特許異議申立
2024-700729
紙用組成物
- 審判番号
- 2024-700729
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-203578
- 登録番号
- 7426805
- 請求日
- 2024年08月02日
- 審決日
- 2025年07月31日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】花王株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
- 【異議申立人】森山 涼子
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 金丸 治之
- 分類
- P1652.113-YAA(D21C) / P1652.121-YAA(D21C) / P1652.536-YAA(D21C) / P1652.537-YAA(D21C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7426805号発明「紙用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7426805号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7426805号の請求項1、4、5、7及び8に係る特許を維持する。
特許第7426805号の請求項2、3及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7426805号の請求項1~12に係る特許についての出願(特願2019-203578号)は、令和元年11月8日の出願であって、令和6年1月25日にその特許権の設定登録がされ、令和6年2月2日に特許掲載公報が発行された。
本件特許の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。
令和6年 8月 2日 :特許異議申立人森山涼子(以下「申立人」という。)による請求項1~8に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和6年11月19日付け:取消理由通知書
令和7年 1月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年 2月28日 :令和7年1月15日提出の訂正請求書に対する手続補正書の提出(以下、この手続補正書で補正された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和7年 4月11日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7426805号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物であって、
前記吸水性樹脂は低分子化されている、紙用組成物。」を、
「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物であって、
灰分中のナトリウムの含有率が15%以上であり、
前記吸水性樹脂は、低分子化されており、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである、紙用組成物。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4及び8も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項4に記載された
「請求項1~3の何れか1項に記載の紙用組成物。」を、
「請求項1に記載の紙用組成物。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項5に記載された
「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含むリサイクル紙であって、
前記吸水性樹脂は低分子化されている、リサイクル紙。」を、
「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含むリサイクル紙であって、
灰分の15%以上がナトリウムであり、
前記吸水性樹脂は、低分子化されており、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである、リサイクル紙。」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7及び8も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項7に記載された
「請求項6に記載のリサイクル紙。」を、
「請求項5に記載のリサイクル紙。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)。
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項8に記載された
「請求項1~4の何れか1項に記載の紙用組成物、及び請求項5~7の何れか1項に記載のリサイクル紙からなる群」を、
「請求項1に記載の紙用組成物、請求項4に記載の紙用組成物、請求項5に記載のリサイクル紙、及び請求項7に記載のリサイクル紙からなる群」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1、3、4及び8は、請求項3、4及び8が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項1、3、4及び8は、一群の請求項である。
また、本件訂正前の請求項2~4及び8は、請求項3、4及び8が、本件訂正前の請求項2の記載を引用する関係にあるから、同様に請求項2~4及び8は、一群の請求項である。
さらに、本件訂正前の請求項5~8は、請求項6~8が、本件訂正前の請求項5の記載を引用する関係にあるから、訂正事項5によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項5~8は、一群の請求項である。
そうすると、共通する請求項8を有するこれらの一群の請求項は組み合わされ、訂正前の請求項1~8は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~8〕について請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「紙用組成物」を、灰分中のナトリウムの含有率が15%以上であるものに限定し、請求項1の「吸収性樹脂」を、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものに限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0040】及び【0049】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2及び3について
訂正事項2は請求項2を、訂正事項3は請求項3を、それぞれ削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2及び3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2及び3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項4の引用請求項から請求項2及び3を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項2によって削除された請求項2及び訂正事項3によって削除された請求項3を引用するという明瞭でない状態を解消するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項5の「リサイクル紙」を、灰分中のナトリウムの含有率が15%以上であるものに限定し、請求項5の「吸収性樹脂」を、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものに限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5は、本件特許の明細書の【0040】及び【0049】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項5は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項6を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項7について
訂正事項7は、請求項7の引用請求項を訂正前の請求項6から請求項5に変更するものであるが、請求項5は、訂正前の請求項6の「吸収性樹脂」を、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものという事項によってさらに限定したものであり、当該訂正前の請求項6から請求項5に変更することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7)訂正事項8について
訂正事項8は、請求項8の引用請求項から請求項2、3及び6を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項2によって削除された請求項2、訂正事項3によって削除された請求項3及び訂正事項6によって削除された請求項6を引用するという明瞭でない状態を解消するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1、4、5、7及び8に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1、4、5、7及び8を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、4、5、7及び8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物であって、
灰分中のナトリウムの含有率が15%以上であり、
前記吸水性樹脂は、低分子化されており、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである、紙用組成物。」
「【請求項4】
灰分の含有率が0.65質量%以下である、請求項1に記載の紙用組成物。
【請求項5】
吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含むリサイクル紙であって、
灰分の15%以上がナトリウムであり、
前記吸水性樹脂は、低分子化されており、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである、リサイクル紙。」
「【請求項7】
灰分が0.65質量%以下である、請求項5に記載のリサイクル紙。
【請求項8】
請求項1に記載の紙用組成物、請求項4に記載の紙用組成物、請求項5に記載のリサイクル紙、及び請求項7に記載のリサイクル紙からなる群から選択される1種又は2種以上を含む吸収性物品。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の請求項1、3~8の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
発明の詳細な説明の【0008】~【0011】の記載から、本件特許に係る発明が解決しようとする課題は「前述した従来技術が有する欠点を解消し得る、紙用組成物を提供すること」であり、「強度の高いリサイクル紙を得ることができる」ような「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物」を提供することである。ここで「前述した従来技術が有する欠点」とは、「該パルプ繊維どうしの接着性が低く、粘度が低いものとなっている」(【0008】)こと及び「紙を製造する場合、製造される紙に含まれるパルプどうしの接着性を高め、該紙の強度を高くするために、」「紙力増強剤を添加する必要がある」(【0009】)ことである。そして本件特許に係る発明は、【0039】~【0040】の記載から把握できるとおり、紙用組成物の粘度を高くすることで、紙用組成物に含まれるパルプ同士の接着性を高め、紙力増強剤を添加せず又は低減させても強度の高いリサイクル紙を製造すること、又は、吸水性樹脂を低分子化させることにより粒感をなくすことで、上記の課題を解決したものと認められ、さらに、スラリー状態における粘度は、低分子化に影響することは技術常識である。
一方で、本件特許の請求項1に係る発明は「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物であって、前記吸水性樹脂は低分子化されている、紙用組成物。」と規定しているところ、請求項1の「前記吸水性樹脂は低分子化されている」によって規定されるものと、【0041】で示された、「質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過する」程度に「低分子化」されたものや、【実施例】で好適なものとして説明された、目開き500μmのメッシュを通過する程度に「低分子化」されたものとは、明らかに大きな乖離があるものであり、請求項1の「前記吸水性樹脂は低分子化されている」構成を有する「紙用組成物」が、発明の詳細な説明の記載により、上記発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは到底認められない。
(2)取消理由2(新規性)
本件特許の請求項1及び5に係る発明は、以下の甲5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由3(進歩性)
本件特許の請求項2~4、6~8に係る発明は、以下の甲5に記載された発明、並びに甲1、引1~引3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲5:特開2010-59586号公報(申立人の提示した甲第5号証)
甲1:特開2014-217835号公報(同甲第1号証)
引1:国際公開第2018/119970号(当審で調査し引用した文献)
引2:特開2017-128840号公報(同上)
引3:特開2019-7123号公報(同上)
2 取消理由通知に記載した取消理由についての当審における判断
当審合議体は以下のとおり、上記取消理由で通知した取消理由1~3によっては、本件発明1、4、5、7、8に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
(1)引用文献の記載及び引用発明
ア 甲5
(ア)甲5の記載
甲5には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
「【請求項1】
使用済み紙おむつを破断するとともにパルプ成分と非パルプ成分とに分解し、該分解したパルプ成分と非パルプ成分との混合物を水で洗浄したのちに、該混合物から非パルプ成分を分離して回収し、粉砕機(1)によって、パルプ成分の繊維を破断することなく、非パルプ成分が除去されたパルプ成分に混在していて吸水膨張している高分子ポリマーを10μm以下の微粒子状に破断して、微粒子状の高分子ポリマーとパルプ成分と水とを含む懸濁液を形成し、該懸濁液を脱水してパルプ成分から高分子ポリマーを水と共に除去して、パルプ成分を回収することを特徴とする使用済み紙おむつの再生利用方法。」
「【0010】
本発明に係る使用済み紙おむつの再生利用方法によれば、吸水膨張している高分子ポリマーが、粉砕機1によって懸濁液化可能な10μm以下の微粒子まで破断されるので、脱水処理によってパルプ成分から高分子ポリマーを水と共に容易に除去でき、これにてパルプ成分のみを確実に回収することができる。そのうえで、薬剤を使わずに高分子ポリマーを微粒子状にするので、その薬剤の保管等の管理が不要となり、再生利用方法の実施に伴う管理の手間等を抑えることができる。また、粉砕機1は、パルプ成分の繊維を破断しないので、パルプ成分の繊維長が過度に短くなって、パルプ成分を段ボール等に再利用できなくなることを防止できる。また、非パルプ成分を回収するので、該非パルプ成分を再生樹脂等として再利用することができる。」
「【0022】
脱水工程では、前記懸濁液が脱水用ドラムに投入され、該脱水用ドラムが回転することで脱水される。脱水用ドラムは、直径3mmの孔が多数設けられており、水と混ざり合った高分子ポリマーが、該水と共に前記孔を通り抜けてパルプ成分から除去される。水と高分子ポリマーとは下水道等に排水されるが、高分子ポリマーは無害のため、環境等に悪影響を与えない。また、高分子ポリマーは微粒子状に破断されているために下水道等の詰まりを生じさせることもない。
【0023】
回収工程では、脱水用ドラム内からパルプ成分が取り出される。そして、この回収されたパルプ成分が、段ボール等に加工されて再利用される。」
(イ)甲5に記載されていると認められる事項
【請求項1】の「パルプ成分を回収することを特徴とする使用済み紙おむつの再生利用方法。」において、回収されるパルプ成分は、【0010】の「粉砕機1は、パルプ成分の繊維を破断しないので、パルプ成分の繊維長が過度に短くなって、パルプ成分を段ボール等に再利用できなくなることを防止できる。」の記載より、段ボールに使用されることが想定されていることは明らかであり、当該パルプ成分を含む段ボールが記載されているに等しい。そして、このようなパルプ成分は、「紙用組成物」といえる。
(ウ)引用発明
よって、甲5には、以下の各発明が記載されていると認める。
[引用発明1]
「使用済み紙おむつから回収した高分子ポリマーは、吸水膨張している状態において、10μm以下の微粒子状である、
前記使用済み紙おむつから回収した前記高分子ポリマーを除去したとしているパルプ成分を含む紙用組成物。」
[引用発明2]
「使用済み紙おむつから回収した高分子ポリマーは、吸水膨張している状態において、10μm以下の微粒子状である、
前記使用済み紙おむつから回収した前記高分子ポリマーを除去したとしているパルプ成分を含む段ボール。」
イ 甲1
甲1には、以下の記載がある。
「【0004】
また、特許文献2は、使用済み紙おむつをリサイクルするにあたり、薬剤を使わずに紙おむつに含まれる高分子ポリマーを微粒子状にできる使用済みおむつの再生利用方法を開示している。その再生利用方法は、使用済み紙おむつを破断するとともにパルプ成分と非パルプ成分とに分解し、該分解したパルプ成分とビニール等の非パルプ成分との混合物を水で洗浄したのちに、該混合物から非パルプ成分を分離して回収し、非パルプ成分が除去されたパルプ成分に混在していて吸水膨張している高分子ポリマーを、粉砕機によってパルプ成分の繊維を破断することなく10μm以下の微粒子状に破断して、微粒子状の高分子ポリマーとパルプ成分と水とを含む懸濁液を形成し、該懸濁液を脱水してパルプ成分から高分子ポリマーを水と共に除去して、パルプ成分を回収するものである(請求項1)。特許文献2は、さらに、計量工程において、紫外線ランプやオゾン(気体)やオゾン水等を用いて使用済み紙おむつの殺菌および消臭を行うことを開示している(段落[0015])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009ー183893号公報
【特許文献2】特開2010ー59586号公報」
「【0007】
また、特許文献2に記載のように、粉砕機によって、10μm以下の微粒子状に破断された高分子吸水材は、微小な粒子はパルプ繊維間に引っかかりやすく、物理的な水洗だけでは完全に除去しきない。これにより回収したパルプ繊維を再利用しようとした際には、残存した高分子吸水材が異物となってしまう。また、吸水膨張している高分子ポリマーを粉砕機で粉砕するため、手間と粉砕設備および処理エネルギーが多く必要となり、生産効率が悪い。」
ウ 引1
引1には、以下の記載がある(翻訳は日本語ファミリー文献である特表2020-514051号公報による。)。
「
[図:0001428998000001.jpg]
」
(第2頁第18行~第24行)
<翻訳>
( 本発明は、吸収性物品のリサイクル方法を開示する。前記吸収性物品は、吸収性材料、繊維性材料、及び包装材料を含む。前記リサイクル方法は、(a)前記吸収性物品の汚れ物を除去するように、前記吸収性物品を第一溶液で洗浄する工程と、(b)前記吸収性物品を脱水するように、前記吸収性物品を第一高張液に浸す工程と、(c)脱水された前記吸収性物品を砕け、第二溶液の容器の底部に前記吸収性材料を堆積させ、前記容器の底部に前記繊維性材料を懸濁させ、前記第二溶液の液面に前記包装材料を懸濁させる工程と、(d)前記吸収性材料、前記繊維性材料及び前記包装材料をリサイクルする工程と、を含む。)
「
[図:0001428998000002.jpg]
[図:0001428998000003.jpg]
」
(第2頁第25行~第3頁第6行)
<翻訳>
( いくつかの実施形態において、前記吸収性物品は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、タンポン、母乳パッド、成人用おむつ、クリーニングパッド、及び介護パッドからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記吸収性材料は、ポリアクリル酸ナトリウムであり、前記繊維性材料は、フラッフパルプであり、前記包装材料は、ポリエチレンフィルムを含む。前記包装材料は、プラスチックシート又は不織布層を更に含む。いくつかの実施形態において、前記第一溶液は、水と前記第一高張液のいずれかであり、前記第二溶液は、水と第二高張液のいずれかであり、前記第一高張液及び前記第二高張液は、それぞれ、イオン溶液、分子溶液、糖溶液、自然環境に存在する溶質を有する高張液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記高張液中のイオン又は分子の重量パーセントは0.1%を超えている。)
エ 引2
引2には、以下の記載がある。
「【0008】
本発明は、パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品からパルプ繊維を回収し、衛生用品に再利用可能なリサイクルパルプを製造する方法に関する。」
「【0061】
本発明の方法により得られるリサイクルパルプは、好ましくは灰分が0.65質量%以下である。また、pHが2.5以下のオゾン含有水溶液で処理することにより、未使用パルプ中に含まれる異物をも除去することができるので、未使用パルプの灰分よりも低い灰分のリサイクルパルプを得ることもできる。本発明の方法により得られるリサイクルパルプは、より好ましくは灰分が0.11質量%以下であり、さらに好ましくは灰分が0.05~0.11質量である。
なお、灰分の測定方法は、次のとおりである。
【0062】
[灰分]
灰分とは、有機質が灰化されてあとに残った無機質または不燃性残留物の量をいう。灰分は、生理処理用品材料規格の「2.一般試験法」の「5.灰分試験法」に従って測定する。すなわち、灰分は、次のようにして測定する。
あらかじめ白金製、石英製または磁製のるつぼを500~550℃で1時間強熱し、放冷後、その質量を精密に量る。試料2~4gを採取し、るつぼに入れ、その質量を精密に量り、必要ならばるつぼのふたをとるか、またはずらし、初めは弱く加熱し、徐々に温度を上げて500~550℃で4時間以上強熱して、炭化物が残らなくなるまで灰化する。放冷後、その質量を精密に量る。再び残留物を恒量になるまで灰化し、放冷後、その質量を精密に量り、灰分の量(%)とする。
【0063】
本発明の方法により得られるリサイクルパルプは、好ましくは2.0以上の抗菌活性値を有する。リサイクルパルプの抗菌活性値は、より好ましくは4.5以上であり、さらに好ましくは5.5以上である。抗菌活性値はJIS Z 2801に従って測定する。
【0064】
本発明の方法により得られるリサイクルパルプは、灰分が少なくかつ抗菌活性値が高いので、衛生用品に再利用可能なリサイクルパルプである。
【0065】
本発明の方法により得られたリサイクルパルプは、好ましくは、衛生用品を構成する吸収体、ティッシュおよび不織布の少なくとも1つに使用される。」
オ 引3
引3には、以下の記載がある。
「【0055】
以下、使用済の衛生用品のパルプ繊維から、リサイクルパルプ繊維を製造する方法(以下、単に「リサイクルパルプ繊維の製造方法」と称する場合がある)について説明する。
なお、使用済の衛生用品とは、使用者によって使用された衛生用品であって、使用者の液体の排泄物を吸収した状態の衛生用品を含み、使用されたが排泄物を吸収していないもの、未使用のもの等を含む。」
「【0143】
本開示では、リサイクルパルプ繊維が、好ましくは0.65質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下、さらに好ましくは0.30質量%、そしてさらにいっそう好ましくは0.20質量%以下の灰分率を有する。そうすることにより、リサイクルパルプ繊維、並びにリサイクルパルプ繊維を用いた物品が、白さ及び親水性に優れる。その結果、リサイクルパルプ繊維を用いた物品に対して使用者が心理的抵抗感を有しにくくなる。
上記灰分率は、高吸収性ポリマーを不活化する不活化工程S31において、不活化剤として排泄物に含まれる金属イオンと錯体を形成可能な酸、特にクエン酸を選択することにより下げることができる。
【0144】
本明細書では、灰分は、有機質が灰化されてあとに残った無機質又は不燃性残留物の量を意味し、灰分率は、促成すべき資料に含まれる灰分の比率(質量比)を意味する。上記灰分率は、生理処理用品材料規格の「2.一般試験法」の「5.灰分試験法」に従って測定する。具体的には、灰分率は、以下の通り測定される。
(1)あらかじめ白金製、石英製又は磁製のるつぼを、500~550℃で1時間強熱し、放冷後、その質量を精密に量る。
(2)120℃で60分乾燥したリサイクルパルプ繊維2~4gを採取し、るつぼに入れ、その質量を精密に量り、必要ならばるつぼのふたをとるか、またはずらし、初めは弱く加熱し、徐々に温度を上げて500~550℃で4時間以上強熱して、炭化物が残らなくなるまで灰化する。
(3)放冷後、その質量を精密に量る。再び残留物を恒量になるまで灰化し、放冷後、その質量を精密に量り、灰分率(質量%)とする。」
(2)理由1(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下検討する。
ア 発明の課題
本件特許の【0008】~【0011】の記載から、本件特許に係る発明が解決しようとする課題は「前述した従来技術が有する欠点を解消し得る、紙用組成物を提供すること」であり、「強度の高いリサイクル紙を得ることができる」ような「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物」を提供することである。
ここで「前述した従来技術が有する欠点」とは、「該パルプ繊維どうしの接着性が低く、粘度が低いものとなっている」(【0008】)こと及び「紙を製造する場合、製造される紙に含まれるパルプどうしの接着性を高め、該紙の強度を高くするために、」「紙力増強剤を添加する必要がある」(【0009】)ことである。
イ 発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か
本件発明1は「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物であって、前記吸水性樹脂は低分子化されている、紙用組成物。」と規定している。
ここで、本件発明1の「低分子化」とは、発明の詳細な説明には「低分子化された吸水性樹脂であるか否かは、吸収性物品又はそれに含まれる吸水性樹脂が入手できる場合は、その吸水性樹脂の分子量と判定対象の吸水性樹脂の分子量とを比較し、判定対象の吸水性樹脂の分子量の方が小さい場合に、判定対象の吸水性樹脂は、低分子化されていると判定することができる。」(【0023】)と記載されており、判定対象の吸水性樹脂の分子量が、低分子化される前の吸水性樹脂に比して、少しでも小さければ、当該本件特許の「低分子化」に該当するものである。
一方で、本件特許の発明の詳細な説明の【0039】の「紙用組成物10は、該紙用組成物に含まれる吸水性樹脂が低分子化されているため、粘度が高い。したがって、紙用組成物10は、該紙用組成物10に含まれるパルプ同士の接着性が高いため、該紙用組成物10に紙力増強剤を添加することなく、又は紙力増強剤の添加量を低減させたとしても、強度の高いリサイクル紙を製造することができる。また、紙用組成物10は、該紙用組成物に含まれる吸水性樹脂が低分子化されているため、粒感のないものとなっている。」という記載、【0040】の「また、本発明の紙用組成物は、該紙用組成物に含まれる吸水性樹脂が、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものであってもよい。これにより、本発明の紙用組成物は、粘度が高いものとなっている。したがって、本発明の紙用組成物においては、該紙用組成物に含まれるパルプ同士の接着性が高いため、該紙用組成物に紙力増強剤を添加することなく、又は紙力増強剤の添加量を低減させたとしても、強度の高いリサイクル紙を製造することができる。また、本発明の紙用組成物は、粒感のないものとなっている。」という記載から、本件発明1は、紙用組成物の粘度を高くすることで、紙用組成物に含まれるパルプ同士の接着性を高め、紙力増強剤を添加せず又は低減させても強度の高いリサイクル紙を製造すること、又は、吸水性樹脂を低分子化させることにより粒感をなくすことで、上記アの課題を解決したものと認められる。
そして、スラリー状態における粘度が高くなる程度は、低分子化の程度が影響を与えることは技術常識といえるところ、具体的には、【0041】に「紙用組成物10に含まれる吸水性樹脂は、該紙用組成物10の粘度を高くする観点から、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものであることが好ましく、目開き700μmの篩を通過するものであることがより好ましく、目開き500μmの篩を通過するものであることが更に好ましい。」と記載され、【0105】~【0126】の実施例においても、目開き500μmのメッシュを通過する程度に「低分子化」された吸水性樹脂を含むものが、「乾燥強度」、「湿潤強度」及び「感触(粒感)」という面で好適なものであったことが示されているものであり、吸水性樹脂を、これら【0041】や実施例に記載された程度に低分子化することで、上記課題を解決したことが記載されている。
そうすると、請求項1には「前記吸水性樹脂は低分子化されており、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである」と規定しており、これは、発明の詳細な説明の記載により、上記発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであると判断できる。
そして、請求項5についても同様であり、さらに、請求項1を引用する請求項4、8及び請求項5を引用する請求項7、8についても同様である。
ウ 小括
よって、本件発明1、4、5、7及び8は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(3)理由2(新規性)、理由3(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1を対比する。
引用発明1の「使用済み紙おむつ」、「高分子ポリマー」及び「パルプ成分」は、それぞれ、本件発明1の「吸収性物品」、「吸水性樹脂」及び「パルプ」に相当する。
引用発明1の「高分子ポリマーを除去したとしているパルプ成分を含む紙用組成物」であることは、本件発明1の「パルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物であ」ることと、「パルプを含む紙用組成物であ」る限りにおいて一致する。
引用発明1の「吸水膨張している状態において、10μm以下の微粒子状である」ことは、「10μm以下の微粒子状である」ことより低分子化されていることは明らかであるとともに、引用発明1の「10μm以下」である「微粒子状」のものが、その微粒子の大きさからして、本件発明1のような「目開き1000μmの篩を通過するもの」であることは明らかであるから、本件発明1の「低分子化されており、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである、」ことと、「低分子化されており、湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである、」る限りにおいて一致する。
以上より、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点5>
「吸収性物品から回収したパルプを含む紙用組成物であって、
前記吸水性樹脂は、低分子化されており、湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである、紙用組成物。」
<相違点5-1>
パルプを含む紙用組成物について、本件発明1が「パルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物であ」り、「灰分中のナトリウムの含有率が15%以上であ」るのに対し、引用発明1は「高分子ポリマーを除去したとしているパルプ成分を含む紙用組成物であ」り、灰分中のナトリウム含有率について規定していない点。
<相違点5-2>
吸水性樹脂の湿潤状態について、本件発明1が「質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態」であるのに対し、引用発明1では「吸水膨張している状態」である点。
(イ)判断
以下相違点について検討する。
<相違点5-1>について
相違点5-1は実質的な相違点であり、本件発明1は引用発明1ではない。
取消理由通知書では、本件発明1について、甲5を引用文献とする新規性のみを通知していたものであるが、併せて甲5を主引用例とする進歩性についても、以下、検討を行う。
上記(1)ウに例示されるように、吸収性樹脂としてのポリアクリル酸ナトリウムは周知の技術といえる。そして、このポリアクリル酸ナトリウムの含有によって灰分にナトリウムが含有されることになることは技術常識である。そうすると、引用発明1の紙用組成物において、灰分中のナトリウムの含有の程度については、高分子ポリマーをいかに含有するかに影響するものであることは明らかである。
ここで、引用発明1の「高分子ポリマーを除去したとしているパルプ成分を含む紙用組成物」は、甲5の【請求項1】のとおり、「微粒子状の高分子ポリマーとパルプ成分と水とを含む懸濁液を形成し、該懸濁液を脱水してパルプ成分から高分子ポリマーを水と共に除去して、パルプ成分を回収する」ものである。そしてここで行われる脱水は【0022】のとおり、「前記懸濁液が脱水用ドラムに投入され、該脱水用ドラムが回転することで脱水される。脱水用ドラムは、直径3mmの孔が多数設けられており、水と混ざり合った高分子ポリマーが、該水と共に前記孔を通り抜けてパルプ成分から除去される。」とされている。
当該脱水工程では、脱水用ドラムを使用した脱水が行われるものであるが、この場合脱水開始直後から脱水ドラム内壁に脱水ドラムの孔を通り抜けることができないパルプ成分が脱水ドラムの孔に貼り付き、脱水ドラムの孔を通り抜けるはずの、微粒子状の高分子ポリマーと水とが、脱水ドラムの孔をスムーズに通り抜けにくくなることが考えられ、このような状態では、微粒子状の高分子ポリマーと水のうち、高速脱水回転の遠心力で水はドラム外に排出されつつも、微粒子状の高分子ポリマーの一部が、パルプ成分の貼り付いた孔を通過できない可能性がある。そして、甲1の【0007】にも、甲5の技術に関し、微小な粒子はパルプ繊維間に引っかかりやすく、物理的な水洗だけでは完全に除去しきれないことについて記載されている。
そうすると、引用発明1の「高分子ポリマーを除去したとしているパルプ成分を含む紙用組成物」は、高分子ポリマーを含む可能性があるといえる。しかしながら、このような処理を行うことによって得られた引用発明1の紙用組成物には、一定量の高分子ポリマーを含有するとまではいえない。さらに、当該高分子ポリマー由来のナトリウムについて、「灰分中のナトリウムの含有率が15%以上」とすることは、甲5だけでなく、提出された証拠や当審で追加した文献のいずれにも、記載も示唆もなく、当業者といえども容易に想到し得ない。
(ウ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明1ではない。
また、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1並びに甲1及び引1に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明4は、引用発明1並びに甲1及び引1に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明5について
(ア)対比
本件発明5と引用発明2を対比する。
引用発明2の「使用済み紙おむつ」、「高分子ポリマー」及び「パルプ成分」は、それぞれ、本件発明5の「吸収性物品」、「吸水性樹脂」及び「パルプ」に相当する。
引用発明2の「段ボール」は、使用済み紙おむつから回収したパルプ成分を含むものであるから、本件発明5の「リサイクル紙」に相当する。
引用発明2の「高分子ポリマーを除去したとしているパルプ成分を含む段ボール」であることは、本件発明5の「パルプ及び吸水性樹脂を含むリサイクル紙であ」ることと、「パルプを含むリサイクル紙であ」る限りにおいて一致する。
引用発明2の「吸水膨張している状態において、10μm以下の微粒子状である」ことは、「10μm以下の微粒子状である」ことより低分子化されていることは明らかであるとともに、引用発明2の「10μm以下」である「微粒子状」のものが、その微粒子の大きさからして、本件発明5のような「目開き1000μmの篩を通過するもの」であることは明らかであるから、本件発明5の「低分子化されており、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである、」ことと、「低分子化されており、湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである、」る限りにおいて一致する。
以上より、本件発明5と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点5’>
「吸収性物品から回収したパルプを含むリサイクル紙であって、
前記吸水性樹脂は、低分子化されており、湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである、リサイクル紙。」
<相違点5-1’>
パルプを含むリサイクル紙について、本件発明5が「パルプ及び吸水性樹脂を含むリサイクル紙であ」り、「灰分中のナトリウムの含有率が15%以上であ」るのに対し、引用発明2は「高分子ポリマーを除去したとしているパルプ成分を含む段ボールであ」り、灰分中のナトリウム含有率について規定していない点。
<相違点5-2’>
吸水性樹脂の湿潤状態について、本件発明5が「質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態」であるのに対し、引用発明2では「吸水膨張している状態」である点。
(イ)判断
以下相違点について検討する。
<相違点5-1’>について
相違点5-1’は実質的な相違点であり、本件発明5は引用発明2ではない。
取消理由通知書では、本件発明5について、甲5を引用文献とする新規性のみを通知していたものであるが、併せて甲5を主引用例とする進歩性についても、以下、検討を行う。
上記ア(イ)で説示したことと同様に、引用発明2の紙用組成物には、一定量の高分子ポリマーを含有するとまではいえない。さらに当該高分子ポリマー由来のナトリウムについて、「灰分中のナトリウムの含有率が15%以上」とすることは、甲5だけでなく、提出された証拠や当審で追加した文献のいずれにも、記載も示唆もなく、当業者といえども容易に想到し得ない。
(ウ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は引用発明2ではない。
また、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、引用発明2並びに甲1及び引1に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明5を引用し、本件発明5の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明7は、引用発明2並びに甲1及び引1に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明8について
本件発明8は、直接的又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明8は、引用発明1並びに甲1及び引1に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また本件発明8は、直接的又は間接的に本件発明5を引用し、本件発明5の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明8は、引用発明2並びに甲1及び引1に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)まとめ
以上により、特許請求の範囲の請求項1、4、5、7、8の記載に、取消理由通知で指摘した不備はなく、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
また、本件特許の請求項1及び5に係る発明は、取消理由通知で指摘した上記甲5に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
さらに、本件特許の請求項1、4、5、7、8に係る発明は、取消理由通知で指摘した上記甲5に記載された発明、並びに甲1及び引1~引3に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について
1 申立理由の概要
(1)申立理由1(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の請求項1、3~8の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1及び5の「前記吸水性樹脂は低分子化されている」という記載について、「低分子化」の判定方法及び基準が不明であり、請求項1及び5、並びに請求項1又は5を引用する請求項3、4、6~8は明確であるとはいえない。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1及び5の「パルプ及び吸水性樹脂を含む」という記載について、吸水性樹脂であるアクリル酸系水溶性ポリマーは、低分子量領域で分散機能を発揮するものであるから、紙力増強剤又は増粘剤としては機能しない。よって当該構成を規定する請求項1及び5、並びに請求項1又は5を引用する請求項2~4、6~8の記載は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
請求項5に対応する実施例2は、低分子量化した吸水性樹脂を含まない比較例6と比べて乾燥強度及び湿潤強度が劣っている。よって、請求項5、及び請求項5を引用する請求項6~8の記載は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
(3)申立理由3(実施可能要件)
本件特許は、明細書の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1及び5の「前記吸水性樹脂は低分子化されている」という記載について、発明の詳細な説明の記載では、「低分子化」の判定方法及び基準が不明であり、明細書の記載が、請求項1及び5、並びに請求項1又は5を引用する請求項3、4、6~8に係る発明を実施できる程度に記載されているとはいえない。
(4)申立理由4-1(甲1を引用例とする新規性)
本件特許の請求項1、4、5及び7に係る発明は甲1に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(5)申立理由4-2(甲1を引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(6)申立理由5-1(甲2を引用例とする新規性)
本件特許の請求項1及び5に係る発明は甲2に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(7)申立理由5-2(甲2を引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(8)申立理由6-1(甲3を引用例とする新規性)
本件特許の請求項1及び5に係る発明は甲3に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(9)申立理由6-2(甲3を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(10)申立理由7-1(甲4を引用例とする新規性)
本件特許の請求項1及び5に係る発明は甲4に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(11)申立理由7-2(甲4を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲4に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲1:特開2014-217835号公報(上記「甲1」)
甲2:特開2012-219172号公報(申立人が提出した甲第2号証)
甲3:国際公開第2014/007105号(申立人が提出した甲第3号証)
甲4:特開2009-73198号公報(申立人が提出した甲第4号証)
2 当審の判断
(1)引用文献の記載
ア 甲1
甲1の【0038】~【0039】の記載からは、高分子吸収材(住友精化株式会社製高吸水性ポリマー「アクアキープ」SA60)1.00gに0.9%濃度の生理食塩水を50mL吸水させ、オゾン濃度6.1ppmのオゾン水に240分間浸漬したとき、高分子吸収材が0.06%残存することが示されるが、【0038】~【0039】の測定ではオゾン浸漬後に脱水処理を行っておらず、併せて【0023】に記載をふまえると、【0044】に記載の脱水-すすぎ-脱水後のパルプには高分子吸収材は残存していないことは明らかである。そうすると、甲1には、以下の発明が記載されていると認める。
[甲1発明]
「紙おむつから回収したパルプ(【0044】)、
及び該パルプを利用した衛生用品(【0061】。」
イ 甲2
甲2には、以下の発明が記載されていると認める。
[甲2発明]
「おむつから回収したホフマン分解PAMからなる製紙薬品及び該製紙薬品を使用する紙(【0134】)であって、
ホフマン分解PAMは吸収性ポリマーの一つであるポリアクリルアミド(PAM)をホフマン分解したものである(【0126】)、製紙薬品及び該製紙薬品を使用する紙。」
ウ 甲3
甲3には、以下の発明が記載されていると認める。
[甲3発明]
「紙おむつから回収したパルプ繊維及びSAP(超吸収性の高分子ポリマー)を含む再生繊維([0014])及び該再生繊維を用いた紙([0024])であって、
SAP(超吸収性の高分子ポリマー)は、ポリアクリル酸ナトリウムであり([0028])、
該再生繊維はオゾンで処理を行い([0021])、
ゲル状となったSAPは直径0.5mmのスクリーンを通過しない([0044])、再生繊維及び該再生繊維を用いた紙。」
エ 甲4
甲4には、以下の発明が記載されていると認める。
[甲4発明]
「吸収性樹脂を含有する汚れた衛生製品から回収したパルプに富む素材、及び該素材を使用したトイレットペーパーであって(【0005】、【0034】)、
吸水してゲル状となっている吸収性樹脂を含有する汚れた衛生製品を消毒剤の存在下に粉砕し(【0005】)、
消毒剤としてオゾンを使用する(【0014】)、パルプに富む素材、及び該素材を使用したトイレットペーパー。」
(2)申立理由1(明確性要件)について
請求項に係る発明が明確に把握されるためには、請求項に係る発明の範囲が明確であること、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要である。
ここで、本件特許の請求項1の
「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物であって、
灰分中のナトリウムの含有率が15%以上であり、
前記吸水性樹脂は低分子化されており、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである、紙用組成物。」という記載、請求項5の
「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含むリサイクル紙であって、
灰分中のナトリウムの含有率が15%以上であり、
前記吸水性樹脂は低分子化されており、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである、リサイクル紙。」という記載は、紙用組成物及びリサイクル紙の構成を規定するものとして明確であり、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるものである。
申立人の主張する、請求項1及び5の「前記吸水性樹脂は低分子化されている」という記載について、「低分子化」の判定方法及び基準が不明という点については、本件訂正により、請求項1及び5の「前記吸水性樹脂は低分子化されている」ことが「質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである」と特定されたため、「低分子化」の判定方法及び基準は明らかとなった。
よって、申立理由1は理由がない。
(3)申立理由2(サポート要件)について
上記第4の2(2)に説示したとおり、本件特許は、特許請求の範囲の記載に不備はないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
申立人による主張の、請求項1及び5の「パルプ及び吸水性樹脂を含む」という記載について、吸水性樹脂であるアクリル酸系水溶性ポリマーは、紙力増強剤又は増粘剤としては機能しないという点について検討する。請求項1及び5では、吸水性樹脂については特定していないが、本件特許の【0114】~【0126】に記載された<試験2>の結果を参照すると、【0117】【表2】で示されるとおり「吸水性樹脂」を含む実施例2が、比較例5~7に比べてリサイクル紙として好適な性質を有しているものであり、「パルプ及び吸水性樹脂を含む」こと、及び「前記吸水性樹脂は低分子化され」ることにより、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
申立人による主張の、請求項5に対応する実施例2は、低分子量化した吸水性樹脂を含まない比較例6と比べて乾燥強度及び湿潤強度が劣っている点について検討する。実施例2は、「吸水性樹脂」含まない比較例7と比べれば乾燥強度及び湿潤強度は優れているものである。比較例6に対する実施例2の各強度の低下率、及び実施例2に対する比較例7の各強度の低下率は、乾燥強度が-15%で湿潤強度が-3%、及び乾燥強度が-17%で湿潤強度が-21%となっており、比較例7との差に比べれば、比較例6との差は大きくはないものである。さらに、実施例2は、低分子量化した吸水性樹脂を含まない比較例6と比べて、孔の個数という観点では、優れているものである。これらの点を総合すると、「パルプ及び吸水性樹脂を含む」こと、及び「前記吸水性樹脂は低分子化され」ることにより、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることが説明されているといえる。
よって、申立理由2は理由がない。
(4)申立理由3(実施可能要件)について
物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用をすることができる程度のものでなければならない。以下検討する。
本件発明が、本件特許の請求項1に記載のとおりのものであるところ、【0105】~【0126】には、実施例が示され、本件発明の発明特定事項を有する実施例1及び2が【0008】~【0011】の記載から把握できる、「前述した従来技術が有する欠点を解消し得る、紙用組成物を提供すること」であり、「強度の高いリサイクル紙を得ることができる」ような「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物」を提供することであるとする、本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決するものとして記載されている。
これらの記載を参照することにより、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施できるものである。
申立人の主張する、請求項1及び5の「前記吸水性樹脂は低分子化されている」という記載について、発明の詳細な説明の記載では、「低分子化」の判定方法及び基準が不明という点については、本件訂正により、請求項1及び5の「前記吸水性樹脂は低分子化されている」ことが「質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである」と特定されたため、「低分子化」の判定方法及び基準は明らかとなった。
よって、申立理由3は理由がない。
(5)申立理由4-1、4-2(甲1を引用例とする新規性、進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「紙おむつ」及び「パルプ」は、本件発明1の「吸収性物品」及び「パルプ」に相当する。
また、甲1発明の「パルプ」は紙用組成物にほかならず、本件発明1の「紙用組成物」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「吸収性物品から回収したパルプを含む紙用組成物。」
で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1が「パルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物であ」るのに対し、甲1発明は、吸水性樹脂を含んでいない点。
(イ)判断
上記<相違点1>について検討する。
<相違点1>は実質的な相違点である。
また、甲1の【0007】に「これにより回収したパルプ繊維を再利用しようとした際には、残存した高分子吸水材が異物となってしまう。」と記載され、甲1では高分子吸水材を異物と捉えているものであり、そうすると、甲1発明では、高分子吸収材は材料から排除すべきものであると認められるから、甲1発明において、吸水性樹脂を含むこととすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明ではない。
また、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明4は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明5について
(ア)対比
本件発明5と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「紙おむつ」及び「パルプ」は、本件発明5の「吸収性物品」及び「パルプ」に相当する。
また、甲1発明の「パルプを利用した衛生用品」は、本件発明5の「リサイクル紙」と、「リサイクル品」である限りにおいて一致する。
したがって、本件発明5と甲1発明とは、
「吸収性物品から回収したパルプを含むリサイクル品。」
で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1’>
本件発明1が「パルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物であ」るのに対し、甲1発明は、吸水性樹脂を含んでいない点。
(イ)判断
上記<相違点1’>について検討する。
<相違点1’>は実質的な相違点である。
また、<相違点1’>は<相違点1>と実質的に同じであるから、上記ア(イ)で示したことと同様に、甲1発明において、「吸収性物品から回収したパルプ」に吸水性樹脂を含むこととすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
よって、本件発明5は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明ではない。
また、本件発明5は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明5を引用し、本件発明5の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明7は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明8について
本件発明8は、直接的又は間接的に本件発明1又は本件発明5を引用し、本件発明1又は本件発明5の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明8は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)申立理由5-1、5-2(甲2を引用例とする新規性、進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「おむつ」は、本件発明1の「吸収性物品」に相当する。
甲2発明の「ホフマン分解PAM」は、「吸収性ポリマーの一つであるポリアクリルアミド(PAM)をホフマン分解したもの」であるから、本件発明1の「吸収性樹脂」に相当する。
そして、甲2発明の「製紙薬品」は、本件発明1の「紙用組成物」に相当する。
さらに、甲2発明の「ホフマン分解PAMは吸収性ポリマーの一つであるポリアクリルアミド(PAM)をホフマン分解したもの」であることは、本件発明1の「前記吸水性樹脂は低分子化されて」いることに相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、
「吸収性物品から回収した吸水性樹脂を含む紙用組成物であって、
前記吸水性樹脂は低分子化されている、紙用組成物。」
で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点2>
本件発明1が「灰分中のナトリウムの含有率が15%以上であ」るのに対し、甲2発明は、当該構成を有しない点。
(イ)判断
上記<相違点2>について検討する。
<相違点2>は実質的な相違点である。
また、甲2発明の「吸収性ポリマー」はナトリウムを成分として含むポリアクリル酸ナトリウムではなく、ポリアクリルアミド(PAM)である。そうすると、「吸収性ポリマー」をポリアクリルアミド(PAM)に換えてポリアクリル酸ナトリウムとすること、さらに、灰分中のナトリウムの含有率を15%以上とすることは、甲2に記載も示唆もなく、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2発明ではない。
また、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明4は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明5について
(ア)対比
本件発明5と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「おむつ」は、本件発明5の「吸収性物品」に相当する。
甲2発明の「ホフマン分解PAM」は、「吸収性ポリマーの一つであるポリアクリルアミド(PAM)をホフマン分解したもの」であるから、本件発明5の「吸収性樹脂」に相当する。
そして、甲2発明の「製紙薬品を利用する紙」は、本件発明5の「リサイクル紙」に相当する。
さらに、甲2発明の「ホフマン分解PAMは吸収性ポリマーの一つであるポリアクリルアミド(PAM)をホフマン分解したもの」であることは、本件発明5の「前記吸水性樹脂は低分子化されて」いることに相当する。
したがって、本件発明5と甲2発明とは、
「吸収性物品から回収した吸水性樹脂を含むリサイクル紙であって、
前記吸水性樹脂は低分子化されている、リサイクル紙。」
で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点2’>
本件発明5が「灰分中のナトリウムの含有率が15%以上であ」るのに対し、甲2発明は、当該構成を有しない点。
(イ)判断
上記<相違点2’>について検討する。
<相違点2’>は実質的な相違点である。
また、上記ア(イ)で示したことと同様に、<相違点2’>に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
よって、本件発明5は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2発明ではない。
また、本件発明5は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明5を引用し、本件発明5の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明7は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明8について
本件発明8は、直接的又は間接的に本件発明1又は本件発明5を引用し、本件発明1又は本件発明5の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明8は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)申立理由6-1、6-2(甲3を主引用例とする新規性、進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「紙おむつ」、「パルプ繊維」、「SAP(超吸収性の高分子ポリマー)」及び「再生繊維」は、本件発明1の「吸収性物品」、「パルプ」、「吸収性樹脂」及び「紙用組成物」に相当する。
したがって、本件発明1と甲3発明とは、
「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物。」
で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点3>
本件発明1が「前記吸水性樹脂は低分子化されており、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである」るのに対し、甲3発明は、「該再生繊維はオゾンで処理を行い、ゲル状となったSAPは直径0.5mmのスクリーンを通過しない」ものである点。
(イ)判断
上記<相違点3>について検討する。
<相違点3>は実質的な相違点である。
また、甲3発明の「ゲル状となったSAPは直径0.5mmのスクリーンを通過しない」ことに換えて、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
また、甲1の【0016】の記載を参酌したとしても、甲1の【0016】に記載のオゾン処理と甲3発明のオゾン処理とは、オゾン濃度を含めた処理条件の異同が不明であるため、甲3発明の「オゾンで処理を行」うことによって、再生繊維内に含まれるSAPが、「質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過する」程度に低分子化するものとも認められない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲3発明ではない。
また、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲3発明及び甲1に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明4は、甲3発明及び甲1に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明5について
(ア)対比
本件発明5と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「紙おむつ」、「パルプ繊維」、「SAP(超吸収性の高分子ポリマー)」及び「該再生繊維を用いた紙」は、本件発明5の「吸収性物品」、「パルプ」、「吸収性樹脂」及び「リサイクル紙」に相当する。
したがって、本件発明5と甲3発明とは、
「吸収性物品から回収したパルプ及び吸水性樹脂を含むリサイクル紙。」
で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点3’>
本件発明5が「前記吸水性樹脂は低分子化されており、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである」るのに対し、甲3発明は、「該再生繊維はオゾンで処理を行い、ゲル状となったSAPは直径0.5mmのスクリーンを通過しない」ものである点。
(イ)判断
上記<相違点3’>について検討する。
<相違点3’>は実質的な相違点である。
また、上記ア(イ)で示したことと同様に、<相違点3’>に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
よって、本件発明5は、他の相違点について検討するまでもなく、甲3発明ではない。
また、本件発明5は、他の相違点について検討するまでもなく、甲3発明及び甲1に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明5を引用し、本件発明5の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明7は、甲3発明及び甲1に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明8について
本件発明8は、直接的又は間接的に本件発明1又は本件発明5を引用し、本件発明1又は本件発明5の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明8は、甲3発明及び甲1に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(8)申立理由7-1、7-2(甲4を主引用例とする新規性、進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「吸収性樹脂を含有する汚れた衛生製品」は、本件発明1の「吸収性物品」に相当する。
また、甲4発明の「素材」は、当該「素材」を使用して紙を生成することから、本件発明1の「紙用組成物」に相当するから、甲4発明の「パルプに富む素材」は、本件発明1の「パルプ及び吸水性樹脂を含む紙用組成物」と、「パルプを含む紙用組成物」の限りにおいて一致する。
さらに、甲4発明の「吸水してゲル状となっている吸収性樹脂を含有する汚れた衛生製品を消毒剤の存在下に粉砕」されることは、本件発明1の「前記吸水性樹脂は低分子化されて」いることに相当する。
したがって、本件発明1と甲4発明とは、
「吸収性物品から回収したパルプを含む紙用組成物であって、
前記吸水性樹脂は低分子化されている、紙用組成物。」
で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点4>
低分子化された吸水性樹脂に関し、本件発明1が「質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである」のに対し、甲4発明は、当該構成を有しない点。
(イ)判断
上記<相違点4>について検討する。
<相違点4>は実質的な相違点である。
また、甲4発明の「吸水してゲル状となっている吸収性樹脂を含有する汚れた衛生製品を消毒剤の存在下に粉砕し」た「吸収性樹脂」に対してさらに低分子化し、質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
また、甲1の【0016】の記載を参酌したとしても、甲1の【0016】に記載のオゾン処理と甲4発明のオゾン処理とは、オゾン濃度を含めた処理条件の異同が不明であるため、甲3発明の「オゾンで処理を行」うことによって、再生繊維内に含まれるSAPが、「質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過する」程度に低分子化するものとも認められない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲4発明ではない。
また、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲4発明及び甲1に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明4は、甲4発明及び甲1に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明5について
(ア)対比
本件発明5と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「吸収性樹脂を含有する汚れた衛生製品」は、本件発明5の「吸収性物品」に相当する。
また、甲4発明の「該素材を使用したトイレットペーパー」は、本件発明5の「リサイクル紙」に相当するから、甲4発明の「パルプに富む素材、及び該素材を使用したトイレットペーパー」は、本件発明5の「パルプ及び吸水性樹脂を含むリサイクル紙」と、「パルプを含むリサイクル紙」の限りにおいて一致する。
さらに、甲4発明の「吸水してゲル状となっている吸収性樹脂を含有する汚れた衛生製品を消毒剤の存在下に粉砕」されることは、本件発明5の「前記吸水性樹脂は低分子化されて」いることに相当する。
したがって、本件発明5と甲4発明とは、
「吸収性物品から回収したパルプを含むリサイクル紙であって、
前記吸水性樹脂は低分子化されている、リサイクル紙。」
で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点4’>
低分子化された吸水性樹脂に関し、本件発明5が「質量比で200倍量の水を加えた湿潤状態において、目開き1000μmの篩を通過するものである」のに対し、甲4発明は、当該構成を有しない点。
(イ)判断
上記<相違点4’>について検討する。
<相違点4’>は実質的な相違点である。
また、上記ア(イ)で示したことと同様に、<相違点4’>に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
よって、本件発明5は、他の相違点について検討するまでもなく、甲4発明ではない。
また、本件発明5は、他の相違点について検討するまでもなく、甲4発明及び甲1に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明5を引用し、本件発明5の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明7は、甲4発明及び甲1に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明8について
本件発明8は、直接的又は間接的に本件発明1又は本件発明5を引用し、本件発明1又は本件発明5の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明8は、甲4発明及び甲1に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(9)まとめ
以上により、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、4、5、7、8の記載に、特許異議申立書に記載した不備はなく、本件特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載に、特許異議申立書に記載した不備はなく、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
また、本件特許の請求項1、4、5及び7に係る発明は、申立人が提出した上記甲1に記載された発明ではなく、本件特許の請求項1及び5に係る発明は、申立人が提出した上記甲2~甲4に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
さらに、本件特許の請求項1、4、5、7、8に係る発明は、申立人が提出した上記甲1~甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
なお、請求項2、3及び6は本件訂正により削除されたため、請求項2、3及び6に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1、4、5、7、8に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、4、5、7、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項2、3及び6は、本件訂正により削除されたため、請求項2、3及び6に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700729