特許異議申立
2023-701133
感光性組成物、硬化物、ブラックマトリクス、ブラックバンク、カラーフィルター、画像表示装置、及びパターン化された硬化膜の製造方法
- 審判番号
- 2023-701133
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-120559
- 登録番号
- 7263153
- 請求日
- 2023年10月24日
- 審決日
- 2024年11月08日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東京応化工業株式会社
- 【権利者代理人】正林 真之
- 【権利者代理人】林 一好
- 【異議申立人】小黒 平二
- 審判長/審判官
- 審判長 神谷 健一
- 審判官 河原 正
- 審判官 宮澤 浩
- 分類
- P1651.113-YAA(G03F) / P1651.121-YAA(G03F) / P1651.537-YAA(G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7263153号発明「感光性組成物、硬化物、ブラックマトリクス、ブラックバンク、カラーフィルター、画像表示装置、及びパターン化された硬化膜の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7263153号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第7263153号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特許第7263153号の請求項1~10に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2019-120559号)は、令和元年(2019年)6月27日を出願日とする特許出願であって、令和5年4月14日にその特許権の設定の登録がされ、令和5年4月24日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議申立ての経緯は、以下のとおりである。
令和5年10月24日 :特許異議申立人 小黒 平二(以下「異議申立人」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「異議申立」という。また、異議申立人が証拠として提出した甲第1号証を「甲1」と略し、甲第2号証等も同様とする。)
令和5年12月11日付け:取消理由通知書
令和6年 2月 9日 :訂正請求書の提出
令和6年 2月 9日 :意見書(特許権者)の提出
令和6年 2月26日付け:手続補正指令書(方式)
令和6年 3月22日 :手続補正書(方式)(令和6年2月9日提出 の訂正請求書及びこれに添付された訂正特許 請求の範囲の補正)の提出
令和6年 4月30日 :意見書(異議申立人)の提出
令和6年 7月 1日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年 8月30日 :訂正請求書の提出
(この訂正請求書による訂正の請求を、以下 「本件訂正請求」という。)
令和6年 8月30日 :意見書(特許権者)の提出
令和6年10月11日 :意見書(異議申立人)の提出
なお、令和6年2月9日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第7263153号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、次の訂正事項1からなる。下線は、訂正箇所を示す。なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1~10〕についてなされたものである。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1において、「感光性組成物。」と記載されているのを、
「感光性組成物。
(ただし、着色感光性脂組成物であって、
(A)エポキシ基を含むコポリマーと、
(B)二重結合を含む光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)黒色無機着色剤を含む着色剤と、を含み、
前記着色剤が、前記着色剤の固形分の総重量に基づいて、50~100重量%の前記黒色無機着色剤を含み、
前記コポリマー(A)内の前記エポキシ基に対する、前記光重合性化合物(B)内の前記二重結合のモル比が、以下の関係を満たす、着色感光性樹脂組成物を除く。
4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35)」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~10も同様に訂正する。)。
3 訂正の要件の判断
(1) 訂正の目的
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、「感光性組成物」を、
「着色感光性脂組成物であって」、「(A)エポキシ基を含むコポリマーと」、「(B)二重結合を含む光重合性化合物と」、「(C)光重合開始剤と」、「(D)黒色無機着色剤を含む着色剤と、を含み」、「前記着色剤が、前記着色剤の固形分の総重量に基づいて、50~100重量%の前記黒色無機着色剤を含み」、「前記コポリマー(A)内の前記エポキシ基に対する、前記光重合性化合物(B)内の前記二重結合のモル比が」、「4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35」「の関係を満たす」、「着色感光性樹脂組成物」(以下「請求項1除外事項」という。)が除かれたものに限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2) 新規事項の追加の有無
請求項1除外事項を請求項1から「除く」ことによって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはないことは明らかである。
そうすると、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(1)及び(2)に照らせば、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。
(4) 請求項1の記載を引用する請求項2~10についても同様である。
(5) 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、訂正要件を満たす。
4 まとめ
本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許第7263153号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正は、上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1~10に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明1」という。請求項2以降についても同様。また、総称して、「本件特許発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂(A)、光重合性モノマー(B)、光重合開始剤(C)、及び遮光剤(D)を含む感光性組成物であって、
前記遮光剤(D)が、カーボンブラック(D1)、及びラクタム系顔料(D2)を含み、
前記カーボンブラック(D1)が、有機物による被覆処理、及び酸性基を導入する処理から選択される表面処理を施され、
前記遮光剤(D)の総質量に対する、前記カーボンブラック(D1)の質量の比率が70質董%以上90質量%以下であり、
前記遮光剤(D)の総質量に対する、前記ラクタム系顔料(D2)の質量の比率が10質量%以上30質量%以下である、感光性組成物。
(ただし、着色感光性脂組成物であって、
(A)エポキシ基を含むコポリマーと、
(B)二重結合を含む光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)黒色無機着色剤を含む着色剤と、を含み、
前記着色剤が、前記着色剤の固形分の総重量に基づいて、50~100重量%の前記黒色無機着色剤を含み、
前記コポリマー(A)内の前記エポキシ基に対する、前記光重合性化合物(B)内の前記二重結合のモル比が、以下の関係を満たす、着色感光性樹脂組成物を除く。
4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35)
【請求項2】
前記有機物が、樹脂又は染料である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記遮光剤(D)の総質量に対する、前記カーボンブラック(D1)の質量と、前記ラクタム系顔料(D2)の質量との合計の比率が、80質量%以上である、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性組成物の硬化物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化物からなるブラックマトリクス又はブラックバンク。
【請求項6】
請求項5に記載のブラックマトリクス及び/又はブラックバンクを備えるカラーフィルター。
【請求項7】
請求項6に記載のカラーフィルターを備える画像表示パネル。
【請求項8】
請求項7に記載の画像表示パネルを備える画像表示装置。
【請求項9】
基板上に、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性組成物を塗布して塗布膜を形成することと、
前記塗布膜を位置選択的に露光することと、
前記露光された塗布膜を現像することと、
を含むパターン化された硬化膜の製造方法。
【請求項10】
前記パターン化された硬化膜がブラックマトリクス又はブラックバンクである、請求項9に記載の製造方法。」
第4 取消しの理由の概要
(本件訂正請求による訂正前の)本件特許の請求項1~10に係る特許に対して、令和6年7月1日付けで特許権者に通知した取消しの理由(以下、単に「取消理由」といい、この通知を「取消理由通知」という。)の概要は、次のとおりである。
「●理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(引用例等一覧)
甲2:特開2019-3189号公報
甲1:特開2019-61216号公報
甲3:国際公開第2017/138605号
甲4:特開平9-71733号公報
甲5:特開2017-198918号公報
甲6:国際公開第2018/151079号
甲9:特許第6254280号公報
甲10:特表2018-532851号公報
甲11:特許第6341351号公報
甲12:特開2018-155878号公報
甲13:国際公開第2019/087985号
甲14:韓国公開特許第10-2016-0144161号公報」
(当合議体注:甲2は主引用例であり、甲1、甲3~甲6、甲9~甲14は、周知技術を例示する文献であるか、あるいは副引用例である。)
第5 当審の判断
1 甲2の記載及び甲2に記載された発明
(1) 甲2の記載
甲2(特開2019-3189号公報)は、本件特許出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには以下の記載がある。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す(以下、同様である。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色感光性樹脂組成物であって、
(A)エポキシ基を含むコポリマーと、
(B)二重結合を含む光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)黒色無機着色剤を含む着色剤と、を含み、
前記着色剤が、前記着色剤の固形分の総重量に基づいて、50~100重量%の前記黒色無機着色剤を含み、
前記コポリマー(A)内の前記エポキシ基に対する、前記光重合性化合物(B)内の前記二重結合のモル比が、以下の関係を満たす、着色感光性樹脂組成物。
4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)パネル、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイパネルなどのために用いられる保護膜、層間絶縁膜、スペーサ、遮光部材などを形成するための材料として好適な着色感光性樹脂組成物及び該組成物から生成される遮光スペーサに関する。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、その表面上の不均一なしわの発生を最小化し、スペーサを形成するための感光性樹脂組成物内の顔料の量を著しく増加することなく、段差特性、耐化学性、弾性回復率、及び遮光性を同時に満たす硬化膜を形成することができる、着色感光性樹脂組成物及びそれから生成される遮光スペーサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、着色感光性樹脂組成物であって、
(A)エポキシ基を含むコポリマーと、
(B)二重結合を含む光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)黒色無機着色剤を含む着色剤と、を含み、
着色剤が、着色剤の固形分の総重量に基づいて、50~100重量%の黒色無機着色剤を含み、
コポリマー(A)内のエポキシ基に対する、光重合性化合物(B)内の二重結合のモル比が、以下の関係を満たす、着色感光性樹脂組成物を、提供する。
4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35
【0008】
さらに、本発明は、着色感光性樹脂組成物から生成される遮光スペーサを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の着色感光性樹脂組成物は、硬化膜が形成される際に不均一なしわの発生を防止し、それによって、ディスプレイの形成時にその縁に発生し得る斑点を防止し、かつ短い現像時間を有する。したがって、着色感光性樹脂組成物は、液晶ディスプレイ(LCD)パネル及び有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイパネルを含む種々の電子部品で用いられる保護膜、層間絶縁膜、黒色カラムスペーサのような遮光スペーサなどを形成するための材料として有利に使用される。
【0010】
加えて、本発明の着色感光性樹脂組成物は、顔料の量を著しく増加することなく、段差特性、耐化学性、弾性回復率、及び遮光性を同時に満たす硬化膜を形成することができる。
・・・略・・・
【発明を実施するための形態】
【0012】
・・・略・・・
【0014】
以下、着色感光性樹脂組成物の各構成成分を詳細に説明する。
【0015】
(A)エポキシ基を含むコポリマー
本発明において用いられるコポリマーは、(a-1)エチレン系不飽和カルボン酸、エチレン系不飽和カルボン酸無水物、またはそれらの組み合わせから誘導された構造単位と、(a-2)芳香環を含有するエチレン系不飽和化合物から誘導された構造単位と、(a-3)エポキシ基を含有するエチレン系不飽和化合物から誘導された構造単位とを含み、また(a-4)構造単位(a-1)、(a-2)、及び(a-3)と異なるエチレン系不飽和化合物から誘導された構造単位をさらに含んでもよい。
・・・略・・・
【0026】
構造単位(a-1)~(a-4)を有するコポリマーの例としては、・・・略・・・(メタ)アクリル酸/スチレン/4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル/N-フェニルマレイミドのコポリマーなどを挙げることができる。
・・・略・・・
【0028】
着色感光性樹脂組成物内のコポリマーの量は、着色感光性樹脂組成物の固形分の総重量(すなわち、溶媒を除いた重量)に基づいて、5~60重量%、または8~45重量%であってもよい。上記の範囲内において、現像時のパターンプロファイルは好ましくなり得、樹脂組成物から形成された硬化膜の現像時間、表面特性などが改善され得る。
・・・略・・・
【0032】
(B)二重結合を含む光重合性化合物
本発明において用いられる光重合性化合物は、二重結合を有する化合物であり、重合開始剤の作用によって重合可能である。・・・略・・・好ましくは、耐化学性の観点から、少なくとも2つの官能基を有する多官能性化合物を挙げることができる。
・・・略・・・
【0035】
光重合性化合物の量は、着色感光性樹脂組成物の固形分の総重量(すなわち、溶媒を除いた重量)に基づいて、5~50重量%、または10~40重量%であってもよい。光重合性化合物の量が上記の範囲内にある場合、現像時間が延長され、プロセス及び残渣がそれによって影響されるという問題を防止することが可能であるため、また、パターン解像度が不十分になるという問題、及びしわが表面に生成されるという問題を防止することが可能であるため、パターンは容易に現像され得る。
【0036】
コポリマー(A)内のエポキシ基に対する、光重合性化合物(B)内の二重結合のモル比が、以下の関係を満たし得る。
4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35
【0037】
ディスプレイのベゼルのための硬化膜がその表面に不均一なしわを有する場合、これは、上部プレートと下部プレートとの間の間隙における欠陥のため、それらの組立て中に注入される液晶の量が不均一であり得る、または電気信号の不十分な伝送によりディスプレイスクリーン上に斑点が発生し得るという不利益を引き起こすことがある。しかしながら、本発明の着色感光性樹脂組成物が、上記の関係によって定義されるモル比を満たす場合、硬化膜の表面上の不均一なしわの生成が最小化され、段差及び高解像度のパターンを形成することが可能である。
【0038】
二重結合のモル数が増加されるとき、モル比が35を超える場合、光への露出中にコーティングされた膜の表面の硬化が強く生じ、一方で、未反応の二重結合を有する材料がその内部に残り、これが、続く熱硬化プロセスにおいてそのような未反応の材料の流動性(すなわち、可動性)を高める。結果として、表面付近のポリマー及びパターン内側深部のポリマーは、熱硬化中に異なる可動性を有し、硬化膜の表面上に不均一なしわをもたらす。加えて、モル比が4未満である場合、エポキシ基のモル数が二重結合のモル数よりも比較的大きいため、温度の変化によって架橋度を制御するのは難しく、プロセス中の温度の変化による現像マージンが不十分になり、ひいては解像度が低下する。
・・・略・・・
【0040】
(C)光重合開始剤
本発明において用いられる光重合開始剤は、任意の既知の重合開始剤であり得る。
・・・略・・・
【0045】
(D)着色剤
本発明の着色感光性樹脂組成物は、それに遮光性を付与するための着色剤を含む。着色剤は、2つ以上の無機または有機着色剤の混合物であってもよい。
・・・略・・・
【0048】
黒色無機着色剤は、カーボンブラック・・・略・・・及び金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。具体的には、カーボンブラックを黒色無機着色剤として使用することが、パターン特性及び耐化学性の観点から、好ましい。
・・・略・・・
【0051】
黒色有機着色剤の特定の例としては、アニリンブラック、ラクタムブラック、ペリレンブラックなどを挙げることができる。これらの中でも、光学密度、誘電性などの観点から、ラクタムブラック(例えば、BASFからのBlack 582)が好ましい。
【0052】
着色剤は、着色剤の固形分の総重量に基づいて、50~100重量%の黒色無機着色剤を含む。具体的には、着色剤が、着色剤の固形分の総重量に基づいて、50~100重量%の黒色無機着色剤及び0~50重量%の黒色有機着色剤を含み得る。より具体的には、着色剤が、着色剤の固形分の総重量に基づいて、80~100重量%の黒色無機着色剤及び0~20重量%の黒色有機着色剤を含み得る。着色剤中の黒色無機着色剤及び/または黒色有機着色剤の量が上記の範囲内にある場合、可視光及び赤外光領域における光漏れを防止することができる高光学密度を達成することがより有利である。
【0053】
黒色着色剤の量は、着色感光性樹脂組成物の固形分の総重量(すなわち、溶媒を除いた重量)に基づいて、10~60重量%、20~50重量%、20~45重量%、25~50重量%、または30~50重量%であってもよい。上記の範囲内で、光漏れを防止することができる高光学密度を達成することがより有利である。
・・・略・・・
【0055】
分散型樹脂は、溶媒中の顔料を均一に分散させるために役立ち、具体的には、分散剤及び分散体結合剤からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
・・・略・・・
【0057】
分散剤は、それによって着色剤を表面処理することによって、予め着色剤に添加されてもよく、または着色感光性樹脂組成物を調製するときに、着色剤とともに添加されてもよい。
・・・略・・・
【0068】
(E)エポキシ樹脂から誘導され、二重結合を有する化合物
本発明の着色感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂から誘導され、二重結合を有する化合物をさらに含み得る。エポキシ樹脂から誘導された化合物は、少なくとも1つの二重結合を有し、カルド主鎖構造を有し得、ノボラック系樹脂であり得、またはその側鎖に二重結合を含有するアクリル酸樹脂であり得る。
・・・略・・・
【0083】
カルド主鎖構造を有するエポキシ樹脂から誘導された化合物が使用される場合、カルド主鎖構造は、基板に対する硬化材料の接着性、耐アルカリ性、加工性、強度などを改善し得る。さらに、現像時に未硬化部が除去されると、微細解像度の画像がパターンにおいて形成されてもよい。
【0084】
エポキシ樹脂から誘導された化合物の量は、着色感光性樹脂組成物の固形分の総重量(すなわち、溶媒を除いた重量)に基づいて、0~40重量%、または0~30重量%であってもよい。エポキシ樹脂から誘導された化合物が用いられる場合、上記の量の範囲内において、現像時のパターンプロファイルは好ましくなり得、樹脂組成物から形成された硬化膜の現像時間及び表面特性が改善され得る。
【0085】
本発明の着色感光性樹脂組成物において、コポリマー(A)内のエポキシ基に対する、光重合性化合物(B)内及びエポキシ樹脂に由来する化合物(E)内の二重結合のモル比が、以下の関係を満たす。
4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35
【0086】
具体的には、本発明の着色感光性樹脂組成物において、コポリマー(A)内のエポキシ基に対する、光重合性化合物(B)内及びエポキシ樹脂に由来する化合物(E)内の二重結合のモル比が、以下の関係を満たす。
11≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35
【0087】
(F)エポキシ化合物
本発明の着色感光性樹脂組成物は、樹脂の内部密度を増加させるように、エポキシ化合物をさらに備え得て、それによって、それから調製された硬化膜の耐化学性を改善する。
・・・略・・・
【0094】
本発明の着色感光性樹脂組成物において、コポリマー(A)内及びエポキシ化合物(F)内のエポキシ基に対する、光重合性化合物(B)内の二重結合のモル比が、以下の関係を満たし得る。
4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35
【0095】
加えて、本発明の着色感光性樹脂組成物において、コポリマー(A)内及びエポキシ化合物(F)内のエポキシ基に対する、光重合性化合物(B)内及びエポキシ樹脂から誘導された化合物(E) 内の二重結合のモル比が、上記の関係を満たし得る。
【0096】
具体的には、着色感光性樹脂組成物において、コポリマー(A)内及びエポキシ化合物(F)内のエポキシ基に対する、光重合性化合物(B)内の二重結合のモル比が、以下の関係を満たし得る。加えて、本発明の着色感光性樹脂絹成物において、コポリマー(A)内及びエポキシ化合物(F)内のエポキシ基に対する、光重合性化合物(B)内及びエポキシ樹脂から誘導された化合物(E)内の二重結合のモル比が、上記の関係を満たし得る。
11≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35
【0097】
(G)界面活性剤
本発明の着色感光性樹脂組成物は、コーティング性を改善して、欠陥の発生を防止するように界面活性剤をさらに含んでもよい。
・・・略・・・
【0103】
(H)溶媒
本発明の着色感光性樹脂組成物は、好ましくは、溶媒と上記の構成成分が混合される液体組成物として調製されてもよい。
・・・略・・・
【0109】
着色感光性樹脂組成物から形成された硬化膜が、1.0/μm~3.0/μmの光学密度を有し得る。・・・略・・・着色感光性樹脂組成物から形成された硬化膜の厚さにおける1μm当たりの光密度が上記の範囲内にある場合、ディスプレイの光漏れを防止するのに効果的である。
・・・略・・・
【0112】
本発明はまた、着色感光性樹脂組成物から生成される遮光スペーサを提供する。
【0113】
具体的には、本発明は、着色感光性樹脂組成物から生成される黒色カラムスペーサ(BCS)を提供し、カラムスペーサ及び黒色マトリックスが1つのモジュールに集積される。
【0114】
遮光スペーサは、コーティング形成ステップ、露光ステップ、現像ステップ、及び熱処理ステップによって調製され得る。
・・・略・・・
【0116】
コーティングされた膜上にバターンを形成するために、所定の形状を有するマスクがその上に配置され、次いで、200から500nmを有する活性光線で照射される。そのような事象において、集積型黒色カラムスペーサを生成するために、透過率が異なるパターンを有するマスクを使用して、カラムスペーサ及び黒色マトリックスを同時に調製してもよい。
・・・略・・・
【0118】
このように生成された遮光スペーサは、その優れた物理的特性によって、LCD、OLEDディスプレイなどの電子部品の製造において使用されてもよい。このため、本発明は、遮光スペーサを含む電子部品を提供する。
【0119】
LCD、OLEDディスプレイなどは、本発明の遮光スペーサを備えていることを除き、当業者に既知の他の構成要素を含んでもよい。すなわち、本発明の遮光スペーサが適用され得るLCD、OLEDディスプレイなどが、本発明の範囲内に含まれ得る。」
ウ 「【0120】
以下、本発明を以下の実施例を参照しながらさらに詳細に説明する。
・・・略・・・
【0121】
調製例1:コポリマーの調製
還流コンデンサ及び撹拌機を装着した500mlの丸底フラスコに、溶媒としての300gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)及びラジカル重合開始剤としての2gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)に加えて、51モル%のN-フェニルマレイミド(PMI)、4モル%のスチレン(Sty)、10モル%の4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4-HBAGE)、及び35モル%のメタクリル酸(MAA)からなる100gの混合物を装入した。次いで、その混合物を70℃に加熱し、5時間撹拌して、31重量%の固形分を有するコポリマー溶液(A)を得た。このように調製されたコポリマーは、100mgKOH/gの酸価を有し、ゲル浸透クロマトグラフィによって測定し、ポリスチレンを基準としたとき、20,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有した。
【0122】
調製例2:エポキシ樹脂から誘導され、かつカルド主鎖構造を有する化合物の調製
【0123】
【化5】
[図:0001419327000001.jpg]
【0124】
ステップ(1):9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレンの調製
3,000mlの3つ口丸底フラスコに、200gのトルエン、125.4gの4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール、及び78.6gのエピクロロヒドリンを装入し、混合物を撹拌しながら40℃に加熱し、溶解した。0.1386gのt-ブチルアンモニウムブロミド及び50%のNaOH水溶液(3当量)を容器中に混合し、フラスコ内で攪拌しながら溶液に混合物をゆっくりと添加した。
【0125】
このように得られた反応混合物を90℃に加熱して、1時間反応させ、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノールを完全に消費し、HPLCまたはTLCによって確認した。反応混合物を30℃に冷却し、400mlのジクロロメタン及び300mlの1N HClを撹拌しながらそれに添加した。次いで、有機層を分離し、300mlの蒸留水で2回または3回洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で蒸留して、ジクロロメタンを除去した。ジクロロメタン及びメタノールの混合物を使用して合成物を再結晶させ、それにより表題化合物であるエポキシ樹脂化合物を得た。
【0126】
ステップ(2):(((9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(4,1-フェニレン))ビス(オキシ))ビス(2-ヒドロキシプロパン-3,1-ジイル)ジアクリレート(CAS番号143182-97-2)の調製
1,000mlの3つ口フラスコに、ステップ(1)で得られた115gの化合物、50mgのテトラメチルアンモニウムクロライド、50mgの2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール、及び35gのアクリル酸を装入した。空気を25ml/分の流速で送るとともに、混合物を90~100℃に加熱し、さらに120℃に加熱して、完全に溶解した。反応混合物を、酸価が1.0mgKOH/g未満に下がるまで約12時間撹拌して、次いで室温に冷却した。その後、300mlのジクロロメタン及び300mlの蒸留水を撹拌しながら反応混合物に添加した。有機層を分離し、300mlの蒸留水で2回または3回洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で蒸留して、ジクロロメタンを除去し、それにより、表題化合物を得た。
【0127】
ステップ(3):エポキシ樹脂から誘導され、かつカルド主鎖構造を有する化合物の調製
PGMEA中のステップ(2)で得られた化合物を1,000mlの3つ口フラスコに装入し、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(0.75当量)、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物(0.5当量)、及びトリフェニルホスフィン(0.01当量)をそれにさらに装入した。反応混合物を撹拌しながら120~130℃に2時間加熱して、80~90℃に冷却後、6時間撹拌及び加熱した。混合物を室温に冷却した後、6,000g/molの重量平均分子量(Mw)及び107mgKOH/g(固形分に基づく)の酸価を有するポリマー(E)の溶液(49重量%の固形分)を得た。
【0128】
調製例3:着色分散体の調製-(1)
着色分散体(D-1)は、Tokushiki Co.,Ltdから供給され、分散体は以下の通りに調製された。
【0129】
12,000~20,000g/モルの重量平均分子量及び80~150mgKOH/gの酸価を有する22.5gのアクリル酸コポリマー溶液(ベンジルメタクリレート、スチレン、及びメタクリル酸のコポリマー)(Tokushiki Co.,Ltd.)、100~140mgKOH/gのアミン価を有する8gのアクリル酸ポリマー分散剤(Tokushiki Co.,Ltd.)、76.36gのカーボンブラック、ならびに溶媒としての384gのPGMEAを25℃で6時間ペイントシェーカを使用して分散した。この分散ステップは、0.3mmのジルコニアビーズを用いて実行した。分散ステップ終了後、フィルタを通してビーズを分散体から除去し、それにより、21.37重量%の固形分を有する着色分散体を得た。
【0130】
調製例4:着色分散体の調製-(2)
黒色有機着色剤であるラクタムブラック(Black 582、BASF)が着色剤として用いられたことを除いて、その分散体が調製例3と同様に調製された着色分散体(D-2)が、Tokushiki Co.,Ltd.から供給された。
【0131】
調製例5:エポキシ化合物の調製
フラスコを150gのグリシジルメタクリレート、2gの2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、及び450gのPGMEAで装入し、そのフラスコを30分間窒素でパージした。その後、フラスコを攪拌しながら油浴中に浸漬し、重合を5時間行うとともに、反応温度を80℃で維持し、それにより22重量%の固形分及び12,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有するエポキシ化合物溶液(F)を得た。
【0132】
上記の調製例において調製された化合物を使用して、下記の実施例及び比較例において感光性樹脂組成物を調製した。
【0133】
以下の追加の構成要素を使用した。
【0134】
光重合性化合物(B):六官能性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、Nippon Kayakuによって製造)
【0135】
トリアジン系光重合開始剤(C-1):(E)-2-(4-スチリルフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン(製造者:PHARMASYNTHESE、商標:TRIAZIN-Y)
【0136】
オキシム系光重合開始剤(C-2):ADEKAによって製造されたN-1919
【0137】
ケトン系光重合開始剤(C-3):2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(製造者:Ciba、商標:I-379)
【0138】
界面活性剤(G):BYKによって製造されたBYK-333
【0139】
溶媒(H):Chemtronicsによって製造されたプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0140】
実施例1:着色感光性樹脂組成物の調製
コポリマー(A)として100重量部の調製例1で得られたコポリマー(固形分)、163.2重量部の光重合性化合物(B)、7.1重量部のトリアジン系光重合開始剤(C-1)、8.6重量部のオキシム系光重合開始剤(C-2)、8.9重量部のケトン系光重合開始剤(C-3)、249.8重量部の着色分散体(D-1)、175.4重量部の溶液(固形分)のポリマー(E)、及び0.7重量部の界面活性剤(G)が混合され、その後、そこに溶媒(H)を追加して、固形分が19重量%に達するようにした。シェーカーを使用して合成物を2時間混合し、それにより液相着色感光性樹脂組成物を調製した。
【0141】
実施例2~10及び比較例1~5着色感光性樹脂組成物の調製
下記の表1及び2に示されるように樹脂組成物の組成及び組成物の量を変更した点を除き、着色感光性樹脂組成物を実施例1と同様に調製した。
【0142】
【表1】
[表1]
[図:0001419327000002.jpg]
【0143】
【表2】
[表2]
[図:0001419327000003.jpg]
【0144】
試験例1:着色感光性樹脂組成物からの硬化膜の調製
実施例及び比較例において得られた着色感光性樹脂組成物を、スピンコータを使用してガラス基板上にそれぞれコーティングし、95℃で150秒間プリベークして、4.8μmの厚さのコーティングされた膜を形成した。パターンマスクをこのように形成されたコーティングされた膜上に配置し、基板の間隙を50μmに維持し、パターンマスクが100%フルトーン(F/T)カラムスペーサ(CS)パターン及び30%ハーフトーン(H/T)黒色マトリックス(BM)パターンを含むようにした。その後、200nm~450nmの波長を有する光を放射するアライナ(商標名:MA6)を使用して、コーティングされた膜を、ある特定の時間、365nmの波長に基づいて、66mJ/cm2の照射線量率の光で照射した。次いで、非露出部分が完全に洗浄されるまで、0.04重量%の濃度に希釈された水酸化カリウム水溶液を用いて23℃で現像した。このように形成されたパターンを、230℃で30分間、オーブンでポストベークし、遮光スペーサ(すなわち、パターンされた部分)、及び3.0μm(±0.1μm)の厚さの硬化膜(すなわち、パターンされていない部分)を得た。以下の試験例で得られた結果を、以下の表3に要約する。
【0145】
(1)プリベーク温度ごとの現像時間の変化の測定
硬化膜の調製のための上記のプロセスにおいて、プリベーク温度を80℃または100℃に変更し、上記と同じ条件の下で評価を行った。次いで、0.04重量%の濃度に希釈された水酸化カリウム水溶液を用いて23℃で(現像装置のステージのOリング部分が完全に基板の後ろに見えるまで)非露出部分を完全に洗浄した時間を測定した。さらに、プリベーク温度の変化ごとの現像時間の変化を変換及び記録した。
【0146】
(2)表面特性の測定(接触型厚さ測定)
このように調製された硬化膜の表面のしわを、α-ステップ器具(アルファ-ステップ表面形状測定装置)であるSCAN PLUSを使用して、装備の探針の縦の動きの振動値を記録することによって測定し、硬化膜の表面を光学顕微鏡(STM6、Olympus)で撮影した。
【0147】
(3)光学密度の測定
このように調製された硬化膜(すなわち、パターンされていない部分)の550nmでの透過率を、光学密度計(Xliteによって製造された361T)を使用して測定し、1μmの厚さに基づく光学密度を決定した。
【0148】
(4)弾性回復率の測定
上述の硬化膜を調製する方法によって、ポストベーク時に3.0μm(±0.1μm)の合計の厚さ及び30~35μmのスペーサドットパターンの直径を有する硬化膜を調製した。弾性器具(FISCHERSCOPE(登録商標) HM2000LT、Fisher Technology)を使用して、以下の測定条件によって、圧縮変位及び弾性回復率を測定した。
【0149】
具体的には、正方形をした50μm×50μmの平面Vickers圧子を、パターンを押圧するための圧子として使用した。測定を、ロード/アンロード方法によって行った。上述の弾性器具を使用して1.96mNの荷重をドットパターン上に適用した後、圧縮変位及び弾性回復率という機械的特性を測定するため、それを初期状態(H0)として定義する。次いで、各パターンサンプル上に適用された荷重を5mN/秒の速度で増加し、厚さ方向に300mN上げ、5秒間維持し、圧子の移動した距離(H1)を測定した。5秒間の保持の完了時に、荷重を、厚さ方向に5mN/秒の速度で放出した。圧子によってドットに適用された力が1.96mNに達したとき、力を5秒間維持した。圧子が移動した距離(H2)を測定した。弾性回復率を、以下の方程式1に従って計算した。
[方程式1]
弾性回復率(%)=[(H1-H2)/(H1-H0)×100]
【0150】
(5)耐化学性
上述のように硬化膜を調製するための方法に従って、3cm×3cm×3μm(幅×長さ×厚さ)のサイズの基板が調製された。基板を、18gのN-メチルピロリドン(NMP)溶液に浸漬し、100℃で1時間エージングした。その後、基板をNMP溶液から除去し、437nmでNMP溶液の吸光度を測定した。
【0151】
(6)段差の測定
上述のように硬化膜を調製するための方法に従って、スペーサ部(A)及び黒色マトリックス部(B)を得た(図1を参照されたい)。段差測定器具(SNU(SIS-2000)、SNU Precision)を使用して、A及びBの厚さを測定した。そのような事象において、厚さの違い(すなわち、A-B)が1.0~2.0μmの範囲内であるとき、段差特性は、優れていることが期待される。
【0152】
上記の試験例において得られた結果を以下の表3に要約し、硬化膜の表面の写真を図2~5に示す。
【0153】
【表3】
[表3]
[図:0001419327000004.jpg]
【0154】
表3及び図2~5に示されるように、本発明の範囲内に入る実施例の組成物は、その表面上に最小化された不均一なしわを有し、優れた弾性回復率及び優れた耐化学性を有する硬化膜を提供するだけでなく、短い時間での現像も可能にした。対照的に、本発明の範囲内ではない比較例の組成物は、少なくとも1つの不都合な結果を示した。」
(2)甲2発明
甲2の上記(1)の記載からみて、
甲2には、【0142】の「表1」「に示されるように樹脂組成物の組成及び組成物の量を変更した点を除き、着色感光性樹脂組成物を実施例1と同様に調製した」「実施例9」の「着色感光性樹脂組成物」の発明(以下「甲2発明」という。)として、次の発明が記載されているものと認められる。なお、甲2発明の認定の根拠となった記載の段落番号を括弧書きで併記している。
「 (調製例1:コポリマーの調製)として、
還流コンデンサ及び撹拌機を装着した500mlの丸底フラスコに、溶媒としての300gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)及びラジカル重合開始剤としての2gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)に加えて、51モル%のN-フェニルマレイミド(PMI)、4モル%のスチレン(Sty)、10モル%の4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4-HBAGE)、及び35モル%のメタクリル酸(MAA)からなる100gの混合物を装入し、
次いで、その混合物を70℃に加熱し、5時間撹拌して、31重量%の固形分を有するコポリマー溶液(A)を得て、ここで、調製されたコポリマーは、100mgKOH/gの酸価を有し、ゲル浸透クロマトグラフィによって測定し、ポリスチレンを基準としたとき、20,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有するものであり、(【0121】)
(調製例2:エポキシ樹脂から誘導され、かつカルド主鎖構造を有する化合物の調製)として、
ステップ(1)[9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレンの調製]:
3,000mlの3つ口丸底フラスコに、200gのトルエン、125.4gの4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール、及び78.6gのエピクロロヒドリンを装入し、混合物を撹拌しながら40℃に加熱し、溶解し、0.1386gのt-ブチルアンモニウムブロミド及び50%のNaOH水溶液(3当量)を容器中に混合し、フラスコ内で攪拌しながら溶液に混合物をゆっくりと添加し、(【0124】)
このように得られた反応混合物を90℃に加熱して、1時間反応させ、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノールを完全に消費し、反応混合物を30℃に冷却し、400mlのジクロロメタン及び300mlの1N HClを撹拌しながらそれに添加し、
次いで、有機層を分離し、300mlの蒸留水で2回または3回洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で蒸留して、ジクロロメタンを除去し、ジクロロメタン及びメタノールの混合物を使用して合成物を再結晶させ、それによりエポキシ樹脂化合物を得て、(【0125】)
ステップ(2)[(((9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(4,1-フェニレン))ビス(オキシ))ビス(2-ヒドロキシプロパン-3,1-ジイル)ジアクリレート(CAS番号143182-97-2)の調製]:
1,000mlの3つ口フラスコに、ステップ(1)で得られた115gの化合物、50mgのテトラメチルアンモニウムクロライド、50mgの2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール、及び35gのアクリル酸を装入し、空気を25ml/分の流速で送るとともに、混合物を90~100℃に加熱し、さらに120℃に加熱して、完全に溶解し、反応混合物を、酸価が1.0mgKOH/g未満に下がるまで約12時間撹拌して、次いで室温に冷却し、その後、300mlのジクロロメタン及び300mlの蒸留水を撹拌しながら反応混合物に添加し、有機層を分離し、300mlの蒸留水で2回または3回洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で蒸留して、ジクロロメタンを除去し、それにより、化合物を得て、(【0126】)
ステップ(3)[エポキシ樹脂から誘導され、かつカルド主鎖構造を有する化合物の調製]:
PGMEA中のステップ(2)で得られた化合物を1,000mlの3つ口フラスコに装入し、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(0.75当量)、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物(0.5当量)、及びトリフェニルホスフィン(0.01当量)をそれにさらに装入し、反応混合物を撹拌しながら120~130℃に2時間加熱して、80~90℃に冷却後、6時間撹拌及び加熱し、混合物を室温に冷却した後、6,000g/molの重量平均分子量(Mw)及び107mgKOH/g(固形分に基づく)の酸価を有する、エポキシ樹脂から誘導され、かつカルド主鎖構造を有する化合物である、下記のポリマー(E)の溶液(49重量%の固形分)を得て、
(ポリマー(E))
[図:0001419327000005.jpg]
(調製例3:着色分散体の調製-(1))として、
12,000~20,000g/モルの重量平均分子量及び80~150mgKOH/gの酸価を有する22.5gのアクリル酸コポリマー溶液(ベンジルメタクリレート、スチレン、及びメタクリル酸のコポリマー)(Tokushiki Co.,Ltd.)、100~140mgKOH/gのアミン価を有する8gのアクリル酸ポリマー分散剤(Tokushiki Co.,Ltd.)、76.36gのカーボンブラック、ならびに溶媒としての384gのPGMEAを25℃で6時間ペイントシェーカを使用して分散し、この分散ステップは、0.3mmのジルコニアビーズを用いて実行し、分散ステップ終了後、フィルタを通してビーズを分散体から除去し、それにより、21.37重量%の固形分を有する着色分散体(D-1)を得て、(【0128】、【0129】)
(調製例4:着色分散体の調製-(2))として、
黒色有機着色剤であるラクタムブラック(Black 582、BASF)が着色剤として用いられたことを除いて、着色分散体(D-2)を調製例3と同様に調製し、(【0130】)
上記の調製例において調製された化合物を使用し、(【0132】)
追加の構成要素として、(【0133】)
光重合性化合物(B):六官能性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、Nippon Kayakuによって製造)、(【0134】)
トリアジン系光重合開始剤(C-1):(E)-2-(4-スチリルフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン(製造者:PHARMASYNTHESE、商標:TRIAZIN-Y)、(【0135】)
オキシム系光重合開始剤(C-2):ADEKAによって製造されたN-1919、(【0136】)
ケトン系光重合開始剤(C-3):2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(製造者:Ciba、商標:I-379)、(【0137】)
界面活性剤(G):BYKによって製造されたBYK-333、(【0138】)
溶媒(H):Chemtronicsによって製造されたプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、(【0139】)
を使用し、
(着色感光性樹脂組成物の調製)として、
コポリマー(A)として100重量部の調製例1で得られたコポリマー(固形分)、163.2重量部の光重合性化合物(B)、7.5重量部のトリアジン系光重合開始剤(C-1)、9.0重量部のオキシム系光重合開始剤(C-2)、9.4重量部のケトン系光重合開始剤(C-3)、229.5重量部の着色分散体(D-1)、57.2重量部の着色分散体(D-2)、175.4重量部の溶液(固形分)のポリマー(E)、及び0.8重量部の界面活性剤(G)が混合され、その後、そこに溶媒(H)を追加して、固形分が19重量%に達するようにし、シェーカーを使用して合成物を2時間混合して、(【0140】、【0141】、【0142】[表1])
調製された、着色感光性樹脂組成物であって、
二重結合のモル数/エポキシ基のモル数が29.52である、(【0153】[表3])
着色感光性樹脂組成物。」
2 本件特許発明1について
(1) 対比
ア 甲2発明の着色感光性樹脂組成物の構成成分の各調製工程及び着色感光性組成物の調製工程からみて、
引用発明の着色感光性樹脂組成物は、
「N-フェニルマレイミド」、「スチレン」、「4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル」及び「メタクリル酸」からなる「コポリマー(A)」と、
「六官能性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」からなる「光重合性化合物(B)」と、
「(E)-2-(4-スチリルフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン」からなる「光重合トリアジン系光重合開始剤(C-1)」と、
「オキシム系光重合開始剤(C-2)」と、
「2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン」からなる「ケトン系光重合開始剤(C-3)」と、
「カーボンブラック」と、
「黒色有機着色剤であるラクタムブラック」とを含む。
イ 「アルカリ可溶性樹脂(A)」
甲2発明の上記アの「コポリマー(A)」は、その材料、組成からみて、本件特許発明1の「アルカリ可溶性樹脂(A)」に相当する(甲2の【0015】、【0016】、【0026】等の記載からも理解できることである。)
ウ 「光重合性モノマー(B)」
甲2発明の上記アの「光重合性化合物(B)」は、その材料からみて、本件特許発明1の「光重合性モノマー(B)」に相当する。
エ 「光重合開始剤(C)」
甲2発明の上記アの材料、組成の「光重合トリアジン系光重合開始剤(C-1)」、「オキシム系光重合開始剤(C-2)」及び「ケトン系光重合開始剤(C-3)」は、その文言が意味するとおり、本件特許発明1の「光重合開始剤(C)」に相当する。
オ 「カーボンブラック(D1)」、「ラクタム系顔料(D2)」、「遮光剤(D)」
(ア) 甲2発明の「カーボンブラック」及び「黒色有機着色剤であるラクタムブラック」は、「ブラック」との文言からみて、本件特許発明1の「遮光剤(D)」に相当する。
甲2発明の「カーボンブラック」及び「黒色有機着色剤であるラクタムブラック」は、それぞれ本件特許発明1の「カーボンブラック(D1)」及び「ラクタム系顔料(D2)」に相当する。
そうすると、甲2発明は、本件特許発明1の、「前記遮光剤(D)が、カーボンブラック(D1)、及びラクタム系顔料(D2)を含み」との構成を具備する。
(イ) 甲2発明の「着色感光性樹脂組成物」に含まれる「カーボンブラック」の重量部(以下「WCB」という。)は、「着色分散体(D-1)」に含まれる、「12,000~20,000g/モルの重量平均分子量及び80~150mgKOH/gの酸価を有する」「ベンジルメタクリレート、スチレン、及びメタクリル酸のコポリマー」である「アクリル酸コポリマー」の質量(部)(22.5g)、「アクリル酸ポリマー分散剤」の質量(部)(8g)、「カーボンブラック」の質量(部)(76.37g)、「着色分散体(D-1)」の固形分の重量%(21.37重量%)、及び、「着色感光性樹脂組成物」に含まれる「着色分散体(D-1)」の重量部(229.5重量部)を用いて、229.5(重量部)×0.2137×76.37(g)/(76.37(g)+22.5(g)+8(g))を計算することにより求めることができる。
また、甲2発明の「着色感光性樹脂組成物」に含まれる「黒色有機着色剤であるラクタムブラック」の重量部(以下「WLB」という。)についても、「黒色有機着色剤であるラクタムブラック」「が着色剤として用いられたことを除いて」「着色分散体(D-2)が調製例3と同様に調製され」ていることから、「着色感光性樹脂組成物」に含まれる「着色分散体(D-2)」の重量部(57.2重量部)より、57.2(重量部)×0.2137×76.37(g)/(76.37(g)+22.5(g)+8(g))を計算することにより求めることができる。
上記の2式より、甲2発明の「着色感光性樹脂組成物」の「カーボンブラック」と「黒色有機着色剤であるラクタムブラック」の総質量に対する、「カーボンブラック」の質量の比(WCB/(WCB+WLB)×100(%))(以下「RCB」という。)及び「黒色有機着色剤であるラクタムブラック」の質量の比(WLB/(WCB+WLB)×100(%))(以下「RLB」という。)を、有効数字2桁で求めると、それぞれ80%及び20%となる。
してみると、甲2発明は、本件特許発明1の、「前記遮光剤(D)の総質量に対する、前記カーボンブラック(D1)の質量の比率が70質量%以上90質量%以下であり」、「前記遮光剤(D)の総質量に対する、前記ラクタム系顔料(D2)の質量の比率が10質量%以上30質量%以下である」との構成を具備する。
カ 「感光性組成物」
上記ア~オより、甲2発明の「着色感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1の、「アルカリ可溶性樹脂(A)、光重合性モノマー(B)、光重合開始剤(C)、及び遮光剤(D)を含む」とされる、「感光性組成物」に相当する。
キ 「請求項1除外事項」
(ア) 「(A)エポキシ基を含むコポリマー」
甲2発明の上記アの「コポリマー(A)」は、その材料、組成からみて、本件特許発明1の「請求項1除外事項」における「(A)エポキシ基を含むコポリマー」に相当する。
(イ) 「(B)二重結合を含む光重合性化合物」
甲2発明の上記アの「光重合性化合物(B)」は、その材料からみて、本件特許発明1の「請求項1除外事項」における「(B)二重結合を含む光重合性化合物」に相当する。
(ウ) 「(C)光重合開始剤」
甲2発明の上記アの材料、組成の「光重合トリアジン系光重合開始剤(C-1)」、「オキシム系光重合開始剤(C-2)」及び「ケトン系光重合開始剤(C-3)」は、本件特許発明1の「請求項1除外事項」における「光重合開始剤(C)」に相当する。
(エ) 「黒色無機着色剤」、「(D)黒色無機着色剤を含む着色剤」
a 甲2発明の「カーボンブラック」は、本件特許発明1の「請求項1除外事項」における「黒色無機着色剤」に相当する。
そうすると、甲2発明の「カーボンブラック」及び「黒色有機着色剤であるラクタムブラック」は、本件特許発明1の「請求項1除外事項」における、「(D)黒色無機着色剤を含む着色剤」に相当する。
b 上記オ(イ)で求めた、甲2発明の「着色感光性樹脂組成物」の「カーボンブラック」と「黒色有機着色剤であるラクタムブラック」の総質量に対する、「カーボンブラック」の質量の比及び「黒色有機着色剤であるラクタムブラック」の質量の比に基づけば、甲2発明は、本件特許発明1の「請求項1除外事項」における、「前記着色剤が、前記着色剤の固形分の総重量に基づいて、50~100重量%の前記黒色無機着色剤を含み」との構成を具備する。
(オ) 「着色感光性樹脂組成物」
a 上記(ア)~(エ)より、甲2発明の「着色感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「請求項1除外事項」における、「(A)エポキシ基を含むコポリマーと」、「(B)二重結合を含む光重合性化合物と」、「(C)光重合開始剤と」、「(D)黒色無機着色剤を含む着色剤と」、「を含み」とされる、「着色感光性樹脂組成物」に相当する。
また、甲2発明の「着色感光性樹脂組成物」は、「二重結合のモル数/エポキシ基のモル数が29.52である」。
そうすると、甲2発明は、本件特許発明1の「請求項1除外事項」における、「前記コポリマー(A)内の前記エポキシ基に対する、前記光重合性化合物(B)内の前記二重結合のモル比が」、「4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35」の「関係を満たす」との構成を具備する。
b 上記(ア)~(オ)より、甲2発明の「着色感光性樹脂組成物」は、請求項1除外事項に相当する。
ク 上記ア~キより、甲2発明の「着色感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「感光性組成物。(ただし、着色感光性脂組成物であって、
(A)エポキシ基を含むコポリマーと、
(B)二重結合を含む光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)黒色無機着色剤を含む着色剤と、を含み、
前記着色剤が、前記着色剤の固形分の総重量に基づいて、50~100重量%の前記黒色無機着色剤を含み、
前記コポリマー(A)内の前記エポキシ基に対する、前記光重合性化合物(B)内の前記二重結合のモル比が、以下の関係を満たす、着色感光性樹脂組成物を除く。
4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35)」との構成を満たさない(すなわち、この点は相違点となる。)。
(2) 一致点及び相違点
本件特許発明1と、甲2発明は、
「 アルカリ可溶性樹脂(A)、光重合性モノマー(B)、光重合開始剤(C)、及び遮光剤(D)を含む感光性組成物であって、
前記遮光剤(D)が、カーボンブラック(D1)、及びラクタム系顔料(D2)を含み、
前記遮光剤(D)の総質量に対する、前記カーボンブラック(D1)の質量の比率が70質量%以上90質量%以下であり、
前記遮光剤(D)の総質量に対する、前記ラクタム系顔料(D2)の質量の比率が10質量%以上30質量%以下である、感光性組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1-1)
「カーボンブラック(D1)」が、本件特許発明1においては、「有機物による被覆処理、及び酸性基を導入する処理から選択される表面処理を施され」ているのに対して、甲2発明においては、「カーボンブラック」が、「有機物による被覆処理、及び酸性基を導入する処理から選択される表面処理を施され」ているとは特定されていない点。
(相違点1-2)
本件特許発明1は、請求項1除外事項を除くものであるのに対して、甲2発明は、本件特許発明1から「除く」とされる、請求項1除外事項である点。
(3)判断
事案に鑑みて相違点1-2について検討する。
ア 甲2でいう本発明は、「液晶ディスプレイ(LCD)パネル、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイパネルなどのために用いられる保護膜、層間絶縁膜、スペーサ、遮光部材などを形成するための材料として好適な着色感光性樹脂組成物」(【0001】)に関し、「その表面上の不均一なしわの発生を最小化し、スペーサを形成するための感光性樹脂組成物内の顔料の量を著しく増加することなく、段差特性、耐化学性、弾性回復率、及び遮光性を同時に満たす硬化膜を形成することができる、着色感光性樹脂組成物及びそれから生成される遮光スペーサを提供すること」(【0006】)を発明が解決しようとする課題とするものであって、(A)エポキシ基を含むコポリマーと、(B)二重結合を含む光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)黒色無機着色剤を含む着色剤と、を含む着色感光性樹脂組成物において、着色剤が、着色剤の固形分の総重量に基づいて、50~100重量%の黒色無機着色剤を含み、コポリマー(A)内のエポキシ基に対する、光重合性化合物(B)内の二重結合のモル比が4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35の関係を満たす構成とすることにより、上記の課題を解決するものである(【0007】【課題を解決する手段】、請求項1等)。
イ そうすると、上記アの甲2でいう本発明の範囲内に入る、「その表面上に最小化された不均一なしわを有し、優れた弾性回復率及び優れた耐化学性を有する硬化膜を提供するだけでなく、短い時間での現像も可能に」する(【0154】、【0153】[表3])、甲2発明(実施例9)の「着色感光性樹脂組成物」にとって、コポリマー(A)内のエポキシ基に対する、光重合性化合物(B)内の二重結合のモル比が4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35の関係を満たす構成は、上記課題を解決するために必須の構成といえるから、甲2発明において、相違点1-2に係る本件特許発明1の、請求項1除外事項を除く構成とすることは、阻害要因があるといえる。異議申立人が提出した甲1、甲3~甲14を含めて検討しても同様である。
してみると、甲2発明において、上記相違点1-2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 令和6年10月11日提出の意見書における異議申立人の主張について
(ア) 異議申立人は、甲2に基づく進歩性に関し、同意見書8頁下から4行~10頁12行(特に10頁3~12行)において、
甲2の実施例2、4及び6~9の着色感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)に一致するエポキシ化合物から誘導された化合物(E)が含有されており、また、カルド樹脂をアルカリ可溶性樹脂として用いることも周知であって、それ以外の成分に関しては、取消理由通知書1及び取消理由通知書2で対比されるとおりであることから、総じて、取消理由通知書1及び取消理由通知書2における各判断を参酌することが可能であるから、本件訂正発明1は、依然として、甲2に記載された発明と、甲1及び甲3~甲6に記載された発明や周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する。
しかしながら、甲2発明においては、(エポキシ基を含む)コポリマー(A)内のエポキシ基に対する、光重合性化合物(B)内の二重結合のモル比が4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35の関係を満たす構成は、上記課題を解決するために必須の構成といえ、甲2発明において、請求項1除外事項を除く構成とすることには阻害要因があることは既に述べたとおりである。
(イ) また、異議申立人は、同意見書7頁10行~8頁下から5行において、
今般訂正事項はこの当初から記載された含有量(70重量%以上90質量%以下)の範囲を満たしつつも、「前記コポリマー(A)内の前記エポキシ基に対する、前記光重合性化合物(B)内の前記二重結合のモル比」が、「4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35」の開係を満たすものが除かれていると解することができる、
このモル比を満たさない例としては、甲2の表2に記載された比較例2及び比較例3であって、コポリマー(A)が100重量部に対して、光重合性化合物(B)が100.0重量部(比較例2)又は203.0重量部(比較例3)とすると、前記の二重結合のモル数/エポキシ基のモル数が2.71(比較例2)又は36.17(比較例3)になるということであるから、本件訂正発明1は、例えば、前記の含有量の範囲(70質量%以上90質量%以下)は満たしているが、そのアルカリ可溶性樹脂(A)と光重合性モノマー(B)とが前記比較例2又は比較例3のモル比の関係を採るものが含まれると解することができる、
本件特許においては、この「光重合性モノマー(B)」の含有量は単なる設計的事項であって、仮に訂正事項のとおりのモル比の関係が除かれたとしても、当業者であれば、甲2に記載された発明や周知技術を参酌して、光重合性モノマー(B)を、アルカリ可溶性樹脂(A)との関係において、訂正事項に係るモル比の関係のように調整することは何ら困難ではない、
本件訂正発明1における光重合性モノマー(B)に相当する成分は、その含有量を、感度や現像性などを考慮して調整できることも周知である、
したがって、本件訂正発明1については、前記以外の発明特定事項の対比は取消理由通知書1及び取消理由通知書2でなされているとおりであってそれらの判断は変わらず、そのうち、光重合性モノマー(B)の含有量を調整することで、今般の訂正事項のように除くことは、甲2だけでなく、甲1、甲3及び甲5~6に既に開示された周知技術を参酌することで、当業者であれば容易になし得る事項であると言える、
たとえ比較例2及び比較例3であったとしても、取消理由通知書2で認定された(相違点1-1)(「有機物による被覆処理、及び酸性基を導入する処理から選択される表面処理を施され」ていること)について、周知技術や、甲1及び甲3~6のいずれかの副引用例に基づいて、本件訂正発明1を容易になし得ると言える、と主張する。
しかしながら、二重結合のモル数/エポキシ基のモル数が2.71又は36.17である比較例2又は比較例3を引用発明としたとしても、甲2に接した当業者であれば、(甲2でいう本発明の範囲ではない)比較例2又は比較例3の着色感光性樹脂組成物は、「その表面上に最小化された不均一なしわを有し、優れた弾性回復率及び優れた耐化学性を有する硬化膜を提供するだけでなく、短い時間での現像も可能に」する「本発明の範囲内に入る実施例の組成物」とは異なり、「表面のしわ」、「段差」、「現像時間」等において「少なくとも1つの不都合な結果を示」す、好ましくないもの(【0154】、【0153】[表3])と理解する。
そうすると、たとえ、カーボンブラックに表面処理を施すことが周知技術であったとしても、このような不都合な結果を示す比較例2又は比較例3着色感光性樹脂組成物に着目して、更にそのカーボンブラックに表面処理を更に施す動機付けはない。(仮に、比較例2又は比較例3の設計変更を行うとしても、甲2の記載に接した当業者であれば、まず最初に、「現像時間」、「表面のしわ」、「段差」等の不都合な結果を解消すべく、コポリマー(A)内のエポキシ基に対する、光重合性化合物(B)内の二重結合のモル比が4≦二重結合のモル数/エポキシ基のモル数≦35の関係を満たす構成とする(本件特許発明1から「除く」とされる請求項1除外事項の構成とする)のが自然である。)
(ウ) 以上のとおりであるから、意見書における特許権者の上記主張を採用することはできない。
エ 実施例9に替えて、甲2の実施例2、実施例4あるいは実施例6~8に基づき、引用発明を認定して、対比、判断を行ってとしても、その判断結果は同じである。
(4) 小括
相違点1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2に記載された発明、本件特許出願前に周知の技術、甲1、甲3~甲6、甲9~甲14に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
3 本件特許発明2~10について
本件特許発明2~10は、本件特許発明1の構成を全て具備する発明であるから、上記2(3)で述べた理由と同様の理由により、本件特許発明1は、甲2に記載された発明、本件特許出願前に周知の技術、甲1、甲3~甲6、甲9~甲14に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
第6 令和6年7月1日付けの取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった異議申立書理由について
1 甲1を主引用例とする新規性、進歩性
(1) 異議申立人の主張
ア 異議申立人は、特許異議申立書43頁下から3行~46頁5行、49頁下から9行~2行において、
甲1のこ比較例1~2に係る組成物におけるカーボンブラックに被覆処理や酸性基を導入する処理が施されているかどうか明記されていないが、実施例1~2で使用されるカーボンブラックと同じものである、
カーボンブラックについては、甲1明細書中において酸性基を導入する処理が施されること及び酸性基を導入する方法が具体的に開示され、さらには、樹脂による被覆処理が施されることが開示され、その目的(表面反射率が低い遮光膜の形成など)とともに、使用できる樹脂も具体的に開示されている、
それゆえ、甲1の比較例1~2に係る組成物は発明特定事項イ~ウ(合議体注:発明特定事項ウは、発明特定事項「前記カーボンブラック(D1)が、有機物による被覆処理、及び酸性基を導入する処理から選択される表面処理を施され」に対応する。)についても具備すると言える、
ことに基づいて、本件特許発明1は、甲1の比較例1~2に係る組成物と同一であると主張する。
また、仮に、甲1の比較例1~2に係る組成物において、カーボンブラックに表面処理が施されているかどうか明記されていない点で発明特定事項ウが相違するとされたとしても、甲1明細書中においてはこれらの表面処理が具体的に開示され、加えて、甲3~甲5に開示されているように、遮光膜を形成する感光性樹脂組成物で使用されるカーボンブラックに対して、当該技術分野において所望される諸特性(現像性、密着性、抵抗値、光学密度、熱加工性、など)の向上や改良のために、有機物による処理や酸性基の導入処理を行うことは当業者にとって格別困難ではない、
遮光膜の諸特性の向上のために、有機物による被覆処理や酸性基を導入する表面処理が施されたカーボンブラックを用いることは既に広く知られていることから、本件特許発明1の発明特定事項ウとして前記諸特性の向上を図ることは当業者にとって何ら格別なことではない、
ことに基づいて、本件特許発明1は、甲1の比較例1~2に係る組成物及び甲3~甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。
(2) 判断
ア しかしながら、カーボンブラックの表面処理については、甲1には、「カーボンプラックとしては、チャンネルプラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックを用いることができる。また、樹脂被覆カーボンブラックを使用してもよい。」(【0199】)、「カーボンプラックとしては、酸性基を導入する処理を施されたカーポンブラックも好ましい。」(【0200】)など、一般記載において例示されているだけである。
そうしてみると、比較例1~2の感光性樹脂組成物が、本件特許発明1の「前記カーボンブラック(D1)が、有機物による被覆処理、及び酸性基を導入する処理から選択される表面処理を施され」との構成を具備するとまではいえないから、本件特許発明1と、甲1の比較例1又は比較例2の感光性樹脂組成物は同一であるということはできない。
イ また、甲1でいう本発明の課題は、「高い遮光性を有する硬化膜を与え、且つ、低温でのベークによって安定的に硬化する感光性樹脂組成物」を提供することであるところ、甲1の比較例1又は比較例2の感光性樹脂組成物は、「カーボンブラックの量が過多である場合に、感光性樹脂組成物からなる塗布膜を、低温(100℃)でのペークにより良好に硬化させにくい」(甲1の【0334】、【0332】【表1】)ものである点で実施例と比較して性能が劣るものである。
そうすると、たとえ甲1の一般記載にカーボンブラックに樹脂による被覆処理、酸性基を導入する処理を行うことが記載されている、あるいは、カーボンブラックに表面処理を施すことが周知技術であるとしても、上記のように性能の劣る比較例1又は比較例2の感光性樹脂組成物に着目し、さらにそのカーボンブラックに表面処理を施す動機付けはない。異議申立人が提出した甲2~甲14を含めて検討しても、同様である。
してみると、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということはできない。また、甲1に記載された発明及び甲3~甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうこともできない。本件特許発明2~10についても、同様である。
2 サポート要件
(1) 異議申立人の主張
ア 異議申立人は、特許異議申立書57頁下から4行~59頁下から3行において、
本件特許発明1の発明特定事項エ~オ(合議体注:発明特定事項エ及びオは、それぞれ、発明特定事項「前記遮光剤(D)の総質量に対する、前記カーボンブラック(D1)の質量の比率が70質量%以上90質量%以下であり」及び「前記遮光剤(D)の総質量に対する、前記ラクタム系顔料(D2)の質量の比率が10質量%以上30質量%以下である」に対応する。)については、本件特許明細書の段落【0263】の記載において、明記された数値範囲ではない、
つまり、発明特定事項エのカーボンブラック(D1)の数値範囲は、上限値である90質量%については段落【0263】の記載から把握できるが、下限値である70質量%については実施例の記載を根拠としている、
実施例1~6では、カーボンブラック(D1):ラクタム系顔料(D2)=35:15=70:30の1点のみが示されているところ、この質量比における「70」を、発明特定事項エの下限値である70質量%として限定している、
他方、発明特定事項オのラクタム系顔料(D2)の数値範囲についても同様であり、こちらは下限値である10質量%を段落【0263】の記載を根拠としており、上限値である30質量%については実施例における数値を根拠としている、
そして、このような数値設定の根拠であるところ、実施例1~6で示される1点の質量比については、本件特許の課題や作用効果などである「表面反射率」及び「パターン密着性」が示されているものの、カーボンブラックD1を90質量%に近づける範囲については、実際にこれらの課題が解決できるかどうかが示されているとは言えない、
カーボンブラックD1を90質量%に近づける範囲については、ラクタム系顔料D2は10質量%に近づくこととなり、そうすると、比較例であるラクタム系顔料D2を用いない(0質量%の)範囲に近づくこととなって、とくにパターン密着性が「×」となる範囲に近づくことになることから、本件特許の課題が解決されない方向に向かうと解される、
そして、本件特許の実施例においては、前記のとおりの1点のみの検討を行っているだけであって、これはカーボンブラック(D1)の下限値の質量部(ラクタム系顔料(D2)の上限値の質量部)における結果であり、実際に、ラクタム系顔料D2が10質量%(カーボンブラック(D1)が90質量%)までの範囲おいて、本件特許の課題が解決されるかどうかは当業者に認識できるとはいえない、
したがって、出願時の技術常識に照らしても、比較例であるラクタム系顔料D2を用いない(0質量%)範囲に近づく範囲である、発明特定事項エ~オの全ての質量割合の範囲まで、この実施例1~6で検討された1点の結果を拡張ないし一般化できるとはいえない、
そのため、本件特許発明1は、本件特許明細書の記載の範囲を超えるものであって、サポート要件を満足しない、本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~10についても同様である、
と主張する。
(2) サポート要件についての判断
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、
(A)表面処理されたカーボンブラック(D1)とラクタム系顔料とを併用することにより、感光性組成物を用いて、基板側からの反射率が低く、基板に密着した細線パターンを形成できる(【0231】)こと、
(B)基板に対する密着性が良好な細線パターンを形成しやすいことから、遮光剤(D)の総質量に対する、カーボンブラック(D1)の質量の比率が30質量%以上90質量%以下、ラクタム系顔料(D2)の質量の比率が10質量%以上70質量%以下が好ましく、カーボンブラック(D1)の質量の比率が50質量%以上90質量%以下、ラクタム系顔料(D2)の質量の比率が10質量%以上50質量%以下がより好ましい(【0263】)こと、が記載されている。
また、実施例1~6及び比較例1~3の反射率及びパターン密着性の評価結果(【0311】【表1】)として、(C)表面処理されたカーボンブラック(70質量部)とラクタム系顔料(30部)とを含有する実施例1~6は、反射率及びパターン密着性に優れること、表面処理されたカーボンブラック(100質量部)のみ含有する(すなわち、ラムタム系顔料の含有量は0重量%である)比較例1及び比較例3は、反射率は優れるが、パターン密着性は劣るりこと、表面処理されたカーボンブラック(35質量部)とペリレン系顔料D-3(15質量部)とを含有する(すなわち、ラムタム顔料系の含有量は0重量%である)比較例2は、パターン密着性に優れるが、反射率は劣ること、が示されている。
ここで、【0311】【表1】は以下のものである。
[図:0001419327000006.jpg]
イ 感光性樹脂組成物中のカーボンブラックとラクタム系顔料の重量比を変化、例えば、カーボンブラックの含有量を増加させ、ラクタム系顔料の含有量を減少させる時には、含有量の増減に応じて、硬化物の反射率及びパターン率も徐々に変化していくことは、技術常識から明らかであるところ、上記アで示した、表面処理されたカーボンブラック(70質量部)、ラクタム系顔料(30部)を含有する実施例1~6及びカーボンブラック(100質量部)(、ラムタム系顔料(0重量%))を含有する比較例1、3の評価結果と、上記(A)及び(B)の記載とに基づけば、当業者は、「遮光剤(D)の総質量に対する」、「カーボンブラック(D1)の質量の比率が70質董%以上90質量%以下であり」、「遮光剤(D)の総質量に対する」、「ラクタム系顔料(D2)の質量の比率が10質量%以上30質量%以下である」との構成により、「表面の反射率が低く、基板に密着した細線パターンを形成できる、遮光剤を含有する感光性組成物」を提供する(【0006】)との課題を解決できると認識することができる。
ウ そうすると、本件特許発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものである。本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~10についても同様である。
第7 令和6年10月11日提出の意見書で追加された明確性要件(特許法第36条第6項第2号)及びサポート要件(特許法第36条第6項第1号)に係る取消理由についての当審の判断
1 明確性要件及びサポート要件に係る取消理由の概要
異議申立人は、令和6年10月11日提出の意見書において、
今般の訂正事項は甲2の請求項1に記載された着色感光性樹脂組成物を除くとする、いわゆる「除くクレーム」とするものであるが、除かれる範囲が、甲2の請求項1の記載のとおりのオープンクレーム形式の記載に基づいた発明の範囲であって、広範で一義的には定まらない、
そのため、除いた後の残った範囲(つまり、本件訂正発明1の範囲)についても明確とは言えず、このように範囲を曖昧にし得る表現があることとなった結果、特許を受けようとする発明の範囲が不明確であって、明確性要件を満足しない、
また、着色剤の含有量について、当初の請求項1に記載された範囲を超えた範囲を含めて除くクレームとしていることや、或いは、本件特許の実施例で使用されているアルカリ可溶性樹脂(A)がエポキシ基を有さないものであることも踏まえると、総じて、今般の訂正事項が、当初の(訂正前の)本件特許発明1の記載には馴染まず、有効な発明特定事項であるとは解されず、除かれた範囲は不明確である、
したがって、本件訂正発明1は明確性要件を満足しない、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用する本件訂正発明2~10についても同様である、
また、このように特許を受けようとする発明の範囲が不明確である以上、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲のものか否かが不明確であり、サポート要件を満足しない、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用する本件訂正発明2~10についても同様である、
と主張する。
2 判断
(1) 明確性要件についての判断
まず、発明が、オープンクレーム形式の記載に基づくからといって、発明(の範囲)が一義的に定まらず不明確となるとはいえない。
本件訂正により、本件特許発明1において、「除く」とされる、請求項1除外事項(甲2の請求項1の記載)は、その記載により特定されるとおりのものであって明確である。また、本件訂正前の本件特許発明1も明確である。
してみると、本件訂正後の本件特許発明1の範囲(除いた後の残った範囲)が明確でないということはできない。
また、着色剤の含有量について、当初の請求項1に記載された範囲を超えた範囲を含めて除くクレームとしているとしても、上述のとおり、本件訂正後の本件特許発明1の範囲(除いた後の残った範囲)が明確でないとはいえない。さらに、本件特許の実施例で使用されているアルカリ可溶性樹脂(A)がエポキシ基を有さないものであるかどうかは、本件特許発明1が明確であるかどうかには関係がない。
したがって、本件特許発明1は明確である。また、本件特許発明2~10も明確である。
(2) サポート要件についての判断
上記(1)で述べたとおり本件特許発明1~10は明確であるから、本件特許発明1~10が不明確であることを前提とするサポート要件に係る主張は、その前提を欠くものである。
第8 むすび
本件特許発明1~10は、いずれも、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~10を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701133