特許異議申立
2023-700840
三次元形状測定方法および三次元形状測定装置
- 審判番号
- 2023-700840
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-053382
- 登録番号
- 7227604
- 請求日
- 2023年08月16日
- 審決日
- 2024年10月17日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社日立ハイテクサイエンス
- 【権利者代理人】弁理士法人栄光事務所
- 【異議申立人】株式会社 レクレアル
- 【異議申立人代理人】松浦 孝
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 濱本 禎広
- 審判官 小島 寛史
- 分類
- P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7227604号発明「三次元形状測定方法および三次元形状測定装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7227604号の特許請求の範囲を、令和6年7月10日に提出された手続補正書により補正された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4~6〕、〔7~9〕について訂正することを認める。
特許第7227604号の請求項1に係る特許を維持する。
特許第7227604号の請求項2~9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7227604号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成31年3月20日の出願であって、令和5年2月14日にその特許権の設定登録がされ、同月22日に特許掲載公報が発行された。本件特許の特許請求の範囲に記載された請求項の数は9である。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 8月16日 : 特許異議申立人株式会社レクレアル(以下、単に「特許異議申立人」という。)による請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 9月27日付け: 審尋(異議申立人)
同年10月16日 : 回答書(異議申立人)
同年12月20日付け: 審尋(特許権者)
令和6年 1月24日 : 回答書(特許権者)
同年 2月28日付け: 取消理由通知書
同年 5月 7日 : 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 6月 5日付け: 訂正拒絶理由通知書
同年 7月10日 : 意見書及び手続補正書の提出(特許権者)
なお、訂正の請求があったため、特許法120条の5第5項の規定により、令和6年7月24日付けで特許異議申立人に通知をし、相当の期間(通知の発送の日から30日以内)を指定して、意見書を提出する機会を設けたが、特許異議申立人から意見書は提出されなかった。
第2 訂正請求に対する補正の適否
令和6年7月10日に提出された手続補正書は、同年5月7日に提出された訂正請求書及びこれに添付した訂正特許請求の範囲を補正するものであるので、当該補正(以下「本件補正」という。)の適否について検討する。
本件補正は、請求項2~9に対する訂正事項を、請求項2~9を削除する訂正事項に変更するものである。
当該補正事項は、審理対象の拡張変更を伴わないものであって、訂正請求書の要旨を変更するものではないから、特許法120条の5第9項において準用する同法131条の2第1項の規定に適合するものである。
よって、本件補正は、認められる。
第3 本件訂正について
1 本件訂正の請求の趣旨
前記第2のとおり、令和6年7月10日に提出された手続補正書による訂正請求書の補正は認められたので、令和6年5月7日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を令和6年7月10日に提出された手続補正書により補正された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める、というものである。
2 本件訂正前後の特許請求の範囲の記載と本件訂正の内容
(1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~9の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
測定対象物に測定媒体を照射して干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測方法において、
前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子の焦点位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差に基づいて位置調整を行う際、前記距離の差が所定の値以下となるように前記撮像素子の位置を移動させて位置調整を行うことを特徴とする三次元形状計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元形状計測方法において、
配置する複数の干渉対物レンズ毎に前記撮像素子の位置の移動量をそれぞれの補正値として記憶し、次回以降の測定においては、使用する前記干渉対物レンズに対応する前記補正値に基づいて補正を行う三次元形状計測方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の三次元形状計測方法において、
前記撮像素子の移動に対する横倍率補正を行う三次元形状計測方法。
【請求項4】
一定の波長の光を発生する光源と、該光を分割し反射/透過させるビームスプリッタと、該ビームスプリッタで反射された前記光を光軸の方向で集光して測定対象物に照射するとともに該測定対象物から反射した測定光と該測定対象物に集光される該光から分岐して得られる参照光とを干渉させる干渉対物レンズと、当該干渉対物レンズにより生じた干渉信号を検出し撮像する撮像素子と、
を有する三次元計測装置において、
前記測定光と前記参照光の光学距離の調整を行う際に前記撮像素子をz軸方向に移動せしめる撮像素子の位置調整機構を備えることを特徴とする三次元形状計測装置。
【請求項5】
前記撮像素子により検出した干渉信号を取得、格納及び処理をおこなうデータ処理部を含み、当該データ処理部が、前記位置調整機構により前記撮像素子を移動させた位置調整距離を前記干渉対物レンズに対応した補正値として記憶/呼出しする位置調整距離の記憶部を備える請求項4に記載の三次元形状計測装置。
【請求項6】
前記データ処理部が、前記位置調整機構を動作させた際に検出信号に対して横倍率の変化を補償する横倍率補正部を備える請求項5に記載の三次元形状計測装置。
【請求項7】
測定対象物に測定媒体を照射して干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測方法において、
前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子の焦点位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差に基づいて位置調整を行う際、前記距離の差が所定の値以下となるように前記撮像素子の位置を移動させて位置調整を行い、
所定の倍率よりも高い倍率の干渉対物レンズの測定結果に対し、前記撮像素子の移動における変位量に対応して予め取得した縦倍率に基づいて、横倍率補正を行う、ことを特徴とする三次元形状計測方法。
【請求項8】
請求項7に記載の三次元形状計測方法において、
前記所定の倍率よりも低い倍率の干渉対物レンズの測定結果に対し、前記撮像素子の移動における変位量に対応して規定される算出式を用いて算出される縦倍率に基づいて、横倍率補正を行う、三次元形状計測方法。
【請求項9】
請求項7に記載の三次元形状計測方法において、
前記所定の倍率は、20倍である、三次元形状計測方法。」
(2) 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
「【請求項1】
測定対象物に光を照射して干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測装置を用いた三次元形状計測方法において、
前記三次元形状計測装置は、前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の位置を調整する調整機構と、ビームスプリッタにより前記光を前記測定対象物に向かう光と前記ビームスプリッタからの距離が固定された参照ミラーに向かう光に分離し、前記測定対象物で反射した測定光と前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させる構造であって倍率の異なる複数の干渉対物レンズと、を有し、
前記干渉対物レンズを切り替えた際の合焦調整は、前記撮像素子の撮像面の位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差が所定の値以下となるように前記調整機構により前記撮像素子の位置のみを移動させて行い、
前記三次元形状の計測は、前記撮像素子に結像させるための結像レンズと前記撮像素子の撮像面の距離を一定とし、前記ビームスプリッタと前記測定対象物との距離を変化させるように掃引し、前記測定対象物の計測を行う、ことを特徴とする三次元形状計測方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)」
(3) 本件訂正の内容
本件訂正は、一群の請求項〔1~3〕、〔4~6〕及び〔7~9〕について訂正するものであって、本件訂正の内容は、訂正事項を請求項ごとに整理すると、次の訂正事項1から訂正事項9の訂正事項で構成される。
ア 一群の請求項〔1~3〕に係る訂正事項(訂正事項1~3)
(ア) 訂正事項1(請求項1の記載に係る訂正)
訂正事項1は、次の訂正事項1-1から訂正事項1-3までの訂正事項で構成される。
a 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1(以下、単に「請求項1」という。他の請求項についても同様である。)における次の(a)に示す訂正前の記載を後記(b)に示す訂正後の記載に訂正する。
(a) 訂正前の記載
「測定対象物に測定媒体を照射して干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測方法」
(b) 訂正後の記載
「測定対象物に光を照射して干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測装置を用いた三次元形状計測方法」
b 訂正事項1-2
請求項1の「三次元形状計測方法において、」の後に、改行したうえで次の語句を追加する。
「前記三次元形状計測装置は、前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の位置を調整する調整機構と、ビームスプリッタにより前記光を前記測定対象物に向かう光と前記ビームスプリッタからの距離が固定された参照ミラーに向かう光に分離し、前記測定対象物で反射した測定光と前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させる構造であって倍率の異なる複数の干渉対物レンズと、を有し、」
c 訂正事項1-3
請求項1における次の(a)に示す訂正前の記載を後記(b)に示す訂正後の記載に訂正する。
(a) 訂正前の記載
「前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子の焦点位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差に基づいて位置調整を行う際、前記距離の差が所定の値以下となるように前記撮像素子の位置を移動させて位置調整を行う」
(b) 訂正後の記載
「前記干渉対物レンズを切り替えた際の合焦調整は、前記撮像素子の撮像面の位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差が所定の値以下となるように前記調整機構により前記撮像素子の位置のみを移動させて行い、
前記三次元形状の計測は、前記撮像素子に結像させるための結像レンズと前記撮像素子の撮像面の距離を一定とし、前記ビームスプリッタと前記測定対象物との距離を変化させるように掃引し、前記測定対象物の計測を行う、」
(イ) 訂正事項2(請求項2の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(ウ) 訂正事項3(請求項3の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
イ 一群の請求項〔4~6〕に係る訂正事項(訂正事項4~6)
(ア) 訂正事項4(請求項4の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(イ) 訂正事項5(請求項5の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(ウ) 訂正事項6(請求項6の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
ウ 一群の請求項〔7~9〕に係る訂正事項(訂正事項7~9)
(ア) 訂正事項7(請求項7の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(イ) 訂正事項8(請求項8の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(ウ) 訂正事項9(請求項9の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
3 本件訂正の適否についての当審の判断
(1) 一群の請求項〔1~3〕に係る訂正事項について
ア 訂正事項1について
(ア) 訂正事項1-1について
a 訂正の目的について
訂正事項1-1は、本件訂正前の「測定対象物に測定媒体を照射して干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測方法において、」を、「測定対象物に光を照射して干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測装置を用いた三次元形状計測方法において、」として、「測定媒体」を「光」に限定し、「三次元形状計測方法」を「三次元形状計測装置を用いた三次元形状計測方法」に限定するものである。
したがって、訂正事項1-1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
b 新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(a) 訂正事項1-1による訂正は、願書に添付した明細書の段落【0006】~【0010】、【0016】、【0017】及び【図1】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(b) また、訂正事項1-1による訂正は、前記(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(イ) 訂正事項1-2について
a 訂正の目的について
訂正事項1-2は、訂正事項1-1による訂正の前提として、「三次元形状計測装置」を「前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の位置を調整する調整機構と、ビームスプリッタにより前記光を前記測定対象物に向かう光と前記ビームスプリッタからの距離が固定された参照ミラーに向かう光に分離し、前記測定対象物で反射した測定光と前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させる構造であって倍率の異なる複数の干渉対物レンズと、を有[する]」ものに限定するものである。
したがって、当該訂正事項1-2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
b 新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(a) 訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書の段落【0006】~【0010】、【0016】、【0017】及び【図1】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(b) また、訂正事項1-2による訂正は、前記(a)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(ウ) 訂正事項1-3について
a 訂正の目的について
(a) 訂正事項1-3による訂正は、本件訂正前の「前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子の焦点位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差に基づいて位置調整を行う際、前記距離の差が所定の値以下となるように前記撮像素子の位置を移動させて位置調整を行う」を、「前記干渉対物レンズを切り替えた際の合焦調整は、前記撮像素子の撮像面の位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差が所定の値以下となるように前記調整機構により前記撮像素子の位置のみを移動させて行い、」とするものであるところ、当該訂正事項1-3は、次のi~iiiに示す訂正事項1-3-1から訂正事項1-3-3までの三つの訂正事項から構成される。
i 訂正事項1-3-1
本件訂正前の「前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子の焦点位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差に基づいて位置調整を行う」という技術的に正確でない記載を、「合焦調整は、前記撮像素子の撮像面の位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差が所定の値以下となるように」「行い、」と訂正して、「その本来の意を明らかにすること」を目的とする訂正をすること。
ii 訂正事項1-3-2
前記iの訂正事項1-3-1による訂正を前提として、「合焦調整」を、「前記干渉対物レンズを切り替えた際の合焦調整」に限定すること。
iii 訂正事項1-3-3
前記iの訂正事項1-3-1による訂正を前提として、「合焦調整」が、「前記調整機構により前記撮像素子の位置のみを移動させて行[う]」ものに限定すること。
(b) 以上をまとめると、訂正事項1-3による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同項ただし書き3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
b 新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(a) 訂正事項1-3による訂正は、願書に添付した明細書の段落【0006】~【0010】、【0026】、【0028】及び【0031】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(b) また、訂正事項1-3による訂正は、前記aのとおり、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(エ) 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許異議の申立てにおいては、本件訂正前の請求項1について特許異議申立てがされているので、本件訂正後における請求項1について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
イ 訂正事項2、3
(ア) 訂正の目的について
訂正事項2、3は、本件訂正前の請求項2及び3を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ) 新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2、3は、本件訂正前の請求項2及び3を削除するものであるから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(ウ) 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許異議の申立てにおいては、本件訂正前の請求項2及び3について特許異議申立てがされているので、本件訂正後における請求項2及び3について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
(2) 一群の請求項〔4~6〕に係る訂正事項4~6について
ア 訂正の目的について
訂正事項4~6は、本件訂正前の請求項4~6を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4~6は、本件訂正前の請求項4~6を削除するものであるから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許異議の申立てにおいては、本件訂正前の請求項4~6について特許異議申立てがされているので、本件訂正後における請求項4~6について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
(3) 一群の請求項〔7~9〕に係る訂正事項7~9について
ア 訂正の目的について
訂正事項7~9は、本件訂正前の請求項7~9を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項7~9は、本件訂正前の請求項7~9を削除するものであるから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許異議の申立てにおいては、本件訂正前の請求項7~9について特許異議申立てがされているので、本件訂正後における請求項7~9について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
4 本件訂正の適否についての当審の判断のまとめ
以上検討のとおり、訂正事項1から訂正事項9までからなる本件訂正は、特許法120条の5第2項並びに同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものであり、同条9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されないから、いずれも適法である。
よって、前記結論のとおり、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4~6〕、〔7~9〕について訂正することを認める。
第4 本件発明
1 本件発明の認定
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の2(2)ア参照)により特定されるとおりのものである。
本件発明の構成を便宜上次のように分説するとともに、参考図として本件特許の図1に部材名を加筆したものを掲載する。
<本件発明の分説>
(構成A)測定対象物に光を照射して干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測装置を用いた三次元形状計測方法において、
(構成B)前記三次元形状計測装置は、前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の位置を調整する調整機構と、ビームスプリッタにより前記光を前記測定対象物に向かう光と前記ビームスプリッタからの距離が固定された参照ミラーに向かう光に分離し、前記測定対象物で反射した測定光と前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させる構造であって倍率の異なる複数の干渉対物レンズと、を有し、
(構成C)前記干渉対物レンズを切り替えた際の合焦調整は、前記撮像素子の撮像面の位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差が所定の値以下となるように前記調整機構により前記撮像素子の位置のみを移動させて行い、
(構成D)前記三次元形状の計測は、前記撮像素子に結像させるための結像レンズと前記撮像素子の撮像面の距離を一定とし、前記ビームスプリッタと前記測定対象物との距離を変化させるように掃引し、前記測定対象物の計測を行う、
ことを特徴とする三次元形状計測方法。
<参考図>(図1)
[図:0001418207000001.jpg]
2 課題・効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願特許の明細書の発明の詳細な説明の記載における、発明が解決しようとする課題及び発明の効果等の記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉顕微鏡に使用する干渉対物レンズを使用した際に、干渉縞の焦点位置と撮像素子(以後、代表としてカメラと称す)の焦点位置を合致するように補正をする方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の干渉顕微鏡は無限遠系の配置を重視しており、干渉縞の観察に際しては、カメラ側の焦点位置ではなく、参照ミラーの位置を調整することにより行っていた。具体的には、カメラセンサの位置は変えずに、そのカメラの焦点位置に干渉縞が現れるよう、対物レンズ毎に調整していた。
【0003】
カメラを動かさない場合は、横倍率β が変化しないというメリットはあるものの、都度対物レンズの干渉縞の出現位置を調整しなければならず、操作者にとってこの手動による調整作業は負担であった。
低倍率レンズの場合、対物レンズの焦点深度が大きいことから、干渉縞の出現位置がカメラの焦点が合う範囲内に存するため、参照ミラーの調整機構が無い場合もある。
【0004】
一方、高倍率レンズでは焦点深度が小さいことから参照ミラーによる調整が必須となる。
このように干渉対物レンズは干渉対物レンズ自身に調整機構が付いているのが一般的である。例えば、当該調整機構について使い勝手を向上させる発明がなされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-193891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、顕微鏡を使用する場合には1本の対物レンズのみで使用することは稀であり、倍率の異なる複数本の対物レンズを切り換えて使用するのが一般的である。
但し、複数本の干渉対物レンズそれぞれに参照ミラーの調整機構を設けることは、重量が増え、かつ、複雑な調整機構を設けることで品質が安定しづらくなり、経済性も悪化する等の課題がある。特に、重量増加は、対物レンズを複数本付けるためのレボルバやz駆動機構であるモータやピエゾの耐荷重を上げることに繋がり、更なる重量増加を招く。結果として、干渉縞のボケやエッジのダレ等が生じ正確な三次元形状が計測できなくなる。このことは、温度ドリフトへの対応を含めて参照ミラーの調整の自動化に対しても、装置の重量増と計測精度の観点より障害となる。
【0007】
従って、常にカメラの焦点位置と干渉縞の出現位置を、干渉対物レンズの調整をして揃えておき最適化するに当たり、上記の課題を解決し、簡易な構成によりボケのない三次元形状像を容易に取得することができる三次元形状計測方法及び装置が望まれた。」
「【発明の効果】
【0013】
本発明に係る三次元形状計測方法及び装置によれば、簡素な構成により経済性も高く、また、容易な操作により真の三次元形状像を取得することができる。」
第5 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に係る特許に対して、当審において令和6年2月28日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、単に「取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。
なお、請求項2~9に係る特許についての取消理由については、本件訂正により、請求項2~9が削除されたので割愛する。
(1) 取消理由1(明確性要件違反)
本件特許は、次のア~ウに示すとおり、特許請求の範囲の記載に不備があるため、請求項1に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 取消理由1-1
請求項1には、「前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子の焦点位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差」と記載されているところ、「干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子の焦点位置」及び「前記干渉縞の出現位置」という語句は技術的に正確でないから、請求項1に係る発明は明確でない。
イ 取消理由1-2
請求項1には、「前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子の焦点位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差に基づいて位置調整を行う際、前記距離の差が所定の値以下となるように前記撮像素子の位置を移動させて位置調整を行う」と記載されているところ、下線を付した2箇所の「位置調整」という語は、「何の位置調整」であるのか日本語として不完全であるから、請求項1に係る発明は明確でない。
ウ 取消理由1-3
請求項1には、「測定対象物に測定媒体を照射して」と記載されており「光」という語句は用いていないところ、「測定媒体」には、光以外にどのようなものが含まれるのかその概念の外延が不明であるから、請求項1に係る発明は明確でない。
(2) 取消理由2(サポート要件違反)
本件特許は、次のア及びイに示すとおり、特許請求の範囲の記載に不備があるため、請求項1に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 取消理由2-1
請求項1において、課題解決の手段である「干渉対物レンズ14内のビームスプリッタから参照ミラーまでの参照光の光学距離L2は固定されており、対物レンズを切り換えた際の合焦調整(フォーカシング調整)は、撮像素子の位置のみを変更することによって行うこと」が特定されていないから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した発明ではない。
イ 取消理由2-2
請求項1は「三次元形状計測方法」の発明であり、三次元形状の測定には試料面に垂直な方向での走査が必要と認められるところ、本件特許明細書の【0017】等の記載を参酌すると、発明の詳細な説明に記載された発明においては、「掃引」(走査又はスキャン)すること及びその際に結像レンズと撮像素子の撮像面の距離は一定であることを前提としているが、請求項1において、当該事項は特定されていないから、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載した発明ではない。
2 当審の判断
(1) 取消理由1(明確性要件違反)について
ア 取消理由1-1
前記取消理由1-1において示した、「干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子の焦点位置」という語句が、技術的に正確なものでない点について、前記第3の2(3)ア(ア)cの訂正事項1-3による訂正により、当該語句が「前記撮像素子の撮像面の位置」という語句に訂正されることにより、技術的に正確なものとなり、当該語句に起因して請求項1の記載の明確でないとする取消理由は解消された。
イ 取消理由1-2
前記取消理由1-2において示した、請求項1に記載の「前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子の焦点位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差に基づいて」「行う」「位置調整」とは「何の位置調整」であるのか明確でないとする取消理由は、前記第3の2(3)ア(ア)cの訂正事項1-3による訂正により、前記「位置調整」が、「撮像素子」の「合焦調整」のことであることが明確になったため解消された。
ウ 取消理由1-3
前記取消理由1-3において示した、請求項1に記載の「測定対象物に測定媒体を照射して」の「測定媒体」に、光以外のどのようなものが含まれるのがその概念の外延が明確でないという取消理由は、前記第3の2(3)ア(ア)aの訂正事項1-1により、「測定媒体」を「光」に訂正することで解消された。
(2) 取消理由2(サポート要件違反)について
ア 取消理由2-1
前記取消理由2-1において示した、請求項1は、課題解決の手段である「干渉対物レンズ14内のビームスプリッタから参照ミラーまでの参照光の光学距離L2は固定されており、対物レンズを切り換えた際の合焦調整(フォーカシング調整)は、撮像素子の位置のみを変更することによって行うこと」が特定されていないから発明の詳細な説明に記載された発明ではないとする取消理由については、前記第3の2(3)ア(ア)bの訂正事項1-2による訂正により、「ビームスプリッタからの距離が固定された参照ミラー」であることが特定され、前記第3の2(3)ア(ア)cの訂正事項1-3による訂正により、「前記干渉対物レンズを切り替えた際の合焦調整は」、「前記撮像素子の位置のみを移動させて行[う]」ことが特定されたため解消した。
イ 取消理由2-2
前記取消理由2-2において示した、請求項1は、「三次元形状計測方法」の発明であり、三次元形状の測定には試料面に垂直な方向での走査が必要と認められるところ、当該技術事項を特定していないから発明の詳細な説明に記載された発明ではないとする取消理由は、前記第3の2(3)ア(ア)cの訂正事項1-3による訂正により、「前記三次元形状の計測は、前記撮像素子に結像させるための結像レンズと前記撮像素子の撮像面の距離を一定とし、前記ビームスプリッタと前記測定対象物との距離を変化させるように掃引し、前記測定対象物の計測を行う」ことが特定されたため解消した。
(3) 小括
上記(1)及び(2)において検討したとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由はすべて解消した。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要及び証拠方法
(1) 特許異議申立の理由~甲1発明に基づく新規性欠如又は進歩性欠如
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明に関し、当該発明は、甲1号証に記載された発明である、又は、甲1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法29条1項又は2項の規定に違反してされたものである、と主張する。
(2) 申立人が提示した証拠
特許異議申立人が提示した証拠は、次のとおりである。
甲1号証 :特表2005-530147号公報
甲2号証 :特開2018-180296号公報
甲3号証 :米国特許第7212356号明細書
甲4号証 :特開2014-235254号公報
甲5号証 :装置組込用顕微鏡ユニットカタログ、日本、株式会社ニコン
2 甲1発明に基づく新規性又は進歩性の欠如の主張の検討
(1) 甲1発明の認定
ア 甲1号証に記載された事項
本件特許の出願前に発行された、前記甲1号証には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
(ア) 【0001】
「【0001】
本発明は、光学的測定技術に関する。」
(イ) 【0002】~【0005】
「【背景技術】
…(中略)…。
【0004】
表面輪郭検出の光学的測定技術は、2つの方式、即ち、干渉法および幾何学法に分けることができる。幾何学技法には、三角測量法およびモアレ縞分析が含まれ、ロンキー規則(Ronchi ruling)等の周期的構造の投影および撮像を伴う。幾何学的技法は、表面の粗さ及び変形には比較的不感応であるが、分解能が比較的低いので、表面輪郭を高精度で測定しなければならない用途には不向きである。
【0005】
一方、干渉法は、光の波動性に基づいて、検査物体の表面輪郭を高精度で測定する。典型的な干渉計は、光ビームを生成する光発生器と、その後段にて、ビームを基準ビームおよび測定ビームに分割するビーム分割器とを含む。次に、基準ビームは、基準面で反射され、測定ビームは、表面の輪郭を検出すべき物体で反射される。基準面および測定面からの第1および第2反射波面は、次に、加算的および減算的双方で干渉しながら、互いに再結合して、検出器において干渉縞パターンを生成する。この縞パターンは、基準ビームおよび測定ビームが伝搬した経路間の光路差の関数となる。光路差は、基準ビームおよび測定ビーム間における伝搬光路差の結果として、位相差となる。固体カメラ等の撮像装置が、再結合した波面を受け取り、干渉縞パターンの画像を取得する。次いで、干渉縞模様を分析して、検査物体の表面輪郭に関する情報を得る。」
(ウ) 【0039】~【0044】、【図1】~【図3】
「【0039】
図1を参照すると、平坦面を測定するために構成された干渉測定システムは、筐体105に収容されたセンサ100を含む。センサ100は、リニク干渉計と同様であり、1組の基準光学素子、この場合は基準レンズ130が、1組の測定光学素子、ここでは測定レンズ140と実質的に同一であり、色分散及び光学収差を一致させている。動作の間、センサ100は、センサから離れて配置された検査部分の検査表面102の表面輪郭を干渉法によりに測定する。」
「【図1】
[図:0001418207000002.jpg]
」
「【0040】
センサ100は、光源110、カメラ164、および多数の光学部品(以下で説明する)を含む。光源110、例えば、ハロゲン・バルブ、発光ダイオード(LED)、または超発光ダイオード(SLD)等の低コヒーレンス光源は、照明光学素子118を通じて光をビーム・スプリッタ120に向けて射出する。ビーム・スプリッタ120は、この光を測定ビームと基準ビームとに分割する。基準ビームは、基準レンズ130を通って基準ミラー132に当たり、測定ビームは、測定レンズ140を通って検査表面102に当たる。基準ミラー132が、OPD走査ステージ134上に取り付けられている。OPD走査ステージ134は、基準レンズ130に対して基準ミラー132を走査する。基準レンズ130および測定レンズ140は双方とも焦点距離fを有する。基準ビームおよび測定ビームは、基準ミラー132および検査表面102からそれぞれ反射し、ビーム・スプリッタ120において再結合し、出力ビーム113としてカメラ164に向かって伝搬する。出力ビーム113は、図1では主光線111および周辺光線112によって表されている。基準ビームおよび測定ビームが異なる経路を通るので、出力ビーム113の基準ビーム成分と測定ビーム成分との間には、光路差(OPD)が存在する。このOPDは、通例、検査表面102の輪郭におけるばらつきによって、出力ビーム113の輪郭全域にわたって変動する。OPDが光源110の時間的コヒーレント長以内のとき、カメラ164が検出した出力ビームの強度は、出力ビーム113の基準成分と測定成分との間の干渉によって、OPDの関数として変動する。光源110が低コヒーレンス光源である実施形態では、これらの干渉の効果は、通例、OPDが0に近いところで発生する(例えば、波長が光源110のそれであり、OPDがゼロの数波長以内である場合)。測定ビームを反射して、カメラ上でそれと基準ビームとの間に一定の光路差長差を生ずる表面に対応する理論的な表面が、光学測定面152として示されている。この表面152は、本構成では、測定レンズ140の焦点面に配置されている。
【0041】
センサ100は、撮像レンズ160も含み、これは焦点距離が2fであり、測定レンズ140から3f離れて位置しており、光学測定面152を平坦場画像162に撮像する。本構成では、部品表面102が、測定レンズ140の焦点面に位置し、光学測定面152と一致している。更に、カメラ164は、撮像レンズ160の焦点面に位置している。したがって、部品表面102および光学測定面152双方は、カメラ164において完全に合焦し、2倍に拡大されている。尚、この説明は光学測定面の画像、ここでは画像162について言及しているが、光学測定面と一致し光を反射して撮像光学素子に戻す表面がなければ、実際には画像は形成されない。光学測定面は単に理論的な面であるので、光学測定面の画像にもそれが言える。双方は、ここに開示する干渉測定システムの説明に役立つように考えられた抽象的な構成である。
【0042】
部品表面102の輪郭を測定するためには、OPD走査ステージ134は、基準ミラー132を基準レンズ130に対して並進させることによって、撮像光学素子(即ち、測定レンズ140および撮像レンズ160)の光軸上の位置に関して光学測定面152の位置を走査する。走査の間、センサ100は、コンピュータ・データ取得制御部199の制御下にあり、制御部199は、カメラから電子強度データを受け取る。部品表面102の輪郭を判定する1つの手法では、測定プロセスは走査白色光干渉計のものと類似している。単一のカメラ画素のデータ集合の一例を図2に示す。これは、1つの画素において検出した出力ビームの相対的強度を、基準ミラー132の位置の関数として示している。図1に示す光源110がスペクトル的に広帯域で、例えば、600nmを中心として100nmのスペクトル帯域幅であると仮定すると、ゼロOPD位置周囲における干渉強度信号213の局在性は、干渉測定法の特徴を示している。縞の局在性によって、測定面が画像画素に対応する物点と交差する正確なときを判定する手段が得られる。走査動作は、センサ100によって正確に制御されるので、いつ所与の物点がゼロOPDになるかがわかれば、例えば、図1に示す主光線111の相対的長さに直接変換することができる。」
「【図2】
[図:0001418207000003.jpg]
」
「【0043】
低コヒーレンス光源を用いて表面の高さを判定する種々の技法のいずれでも適用することができる。例えば、第1画素についての干渉データが図2のように示され、縞コントラスト211におけるピーク212が0μmの走査位置にあると仮定する。カメラ164の第2画素は、異なる走査位置、例えば、10μmにおいては、異なる縞コントラスト・ピークを有する場合がある。したがって、これらの画像画素に対応する2つの物点間のコントラスト・ピークの位置の差は、10μmとなる。このような実施形態では、データ処理は、例えば、コヒーレント包絡線検出または周波数ドメイン分析を含むことができる。コヒーレント包絡線検出は、例えば、ティ.ドレセル(T.Dresel)および協同研究者による「コヒーレント・レーダによる粗い表面の三次元検知」(Three-dimensional sensing of rough surfaces by coherence radar)、Applied Optics 31(7)、919~925頁(1992)に記載されている。周波数ドメイン分析の実施形態は、ピー.ディグルート(P.deGroot)の「干渉写真の空間周波数分析による表面形状測定方法および装置」(METHOD AND APPARATUS FOR SURFACE TOPOGRAPHY MEASUREMENT BY SPATIAL-FREQUENCY ANALYSIS おFINTERFEROGRAMS)と題する米国特許第5,398,113号に記載されている。これらの引例双方の内容全体を参照により引用する。
【0044】
再度図1を参照すると、走査の間、光学測定面152自体が移動するに連れて、光学測定面152の画像162の位置が移動する。実際、画像が2倍に拡大されているので、画像が移動する速度は、光学測定面152が移動する速度の4倍となる。一般に、光学測定面が平坦なセンサでは、相対的な焦点のOPD走査に対する比率は、撮像システムの倍率の二乗に比例する。光学測定面152の移動の結果、現在の配置では、光学測定面はもはやカメラ164に合焦しなくなる。図3を参照すると、光学測定面152を走査の間、合焦状態に維持するために、焦点走査ステージ170がカメラ164の位置を走査する。即ち、図3に示す構成では、合焦状態にある検査表面102の一部を、図1に示す構成において合焦状態にある検査表面120の一部と比較して、量δzだけ変位させる。これによって、基準ミラー132はδzだけ変位し、光学測定面152が検査表面102の適切な部分に確実に接触することになる。カメラ164を量δz’=4δzだけ変位させ、光学測定面152が確実に合焦状態に留まり、倍率が変化しないようにする。したがって、この場合、センサ100は、基準ミラー132(および光学測定面)を走査する速度の4倍の速度で、カメラ164を走査することになる。つまり、光学測定面152の画像162は、OPD走査の間、鮮明な合焦状態にありつつ、一定倍率を保持する。焦点走査ステージ170およびOPD走査ステージ134の変位速度間の比率は、プログラム可能であり、コンピュータ199によって制御される。」
「【図3】
[図:0001418207000004.jpg]
」
イ 甲1発明の認定
前記アの記載事項を総合すると、甲1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
<甲1発明>
「筐体105に収容されたセンサ100を含む、平坦面を測定するために構成された干渉測定システムを用いて、前記センサ100が、センサから離れて配置された検査部分の検査表面102の表面輪郭を干渉法により測定する方法であって、(【0039】)
センサ100は、光源110、カメラ164、および多数の光学部品を含み、光源110は、低コヒーレンス光源であり、照明光学素子118を通じて光をビーム・スプリッタ120に向けて射出し、
ビーム・スプリッタ120は、この光を測定ビームと基準ビームとに分割し、
基準ビームは、基準レンズ130を通って基準ミラー132に当たり、測定ビームは、測定レンズ140を通って検査表面102に当たるものであり、
基準ビームおよび測定ビームは、基準ミラー132および検査表面102からそれぞれ反射し、ビーム・スプリッタ120において再結合し、出力ビーム113としてカメラ164に向かって伝搬するものであり、
基準ビームおよび測定ビームが異なる経路を通るので、出力ビーム113の基準ビーム成分と測定ビーム成分との間には、光路差(OPD)が存在するものであり、
このOPDは、通例、検査表面102の輪郭におけるばらつきによって、出力ビーム113の輪郭全域にわたって変動するものであり、
OPDが光源110の時間的コヒーレント長以内のとき、カメラ164が検出した出力ビームの強度は、出力ビーム113の基準成分と測定成分との間の干渉によって、OPDの関数として変動するものであり、
測定ビームを反射して、カメラ上でそれと基準ビームとの間に一定の光路差長差を生ずる表面に対応する理論的な表面が、光学測定面152として、測定レンズ140の焦点面に配置されるものであり、(【0040】)
部品表面102の輪郭を測定するためには、OPD走査ステージ134は、基準ミラー132を基準レンズ130に対して並進させることによって、撮像光学素子(即ち、測定レンズ140および撮像レンズ160)の光軸上の位置に関して光学測定面152の位置を走査するものであり、(【0042】)
走査の間、光学測定面152自体が移動するに連れて、光学測定面152の画像162の位置が移動し、当該光学測定面152の移動の結果、現在の配置では、光学測定面はもはやカメラ164に合焦しなくなるため、光学測定面152を走査の間、合焦状態に維持するために、焦点走査ステージ170がカメラ164の位置を走査することにより、
すなわち、合焦状態にある検査表面102の一部を、量δzだけ変位させ、これによって、基準ミラー132はδzだけ変位し、光学測定面152が検査表面102の適切な部分に確実に接触することになり、カメラ164を量δz’=4δzだけ変位させ、光学測定面152が確実に合焦状態に留まり、倍率が変化しないようにすることにより、光学測定面152の画像162は、OPD走査の間、鮮明な合焦状態にありつつ、一定倍率を保持する、(【0044】)
方法。」
(2) 対比
ア 対比分析
本件発明と甲1発明を対比する。
(ア) 構成Aについて
a 構成Aは、「測定対象物に光を照射して干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測装置を用いた三次元形状計測方法」である。
b 甲1発明における「検査部分の検査表面102」は、本件発明における「測定対象物」に相当する。
c(a) 甲1発明における「干渉測定システム」は、「センサ100」を含むものであり(【0039】)、当該「センサ100」は、「光源110」を含むものであり(【0040】)、「光源110は、低コヒーレンス光源であり、照明光学素子118を通じて光をビーム・スプリッタ120に向けて射出し、ビーム・スプリッタ120は、この光を測定ビームと基準ビームとに分割し」(【0040】)、「測定ビームは、測定レンズ140を通って検査表面102に当た[る]」(【0040】)ものであるから、前記bも踏まえると、甲1発明における「干渉測定システム」は、「測定対象物に光を照射」するものである。
(b) そうすると、甲1発明における「検査部分の検査表面102の表面輪郭を干渉法により測定する」「干渉測定システム」は、本件発明における「干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測装置」に相当する。
d したがって、「測定対象物に光を照射して干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測装置を用いた三次元形状計測方法」の発明である本件発明と「筐体105に収容されたセンサ100を含む、平坦面を測定するために構成された干渉測定システムを用いて、前記センサ100が、センサから離れて配置された検査部分の検査表面102の表面輪郭を干渉法により測定する方法」の発明である甲1発明は、次の点において一致する。
「測定対象物に光を照射して干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測装置を用いた三次元形状計測方法」の発明である点。
(イ) 構成Bについて
a 構成Bは、「前記三次元形状計測装置は、前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の位置を調整する調整機構と、ビームスプリッタにより前記光を前記測定対象物に向かう光と前記ビームスプリッタからの距離が固定された参照ミラーに向かう光に分離し、前記測定対象物で反射した測定光と前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させる構造であって倍率の異なる複数の干渉対物レンズと、を有し」という構成である。
b 甲1発明においては、「測定ビームを反射して、カメラ上でそれと基準ビームとの間に一定の光路差長差を生ずる表面に対応する理論的な表面が、光学測定面152として、測定レンズ140の焦点面に配置されるものであ[る]」から、前記(ア)の検討結果も踏まえると、甲1発明における「測定レンズ140の焦点面に配置され[た]」「光学測定面152」を撮像する「カメラ164」は、本件発明における「前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子」に相当する。
c 甲1発明においては「焦点走査ステージ170がカメラ164の位置を走査する」(【0044】)ものであるから、前記bも踏まえると、甲1発明における「焦点走査ステージ170」は、本件発明における「撮像素子の位置を調整する調整機構」に相当する。
d(a) 甲1発明における「基準ミラー132」は、本件発明における「参照ミラー」に相当する。
(b) そして、甲1発明における「ビーム・スプリッタ120」は、「光源110」からの光を「測定ビームと基準ビームとに分割[する]」もの(【0040】)であるから、前記(ア)及び前記(a)の検討結果も踏まえると、甲1発明が本件発明における「ビームスプリッタにより前記光を前記測定対象物に向かう光と参照ミラーに向かう光に分離[する]」という構成に相当する構成を備えることは明らかである。
c(a) 甲1発明においては、「ビーム・スプリッタ120は、この光を測定ビームと基準ビームとに分割し、基準ビームは、基準レンズ130を通って基準ミラー132に当たり、測定ビームは、測定レンズ140を通って検査表面102に当たるものであり」(【0040】)、「基準ビームおよび測定ビームは、基準ミラー132および検査表面102からそれぞれ反射し、ビーム・スプリッタ120において再結合し、出力ビーム113としてカメラ164に向かって伝搬し」(【0040】)、「カメラ164が検出した出力ビームの強度は、出力ビーム113の基準成分と測定成分との間の干渉によって、OPDの関数として変動[する]」ものである(【0040】)から、甲1発明は、本件発明における「前記測定対象物で反射した測定光と前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させる構造」に相当する構成を備えるといえる。
(b) そして、甲1発明が備える本件発明の「構造」に相当する前記構成には、前記(a)のとおり、甲1発明の「測定レンズ140」が含まれるから、甲1発明の「測定レンズ140」を含む「構造」と、本件発明の「倍率の異なる複数の干渉対物レンズ」は、「干渉対物レンズ」である点において共通する。
d したがって、本件発明と甲1発明は、構成Bの観点に関して、次の(a)に示す点において一致し、後記の(b)に示す点において相違する。
(a) 構成Bの観点での一致点
「前記三次元形状計測装置は、前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の位置を調整する調整機構と、ビームスプリッタにより前記光を前記測定対象物に向かう光と参照ミラーに向かう光に分離し、前記測定対象物で反射した測定光と前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させる構造であって干渉対物レンズと、を有[する]」点。
(b) 構成Bの観点での相違点
本件発明においては、
「参照ミラー」が「前記ビームスプリッタからの距離が固定され[た]」ものであり、「倍率の異なる複数の干渉対物レンズ」を有しているのに対して、
甲1発明においては、
部品表面102の輪郭を測定するために、基準ミラー132を基準レンズ130に対して並進させており、すなわち、基準ミラー132がビーム・スプリッタ120からの距離が固定されたものではなく、 「倍率の異なる複数の干渉対物レンズ」を有していない点。
(ウ) 構成Cについて
a 構成Cは、「前記干渉対物レンズを切り替えた際の合焦調整は、前記撮像素子の撮像面の位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差が所定の値以下となるように前記調整機構により前記撮像素子の位置のみを移動させて行[う]」という構成である。
b 甲1発明においては、「光学測定面152の画像162は、OPD走査の間、鮮明な合焦状態にあ[る]」ようにするために、「基準ミラー132を基準レンズ130に対して並進させ[て]」「部品表面102の輪郭を測定する」のと同時に、「焦点走査ステージ170がカメラ164の位置を走査[して]」「光学測定面152が確実に合焦状態に留ま[る]」ようにするものである。
c 前記aを踏まえると、本件発明の「前記干渉対物レンズを切り替えた際の合焦調整」と甲1発明の「部品表面102の輪郭を測定する」際に「光学測定面152が確実に合焦状態に留ま[る]」ようにする調整は、「合焦調整」である点において共通する。
d また、本件発明の「合焦調整」を「前記撮像素子の位置のみを移動させて行[う]」ことと甲1発明の「基準ミラー132を基準レンズ130に対して並進させ[て]」「部品表面102の輪郭を測定する」のと同時に、「焦点走査ステージ170がカメラ164の位置を走査[して]」「光学測定面152が確実に合焦状態に留ま[る]」ように調整することは、「合焦調整」は「前記調整機構により前記撮像素子の位置のみを移動させて行う」点において一致する。
e したがって、本件発明と甲1発明は、構成Cの観点に関して、次の(a)に示す点において一致し、後記の(b)に示す点において相違する。
(a) 構成Cの観点での一致点
「合焦調整は、前記撮像素子の撮像面の位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差が所定の値以下となるように前記調整機構により前記撮像素子の位置のみを移動させて行う」点。
(b) 構成Cの観点での相違点
本件発明においては、
「合焦調整」は「干渉対物レンズを切り替えた際の合焦調整」であるのに対して、
甲1発明においては、
「倍率の異なる複数の干渉対物レンズ」を有しておらず、したがって、「合焦調整」は、「干渉対物レンズを切り替えた際の合焦調整」ではなく、「部品表面102の輪郭を測定する」際の合焦調整である点。
(エ) 構成Dについて
a 構成Dは、「前記三次元形状の計測は、前記撮像素子に結像させるための結像レンズと前記撮像素子の撮像面の距離を一定とし、前記ビームスプリッタと前記測定対象物との距離を変化させるように掃引し、前記測定対象物の計測を行う」という構成である。
b したがって、本件発明と甲1発明は、構成Dの観点に関して、次に示す点において相違する。
本件発明においては、
「前記三次元形状の計測は、前記撮像素子に結像させるための結像レンズと前記撮像素子の撮像面の距離を一定とし、前記ビームスプリッタと前記測定対象物との距離を変化させるように掃引し、前記測定対象物の計測を行う」ものであるに対して、
甲1発明においては、
部品表面102の輪郭を測定するためには、OPD走査ステージ134は、基準ミラー132を基準レンズ130に対して並進させることによって、撮像光学素子(即ち、測定レンズ140および撮像レンズ160)の光軸上の位置に関して光学測定面152の位置を走査するものである点。
イ 一致点及び相違点
上記アを対比分析における検討結果をまとめると、本件発明と甲1発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違する。
(ア) 一致点
(構成A)測定対象物に光を照射して干渉信号から三次元形状を計測する三次元形状計測装置を用いた三次元形状計測方法において、
(構成B’)前記三次元形状計測装置は、前記干渉信号に基づく干渉縞を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の位置を調整する調整機構と、ビームスプリッタにより前記光を前記測定対象物に向かう光と参照ミラーに向かう光に分離し、前記測定対象物で反射した測定光と前記参照ミラーで反射した参照光とを干渉させる構造と、を有し、
(構成C’)合焦調整は、前記撮像素子の撮像面の位置と前記干渉縞の出現位置との距離の差が所定の値以下となるように前記調整機構により前記撮像素子の位置のみを移動させて行う、
三次元形状計測方法、である点。
(イ) 相違点
本件発明においては、
「参照ミラー」が「前記ビームスプリッタからの距離が固定され[た]」ものであり、「前記三次元形状の計測は、前記撮像素子に結像させるための結像レンズと前記撮像素子の撮像面の距離を一定とし、前記ビームスプリッタと前記測定対象物との距離を変化させるように掃引し、前記測定対象物の計測を行う」ものであり、
「倍率の異なる複数の干渉対物レンズ」を有しており、「合焦調整」は「干渉対物レンズを切り替えた際の合焦調整」であるのに対して、
甲1発明においては、
部品表面102の輪郭を測定するためには、OPD走査ステージ134は、基準ミラー132を基準レンズ130に対して並進させることによって、撮像光学素子(即ち、測定レンズ140および撮像レンズ160)の光軸上の位置に関して光学測定面152の位置を走査するものであり、
「倍率の異なる複数の干渉対物レンズ」を有しておらず、したがって、「合焦調整」は、「干渉対物レンズを切り替えた際の合焦調整」ではなく、「部品表面102の輪郭を測定する」際の合焦調整であり、光学測定面152を走査の間、合焦状態に維持するために、焦点走査ステージ170がカメラ164の位置を走査するものである点。
(3) 当審の判断
前記相違点について検討する。
ア 甲1発明の合焦調整は、「部品表面102の輪郭を測定する」際の合焦調整であり、輪郭を測定する際には、「OPD走査ステージ134は、基準ミラー132を基準レンズ130に対して並進させることによって、撮像光学素子(即ち、測定レンズ140および撮像レンズ160)の光軸上の位置に関して光学測定面152の位置を走査する」構成となっているところ、甲1発明において、部品表面102の輪郭の測定が、基準ミラー132のビーム・スプリッタ120からの距離を固定するとともに、カメラ164についても固定した状態で行うようにし、前記ビーム・スプリッタ120と前記部品表面102の距離を変化させるように掃引することで前記部品表面102の測定を行うものとすると、前記カメラ164が固定されている以上、甲1発明において、部品表面102の輪郭を測定する際の合焦調整ができなくなるのであるから、甲1発明において前記相違点に係る構成とすることには、阻害要因があり、当業者であっても容易に想到し得たものではない。
イ したがって、本件発明は、甲1発明ではなく、当業者であっても甲1発明に基づいて容易に発明できたものではないので、本件発明に係る特許は、特許法29条1項、2項の規定に違反してされたものではない。
ウ また、特許異議申立人が提示した甲2号証から甲5号証を考慮しても、本件発明の進歩性を否定する事情は見当たらない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知で通知した取消理由及び特許異議申立書で申し立てられた特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項2~9は、前記第3のとおり、訂正により削除されたことにより、申立ての対象が存在しないものとなったため、請求項2~9に係る特許異議の申立てについては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700840