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特許異議申立

2022-701066

核酸分析装置

審判番号
2022-701066
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-011794
登録番号
7061471
請求日
2022年10月28日
審決日
2023年12月27日
公報発行日
2024年04月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】シスメックス株式会社
  • 【権利者代理人】芝野 正雅
  • 【異議申立人】森山 涼子
審判長/審判官
  • 審判長 石井 哲
  • 審判官 樋口 宗彦
  • 審判官 櫃本 研太郎
分類
P1651.121-YAA(G01N) / P1651.537-YAA(G01N) / P1651.06 -YAA(G01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7061471号発明「核酸分析装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7061471号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~18〕、19について訂正することを認める。 特許第7061471号の請求項1、5~19に係る特許を維持する。 特許第7061471号の請求項2~4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1.手続の経緯 特許第7061471号の請求項1~19に係る特許についての出願は、平成30年1月26日に出願され、令和4年4月20日にその特許権の設定登録がされ、同年4月28日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議申立人 森山涼子(以下単に「申立人」という。)により本件特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続が行われた。 ・令和4年10月28日 :申立人による、請求項1~19に係る特許に対する特許異議の申立て ・令和5年 1月24日付け:取消理由通知書(以下「取消通知1」という。) ・ 同年 3月22日 :特許権者との面接 ・ 同年 3月31日 :特許権者による意見書(以下「Y意見書1」という。)の提出 ・ 同年 4月11日付け:申立人に対する審尋(以下「審尋」という。) ・ 同年 5月17日 :審尋に対する申立人による回答書(以下「X回答書1」という。)の提出 ・ 同年 6月14日付け:取消理由通知書(決定の予告)(以下「取消通知2」という。) ・ 同年 8月 8日 :特許権者による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、該本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)及び意見書(以下「Y意見書2」という。)の提出 ・ 同年11月10日 :申立人による意見書(以下「X意見書2」という。)の提出 第2.訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求の趣旨は、特許請求の範囲を本件訂正請求に係る訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求めるものである。 その内容は、以下の訂正事項1~10及び19-1のとおりであるところ、訂正事項1~10は、本件訂正前に引用関係を有する請求項1~18に対して、また、訂正事項19-1は、本件訂正前に何れの請求項によっても引用されない独立請求項である請求項19に対して、それぞれ請求されたものである。 よって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されているものである。 (1)一群の請求項1~18に係る訂正 本件訂正請求による一群の請求項1~18に係る訂正である訂正事項1~10の内容は次のとおりである。 ア 訂正事項1 特許諸求の範囲の請求項1における 「前記複数の増幅容器設置部のそれぞれの配置位置と、各増幅容器設置部に設置されるべき増幅容器の種別に関する関連情報とを対応付けた画面を前記表示部に表示させる制御部と、を備える、核酸分析装置。」 との記載を 「前記複数の増幅容器設置部のそれぞれの配置位置と、各増幅容器設置部に設置されるべき増幅容器の種別に関する関連情報とを対応付けた画面を前記表示部に表示させる制御部と、を備え、前記関連情報は、複数の検体のそれぞれの識別情報と、各検体を処理するための試薬を収容する増幅容器が設置されるべき増幅容器設置部の配置位置とを関連付ける情報を含み、前記関連情報は、各検体の識別情報の表示と、各検体に対応する増幅容器設置部の配置位置とに付された共通の色を含む、核酸分析装置。」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5~18も同様に訂正する)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5における「請求項1ないし4の何れか一項」との記載を、「請求項1」に訂正する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6における「請求項1ないし5の何れか一項」との記載を、「請求項1または5」に訂正する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8における「請求項1ないし9の何れか一項」との記載を、「請求項1および5ないし7の何れか一項」に訂正する。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9における「請求項8の何れか一項に」との記載を、「請求項8に」に訂正する。 ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項10における「請求項1ないし9の何れか一項」との記載を、「請求項1および5ないし9の何れか一項」に訂正する。 コ 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項12における「請求項1ないし11の何れか一項」との記載を、「請求項1および5ないし11の何れか一項」に訂正する。 (2) 請求項19に係る訂正 本件訂正請求による請求項19に係る訂正である訂正事項の内容は次のとおりである。該訂正事項については、上記訂正事項1~10と区別するため、便宜上「訂正事項19-1」とする。 ア 訂正事項19-1 特許請求の範囲の請求項19における 「前記抽出容器設置部の配置位置と、前記抽出容器設置部に設置されるべき抽出容器の種別に関する第1関連情報とを対応付け、前記増幅容器設置部の配置位置と、前記増幅容器設置部に設置されるべき増幅容器の種別に関する第2関連情報とを対応付けた画面を前記表示部に表示させる制御部と、を備える、核酸分析装置。」 との記載を、 「前記抽出容器設置部の配置位置と、前記抽出容器設置部に設置されるべき抽出容器の種別に関する第1関連情報とを対応付け、前記増幅容器設置部の配置位置と、前記増幅容器設置部に設置されるべき増幅容器の種別に関する第2関連情報とを対応付けた画面を、前記抽出容器および前記増幅容器の設置前に、前記表示部に表示させる制御部と、を備える、核酸分析装置。」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)一群の請求項1~18に係る訂正について ア 訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における、表示部に表示させるべき画面に係る「関連情報」について、そこに含まれる情報や色について限定して特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 また、訂正事項1は、発明特定事項の直列的付加及び下位概念への変更を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 また、訂正事項1で新たに追加された限定事項は、本件訂正前の請求項3・4に記載された事項であるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 イ 訂正事項2~4について 訂正事項2~4はそれぞれ、訂正前の請求項2~4を削除する訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 また、該各訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。よって、該各訂正事項は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ウ 訂正事項5・6・9・10について 訂正事項5・6・9・10は何れも、本件訂正により請求項2~4が削除されたことに伴い、該各請求項を引用請求項から削除するもので、引用請求項数の削減に該当するから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 また、該各訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。よって、該各訂正事項は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項7について (ア)訂正事項7は、上記ウで説示した訂正事項5・6・9と同様に、請求項2~4を引用請求項から削除する訂正(以下「訂正7-1」という。)に加え、自項及び後続項である請求項8・9を引用請求項から削除する訂正(以下「訂正7-2」という。)を行うものである。以下、該各訂正について個別に検討する。 (イ)前記各訂正のうち訂正7-1については上記ウで説示したとおりであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (ウ)また、訂正7-2については、自項及び後続項を引用することによる請求項8の不明瞭さを解消しようとするものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 また、該訂正事項は、単に引用請求項を削除するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。よって、該各訂正事項は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 オ 訂正事項8について 訂正事項8は、訂正前の請求項9が、その単数の引用請求項である請求項8について、「請求項8の何れか一項」と複数請求項を引用する形式で引用したことによる、請求項9の記載の不明瞭さを解消しようとするものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 また、該訂正事項は、引用先請求項及び特定事項の内容を変更しないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。よって、該各訂正事項は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)請求項19に係る訂正について ア 訂正の目的について 訂正事項19-1は、本件訂正前の請求項19において特定される制御部による表示部への画面の表示について、そのタイミングを「前記抽出容器および前記増幅容器の設置前」であると追加的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無について (ア)本件特許明細書の記載 本件出願の願書に添付された明細書には、画面の表示と、増幅容器および抽出容器の各設置部への設置との関係及び時系列について、次の記載がある(下線は当審にて付与した。)。 「【0041】 制御部401は、第1画像510に、抽出容器設置部110に対する抽出容器10の設置に関する第1関連情報を対応付けて、第1画像510および第1関連情報を画面500に表示する。具体的には、制御部401は、抽出容器設置部110に抽出容器10が設置されているか否かを示す情報、抽出容器設置部110に設置されるべき抽出容器10の種別、抽出容器設置部110に誤った種別の抽出容器10が設置されている場合には抽出容器10の種別が誤っていることを示す情報、などを第1関連情報として表示部402に表示する。また、制御部401は、第1関連情報として、対応する表示領域530と同じ色を第1画像510に付して、第1画像510を表示部402に表示する。 【0042】 同様に、制御部401は、第2画像520に、増幅容器設置部120に対する増幅容器20の設置に関する第2関連情報を対応付けて、第2画像520および第2関連情報を画面500に表示する。具体的には、制御部401は、増幅容器設置部120に増幅容器20が設置されているか否かを示す情報、増幅容器設置部120に設置されるべき増幅容器20の種別、増幅容器設置部120に誤った種別の増幅容器20が設置されている場合には増幅容器20の種別が誤っていることを示す情報、などを第2関連情報として表示部402に表示する。また、制御部401は、第2関連情報として、対応する表示領域530と同じ色を第2画像520に付して、第2画像520を表示部402に表示する。 【0043】 図1(b)に示す例では、第1レーンに対応する表示領域530に検体IDが表示されている。また、第1レーンに対応する第1画像510に、第1関連情報として文字列「DNA、FFPE」が表示され、第1レーンに対応する第2画像520に、第2関連情報として文字列「All-Ras」が表示されている。「DNA、FFPE」は、抽出容器設置部110に設置されるべき抽出容器10の種別を示しており、「All-Ras」は、増幅容器設置部120に設置されるべき増幅容器20の種別を示している。 【0044】 図1(b)に示すように設置されるべき抽出容器10の種別が表示されると、オペレータは、第1レーンの抽出容器設置部110に、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片からDNAを抽出するための試薬を収容した抽出容器10を設置すべきことを把握できる。また、図1(b)に示すように設置されるべき増幅容器20の種別が表示されると、オペレータは、第1レーンの増幅容器設置部120に、測定項目「All-Ras」に用いるための試薬を収容した増幅容器20を設置すべきであることを把握できる。 【0045】 また、図1(b)に示す例では、第1レーンに対応する第1画像510および第2画像520に、「Empty」が表示されている。「Empty」は、対応する容器設置部に容器が設置されていない状態を示している。「Empty」が表示されると、オペレータは、対応する容器設置部に容器が設置されていないことを把握できる。また、図1(b)に示す例では、第2および第3レーンに対応する表示領域530には、検体IDが表示されていない。このため、第2および第3レーンに対応する第1画像510および第2画像520には、「NoUse」が表示されている。「NoUse」が表示されると、オペレータは、対応する容器設置部が使用されないことを把握できる。 【0046】 オペレータは、適正な抽出容器10の反応部11に検体を収容させ、この抽出容器10を抽出容器設置部110に設置し、適正な増幅容器20を増幅容器設置部120に設置する。」 (イ)上記(ア)の記載から読み取ることができる事項 上記(ア)で摘記した記載を総合すると、下記の技術事項を読み取ることができる(各技術事項単位末尾に引用箇所を示す。各単位冒頭の「x1」などは、便宜上付した分説番号であり、これを用いて該各単位を「構成x1」などということがある。)。 「x1 第1画像510は抽出容器設置部110に対する抽出容器10の設置に関する第1関連情報を対応付けて画面500に表示されるものであり、(【0041】) x2 第2画像520は、増幅容器設置部120に対する増幅容器20の設置に関する第2関連情報を対応付けて画面500に表示されるものであり、(【0042】) x3 第1レーンに対応する第1画像510および第2画像520に、対応する容器設置部に容器が設置されていない状態を示す「Empty」が表示されている図1(b)の例の状態において、(【0045】) x4 第1レーンに対応する第1画像510には、抽出容器設置部110に設置されるべき抽出容器10の種別を示す第1関連情報として文字列「DNA、FFPE」が表示され、(【0043】) x5 第1レーンに対応する第2画像520には、増幅容器設置部120に設置されるべき増幅容器20の種別を示す第2関連情報として文字列「All-Ras」が表示されており、(【0043】) x6 前記表示により、オペレータは、容器が設置されていない第1レーンの抽出容器設置部110に、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片からDNAを抽出するための試薬を収容した抽出容器10を設置すべきことを把握でき、また、容器が設置されていない第1レーンの増幅容器設置部120に、測定項目「All-Ras」に用いるための試薬を収容した増幅容器20を設置すべきであることを把握できるから、(【0045】) x7 オペレータは、適正な抽出容器10の反応部11に検体を収容させ、この抽出容器10を抽出容器設置部110に設置し、適正な増幅容器20を増幅容器設置部120に設置する。(【0046】」 (ウ)新規事項の有無について 上記(イ)で認定した技術事項において、 ・構成x1の「抽出容器設置部110に対する抽出容器10の設置に関する第1関連情報を対応付けて画面500に表示され」た「第1画像510」は訂正事項19-1に係る「前記抽出容器設置部の配置位置と、前記抽出容器設置部に設置されるべき抽出容器の種別に関する第1関連情報とを対応付け」「た画面」に該当し、 ・構成x2の「増幅容器設置部120に対する増幅容器20の設置に関する第2関連情報を対応付けて画面500に表示され」た「第2画像520」は、訂正事項19-1に係る「前記増幅容器設置部の配置位置と、前記増幅容器設置部に設置されるべき増幅容器の種別に関する第2関連情報とを対応付けた画面」に該当する。 そして、上記技術事項は、その構成x3によれば、前記構成x1・x2の各画像(510、520)が、対応する容器設置部に容器が設置されていない状態を示す「Empty」なる表示事項を伴って表示されることを示しており、このことから、前記各画像(510、520)は、対応する容器設置部に容器が設置される前の時点において表示されるものと理解される。 この機序は、構成x6・x7における、前記表示によりオペレータが、各容器設置部に設置すべき適正な容器を把握・設置できるとの作用効果の存在によっても裏付けられる。 以上のとおりであるから、訂正事項19-1により加入された、「前記抽出容器設置部の配置位置と、前記抽出容器設置部に設置されるべき抽出容器の種別に関する第1関連情報とを対応付け、前記増幅容器設置部の配置位置と、前記増幅容器設置部に設置されるべき増幅容器の種別に関する第2関連情報とを対応付けた画面」の表示部への表示が「前記抽出容器および前記増幅容器の設置前」であることは、願書に添付された明細書に記載された事項であるといえるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更について 訂正事項19-1は、発明特定事項の直列的付加及び下位概念への変更を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 3 独立特許要件 訂正前の全ての請求項について特許異議申立の対象とされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~18〕、19について訂正することを認める。 第3.訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~19に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明19」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-19に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。ここで、後述の便宜のため本件発明1及び19については、各構成単位冒頭に「A1」等の分説番号を付すこととし、以下各構成単位について該分説番号を用い「構成A1」などということがある。 「【請求項1】 A1 核酸を含む抽出液が注入され、前記抽出液中の核酸を増幅するための試薬を収容した増幅容器が設置される複数の増幅容器設置部と、 A2 表示部と、 A3 前記複数の増幅容器設置部のそれぞれの配置位置と、各増幅容器設置部に設置されるべき増幅容器の種別に関する関連情報とを対応付けた画面を前記表示部に表示させる制御部と、を備え、 A5 前記関連情報は、複数の検体のそれぞれの識別情報と、各検体を処理するための試薬を収容する増幅容器が設置されるべき増幅容器設置部の配置位置とを関連付ける情報を含み、 A6 前記関連情報は、各検体の識別情報の表示と、各検体に対応する増幅容器設置部の配置位置とに付された共通の色を含む、 A4 核酸分析装置。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】 前記増幅容器の種別に関する情報は、処理対象の検体の測定項目に関する情報を含む、請求項1に記載の核酸分析装置。 【請求項6】 前記増幅容器は、当該増幅容器の種別を特定可能な情報を保持し、 増幅容器設置部に設置された前記増幅容器から前記増幅容器の種別に関する情報を読み取るための読取部を備え、 前記制御部は、処理対象の検体に対応する増幅容器の種別と、前記読取部により読み取られた情報とが対応しない場合に、増幅容器設置部に設置された増幅容器の種別が適正でないことを示す情報を前記表示部に表示させる、請求項1または5に記載の核酸分析装置。 【請求項7】 前記制御部は、前記処理対象の検体に対応する種別の増幅容器が増幅容器設置部に設置されていない場合、前記検体に対する処理を中断する、請求項6に記載の核酸分析装置。 【請求項8】 増幅容器設置部に対する増幅容器の設置の有無を検出するためのセンサを備え、 前記制御部は、前記センサの検出結果に基づいて、増幅容器設置部に対する増幅容器の設置の有無に関する情報を前記表示部に表示させる、請求項1および5ないし7の何れか一項に記載の核酸分析装置。 【請求項9】 前記増幅容器は、当該増幅容器の種別を特定可能な情報を保持し、 増幅容器設置部に設置された前記増幅容器から前記増幅容器の種別に関する情報を読み取るための読取部を備え、 前記制御部は、増幅容器設置部に設置された増幅容器の種別が、処理対象の検体に対応して適正であるか否かを評価可能な情報として、前記増幅容器設置部に設置されるべき増幅容器の種別に関する前記関連情報とともに、前記増幅容器設置部に実際に設置された増幅容器の種別に関する情報を、前記表示部に表示させる、請求項8に記載の核酸分析装置。 【請求項10】 前記制御部は、前記複数の増幅容器設置部のそれぞれの配置位置に対応する画像と、前記関連情報とを対応付けた前記画面を前記表示部に表示させる、請求項1および5ないし9の何れか一項に記載の核酸分析装置。 【請求項11】 前記制御部は、前記画像に対して所定の操作が行われた場合に、処理対象の検体の測定項目を受け付けるための操作部を前記表示部に表示させる、請求項10に記載の核酸分析装置。 【請求項12】 検体から核酸を抽出するための試薬を収容するとともに前記試薬を用いて核酸を含む抽出液を精製するための抽出容器が設置される複数の抽出容器設置部をさらに備え、 前記制御部は、前記複数の抽出容器設置部のそれぞれの配置位置と、抽出容器設置部に設置されるべき抽出容器の種別に関する関連情報とを対応付けた前記画面を前記表示部に表示させる、請求項1および5ないし11の何れか一項に記載の核酸分析装置。 【請求項13】 前記抽出容器の種別に関する情報は、処理対象の検体の種別に関する情報を含む、請求項12に記載の核酸分析装置。 【請求項14】 前記制御部は、前記複数の抽出容器設置部のそれぞれの配置位置に対応する画像と、前記関連情報とを対応付けた前記画面を前記表示部に表示させる、請求項12または13に記載の核酸分析装置。 【請求項15】 前記制御部は、前記画像に対して所定の操作が行われた場合に、処理対象の検体の種別を受け付けるための操作部を前記表示部に表示させる、請求項14に記載の核酸分析装置。 【請求項16】 同じ組の増幅容器設置部および抽出容器設置部が、装置本体の奥行き方向に並ぶように配置され、 同じ組の増幅容器設置部および抽出容器設置部の長手方向が、装置本体の奥行き方向に平行であり、 互いに異なる組の増幅容器設置部および抽出容器設置部が、装置本体の幅方向に並ぶように配置されている、請求項12ないし15の何れか一項に記載の核酸分析装置。 【請求項17】 前記装置本体の前側から抽出容器および増幅容器を設置可能に抽出容器設置部および増幅容器設置部が開放され、 前記表示部は、前記装置本体の前面に配置され、 前記制御部は、一の組の抽出容器設置部および増幅容器設置部のそれぞれに対応する画像が縦方向に並び、かつ、他の組の抽出容器設置部および増幅容器設置部のそれぞれに対応する画像が前記一の組の画像に対して横方向に並ぶ前記画面を前記表示部に表示させる、請求項16に記載の核酸分析装置。 【請求項18】 前記制御部は、前記抽出容器設置部に対応する画像および前記増幅容器設置部に対応する画像が、縦方向に並び、各組の抽出容器設置部および増幅容器設置部に対応する検体の識別情報を表示する領域が横方向に延びている前記画面を前記表示部に表示させる、請求項16または17に記載の核酸分析装置。 【請求項19】 S1 検体から核酸を抽出するための試薬を収容するとともに前記試薬を用いて核酸を含む抽出液を精製するための抽出容器が設置される抽出容器設置部と、 S2 前記抽出容器において精製された前記抽出液が注入され、前記抽出液中の核酸を増幅するための試薬を収容した増幅容器が設置される増幅容器設置部と、 S3 表示部と、 S4 前記抽出容器設置部の配置位置と、前記抽出容器設置部に設置されるべき抽出容器の種別に関する第1関連情報とを対応付け、 S5 前記増幅容器設置部の配置位置と、前記増幅容器設置部に設置されるべき増幅容器の種別に関する第2関連情報とを対応付けた画面を、前記抽出容器および前記増幅容器の設置前に、前記表示部に表示させる制御部と、を備える、 S6 核酸分析装置。」 第4.本件特許異議の申立てについて 本件特許異議申立てにおける証拠等、及び取消理由については次のとおり。 1 申立人・特許権者による証拠等 取消理由通知における用否にかかわらず、本件特許異議申立の審理過程において申立人及び特許権者が提出した証拠等は以下のとおり。 (1)異議申立書に添付された甲号証 本件特許異議申立書において示された甲号証(引用文献)は次のとおり。各甲号証番号は、本件特許異議申立人が提出した甲号証等の番号であり、括弧内併記のとおり、以下、例えば甲第1号証については「甲1」などという。 下記各甲号証のうち、甲1~甲6は何れも本件特許の出願日前に公知となったものである。また、甲7は本件特許の出願日後に公知となったものである。 甲第1号証(甲1):特開2005-207767号公報 甲第2号証(甲2):「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80 取扱説明書」,東ソー株式会社,Revision C,平成26年12月3日(表紙記載の年月日)、2014年12月(奥付記載の発行年月) 甲第3号証(甲3):「NEWS RELEASE」,東ソー株式会社,平成26年9月1日 甲第4号証(甲4):「マイコバクテリウム核酸キット MAC rRNA 検出試薬 TRCReady(R) MAC 添付文書」, 独立行政法人医薬品医療機器総合機構,2017年11月,第4版 甲第5号証(甲5):特開2000-275255号公報 甲第6号証(甲6):日本臨床検査自動化学会会誌,2017年8月15日,第42巻 Supp1.2,p97-104 甲第7号証(甲7):臨床病理,2018年5月25日,66(5),p543-551 (2)X回答書1に添付された文献・資料 申立人がX回答書1に対し添付した資料は次のとおり。 資料1:「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80 取扱説明書」,東 ソー株式会社,Revision C,2014年12月(奥付記載の発行年月) 資料2:TRCReady-80 を最初の顧客先に実際に据付けした作業記録 資料3:TRCReady-80を顧客先に据付けた作業記録表 資料4:TRCReady-80の取扱説明書の形態を各方面から示す写真図 資料5:甲4添付文書の申請時の写しとされるもの 資料6:甲4添付文書と紐付けされたとする、医薬品の製造販売承認書(承認番号22600AMX01285000)、厚生労働大臣名、平成25年7月31日(申請日)、平成26年8月19日(承認日) (3)Y意見書1に添付された証拠等 特許権者はY意見書1に対し、下記乙第1~8号証(以下、それぞれ「乙1」~「乙8」という。)を添付した。 乙第1号証(乙1):自動グリコヘモグロビン分析計 取扱説明書、東ソー株式会社、2011年6月改定版 乙第2号証(乙2):試料前処理用カートリッジ 取扱説明書、東ソー株式会社、2012年12月改定版 乙第3号証(乙3):フローサイトメータ XF-1600 取扱説明書 外観写真、シスメックス株式会社 乙第4号証(乙4):Automated Tube Sorter TS-10 取扱説明書 外観写真、シスメックス株式会社 乙第5号証(乙5):Automated Hematology Analyzer XN series XN-9000/9100 取扱説明書 外観写真、シスメックス株式会社 乙第6号証(乙6):等温増幅蛍光測定装置 取扱説明書 外観写真、キヤノンメディカルシステムズ株式会社 乙第7号証(乙7):「自動遺伝子検査装置TRCReady-80の開発」,TOSOH Research &Technology Review,Vol.59(2015),東ソー株式会社 乙第8号証(乙8):「マイコバクテリウム核酸キット MAC rRNA 検出試薬 TRCReady MAC」、[Online]、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構のホームページ、2023年3月検索、インターネット、<URL:https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/ivdDetail/480201_22600AMX01285000_A_04_01#13> 2 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1-19に係る特許に対する取消通知2による取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)理由1(進歩性)について ア 請求項1~3・5、19に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に、甲第4号証に記載された技術事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該各請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 イ 請求項6・7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に、甲第4号証に記載された技術事項及び甲第5号証の記載により裏付けられる技術常識を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該各請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ウ 請求項8~16に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に、甲第4号証に記載された技術事項、甲第5号証の記載により裏付けられる技術常識、及び甲第1号証の記載に裏付けられる周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該各請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 エ 請求項17・18に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に、甲第4号証に記載された技術事項、甲第3号証に記載された技術事項、甲第5号証の記載により裏付けられる技術常識、及び甲第1号証の記載に裏付けられる周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該各請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)理由2(明確性要件)について ア 本件特許請求の範囲の請求項8は、自項である請求項8、及び後続する請求項であって、請求項8自身を引用する請求項9を引用しており、該各請求項を引用する場合の前記請求項8に係る発明の構成が明確でない。 請求項8を直接的又は間接的に引用する請求項9~18についても同様である。 イ 本件特許請求の範囲の請求項9は、引用先請求項を「請求項8の何れか一項」としており、引用先請求項が判然としないため、前記請求項9に係る発明の構成が不明確となっている。 請求項9を直接的又は間接的に引用する請求項10~18についても同様である。 3 甲号証の成立性について (1)Y意見書1における特許権者の主張 (1-1)甲2について Y意見書1において特許権者は、乙1~8号証を添付するとともに、概略下記の理由により、甲2が本件特許出願日前の甲2奥付記載の年月(2014年12月)に正式に頒布された刊行物とはいえないから、特許法第29条第1項第3号の「頒布された刊行物」に該当しない。 ア 理由1 甲2の表紙に事業部、開発部、部署および文書作成者の氏名に関する事項が記載されているが、甲2発行元の東ソー株式会社の装置やその他の社の装置に添付される取扱説明書における一般的な表紙には前記事項が記載されないこと。 イ 理由2 甲2の全てのページが鮮明であることから、甲2は配布された取扱説明書をコピーしたものではなく、取扱説明書のデータを印刷したものであることが明らかなこと。 ウ 理由3 甲2が全頁ではなく部分的に抜粋されたものであり、別に公開されているものでもないから、全体としての一貫性が不明であること。 エ 理由4 甲3により立証される甲2に係る製品の販売開始日と甲2表紙の日付とが一致しないこと。 オ 理由5 乙7に列記される甲2に係る製品(TRCReady-80)の開発担当者に、甲2表紙に記載された者の氏名が含まれていないこと。 (1-2)甲4について 概略、下記の各理由により、甲4の証拠能力に疑義があり、甲4に基づく本件発明の進歩性欠如に関する取消理由にも疑義があること。 理由ア 甲4は「第4版」と表記され、甲4に表示される改定日である2017年11月と、甲2表紙に記載された年月日とに大きな隔たりがあること。 理由イ 上記アに対し申立人は、甲4に係る試薬の承認日が平成26年9月1日であり、添付文書の第1版は該承認日と同日に発行されたと主張するが、該第1版が証拠として提示されていないこと。 理由ウ 申立人が主張する、甲4に係る試薬の承認日(平成26年9月1日)と、乙8に示される同承認日(平成26年8月)とに相違があること (2)X回答書1における申立人の主張 (2-1)甲2について 甲2に関し申立人はX回答書1において、該X回答書1に添付した資料1~4に基づき、概略、下記のとおり主張する。 「資料1はご覧のとおり、甲第2号証,すなわち診断装置TRCReady-80の取扱説明書(RevisionC)の全てのページの写しです。 資料2の作業報告書はTRCReady-80を最初の顧客先に実際に据付けした作業記録です。装置の据付と共に同装置の取扱説明書も顧客先に引き渡しますので、据付時に取扱説明書は頒布されております。最初の据付が2014年10月1日であることがわかります。 資料3の据付記録はTRCReady-80を顧客先に据付けた作業記録表となります。不特定多数の顧客にTRCReady-80と取扱説明書が引き渡されたことを示しています。 資料4はTRCReady-80の取扱説明書の形態を各方面から示す写真図であります。以上の証拠により、甲第2号証は本件特許の出願日前に既に不特定多数の者に頒布されたものであり、本件特許に対する先行技術文献としての適格性を有するものであることが明らかであります。」 (2-2)甲4について 甲4に関し申立人はX回答書1において、該X回答書1に添付した資料5・6に基づいて、概略下記のとおり主張する。 「特許権者は甲第4号証について異議申立人の主張は信憑性を欠き、先行技術文献として採用すべきでないと主張しているものと理解します。 そもそも添付文書の第4版である同号証自体が2017年11月改定であり、特許出願日以前に公知文献であり、特許権者の主張は理解しがたい失当でありますが、念のため添付文書の申請時の際の写しを資料5として提出します。 同資料は申請時のものなので作成日が明記されていませんが、製造販売承認書と紐付けされております。製造販売承認書を資料6として提出します。同資料からわかるとおり、作成時期はH25年(2013年)7月31日であります。 製造販売承認書と申請時添付文書は上左部の穴あき「KYS26A」で紐付けされていることが確認できます。 なお、提出済みの甲第4号証(添付文書第4版)と申請時の添付文書の相違点は緑マーカーで示してあります。両者を対比すれば明らかなとおり、取消理由通知で引用されている部分はほぼ同じ内容です。例えば、添付文書第4版の3頁目の左上(測定(操作)法の項)に「(9)精製用ラックをTRCReady-80にセットします。」と記載されているのに対し、申請時版には記載されておりませんが、TRCReady-80の取説に記載されている手順を示しているものであり、実質的な相違ではないものと確信します。」 (3)当審の見解 (3-1)甲2について ア 理由1について (ア)甲2の表紙には、甲2が対象とする製品の製造元企業の部署名及び職員名と推察される記載があるが、X回答書1に添付された資料1の表紙には該当記載がなく、表紙の記載事項が両者で相違するため、資料1は甲2とは異なる文書についての写しであると認められる。 また、資料4は、X回答書1の記載からは明らかではないものの、資料1の外観写真を示すものと推察される。 また、申立人はX回答書1において、甲2と資料1との表紙の相違について何らの説明をしていない。 よって、資料1が「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80 取扱説明書 Revision C」であり、その添付対象と推察される「TRCReady-80」なる装置が本件特許の出願前に不特定多数の顧客を対象として据え付け(譲渡)されたことが資料3によって裏付けられるとしても、本件特許異議申立書に添付された甲2について、その抜粋元の文書の全ページの内容と外観、及び頒布の事実やその形態が直接立証されたとはいえない。 (イ)一方、甲2として抜粋して提示された各ページの記載事項と、資料1の対応ページの記載事項とは、「発行年月:2014年12月」と記載される奥付の記載事項を含め一致するし、取扱説明書の改訂段階を示すと推察される「Revision C」(「Rev.C」)との表示も両者で共通する。また、甲2として抜粋された各ページの記載事項と、資料1における、該抜粋されたページ以外のページとの記載内容との間に不整合があるとも認められない。 また、装置を購入した顧客に対し、誤りが修正された最新版の取扱説明書をわたすようにすることは、顧客の便宜に鑑み販売社が当然に配慮すべき事項であるといえるから、例えば装置販売の時点で、装置使用にあたり参照すべき最新の取扱説明書が正式には印刷・製本前であるような場合に、顧客の便宜の観点から、暫定的な版を印刷して手渡すような状況が、全く考えられないとはいえない。本件に即していえば、甲3によれば、甲2(資料1)の添付対象である「TRCReady-80」なる装置が、甲2(資料1)の発行年月前3~4ヶ月である2014年9月1日に販売開始されたもので、甲2(資料1)の「Revision C」との記載から、前記3~4ヶ月の間に数回(例えばRev.A~Cの3回)という頻度で改訂がなされたことが推察されることからも、甲2頒布当時、前記状況にあった可能性が一定程度推察できるといえる。 よって、甲2の表紙に装置製造社内の部署名や従業員名と推察される表記が併記されていることのみを理由として、甲2に係る「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80 取扱説明書 Revision C」なる取扱説明書の存在や頒布の事実、記載内容全体の信憑性について、全て否定されるとはいえない。 また、甲2により、少なくとも甲2として写しが提出された各ページの記載内容を持つ「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80 取扱説明書 Revision C」なる取扱説明書が存在し、該取扱説明書が、甲3により裏付けられる「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80」の販売に伴って不特定多数の顧客に対し、本件特許の出願日前である前記発行年月に頒布され公知となった事実は立証されているといえる。 (ウ)仮に、甲2が、甲2の表紙ページを持つ「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80 取扱説明書 Revision C」なる取扱説明書の存在のみを裏付けるもので、該取扱説明書が、その表紙の特異性からみて暫定的な版であるといえるため、不特定多数に頒布された版であるとはいえないとしても、資料1・4で補うことにより、甲2と表紙以外の記載事項が一致する、全ページがそろった正式に製本された印刷物としての「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80 取扱説明書 Revision C」なる取扱説明書が存在することは裏付けられるといえ、甲2は結果として、その存在を裏付ける証拠の一つであるといえる。 (エ)以上のとおりであるから、表紙の特異性のみを理由として甲2の記載内容や「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80 取扱説明書 Revision C」なる取扱説明書の存在が全て否定される旨の理由1に係る特許権者の主張は採用できない。 イ 理由2について 仮に甲2が電子データの印刷物であるとしても、上記アで説示したとおり、発行年月の記載を含む甲2の各ページの内容は、表紙を除き資料1に係る冊子形態の「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80 取扱説明書 Revision C」なる取扱説明書の対応するページの記載内容と同じであるから、甲2は前記取扱説明書の謄本と位置づけることができ、資料1に係る冊子としての前記取扱説明書の記載内容や発行年月(頒布の事実)を推認する証拠として成立しているといえる。 ウ 理由3について 書証を一部抜粋して写しとして提出すること自体を不適切ということはできない。 また、申立人は、少なくとも表紙以外の本文(内容)において甲2と一致する資料1として、上記取扱説明書の全ページについて提出し、甲2と同等物であると推認される資料1について一貫性を立証したから、仮に本件特許異議申立て時点において理由3が成り立つとしても、X回答書1における主張によって、該理由3は解消したといえる。 エ 理由4 製品に添付される取扱説明書が製品の販売期間を通じて、決して改訂されないという商慣行上の常識存在せず、むしろ、誤記や、機器の環境(例えば併用するPCのOS変更など)に応じて随時改訂がなされる場合が商慣行上存在することは周知の事実である。 そして、甲2(資料1)には「Revision C」と付記され、これは、何らかの改訂が重ねられた(例えばA~Cからなる3回目の改定版である)ことを示すと理解される。 そうすると、装置の販売開始(2014年9月1日)に取扱説明書の初版が添付されていたとしても、甲2は「Revision C」と表記されることから、初版ではなく改訂版であると推察されるのであり、改訂版の発行年月が初版や装置発売初日よりも後の日付であることに、なんら不自然な点はないというべきである。 よって、理由4は成り立たない。 オ 理由5 甲2の表紙に記載された部署名や人名が何を意味するのか、申立人はなんら説明しない。 しかし、一般に商慣行上、機器の取扱説明書は、専門の業者により外注製作されることもあるというのが技術常識でありことからすると、必ずしも製造社内の開発担当者が自ら製作するものであるとはいえないから、前記部署名や人名と機器の開発担当者とが相違すること自体が、甲2の存在や記載事項の信憑性を否定するとはいえない。 カ まとめ 以上のとおりであるから、特許権者の主張する理由1~5はいずれも、甲2及び甲2により示される、「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80 取扱説明書 Revision C」なる取扱説明書の存在や頒布の事実、本件特許の出願日前に公知であったことを直接否定するものとはいえない。 そして、申立人のX回答書1による説明は、甲2自体の存在形態や頒布の事実を完全に裏付けるものではないものの、甲2~甲4によって「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80」なる装置が存在し、これが不特定多数の顧客に対し販売されたことは立証されているといえるし、このことは資料2・3によってさらに裏付けられる。また、資料1によって、甲2が、前記装置に添付された「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80 取扱説明書 Revision C」なる取扱説明書に等しい記載内容を有する証拠であり、甲2によって、資料1に示される前記「自動遺伝子検査装置 TRCReady-80 取扱説明書 Revision C」なる取扱説明書の存在が裏付けられているといえる。 (3-2)甲4について ア 理由アについて 甲4は、本件出願日前に公知となったものであり、甲3によれば2014年9月1日に販売が開始された「TRCReady-80」なる装置と同型の装置において使用する試薬に関する文献である。 そして、X回答書1に添付された、相互に共通の「KYS26A」なる穴あきにより関連付けられる資料5・6により、甲4の引用箇所について認定に影響を与える相違がない内容での製造販売の申請と承認が、前記装置の販売に先行して行われたことが裏付けられる。 また、甲4に記載された前記装置の品番(0023950)は、資料2に示される、前記装置が最初に顧客に設置された際(2014年10月1日)の商品コード(0023950)と一致するから、該最初に設置された日から、と、甲2の発行年月(2014年12月)を挟み、甲4の改定日当時(2017年11月)まで、品番に変更がないこと、つまり、前記装置の型番変更が行われなかったことが裏付けられるといえる。 したがって、甲4に表示される改定日である2017年11月と、甲2表紙に記載された年月日とに大きな隔たりがあるとしても、いずれも本件特許の出願日前であるし、甲4が前提とする装置が甲2の対象とする装置と相違するということもいえないから、理由アの指摘事項は、甲2と甲4とを組み合わせて容易想到性の判断を行うことに影響を与えない。 イ 理由イについて 上記アで説示したとおり、X回答書1に添付された、相互に共通の「KYS26A」なる穴あきにより関連付けられる資料5・6により、甲4の引用箇所について認定に影響を与える相違がない内容での製造販売の申請と承認が、前記装置の販売に先行して行われたことが裏付けられる。 よって、理由イの指摘事項は、甲2と甲4とを組み合わせて容易想到性の判断を行うことに影響を与えない。 ウ 理由ウについて 平成26年9月1日は甲3によれば甲2が対象とする装置の販売開始日であり、前記装置を対象として承認された甲4の試薬の販売も前記装置の販売に合わせて行われると推察されるから、甲4の試薬の最初の承認は前記販売開始日時点で得られていれば足りるのであり、この点、申立人が主張する、甲4に係る試薬の承認日(平成26年9月1日)は前記装置の販売日と一致するもので、該販売開始日後であるといった矛盾が存在するわけでもないから、理由ウの指摘事項は、申立人による記憶違い程度のものと考えることができ、甲2と甲4とを組み合わせて容易想到性の判断を行うことに影響を与えない。 4 証拠等の記載事項(1)甲2に記載された事項 ア 甲2の記載事項 甲2には次の記載がある。ここで、数字を丸で囲んだ記号は括弧書きで、例えば1を丸で囲んだ記号は「(1)」などと表記した。 (記載1-1)「1.1 TRCReady-80システムの概要 このたびは自動遺伝子検査装置 TRCReady-80をご購入いただきありがとうございます。 ・・・ 本装置は、核酸吸着担体を用いた核酸精製と、核酸を増幅・リアルタイム検出するTRC法(・・・転写逆転写協奏反応)を組合せた遺伝子検査装置です。検体または前処理済みの検体の添加と試薬類をセットするだけで、遺伝子検査が行えます。 遺伝子検査は、主に核酸(遺伝子の構成物)と検体由来の妨害物質を分離する核酸精製工程と、核酸を増幅して検出する核酸検出工程に分かれます。 一般的な核酸精製工程は遠心分離機を用いるため、用手法で時間を要しました。 本装置では遠心分離機が不要な核酸精製キットを用いるため、約10分と短い時間で、核酸精製工程を自動で実行します。また、核酸精製工程に引き続き、核酸検出工程も自動で実行します。 いずれも個別の試薬を用いるため、煩雑な試薬調製作業が不要で、検査作業の省力化に役立ちます。」(1-1頁) (記載3-1)「第3章 測定概要 3.1 測定モード 本装置は、精製+検出モード、検出モードの2種類の測定モードがあります。 精製+検出モード 未精製の検体に対して、核酸の精製および増幅と検出を行う場合に選択してください。 測定の流れは「3.2 ワークフロー(精製+検出モード)」、ワークフローに沿った操作は「第4章 測定(精製+検出モード)」をご覧ください。」(3-1頁) (記載3-2)「 [図:0001409079000001.jpg] 」(3-2頁) (記載4-6)「 [図:0001409079000002.jpg] ・・・ [図:0001409079000003.jpg] 」(4-6~4-7頁) (記載4-8) 「 [図:0001409079000004.jpg] 」(4-8頁) (記載4-19)「4.3 試薬類の設置 依頼画面で指定したSP通りに、検出試薬を検出用ラックへ、TRCR核酸精製キットを精製用ラックへセットします。 ・・・ 検出試薬のセット 反応試薬、開始液、TRCR光源検出試薬用チップセットを検出用ラックへセットします。 (1)依頼画面の検出用ラックで検査項目が表示されたSPに対し、検出用ラックのA列に反応試薬、B列に開始液をセットしてください。 (2)反応試薬、開始液をセットしたSPに検出試薬用チップセットをC列へセットしてください。 ・・・ (3)装置のドアを開けて、検出用ラックをラックトレイにセットしてください。この際、反応試薬などが浮き上がっていないことを確認してください。 [図:0001409079000005.jpg] サンプル分注および核酸精製キットのセット サンプルを分注したTRCR核酸精製キットを精製用ラックへセットします。 ・・・ 変性試薬と混合しない検体は感染性を保持している可能性があり、危険です。 検体は、必ず変性試薬に添加混合して、本装置にセットしてください。 ・・・ (1)依頼画面の検出用ラックが赤色のSPには陽性コントロールを、青色のSPには陰性コントロールを、精製用ラックの回収チューブセット位置にセットしてください。 ・・・ (2)依頼画面の精製用ラックで白色のSPに対し、精製カートリッジを精製用ラックにセットしてください。 ・・・ (3)精製用ラックから変性試薬を取り出し、検体を添加します。 ・・・ [図:0001409079000006.jpg] (4)変性試薬を精製用ラックに戻してください。 (5)精製カートリッジの回収チューブを精製用ラックから取り、キャップを外して元の位置にセットしてください。 (6)精製カートリッジの変性試薬を精製用ラックから取り、キャップを外して元の位置にセットしてください。 (7)陽性コントロールならびに陰性コントロールを精製用ラックから取り、キャップを外して元の位置にセットしてください。 ・・・ (8)精製用ラックをラックトレイにセットしてください。 [図:0001409079000007.jpg] [図:0001409079000008.jpg] (9)ドアを閉めてください。」(4-19~4-23頁) (記載4-24)「4.4 測定前チェック 依頼通り正しく試薬がセットされているかを自動で確認します(所要時間は約3分)。 (1)試薬をすべてセットした後、依頼画面の<測定前チェック>ボタンを押してください。 ・・・ (2)画面右上のステータス表示が[Preparation]に変わり、測定前チェックダイアログが表示されます。 [図:0001409079000009.jpg] ・・・ 測定前チェック中は、他の動作をすることができません。 ・・・ (3)試薬が正しくセットされていれば、測定前チェックダイアログに[測定前のチェックが完了しました]と表示されます。<OK>ボタンを押してください。 [図:0001409079000010.jpg] ・・・ (4)測定前チェックが完了すると、依頼画面の検出用ラック、精製用ラックにチェックマークがつき、<測定開始>、<測定中止>ボタンを押すことができる状態になります。 [図:0001409079000011.jpg] [図:0001409079000012.jpg] [図:0001409079000013.jpg] 」(4-24~4-29頁) イ 看取事項 (ア)検出用ラック看取事項 記載4-19の最初の図及び最後の図を合わせ見ると、反応試薬及び開始液はそれぞれ別個の容器に入れられた状態で、それぞれ検出用ラックのA列、B列の各サンプルポジション(SP)の位置に配置されることが看取できる。 (イ)精製用ラック看取事項 記載4-19の2つめの図及び最後の図を合わせ見ると、変性試薬は容器に入れられた状態で、精製用ラックのD列手前側の位置に配置され、該精製用ラックが各サンプルポジション毎にラックトレイに取り付けられることが看取できる。 (ウ)依頼画面看取事項 記載4-24の(4)の次の依頼画面についての図から、依頼画面では、その上部には、縦軸方向に上から下へサンプルポジション(SP)1~8を順に並べ、各サンプルポジション(SP)毎に横方向へサンプルID、種別、依頼項目を順に記載した表が表示され、その下方、依頼画面の下部には、各サンプルポジション(SP)1~8を左から右へ横方向に配置し、各サンプルポジション(SP)毎に上から下へ検出用ラックA列・B列、精製用ラックのD列を順に並べた図柄が、それぞれ表示されていることが看取できる。 (エ)装置ドア看取事項 記載4-19の最初の図の右下部分の図、及び同(8)の次の図を合わせ見ると、TRCReady-80の装置のドアが前から上方へ開かれ、それにより検出用ラック及び精製用ラックがセットされるべき内部のラックトレイが露出すること、該ラックトレイにおいてその奥側に検出用ラックが、手前側に精製用ラックがそれぞれセットされること、を看取できる。 (オ)検査項目表示看取事項 記載4-8の図は、先行する記載4-6の「4.2 測定依頼の作成」なる操作ステップ内で、測定依頼作成後に表示されるものであり、かつ、試薬類を装置にセットするのはその後の、記載4-19で示される「4.3 試薬類の設置」なるステップで行われるのであるから、前記記載4-8の図は、測定依頼作成後、試薬類設置前での表示状態を示すものと認められる。 そして、該図中、「検出用ラック」の表示領域には、反応試薬をセットすべきA列(記載4-19参照)のSP1~8に、検査項目名として「MAC」と表示されていることを読み取ることができる。 ウ 甲2に記載された発明 上記ア・イから、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、分説番号については上記1と同様であり、また、各構成単位末尾括弧内には、主たる認定根拠となった記載箇所を示す(以下同様)。 「a1 8つのサンプルポジション(SP)毎に、サンプル(検体)を添加した変性試薬チューブを配置する位置を備える精製カートリッジをセットするD列内の8つの位置を備えたTRCR核酸精製キットと、(記載4-6の「依頼入力項目」表、記載4-19・4-24) a2 各サンプルポジション(SP)毎に、反応試薬が入った容器をセットするA列内の8つの位置、開始液が入った容器をセットするB列内の8つの位置、をそれぞれ備える検出用ラックとを備え、(記載4-19、検出用ラック看取事項、精製用ラック看取事項) a3 変性試薬と混合しないサンプル(検体)は感染性を保持している可能性があり、危険であるため、サンプル(検体)は、必ず変性試薬に添加混合して、本装置にセットすべきものであり、(記載4-19) a4 本装置のドアは前から上方へ開かれ、それにより装置内部の、検出用ラック及び精製用ラックがセットされるべきラックトレイが露出し、該ラックトレイの奥側には検出用ラックが、手前側には精製用ラックがそれぞれセットされるものであり、(記載4-19) b1 また、モニター画面を備え、(記載4-24ほか) b2 検出用ラック、及びTRCR核酸精製キットの精製カートリッジからなる精製用ラックをラックトレイにセットした場合、手前から奥へ、精製用ラック及び検出用ラックが順にセットされ、該各ラックにおいて左から右へサンプルポジション(SP)1~8が順に配列され、精製用ラックは横方向にD列を備え、各サンプルポジション(SP)のD列にはそれぞれ変性試薬チューブが、サンプル(検体)を添加し、キャップを外した状態で配置され、検出用ラックは横方向に手前から奥へ順にC列、B列、A列を備え、各サンプルポジション(SP)のA列にはそれぞれ反応試薬が入った容器が配置され、各サンプルポジション(SP)のB列にはそれぞれ開始液が入った容器が配置された、(記載4-19、検出用ラック看取事項、精製用ラック看取事項) b3 未精製のサンプル(検体)に対して核酸の精製および増幅と検出とを行う自動遺伝子検査装置TRCReady-80であって、(記載1-1) c1 依頼画面でツールバーの<依頼>ボタンを押すことでサンプルポジション(SP)毎に検査項目・検体ID・患者ID・種別・依頼に関するコメント・患者に関するコメントなどの依頼入力項目を入力し、試薬をすべてセットした後、依頼画面の<測定前チェック>ボタンを押すことにより実行される測定前チェックにより、(記載4-6・4-8・4-24) c2 反応試薬及び精製カートリッジのコードを読み取り、(記載4-24) c3 設定通りにセットされていること、すなわち、反応試薬がセットされているか、反応試薬以外のものがセットされているか、反応試薬と開始液とのロットが一致するか、測定依頼と反応試薬の項目が一致するか、反応試薬の使用期限が切れていないか、設定通りの正しい精製カートリッジが設置されているか、測定依頼と異なる精製カートリッジがセットされているか、精製カートリッジの使用期限が切れているか、についてチェックし、(記載4-24) c4 モニター画面に測定前チェックダイアログを表示させ、 試薬が正しくセットされていなければ、チェックダイアログに×マークが付いてメッセージが表示され、その場合は対処方法に沿って設定通りに修正し、<OK>ボタンを押し、再度測定前チェックを行うことを要し、測定前チェック中は、他の動作をすることはできないものであり、(記載4-24) c5 試薬が正しくセットされていれば、測定前チェックダイアログに[測定前のチェックが完了しました]と表示されるのでOKボタンを押すことで測定前チェックが完了し、(記載4-24の(3)) c6 測定前チェックが完了すると、検出用ラック・精製用ラックをラックトレイにセットした場合の配置に合わせ、依頼画面の検出用ラック・精製用ラックを、各サンプルポジション(SP)1~8を左から右へ横方向に配置し、各サンプルポジション(SP)毎に上から下へ検出用ラックA列・B列、精製用ラックのD列を順に並べた図柄上で、 依頼とセットした試薬類とが異なっていなければ各サンプルポジション(SP)のA・B・D各列位置にチェックマークが付き、異なっていれば依頼画面の検出用ラックと精製用ラックの該当箇所に×マークが付き、(記載4-24の(4)の図) c7 該×マーク上にカーソルを置くと、設定と異なる理由が表示され、(記載4-24の(4)の図) c8 前記図柄の上方には、縦軸方向に上から下へサンプルポジション(SP)1~8を順に並べ、各サンプルポジション(SP)毎に横方向へサンプルID、種別、依頼項目を順に記載した表が表示される、(以上、記載4-6・4-8・4-24、依頼画面看取事項)、 c9 また、測定依頼作成後、試薬類設置前の段階で、反応試薬が入った容器が配置されるべきA列、開始液が入った容器が配置されるB列の各サンプルポジション(SP)に対応する位置に、検査項目名として例えば「MAC」と表示される、(記載4-8・4-19、検査項目表示看取事項) d 自動遺伝子検査装置TRCReady-80(記載1-1)。」 (2)甲4に記載された事項 ア 甲4の記載事項 甲4には次の記載がある。ここで、1文字を○で囲んだ記号は該1文字を括弧で囲んだ表記とした。また、文末尾の文献参照番号は省略した。 (ア)記載甲4-1 「マイコバクテリウム核酸キット MAC rRNA 検出試薬 TRCReady(R)MAC Mycobacterium avium rRNA及びMycobacterium intracellulare rRNAを判別して検出するキット [全般的な注意] 1. 本キットは自動遺伝子検査装置 TRCReady(R)-80・・・の専用試薬です。」 (イ)記載甲4-2 「[測定原理] 1.測定原理 本キットは、インターカレーター性蛍光色素が標識されたDNAプローブと一定温度RNA増幅法を組み合わせて、RNAを1ステップで増幅・リアルタイム検出するTRC(Transcription Reverse-transcription Concerted reaction)法を原理とした核酸増幅検査キットです。本キット中に含まれるMAC rRNA切断用プローブ、MAC rRNAプロモータープライマー、及びMAC rRNAアンチセンスプライマーが標的RNA・・・に結合すると、酵素逆転写酵素、RNAポリメラーゼが基質類dNTP、NTP、ITPを用いて転写、逆転写反応などを行い、RNAが増幅合成されます。このRNA増幅反応と並行して、蛍光標識M.avium rRNA検出用プローブは増幅合成されたM.avium rRNAと、蛍光標識M.intracellulare rRNA検出用プローブは増幅合成されたM.intracellulare rRNAとそれぞれ特異的に結合します。各検出用プローブの結合によりそれぞれに由来する波長の蛍光強度が増加するため、反応液中の蛍光強度を経時的に計測することにより、サンプル中のM.avium rRNA及びM.intracellulare rRNAが検出されます。」 ・・・ (1) MAC rRNA切断用プローブと逆転写酵素のRNase H活性により標的RNA (M.avium rRNA及びM.intracellulare rRNA)の5’側が切断される。 (2) MAC rRNA アンチセンスプライマーと逆転写酵素の逆転写活性により、標的RNAに相補的なcDNAが合成される。 (3) MAC rRNAプロモータープライマーと逆転写酵素のDNA polymerase活性により二本鎖DNAが合成される。 (4) RNAポリメラーゼによりRNAが増幅合成される。(増幅されたRNAの一部は(2)の逆転写反応の鋳型となる) (5) 蛍光標識 M avium rRNA 検出用プローブ(図中ではMA検出用プローブ)は増幅合成されたM.avium rRNAと、蛍光標識M.intracellulare rRNA検出用プローブ(図中ではMI検出用プローブ)は増幅合成されたM.intracellulare rRNAと特異的に結合して、それぞれの結合に由来する波長の蛍光強度が増加する。 (6) 増加した蛍光強度を経時的に計測する。」 (ウ)記載甲4-5 「[操作上の注意] 1.測定試料の性質、採取法 (1)本キットでは核酸抽出されたものを測定用サンプルとして使用し、それ以外は使用しないでください。 ・・・ 2.検体の前処理法 本キットで測定する検体の前処理には、米国のCDCが推奨しているNALC-NaOH法で処理することを推奨します(喀痰の場合はセミアルカリプロテアーゼ処理での均質化を行った後に本処理を実施することを推奨します)。他の方法で処理された場合は、十分な性能を得られない場合があります。セミアルカリプロテアーゼ処理後のNALC-NaOH法による処理方法は以下の通りです。 (1) 15mL又は50mL遠心管に約1mLの均質化した検体を分注します。 (2) 検体の2倍量の2%NALCNALC-NaOH[注1]を加えます。 (3) 混和後、5~25℃で15分間放置します。 (4) 0.067mol/Lりん酸緩衝液(pH6.8)を遠心管いっぱいまで加えます。 (5) 転倒混和後、4℃ 3,000×gで20分間遠心分離します。 (6) 上清を除去して、0.067mol/Lりん酸緩衝液(pH6.8)を1mL添加して混和します。 (7) 測定用サンプルの調製(試料の核酸抽出)を行います。 [注1]2%NALC-NaOH:4%NaOHと0.1mol/Lクエン酸ナトリウムを50mLずつ混合し、N-acetyl-L-cysteine 0.5gを加えた溶液。 3.測定用サンプルの調製法 試料の核酸抽出) 本キットの測定用サンプルの調製には、溶菌及び精製が必要です。溶菌にはTRCR(R)抗酸菌溶菌試薬・・・又は EXTRAGEN(R)ZR・・・[注1]などを用いたジルコニアビーズによる溶菌、精製にはTRCR(R)核酸精製キット・・・及びTRCReady(R)-80による核酸精製を組み合わせた核酸抽出方法を推奨します。他の測定用サンプル調製法を用いる場合は、用法用量に従うとともに、核酸を損失しないよう十分に注意してください。測定用サンプル調製法の詳細については、各製品の取扱説明書を参照してください。全ての操作は手袋を着用して行い、溶菌操作は感染の危険性がありますので、マスクなどを着用の上、安全キャビネット内で操作してください。 TRCR(R)抗酸菌溶菌試薬又はEXTRAGEN(R)ZRによる溶菌 TRCR(R)抗酸菌溶菌試薬又はEXTRAGEN(R)ZRの取扱説明書に従い、サンプルの溶菌を実施します。 TRCR(R)核酸精製キットによる核酸精製 TRCR(R)核酸精製キット及び TRCReady(R)-80の取扱説明書に従い、溶菌サンプルの精製を実施します[注2]。 [注1]別売の抗酸菌核酸抽出試薬 EXTRAGEN MB・・・の溶菌試薬とは異なりますのでご注意ください。 [注2]TRCReady(R)-80ではTRCR(R)核酸精製キットによる核酸精製と、それに引き続く測定が連続して実施されます。」 (エ)記載甲4-6 「[用法・用量(操作方法)] 1.試薬の調製方法 本キットのすべての構成試薬はそのまま使用してください 。 (1) 反応試薬:1テストあたり1本使用します。アルミ袋を開封し、測定に必要な本数を取り出したのち、残りの試薬は直ちに元のアルミ袋で密封し2~8℃で保存してください。一度アルミ袋を開封した反応試薬は30日以内に使用してください。なお、反応試薬は乾燥品であり、透明または白色でチューブ底に保持されています。 (2) 開始液:1テストあたり1本使用します。 ・・・ 3.測定(操作)法 本キットはTRCReady(R)-80を用いて測定してください。TRCReady(R)-80の操作方法の詳細は機器の取扱説明書に従って行ってください。標準的な手順は以下の通りです。 (1)TRCReady(R)-80本体のスイッチを入れます。 (2) コントローラー(PC)のアプリケーションを起動させます。 (3) 割り当てられたユーザー名でログオンします。 (4) 測定依頼 (測定モード、サンプルID、種別、検査項目など)の入力を行います。検査項目は「MAC」を選択してください。 (5) 反応試薬、開始液、及びTRCR(R)検出試薬用チップセットを検出用ラックにセットします。 (6) 検出用ラックをTRCReady(R)-80にセットします。 (7) 測定する陽性コントロール及び陰性コントロールをキャップを外した状態で精製用ラックの所定の位置にセットします。 (8) 測定用サンプルを0.5mLスクリューキャップチューブに15μL+デッドボリューム分[注1]分注し、キャップを外した状態で精製用ラックにセットします[注2]。 (9) 精製用ラックをTRCReady(R)-80にセットします。 (10) 機器の取扱説明書に従って測定をスタートさせます。 TRCReady(R)-80により、以下の(11)~(14)の操作が実行されます[注3]。 (11) 反応試薬に陽性コントロール、陰性コントロール、又は測定用サンプルが添加され、所定温度でインキュベーションされます。 (12) (11)の溶液に開始液が添加され、混合されます。 (13) 所定時間、所定温度でインキュベーションされながら、蛍光強度が経時的に測定されます。 (14) 測定された蛍光強度をもとに解析が行われ、測定結果画面に判定結果が表示されます。 [注1]測定用サンプルのデッドボリュームについては機器の取扱説明書に従ってください。 [注2]TRCR(R)核酸精製キットによる核酸精製と本キットによる測定を連続して行うサンプルについてはTRCR(R)核酸精製キット及び機器の取扱説明書に従ってください。 [注3]TRCR(R)核酸精製キットによる核酸精製と本キットによる測定を連続して行う場合には、TRCR(R)核酸精製キット内の回収チューブに測定用サンプル精製サンプルが回収されたのち、(11)~(14)の操作が実行されます。」 イ 甲4に記載された技術事項 上記アの摘記事項から、甲4には次の技術事項(以下「甲4技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「4a 自動遺伝子検査装置TRCReady-80の専用試薬キットである『マイコバクテリウム核酸キット(MAC rRNA 検出試薬 TRCReady(R)MAC)』を用いて、自動遺伝子検査装置TRCReady-80によってRNAを増幅・リアルタイム検出する手順であって、(記載甲4-1・甲4-2) 4b 溶菌を行った測定用サンプルに対し、TRCR(R)核酸精製キット及びTRCReady-80による核酸精製を組み合わせて、TRCReady-80によって核酸精製(核酸抽出)と、それに引き続く測定とが連続して実施されるものであり、(記載甲4-5) 4c 測定においては、本キット中に含まれるMAC rRNA切断用プローブ、MAC rRNAプロモータープライマー、及びMAC rRNAアンチセンスプライマーが標的RNAに結合することで、酵素逆転写酵素、RNAポリメラーゼが基質類dNTP、NTP、ITPを用いて転写、逆転写反応などを行い、RNAが増幅合成され、このRNA増幅反応と並行して、蛍光標識検出用プローブは増幅合成されたrRNAと特異的に結合するものであり、(記載甲4-2) 4d チューブ底に乾燥品である反応試薬が保持された反応試薬のチューブをTRCReady-80の検出用ラックにセットし、(記載甲4-6) 4e 検出用ラックをTRCReady-80にセットし、(記載甲4-6) 4f 測定用サンプルを0.5mLスクリューキャップチューブに15μL+デッドボリューム分、分注し、キャップを外した状態で精製用ラックにセットし、(記載甲4-6) 4g 精製用ラックをTRCReady-80にセットし、(記載甲4-6) 4h TRCReady-80により、反応試薬に測定用サンプルが添加され、さらに開始液が添加されて混合され、(記載甲4-6) 4i 所定時間、所定温度でインキュベーションされながら、蛍光強度が経時的に測定され、測定された蛍光強度をもとに解析が行われ、測定結果画面に判定結果が表示される、 4j RNAを増幅・リアルタイム検出する手順。」 (3)甲5に記載された事項 甲5には次の記載がある。 「【0010】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために成された本願発明は、検体を収容し、収容された検体を識別するための検体識別情報が表示された検体容器、及び検体中の特定成分を測定するための試薬を収容し、特定成分を表す特定成分情報が表示された反応容器を両者が混在した状態で単一の搬送手段により搬送しつつ検体中の特定成分を測定するための自動測定装置であって、以下の特徴を有する装置である。 【0011】(1)前記検体識別情報と、各検体について測定されるべき1以上の特定成分を表す特定成分情報とを含む検査依頼情報を記憶するための記憶手段、(2)検体容器に表示された前記検体識別情報を読みとる第1識別手段、(3)第1識別手段で読みとった検体識別情報に基づき、その検体について測定されるべき1以上の特定成分を表す特定成分情報を前記記憶手段に記憶された検査依頼情報の中から抽出し、検体の検体識別情報と当該検体について測定されるべき1以上の特定成分を表す特定成分情報からなるワークリストを作成するワークリスト作成手段、(4)前記ワークリストに基づき、前記単一の搬送手段に載置すべき検体容器及び反応容器の順序を指定する載置順序指定手段、(5)搬送手段による搬送中に、反応容器に表示された特定成分情報を自動的に読みとる第2識別手段、及び、(6)第2識別手段で読みとった特定成分情報と指定した順序を比較し、両者が一致した場合及び/又は両者が一致しない場合にその旨を表示する照合手段。 ・・・ 【0025】第1識別手段5は、検体容器に表示された検体識別情報を読みとり、その結果をワークリスト作成手段に出力する。第1識別手段は検体識別情報を読み取れるものであれば特に制限はなく、例えば、検体識別情報をバーコードで表示した場合にはバーコードリーダーを、検体識別情報を文字や記号で表示した場合には小型スキャナーやビデオカメラ等の光学的な読み取り装置を、検体識別情報を磁気記録媒体に表示した場合には磁気読み取り装置を使用することが例示できる。なお第1識別手段は、本願発明の自動測定装置に接続されたハンディタイプのものであっても良いし、測定装置上の特定箇所に設けられた検体容器を担持する担持具と担持された検体容器を識別する手段とで構成しても良い。」 (4)甲1に記載された事項 甲1には次の記載がある。 「【0031】 また、濁度検出部62は、図3に示すように、反応部61の一方の側面側に配置された基板64aに取り付けられた465nmの波長を有する青色LEDからなるLED光源部62aと、反応部61の他方の側面側に配置された基板64bに取り付けられたフォトダイオード受光部62bとによって構成されている。各反応検出ブロック60aには、1つのLED光源部62aと1つのフォトダイオード受光部62bとからなる1組の濁度検出部62が2組ずつ配置されている。したがって、5つの反応検出ブロック60aには、合計10組のLED光源部62aおよびフォトダイオード受光部62bからなる濁度検出部62が配置されている。LED光源部62aおよびそれに対応するフォトダイオード受光部62bは、LED光源部62aから検出セル65の下部に約1mmの直径の光を照射してフォトダイオード受光部62bによってその光を受光可能なように配置されている。このフォトダイオード受光部62bが受光する光の強度によって、検出セル65の有無を検出するとともに、検出セル65の内部に収容された液の濁度をリアルタイムで検出(モニタリング)することが可能になる。具体的には、検出セル65が検出セルセット孔61aにセットされると、検出セル65がLED光源部62aとフォトダイオード受光部62bとの間に配置され、フォトダイオード受光部62bが受光する光が、検出セル65がセットされていない場合に比べて弱くなる。これによって検出セル65がセットされたことを検知することができる。なお、濁度検出部62は、本発明の「検出手段」の一例であり、LED光源部62aは、本発明の「光源」および「検出手段」の一例であり、フォトダイオード受光部62bは、本発明の「受光部」および「検出手段」の一例である。 ・・・ 【0063】 また、上記実施形態では、LED光源部62aおよびフォトダイオード受光部62bからなる1つの濁度検出部62によって、検出セル65の有無を検出するとともに、検出セル65の内部に収容された液の濁度を検出する例を示したが、本発明はこれに限らず、検出セル65の有無の検出と、検出セル65の内部に収容された液の濁度の検出とを別個の検出部で行うようにしてもよい。」 (5)甲3に記載された事項 ア 甲3の記載事項 甲3の2頁には次の記載がある。 「 [図:0001409079000014.jpg] 」 イ 甲3から看取される事項 上記アの左側写真において、TRCReady-80本体前面に何らかの表示装置が付属していることが看取される(以下「甲3看取事項」という。)。 第5.当審の判断 第5-1.取消理由1(進歩性)について 1 本件発明1について (1)本件発明1と甲2発明との対比 ア(ア)構成a1の「サンプル(検体)を添加した変性試薬チューブ」における「サンプル(検体)」は、甲2発明が「核酸の精製および増幅と検出とを行う自動遺伝子検査装置TRCReady-80」(構成b3)であり、該サンプル(検体)は構成a1の「核酸精製キット」にセットされるものであることから、検査及び精製の対象となる核酸を含むことを前提とすることが明らかである。よって、構成a1の「サンプル(検体)を添加した変性試薬チューブ」内の「変性試薬に添加混合」した「サンプル(検体)」(構成a3)は、構成A1の「核酸を含む抽出液」に相当する。 (イ)そして、甲2発明は上記(ア)(構成b3)のとおり核酸の増幅を行うものであり、構成a2の「反応試薬が入った容器」、「開始液が入った容器」、「変性試薬チューブ」以外に、サンプル(検体)を有するサンプルポジション(SP)には容器類が存在せず、該各チューブ・容器の反応試薬・開始液・変性試薬の何れもが構成b3の「核酸の精製および増幅と検出」に用いられるのであるから、構成a2の前記チューブ・容器のいずれかに、核酸を増幅する試薬がサンプル(検体)と共に収容されて増幅反応が行われるものであることが自明であるといえる。 イ 構成b1の「モニター画面」は構成A2の「表示部」に相当する。 ウ(ア)構成a1、a2、b2において、「変性試薬チューブ」、「反応試薬が入った容器」、「開始液が入った容器」がそれぞれ配置される位置は、構成A1・A3の「容器設置部」に相当する。 (イ)構成c3の「反応試薬以外のものがセットされているか」、「反応試薬と開始液とのロットが一致するか」、「測定依頼と反応試薬の項目が一致するか」、「反応試薬の使用期限が切れていないか」なる各情報はそれぞれ、セットされている容器が反応試薬の容器か否か、その項目(種類)が測定依頼と一致する項目(種類)であるか、セットされている反応試薬の分類(種別)の一つである「使用期限」が適切なものであるかどうか、という、反応試薬(が入った容器)の種別に関する情報であるといえるから、「反応試薬が入った容器」の配置される位置に関し、構成A3の「容器設置部に設置されるべき」「容器の種別に関する関連情報」に相当するといえる。 (ウ)「自動遺伝子検査装置TRCReady-80」におけるチューブや容器の配置に関する構成b2の 「検出用ラック、精製用ラックをラックトレイにセットした場合、手前から奥へ、精製用ラック及び検出用ラックが順にセットされ、該各ラックにおいて左から右へサンプルポジション(SP)1~8が順に配列され、精製用ラックは横方向にD列を備え、各サンプルポジション(SP)のD列にはそれぞれ変性試薬チューブが、サンプル(検体)を添加し、キャップを外した状態で配置され、検出用ラックは横方向に手前から奥へ順にC列、B列、A列を備え、各サンプルポジション(SP)のA列にはそれぞれ反応試薬が入った容器が配置され、各サンプルポジション(SP)のB列にはそれぞれ開始液が入った容器が配置され」 なる特定事項と、モニター画面の依頼画面におけるチューブや容器の記載箇所の配置に関する構成c6の 「検出用ラック・精製用ラックをラックトレイにセットした場合の配置に合わせ、依頼画面の検出用ラック・精製用ラックを、各サンプルポジション(SP)1~8を左から右へ横方向に配置し、各サンプルポジション(SP)毎に下から上へ精製用ラックのD列、検出用ラックB列・A列、を順に並べた図柄」 とは、前者の「手前から奥へ」向かう方向及び左右方向がそれぞれ、後者の「下から上へ」向かう方向及び左右方向に対応している、すなわち、「依頼画面」における「反応試薬が入った容器」、「開始液が入った容器」、「変性試薬チューブ」の各位置は、「自動遺伝子検査装置TRCReady-80」における該各チューブ・容器の配置位置に対応しているということができる。 (エ)また、構成c6の「依頼とセットした試薬類とが」「異なっていれば依頼画面の検出用ラックと精製用ラックの該当箇所に」「付く」「×マーク」は、構成c7で「該×マーク上にカーソルを置くと、設定と異なる理由が表示され」るのであり、ここでの「設定と異なる理由」とは、構成c3の「反応試薬以外のものがセットされているか、反応試薬と開始液とのロットが一致するか、測定依頼と反応試薬の項目が一致するか、反応試薬の使用期限が切れていないか」についての情報である。 そして、該情報のうち「反応試薬以外のものがセットされているか」は、反応試薬が入った容器が配置されるべき位置に実際に配置された容器自体の種類に関する情報であり、「反応試薬と開始液とのロットが一致するか」は、配置された反応試薬が入った容器のロットに関する種別についての情報であり、「測定依頼と反応試薬の項目が一致するか」は、配置された反応試薬の種別が(そのSPの)測定依頼と合致しているかについての情報であり、「反応試薬の使用期限が切れていないか」は、配置された反応試薬の使用期限に関する種別についての情報であるといえる。 (オ)さらに、構成c9の「測定依頼作成後、試薬類設置前の段階で、反応試薬が入った容器が配置されるべきA列の各サンプルポジション(SP)に対応する位置に、検査項目名として例えば「MAC」と表示される」ことについて、「MAC」とは核酸検査における非結核性抗酸菌群検出(マイコバクテリウム・アビウム及びイントラセルラー核酸検出)を意味する表記であるから、この表示により、A列に設置すべき反応試薬の種類が決するといえる。 (カ)上記(イ)~(オ)をふまえると、構成c6における、 「検出用ラック・精製用ラックを、各サンプルポジション(SP)1~8を左から右へ横方向に配置し、各サンプルポジション(SP)毎に上から下へ検出用ラックA列、B列、精製用ラックのD列を順に並べた図柄上で、依頼とセットした試薬類とが異なっていなければ各サンプルポジション(SP)のA・B・D各列位置にチェックマークが付き、異なっていれば依頼画面の検出用ラックと精製用ラックの該当箇所に×マークが付」く「依頼画面」、及び、 構成c7の 「該×マーク上にカーソルを置くと、設定と異なる理由が表示され」ること、 構成c9の 「測定依頼作成後、試薬類設置前の段階で、反応試薬が入った容器が配置されるべきA列の各サンプルポジション(SP)に対応する位置に、検査項目名として例えば「MAC」と表示される」ことは、 合わせて、構成A3の「複数の・・・容器設置部のそれぞれの配置位置と、各・・・容器設置部に配置されるべき・・・・容器の種別に関する関連情報とを対応づけた画面を前記表示部に表示させること」に相当するといえる。 (キ)上記(カ)において、甲2発明が構成c6・c7・c9の表示をモニター画面にさせるための何らかの制御部を備えることは自明であるといえる。そして、該「何らかの制御部」は構成A3の「制御部」に相当する。 エ 構成b3の「未精製のサンプル(検体)に対して核酸の精製および増幅と検出とを行う自動遺伝子検査装置TRCReady-80」及び構成dの「自動遺伝子検査装置TRCReady-80」は、何れも構成A4の「拡散分析装置」に相当する。 (2)本件発明1と甲2発明との一致点・相違点 上記(1)のとおりであるから、本件発明1と甲2発明とは、下記アの点で一致し、下記イの各点で相違する。 ア 一致点 「A1’ 核酸を含む抽出液が注入された容器が設置される複数の容器設置部と、 A2 表示部と、 A3’ 前記複数の容器設置部のそれぞれの配置位置と、各容器設置部に設置されるべき容器の種別に関する関連情報とを対応付けた画面を前記表示部に表示させる制御部と、を備える、 A4 核酸分析装置。」 イ 相違点 (ア)相違点1-1(構成A1) 本件発明1では、「核酸を含む抽出液が注入された容器」及びその「容器設置部」が「前記抽出液中の核酸を増幅するための試薬を収容した増幅容器」及びその「増幅容器設置部」であるのに対し、甲2発明では、「反応試薬が入った容器」、「開始液が入った容器」、「変性試薬チューブ」の何れが構成A1(A3)の「増幅容器」に相当するのか不明であり、よってまた、前記甲2発明の何れのチューブ・容器をセットする位置が本件発明1の「増幅容器設置部」に相当するのか不明である点。 (イ)相違点1-2(構成A3) 上記相違点1-1に関連し、本件発明1では、制御部により表示部へ表示される、前記複数の容器設置部のそれぞれの配置位置と、各容器設置部に設置されるべき容器の種別に関する関連情報とを対応付けた画面における「容器」が「増幅容器」であるのに対し、甲2発明では「反応試薬が入った容器」であり、該「反応試薬が入った容器」が本件発明1の「増幅容器」に相当するものであるのか不明である点。 (ウ)相違点1-3(構成A6) 「関連情報」が、本件発明1では「各検体の識別情報の表示と、各検体に対応する増幅容器設置部の配置位置とに付された共通の色を含む」のに対し、甲2発明では、これに相当する構成を備えない点。 (3)相違点の検討 ア 相違点1-1について 甲4技術事項によれば、甲2発明の「自動遺伝子検査装置TRCReady-80」において、サンプル(検体)は「0.5mLスクリューキャップチューブに15μL+デッドボリューム分、分注し、キャップを外した状態で精製用ラックにセット」され(構成4f)、該「精製用ラックをTRCReady-80にセット」され、「TRCReady-80により、反応試薬に測定用サンプルが添加され、さらに開始液が添加されて混合され、」(構成4h)、反応試薬は「チューブ底に乾燥品である反応試薬が保持された反応試薬のチューブ」(構成4d)であり、「所定時間、所定温度でインキュベーションされながら、蛍光強度が経時的に測定され、測定された蛍光強度をもとに解析が行われ、測定結果画面に判定結果が表示され」(構成4i)、核酸精製後の測定においては、甲4技術事項の専用試薬キット付属の反応試薬によりRNAの増幅と蛍光標識の結合とが行われ(構成4c)、全工程を通じ「溶菌を行った測定用サンプルに対し、TRCR(R)核酸精製キット及びTRCReady-80による核酸精製を組み合わせて、TRCReady-80によってTRCR(R)核酸精製キットによる核酸精製と、それに引き続」き「RNA増幅と蛍光標識の結合を伴う「測定とが連続して実施される」(構成4b・4c)のであるから、甲2発明との構成要素対比からみて、甲2発明の「変性試薬チューブ」にサンプル(検体)が加えて反応試薬と共にセットしたTRCReady-80が動作され、「変性試薬チューブ」においてサンプル(検体)の核酸精製が行われ、該核酸精製が行われたサンプル(検体)が「反応試薬が入った容器」に開始液と共に注入され、そこでインキュベーションされることで核酸増幅反応が行われるものであると理解できる。 そうすると、前記甲4技術事項により理解された甲2発明(構成a1)の「反応試薬が入った容器」が、甲2発明の「自動遺伝子検査装置TRCReady-80」作動中、サンプル(検体)が開始液と共に加えられることにより本件発明1(構成A1)の「抽出液中の核酸を増幅するための試薬を収容した増幅容器」に相当することとなり、その状態において、構成a1の「反応試薬が入った容器をセットするA列内の8つの位置」が構成A1の「抽出液中の核酸を増幅するための試薬を収容した増幅容器が設置される複数の増幅容器設置部」に相当するといえる。 よって、甲2発明において、相違点1-1に係る構成を実質的に備えるようにすることは、甲4技術事項を参照することにより当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点1-2について 上記アで説示したとおり、甲2発明における「自動遺伝子検査装置TRCReady-80」作動中、「反応試薬が入った容器」、「反応試薬が入った容器をセットするA列内の位置」が、それぞれ本件発明1の「抽出液中の核酸を増幅するための試薬を収容した増幅容器」、「増幅容器が設置される複数の増幅容器設置部」に実質的に相当する。 よって、上記共通構成A3’における「容器」についても、これに対応する甲2発明の「反応試薬が入った容器」は、構成A3の「増幅容器」に相当することになり、甲2発明は実質的に、相違点1-2に係る構成A3に相当する構成を備えると理解することができる。 したがって、甲2発明において、相違点1-2に係る構成を実質的に備えるようにすることは、甲4技術事項を参照することにより当業者が容易に想到し得たことである。 ウ 相違点1-3について (ア)構成A6は、「関連情報」が「各検体の識別情報の表示と、各検体に対応する増幅容器設置部の配置位置とに付された共通の色を含む」というものである。 (イ)上記特定事項に関し、本件特許明細書の記載には、 「【0010】 本態様に係る核酸分析装置(100)において、制御部(401)は、複数の検体のそれぞれの識別情報と、各検体を処理するための試薬を収容する増幅容器(20)が設置されるべき増幅容器設置部(120)の配置位置とを互いに関連付ける情報を、関連情報として表示部(402)に表示させるように構成され得る。 【0011】 なお、「関連付ける情報」とは、色、数字、文字、図形などである。たとえば、検体の識別情報の表示領域と、当該検体に対応する容器設置部の画像とに付された同じ色は、互いに関連付ける情報である。」 「【0033】 核酸分析装置100には、1つの抽出容器設置部110と1つの増幅容器設置部120とがX軸に沿って並ぶ列が、Y軸方向に3つ設けられている。左端の列、中央の列、右端の列を、以下、それぞれ、「第1レーン」、「第2レーン」、「第3レーン」と称する。各レーンの抽出容器設置部110および増幅容器設置部120を囲む矩形状の領域内には、それぞれ異なる色が付されている。具体的には、第1レーンは青色に塗られ、第2レーンは緑色に塗られ、第3レーンは橙色に塗られている。」 「【0038】 画面500には、1つの第1画像510および1つの第2画像520が縦方向に沿って並ぶ列が、横方向に3つ設けられている。左端の列、中央の列、および右端の列は、それぞれ、図1(a)に示す核酸分析装置100内の第1レーン、第2レーン、および第3レーンに対応する。縦方向に並ぶ第1画像510および第2画像520には、核酸分析装置100内の対応するレーンと同じ色が付されている。具体的には、第1レーンに対応する第1画像510および第2画像520には青色が付され、第2レーンに対応する第1画像510および第2画像520には緑色が付され、第3レーンに対応する第1画像510および第2画像520には橙色が付されている。」 【0039】 ・・・第2画像520は、増幅容器設置部120の配置に対応する。 【0040】 表示領域530は、検体の識別情報を表示するための領域である。・・・3つの表示領域530には、上から順にそれぞれ、第1~第3レーンに対応する第1画像510および第2画像520と同じ色が付されている。具体的には、上側の表示領域530には青色が付され、中央の表示領域530には緑色が付され、下側の表示領域530には橙色が付されている。」 「【0042】 同様に、制御部401は、第2画像520に、増幅容器設置部120に対する増幅容器20の設置に関する第2関連情報を対応付けて、第2画像520および第2関連情報を画面500に表示する。」(以上、下線は当審にて付加) なる各記載がある。 (ウ)上記(イ)の各記載によれば、本件特許明細書には、核酸分析装置の複数の増幅容器設置部に各設置部ごとに異なる配色が施され、該各設置部の配置に対応するようにレーン分けされた、表示部の画面上の各増幅部の表示には、対応する前記核酸分析装置の各増幅部と共通する色が付され、さらに、同画面上の複数の各検体の識別情報を表示する領域にも、該各検体にそれぞれ対応する前記各増幅部と同じ色が付される、という実施形態が記載されるものと認められる。 (エ)上記(ウ)の実施形態から、上記構成A6の「各検体に対応する増幅容器設置部の配置位置」は、核酸分析装置の複数の増幅容器設置部の各設置部の位置を指すとも、該各設置部に対応してレーン分け表示された表示部の画面上の各増幅部の表示位置を指すとも解される。 しかし、上記第4.4において記載事項を認定した甲1~5、及び取消通知2において採用しなかった甲6・7を含む全甲号証には、そもそも核酸分析装置の複数の増幅容器設置部や、表示部の各検体の表示領域及び前記各増幅容器設置部に対応する各増幅容器設置部の表示領域に、何らかの配色(色分け)を施すことについてなんらの記載も示唆もないのであり、よって当然に、相違点1-3に係る構成のように、前記画面上の各検体の表示領域と、核酸分析装置の各増幅容器設置部又は前記画面上の各増幅容器設置部の表示領域とに共通の色を付すことについて、前記全甲号証の何れにも記載も示唆もない。 また、前記相違点1-3に係る構成が各甲号証の記載によるまでもなく周知技術や技術常識であるとか、設計事項であるということはできない。 そして、相違点1-3に係る構成を採用することにより、本件発明1は、オペレータが、表示部に表示された画面を参照することにより、その色情報の助けも得て処理対象の検体と増幅容器設置部との対応関係を容易に把握でき、各検体から抽出された核酸を含む抽出液を注入するための増幅容器をいずれの増幅容器設置部に設置すべきかを容易に把握でき、各検体に適する増幅容器を容器設置部に適正に設置できるという、格別な効果を奏するといえる。 (4)小括 上記(1)~(3)のとおりであるから、本件発明1は、甲2に記載された発明、並びに甲1・3~7に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が用に発明することができたものではない。 2 本件発明19について (1)本件発明19と甲2発明との対比 ア 本件発明1と本件発明19との関係について (ア)本件発明1の構成A1と本件発明19の構成S2とは、前者の「核酸を含む抽出液が注入され」なる特定事項が後者では「前記抽出容器において精製された前記抽出液が注入され」なる特定事項に置き換わっていること以外において共通する。 (イ)構成A2・A4と構成S3・S6とはそれぞれ共通する。 (ウ)構成A3と構成S5とは、前者の「前記複数の増幅容器設置部のそれぞれの配置位置」、「各増幅容器設置部」、「関連情報」がそれぞれ、後者では「前記増幅容器設置部の配置位置」、「前記増幅容器設置部」、「第2関連情報」に置き換わっている点と、「前記増幅容器設置部の配置位置と、前記増幅容器設置部に設置されるべき増幅容器の種別に関する第2関連情報とを対応付けた画面」を「前記表示部に表示」するのが、後者では「前記抽出容器および前記増幅容器の設置前」と特定されているのに対し前者においてこれに対応する特定がなされていない点、以外において共通する。 ここで、後者の「前記増幅容器設置部の配置位置」及び「前記増幅容器設置部」は何れも複数である場合を含むから、該場合について対応する前者と実質的に相違しない。 また、前者の「関連情報」と後者の「第2関連情報」とは名称の相違に過ぎないから、実質的に相違しない。 よって、後者の「前記増幅容器設置部の配置位置」及び「前記増幅容器設置部」は何れも複数である場合について、構成A3と構成S5とは共通する。 よって、構成A3と構成S5とは、「前記増幅容器設置部の配置位置と、前記増幅容器設置部に設置されるべき増幅容器の種別に関する第2関連情報とを対応付けた画面」を「前記表示部に表示」するのが、後者では「前記抽出容器および前記増幅容器の設置前」と特定されているのに対し、前者においてこれに対応する特定がなされていない点でのみ実質的に相違する。 (エ)本件発明19は、本件発明1が備えない構成S1・S4を備える。 (オ)本件発明1は、本件発明19が備えない構成A5・A6を備える。 イ 本件発明19の本件発明1との上記アのとおりの対応関係によれば、本件発明19の構成S3・S5・S6についての甲2発明との対比は、上記3-1における該当説示事項と同様である。 ウ(ア)構成a1、a2、b2において、「変性試薬チューブ」、「反応試薬が入った容器」、「開始液が入った容器」がそれぞれ配置される位置は、構成S1・S2・S4・S5の「容器設置部」に相当する。 (イ)構成c3の「反応試薬以外のものがセットされているか」、「反応試薬と開始液とのロットが一致するか」、「測定依頼と反応試薬の項目が一致するか」、「反応試薬の使用期限が切れていないか」なる各情報はそれぞれ、セットされている容器が反応試薬の容器か否か、その項目(種類)が測定依頼と一致する項目(種類)であるか、セットされている反応試薬の分類(種別)の一つである「使用期限」が適切なものであるかどうか、という、反応試薬(が入った容器)の種別に関する情報であるといえるから、「反応試薬が入った容器」の「配置される位置」に関し、構成S5の「容器設置部に設置されるべき」「容器の種別に関する第2関連情報」に相当するといえる。 (ウ)構成c3の「設定通りの正しい精製カートリッジが設置されているか」、「測定依頼と異なる精製カートリッジがセットされているか」、「精製カートリッジの使用期限が切れているか」なる各情報はそれぞれ、「変性試薬チューブ」が配置された「精製カートリッジ」、つまり、「精製カートリッジ」及びそこに配置された「変性試薬チューブ」について、その種別が「変性試薬チューブ」が配置された「精製カートリッジ」であるか、「精製カートリッジ」及びそこに配置される「変性試薬チューブ」の項目(種類)が測定依頼と一致する項目(種類)であるか、「精製カートリッジ」及びそこに配置される「変性試薬チューブ」の分類(種別)の一つである「使用期限」が適切なものであるかどうか、という、「精製カートリッジ」及びそこに配置される「変性試薬チューブ」の種別に関する情報であるといえるから、D列にセットされた各「精製カートリッジ」上の「変性試薬チューブ」の配置される位置に関し、構成S4の「第1の容器設置部に設置されるべき」「容器の種別に関する第1関連情報」に相当するといえる。 (2)本件発明19と甲2発明との一致点・相違点 上記(1)のとおりであるから、本件発明19と甲2発明とは、下記アの点で一致し、下記イの各点で相違する。 ア 一致点 「S1’ 第1の容器が設置される第1の容器設置部と S2’ 前記核酸を含む抽出液が注入された容器が設置される容器設置部と、 S3 表示部と、 S4’ 前記第1の容器設置部の配置位置と、前記第1の容器設置部に設置されるべき第1の容器の種別に関する第1関連情報とを対応付け、 S5’ 前記容器設置部の配置位置と、前記容器設置部に設置されるべき容器の種別に関する第2関連情報とを対応付けた画面を前記表示部に表示させる制御部と、を備える、 S6 核酸分析装置。」 イ 相違点 (ア)相違点19-1(構成S1) 本件発明19では、「第1の容器」及び「第1の容器設置部」がそれぞれ、「検体から核酸を抽出するための試薬を収容するとともに前記試薬を用いて核酸を含む抽出液を精製するための抽出容器」及びその「抽出容器設置部」であるのに対し、甲2発明では、「反応試薬が入った容器」、「開始液が入った容器」、「変性試薬チューブ」の何れが本件発明19の構成S1(S4)の「抽出容器」に相当するのか不明であり、よってまた、前記甲2発明の何れのチューブ・容器をセットする位置が本件発明19の構成S1(S4)の「抽出容器設置部」に相当するのか不明である点。 (イ)相違点19-2(構成S2) 上記相違点1-1と同様の相違点として、次の相違点が存在する。 すなわち、本件発明19では、「核酸を含む抽出液が注入された容器」及びその「容器設置部」がそれぞれ、「前記抽出容器において精製された前記抽出液が注入され、前記抽出液中の核酸を増幅するための試薬を収容した増幅容器」及びその「増幅容器設置部」であるのに対し、甲2発明では、「反応試薬が入った容器」、「開始液が入った容器」、「変性試薬チューブ」の何れが本件発明19の構成S2(S5)の「増幅容器」に相当するのか不明であり、よってまた、前記甲2発明の何れのチューブ・容器をセットする位置が本件発明19の構成S2の「増幅容器設置部」に相当するのか不明である点。 (ウ)相違点19-3(構成S4) 上記相違点19-1に関連し、本件発明19では、制御部により表示部へ表示される、前記複数の容器設置部のそれぞれの配置位置と、各容器設置部に設置されるべき容器の種別に関する関連情報とを対応付けた画面における「容器設置部」が「抽出容器設置部」であり、「関連情報」が「抽出容器設置部に設置されるべき抽出容器の種別に関する第1関連情報」であるのに対し、甲2発明では、「精製カートリッジ」及びそこに配置される「変性試薬チューブ」について、前記「容器設置部」及び「第1関連情報」についての特定事項に外形上相当するものの、該「変性試薬チューブ」が本件発明19の「抽出容器」に相当するか不明である点。 (エ)相違点19-4(構成S5) 上記相違点1-2と同様の相違点として、次の相違点が存在する。 上記相違点19-1に関連し、本件発明19では、制御部により表示部へ表示される、前記複数の容器設置部のそれぞれの配置位置と、各容器設置部に設置されるべき容器の種別に関する第2関連情報とを対応付けた画面における「容器」が「増幅容器」であるのに対し、甲2発明では「反応試薬が入った容器」であり、該「反応試薬が入った容器」が本件発明19の「増幅容器」に相当するものであるのか不明である点。 (オ)相違点19-5(構成S4・S5) 上記相違点19-3・19-4に関連し、さらに、制御部が、前記第1の容器設置部の配置位置と、前記第1の容器設置部に設置されるべき第1の容器の種別に関する第1関連情報とを対応付け、前記容器設置部の配置位置と、前記容器設置部に設置されるべき容器の種別に関する第2関連情報とを対応付けた画面を前記表示部に表示させるのが、本件発明19では「前記抽出容器および前記増幅容器の設置前」であるのに対し、甲2発明では、反応試薬が入った容器に関する検査項目名は「測定依頼作成後、試薬類設置前の段階で」表示されるものの、「開始液が入った容器」や「変性試薬チューブ」などその他の容器についてそれらの設置前に、「第1関連情報」に相当する何らかの情報を表示する構成を備えない点。 (3)相違点の検討 ア 相違点19-1について 甲4技術事項の構成4fにおける、測定用サンプルを分注して精製用ラックにセットされる「0.5mLスクリューキャップチューブ」は、「TRCReady-80」の精製用ラックにサンプル(検体)と共にセットされる点で共通する、甲2発明の「変性試薬チューブ」に相当する要素であるといえる。 そして、甲4技術事項において、精製用ラックはTRCR(R)核酸精製キットによるものであるから、該精製用ラック上の変性試薬チューブに分注されたサンプル(検体)は、TRCReady-80によって、該キットの目的である核酸精製(抽出)が行われる(構成4b)のであるから、該核酸精製(抽出)が行われる甲2発明の「変性試薬チューブ」は、構成S1の「抽出容器」に相当し、「変性試薬チューブ」が「配置され」る精製用ラック上の位置は、構成S1(S4)の「抽出容器設置部」に相当する。 よって、甲2発明において、これが相違点19-1に係る構成を実質的に備えるようにすることは、甲4技術事項を参照することにより当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点19-2について 上記1(3)アと同様の理由により、甲2発明において、相違点19-2に係る構成を実質的に備えるようにすることは、甲4技術事項を参照することにより当業者が容易に想到し得たことである。 ウ 相違点19-3について 上記アにおいて説示したとおり、核酸精製(抽出)が行われる甲2発明の「変性試薬チューブ」は、構成S1の「抽出容器」に相当し、「変性試薬チューブ」が「配置され」る精製用ラック(精製カートリッジ)上の位置は、構成S1(S4)の「抽出容器設置部」に実質的に相当する。 よって、相違点19-3に係る構成について、その「容器設置部」及び「関連情報」についての特定事項に外形上相当する甲2発明の「変性試薬チューブ」及び「設定通りの正しい精製カートリッジが設置されているか、測定依頼と異なる精製カートリッジがセットされているか、精製カートリッジの使用期限が切れているか」なる各情報はそれぞれ、実質的にも、該相違点19-3に係る「容器設置部」及び「関連情報」についての特定事項に相当するといえる。 よって、甲2発明において、これが相違点19-3に係る構成を実質的に備えるようにすることは、甲4技術事項を参照することにより当業者が容易に想到し得たことである。 エ 相違点19-4について 上記1(3)イと同様の理由により、甲2発明において、相違点19-4に係る構成を実質的に備えるようにすることは、甲4技術事項を参照することにより当業者が容易に想到し得たことである。 オ 相違点19-5について (ア)上記ウで説示したとおり、甲2発明の「変性試薬チューブ」は、構成S1の「抽出容器」に相当し、甲2発明の「変性試薬チューブ」が「配置され」る精製用ラック(精製カートリッジ)上の位置は、構成S1(S4)の「抽出容器設置部」に実質的に相当する。 しかし、上記ウのとおり、甲2発明において、「変性試薬チューブ」について本件発明19の「第2の関連情報」にするのは「設定通りの正しい精製カートリッジが設置されているか、測定依頼と異なる精製カートリッジがセットされているか、精製カートリッジの使用期限が切れているか」なる各情報であり、何れも、構成S4の「容器」に相当する「変性試薬チューブ」を設置した後で得られる情報である。 そして、相違点19-5に係る、「変性試薬チューブ」について、その設置前に、その設置部の配置位置と、該設置部に設置されるべき変性試薬チューブの種別に関する関連情報を表示することは、甲1・3~7の何れにも記載されていない。 また、甲2発明において、「変性試薬チューブ」を設置した後で得られる情報は、「変性試薬チューブ」を設置する前には得られない情報であるから、該情報を「容器」の設置前に表示するように変更することには阻害要因が存在する。 また、甲2発明において、「変性試薬チューブ」の設置位置は変性試薬チューブ専用の設置位置であるから、事前に複数の前記設置位置に対し個別に「変性試薬チューブ」を設置すべき旨の表示を行う必要性に乏しいし、甲2発明が、個別の検体に対応する各サンプルポジションごとに、異なる「変性試薬チューブ」を設置するような使用形態を想定していると認めるに足る記載を甲2の記載中に見いだすこともできない。よって、甲2発明において、「変性試薬チューブ」について、「抽出容器設置部の配置位置と、前記抽出容器設置部に設置されるべき抽出容器の種別に関する第1関連情報」を「前記抽出容器」「の設置前に、前記表示部に表示させる」ことに相当する構成を付加する動機付けを欠くといえる。 さらに、甲1及び甲2~甲7の各甲号証を参照しても、相違点19-5に相当する技術事項は記載されていないし、該技術事項が周知技術や技術常識、設計事項であるということもできない。 そして、相違点19-5に係る構成を採用することにより、本件発明19は、オペレータが、表示部に表示された画面を参照することにより、抽出容器設置部に設置すべき抽出容器を設置前に正しく把握し、適性に前記設置を行え、不適正な種別の容器を用いて検体の処理が行われることや、それによる容器の無駄遣いを防止するという、格別な効果を奏するものである。 (イ)申立人の主張について 申立人はX意見書2において、相違点19-5に関し、概略、 「本件特許では増幅容器の種別と抽出容器の種別は特に区別されておらず、同程度に扱われていることがわかります。また、訂正後の請求項19の記載からでは、抽出容器の「種別」が何の「種別」を具体的に意味するのか全く理解できません。そうなると、訂正後の請求項19は、甲第2号証に記載された増幅容器の種別と配置位置を関連付けて表示することを、単に抽出容器に適用したに過ぎず、抽出容器の種別と配置を表示することで格別顕著な効果が奏されるものとは理解することはできません。」 などと主張する。 しかし、仮に前記主張のとおり、本件発明1が「甲第2号証に記載された増幅容器の種別と配置位置を関連付けて表示することを抽出容器に適用」したものにあたるとしても、甲2発明において抽出容器(変性試薬チューブ)についての設置適否の表示を、設置前の表示に変更することに阻害要因と動機付けの欠如が存することは、上記2(3)オにおいて説示したとおりである。 よって、申立人の前記主張は採用できない。 (4)小括 上記(1)~(3)のとおりであるから、甲2に記載された発明、並びに甲1・3~7に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 3 本件発明5~18について 本件発明5~18は何れも本件発明1の全ての構成を含み、かつ、それをさらに減縮したものである。 そうすると、本件発明5~18と甲2発明との間には、少なくとも相違点1-3と同様の相違点が存在する。 そして、甲2発明において相違点1-3の構成とすることが、全甲号証及び周知技術に基づいても当業者にとって容易想到でないことは、上記1(3)ウで説示したとおりであるから、本件発明5~18についても同様の理由により、甲2発明並びに甲1・甲3~7に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 4 甲1に記載された発明に基づく進歩性について 申立人は本件特許異議申立てにおいて、甲1に記載された発明に基づく本件各発明の進歩性欠如について主張するものである。 しかし、上記1~3で説示したとおり、申立人が提出した全甲号証の何れにも、上記相違点1-3及び相違点19-5に係る技術事項は記載されておらず、周知技術や設計事項に該当するともいえないことから、甲1に記載された発明を主引用発明としても、本件発明1・5~18と主引用発明との間には少なくとも上記相違点1-3と同様の相違点が存在し、本件発明19と主引用発明との間には少なくとも上記相違点19-5と同様の相違点が存在し、主引用発明において何れの相違点の構成とすることも、上記1(3)ウ・2(3)オで説示したとおり、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 5 中括 上記1~4のとおりであるから、本件発明1・5~19は何れも、甲1又は甲2に記載された発明、他の甲号証に記載された事項、及び周知技術に基づいても、当業者が容易に発明することができたものではない。 第5-2.取消理由2(明確性要件)について 取消通知2において通知した取消理由2に係る、請求項8及び9についての他請求項引用形式上の不備はいずれも、本件訂正により解消した。 また、その他、本件発明1・5~19が不明確であるといえる理由は見出せず、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。 第5-3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 申立人は本件特許異議申立書において、本件請求項1~18に係る発明について、甲1に記載された発明に甲2・甲5に記載された発明を組み合わせることで、また、本件請求項19に係る発明について、甲1に記載された発明に甲2・甲5・甲6に記載された発明を組み合わせることで、それぞれ当業者が容易に発明することができた旨主張する。 しかし、該主張については、上記第5-1.4において説示したとおりであるから、採用することはできない。 第6.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1・5~19に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1・5~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701066

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