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特許異議申立

2023-700457

X線発生管、X線発生装置およびX線撮影システム

審判番号
2023-700457
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-001000
登録番号
7167196
請求日
2023年05月01日
審決日
2024年08月01日
公報発行日
2024年11月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】キヤノン株式会社
  • 【権利者代理人】阿部 琢磨
  • 【権利者代理人】黒岩 創吾
  • 【異議申立人】株式会社 レクレアル
  • 【異議申立人代理人】松浦 孝
審判長/審判官
  • 審判長 山村 浩
  • 審判官 波多江 進
  • 審判官 芝沼 隆太
分類
P1651.121-YAA(H01J) / P1651.537-YAA(H01J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7167196号発明「X線発生管、X線発生装置およびX線撮影システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7167196号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕、〔17~30〕、31、32について訂正することを認める。 特許第7167196号の請求項1~8、11~16に係る特許を維持する。 特許第7167196号の請求項9~10、17~32に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 本件特許の出願から特許掲載公報の発行までの手続の経緯 特許第7167196号(以下「本件特許」という。)について、出願から特許掲載公報の発行までの手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和3年 1月 6日 :特許出願(特願2016-16375号を原出願とする分割出願) (原出願日 平成28年 1月29日) 令和4年10月28日 :特許権の設定登録 同年11月 8日 :特許掲載公報の発行 2 本件特許異議申立ての手続の経緯 本件特許異議申立ての手続の経緯は、以下のとおりである。 令和5年 5月 1日付け:特許異議申立書の提出 (特許異議申立人:株式会社レクレアル、請求項1~32に対して) 同年 8月18日付け:取消理由通知書 同年10月20日付け:訂正請求書及び意見書の提出 同年11月24日付け:手続補正指令書(方式) 同年12月28日付け:手続補正書(方式)及び手数料補正書の提出 令和6年 1月26日付け:訂正拒絶理由通知書 同年 2月28日付け:手続補正書及び意見書の提出 同年 3月28日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 5月31日 :訂正請求書及び意見書の提出 以下、令和6年3月28日付けの取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由を「取消理由(決定の予告)」といい、令和5年8月18日付けの取消理由通知書で通知した取消理由を「先の取消理由」といい、令和6年5月31日提出の訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。 また、本件訂正請求書に記載の訂正事項1~23をそのまま訂正事項1~23という。 なお、令和5年10月20日付け訂正請求書による訂正請求は、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた。 3 特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情について 当合議体は、本件訂正に係る請求について、特許法120条の5第5項ただし書に規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」がある場合に該当すると判断し、改めて、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。すなわち、本件訂正後の請求項1は、本件特許登録時の請求項1及び9の記載を引用する請求項10と同内容であり、かつ、訂正後の請求項1の記載を引用する訂正後の請求項2~8、11~16についても、本件特許登録時に同内容の請求項がそれぞれ存在していることから、特許異議申立人はこれらの請求項に対して特許異議申立書において実質的に意見を述べているといえるのであり、したがって、当合議体は、特許異議申立人に改めて意見書を提出する機会を与えないこととした。 第2 本件訂正について 1 本件訂正の請求の趣旨 本件訂正の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~32について訂正することを求める、というものである。 2 本件訂正前後の特許請求の範囲の記載 (1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載 本件訂正前(本件特許の設定登録時)の特許請求の範囲の請求項1~32の記載は、次のとおりである。 「 【請求項1】 電子の照射によりX線を発生するターゲットと、 電子を放出する電子放出部と、前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成するグリッド電極の複数と、前記複数のグリッド電極の少なくとも2つを電気的に絶縁し支持する絶縁支持部材と、を有する電子銃と、を有するX線発生管であって、 前記グリッド電極は、前記電子放出部から放出され前記グリッド電極を前記電子が通過するまでの電子通過路から管径方向の外側にみて前記絶縁支持部材が直視される部分を有さないように前記絶縁支持部材を遮る導電部を有することにより、前記電子通過路上で発生する中性の散乱金属粒子のうち管径方向の外側に向かう成分が前記絶縁支持部材上に堆積することで生ずる前記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制するように構成されていることを特徴とするX線発生管。 【請求項2】 前記導電部を含む前記グリッド電極は、電圧源により電位規定されていることを特徴とする請求項1に記載のX線発生管。 【請求項3】 前記絶縁支持部材は、前記電子通過路の周囲において離散的に複数設けられ、前記導電部は前記複数の絶縁支持部材が前記電子通過路から直視される部分を有さないように設けられることを特徴とする請求項2に記載のX線発生管。 【請求項4】 前記グリッド電極は、前記電子通過路を規定する電子通過孔が設けられ、管径方向に延在する環状部と、前記環状部に連なり管軸方向に沿って延在する管状部と、を有し、 前記導電部は、前記管状部の少なくとも一部であることを特徴とする請求項1に記載のX線発生管。 【請求項5】 前記グリッド電極は、前記環状部が前記電子放出部と対向するように配置され、前記管状部が管軸方向において前記電子放出部に重なるように配置された引き出しグリッド電極を含むことを特徴とする請求項4に記載のX線発生管。 【請求項6】 前記複数のグリッド電極は、互いの前記環状部が管軸方向に対向し、互いの前記管状部が管径方向に対向する部分を有する、少なくとも一対のグリッド電極を含み、前記複数のグリッド電極のうち前記電子放出部に近い側に位置する前記グリッド電極が備える前記管状部は前記環状部から前記電子放出部から遠ざかる方向に突出し、前記複数のグリッド電極のうち前記環状部が前記電子放出部から遠い側に位置する前記グリッド電極が備える前記管状部は前記環状部から前記電子放出部に近づく方向に突出していることを特徴とする請求項4または5に記載のX線発生管。 【請求項7】 前記一対のグリッド電極において、前記環状部が前記電子放出部に近い側に位置する前記グリッド電極の前記管状部は、前記環状部が前記電子放出部から遠い側に位置する前記グリッド電極の前記管状部より、管径方向において、内側に位置していることを特徴とする請求項6に記載のX線発生管。 【請求項8】 前記複数のグリッド電極は、前記ターゲットに対向する環状部を有し、前記ターゲット上に形成される焦点の大きさを規定する集束グリッド電極を含み、 前記電子通過路は、前記電子放出部から放出された前記電子が前記集束グリッド電極を通過するまでの通過経路に対応することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のX線発生管。 【請求項9】 前記電子銃は、管径方向において前記絶縁支持部材の外側に位置し、前記絶縁支持部材の外側から見て前記絶縁支持部材が前記絶縁支持部材の外側からみて直視されない様に前記絶縁支持部材を遮る導電性の外周管状部を有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載のX線発生管。 【請求項10】 前記外周管状部は、前記グリッド電極の電位を管外から給電可能な給電部を構成することを特徴とする請求項9に記載のX線発生管。 【請求項11】 前記X線発生管は、 前記ターゲットに接続され、前記ターゲットとともに陽極に含まれる陽極部材と、前記電子銃に接続され、前記電子放出部とともに陰極に含まれる陰極部材と、管軸方向おける一端と他端とが、それぞれ、前記陽極部材と前記陰極部材とに接続される絶縁管と、を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のX線発生管。 【請求項12】 前記X線発生管は、 前記ターゲットに接続され、前記ターゲットとともに陽極に含まれる陽極部材と、 前記電子銃に接続され、前記電子放出部とともに陰極に含まれる陰極部材と、 管軸方向おける一端と他端とが、それぞれ、前記陽極部材と前記陰極部材とに接続される絶縁管と、を有し、 前記外周管状部は、前記陰極部材に固定されていることを特徴とする請求項9または10に記載のX線発生管。 【請求項13】 前記中性の散乱金属粒子は、前記電子通過路上に存在する金属陽イオンが前記電子放出部からの電子と再結合することにより前記電子通過路上で発生する請求項12に記載のX線発生管。 【請求項14】 前記ターゲットは、電子の照射によりX線を発生するターゲット層と、前記ターゲット層を支持するとともに前記X線を透過する支持基板とを有する透過型ターゲットであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のX線発生管。 【請求項15】 請求項1乃至14のいずれか1項に記載のX線発生管と、前記ターゲットと前記電子放出部とのそれぞれに電気的に接続され、前記ターゲットと前記電子放出部との間に印加される管電圧を出力する駆動回路と、を備えることを特徴とするX線発生装置。 【請求項16】 請求項15に記載のX線発生装置と、 前記X線発生装置から放出され被検体を透過したX線を検出するX線検出装置と、 前記X線発生装置と前記X線検出装置とを連携して制御するシステム制御装置と、 を備えることを特徴とするX線撮影システム。 【請求項17】 電子の照射によりX線を発生するターゲットと、 電子を放出する電子放出部と、前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成するグリッド電極の複数と、前記複数のグリッド電極の少なくとも2つを電気的に絶縁し支持する絶縁支持部材と、を有する電子銃と、を有するX線発生管であって、 前記複数のグリッド電極は、前記電子放出部から放出された前記電子が通過される電子通過路を規定し、 前記電子銃は、前記電子通過路からみて前記絶縁支持部材が直視される部分を有さないように前記絶縁支持部材を遮る導電部を有することにより、前記電子通過路上で発生する中性の散乱金属粒子のうち管径方向の外側に向かう成分が前記絶縁支持部材上に堆積することで生ずる前記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制するように構成されていることを特徴とするX線発生管。 【請求項18】 前記グリッド電極は、電圧源に電気的に接続され、 前記導電部は、前記グリッド電極の部分であることを特徴とする請求項17に記載のX線発生管。 【請求項19】 前記グリッド電極は、前記電子通過路を規定する電子通過孔が設けられ、管径方向に延在する環状部と、前記環状部に連なり管軸方向に沿って延在する管状部と、を有し、 前記導電部は、前記管状部の少なくとも一部であることを特徴とする請求項17または18に記載のX線発生管。 【請求項20】 前記グリッド電極は、前記環状部が前記電子放出部と対向するように配置され、前記管状部が管軸方向において前記電子放出部に重なるように配置された引き出しグリッド電極を含むことを特徴とする請求項19に記載のX線発生管。 【請求項21】 前記複数のグリッド電極は、互いの前記環状部が管軸方向に対向し、互いの前記管状部が管径方向に対向する部分を有する、少なくとも一対のグリッド電極を含み、前記複数のグリッド電極のうち前記電子放出部に近い側に位置する前記グリッド電極が備える前記管状部は前記環状部から前記電子放出部から遠ざかる方向に突出し、前記複数のグリッド電極のうち前記環状部が前記電子放出部から遠い側に位置する前記グリッド電極が備える前記管状部は前記環状部から前記電子放出部に近づく方向に突出していることを特徴とする請求項19または20に記載のX線発生管。 【請求項22】 前記一対のグリッド電極において、前記環状部が前記電子放出部に近い側に位置する前記グリッド電極の前記管状部は、前記環状部が前記電子放出部から遠い側に位置する前記グリッド電極の前記管状部より、管径方向において、内側に位置していることを特徴とする請求項21に記載のX線発生管。 【請求項23】 前記複数のグリッド電極は、前記ターゲットに対向する環状部を有し、前記ターゲット上に形成される焦点の大きさを規定する集束グリッド電極を含み、 前記電子通過路は、前記電子放出部から放出された前記電子が前記集束グリッド電極を通過するまでの通過経路に対応することを特徴とする請求項17乃至22のいずれか1項に記載のX線発生管。 【請求項24】 前記電子銃は、管径方向における外側から見て前記絶縁支持部材が直視されない様に、前記絶縁支持部材の管径方向における外側に外周管状部を有し、前記導電部は前記外周管状部の部分であることを特徴とする請求項17乃至23のいずれか1項に記載のX線発生管。 【請求項25】 前記外周管状部は、前記グリッド電極の部分であることを特徴とする請求項24に記載のX線発生管。 【請求項26】 前記X線発生管は、 前記ターゲットに接続され、前記ターゲットとともに陽極に含まれる陽極部材と、 前記電子銃に接続され、前記電子放出部とともに陰極に含まれる陰極部材と、 管軸方向おける一端と他端とが、それぞれ、前記陽極部材と前記陰極部材とに接続される絶縁管と、を有することを特徴とする請求項17乃至25のいずれか1項に記載のX線発生管。 【請求項27】 前記X線発生管は、 前記ターゲットに接続され、前記ターゲットとともに陽極に含まれる陽極部材と、 前記電子銃に接続され、前記電子放出部とともに陰極に含まれる陰極部材と、 管軸方向おける一端と他端とが、それぞれ、前記陽極部材と前記陰極部材とに接続される絶縁管と、を有し、 前記外周管状部は、前記陰極部材に固定されていることを特徴とする請求項24または25に記載のX線発生管。 【請求項28】 前記ターゲットは、電子の照射によりX線を発生するターゲット層と、前記ターゲット層を支持するとともに前記X線を透過する支持基板とを有する透過型ターゲットであることを特徴とする請求項17乃至27のいずれか1項に記載のX線発生管。 【請求項29】 請求項17乃至28のいずれか1項に記載のX線発生管と、前記ターゲットと前記電子放出部とのそれぞれに電気的に接続され、前記ターゲットと前記電子放出部との間に印加される管電圧を出力する駆動回路と、を備えることを特徴とするX線発生装置。 【請求項30】 請求項29に記載のX線発生装置と、 前記X線発生装置から放出され被検体を透過したX線を検出するX線検出装置と、 前記X線発生装置と前記X線検出装置とを連携して制御するシステム制御装置と、 を備えることを特徴とするX線撮影システム。 【請求項31】 電子の照射によりX線を発生するターゲットと、 電子を放出する電子放出部と、前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成するグリッド電極の複数と、前記複数のグリッド電極の少なくとも2つを電気的に絶縁し支持する絶縁支持部材と、を有する電子銃と、を有するX線発生管であって、 前記グリッド電極は、前記電子放出部から放出され前記グリッド電極を前記電子が通過するまでの電子通過路からみて前記絶縁支持部材が直視される部分を有さないように設けられ、前記電子通過路上に存在する金属陽イオンが前記電子放出部からの電子と再結合することにより前記電子通過路上で発生した中性の散乱金属粒子のうち管径方向の外側に移動する成分の前記絶縁支持部材上への堆積を抑制する導電部を有していることを特徴とするX線発生管。 【請求項32】 電子の照射によりX線を発生するターゲットと、 電子を放出する電子放出部と、前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成するグリッド電極の複数と、前記複数のグリッド電極の少なくとも2つを電気的に絶縁し支持する絶縁支持部材と、を有する電子銃と、を有するX線発生管であって、 前記複数のグリッド電極は、前記電子放出部から放出された前記電子が通過される電子通過路を規定し、 前記電子銃は、前記電子通過路からみて前記絶縁支持部材が直視される部分を有さないように設けられ、前記電子通過路上に存在する金属陽イオンが前記電子放出部からの電子と再結合することにより前記電子通過路上で発生した中性の散乱金属粒子のうち管径方向の外側に移動する成分の前記絶縁支持部材上への堆積を抑制する導電部を有していることを特徴とするX線発生管。」 (2) 本件訂正後の訂正特許請求の範囲の記載 本件訂正後の訂正特許請求の範囲の請求項1~32の記載は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。 「【請求項1】 電子の照射によりX線を発生するターゲットと、 電子を放出する電子放出部と、前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成するグリッド電極の複数と、前記複数のグリッド電極の少なくとも2つを電気的に絶縁し支持する絶縁支持部材と、を有する電子銃と、を有するX線発生管であって、 前記グリッド電極は、前記電子放出部から放出され前記グリッド電極を前記電子が通過するまでの電子通過路から管径方向の外側にみて前記絶縁支持部材が直視される部分を有さないように前記絶縁支持部材を遮る導電部を有することにより、前記電子通過路上で発生する中性の散乱金属粒子のうち管径方向の外側に向かう成分が前記絶縁支持部材上に堆積することで生ずる前記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制するように構成され、 前記電子銃は、管径方向において前記絶縁支持部材の外側に位置し、前記絶縁支持部材の外側から見て前記絶縁支持部材が前記絶縁支持部材の外側からみて直視されない様に前記絶縁支持部材を遮るとともに、前記グリッド電極の電位を管外から給電可能な給電部を構成する導電性の外周管状部を有していることを特徴とするX線発生管。 【請求項2】 前記導電部を含む前記グリッド電極は、電圧源により電位規定されていることを特徴とする請求項1に記載のX線発生管。 【請求項3】 前記絶縁支持部材は、前記電子通過路の周囲において離散的に複数設けられ、前記導電部は前記複数の絶縁支持部材が前記電子通過路から直視される部分を有さないように設けられることを特徴とする請求項2に記載のX線発生管。 【請求項4】 前記グリッド電極は、前記電子通過路を規定する電子通過孔が設けられ、管径方向に延在する環状部と、前記環状部に連なり管軸方向に沿って延在する管状部と、を有し、 前記導電部は、前記管状部の少なくとも一部であることを特徴とする請求項1に記載のX線発生管。 【請求項5】 前記グリッド電極は、前記環状部が前記電子放出部と対向するように配置され、前記管状部が管軸方向において前記電子放出部に重なるように配置された引き出しグリッド電極を含むことを特徴とする請求項4に記載のX線発生管。 【請求項6】 前記複数のグリッド電極は、互いの前記環状部が管軸方向に対向し、互いの前記管状部が管径方向に対向する部分を有する、少なくとも一対のグリッド電極を含み、前記複数のグリッド電極のうち前記電子放出部に近い側に位置する前記グリッド電極が備える前記管状部は前記環状部から前記電子放出部から遠ざかる方向に突出し、前記複数のグリッド電極のうち前記環状部が前記電子放出部から遠い側に位置する前記グリッド電極が備える前記管状部は前記環状部から前記電子放出部に近づく方向に突出していることを特徴とする請求項4または5に記載のX線発生管。 【請求項7】 前記一対のグリッド電極において、前記環状部が前記電子放出部に近い側に位置する前記グリッド電極の前記管状部は、前記環状部が前記電子放出部から遠い側に位置する前記グリッド電極の前記管状部より、管径方向において、内側に位置していることを特徴とする請求項6に記載のX線発生管。 【請求項8】 前記複数のグリッド電極は、前記ターゲットに対向する環状部を有し、前記ターゲット上に形成される焦点の大きさを規定する集束グリッド電極を含み、 前記電子通過路は、前記電子放出部から放出された前記電子が前記集束グリッド電極を通過するまでの通過経路に対応することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のX線発生管。 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 前記X線発生管は、 前記ターゲットに接続され、前記ターゲットとともに陽極に含まれる陽極部材と、前記電子銃に接続され、前記電子放出部とともに陰極に含まれる陰極部材と、管軸方向おける一端と他端とが、それぞれ、前記陽極部材と前記陰極部材とに接続される絶縁管と、を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のX線発生管。 【請求項12】 前記X線発生管は、 前記ターゲットに接続され、前記ターゲットとともに陽極に含まれる陽極部材と、 前記電子銃に接続され、前記電子放出部とともに陰極に含まれる陰極部材と、 管軸方向おける一端と他端とが、それぞれ、前記陽極部材と前記陰極部材とに接続される絶縁管と、を有し、 前記外周管状部は、前記陰極部材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のX線発生管。 【請求項13】 前記中性の散乱金属粒子は、前記電子通過路上に存在する金属陽イオンが前記電子放出部からの電子と再結合することにより前記電子通過路上で発生する請求項12に記載のX線発生管。 【請求項14】 前記ターゲットは、電子の照射によりX線を発生するターゲット層と、前記ターゲット層を支持するとともに前記X線を透過する支持基板とを有する透過型ターゲットであることを特徴とする請求項1乃至8、および、11乃至13のいずれか1項に記載のX線発生管。 【請求項15】 請求項1乃至8、および、11乃至14のいずれか1項に記載のX線発生管と、前記ターゲットと前記電子放出部とのそれぞれに電気的に接続され、前記ターゲットと前記電子放出部との間に印加される管電圧を出力する駆動回路と、を備えることを特徴とするX線発生装置。 【請求項16】 請求項15に記載のX線発生装置と、 前記X線発生装置から放出され被検体を透過したX線を検出するX線検出装置と、 前記X線発生装置と前記X線検出装置とを連携して制御するシステム制御装置と、 を備えることを特徴とするX線撮影システム。 【請求項17】 (削除) 【請求項18】 (削除) 【請求項19】 (削除) 【請求項20】 (削除) 【請求項21】 (削除) 【請求項22】 (削除) 【請求項23】 (削除) 【請求項24】 (削除) 【請求項25】 (削除) 【請求項26】 (削除) 【請求項27】 (削除) 【請求項28】 (削除) 【請求項29】 (削除) 【請求項30】 (削除) 【請求項31】 (削除) 【請求項32】 (削除)」 3 本件訂正の内容 本件訂正は、(i)一群の請求項である訂正後の請求項1~16についての訂正である訂正事項1~7、(ii)一群の請求項である訂正後の請求項17~30についての訂正である訂正事項8~21、(iii)訂正後の請求項31についての訂正である訂正事項22、及び(iv)訂正後の請求項32についての訂正である訂正事項23からなるものであり、訂正事項1~23の内容は次のとおりである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、訂正前の「前記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制するように構成されていること」であった記載を、「前記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制するように構成され、前記電子銃は、管径方向において前記絶縁支持部材の外側に位置し、前記絶縁支持部材の外側から見て前記絶縁支持部材が前記絶縁支持部材の外側からみて直視されない様に前記絶縁支持部材を遮るとともに、前記グリッド電極の電位を管外から給電可能な給電部を構成する導電性の外周管状部を有していること」と訂正する。 (2) 訂正事項2~3 特許請求の範囲の請求項9~10を削除する。 (3) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項11において、訂正前の「請求項1乃至10」であった記載を、「請求項1乃至8」と訂正する。 (4) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項12において、訂正前の「請求項9または10」であった記載を、「請求項1」と訂正する。 (5) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項14において、訂正前の「請求項1乃至13」であった記載を、「請求項1乃至8、および、11乃至13」と訂正する。 (6) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項15において、訂正前の「請求項1乃至14」であった記載を、「請求項1乃至8、および、11乃至14」と訂正する。 (7) 訂正事項8~21 特許請求の範囲の請求項17~30を削除する。 (8) 訂正事項22 特許請求の範囲の請求項31を削除する。 (9) 訂正事項23 特許請求の範囲の請求項32を削除する。 4 本件訂正の適否についての判断 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「電子銃」について、「管径方向において前記絶縁支持部材の外側に位置し、前記絶縁支持部材の外側から見て前記絶縁支持部材が前記絶縁支持部材の外側からみて直視されない様に前記絶縁支持部材を遮るとともに、前記グリッド電極の電位を管外から給電可能な給電部を構成する導電性の外周管状部を有している」ものに限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項1により本件訂正前の請求項1に追加された、「前記電子銃は、管径方向において前記絶縁支持部材の外側に位置し、前記絶縁支持部材の外側から見て前記絶縁支持部材が前記絶縁支持部材の外側からみて直視されない様に前記絶縁支持部材を遮るとともに、前記グリッド電極の電位を管外から給電可能な給電部を構成する導電性の外周管状部を有していること」は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)における請求項9、10に記載されているから、訂正事項1は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記ア及びイにも照らせば訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかである。 したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (2) 訂正事項2~3について ア 本件訂正の目的の適否 訂正事項2~3は、本件訂正前の請求項9~10を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項2~3は、請求項を削除するものであるから、これにより、新たな技術事項が導入されることはない。 したがって、訂正事項2~3は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2~3は、請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかである。 したがって、訂正事項2~3は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (3) 訂正事項4~7について ア 訂正の目的の適否 訂正事項4~7は、訂正事項2~3において請求項9~10が削除されたことに伴い、本件訂正前の請求項9~10の記載を引用していた請求項において、請求項9~10を引用しないこととすることにより引用請求項数を削減するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、訂正事項4~7は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項4~7は、引用請求項数を削減するものであるから、これにより、新たな技術事項が導入されることはない。 したがって、訂正事項4~7は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項4~7は、引用請求項数を削減するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかである。 したがって、訂正事項4~7は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (4) 訂正事項8~23について ア 訂正の目的の適否 訂正事項8~23は、訂正前の請求項17~32を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、訂正事項8~23は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項8~23は、請求項を削除するものであるから、これにより、新たな技術事項が導入されることはない。 したがって、訂正事項8~23は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項8~23は、請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかである。 したがって、訂正事項8~23は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 5 本件訂正についてのまとめ 以上検討のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであるから同項の規定に適合し、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。なお、本件訂正後の請求項1~32は、特許異議の申立てがされた請求項であることから、当該各請求項についての訂正には、同法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕、〔17~30〕、31、32について訂正することを認める。 第3 本件発明について 前記第2に示したとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~32に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」~「本件発明32」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~32に記載された事項(前記第2の2(2)参照)により特定されるとおりのものと認める。 第4 取消理由(決定の予告)及び先の取消理由の概要 1 取消理由(決定の予告)の概要 本件訂正前(本件特許登録時)の請求項1~9、11~32に係る特許に対して、当審において通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 取消理由(決定の予告)1 明確性要件違反 本件訂正前の請求項24~30に係る発明は明確でないから、本件訂正前の請求項24~30に係る発明に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由(決定の予告)2 進歩性欠如 本件訂正前の請求項1~9、11~23、26、28~32に係る発明は、本件特許出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 2 先の取消理由の概要 本件特許登録時の請求項1~9、11~32に係る特許に対して、当審において通知した先の取消理由の概要は、次のとおりである。 先の取消理由1 明確性要件違反 本件特許登録時の請求項24~30に係る発明は明確でないから、本件特許登録時の請求項24~30に係る発明に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 先の取消理由2 進歩性欠如 本件特許登録時の請求項1~9、11~23、26、28~32に係る発明は、本件特許出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 なお、取消理由(決定の予告)と先の取消理由は、いずれも本件特許登録時の請求項1~9、11~32に対して通知されたものであり、取消理由(決定の予告)1と先の取消理由1、及び、取消理由(決定の予告)2と先の取消理由2、はそれぞれ同内容である。 第5 取消理由(決定の予告)、先の取消理由及び特許異議申立理由についての判断 1 判断の概要 当合議体は、本件訂正後の請求項1~8、11~16に係る特許について、取消理由(決定の予告)、先の取消理由及び特許異議申立理由によっては、これらを取り消すことはできないと判断する。なお、請求項9~10、17~32は、本件訂正により削除された。 2 取消理由(決定の予告)及び先の取消理由について (1) 取消理由(決定の予告)1及び先の取消理由1について 本件訂正により、請求項24~30は削除されたから、取消理由(決定の予告)1及び先の取消理由1は解消している。 (2) 取消理由(決定の予告)2及び先の取消理由2について 本件発明1は、本件訂正前(本件特許登録時)の請求項1及び9の記載を引用する請求項10に係る発明と同内容であるところ、本件訂正前(本件特許登録時)の請求項10に係る発明には取消理由(決定の予告)2及び先の取消理由2は通知されていない。そして、本件発明2~8、11~16は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。したがって、取消理由(決定の予告)2及び先の取消理由2は解消している。 3 取消理由(決定の予告)及び先の取消理由で採用しなかった特許異議申立理由について (1) 本件発明1に対する進歩性欠如 本件発明1は、本件特許登録時の請求項10に係る発明と同内容であるところ、特許異議申立人は特許異議申立理由において、当該請求項10に係る発明は、甲第1号証(後記ア参照。他の甲号証についても同様。)に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第6~7号証に例示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張しているので、当該主張について以下で検討する。 ア 各甲号証並びに各甲号証に記載された発明及び技術事項の認定 (ア) 各甲号証 甲第1号証:特開2011-134498号公報 甲第2号証:実願昭46-30873号(実開昭47-31054号)のマイクロフィルム 甲第3号証:特開2008-140687号公報 甲第4号証:特開2012-252831号公報 甲第5号証:特開2015-135722号公報 甲第6号証:特開2006-286264号公報 甲第7号証:特開平10-255679号公報 甲第8号証:特開平7-65712号公報 以下、「第」及び「号証」を略して「甲1」などという。 (イ) 甲1の記載事項及び甲1発明の認定 a 甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。 「【0011】 図1に示すように、X線管1は、電子銃10と、陽極ターゲット20と、真空外囲器30と、を有している。 【0012】 電子銃10は、陰極11と、抑制電極12と、引出電極13と、加速電極14と、集束電極15と、アパーチャ電極16と、第1支持部41と、第2支持部42と、第3支持部43と、を有している。 【0013】 陰極11は、熱電界放出型電子源である。陰極11には、端子部17が接続されている。陰極11は、端子部17を介して電圧が供給されることによって、電子ビームを放出する。 【0014】 抑制電極12は、電圧が供給されることによって、陰極11から放出された電子ビームの放出方向を一定方向に制御する。 【0015】 引出電極13は、陰極11の先端と同軸的に形成された穴部13Hを有している。引出電極13は、陰極11と対向するように配置されている。引出電極13は、第2支持部42に支持されている。引出電極13は、電圧が供給されることにより、陰極11から放出された電子ビームを引き出す。 【0016】 加速電極14は、陰極11の先端と同軸的に形成された穴部14Hを有している。加速電極14は、引出電極13と対向するように配置されている。つまり、引出電極13は、陰極11と加速電極14との間に配置されている。加速電極14は、第1支持部41に支持されている。加速電極14は、電圧が供給されることにより、引出電極13の穴部13Hを通過した電子ビームを加速させる。 【0017】 集束電極15は、陰極11の先端と同軸的に形成された円筒部15Hを有している。集束電極15は、加速電極14と対向するように配置されている。集束電極15は、電圧が供給されることにより、加速電極14の穴部14Hを通過した電子ビームを集束させる。 【0018】 アパーチャ電極16は、陰極11の先端と同軸的に形成された穴部16Hを有している。アパーチャ電極16は、集束電極15と対向するように配置されている。つまり、集束電極15は、加速電極14とアパーチャ電極16との間に配置されている。アパーチャ電極16は、第3支持部43に支持されている。アパーチャ電極16は、電圧が供給されることにより、集束電極15の円筒部15Hを通過した不要な電子ビームを阻止する。 【0019】 なお、引出電極13、加速電極14、集束電極15、アパーチャ電極16などの中心軸が陰極11の中心軸から10μm以内に納まるように組み立てられている。 【0020】 陽極ターゲット20は、真空外囲器30に保持されている。この陽極ターゲット20は、電子銃10のアパーチャ電極16と対向するように配置されている。つまり、アパーチャ電極16は、陽極ターゲット20と加速電極14との間に配置されている。陽極ターゲット20は、電子銃10から放出された電子が衝突する微小焦点(電子衝突面)を有し、電子の衝突によってX線を発生する。 【0021】 このような構成の電子銃10は、真空外囲器30の内部に収容されている。真空外囲器30の内部には、ゲッタ18が収容されており、ゲッタ18によって真空状態に保持されている。なお、真空状態を保持する手段として、ゲッタ18に限らず、イオンポンプなどの真空ポンプを用いてもよい。 【0022】 真空外囲器30は、陰極11の先端と同軸的に形成されたX線透過窓部Wを有している。X線透過窓部Wは、例えば、ベリリウムによって形成された薄板の窓である。真空外囲器30には、X線透過窓部Wと対向するように陽極ターゲット20の一部が固定されている。 【0023】 真空外囲器30は、電子銃10と陽極ターゲット20とが対向するように、電子銃10と陽極ターゲット20とを支持している。以下に、電子銃10の支持構造について説明する。 【0024】 第1支持部41は、真空外囲器30に固定されている。これにより、電子銃10は、真空外囲器30の内部に固定されている。より詳細には、抑制電極12と第2支持部42とは、第1絶縁筒51を介して接続されている。第1絶縁筒51は、抑制電極12と第2支持部42との間に配置されている。抑制電極12と第1絶縁筒51との間、及び、第2支持部42と第1絶縁筒51との間は、それぞれ封着金属55を介して接続されている。この第1絶縁筒51は、陰極11及び抑制電極12と、引出電極13とを電気的に絶縁している。第1絶縁筒51は、例えば、セラミックによって形成されている。 【0025】 また、第1支持部41と第2支持部42とは、第2絶縁筒52及び第1柱状体61を介して接続されている。第2絶縁筒52は、第1支持部41と第2支持部42との間に配置されている。第2支持部42は、接着金属55を介して第2絶縁筒52と接続されている。第2絶縁筒52は、引出電極13と加速電極14とを電気的に絶縁している。第2絶縁筒52は、例えば、セラミックによって形成されている。 【0026】 また、第1柱状体61は、第1支持部41と、第2支持部42との間に配置されている。第1柱状体61は、第2絶縁筒52と第1支持部41との間にロウ付けされ固定されている。第1柱状体61は、例えば、金属材料によって形成されている。このような第2絶縁筒52及び第1柱状体61は、引出電極13と加速電極14との間の距離を保っている。 【0027】 また、第1支持部41と第3支持部43とは、第2柱状体62を介して接続されている。第2柱状体62は、第1支持部41と第3支持部43との間に配置されている。第2柱状体62は、第1支持部41と第3支持部43との間にロウ付けされ固定されている。第2柱状体62は、加速電極14とアパーチャ電極16との間の距離を保っている。第2柱状体62は、例えば、金属材料によって形成されている。 【0028】 また、第1支持部41は、第3絶縁筒53を介して集束電極15と接続されている。第1支持部41及び集束電極15は、封着金属55を介して第3絶縁筒53と接続されている。第3絶縁筒53は、第1支持部41と第3支持部43との間に配置された第2柱状体62よりも内側に配置されている。第3絶縁筒53は、加速電極14と集束電極15とを電気的に絶縁している。また、第3絶縁筒53は、加速電極14と集束電極15との間の距離を保っている。」 「【0031】 図2は、図1に示したX線管1の電子銃10の構造を概略的に示す斜視図である。 【0032】 図2に示すように、第1柱状体61は、第1支持部41と第2支持部42との間に少なくとも3本配置されている。ここでは、3本の第1柱状体61が第2絶縁筒52と第2支持部42との間に配置されている。第1柱状体61は、等間隔に配置されている。また、3本の第1柱状体61の長さは略同等である。なお、ここでは、第1支持部41と第2支持部42との間に3本の第1柱状体61を配置した例を示したが、3本以上の第1柱状体61を配置してもよい。 【0033】 また、第2柱状体62は、第1支持部41と第3支持部43との間に少なくとも3本配置されている。ここでは、3本の第2柱状体62が第1支持部41と第3支持部43との間に配置されている。第2柱状体62は、等間隔に配置されている。また、3本の第2柱状体62の長さは略同等である。なお、ここでは、第1支持部41と第3支持部43との間に3本の第2柱状体62を配置した例を示したが、3本以上の第2柱状体62を配置してもよい。 【0034】 また、第1支持部41は、端部から突出部41Pを有している。突出部41Pは、真空外囲器30に固定されている。なお、ここでは、第1支持部41は、3つの突出部41Pを有しているが、この例に限らない。 【0035】 なお、電子銃10は、陽極ターゲット20において、電子ビームの直径が200nmで焦点を結ぶように、電子計算機による電子軌道シミュレーションによって設計される。 【0036】 このようなX線管1の動作時において、電子銃10の陰極11に電圧が供給され、陰極11から電子ビームが放出される。抑制電極12に電圧が供給され、陰極11から放出された電子ビームの放出される方向性が制御される。加速電極14に電圧が供給され、電子ビームは加速される。集束電極15に電圧が供給され、電子ビームが押し込まれ、集束される。集束された電子ビームは、アパーチャ電極16によって不要な電子ビームをカットされ、陽極ターゲット20に衝突する。陽極ターゲット20に電子ビームが衝突し、X線が発生する。X線は、X線透過窓部Wを透過して放出される。 【0037】 ところで、微小焦点を有するX線管1において、陰極11の先端から放出された電子ビームを陽極ターゲット20に衝突させることによりX線が発生するため、X線を安定して放出させるたには、陰極11の近傍、例えば、引出電極13、加速電極14、集束電極15、アパーチャ電極16の近傍を約10-7Paの超高真空状態にする必要がある。 【0038】 しかしながら、微小焦点を有するX線管1において、陰極11から放出された電子ビームを集束させ陽極ターゲット20に衝突させるため、陰極11から放出された電子ビームが引出電極13、加速電極14、集束電極15、アパーチャ電極16に衝突してしまうことがある。これにより、これらの電極の表面の付着ガスや電極に内蔵された内蔵ガスが放出されてしまうことがある。 【0039】 これに対して、本実施の形態において、第1支持部41と第2支持部42との間に3本の第1柱状体61が配置されているため、電極から放出された付着ガスや内部ガスを第1柱状体61間から外側に容易に排除することができる。外側に排除された付着ガスや内蔵ガスは、ゲッタ18によって吸着される。したがって、短時間で陰極11の近傍を超高真空状態にすることができる。 【0040】 また、本実施の形態において、第1支持部41と第3支持部43との間に3本の第2柱状体62が配置されているため、電極から放出された付着ガスや内部ガスを第2柱状体62間から外側に容易に排除することができる。外側に排除された付着ガスや内部ガスは、ゲッタ18によって吸着される。したがって、短時間で陰極11の近傍を超高真空状態にすることができる。 【0041】 また、本実施の形態において、引出電極13と加速電極14とを第1柱状体61が支持するため、第1柱状体61と第2絶縁筒52との接触面積が小さく、第1柱状体61を第2絶縁筒52にロウ付けすることによる第2絶縁筒52への熱の影響を小さくすることができる。これにより、第2絶縁筒52の熱膨張を抑制することができ、第2絶縁筒52の割れ防止につながる。 【0042】 さらに、本実施の形態において、電極から放出された付着ガスや内部ガスを排除する構成として第1柱状体61及び第2柱状体62を設けているため、部品の形状を簡略化することができ、製造コストを低減することができる。」 【図1】 「 [図:0001416442000001.jpg] 」 【図2】 「 [図:0001416442000002.jpg] 」 b 甲1発明の認定 前記aで摘記した記載事項から、甲1には、図1及び図2に示されるX線管について、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる(認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。 <甲1発明> 「X線管であって、(【0011】) 電子銃10と、陽極ターゲット20と、真空外囲器30とを有し、(【0011】) 電子銃10は、陰極11と、抑制電極12と、引出電極13と、加速電極14と、集束電極15と、アパーチャ電極16と、第1支持部41と、第2支持部42と、第3支持部43と、を有し、(【0012】) 陰極11は、電子ビームを放出し、(【0013】) 引出電極13は、陰極11の先端と同軸的に形成された穴部13Hを有し、陰極11と対向するように配置され、第2支持部42に支持されており、(【0015】) 加速電極14は、陰極11の先端と同軸的に形成された穴部14Hを有し、引出電極13と対向するように配置され、引出電極13は、陰極11と加速電極14との間に配置されており、加速電極14は、第1支持部41に支持されており、(【0016】) 集束電極15は、陰極11の先端と同軸的に形成された円筒部15Hを有し、加速電極14と対向するように配置されており、(【0017】) アパーチャ電極16は、陰極11の先端と同軸的に形成された穴部16Hを有し、集束電極15と対向するように配置されており、集束電極15は、加速電極14とアパーチャ電極16との間に配置されており、アパーチャ電極16は、第3支持部43に支持されており、(【0018】) 陽極ターゲット20は、真空外囲器30に保持され、電子銃10のアパーチャ電極16と対向するように配置されており、アパーチャ電極16は、陽極ターゲット20と加速電極14との間に配置されており、陽極ターゲット20は、電子銃10から放出された電子が衝突する微小焦点(電子衝突面)を有し、電子の衝突によってX線を発生し、(【0020】) 電子銃10は、真空外囲器30の内部に収容されており、(【0021】) 第1支持部41は、真空外囲器30に固定されており、これにより、電子銃10は、真空外囲器30の内部に固定されており、(【0024】) 第1支持部41と第2支持部42とは、第2絶縁筒52及び第1柱状体61を介して接続されており、第2絶縁筒52は、第1支持部41と第2支持部42との間に配置されており、第2支持部42は、接着金属55を介して第2絶縁筒52と接続されており、第2絶縁筒52は、引出電極13と加速電極14とを電気的に絶縁しており、(【0025】 第1柱状体61は、第1支持部41と、第2支持部42との間に配置されており、(【0026】) 第1支持部41と第3支持部43とは、第2柱状体62を介して接続されており、第2柱状体62は、第1支持部41と第3支持部43との間に配置されており、(【0027】) 第1支持部41は、第3絶縁筒53を介して集束電極15と接続されており、第1支持部41及び集束電極15は、封着金属55を介して第3絶縁筒53と接続されており、第3絶縁筒53は、第1支持部41と第3支持部43との間に配置された第2柱状体62よりも内側に配置され、加速電極14と集束電極15とを電気的に絶縁し、加速電極14と集束電極15との間の距離を保っている、(【0028】) X線管」 (ウ) 甲2の記載事項及び甲2技術事項の認定 a 甲2の記載事項 甲2には、次の事項が記載されている。 「本考案は多段加速電子銃の改良に関するものである。 従来一般に広く使用されている多段加速電子銃としては第1図に示す様な構造を有している。同図において1a及び1b(1bは図示せず)は先端にフィラメント2を保持したフィラメント取付台、3は前記フィラメント2から放出される電子の放出量を制御するためのウエーネルト電極、4,5,6,7及び8は放出された電子線を加速するための加速電極で、夫々の加速電極には図示はしないが高電圧分割用抵抗等を介して所要の加速電圧が印加されている。9a乃至9fは前記フィラメント取付台1、ウエーネルト電極3及び各加速電極間を夫々電気的に絶縁し、且つ機械的に固定するための円筒状の絶縁体で、該夫々の絶縁円筒の直径は全て同一に形成されている。10は前記絶縁円筒を収納するためのタンクで、内部には例えばフレオンガス等の絶縁ガス(図示せず)が充満してある。11は該タンクの下部に設置した電子顕微鏡の鏡体で、内部に集束レンズ12、試料室及び拡大レンズ系(図示せず)を順次設置してあり、又該鏡体11は連通管13を介して前記加速管に連通している。而し乍ら斯様な多段加速電子銃においては絶縁体内壁上での放電或はチャーヂ等が電子線に悪影響を及ぼすことを防止するために電子線軌道上から前記絶縁体9が直視(矢印aで示す状態)出来ない様にする必要がある。その為従来においては、同図から明らかな様に前記ウエーネルト電極3及び各加速電極4乃至8の光軸側は曲折させて光軸と平行に形成したり或は突出部14a,14b,14c,14d及び14eを設ける事により電子線軌道上から絶縁体9が直視出来ない様に構成している。而し乍らこのとき各電極間の放電防止の問題から各電極に設けた突出部14は対向する電極に接近させることが出来ないので、最終的には絶縁体の内壁を光軸から遠ざけなければならない。従って、この絶縁体の直径が大きくなるので装置(タンク)全体が大型化する欠点を有している。」(明細書1頁17行~3頁15行) 第1図 「 [図:0001416442000003.jpg] 」 b 甲2技術事項の認定 前記aで摘記した記載事項から、甲2には、第1図に示される多段加速電子銃に関して、次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 <甲2技術事項> 「多段加速電子銃において、(明細書1ページ17~18行) 多段加速電子銃は、先端にフィラメント2を保持したフィラメント取付台1、フィラメント2から放出される電子の放出量を制御するためのウエーネルト電極3、電子線を加速するための加速電極4~8、ウエーネルト電極3及び各加速電極間をそれぞれ電気的に絶縁し、かつ機械的に固定するための円筒状の絶縁体9b~9fを有し、(明細書1ページ20行~2ページ12行) 絶縁体内壁上での放電あるいはチャージ等が電子線に悪影響を及ぼすことを防止するために、ウエーネルト電極3及び各加速電極4~8の光軸側は曲折させて光軸と平行に形成したり、あるいは、突出部14a~14eを設けることにより、電子線軌道上から前記絶縁体9が直視できないようにすること(明細書2ページ19行~3ページ9行)」 (エ) 甲6の記載事項及び甲6技術事項の認定 a 甲6の記載事項 甲6には、次の事項が記載されている。 「【0044】 また、本発明のマイクロフォーカスX線管では、底付き円筒形状で、金属材料から成る陰極カバーによって、電子集束系とグリッド電極絶縁支持部が覆われているので、ターゲットの焦点からの反射電子は導電性を有する陰極カバーに衝突し、電子集束系やグリッド電極絶縁支持部などに直接衝突することが少なくなった。その結果、グリッド電極絶縁支持部の絶縁物やその他の絶縁物に反射電子が帯電し、その帯電による電位によって電子集束系に電気的障害を与えるようなことは防止される。」 「【0060】 電子集束系56と回転陽極14のターゲット18との間には、ターゲット18からの反射電子が陰極12の電子集束系56やその他の部分に到達しないようにするため、ステンレス鋼などの耐熱性金属材料から成る陰極カバー68が配置される。この陰極カバー68は底付きの円筒形状をしており、その円筒部68が外囲器16の大径部30に直接接続されている。陰極カバー68と大径部30との接続は、直接結合してもよいが、間に金属材料などからなる媒体を介して接続してもよい。陰極カバー68のターゲット18に対向する面(底面)68bには電子線50が通過するための開口84が設けられており、陰極カバー68は電子集束系56や電子集束系絶縁体66を覆うように配置されている。陰極カバー68の開口84の直径は電子集束系56のG3電極64の開口64aの直径よりも大きいが、グリッド電極60、62、64を絶縁支持する電子集束系絶縁体66の2本の絶縁物66aの間隔より小さくしている。すなわち、陰極カバー68の開口84の大きさはターゲット18上の焦点28から絶縁物66aが直視できないように隠す大きさとしている。これにより、ターゲット18の焦点28からの反射電子が絶縁物66aに到達するのを防止している。陰極カバー68は、その開口84が電子集束系56の中心軸72と同軸で、G3電極64の開口64aに近接するように配置されている。また、陰極カバー68は外囲器16の大径部30と接続されることで、大径部30と同電位となり、アース電位に保持される。このように、陰極12の電子集束系56及びその周辺部をアース電位の陰極カバー68にて覆い、かつターゲット18に対向する底面68bの電子線50の通過する開口84を必要最小限の面積の穴とすることにより、ターゲット18の焦点28からの反射電子は陰極カバー68や大径部30に向かい、その後アースに流れて行くことになるので、電子集束系絶縁体66の絶縁物66aに帯電することを防止することができる。」 「【図2】 [図:0001416442000004.jpg] 」 b 甲6技術事項の認定 前記aで摘記した記載事項から、甲6には、次の技術事項(以下「甲6技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 <甲6技術事項> 「マイクロフォーカスX線管において、底付き円筒形状で、金属材料からなる陰極カバーによって、電子集束系とグリッド電極絶縁支持部を覆うことにより、ターゲットの焦点からの反射電子は導電性を有する陰極カバーに衝突し、電子集束系やグリッド電極絶縁支持部などに直接衝突することが少なくなり、その結果、グリッド電極絶縁支持部の絶縁物に反射電子が帯電し、その帯電による電位によって電子集束系に電気的障害を与えることを防止すること(【0044】)」 イ 対比 (ア) 対比分析 本件発明1と甲1発明を対比する。 a 甲1発明の「X線管」は、本件発明1の「X線発生管」に相当する。 b(a) 甲1発明の「陽極ターゲット20」は、本件発明1の「ターゲット」に相当する。 (b) したがって、本件発明1と甲1発明は、「電子の照射によりX線を発生するターゲット」を有するX線発生管である点で一致する。 c(a) 甲1発明の「電子銃10」は、本件発明1の「電子銃」に相当する。 (b) 甲1発明の「陰極11」及び「引出電極13と、加速電極14と、集束電極15」はそれぞれ、本件発明1の「電子放出部」及び「グリッド電極の複数」に相当する。 (c) 甲1発明の「引出電極13と加速電極14とを電気的に絶縁」する「第2絶縁筒52」及び「加速電極14と集束電極15とを電気的に絶縁」する「第3絶縁筒53」は、いずれも、本件発明1の「絶縁支持部材」に相当する。 (d) したがって、本件発明1と甲1発明は、「電子を放出する電子放出部と、前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成するグリッド電極の複数と、前記複数のグリッド電極の少なくとも2つを電気的に絶縁し支持する絶縁支持部材、とを有する電子銃」を有するX線発生管である点で一致する。 d グリッド電極について、本件発明1は、「前記電子放出部から放出され前記グリッド電極を前記電子が通過するまでの電子通過路から管径方向の外側にみて前記絶縁支持部材が直視される部分を有さないように前記絶縁支持部材を遮る導電部を有することにより、前記電子通過路上で発生する中性の散乱金属粒子のうち管径方向外側に向かう成分が前記絶縁支持部材上に堆積することで前記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制するように構成されている」のに対して、甲1発明は、当該導電部を有しておらず、また、当該導電部を有することにより、そのように構成されてはいない点で両者は相違する。 e 電子銃について、本件発明1は、「管径方向において前記絶縁支持部材の外側に位置し、前記絶縁支持部材の外側から見て前記絶縁支持部材が前記絶縁支持部材の外側からみて直視されない様に前記絶縁支持部材を遮るとともに、前記グリッド電極の電位を管外から給電可能な給電部を構成する導電性の外周管状部を有している」のに対して、甲1発明は、当該外周管状部を有していない点で両者は相違する。 (イ) 一致点及び相違点の認定 前記(ア)の対比分析を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1、2について相違する。 <一致点> 「電子の照射によりX線を発生するターゲットと、 電子を放出する電子放出部と、前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成するグリッド電極の複数と、前記複数のグリッド電極の少なくとも2つを電気的に絶縁し支持する絶縁支持部材、とを有する電子銃と、を有するX線発生管」である点。 <相違点1> グリッド電極について、本件発明1は、「前記電子放出部から放出され前記グリッド電極を前記電子が通過するまでの電子通過路から管径方向の外側にみて前記絶縁支持部材が直視される部分を有さないように前記絶縁支持部材を遮る導電部を有することにより、前記電子通過路上で発生する中性の散乱金属粒子のうち管径方向外側に向かう成分が前記絶縁支持部材上に堆積することで前記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制するように構成されている」のに対して、甲1発明は、当該導電部を有しておらず、また、当該導電部を有することにより、そのように構成されてはいない点。 <相違点2> 電子銃について、本件発明1は、「管径方向において前記絶縁支持部材の外側に位置し、前記絶縁支持部材の外側から見て前記絶縁支持部材が前記絶縁支持部材の外側からみて直視されない様に前記絶縁支持部材を遮るとともに、前記グリッド電極の電位を管外から給電可能な給電部を構成する導電性の外周管状部を有している」のに対して、甲1発明は、当該外周管状部を有していない点。 ウ 相違点についての判断 事案に鑑み、前記相違点2について検討する。 (ア) 甲1発明において甲6技術事項を採用して、甲1発明の「第2絶縁筒52」及び「第3絶縁筒53」に陽極ターゲットからの反射電子が帯電し、その帯電による電位によって電子集束系に電気的障害を与えることを防止するために、「第2絶縁筒52」及び「第3絶縁筒53」や各電極を覆う「陰極カバー」を設けることは、当業者が容易に想到し得たことであり、当該「陰極カバー」が相違点2に係る本件発明1の「外周管状部」に相当することとなる。 しかしながら、甲1発明に甲6技術事項を適用した際に、「陰極カバー」が甲1発明の「引出電極13」や「集束電極15」等の電極の電位を管外から給電可能な給電部を構成するようにすることは、甲1、甲6のいずれにも記載も示唆もされておらず、このことは、甲2~5、7~8のいずれにも開示されていない。 すなわち、甲6においては「陰極カバー68」は電子集束系を覆うとされているから(【0044】・【0060】)、「陰極カバー68」が覆う対象である電子集束系を構成する各電極の給電部を構成することは通常は考えられないし、陰極カバー68が電子集束系を覆うとの構成を改変した上で、さらに給電部を構成するようにすることの動機もない。 そして、本件発明1は外周管状部が給電部を構成することにより、明細書の【0070】の記載等から明らかなとおり、給電部とは別途に外周管状部(甲6技術事項における陰極カバー)を設ける必要がないとの効果を奏するものである。 (イ) 特許異議申立人は、甲1発明に甲6技術事項を適用することにより、甲1発明の第2柱状体62を外周管状部として構成することは当業者が容易になし得たことであり、その上で、第2柱状体62を集束電極15の部分とすることは単なる設計事項である旨を主張していると解される。 しかしながら、第2柱状体62と集束電極15は第3絶縁筒53で絶縁されており、両者の電位は異なるから、第2柱状体62を集束電極15の部分とすることは技術的にみて採用し得ないことであり、第2柱状体62を集束電極15の部分とすることは単なる設計事項であるとの特許異議申立人の主張は根拠がないものである。 したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。 (ウ) 以上のとおり、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の特定事項とすること、特に、所定の外周管状部が給電部を構成するようにすることは、甲1~甲8の全記載を精査しても、当業者が容易になし得たことであるということはできない。 エ 小括 以上検討のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~8に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2) 本件発明2~8、11~16に対する進歩性欠如 本件発明2~8、11~16は、本件発明1の発明特定事項を全て含むから、少なくとも前記相違点1、2において甲1発明と相違している。 そして、前記(1)ウで検討したとおり、甲1発明において相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明2~8、11~16は、本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2~8に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3) 本件発明1~16に対する明確性要件違反 特許異議申立人は特許異議申立理由において、請求項1の「前記グリッド電極は、前記電子放出部から放出され前記グリッド電極を前記電子が通過するまでの電子通過路から管径方向の外側にみて前記絶縁支持部材が直視される部分を有さないように前記絶縁支持部材を遮る導電部を有することにより、前記電子通過路上で発生する中性の散乱金属粒子のうち管径方向の外側に向かう成分が前記絶縁支持部材上に堆積することで生ずる前記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制するように構成され」との記載は、「グリッド電極」の「導電部」が、「前記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制」という機能を発揮するためにどのように構成されているのか、明細書等の記載及び本願出願時の技術常識を考慮しても不明である結果、本件発明1~16は不明確である旨を主張している。 しかしながら、請求項1の当該記載に接した当業者であれば、当該記載の字句どおり、「前記電子通過路上で発生する中性の散乱金属粒子のうち管径方向の外側に向かう成分が前記絶縁支持部材上に堆積することで生ずる前記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制する」ことは、「前記グリッド電極は、前記電子放出部から放出され前記グリッド電極を前記電子が通過するまでの電子通過路から管径方向の外側にみて前記絶縁支持部材が直視される部分を有さないように前記絶縁支持部材を遮る導電部を有することにより」得られる作用であること、すなわち、「導電部」が「前記電子放出部から放出され前記グリッド電極を前記電子が通過するまでの電子通過路から管径方向の外側にみて前記絶縁支持部材が直視される部分を有さないように前記絶縁支持部材を遮る」ものであれば足りることを理解できるから、請求項1の当該記載には、第三者に不測の不利益を及ぼすような不明確さはない。 (4) 本件発明17~30に対する明確性要件違反 本件訂正により本件発明17~30は削除されたから、これらの発明に係る特許に対する取消理由は存在しない。 第6 むすび 以上のとおり、本件発明1~8、11~16に係る特許は、取消理由(決定の予告)、先の取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明1~8、11~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項9~10、17~32は、本件訂正により削除されたため、特許法120条の8第1項で準用する特許法135条の規定により、これらの請求項に係る特許に対する特許異議の申立ては却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700457

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