特許異議申立
2023-701162
皮膚化粧料
- 審判番号
- 2023-701162
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-016462
- 登録番号
- 7272806
- 請求日
- 2023年10月31日
- 審決日
- 2025年03月14日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】花王株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人アルガ特許事務所
- 【異議申立人】大薮 恭平
- 【異議申立人】竹内 みどり
- 審判長/審判官
- 審判長 木村 敏康
- 審判官 関 美祝
- 審判官 松元 麻紀子
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7272806号発明「皮膚化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7272806号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6、7について訂正することを認める。
特許第7272806号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7272806号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成31年1月31日に出願され、令和5年5月1日にその特許権の設定登録がされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行された。
そして、本件特許についてのその後の経緯は、次のとおりである。
令和5年10月31日 :特許異議申立人 大藪 恭平(以下「申立人
A」という。)による請求項1~7に係る
特許に対する特許異議の申立て
同年11月 8日 :特許異議申立人 竹内 みどり(以下「申立
人B」という。)による請求項1~7に係る
特許に対する特許異議の申立て
令和6年 2月20日付け:取消理由通知書
同年 4月25日 :特許権者による意見書(以下、「意見書1」
という。)及び訂正請求書の提出
同年 5月10日付け:訂正請求があった旨の通知
同年 同月23日 :申立人Aによる意見書(以下、「意見書A
1」という。)の提出
同年 6月14日 :申立人Bによる意見書(以下、「意見書B
1」という。)の提出
同年 7月30日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年10月 1日 :特許権者による意見書(以下、「意見書2」
という。)及び訂正請求書の提出
同年 同月11日付け:訂正請求があった旨の通知
同年11月 7日 :申立人Aによる意見書(以下、「意見書A
2」という。)の提出
同年 同月18日 :申立人Bによる意見書(以下、「意見書B
2」という。)の提出
なお、令和6年4月25日提出の訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 請求の趣旨及び訂正の内容
令和6年10月1日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、「特許第7272806号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」というものである。
そして、その内容は、以下の訂正事項1~7からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の「(C)UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」との記載部分を、
訂正後の請求項1の「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」との記載に改める(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項2~5も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項1の「(D)アルキルシラン、アミノ酸・有機チタネート、脂肪酸又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」との記載部分を、
訂正後の請求項1の「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」との記載に改める(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項2~5も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項1の「次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):」との記載部分を、
訂正後の請求項1の「次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):」との記載に改めるとともに、
訂正前の請求項1の「(D)アルキルシラン、アミノ酸・有機チタネート、脂肪酸又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」との記載部分を、
訂正後の請求項1の「(D)アルキルシラン、アミノ酸・有機チタネート、脂肪酸又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」との記載に改める(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項2~5も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
訂正前の請求項1の「を含有する油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」との記載部分を、
訂正後の請求項1の「を含有し、
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、22~65であり、
成分(C)に対する成分(E)の質量割合が、(E)/(C)=9.0~30であり、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」との記載に改める(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項2~5も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
訂正前の請求項3の「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」との記載部分を、
訂正後の請求項3の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」との記載に改める(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項4~5も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
訂正前の請求項6の「更に、(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤を含有し、成分(C)に対する成分(E)の質量割合が、(E)/(C)=2~30である請求項1~5のいずれか1項記載の皮膚化粧料。」との記載を、
訂正後の請求項6の「次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤、
(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、及びシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、22~65であり、
成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)が、9.0~30であり、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」との記載に改める。
(7)訂正事項7
訂正前の請求項7の「成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である請求項6記載の皮膚化粧料。」と記載を、
訂正後の請求項7の「次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤、
(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、及びアミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、22~65であり、
成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)が、9.0~30であり、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」との記載に改める。
2 本件訂正の適否
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1~4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、訂正後の請求項6及び7の各々については、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることが求められている。
(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「(C)UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を、訂正後の請求項1の「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」という特定の種類の紫外線吸収剤に限定して、特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
願書に添付した明細書の段落0028には、「本発明で用いる成分(C)は、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤であり、・・・例えば、・・・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、・・・ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等が挙げられる。これらのうち、・・・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンが好ましい。」との記載があるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「特許明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮のみを目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「(D)アルキルシラン、アミノ酸・有機チタネート、脂肪酸又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」について、択一的な選択肢のうちの「脂肪酸」という選択肢を削除した上で、訂正後の請求項1の「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」に改めることにより、各選択肢の並列関係をより明確にしたものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び同法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項2に係る訂正は、上記アで述べたとおり、択一的選択肢の一部を削除した上で、各選択肢の並列関係をより明確にしたものにすぎないから、特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項3及び4について
ア 訂正の目的
訂正事項3及び4は、
訂正前の請求項1の「次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):」との記載部分を、
訂正後の請求項1の「次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):」との記載に改め、
訂正前の請求項1の「(D)アルキルシラン、アミノ酸・有機チタネート、脂肪酸又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」との記載部分を、
訂正後の請求項1の「(D)アルキルシラン、アミノ酸・有機チタネート、脂肪酸又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」との記載に改め、
訂正前の請求項1の「を含有する油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」との記載部分を、
訂正後の請求項1の「を含有し、
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、22~65であり、
成分(C)に対する成分(E)の質量割合が、(E)/(C)=9.0~30であり、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」との記載に改めることにより、その「油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料」の技術的な範囲を限定するものである。
したがって、訂正事項3及び4は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
特許明細書等の請求項6の「更に、(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤を含有し、成分(C)に対する成分(E)の質量割合が、(E)/(C)=2~30である」との記載、同段落0056の成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)=9.0である具体例(実施例8)の記載、同請求項7の「成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である」との記載、及び同段落0030の「成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)は、・・・22~65がさらに好ましく」との記載からみて、訂正事項3及び4は、特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項3及び4は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項3及び4は、特許請求の範囲の減縮のみを目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3及び4は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項3の「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」を、訂正後の請求項3の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」とすることにより、訂正前の請求項3に記載された「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」が、訂正前の請求項6に記載された成分(E)に対応することを明瞭化したものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
特許明細書等の請求項6の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」との記載、及び同段落0036の「さらに、成分(E)として、成分(B)以外の25℃で液状の油剤を含有することができ」との記載からみて、訂正事項5は、特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項5は、訂正前の請求項3の「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」が、本来の意味するところとして、特許明細書等に記載された「成分(E)」に対応するものであることを明瞭化したものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6は、「訂正事項6の1」として、訂正前の請求項1~5を引用する請求項6の記載のうち、請求項1のみを引用する請求項6の記載に減縮した上で、他の請求項を引用しない独立形式での記載に改め、
「訂正事項6の2」として、訂正前の請求項1の「(C)UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を、訂正後の請求項6の「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に改めることで、紫外線吸収剤の範囲を限定し、
「訂正事項6の3」として、訂正前の請求項1の「(D)アルキルシラン、アミノ酸・有機チタネート、脂肪酸又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」を、訂正後の請求項6の「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、及びシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」に改めることで、訂正前の選択肢から「アミノ酸・有機チタネート」及び「脂肪酸」の選択肢を削除して限定するとともに、訂正前の(D)の選択肢の各々が特定の表面処理剤によって「表面処理された金属酸化物」であることを明瞭化し、
「訂正事項6の4」として、訂正前の請求項1の「次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):」との記載、並びに
訂正前の請求項1の「を含有する油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」との記載、及び
訂正前の請求項6の「更に、(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤を含有し、成分(C)に対する成分(E)の質量割合が、(E)/(C)=2~30である」との記載に対応する事項を、
訂正後の請求項6の「次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):」との記載、及び「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、22~65であり、
成分(C)に対する成分(E)の質量割合が(E)/(C)が9.0~30であり、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」との記載に改めることにより、その技術的な範囲を限定するものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、同法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」、及び同法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
(ア)訂正事項6のうち「訂正事項6の1」は、「特許請求の範囲の減縮」と「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないもの」とする訂正にすぎないことから、特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(イ)訂正事項6のうち「訂正事項6の2」は、特許明細書等の段落0028の「本発明で用いる成分(C)は、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤であり、・・・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンが好ましい。」との記載からみて、特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(ウ)訂正事項6のうち「訂正事項6の3」は、成分(D)の各選択肢の実体を明確にした上で、成分(D)が上記選択肢のうちの特定の2種であることを限定したものであるから、特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(エ)訂正事項6のうち「訂正事項6の4」は、特許明細書等の段落0030の「成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)は、・・・22~65がさらに好ましく」との記載、同段落0056の成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)=9.0である具体例(実施例8)の記載、及び同請求項7の「成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である」との記載からみて、特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(オ)したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
(ア)訂正事項6の1は、特許請求の範囲の減縮及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(イ)訂正事項6の2は、特許請求の範囲の減縮のみを目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)訂正事項6の3は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(エ)訂正事項6の4は、特許請求の範囲の減縮のみを目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(オ)したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7は、「訂正事項7の1」として、訂正前の請求項1~5を引用する請求項6を引用する請求項7の記載のうち、請求項1のみを引用する請求項6を引用する請求項7の記載に減縮した上で、他の請求項を引用しない独立形式での記載に改め、
「訂正事項7の2」として、訂正前の請求項1の「(C)UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を、訂正後の請求項7の「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に改めることで、紫外線吸収剤の範囲を限定し、
「訂正事項7の3」として、訂正前の請求項1の「(D)アルキルシラン、アミノ酸・有機チタネート、脂肪酸又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」を、訂正後の請求項7の「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、及びアミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物」に改めることで、訂正前の選択肢から「脂肪酸」及び「シリコーン・アシル化アミノ酸」の選択肢を削除して限定するとともに、訂正前の(D)の選択肢の各々が特定の表面処理剤によって「表面処理された金属酸化物」であることを明瞭化し、
「訂正事項7の4」として、訂正前の請求項1の「次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):」との記載、
訂正前の請求項1の「を含有する油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」との記載、及び
訂正前の請求項6の「更に、(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤を含有し、成分(C)に対する成分(E)の質量割合が、(E)/(C)=2~30である」との記載、並びに
訂正前の請求項7の「成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である」との記載に対応する事項を、
訂正後の請求項7の「次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):」との記載、及び「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、22~65であり、
成分(C)に対する成分(E)の質量割合が(E)/(C)が9.0~30であり、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」との記載に改めることにより、その技術的な範囲を限定するものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、同法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」、及び同法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
(ア)訂正事項7のうち「訂正事項7の1」は、「特許請求の範囲の減縮」と「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないもの」とする訂正にすぎないことから、特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(イ)訂正事項7のうち「訂正事項7の2」は、特許明細書等の段落0028の「本発明で用いる成分(C)は、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤であり、・・・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンが好ましい。」との記載からみて、特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(ウ)訂正事項7のうち「訂正事項7の3」は、成分(D)の各選択肢の実体を明確にした上で、成分(D)が上記選択肢のうちの特定の2種であることを限定したものであるから、特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(エ)訂正事項7のうち「訂正事項7の4」は、特許明細書等の段落0030の「成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)は、・・・22~65がさらに好ましく」との記載、及び同段落0056の成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)=9.0である具体例(実施例8)の記載からみて、特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(オ)したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
(ア)訂正事項7の1は、特許請求の範囲の減縮及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(イ)訂正事項7の2は、特許請求の範囲の減縮のみを目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)訂正事項7の3は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(エ)訂正事項7の4は、特許請求の範囲の減縮のみを目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(オ)したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
3 訂正の適否のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1~5〕、6、7について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~7に係る発明(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号順に「本件発明1」等といい、まとめて、「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7(以下、請求項の番号順に「本件請求項1」等という。)に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線は訂正による変更箇所を示す。)。
「【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤、
(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、22~65であり、
成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)が、9.0~30であり、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。
【請求項2】
成分(B)が、(B1)揮発性シリコーン油を含有する請求項1記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
成分(B)と、(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤の合計含有量が、20~80質量%である請求項1又は2記載の皮膚化粧料。
【請求項4】
成分(D)が、(D2)微粒子酸化亜鉛を含有する請求項1~3のいずれか1項記載の皮膚化粧料。
【請求項5】
成分(B1)の含有量が全組成中に20~45質量%である請求項2~4のいずれか1項記載の皮膚化粧料。
【請求項6】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤、
(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、及びシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、22~65であり、
成分(C)に対する成分(E)の質董割合(E)/(C)が、9.0~30であり、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。
【請求項7】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤、
(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、及びアミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、22~65であり、
成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)が、9.0~30であり、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
(1)申立人Aが申し立てた理由
申立人Aは、その特許異議申立書において、請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由として、以下の(A1)~(A3)に概要を示す申立ての理由を主張するとともに、証拠方法として、以下の(3)アに示す甲第1~8号証(以下、それぞれ番号順に「甲A1」等ということがある。)を提出した。
(A1)申立理由A1(特許法第29条第1項第3号:新規性)
(A1-1)申立理由A1-1
訂正前の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(A1-2)申立理由A1-2
訂正前の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A6に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(A1-3)申立理由A1-3
訂正前の請求項1~3、5、及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A7に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~3、5、及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(A1-4)申立理由A1-4
訂正前の請求項1~5、及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A8に記載された発明(実施例5)であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~5、及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(A2)申立理由A2(特許法第29条第2項:進歩性)
(A2-1)申立理由A2-1
訂正前の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A1に記載された発明、並びに甲A1~甲A5に記載された技術的事項に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(A2-2)申立理由A2-2
訂正前の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A6に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(A2-3)申立理由A2-3
訂正前の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A7に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(A2-4)申立理由A2-4
訂正前の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A8に記載された発明(実施例5)に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(A3)申立理由A3(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)
訂正前の請求項1~7に係る発明は、成分(C)として「(C)UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を含有する皮膚化粧料であるところ、本件特許明細書には、実施例として、成分(C)として「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」又は「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」を含有する皮膚化粧料が開示されているにすぎず、それ以外の「UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を用いた訂正前の請求項1~7に係る皮膚化粧料について、本件発明の課題を解決できたことは何ら具体的に示されていない。
また、訂正前の請求項1~7に係る発明は、成分(B)として「(B)揮発性油」を含有する皮膚化粧料であるところ、本件特許明細書には、「(B)揮発性油」がデカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコンであり、かつ「(B1)揮発性シリコーン油」を20質量%以下含む皮膚化粧料が開示されているにすぎず、それ以外の訂正前の請求項1~7に係る皮膚化粧料について、本件発明の課題を解決できたことは何ら具体的に示されていない。
したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである。
(2)申立人Bが申し立てた理由
申立人Bは、その特許異議申立書において、請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由として、以下の(B1)~(B3)に概要を示す申立ての理由を主張するとともに、証拠方法として、以下の(3)イに示す甲第1~9号証(以下、それぞれ番号順に「甲B1」等ということがある。)を提出した。
(B1)申立理由B1(特許法第29条第1項第3号:新規性)
(B1-1)申立理由B1-1
訂正前の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(B1-2)申立理由B1-2
訂正前の請求項1~3、及び5~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(B2)申立理由B2(特許法第29条第2項:進歩性)
(B2-1)申立理由B2-1
訂正前の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(B2-2)申立理由B2-2
訂正前の請求項1~3、及び5~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B2に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~3、及び5~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(B2-3)申立理由B2-3
訂正前の請求項1、3、及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1、3、及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(B2-4)申立理由B2-4
訂正前の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B4に記載された発明、及び甲B4~甲B7に記載された技術的事項に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(B3)申立理由B3(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)
訂正前の請求項1~7に係る発明は、成分(D)として「(D)アルキルシラン、アミノ酸・有機チタネート、脂肪酸又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」を含有する皮膚化粧料であるところ、本件特許明細書には、実施例として、成分(D)として、「シリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」に相当する「ジメチコン・ステアロイルグルタミン酸2Na複合処理酸化チタン」に加えて、「アミノ酸・有機チタネート」で表面処理された金属酸化物に相当する「アミノ酸・チタネート複合処理金属酸化物」、「脂肪酸」で表面処理された金属酸化物に相当する「ステアリン酸処理微粒子酸化チタン」、又は「アルキルシラン」で表面処理された金属酸化物に相当する「オクチルシリル化薄片状酸化亜鉛」をさらに含有する皮膚化粧料が開示されているにすぎず、それ以外の組成を有する訂正前の請求項1~7に係る皮膚化粧料について、本件発明の課題を解決できたことは何ら具体的に示されていない。
したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである。
(3)甲号証一覧
ア 申立人Aが提示する甲A1~甲A8の一覧
甲A1:特開2013-147482号公報
甲A2:Chemical Book,ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド(最終アクセス日:2023年5月26日)
<URL:https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB1314641.htm>
甲A3:化粧品成分オンライン,シクロメチコン(最終アクセス日:2023年5月26日)
<URL:https://cosmetic-ingredients.org/base/637/>
甲A4:Cosmetic-Info.jp,SeraSense SF MTM(最終アクセス日:2023年5月26日)
<URL:https://www.cosmetic-info.jp/mate/detail.php?id=15416>
甲A5:化粧品成分オンライン,ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(最終アクセス日:2023年5月26日)
<URL:https://cosmetic-ingredients.org/sunscreen-agents/16714/>
甲A6:特開2009-114088号公報
甲A7:特開2004-091374号公報
甲A8:特開2007-320917号公報
イ 申立人Bが提示する甲B1~甲B9の一覧
甲B1:特開2007-217380号公報
甲B2:特開2012-211114号公報
甲B3:特開2016-084429号公報
甲B4:特開2009-235046号公報
甲B5:紫外線防御剤を用いた製剤化技術の開発,Journal of the Society of Cosmetic Chemists of Japan,Vol.48,No.3,p.169-176,2014
甲B6:再公表特許第2011/055771号
甲B7:特開2001-181136号公報
甲B8:UL PROSPECTOR,(出力日:2023年11月8日)
甲B9:特願2019-016462号の令和5年1月31日提出の意見書
2 令和6年7月30日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
令和6年4月25日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲である請求項1~5、及び7に係る発明について、当審合議体が令和6年7月30日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由5(新規性)
本件訂正前の請求項1~3、5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の甲A8に記載された発明(実施例1、実施例3)であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)取消理由6(進歩性)
本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の甲A8に記載された発明(実施例1、実施例3)に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)取消理由7(サポート要件)
本件訂正前の請求項1~5、及び7に係る発明は、特許権者の意見書1に記載された「比較例D」を包含するものであるところ、同意見書1によれば、上記「比較例D」は本件発明の課題を解決できなかったといえる。そうすると、本件訂正前の請求項1~5、及び7に包含される皮膚化粧料であっても、本件発明の課題を解決できるか否かは、実際に具体例を調製してその特定を確認しなければ分からないと言わざるを得ず、本件発明の課題を解決できることを本件特許明細書において具体的に確認している実施例のもの以外の皮膚化粧料を包含する本件訂正前の請求項1~5、及び7に係る発明の全てが、本件特許明細書の記載により本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるとは認められない。
したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである。
記
甲A2:Chemical Book,ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド(最終アクセス日:2023年5月26日)
甲A8:特開2007-320917号公報
参考例I:化粧品成分オンライン,ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン,[online],[令和6年7月18日検索],インターネット<https://cosmetic-ingredients.org/sunscreen-agents/11865/>
参考例J:化粧品成分オンライン,トリエチルヘキサノイン,[online],[令和6年7月18日検索],インターネット<https://cosmetic-ingredients.org/base/1107/>
参考例K:化粧品成分オンライン,エチルヘキサン酸セチル,[online],[令和6年7月18日検索],インターネット<https://cosmetic-ingredients.org/base/504/>
(当審合議体注:参考例I~Kは、令和6年7月30日付けで通知した取消理由(決定の予告)において、当審合議体が職権で引用したものである。なお、参考例I~Kの電子的技術情報は、公知ではないが、物質の性質を示すものであるため、技術常識として参照した。)
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、上記当審合議体が通知した取消理由(決定の予告)、並びに申立人A及び申立人Bの申し立てた理由及び証拠によって、本件特許の請求項1~7に係る特許は取り消されるべきではないと判断する。
その理由は次のとおりである。
I 取消理由についての判断
1 取消理由5(新規性)、及び取消理由6(進歩性)について
(1)甲A8に記載された発明
甲A8の【請求項1】には、UV-A領域に吸収を有する紫外線吸収剤と、アルキルアルコキシシランで表面処理された金属酸化物粉体とを含有することを特徴とする日焼け止め化粧料が記載されており、甲A8の【請求項2】には、UV-A領域に吸収を有する紫外線吸収剤が、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、フェニレン-1,4-ビス(2-ベンズイミダジル)-3,3'-5,5'-テトラスルホン酸からなる群から選択される一種または二種以上の紫外線吸収剤であることが記載されている。
そして、甲A8には、甲A8の請求項1を引用する請求項2に対応する表1の実施例1に記載された具体例として、
『以下の成分からなる、日焼け止め化粧料(W/Oサンスクリーン)。
デカメチルシクロペンタシロキサン 26.0質量%
ジメチルポリシロキサン 2.0質量%
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.5質量%
トリメチルシロキシケイ酸 5.0質量%
イソオクタン酸トリグリセライド 5.0質量%
イソオクタン酸セチル 5.0質量%
イソノナン酸イソノニル 5.0質量%
パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル 7.5質量%
2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン
2.0質量%
オクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン 12.0質量%
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.2質量%
精製水 18.45質量%
エデト酸三ナトリウム 0.05質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%グリセリン 2.0質量%
エタノール 3.0質量%
フェノキシエタノール 0.3質量%』
についての発明(以下「甲A8発明ア」という。)が記載されているといえる。
また、甲A8には、甲A8の請求項1を引用する請求項2に対応する表2の実施例3に記載された具体例として、
『以下の成分からなる、日焼け止め化粧料(W/Oサンスクリーン)。
デカメチルシクロペンタシロキサン 26.0質量%
ジメチルポリシロキサン 2.0質量%
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.5質量%
トリメチルシロキシケイ酸 5.0質量%
イソオクタン酸トリグリセライド 5.0質量%
イソオクタン酸セチル 5.0質量%
イソノナン酸イソノニル 5.0質量%
パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル 7.5質量%
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2.0質量%
オクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン 12.0質量%
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.2質量%
精製水 18.45質量%
エデト酸三ナトリウム 0.05質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
グリセリン 2.0質量%
エタノール 3.0質量%
フェノキシエタノール 0.3質量%』
についての発明(以下「甲A8発明イ」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明と甲A8に記載された発明との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲A8発明アとの対比
a W/Oは油中水型を意味し、サンスクリーンは皮膚化粧料であるため、甲A8発明アの「W/Oサンスクリーン」は、本件発明1における「油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料」に相当する。
b 甲A2において、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリドの別名としてジステアリルジモニウムクロリドが記載されること、及び、本件特許明細書の段落0009~0013の記載から、ジステアリルジモニウムヘクトライトとはヘクトライトをジメチルジステアリルアンモニウムクロリドで処理して得られるカチオン変性粘土鉱物であることから、甲A8発明アの「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト」は「ジステアリルジモニウムヘクトライト」の別名であると認められる。
したがって、甲A8発明アの「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト0.2質量%」は、本件発明1の「(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤0.05~5質量%」に相当する。
c 甲A8発明アの「デカメチルシクロペンタシロキサン」及び「ジメチルポリシロキサン」は、本件特許明細書の段落0024に、成分(B)の揮発性油に該当する「(B1)揮発性シリコーン油」の例示として挙げられていることから、それぞれ、本件発明1の「(B)揮発性油」に相当する。
したがって、甲A8発明アの「デカメチルシクロペンタシロキサン26.0質量%」及び「ジメチルポリシロキサン2.0質量%」は、両成分の合計含有量が28.0質量%(26.0質量%+2.0質量%)であることから、本件発明1の「(B)揮発性油20~55質量%」に相当する。
d 参考例Iにおいて、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの別名として2,4-ビス-[{4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジンが記載されることから、甲A8発明アの「2,4-ビス-[{4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」は、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する。
e 本件特許明細書の段落0031に、「オクチルトリエトキシシラン」がアルキルシランとして挙げられていることから、甲A8発明アの「オクチルトリエトキシシラン表面処理酸化チタン」は、「アルキルシランで表面処理された金属酸化物」であるため、本件発明1における「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」に相当する。
f 甲A8発明アの「イソノナン酸イソノニル」は、本件特許明細書の段落0038に、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」の例示として挙げられていることから、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
本件特許明細書の段落0038において、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」として、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルが例示されていることから、甲A8発明アの「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
参考例Jにおいて、トリエチルヘキサノインが液状であり、トリエチルヘキサノインの別名としてトリイソオクタン酸グリセリンが記載されている。そして、トリオクタン酸グリセリンは、その化学構造を参酌すれば、「イソオクタン酸トリグリセライド」であると認められるから、甲A8発明アの「イソオクタン酸トリグリセライド」は液状である。してみると、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
参考例Kにおいて、エチルヘキサン酸セチルが液状であり、エチルヘキサン酸セチルの別名としてオクタン酸セチルが記載されている。そして、参考例Kにおけるオクタン酸セチルは、その化学構造を参酌すれば、「イソオクタン酸セチル」であると認められるから、甲A8発明アの「イソオクタン酸セチル」は液状である。してみると、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
そうすると、甲A8発明アにおいて、本件発明1における「(E1)エステル油」に相当する「イソノナン酸イソノニル」、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」、「イソオクタン酸トリグリセライド」、及び「イソオクタン酸セチル」の合計含有量は、22.5質量%(=5.0質量%+7.5質量%+5.0質量%+5.0質量%)である。
g 甲A8発明アのW/Oサンスクリーンが含有する、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」の含有量は、2.0質量%である。
そして、甲A8発明アのW/Oサンスクリーンが含有する、本件発明1における「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当する「イソノナン酸イソノニル」、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」、「イソオクタン酸トリグリセライド」、及び「イソオクタン酸セチル」の合計含有量は、22.5質量%(=5.0質量%+7.5質量%+5.0質量%+5.0質量%)である。
そうすると、甲A8発明アは、本件発明1における「成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)」が11.25(22.5質量%/2.0質量%)であるから、甲A8発明アは、本件発明1における「成分(C)に対する成分(E)の質量割合が、(E)/(C)=9.0~30である」という条件を満たす。
h 上記cで検討したとおり、甲A8発明アのW/Oサンスクリーンが含有する、本件発明1における「(B)揮発性油」に相当する「デカメチルシクロペンタシロキサン」及び「ジメチルポリシロキサン」の合計含有量は、28.0質量%である。
そして、上記gで検討したとおり、甲A8発明アのW/Oサンスクリーンが含有する、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」の含有量は、2.0質量%である。
そうすると、甲A8発明アにおいて、本件発明1における「成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)」は、14(=28.0質量%/2.0質量%)である。
そうすると、本件発明1と、甲A8発明アとは、
「次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤、
(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)が、9.0~30である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」
である点で一致し、以下の相違点1及び相違点2で相違する。
<相違点1>
成分「(E1)エステル油」の含有量が、本件発明1は、全組成中5~15質量%であるのに対し、甲A8発明アは、全組成中22.5質量%である点
<相違点2>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合(B)/(C)が、本件発明1は22~65であるのに対し、甲A8発明アは14である点
(イ)判断
a 新規性について
以上のとおり、本件発明1と甲A8発明ア(実施例1)の両者は、上記相違点1(成分の含有量)及び相違点2(含有量比)の点で構成上の差異を有している。
なお、本件発明1と甲A8発明イ(実施例3)とを対比した場合においても、両者は、上記相違点1及び相違点2と同様の構成上の差異を有している。
そして、上記相違点1及び相違点2が、技術的に無意味な差異にすぎないとすべき合理的な理由も見当たらない
よって、本件発明1は甲A8に記載された発明ではない。
b 進歩性について
相違点1について検討する。
甲A8には、化粧料に配合し得る成分として、「アボカド油」等の「油分」の例示はあるものの(【0025】)、その配合量については、特に記載も示唆もされていない。
そして、甲A8に記載された発明としての甲A8発明ア(実施例1)は、具体的な処方に基づいて認定したものであるところ、甲A8の記載全体を参照しても、甲A8発明アの実施例の処方において、多くの成分の中から敢えて、本件成分「(E1)エステル油」に相当する「イソノナン酸イソノニル」、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」、「イソオクタン酸トリグリセライド」、及び「イソオクタン酸セチル」に着目し、その合計配合量を「22.5質量%」から、「5~15質量%」に変更することについて、積極的な動機付けがあるとはいえない。
さらに、特許権者の意見書2において、「(E1)エステル油」の含有量が「22.5質量%」である「比較例F」と比して、実施例4は、「(E1)エステル油」の含有量を「9.5質量%」とすることにより、「SPF値」「化粧持続性」「仕上がりの均一性」「べたつきのなさ」「保存安定性」及び「化粧効果」に優れることが、具体的な実験結果を伴って記載されているところ、そのような「エステル油」の配合量に関する技術的意義については、甲A8の記載全体をみても、当業者が認識し得るものとはいえないし、そのような技術常識が本件特許の出願前に存在したとも認められない。
そうすると、本件発明1は、「(E1)エステル油」の含有量を「5~15質量%」とすることにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するといえる。
また、本件発明1と甲A8発明イ(実施例3)とを対比した場合においても、甲A8発明アとを対比した場合と同様である。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2~7は、上記アと同様の理由により、甲A8に記載された発明ではないし、甲A8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)訂正後の本件発明の新規性及び進歩性に関する申立人の主張について
申立人Bの意見書B2では、新規性及び進歩性に関する特段の主張がされていないところ、申立人Aの意見書A2における新規性及び進歩性に関する主張について以下検討する。
ア 特許権者の意見書2に提示の実験結果の信用性について
申立人Aは、意見書A2の3<2>において、意見書2の【表B】の追加の実施例1~4は、本件成分(C)に相当するジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを1質量%含む形態であるところ、本件成分(C)が1質量%である場合に、本件発明1で特定される「(B)/(C)」が最大値の65であり、かつ「(E)/(C)」が最大値の30である形態は全体質量が100質量%を超えるため、実施することができないものであると主張する。
しかしながら、当該【表B】に記載の実施例(正しくは、実施例1、2及び4)のB/Cは24.8~32.3の範囲にあり、同じくE/Cは10.5~17.0の範囲にあることから、当該【表B】の実験結果に技術的な矛盾があるとはいえず、申立人Aが主張する、B/C=65で、E/C=30のものが存在し得るか否かは、当該【表B】の信用性に関係がないので、申立人Aの主張によっては、当該【表B】の実験結果に信用性がないと認めるに至らない。
そして、本件発明は、「質量割合(B)/(C)が、22~65であり」という条件と、「質量割合(E)/(C)が、9.0~30であり」という条件の両方を満たすことを要件とするものであって、この両方の条件を満たし得ないものは、そもそも本件発明に含まれないことが明らかであるから、本件発明が実施できないものであるとも認められない。
よって、申立人Aの上記主張は採用できない。
イ 本件発明の(B)/(C)の質量割合及び成分(E1)の含有量について
申立人Aは、意見書A2の3<3>(3)において、成分(C)と成分(B)の割合、成分(E1)エステル油の含有量の調整は、当業者が適宜設計する事項であると主張する。
しかしながら、上記(2)のア(イ)bで検討したように、揮発性油(B)以外の25℃で液状の油剤(E)として特定の含有量のエステル油(E1)を配合すること、並びに揮発性油(B)及び紫外線吸収剤(C)の質量割合を特定の範囲にすることについては、甲A8を含む引用刊行物に示唆を含めて記載がなく、本件特許の出願時の技術常識を参酌しても、上記相違点1及び相違点2に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。
また、上記意見書2の【表B】の実験結果をも参酌するに、本件発明は、エステル油(E1)の含有量を特定の範囲とし、その(B)/(C)及び(E)/(C)の質量割合を特定の範囲とすることで、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するといえる。
よって、申立人Aの上記主張は採用できない。
(4)取消理由5(新規性)及び取消理由6(進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~7は、甲A8に記載された発明ではなく、甲A8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、本件訂正により、取消理由5(新規性)及び取消理由6(進歩性)は、解消しており、取消理由5及び取消理由6には、理由がない。
2 取消理由7(サポート要件)について
(1)「比較例D」について
取消理由7の要旨は、特許権者の意見書1に記載された「比較例D」が、本件発明の課題を解決できなかったといえることから、本件訂正前の請求項1~5、及び7に係る発明の全てが、発明の詳細な説明の記載により本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるとは認められず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。
これに対して、特許権者は、意見書2において、同意見書1の上記「比較例D」は錯誤により誤った組成を記載してしまったものであり、上記比較例Dの「(D)オクチルシリル化超微粒子酸化亜鉛分散液(45質量%デカメチルシクロペンタシロキサンスラリー液)40.0質量%」との記載は、正しくは「シリコーン処理超微粒子酸化亜鉛分散液(45質量%デカメチルシクロペンタシロキサンスラリー液)40.0質量%」であり、本件発明に包含されるものではないから、本件発明は、本件発明の課題を解決できない具体例を包含するものではないと主張する。
してみると、上記「比較例D」を根拠にした取消理由7は、錯誤により記載された「比較例D」を根拠にしており、失当であるから、理由がない。
(2)サポート要件に関する、意見書における申立人の主張について
上記「比較例D」を根拠にした取消理由7に関連して、申立人Bは意見書B2において、比較例Dが示された実験結果は、実験者の氏名が記載されていないことから実際に実験がなされたかすら明らかでないし、仮に実験がなされたとしても、「比較例D」の組成の記載を誤った主体も特定されていないのだから、錯誤の有無について事実認定することはできず、さらに、「比較例D」の組成のように重大な記載を誤るとは俄に信じがたく、特許権者の主張は極めて不自然であり信用できない、と主張している。
しかしながら、当該「比較例D」の実験結果が、錯誤ではないことを立証する「実験成績証明書」などの具体的な証拠は、申立人Bによって示されていないので、上記申立人Bの主張は採用できない。
また、上記「比較例D」を根拠にした取消理由7に関連しない申立人A及びBの主張については、取消理由7についての判断を左右するものではないから、採用できない。
(3)取消理由7(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載された発明であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものではない。
したがって、取消理由7(サポート要件)は、特許権者の意見書2によって解消しており、取消理由7には、理由がない。
3 取消理由についての小括
以上のとおり、当審合議体が、令和6年7月30日付け取消理由通知書(決定の予告)にて通知した、取消理由5(新規性)、取消理由6(進歩性)、及び取消理由7(サポート要件)によっては、本件請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
II 取消理由として採用しなかった特許異議申立理由についての検討
以下、令和6年7月30日付け取消理由通知書(決定の予告)において、取消理由として採用しなかった特許異議申立理由について、検討する。
なお、申立理由A1-4(甲A8に基づく新規性欠如)及び申立理由A2-4(甲A8に基づく進歩性欠如)と、取消理由5及び取消理由6は、いずれも甲A8に基づく新規性欠如及び進歩性欠如を理由としているが、両者は甲A8発明として認定した実施例が異なっており、より具体的には、前者は甲A8の実施例5に基づいて甲A8発明を認定しているのに対し、後者は甲A8の実施例1又は実施例3に基づいて甲A8発明を認定しているため、両者は同旨とはいえない。
したがって、申立理由A1-4(甲A8に基づく新規性欠如)及び申立理由A2-4(甲A8に基づく進歩性欠如)についても、以下で検討する。
1 申立理由A1-1(甲A1に基づく新規性欠如)及び申立理由A2-1(甲A1を主引例とする進歩性欠如)について
(1)甲A1に記載された発明
甲A1の【請求項1】には、(A)アルキルアルコキシシランで表面処理された金属酸化物、(B)(トリフルオロプロピルジメチルシロキシ/トリメチルシロキシ)シルセスキオキサン、(C)シリコーン粉体を含有することを特徴とする日焼け止め化粧料が記載されている。
そして、甲A1には、請求項1に対応した「処方例1」に記載された発明として、
『下記の成分を含有するW/O型日焼け止め乳液。
エタノール 10.0質量%
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 3.0質量%
メチルトリメチコン 10.0質量%
シクロメチコン 15.0質量%
オレフィンオリゴマー 3.0質量%
(トリフルオロプロピルジメチルシロキシ
/トリメチルシロキシ)シルセスキオキサン 1.0質量%
オクチルトリエトキシシラン処理酸化亜鉛 12.0質量%
オクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン 5.0質量%
メトキシケイ皮酸オクチル 5.0質量%
オクトクリレン 2.0質量%
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2.0質量%
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1.0質量%
ポリメチルシルセスキオキサン 4.5質量%
ジメチコノール 0.5質量%
1,3-ブチレングリコール 3.0質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
精製水 残量』
についての発明(以下「甲A1発明」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明と甲A1に記載された発明との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲A1発明との対比
a W/Oは油中水型を意味し、日焼け止め乳液は皮膚化粧料であるため、甲A1発明の「W/O型日焼け止め乳液」は、本件発明1における「油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料」に相当する。
b 甲A2にジメチルジステアリルアンモニウムクロリドの別名としてジステアリルジモニウムクロリドが記載されること、及び、本件特許明細書の段落0009~0013の記載から、ジステアリルジモニウムヘクトライトとはヘクトライトをジメチルジステアリルアンモニウムクロリドで処理して得られるカチオン変性粘土鉱物であることから、甲A1発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト」は「ジステアリルジモニウムヘクトライト」の別名であると認められる。
したがって、甲A1発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト1.0質量%」は、本件発明1の「(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤0.05~5質量%」に相当する。
c 甲A1発明の「メチルトリメチコン」は、本件発明1の「(B)揮発性油」に相当する。
甲A1発明の「シクロメチコン」は、甲A3に、環状シリコーン油であり、揮発性オイルであると記載されていることから、本件発明1の「(B)揮発性油」に相当する。
したがって、甲A1発明の「メチルトリメチコン10.0質量%」及び「シクロメチコン15.0質量%」は、両成分の合計含有量が25.0質量%(10.0質量%+15.0質量%)であることから、本件発明1の「(B)揮発性油20~55質量%」に相当する。
d 甲A1発明の「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」は、本件発明1の「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する。
e 本件特許明細書の段落0031に、「オクチルトリエトキシシラン」がアルキルシランとして挙げられていることから、甲A1発明の「オクチルトリエトキシシラン処理酸化亜鉛」及び「オクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン」は、それぞれ「アルキルシランで表面処理された金属酸化物」であるため、本件発明1における「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」に相当する。
f 本件特許明細書の段落0038には、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」として、「メトキシケイ皮酸オクチル」の別名である「メトキシケイ皮酸エチルヘキシル」が挙げられていること等から、甲A1発明の「メトキシケイ皮酸オクチル」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
オクトクリレンは、その化学構造を参酌すれば、「2-シアノ-3,3-ジフェニル-2-プロペン酸-2-エチルヘキシルエステル」であると認められるから、甲A1発明の「オクトクリレン」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
「α-オレフィンオリゴマー」は炭化水素油であるところ、本件特許明細書の段落0036には、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の例示として、「炭化水素油」が挙げられていることから、甲A1発明の「オレフィンオリゴマー」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当する。
本件特許明細書の段落0036には、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の例示として、「シリコーン油」が挙げられていることから、甲A1発明の「ジメチコノール」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当する。
したがって、甲A1発明の「メトキシケイ皮酸オクチル 5.0質量%」及び「オクトクリレン 2.0質量%」は、両成分の合計含有量が7.0質量%(5.0質量%+2.0質量%)であることから、本件発明1の「(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中5~15質量%である」に相当する。
g 甲A1発明のW/O型日焼け止め乳液が含有する、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」の含有量は、2.0質量%である。
そして、甲A1発明のW/O型日焼け止め乳液が含有する、本件発明1における「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当する「メトキシケイ皮酸オクチル」、「オクトクリレン」、「オレフィンオリゴマー」、及び「ジメチコノール」の合計含有量は、10.5質量%(5.0質量%+2.0質量%+3.0質量%+0.5質量%)である。
そうすると、甲A1発明は、本件発明1における「成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)」が5.25(10.5質量%/2.0質量%)である。
h 上記cで検討したとおり、甲A1発明のW/O型日焼け止め乳液が含有する、本件発明1における「(B)揮発性油」に相当する「メチルトリメチコン」及び「シクロメチコン」の合計含有量は25.0質量%である。
そして、上記gで検討したとおり、甲A1発明のW/O型日焼け止め乳液が含有する、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」の含有量は、2.0質量%である。
そうすると、甲A1発明において、本件発明1における「成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)」は、12.5(=25.0質量%/2.0質量%)である。
i そうすると、本件発明1と甲A1発明とは、
「次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤、
(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」
である点で一致し、以下の相違点3及び相違点4で相違する。
<相違点3>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の質量割合(E)/(C)が、本件発明1は9.0~30であるのに対し、甲A1発明は5.25である点
<相違点4>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合(B)/(C)が、本件発明1は22~65であるのに対し、甲A1発明は12.5である点
(イ)判断
a 相違点3及び相違点4は、成分の含有量比の点で実質的に相違しているから、相違点3及び相違点4は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は甲A1に記載された発明ではない。
b 事案に鑑み、相違点3及び相違点4について、まとめて検討する。
甲A1には、日焼け止め化粧料に配合し得る成分として、「油性成分」等の記載はあるものの(【0023】)、その配合量については、特に記載も示唆もされていない。
また、甲A1には、日焼け止め化粧料に配合し得る「紫外線吸収剤」として、「2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル(甲A1発明の「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」の別名)の記載はあるものの、その配合量についても、特に記載も示唆もされていない。
そして、甲A1発明は、具体的な処方に基づいて認定したものであるところ、甲A1の記載全体を参照しても、甲A1発明において、多くの成分の中から敢えて、本件成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」の含有量に対する、本件成分「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当する「メトキシケイ皮酸オクチル」、「オクトクリレン」「オレフィンオリゴマー」、及び「ジメチコノール」の合計含有量の質量割合「(E)/(C)」に着目し、その質量割合「(E)/(C)」を「5.25」から、「9.0~30」に変更すること、それと同時に、本件成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」の含有量に対する、本件成分「(B)揮発性油」に相当する「メチルトリメチコン」及び「シクロメチコン」の合計含有量の質量割合「(B)/(C)」にも着目し、その質量割合「(B)/(C)」を「12.5」から「22~65」に変更することに、甲A1の記載、及び甲A2~甲A5に記載された技術的事項を参酌しても、積極的な動機付けがあるとはいえない。
さらに、特許権者の意見書2において、成分「(E)/(C)」の質量割合が6.77であり、かつ成分「(B)/(C)」の質量割合が20.8である「比較例C」と比して、実施例4は、「(E)/(C)」の質量割合を10.5とし、かつ「(B)/(C)」の質量割合を32.3とすることにより、「SPF値」「化粧持続性」「仕上がりの均一性」「べたつきのなさ」「保存安定性」及び「化粧効果」に優れることが、具体的な実験結果を伴って記載されているところ、そのような「(E)/(C)」の質量割合、及び「(B)/(C)」の質量割合に関する技術的意義については、甲A1の記載、及び甲A2~甲A5に記載された技術的事項をみても、当業者が認識し得るものとはいえないし、そのような技術常識が本件特許の出願前に存在したとも認められない。
そうすると、本件発明1は、成分「(E)/(C)」の質量割合を「9.0~30」にすること、及び成分「(B)/(C)」の質量割合を「22~65」とすることにより、甲A1~甲A5の記載から当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するといえる。
したがって、本件発明1は、甲A1に記載された発明、及び甲A1~甲A5に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2~7は、上記アと同様の理由により、甲A1に記載された発明ではないし、甲A1に記載された発明、及び甲A1~甲A5に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 申立理由A1-2(甲A6に基づく新規性欠如)及び申立理由A2-2(甲A6に基づく進歩性欠如)について
(1)甲A6に記載された発明
甲A6の【請求項1】には、下記一般式(I)で示されるベンゾトリアゾール誘導体と、シリカ被覆金属酸化物とを含有することを特徴とする皮膚外用剤が記載されており、甲A6の【0018】には、一般式(I)のベンゾトリアゾール誘導体の中では、2-[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-イソブトキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールが、最もUV-A~B領域における優れた吸収効果や紫外線防御の持続性の点で優れていると記載されている。
[図:0001423441000001.jpg]
(I)(式中、R’=C1~C6の直鎖のアルキル基、R”=C1~C3の直鎖のアルキル基である)
そして、甲A6には、請求項1に対応した実施例6に記載された発明として、
『下記の成分を含有するクリーム。
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0質量%
(2)トリメチルシロキシケイ酸 1.0質量%
(3)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 2.0質量%
(4)ジプロピレングリコール 4.0質量%
(5)スクワラン 5.0質量%
(6)オクチルシラン処理シリカ被覆微粒子酸化亜鉛
(一次粒子径20~30nm、シリカ20質量%被覆、オクチルトリエトキシシラン8質量%疎水化処理) 10.0質量%
(7)タルク(疎水化処理品) 6.0質量%
(8)パラベン 適量
(9)フェノキシエタノール 適量
(10)エデト酸三ナトリウム 0.02質量%
(11)2-(2-ヒドロキシ-4-イソブトキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール 1.0質量%
(12)2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)-1,3,5-トリアジン
4.0質量%
(13)パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 7.0質量%
(14)ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル
0.5質量%
(15)球状ポリエチレン粉末 5.0質量%
(16)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1.0質量%
(17)精製水 残余
(18)香料 適量』
についての発明(以下「甲A6発明」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明と甲A6に記載された発明との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲A6発明との対比
a 甲A6の請求項1に対応する記載として、甲A6の【0028】には、皮膚外用剤としては、クリーム等が記載され、その剤形としては油中水型乳化組成物が好ましいと記載されていること、及び、甲A6の請求項1の皮膚外用剤に対応した甲A6発明のクリームにおける油性成分の割合が多いことから、甲A6発明の「クリーム」は、「油中水型」であるものと認められ、本件発明1における「油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料」に相当する。
b 「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト」は「ジステアリルジモニウムヘクトライト」の別名であるから、甲A6発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト1.0質量%」は、本件発明1の「(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤0.05~5質量%」に相当する。
c 甲A6発明の「デカメチルシクロペンタシロキサン」は、本件特許明細書の段落0024に、成分(B)の揮発性油に該当する「(B1)揮発性シリコーン油」の例示として挙げられていることから、本件発明1の「(B)揮発性油」に相当する。したがって、甲A6発明の「デカメチルシクロペンタシロキサン20.0質量%」は、本件発明1の「(B)揮発性油20~55質量%」に相当する。
d 本件特許明細書の段落0031に、「オクチルトリエトキシシラン」がアルキルシランとして挙げられていることから、甲A6発明の「オクチルシラン処理シリカ被覆微粒子酸化亜鉛(一次粒子径20~30nm、シリカ20質量%被覆、オクチルトリエトキシシラン8質量%疎水化処理)」は、「アルキルシランで表面処理された金属酸化物」であるため、本件発明1における「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」に相当する。
e 甲A6の【0027】には、「本発明の皮膚外用剤の特に好ましい油性基剤は、・・・スクワラン・・・の油分である。」と記載されていること等から、甲A6発明の「スクワラン」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当する。
本件特許明細書の段落0038において、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」として、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルが例示されていることから、甲A6発明の「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
「ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル」の化学構造等を参酌すれば、甲A6発明の「ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
したがって、甲A6発明の「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 7.0質量%」及び「ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル 0.5質量%」は、両成分の合計量が7.5質量%(=7.0質量%+0.5質量%)であることから、本件発明1の「(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中5~15質量%である」に相当する。
f 甲A6発明のクリームは、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を含有しないことから、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」の含有量は0質量%である。
そうすると、甲A6発明において、本件発明1における「成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)」は、分母である「成分(C)」の質量が0質量%であるから、算出することができない。
g 甲A6発明において、本件発明1における「成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)」についても、上記fで検討したとおり、分母である「成分(C)」の質量が0質量%であるから、算出することができない。
h そうすると、本件発明1と甲A6発明とは、
「次の成分(A)、(B)、(D)及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」
である点で一致し、以下の相違点5~相違点7で相違する。
<相違点5>
本件発明1は、成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を含有するのに対し、甲A6発明は含有しない点
<相違点6>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合(B)/(C)が、本件発明1は22~65であるのに対し、甲A6発明では算出できない点
<相違点7>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の質量割合(E)/(C)が、本件発明1は9.0~30であるのに対し、甲A6発明では算出できない点
(イ)判断
a 相違点5~相違点7は、成分の有無又は含有量比の点で実質的に相違しているから、相違点5~7は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は甲A6に記載された発明ではない。
b 事案に鑑み、相違点5~相違点7について、まとめて検討する。
甲A6の【0026】には、必須成分以外に配合し得る複数の成分の一つとして、「その他の紫外線吸収剤」が記載されているものの、「その他の紫外線吸収剤」として、本件発明1の成分(C)に相当する「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」及び「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」を用いることができる旨は記載も示唆もされていないし、その配合量についても記載あるいは示唆されていない。
そして、甲A6発明は、具体的な処方に基づいて認定したものであるところ、甲A6の記載全体を参照しても、甲A6発明において、必須成分以外に配合し得る複数の成分のうち、あえて「その他の紫外線吸収剤」に着目した上で、「その他の紫外線吸収剤」として甲A6に記載されていない「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」又は「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」を配合すること、そして同時にその配合量は、「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合「(B)/(C)」が「22~65」を満たし、かつ「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の質量割合「(E)/(C)」が「9.0~30」を満たす配合量とすることは、甲A6の記載全体を参酌しても、動機付けがあるとはいえない。
さらに、特許権者の意見書2において、成分「(E)/(C)」の質量割合が6.77であり、かつ成分「(B)/(C)」の質量割合が20.8である「比較例C」と比して、実施例4は、「(E)/(C)」の質量割合を10.5とし、かつ「(B)/(C)」の質量割合を32.3とすることにより、「SPF値」「化粧持続性」「仕上がりの均一性」「べたつきのなさ」「保存安定性」及び「化粧効果」に優れることが、具体的な実験結果を伴って記載されているところ、そのような「(E)/(C)」の質量割合、及び「(B)/(C)」の質量割合に関する技術的意義については、甲A6の記載をみても、当業者が認識し得るものとはいえないし、そのような技術常識が本件特許の出願前に存在したとも認められない。
そうすると、本件発明1は、成分「(E)/(C)」の質量割合を「9.0~30」にすること、及び成分「(B)/(C)」の質量割合を「22~65」とすることにより、甲A6の記載から当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するといえる。
したがって、本件発明1は、甲A6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2~7は、上記アと同様の理由により、甲A6に記載された発明ではないし、甲A6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 申立理由A1-3(甲A7に基づく新規性欠如)及び申立理由A2-3(甲A7に基づく進歩性欠如)について
(1)甲A7に記載された発明
甲A7の【請求項1】には、下記(I)で表されるベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤、および、分子量が2000以上のポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンを含有する、油中水型乳化組成物が記載されている。
[図:0001423441000002.jpg]
〔式中、R1 およびR2 は、同一でも異なってもよく、炭素原子数が1~4のアルキル基、同5~12のシクロアルキル基、および、アリール基から選ばれる1または2以上の基で置換されていることがある、炭素原子数が1~18のアルキル基である〕
そして、甲A7には、請求項1に対応した「実施例7」に記載された発明として、
『下記の成分を含有する油中水型乳化組成物。
シクロメチコン 30.0質量%
ジメチコン 5.0質量%
ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン*12 4.0質量%
ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤(I)*13 1.5質量%
シリコーンレジン 1.0質量%
抗酸化剤 適量
オクチルメトキシシンナメート 3.0質量%
モノオレイン酸エステル 1.5質量%
カチオン変性ベントナイト*14 2.0質量%
デキストリン脂肪酸処理微粒子酸化亜鉛*15 18.0質量%
ステアリン酸アルミ処理微粒子酸化チタン*16 5.0質量%
PMMA球状樹脂粒子 5.0質量%
イオン交換水 残量
グリセリン 4.0質量%
ポリエチレングリコール 1.0質量%
防腐剤 適量
安定化剤 適量
香料 適量
*12:ポリオキシアルキレン基20%、平均分子量6200
*13:チノソーブM(商品名) チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)社製。上記処方値は固形分として換算した。
*14:ベントン38(エレメンテス社製)
*15:デキストリン脂肪酸処理12%、白水ティック社製 CP-1
*16:石原産業社製 SIV-13』
についての発明(以下「甲A7発明」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明と甲A7に記載された発明との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲A7発明との対比
a 甲A7の【0001】には、「油中水型乳化組成物」は「日焼け止め化粧料」等として用いられることが記載されているから、甲A7発明の「油中水型乳化組成物」は、本件発明1における「油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料」に相当する。
b 甲A7発明の「ベントン38」すなわち「カチオン性ベントナイト」は、本件発明1の「ジステアリルジモニウムヘクトライト」に相当する。
したがって、甲A7発明の「カチオン性ベントナイト 2.0質量%」は、本件発明1の「(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤0.05~5質量%」に相当する。
c 甲A7発明の「シクロメチコン」は、甲A3に、環状シリコーン油であり、揮発性オイルであると記載されていることから、本件発明1の「(B)揮発性油」に相当する。
また、甲A7発明の「ジメチコン」は「ジメチルポリシロキサン」の別名であるところ、「ジメチルポリシロキサン」は、本件特許明細書の段落0024に、成分(B)の揮発性油に該当する「(B1)揮発性シリコーン油」の例示として挙げられていることから、本件発明1の「(B)揮発性油」に相当する。
したがって、甲A7発明の「シクロメチコン 30.0質量%」及び「ジメチコン 5.0質量%」は、両成分の合計含有量が35.0質量%(=30.0質量%+5.0質量%)であることから、本件発明1の「(B)揮発性油20~55質量%」に相当する。
d 甲A7発明の「オクチルメトキシシンナメート」は、「メトキシケイ皮酸エチルヘキシル」の別名であるところ、本件特許明細書の段落0038には、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」として、「メトキシケイ皮酸エチルヘキシル」が挙げられていることから、甲A7発明の「オクチルメトキシシンナメート」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
甲A7発明の「モノオレイン酸エステル」は、その化学構造を参酌すれば、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
そうすると、本件発明1における「(E1)エステル油」に相当する「オクチルメトキシシンナメート」及び「モノオレイン酸エステル」の合計含有量は、4.5質量%(=3.0質量%+1.5質量%)である。
e 甲A7発明の油中水型乳化組成物は、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を含有しないことから、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」の含有量は0質量%である。
そうすると、甲A7発明において、本件発明1における「成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)」は、分母である「成分(C)」の質量が0質量%であるから、算出することができない。
f 甲A7発明において、本件発明1における「成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)」についても、上記fで検討したとおり、分母である「成分(C)」の質量が0質量%であるから、算出することができない。
g そうすると、本件発明1と甲A7発明は、
「次の成分(A)、(B)、及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有する、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」
である点で一致し、以下の相違点8~相違点12で相違する。
<相違点8>
本件発明1は、成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を含有するのに対し、甲A7発明は含有しない点
<相違点9>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合(B)/(C)が、本件発明1は22~65であるのに対し、甲A7発明では算出できない点
<相違点10>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の質量割合(E)/(C)が、本件発明1は9.0~30であるのに対し、甲A7発明では算出できない点
<相違点11>
本件発明1は、成分「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」を含有するのに対し、甲A7発明は含有しない点
<相違点12>
成分「(E1)エステル油」の含有量が、本件発明1は、全組成中5~15質量%であるのに対し、甲A7発明は、全組成中4.5質量%である点
(イ)判断
a 相違点8~相違点12は、成分の有無、その含有量又は含有量比の点で実質的に相違しているから、相違点8~相違点12は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は甲A7に記載された発明ではない。
b 事案に鑑み、相違点8~相違点10について、まとめて検討する。
甲A7の【0059】~【0065】には、必要に応じて、ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤(I)以外の紫外線吸収剤を配合できることが記載されているものの、「その他の紫外線吸収剤」として、本件発明1の成分(C)に相当する「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」及び「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」を用いることができる旨は記載されていないし、その配合量についても記載あるいは示唆されていない。
そして、甲A7発明は、具体的な処方に基づいて認定したものであるところ、甲A7の記載全体を参照しても、甲A7発明において、必要に応じて配合し得る「その他の紫外線吸収剤」に着目した上で、「その他の紫外線吸収剤」として甲A7に記載されていない「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」又は「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」を配合すること、そして同時にその配合量は、「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合「(B)/(C)」が「22~65」を満たし、かつ「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の質量割合「(E)/(C)」が「9.0~30」を満たす配合量とすることは、甲A7の記載全体を参酌しても、動機付けがあるとはいえない。
さらに、特許権者の意見書2において、成分「(E)/(C)」の質量割合が6.77であり、かつ成分「(B)/(C)」の質量割合が20.8である「比較例C」と比して、実施例4は、「(E)/(C)」の質量割合を10.5とし、かつ「(B)/(C)」の質量割合を32.3とすることにより、「SPF値」「化粧持続性」「仕上がりの均一性」「べたつきのなさ」「保存安定性」及び「化粧効果」に優れることが、具体的な実験結果を伴って記載されているところ、そのような「(E)/(C)」の質量割合、及び「(B)/(C)」の質量割合に関する技術的意義については、甲A7の記載をみても、当業者が認識し得るものとはいえないし、そのような技術常識が本件特許の出願前に存在したとも認められない。
そうすると、本件発明1は、成分「(E)/(C)」の質量割合を「9.0~30」にすること、及び成分「(B)/(C)」の質量割合を「22~65」とすることにより、甲A7の記載から当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するといえる。
したがって、本件発明1は、相違点11及び相違点12について検討するまでもなく、甲A7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2~3、5、及び6は、上記アと同様の理由により、甲A7に記載された発明ではないし、本件発明2~7は、甲A7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 申立理由A1-4(甲A8(実施例5)に基づく新規性欠如)及び申立理由A2-4(甲A8(実施例5)に基づく進歩性欠如)について
(1)甲A8の実施例5として記載された発明
甲A8の【請求項1】には、UV-A領域に吸収を有する紫外線吸収剤と、アルキルアルコキシシランで表面処理された金属酸化物粉体とを含有することを特徴とする日焼け止め化粧料が記載されており、甲A8の【請求項2】には、UV-A領域に吸収を有する紫外線吸収剤が、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、フェニレン-1,4-ビス(2-ベンズイミダジル)-3,3’-5,5’-テトラスルホン酸からなる群から選択される一種または二種以上の紫外線吸収剤であることが記載されている。
そして、甲A8には、甲A8の請求項1を引用する請求項2に対応する表1の実施例5に記載された具体例として、
『以下の成分からなる、日焼け止め化粧料(W/O乳液)。
ジメチルポリシロキサン 1質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 25質量%
トリメチルシロキシケイ酸 5質量%
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1質量%
イソノナン酸イソノニル 5質量%
パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル 7.5質量%
ブチルエチルプロパンジオール 0.5質量%
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2質量%
2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチルヘキシル 5質量%
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5質量%
球状ポリアクリル酸アルキル粉体 5質量%
オクチルトリエトキシシラン表面処理酸化亜鉛 15質量%
ジプロピレングリコール 5質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
エタノール 2質量%
フェニレン-1,4-ビス(2-ベンズイミダジル)-3,3’-5,5’-テトラスルホン酸 2質量%
トリエタノールアミン 1質量%
精製水 残余』
についての発明(以下「甲A8発明ウ」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明と甲A8発明ウとの対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲A8発明ウとの対比
a W/Oは油中水型を意味し、日焼け止め化粧料は皮膚化粧料であるため、甲A8発明ウの「日焼け止め化粧料(W/O乳液)」は、本件発明1における「油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料」に相当する。
b 甲A2において、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリドの別名としてジステアリルジモニウムクロリドが記載されること、及び、本件特許明細書の段落0009~0013の記載から、ジステアリルジモニウムヘクトライトとはヘクトライトをジメチルジステアリルアンモニウムクロリドで処理して得られるカチオン変性粘土鉱物であることから、甲A8発明ウの「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト」は「ジステアリルジモニウムヘクトライト」の別名であると認められる。
したがって、甲A8発明ウの「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト0.5質量%」は、本件発明1の「(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤0.05~5質量%」に相当する。
c 甲A8発明ウの「ジメチルポリシロキサン」及び「デカメチルシクロペンタシロキサン」は、本件特許明細書の段落0024に、成分(B)の揮発性油に該当する「(B1)揮発性シリコーン油」の例示として挙げられていることから、それぞれ、本件発明1の「(B)揮発性油」に相当する。
したがって、甲A8発明ウの「ジメチルポリシロキサン1質量%」及び「デカメチルシクロペンタシロキサン25質量%」は、両成分の合計含有量が26質量%(=1質量%+25質量%)であることから、本件発明1の「(B)揮発性油20~55質量%」に相当する。
d 甲A8発明ウの「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」は、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する。
e 本件特許明細書の段落0031に、「オクチルトリエトキシシラン」がアルキルシランとして挙げられていることから、甲A8発明ウの「オクチルトリエトキシシラン表面処理酸化チタン」は、「アルキルシランで表面処理された金属酸化物」であるため、本件発明1における「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」に相当する。
f 甲A8発明ウの「イソノナン酸イソノニル」は、本件特許明細書の段落0038に、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」の例示として挙げられていることから、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
本件特許明細書の段落0038において、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」として、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルが例示されていることから、甲A8発明ウの「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
そうすると、本件発明1における「(E1)エステル油」に相当する「イソノナン酸イソノニル」及び「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」、の合計含有量は、12.5質量%(=5質量%+7.5質量%)であるから、甲A8発明ウは、本件発明1における「成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である」という条件を満たす。
g 甲A8発明ウの日焼け止め化粧料(W/O乳液)が含有する、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」の含有量は、2質量%である。
そして、甲A8発明ウの日焼け止め化粧料(W/O乳液)が含有する、本件発明1における「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当する「イソノナン酸イソノニル」及び「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」の合計含有量は、12.5質量%(=5質量%+7.5質量%)である。
そうすると、甲A8発明ウは、本件発明1における「成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)」が6.25(12.5質量%/2.0質量%)である。
h 上記cで検討したとおり、甲A8発明ウの日焼け止め化粧料(W/O乳液)が含有する、本件発明1における「(B)揮発性油」に相当する「ジメチルポリシロキサン」及び「デカメチルシクロペンタシロキサン」の合計含有量は、26質量%である。
そして、上記gで検討したとおり、甲A8発明ウの日焼け止め化粧料(W/O乳液)が含有する、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」の含有量は、2質量%である。
そうすると、甲A8発明ウにおいて、本件発明1における「成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)」は、13(=26質量%/2質量%)である。
そうすると、本件発明1と、甲A8発明ウとは、
「次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤、
(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」
である点で一致し、以下の相違点13及び相違点14で相違する。
<相違点13>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の質量割合(E)/(C)が、本件発明1は22~65であるのに対し、甲A8発明ウは6.25である点
<相違点14>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合(B)/(C)が、本件発明1は22~65であるのに対し、甲A8発明ウは13である点
(イ)判断
a 相違点13及び相違点14は、成分の含有量比の点で実質的に相違しているから、相違点13及び相違点14は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は甲A8に記載された発明ではない。
b 事案に鑑み、まず相違点14について検討する。
甲A8には、「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」の含有量に対する、「ジメチルポリシロキサン」及び「デカメチルポリシロキサン」の合計含有量の含有量比について、特に記載も示唆もされていない。
そして、甲A8発明ウは、具体的な処方に基づいて認定したものであるところ、甲A8の記載全体を参照しても、甲A8発明ウにおいて、多くの成分の中から敢えて、本件発明1の「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」の含有量に対する、本件発明1の「(B)揮発性油」に相当する「ジメチルポリシロキサン」及び「デカメチルポリシロキサン」の合計含有量の比に着目し、その含有量比を「13」から、「22~65」に変更することについて、積極的な動機付けがあるとはいえない。
さらに、特許権者の意見書2において、本件成分(C)に対する成分(B)の質量割合「(B)/(C)」の値が14.7である「比較例E」と比して、実施例4は、質量割合「(B)/(C)」を「32.3」とすることにより、「SPF値」「化粧持続性」「仕上がりの均一性」「べたつきのなさ」「保存安定性」及び「化粧効果」に優れることが、具体的な実験結果を伴って記載されているところ、そのような、成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合(B)/(C)に関する技術的意義については、甲A8の記載全体をみても、当業者が認識し得るものとはいえないし、そのような技術常識が本件特許の出願前に存在したとも認められない。
そうすると、本件発明1は、成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合(B)/(C)を「22~65」とすることにより、甲A8の記載から当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するといえる。
したがって、相違点13について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A8発明ウから当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2~5、及び7は、上記アと同様の理由により、甲A8に記載された発明ではないし、本件発明2~7は、甲A8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 申立理由B1-1(甲B1に基づく新規性欠如)及び申立理由B2-1(甲B1に基づく進歩性欠如)
(1)甲B1に記載された発明
甲B1の【請求項1】には、(a)疎水化処理を施した、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛を1~30質量%、(b)フェニルベンズイミダゾールスルホン酸を0.1~10質量%、(c)トリエタノールアミンを(b)成分に対して50質量%以上、および(d)トリメチルシロキシケイ酸を0.1~10質量%含有する、油中水型乳化日焼け止め化粧料が記載されている。
そして、甲B1には、請求項1に対応した実施例2に記載された発明として、
『下記の成分を含有する日焼け止め化粧料。
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 残余
(2)ジメチルポリシロキサン 2質量%
(3)イソノナン酸イソノニル 3質量%
(4)トリメチルシロキシケイ酸 2.5質量%
(5)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 5質量%
(6)ビス(レソルシニル)トリアジン(「チノソーブS」(チバ スペシャリティーケミカルズ社製)) 0.5質量%
(7)アルキル鎖・シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体 1質量%
(8)有機変性粘土鉱物(「ベントン38VCG」(エレメンティススペシャリティーズ)) 0.2質量%
(9)ステアリン酸処理二酸化チタン 15質量%
(10)ポリメチルシルセスキオキサン 6質量%
(11)イオン交換水 24.3質量%
(12)フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 3質量%
(13)トリエタノールアミン 1.8質量%
(14)グリセリン 1質量%
(15)エデト酸三ナトリウム塩 0.1質量%
(16)エチルアルコール(96度) 5質量%
(17)フェノキシエタノール 0.35質量%』
についての発明(以下「甲B1発明ア」という。)が記載されているといえる。
また、甲B1には、請求項1に対応した実施例3に記載された発明として、
『下記の成分を含有する日焼け止め化粧料。
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 残余
(2)ジメチルポリシロキサン 2質量%
(3)イソノナン酸イソノニル 3質量%
(4)トリメチルシロキシケイ酸 5質量%
(5)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 5質量%
(6)ビス(レソルシニル)トリアジン(「チノソーブS」(チバ スペシャリティーケミカルズ社製)) 0.5質量%
(7)アルキル鎖・シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体 1質量%
(8)有機変性粘土鉱物(「ベントン38VCG」(エレメンティススペシャリティーズ)) 0.2質量%
(9)パルミチン酸デキストリン処理酸化亜鉛 12質量%
(10)ステアリン酸処理二酸化チタン 5質量%
(11)イオン交換水 28.3質量%
(12)フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 3質量%
(13)トリエタノールアミン 1.8質量%
(14)グリセリン 1質量%
(15)エデト酸三ナトリウム塩 0.1質量%
(16)エチルアルコール(96度) 5質量%
(17)フェノキシエタノール 0.35質量%』
についての発明(以下「甲B1発明イ」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明と甲B1に記載された発明との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と、甲B1発明アとの対比
a 甲B1発明アの「日焼け止め化粧料」は、請求項1に対応した実施例から認定した発明であるため、油中水型乳化日焼け止め化粧料であり、また、日焼け止め化粧料は皮膚化粧料であるため、甲B1発明アの「日焼け止め化粧料」は、本件発明1における「油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料」に相当する。
b 甲B1発明アの「有機変性粘土鉱物(「ベントン38VCG」(エレメンティススペシャリティーズ))」は「ジステアルジモニウムヘクトライト」である。
したがって、甲B1発明アの「有機変性粘土鉱物(「ベントン38VCG」(エレメンティススペシャリティーズ))0.2質量%」は、本件発明1の「(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤0.05~5質量%」に相当する。
c 甲B1発明アの「デカメチルシクロペンタシロキサン」及び「ジメチルポリシロキサン」は、本件特許明細書の段落0024に、成分(B)の揮発性油に該当する「(B1)揮発性シリコーン油」の例示として挙げられていることから、本件発明1の「(B)揮発性油」に相当する。
甲B1発明アの「デカメチルシクロペンタシロキサン」の含有量は、100-(2+3+2.5+5+0.5+1+0.2+15+6+24.3+3+1.8+1+0.1+5+0.35)=29.25質量%であり、甲B1発明アの「ジメチルポリシロキサン」の含有量は、2質量%であるから、甲B1発明アにおいて、本件発明1における「(B)揮発性油20~55質量%」に相当する「デカメチルシクロペンタシロキサン」及び「ジメチルポリシロキサン」の合計量は、31.25質量%(=29.25質量%+2質量%)であり、甲B1発明アは本件発明1における「(B)揮発性油20~55質量%」という条件を満たす。
d 甲B1発明アの「ビス(レソルシニル)トリアジン(「チノソーブS」(チバ スペシャリティーケミカルズ社製))」は「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」であるから、甲B1発明アの「ビス(レソルシニル)トリアジン(「チノソーブS」(チバ スペシャリティーケミカルズ社製))」は、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する。
e 甲B1発明アの「ステアリン酸処理二酸化チタン」は、「脂肪酸で表面処理された金属酸化物」であることから、本件発明1の成分(D)とは、「表面処理された金属酸化物」である限りにおいて一致する。
f 甲B1発明アの「イソノナン酸イソノニル」及び「メトキシケイ皮酸エチルヘキシル」は、それぞれ、本件特許明細書の段落0038に、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」の例示として挙げられていることから、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
そして、甲B1発明アの日焼け止め化粧料が含有する、本件発明1における「(E1)エステル油」に相当する「イソノナン酸イソノニル」及び「メトキシケイ皮酸エチルヘキシル」の合計含有量は、8質量%(=3質量%+5質量%)である。
よって、甲B1発明アは、本件発明1における「成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である」という条件を満たす。
g 上記cで示したとおり、甲B1発明アの日焼け止め化粧料が含有する、本件発明1における「成分(B)」に相当する「デカメチルシクロペンタシロキサン」及び「ジメチルポリシロキサン」の合計含有量は、31.25質量%である。
そして、甲B1発明アの日焼け止め化粧料が含有する、本件発明1の「成分(C)」に相当する「ビス(レソルシニル)トリアジン(「チノソーブS」(チバ スペシャリティーケミカルズ社製))」は、0.5質量%である。
そうすると、甲B1発明アは、本件発明1における「成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)」が、62.5(=31.25質量%/0.5質量%)である。
h 甲B1発明アの日焼け止め化粧料が含有する、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」の含有量は、0.5質量%である。
そして、上記fで検討したとおり、甲B1発明アの日焼け止め化粧料が含有する、本件発明1における「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当する「イソノナン酸イソノニル」及び「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」の合計含有量は、8質量%である。
そうすると、甲B1発明アは、本件発明1における「成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)」が、16(=8質量%/0.5質量%)である。
そうすると、本件発明1と、甲B1発明アとは、
「次の成分(A)、(B)、(C)、及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
さらに、表面処理された金属酸化物を含有し、
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、22~65であり、
成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)が、9.0~30であり、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」
である点で一致し、以下の相違点15で相違する。
<相違点15>
表面処理された金属酸化物が、本件発明1は「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」であるのに対し、甲B1発明アは、「ステアリン酸処理二酸化チタン」である点
(イ)判断
a 相違点15は、表面処理された金属酸化物の点で実質的に相違しているから、相違点15は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は甲B1に記載された発明ではない。
b 相違点15について検討する。
甲B1の【0014】には、「疎水化処理を施した、酸化チタン」において、「疎水化処理の方法」として、「ステアリン酸等の脂肪酸を用いた処理」と並んで、「オクチルエトキシシラン」を用いた処理が記載されている。
しかしながら、甲B1発明アにおいて、「ステアリン酸処理二酸化チタン」に代えて、あえて「オクチルエトキシシラン」で疎水化処理を施した酸化チタンを用いることについての、積極的な動機付けはない。
そして、特許権者の意見書2において、本件成分(D)を含有せず、本件成分(D)に相当しない「シリコーン処理超微粒子酸化亜鉛」「ステアリン酸処理酸化亜鉛」「ステアリン酸処理酸化チタン」「ステアリン酸処理ベンガラ」「ステアリン酸処理黄酸化鉄」及び「ステアリン酸処理黒酸化鉄」を含有する比較例D’と比して、実施例4は、比較例D’に含まれる上記本件成分(D)に相当しない成分を含有せず、代わりに本件成分(D)に相当する「オクチルシリル化超微粒子酸化亜鉛」「n-オクチルシリル化酸化亜鉛」「アミノ酸・チタネート複合処理酸化チタン」「アミノ酸・チタネート複合処理ベンガラ」「アミノ酸・チタネート複合処理黄酸化鉄」及び「アミノ酸・チタネート複合処理黒酸化鉄」を含有することにより、「SPF値」「化粧持続性」「仕上がりの均一性」「べたつきのなさ」「保存安定性」及び「化粧効果」に優れることが、具体的な実験結果を伴って記載されているところ、そのような本件成分「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」に関する技術的意義については、甲B1の記載全体をみても、当業者が認識し得るものとはいえないし、そのような技術常識が本件特許の出願前に存在したとも認められない。
そして、上記比較例D’を含む上記意見書2に記載された実験結果の信頼性については、上記Iの1(3)アで検討したとおり、何ら問題がない。
そうすると、本件発明1は、表面処理された金属酸化物として、「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」を用いることにより、甲B1の記載から当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するといえる。
したがって、本件発明1は、甲B1発明アから当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明1と甲B1発明イとを対比した場合においても、甲B1発明アとを対比した場合と同様である。
イ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2~7は、上記アと同様の理由により、甲B1に記載された発明ではないし、甲B1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
6 申立理由B1-2(甲B2に基づく新規性欠如)及び申立理由B2-2(甲B2に基づく進歩性欠如)
(1)甲B2に記載された発明
甲B2の【請求項1】には、(a)疎水化処理無機粉体、(b)シロキサン主鎖にオルガノポリシロキサン基と親水基がグラフトしたシリコーン系界面活性剤、(c)シリコーン油、(d)トリグリセライド、(e)アスタキサンチンを配合することを特徴とする油中水型乳化化粧料が記載されている。
そして、甲B2には、請求項1に対応した実施例14に記載された発明として、
『下記の成分を含有する油中水型乳化下地。
1.ステアロイルグルタミン酸亜鉛(3%)処理酸化チタン 5質量%
2.赤色226号 0.15質量%
3.ステアリン酸(5%)処理黄酸化鉄 0.5質量%
4.メチルトリメチコン 20質量%
5.オルガノポリシロキサングラフトポリオキシアルキレン変性シリコーン 3質量%
6.パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 5質量%
7.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート
1質量%
8.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
1質量%
9.トリイソステアリン酸グリセリル 5質量%
10.アスタキサンチン 0.005質量%
11.シリコーン複合球状粉体 3質量%
12.メタクリル酸メチルクロスポリマー 3質量%
13.ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1質量%
14.メチルパラベン 0.1質量%
15.エチルアルコール 5質量%
16.グリセリン 3質量%
17.ローズマリーエキス 0.1質量%
18.精製水 残量
19.香料 適量
20.塩化ナトリウム 1質量%
21.メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール
2質量%』
についての発明(以下「甲B2発明」という。)が記載されているといえる。
なお、甲B2における実施例14の「%」は、甲B2の【0009】の「1質量%(以下単に「%」と記す)」から「質量%」を意味するものと認定した。
(2)本件発明と甲B2に記載された発明との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲B2発明との対比
a 甲B2発明の「油中水型乳化下地」は、請求項1に対応した実施例であるため、油中水型乳化化粧料であり、また、乳化下地は皮膚化粧料であるため、甲B2発明の「油中水型乳化下地」は、本件発明1における「油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料」に相当する。
b 本件特許明細書の段落0009~0013の記載から、ジステアリルジモニウムヘクトライトとはヘクトライトをジメチルジステアリルアンモニウムクロリドで処理して得られるカチオン変性粘土鉱物であることから、甲B2発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト」は「ジステアリルジモニウムヘクトライト」の別名であると認められる。
したがって、甲B2発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト1質量%」は、本件発明1の「(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤0.05~5質量%」に相当する。
c 甲B2発明の「メチルトリメチコン」は、本件発明1の「(B)揮発性油」に相当する。
したがって、甲B2発明の「メチルトリメチコン20質量%」は、本件発明1の「(B)揮発性油20~55質量%」に相当する。
d 甲B2発明の「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート」は、本件発明1の「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する。
また、甲B2発明の「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」は、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に相当する。
e 甲B2発明の「ステアリン酸(5%)処理黄酸化鉄」は、「脂肪酸で表面処理された金属酸化物」であることから、本件発明1の成分(D)とは、「表面処理された金属酸化物」である限りにおいて一致する。
f 本件特許明細書の段落0038において、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」として、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルが例示されていることから、甲B2発明の「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
また、甲B2発明の「トリイソステアリン酸グリセリル」は、本件特許明細書の段落0038に、「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」の例示として挙げられていることから、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
そうすると、甲B2発明の油中水型乳化下地が含有する、本件発明1における「(E1)エステル油」に相当する「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」及び「トリイソステアリン酸グリセリル」の合計含有量は、10質量%(=5質量%+5質量%)である。
よって、甲B2発明は、本件発明1における「成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である」という条件を満たす。
g 甲B2発明の油中水型乳化下地が含有する、本件発明1における「成分(B)」に相当する「メチルトリメチコン」の含有量は、20質量%である。
そして、甲B2発明の油中水型乳化下地が含有する、本件発明1の「成分(C)」に相当する「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート」及び「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」の合計含有量は、2質量%(=1質量%+1質量%)である。
そうすると、甲B2発明は、本件発明1における「成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)」が、10(=20質量%/2質量%)である。
h 上記gで示したとおり、甲B2発明の油中水型乳化下地が含有する、本件発明1の「成分(C)」に相当する「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート」及び「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」の合計含有量は、2質量%(=1質量%+1質量%)である。
そして、上記fで検討したとおり、甲B2発明の油中水型乳化下地が含有する、本件発明1における「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当する「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」及び「トリイソステアリン酸グリセリル」の合計含有量は、10質量%(=5質量%+5質量%)である。
そうすると、甲B2発明は、本件発明1における「成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)」が、いずれも5(=10質量%/2質量%)である。
そうすると、本件発明1と、甲B2発明とは、
「次の成分(A)、(B)、(C)、及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
さらに、表面処理された金属酸化物を含有し、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」
である点で一致し、以下の相違点16~18で相違する。
<相違点16>
表面処理された金属酸化物が、本件発明1は「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」であるのに対し、甲B2発明は、「ステアリン酸処理(5%)処理黄酸化鉄」である点
<相違点17>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の質量割合(E)/(C)が、本件発明1は9.0~30であるのに対し、甲B2発明は5である点
<相違点18>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合(B)/(C)が、本件発明1は22~65であるのに対し、甲B2発明は10である点
(イ)判断
a 相違点16~相違点18は、表面処理された金属酸化物の種類、及び各成分の含有量比の点で実質的に相違しているから、相違点16~18は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は甲B2に記載された発明ではない。
b 相違点16について検討する。
甲B2の【0015】には、無機粉体を疎水化処理する処理剤として、「シリコーン」及び「N-アシルアミノ酸」が記載されており、これらの表面処理を組み合わせて複合化してもよい旨が記載されている。
しかしながら、甲B2の【0015】には、上記疎水化処理をする処理剤として、多種多様な選択肢が記載されており、その中からあえて「シリコーン」処理と「N-アシル化アミノ酸」処理を選択した上で、複合化するべくこれらを組み合わせることに、積極的な動機づけはない。
仮に、甲B2発明において、「ステアリン酸処理(5%)処理黄酸化鉄」に代えて、疎水化処理として「シリコーン」処理と「N-アシルアミノ酸」処理を組み合わせることにより「シリコーン・アシルアミノ酸で表面処理」された黄色酸化鉄とすることに動機付けがあったとしても、上記5(2)ア(イ)bでも検討したとおり、特許権者の意見書2において、比較例D’と比して、比較例D’に含まれる上記本件成分(D)に相当しない成分を含有せず、代わりに本件成分(D)に相当する「オクチルシリル化超微粒子酸化亜鉛」「n-オクチルシリル化酸化亜鉛」「アミノ酸・チタネート複合処理酸化チタン」「アミノ酸・チタネート複合処理ベンガラ」「アミノ酸・チタネート複合処理黄酸化鉄」及び「アミノ酸・チタネート複合処理黒酸化鉄」を含有する実施例4が、「SPF値」「化粧持続性」「仕上がりの均一性」「べたつきのなさ」「保存安定性」及び「化粧効果」に優れることが、具体的な実験結果を伴って記載されているところ、そのような本件成分「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」に関する技術的意義については、甲B2の記載全体をみても、当業者が認識し得るものとはいえないし、そのような技術常識が本件特許の出願前に存在したとも認められない。
そして、上記比較例D’を含む上記意見書2に記載された実験結果の信頼性については、上記Iの1(3)アで検討したとおり、何ら問題がない。
そうすると、本件発明1は、表面処理された金属酸化物として、「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」を用いることにより、甲B2の記載から当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するといえる。
したがって、本件発明1は、相違点17及び相違点18について検討するまでもなく、甲B2発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~3、5~7について
本件発明2~3、5~7は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2~3、5~7は、上記アと同様の理由により、甲B2に記載された発明ではないし、甲B2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
7 申立理由B2-3(甲B3に基づく進歩性欠如)
(1)甲B3に記載された発明
甲B3の【請求項1】には、「分子内に有機変性構造を有する、液状のケイ素化合物及び該ケイ素化合物の有機変性剤に由来する不純物を含有する不純物含有組成物を、該不純物を捕捉可能な架橋型高分子有機化合物を含む固体粒子と接触させて、該有機性不純物を該固体粒子に捕捉させる捕捉工程、及び、前記ケイ素化合物及び前記固体粒子を分離する分離工程を含む、液状の高純度ケイ素化合物又はその組成物の製造方法。」が記載されており、【請求項17】には、「請求項1~請求項16のいずれかに記載の製造方法により得られた、透明乃至半透明の液状の高純度有機ケイ素化合物又はその組成物。」が記載されている。
そして、甲B3の【0363】には、請求項17に対応した、請求項1に記載の製造方法により得られた、高純度ケイ素化合物を含有する化粧料として、
『下記の成分を含有するリキッドファンデーション(W/O)』
1.イソドデカン 20質量%
2.イソヘキサデカン 10質量%
3.イソノナン酸イソトリデシル 3質量%
4.トリカプリルカプリン酸グリセリル 2質量%
5.ポリエーテル変性シリコーン 1質量%
6.液状高純度ポリエーテル変性シリコーンNo.P1-1 1質量%
7.有機変性粘土鉱物(ベントン38V) 1.5質量%
8.メトキシケイ皮酸オクチル 5質量%
9.オクチルシラン処理酸化チタン 8.5質量%
10.オクチルシラン処理赤酸化鉄 0.4質量%
11.オクチルシラン処理黄酸化鉄 1質量%
12.オクチルシラン処理黒酸化鉄 0.1質量%
13.ジメチコン、ジメチコンクロスポリマー 2質量%
14.イソドデカン/(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー 1質量%
15.トリメチルシロキシケイ酸 1質量%
16.1,3-ブチレングリコール 5質量%
17.グリセリン 3質量%
18.塩化ナトリウム 0.5質量%
19.防腐剤 適量
20.精製水 残量』
についての発明(以下「甲B3発明」という。)が記載されているといえる。
なお、甲B3の【0363】における処方例の「部」は、甲B3の【0362】の「「部」は(重量)質量部を表す。」との記載から、「質量%」を意味するものと認定した。
(2)本件発明と甲B3に記載された発明との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲B3発明との対比
a 甲B3発明の「リキッドファンデーション(W/O)」は、油中水型皮膚化粧料であるから、甲B3発明の「リキッドファンデーション(W/O)」は、本件発明1における「油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料」に相当する。
b 甲B3発明の「ベントン38V」は、本件発明1の「ジステアリルジモニウムヘクトライト」に相当する。
したがって、甲B3発明の「有機変性粘土鉱物(ベントン38V) 1.5質量%」は、本件発明1の「(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤0.05~5質量%」に相当する。
c 甲B3発明の「イソドデカン」は、本件特許明細書の段落0025に、「(B)揮発性油」の例示として挙げられていることから、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当する。
また、甲B3発明の「イソヘキサデカン」は、本件特許明細書の段落0025に、「(B)揮発性油」の例示として「イソパラフィン系炭化水素油」が例示されているところ、「イソヘキサデカン」は「イソパラフィン系炭化水素油」に該当するため、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当するといえる。
したがって、甲B3発明において、本件発明1の「(B)揮発性油」に相当する「イソドデカン」及び「イソヘキサデカン」の合計含有量は、30質量%(=20質量%+10質量%)であるから、本件発明1の「(B)揮発性油 20~55質量%」の条件を満たす。
d 甲B3発明の「オクチルシラン処理酸化チタン」「オクチルシラン処理赤酸化鉄」「オクチルシラン処理黄酸化鉄」及び「オクチルシラン処理黒酸化鉄」は、いずれも本件発明1の「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」に相当する。
e 本件特許明細書の段落0038には、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」として、「メトキシケイ皮酸エチルヘキシル」が挙げられていることから、甲B3発明の「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」の別名である「メトキシケイ皮酸オクチル」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
また、甲B3発明の「イソノナン酸イソトリデシル」及び「トリカプリルカプリン酸グリセリル」は、本件特許明細書の段落0038に、いずれも「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」の例示として挙げられていることから、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
そうすると、甲B3発明のリキッドファンデーション(W/O)が含有する、本件発明1における「(E1)エステル油」に相当する「メトキシケイ皮酸オクチル」「イソノナン酸イソトリデシル」及び「トリカプリルカプリン酸グリセリル」の合計含有量は、10質量%(=5質量%+3質量%+2質量%)である。
よって、甲B3発明は、本件発明1における「成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である」という条件を満たす。
f 上記cで検討したとおり、甲B3発明のリキッドファンデーション(W/O)が含有する、本件発明1における「イソドデカン」及び「イソヘキサデカン」の合計含有量は、30質量%である。
ここで、甲B3発明のリキッドファンデーション(W/O)は、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を含有しないことから、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」の含有量は、0質量%である。
そうすると、甲B3発明において、本件発明1における「成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)」は、分母である「成分(C)」の質量が0質量%であるから、算出することができない。
g 本件発明1における「成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)」についても、上記fで検討したとおり、甲B3発明において分母である「成分(C)」の質量が0質量%であるから、算出することができない。
そうすると、本件発明1と、甲B3発明とは、
「次の成分(A)、(B)、(D)及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」
である点で一致し、以下の相違点19~相違点21で相違する。
<相違点19>
本件発明1は、成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を含有するのに対し、甲B3発明は含有しない点
<相違点20>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合(B)/(C)が、本件発明1は22~65であるのに対し、甲B3発明では算出できない点
<相違点21>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の質量割合(E)/(C)が、本件発明1は9.0~30であるのに対し、甲B3発明では算出できない点
(イ)判断
事案に鑑み、相違点19~相違点21について、まとめて検討する。
甲B3の【0269】には、目的に応じて、1種又は2種以上の「紫外線防御成分」を配合できると記載されており、当該「紫外線防御成分」の選択肢の一部として、本件発明1の成分(C)に相当する「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」及び「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」が記載されてはいるものの、その配合量や、他の成分との配合量比については、記載も示唆もされていない。
そして、甲B3発明は、具体的な処方に基づいて認定したものであるところ、甲B3の記載全体を参照しても、「紫外線防御成分」である「メトキシケイヒ酸オクチル」に加えて、さらに「紫外線防御成分」として、複数ある選択肢のうち、あえて「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」又は「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」に着目して配合すること、そして同時にその配合量を、「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合「(B)/(C)」が「22~65」を満たし、かつ「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の質量割合「(E)/(C)」が「9.0~30」を満たす配合量とすることに、動機付けがあるとはいえない。
そして、上記2(2)ア(イ)bでも検討したとおり、特許権者の意見書2において、成分「(E)/(C)」の質量割合が6.77であり、かつ成分「(B)/(C)」の質量割合が20.8である「比較例C」と比して、実施例4は、「(E)/(C)」の質量割合を10.5とし、かつ「(B)/(C)」の質量割合を32.3とすることにより、「SPF値」「化粧持続性」「仕上がりの均一性」「べたつきのなさ」「保存安定性」及び「化粧効果」に優れることが、具体的な実験結果を伴って記載されているところ、そのような「(E)/(C)」の質量割合、及び「(B)/(C)」の質量割合に関する技術的意義については、甲B3全体の記載をみても、当業者が認識し得るものとはいえないし、そのような技術常識が本件特許の出願前に存在したとも認められない。
そうすると、本件発明1は、成分「(E)/(C)」の質量割合を「9.0~30」にすること、及び成分「(B)/(C)」の質量割合を「22~65」とすることにより、甲B3の記載から当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するといえる。
したがって、本件発明1は、甲B3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明3、7について
本件発明3、7は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明3、7は、上記アと同様の理由により、甲B3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
8 申立理由B2-4(甲B4を主引例とする進歩性欠如)
(1)甲B4に記載された発明
甲B4の【請求項1】には、「(A)下記式(I)で示されるベンゾトリアゾール誘導体、(B)高極性油分、(C)シリコーン油、(D)水、及び(E)アルキルPEG/PPGポリジメチルシロキサンエチルジメチコン」を含有し、式(I)が、「
[図:0001423441000003.jpg]
(式中、R’=C1~C6の直鎖のアルキル基、R”=C1~C3の直鎖のアルキル基である)」
である油中水型乳化化粧料が記載されている。
そして、甲B4には、請求項1に対応した実施例3に記載された発明として、
『下記の成分を含有するサンスクリーン。
ジメチルポリシロキサン 5質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 20質量%
トリメチルシロキシケイ酸 3質量%
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 3質量%
ジプロピレングリコール 3質量%
2-エチルヘキサン酸セチル 1質量%
セバシン酸ジイソプロピル 8質量%
シリコーン被覆微粒子酸化亜鉛(60nm) 10質量%
タルク 1質量%
シリコーン被覆微粒子酸化チタン(40nm) 7質量%
パラベン 適量
フェノキシエタノール 適量
エデト酸3ナトリウム 0.2質量%
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1質量%
ポリメチルメタクリル酸共重合体球状粉末 3質量%
2-[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール 3質量%
オクトクリレン 4質量%
4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン 2質量%
精製水 残余
香料 適量』
についての発明(以下「甲B4発明」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明と甲B4に記載された発明との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲B4発明との対比
a 甲B4発明の「サンスクリーン」は、請求項1に対応した実施例3から認定した発明であるため、油中水型乳化サンスクリーンであり、また、サンスクリーンは皮膚化粧料であるため、甲B4発明の「サンスクリーン」は、本件発明1における「油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料」に相当する。
b 本件特許明細書の段落0009~0013の記載から、ジステアリルジモニウムヘクトライトとはヘクトライトをジメチルジステアリルアンモニウムクロリドで処理して得られるカチオン変性粘土鉱物であることから、甲B4発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト」は「ジステアリルジモニウムヘクトライト」の別名であると認められる。
したがって、甲B4発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1質量%」は、本件発明1の「(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤0.05~5質量%」に相当する。
c 甲B4発明の「ジメチルポリシロキサン」及び「デカメチルシクロペンタシロキサン」は、本件特許明細書の段落0024に、成分(B)の揮発性油に該当する「(B1)揮発性シリコーン油」の例示として挙げられていることから、それぞれ、本件発明1の「(B)揮発性油」に相当する。
したがって、甲B4発明の「ジメチルポリシロキサン 5質量%」及び「デカメチルシクロペンタシロキサン 20質量%」は、両成分の合計含有量が25質量%(=5質量%+20質量%)であることから、本件発明1の「(B)揮発性油20~55質量%」に相当する。
d 本件特許明細書の段落0038において、「成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に該当する「エステル油」として、「2-エチルヘキサン酸セチル」が例示されていることから、甲B4発明の「2-エチルヘキサン酸セチル」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
また、甲B4発明の「セバシン酸ジイソプロピル」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
また、オクトクリレンは、その化学構造を参酌すれば、「2-シアノ-3,3-ジフェニル-2-プロペン酸-2-エチルヘキシルエステル」であると認められるから、甲B4発明の「オクトクリレン」は、本件発明1の「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」に相当し、かつ本件発明1の「(E1)エステル油」に相当する。
したがって、甲B4発明の「2-エチルヘキサン酸セチル 1質量%」、「セバシン酸ジイソプロピル 8質量%」、及び「オクトクリレン 4質量%」は、各成分の合計量が13質量%(=1質量%+8質量%+4質量%)であることから、本件発明1の「(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中5~15質量%である」に相当する。
e 甲B4発明のサンスクリーンは、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を含有しないことから、本件発明1における「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」の含有量は0質量%である。
そうすると、甲B4発明において、本件発明1における「成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)」は、分母である「成分(C)」の質量が0質量%であるから、算出することができない。
f 上記eで検討したとおり、甲B4発明において、本件発明1における「成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)」の分母である「成分(C)」の質量が0質量%であるから、本件発明1における「成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)」を算出することができない。
g そうすると、本件発明1と甲B4発明とは、
「次の成分(A)、(B)、及び(E):
(A)ジステアリルジモニウムヘクトライト及びトリベヘニンから選ばれる1種又は2種以上の油性ゲル化剤 0.05~5質量%、
(B)揮発性油 20~55質量%、
(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤
を含有し、
成分(E)が、成分(E1)エステル油を含有し、成分(E1)の含有量が、全組成中に5~15質量%である、
油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料。」
である点で一致し、以下の相違点22~相違点25で相違する。
<相違点22>
本件発明1は、成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」を含有するのに対し、甲B4発明は含有しない点
<相違点23>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合(B)/(C)が、本件発明1は22~65であるのに対し、甲B4発明では算出できない点
<相違点24>
成分「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の質量割合(E)/(C)が、本件発明1は9.0~30であるのに対し、甲B4発明では算出できない点
<相違点25>
本件発明1は、成分「(D)アルキルシランで表面処理された金属酸化物、アミノ酸・有機チタネートで表面処理された金属酸化物、又はシリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」を含有するのに対し、甲B4発明は含有しない点
(イ)判断
事案に鑑み、相違点22~相違点24について、まとめて検討する。
甲B4の【0024】には、甲B4の請求項1に記載の式(I)で表されるベンゾトリアゾール誘導体以外の紫外線吸収剤を配合してもよい旨が記載されてはいるものの、そのような紫外線吸収剤として、本件発明1の成分(C)に相当する「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」及び「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」を用いることができる旨は記載も示唆もされていないし、その配合量についても記載あるいは示唆されていない。
そして、甲B4発明は、具体的な処方に基づいて認定したものであるところ、甲B4の記載全体を参照しても、甲B4発明において、あえて、請求項1に記載の式(I)で表されるベンゾトリアゾール誘導体以外の紫外線吸収剤に着目した上で、そのような紫外線吸収剤として甲B4に何ら記載されていない「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」又は「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」を配合すること、そして同時にその配合量を、「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(B)揮発性油」の質量割合「(B)/(C)」が「22~65」を満たし、かつ「(C)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる、UV-A領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤」に対する成分「(E)成分(B)以外の25℃で液状の油剤」の質量割合「(E)/(C)」が「9.0~30」を満たす配合量とすることは、甲B4の記載全体を参酌しても、動機付けがあるとはいえない。
さらに、上記2(2)ア(イ)bでも検討したとおり、特許権者の意見書2において、成分「(E)/(C)」の質量割合が6.77であり、かつ成分「(B)/(C)」の質量割合が20.8である「比較例C」と比して、実施例4は、「(E)/(C)」の質量割合を10.5とし、かつ「(B)/(C)」の質量割合を32.3とすることにより、「SPF値」「化粧持続性」「仕上がりの均一性」「べたつきのなさ」「保存安定性」及び「化粧効果」に優れることが、具体的な実験結果を伴って記載されているところ、そのような「(E)/(C)」の質量割合、及び「(B)/(C)」の質量割合に関する技術的意義については、甲B4~甲B7の記載をみても、当業者が認識し得るものとはいえないし、そのような技術常識が本件特許の出願前に存在したとも認められない。
そうすると、本件発明1は、成分「(E)/(C)」の質量割合を「9.0~30」にすること、及び成分「(B)/(C)」の質量割合を「22~65」とすることにより、甲B4~甲B7の記載から当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するといえる。
したがって、本件発明1は、相違点25について検討するまでもなく、甲B4に記載された発明、及び甲B4~甲B7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2~7は、上記アと同様の理由により、甲B4に記載された発明、及び甲B4~甲B7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
9 申立理由A3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)判断
ア 本件発明1~7の課題について
本件特許明細書の段落0005の記載、特許請求の範囲の記載及び本件特許明細書の記載全体を参酌して、本件発明1~7の課題は、「油性ゲル化剤を用いることにより、UV-A吸収剤と金属酸化物及び比較的多量の揮発性油を含む油性又は油中水型乳化化粧料であっても、高いSPF値が得られ、かつ広い紫外線領域で紫外線防御効果を有し、しかも塗布時にべたつきのない、使用感に優れた皮膚化粧料を得られること」にあるものと認める。
イ 本件発明について
本件発明1~7の特許請求の範囲の記載は、前記第3に記載のとおりである。
ウ 本件特許明細書の記載についての検討
本件特許明細書の【0008】~【0042】には、成分(A)~成分(E)についてそれぞれ具体例が示され、これらの好適な含有量及び含有量比の範囲とその技術的な意義(高いSPF、広い紫外線領域での紫外線防御効果、塗布時のべたつきのなさ、優れた使用感、均一な塗膜、SPFの持続性、化粧崩れのしにくさ)が説明されている。
加えて、本件特許明細書には、実施例として、皮膚化粧料の複数の組成が具体的に開示されており、得られた皮膚化粧料について、「SPF値」「化粧持続性」「仕上がりの均一性」「べたつきのなさ」「保存安定性」及び「化粧効果」に優れる評価結果が開示されている。
そうすると、実施例を含めた本件特許明細書の記載全体を参酌すれば、本件請求項1~7において特定される組成を有する油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料とすることにより、上記アで示した本件発明の課題を解決できることを、当業者は認識できるといえる。
エ 小括
よって、本件発明1~7は、発明の詳細な説明の記載により本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあると認められる。
(3)申立人Aのサポート要件に関する主張について
申立人Aの主張は、本件特許明細書には、実施例として、成分(C)として「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」又は「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」を含有し、さらに「(B)揮発性油」がデカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコンであり、かつ「(B1)揮発性シリコーン油」を20質量%以下含む皮膚化粧料が開示されているにすぎず、それ以外の訂正前の本件請求項1~7に係る皮膚化粧料について、本件発明の課題を解決できたことは何ら具体的に示されていないから、当業者が実施例の記載から本件発明の課題を解決できると認識できないというものである。
しかしながら、本件発明において、成分(C)は本件特許明細書の実施例で具体的に開示されている2種のみに特定されているし、さらに上記ウで述べたとおり、本件特許明細書には、実施例の記載に加えて、成分(A)~成分(E)についてそれぞれ具体例が示され、これらの好適な含有量及び含有量比の範囲とその技術的な意義(高いSPF、広い紫外線領域での紫外線防御効果、塗布時のべたつきのなさ、優れた使用感、均一な塗膜、SPFの持続性、化粧崩れのしにくさ)が説明されている。
そうすると、実施例を含めた本件特許明細書の記載全体を参酌すれば、実施例の組成を有する油性液状皮膚化粧料又は油性液状皮膚化粧料以外であっても、本件請求項1~7において特定される組成を有する油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料とすることにより、上記アで示した本件発明の課題を解決できることを、当業者は認識できるといえる。
よって、申立人Aの主張は、採用できない。
(4)申立理由A3(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、申立理由A3には理由がない。
10 申立理由B3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断の前提
上記9(1)で示したとおりである。
(2)判断
ア 本件発明1~7の課題
上記9(2)アで示したとおりである。
イ 本件発明
本件発明1~7の特許請求の範囲の記載は、前記第3に記載のとおりである。
ウ 本件特許明細書の記載についての検討
上記9(2)ウで示したとおり、実施例を含めた本件特許明細書の記載全体を参酌すれば、本件請求項1~7において特定される組成を有する油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料とすることにより、上記アで示した本件発明の課題を解決できることを、当業者は理解できるといえるから、本件発明1~7は、発明の詳細な説明の記載により本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあると認められる。
エ 小括
よって、本件発明1~7は、発明の詳細な説明の記載により本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあると認められる。
(3)申立人Bのサポート要件に関する主張について
申立人Bの主張は、本件特許明細書には、実施例として、成分(D)として、「シリコーン・アシル化アミノ酸で表面処理された金属酸化物」に相当する「ジメチコン・ステアロイルグルタミン酸2Na複合処理酸化チタン」に加えて、「アミノ酸・有機チタネート」で表面処理された金属酸化物に相当する「アミノ酸・チタネート複合処理金属酸化物」、「脂肪酸」で表面処理された金属酸化物に相当する「ステアリン酸処理微粒子酸化チタン」、又は「アルキルシラン」で表面処理された金属酸化物に相当する「オクチルシリル化薄片状酸化亜鉛」をさらに含有する皮膚化粧料が開示されているにすぎず、それ以外の組成を有する訂正前の請求項1~7に係る皮膚化粧料について、本件発明の課題を解決できたことは何ら具体的に示されていないから、当業者が実施例の記載から本件発明の課題を解決できると認識できないというものである。
しかしながら、上記ウで述べたとおり、本件特許明細書には、実施例の記載に加えて、成分(A)~成分(E)についてそれぞれ具体例が示され、これらの好適な含有量及び含有量比の範囲とその技術的な意義(高いSPF、広い紫外線領域での紫外線防御効果、塗布時のべたつきのなさ、優れた使用感、均一な塗膜、SPFの持続性、化粧崩れのしにくさ)が説明されている。
そうすると、実施例を含めた本件特許明細書の記載全体を参酌すれば、実施例の組成を有する油性液状皮膚化粧料又は油性液状皮膚化粧料以外であっても、本件請求項1~7において特定される組成を有する油性液状皮膚化粧料又は油中水型皮膚化粧料とすることにより、上記アで示した本件発明の課題を解決できることを、当業者は理解できるといえる。
よって、申立人Bの主張は、採用できない。
(4)申立理由B3(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、申立理由B3には理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由並びに申立人A及びBが申し立てた理由及び証拠によっては、本件請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701162