特許異議申立
2023-701159
ヒートシール紙、包装袋
- 審判番号
- 2023-701159
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-132777
- 登録番号
- 7268659
- 請求日
- 2023年10月31日
- 審決日
- 2024年02月16日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】王子ホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
- 【異議申立人】森本 美奈
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 八木 誠
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-Y (B32B) / P1651.16 -Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7268659号発明「ヒートシール紙、包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7268659号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7268659号の請求項1~10に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和2年8月5日にした出願であって、令和5年4月25日に特許権の設定登録がされ、同年5月8日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~10に係る特許に対し、同年10月31日に、特許異議申立人森本美奈(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
紙基材の少なくとも一方の面に、紙基材に接するヒートシール層を有するヒートシール紙であって、
JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される全光線透過率が65%以上であり、
JIS B 0601:2001に準拠して測定される前記ヒートシール層側表面の算術平均高さが75μm以下である、ヒートシール紙。
【請求項2】
JIS K 7361-1:1997に準拠して測定されるヘイズが90%以下である、請求項1に記載のヒートシール紙。
【請求項3】
JIS B 0601:2001に準拠して測定される前記ヒートシール層側表面の最大高さが550μm以下である、請求項1または2に記載のヒートシール紙。
【請求項4】
前記紙基材を構成するパルプ繊維の変則フリーネスが100mL以上600mL以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒートシール紙。
【請求項5】
前記ヒートシール層の塗工量が2g/m2以上8g/m2以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のヒートシール紙。
【請求項6】
ヒートシール層同士を120℃、1秒、0.2MPaの条件でヒートシールしたときの剥離強度が0.9N/15mm以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のヒートシール紙。
【請求項7】
23℃、50%RH条件での酸素透過度が5mL/(m2・24h・atm)以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のヒートシール紙。
【請求項8】
JIS B 0601:2001に準拠して測定される前記ヒートシール層側表面の算術平均高さが25μm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のヒートシール紙。
【請求項9】
包装用材料である、請求項1~8のいずれか1項に記載のヒートシール紙。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載のヒートシール紙を用いてなる、包装袋。」
第3 申立理由の概要
申立人は、甲第1号証~甲第10号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲10」という。)を提出して、以下の申立理由により請求項1~10に係る特許を取り消すべきである旨主張する。
1 証拠方法
甲1:特開2017-124564号公報
甲2:登録実用新案第3152593号公報
甲3:べぎやす、「ペーパーセメントは紙が波打たない。水性ボンドとの違いは?」、[online]、平成30年2月8日、[令和5年10月6日申立人出力]、<URL:https:/kamiconsal.jp/papercement/>
甲4:ヤフー株式会社、「YAHOO! JAPAN 知恵袋」、[online]、平成25年7月24日、[令和5年10月5日申立人出力]、<URL:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12110735227>
甲5:特開平5-43854号公報
甲6:特開平11-92732号公報
甲7:特開2002-88329号公報
甲8:特開2002-88333号公報
甲9:特開2016-211089号公報
甲10:特開2021-155076号公報
2 特許異議申立理由
(1)特許異議申立理由1(進歩性)
本件発明1~5、7~10は、甲1に記載された発明及び甲2~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
本件発明6は、甲1に記載された発明及び甲2~甲9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
請求項1~10に係る特許は、同法第29条第2項に違反するから、取り消されるべきものである。
(2)特許異議申立理由2(拡大先願)
本件発明1~10は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされた甲10に係る出願(特願2020-57102号。以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(3)特許異議申立理由3(サポート要件)
本件発明1~4、6~10は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1~4、6~10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 甲号証の記載事項等
(1)甲1について
ア 記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与。以下同様。)。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、該紙基材の一方の面に積層した熱接着層とを備えたヒートシールシートにおいて、
前記紙基材が、パルプにより構成された原紙を含み、前記紙基材の坪量が、50g/m2以下であり、該ヒートシールシートのISO5-2に準じて測定される透明度が87%以上であることを特徴とするヒートシールシート。」
「【0060】
<実施例1>
[紙基材の製造]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)をDDRにて、変則フリーネス(パルプ採取量0.3g/L)が220mLになるように叩解し、パルプスラリーを得た。該パルプスラリーに内添薬品として、パルプ質量に対し、絶乾で硫酸バンド1%、濾水性向上剤(商品名:ソフトール(登録商標)3503、油化産業社製)0.07%を添加し、抄紙原料を得た。該抄紙原料を長網抄紙機で抄紙して原紙を得た。
次いで、原紙をオフマシンスーパーカレンダー処理し、密度1.05g/cm3の紙基材を得た。
【0061】
[ヒートシールシートの製造]
上記で得られた紙基材の片面に、バーコーターを用いて、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルション系ヒートシール剤(商品名:EA-H700、東洋インキ社製)を、乾燥後の塗布量が3.0g/m2となるように塗布および乾燥して熱接着層を形成し、坪量30.0g/m2のヒートシールシートを得た。」
「【0067】
<評価>
実施例1~6、比較例1、2それぞれで得たヒートシールシート(蓋材)およびPTPについて以下の評価を行い、結果を表2に示した。
[透明度の測定]
各例のヒートシールシートの透明度をISO5-2に準じて、拡散光透過率計DOT-5(村上色彩技術研究所社製)で測定を行った。」
「【0074】
【表2】
[図:0001407869000001.jpg]
」
イ 認定事項
【0061】の記載によれば、熱接着層は、紙基材の片面に直接形成したものと認められる。
ウ 甲1発明
上記ア及びイを総合すると、甲1には、実施例1として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「紙基材の片面に、乾燥後の塗布量が3.0g/m2となるように熱接着層を直接形成したヒートシールシートであって、
該ヒートシールシートのISO5-2に準じて測定される透明度が90.5%である、ヒートシールシート。」
(2)甲10について
ア 記載事項
先願の当初明細書等(甲10参照)には、以下の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを主要成分として含有する原紙と、前記原紙の少なくとも片面に対して樹脂層とを有し、前記パルプが、CSF濾水度100ml以下及び繊維長0.05mm以下のファイン分比率10質量%以上25質量%以下である包装材料。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のグラシン紙、樹脂塗工紙及び樹脂含浸紙などを用いた包装材料は、収容物が確認できる程の十分な透明性を有していなかった。
【0006】
本発明の目的は、包装材料に使用でき強度を有しつつ、収容物が確認できる透明性を有する包装材料を提供することである。」
「【0021】
上記樹脂層は、非水溶系樹脂によって形成される水に不溶性の層である。
樹脂層を形成する非水溶系樹脂の一種は、水以外の溶媒が媒体になる樹脂である。水以外の溶媒が媒体になる樹脂は、溶剤系タイプの樹脂を挙げることができる。また樹脂層を形成する非水溶系樹脂の一種は、無溶剤系タイプの樹脂である。また樹脂層を形成する非水溶系樹脂の一種は、エマルション系タイプの樹脂である。非水溶系樹脂は、例えば、ポリオレフィン樹脂、ビニル樹脂又は電子線で硬化する樹脂などである。非水溶系樹脂の例としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンなどの各種ポリエチレン;アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチック、それらの混合物、エチレンとのランダム共重合体及びブロック共重合体などの各種ポリプロピレン;その他に、ポリブチレンサクシネート、ポリメチルペンテン、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体などを挙げることができる。非水溶系樹脂には、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上を使用できる。
いくつかの実施態様において、非水溶系樹脂は、各種ポリエチレン又は各種ポリプロピレンである。この理由は、種々薬品に対して化学的に安定だからである。少なくとも一つの実施態様において、非水溶系樹脂は各種ポリエチレンであって、前記各種ポリエチレン樹脂は低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドである。この理由は、樹脂層の強度と樹脂層の透明性との両立が可能になるからである。
いくつかの実施態様において、樹脂層は、ヒートシール適性を有する。」
「【0028】
<実施例1>
NBKPのパルプスラリーをリファイナーを用いて叩解した。得られたパルプは、CSF濾水度50ml及びファイン分比率15質量%であった。得られたパルプを長網抄紙機で抄造し、水分20質量%の抄造シートを得た。ロール表面温度130℃のマシンカレンダー装置で4ニップカレンダー処理を施して坪量30g/m2の原紙を得た。原紙に対して、溶融押し出しダイを用いて、低密度ポリエチレンを表裏各々10g/m2になるよう塗工及び乾燥した。その後、ロール表面温度90℃のカレンダー装置で加熱加圧処理を施して、実施例1の包装材料を得た。」
「【0041】
<透明性>
日本電色工業株式会社のヘーズメーターNDH7000を使用し、全光線透過率及びヘーズを測定した。評価は、測定結果から下記の基準で行った。本発明において、包装材料は、A、B及びCの評価であれば収容物が確認できる透明性を有するものとする。
A:全光線透過率が70%以上かつヘーズが40%以下である。
B:全光線透過率が70%以上かつヘーズが40%超50%以下である。
C:全光線透過率が70%以上かつヘーズが50%超60%以下である。
D:全光線透過率が70%以上かつヘーズが60%超70%以下である。
E:全光線透過率が70%以下及び/又はヘーズが70%超である。」
「【0043】
評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
[図:0001407869000002.jpg]
【0045】
表1から、本発明の構成を満足する実施例1~8は、包装材料に使用できる強度を有しつつ、収納物が確認できる透明性を有する包装材料であると分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~4は、強度及び透明性の少なくとも一つを満足しない包装材料であると分かる。」
イ 認定事項
【0028】の記載によれば、実施例1の包装材料は、原紙の表裏各々に低密度ポリエチレンからなる層を直接設けたものであることが認められ、【0041】及び【0044】の記載によれば、実施例1の包装材料は、全光線透過率が70%以上であることが認められる。
ウ 先願発明
上記ア(特に請求項1)及びイを総合すると、先願の当初明細書等には、実施例1として、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「原紙の表裏各々10g/m2になるよう塗工及び乾燥した低密度ポリエチレンからなる樹脂層を直接設けた包装材料であって、
全光線透過率が70%以上である、包装材料。」
(3)追加文献1について
当審が追加した特開2001-9985号公報(以下「追加文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0009】また、第1の樹脂及び第2の樹脂が低密度ポリエチレンであり、遮へい部材層が金属箔及び高密度ポリエチレン層から成ると好ましい。低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」という)は、高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」という)等の高密度樹脂体に比して、分子構造が緻密ではなく、比較的、水分透過性に優れている。・・・」
「【0011】またさらに、本発明の貼付剤用包装袋は、積層包材のヒートシールにより密封されており、ヒートシール強度が1.0kg/25mm~5.0kg/25mmであると好適である。このようにすれば、貼付剤用包装袋の封止が極めて強固なものとなり、貼付剤用包装袋の外部から内部への水分の浸入が十分に防止される。また、貼付剤用包装袋を構成する積層包材の各層が、主にLDPEやHDPE等の熱可塑性樹脂で形成される場合には、ヒートシールを用いると、封止が極めて簡易かつ強固となる。そして、ヒートシール強度が1.0kg/25mm未満であると、保管時に周囲環境の影響を受けてシール部分が剥がれやすくなる傾向にある。一方、ヒートシール強度が5.0kg/25mmを超えると、封止部の切断といったヒートシール時の製造ミスが発生するおそれがある。」
(4)追加文献2について
当審が追加した特開2008-106836号(以下「追加文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0022】
熱溶着層としては低密度ポリエチレン(比重0.90以上0.94未満)、高密度ポリエチレン(比重0.94以上0.96未満)、ポリプロピレン等のプラスチック製フィルムが用いられる。これらは真空断熱材の用途により適宜選択されるものである。熱融着の容易さからいえば低密度ポリエチレンが優位であるが、融着強度は15N/15mm以上あれば実用的に充分であり、本発明の真空断熱材の多岐にわたる用途を考えると、断熱雰囲気の温度への適応力、耐候性、溶着部のガスバリア性から高密度ポリエチレン、ポリプロピレンの使用が好ましい。」
2 特許異議申立理由についての判断
(1)特許異議申立理由1(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「紙基材」は、前者の「紙基材」に相当し、以下同様に、「片面」は「少なくとも一方の面」に、「熱接着層」は「ヒートシール層」に、「ヒートシールシート」は「ヒートシール紙」に、それぞれ相当する。
そうすると、後者の「紙基材の片面に、乾燥後の塗布量が3.0g/m2となるように熱接着層を直接形成したヒートシールシート」は、前者の「紙基材の少なくとも一方の面に、紙基材に接するヒートシール層を有するヒートシール紙」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1>
「紙基材の少なくとも一方の面に、紙基材に接するヒートシール層を有するヒートシール紙。」
<相違点1-1>
本件発明1では、「JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される全光線透過率が65%以上」であるのに対し、甲1発明では、ISO5-2に準じて測定される透明度が90.5%である点。
<相違点1-2>
本件発明1では、「JIS B 0601:2001に準拠して測定される前記ヒートシール層側表面の算術平均高さが75μm以下」であるのに対し、甲1発明では、不明である点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点1-2から検討する。
甲1だけでなく、甲2~9にも、相違点1-2に係る本件発明1の構成について、記載も示唆も見いだせない。
そして、ヒートシール紙において、紙基材の少なくとも一方の面に設けられたヒートシール層表面のJIS B 0601:2001に準拠して測定される算術平均高さが75μm以下であることが、本件特許の出願前の技術常識又は周知技術であることを認めるに足る証拠もないことから、甲1発明において、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書(15~16ページ)において、甲2には、グラシン紙等において、水系の接着剤を塗工するとしわが発生するため、溶剤型の接着剤を用いるのが好ましいことが記載され、水性接着剤はしわになりやすく、揮発性有機溶剤を用いた接着剤はしわになりにくいことは技術常識(甲3、4参照。)であり、水性接着剤の水の含有率を低くすることにより、塗工した紙でのしわの発生を防止することも技術常識(甲5~8参照。)であることを勘案すると、甲1発明において、美観や内部の視認性に悪影響を与え得るしわを防止するために、技術常識に基づいて、揮発性の溶剤系ヒートシール剤や水の含有率の低い水系ヒートシール剤を採用することは、当業者にとって容易であり、得られるヒートシール層の算術平均高さは75μm以下である蓋然性が高い旨主張する。
しかしながら、甲2~8には、しわを防止した結果、その表面高さがどの程度になるかについての記載はなく、示唆も見いだせない。
したがって、甲2~8に接した当業者であっても、甲1発明において、熱接着層の表面において、JIS B 0601:2001に準拠して測定される算術平均高さを75μm以下とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえないから、申立人の上記主張は採用できない。
(エ)小括
したがって、相違点1-1を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲1~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付与したものであるから、上記ア(イ)~(エ)で説示したのと同様の理由により、甲1発明及び甲1~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ まとめ
以上より、特許異議申立理由1は成り立たない。
(2)特許異議申立理由2(拡大先願)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と先願発明とを対比すると、後者の「原紙」は前者の「紙基材」に、後者の「表裏各々」は前者の「少なくとも一方の面」に、それぞれ相当する。
後者の「全光線透過率が70%以上である」事項について、先願の当初明細書等にJISに準拠して測定されたものであることの記載はないが、前者の「65%以上」とする下限値の限定から考慮すると、前記後者の事項は、前者の「JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される全光線透過率が65%以上であ」る蓋然性が高い。
また、一般的に低密度ポリエチレンにはヒートシール性があること(例えば、追加文献1の【0009】、【0011】、追加文献2の【0022】等参照。)を勘案すると、後者の「低密度ポリエチレンからなる樹脂層」は、前者の「ヒートシール層」に相当し、後者の「包装材料」は、前者の「ヒートシール紙」に相当するから、後者の「原紙の表裏各々に10g/m2になるよう塗工及び乾燥した低密度ポリエチレンからなる樹脂層を直接設けた包装材料」は、前者の「紙基材の少なくとも一方の面に、紙基材に接するヒートシール層を有するヒートシール紙」に相当する。
したがって、本件発明1と先願発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点2>
「紙基材の少なくとも一方の面に、紙基材に接するヒートシール層を有するヒートシール紙であって、
JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される全光線透過率が65%以上である、ヒートシール紙。」
<相違点2-1>
本件発明1では、「JIS B 0601:2001に準拠して測定される前記ヒートシール層側表面の算術平均高さが75μm以下」であるのに対し、先願発明では、不明である点。
(イ)相違点についての判断
先願の当初明細書等には、低密度ポリエチレンからなる樹脂層の表面高さについては、何ら記載も示唆もなく、不明である。【0028】には、その表面に、ロール表面温度90℃のカレンダー装置で加熱加圧処理を施すことが記載されていることから、低密度ポリエチレンからなる樹脂層の表面は、ある程度平滑であることは推認できるが、その程度は不明である。
そして、ヒートシール紙において、紙基材の少なくとも一方の面に設けられたヒートシール層表面のJIS B 0601:2001に準拠して測定される算術平均高さが75μm以下であることが、本件特許の出願前の技術常識又は周知技術であることを認めるに足る証拠もないことから、先願発明において、低密度ポリエチレンからなる樹脂層の算術平均高さが75μm以下とすることは、設計上の微差であるとは認められない。
したがって、相違点2-1は実質的な相違点であり、本件発明1は、先願発明と同一であるとはいえない。
イ 本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付与したものであるから、本件発明1と同様に、先願発明と同一であるとはいえない。
ウ まとめ
以上より、特許異議申立理由2も成り立たない。
(3)特許異議申立理由3(サポート要件)について
申立人は、特許異議申立書(25ページ)において、ヒートシール層の形成方法は、塗工以外にラミネート法があり、本件発明のヒートシール層は、ラミネートにより形成されるものも含むが、ヒートシール層をラミネート法により形成することは、発明の詳細な説明には記載されていないから、本件発明1、及びこれに従属する本件発明2~4、6~10は、発明の詳細な説明に記載されたものといえない旨主張する。
しかしながら、発明の詳細な説明の【0007】に記載されているように、本件発明が解決しようとする課題は、内容物の視認性を良くすることや、ヒートシール性をよくすることであると認められるところ、本件発明1における、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される全光線透過率が65%以上であることや、JIS B 0601:2001に準拠して測定される前記ヒートシール層側表面の算術平均高さが75μm以下であることで上記課題が解決できることは、当業者であれば理解できることであり、ヒートシール層の製造方法の違いは、課題の解決には直接関係ないものである。
よって、本件発明1及び従属する本件発明2~4、6~10は、課題を解決できると認識できる範囲のものであり、発明の詳細な説明に記載されたものであると認められるから、申立人の上記主張は、当を得たものとはいえず、採用できない。
以上により、特許異議申立理由3も成り立たない。
第5 むすび
以上によれば、特許異議の申立理由及び証拠によっては、請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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