特許異議申立
2022-700424
1,1-二活性化ビニル化合物を含有する硬化性組成物ならびに関連のコーティングおよび方法
- 審判番号
- 2022-700424
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-096033
- 登録番号
- 6968934
- 請求日
- 2022年05月16日
- 審決日
- 2023年01月18日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】山本 秀策
- 【権利者代理人】森下 夏樹
- 【異議申立人】竹口 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.16 -YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第43条第1項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6968934号発明「1,1-二活性化ビニル化合物を含有する硬化性組成物ならびに関連のコーティングおよび方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6968934号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~18〕について訂正することを認める。
特許第6968934号の請求項1~18に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6968934号の請求項1~18に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)7月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年(平成28年)7月26日、米国 2017年(平成29年)2月6日、米国)を国際出願日とする特願2019-503700号の一部を、令和2年6月2日に新たな特許出願としたものであって、令和3年10月29日にその特許権の設定登録がされ、令和3年11月17日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 5月16日 :特許異議申立人竹口美穂(以下「申立人」という。)による請求項1~18に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年 7月26日付け:取消理由通知書
令和4年10月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、当該訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和4年12月 1日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された「付加反応生成物」を、「マイケル付加反応生成物」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~18も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項4に記載された「付加反応生成物」を、「マイケル付加反応生成物」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5、6、15も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項5に記載された「付加反応生成物」を、「マイケル付加反応生成物」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6、15も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項7に記載された「前記第2の硬化性組成物層における付加反応」を、「前記第2の硬化性組成物層におけるマイケル付加反応」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~10、15も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項7に記載された「前記第1の硬化性組成物層における付加反応」を、「前記第1の硬化性組成物層におけるマイケル付加反応」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~10、15も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項14に記載された「付加反応生成物」を、「マイケル付加反応生成物」に訂正する(請求項14の記載を引用する請求項15も同様に訂正する)。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~18は、請求項2~18が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~18〕について請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「付加反応生成物」について、付加反応を「マイケル付加反応」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0022】、【0029】、【0057】、【0059】~【0061】、【0063】、【0064】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項2~6は、訂正事項1と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~18〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~18に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~18を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~18の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
基材の少なくとも一部にわたって塗布された第1の硬化性組成物層、および
前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって塗布された第2の硬化性組成物層
を含む、複数層硬化性組成物であって、
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、
(1)
(1a)ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、もしくはポリカルバメート、もしくはそれらの任意の組合せと、
(1b)1,1-二活性化ビニル化合物、もしくはその複数官能性形態、もしくはそれらの組合せ
とのマイケル付加反応生成物
の1つまたは複数を含む、
複数層硬化性組成物。
【請求項2】
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、さらに、(2)前記1,1-二活性化ビニル化合物、もしくはその複数官能性形態、もしくはそれらの組合せの重合反応生成物の1つまたは複数を含む、請求項1に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項3】
前記1,1-二活性化ビニル化合物が、メチレンジカルボニル化合物、ジハロビニル化合物、ジハロアルキル二置換ビニル化合物、もしくはシアノアクリレート化合物、もしくはそれらのいずれかの複数官能性形態、またはそれらのいずれかの組合せを含む、請求項1または2に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項4】
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、
(1a)ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、もしくはポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せと、
(1b)ジアルキルメチレンマロネート、ジアリールメチレンマロネート、ジアルキルメチレンマロネートの複数官能性形態、もしくはジアリールメチレンマロネートの複数官能性形態、またはそれらの任意の組合せ
とのマイケル付加反応生成物を含む、請求項1または2に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項5】
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、
(1a)ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、もしくはポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せと、
(1b)ジエチルメチレンマロネートおよびジエチルメチレンマロネートの複数官能性形態(ジエチルメチレンマロネートの前記複数官能性形態は、ジエチルメチレンマロネートおよび少なくとも1つのポリオールのエステル交換付加物を含む)
とのマイケル付加反応生成物を含む、請求項4に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項6】
ジエチルメチレンマロネートおよび少なくとも1つのポリオールの前記エステル交換付加物が、ジエチルメチレンマロネートおよびジオールのエステル交換付加物を含む、請求項5に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項7】
(i)前記第1の硬化性組成物層が、前記第2の硬化性組成物層が前記第1の硬化性組成物層にわたって塗布されたら前記第2の硬化性組成物層におけるマイケル付加反応を活性化する活性化剤化合物を含み、あるいは
(ii)前記第2の硬化性組成物層が、前記第2の硬化性組成物層が前記第1の硬化性組成物層にわたって塗布されたら前記第1の硬化性組成物層におけるマイケル付加反応を活性化する活性化剤化合物を含む、
請求項1または2に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項8】
前記活性化剤化合物が、第三級アミン化合物を含む、請求項7に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項9】
前記活性化剤化合物が、2-(ジメチルアミノ)エタノールおよび/または1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを含む、請求項8に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項10】
前記活性化剤化合物が、イオン性液体を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項11】
前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、強酸を含む硬化性組成物から形成される、請求項1または2に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項12】
前記強酸が、スルホン酸および/またはヘテロポリ酸を含む、請求項11に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項13】
前記第1および/または第2の層に、無水物含有ビニルポリマーを含むエクステンダーをさらに含む、請求項1または2に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項14】
前記第1の硬化性組成物層が、500℃未満の温度で加熱されると硬化する硬化性組成物から形成され、前記第2の硬化性組成物層が、(1)前記マイケル付加反応生成物および/または(2)前記重合反応生成物を含む、請求項1または2に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項15】
前記第1の硬化性組成物層を形成する前記硬化性組成物が、メラミン樹脂およびホルムアルデヒド縮合物を実質的に含まない、請求項1~14のいずれか一項に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項16】
前記第2の硬化性組成物層が、クリアコート層を含む、請求項1または2に記載の複数層硬化性組成物。
【請求項17】
物品の表面にわたって堆積された請求項1または2に記載の複数層硬化性組成物を含む、物品。
【請求項18】
前記物品が、車両部品または自立構造体の部品を含む、請求項17に記載の物品。
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~18に係る特許に対して、当審が令和4年7月26日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~15、17、18に係る発明は、以下の甲1に記載された発明に基いて、本件特許の請求項1~18に係る発明は、以下の甲3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)取消理由2(拡大先願)
本件特許の請求項1~6、11、12、15~18に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、特許法第43条第1項の規定による優先権の基礎とされ、同法第184条の15第4項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定により、本件特許の出願後に国際公開(甲5は、その公表公報)がされた時に出願公開がされたものとみなされる特許出願の願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲(甲6)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願の日前の上記特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
(甲第1号証~甲第8号証を「甲1」等という。)
甲1:特表2015-518503号公報
甲3:特表2015-519416号公報
甲4:米国特許出願公開第2014/295099号明細書
甲5:特表2019-518104号公報
甲6:米国特許出願62/345,334号の願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲
2 当審の判断
(1)引用文献等の記載及び引用発明
ア 甲1
(ア)甲1の記載
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料;および
強化または充填材料;
を含み、
該ポリマー材料が、二重活性化ビニル化合物を含み、該二重活性化ビニル化合物がシアノアクリレートでない重合性組成物の重合生成物を含む、
複合材料。
【請求項2】
二重活性化ビニル化合物が、メチレンマロネート、メチレンベータケトエステル、メチレンベータジケトンからなる群のうちの少なくとも1つの構成員を含む、請求項1に記載の複合材料。
・・・
【請求項24】
二重活性化ビニル化合物を含む重合性組成物の重合生成物を含み、該二重活性化ビニル化合物がシアノアクリレートでない、ラミネート用接着剤。」
「【0012】
既知の複合材は、多くの用途に有用であるが、幾つかの欠点、例えば、製造上の課題、長い硬化時間、複雑な製作設備、高いエネルギーコスト、原材料に対する制限(例えば、耐熱性の強化材料)および許容され得ないレベルの毒性化学薬品への曝露を有する。さらに、当該技術分野において非常に所望されてはいるが、採算性はまだ充分に明らかになっていない。この結果、複合材は従来の材料よりも高価であり得、設計者は、複合材料によってもたらされる利点と他の低コスト代替品との間で選択を行わなければならない。
【0013】
従って、複合材およびラミネートの両方に対し、依然として当該技術分野において、上記の付随する困難または高いエネルギー必要量のない、所望の物理的性能がもたらされる材料の長い間の切実な必要性が存在している。」
「【0018】
また、無数の複合材の型、例えば、繊維強化骨材または粒子強化および/またはラミナ強化複合材用のバインダー系を開示する。該バインダー系は100%固形分の反応性組成物として設計され得、これは、所望によりほぼ即時的に、即ち、強化材のぬれの後、接触すると、硬化に必要とされる投入エネルギーがほとんどまたは全くなしで硬化され得るものである。」
「【0032】
特定の実施形態では、本発明による複合材料を調製するための系は、さらに重合活性剤を含んでいる。一部の実施形態では、重合活性剤が強化または充填材料中または該材料上に存在している。他の実施形態では、重合活性剤が、純粋な形態、希釈形態、逸散性または非逸散性の形態で存在している。さらに他の実施形態では、重合活性剤に、塩基、塩基前駆体、塩基創出体または塩基向上体が包含される。さらに他の実施形態では、重合活性剤が、有機材料、無機材料もしくは有機金属材料またはこの組合せから選択される。具体的な実施形態では、重合活性剤が、酢酸ナトリウム;酢酸カリウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、銅およびコバルトの酸の塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリドおよびヒドロキシド;第1級、第2級または第3級のいずれかのアミン;アミド;ポリマー結合型酸の塩;安息香酸塩;2,4-ペンタン二酸塩;ソルビン酸塩;プロピオン酸塩;第2級脂肪族アミン;ピペリデン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、ジブチルアミン、モルホリン、ジエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルピペラジン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン;アミンと有機モノカルボン酸との塩;ピペリジンアセテート;低級モノカルボン酸の金属塩;酢酸銅(II)、酢酸第二銅一水和物、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、クロロ酢酸亜鉛、クロロ酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム;酸含有ポリマーの塩;ポリアクリル酸コポリマーの塩から選択される少なくとも1つの構成員である。」
「【0035】
本発明によるラミネート用接着剤の特定の実施形態では、二重活性化ビニル化合物が、メチレンマロネート、メチレンベータケトエステル、メチレンベータジケトンからなる群のうちの少なくとも1つの構成員を含む。他の実施形態では、重合性組成物が多官能性のモノマーまたはオリゴマーを含む。さらに他の実施形態では、多官能性モノマーまたはオリゴマーが、構造:-W-C(O)-C(=CH2)-C(O)-W-(式中、Wは-O-または直接結合を表す。)で表される少なくとも2種類の単位を含む。また他の実施形態では、重合性組成物が、少なくとも1種類の多官能性モノマーまたはオリゴマーと少なくとも1種類の単官能性モノマーのブレンドを含む。具体的な実施形態では、多官能性モノマーまたはオリゴマーがブレンド中に、該ブレンドの重量基準で少なくとも2%、少なくとも5%および少なくとも10%から選択される量で存在している。」
「【0039】
該ラミネート作製法の他の実施形態では、該方法は、さらに、塩基、塩基前駆体、塩基創出体または塩基向上体の形態の重合活性剤を重合性組成物中または一方の基材上に準備することを含む。一部の実施形態では、重合活性剤が、有機材料、無機材料もしくは有機金属材料またはこの組合せから選択される。他の実施形態では、重合活性剤が、酢酸ナトリウム;酢酸カリウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、銅およびコバルトの酸の塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリドおよびヒドロキシド;第1級、第2級または第3級のいずれかのアミン;アミド;ポリマー結合型酸の塩;安息香酸塩;2,4-ペンタン二酸塩;ソルビン酸塩;プロピオン酸塩;第2級脂肪族アミン;ピペリデン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、ジブチルアミン、モルホリン、ジエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルピペラジン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン;アミンと有機モノカルボン酸との塩;ピペリジンアセテート;低級モノカルボン酸の金属塩;酢酸銅(II)、酢酸第二銅一水和物、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、クロロ酢酸亜鉛、クロロ酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム;酸含有ポリマーの塩;ポリアクリル酸コポリマーの塩から選択される少なくとも1つの構成員である。」
「【0052】
本明細書で用いる場合、用語「メチレンマロネート」は、式-O-C(O)-C(=CH2)-C(O)-O-のコアを有する化合物をいう。ジエチルメチレンマロネートモノマーはエチル基を2つ有するメチレンマロネートであり、本明細書においてDEMMと表示する。ジメチルメチレンマロネートモノマーはメチル末端基を2つ有するものであり、本明細書においてDMMMまたはD3Mと表示する。」
「【0115】
さらなる複合材の例を以下に示す。一部の場合では、多官能性モノマーとDEMMのブレンドを重合性組成物として使用した。多官能性モノマー(二官能性モノマーなど)および重合性組成物は、発明の名称が多官能性モノマー、多官能性モノマーの作製方法、重合性組成物およびこれにより形成される製品である同時係属の特許出願第PCT/US12/60830号(この全体が本明細書に組み込まれる。)に開示している。例示的な一実施形態において、多官能性モノマーは、ジエチルメチレンマロネート(DEMM)と1,6-ヘキサンジオール(HD):
【0116】
【化2】
[図:0001396278000001.jpg]
のエステル交換によって得られるものであり、本明細書では「多官能性(DEMM/HD)生成物」と称する。」
「【0118】
例示的重合性組成物は、およそ85重量%のDEMM、およそ10重量%の多官能性(DEMM/HD)生成物およびおよそ5重量%の他の(例えば、マロン酸ジエチル(DEM))を含むものであり、本明細書では「多官能性ブレンド」と称する。
【0119】
さらなる安定剤:KK030.136.FM1を用いたアルミナ/多官能性複合材
この実験の目的は、およそ60重量%のアルミナ(前硬化重量)を用いた多官能性ブレンド(500ppmのMSAで過剰安定化)の重合性組成物を硬化させることにより複合材を形成することであった。
【0120】
出発材料は、多官能性ブレンド;10000ppmのメタンスルホン酸(MSA)含有DEMM(安定剤として);アルミナ(Admatechs高純度アルミナ,99.9+%,サイズ=0.7um,比表面積=6.0m2/g,表面pH=5.3,製品番号AO-802(ロット番号PWG112)(表1に示した量で供給)とした。」
「【0200】
特に重要なものは、例えば、自動車用、航空宇宙産業、風力タービンおよびスポーツ用品業界における使用のための高性能複合材料である。本明細書に開示した複合材により省エネルギー(周囲条件硬化性ポリマーマトリックス)および製品の軽量化の大きな機会がもたらされる。従って、例示的実施形態は、自動車部材、建築部材、スポーツ用品部材、摩擦材業界の部材、高性能複合材部材、歯科部材、建築部材、家具部材、船舶部材、航空宇宙産業部材を形成するために使用され得る。」
「【0202】
ラミネート
特定の重合性組成物を、プライマー処理した、またはプライマー処理していない基材上に流延し、結合し、次いで、硬化および/または剥離強度について試験した。
【0203】
方法論:
3種類のプライマー:Michem Flex P1852、Michem Flex P2300およびDigiPrime 4431(Michelman(シンシナティ,OH)製)を、3種類の異なる基材:二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリカーボネート(PC)上に#2.5ワイヤロッドを用いて流延し、0.25ミルのプライマーコートを得た。次いで、サンプルを100℃の炉内で60秒間硬化させた。次いで、ジエチルメチレンマロネート(DEMM)をプライマー溶液の上面に#14ロッドを用いて流延し、1ミル厚の膜を得た。コーティングしたサンプルを、次いで、接着剤面に一体に配置し、Carverプレスで50psiにて60秒間結合した。サンプルを1インチに切断し、Thwing-AlbertEJAシリーズ試験機のT型剥離モードで、25Nロードセルを用いて試験した。剥離強度は2インチの距離で試験した。剥離の結果を以下に表に示す。ほとんどの破壊様式は接着剤であったが、ポリカーボネート(PC)サンプルでは基材の破壊が示された。
【0204】
結果および観察結果:
【0205】
【表17】
[図:0001396278000002.jpg]
【0206】
表17にまとめたこの概念実証試験により、DEMMを用いるとラミネート構造体の層間に接着結合が形成される配合物が作製され得ることが示される。当業者には、本明細書に開示した原理を使用すると、ラミネート構造体に所望の剥離強度がもたらされる基材、プライマーおよび重合性材料の好適な組合せが見出され得ることが認識されよう。さらに、PC基材では、DEMMにより、さらなるプライマーなしで優れた剥離強度結果が得られた。」
(イ)甲1に記載された発明
甲1には、特に【0202】~【0206】に記載されたラミネート構造体に着目すると、次の発明が記載されている。
「プライマーであるDigiPrime 4431を、基材上にワイヤロッドを用いて流延し、プライマーコートを得て、100℃の炉内で硬化させ、次いで、重合性組成物である、ジエチルメチレンマロネートをプライマー溶液の上面にロッドを用いて流延し、膜を得た、ラミネート構造体。」(以下「甲1発明」という。)
イ 甲3
(ア)甲3の記載
「【0012】
当該技術分野において、100%固形分であり得、エマルジョンへの予備重合が必要とされ得ない機能的および/または装飾的コーティングまたはインクが提供されることが所望されている。また、環境抵抗性であり得、活性化のために投入エネルギー(熱または光)が必要とされ得ない、かかるコーティングまたはインクが得られることが所望されている。かかるコーティングおよびインクにより、枢要な有益性、例えば、塗布および硬化時のエネルギー使用量の大幅な削減、複雑な溶剤の取り扱いおよび回収設備の排除、エネルギー関連設備の排除、ならびに感熱基材に対する前記の系の使用可能性がもたらされ得る。一例として、インクおよびオーバープリントワニスのための紫外光硬化系と置き換え可能なことにより、前述のすべての有益性がもたらされ得る。また、環境抵抗性が不充分であり、50%が水の組成物を含有させ、輸送および管理しなければならず、即時硬化であればオフィスまたは家庭のユーザーに対してずっとより高速の処理量がもたらされ、紫外光の系は管理が高価で、複雑で危険ですらあるエマルジョン系インクの置き換えも所望されている。
【0013】
従って、新たな類型の商業的に実現可能な製品、特に、コーティング配合物およびインク配合物、方法ならびに塗布設備、ならびにかかる材料が使用された物品が当該技術分野において非常に所望されている。」
「【0027】
別の態様において、本発明は、1種類以上の二重活性化ビニル化合物を含むものであるが、前記二重活性化ビニル化合物はシアノアクリレートでないものとする重合性組成物を含むコーティング組成物を提供する。
【0028】
本発明のコーティング組成物の一部の特定の実施形態では、二重活性化ビニル化合物が、メチレンマロネート、メチレンβ-ケトエステル、メチレンβ-ジケトン、ジアルキル二置換ビニルおよびジハロアルキル二置換ビニルからなる群のうちの少なくとも1つの構成員である。さらに他の実施形態では、二重活性化ビニル化合物が多官能性の二重活性化ビニル化合物である。」
「【0032】
本発明のコーティング組成物の他の実施形態では、該組成物がさらに、塩基、塩基前駆体、塩基または塩基向上体の形態の活性化剤を含むものである。一部の特定の実施形態では、重合活性剤が、有機材料、無機材料もしくは有機金属材料またはこの組合せから選択される。他の実施形態では、重合活性剤が:酢酸ナトリウム;酢酸カリウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、銅およびコバルトの酸の塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリドおよびヒドロキシド;第1級、第2級または第3級のいずれかのアミン;アミド;ポリマー結合型酸の塩;安息香酸塩;2,4-ペンタン二酸塩;ソルビン酸塩;プロピオン酸塩;第2級脂肪族アミン;ピペリデン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、ジブチルアミン、モルホリン、ジエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルピペラジン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン;アミンと有機モノカルボン酸との塩;ピペリジンアセテート;低級モノカルボン酸の金属塩;酢酸銅(II)、酢酸第二銅一水和物、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、クロロ酢酸亜鉛、クロロ酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム;酸含有ポリマーの塩;ポリアクリル酸コポリマーの塩から選択される少なくとも1つの構成員である。」
「【0070】
本明細書で用いる場合、用語「メチレンマロネート」は、式-O-C(O)-C(=CH2)-C(O)-O-のコアを有する化合物をいう。ジエチルメチレンマロネートモノマーはエチル基を2つ有するメチレンマロネートであり、本明細書においてDEMMと表示する。ジメチルメチレンマロネートモノマーはメチル末端基を2つ有するものであり、本明細書においてDMMMまたはD3Mと表示する。」
「【0086】
例示的実施形態
本明細書に開示した例示的実施形態により、重合性組成物(例えば、モノマー、オリゴマーおよび/またはポリマー)のインクおよびコーティングとしての使用における新規で非自明性の改善を提供する。特に重要なものは、二置換型の二重活性化ビニル組成物、例えば限定されないが、メチレンマロネート、メチレンβ-ケトエステル、メチレンβ-ジケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニルの単官能性、二官能性または多官能性のモノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれかであるものを含む重合性インクおよび/またはコーティング組成物である。」
「【0120】
さらなるコーティング
DEMM中に顔料分散体を含む表面コーティングは、通常のスチール、ポリカーボネート、オーク材およびアルミニウムに対して行われ得る。Meyerロッドサイズ8で下方に引き延ばすことにより形成されるコーティングの硬化時間は、室温でおおよそ24時間である。また、Meyerロッドサイズ14で下方に引き延ばすことにより形成されるコーティングの硬化時間も、室温でおおよそ24時間かかる。
【0121】
DEMMのみ、または顔料含有DEMMのいずれかを用いて上記のようにして硬化させたコーティングを重層すると、顔料分散体を用いた例示的多層コーティングが形成され得る。さらなる各層は、この場合もMeyerロッドによって塗布され得、硬化時間はおよそ24時間である。基材を高温条件下に置くと、コーティング(またはコーティング層(複数))の硬化はスピードアップし得る。例えば、55または82℃ではコーティングはすべて、すべての基材において15分以内に硬化する。」
「【0139】
第2の方法では、「多官能性ブレンド」を用いてクリアコーティングを生成させた。多官能性モノマー(二官能性モノマーなど)および重合性組成物は、発明の名称が多官能性モノマー、多官能性モノマーの作製方法、重合性組成物およびこれにより形成される製品である同時係属の特許出願PCT/US12/60830(この全体が本明細書に組み込まれる。)に開示している。例示的な一実施形態において、多官能性モノマーは、ジエチルメチレンマロネート(DEMM)と1,6-ヘキサンジオール(HD):
【0140】
【化2】
[図:0001396278000003.jpg]
のエステル交換によって得られるものであり、本明細書では「多官能性(DEMM/HD)生成物」と称する。
【0141】
多官能性(DEMM/HD)生成物は例示の目的で示しているにすぎず、限定を意図するものでない。同時係属の特許出願に開示した他の多官能性メチレンモノマーも、本明細書に開示した原理に従うコーティングおよびインクを形成するために使用され得ることが予測される。
【0142】
例示的重合性組成物は:およそ85重量%のDEMM、およそ10重量%の多官能性(DEMM/HD)生成物およびおよそ5重量%の他の(例えば、マロン酸ジエチル(DEM))を含むものであり、本明細書では「多官能性ブレンド」と称する。
【0143】
この例示的実施形態では、活性剤溶液(1重量%の安息香酸ナトリウム含有エタノール)を基材上にゲージ2.5のMeyerロッドを用いて流延した。エタノールをフラッシングによって表面から除去し、次いで、ゲージ10のMeyerロッドを用いて多官能性ブレンドを処理済みの基材の上面に流延した。コーティングは周囲温度で硬化させた。
【0144】
多官能性ブレンドでは、流延する前に開始剤を使用することによりコーティングの硬化速度が有意に加速される。得られるコーティングは透明であり、わずかにつやのある外観を有する。多官能性ブレンドを用いたクリアコーティングは、金属基材、木製基材、プラスチック基材および複合基材に塗布され得、インクコーティングの上面のクリアコートとしての使用に特に好適であり得る。論考した例はクリアコーティングであるが、本明細書に開示した着色剤を用いて別の配合物を作製することが可能である。
【0145】
反応性(重合性/架橋性)の多官能性ブレンドが使用された配合物では、メタンスルホン酸(MSA)が長期貯蔵寿命を付与するための安定剤である。貯蔵寿命が反応性と釣り合いがとれる場合は、さまざまな安定剤が使用され得ることが想定される。
【0146】
多官能性ブレンドのクリアコーティングの特性をインク系アンダーコートで検討し、クリアコートとしてのこの保護効果を観察した。」
「【0171】
自動車用用途
例示的コーティングおよびコート基材は、コーティングが可能な限り多様な用途および自動車用の軽量化用途に使用され得る。さらに、該コーティングは、特に、自動車業界においてエネルギー使用および塗装部門の運営コストが劇的に削減されるように適合される。該業界では、高いエネルギー使用量のため、自動車を提供するコストの60から70%までが塗装部門に関連している。炉の必要性なしにコーティング(例えば、塗装)できれば、自動車業界に劇的なインパクトがもたらされ得よう。さらに、自動車を構築するために使用される材料は、かかる材料が塗装炉内環境に耐え得るものでなければならないという事実のため制限される。加熱要件の排除によって広範な材料への扉が開かれることとなり、これにより直接的に軽量化の改善がもたらされ得る。上記のように、本明細書に開示した例示的実施形態は、さまざまなプラスチック基材をコーティングするために使用され得る。さらに、本明細書に開示した例示的実施形態は周囲温度で硬化可能であるため、OEM自動車メーカーによって使用されている同じ塗料配合物が、現在では不可能だがアフターマーケットの修理店でも利用可能となり得る。従って、本明細書に開示した例示的実施形態により、現行の方法の場合のように感熱材料が塗装炉に曝露されないため、少なくとも1種類の感熱材料がコーティング工程の前に組み込まれる自動車の製造が可能となる。」
(イ)甲3に記載された発明
甲3には、次の発明が記載されている。
「通常のスチール、ポリカーボネート、オーク材およびアルミニウムに対して行われ得る、DEMM中に顔料分散体を含む表面コーティングに、DEMMのみまたは顔料含有DEMMのいずれかのコーティングを重層して形成される、顔料分散体を用いた多層コーティングであって、
DEMMは重合性組成物であり、
Meyerロッドで塗布されることにより形成された、DEMM中に顔料分散体を含む表面コーティング、及びDEMMのみまたは顔料含有DEMMのいずれかのコーティングを、基材を高温条件下に置いて、55または82℃で15分以内に硬化させた、多層コーティング。」(以下「甲3発明」という。)
ウ 甲6
(ア)甲6の記載
甲6には、日本語に訳すと次の事項が記載されている。
「[0013] 開示するのは、物品の1つ以上の表面または1つ以上の表面の一部に配置された組成物の一部として、1つ以上のポリエステルマクロマーを含有するコーティングを有する物品である。上記物品がベースコートを有し、その上にポリエステルマクロマー組成物が付着されてもよい。ベースコートは、色素を含有してもよい。ベースコートは、表面に塩基性のpHを有してもよい。色素は、塩基性であってもよい。ポリエステルマクロマーのコーティングは、透明であってもよい。」
「[0033] ポリエステルマクロマーは、式1に相当し得る:
[図:0001396278000004.jpg]
式中、Zは、出現する度に別々に、-R2OHまたは-R1であり、R1は、出現する度に別々に、1つ以上のヘテロ原子を含有し得るヒドロカルビル基であり;R2は、出現する度に別々に、酸素原子への2つ以上の結合を有するヒドロカルビレン基であり;cは、2以上の整数であり;nは、約1~3の整数である。R2に関して、酸素原子への結合は、R2を使用する状況に応じて、ポリオール、ジオール、もしくはジエステル、またはそれらの残基の酸素への結合を含んでもよい。」
「[0038] 開示するポリエステルマクロマーは、1,1-ジエステル-1-アルケン、ジオール、ポリオール、及び/またはジヒドロカルビルジカルボキシレートから調製することができる。・・・」
「[0040] 1,1-ジエステル-1-アルケン化合物は、式7に相当し得る:
[図:0001396278000005.jpg]
R1は、主具現する度に別々に、本明細書に開示する方法の条件下で置き換えるまたはエステル交換させることができる基である。R1は、出現する度に別々に、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、アリール、アラルキル、アルカリル、ヘテロアリール、もしくはアルクヘテロアリール、またはポリオキシアルキレンであってもよく、あるいは両方のR1が5~7員の環式または複素環式環を形成する。R1は、出現する度に別々に、C1~C15アルキル、C2~C15アルケニル、C3~C9シクロアルキル、C2~20ヘテロシクリル、C3~20アルクヘテロシクリル、C6~18アリール、C7~25アルカリル、C7~25アラルキル、C5~18ヘテロアリールもしくはC6~25アルキルヘテロアリール、またはポリオキシアルキレンであってもよく、あるいは両方のR1が5~7員の環式または複素環式環を形成する。列挙された基は、エステル交換反応を妨害しない1つ以上の置換基で置換されていてもよい。代表的な置換基として、ハロ、アルキルチオ、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、シアノ、アシルオキシ、カルボキシ、またはエステルが挙げられる。R1は、出現する度に別々に、C1~C15アルキル、C3~C6シクロアルキル、C4~18ヘテロシクリル、C4~18アルクヘテロシクリル、C6~18アリール、C7~25アルカリル、C7~25アラルキル、C5~18ヘテロアリールもしくはC6~25アルキルヘテロアリール、またはポリオキシアルキレンであってもより。R1は、出現する度に別々に、C1~4アルキルであってもよい。R1は、出現する度に別々に、メチルまたはエチルであってもよい。R1は、1,1-置換アルケン化合物上のエステル基ごとに同一であっても異なっていてもよい。
[0041] 1,1-置換アルケン化合物の好ましい一部類は式8に相当し得るメチレンマロネートである:
[図:0001396278000006.jpg]
式中、R1は、本明細書において前に述べたとおりである。」
「[0043] 有用なポリオールは、2つ以上のヒドロキシル基が結合したヒドロカルビレン基を有する化合物であって、本明細書に開示するエステル交換条件下でエステル化合物のエステル交換を行うことが可能であり得る化合物である。本明細書において有用なポリオールは、2つの群に分類される。・・・代表的なジオールとして、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2エチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオールが挙げられる。・・・」
「[0046] ポリエステルマクロマーの調製に使用されてもよい別の中間体は、カルボニル基のそれぞれに結合したポリオール(ジオールなど)の残基を有する1つ以上のジヒドロカルビルジカルボキシレートを含む1つ以上の化合物である。これらの化合物は、ポリオール末端処理ジヒドロカルビルジカルボキシレートと呼ばれることがある。それらのうちのあるものは、ジオール末端処理ジヒドロカルビルジカルボキシレートと呼ばれることがある。ジヒドロカルビルジカルボキシレートの各エステル基は、エステル交換されて、ヒドロカルビル基がジオールなどのポリオールと置き換わる。得られたポリオール末端処理ジヒドロカルビルジカルボキシレートは、末端ヒドロキシル基を有する。ポリオール末端処理ジヒドロカルビルジカルボキシレートは、式14に相当し得る;
[図:0001396278000007.jpg]
及び
ジオール末端処理ジヒドロカルビルジカルボキシレートは、式15に相当し得る;
[図:0001396278000008.jpg]
式中、R2、R3、及びCは、上文に記載したとおりである。
[0047] ポリエステルマクロマーは、ポリマー及び該ポリマーからの構造体の調製に有用な組成物中に使用することができる。組成物は、ポリエステルマクロマーを所望の構成成分とブレンドすることによって構築することができる。組成物は、ポリエステルマクロマーの調製において形成された化合物の混合物からなる、又は含むことができる。ポリエステルマクロマーの調製において形成された化合物の混合物に他の成分を添加して、ポリエステルマクロマーを含有するポリマーの調製又は該ポリマーもしくはポリエステルマクロマーから形成される構造体の調製に使用されるように設計された組成物を形成してもよい。一組成物は、i)本明細書に開示する複数のポリエステルマクロマー;ii)1つ以上のポリオール及び1つ以上の1,1-ジエステル-1-アルケンの残基を含有する1つ以上の多官能性モノマーであって、該多官能性モノマーのポリオールのヒドロキシル基の実質的にすべてが1,1-ジエステル-1-アルケンを含む。これらの成分のそれぞれは、上文で開示している。この組成物は、ポリエステルマクロマーが調整されるときに形成される反応混合物から採取することができる。得られた反応混合物は、蒸留などの分離プロセスに供して、過剰なより揮発性の物質種、例えば、アルコール、ポリオール、又は未反応のジヒドロカルビルジカルボキシレートなどの1つ以上を除去して、所望の構成成分濃度を実現することができる。列挙された化合物の1つ以上を添加して、所望の構成成分濃度を実現してもよい。・・・」
「[0053] ポリエステルマクロマー及びそれらを含有する組成物は、塩基性開始剤に暴露すると、重合させることができる。塩基性の基材の表面に塗布されると、ポリエステルマクロマーはアニオン重合を介して硬化する。ポリエステルマクロマー及びポリエステルマクロマーを含有する組成物は、重合活性剤として塩基性材料を含有する組成物に接触させれば、重合させることができる。重合活性剤及び重合活性剤を送達する方法は、Malofsky、US9,181,365(あらゆる目的のためのその全体が参照により本明細書に組み込まれている)に開示されている。重合活性剤は、塩基、塩基向上体、塩基創出体、又は塩基前駆体の少なくとも1つであってもよい。重合活性剤は、残塩基(9より大きいpH)、中程度の強塩基(8~9のpH)、又は(弱塩基性)弱塩基(7より大きく8までのpH)、又はそれらの組み合わせから選択される塩基性材料を含んでもよい。重合活性剤は、有機材料、無機材料、もしくは有機金属材料、又はそれらの組み合わせから選択される塩基性材料を含んでもよい。重合活性剤は、酢酸ナトリウム;酢酸カリウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、銅、及びコバルトの酸の塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリド、及びヒドロキシド;第一級、第二級、もしくは第三級のいずれかのアミン;アミド;ポリマーに結合した酸の塩;安息香酸塩;2,4-ペンタンジオネート塩;ソルビン酸塩;プロピオン酸塩;第二級脂肪族アミン;ピペリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、ジブチルアミン、モルホリン、ジエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミントリエチレンジアミン、N,N-ジメチルピペラジン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン;アミンと有機モノカルボン酸との塩;ピペリジンアセテート;低級モノカルボン酸の金属塩;酢酸銅(II)、酢酸第二銅一水和物、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、クロロ酢酸亜鉛、クロロ酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム;酸含有ポリマーの塩;ポリアクリル酸コポリマーの塩、又は塩基性を有する色素から選択される構成員の少なくとも1つであってもよい。ある種の実施形態では、重合活性剤は、ワックス中に封入されるか、又は化学的不活性化によって重合性組成物と不活性係合状態で準備される。」
「[0055] 開示するのは、第1の部分に本明細書に開示するとおりの1つ以上のポリエステルマクロマーを含有し、第2の部分にポリエステルマクロマーのアニオン重合を開始するのに十分な塩基性を含有する1つ以上の化合物を含有する組成物を含む組成物であって、2つの部分を組み合わせるとポリエステルマクロマーが硬化される組成物である。本明細書に開示する塩基性材料のいずれかを使用してもよい。塩基性を有する1つ以上の化合物は、1つ以上のアミン又はポリアミンであってもよい。塩基性を有する1つ以上の化合物は、1つ以上のポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミンであってもよい。」
「[0077] ・・・1つ以上のアニオン重合安定剤及び/又は有利基安定剤が組成物に添加されてもよい。アニオン重合安定剤は一般に、組成物又は成長しているポリマー鎖から求核体を捕捉する求電子化合物である。アニオン重合安定剤を使用すると、ポリマー鎖の追加的な伸長を終結させることができる。代表的なアニオン重合安定剤は酸であり、代表的な酸は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸などである。代表的な安定剤として、液相安定剤(例えば、メタンスルホン酸(「MSA」))及び気相安定剤(例えば、トリフルオロ酢酸(「TFA」))が挙げられる。・・・」
「[0080] ・・・1つ以上のポリエステルマクロマーを含有する組成物を塗布する前に、塩基性化合物を含有する組成物が、基材の表面に塗布されてもよい。塩基性化合物を含有する組成物は、1,1-ジエステル-1-アルケンに有用なアニオン重合阻害剤として、本明細書に開示する任意の化合物を含んでもよい。代表的な塩基性化合物として、アミン、ポリアミン、塩基性色素、又はカルボン酸塩が挙げられる。塩基性化合物を含有する組成物は、ポリアルキレンイミンを含んでもよい。・・・」
「[0090] 実施例3-ポリエステルマクロマーの調製
丸底フラスコに、DEMM-ペンタンジオールに官能性モノマー(142g、0.4mol)及びペンタンジオール末端処理マロン酸ジエチル(27.6g 0.1mol)、メチレンマロン酸ジエチル(70g、0.4mol)、ペンタンジオール(2.7g、0.025mol)、並びにDEMM-ペンタンジオール二官能性モノマーに基づいて重量パーセントのCALBリパーゼ酵素(10g)を入れる。この丸底フラスコを、45℃に予熱したロータリーエバポレーターに150mmHgの圧力で設置する。1時間後に、GCMSによって反応の完了を調べる()ペンタンジオール-二官能性モノマーの消失)。反応混合物をろ過して酵素を除去する。得られた溶液をGPCによって検査する。生成物の組成は、概して以下から構成される:60~75重量パーセントのポリエステルマクロマー、20~30重量パーセントのペンタンジオール-二官能性モノマー、0~10重量パーセントのDEMM。100ppmのMEHQ及び10ppmのMSAを最終生成物に添加する。MSAは、1重量パーセントのMSA:DEMM溶液から正確に量り取る。反応は、この反応式によって図示される:
[図:0001396278000009.jpg]
」
「[0092] 実施例6:コーティングの調製及びコーティングのテキスティング
ポリエステルマクロマーを含む多くのコーティングの特性を評価するために、Q-Panelのスチールパネルにコーティングを施した。20番メイヤーロッドを使用して、開始剤として機能する塩基性ポリマーアミンであらかじめ開始されたパネル上のコーティングを引き出す。塗布したコーティングをオーブン中で120℃で20~30分硬化させる。コーティングはその時間内に完全に硬化した。コーティングされたパネルは、多くの特性、ASTM D 3363による鉛筆硬度、ASTM D 523による光沢、ASTM D 7835による耐溶剤性、GMW 14829による柔軟性、及びGMW 16746によるパネルへのコーティングの接着性について試験される。試験した葉合を表1に示す。」
(イ)甲6に記載された発明
甲6には、次の発明が記載されている。
「物品が有するベースコートと、その上に付着されたポリエステルマクロマー組成物を重合させたコーティングであって、
ポリエステルマクロマーのコーティングは透明であって、
ポリエステルマクロマーは、1,1-ジエステル-1-アルケン、ジオール、ポリオール、及び/またはジヒドロカルビルジカルボキシレートから調整でき、
1,1-ジエステル-1-アルケンは、ハロ、アルキルチオ、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、シアノ、アシルオキシ、カルボキシ、またはエステルなどの置換基で置換されてもよく、
ポリエステルマクロマー組成物は、ポリエステルマクロマーを含有し、ポリエステルマクロマーのアニオン重合を開始するのに十分なポリアミンを含有する、コーティング。」(以下「甲6発明」という。)
(2)取消理由1
ア 甲1を主引用例とする進歩性
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「基材」は本件発明1の「基材」に相当し、以下同様に、「流延」することは「塗布」されることに、「ジエチルメチレンマロネート」は「1,1-活性化ビニル化合物」に、「ラミネート構造体」は「複数層硬化性組成物」に、それぞれ相当する。
甲1発明の「プライマーコート」は、基材側の層を形成するものであるから、本件発明1の「第1の硬化性組成物層」に相当する。
甲1発明の「重合性組成物」である「ジエチルメチレンマロネート」は、接着結合が形成されるために用いられ、ラミネート構造体において、上側の層である「膜」を形成するものであるから、甲1発明の「膜」は本件発明1の「第2の硬化性組成物層」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「基材の少なくとも一部にわたって塗布された第1の硬化性組成物層、および
前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって塗布された第2の硬化性組成物層を含む、複数層硬化性組成物。」
[相違点1]
本件発明1は、「前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、(1)(1a)ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、もしくはポリカルバメート、もしくはそれらの任意の組合せと、(1b)1,1-二活性化ビニル化合物、もしくはその複数官能性形態、もしくはそれらの組合せとのマイケル付加反応生成物の1つまたは複数を含む」のに対して、甲1発明は、「プライマーコート」が「プライマーであるDigiPrime 4431を、基材上にワイヤロッドを用いて流延し」て得られ、「膜」が「重合性組成物である、ジエチルメチレンマロネートをプライマー溶液の上面にロッドを用いて流延し」て得られたものである点。
b 判断
相違点1に係る本件発明1の発明特定事項に関して、本件特許の明細書には、次の記載がある。
「前述の通り、硬化性組成物は、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、またはポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せ、および、1,1-二活性化ビニル化合物、またはその複数官能性形態、またはそれらの組合せを含む。いかなる理論にも拘泥するものではないが、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態におけるビニル基が、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、および/もしくはポリカルバメート樹脂、または他の化合物(すなわち、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物)におけるヒドロキシル基、アミン基、メルカプト基、および/またはカルバメート基とのマイケル付加機序を介して反応し、それによって安定な共有結合連結を形成することができると考えられる。さらに、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、自己重合反応を受け、それによってポリマーを形成することができ、その重合反応生成物は、ヒドロキシル基、アミン基、メルカプト基、および/またはカルバメート基とのマイケル付加反応によって形成された連結を介して多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物に共有結合によって結合することができる。したがって、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物のための架橋剤/硬化剤として機能することができる。一部の例では、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物を架橋し、硬化させる、マイケル付加反応および重合反応の両方を含む複数の硬化機序を提供することができる。」(【0022】)
すなわち、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、「1,1-二活性化ビニル化合物、またはその複数官能性形態、またはそれらの組合せ」における「ビニル基」が、「ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、またはポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せ」における「ヒドロキシル基、アミン基、メルカプト基、および/またはカルバメート基」と「マイケル付加機序を介して反応」することによって、「安定な共有結合連結を形成」するとともに、「1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、自己重合反応を受け、それによってポリマーを形成」することによって、「マイケル付加反応および重合反応の両方を含む複数の硬化機序を提供する」という技術的意義を有するものである。
これに対して、甲1や提出された他の証拠には、相違点1に係る本件発明1の構成とすることについて、記載も示唆もされておらず、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
(イ)本件発明2~18について
本件発明2~18は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記アで検討したのと同じ理由により、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲3を主引用例とする進歩性
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「通常のスチール、ポリカーボネート、オーク材およびアルミニウム」は本件発明1の「基材」に相当し、以下同様に、「DEMM中に顔料分散体を含む表面コーティング」は「第1の硬化性組成物層」に、「DEMMのみまたは顔料含有DEMMのいずれかのコーティング」は「第2の硬化性組成物層」に、「多層コーティング」は「複数層硬化性組成物」に、それぞれ相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
「基材の少なくとも一部にわたって塗布された第1の硬化性組成物層、および
前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって塗布された第2の硬化性組成物層を含む、複数層硬化性組成物。」
[相違点2]
本件発明1は、「前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、(1)(1a)ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、もしくはポリカルバメート、もしくはそれらの任意の組合せと、(1b)1,1-二活性化ビニル化合物、もしくはその複数官能性形態、もしくはそれらの組合せとのマイケル付加反応生成物の1つまたは複数を含む」のに対して、甲3発明は、各コーティングが「DEMM中に顔料分散体を含む表面コーティング」、「DEMMのみまたは顔料含有DEMMのいずれかのコーティング」である点。
b 判断
相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、上記(2)ア(イ)と同様に、「1,1-二活性化ビニル化合物、またはその複数官能性形態、またはそれらの組合せ」における「ビニル基」が、「ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、またはポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せ」における「ヒドロキシル基、アミン基、メルカプト基、および/またはカルバメート基」と「マイケル付加機序を介して反応」することによって、「安定な共有結合連結を形成」するとともに、「1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、自己重合反応を受け、それによってポリマーを形成」することによって、「マイケル付加反応および重合反応の両方を含む複数の硬化機序を提供する」という技術的意義を有するものである。
これに対して、甲3や提出された他の証拠には、相違点2に係る本件発明1の構成とすることについて、記載も示唆もされておらず、甲3発明においてそのような構成とすることに動機付けがあるとはいえず、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
(イ)本件発明2~18について
本件発明2~18は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記アで検討したのと同じ理由により、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和4年12月1日に提出した意見書において、甲1及び甲3には、メチレンマロン酸ジエチル(DEMM)と1,6-ヘキサンジオール(HD)をエステル交換して得られる多官能性モノマー、および、メチレンマロン酸ジエチルのブレンドを含む重合性組成物が記載され(甲1の【0118】、甲3の【0142】)、上記重合性組成物は重合活性剤をさらに含むこと、上記重合活性剤として、「第1級、第2級または第3級のいずれかのアミン」や「トリエチレンアミン、N,N-ジメチルピペラジン」のような複数の窒素原子を含むポリアミンが記載されており(甲1の【0032】、甲3の【0032】)、甲1及び甲3には「1,1-二活性化ビニル化合物」と「ポリアミン」を含む組成物が記載されていること、及び活性化ビニル化合物とアミン化合物がマイケル付加反応することは周知技術(甲7の664ページ左欄8~9行、右欄3~10行、Scheme 1等)であり、マイケル付加反応と明記されていなくても、「1,1-二活性化ビニル化合物」と「ポリアミン」を含む組成物が開示されていれば、当該組成物がそれらのマイケル付加反応生成物を含むことは当業者に自明であることから、甲1及び甲3に基づいて、「1,1-二活性化ビニル化合物」と、「第1級、第2級または第3級のいずれかのアミン」や「トリエチレンアミン、N,N-ジメチルピペラジン」の重合活性剤とを含む重合性組成物を反応させてマイケル付加反応生成物を含むとすることは容易である旨の主張をしている(同意見書2ページ末行~4ページ1行)。
しかしながら、甲7には、ヘキシルアミンとアクリル酸メチルをマイケル型付加反応させることについては記載されているものの、本件発明1のように「マイケル付加反応および重合反応の両方を含む複数の硬化機序を提供する」ものではなく、甲1及び甲3が、「1,1-二活性化ビニル化合物」と、「第1級、第2級または第3級のいずれかのアミン」や「トリエチレンアミン、N,N-ジメチルピペラジン」の重合活性剤とを含む重合性組成物を反応させてマイケル付加反応生成物を含むものであるとすることはできない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)取消理由2(拡大先願)
ア 本件発明1について
本件発明1と甲6発明とを対比すると、甲6発明の「物品」は本件発明1の「基材」に相当し、以下同様に、「ベースコート」は「第1の硬化性組成物層」に、「ポリエステルマクロマー」は「第2の硬化性組成物層」に、「コーティング」は「複数層硬化性組成物」に、それぞれ相当する。
そうすると、本件発明1と甲6発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点3]
「基材の少なくとも一部にわたって塗布された第1の硬化性組成物層、および
前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって塗布された第2の硬化性組成物層を含む、複数層硬化性組成物。」
[相違点3]
本件発明1は、「前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層」が「(1)(1a)ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、もしくはポリカルバメート、もしくはそれらの任意の組合せと、(1b)1,1-二活性化ビニル化合物、もしくはその複数官能性形態、もしくはそれらの組合せとの付加反応生成物の1つまたは複数を含む」のに対して、甲6発明は、ベースコートとその上に付着されたポリエステルマクロマー組成物を重合させたものについて、「ポリエステルマクロマーは、1,1-ジエステル-1-アルケン、ジオール、ポリオール、及び/またはジヒドロカルビルジカルボキシレートから調整でき、1,1-ジエステル-1-アルケンは、ハロ、アルキルチオ、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、シアノ、アシルオキシ、カルボキシ、またはエステルなどの置換基で置換されてもよく、ポリエステルマクロマー組成物は、ポリエステルマクロマーを含有し、ポリエステルマクロマーのアニオン重合を開始するのに十分なポリアミンを含有する」点。
上記相違点3について検討する。
甲6において、「ポリアミン」は、「ポリエステルマクロマーのアニオン重合を開始する」ものであって、「ポリエステルマクロマー」とマイケル付加反応することは記載も示唆もされていないこと、また、提出された証拠からは、「ポリエステルマクロマーを含有し、ポリエステルマクロマーのアニオン重合を開始するのに十分なポリアミンを含有する」「ポリエステルマクロマー組成物」が、「ポリアミン」と「ポリエステルマクロマー組成物」とが「マイケル付加反応生成物」であることが周知であるともいえないことから、相違点3は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は甲6発明と同一でない。
イ 本件発明2~12、14~18について
本件発明2~12、14~18は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記アで検討したのと同じ理由により、甲6に記載された発明と同一でない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由1(新規性)
(1)申立人の主張
本件特許の請求項1~11、14、15、17~18に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。
本件特許の請求項1~11、14~18に係る発明は、甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。
(2)本件発明1について
上記第4の2(2)アで示したとおり、本件発明1と甲1に記載された発明とは相違しており、当該相違点は実質的なものであるから、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。
また、上記第4の2(3)アで示したとおり、本件発明1と甲3に記載された発明とは相違しており、当該相違点は実質的なものであるから、本件発明1は甲3に記載された発明ではない。
(3)本件発明2~12、14~18について
本件発明2~12、14~18は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したのと同じ理由により、甲1に記載された発明又は甲3に記載された発明ではない。
2 申立理由2(甲2を主引用例とする進歩性)
(1)申立人の主張
本件特許の請求項1~12、14、16~18に係る発明は、甲2(特表2015-517973号公報)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)甲2に記載された発明
甲2には、特に実施例1(【0163】~【0164】)に記載されたモノマーをベースとするコーティング(【0003】)に着目すると、次の発明が記載されている。
「ジエチルメチレンマロネート(DEMM)および1,6-ヘキサンジオール(HD)のエステル交換によって入手した、以下のモノマーをベースとするコーティング。
[図:0001396278000010.jpg]
」(以下「甲2発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 対比
甲2発明の「ジエチルメチレンマロネート(DEMM)および1,6-ヘキサンジオール(HD)のエステル交換によって入手した」、
[図:0001396278000011.jpg]
の「モノマーをベースとするコーティング」と本件発明1の「基材の少なくとも一部にわたって塗布された第1の硬化性組成物層、および前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって塗布された第2の硬化性組成物層を含み」、「前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、(1)(1a)ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、もしくはポリカルバメート、もしくはそれらの任意の組合せと、(1b)1,1-二活性化ビニル化合物、もしくはその複数官能性形態、もしくはそれらの組合せとのマイケル付加反応生成物の1つまたは複数を含む」「複数層硬化性組成物」とは、「硬化性組成物層を含む、硬化性組成物」の限りで一致する。
そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点4]
「硬化性組成物層を含む、硬化性組成物。」
[相違点4]
「硬化性組成物層を含む、硬化性組成物」に関して、本件発明1は、「基材の少なくとも一部にわたって塗布された第1の硬化性組成物層、および前記第1の硬化性組成物層の少なくとも一部にわたって塗布された第2の硬化性組成物層を含み」、「前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、(1)(1a)ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、もしくはポリカルバメート、もしくはそれらの任意の組合せと、(1b)1,1-二活性化ビニル化合物、もしくはその複数官能性形態、もしくはそれらの組合せとのマイケル付加反応生成物の1つまたは複数を含む」「複数層硬化性組成物」であるのに対して、甲2発明は、「ジエチルメチレンマロネート(DEMM)および1,6-ヘキサンジオール(HD)のエステル交換によって入手した」、
[図:0001396278000012.jpg]
の「モノマーをベースとするコーティング」である点。
イ 判断
相違点4に係る本件発明1の発明特定事項のうち、「前記第1の硬化性組成物層および/または前記第2の硬化性組成物層が、(1)(1a)ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、もしくはポリカルバメート、もしくはそれらの任意の組合せと、(1b)1,1-二活性化ビニル化合物、もしくはその複数官能性形態、もしくはそれらの組合せとのマイケル付加反応生成物の1つまたは複数を含む」事項について、上記第4の2(2)ア(イ)、2(3)ア(イ)で示したとおり、提出された証拠には記載も示唆もされていない。
そうすると、甲2発明において、相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
(4)本件発明2~12、14、16~18について
本件発明2~12、14、16~18は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(3)で検討したのと同じ理由により、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 申立理由3(サポート要件)
(1)申立人の主張
発明の詳細な説明の記載からは、請求項1~18に記載された範囲まで、発明の解決しようとする課題を解決できることを当業者が認識することができず、請求項1~18に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものではないため、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
ア 本件特許明細書の実施例においては、既にコーティングされた物質に硬化性組成物をコーティングした例のみが記載されるに過ぎず(実施例4、5、7)、「第1の硬化性組成物層」と「第2の硬化性組成物層」の「複数層硬化性組成物」としたものまでも、上記課題が解決できるとは認められない。
イ 第1の硬化性組成物層が本件請求項1の記載における(1)の付加反応生成物を含み、第2の硬化性組成物層が本件請求項1の記載における(1)の付加反応生成物を含まない場合においても、本件発明の課題が解決できることを認識することができない。
ウ ポリオールとして、官能基数とビニル基数が特定比である特定のアクリルポリオールを使用した場合に本件発明の課題が解決できたからといって、いずれのポリールを使用した場合までも本件発明の課題が解決できると認識することができない。
エ 「ジエチルメチレンマロネート」を使用した場合に本件発明の課題が解決できたからといって、全ての「1,1-二活性化ビニル化合物」を使用した場合までも本件発明の課題が解決できると認識することができない。
(2)本件発明が解決しようとする課題及び当該課題を解決するための手段について
本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、「低い硬化温度、新規な硬化機序、および/または改善されたコーティング特性によって特徴付けられる、複数層コーティングを含めたコーティングを形成するコーティング組成物を提供すること」(【0002】)である。
本件特許の発明の詳細な説明には、本件課題を解決するための手段に関して次の記載がある。
「【0022】
前述の通り、硬化性組成物は、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、またはポリカルバメート、またはそれらの任意の組合せ、および、1,1-二活性化ビニル化合物、またはその複数官能性形態、またはそれらの組合せを含む。いかなる理論にも拘泥するものではないが、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態におけるビニル基が、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、および/もしくはポリカルバメート樹脂、または他の化合物(すなわち、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物)におけるヒドロキシル基、アミン基、メルカプト基、および/またはカルバメート基とのマイケル付加機序を介して反応し、それによって安定な共有結合連結を形成することができると考えられる。さらに、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、自己重合反応を受け、それによってポリマーを形成することができ、その重合反応生成物は、ヒドロキシル基、アミン基、メルカプト基、および/またはカルバメート基とのマイケル付加反応によって形成された連結を介して多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物に共有結合によって結合することができる。したがって、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物のための架橋剤/硬化剤として機能することができる。一部の例では、1,1-二活性化ビニル化合物および/またはその複数官能性形態は、多官能性ポリマー樹脂または多官能性モノマー化合物を架橋し、硬化させる、マイケル付加反応および重合反応の両方を含む複数の硬化機序を提供することができる。」
「【0062】
一部の例では、第1のコーティング層および/または第2のコーティング層は、裸の基材または予め塗布されたコーティング(例えば、プライマーコーティング)の少なくとも一部にわたって、例えばスプレー、静電気スプレー、浸漬、ローリング、ブラッシング、電着塗装等の塗布技術を使用して塗布することができる。第1のコーティング層および第2のコーティング層は、塗布されると、脱水および/または硬化することができる。前述の通り、第1のコーティング層および第2のコーティング層の硬化は、中間のフラッシュ、乾燥、もしくは脱水ステップと共に順次(すなわち、第1のコーティング層が硬化した後に、第2のコーティング層が塗布される)もしくは同時に実施することができ、またはそれらのステップなしに実施することができる。例えば、第1のコーティング層を塗布し、脱水することができ、第2のコーティング層を、脱水した第1のコーティング層にわたって塗布することができ、第1および第2のコーティング層の両方を、焼き付けるか、またはそうでなければ処理して、複数層系を硬化させる。コーティング層の特別な硬化条件は、層を形成する硬化性組成物の化学的配合に少なくとも部分的に基づく。一部の例では、第1のコーティング層および/または第2のコーティング層は、周囲温度(約20℃~25℃)~500℃の範囲の温度、またはその範囲に包含される任意の部分範囲、例えば、周囲温度~200℃、周囲温度~150℃、周囲温度~140℃、周囲温度~130℃、周囲温度~120℃、周囲温度~100℃、周囲温度~90℃、周囲温度~80℃、周囲温度~60℃もしくは周囲温度~50℃で、独立に、または一緒に脱水および/または硬化することができる。」
発明の詳細な説明の上記記載を参照すると、複数層硬化性組成物についての本件課題を解決するための手段は、第1の硬化性組成物層および/または第2の硬化性組成物層が、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、もしくはポリカルバメート、もしくはそれらの任意の組合せと、1,1-二活性化ビニル化合物、もしくはその複数官能性形態、もしくはそれらの組合せとのマイケル付加反応生成物の1つまたは複数を含むことである。
(3)判断
ア 本件課題を解決するための手段は、上記(2)で示したとおりであるところ、本件発明は、当該手段を発明特定事項として備えているから、本件課題を解決できることが当業者であれば認識することができる。
よって、本件発明1~18は、発明の詳細な説明に記載したものである。
イ 申立人は、上記(1)ア~エの理由を挙げ、サポート要件を満たさない旨主張する。
しかし、上述のとおり、本件発明は、上記(2)の手段を発明特定事項として備えており、本件課題を解決できることが当業者であれば認識することができるから、上記(1)ア~エに係る事項を備えずとも、本件発明は、本件課題が解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
よって、申立人のサポート要件に係る主張は、いずれも採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700424