
(10)甲15に記載された事項
甲15に記載された事項は、前記第5の1(8)に記載したとおりである。
(11)甲16に記載された事項
甲16に記載された事項は、前記第5の1(9)に記載したとおりである。
2 甲1を主引用例とした取消理由1(新規性)の判断
ア 前記第5の2(1)アに説示したとおり、訂正発明1では、「(1)~(6)の経口用組成物を除くもの」であることが特定されるのに対し、甲1発明は「コンドロイチン硫酸を含有する経口用組成物」である点で、訂正発明1と甲1発明とは相違する。
したがって、訂正発明1は甲1に記載された発明ではない。
イ また、前記第5の2(2)で指摘したように、訂正発明2及び訂正発明3は、それらの上位概念の発明である訂正発明1と同様に、甲1に記載された発明ではない。
ウ よって、甲1を主引用例とした取消理由1(新規性)には理由がない。
3 甲2を主引用例とした取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)の判断
ア 訂正発明1と甲2発明とを対比すると、「セラミド含有とうもろこし胚芽抽出物」及び「美容サプリメント」は、訂正発明1の「セラミド類」及び「経口用美容組成物(ただし、アガリクス茸を含有する経口用組成物を除く)」にそれぞれ相当する。
イ ここで、甲11に記載されるように(前記1(8))、甲2発明における「乾燥ローヤルゼリー」には、遊離アミノ酸のリシンが含まれるものであるから、甲2発明の美容サプリメントはリシンを含むものといえる。
ウ そうすると、訂正発明1と甲2発明とは、「セラミド類と、リシンとを含有することを特徴とする経口用美容組成物」で一致し、訂正発明1では、「(1)~(6)の経口用組成物を除くもの」であることが特定されるのに対し、甲2発明は「卵殻膜及び乾燥ローヤルゼリーを含有する経口用組成物」である点で相違する。
よって、訂正発明1は、甲2に記載された発明ではない。
エ また、甲2発明は、「主な成分」として「卵殻膜」及び「乾燥ローヤルゼリー」を配合するサプリメントであり、甲2発明においてその「主な成分」のであるこれらの成分を除く動機付けはない。
さらに、甲2発明において、「乾燥ローヤルゼリー」は「リシン」を含有する成分であるところ、甲2発明において配合される「乾燥ローヤルゼリー」を敢えて除いたうえで、その一成分である「リシン」のみに着目し、それを配合する動機づけが全くないことは明らかである。
そして、前記第5の2(3)イ(イ)及び(ウ)において説示したとおり、訂正発明1は、甲2及び申立人が提出した各甲号証の記載からは予測できない効果を奏するものである。
よって、訂正発明1は、当業者が甲2発明から容易に発明をすることができたものではない。
オ また、前記第5の2(2)で指摘したように、訂正発明2及び訂正発明3についても、それらの上位概念の発明である訂正発明1と同様に、甲2に記載された発明ではなく、当業者が甲2発明から容易に想到し得るものではない。
カ 以上により、甲2を主引用例とした取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)には理由がない。
4 甲3を主引用例とした取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)の判断
ア 訂正発明1と甲3発明とを対比すると、「フルーツ由来のセラミド」及び「美容食品」は、訂正発明1の「セラミド類」及び「経口用美容組成物」にそれぞれ相当する。
イ ここで、甲11(前記1(8))、並びに、参考資料1及び2(上記第5の4及び5)に記載されるように、甲3発明における「生ロイヤルゼリー」(合議体注:「ロイヤルゼリー」は、ローヤルゼリーと同義)及び「プラセンタ」には、遊離アミノ酸のリシンが含まれるものであるから、甲3発明の美容食品はリシンを含むものといえる。
ウ そうすると、訂正発明1と甲3発明とは、「セラミド類と、リシンとを含有することを特徴とする経口用美容組成物。」で一致し、訂正発明1では、「(1)~(6)の経口用組成物を除くもの」であることが特定されるのに対し、甲3発明は「ロイヤルゼリー及びプラセンタを含有する経口用組成物」である点で相違する。
よって、訂正発明1は、甲3に記載された発明ではない。
エ また、甲3発明は、「美容3大成分」として「プラセンタ」を配合するとともに、アミノ酸などの「栄養素を豊富に含む生ロイヤルゼリー」等を配合する「美容食品」であり、「その結果「美容、保湿、シワ抑制に優れた効果」が期待」されるものであるから、甲3発明において、これらの成分を除く動機付けはない。
さらに、甲3発明において、「生ロイヤルゼリー」及び「プラセンタ」は「リシン」を含有する成分であるところ、甲3発明において配合されるこれらの成分を敢えて除いたうえで、それらの一成分である「リシン」のみに着目し、これを配合する動機づけが全くないことは明らかである。
そして、前記第5の2(3)イ(イ)及び(ウ)において説示したとおり、訂正発明1は、甲3及び申立人が提出した各甲号証の記載からは予測できない効果を奏するものである。
よって、訂正発明1は、当業者が甲3発明から容易に発明をすることができたものではない。
オ また、前記第5の2(2)で指摘したように、訂正発明2及び訂正発明3についても、それらの上位概念の発明である訂正発明1と同様に、甲3に記載された発明ではなく、当業者が甲3発明から容易に想到し得るものではない。
カ 以上により、甲3を主引用例とした取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)には理由がない。
5 甲4-1を主引用例とした取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)の判断
ア 訂正発明1と甲4発明とを対比すると、「セラミド」及び「美容飲料」は、訂正発明1の「セラミド類」及び「経口用美容組成物」にそれぞれ相当する。
イ ここで、甲9に記載されるように(前記1(7))、甲4発明における「ハトムギ」には、遊離アミノ酸のリシンが含まれるから、甲4発明の美容飲料はリシンを含むものといえる。
ウ そうすると、訂正発明1と甲4発明とは、「セラミド類と、リシンとを含有することを特徴とする経口用美容組成物。」で一致し、訂正発明1では、「(1)~(6)の経口用組成物を除くもの」であることが特定されるのに対し、甲4発明は「ハトムギを含有する経口用組成物」である点で相違する。
よって、訂正発明1は、甲4-1に記載された発明ではない。
エ また、甲4発明は、「19種の美容成分を贅沢に配合」したことを謳った「美容飲料」であり、その「美容成分」の中の「ウルトラハリアップ成分」の1つとして「ハトムギ」を配合するものであるから、甲4発明において、「ハトムギ」を除く動機付けはない。
さらに、甲4発明において、「ハトムギ」は「リシン」を含有する成分であるところ、甲4発明において配合される「ハトムギ」を敢えて除いたうえで、その一成分である「リシン」のみに着目し、それを配合する動機づけが全くないことは明らかである。
そして、前記第5の2(3)イ(イ)及び(ウ)において説示したとおり、訂正発明1は、甲3及び申立人が提出した各甲号証の記載からは予測できない効果を奏するものである。
よって、訂正発明1は、当業者が甲4発明から容易に発明をすることができたものではない。
オ また、前記第5の2(2)で指摘したように、訂正発明2及び訂正発明3についても、それらの上位概念の発明である訂正発明1と同様に、甲4-1に記載された発明ではなく、当業者が甲4発明から容易に想到し得るものではない。
カ 以上により、甲4-1を主引用例とした取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)には理由がない。
6 甲5を主引用例とした取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)の判断
ア 訂正発明1と甲5発明とを対比すると、「セラミド含有米抽出物」及び「美容サプリメント」は、訂正発明1の「セラミド類」及び「経口用美容組成物」にそれぞれ相当する。
イ ここで、甲9(前記1(7))、並びに参考資料1及び2(上記第5の4及び5)に記載されるように、甲5発明における「ハトムギエキス末」及び「豚プラセンタエキス末」には、遊離アミノ酸のリシンが含まれるものであるから、甲5発明の美容サプリメントはリシンを含むものといえる。
ウ そうすると、本件発明1と甲5発明とは、「セラミド類と、リシンとを含有することを特徴とする経口用美容組成物。」で一致し、訂正発明1では、「(1)~(6)の経口用組成物を除くもの」であることが特定されるのに対し、甲5発明は「豚プラセンタエキス末及びハトムギエキス末を含有する経口用組成物」である点で相違する。
よって、訂正発明1は、甲5に記載された発明ではない。
エ また、前記(甲5-1)に「1日3粒でプラセンタエキスが360mg(プラセンタ原料換算6、000mg)採れます。」と記載されるように、甲5発明は、「プラセンタエキス」を摂取することを主眼とした「美容サプリメント」であり、甲5発明において「プラセンタ」を除く動機付けはない。
さらに、甲5発明において、「豚プラセンタエキス末」及び「ハトムギエキス末」は「リシン」を含有する成分であるところ、甲5発明において配合されるこれらの成分を敢えて除いたうえで、それらの一成分である「リシン」のみに着目し、これを配合する動機づけが全くないことは明らかである。
そして、前記第5の2(3)イ(イ)及び(ウ)において説示したとおり、訂正発明1は、甲5及び申立人が提出した各甲号証の記載からは予測できない効果を奏するものである。
よって、訂正発明1は、当業者が甲5発明から容易に発明をすることができたものではない。
オ また、前記第5の2(2)で指摘したように、訂正発明2及び訂正発明3についても、それらの上位概念の発明である訂正発明1と同様に、甲5に記載された発明ではなく、当業者が甲5発明から容易に想到し得るものではない。
カ 以上により、甲5を主引用例とした取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)には理由がない。
7 甲6を主引用例とした取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)の判断
ア 訂正発明1と甲6発明とを対比すると、「トウモロコシ抽出物(セラミド含有)」及び「美容のための健康補助食品」は、訂正発明1の「セラミド類」及び「経口用美容組成物」にそれぞれ相当する。
イ ここで、甲6発明における「ローヤルゼリー」及び「ハトムギエキス末」には、甲11(前記1(8))及び甲9(前記1(7))に記載されるように、遊離アミノ酸のリシンが含まれるといえるから、甲6発明の健康補助食品はリシンを含むものといえる。
ウ そうすると、訂正発明1と甲6発明とは、「セラミド類と、リシンとを含有することを特徴とする経口用美容組成物。」で一致し、訂正発明1では、「(1)~(6)の経口用組成物を除くもの」であることが特定されるのに対し、甲6発明は「ローヤルゼリー及びハトムギエキス末を含有する経口用組成物」である点で相違する。
よって、訂正発明1は、甲6に記載された発明ではない。
エ また、前記(甲6-1)に記載されるように、甲6発明は、「美容にうれしい素材」として「ローヤルゼリー」及び「ハトムギエキス」を配合した健康補助食品であるから、甲6発明において、これらの成分を除く動機付けはない。
さらに、甲6発明において、「ローヤルゼリー」及び「ハトムギエキス末」は「リシン」を含有する成分であるところ、甲6発明において配合されるこれらの成分を敢えて除いたうえで、それらの一成分である「リシン」のみに着目し、これを配合する動機づけが全くないことは明らかである。
そして、前記第5の2(3)イ(イ)及び(ウ)において説示したとおり、訂正発明1は、甲6及び申立人が提出した各甲号証の記載からは予測できない効果を奏するものである。
よって、訂正発明1は、当業者が甲6発明から容易に発明をすることができたものではない。
オ また、前記第5の2(2)で指摘したように、訂正発明2及び訂正発明3についても、それらの上位概念の発明である訂正発明1と同様に、甲6に記載された発明ではなく、当業者が甲6発明から容易に想到し得るものではない。
カ 以上により、甲6を主引用例とした取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)には理由がない。
第7 取消理由通知(決定の予告)及び令和6年1月24日付け取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立理由について
1 取消理由通知(決定の予告)及び令和6年1月24日付け取消理由通知において採用しなかった申立理由1(サポート要件)及び申立理由2(実施可能要件)の概要
申立人は、主に以下の点(1)~(3)を主張し、本件特許がサポート要件及び実施可能要件をみたしていない特許出願に対してされたものである旨を主張している。
(1)本件特許明細書の実施例に記載された、表皮角化細胞を用いたin-vitro試験による評価は、セラミド類を経口摂取したときの生体の皮膚の保湿(水和)機能やバリア機能への影響を評価し得る試験系ではない。
(2)甲16に記載されるとおり、グリコシルセラミドは消化管内で加水分解された後、小腸上皮細胞から体内へと吸収され、それが全身に送達されると考えられていたため、培養細胞に添加して増殖した成分であっても、経口摂取された組成物が、生体の皮膚において同様の作用を及ぼすかどうか当業者は理解できない。
(3)甲1、甲13~甲16に記載されるとおり、経口摂取されたグルコシルセラミドが、皮膚の保湿(水和)機能やバリア機能を高めることが周知であるにも関わらず、本件特許明細書の図4左側のグラフによれば、グルコシルセラミドだけを添加した培地では表皮角化細胞の賦活活性が向上していないのであるから、このような試験の結果からは、訂正発明の組成物を経口的に生体に投与したときに、生体の皮膚のバリア機能を高まるとは当業者は全く理解できない。
そこで、本件特許明細書及び図面(以下「本件明細書等」という。)の記載について、以下に検討する。
2 本件明細書等の記載
本件明細書等には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。また、「・・・」は記載の省略を表す。
【発明の詳細な説明】
「
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容組成物に係り、詳しくは、セラミド類及び特定の他の成分を有効成分とする美容組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の角質層は、皮膚の最外殻に存在しており、皮膚のバリア機能を果たしている。皮膚のバリア機能とは、経皮水分蒸散量を抑えることで肌の水分を保持したり、外部からの生体内への異物の侵入を防いだりする機能であり、この皮膚バリア機能が十分に発揮されないと、乾燥肌、肌荒れ、皮膚炎等が発生する。皮膚では、このバリア機能を発揮させるために、表皮の新陳代謝、すなわち、皮膚(表皮)のターンオーバーを行っている。
【0003】
しかしながら、皮膚が紫外線等の外的因子の影響を受けたり、加齢が進んだりすると、表皮細胞の活動や増殖能が低下し、それに伴い皮膚のターンオーバー速度が遅延する。
【0004】
したがって、皮膚バリア機能を改善・向上させることが、美容的観点からの重要な課題の一つとなっている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、表皮角化細胞をより効果的に活性化させることにより、皮膚のターンオーバーを促進させ、皮膚のバリア機能を高めることが可能な美容組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、皮膚のバリア機能を高めるべく、表皮角化細胞の活性化について鋭意調査・研究したところ、セラミド類と特定の他の成分とを組み合わせることにより、高い表皮角化細胞活性化効果が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、セラミド類と、表皮角化細胞活性化能がほとんどないか、その能力が小さい特定の他の成分を組み合わせることにより、表皮角化細胞を相乗的に活性化させることができることを見いだした。
【0009】
すなわち、本発明は、セラミド類と、下記(a)~(d)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とを有効成分として含有することを特徴とする美容組成物に関する。
(a)アスパルテーム、還元パラチノース、及び還元麦芽糖から選ばれる少なくとも1種の甘味料
(b)システイン、ロイシン、リシン、メチオニン、及びチロシンから選ばれる少なくとも1種のアミノ酸
(c)鉄、及びモリブデンから選ばれる少なくとも1種のミネラル類
(d)コラーゲン、及びプロテオグリカンから選ばれる少なくとも1種の美容成分
【0010】
本発明の美容組成物は、皮膚バリア機能改善・向上作用を有し、皮膚のバリア機能を改善・向上させるために用いる皮膚バリア機能改善・向上剤となり得る。
・・・
【0012】
また、本発明の美容組成物は、経口用であることが好ましく、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、又は液剤であることが好ましい。
・・・
【発明の効果】
【0014】
本発明の美容組成物によれば、表皮角化細胞をより効果的に活性化させることによって、皮膚のターンオーバーを促進させ、より効果的に皮膚のバリア機能を高めることできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
・・・
【図4】本発明の美容組成物(セラミド類+アミノ酸)を正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)に適用した場合の細胞賦活活性率を示す図であり、左図がアミノ酸としてリシン(リシン-塩酸塩)を用いたものを示し、右図がアミノ酸としてメチオニンを用いたものを示す。
・・・
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の美容組成物は、セラミド類と、下記(a)~(d)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分(以下、他成分ということがある)とを有効成分として含有することを特徴とする。セラミド類と共に用いられる下記(a)~(d)の成分は、1種単独(例えば(a)成分)で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。他成分を2種以上組み合せて用いる場合、セラミド類と相乗効果の高い他成分同士を組み合わせることが好ましい。
【0017】
本発明の美容組成物は、表皮角化細胞をより効果的に活性化させることによって、皮膚のターンオーバーを促進させ、より効果的に皮膚のバリア機能を高めることできる。本発明の美容組成物は、皮膚バリア機能改善・向上作用、皮膚のターンオーバー促進作用、表皮角化細胞活性化作用等を有する。したがって、本発明の美容組成物は、皮膚バリア機能改善・向上剤、皮膚のターンオーバー促進剤、表皮角化細胞活性化剤として用いることができる。
【0018】
[セラミド類]
本発明に用いられるセラミド類としては、セラミド1、セラミド2、セラミド3等のヒト型セラミドの他、牛、馬、豚等の脳、脊髄等から抽出した動物由来のセラミド、小麦、米、大豆、ホウレンソウ等から抽出した植物由来のセラミドを用いることができる。また、本発明に用いられるセラミド類としては、糖セラミドであってもよく、具体的に例えば、ガラクトシルセラミド、グルコシルセラミド等の単糖が結合したものや、オリゴ糖が結合したものを挙げることができる。
【0019】
[他成分]
・・・
【0020】
(b)アミノ酸
本発明の美容組成物においては、セラミド類と共に、有効成分として、システイン、ロイシン、リシン、メチオニン、及びチロシンから選ばれる少なくとも1種のアミノ酸(塩を含む)を用いることが好ましい。塩としては、例えば、ナトリウム塩、塩酸塩等を挙げることができる。
・・・
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
[実施例1]
1.細胞培養
(1)37℃、5%CO2インキュベーター内で、75cm2フラスコを用いて、正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)を専用培地により培養した。
(2)トリプシン処理により浮遊させた細胞を、75cm2フラスコから96wellplateの各wellに1.0×104cells/wellの細胞密度で播種した。
(3)37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間前培養した。
(4)各wellより培地を除去後、所定濃度に調製した被験物質含有培地を200μLずつ添加し、CO2インキュベーター内で48時間培養した。
【0041】
なお、セラミド類と他成分の併用サンプルについては、それぞれ2倍濃度の被験物質含有培地を調製し、100μLずつ添加することで目的の濃度とした。また、controlについては、被験物質をDMSOに溶解したものに対しては0.5%DMSO含有培地を用いて調製し、その他の被験物質に対しては0.25%DMSO培地を用いて調製した。
【0042】
セラミド類については、米由来のグルコシルセラミドを用いた。セラミド類と共に用いる他成分としては、表1~表4に示す物質を用いた。
【0043】
2.細胞賦活活性測定
(1)48時間培養後、培養した細胞から培地を除去し、PBS200μL/wellで1回洗浄後、無血清DMEMで30倍に希釈したCellCountingKit-8溶液を150μL添加した。
(2)37℃、5%CO2インキュベーター内に静置し適度に発色させた後、450nmにおける吸光度を測定した。
(3)得られたデータを元にcontrolに対する細胞賦活活性率(% of control)を算出した。
【0044】
% of control = (Data sample-Data blank) /(Data control-Data blank)×100
【0045】
その結果を表1~表4、及び図1~図7に示す。
【0046】
各図は、左から、「コントロール(添加なし)」、「セラミド類の単独添加」、「他成分の単独添加」、「セラミド類+他成分添加」の結果を表す。また、グラフ下部の説明における数値は、サンプル濃度を示し、例えば、図1の左上のグラフの「Gcel_1000」は、セラミド類(グルコシルセラミド)1000(μg/mL)を示す。添加成分の濃度単位は、すべてのグラフにおいて、μg/mLである。縦軸は「%ofcontrol」を示す。
・・・
【0048】
【表2】
[図:0001419329000016.jpg]
・・・
【0051】
表1~表4、及び図1~図7に示すように、セラミド類と、本発明の特定の他成分を組み合わせることにより、表皮角化細胞賦活活性が相乗的に増加した。これは表皮角化細胞が増殖したことを示す。したがって、本発明の美容組成物によれば、皮膚のターンオーバーを促進させ、より効果的に皮膚のバリア機能を高めることできる。
・・・
【0060】
[実施例6](液剤の製造)
下記成分からなる液剤(50mL)を製造した。
【0061】
重量比
還元麦芽糖 5.0
アスパルテーム 1.0
米由来グルコシルセラミド 0.01
コラーゲンペプチド 7.0
プロテオグリカン 5.0
ビタミンC 2.0
ビタミンB1 0.5
ビタミンB2 0.5
ビタミンE 0.2
チロシン 0.1
ロイシン 0.1
リシン-塩酸塩 1.0
水 残部
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の美容組成物は、高い美容効果を有し、経口剤又は外用剤として用いることができることから、本発明の産業上の有用性は高い。」
【図4】(抜粋)
「
[図:0001419329000017.jpg]
」
3 当審の判断
(1)申立理由1(サポート要件)について
前記2の記載に基づけば、背景技術に説明されるように、表皮のターンオーバーは、皮膚のバリア機能を十分に発揮させるために必要なものであるところ、紫外線等の外的因子や加齢により、表皮細胞の活動や増殖能が低下し、皮膚のターンオーバー速度が遅延することから、訂正発明は、「表皮角化細胞をより効果的に活性化させることにより、皮膚のターンオーバーを促進させ、皮膚のバリア機能を高めることが可能な美容組成物を提供する」ことを解決しようとする課題とする発明である。
そして、上記課題を解決する手段として、「セラミド類」と「リシン」とを含有する美容組成物が記載され、経口用組成物とすることが説明されている(【0008】~【0012】、【0018】、【0020】、【0060】、【0061】等)。
さらに、実施例には、表皮角化細胞に対し被験物質を添加して48時間培養し、細胞賦活活性を測定したところ、米由来グルコシルセラミドとリシンとの組み合わせは、表皮角化細胞賦活活性が相乗的に増加し、表皮角化細胞を増殖させたことが示されている(【0040】~【0051】及び【図4】)。なお、実施例で使用された「Cell Counting Kit-8」は、細胞数を測定するキットとして市販されるものである(必要であれば、職権探知による参考資料、DOJINDO製品カタログのホームページ、https://www.dojindo.co.jp/products/CK04/を参照。)。
そして、この実施例は、培養細胞によるインビボの実験結果ではあるものの、経口摂取されたセラミド類が、消化管に沿って吸収され、血流を介して角質層に到達する(前記(甲1-3))、あるいは、セラミド合成酵素の発現亢進を介して内因性のスフィンゴ脂質代謝を高めることによって(前記(甲16-3))、実際に表皮において生理活性を示すことが知られており(甲14及び甲15)、セラミド類の美容効果を謳った様々な経口用美容組成物が市販されているという実情(甲2~甲8)に鑑みれば、当業者は、セラミド類とリシンが経口摂取された場合についても、上記実施例と同様の効果が得られることを理解できるものといえる。
そうすると、本件明細書等の記載に接した当業者であれば、訂正発明の経口用美容組成物が、体内に吸収されて表皮に作用し、表皮角化細胞の増殖能を相乗的に高め、皮膚のターンオーバーを促進させることによって、訂正発明の有する上記課題を解決できることを認識し得るものといえる。
(2)申立理由2(実施可能要件)について
前記(1)と同様の理由により、経口用美容組成物における技術水準を知る当業者であれば、本件明細書等の記載に基づき、訂正発明の経口用美容組成物が、皮膚のターンオーバーを促進させる美容組成物として実際に使用できることを理解できるといえる。
したがって、本件特許明細書には、当業者が訂正発明を実施することが可能な程度に明確かつ十分に記載されているものといえる。
(3)申立人の主張について
前記1(1)及び(2)に記載した点については、前記(1)に説示したとおりであり、経口用美容組成物の技術水準を知る当業者であれば、本件明細書等に記載される実施例から、生体の皮膚における効果を理解し得るものといえる。
また、前記(3)に記載した点については、本件明細書等で着目するセラミドの活性は、表皮角化細胞の増殖促進活性であって、周知のセラミドの保湿作用(甲1、甲13~甲16)とは異なる活性であるから、前記実施例において、セラミド単独で活性を示さなかったとしても、技術常識と何ら矛盾するものではない。
したがって、セラミド単独では活性を示さないことをもって、上記実施例の試験系に疑義を唱える申立人の主張には、その前提に誤りがあり、失当である。
よって、申立人の主張(1)~(3)はいずれも採用することができない。
(4)小括
以上によれば、申立理由1(サポート要件)及び申立理由2(実施可能要件)は、いずれも理由がない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)及び令和6年1月24日付け取消理由通知書に記載した取消理由、並びに特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。ほかに、請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701191