特許異議申立
2023-701155
架線具
- 審判番号
- 2023-701155
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-177181
- 登録番号
- 7267247
- 請求日
- 2023年10月31日
- 審決日
- 2024年01月18日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】未来のアグリ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人牛木国際特許事務所
- 【異議申立人】森山 涼子
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 有家 秀郎
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P1651.121-Y (A01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7267247号発明「架線具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7267247号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7267247号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、令和2年10月22日に出願され、令和5年4月21日にその特許権の設定登録がされ、同年5月1日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年10月31日に、特許異議申立人 森山 涼子(以下、「申立人」という。)より特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし3に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、各々を「本件発明1」等といい、請求項1ないし3に係る発明をまとめて「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の、請求項1ないし3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、申立人による分説を、便宜のため括弧書きで付した。
【請求項1】
(1A)弾性変形可能な1本のばね線材により形成された架線具であって、
(1B)電気柵の支柱に係止する係止部と、
(1C)前記係止部の前記支柱への着脱を操作する操作部と、
(1D)前記係止部から延設された延伸部と、
(1E)柵線を架線する架線部と、を有し、
(1F)前記操作部と前記延伸部の間に前記係止部が位置し、
(1G)前記係止部が前記支柱を挿通可能な円筒状に形成され、
(1H)前記係止部の内径が前記支柱の外径よりも僅かに小さく、
(1I)前記延伸部に複数の前記架線部が形成され、
(1J)前記操作部に少なくとも1つの前記架線部が形成され、
(1K)前記操作部が第1の操作部と第2の操作部を有し、
(1L)前記第1の操作部と前記第2の操作部を接近させるように操作することで前記係止部の内径を拡径可能であることを特徴とする架線具。
【請求項2】
(2)前記架線部が前記柵線を挿通可能な環形状を有ることを特徴とする請求項1に記載の架線具。
【請求項3】
(3)前記支柱に係止した状態で、全ての前記架線部が同一の高さに位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の架線具。
第3 証拠方法及び特許異議申立理由の概要
1 証拠方法
申立人が提示する証拠は、以下のとおりである。なお、以下では甲第1号証、甲第2号証等を、それぞれ「甲1」、「甲2」等という。
甲1: 特開2015-50966号公報
(平成27年3月19日公開)
甲2: 実願昭61-12290号(実開昭62-124151号)
のマイクロフィルム
(昭和62年8月6日公開)
甲3: 実願昭62-161253号(実開平1-67257号)
のマイクロフィルム
(平成1年4月28日公開)
甲4: 特開2014-90680号公報
(平成26年5月19日公開)
甲5: 実公昭51-6451号公報
(昭和51年2月21日公告)
甲6: 特開2002-315496号公報
(平成14年10月29日公開)
2 特許異議申立理由の概要
申立人が申立書において主張する申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)甲1を主たる証拠とした進歩性の欠如
本件発明1ないし3は、本件出願より前に公開された、甲1に記載された発明、甲2に記載された周知技術及び甲3に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1ないし3に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)甲2を主たる証拠とした進歩性の欠如
本件発明1ないし3は、本件出願より前に公開された、甲2に記載された発明、甲1に記載された発明、及び甲1、甲4ないし甲6に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1ないし3に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 証拠の記載等
(1)甲1
ア 記載及び図示
甲1には、次の記載及び図示がある(下線は、当審において付した。以下、同様。)。
(ア)「【0014】
図1(a)は本発明の第1の実施例の電気柵用の架線金具1を平面視したものであり、図1(b)は図1(a)に示した架線金具1を矢印A方向から見たものである。架線金具1は1本のバネ線材20を曲げ加工することによって形成されており、保持部21、引掛け部22及びバネ部23を備えている。バネ部23は保持部21と引掛け部22の間にあり、保持部21とバネ部23の間にある辺Hの長さの方が、引掛け部22とバネ部23の間にある辺hの長さよりも長い。即ち、バネ部23は、保持部21と引掛け部22の中間位置から引掛け部22側にオフセットされた位置にある。また、辺hと辺Hは一直線上に配置されても良いが、第1の実施例ではバネ部23を中心にして、辺hと辺Hとは鋭角をなしている。
【0015】
保持部21は電気柵を形成する導電ワイヤ(図示せず)を保持するためのものであり、辺Hの自由端にループ状に設けられている。保持部21はバネ線材20の巻始め部と巻終わり部との間には導電ワイヤを通すことが可能な隙間Sを開けて1回だけ周回させたループ状に形成されている。従って、導電ワイヤはその途中の部分を張設方向に対して横向きにしてこの隙間Sを通し、通した後で向きを張設方向に戻せば保持部21のループの中に挿通されて保持される。保持部21を形成するために、バネ線材20はどちらの向きに周回させても良い。引掛け部22は、辺hの自由端に設けられており、バネ線材20が保持部21側に直角に折り曲げられた後に、U字状に折り曲げられて形成される。バネ線材20をU字状に折り曲げる向きは上向きでも下向きでも構わないが、U字状に折り曲げられた部分の内側にバネ線材20が入るように折り曲げる。
【0016】
バネ部23は、バネ線材20を上下方向に隙間なく3周程度巻き、内側に円柱状空間Pが存在するようにして形成する。この時、円柱状空間Pの内径Dは、架線金具1のバネ部23に挿通するポールの直径よりも僅かに大きく形成する。架線金具1を取り付けるポールの直径が大きい時は、バネ部23に形成する円柱状空間Pの内径Dを大きくすれば良い。即ち、バネ部23は架線金具1を取り付けるポールの直径に合わせて形成することができる。また、バネ部23から辺hと辺Hを一直線上に配置しても良いが、辺hと辺Hとを接近させるために大きな力が必要になるので、第1の実施例ではバネ部23を中心にして、辺hと辺HとをV字状に配置している。なお、引掛け部22は、図1(c)に示すように、自由端部を更に折り曲げて、辺Hに係止させた後に外れ難くする外れ止め部26を設けても良い。
【0017】
図2(a)は本発明の第1の実施例の電気柵用の架線金具1の引掛け部22を保持部21側の辺Hに係止させた状態を平面視したものであり、図2(b)は図2(a)に示した架線金具1を矢印B方向から見たものである。この状態は、図1(a)、(b)に示した辺hが辺Hに近づけられ、辺hの先端部にある引掛け部22が辺Hに係止させられた状態を示すものである。引掛け部22が辺Hに係止させられると、辺hと辺Hはバネ線材20で構成されているので、図2(a)に示すように、湾曲した状態となる。また、この時のバネ部23の円柱状空間Pの内径dは、引掛け部22が辺Hに係止していない時のバネ部23の円柱状空間Pの内径Dに比べて小さくなる。実測の結果、引掛け部22の係止前の円柱状空間Pの内径Dが11mmの時に、引掛け部22の係止後の円柱状空間Pの内径dは10.5mmになった。このように、引掛け部22を辺Hに係止させると、バネ部23の円柱状空間Pの内径が縮むので、バネ部23が強固にポールに固定されるのである。バネ部23の円柱状空間Pの内径が縮んだ時に、バネ部23を強固にポールに固定するために、バネ部23におけるバネ線材20の巻き数は少なくとも2周巻いた方が良い。
【0018】
図3(a)は図1(a)、(b)に示した第1の実施例の架線金具1のパネ部23をポール30に取り付ける状態を示すものである。ポール30は予め電気柵を設置する領域に設置されていても、架線金具1を取り付けてから地面に設置しても良い。ポール30の先端部は地面に埋め込み易いようにテーパ状になっているものとする。また、ポール30は、架線金具1の保持部21に保持したワイヤの被覆が破れて電流が架線金具1に流れた場合でも、電流が地面に流れないように絶縁部材で作られている。架線金具1は、引掛け部22を辺Hに係止しない状態で、バネ部23の円柱状空間Pをポール30に挿通する。そして、架線金具1がポール30への取り付け位置まで来たら、引掛け部22を辺Hに係止すると、バネ部23がポール30に強固に固着し、図3(b)に示す状態になる。この状態で、保持部21に電気柵のワイヤを前述のようにして挿通することができる。」
(イ)「【0028】
図6(c)は本発明の第5の実施例の架線金具5の構造及びポール30への取付状態を示すものである。第5の実施例の架線金具5は、第1の実施例の架線金具1の保持部21の先の水平方向の位置に、2つ目と3つ目の保持部21が設けられた構造をしている。よって、第5の実施例の架線金具5では、ポール30に水平方向に平行な3本のワイヤを取り付けることができる。
【0029】
図6(d)は本発明の第6の実施例の架線金具6の構造及びポール30への取付状態を示すものである。第6の実施例の架線金具6は、第1の実施例の架線金具1の保持部21の先が斜め下方向に延長され、その延長部はポール30を超えた位置まで延長されて、その先に2つ目の保持部21が設けられた構造をしている。2つ目の保持部21は、架線金具6のポール30への取り付け位置とポール30を挟んで下側に設けられている。よって、第6の実施例の架線金具6では、ポール30の内側と外側にそれぞれ取付高さの異なる2本のワイヤを取り付けることができる。
【0030】
図6(e)は本発明の第7の実施例の架線金具7の構造及びポール30への取付状態を示すものである。第7の実施例の架線金具7は第6の実施例の架線金具6の変形実施例であり、1つ目の保持部21から斜め下方向に延長されたバネ線材のポール30との交差部分にループ状の位置決め部24が設けられた構造をしている。位置決め部24のループの内径はポール30の直径より大きく形成しておき、第7の実施例の架線金具7のバネ部23をポール30に挿通する前にポール30に挿通すれば良い。第7の実施例の架線金具7に設けられた位置決め部24により、架線金具7をポール30に取り付けた後に、2番目の保持部21が大きく動かないようにすることができる。」
(ウ)【図1】(a)
「
[図:0001406758000001.jpg]
」
(エ)【図2】(a)
「
[図:0001406758000002.jpg]
」
(オ)【図3】(a)及び(b)
「
[図:0001406758000003.jpg]
」
(カ)【図6】(c)
「
[図:0001406758000004.jpg]
」
(キ)【図6】(e)
「
[図:0001406758000005.jpg]
」
イ 看取される事項
上記段落【0014】、【0028】-【0030】の記載を踏まえると、上記【図6】(c)及び【図6】(e)より、辺Hのバネ線材20を延長して、1つ目の保持部21の先の構成を設ける様子が、看取される。
ウ 記載された発明
上記ア及びイより、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると、認められる。
<甲1発明>
電気柵用の架線金具1であって、
架線金具1は1本のバネ線材20を曲げ加工することによって形成されており、保持部21、引掛け部22及びバネ部23を備えて、保持部21とバネ部23の間にある辺Hの長さの方が、引掛け部22とバネ部23の間にある辺hの長さよりも長く、
保持部21は電気柵を形成する導電ワイヤを保持するためのものであり、辺Hにループ状に設けられており、
引掛け部22は、辺hの自由端に設けられ、U字状に折り曲げられた部分の内側にバネ線材20が入るように折り曲げられており、
バネ部23は、バネ線材20を巻き、内側の円柱状空間Pの内径Dを、バネ部23に挿通するポールの直径よりも僅かに大きく形成し、
辺hが辺Hに近づけられ、辺hの先端部にある引掛け部22が辺Hに係止させられると、辺hと辺Hはバネ線材20で構成されているので湾曲した状態となり、バネ部23の円柱状空間Pの内径dは、引掛け部22が辺Hに係止していない時のバネ部23の円柱状空間Pの内径Dに比べて小さくなって、バネ部23が強固にポールに固定され、
辺Hのバネ線材20を延長して、1つ目の保持部21の先の水平方向の位置に、2つ目と3つ目の保持部21を設けてもよく、
辺Hのバネ線材20を延長して、1つ目の保持部21から斜め下方向に延長されたバネ線材のポールとの交差部分にループ状の位置決め部24を設け、ポールを挟んで下側に設けられている2番目の保持部21が大きく動かないようにしてもよい、
架線金具1。
(2)甲2
ア 記載及び図示
甲2には、次の記載及び図示がある。
(ア)明細書第4頁第8行~同頁第15行
「〔問題点を解決するための手段〕
本考案の目的は、前記従来の電気牧柵を形成する際の支柱とこれに架線するワイヤとの間の問題点を解消し、架線の架け渡しが容易でしかもワイヤがしっかりと支柱に固定でき、しかも架線の架設位置を容易に変更できると共に、支柱の強度を弱めることのない優れた牧柵用架線具を提供することである。」
(イ)明細書第5頁第5行~第6頁最終行
「第1図(a),(b)は本考案の牧柵用架線具の一実施例の構成を示す平面図および側面図である。
この実施例の牧柵用架線具10は、ばね鋼等の所定長さの弾性材料の線条を加工して作られるものであり、線条の中央部をらせん状に複数回巻いて形成される胴部11と、前記線条の両端部を胴部11からその側方に突出させて形成される腕部12とから構成されている。そして、前記腕部12には線条が少なくとも半回巻かれて形成される輪穴13が設けられており、この輪穴13内に牧柵に使用するワイヤが挿通されるようになっている。
この実施例では前記腕部12の一つ、例えば前記らせんの巻き始め側のものは胴部11の側方に突出した後に湾曲され、その先端部はらせんの巻き終わり側に位置するように形成されている。また、前記腕部12のもう一つはらせんの巻き終わり側から胴部11の側方に突出した後に湾曲され、その先端部がらせんの巻き始め側に位置するように形成されている。そして、湾曲された腕部12により作られる二つの輪穴13同士は、所定角度を以て対向した位置にある。
更に、この実施例の牧柵用架線具10は、二つの腕部12を外側から内側に向かって付勢すると、胴部11のらせんが捻じられて胴部11の内径が拡がり、腕部12の付勢を解除すると胴部11の内径が縮まって元の径に戻る。従って、この牧柵用架線具10を支柱に取り付ける時は、腕部12を付勢しながら内径の拡がった胴部11を支柱に通し、取り付けたい位置で腕部12の付勢を解除すれば、牧柵用架線具10はその位置で支柱に固定される。
以上のように構成されたこの実施例の牧柵用架線具10は、第2図に示すように支柱14に取り付け、腕部12の二つの輪穴13に牧柵のワイヤWを挿通すれば、ワイヤWが支柱に保持される。」
(ウ)第1図(a)
「
[図:0001406758000006.jpg]
」
(エ)第1図(b)
「
[図:0001406758000007.jpg]
」
(オ)第2図
「
[図:0001406758000008.jpg]
」
イ 看取される事項
上記ア(イ)の記載を踏まえると、上記第1図(a)、第1図(b)及び第2図より、牧柵用架線具10は、1本の線条からなる様子が、看取される。
ウ 記載された発明
上記ア及びイより、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると、認められる。
<甲2発明>
電気牧柵を形成する牧柵用架線具10であって、
牧柵用架線具10は、ばね鋼等の所定長さの弾性材料の線条を加工して作られる、1本の線条からなり、
線条の中央部をらせん状に複数回巻いて形成される胴部11と、前記線条の両端部を胴部11からその側方に突出させて形成される腕部12とから構成され、
腕部12には線条が巻かれて形成される輪穴13が設けられ、この輪穴13内に牧柵に使用するワイヤが挿通されるようになっており、
腕部12の一つ、前記らせんの巻き始め側のものは胴部11の側方に突出した後に湾曲され、その先端部はらせんの巻き終わり側に位置するように形成され、腕部12のもう一つはらせんの巻き終わり側から胴部11の側方に突出した後に湾曲され、その先端部がらせんの巻き始め側に位置するように形成され、湾曲された腕部12により作られる二つの輪穴13同士は、所定角度を以て対向した位置にあり、
二つの腕部12を外側から内側に向かって付勢すると、胴部11のらせんが捻じられて胴部11の内径が拡がり、腕部12の付勢を解除すると胴部11の内径が縮まって元の径に戻り、牧柵用架線具10を支柱に取り付ける時は、腕部12を付勢しながら内径の拡がった胴部11を支柱に通し、取り付けたい位置で腕部12の付勢を解除すれば、牧柵用架線具10はその位置で支柱に固定される、
牧柵用架線具10。
(3)甲3
甲3には、次の記載がある。
明細書第5頁第8行~同頁第16行
「金具12はワイヤーが支持出来ればどの様なものでも構わないが実願61-012290に見られるような金具12が適当である。これは所定長さの弾性材料製線条からなり、螺旋状に複数回まかれた胴部31と、この胴部の両端から側方に突出する腕部32であって、ワイヤー挿通可能な輪穴33を有する腕部32とを備えていることを特徴とするもので、ワイヤーの取付けが極めて容易である。」
(4)甲4
甲4には、次の図示がある。
【図10】
「
[図:0001406758000009.jpg]
」
(5)甲5
甲5には、次の図示がある。
ア 第1図
「
[図:0001406758000010.jpg]
」
イ 第3図
「
[図:0001406758000011.jpg]
」
ウ 第4図
「
[図:0001406758000012.jpg]
」
(6)甲6
甲6には、次の図示がある。
【図1】
「
[図:0001406758000013.jpg]
」
2 甲1を主たる証拠とした進歩性の欠如に係る特許異議申立理由1(上記第3の2(1))について
(1)本件発明1について
ア 甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明において、「電気柵用の架線金具1」は、本件発明1において、「架線具」に、相当する。
甲1発明において、「架線金具1」が「1本のバネ線材20を曲げ加工することによって形成されて」いる構成は、本件発明1において、「架線具」が「弾性変形可能な1本のばね線材により形成され」た、構成(1A)に、相当する。
甲1発明において、「電気柵用の架線金具1」の「バネ部23」が固定される「ポール」は、本件発明1において、「電気柵の支柱」に、相当する。
甲1発明において、「架線金具1」が「バネ部23」を備え、「バネ部23」に「ポール」が「挿通」されて「強固にポールに固定され」る構成は、本件発明1において、「架線具」が「電気柵の支柱に係止する係止部」を有する、構成(1B)に、相当する。
甲1発明において、「架線金具1」が有する「辺hの自由端に設けられ」た「引掛け部22」は、「辺Hに係止させられる」と「バネ部23の円柱状空間Pの内径dは、引掛け部22が辺Hに係止していない時のバネ部23の円柱状空間Pの内径Dに比べて小さくなって、バネ部23が強固にポールに固定され」る一方、「引掛け部22が辺Hに係止していない時」には「バネ部23の円柱状空間Pの内径」が「ポールの直径よりも僅かに大きく形成」された「内径D」となり、「バネ部23」を「ポール」から取り外せることが明らかであることを踏まえると、本件発明1において、「架線具」が「前記係止部の前記支柱への着脱を操作する操作部」を有する、構成(1C)に、相当する。
甲1発明において、「架線金具1」が「保持部21とバネ部23の間にある辺H」を有する構成は、「保持部21とバネ部23の間にある辺H」が「バネ部23」から伸びていることが明らかであることを踏まえると、本件発明1において、「架線具」が「前記係止部から延設された延伸部」を有する、構成(1D)に、相当する。
甲1発明において、「架線金具1」が「保持部21」を備え、「保持部21は電気柵を形成する導電ワイヤを保持するためのもので」ある構成は、本件発明1において、「架線具」が「柵線を架線する架線部」を有する、構成(1E)に、相当する。
甲1発明において、「バネ部23は、バネ線材20を巻き、内側の円柱状空間Pの内径Dを、バネ部23に挿通するポールの直径よりも僅かに大きく形成」している構成は、本件発明1において、「前記係止部が前記支柱を挿通可能な円筒状に形成され」ている、構成(1G)に、相当する。
甲1発明において、「辺Hのバネ線材20を延長して、1つ目の保持部21の先の水平方向の位置に、2つ目と3つ目の保持部21を設けてもよく」、「辺Hのバネ線材20を延長して、1つ目の保持部21から斜め下方向に延長されたバネ線材」に「2番目の保持部21」を設けてよい構成は、本件発明1において、「前記延伸部に複数の前記架線部が形成され」る、構成(1I)に、相当する。
以上を整理すると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致する。
「(1A)弾性変形可能な1本のばね線材により形成された架線具であって、
(1B)電気柵の支柱に係止する係止部と、
(1C)前記係止部の前記支柱への着脱を操作する操作部と、
(1D)前記係止部から延設された延伸部と、
(1E)柵線を架線する架線部と、を有し、
(1G)前記係止部が前記支柱を挿通可能な円筒状に形成され、
(1I)前記延伸部に複数の前記架線部が形成される、
架線具。」
そして、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
「弾性変形可能な1本のばね線材により形成された架線具」に関し、
本件発明1においては、
「(1F)前記操作部と前記延伸部の間に前記係止部が位置し、
(1H)前記係止部の内径が前記支柱の外径よりも僅かに小さく、
(1J)前記操作部に少なくとも1つの前記架線部が形成され、
(1K)前記操作部が第1の操作部と第2の操作部を有し、
(1L)前記第1の操作部と前記第2の操作部を接近させるように操作することで前記係止部の内径を拡径可能である」
のに対し、
甲1発明においては、
(甲1f)「引掛け部22が辺Hに係止させられると、辺hと辺Hはバネ線材20で構成されているので湾曲した状態」となって「バネ部23の円柱状空間Pの内径」が「小さく」なるから、「辺H」の「湾曲した状態」となる部分は「バネ部23」に対して「引掛け部22」と同じ側にあって、「引掛け部22」と「辺H」との間に「バネ部23」が位置することにならず、
(甲1h)「バネ部23」の「内側の円柱状空間Pの内径D」は、「バネ部23に挿通するポールの直径よりも僅かに大きく形成」されており、
(甲1j)「引掛け部22」には「保持部21」が形成されておらず、
(甲1kl)「引掛け部22」は「辺hの自由端」が「U字状に折り曲げられた」ものであり、「引掛け部22が辺Hに係止させられる」と「バネ部23の円柱状空間Pの内径」は「小さく」なる、
点。
イ 相違点についての判断
上記相違点1について、判断する。
(ア)複数の相違点に分断して判断することの可否
甲1発明において、上記(甲1f)、(甲1h)、(甲1j)、(甲1kl)に係る構成は、「1本のバネ線材20を曲げ加工することによって形成」した「架線金具1」において、「引掛け部22」を「辺Hに係止」すると「バネ部23」の「内径」が「小さく」なる、バネ線材の弾性変形の利用の仕方と、密接に関連している。
また、本件発明1において、上記(1F)、(1H)、(1J)、(1K)、(1L)に係る構成は、「弾性変形可能な1本のばね線材により形成された架線具」において、「係止部の内径」を「支柱の外径よりも僅かに小さく」し、「前記第1の操作部と前記第2の操作部を接近させるように操作することで前記係止部の内径を拡径可能」とする、ばね線材の弾性変形の利用の仕方と、密接に関連している。
そのため、上記相違点1は、複数の相違点に分断して判断されるべきものではなく、一体の相違点として判断されるべきものである。
(イ)甲2発明に基づく容易想到性
甲2には、上記1(2)ウに認定した甲2発明が記載されている。
甲2発明は、後記3(1)アに対比するとおり、上記相違点1に係る本件発明1の構成のうち、構成(1H)、構成(1J)、構成(1K)及び構成(1L)に相当する構成を有している。
しかしながら、甲2発明が有する、本件発明1の構成(1H)、(1J)、(1K)及び(1L)に相当する構成は、「弾性材料」の「1本の線条」について、「二つの腕部12を外側から内側に向かって付勢すると、胴部11のらせんが捻じられて胴部11の内径が拡がり、腕部12の付勢を解除すると胴部11の内径が縮まって元の径に戻」る構成と密接に関連しているから、甲1発明において、「1本のバネ線材20」について、「引掛け部22が辺Hに係止させられる」と「バネ部23の円柱状空間Pの内径」は「小さく」なる構成とは、線材(線条)の弾性変形の利用の仕方が異なっている。
そして、甲1発明において、「引掛け部22が辺Hに係止させられる」と「バネ部23の円柱状空間Pの内径」は「小さく」なる、「バネ線材20」の弾性変形の利用の仕方を離れて、線材(線条)の弾性変形の利用の仕方が異なる甲2発明の構成を、一部取り出して適用する動機付けはない。
また、甲1発明において、甲2発明の構成を一部取りだして適用することは、甲1及び甲2に、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明において、上記甲2発明を適用し、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至ることは、当業者にとって想到容易ではない。
(ウ)さらに甲3の記載を考慮した容易想到性
甲3には、上記1(3)に摘記した記載があるが、言及する「実願61-012290」(当審注;「実願昭61-012290号」の誤記と認める)が示す甲2以上の記載はないから、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至ることが、示唆されるものではない。
したがって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、甲2発明、及び甲3に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲1発明において、甲2発明及び甲3に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に発明できたものではない。
(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
そして、上記(1)において示したとおり、本件発明1は、甲1発明において、甲2発明及び甲3に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、本件発明1の構成を有する本件発明2及び3は、甲1発明において、甲2発明及び甲3に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に発明できたものではない。
(3)申立人の主張について
ア 本件発明1と甲1発明との相違点について
(ア)申立人の主張
申立人は申立書において、甲1の【図6】(c)及び【図6】(e)を示し、甲1には本件発明1の構成(1F)が開示されているとして、本件発明1と甲1に記載された発明との相違点は、本件発明1における構成(1H)、(1J)、(1K)及び(1L)である旨を主張している(申立書第10頁の○10(当審注;○の中に数字を示す。以下、同様)及び○11、第11頁最終行~第12頁第9行、同頁下から3行~第13頁第7行、第26頁第14行~第23行)。
(イ)上記主張についての判断
申立人が言及する【図6】(c)及び【図6】(e)を考慮しても、「引掛け部22が辺Hに係止させられると、辺hと辺Hはバネ線材20で構成されているので湾曲した状態」となって「バネ部23の円柱状空間Pの内径」が「小さく」なるという、甲1発明における「バネ線材20」の弾性の利用の仕方が変わるものではない。
そして、【図6】(e)のように、「辺Hのバネ線材20を延長」して、「2番目の保持部21」が「ポールを挟んで下側」に配置される場合であっても、「辺H」のうち「引掛け部22」に「係止」されて「湾曲した状態」となる部分である、「バネ部23」から伸びる部分は、「バネ部23」に対して「引掛け部22」と同じ側にあることとなる。
そのため、甲1発明において、「辺H」は、「バネ部23」から伸びる部分が「引掛け部22」と同じ側に配置され、「辺H」を延長した一部が「ポールを挟んで」配置される場合にも、「バネ部23」から伸びる部分としては「バネ部23」の両側に配置されることとなる。
したがって、本件発明1において、構成(1D)より「延伸部」について「前記係止部から延設された延伸部」と特定されていることを踏まえると、甲1発明は、本件発明1において「前記操作部と前記延伸部との間に前記係止部が位置」する構成(1F)に相当する構成を有するものではない。
なお、【図6】(e)において、「辺Hのバネ線材20を延長」した部分のうち、「ポールを挟んで」配置される「2番目の保持部21」の部分のみを取り出すと、当該取り出した「ポールを挟んで」配置される部分は、「バネ部材23」に対して、「引掛け部22」と反対側に位置している。
しかしながら、「辺Hのバネ線材20を延長」した部分のうち、「ポールを挟んで」配置される部分は、辺Hのうち「引掛け部22が辺Hに係止させられると、・・・湾曲した状態」となる「バネ部材23」から伸びた部分を除いた部分であるから、本件発明1において、「前記係止部から延設された延伸部」という構成(1D)を満たす「前記延伸部」には、相当しない。
そのため、【図6】(e)において、「辺Hのバネ線材20を延長」した部分のうち、「ポールを挟んで」配置される「2番目の保持部21」の部分のみを取り出して着目したところで、甲1発明が、本件発明1において「前記操作部と前記延伸部との間に前記係止部が位置」する構成(1F)に相当する構成を有することにはならない。
本件発明1と甲1発明との、その余の構成についての対比は、上記(1)アに示したとおりである。
よって、本件発明1と甲1発明との相違点は、上記(1)アに示した相違点1のとおり認定されるべきであり、上記申立人の主張を考慮しても、上記相違点1の認定を変更すべき事情は見いだせない。
イ 相違点の容易想到性について
(ア)申立人の主張
申立人は申立書において、本件発明1と甲1に記載された発明との相違点は、本件発明1における構成(1H)、(1J)、(1K)及び(1L)であるとして、当該相違点に係る構成は、甲1発明に甲2及び甲3に記載される周知技術を適用すれば、想到容易である旨を、主張している(申立書第26頁第14行~第27頁第20行)。
(イ)上記主張についての判断
上記ア(イ)に示したとおり、本件発明1と甲1発明との相違点は、上記(1)アに示した相違点1のとおり認定されるべきである。
そして、相違点1の容易想到性については、上記(1)イに判断したとおりである。
したがって、上記申立人の主張を考慮しても、相違点1の容易想到性について、上記(1)イの判断を変更すべき事情は見いだせない。
3 甲2を主たる証拠とした進歩性欠如に係る特許異議申立理由2(上記第3の2(2))について
(1)本件発明1について
ア 甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明において、「電気牧柵を形成する牧柵用架線具10」は、本件発明1において、「架線具」に、相当する。
甲2発明において、「牧柵用架線具10」が、「ばね鋼等の所定長さの弾性材料の線条を加工して作られる、1本の線条からなる」構成は、本件発明1において、「架線具」が「弾性変形可能な1本のばね線材により形成され」る、構成(1A)に、相当する。
甲2発明において、「牧柵用架線具10」が「電気牧柵を形成する」ものであり、「線条の中央部をらせん状に複数回巻いて形成される胴部11」を有し、「牧柵用架線具10を支柱に取り付ける時は、腕部12を付勢しながら内径の拡がった胴部11を支柱に通し、取り付けたい位置で腕部12の付勢を解除すれば、牧柵用架線具10はその位置で支柱に固定される」ものである構成は、本件発明1において、「架線具」が「電気柵の支柱に係止する係止部」を有する構成(1B)、及び、「前記係止部が前記支柱を挿通可能な円筒状に形成され」る構成(1G)に、相当する。
甲2発明において、「架線具」が「前記線条の両端部を胴部11からその側方に突出させて形成される腕部12」を有し、「牧柵用架線具10を支柱に取り付ける時は、腕部12を付勢しながら内径の拡がった胴部11を支柱に通し、取り付けたい位置で腕部12の付勢を解除すれば、牧柵用架線具10はその位置で支柱に固定される」構成は、「腕部12を付勢」すれば「牧柵用架線具10」を「支柱」から外すことも可能であることが明らかであることを踏まえると、本件発明1において、「架線具」が「前記係止部の前記支柱への着脱を操作する操作部」を有する、構成(1C)に、相当する。
甲2発明において、「牧柵用架線具10」が「腕部12」を有し、「腕部12には線条が巻かれて形成される輪穴13が設けられ、この輪穴13内に牧柵に使用するワイヤが挿通されるようになって」いる構成は、「腕部12」が「付勢」または「付勢の解除」という操作が行われる部材であることを踏まえると、本件発明1において、「架線具」が「柵線を架線する架線部」を有する構成(1E)、及び、「前記操作部に少なくとも1つの前記架線部が形成され」る構成(1J)に、相当する。
甲2発明において、「二つの腕部12を外側から内側に向かって付勢すると、胴部11のらせんが捻じられて胴部11の内径が拡がり、腕部12の付勢を解除すると胴部11の内径が縮まって元の径に戻」る構成は、本件発明1において、「前記操作部が第1の操作部と第2の操作部を有」する構成(1K)、及び、「前記第1の操作部と前記第2の操作部を接近させるように操作することで前記係止部の内径を拡径可能」である構成(1L)に、相当する。
甲2発明において、「腕部12の付勢を解除すると胴部11の内径が縮まって元の径に戻」る「胴部11の内径」の「元の径」が、「取り付けたい位置で腕部12の付勢を解除すれば、牧柵用架線具10はその位置で支柱に固定される」ことから、「支柱」の外径より若干小さいことが明らかである構成は、本件発明1において、「前記係止部の内径が前記支柱の外径よりも僅かに小さ」い、構成(1H)に、相当する。
以上を整理すると、本件発明1と甲2発明とは、次の点で一致する。
「(1A)弾性変形可能な1本のばね線材により形成された架線具であって、
(1B)電気柵の支柱に係止する係止部と、
(1C)前記係止部の前記支柱への着脱を操作する操作部と、
(1E)柵線を架線する架線部と、を有し、
(1G)前記係止部が前記支柱を挿通可能な円筒状に形成され、
(1H)前記係止部の内径が前記支柱の外径よりも僅かに小さく、
(1J)前記操作部に少なくとも1つの前記架線部が形成され、
(1K)前記操作部が第1の操作部と第2の操作部を有し、
(1L)前記第1の操作部と前記第2の操作部を接近させるように操作することで前記係止部の内径を拡径可能である、
架線具。」
そして、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で相違する。
<相違点A>
「弾性変形可能な1本のばね線材により形成された架線具」に関し、
本件発明1においては、
「(1D)前記係止部から延設された延伸部」
を有し、
「(1F)前記操作部と前記延伸部の間に前記係止部が位置し、
(1I)前記延伸部に複数の前記架線部が形成され」
るのに対し、
甲2発明においては、
(甲2dfi)「線条の中央部」の「胴部11」と、「付勢」の操作に用いられる「線条の両端部」の「腕部12」とから構成されており、「腕部12」の他に「胴部11」から延設された部材がなく、「胴部11」から延設された部材と「腕部12」の間に「胴部」が位置するものではなく、「胴部11」から延設された部材に複数の「輪穴13」が形成されていない
点。
イ 相違点についての判断
上記相違点Aについて、判断する。
(ア)複数の相違点に分断して判断することの可否
甲2発明において、上記(甲2dfi)に係る構成は、「牧柵用架線具10」が「ばね鋼等の所定長さの弾性材料の線条を加工して作られる、1本の線条」からなり、「前記線条の両端部を胴部11からその側方に突出させて形成される腕部12」を設け、「二つの腕部12を外側から内側に向かって付勢すると、胴部11のらせんが捻じられて胴部11の内径が拡がり、腕部12の付勢を解除すると胴部11の内径が縮まって元の径に戻」るようにした、「弾性材料」からなる「1本の線条」に関する構成として、相互に密接に関連している。
また、本件発明1において、上記(1D)、(1F)、(1I)に係る構成は、「弾性変形可能な1本のばね線材により形成された架線具」において、「1本のばね部材」に関する構成として、相互に密接に関連している。
そのため、上記相違点Aは、複数の相違点に分断して判断されるべきものではなく、一体の相違点として判断されるべきものである。
(イ)甲1発明に基づく容易想到性
甲1には、上記1(1)ウに認定した甲1発明が記載されている。
甲1発明は、上記2(1)アに対比したとおり、上記相違点Aに係る本件発明1の構成のうち、構成(1D)及び構成(1I)に相当する構成を有している。
しかしながら、甲1発明が有する、本件発明1の構成(1D)及び構成(1I)に相当する構成は、「1本のバネ線材20を曲げ加工することによって形成」した「架線金具1」において、「辺hの自由端に設けられ、U字状に折り曲げられた部分」である「引掛け部22」が、「辺hの長さよりも長」く延びる「辺H」に「係止させられると、辺hと辺Hはバネ線材20で構成されているので湾曲した状態となり、バネ部23の円柱状空間Pの内径」が「小さく」なるというバネ線材の弾性変形の利用の仕方のもとで、「引掛け部22」が係止されて「湾曲した状態」となる箇所より先の「辺H」について、延長したり「保持部21」を複数設ける自由度が高いことと、密接に関連している。
これに対して、甲2発明は、「牧柵用架線具10」を構成する「1本の線条」の、「両端部を胴部11からその側方に突出させて形成される腕部12」として、「二つの腕部12を外側から内側に向かって付勢すると、胴部11のらせんが捻じられて胴部11の内径が拡がり、腕部12の付勢を解除すると胴部11の内径が縮まって元の径に戻」るようにしたものであるから、甲1発明において、「引掛け部22」を「辺H」に「係止」することで「バネ部23の円柱状空間Pの内径」を「小さく」する構成とは、線条の弾性変形の利用の仕方、及び、線条の両端部の構成が、異なっている。
そして、甲2発明において、甲1発明の構成を一部取り出して適用する動機付けはない。
また、甲2発明において、甲1発明の構成を一部取り出して適用することは、甲1及び甲2に記載も示唆もされていない。
したがって、甲2発明において、上記甲1発明を適用し、上記相違点Aに係る本件発明1の構成に至ることは、当業者にとって想到容易ではない。
(ウ)さらに甲4ないし甲6の記載を考慮した容易想到性
甲4ないし甲6には、上記1(4)ないし(6)に示した事項が記載されているが、いずれも弾性材料の1本の線条に関する構成を示すものではなく、甲2発明において、上記相違点Aに係る本件発明1の構成とすることを示唆するものではない。
したがって、甲2発明において、上記相違点Aに係る本件発明1の構成とすることは、甲1発明、及び甲4ないし甲6に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲2発明において、甲1発明、及び甲4ないし甲6に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に発明できたものではない。
(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
そして、上記(1)示したとおり、本件発明1は、甲2発明において、甲1発明及び甲4ないし甲6に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、本件発明1の構成を有する本件発明2及び3は、甲2発明において、甲1発明、及び甲4ないし甲6に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に発明できたものではない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人の主張
申立人は申立書において、本件発明1と甲2発明との相違点は、本件発明1の構成(1D)及び構成(1I)に係る相違点2、及び、本件発明1の構成(1F)に係る相違点3という、2つの相違点である旨を主張している(申立書第27頁第21行~第28頁第2行)。
そして、申立人は、相違点2に係る構成は、甲1、及び甲4ないし甲6に示される周知技術であるから、想到容易である旨を主張している(申立書第28頁第3行~第10行)。
また、申立人は、相違点3に係る構成は、甲1に記載される構成と甲4ないし甲6に示される周知技術とに基づいて、想到容易である旨を主張している(申立書第28頁第11行~第20行)。
イ 上記主張についての判断
上記(1)イ(ア)に示したとおり、本件発明1と甲2発明との相違点Aは、一体の相違点として判断されるべきものである。
そして、甲1発明、及び甲4ないし甲6に記載される事項に基づいた、相違点Aの容易想到性については、上記(1)イ(イ)(ウ)に判断したとおりである。
したがって、上記申立人の主張を考慮しても、相違点Aの容易想到性について、上記(1)イの判断を変更すべき事情は見いだせない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし3に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701155