特許異議申立
2024-700593
医薬組成物
- 審判番号
- 2024-700593
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-527073
- 登録番号
- 7402687
- 請求日
- 2024年06月21日
- 審決日
- 2025年03月26日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】興和株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人アルガ特許事務所
- 【異議申立人】金枝 禎二
- 審判長/審判官
- 審判長 前田 佳与子
- 審判官 石井 徹
- 審判官 岩下 直人
- 分類
- P1651.121-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7402687号発明「医薬組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7402687号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
特許第7402687号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る特許出願(特願2019-527073号)は、平成30年6月29日(優先権主張 平成29年6月30日 (JP)日本国)を国際出願日とするものであり、令和5年12月13日に設定の登録(請求項の数3)がなされ、令和5年12月21日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和6年6月21日に、本件特許の請求項1~3に係る発明に対し、特許異議申立人 金枝 禎二(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされた。以後の主な経緯は、次のとおりである。
令和 6年 8月21日付け:取消理由通知書
同年10月28日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年12月 5日 :意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年10月28日にされた訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、一群の請求項である請求項〔1、2〕、及び請求項3について請求するものであって、次の訂正事項1、2の訂正を求めるものである(なお、下線は訂正箇所を示す。)。
〔訂正事項1〕
特許請求の範囲の請求項1に
「【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)次の成分(B-1)、(B-3)、(B-5)及び(B-6)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類:医薬組成物全質量に対して0.5~30質量%
(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類:医薬組成物全質量に対して0.1~10質量%
(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール:医薬組成物全質量に対して0.5~90質量%
(B-6)ラウリル硫酸ナトリウム:医薬組成物全質量に対して0.5~10質量%
を含有し、且つ固形製剤であり、
成分(B-1)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-1)の含有質量比率が3~200質量部であり、
成分(B-3)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-3)の含有質量比率が1~100質量部であり、
成分(B-5)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-5)の含有質量比率が15~1000質量部であり、
成分(B-6)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-6)の含有質量比率が5~50質量部である、医薬組成物。」とあるのを、
「【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)次の成分(B-1)、(B-3)及び(B-5)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類:医薬組成物全質量に対して0.5~30質量%
(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類:医薬組成物全質量に対して0.1~10質量%
(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール:医薬組成物全質量に対して0.5~90質量%
を含有し、且つ固形製剤であり、
成分(B-1)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-1)の含有質量比率が3~200質量部であり、
成分(B-3)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-3)の含有質量比率が1~100質量部であり、
成分(B-5)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-5)の含有質量比率が15~1000質量部である、医薬組成物。」に訂正する。
(訂正される請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正される。)
〔訂正事項2〕
特許請求の範囲の請求項3に
「【請求項3】
ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、且つ固形製剤である医薬組成物に、成分(B-1)、(B-3)、(B-5)及び(B-6)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類:医薬組成物全質量に対して0.5~30質量%
(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類:医薬組成物全質量に対して0.1~10質量%
(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール:医薬組成物全質量に対して0.5~90質量%
(B-6)ラウリル硫酸ナトリウム:医薬組成物全質量に対して0.5~10質量%
を含有せしめる工程を含み、
当該工程は、成分(B-1)を含有せしめる場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-1)の含有質量比率が3~200質量部となるように含有せしめる工程であり、
前記工程は、成分(B-3)を含有せしめる場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-3)の含有質量比率が1~100質量部となるように含有せしめる工程であり、
前記工程は、成分(B-5)を含有せしめる場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-5)の含有質量比率が15~1000質量部となるように含有せしめる工程であり、
前記工程は、成分(B-6)を含有せしめる場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-6)の含有質量比率が5~50質量部となるように含有せしめる工程である、医薬組成物中のペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量均一性の改善方法。」とあるのを
「【請求項3】
ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、且つ固形製剤である医薬組成物に、成分(B-1)、(B-3)及び(B-5)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類:医薬組成物全質量に対して0.5~30質量%
(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類:医薬組成物全質量に対して0.1~10質量%
(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール:医薬組成物全質量に対して0.5~90質量%
を含有せしめる工程を含み、
当該工程は、成分(B-1)を含有せしめる場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-1)の含有質量比率が3~200質量部となるように含有せしめる工程であり、
前記工程は、成分(B-3)を含有せしめる場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-3)の含有質量比率が1~100質量部となるように含有せしめる工程であり、
前記工程は、成分(B-5)を含有せしめる場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-5)の含有質量比率が15~1000質量部となるように含有せしめる工程である、医薬組成物中のペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量均一性の改善方法。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び新規事項の有無
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、成分(B)の選択肢として記載されていた「(B-6)ラウリル硫酸ナトリウム」を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって新たな技術的事項を導入するものではないから、新規事項の追加に該当しない。
請求項1を引用する請求項2についても同様である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3において、成分(B)の選択肢として記載されていた「(B-6)ラウリル硫酸ナトリウム」を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって新たな技術的事項を導入するものではないから、新規事項の追加に該当しない。
3 独立特許要件について
請求項1~3は、特許異議の申立ての対象とされた請求項であるから、本件訂正請求による訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
4 訂正についてのまとめ
上記のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正は、上記第2のとおり認められるので、請求項1~3に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」~「本件発明3」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、令和6年10月28日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(なお、下線は訂正箇所を示す。)。
「【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)次の成分(B-1)、(B-3)及び(B-5)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類:医薬組成物全質量に対して0.5~30質量%
(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類:医薬組成物全質量に対して0.1~10質量%
(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール:医薬組成物全質量に対して0.5~90質量%
を含有し、且つ固形製剤であり、
成分(B-1)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-1)の含有質量比率が3~200質量部であり、
成分(B-3)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-3)の含有質量比率が1~100質量部であり、
成分(B-5)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-5)の含有質量比率が15~1000質量部である、医薬組成物。
【請求項2】
剤形が、錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は丸剤である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、且つ固形製剤である医薬組成物に、成分(B-1)、(B-3)及び(B-5)よりなる群から選ばれる1種以上;
(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類:医薬組成物全質量に対して0.5~30質量%
(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類:医薬組成物全質量に対して0.1~10質量%
(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール:医薬組成物全質量に対して0.5~90質量%
を含有せしめる工程を含み、
当該工程は、成分(B-1)を含有せしめる場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-1)の含有質量比率が3~200質量部となるように含有せしめる工程であり、
前記工程は、成分(B-3)を含有せしめる場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-3)の含有質量比率が1~100質量部となるように含有せしめる工程であり、
前記工程は、成分(B-5)を含有せしめる場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-5)の含有質量比率が15~1000質量部となるように含有せしめる工程である、医薬組成物中のペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量均一性の改善方法。」
第4 特許異議の申立ての理由、取消理由の概要及び申立人が提出した甲号証
1 特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)は、概略、次のとおりである(なお、甲号証については、下記2を参照。)。
・申立理由1
条文:特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)(サポート要件)
対象:請求項1~3
・申立理由2
条文:特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)(実施可能要件)
対象:請求項1~3
・申立理由3
条文:特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)(明確性要件)
対象:請求項1~3
・申立理由4
条文:特許法第29条第2項(同法第113条第2号)(進歩性)
対象:請求項1~3
以下、甲第1号証を主引用例とする申立理由4を「申立理由4A」、甲第2号証を主引用例とする申立理由4を「申立理由4B」と記載する。
2 申立人が提出した甲号証
・甲第1号証:国際公開第2014/050134号
・甲第2号証:国際公開第2005/023777号
・甲第3号証:「医薬品製剤技術」, 株式会社 シーエムシー出版, 2002年7月25日第1刷, p.45~64
・甲第4号証:「薬剤学」, 株式会社 南江堂, 1995年4月1日第4版第4刷, p230~231
・甲第5号証:「基礎から学ぶ 製剤化のサイエンス 増補版」, エルゼビア・ジャパン株式会社, 2015年3月20日, p.66~67, p.212~213, p.248~249
・甲第6号証:「バリデーションの考え方と実施例 実施例編(付属書) 固形製剤:混合工程」, 大阪府健康医療部薬務課, 平成27年3月
・甲第7号証:色材協会誌, 1981, Vol.54, No.10, p.619~622
・甲第8号証:Acta Pharmaceutica, 2014, Vol.64, p.355~367
・甲第9号証:Pharmaceutical Research, 1990, Vol.7, No.9, p.962~966
・甲第10号証:薬剤学,2003, Vol.63, No.4, p.218~227
・甲第11号証:「医薬品添加物事典 2016」, 株式会社 薬事日報社, 2016年2月18日, p.57, p.122~125, p.172~174, p.340, p.354, p.414, p.421~425, p.476~478, p.529~530, p.536~537, p.566~567, p.598~599
・甲第12号証:Circulation, 2013, Vol.128, Abstract 12867, 2024年6月14日(印刷日),
<URL>https://www.ahajournals.org/doi/10.11 61/circ.128.suppl_22.A12867
・甲第13号証:興和株式会社プレスリリース, 興和株式会社, 2015年10月19日
・甲第14号証:「L-HPC(R)」の製品紹介サイトページ(信越化学工業)のアーカイブの写し, 2024年6月14日(印刷日), 2017年6月16日時点のアーカイブ(合議体注:(R)は○の中にRの上付文字を表す。),
<URL>https://web.archive.org/web/20170616210656/http://www.metolose.jp:80/pharmaceutical/l-hpc.html
・甲第15号証:特表2005-522516号公報
・甲第16号証:米国特許出願公開第2010/0285164号明細書
・甲第17号証:特表2015-525745号公報
・甲第18号証:再公表特許第2004/078212号
・甲第19号証:特開2007-126470号公報
以下、申立人が提出した甲第1号証~甲第19号証を、甲号証の番号に従い、それぞれ甲1~甲19ともいう。
3 先に通知した取消理由の趣旨
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明について、取消理由通知書で通知した取消理由1(サポート要件)及び取消理由2(実施可能要件)の趣旨は、次のとおりである。
なお、下記〔取消理由1(サポート要件)の趣旨〕及び〔取消理由2(実施可能要件)の趣旨〕における「請求項1~3」は、本件訂正前の特許請求の範囲の「請求項1~3」である。
〔取消理由1(サポート要件)の趣旨〕
請求項1~3に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満足するとはいえない。
よって、請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
〔取消理由2(実施可能要件)の趣旨〕
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~3に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから、実施可能要件を満足するとはいえない。
よって、請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
第5 取消理由1(サポート要件)についての当審の判断
取消理由1(サポート要件)の趣旨は、上記第4の3で述べたとおりである。以下、当該取消理由1(サポート要件)について、判断する。
1 サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と本件明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)の記載を対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
以下、上記判断基準に基づいて検討する。
2 本件発明が解決しようとする課題
発明の詳細な説明の記載から、本件発明が解決しようとする課題(以下「本件発明の課題」という。)は、ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量の均質性(含量均一性)に優れる医薬組成物を提供することである(【0008】)。
以下、医薬組成物中の「ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量の均質性(含量均一性)」を、「含量均一性」と略して記載することがある。
3 本件特許の出願時の技術常識(以下「技術常識」という。)を示す文献
(当審注:下記甲号証はいずれも申立人が提出した証拠である。)
(1)甲3の記載
ア
「
[図:0001423507000001.jpg]
」(50頁)
イ
「
[図:0001423507000002.jpg]
」(62頁)
(2)甲4の記載
ア
「
[図:0001423507000003.jpg]
[図:0001423507000004.jpg]
」(231頁)
(3)甲5の記載
ア
「
[図:0001423507000005.jpg]
[図:0001423507000006.jpg]
[図:0001423507000007.jpg]
」(66頁~67頁)
イ
「
[図:0001423507000008.jpg]
[図:0001423507000009.jpg]
」(213頁)
(4)甲11の記載
ア
「
[図:0001423507000010.jpg]
[図:0001423507000011.jpg]
」(566頁~567頁)
イ
「
[図:0001423507000012.jpg]
」(57頁)
ウ
「
[図:0001423507000013.jpg]
[図:0001423507000014.jpg]
」(421頁~422頁)
エ
「
[図:0001423507000015.jpg]
」(340頁)
(5)甲14の記載
ア
「
[図:0001423507000016.jpg]
」
(6)甲7の記載
ア
「
[図:0001423507000017.jpg]
[図:0001423507000018.jpg]
」(27頁)
4 サポート要件についての判断
(1)請求項1には、
「(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類:医薬組成物全質量に対して0.5~30質量%」、
「(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類:医薬組成物全質量に対して0.1~10質量%」及び
「(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール:医薬組成物全質量に対して0.5~90質量%」よりなる群から選ばれる1種以上を含有し、
「成分(B-1)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-1)の含有質量比率が3~200質量部であり、
成分(B-3)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-3)の含有質量比率が1~100質量部であり、
成分(B-5)を含む場合、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対する成分(B-5)の含有質量比率が15~1000質量部である」ことが記載されている。
(2)一方、発明の詳細な説明には、下記ア~ウに示すように、ペマフィブラートを0.1mg、成分(B)(成分(B-1)、成分(B-3)又は成分(B-5))を2.4mg、乳糖水和物を92.3mg、結晶セルロース24mg、ステアリン酸マグネシウム1.2mgを含む120mgの錠剤(実施例1~5、9~10、14~15)と、成分(B)を含まないこと以外は同じ組成の117.6mgの錠剤(比較例1)について、それぞれのペマフィブラート含量の相対標準偏差(RSD)(%)が記載されている。また、発明の詳細な説明には、下記エに示すように、医薬組成物の製造方法について記載されている。
ア 成分(B)が(B-1)のセルロースエーテル類である実施例1~5(【0084】~【0089】、【表1】)
「【0084】
[試験例1]含量均一性評価試験 その1
医薬組成物中のペマフィブラート含量の均一性を評価するため、以下の試験を実施した。
すなわち、表1記載の各成分の1錠当りの分量が、表1記載の分量(mg)となるように、錠剤を製造した。具体的な手順を以下に示す。
(実施例1~5)
ペマフィブラートとセルロースエーテル類を30秒間混合し、続いて乳糖水和物及び結晶セルロースを加えて30秒間混合し、最後にステアリン酸マグネシウムを加えて30秒間混合した。その後、得られた混合物を、直径7mmの杵を取り付けた打錠機を用いて打錠し、1錠当り120mgの錠剤1000錠を製造した。…(略)…」(【0084】)
「【0086】
得られた錠剤1錠ごとのペマフィブラートの含量の測定値から、第十七改正日本薬局方 含量均一性試験に準じ、錠剤中のペマフィブラート含量の相対標準偏差(RSD)(%)を算出し、錠剤中のペマフィブラート含量のばらつき(均一性の程度)の指標とした。
得られた結果を表1に示す。」(【0086】)
「
[図:0001423507000019.jpg]
」(【表1】)
イ 成分(B)が(B-3)のポビドン類である実施例9~10(【0094】~【0097】、【表3】)
「【0094】
[試験例3]含量均一性評価試験 その3
錠剤の組成が下記表3記載の成分及び分量となるようにしたほかは、試験例1と同様の方法により、試験を実施した。
結果を表3に示す。」(【0094】)
「
[図:0001423507000020.jpg]
」(【表3】)
ウ 成分(B)が(B-5)の多価アルコールである実施例14~15(【0102】~【0105】、【表5】)
「【0102】
[試験例5]含量均一性評価試験 その5
錠剤の組成が下記表5記載の成分及び分量となるようにしたほかは、試験例1と同様の方法により、試験を実施した。
結果を表5に示す。」(【0102】)
「
[図:0001423507000021.jpg]
」(【表5】)
エ
「【0064】
本発明の医薬組成物は、その剤形に応じて公知の方法により製造することができる。
例えば、医薬組成物が固形製剤である場合には、粉砕、混合、造粒、乾燥、整粒、分級、充填、打錠、コーティング等の単位操作を適宜組み合わせることにより製造することができるが、その製造方法としては、成分(A)と成分(B)とを混合する工程を含む方法が好ましい。
より具体的には例えば、医薬組成物の剤形が顆粒剤、散剤、丸剤等の粒状の製剤の場合、成分(A)、成分(B)に加えて、必要に応じ賦形剤や結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の製剤添加物を用い、これらの成分を混合した後、押出造粒、転動造粒、攪拌造粒、流動層造粒、噴霧造粒、溶融造粒、破砕造粒等の公知の造粒方法により造粒して造粒物を得、さらに必要に応じて分級、整粒等することで製造することができる。なお、得られた造粒物は、公知の方法によりコーティング剤等で被覆することもできる。
また、医薬組成物の剤形が錠剤の場合、成分(A)、成分(B)に加えて、必要に応じ賦形剤や結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の適当な製剤添加物を用い、これらの成分を混合して混合物を得、これを直接圧縮(打錠)すること(直接粉末圧縮法)や、上記の造粒物を必要に応じて分級、整粒等したあと圧縮(打錠)すること(半乾式顆粒圧縮法、乾式顆粒圧縮法、湿式顆粒圧縮法など)により製造することができる。なお、得られた圧縮物(錠剤)は、公知の方法によりコーティング剤等で被覆することもできる。
さらに、医薬組成物の剤形がカプセル剤の場合、上記の造粒物や圧縮物を、カプセルに充填すればよい。」
(3)上記(2)で示したように、発明の詳細な説明の実施例1~5、9~10、14~15には、
「ペマフィブラート0.1mgと成分(B)2.4mgとを混合した後に、乳糖水和物92.3mgと結晶セルロース24mgとを混合し、その後、ステアリン酸マグネシウム1.2mgを混合して打錠し、1錠当たり120mgの錠剤を製造する」場合であって、
成分(B)が、
「(B-1)」については「クロスカルメロースナトリウム」、「カルメロースナトリウム」、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」、「メチルセルロース」又は「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」であり、
「(B-3)」については「クロスポビドン」又は「ポリビニルピロリドン」であり、
「(B-5)」については「マクロゴール6000」又は「D-マンニトール」である場合において、ペマフィブラート含量の相対標準偏差(RSD)(%)が、比較例1と比較して小さかったことが記載されている。
また、【0064】には、本件発明の医薬組成物は、その剤形に応じて公知の方法により製造できることが記載されている(上記(2)エ)。
(4)ここで、実施例1~5、9~10、14~15には、特定の組成及び特定の製造工程により得られた錠剤(医薬組成物)について記載されるのに対し、本件発明1には、製造工程についての特定がなく、混合させる成分の粒径・形状についても特定されていない。
そして、本件発明1は、混合させる成分の配合比について、実施例の配合比(ペマフィブラート:成分(B):錠剤全体=1:24:1200)以外の配合比を包含している。
また、本件発明1の成分(B-1)は、実施例1~5で用いられている具体的なセルロースエーテル類である、「クロスカルメロースナトリウム」(実施例1)、「カルメロースナトリウム」(実施例2)、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」(実施例3)、「メチルセルロース」(実施例4)又は「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(実施例5)以外のものをも包含している。
(5)上記(4)について、検討する。
上記3(1)~(3)の摘示事項によれば、一般に、製造工程、混合させる成分の粒径・形状、又は混合させる成分の配合比は、粒子・粉末の混合に影響を及ぼすというのが技術常識であったといえる。
また、一般に、化合物は、その化学構造の違いにより、物理化学的性質が互いに相違するというのが技術常識であるから、実施例1~5で用いられている具体的なセルロースエーテル類以外の、本件発明1に記載されている「エチルセルロース」、「低置換度」という特定がない「ヒドロキシプロピルセルロース」、「カルメロース」、「カルメロースカリウム」又は「カルメロースカルシウム」が、粒子・粉末の混合に及ぼす影響は、実施例1~5で用いられている具体的なセルロースエーテル類とは、一見すると、異なるようにも考えられる。
そして、上記3(4)の摘示事項によれば、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」(実施例3)、「メチルセルロース」(実施例4)は、それぞれ、「低置換度」という特定がない「ヒドロキシプロピルセルロース」、「エチルセルロース」と物性が異なっており、粒子・粉末の混合に及ぼす影響は、一見すると、それぞれに異なるようにも考えられる。
さらに、実施例3の「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」は、「NBD-021」であるところ、上記3(5)の摘示事項によれば、NBDシリーズは、従来製品と化学的性質は同一であるが、粉体の形状を改良したものであり、かつ流動性が良好な低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの粉体であるので、実施例3のNBDシリーズの「NBD-021」である「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」と、NBDシリーズではない「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」とは流動性等の物性が異なっており、両者は、粒子・粉末の混合に及ぼす影響が、一見すると、異なるようにも考えられる。
加えて、「カルメロース」、「カルメロースカリウム」及び「カルメロースカルシウム」と、「クロスカルメロースナトリウム」(実施例1)とは、カウンターとなるイオンが異なり、帯電性などが異なる化合物であるところ、粉体の帯電性が粉末同士の混合に影響することが知られているので(上記3(3)アの摘示事項)、これらの化合物は粒子・粉末の混合に及ぼす影響が、一見すると、それぞれに異なるようにも考えられる。
(6)上記(5)を踏まえて、さらに検討する。
ア 本件発明において、製造工程が特定されないことに関し、【0064】の記載(上記(2)エ)から、本件発明の医薬組成物は、その剤形に応じて、実施例1~5、9~10、14~15で用いられた特定の製造工程(以下「実施例の製造工程」という。)以外の公知の方法でも製造できることを当業者は理解でき、本件発明の医薬組成物が実施例の製造工程以外の公知の方法で製造された場合にも、上記課題を解決できることを当業者は認識できるといえる。
また、令和6年10月28日提出の意見書(特許権者)に添付された乙第1号証には、本件発明の医薬組成物を実施例の製造工程以外の公知の方法で製造した場合でも、含量均一性が改善されることが示されている。
イ 「混合させる成分の粒径・形状」が特定されないことに関し、発明の詳細な説明の表1、3、5において使用されている成分(B)は、医薬組成物の技術分野で通常用いられる粒径・形状を有するものであることを当業者は理解でき、表1、3、5では、いずれの成分(B)を用いた場合でも含量均一性が改善されることが示されているのであるから、「混合させる成分の粒径・形状」が特定されていなくても上記課題を解決できることを、当業者は認識できるといえる。
また、令和6年10月28日提出の意見書(特許権者)に添付された乙第2号証に記載された実験結果では、「混合させる成分の粒径・形状」が様々であっても含量均一性が改善されることが示されている。
ウ 本件発明1が、実施例の配合比以外の配合比を包含していることに関し、発明の詳細な説明の表1、3、5(上記(2)ア~ウ)には、ペマフィブラート0.1mgを含む錠剤1錠120mg当たり、成分(B)を2.4mg、すなわち錠剤1錠の全質量に対して2質量%、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対して24質量部という配合比で用い、成分(B)として、「クロスカルメロースナトリウム」、「カルメロースナトリウム」、「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」、「メチルセルロース」、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」、「クロスポピドン」、「ポリビニルピロリドン」、「マクロゴール」又は「D-マンニトール」という複数種のいずれを用いた場合でも、含量均一性が大きく改善されることが示されている。
さらに、発明の詳細な説明には、配合比についての記載(【0020】~【0024】、【0031】~【0035】、【0041】~【0049】等)や、成分(B)には医薬組成物中のペマフィブラートの含量均一性を改善する効果があることについての記載(【0009】~【0012】)もある。
そして、これらの記載を参酌すれば、本件発明で特定される程度の配合比であれば上記課題を解決できることを当業者は認識できるといえる。
また、令和6年10月28日提出の意見書(特許権者)に添付された乙第1号証に記載された実験結果では、配合比が変化しても含量均一性が改善されることが示されている。
エ 本件発明1の成分(B-1)が、実施例1~5で用いられている具体的なセルロースエーテル類以外のものをも包含していることに関し、発明の詳細な説明には、実施例で効果が確認されている「メチルセルロース」、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(ヒプロメロースに相当)、「カルメロースナトリウム」及び「クロスカルメロースナトリウム」と同様に含量均一性の改善作用がある好ましい材料として「エチルセルロース」、「ヒドロキシプロピルセルロース」、「カルメロース」、「カルメロースカリウム」及び「カルメロースカルシウム」が成分(B-1)として好ましく使用できることが記載されている(【0019】)。
そして、本件発明1の成分(B-1)として特定されるセルロースエーテル類は、いずれも、実施例で用いられている具体的なセルロースエーテル類と化学構造上の共通性を有しており、含量均一性に大きな影響を与えることが懸念されるまでに物理化学的特性が大きく相違するといえるほどの化学構造の違いがあるとまではいえないから、本件発明1の成分(B-1)として特定されるセルロースエーテル類であれば上記課題を解決できることを当業者は認識できるといえる。
オ 本件発明1の成分(B-1)として特定されている「カルメロース」等と「クロスカルメロースナトリウム」(実施例1)とは帯電性が異なることに関し、発明の詳細な説明の表1には、「メチルセルロース」(実施例4)等のように帯電性を有しないものを用いた場合と、「クロスカルメロースナトリウム」(実施例1)等のように帯電性を有し得るものを用いた場合の、いずれにおいても、含量均一性が改善されることが示されており、本件発明1の成分(B-1)として特定されるセルロースエーテル類であれば上記課題を解決できることを当業者は認識できるといえる。
また、令和6年10月28日提出の意見書(特許権者)に添付された乙第1号証には、本件明細書の実施例で使用されていない、「エチルセルロース」、「ヒドロキシプロピルセルロース」、「カルメロース」、「カルメロースカルシウム」を用いた場合でも含量均一性が改善されることが示されている。
(7)したがって、発明の詳細な説明には、上記2で説示した本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度の記載ないし示唆があるということができ、技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載から、上記課題を解決できる医薬組成物を提供できることを、当業者が認識できるといえる。
本件発明1を引用する本件発明2についても同様である。
本件発明3についても同様である。
5 取消理由1に対する申立人の主張(令和6年12月5日提出の意見書)について
(1)申立人は、医薬品固形製剤にとって「微量な有効成分」や「作用が激しく強力な作用を持つ薬剤」の含量均一性を向上させる製造プロセスとして倍散混合がよく知られていた、という技術常識があるところ、特許権者が提出した乙第1号証に示される実験結果は、「倍散混合」でも「一括混合」でも同様に含量均一性が改善されたことを示しているものであること、加えて、医薬品固形製剤において「混合量比も、混合性に影響を与える因子としてよく知られていたこと」という技術常識があるところ、特許権者が提出した乙第1号証に示される実験結果は、混合量比を変更しても、得られる固形製剤の含量均一性が同様に改善したことを示しているものであって技術常識に反する結果であることから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載不足を補うものであり、乙第1号証に示される結果を考慮することは認められない、という趣旨の主張をしている(3のウ-3、オ-3)。
そこで、上記主張について検討する。
申立人が主張する「倍散混合」とは、発明の詳細な説明の実施例1~5、9~10、14~15で用いられた特定の製造工程(実施例の製造工程)を指しており、「一括混合」とは、乙第1号証の実験で用いられた、前記「特定の製造工程」とは異なる製造工程を指すものと解される。
発明の詳細な説明には、本件発明の効果について、「本件発明によれば、医薬組成物中のぺマフィブラートの含量均一性が改善され、均一性に優れる医薬組成物を提供することができる」(【0013】)との記載があり、本件発明の医薬組成物は、その剤形に応じて公知の方法により製造できること(【0064】)についての記載もあることに加えて、上記第5の4(6)ウで説示したとおり、発明の詳細な説明の表1、3、5には、複数種の成分(B)のいずれについても、錠剤1錠の全質量に対して2質量%、ペマフィブラートフリー体換算1質量部に対して24質量部という配合比で用いた場合に含量均一性が大きく改善されることが示されており、発明の詳細な説明には配合比についての記載(【0020】~【0024】、【0031】~【0035】、【0041】~【0049】等)、及び成分(B)は医薬組成物中のペマフィブラートの含量均一性を改善する効果があることについての記載(【0009】~【0012】)がある。
そして、これらの記載を考慮すれば、乙第1号証に示されている、倍散混合(実施例の製造工程)によらない公知の方法で本件発明の医薬組成物を製造した場合や、成分(A)と成分(B)の配合比を、実施例の配合比ではないが本件発明で特定されている配合比で本件発明の医薬組成物を製造した場合であっても、ペマフィブラートの含量均一性が改善できるという効果が得られることは、発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内であるといえる。
以上のとおり、乙第1号証で示された実験結果は、請求人が主張する「発明の詳細な説明の記載不足を補うもの」ではなく、発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内であるから、当該実験結果を参酌できるといえる。
(2) 申立人は、乙第2号証に示される結果は、同一物質において、粒径・粒子形状が変化しても同様の含量均一性改善効果を奏することを示していない、という趣旨の主張をしている(3のエ-2、キ-2)。
しかしながら、上記第5の4(6)イで説示したように、発明の詳細な説明の表1、3、5において使用されている成分(B)は、医薬組成物の技術分野で通常用いられる粒径・形状を有するものであることを当業者は理解できるから、「混合させる成分の粒径・形状」が特定されていなくても上記課題を解決できることを、当業者は認識できるといえる。
また、令和6年10月28日提出の意見書(特許権者)に添付された乙第2号証の実験結果では、混合させる成分の粒径・形状が様々であっても含量均一性が改善されることが示されている。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(3) 申立人は、本件発明には、製造工程(倍散混合により製造すること)や、混合させる成分の粒径・形状について特定されず、混合させる成分の配合比について、実施例の配合比以外の配合比を包含しており、本件発明1の成分(B-1)は、実施例1~5で用いられている具体的なセルロースエーテル類以外のものをも包含していることについても縷々主張しているが、上記第5の4(6)で説示した理由により、申立人の主張は採用できない。
6 まとめ
以上述べたとおり、本件発明1~3は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記の取消理由により取り消されるべきものでない。
第6 取消理由2(実施可能要件)についての当審の判断
取消理由2(実施可能要件)の趣旨は、上記第4の3で述べたとおりである。以下、当該取消理由2(実施可能要件)について、判断する。
本件発明が実施可能要件を満たすためには、発明の詳細な説明の記載に接した当業者が、本件発明の医薬組成物であって、ペマフィブラートの含量均一性を向上・改善できる医薬組成物を製造できることを理解できるように、発明の詳細な説明が記載されている必要がある。
この点、上記第5の4で説示したように、発明の詳細な説明の記載から、実施例1~5、9~10、14~15の組成及び製造工程により得られた錠剤(医薬組成物)のみならず、医薬組成物の技術分野で通常用いられる粒径・形状の成分(A)及び(B)を用い、実施例の配合比ではないが本件発明で特定された配合比で含む場合、成分(B-1)として、実施例では用いられていない「エチルセルロース」、NBDシリーズの「NBD-021」である「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」以外の「ヒドロキシプロピルセルロース」、「カルメロース」、「カルメロースカリウム」又は「カルメロースカルシウム」から選択して用いた場合、実施例の製造工程以外の公知の製造工程により製造された場合であっても、本件発明の医薬組成物によって含量均一性を向上・改善できることを、当業者は理解できるといえる。
そうすると、上記第5の4で説示したとおり、技術常識を参酌して、発明の詳細な説明に接した当業者は、本件発明の医薬組成物であって、ペマフィブラートの含量均一性を向上・改善できる医薬組成物を製造できるのであるから、発明の詳細な説明は、本件発明の医薬組成物であって、ペマフィブラートの含量均一性を向上・改善できる医薬組成物を製造できることを当業者が理解できるように記載されているといえる。
以上のとおりであるから、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~3を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。
なお、取消理由2に対する申立人の主張は上記第5の5と同様に判断され、採用できない。
第7 取消理由通知において採用しなかった申立理由についての当審の判断
1 申立理由3(明確性要件)について
・請求項:1~3
申立人は、異議申立書のオ.において、請求項1~3には「成分(B-1)」の「セルロースエーテル類」の一つとして「ヒドロキシプロピルセルロース」が特定されるところ、発明の詳細な説明には「ヒドロキシプロピルセルロースには、低置換度でないヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのいずれもが包含される。」(【0018】)と定義されるが、ヒドロキシプロピルセルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、医薬品添加物として明確に区別されるものであって、発明の詳細な説明(【0018】)の「ヒドロキシプロピルセルロース」の定義は技術常識に反しており、請求項1~3の「ヒドロキシプロピルセルロース」の意味を不明瞭にするものである旨主張している(申立書59頁)。
しかし、本件明細書の【0018】の「ヒドロキシプロピルセルロースには、低置換度でないヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのいずれもが包含される。」という記載から、請求項1~3の「ヒドロキシプロピルセルロース」という記載の定義が、「低置換度でないヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのいずれも」包含するという定義であることを、当業者は理解できるのであるから、仮に、当該定義が技術常識に反するとしても、請求項1~3の「ヒドロキシプロピルセルロース」という記載は、明確である。
よって、申立理由3には理由がない。
2 申立理由4A(進歩性)について
申立理由4Aは、本件発明1~3は、甲1に記載された発明に、甲2、甲15~19に記載の事項、及び甲3~11に記載の事項をはじめとする優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、という趣旨である(申立書71頁下から6行~3行等)。
(1)甲1に記載された発明
甲1の[0048]、[0056]~[0058]、特に[表3]から、甲1には、次の発明(以下「引用発明1A」及び「引用発明1B」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明1A>
「化合物Aと名付けられた(R)-2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸 0.05mg
エゼチミブ 10mg
微結晶性セルロース 37.25mg
修飾食品用コーンスターチ 37.25mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
からなる錠剤。」
<引用発明1B>
「化合物Aと名付けられた(R)-2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸 0.05mg
エゼチミブ 10mg
微結晶性セルロース 37.25mg
修飾食品用コーンスターチ 37.25mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
からなる錠剤の製造方法。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1Aとを対比する。
引用発明1Aの「化合物Aと名付けられた(R)-2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸」は、その化学構造(本件明細書【0003】、【0004】)からみて、ペマフィブラートにほかならないから、本件発明1の「ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物」に相当する。
引用発明1Aの「錠剤」は、本件発明1の「固形製剤である、医薬組成物」に相当する。
引用発明1Aの錠剤に含まれる「微結晶性セルロース」、「修飾食品用コーンスターチ」及び「ステアリン酸マグネシウム」と、本件発明1の固形製剤である医薬組成物に含まれる「(B)次の成分(B-1)、(B-3)及び(B-5)よりなる群から選ばれる1種以上;」
「(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類」
「(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類」
「(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール」とは、ペマフィブラートとともに固形製剤に用いられる添加剤である点に限り、一致する。
そうすると、本件発明1と引用発明1Aとの一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「次の成分(A)及び(B):
(A)ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)ペマフィブラートとともに固形製剤に用いられる添加剤
を含有し、且つ固形製剤である、医薬組成物。」
<相違点1>
本件発明1においては、ペマフィブラートとともに固形製剤に用いられる添加剤が、
「(B)次の成分(B-1)、(B-3)及び(B-5)よりなる群から選ばれる1種以上;」
「(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類」
「(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類」
「(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール」であり、これらを本件発明1に記載の所定量及び所定比率で含むことが特定されているのに対し、引用発明1Aにおいては、「ペマフィブラートとともに固形製剤に用いられる添加剤」が、「微結晶性セルロース」、「修飾食品用コーンスターチ」及び「ステアリン酸マグネシウム」であり、これらを本件発明1に記載の所定量及び所定比率で含むことは特定されていない点。
イ 相違点1についての判断
錠剤における含量均一性は、有効性という薬剤の基本に触れる特性であるところ、含量均一性を向上・改善することは、当業者に自明の課題であったといえる(要すれば、上記摘示事項(第5の3(3)ア、及び第5の3(6)ア)を参照。)。
しかし、いずれの甲号証にも、錠剤における含量均一性を向上・改善するために、ペマフィブラートとともに固形製剤に用いられる添加剤として、本件発明1に記載の成分(B)を用いることについては、記載も示唆もない。
そして、医薬組成物において各種の添加剤を用いることは常套手段であり、本件発明1の成分(B)が、いずれも周知の添加剤であることを考慮しても、医薬組成物に用いられる添加剤には多種多様な化合物が知られているのであるから、ペマフィブラートとともに固形製剤に用いる添加剤として、多種多様な添加剤の中から本件発明1に記載の成分(B)を選択し、さらに本件発明1に記載の所定量及び所定比率で用いることを設定して、引用発明1Aを相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ウ 効果について
本件明細書の実施例1~5、9~10、14~15には、本件発明の錠剤(医薬組成物)において、ペマフィブラートの含量均一性が優れていることを示す実験結果が記載されている。
そして、いずれの甲号証にも、本件発明の医薬組成物によってペマフィブラートの優れた含量均一性が得られるという効果(以下「本件発明の効果」という。)が奏されることについては記載も示唆もないのであるから、本件発明の効果を当業者が予測し得たとはいえない。
(3)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の剤形を、錠剤等に特定したものであるところ、上記(2)イで説示した理由と同様の理由により、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
そして、上記(2)ウで説示したとおり、本件発明2の効果を当業者が予測し得たとはいえない。
(4)本件発明3について
ア 対比
上記(2)で説示した、本件発明1と引用発明1Aとの対比を踏まえて、本件発明3と引用発明1Bとを対比すると、一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、且つ固形製剤である医薬組成物に、(B)ペマフィブラートとともに固形製剤に用いられる添加剤を含有せしめる工程を有する、医薬組成物の製造に関する方法。」
<相違点2>
本件発明3においては、「方法」が「医薬組成物中のペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量均一性の改善方法」であって、ペマフィブラートとともに固形製剤に用いられる添加剤が、
「成分(B-1)、(B-3)及び(B-5)よりなる群から選ばれる1種以上;」
「(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類」
「(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類」
「(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール」
であり、これらを本件発明3に記載の所定量及び所定比率で含むことが特定されているのに対し、引用発明1Bにおいては、「方法」が「錠剤の製造方法」であって、「ペマフィブラートとともに固形製剤に用いられる添加剤」が、「微結晶性セルロース」、「修飾食品用コーンスターチ」及び「ステアリン酸マグネシウム」であり、これらを本件発明3に記載の所定量及び所定比率で含むことは特定されていない点。
イ 相違点2についての判断
錠剤における含量均一性は、有効性という薬剤の基本に触れる特性であるところ、含量均一性を向上・改善することは、当業者に自明の課題であったといえる(要すれば、上記摘示事項(第5の3(3)ア、及び第5の3(6)ア)を参照。)。
しかし、いずれの甲号証にも、錠剤における含量均一性を向上・改善するために、ペマフィブラートとともに固形製剤に用いられる添加剤として、本件発明3に記載の成分(B)を用いることについては、記載も示唆もない。
そして、医薬組成物において各種の添加剤を用いることは常套手段であり、本件発明3の成分(B)が、いずれも周知の添加剤であることを考慮しても、医薬組成物に用いられる添加剤には多種多様な化合物が知られているのであるから、ペマフィブラートとともに固形製剤に用いる添加剤として、多種多様な添加剤の中から本件発明3に記載の成分(B)を選択し、さらに本件発明3に記載の所定量及び所定比率で用いることを設定して、さらに「方法」を「医薬組成物中のペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量均一性の改善方法」に変更することによって、引用発明1Bを相違点2に係る本件発明3の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ウ 効果について
上記(2)ウで説示した理由と同様の理由により、本件発明3の効果を当業者が予測し得たとはいえない。
(5)申立人の主張について
ア 申立人は、申立理由4Aについて、引用発明1Aにおける「微結晶セルロース」は、本件発明1及び2における成分(B)と同じ役割で用いられる周知の添加剤であるから、上記「微結晶セルロース」を上記成分(B)に置換することは容易である、という趣旨の主張(申立書61~62頁の「(エ-b)」)をしており、引用発明1Bにおける「微結晶セルロース」は、本件発明3における成分(B)と同じ役割で用いられる周知の添加剤であるから、上記「微結晶セルロース」を上記成分(B)に置換することは容易である、という趣旨の主張(申立書65頁の「オ-b」)もしている。
しかし、上記(2)イで説示したとおり、医薬組成物に用いられる添加剤には多種多様な化合物が知られているのであるから、多種多様な添加剤の中から上記成分(B)を選択し、さらに本件発明1に記載の所定量及び所定比率で用いることを設定して、引用発明1Aを本件発明1及び2の構成を備えたものとすることや、同様にして、引用発明1Bを本件発明3の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、申立人の上記主張を採用することはできない。
イ 申立人は、申立理由4Aについて、固形製剤において有効成分の含量均一性を向上させることは重要な課題であるところ(甲5、甲7、甲9~甲10等)、上記含量均一性を向上させるための手段として「倍散混合」が行われることは周知であり(甲3、甲5~甲7等)、倍散混合の倍散剤として、本件発明1~3における成分(B)を用いつつ、含量均一性を高めるべく、当該倍散剤の量を設定することはごく自然のことであるという趣旨の主張をしている(申立書62~63頁の「(エ-c)」、65頁の「(オ-b)」、49~50頁の「(ウ)技術常識2」)。
しかし、上記(2)イで説示したとおり、医薬組成物に用いられる添加剤には多種多様な化合物が知られているのであるから、含量均一性を向上させるための手段として「倍散混合」が行われることは周知であることを考慮しても、多種多様な添加剤の中から上記成分(B)を選択し、さらに本件発明1に記載の所定量及び所定比率で用いることを設定して、引用発明1Aを本件発明1及び2の構成を備えたものとすることや、同様にして、引用発明1Bを本件発明3の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、申立人の上記主張を採用することはできない。
ウ 申立人は、申立理由4Aについて、本件発明1~3には、甲1に記載された発明からは予測できない顕著な効果があるとは認められないという趣旨、及び成分(B)を混合することで均質性の高い固体製剤を与える場合があることは、例えば甲17及び甲18の記載から、予想できることである、という趣旨の主張をしている(申立書63~64頁の「(エ-d)」、65頁の「(オ-c)」)。
しかし、甲17及び甲18には、有効成分としてペマフィブラートを用いることは記載されておらず、上記成分(B)を混合すれば、薬物の種類に関係なく、均質性の高い固体製剤が得られるという優先日当時の技術常識があることは証拠上確認できない。そして、上記(2)ウで説示したとおり、本件発明の効果を当業者が予測し得たとはいえない。
(6)小括
上記(1)~(5)のとおりであるから、申立理由4Aには理由がない。
3 申立理由4B(進歩性)について
申立理由4Bは、本件発明1~3は、甲2に記載された発明に、甲12~13、甲17~18に記載の事項、及び甲3~11に記載の事項をはじめとする優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、という趣旨である(申立書71頁下から2行~72頁2行)。
(1)甲2に記載された発明
甲2の請求の範囲(特に請求項1~3、11)、[0124]~[0125]等から、甲2には、次の発明(以下「引用発明2A」及び「引用発明2B」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明2A>
「2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸、賦形剤、及び、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を含む、経口用固形製剤である医薬組成物。」
<引用発明2B>
「2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸、賦形剤、及び、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を含む、経口用固形製剤である医薬組成物の製造方法。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明2Aとを対比する。
引用発明2Aの「2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸」の化学構造は、光学異性体がR体に特定されない点を除き、本件発明1の「ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物」に一致する。
引用発明2Aの「経口用固形製剤である医薬組成物」は、本件発明1の「固形製剤である、医薬組成物」に相当する。
引用発明2Aの医薬組成物に含まれる「賦形剤、及び、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等」と、本件発明1の医薬組成物に含まれる「(B)次の成分(B-1)、(B-3)及び(B-5)よりなる群から選ばれる1種以上;」
「(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類」
「(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類」
「(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール」とは、2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸とともに固形製剤に用いられる添加剤である点に限り、一致する。
そうすると、本件発明1と引用発明2Aとの一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「次の成分(A)及び(B):
(A)2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸;
(B)2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸とともに固形製剤に用いられる添加剤
を含有し、且つ固形製剤である、医薬組成物。」
<相違点3>
本件発明1においては、2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸とともに固形製剤に用いられる添加剤が、「(B)次の成分(B-1)、(B-3)及び(B-5)よりなる群から選ばれる1種以上;」
「(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類」
「(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類」
「(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール」であり、これらを本件発明1に記載の所定量及び所定比率で含むことが特定されるのに対し、引用発明2Aにおいては、2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸とともに固形製剤に用いられる添加剤が、「賦形剤、及び、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等」であり、これらを本件発明1に記載の所定量及び所定比率で含むことは特定されていない点。
<相違点4>
本件発明1は、「ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物」を含むことが特定されるのに対し、引用発明2Aは、R体及びS体の区別がない「2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸」を含むものであり、この化合物のR体(ペマフィブラート)を含むことは特定されていない点。
イ 相違点3及び4についての判断
上記2(2)イで説示した理由と同様の理由により、引用発明2Aを相違点3に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
また、引用発明2Aにおいて、R体及びS体の区別がない「2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸」を含む医薬組成物について、この化合物のR体(ペマフィブラート)を含む医薬組成物に特定することにより、引用発明2Aを相違点4に係る本件発明1の構成を備えたものとすることも当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
そして、上記2(2)ウで説示した理由と同様の理由により、本件発明1の効果が当業者が予測し得たものであるとはいえない。
(3)本件発明2について
上記2(3)で説示した理由と同様の理由により、引用発明2Aを本件発明2の構成を備えたものとすることは当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
また、上記2(2)ウで説示した理由と同様の理由により、本件発明2の効果が当業者が予測し得たものであるとはいえない。
(4)本件発明3について
ア 対比
上記(2)で説示した、本件発明1と引用発明2Aとの対比を踏まえて、本件発明3と引用発明2Bとを対比すると、一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸を含有し、且つ固形製剤である医薬組成物に、(B)2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸とともに固形製剤に用いられる添加剤を含有せしめる工程を有する、医薬組成物の製造に関する方法。」
<相違点5>
本件発明3においては、「方法」が「医薬組成物中のペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量均一性の改善方法」であって、「2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸とともに固形製剤に用いられる添加剤が、「(B)次の成分(B-1)、(B-3)及び(B-5)よりなる群から選ばれる1種以上;」
「(B-1)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上のセルロースエーテル類」
「(B-3)ポビドン及びクロスポビドンよりなる群から選ばれる1種以上のポビドン類」
「(B-5)マクロゴール及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール」であり、これらを本件発明3に記載の所定量及び所定比率で含むことが特定されるのに対し、引用発明2Bにおいては、「方法」が「医薬組成物の製造方法」であって、「2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸とともに固形製剤に用いられる添加剤」が、「賦形剤、及び、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等」であり、これらを本件発明3に記載の所定量及び所定比率で含むことは特定されていない点。
<相違点6>
本件発明3においては、医薬組成物が「ペマフィブラート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物」を含むことが特定されるのに対し、引用発明2Bにおいては、医薬組成物がR体及びS体の区別がない「2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸」を含むものであり、この化合物のR体(ペマフィブラート)を含むことは特定されていない点。
イ 相違点5及び6についての判断
上記2(4)イで説示した理由と同様の理由により、引用発明2Bを相違点5に係る本件発明3の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
また、引用発明2Bにおいて、R体及びS体の区別がない「2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸」を含む医薬組成物について、この化合物のR体(ペマフィブラート)を含む医薬組成物に特定することにより、引用発明2Bを相違点6に係る本件発明3の構成を備えたものとすることも当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
ウ 効果について
上記2(2)ウで説示した理由と同様の理由により、本件発明3の効果を当業者が予測し得たとはいえない。
(5)申立人の主張について
ア 申立人は、申立理由4Bについて、本件発明1~3における成分(B)のうちの多くの添加剤が賦形剤、結合剤、崩壊剤等の用途を有し、甲2の[0124]~[0125]には、一般的な結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン(ポピドン類)等、滑沢剤としてポリエチレングリコール(多価アルコールのマクロゴールに相当)等が例示されているから、引用発明2A及び2Bの医薬組成物に配合される添加剤として上記成分(B)を選択することは容易である、という趣旨の主張をしている(申立書67~68頁の「(エ-b)」、70頁の「(オ-b)」)。
しかし、上記2(2)イで説示したとおり、医薬組成物に用いられる添加剤には多種多様な化合物が知られているのであるから、多種多様な添加剤の中から上記成分(B)を選択し、さらに本件発明1に記載の所定量及び所定比率で用いることを設定して、引用発明2Aを本件発明1及び2の構成を備えたものとすることや、同様にして、引用発明2Bを本件発明3の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、申立人の上記主張を採用することはできない。
イ 申立人は、申立理由4Bについて、固形製剤において有効成分の含量均一性を向上させることは重要な課題であるところ(甲5、甲7、甲9、甲10等)、上記含量均一性を向上させるための手段として「倍散混合」が行われることは周知であり(甲3、甲5~甲7等)、倍散混合の倍散剤として、本件発明1~3における成分(B)を用いつつ、含量均一性を高めるべく、当該倍散剤の量を設定することはごく自然のことであるという趣旨の主張をしている(申立書68~70頁の「(エ-c)」及び「(オ-b)」、49~50頁の「(ウ)技術常識2」)。
しかし、上記2(2)イで説示したとおり、医薬組成物に用いられる添加剤には多種多様な化合物が知られているのであるから、含量均一性を向上させるための手段として「倍散混合」が行われることは周知であることを考慮しても、多種多様な添加剤の中から上記成分(B)を選択し、さらに本件発明1に記載の所定量及び所定比率で用いることを設定して、引用発明2Aを本件発明1及び2の構成を備えたものとすることや、同様にして、引用発明2Bを本件発明3の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、申立人の上記主張を採用することはできない。
ウ 申立人は、申立理由4Bについて、本件発明1~3には、甲2に記載された発明からは予測できない顕著な効果があるとは認められないという趣旨の主張をしている(申立書70頁の「(エ-e)」及び「(オ-c)」)。
しかし、上記2(2)ウ及び2(5)ウで説示したとおり、本件発明の効果を当業者が予測し得たとはいえない。
(6)小括
上記(1)~(5)のとおりであるから、申立理由4Bには理由がない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正後の請求項1~3に係る特許は、取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によって取り消すことはできない。また、他に本件訂正後の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700593