特許異議申立
2021-701133
化粧シート及びそれを用いた外装建具用部材
- 審判番号
- 2021-701133
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-174111
- 登録番号
- 6879421
- 請求日
- 2021年12月02日
- 審決日
- 2023年11月09日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】廣瀬 一
- 【権利者代理人】宮坂 徹
- 【権利者代理人】田中 秀▲てつ▼
- 【異議申立人】真角 侑子
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 八木 誠
- 審判官 井上 茂夫
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B) / P1651.16 -YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6879421号発明「化粧シート及びそれを用いた外装建具用部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6879421号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について」)訂正することを認める。
特許第6879421号の請求項1~3、5~7に係る特許を維持する。
特許第6879421号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6879421号の請求項1~7に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和2年10月15日に出願され、令和3年5月7日にその特許権の設定登録がされ、同年6月2日に特許掲載公報が発行された。
本件特許についての特許異議申立人真角侑子(以下、「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年12月 2日 特許異議の申立て
令和4年 3月29日付け 取消理由通知
同年 5月30日 特許権者より意見書・訂正請求書
同年 8月 1日 申立人より意見書
同年11月30日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和5年 3月 2日 特許権者より意見書・訂正請求書
同年 5月12日 取消理由通知(決定の予告)
同年 7月14日 特許権者より意見書・訂正請求書
同年 8月 1日付け 訂正請求があった旨の通知書
なお、令和5年8月1日付けの訂正請求があった旨の通知書に対して申立人による応答はなかった。
また、令和4年5月30日の訂正請求書及び令和5年3月2日の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年7月14日の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(6)(なお、下線は訂正箇所である。)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されていることを特徴とする化粧シート」と記載されているのを、「ヒンダードアミン系光安定剤とが添加され、前記抗ウイルス添加剤は無機材料に銀イオンを担持させたものであり、前記表面保護層は、下塗り層と、前記下塗り層の表面に上塗りされる最表層と、を含み、前記最表層に前記抗ウイルス添加剤を含み、前記最表層に、シリコン系成分若しくはフッ素系成分が添加され、前記着色熱可塑性樹脂層の裏面を、鋼鈑基材である厚み0.5mmの亜鉛メッキ鋼鈑の表面に、2液ウレタン系接着剤にて貼り合わせ、48時間養生した建具用化粧材に対して、鋼鈑基材の先端が90°0Rの治具を用いてベンダー加工を実施して、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した際に、前記折り曲げ頂上部に、前記表面保護層の割れおよび白化が無いことを特徴とする化粧シート」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、5~7も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧シート。」と記載されているのを「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シートであって、前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下であり、前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下であり、前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加され、前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つことを特徴とする化粧シート。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5~7も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧シート」と記載されているのを、「請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧シート」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6、7も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか1項に記載の化粧シート」と記載されているのを、「請求項1~3、5のいずれか1項に記載の化粧シート」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7の「請求項1~6のいずれか1項に」と記載されているのを、「請求項1~3、5、6のいずれか1項に」に訂正する。
(7)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~7〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に、「前記抗ウイルス添加剤は無機材料に銀イオンを担持させたものであり、前記表面保護層は、下塗り層と、前記下塗り層の表面に上塗りされる最表層と、を含み、前記最表層に前記抗ウイルス添加剤を含み、前記最表層に、シリコン系成分若しくはフッ素系成分が添加され、前記着色熱可塑性樹脂層の裏面を、鋼鈑基材である厚み0.5mmの亜鉛メッキ鋼鈑の表面に、2液ウレタン系接着剤にて貼り合わせ、48時間養生した建具用化粧材に対して、鋼鈑基材の先端が90°0Rの治具を用いてベンダー加工を実施して、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した際に、前記折り曲げ頂上部に、前記表面保護層の割れおよび白化が無い」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
訂正事項1において、「前記抗ウイルス添加剤は無機材料に銀イオンを担持させたものであり」との事項は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0033】の「前記表面保護層は、下塗り層と、前記下塗り層の表面に上塗りされる最表層と、を含み、前記最表層に前記抗ウイルス添加剤を含み」との記載は、本件明細書等の【0022】及び【0023】の記載に、「前記最表層に、シリコン系成分若しくはフッ素系成分が添加され」との事項は、請求項4の記載に、「前記着色熱可塑性樹脂層の裏面を、鋼鈑基材である厚み0.5mmの亜鉛メッキ鋼鈑の表面に、2液ウレタン系接着剤にて貼り合わせ、48時間養生した建具用化粧材に対して、鋼鈑基材の先端が90°0Rの治具を用いてベンダー加工を実施して、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した際に、前記折り曲げ頂上部に、前記表面保護層の割れおよび白化が無い」との事項は、本件明細書等の【0031】、【0051】及び【0055】の記載に、それぞれ基づくことは明らかであるから、訂正事項1は新規事項を追加するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項3について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項を追加するものではないのは明らかである。
(3)訂正事項3について
訂正事項2は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項を追加するものではない。
(4)訂正事項4~6について
訂正事項4~6は、それぞれ、訂正事項3による請求項4の削除に伴って、引用する請求項から請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項を追加するものではない。
3 小括
以上によれば、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1~3、5~7に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明3」、「本件発明5」~「本件発明7」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シートであって、
前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、
前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下であり、
前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下であり、
前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加され、
前記抗ウイルス添加剤は無機材料に銀イオンを担持させたものであり、
前記表面保護層は、下塗り層と、前記下塗り層の表面に上塗りされる最表層と、を含み、前記最表層に前記抗ウイルス添加剤を含み、
前記最表層に、シリコン系成分若しくはフッ素系成分が添加され、
前記着色熱可塑性樹脂層の裏面を、鋼鈑基材である厚み0.5mmの亜鉛メッキ鋼鈑の表面に、2液ウレタン系接着剤にて貼り合わせ、48時間養生した建具用化粧材に対して、鋼鈑基材の先端が90°0Rの治具を用いてベンダー加工を実施して、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した際に、前記折り曲げ頂上部に、前記表面保護層の割れおよび白化が無いことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記抗ウイルス添加剤の平均粒径を「φ」(μm)とし、最表層の前記表面保護層の厚みを「D」(μm)としたとき、下記の式(1)の関係が成立していることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
0.5D≦φ≦2D ・・・式(1)
【請求項3】
着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シートであって、
前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、
前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下であり、
前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下であり、
前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加され、
前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つことを特徴とする化粧シート。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記抗ウイルス添加剤が含まれる前記表面保護層の中に、界面活性剤が添加されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記表面保護層の最表層に、エンボス加工が施されていることを特徴とする請求項1~3、5のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項7】
請求項1~3、5、6のいずれか1項に記載された化粧シートと、
前記化粧シートの前記着色熱可塑性樹脂層に、接着層を介して接着される外装建具用基材とを含むことを特徴とする外装建具用部材。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、令和5年5月12日付けで当審が通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
[取消理由1](進歩性)
本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
以下、申立人が提出した「第甲○号証」は、「甲○」という。
記
・引用文献一覧
甲1:特開2018-203897号公報
甲2:特開平10-157031号公報
甲3:特開2019-18541号公報
甲9:国際公開第2005/037296号
甲10:特開2015-80887号公報
甲11:特開2019-25918号公報
甲13:特開2008-238771号公報
甲14:特開2011-201323号公報
甲15:特開2014-88026号公報
甲16:特開2014-172197号公報
甲18:特開2018-89970号公報
追加文献1:特開2016-175363号公報
追加文献2:特開平11-314316号公報
追加文献3:特開平10-58611号公報
追加文献4:特開2002-241712号公報
[上記取消理由における請求項と引用文献の関係]
・請求項 1、2
・引用文献 甲1、9~11、14~16、追加文献2~4
・請求項 5
・引用文献 甲1、9~11、14~16、18、追加文献1~4
・請求項 6、7
・引用文献 甲1、2、9~11、13~16、18、追加文献1~4
・請求項 1、2
・引用文献 甲2、9~11、14~16、追加文献2~4
・請求項 5~7
・引用文献 甲2、9~11、14~16、18、追加文献1~4
・請求項 1、2
・引用文献 甲3、9~11、14~16、追加文献2~4
・請求項 5
・引用文献 甲3、9~11、14~16、18、追加文献1~4
・請求項 6、7
・引用文献 甲3、2、9~11、13~16、18、追加文献1~4
第5 取消理由についての判断
1 引用文献に記載された事項等
(1)甲1について
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムに関する。」
イ「【0019】
図1に示すように、粘着フィルム10は、粘着剤を含む材料で構成された粘着剤層2と、抗菌剤を含む材料で構成された抗菌層3とを有している。そして、粘着フィルム10は、基材51と印刷層(印刷部)52とを有する部材(被着体)50に対して、印刷層52を被覆するように貼着される(図2参照)。
【0020】
このような構成により、印刷が施された部材(被着体)50に対して、抗菌性を好適に付与することができる。」
ウ「【0025】
(フィルム基材)
本実施形態の粘着フィルム10は、粘着剤層(フィルム粘着剤層)2および抗菌層3に加え、これらを支持する機能を有するフィルム基材(基材)1を有している。
【0026】
これにより、粘着フィルム10に適度なコシを持たせることができ、粘着フィルム10の取り扱いのし易さ(例えば、部材50への貼着時における皺や、不本意な部位への付着等の発生のしにくさ等)が向上する。
【0027】
そして、フィルム基材1の一方の面である第1の面11側に粘着剤層2を有し、フィルム基材1の他方の面(第1の面11とは反対の面)である第2の面12側に抗菌層3を有している。」
エ「【0029】
フィルム基材(基材)1は、いかなる材料で構成されていてもよく、フィルム基材1の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィン;アクリル系樹脂;酢酸ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;アセテート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ-p-フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、フィルム基材1は、ポリエステル、ポリオレフィンのうち少なくとも一方を含む材料で構成されているのが好ましい。
【0030】
これにより、粘着フィルム10により好適なコシを持たせることができ、粘着フィルム10の取り扱いのし易さ(例えば、部材50への貼着時における皺や、不本意な部位への付着等の発生のしにくさ等)をより向上させることができる。また、これらの材料は、一般に優れた光の透過性を有するため、粘着フィルム10が部材50に貼着された状態における、印刷層52の視認性を向上させることができる。また、上記のような材料で構成されたフィルム基材1は、一般に、粘着剤層2や後述する材料で構成された抗菌層3との密着性に優れているため、粘着フィルム10の耐久性等を向上させることができ、また、粘着フィルム10を部材50から剥離する際の粘着フィルム10の不本意な破壊等を効果的に防止することができる。
【0031】
また、フィルム基材1は、前述した材料以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。」
オ「【0037】
フィルム基材1の厚さは、15μm以上300μm以下であるのが好ましく、20μm以上250μm以下であるのがより好ましく、25μm以上75μm以下であるのがさらに好ましい。」
カ「【0049】
(抗菌層)
抗菌層3は、抗菌剤を含む材料で構成されており、粘着フィルム10が部材50に貼着された状態で、当該部材50に抗菌性を付与する機能を有する。抗菌層3は、粘着フィルム10の使用時(部材50に貼着した状態)において、外部に露出する部位である。
【0050】
抗菌剤としては、例えば、各種無機系抗菌剤、各種有機系抗菌剤やこれらの複合材料(無機・有機ハイブリッド系抗菌剤)等を用いることができる。」
キ「【0060】
特に、抗菌層3は、Agイオンが担持された抗菌剤を含んでいるのが好ましい。
これにより、粘着フィルム10の抗菌性をより向上させることができる。また、抗菌性を向上させつつ、抗菌層3の透明性(光の透過性)を向上させることができ、部材50に貼着した状態での印刷層52の視認性をより向上させることができる。また、抗菌層3中に抗菌剤をより均一に含ませることができ、各部位での抗菌性の不本意なばらつきの発生を効果的に防止することができる。」
ク「【0063】
特に、抗菌層3中に含まれる抗菌剤は、粒状をなし、その平均粒径が100nm以上5000nm以下であるのが好ましい。
【0064】
これにより、抗菌剤による抗菌性をさらに効果的に発揮させることができる。また、さらに長期間にわたって優れた抗菌性を発揮することができ、粘着フィルム10の耐久性を向上させることができる。
【0065】
このように、粒状をなす抗菌剤の平均粒径は、100nm以上5000nm以下であるのが好ましいが、300nm以上4500nm以下であるのがより好ましく、500nm以上4000nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0066】
なお、本明細書において、平均粒径とは、体積基準の平均粒径のことを指す。平均粒径は、例えば、サンプルをメタノールに添加し、超音波分散器で3分間分散した分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(例えば、COULTER ELECTRONICS社製MULTISIZER3)にて、50μmのアパチャーを用いた測定により求めることができる。
【0067】
また、抗菌層3において粒子状の抗菌剤(分散質)が分散媒に分散している場合、抗菌剤の少なくとも一部が抗菌層3の外表面(粘着フィルム10の外表面)に露出、突出しているのが好ましい。
これにより、粘着フィルム10の抗菌性をより向上させることができる。」
ケ「【0074】
抗菌層3中における抗菌剤の含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上40質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であるのがさらに好ましい。」
コ「【0076】
また、抗菌層3は、前述した材料以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等が挙げられる。
【0077】
抗菌層3の厚さは、特に限定されないが、0.05μm以上10μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上5μm以下であるのがより好ましい。
【0078】
これにより、粘着フィルム10の抗菌性を向上させつつ、部材50の表面の形状に対する追従性をより向上させることができ、例えば、部材50の表面(粘着フィルム10が貼着される部位)が曲率半径の小さい曲面等であっても優れた密着性を確保することができる。また、基材1の透明性を好適に向上させることができ、粘着フィルム10を介した印刷層52の視認性を向上させることができる。
【0079】
また、抗菌層3の厚さ(抗菌剤が突出している場合には、それ以外の部位での厚さ)をT[μm]、抗菌剤の平均粒径をD[μm]としたとき、0.3≦T/D≦3.0の関係を満足するのが好ましく、0.4≦T/D≦2.0の関係を満足するのがより好ましく、0.5≦T/D≦0.9の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、粘着フィルム10の抗菌性をより向上させることができる。」
サ「【0085】
[貼着体]
次に、本発明に係る貼着体について説明する。
図3は、本発明の粘着フィルムが貼着された貼着体の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【0086】
貼着体100は、前述した粘着フィルム10が部材(被着体)50に貼着された構造を有している。そして、部材50は、基材51と、印刷層52とを有しており、粘着フィルム10は、印刷層52を被覆するように貼着されている。
【0087】
また、図3に示すように、本実施形態の貼着体100では、部材50は、基材51の印刷層52が設けられた面とは反対の面側に粘着剤層53を有している。
【0088】
このように、部材50が粘着剤層53を有していることにより、貼着体100を他の部材に貼着することができる。」
シ「【0093】
基材51は、いかなる材料で構成されていてもよく、基材51の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィン;アクリル系樹脂;酢酸ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;アセテート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ-p-フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
また、基材51は、前述した材料以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等が挙げられる。」
ス「【0098】
印刷層52は、色、模様、文字、記号、図形等の情報を観察者に与える機能を有する部位であり、印刷により形成された部位である。」
セ 摘記事項エ、シから、フィルム基材1及び基材51は、熱可塑性樹脂からなるものと認められる。
以上から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「粘着フィルム10が貼着された貼着体100であって、
貼着体100は、粘着フィルム10が部材(被着体)50に貼着された構造を有し、
粘着フィルム10は、粘着剤を含む材料で構成された粘着剤層2と、抗菌剤を含む材料で構成された抗菌層3と、これらを支持する機能を有する光の透過性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム基材(基材)1を有し、
部材(被着体)50は、熱可塑性樹脂からなる基材51と印刷層(印刷部)52とを有し、
粘着フィルム10は、フィルム基材1の上に抗菌剤を含む材料で構成された抗菌層3を、基材51と印刷層(印刷部)52とを有する部材(被着体)50に対して、印刷層52を被覆するように貼着し、
基材51は、染料、顔料等の着色剤を含み、
抗菌層3中における抗菌剤は、Agイオンが担持された抗菌剤であって、抗菌剤の含有率は、0.1質量%以上40質量%以下であり、抗菌層3中に含まれる抗菌剤は、粒状をなし、その平均粒径が100nm以上5000nm以下であり、抗菌層3の厚みは0.05μm以上10μm以下であり、
フィルム基材1の厚さは、15μm以上300μm以下であり、
フィルム基材1及び抗菌層3は、紫外線吸収剤、光安定剤が添加された、粘着フィルム10が貼着された貼着体100。」
(2)甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチック、紙、木材、金属板、無機系素材等あらゆる基材に抗菌性能を付与するために使用される化粧シートに関するものである。」
イ「【0009】以下に、本発明の抗菌性化粧シートの製造方法について説明する。先ず、図3(a)に示すように、着色POシート11として高密度ポリエチレン、熱可塑性エラストマー、着色剤及び無機充填剤からなる樹脂シートを用い、これに木目柄等を印刷して模様12を形成する。一方、図3(b)に示すように、透明PPシート14としてアイソタクティックポリプロピレンとアタクティッククポリプロピレンの混合系からなる複合構造を有する無色又は着色透明な軟質ポリプロピレン系樹脂シートを用いて、これに接着剤を塗布して接着層13を形成する。
【0010】次に、前記模様を設けた着色POシート11と接着層13を形成した透明PPシート14をドライラミネーション法等により貼り合わせて、図3(c)に示すような積層シート2を作製する。この積層シート2の透明PPシート14面に、図3(d)に示すように、抗菌剤を添加した樹脂組成物を塗布、乾燥し、抗菌性塗膜15を形成する。抗菌性塗膜15の乾燥樹脂固形分は抗菌剤16を0.1~10重量%含有することが好ましく、2~10μmの厚さで形成することが好ましい。」
ウ「【0021】HDPEに、熱可塑性エラストマー、無機充填剤、着色剤を添加した樹脂混合物は、カレンダー法等の公知の方法に従って製膜して、不透明な着色シートを作製する。着色POシートの厚さは50~200μmの範囲が好ましく、より好ましくは100μm程度である。
・・・
【0023】一方、本発明に用いられる透明PPシートとしては、アイソタクティックポリプロピレンとアタクティックポリプロピレンの混合系からなる複合構造を有する無色又は着色透明な軟質ポリプロピレン系樹脂が使用される。・・・」
エ「【0031】アタクティックポリプロピレンとアイソタクティックポリプロピレンとの特に好ましい混合比率はは1:1であり、アイソタクティックポリプロピレン成分の比率が高くすると、得られる軟質ポリプロピレンのヤング率が高くなる。このブレンドポリプロピレンには、化粧シートの表面層として求められる機能を補強するために、各種添加剤、補強材、充填剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等が添加される。
【0032】紫外線吸収剤、光安定剤は、樹脂により耐候性(耐光性)を付与するためのものであり、その添加量は紫外線吸収剤、光安定剤共に、0.5~10重量%程度である。一般的には、紫外線吸収剤と光安定剤とを併用するのが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機物、又は、0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物を用いることもできる。安定剤としては、ビス-(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル補足剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤を用いることができる。」
オ「【0034】装飾処理としては、模様の印刷、エンボス加工(加熱プレス)、ヘアライン加工等による凹凸模様賦型等であってよく、更に凹凸模様の凹部に公知のワイピング法によって着色インキを充填することもできる。模様印刷の模様としては、木目柄、石目柄、布目柄、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、各種抽象模様、或いは全面ベタ印刷等がある。全面ベタ印刷の隠蔽層は化粧シートを貼付する被着体の表面状態によって省略されることがある。」
カ「【0042】抗菌性能を有する抗菌性塗膜は以下のようにして形成される。抗菌性能を有する抗菌性塗膜は、抗菌剤を添加した樹脂組成物を用いて、公知のコート法により抗菌性の樹脂層を形成したものである。抗菌性塗膜の厚さは2~10μmが好ましい。抗菌性塗膜に用いられる樹脂としては、抗菌剤に悪影響を与える物質が含まれないことが必要であり、また、抗菌剤と反応して着色したり、熱、光、電離放射線等で変色したりするものは使用できない。特に熱硬化性樹脂の硬化に用いる酸触媒や抗菌剤の金属イオンを還元する性質を有する化合物等は添加しないようにする。」
キ「【0046】上記抗菌性塗膜、表面シート及びワイピングインキに添加する抗菌剤としては、一般に市販されている工業用抗菌剤が使用できる。抗菌剤には有機系抗菌剤と無機系抗菌剤があるが、下記の抗菌剤が使用できる。
【0047】○1(当審注:○の中に1を記した記号を「○1」という。) 無機系抗菌剤として、特公昭63ー54013号公報、特開平4ー300975号公報、特許第2529574号公報等に開示されているゼオライト、アパタイト、ガラス、シリカゲル、リン酸塩、リン酸ジルコニウム等のイオン交換可能なイオンの一部又は全部を、銀、銅、亜鉛、錫、鉛、水銀、コバルト、アンモニウム等のイオンで置換したイオン交換体がある。中でも、ゼオライト、リン酸ジルコニウムのイオン交換可能なイオンの一部を銀イオンで置換したものが、安全性や実積面から望ましい。ゼオライト、リン酸ジルコニウムに担持させた金属イオンの含有量としては、銀イオンの場合は0.1~15重量%、銅又は亜鉛イオンの場合は0.1~8重量%が好ましい。また、上記金属イオンで置換したイオン交換体を更にアンモニウムイオンで置換したものもある。(特公平4ー28646号公報、特許第2529574号公報等に開示)」
ク「【0051】尚、上記無機系抗菌剤の粒径としては、その添加量が1~10重量%、塗布厚(乾物として)が2~10μmに対しては、0.1~10μmの範囲で適度な粒度分布のものを用いると最小添加量で最大の抗菌作用を与える上で好ましい。特に粒径2~5μmが良好である。
【0052】抗菌剤を添加した樹脂組成物は抗菌剤に悪影響を与える成分は除去する必要があり、樹脂成分、溶媒、抗菌剤の単純系が望ましい。前記樹脂組成物は塗膜を形成したとき、多くは透明性であることが望まれるため、溶媒に溶解しない無機系抗菌剤を添加する場合、その添加量は制限される。更に、銀、ニッケル等の金属は有機化合物に対する変色、変質、劣化の原因となる場合が多く、この点からも過剰の添加は好ましくない。
【0053】上記抗菌剤の場合、樹脂組成物が抗菌性塗膜を形成したときの乾物量として、抗菌剤の含有量は0.1~10重量%の範囲が望ましく、抗菌性効果及び透明性を重視した場合は2~5重量%が好適である。抗菌剤の含有量が10重量%を越える場合は、前記問題点が無視できなくなり、又、0.1重量%未満では十分な抗菌作用が得られない。
【0054】抗菌剤を添加した樹脂組成物を用いて、抗菌性塗膜を形成する方法としては、グラビアコート、ロールコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、ホイラーコート、カーテンフローコート、刷毛塗りもしくはグラビア印刷、グラビアオフセット印刷、凹版印刷、シルクスクリーン印刷法等によって行うことができる。
【0055】抗菌性塗膜は最小添加量で最大の抗菌効果を発揮させるため、抗菌剤粒子の一部が塗膜の表面に露出している必要があり、抗菌剤の添加量0.1~10重量%に対して塗膜の厚さは2~10μm程度で、抗菌剤粒子は好ましくは2~5μm程度にする必要がある。塗布方式により塗布量が足りない場合は、1回コートから2回~3回コート程度の重ね刷りを行う場合もある。しかし、抗菌剤の粒径が大きい場合や添加量を多くした場合は塗膜の厚さを10μm超過しても抗菌作用は発揮できるが、透明性は望まれない。又、塗膜内部に封入され、直接抗菌作用に寄与しない物の比率が増える。塗膜を2μm未満にすると塗膜の十分な耐久性と前記粒径、添加量の無機系抗菌剤を塗膜に膠着させる結合力とが不十分となる。
【0056】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)高密度ポリエチレンをベースにして、これに熱可塑性エラストマーとしてスチレン-ブタジエンゴムを30重量%、無機充填剤として炭酸カルシウム10重量%、着色顔料として弁柄とカーボンブラックを5重量%、熱安定剤及びヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を5重量%、添加したブレンド物をカレンダー製膜法によって製膜し、厚さ100μmの不透明着色シート(以下着色PEシート11aとする)を得た。次いで、図4(a)に示すように、この着色PEシート11aの表面に、ウレタン系2液硬化型プライマー液(昭和インク工業(株)製「AFS メジューム」)を塗布してプライマー層20を形成した後、ポリウレタン系2液硬化型白色インキ(昭和インク工業(株)製「UEベタホワイト着色」) を用いて、白色のベタ印刷層12bを形成し、その上に、塩化ビニルー酢酸ビニル系インキ(昭和インク工業(株)製「化X 」) を用いて、柾目柄をグラビア印刷して絵柄印刷層12aを設けた。
【0057】一方、アイソタクティックポリプロピレン50重量%とアタクティックポリプロピレン50重量%のブレンドポリプロピレンに、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を3000ppm、光安定剤としてヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を5000ppmを添加し、このブレンドポリプロピレンを溶融押し出し法によりシート化し、厚さ100μmの透明な軟質ポリプロピレンシート(透明PPシート)を得た。次いで、図4(b)に示すように、この透明PPシートに、抗菌剤として粒径分布が2~5μmで、銀含有量が2.5重量%、亜鉛含有量14.5重量%である銀イオン系ゼオライト抗菌剤を5重量%添加したウレタン系2液硬化型インキ(昭和インク工業(株)製「OP-A4 コーキン」)を用いて、グラビアロールコート方式により、抗菌剤16を含有する抗菌性塗膜15を形成した。抗菌性塗膜15は硬化後の厚さが3μmになるようにした。
【0058】次に、前記着色PEシートの印刷面にウレタン系接着剤(大日精化工業(株)製「E-288L」)を塗布し、図4(c)に示すように、前記透明PPシートのPP面をドライラミネートして抗菌性化粧シート1を作製した。」
ケ「【0061】(実施例4)図7(a)に示すように、実施例1と同様に、抗菌性化粧シート1を作製した。次に、この抗菌性化粧シート1の抗菌剤16を含有する抗菌性塗膜15面に、実施例2と同様に、エンボス模様を形成して、図7(b)に示すように、表面にエンボス模様を有する抗菌性化粧シート1を作製した。」
以上から、特に実施例1に着目すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「着色PEシート11aの上に柾目柄をグラビア印刷して絵柄印刷層12aを設け、透明PPシートに抗菌性塗膜15を形成し、着色PEシートの印刷面に前記透明PPシートのPP面をドライラミネートした抗菌性化粧シート1であって、
抗菌性塗膜15には抗菌剤が添加され、
銀含有量が2.5重量%、亜鉛含有量14.5重量%である銀イオン系ゼオライト抗菌剤を5重量%添加したウレタン系2液硬化型インキを用いて、グラビアロールコート方式により、抗菌剤16を含有する抗菌性塗膜15を硬化後の厚さが3μmで形成し、抗菌剤の粒径分布が2~5μmであり、
透明PPシートの厚さが100μmであり、
透明PPシートは、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、光安定剤としてヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤が添加されている、抗菌性化粧シート1。」
(3)甲3について
甲3には、以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性を有する化粧シートに係り、特に光(紫外線)を必要とせず、抗菌性を有する建装材化粧シート等の好適な技術に関する。」
イ「【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、光(紫外線)を必要とせず、長時間にわたって揮発性化合物、悪臭、菌・ウィルスなどの有機物汚染に対して浄化機能を有する化粧シートを提供することを目的とする。」
ウ「【0010】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
・・・
本実施形態の化粧シート5は、図1に示すように、シート状の基材1の上に、印刷インキ層2、透明熱可塑性樹脂層3、表面保護層4がこの順に積層されて構成されている。本実施形態の表面保護層4には、リン酸塩及び酸化還元補助化合物が配合されている。」
エ「【0011】
<基材>
基材1は、例えば樹脂シートからなる。樹脂シートを構成する樹脂には、公知の樹脂が使用可能であるが、その中でも熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイト、ポリエーテルサルファイト、ポリエーテルスルホン、トリアセチルセルロース、ポリフェニレンエーテル等が使用可能であり、これらの共重合体もしくはブレンドでもよい。特に好ましくは耐候性やコストの点でポリプロピレンが好適である。
基材1の厚さとしては30μm~200μmの範囲内が好適である。基材1は、意匠性の観点から、透明もしくは任意に着色されていてもよい。
【0012】
<印刷インキ層>
印刷インキ層2には、公知の各種有機、無機顔料が使えるが、耐候性を考慮した顔料、バインダー樹脂を選定する方が望ましい。
印刷インキのバインダー樹脂としては、公知の樹脂が使用可能であるが、好ましくはウレタン系、アクリル系樹脂が使用される。さらに、塩化ビニル系、酢酸ビニル系樹脂などの樹脂が混合されていてもよい。
特にこれらに限定されるものではないが、顔料としてはカーボンブラック、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジケトピロロピロール系、フタロシアニン系、ジアゾ系等の有機顔料、酸化鉄、酸化チタン系無機顔料が使用可能であり、それらの材料を単体もしくは複数使用可能である。
印刷インキ層2は、周知の任意の印刷方法により、基材1の上に形成可能である。特に、調子再現性、生産コストの点でグラビア印刷法が好適である。
【0013】
<透明熱可塑性樹脂層>
透明熱可塑性樹脂層3には、公知の樹脂であればいずれも使用可能である。熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイト、ポリエーテルサルファイト、ポリエーテルスルホン、トリアセチルセルロース、ポリフェニレンエーテル等が使用可能であり、これらの共重合体もしくはブレンドも使用可能である。その中でも、耐候性の点でポリプロピレンが好適である。
【0014】
透明熱可塑性樹脂層3の厚さとしては30μm~200μmの範囲内が好適である。
印刷インキ層2の上に透明熱可塑性樹脂層3を設ける際に、2液硬化型ウレタン系樹脂などの接着剤や接着助剤を使用しても良い。また、透明熱可塑性樹脂層3は、押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法など、周知の任意のラミネート方法により形成しても良く、基材1、印刷インキ層2、透明熱可塑性樹脂層3の種類により、積層方法は適宜選択される。
特に、透明熱可塑性樹脂層3の表面に、意匠性向上のために表面エンボス加工を施す場合には、押出ラミネート法が好適である。
【0015】
<表面保護層>
表面保護層4は、樹脂材料の主成分として、熱硬化型樹脂及び光硬化型樹脂(紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂)の少なくとも1つが用いられる。本明細書で主成分とは、樹脂材料100質量部に対し70質量部以上、好ましくは80質量部以上含まれる樹脂材料のことを指す。
熱硬化型樹脂としては、特に限定されるものではないが、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、シリコーン系樹脂などが好ましく用いられる。これらは単体もしくは混合物として用いてもよい。
光硬化型樹脂としてはアクリル系樹脂が好ましく用いられる。
硬化型樹脂として、熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂の両方を混合して使用しても良い。
表面保護層4の厚さとしては0.1μm~20μmの範囲内が好適である。
【0016】
(リン酸塩化合物)
本実施形態の表面保護層4には、リン酸塩化合物が配合されている。
リン酸塩化合物を構成するリン酸塩は、公知のものであれば特に限定されるものではないが、チタン、セリウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムおよびガリウムからなる群から選択される金属を一種類以上含むものが好ましい。これらの金属は、その同位体の使用が可能である。コストの点から特に好ましいのはチタンである。
リン酸塩を製造する方法として公知の方法を用いればよい。
また、リン酸塩化合物は平均粒子径で0.1~20μmであることが好ましい。粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定機を用いて測定できる。その粒度分布より平均粒子径が算出できる。
リン酸塩は、表面保護層4の樹脂材料100質量部に対し、1×10-3質量部以上5質量部以下の範囲で配合されていることが好ましい。
【0017】
(酸化還元補助化合物)
また、本実施形態の表面保護層4には、酸化還元補助化合物が配合されている。
配合する酸化還元補助化合物は、同様な効果を有するものであれば特に限定されるものではないが、酸化還元力の大きい白金、金、銀、鉄、銅、パラジウム、マンガン、バナジウム、コバルト、イットリウム、ランタン、ニッケルから選択される金属、その酸化物、その配位化合物のうち一種類以上が用いられる。コストの点から特に好ましいのは鉄、その酸化物、その配位化合物である。
【0018】
酸化還元補助化合物は、表面保護層4の樹脂材料100質量部に対し、1×10-4質量部以上1質量部以下の範囲で用いられるのがよい。
ここで、リン酸塩化合物や酸化還元補助化合物は、表面保護層4を構成する樹脂材料に混合攪拌されて、高分散で分散されていることが好ましい。」
オ「【実施例】
【0024】
以下に、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
<実施例1>
基材1として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5質量部を添加して押出成形された厚さ70μmのポリプロピレンシートに、接着助剤としてポリエステルポリオール樹脂を10μmの厚さになるようにグラビアコーティング法により塗布した。
この上にベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5質量部を添加したポリプロピレン樹脂を押出ラミネート法により厚さ90μmとなるよう設けた。
更にこの上に、抗菌剤として銀担持リン酸カルシウム(平均粒子径2.0μm)を0.2質量部添加したウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂を表面保護層として6.0μm設けることにより、実施例1の化粧シートを作製した。」
以上から、特に実施例1に着目すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
「基材1の上に、印刷インキ層2、透明熱可塑性樹脂層3、表面保護層4がこの順に積層されて構成されている化粧シート5であって、
基材1は任意で着色可能なポリプロピレンシートであり、
抗菌剤として銀担持リン酸カルシウム(平均粒子径2.0μm)を0.2質量部添加したウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂を表面保護層として6.0μm設け、
透明熱可塑性樹脂層3としてベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5質量部を添加したポリプロピレン樹脂を押出ラミネート法により厚さ90μmとなるよう設けた化粧シート5。」
2 取消理由1(進歩性)について
(1)甲1発明を主引用発明とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「光の透過性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム基材1」は、本件発明1の「透明熱可塑性樹脂層」に相当する。
甲1発明の「抗菌層3」は、本件発明1の「表面保護層」に相当する。
甲1発明の「熱可塑性樹脂からなる基材51」は、「染料、顔料等の着色剤を含」むものであるから、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層」に相当する。
甲1発明の「印刷層52」は、本件発明1の「絵柄模様層」に相当する。
してみると、甲1発明の「光の透過性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム基材1の上に抗菌剤を含む材料で構成された抗菌層3を、熱可塑性樹脂からなる基材51と印刷層(印刷部)52とを有する部材(被着体)50に対して、印刷層52を被覆するように貼着し」は、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた」に相当する。
甲1発明の「紫外線吸収剤」は、本件発明1の「紫外線吸収剤」に相当し、甲1発明の「光安定剤」は、「光安定剤」の限りにおいて本件発明1の「ヒンダードアミン系光安定剤」に一致するから、甲1発明の「光の透過性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム基材1及び抗菌層3は、紫外線吸収剤、光安定剤が添加された」は、「前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と光安定剤とが添加されている」ことの限りにおいて本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤とが添加され」ていることと一致する。
甲1発明の「粘着フィルム10が貼着された貼着体100」は、本件発明1の「化粧シート」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点1で一致し、相違点1-1~1-5で相違する。
(一致点1)
「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シートであって、
前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、光安定剤とが添加されている化粧シート。」
(相違点1-1)
本件発明1では、「前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、
前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下であり、」「前記抗ウイルス添加剤は無機材料に銀イオンを担持させたものであり、前記表面保護層は、下塗り層と、前記下塗り層の表面に上塗りされる最表層と、を含み、前記最表層に前記抗ウイルス添加剤を含」むのに対して、甲1発明では、「抗菌層3中における抗菌剤は、Agイオンが担持された抗菌剤であって、抗菌剤の含有率は、0.1質量%以上40質量%以下であり、抗菌層3中に含まれる抗菌剤は、粒状をなし、その平均粒径が100nm以上5000nm以下」である点。
(相違点1-2)
本件発明1では、「前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下」であるのに対して、甲1発明では、「光の透過性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム基材1の厚さは、15μm以上300μm以下」である点。
(相違点1-3)
本件発明1では、光安定剤が「ヒンダードアミン系」であるのに対して、甲1発明では、光安定剤の種類が特定されていない点。
(相違点1-4)
本件発明1では、「前記表面保護層の最表層に、シリコン系成分若しくはフッ素系成分が添加され」ているのに対し、甲1発明では、そのような構成を有しない点。
(相違点1-5)
本件発明1では、「前記着色熱可塑性樹脂層の裏面を、鋼鈑基材である厚み0.5mmの亜鉛メッキ鋼鈑の表面に、2液ウレタン系接着剤にて貼り合わせ、48時間養生した建具用化粧材に対して、鋼鈑基材の先端が90°0Rの治具を用いてベンダー加工を実施して、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した際に、前記折り曲げ頂上部に、前記表面保護層の割れおよび白化が無い」のに対し、甲1発明では、そのような構成を有していない点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点1-5について検討する。
相違点1-5に係る本件発明1の構成について、申立人が提出した全ての甲号証だけでなく、追加文献1~4にも、記載も示唆も見いだせないから、甲1発明において、相違点1-5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(ウ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
イ 本件発明2、5~7について
本件発明2、及び、請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明5~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更なる限定を追加したものであるから、上記ア(イ)で説示したのと同様の理由により、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(2)甲2発明を主引用発明とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「着色PEシート11a」、「絵柄印刷層12a」、「透明PPシート」、「抗菌性塗膜15」は、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層」、「絵柄模様層」、「透明熱可塑性樹脂層」、「表面保護層」に相当する。
そして、甲2発明の「着色PEシート11aの上に柾目柄をグラビア印刷して絵柄印刷層12aを設け、透明PPシートに抗菌性塗膜15を形成し、着色PEシートの印刷面に前記透明PPシートのPP面をドライラミネートした抗菌性化粧シート1」は、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シート」に相当する。
甲2発明の「透明PPシートの厚さが100μmであり」は、本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下であり」に一致する。
甲2発明の「透明PPシートは、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、光安定剤としてヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤が添加されている」は、「前記透明熱可塑性樹脂層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている」限りにおいて、本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている」に一致する。
してみると、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点2で一致し、相違点2-1~2-4で相違する。
(一致点2)
「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シートであって、
前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下であり、
前記透明熱可塑性樹脂層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている化粧シート。」
(相違点2-1)
本件発明1では、「前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、
前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下であり、」「前記抗ウイルス添加剤は無機材料に銀イオンを担持させたものであり、前記表面保護層は、下塗り層と、前記下塗り層の表面に上塗りされる最表層と、を含み、前記最表層に前記抗ウイルス添加剤を含」むのに対して、甲2発明では、「抗菌性塗膜には抗菌剤が添加され、
銀含有量が2.5重量%、亜鉛含有量14.5重量%である銀イオン系ゼオライト抗菌剤を5重量%添加したウレタン系2液硬化型インキを用いて、グラビアロールコート方式により、抗菌剤16を含有する抗菌性塗膜15を硬化後の厚さが3μmで形成し、抗菌剤の粒径分布が2~5μm」である点。
(相違点2-2)
本件発明1では、「前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている」のに対して、甲2発明では、抗菌性塗膜(本件発明1の「表面保護層」に相当。)に紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤が添加されていない点。
(相違点2-3)
本件発明1では、「前記表面保護層の最表層に、シリコン系成分若しくはフッ素系成分が添加され」ているのに対し、甲2発明は、そのような構成であるか不明である点。
(相違点2-4)
本件発明1では、「前記着色熱可塑性樹脂層の裏面を、鋼鈑基材である厚み0.5mmの亜鉛メッキ鋼鈑の表面に、2液ウレタン系接着剤にて貼り合わせ、48時間養生した建具用化粧材に対して、鋼鈑基材の先端が90°0Rの治具を用いてベンダー加工を実施して、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した際に、前記折り曲げ頂上部に、前記表面保護層の割れおよび白化が無い」のに対し、甲2発明では、そのような構成を有していない点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点2-4について検討すると、相違点2-4は、相違点1-5と実質的に同じであるから、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)ア(イ)で説示したのと同様の理由により、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
イ 本件発明2、5~7について
本件発明2、及び、請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明5~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更なる限定を追加したものであるから、上記ア(イ)(上記(1)ア(イ))で説示したのと同様の理由により、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(3)甲3発明を主引用発明とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「基材1」は、「任意で着色可能なポリプロピレンシート」であるから、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層」に相当する。
甲3発明の「印刷インキ層2」、「透明熱可塑性樹脂層3」、「表面保護層4」は、本件発明1の「絵柄模様層」、「透明熱可塑性樹脂層」、「表面保護層」に相当する。
そして、甲3発明の「基材1の上に、印刷インキ層2、透明熱可塑性樹脂層3、表面保護層4がこの順に積層されて構成されている化粧シート5」は、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シート」に一致する。
甲3発明の「透明熱可塑性樹脂層3」は、「押出ラミネート法により厚さ90μmとなるよう設けた」ものであるから、本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下」に相当する。
また、甲3発明の「透明熱可塑性樹脂層3」は、「ベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5質量部を添加」しているから、「前記透明熱可塑性樹脂層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている」限りにおいて本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている」ことに一致する。
してみると、本件発明1と甲3発明とは、以下の一致点3で一致し、相違点3-1~3-4で相違する。
(一致点3)
「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シートであって、
前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下であり、
前記透明熱可塑性樹脂層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されていることを特徴とする化粧シート。」
(相違点3-1)
本件発明1では、「前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、
前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下であり、」「前記抗ウイルス添加剤は無機材料に銀イオンを担持させたものであり、前記表面保護層は、下塗り層と、前記下塗り層の表面に上塗りされる最表層と、を含み、前記最表層に前記抗ウイルス添加剤を含」むのに対して、甲3発明では、「抗菌剤として銀担持リン酸カルシウム(平均粒子径2.0μm)を0.2質量部添加したウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂を表面保護層として6.0μm設け」た点。
(相違点3-2)
本件発明1では、「前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている」のに対して、甲3発明では、表面保護層4に紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤が添加されていない点。
(相違点3-3)
本件発明1では、「前記表面保護層の最表層に、シリコン系成分若しくはフッ素系成分が添加され」ているのに対し、甲3発明は、そのような構成であるか不明である点。
(相違点3-4)
本件発明1では、「前記着色熱可塑性樹脂層の裏面を、鋼鈑基材である厚み0.5mmの亜鉛メッキ鋼鈑の表面に、2液ウレタン系接着剤にて貼り合わせ、48時間養生した建具用化粧材に対して、鋼鈑基材の先端が90°0Rの治具を用いてベンダー加工を実施して、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した際に、前記折り曲げ頂上部に、前記表面保護層の割れおよび白化が無い」のに対し、甲2発明では、そのような構成を有していない点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点3-4について検討すると、相違点3-4は、相違点1-5と実質的に同じであるから、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)ア(イ)で説示したのと同様の理由により、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
イ 本件発明2、5~7について
本件発明2、及び、請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明5~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更なる限定を追加したものであるから、上記ア(イ)(上記(1)ア(イ))で説示したのと同様の理由により、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
第5 令和5年5月12日付けの取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の内容
申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正前発明1」~「本件訂正前発明7」といい、まとめて「本件訂正前発明」ともいう。)について、以下の(1)~(7)を主張する。
甲4-1:国際公開第2021/230386号
甲4-2:特願2020-164058号の当初明細書等
甲5:特開2021-181227号公報
甲6:「微粒子ハンドブック」、52~61、174~207ページ、初版第1刷、株式会社朝倉書店、1991年9月1日発行
甲7:特開2017-19837号公報
甲8:株式会社タイショーテクノスのウェブページ「工業用抗菌剤「ビオサイドTB-B100」」、[online]、<URL:http://www.taishotechnos.co.jp/products/tech_bn001.html>
甲12:国際公開第2010/026730号
甲17:特開2018-43391号公報
甲19:特開2018-171835号公報
甲20:特開2019-30998号公報
甲21:AGCセイミケミカル株式会社のウェブページ「フッ素系界面活性剤(サーフロン)」、[online]、<URL:http:www.seimichemical.co.jp/product/fluoro/surflon/appli/>
甲22:久司美登、分散基礎講座(第IX講)、「分散剤」、2005年3月20日、78[3]、141~148ページ
(1)特許異議申立理由1(明確性要件)
本件訂正前発明1~7は、明確ではなく、本件特許の本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~7の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、本件訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第36条第6項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(2)特許異議申立理由2(サポート要件)
本件訂正前発明1~7は、本件特許の本件明細書等の発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえず、本件特許の本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~7の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、本件訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第36条第6項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(3)特許異議申立理由3-1(進歩性)
本件訂正前発明3、4及び請求項3を引用する本件訂正前発明5~7は、甲1に記載された発明及び甲2~22に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(4)特許異議申立理由3-2(進歩性)
本件訂正前発明3、4及び請求項3を引用する本件訂正前発明5~7は、甲2に記載された発明及び甲1、3~22に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(5)特許異議申立理由3-3(進歩性)
本件訂正前発明3、4及び請求項3を引用する本件訂正前発明5~7は、甲3に記載された発明及び甲1、2、4~22に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(6)特許異議申立理由4-1(拡大先願)
本件訂正前発明1、2、4~7は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲4-2に係る出願(特願2020-164058号。以下、「先願1」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1、2、4~7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(7)特許異議申立理由4-2(拡大新願)
本件訂正前発明1、2、4~7は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲5に係る出願(特願2021-113040号。以下、「先願2」という。)の当初明細書等に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1、2、4~7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
2 特許異議申立理由についての判断
(1)特許異議申立理由1(明確性要件)について
申立人は、特許異議申立書(37~41ページ参照。)において、本件訂正前発明1の「抗ウイルス添加剤の平均粒径」は、どのように定義されるのか、明細書をみても不明確であるから、本件訂正前発明1及び請求項1を直接又は間接的に引用する本件訂正前発明2~7は、第三者に不測の不利益を及ぼす程度に不明確である旨主張する。
抗ウイルス添加剤の平均粒径として、本件明細書等には、実施例において、「平均粒径が1~10μmの無機系材料に銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)」(【0041】)を使用することが記載されていることを勘案すると、本件発明1の抗ウイルス添加剤の平均粒径」は、製品の仕様として認識し得る程度のものと解され、明確である。
したがって、申立人の上記主張は採用できず、特許異議申立理由1は成り立たない。
(2)特許異議申立理由2(サポート要件)について
ア 本件訂正前発明1の「抗ウイルス添加剤」について
申立人は、特許異議申立書(43~48ページ参照。)において、本件訂正前発明が解決しようとする課題は、「抗ウイルス性に優れ、且つ表面の各種の物性にも優れ、製造が容易な化粧シートを提供すること」(【0005】)であり、発明の詳細な説明には、「抗ウイルス添加剤」は、実施例として、「平均粒径が1~10μmの無機系材料に銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)」(【0041】)を用いたものは示されているが、その他の抗ウイルス添加剤を用いたものは示されておらず、明細書の【0025】に記載の「抗ウイルス効果の持久性を向上できる」との効果は、「ビオサイドTB-B100」という特定の抗ウイルス剤によるものであることは明らかであるところ、本件訂正発明1で特定されているのは、「抗ウイルス添加剤」ということのみだけであり、出願時の技術常識に照らしても、本件訂正前発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないものであって、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるから、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえず、請求項1を直接又は間接的に引用する本件訂正前発明2~7も、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない旨主張する。
本件発明1において、「抗ウイルス添加剤」は、「無機材料に銀イオンを担持させたもの」である。そして、本件明細書等の発明の詳細な説明には、上記「無機材料に銀イオンを担持させたもの」として、「無機系材料に銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)」(【0041】)が記載され、上記銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100を使用した実施例の評価等が表1(【0055】)に示されている。
本件明細書等の発明の詳細な説明の【0005】に記載されているように、本件発明の課題は、抗ウイルス性に優れ、且つ表面の各種の物性にも優れ、製造が容易な化粧シートを提供することであると認められる。そして、本件発明1の「抗ウイルス添加剤」は、そのうち主に抗ウイルス性に優れることに関する構成であり、発明の詳細な説明の【0025】の記載から、抗ウイルス性についての有効成分は銀であり、有効成分を無機材料により担持することで、抗ウイルス効果の持久性を向上できるものと認められるところ、上記銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)と有効成分が同じであり、無機材料に有効成分を担持させたものである、本件発明1の「抗ウイルス添加剤」が、上記銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)と同様の効果を奏することは、当業者であれば理解できることであると解するのが相当である。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
イ 本件訂正前発明2の「0.5D≦φ≦2D」について
申立人は、特許異議申立書(49ページ参照。)において、本件訂正前発明2の「0.5D≦φ≦2D」との事項について、発明の詳細な説明には、実施例として、抗ウイルス添加剤の平均粒径φが1μm以上10μm以下のもの、最表層の表面保護層の厚みDが3μmのもののみしか記載されておらず、該表面保護層の厚みを3μmから変更した場合に、「0.5D≦φ≦2D」(式(1))を満たす抗ウイルス添加剤を使用した場合にも本件訂正前発明の課題を解決し得るかどうかについては、発明の詳細な説明には全く裏付けはないから、本件訂正前発明2及び請求項2を直接又は間接的に引用する本件訂正前発明3~7は、発明の詳細な説明に記載された発明とは認められない旨主張する。
本件発明2の上記式(1)は、抗ウイルス添加剤の平均粒径φと最表層の表面保護層の厚みDとの関係を示している。Dに対するφの大きさが大きいほど、抗ウイルス添加剤との接触面積の拡大、及び抗ウイルス添加剤自体の表面積の拡大をするが、大きすぎると抗ウイルス添加剤が最表層の表面保護層にうまく添加されなくなる(該表面保護層から欠落しやすくなる)ことは、当業者には明らかである。そして、本件明細書等の発明の詳細な説明の【0026】の「上記式(1)の関係が成り立つとき、抗ウイルス添加剤との接触面積の拡大、及び抗ウイルス添加剤自体の表面積の拡大により、抗ウイルス効果、すなわち抗ウイルス性を向上できる。」との記載や、上記式(1)を満たす実施例についての記載を参酌すると、本件発明2において、上記式(1)を満たすことが、本件発明の課題の解決に寄与することは、当業者であれば理解できると解するのが相当である。
また、最表層の表面保護層の厚みDを3μmから少し変更しても、上記式(1)を満たすものであれば、3μmのものと同様に、本件発明の課題を解決できると、当業者であれば理解できると解するのが相当である。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 本件訂正前発明3の「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つこと」について
申立人は、特許異議申立書(49~50ページ参照。)において、本件訂正前発明3の「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つこと」との事項について、本件明細書等の発明の詳細な説明の【0027】には、「粒度分布に2つのピークを持つことにより、抗ウイルス添加剤との接触面積の拡大、及び抗ウイルス添加剤自体の表面積の拡大でき、抗ウイルス効果の有する化粧シート10を得ることができる。」との記載があるのみで、なぜ「抗ウイルス添加剤との接触面積の拡大、及び抗ウイルス添加剤自体の表面積の拡大でき」るといえるのか不明確であるから、本件訂正前発明3の上記事項は、発明の詳細な説明によって裏付けられたものとはいえず、本件訂正前発明3及び請求項3を直接又は間接的に引用する本件訂正前発明4~7は、発明の詳細な説明に記載された発明とは認められない旨主張する。
正規分布のようにピークが1つのものや、ピークがなく全般的に同じような分布のものに比べて、粒度分布に2つのピークがあるものの方が、同じ平均粒径の場合、粒径の大きいものが含まれるのは明らかであり、抗ウイルス添加剤の表面積は、粒径の2乗に比例することを勘案すると、粒度分布に2つのピークを持つものの方が、1つのピークを持つものやピークを持たないものより、抗ウイルス添加剤との接触面積の拡大、及び抗ウイルス添加剤自体の表面積の拡大ができることは、当業者であれば理解できると解するのが相当である。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
エ 小括
以上によれば、特許異議申立理由2は成り立たない。
(3)特許異議申立理由3-1~3-3(進歩性)について
ア 甲1発明を主引用発明とする場合(特許異議申立理由3-1)
(ア)本件発明3について
a 対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(相違点1-6)
本件発明3では、「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つ」のに対し、甲1発明では、そのような構成を有しない点。
b 相違点についての判断
相違点1-6に係る本件発明3の構成について、甲2~22及び追加文献1~4には、記載も示唆も見いだせないから、甲1発明において、相違点1-6に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件発明3は、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
(イ)本件発明5~7について
請求項3を引用する本件発明5~7は、本件発明3の発明特定事項を全て含み、更なる限定を追加したものであるから、上記(ア)bで説示したのと同様の理由により、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
イ 甲2発明を主引用発明とする場合(特許異議申立理由3-2)
(ア)本件発明3について
a 対比
本件発明3と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(相違点2-5)
本件発明3では、「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つ」のに対し、甲2発明では、そのような構成を有しない点。
b 相違点についての判断
相違点2-5は、相違点1-6と実質的に同じであるから、上記ア(ア)bで説示したのと同様の理由により、本件発明3は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(イ)本件発明5~7について
請求項3を引用する本件発明5~7は、本件発明3の発明特定事項を全て含み、更なる限定を追加したものであるから、上記ア(ア)b(上記(ア)b)で説示したのと同様の理由により、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
ウ 甲3発明を主引用発明とする場合(特許異議申立理由3-3)
(ア)本件発明3について
a 対比
本件発明3と甲3発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(相違点3-5)
本件発明3では、「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つ」のに対し、甲3発明では、そのような構成を有しない点。
b 相違点についての判断
相違点3-5は、相違点1-6と実質的に同じであるから、上記ア(ア)bで説示したのと同様の理由により、本件発明3は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(イ)本件発明5~7について
請求項3を引用する本件発明5~7は、本件発明3の発明特定事項を全て含み、更なる限定を追加したものであるから、上記ア(ア)b(上記(ア)b)で説示したのと同様の理由により、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
エ 小括
以上によれば、特許異議申立理由3-1~3-3は成り立たない。
(4)特許異議申立理由4-1、4-2(拡大先願)について
ア 特許異議申立理由4-1
(1)本件発明1について
本件発明1と先願1の当初明細書等(甲4-2参照)に記載された発明(以下、「先願発明1」という。)とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
そして、相違点4-1は実質的な相違点であり、当該相違点が課題解決のための具体化手段における微差ともいえないから、本件発明1は先願発明1と同一ではない。
(相違点4-1)
本件発明1では、「前記着色熱可塑性樹脂層の裏面を、鋼鈑基材である厚み0.5mmの亜鉛メッキ鋼鈑の表面に、2液ウレタン系接着剤にて貼り合わせ、48時間養生した建具用化粧材に対して、鋼鈑基材の先端が90°0Rの治具を用いてベンダー加工を実施して、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した際に、前記折り曲げ頂上部に、前記表面保護層の割れおよび白化が無い」のに対し、先願発明1では、そのような構成を有していない点。
(2)本件発明2、4~7について
本件発明2及び請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明4~7は、先願発明1の発明特定事項を全て含み、更なる限定を追加したものであるから、先願発明1と同一ではない。
イ 特許異議申立理由4-2
(1)本件発明1について
本件発明1と先願2の当初明細書等(甲5参照)に記載された発明(以下、「先願発明2」という。)とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
そして、相違点4-2は実質的な相違点であり、当該相違点が課題解決のための具体化手段における微差ともいえないから、本件発明1は先願発明2と同一ではない。
(相違点4-2)
本件発明1では、「前記着色熱可塑性樹脂層の裏面を、鋼鈑基材である厚み0.5mmの亜鉛メッキ鋼鈑の表面に、2液ウレタン系接着剤にて貼り合わせ、48時間養生した建具用化粧材に対して、鋼鈑基材の先端が90°0Rの治具を用いてベンダー加工を実施して、折り曲げ頂上部の外観状態を確認した際に、前記折り曲げ頂上部に、前記表面保護層の割れおよび白化が無い」のに対し、先願発明2では、そのような構成を有していない点。
(2)本件発明2、4~7について
本件発明2及び請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明4~7は、先願発明2の発明特定事項を全て含み、更なる限定を追加したものであるから、先願発明2と同一ではない。
ウ 小括
以上によれば、特許異議申立理由4-1、4-2は成り立たない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~3、5~7に係る発明については、取消理由通知書に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によって、請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4は、本件訂正により削除されたため、申立人による特許異議の申立てにおける請求項4に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701133