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特許異議申立

2023-701144

吐出装置及び水回り設備

審判番号
2023-701144
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-135892
登録番号
7265952
請求日
2023年10月27日
審決日
2024年12月19日
公報発行日
2025年04月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社LIXIL
  • 【権利者代理人】森下 賢樹
  • 【異議申立人】TOTO 株式会社
  • 【異議申立人代理人】田中 伸一郎
  • 【異議申立人代理人】弟子丸 健
  • 【異議申立人代理人】渡邊 誠
  • 【異議申立人代理人】磯貝 克臣
審判長/審判官
  • 審判長 植前 充司
  • 審判官 天野 宏樹
  • 審判官 門前 浩一
分類
P1652.113-YAA(B05B) / P1652.121-YAA(B05B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7265952号発明「吐出装置及び水回り設備」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7265952号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第7265952号の請求項1~4、6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7265952号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和元年7月24日の出願であって、令和5年4月19日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について同年10月27日に特許異議申立人TOTO株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象:請求項1~4、6)がされたものである。 その後の手続の経緯は以下のとおりである。 令和6年1月18日付け:取消理由通知 同年3月25日 :訂正請求書及び意見書(特許権者) 同年5月23日付け:訂正拒絶理由通知 同年8月 8日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年9月 2日 :訂正請求書及び意見書(特許権者) 同年同月19日付け:訂正請求があった旨の通知 (特許法第120条の5第5項) なお、令和6年5月23日付け訂正拒絶理由通知に対し、特許権者からは何ら応答がなかった。また、令和6年9月19日付け訂正請求があった旨の通知に対し、申立人からは何ら応答がなかった。 令和6年3月25日に提出された訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 以下、令和6年9月2日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。 第2 訂正請求について 1.訂正の内容 本件訂正請求の趣旨は、「特許第7265952号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」というものであり、本件訂正の内容は、次のとおりである。 なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「噴流の噴射方向が平面内で揺動する揺動噴射を実行可能な噴射部材と、 前記噴射部材を移動可能に支持する支持体と、を備え、 前記噴射部材は、前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子である吐出装置」 と記載されているのを、 「噴流の噴射方向が平面内で揺動する揺動噴射を実行可能な噴射部材と、 前記噴射部材を移動可能に支持する支持体と、を備え、 前記噴射部材は、前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子である吐出装置であって、 前記吐出装置は、浴槽に取り付けられ、 前記噴射部材は、前記浴槽内に浴槽水を貯留した場合に、その浴槽水の水面より下方に配置される吐出装置」 に訂正する。請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2~4、6も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から5のいずれか1項に記載の吐出装置を備える水回り設備。」とあるうち、請求項1~4のそれぞれを引用するものについて、「請求項1から4のいずれか1項に記載の吐出装置を備える水回り設備。」に訂正する。 なお、訂正事項1~3に係る訂正前の請求項1~6について、請求項2~6は請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正後の請求項1~6は訂正事項1~3に係る訂正によって直接又は連動して訂正される。 よって、本件訂正は一群の請求項1~6について請求されたものである。 2.訂正の適否 (1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア 訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載されていた「吐出装置」及び「噴射部材」という発明特定事項に、願書に添付した明細書の[0036]及び本件訂正前の請求項5等の記載に基づいて、「前記吐出装置は、浴槽に取り付けられ、」及び「前記噴射部材は、前記浴槽内に浴槽水を貯留した場合に、その浴槽水の水面より下方に配置される」という発明特定事項を直列的に付加することにより、特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。さらに、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~4及び6の訂正も同様である。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 イ 訂正事項2について 訂正事項2は、請求項5を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項6の引用先に請求項5が含まれていたところ、訂正事項2により請求項5が削除されることに伴い、引用先から請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2)独立特許要件について 本件においては、訂正前の請求項1~4及び6に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1~4及び6に対応する訂正後の請求項1~4及び6については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3.訂正請求についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明について 本件訂正請求により訂正された本件特許の請求項1~4、6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」及び「本件発明6」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4、6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「[請求項1] 噴流の噴射方向が平面内で揺動する揺動噴射を実行可能な噴射部材と、 前記噴射部材を移動可能に支持する支持体と、を備え、 前記噴射部材は、前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子である吐出装置であって、 前記吐出装置は、浴槽に取り付けられ、 前記噴射部材は、前記浴槽内に浴槽水を貯留した場合に、その浴槽水の水面より下方に配置される吐出装置。 [請求項2] 前記支持体は、前記噴射部材を回転可能に支持する請求項1に記載の吐出装置。 [請求項3] 前記噴射部材には、前記噴流を噴射する噴射流路が形成され、 前記噴射流路の出口孔の中心線は、前記噴射部材の回転中心線とは異なる位置に設けられる請求項2に記載の吐出装置。 [請求項4] 前記支持体は、前記噴射部材を上下に傾動可能に支持する請求項1から3のいずれか1項に記載の吐出装置。 [請求項6] 請求項1から4のいずれか1項に記載の吐出装置を備える水回り設備。」 第4 特許異議申立理由の概要 申立人は、令和5年10月27日に特許異議申立書(以下、「申立書」という。)及び証拠方法として下記2.に示す甲第1号証~甲第10号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲10」のようにいう。)を提出し、概略、以下の(1)~(5)の特許異議申立理由を主張している。 なお、申立理由の番号は当審が仮に付与した。 1.特許異議申立理由 (1)申立理由1-1(甲1に基づく新規性) 本件発明1~4、6は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)申立理由1-2(甲2に基づく新規性) 本件発明1~4、6は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)申立理由1-3(甲3に基づく新規性) 本件発明1、2、4、6は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (4)申立理由2-1(甲3に基づく進歩性) 本件発明3は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (5)申立理由2-2(第1周知技術(甲1~甲3)を主引例とする進歩性) 本件発明1~4、6は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1~甲3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2.証拠方法 甲1:特開平5-200081号公報 甲2:特開2010-69445号公報 甲3:特開2004-275985号公報 甲4:米国特許出願公開第2018/0043377号明細書 甲5:特開2017-108832号公報 甲6:特開2018-110780号公報 甲7:特開2006-101914号公報 甲8:特開2008-246171号公報 甲9:特開2009-285080号公報 甲10:甲5の要部の和訳 第5 取消理由(決定の予告)の概要 当審は、令和6年8月8日付けで、下記2.に示す引用文献Aを新たに引用し、概略、以下の(1)~(5)の取消理由を特許権者に通知した。 1.取消理由 (1)取消理由1-1(甲1に基づく新規性) 本件発明1~4、6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)取消理由1-2(甲3に基づく新規性) 本件発明1~4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)取消理由2-1(甲1に基づく進歩性) 本件発明1~4、6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (4)取消理由2-2(甲3に基づく進歩性) 本件発明1~4、6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (5)取消理由2-3(引用文献Aに基づく進歩性) 本件発明1~4、6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献Aに記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2.証拠方法 引用文献A:特開2017-108830号公報 第6 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての判断 当審は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由1-1~取消理由2-3のいずれによっても本件発明1~4及び6についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおり。 1.各文献の記載事項 (1)甲1の記載事項 甲1には、以下の記載がある。 「[請求項1] 浴槽のフランジに取り付けた肩当て用シャワー装置に入浴者の肩に向けてシャワー水を噴射する肩当て用ノズルを設け、噴流が左右に切り換わるように発振する発振型純流体素子を肩当て用ノズルに設けて成ることを特徴とする浴槽の肩当て用シャワー装置。」 「[0006] [作用]上記構成によれば、シャワー水を肩当て用ノズル3から噴射するとき発振型純流体素子34の発振にて左右に噴流が切り換わり、噴流に変化を与えて十分なマッサージ効果が得られる。また発振型純流体素子34にて噴流を切り換えるようにしているので従来のように可動部がなくて毛髪や糸屑等の詰まりで作動しなくなるようなことがない。」 「[0007] [実施例]図4は浴槽1の全体の斜視図であり、図5は全体のシステムを示す管路図である。浴槽1の側方には循環ポンプ8を配置してあり、浴槽1内の吸入口9と循環ポンプ8とを吸入管10にて連結してあり、循環ポンプ8にて浴槽1内の湯を吸入できるようになっている。また浴槽1の内壁面には浴槽1に気泡混じりの浴湯を噴射する背用の噴射ノズル11や足用の噴射ノズル12を複数個設けてあり、この噴射ノズル11、12と循環ポンプ8とがノズル給水管13,14にて連結してあり、噴射ノズル11,12に浴湯を供給できるようになっている。浴槽1のフランジ2には空気吸入口15を設けてあり、空気吸入口15と噴射ノズル11,12とを空気配管16にて連結してあり、これにより噴射ノズル11,12に空気が供給できるようになっている。浴槽1のフランジ2には入浴者の肩に対応する位置で1対の肩当て用シャワー装置17を配置してあり、肩当て用シャワー装置17と循環ポンプ8とを肩当て用シャワー給水管18にて連結してあり、浴湯が肩当て用シャワー装置17に供給されるようになっている。浴槽1の操作はリモコン20にて行われるようになっており、各運転パターンの選択、及び流量の強弱調節、噴流変化の周波数調節などが行えるようになっている。リモコン20からの信号はリモコン受光部21に送られ、循環ポンプ8に収められた制御部22に伝えられるようになっている。」 「[0009]肩当て用シャワー装置17は図1に示すように形成されている。フランジ2には台座27が取り付けられ、台座27には本体28を回転自在に装着してある。台座27と本体28とを回転自在に連結する部分にはOリング29を介装してあり、Oリング29にて水密的に接続してある。台座27と本体28との間にはごみを除去するためのストレーナ30を介装してある。本体28の上部には筒状の回転軸31を水平に配置して回転自在に装着してある。この回転軸31を回転自在に接続する部分にもOリング32を介装して水密的に接続してある。この回転軸31には肩当て用ノズル3を装着してあり、この肩当て用ノズル3の先端の噴射口33からシャワー水の噴流を噴射できるようになっている。この肩当て用ノズル3内にはフィードバック発振型純流体素子のような発振型純流体素子34を内装してあり、発振型純流体素子34の発振にて噴流の向きを交互に切り換えるようになっている。つまり発振型純流体素子34の主ノズル35から噴射される噴流がフィードバック管路36の負圧にて切り換わり、図2のハ方向やニ方向に交互に噴射される。この肩当用シャワー装置17は本体28を回転することにより図3の矢印イに示すように水平面内で肩当て用ノズル3を回転でき、肩当て用ノズル3を図3の矢印ロに示すように上下に回転でき、肩当て用ノズル3の向きを自在に変えることができるようになっている。」 「[0010] [発明の効果]本発明は上述のように噴流が左右に切り換わるように発振する発振型純流体素子を肩当て用ノズルに設けてあるので、発振型純流体素子が発振して噴流の向きが交互に切り換わり、変化のある噴流が肩に当てられて優れたマッサージ効果を得ることができるものであり、しかも発振型純流体素子を発振させて噴流を切り換えているため従来のように可動部がなくて毛髪や糸屑等が詰まって作動しなくなるようなことがなく、長期に亙って安定した動作が得られるものである。」 「[図1] [図:0001421341000001.jpg] 」 「[図2] [図:0001421341000002.jpg] 」 「[図3] [図:0001421341000003.jpg] 」 「[図4] [図:0001421341000004.jpg] 」 (2)甲3の記載事項 甲3には、以下の記載がある。 「[請求項1] 流体流入口、連結ダクト、流体噴出ノズルで構成され、噴出しノズル部の圧力差により連結ダクト内の流体を駆動し、その結果圧力差が反転し、再び流体が駆動されることで発振する純流体素子において、前記連結ダクトを複数個の流路により構成したことを特徴とする純流体素子。」 「[0010] 本純流体素子の動作を以下に示す。 流体流入口1より流入した流体は、連結ダクト2を横断し流体噴出ノズル3へ到達してノズルより流出が、この際、流体の性質により、上側板3aもしくは下側板3bのいずれか一方に沿って流出する。 図3に示すように、下側板3bに沿って流出した場合、点B付近に渦を生じ、点A付近に比較して低圧の状態となる。この結果、連結ダクトを介して点Aから点Bへの流れが生ずる。この流れにより、点A、点Bの圧力差は徐々に低下し、圧力差はゼロとなるが、連結ダクト内の流れは慣性により流れ続け、その結果、点A、点Bの圧力が逆転する。それに伴い、下側板3bに沿って流れていた主流が剥がれ、上側板3aに沿って流れる様になる。その後、連結ダクト内を通る流れも、圧力差に従って逆転し、今度は点Bから点Aに向かい連結ダクト内を流れる。以上の動作が自動的に繰り返される事で、一定周期で流速が変動する流れが作られる。」 「[0025] 次に、本発明の他の実施形態を図25、図26に従い説明する。 図25は本発明にかかる純流体素子であり、27は円筒状容器内に実装した本発明にかかる純流体素子であり、28は球状容器内に実装した本発明にかかる純流体素子である。27、28共に流体流入口1、連結ダクト2、流体噴出ノズル3を備え、図1に示す純流体素子同様に発振動作する。 図26は例えばエアシャワー装置に取り付けた状態での断面図であり、29は支持板であり、例えばエアシャワー装置の圧力隔壁13である。30は固定板であり、27もしくは28の純流体素子を、支持板29と支持版30とにより回転可能な状態に挟んで支持する構造である。 以上の構造により、取り付け後に純流体素子27もしくは28の方向を自在に変えることが可能となる。」 「[0027] なお本実施例では、本発明にかかる純流体素子の適用例としてエアシャワー装置を例にあげているが、噴流を伴う流体関連製品全般への適用が可能である。特に高温環境下、低温環境下等の可動機構の構成が困難な流体を制御する場合に適している。例えば、ジェットバス、エアコン、冷蔵庫、加熱調理機、食器洗い機、乾燥機、冷却機、燃焼機、スプリンクラー、攪拌機等への適用が考えられる。」 「[図1] [図:0001421341000005.jpg] 」 「[図2] [図:0001421341000006.jpg] 」 「[図3] [図:0001421341000007.jpg] 」 「[図25] [図:0001421341000008.jpg] 」 「[図26] [図:0001421341000009.jpg] 」 (3)引用文献Aの記載事項 引用文献Aには、以下の記載がある。 「[請求項1] 湯水を往復振動させながら吐出する吐水装置であって、 吐水装置本体と、 この吐水装置本体に取り付けられ、供給された湯水を往復振動させながら吐出する振動発生素子と、を有し、 上記振動発生素子は、 上記吐水装置本体から供給された湯水が流入する給水通路と、 上記給水通路の下流側に設けられ、流路断面の一部を閉塞するよう設けられた湯水衝突部を有し、この湯水衝突部に給水通路から導かれた湯水の一部が衝突することで、その下流側に交互に反対回りの渦を発生させる渦発生通路と、 上記渦発生通路の下流側に設けられ、上記渦列通路から導かれた渦列を含む湯水を往復振動させながら吐出させる吐水口通路と、を有し、 上記吐水口通路は、弾性変形可能な軟質部材で形成されており、且つ使用者が上記吐水口通路を変形操作可能なように上記吐水装置本体に取り付けられており、 上記渦発生通路は、弾性変形可能な軟質部材で形成されており、且つ上記吐水口通路の変形がこの渦発生通路に伝達されるように、上記吐水口通路と一体形成されていることを特徴とする吐水装置。」 「[0018] 以下に、図面を用いながら本発明の実施例における吐水装置1について、説明を行う。 図1は本発明における吐水装置1の外観図である。吐水装置1はいわゆるハンドシャワーであって、吐水装置本体10と、吐水装置本体10に設けられた振動発生素子2とから構成されている。吐水装置本体10は、おおきく、吐水ヘッド12と把持部14から構成されている。吐水ヘッド10には複数の吐水ノズル16と、振動発生素子2との二種類の吐水口が設けられており、それぞれ同時に、あるいは切り替えて吐水を行うことができるように構成されている。」 「[0021] 図4に本発明における振動発生素子2の外観図を示す。振動発生素子2は略長方形上の吐水口を有し、その長方形の長手方向に往復振動しながら吐水を行うノズルである。このとき、湯水が往復振動する方向と一致する長手方向辺に一対の第一壁面部242を、直行する短手方向辺に一対の第二壁面部244を、それぞれ有しており、第一壁面部242のほうが第二壁面部244よりも厚みが厚い。」 「[0022] 図5は本体における振動発生素子2の動作の様子を示した模式図である。 図5(a)は図4におけるA-A断面図であるが、ここに示すように、振動発生素子2の内部には、長手方向に貫通するように長方形断面の通路が形成されている。この通路は上流側から順に、給水通路20、渦発生通路22、吐水口流路26として形成されている。給水通路20は、振動発生素子2の背面側の流入口から伸びる断面積一定の長方形断面の直線状の通路である。」 「[0023] 渦発生通路22は給水通路20の下流側に、給水通路20に連なるように(段差なく)設けられた長方形断面の通路である。即ち、給水通路20から渦発生通路22までは同一の寸法形状を有している。 吐水口通路24は渦発生通路22のさらに下流側に、渦発生通路22と連なるように設けられた長方形断面の通路である。吐水口通路24は渦発生通路22よりも、断面長方形の長辺方向の長さが短くなるように構成されており、断面積が小さくなっている。」 「[0024] 給水通路20と渦発生通路22との間には湯水衝突部26が設けられている。この湯水衝突部26は図5(b)(図4のB-B断面図)に示すように給水通路20の高さ方向に対抗する壁面(天井面および床面)を連結するように伸びる三角柱状の部分であり、給水通路20の幅方向の中央に、島状に配置されている。湯水衝突部26の断面は、二等辺三角形状に形成されており、長さが等しい二辺が下流側に向かうように配置されている。この湯水衝突部26を設けることにより、その下流側の渦発生通路22内でカルマン渦が生成され、吐水口通路26から吐水される湯水が往復振動される。」 「[図1] [図:0001421341000010.jpg] 」 「[図4] [図:0001421341000011.jpg] 」 「[図5] [図:0001421341000012.jpg] 」 2.対比、判断 (1)取消理由1-1(甲1に基づく新規性)及び取消理由2-1(甲1に基づく進歩性)について ア 甲1に記載された発明 甲1の請求項1を参酌しつつ、[0009]、[図1]~[図4]の実施例に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。 <甲1発明> 「浴槽のフランジに取り付けた肩当て用シャワー装置に入浴者の肩に向けてシャワー水を噴射する肩当て用ノズルを設け、噴流が左右に切り換わるように発振する発振型純流体素子を肩当て用ノズルに設けて成る、浴槽の肩当て用シャワー装置であって、 フランジ2には台座27が取り付けられ、台座27には本体28を回転自在に装着し、 本体28の上部には筒状の回転軸31を水平に配置して回転自在に装着し、この回転軸31には肩当て用ノズル3を装着してあり、この肩当て用ノズル3の先端の噴射口33からシャワー水の噴流を噴射できるようになっており、この肩当て用ノズル3内にはフィードバック発振型純流体素子のような発振型純流体素子34を内装してあり、発振型純流体素子34の発振にて噴流の向きを交互に切り換えるようになっており、 この肩当用シャワー装置17は本体28を回転することにより図3の矢印イに示すように水平面内で肩当て用ノズル3を回転でき、肩当て用ノズル3を図3の矢印ロに示すように上下に回転でき、肩当て用ノズル3の向きを自在に変えることができるようになっている、浴槽の肩当て用シャワー装置。」 イ 対比・判断 (ア)本件発明1について a.本件発明1と甲1発明との対比 甲1発明の「肩当て用ノズル3」は、その噴射口33からシャワーの噴流を噴射するものであり、噴流が左右に切り換わるように発振するものであるから、本件発明1の「噴流の噴射方向が平面内で揺動する揺動噴射を実行可能な噴射部材」に相当する。また、甲1発明の「肩当て用ノズル3」は、「発振型純流体素子34」を内装するものであるから、本件発明1の「前記噴射部材は、前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子である」を充足する。 甲1発明の「筒状の回転軸31」は、回転自在であり、「肩当て用ノズル3」が装着されたものであるから、本件発明1の「前記噴射部材を移動可能に支持する支持体」に相当する。 甲1発明の「浴槽の肩当て用シャワー装置」は、本件発明1の「吐出装置」に相当し、また、甲1発明の「肩当て用シャワー装置」は「浴槽のフランジに取り付けた」ものであるから、本件発明1の「前記吐出装置は、浴槽に取り付けられ、」を充足する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「噴流の噴射方向が平面内で揺動する揺動噴射を実行可能な噴射部材と、 前記噴射部材を移動可能に支持する支持体と、を備え、 前記噴射部材は、前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子である吐出装置であって、 前記吐出装置は、浴槽に取り付けられる、吐出装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点甲1-1> 本件発明1は「前記噴射部材は、前記浴槽内に浴槽水を貯留した場合に、その浴槽水の水面より下方に配置される」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されない点。 そこで、上記相違点甲1-1について検討する。 b.相違点甲1-1について 甲1発明は「肩当て用」のシャワー装置であり、甲1の[図4]及び[0007]に記載されるように、入浴者の「肩に対応する位置」である浴槽水の水面より上方に配置されるものであるから、相違点甲1-1は実質的な相違点である。 また、甲1には、甲1発明における肩当て用シャワー装置を、入浴者の肩に対応する位置とはいえない「浴槽水の水面より下方」に配置変更することを動機付ける記載はなく、甲1以外の他の証拠の記載を参酌しても、甲1発明の肩当て用シャワー装置を「浴槽水の水面より下方」に配置する動機付けとなる記載はないから、相違点甲1-1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 c.本件発明1についてのまとめ 以上のことから、本件発明1は甲1発明ではなく、また、本件発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明2~4及び6について 本件発明2~4及び6は、いずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。 そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4及び6は、いずれも甲1発明ではなく、また、本件発明2~4及び6は、いずれも甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 以上まとめると、本件発明1~4及び6は、いずれも甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~4及び6は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、取消理由1-1(甲1に基づく新規性)及び取消理由2-1(甲1に基づく進歩性)により本件発明1~4及び6についての特許を取り消すことはできない。 (2)取消理由1-2(甲3に基づく新規性)及び取消理由2-2(甲3に基づく進歩性)について ア 甲3に記載された発明 甲3の請求項1を参酌しつつ、[0025]、[図26]の実施形態に着目すると、甲3には、以下の発明が記載されているといえる。 <甲3発明> 「流体流入口、連結ダクト、流体噴出ノズルで構成され、噴出しノズル部の圧力差により連結ダクト内の流体を駆動し、その結果圧力差が反転し、再び流体が駆動されることで発振する純流体素子において、前記連結ダクトを複数個の流路により構成した、純流体素子を、円筒状容器又は球状容器内に実装し、前記純流体素子を、エアシャワー装置の圧力隔壁13である支持板29と、固定板である支持持板30とにより回転可能な状態に挟んで支持する構造を備える、エアシャワー装置。」 イ 対比・判断 (ア)本件発明1について a.本件発明1と甲3発明との対比 甲3発明における「純流体素子」は、[0010]を参照すると、流体の流れにより流体噴出ノズルから噴出する方向が発振するものであるから、本件発明1の「噴流の噴射方向が平面内で揺動する揺動噴射を実行可能な噴射部材」、「前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子」に相当する。 甲3発明における「支持板29」及び「支持板30」は、円筒状容器又は球状容器内に実装した流体素子を、回転可能な状態に挟んで支持するものであるから、本件発明1の「前記噴射部材を移動可能に支持する支持体」に相当する。 甲3発明における「エアシャワー装置」は、本件発明1の「吐出装置」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲3発明とは、 「噴流の噴射方向が平面内で揺動する揺動噴射を実行可能な噴射部材と、 前記噴射部材を移動可能に支持する支持体と、を備え、 前記噴射部材は、前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子である吐出装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点甲3-1> 本件発明1は「前記吐出装置は、浴槽に取り付けられ、」と特定するのに対し、甲3発明はそのように特定されない点。 <相違点甲3-2> 本件発明1は「前記噴射部材は、前記浴槽内に浴槽水を貯留した場合に、その浴槽水の水面より下方に配置される」と特定するのに対し、甲3発明はそのように特定されない点。 そこで、上記相違点甲3-1及び相違点甲3-2について検討する。 b.相違点甲3-1及び相違点甲3-2について 甲3発明は「エアシャワー装置」であり、浴槽に取り付けられるものでも、浴槽水の水面より下方に配置されるものでもないから、相違点1は実質的な相違点である。 また、甲3の[0027]には、「本発明にかかる純流体素子の適用例としてエアシャワー装置を例にあげているが、噴流を伴う流体関連製品全般への適用が可能である。・・・例えば、ジェットバス、エアコン、冷蔵庫、加熱調理機、食器洗い機、乾燥機、冷却機、燃焼機、スプリンクラー、攪拌機等への適用が考えられる」と記載されているが、甲3発明における「純流体素子」は「エアシャワー装置の圧力隔壁13である支持板29と、固定板である支持持板30とにより回転可能な状態に挟んで支持」されており、これをジェットバスにどのように取り付けるかは甲3には具体例には記載されておらず、まして、「浴槽内に浴槽水を貯留した場合に、その浴槽水の水面より下方に配置」することを動機付ける記載はなく、甲3以外の他の証拠の記載を参酌しても、甲3発明を浴槽に取り付け、かつ、浴槽内に浴槽水を貯留した場合に、その浴槽水の水面より下方に配置する動機付けとなる記載はないから、相違点甲3-1及び甲3-2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲3に基づいて当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 c.本件発明1についてのまとめ 以上のことから、本件発明1は甲3発明ではなく、また、本件発明1は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明2~4及び6について 本件発明2~4及び6は、いずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。 そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4は、いずれも甲3発明ではなく、また、本件発明2~4及び6は、いずれも甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 以上まとめると、本件発明1~4は、いずれも甲3に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~4及び6は、いずれも甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、取消理由1-2(甲3に基づく新規性)及び取消理由2-2(甲3に基づく進歩性)により本件発明1~4及び6についての特許を取り消すことはできない。 (3)取消理由2-3(引用文献Aに基づく進歩性)について ア 引用文献Aに記載された発明 引用文献Aの請求項1に着目すると、引用文献Aには、以下の発明が記載されているといえる。 <引用文献A発明> 「湯水を往復振動させながら吐出する吐水装置であって、 吐水装置本体と、 この吐水装置本体に取り付けられ、供給された湯水を往復振動させながら吐出する振動発生素子と、を有し、 上記振動発生素子は、 上記吐水置本体から供給された湯水が流入する給水通路と、 上記給水通路の下流側に設けられ、流路断面の一部を閉塞するよう設けられた湯水衝突部を有し、この湯水衝突部に給水通路から導かれた湯水の一部が衝突することで、その下流側に交互に反対回りの渦を発生させる渦発生通路と、 上記渦発生通路の下流側に設けられ、上記渦列通路から導かれた渦列を含む湯水を往復振動させながら吐出させる吐水口通路と、を有し、 上記吐水口通路は、弾性変形可能な軟質部材で形成されており、且つ使用者が上記吐水口通路を変形操作可能なように上記吐水装置本体に取り付けられており、 上記渦発生通路は、弾性変形可能な軟質部材で形成されており、且つ上記吐水口通路の変形がこの渦発生通路に伝達されるように、上記吐水口通路と一体形成されている、吐水装置。」 イ 対比・判断 (ア)本件発明1について a.本件発明1と引用文献A発明との対比 引用文献A発明における「振動発生素子」は、給水通路から導かれた湯水の一部が湯水衝突部に衝突することで、その下流側に交互に反対回りの渦を発生させ、下流側で渦列を含む湯水を往復振動させながら吐出させるものであるから、本件発明1の「噴流の噴射方向が平面内で揺動する揺動噴射を実行可能な噴射部材」、「前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子」に相当する。 引用文献A発明において、「振動発生素子」は、吐水装置本体に取り付けられるものであるから、吐水装置本体における「振動発生素子」が取り付けられた部分は、本件発明1の「前記噴射部材を」「支持する支持体」に相当する。 引用文献A発明の「吐水置」は、本件発明1の「吐出装置」に相当する。 そうすると、本件発明1と引用文献A発明とは、 「噴流の噴射方向が平面内で揺動する揺動噴射を実行可能な噴射部材と、 前記噴射部材を支持する支持体と、を備え、 前記噴射部材は、前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子である吐出装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点A-1> 噴射部材を支持する支持体について、本件発明1は、「噴射部材を移動可能に」支持するのに対し、引用文献A発明は、「噴射部材を移動可能に」支持するとは特定されない点。 <相違点A-2> 本件発明1は「前記吐出装置は、浴槽に取り付けられ、」と特定するのに対し、引用文献A発明はそのように特定されない点。 <相違点A-3> 本件発明1は「前記噴射部材は、前記浴槽内に浴槽水を貯留した場合に、その浴槽水の水面より下方に配置される」と特定するのに対し、引用文献A発明はそのように特定されない点。 そこで、事案に鑑み、相違点A-2及び相違点A-3について検討する。 b.相違点A-2及び相違点A-3について 引用文献Aの[0018]及び図1に記載されているように、引用文献Aにおいて引用文献A発明の吐水装置は「ハンドシャワー」を具体例として記載されており、引用文献Aには、これを浴槽に固定したり、まして浴槽水の水面より下方に配置したりすることを動機付ける記載はなく、引用文献A以外の他の証拠の記載を参酌しても、ハンドシャワーとして記載されている引用文献A発明を、浴槽に固定し、かつ、浴槽水の水面より下方に配置する動機付けとなる記載はないから、相違点A-2及び相違点A-3に係る本件発明1の発明特定事項は、引用文献A発明に基づいて当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 c.本件発明1についてのまとめ 以上のことから、本件発明1は引用文献A発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明2~4及び6について 本件発明2~4及び6は、いずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。 そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4及び6は、いずれも引用文献A発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 以上まとめると、本件発明1~4及び6は、いずれも引用文献Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、取消理由2-3(引用文献Aに基づく進歩性)により本件発明1~4及び6についての特許を取り消すことはできない。 3.取消理由通知に記載した取消理由についてのまとめ 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由1-1(甲1に基づく新規性)及び取消理由2-1(甲1に基づく進歩性)、取消理由1-2(甲3に基づく新規性)及び取消理由2-2(甲3に基づく進歩性)並びに取消理由2-3(引用文献Aに基づく進歩性)のいずれの取消理由によっても、本件発明1~4及び6についての特許を取り消すことはできない。 第7 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断 当審は、特許異議申立理由はいずれも理由がないものと判断する。理由は以下のとおり。 1.取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由の概要 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由は、上記第4の1.に記載した(2)申立理由1-2(甲2に基づく新規性)、(3)申立理由1-3(甲3に基づく新規性)のうち本件発明6についての特許を対象とする申立て、及び(5)申立理由2-2(第1周知技術(甲1~甲3)を主引例とする進歩性)である。以下、検討する。 2.申立理由1-3(甲3に基づく新規性)について(本件発明6) (1)甲3発明 甲3発明は、上記第6 2.(2)アに記載したとおりである。 (2)本件発明6について 本件発明6は請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。 そうすると、上記第6 2.(2)イ(ア)に記載した本件発明1についての理由と同様の理由により、本件発明6は甲3ではない。 (3)申立理由1-3(甲3に基づく新規性)について(本件発明6)のまとめ 以上のことから、本件発明6は甲3に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当しない。 よって、申立理由1-3(甲3に基づく新規性)により本件発明6についての特許を取り消すことはできない。 3.申立理由1-2(甲2に基づく新規性)及び申立理由2-2(第1周知技術(甲1~甲3)を主引例とする進歩性)の申立てについて (1)甲2の記載事項 甲2には、以下の記載がある。 「[請求項2] 洗浄水が流入する流入室と、前記流入室の内部と外部とを連通する開口部と、を有するガイド部材と、 前記開口部より小径な縮径部を有し、前記縮径部の先端を前記開口部から前記ガイド部材の外部に突出させた状態で前記流入室の内部に設けられ、前記流入室に流入した洗浄水を前記縮径部の先端から流出可能な筒体と、 前記縮径部の先端から流出した洗浄水が導入されるバッファ室と、前記筒体の中心軸に対して互いに非対称な関係で各々が傾斜すると共に前記バッファ室に連通した複数の吐水孔が形成され前記縮径部よりも径方向に大きな散水板と、を有する前記縮径部の先端に設けられたヘッドと、 を備え、 前記流入室は、前記筒体の動きを案内するガイド壁を有し、 前記開口部は、前記流入室に近接して設けられ前記筒体の動きを案内する天井壁と、前記天井壁よりも前記外部の側に設けられ前記筒体の動きを案内する開口壁と、を有し、 前記筒体は、前記ガイド壁と前記天井壁と前記開口壁とに当接した状態で前記流入室の中心軸に対して傾きながら前記流入室の中心軸のまわりに首振り公転し、且つ前記筒体自身の中心軸のまわりに自転し、 前記筒体が前記首振り公転及び自転しているときの前記筒体と前記天井壁との当接状態は、略直線状態または略曲線状態であることを特徴とする吐水装置。」 [0017] 本実施形態の吐水装置は、ガイド部材10と、ガイド蓋30と、筒体(ノズル)40と、を備えている。」 「[0075] 次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。 図18は、本発明の第2の実施の形態にかかる吐水装置の内部を表す模式図である。 また、図19は、本実施形態にかかる吐水装置から吐水される吐水流の挙動を説明するための模式図である。 [0076] 本実施形態の吐水装置は、第1の実施の形態にかかる吐水装置に対して、さらにヘッド140を備えている。その他の構造については、第1の実施の形態にかかる吐水装置の構造と同様である。 ヘッド140は筒体40よりも径方向寸法が大きな扁平状に形成され、その径方向の中心を筒体40の中心軸C2に一致させている。ヘッド140は、漏斗状のバッファ部材141と散水板144とヘッドカバー147とを有する。バッファ部材141の細管部142の内部に筒体40の縮径部42の先端が嵌合固定され、これにより、筒体40及びヘッド140は両者一体となって自転したり揺動を行う首振り公転する。 [0077] バッファ部材141の内部にはバッファ室143が形成され、筒体40の縮径部42の先端の開口56はバッファ室143に臨んでいる。バッファ室143の径方向寸法は筒体40の径方向寸法より大きく、バッファ室143には縮径部42の先端から流出した水が一時的に貯留可能となっている。 [0078] 散水板144は、バッファ室143における細管部142とは反対側の開口を塞ぐ蓋状に設けられている。散水板144は筒体40よりも径方向寸法が大きな円盤状に形成され、散水板144にはその厚さ方向を貫通する複数の吐水孔145が形成されている。吐水孔145の一端はバッファ室143に連通し、他端はヘッド140の外部に臨んでいる。」 「[0082] 筒体40及びヘッド140は、前述したように首振り公転と自転とを組み合わせた動きをするため、本実施形態に係る吐水装置によって得られるシャワー状の吐水流の吐水軌跡(例えば人体等に対する吐水流の衝突部位の人体表面上における移動軌跡)は、自転に起因する軌跡と、首振り公転に起因する軌跡とを組み合わせたものとなる。 [0083] その吐水軌跡を図19に模式的に示す。なお、図19において、吐水装置は、可動部分である筒体40とヘッド140のみを示し、旋回室12が形成されたガイド部材10などは図示を省略している。 [0084] 筒体40及びヘッド140の自らの中心軸C2のまわりの一体となった自転により、その自転方向と同じb方向に、図19において実線で示されるような円状の軌跡を描いて移動する吐水流が形成される。ここで、吐水孔145が筒体40の中心軸C2に対して傾いていることから、吐水孔145が形成された散水板144の径よりも大きな円を描くように吐水流は移動する。 [0085] なお、本実施形態の吐水装置においては、すべての吐水孔145が同じ方向に傾斜している場合を例示しているが、これだけに限定されず、少なくとも1つの吐水孔145が他の吐水孔145とは異なる方向に傾斜していてもよい。但し、すべての吐水孔145が同じ方向に傾斜していると、各吐水孔145からの吐水流は同じ方向に進むため、分散することなく、面内分布が均一でまとまり感のある吐水流を浴びることができる。そのため、すべての吐水孔145が同じ方向に傾斜していることがより好ましく、その吐水流を受ける部分をむら無く洗浄したり温めることができる。 [0086] また、本実施形態の吐水装置では、筒体40及びヘッド140の、旋回室12の中心軸C1のまわりの首振り公転により、図19において点線で示すように比較的狭い範囲を移動する吐水流が形成される。筒体40とガイド壁22によって規制される公転角より、吐水孔145の傾斜で決定される自転角の方が大きく設定されている場合には、これにより、この首振り公転により形成される吐水流は、自転により形成される吐水流の移動範囲より狭い範囲を、自転により形成される吐水流の移動方向bとは反対方向のa方向に、b方向の移動よりも高速に移動する。したがって、吐水流は全体として、比較的狭い範囲を図14において矢印a方向に高速に移動しつつ、その移動範囲よりも大きな範囲をa方向とは逆方向のb方向にゆっくりと移動する。 [0087] 首振り公転によって形成される吐水流によって、自転によって形成される吐水流だけではカバーしきれない、より内側の範囲をカバーすることができ、吐水流がいわゆる中抜けせずに、むらの無い面状の吐水流を得ることができる。このように、本実施形態にかかる吐水装置によれば、中抜けなく、より広範囲を面状にカバーするシャワー状の吐水流を実現できる。」 「[0089] 次に、本実施形態にかかる吐水装置の具体例について、図面を参照しつつ説明する。 図20は、浴室やシャワーブースの壁に取り付けた吐水装置を例示する模式図である。 本具体例では、保持部材151、152、153を介して、例えば浴室やシャワーブースの壁150に対してガイド部材10およびガイド蓋30が保持されている。ガイド部材10およびガイド蓋30の外周面と保持部材152との間にはシールリング155が介在され、保持部材151と保持部材152との間にはシールリング156が介在されている。そして、ガイド部材10およびガイド蓋30は保持部材151、152、153に対して上下方向や左右方向あるいは斜め方向に回動可能となっている。また、ガイド部材10およびガイド蓋30は保持部材152に対して、液密に回動可能となっている。ガイド部材10およびガイド蓋30が回動することにより、散水板144の表面部が向く方向を変えることができ、その散水板144に形成された吐水孔145から吐水される吐水流の吐水方向の調節が可能となる。」 「[0092] このような本具体例の吐水装置を複数個、例えば浴室やシャワーブースの壁に取り付け、それら各吐水装置からの吐水流を浴びれば、フリーハンドの状態で体の広範囲をむら無く一度に温め、通水時間が増加してもその状態を安定化できる。そのため、シャワー流だけで十分な入浴感を得ることが可能となる。このようなシャワー浴は、浴槽に浸かっての入浴と異なり、体への水圧の圧迫感(心肺への負担)やおぼれる心配がなく、特に小さな子供や高齢者にとって安心である。 [0093] なお、本発明の吐水装置は、浴室やシャワーブースにおけるシャワー装置として用いる以外にも、例えば、キッチンや洗浄機能付き便器やスプリンクラーなどにも用いることが可能である。」 「[図1] [図:0001421341000013.jpg] 」 「[図18] [図:0001421341000014.jpg] 」 「[図19] [図:0001421341000015.jpg] 」 「[図20] [図:0001421341000016.jpg] 」 (2)甲2に記載された発明 甲2の請求項2を参酌しつつ、[0017]、[0089]、[図20]の実施形態に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されているといえる。 <甲2発明> 「吐出装置を有する浴室又はシャワーブースであって、 前記吐出装置はガイド部材10と、ガイド蓋30と、筒体(ノズル)40と、を備えており、 前記ガイド部材は、洗浄水が流入する流入室と、前記流入室の内部と外部とを連通する開口部と、を有するガイド部材と、 前記開口部より小径な縮径部を有し、前記縮径部の先端を前記開口部から前記ガイド部材の外部に突出させた状態で前記流入室の内部に設けられ、前記流入室に流入した洗浄水を前記縮径部の先端から流出可能な筒体と、 前記縮径部の先端から流出した洗浄水が導入されるバッファ室と、前記筒体の中心軸に対して互いに非対称な関係で各々が傾斜すると共に前記バッファ室に連通した複数の吐水孔が形成され前記縮径部よりも径方向に大きな散水板と、を有する前記縮径部の先端に設けられたヘッドと、 を備え、 前記流入室は、前記筒体の動きを案内するガイド壁を有し、 前記開口部は、前記流入室に近接して設けられ前記筒体の動きを案内する天井壁と、前記天井壁よりも前記外部の側に設けられ前記筒体の動きを案内する開口壁と、を有し、 前記筒体は、前記ガイド壁と前記天井壁と前記開口壁とに当接した状態で前記流入室の中心軸に対して傾きながら前記流入室の中心軸のまわりに首振り公転し、且つ前記筒体自身の中心軸のまわりに自転し、 前記筒体が前記首振り公転及び自転しているときの前記筒体と前記天井壁との当接状態は、略直線状態または略曲線状態であり、 前記吐水装置は、保持部材151、152、153を介して、浴室又はシャワーブースの壁150に対してガイド部材10およびガイド蓋30が保持されており、ガイド部材10およびガイド蓋30の外周面と保持部材152との間にはシールリング155が介在され、保持部材151と保持部材152との間にはシールリング156が介在され、ガイド部材10およびガイド蓋30は保持部材151、152、153に対して上下方向や左右方向あるいは斜め方向に回動可能となっており、ガイド部材10およびガイド蓋30は保持部材152に対して、液密に回動可能となっている、 浴室又はシャワーブース。」 (3)対比・判断 ア 本件発明1について (ア)本件発明1と甲2発明との対比 甲2発明における「吐水装置」は、[0082]~[0084]及び[図19]を参照すると、吐水装置に流入する水の流れにより、吐水装置によって得られるシャワー状の吐水軌跡が、自転に起因する軌跡と首振り公転に起因する軌跡とを組み合わせたものとなるから、本件発明1の「噴流の噴射方向が平面内で揺動する揺動噴射を実行可能な噴射部材」と「噴流の噴射方向」が「揺動する揺動噴射を実行可能な噴射部材」である限りにおいて一致し、また、本件発明1の「前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子」に相当する。 甲2発明における「保持部材151、152、153」は、吐水装置のガイド部材10およびガイド蓋30をシールリングを介して浴室又はシャワーブースの壁150に対して回動可能に保持するものであるから、本件発明1の「前記噴射部材を移動可能に支持する支持体」に相当する。 甲2発明における「浴室又はシャワーブース」は、本件発明1の「吐出装置」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、 「噴流の噴射方向が揺動する揺動噴射を実行可能な噴射部材と、 前記噴射部材を移動可能に支持する支持体と、を備え、 前記噴射部材は、前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子である吐出装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点甲2-1> 本件発明1は「噴流の噴射方向が平面内で揺動する」と特定するのに対し、甲2発明は、吐水軌跡が自転に起因する軌跡と首振り公転に起因する軌跡とを組み合わせたものである点。 <相違点甲2-2> 本件発明1は「前記吐出装置は、浴槽に取り付けられ、」と特定するのに対し、甲2発明は浴室又はシャワーブースの壁に保持されている点。 <相違点甲2-3> 本件発明1は「前記噴射部材は、前記浴槽内に浴槽水を貯留した場合に、その浴槽水の水面より下方に配置される」と特定するのに対し、甲2発明はそのように特定されない点。 そこで、事案に鑑み上記相違点甲2-2及び相違点甲2-3について検討する。 (イ)相違点甲2-2及び相違点甲2-3について 甲2の[0092]には、「本具体例の吐水装置を複数個、例えば浴室やシャワーブースの壁に取り付け、それら各吐水装置からの吐水流を浴びれば、フリーハンドの状態で体の広範囲をむら無く一度に温め、通水時間が増加してもその状態を安定化できる。そのため、シャワー流だけで十分な入浴感を得ることが可能となる。このようなシャワー浴は、浴槽に浸かっての入浴と異なり、体への水圧の圧迫感(心肺への負担)やおぼれる心配がなく、特に小さな子供や高齢者にとって安心である。」と記載されているから、甲2において、甲2発明の吐水装置は、浴槽に取り付けるものとしては記載されておらず、むしろ浴槽に取り付けないものとして記載されている。よって、相違点甲2-2及び甲2-3は実質的な相違点である。 また、仮に、甲2発明における吐水装置の取り付け位置を浴槽に変更すれば、「体への水圧の圧迫感(心肺への負担)やおぼれる心配がなく、特に小さな子供や高齢者にとって安心である」という効果が得られなくなることは明らかであるから、当業者が甲2発明の吐水装置を浴槽に取り付けたり、まして浴槽水の水面より下方に配置したりすることを動機付けられることはなく、さらに、甲2以外の他の証拠の記載を参酌しても、甲2発明の吐水装置を浴槽に取り付け、かつ、浴槽水の水面より下方に配置する動機付けとなる記載はないから、相違点甲2-2及び相違点甲2-3に係る本件発明1の発明特定事項は、甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)申立人の主張について 申立人は特許異議申立書の88~90頁において、甲1発明~甲3発明及び甲4~甲6の記載事項を周知例として挙げ、「第1周知技術事項」を認定することができること、本件発明1と第1周知技術事項とを対比すると「前記噴射部材を移動可能に支持する支持体」の有無の点で相違すること、並びに、当該相違点は本願特許出願時より前から当業者にとって周知の技術的事項(第2周知技術事項、例えば、甲1、甲2及び甲7~甲9を参照。)であるから、単なる周知技術の付加であり、当該周知技術を第1周知技術に適用することは容易であること、を主張している。 しかし、本件発明1が、甲1発明~甲3発明に基づき、他の証拠の記載を参酌しても当業者が容易に発明をすることができたものではないことは、上記第6の2.(1)~(2)及び上記(イ)に記載したとおりである。また、仮に、「第1周知技術事項」という発明を認定できるとしても、本件訂正により、本件発明1と第1周知技術事項とは、申立人が主張する相違点に加え、「前記吐出装置は、浴槽に取り付けられ、前記噴射部材は、前記浴槽内に浴槽水を貯留した場合に、その浴槽水の下面より下方に配置される」点でも新たに相違することとなっており、いずれの証拠の記載を参照しても、当業者が第1周知技術事項において当該新たな相違点に相当する構成を採用する動機となる記載は見いだせない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (エ)本件発明1についてのまとめ 以上のことから、本件発明1は甲2発明ではなく、また、本件発明1は甲2発明(又は第1周知技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~4及び6について 本件発明2~4及び6は、いずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。 そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4及び6は、いずれも甲2発明ではなく、また、本件発明2~4及び6は、いずれも甲2発明(又は第1周知技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 以上まとめると、本件発明1~4及び6は、いずれも甲2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~4及び6は、いずれも甲2に記載された発明(又は第1周知技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、申立理由1-2(甲2に基づく新規性)及び申立理由2-2(第1周知技術(甲1~甲3)を主引例とする進歩性)により本件発明1~4及び6についての特許を取り消すことはできない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件発明1~4及び6についての特許を取り消すことはできない。また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701144

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