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特許異議申立

2023-701085

全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体、全固体リチウムイオン二次電池用電極、全固体リチウムイオン二次電池及び全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体の製造方法

審判番号
2023-701085
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-122844
登録番号
7256706
請求日
2023年10月11日
審決日
2024年07月17日
公報発行日
2024年10月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三洋化成工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
  • 【異議申立人】平田 武信
審判長/審判官
  • 審判長 篠原 功一
  • 審判官 畑中 博幸
  • 審判官 須原 宏光
分類
P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項
データ出所
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特許第7256706号発明「全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体、全固体リチウムイオン二次電池用電極、全固体リチウムイオン二次電池及び全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7256706号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正することを認める。 特許第7256706号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 理 由 第1 手続の経緯 特許第7256706号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、令和元年7月1日(優先権主張 平成30年7月18日、日本国)に出願され、令和5年4月4日にその特許権の設定登録がされ、令和5年4月12日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和5年10月11日 :特許異議申立人平田 武信により請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立て 令和6年 1月17日付け:取消理由通知 令和6年 3月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 なお、令和6年4月1日付けの通知書で、特許異議申立人に対して期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人からは応答がなされなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和6年3月18日の訂正請求の趣旨は、特許7256706号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1ないし4について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。 (1)訂正事項1 訂正前の特許請求の請求項1に、「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成型体であり、」と記載されているのを、「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を集電体上に配置し、圧縮成形して得られる成型体であり、」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2及び3も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 訂正前の特許請求の請求項4に、「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物とリチウム塩とを含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形する工程を含み、」と記載されているのを、「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物とリチウム塩とを含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を集電体上に配置し、圧縮成形する工程を含み、」と訂正する。 2 訂正要件についての判断 (1)一群の請求項について 本件訂正前の請求項2ないし3が訂正の対象となる請求項1を引用しているものであるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項1ないし3に対応する訂正後の請求項1ないし3も一群の請求項である。 したがって、訂正前の請求項1ないし3に対応する訂正後の請求項1ないし3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について (ア)訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1における「混合物」について、「溶剤を含まない」との限定を追加し、同請求項1における「成型体」について、「混合物を集電体上に配置し、圧縮成形して得られる」との限定を追加したものである。 してみると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである (イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正前の請求項1に記載された「混合物」に関し、本件特許明細書の段落【0027】に「本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体は、・・・、電池の異常時信頼性の観点から、混合物が溶剤を含まない混合物の成形体であることが好ましい。すなわち、本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体は、・・・、溶剤を含まない混合物の成形体であることが好ましい。・・・。全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体が溶剤を含まない混合物の成形体であると、溶剤の揮発に伴うひび割れの発生が起こりにくくなり好ましい。」と記載されている。 また、訂正前の請求項1に記載された「成型体」に関し、本件特許明細書の段落【0036】に「本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極は、・・・集電体の上で高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形・・・で得ることができる。」と、同段落【0047】に「集電体上に混合物を配置して圧縮成形を行うことにより、集電体上で電極活物質成形体が得られる。」とそれぞれ記載されている。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 イ 訂正事項2 (ア)訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項4における「圧縮成形する工程」について、「混合物を集電体上に配置」するとの限定を追加したものである。 してみると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである (イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正前の請求項4における「圧縮成形する工程」に関し、本件特許明細書の段落【0036】に「集電体に全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体を積層する方法及び集電体の上で高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形する方法」と、同段落【0047】に「圧縮成形工程は、集電体上で行ってもよい。」と、それぞれ記載されている。 したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3)独立特許要件について 上記(2)のア、イで述べたように、訂正事項1、2は「特許請求の範囲の減縮」を目的とするところ、本件においては、全請求項について特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項1ないし4に係る訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小活 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 特許7256706号の請求項1ないし4の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、それぞれ、令和6年3月18日の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、下線は訂正箇所を表す。 「【請求項1】 ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を集電体上に配置し、圧縮成形して得られる成型体であり、 前記リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、 前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体。 【請求項2】 請求項1に記載の電極活物質成形体と樹脂集電体とを含む全固体リチウムイオン二次電池用電極。 【請求項3】 請求項1に記載の電極活物質成形体を含む全固体リチウムイオン二次電池。 【請求項4】 ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物とリチウム塩とを含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を集電体上に配置し、圧縮成形する工程を含み、 前記リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、 前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体の製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 令和6年1月17日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由1(新規性) 請求項1、3、4に係る発明は、下記引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、3、4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、請求項1に係る発明は、下記引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)取消理由2(進歩性) 請求項2に係る発明は、下記引用文献1に記載された発明又は引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 また、請求項3に係る発明は、下記引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)取消理由3(サポート要件) ア 本件特許明細書の段落【0003】,【0005】によれば、本件発明は、特許文献1(特開2013-201062号公報)に記載された、活物質の粉体とポリマー電解質の粉体との混合物を含む有機溶媒を集電体に塗布、乾燥して正極、負極の集電体上に活物質層を形成する工程を含む全固体リチウムイオン二次電池の製造方法のように、スラリーから溶媒を乾燥留去して製造する方法は、厚さを均一に保つことが難しく、また乾燥時に活物質層の一部に亀裂が発生する場合があるという課題を解決するために成されたものである。 イ ここで、本件特許明細書の段落【0052】、同段落【0055】、同段落【0059】によれば、比較例1の「電極活物質層」と実施例1の「電極活物質成形体」の構成材料及び各材料の重量は同一である(高分子固体電解質:「製造例1で作成した高分子固体電解質(19重量部)」、電極活物質:「ハードカーボン負極材(60重量部)」、導電助剤:「カーボンナノファイバー(1重量部)」)。 そして、比較例1の「電極活物質層」と実施例1の「電極活物質成形体」は、「リチウム塩」の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」の重量に基づく重量割合、及び、「製造例1で作製した高分子固体電解質」の「製造例1で作製した高分子固体電解質」と「電極活物質」との合計重量に基づく重量割合についても共に同一である。 また、比較例1は、高分子固体電解質、ハードカーボン負極材、カーボンナノファイバー及び超脱水エタノールを混合して分散液を作成し、分散液を銅箔上に塗布し、次いで乾燥することでエタノールを乾燥留去して高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物からなる電極活物質層(厚さ213μm)を集電体上に有する電極を作成しているところ、比較例1の混合物は、厚さ213μmである「電極活物質」の「層」を形成しており、実施例1の電極とは構成上格別な差はないことから、比較例1の「電極活物質層」も「成型体」と解される。 してみると、「表面には微細なひび割れがあり、それに伴う表面の凹凸が確認できた」比較例1の「電極活物質層」は、本件発明1の発明特定事項を全て備えているといえ、本件発明1は、上記アで述べた課題を解決できないものも包含するといえる。 ウ さらに、本件特許明細書の段落【0041】、同段落【0046】、同段落【0055】によれば、高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形することにより、電極活物質層にひび割れなく平滑な表面を有することができるといえる。 ここで、本件発明1では、「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成型体」と特定されているものの、上記イで述べたように、比較例1の「電極活物質層」も「成形体」と解されることから、該「成型体」が溶剤を含まない混合物を圧縮成形したものとは特定されていない。 してみれば、本件発明1には、上記アで述べた課題を解決するための構成が記載されているとはいえない。また、本件発明2、本件発明3も同様である。 したがって、請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 記 引用文献1:特開2011-3450号公報(甲第1号証) 引用文献2:特表2013-504846号公報(甲第2号証) 2 引用文献、引用発明 (1)引用文献1について ア 取消理由通知において引用した引用文献1(特開2011-3450号公報(甲第1号証))には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した 「【0020】 (実施形態1) 以下、本発明の一実施形態の全固体型ポリマー電池を、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態の全固体型ポリマー電池の概略縦断面図である。 図1に示すように、全固体型ポリマー電池21(リチウム電池)は、正極層1、負極層3、および正極層1と負極層3との間に配される固体電解質層2からなる発電要素を備え、発電要素はラミネート外装体4内に収納されている。正極層1は、正極集電層5および正極集電層5の片面に配された正極活物質層6の積層体からなる。負極層3は、負極集電層7および負極集電層7の片面に配された負極活物質層8の積層体からなる。正極層1および負極層3は、正極活物質層6と負極活物質層8とが対向するように配され、正極活物質層6と負極活物質層8との間に固体電解質層2が配されている。 【0021】 正極活物質層6は、たとえば、厚み1~30μmであり、正極活物質および第1のドライポリマー電解質を含む。 固体電解質層2は、第2のドライポリマー電解質の膜(たとえば、厚み1~500μm)からなる。 第1および第2のドライポリマー電解質は、リチウムを含む支持塩および電子供与性元素を含むポリマー鎖を有するマトリックスポリマーを含む。 固体電解質層内におけるマトリックスポリマー中の電子供与性元素に対する支持塩中のリチウムのモル比Aは、正極活物質層内におけるマトリックスポリマー中の電子供与性元素に対する支持塩中のリチウムのモル比Bよりも大きい。すなわち、モル比A/モル比B>1である。 正極活物質とドライポリマー電解質との間におけるイオンの授受をスムーズに行うためには、モル比A/モル比Bは1~10であるのが好ましい。 モル比Aは0.05~0.125であり、モル比Bは0.005~0.05であるのが好ましい。固体電解質層2および正極活物質層6内でのリチウムイオンの移動がよりスムーズになり、正極の理論容量に近い高い電池容量が得られる。低温環境下でのドライポリマー電解質の結晶化によるイオン伝導性の低下が大幅に抑制されるため、低温保存後の電池容量の低下が大幅に抑制される。 優れた大電流放電特性を得るためには、モル比Aは0.05~0.10であり、モル比Bは0.01~0.05であるのがより好ましい。」 「【0035】 マトリックスポリマーの構造としては、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。マトリックスポリマーは、たとえば、電子供与性元素を含む1種類の単量体で構成される。また、マトリックスポリマーは、たとえば、2種類以上の単量体を組み合わせた共重合体で構成され、少なくとも1種類の単量体が電子供与性元素を含む。共重合体は、グラフト共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよく、架橋構造を含んでもよい。グラフト共重合体等の主鎖および側鎖を有するマトリックスポリマーの場合、たとえば、その主鎖および側鎖の少なくとも一方が電子供与性を有する元素を含む。 電子供与性を有する元素は特に制限されない。好ましくは、電子供与性を有する元素は、エーテル酸素(エーテル基中の酸素)およびエステル酸素(エステル基中の酸素)のような電子供与性を有する酸素である。また、酸素以外の電子供与性を有する元素としては、たとえば、窒素が挙げられる。窒素を含有するマトリックスポリマーとしては、たとえば、ポリイミド系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマーが挙げられる。 マトリックスポリマーの具体例としては、たとえば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、エチレンオキサイド単位を有するポリマー、プロピレンオキサイド単位を有するポリマー、ポリカーボネートなどが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。マトリックスポリマーの分子量は、たとえば、1000~10000000である。マトリックスポリマーは、ポリエチレンオキサイドが好ましい。ポリエチレンオキサイドの分子量は、1000~10000000が好ましい。」 「【0060】 (4)正極層の作製 以下の手順で、上記で得られた正極活物質4を用いて正極を作製した。なお、以下の各操作は、全て-50℃以下に露点管理されたドライエア雰囲気で実施した。 ポリエチレンオキサイド中の酸素に対する支持塩中のリチウムのモル比Bが0.003~0.15の範囲内となるように、ポリエチレンオキサイド(粘度平均分子量100000、Sigma-Aldrich社製)のアセトニトリル溶液に、支持塩としてLiN(CF3SO2)2を添加し、ドライポリマー電解質溶液を得た。 上記で得られた正極活物質4、アセチレンブラック(導電材)、および上記で得られたドライポリマー電解質溶液を、正極活物質:アセチレンブラック:ポリエチレンオキサイド=80:10:10の重量比となるように加えて、乳鉢にて混練した。得られた混練物に、正極活物質:NMP=1:2の重量比となるようにNMPを加え、さらに乳鉢にて混練し、正極合剤ペーストを得た。 【0061】 得られた正極合剤ペーストを、アルミニウム箔(厚み15μm)からなる正極集電層の片面に塗布し、85℃で5時間真空乾燥し、正極活物質層を形成し、正極層を得た。真空度は1.0×10-3mmHgとした。この正極層をタブ付きの12mm角の四角形に切り抜いた後、タブ表面の正極活物質層を剥離し、残りの正極活物質層を油圧プレスで圧延し、正極活物質層の厚み20μmの正極層を得た。 【0062】 (5)全固体型ポリマー電池の組立 以下の手順で、図1の全固体型ポリマー電池21を作製した。図3は、図1のラミネート型の全固体型ポリマー電池21の電極群の厚み方向からみた正面図である。 上記で得られた正極層1および負極層3および固体電解質層2の積層体を、固体電解質層2を介して正極活物質層5と負極活物質層8とが対向するように積み重ねて電極群11を得た。この電極群11を金属フィルムおよび樹脂フィルムの積層体からなる外装体4内に収納し、正極層1に接続された正極リード12および負極層3に接続された負極リード13の一部を外装部4の開口から外部に導出した。その後、外装体4の開口を加熱により融着させて封止し、全固体型ポリマー電池21を作製した。 ・・・。 【0065】 [図:0001415287000001.jpg] 【表3】 ・・・。 【0067】 固体電解質層中のモル比Aが正極活物質層中のモル比Bよりも大きく、かつ固体電解質中のモル比Aが0.05~0.125であり、正極活物質層中のモル比Bが0.005~0.05である電池は、高容量および優れた低温保存特性を示すことがわかった。その理由は、固体電解質層内および正極活物質層内のドライポリマー電解質はリチウムイオン伝導性が高く、ドライポリマー電解質中のリチウム塩濃度がドライポリマー電解質の結晶化を抑制することができる領域であり、その結果として正極活物質層内部および固体電解質内部でのイオンの移動がスムーズになり、かつ正極活物質層と固体電解質層との間でのイオンの授受が容易に進行するためであると考えられる。 【0068】 [正極活物質の細孔容積の検討] 正極活物質の細孔容積を変えた場合について検討した。 正極活物質に表2の正極活物質1~8を用いた。固体電解質中のモル比Aを0.05、および正極活物質層中のモル比Bを0.03とした。これら以外は、上記と同様に全固体型ポリマー電池1~8を作製した。 正極活物質が二酸化マンガンである電池1~6については、上記と同様の方法により大電流放電特性および低温保存特性を評価した。また、下記式により、理論容量(正極理論容量)に対する電池容量の割合(以下、電池容量/理論容量)を求めた。 理論容量に対する電池容量の割合(%)=(電池容量/理論容量)×100 なお、MnO2の理論容量は、二酸化マンガンの理論反応を1電子反応と仮定して、308mAh/gとした。 【0069】 また、正極活物質7および8を用いた二次電池7および8については、以下の評価を実施した。 [二次電池の評価] (8)大電流放電特性の評価 30℃の環境下にて、電池7および8を、それぞれ下記条件(a)および(b)で充放電し、正極活物質の単位重量あたりの放電容量(mAh/g)を、電池容量として求めた。なお、下記の条件(a)および(b)の電流密度は、正極層の厚み方向の面における単位面積あたりの電流値を指す。」 イ 前記アの記載事項より、次のことがいえる。 (ア)段落【0020】、【0021】によれば、引用文献1には全固体型ポリマー電池用正極活物質層が記載されている。 そして、段落【0067】の「固体電解質層内および正極活物質層内のドライポリマー電解質はリチウムイオン伝導性が高く、・・・、その結果として正極活物質層内部および固体電解質内部でのイオンの移動がスムーズになり、かつ正極活物質層と固体電解質層との間でのイオンの授受が容易に進行する」、段落【0068】の「正極活物質に表2の正極活物質1~8を用いた。固体電解質中のモル比Aを0.05、および正極活物質層中のモル比Bを0.03とした。これら以外は、上記と同様に全固体型ポリマー電池1~8を作製した。」、【0069】の「また、正極活物質7および8を用いた二次電池7および8については、以下の評価を実施した。・・・。30℃の環境下にて、電池7および8を、それぞれ・・・充放電し」との記載から、全固体型ポリマー電池は、リチウムイオン二次電池であるといえる。 よって、引用文献1には、リチウムイオン二次電池である全固体型ポリマー電池用正極活物質層が記載されているといえる。 (イ)【0060】、【0061】の記載及び【0065】の表3の「電池27A」、「電池28A」(項目「正極活物質層中のモル比B」を参照)によれば、正極活物質層は、ポリエチレンオキサイド中の酸素に対する支持塩中のリチウムのモル比Bが0.03又は0.05となるように、ポリエチレンオキサイド(粘度平均分子量100000、Sigma-Aldrich社製)のアセトニトリル溶液に、支持塩としてLiN(CF3SO2)2を添加し、ドライポリマー電解質溶液を得て、正極活物質、アセチレンブラック(導電材)、および上記ドライポリマー電解質溶液を、正極活物質:アセチレンブラック:ポリエチレンオキサイド=80:10:10の重量比となるように加えて混練し、NMPを加え正極合剤ペーストを得て、正極集電層の片面に塗布し、85℃で5時間真空乾燥して形成し、油圧プレスで圧延することにより得られる。 そして、段落【0035】によれば、ポリエチレンオキサイドはマトリックスポリマーである。 ウ よって、上記イによれば、段落【0065】の表3の「電池27A」及び「電池28A」に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。 「リチウムイオン二次電池である全固体型ポリマー電池用正極活物質層であって、 正極活物質層は、マトリックスポリマーであるポリエチレンオキサイド中の酸素に対する支持塩中のリチウムのモル比Bが0.03又は0.05となるように、ポリエチレンオキサイド(粘度平均分子量100000、Sigma-Aldrich社製)のアセトニトリル溶液に、支持塩としてLiN(CF3SO2)2を添加し、ドライポリマー電解質溶液を得て、正極活物質、アセチレンブラック(導電材)、および上記ドライポリマー電解質溶液を、正極活物質:アセチレンブラック:ポリエチレンオキサイド=80:10:10の重量比となるように加えて混練し、NMPを加え正極合剤ペーストを得て、正極集電層の片面に塗布し、85℃で5時間真空乾燥して形成され、油圧プレスで圧延することにより得られる、 全固体型ポリマー電池用正極活物質層。」 エ また、段落【0060】ないし【0062】によれば、引用文献1には、全固体型ポリマー電池用正極活物質層の製造方法が記載されており、上記イ(ア)を踏まえれば、全固体型ポリマー電池はリチウムイオン二次電池である。 よって、上記イ(イ)も踏まえれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1a」という。)も記載されている。 「リチウムイオン二次電池である全固体型ポリマー電池用正極活物質層の製造方法であって、 正極活物質層は、マトリックスポリマーであるポリエチレンオキサイド中の酸素に対する支持塩中のリチウムのモル比Bが0.03又は0.05となるように、ポリエチレンオキサイド(粘度平均分子量100000、Sigma-Aldrich社製)のアセトニトリル溶液に、支持塩としてLiN(CF3SO2)2を添加し、ドライポリマー電解質溶液を得て、正極活物質、アセチレンブラック(導電材)、および上記ドライポリマー電解質溶液を、正極活物質:アセチレンブラック:ポリエチレンオキサイド=80:10:10の重量比となるように加えて混練し、NMPを加え正極合剤ペーストを得て、正極集電層の片面に塗布し、85℃で5時間真空乾燥して正極活物質層を形成し、油圧プレスで圧延することにより得られる工程を含む、 全固体型ポリマー電池用正極活物質層の製造方法。」 (2)引用文献2について ア 取消理由通知において引用した引用文献2(特表2013-504846号公報(甲第2号証))には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 「【請求項1】 以下の成分: -鉄-リン酸塩系材料から選択される少なくとも1種類の活性正極材料と; -リチウム塩の存在下でイオンを伝導する少なくとも1種類の水溶性ポリマーと; -場合により、導電性を付与する少なくとも1種類の材料と、 を含む複合材料からなる正極の製造方法であって、 押出成形された複合材料を得るために、押出成形によって、前記複合材料の成分を混合する少なくとも1つの工程と、ダイから押出成形して前記複合材料を形成する少なくとも1つの工程と、前記押出成形した複合材料を圧延またはカレンダー加工することによって、集電体上の正極膜の形態にする少なくとも1つの工程と、前記集電体に塗布された前記正極膜を乾燥させる少なくとも1つの工程とを含み、 前記押出成形工程が、コニーダー、二軸スクリュー押出機、またはマルチスクリュー押出機によって、水性溶媒であって、脱塩水または蒸留水、あるいは脱塩水または蒸留水と、前記水性溶媒の全重量の最大30重量%の少なくとも1種類の水混和性溶媒との混合物からなる水性溶媒(前記水性溶媒は、前記複合材料を形成する前記成分の全重量の約3~25重量%である)の存在下、20~95℃の温度で行われることを特徴とする、製造方法。 ・・・・。 【請求項20】 前記水溶性ポリマーが、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシブチレンポリマー、コポリマー、およびターポリマーから選択されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。」 「【0002】 本発明は、リチウム金属ポリマー(LMP)電池を生産する分野に関する。この種の電池は、n回巻き上げられた一連の薄膜(以下の構成のロール:電解質/カソード/集電体/カソード/電解質/リチウム)、またはn枚の薄膜の多層(上記構成の切断し重ねられたもの、またはn層の多層)の形態をとる。この単一の積層/複合構造は、約100ミクロンの厚さを有する。これは、以下の4つの機能性シートを含む:i)一般にリチウム金属またはリチウム合金箔からなる負極(アノード)、ii)ポリマー(一般にポリオキシエチレン(POE))およびリチウム塩から構成される電解質、iii)金属酸化物(たとえばV2O5、LiV3O8、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、およびLiNi0.5Mn0.5O2など)を主成分とする、あるいは、たとえばLiFePO4などのLiMPO4型リン酸塩(式中、Mは、Fe、Mn、Co、Ni、およびTiから選択される金属陽イオン、またはこれらの陽イオンの組み合わせを表す)を主成分とする、炭素およびポリマー上の活性電極材料から構成される正極(カソード)、ならびに最後にiv)一般に金属箔からなり電気的接続を可能にする集電体。 ・・・。 【0004】 固体リチウム(LMP)電池用の正極材料の薄膜を製造する別のプロセスでは、溶媒和性ポリマーおよびリチウム塩からなる電解質を取り込む混合物が使用される。その混合物は、有機溶媒中で混合された粒子形態の活性電極材料、導電性材料、溶媒和性ポリマー、およびリチウム塩を含み、均一な電極ペーストを形成する。次にこのペーストを集電体に塗布して膜または薄膜を形成し、次に加熱することによって有機溶媒を蒸発させて、電極を形成する。この様式で得られる正極は、溶媒が蒸発する前に電解質が最初に電極材料中に導入され、活性電極材料の粒子間の空隙が満たされる限りは、低い多孔度を有する。次に、この正極膜は、固体リチウム電池を形成するために、固体イオン伝導性セパレーター(ポリマー電解質)および対負極と組み合わされる。」 「【0038】 活性電極材料は、好ましくは被覆されていない粒子、または炭素質被覆を含む粒子の形態のLiFePO4である。後者の場合、LiFePO4粒子の表面上に炭素が存在するため、複合材料の組成物の成分の混合物に導電性を付与する材料を加える必要はないか、あるいはより少量が必要となる。 ・・・。 【0040】 本発明により場合により使用される水溶性ポリマーは、好ましくは粉末、顆粒、または水性分散液の形態をとる。好ましくは、ポリエーテル、たとえばポリオキシエチレン(POE)、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシブチレンポリマー、コポリマー、およびターポリマーから選択される。 ・・・。 【0042】 導電性を付与する材料は、場合により炭素であり、好ましくは、カーボンブラック、たとえばアセチレンブラック、または高比表面積カーボンブラック(AkzoNobelよりKetjenblack(登録商標)EC-600JDの名称で販売される製品など)、カーボンナノチューブ、黒鉛、またはこれらの材料の混合物から選択される。カーボンブラックまたは黒鉛の水性分散液、たとえばAchesonよりElectrodag(登録商標)EB-012の商品名で販売される製品であってもよい。 ・・・。 【0044】 電気化学的に機能するため、正極複合材料は、イオン伝導特性を付与する少なくとも1種類の材料を含有する必要がある。この材料は、特に、LiAlCl4、Li2Al2Cl6O、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiSbF6、LiSbCl6、Li2TiCl6、Li2SeCl6、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiBOB、LiBETI、LiFSI、およびLiTFSIから選択されるリチウム塩であってよい。」 「【0057】 本発明の別の主題は、上記規定の正極のリチウム電池、特にLMP電池の製造への使用である。 【0058】 最後に、本発明の別の主題は、少なくとも1つの正極、1つの負極、電解質、および集電体を含み、正極が前述の規定のような電極であることを特徴とするリチウム電池である。 【実施例】 【0059】 本発明を以下の例示的実施形態によって例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0060】 例1:本発明のプロセスによる正極の作製 ・・・。 【0063】 第一工業製薬(DKS)よりHQSEBの商品名で販売される顆粒の形態のポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマーをフィーダー(2a)中に導入し、AkzoNobelよりKetjen Black EC-600 JDの商品名で販売される高比表面積炭素粒子をフィーダー(2b)中に導入し、LiFePO4粒子をサイドフィーダーに接続されたフィーダー(2c)中に導入することによって、正極を作製した。押出機中の混合後および乾燥前に、16.4重量%のポリマー、1.3重量%の炭素粒子、および65.1重量%のLiFePO4を含有する押出成形複合材料が得られるように、重量フィーダーの供給速度を調節した。フィーダー(2a)、(2b)、および(2c)の内容物を、連続して二軸スクリュー(1aおよび1b)中に導入した。すべての成分を押出機(1)の二軸スクリュー中で混合した後に10重量%の水を含有する押出成形複合材料を得るのに十分な量の30重量%のLiTFSIを含有する脱塩水を、液体注入ポンプ(3)によって二軸スクリュー(1c)中に導入した。全乾燥供給速度を10kg/hに調節し、すなわち注入した水の重量を考慮すれば約11.1kg/hの供給速度に調節した。押出成形は80℃の温度で行いながら、二軸スクリューは約220rpmで回転させた。押出成形によって得られた複合材料は、次に、再処理一軸スクリュー(4)によって25rpmの速度および80℃の温度で再処理し、フラットダイ(5)に送出した後、最終の圧延工程(6)に進め、そこで、30重量%のアセチレンブラックおよび70重量%のポリフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロ-プロピレン(PVDF-HFP)で構成される厚さが2μmの導電性保護ラッカーが両面に被覆された厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体上に、押出成形した混合物を、4.5m/分の圧延速度で圧延した。次に、有効長が6メートルであり乾燥空気(露点-30℃)が約120m3/hの流速で130℃の温度で向流で流される強制対流乾燥オーブン(7)に通すことによって、水を除去するために、集電体に塗布された押出成形材料の膜をインラインで乾燥させた。 【0064】 このようにして、集電体上に直接堆積された正極が得られ、前記電極は、厚さが62±2μm、多孔度が1.5%未満、幅が250±1mm、および含水率が600ppm未満である複合材料薄膜の形態であった。」 「【0069】 例2:本発明のプロセスによる正極の作製 【0070】 この実施例では、100kg/hの供給速度において、多数の重量フィーダーを備え、その1つがサイドフィーダーに接続された共回転二軸スクリュー押出機、液体注入ポンプ、フラットダイに連結した再処理一軸スクリュー押出機、電極を集電体上に圧延するためのユニット、および乾燥トンネルを使用して、本発明によるプロセスを用いて正極を製造した。 【0071】 使用した配列は、実施例1の配列と類似のものである。 【0072】 第一工業製薬(DKS)よりHQSEBの商品名で販売される顆粒の形態のポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマーをフィーダー(2a)中に導入し、AkzoNobelよりKetjen Black EC-600 JDの商品名で販売される高比表面積炭素粒子をフィーダー(2b)中に導入し、LiFePO4粒子をサイドフィーダーに接続されたフィーダー(2c)中に導入することによって、正極を作製した。押出機中の混合後および乾燥前に、16.4重量%のポリマー、1.3重量%の炭素粒子、および65.1重量%のLiFePO4を含有する押出成形複合材料が得られるように、重量フィーダーの供給速度を調節した。フィーダー(2a)、(2b)の内容物を、重力によって連続して二軸スクリュー押出機(1aおよび1b)中に導入した。フィーダー2cの内容物は、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー中に導入した。すべての成分を押出機(1)の二軸スクリュー中で混合した後に8~16重量%の水を含有する押出成形複合材料を得るのに十分な量の15~40重量%のLiTFSIを含有する脱塩水も、液体注入ポンプ(3)によって二軸スクリュー(1c)中に導入した。全乾燥供給速度を100kg/hに調節し、すなわち注入した水の重量を考慮すれば約108~119kg/hの供給速度に調節した。押出成形を65℃の温度で行いながら、二軸スクリューは約180rpmで回転させた。押出成形によって得られた複合材料は、次に、再処理一軸スクリュー押出機(4)によって24rpmの速度および65℃の温度で再処理し、フラットダイ(5)に送出した後、最終の圧延工程(6)に進め、そこで、厚さが2μmの導電性保護ラッカー(このラッカーは前述の実施例1に記載のものと同一である)が両面に被覆された厚さ12μmのアルミニウム箔からなる集電体上に、押出成形した混合物を、35m/minの圧延速度で圧延した。次に、30~50mの間の長さを有し、30~60m/sの速度で空気を吹き出す上部および下部ノズルを有し、ゾーンの位置に応じて60~180℃の温度が使用される水平フロート乾燥トンネル(7)に通すことによって、水を除去するために、集電体に塗布された押出成形材料の膜を乾燥させた。 【0073】 このようにして、集電体上に直接堆積された正極が得られ、前記電極は、厚さが52±2μm(Mitutoyo(登録商標)プロフィロメータ-を使用して実験室でサンプルを測定)、多孔度が2.5%未満であり、幅が380±1.5mmであり、含水率が600ppm未満である複合材料薄膜の形態であった。 ・・・。 【0078】 例3:リチウム電池の作製 【0079】 この実施例では: -前述の実施例2で生産した正極; -仏国特許出願第2 881 275号明細書に記載の二重層膜、すなわち重量基準で38%のポリオキシエチレン(POE)、53%のPVDF/HFP、9%のLiTFSIを含有しカソードと接触する厚さ10μmの第1の膜と、70%のPOE、2.2%のPVDF/HFP、17.8%のLiTFSi、および10%のMgOを含有しリチウムと接触する厚さ10μmの第2の膜とからなる膜からなる電解質; -負極としての厚さ70μmのリチウム膜;および -アルミニウム集電体 を有するリチウム電池を製造した。 ・・・。 【0081】 3.6V~2.5Vの間の電圧を端子に印加することによって、電池をC/2の放電計画およびC/4の充電計画で動作させた。」 イ 前記アの記載事項より、次のことがいえる。 (ア)段落【0060】、【0063】及び【0064】に記載された実施例1に着目すれば、引用文献2には、正極用の混合物が記載されている。 また、段落【0002】に「本発明は、リチウム金属ポリマー(LMP)電池を生産する分野に関する。この種の電池は、・・・、以下の4つの機能性シートを含む:i)一般にリチウム金属またはリチウム合金箔からなる負極(アノード)、ii)ポリマー(一般にポリオキシエチレン(POE))およびリチウム塩から構成される電解質、iii)金属酸化物・・・を主成分とする、あるいは、・・・、炭素およびポリマー上の活性電極材料から構成される正極(カソード)、ならびに最後にiv)一般に金属箔からなり電気的接続を可能にする集電体。」、段落【0004】に「固体リチウム(LMP)電池用の正極材料の薄膜を製造する別のプロセスでは、溶媒和性ポリマーおよびリチウム塩からなる電解質を取り込む混合物が使用される。・・・。次に、この正極膜は、固体リチウム電池を形成するために、固体イオン伝導性セパレーター(ポリマー電解質)および対負極と組み合わされる。」、段落【0057】に「本発明の別の主題は、上記規定の正極のリチウム電池、特にLMP電池の製造への使用である。」、とそれぞれ記載されており、また、段落【0069】ないし【0073】、【0078】、【0081】には、実施例2の正極を、リチウム二次電池として用いることが記載されている。 してみると、上記実施例1の正極も、固体リチウム二次電池用であるといえる。 (イ)段落【0063】、【0064】によれば、「混合物」は、ポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマーをフィーダー(2a)中に導入し、高比表面積炭素粒子をフィーダー(2b)中に導入し、LiFePO4粒子をサイドフィーダーに接続されたフィーダー(2c)中に導入し、16.4重量%のポリマー、1.3重量%の炭素粒子、および65.1重量%のLiFePO4を含有する押出成形複合材料が得られるように、重量フィーダーの供給速度を調節し、フィーダー(2a)、(2b)、および(2c)の内容物を混合した後に、10重量%の水を含有する押出成形複合材料を得るのに十分な量の30重量%のLiTFSIを含有する脱塩水を、液体注入ポンプ(3)によって導入し、押出成形を80℃の温度で行い、アルミニウム箔からなる集電体上に押出成形した混合物を圧延し、強制対流乾燥オーブンに通すことによって、水を除去するために膜を乾燥させて得られる。 また、【請求項1】、【請求項20】、段落【0010】及び【0040】によれば、「ポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマー」はリチウム塩の存在下でイオンを伝導するものであり、段落【0042】によれば、「高比表面積炭素粒子」は導電性を付与する材料であり、段落【0038】によれば、LiFePO4粒子は活性電極材料であり、段落【0044】によれば、「LiTFSI」はイオン伝導特性を付与するリチウム塩である。 ウ よって、上記イによれば、実施例1に着目すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。 「固体リチウム二次電池の正極用混合物であって、 リチウム塩の存在下でイオンを伝導するポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマーをフィーダー(2a)中に導入し、導電性を付与する材料である高比表面積炭素粒子をフィーダー(2b)中に導入し、活性電極材料であるLiFePO4粒子をサイドフィーダーに接続されたフィーダー(2c)中に導入し、16.4重量%のポリマー、1.3重量%の炭素粒子、および65.1重量%のLiFePO4を含有する押出成形複合材料が得られるように、重量フィーダーの供給速度を調節し、フィーダー(2a)、(2b)、および(2c)の内容物を混合した後に、10重量%の水を含有する押出成形複合材料を得るのに十分な量の30重量%のイオン伝導特性を付与するリチウム塩であるLiTFSIを含有する脱塩水を、液体注入ポンプ(3)によって導入し、押出成形を80℃の温度で行い、アルミニウム箔からなる集電体上に押出成形した混合物を圧延し、強制対流乾燥オーブンに通すことによって、水を除去するために膜を乾燥させて得られる、 正極用混合物。」 3 取消理由についての当審の判断 (1)取消理由1(新規性)について ア 引用文献1を主引用例とした場合 (ア)本件発明1について 本件発明1と引用発明1を対比する。 a 本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」に関し、本件特許明細書の段落【0010】に「本発明の全固体リチウム二次電池用電極活物質成形体に含まれるポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物は、ポリオキシエチレン鎖を有していれば特に制限はなく、ポリエチレンオキサイド(PEO、PEG及びポリエチレングリコールとも言うことがある)、・・・等を用いることができる。」と記載されているから、本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」は「ポリエチレンオキサイド」を含む。してみれば、引用発明1の「マトリックスポリマー」である「ポリエチレンオキサイド」は本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」に含まれる。 また、引用発明1の「支持塩」である「LiN(CF3SO2)2」はリチウム塩といえ、引用発明1の「マトリックスポリマーであるポリエチレンオキサイド」と「支持塩」である「LiN(CF3SO2)2」とを含む「ドライポリマー電解質」は本件発明1の「高分子固体電解質」に相当する。 そして、引用発明1の「正極活物資」及び「アセチレンブラック(導電材)」は、本件発明1の「電極活物質」及び「導電助剤」に相当する。 さらに、引用発明1の「正極合剤ペースト」は、「ポリエチレンオキサイド(粘度平均分子量100000、Sigma-Aldrich社製)のアセトニトリル溶液に、支持塩としてLiN(CF3SO2)2を添加し、ドライポリマー電解質溶液を得」て「正極活物質、アセチレンブラック(導電材)」を「加えて混練し、NMPを加え」て得られることから、混合物といえる。また、引用発明1では、「正極活物質層」は、「正極合剤ペーストを」「正極集電層の片面に塗布し、」「乾燥して形成され、油圧プレスで圧延」されることから、引用発明1の「正極活物質層」は「成型」されたものといえる。 よって、引用発明1の「ポリエチレンオキサイドのアセトニトリル溶液に、支持塩としてLiN(CF3SO2)2を添加し、ドライポリマー電解質溶液を得」て「正極活物質、アセチレンブラック(導電材)」を「加えて混練し、NMPを加え」て得られた「正極合剤ペーストを」「正極集電層の片面に塗布」され「油圧プレスで圧延」される「正極活物質層」と本件発明1とは、「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物を集電体上に配置し、圧縮成形して得られる成型体」である点で共通する。 ただし、混合物に関し、本件発明1は「溶剤を含まない」のに対し、引用発明1は「アセトニトリル溶液」及び「NMP」を含む点で相違する。 b 本件発明1は「前記リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。 c 引用発明1の「リチウムイオン二次電池である全固体型ポリマー電池」は、本件発明1の「全固体リチウムイオン二次電池」に相当する。 そして、上記aを踏まえれば、引用発明1の「リチウムイオン二次電池である全固体型ポリマー電池用正極活物質層」は、本件発明1の「全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体」に相当する。 d よって、本件発明1と引用発明1とは、 「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物を集電体上に配置し、圧縮成形して得られる成型体である、 全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 混合物に関し、本件発明1は「溶剤を含まない」のに対し、引用発明1は「アセトニトリル溶液」及び「NMP」を含む点。 (相違点2) 本件発明1は、「リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。 してみると、本件発明1と引用発明1とは相違点1、2を有し、少なくとも、相違点1は実質的な相違ではないと判断し得る理由もないことから、本件発明1は引用文献1に記載された発明ではない。 (イ)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1に対する理由と同様な理由により、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明ではない。 (ウ)本件発明4について 本件発明4と引用発明1aを対比する。 a 本件発明4の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」に関し、本件特許明細書の段落【0010】に「本発明の全固体リチウム二次電池用電極活物質成形体に含まれるポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物は、ポリオキシエチレン鎖を有していれば特に制限はなく、ポリエチレンオキサイド(PEO、PEG及びポリエチレングリコールとも言うことがある)、・・・等を用いることができる。」と記載されているから、本件発明4の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」は「ポリエチレンオキサイド」を含む。してみれば、引用発明1aの「マトリックスポリマーであるポリエチレンオキサイド」は本件発明4の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」に含まれる。 また、引用発明1aの「支持塩」である「LiN(CF3SO2)2」はリチウム塩といえ、引用発明1aの「マトリックスポリマーであるポリエチレンオキサイド」と「支持塩」である「LiN(CF3SO2)2」とを含む「ドライポリマー電解質」は本件発明1の「高分子固体電解質」に相当する。 そして、引用発明1aの「正極活物資」及び「アセチレンブラック」は、本件発明1の「電極活物質」及び「導電助剤」に相当する。 さらに、引用発明1aの「正極合剤ペースト」は、「ポリエチレンオキサイド」「のアセトニトリル溶液に、支持塩としてLiN(CF3SO2)2を添加し、ドライポリマー電解質溶液を得」て「正極活物質、アセチレンブラック(導電材)」を「加えて混練し、NMPを加え」て得られることから、混合物といえる。 してみると、引用発明1aにおいて、「ポリエチレンオキサイド」「のアセトニトリル溶液に、支持塩としてLiN(CF3SO2)2を添加し、ドライポリマー電解質溶液を得」て「正極活物質、アセチレンブラック(導電材)」を「加えて混練し、NMPを加え」て得られる「正極合剤ペースト」を「正極集電層の片面に塗布し」「油圧プレスで圧延する」工程と本件発明4とは、「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物とリチウム塩とを含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物を集電体上に配置し、圧縮成形する工程」である点で共通する。 ただし、混合物に関し、本件発明4は「溶剤を含まない」のに対し、引用発明1aは「アセトニトリル溶液」及び「NMP」を含む点で相違する。 b 本件発明4は「前記リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、引用発明1aはその旨特定されていない点で相違する。 c 上記aも踏まえれば、引用発明1aの「リチウムイオン二次電池である全固体型ポリマー電池用正極活物質層の製造方法」は、本件発明4の「全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体の製造方法」に相当する。 d よって、本件発明4と引用発明1aとは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 (相違点3) 混合物に関し、本件発明4は「溶剤を含まない」のに対し、引用発明1aは「アセトニトリル溶液」及び「NMP」を含む点。 (相違点4) 本件発明4は、「リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、引用発明1aはその旨特定されていない点。 してみると、本件発明4と引用発明1aとは相違点3、4を有し、少なくとも、相違点3は実質的な相違ではないと判断し得る理由もないことから、本件発明4は引用文献1に記載された発明ではない。 (エ)小括 以上から、請求項1、3、4に係る発明は、引用文献1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、請求項1、3、4に係る特許は特許法第29条第1項に違反してされたものでない。 イ 引用文献2を主引用例とした場合 (ア)対比 本件発明1と引用発明2を対比する。 a 本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」に関し、本件特許明細書の段落【0010】に「本発明の全固体リチウム二次電池用電極活物質成形体に含まれるポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物は、ポリオキシエチレン鎖を有していれば特に制限はなく、ポリエチレンオキサイド(PEO、PEG及びポリエチレングリコールとも言うことがある)、・・・等を用いることができる。」と記載されているから、本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」は「ポリエチレンオキサイド」を含む。してみれば、引用発明2の「ポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマー」は本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」に含まれる。 また、引用発明2の「イオン伝導特性を付与するリチウム塩であるLiTFSI」は本件発明1の「リチウム塩」に相当し、引用発明2の「リチウム塩の存在下でイオンを伝導するポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマー」及び「LiTFSI」は電解質として機能するから、本件発明1の「高分子固体電解質」に相当する。 そして、引用発明2の「活性電極材料であるLiFePO4粒子」及び「導電性を付与する材料である高比表面積炭素粒子」は、本件発明1の「電極活物質」及び「導電助剤」に相当する。 さらに、引用発明2では、「ポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマー」、「導電性を付与する材料である高比表面積炭素粒子」、「活性電極材料であるLiFePO4粒子」及び「リチウム塩であるLiTFSIを含有する脱塩水」の「混合物」は、「集電体上に押出成形」され「圧延」された後、「乾燥」されるものであるから、「成型」されたものといえる。 してみると、引用発明2の「ポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマー」、「導電性を付与する材料である高比表面積炭素粒子」、「活性電極材料であるLiFePO4粒子」及び「リチウム塩であるLiTFSIを含有する脱塩水」を含み、「集電体上に押出成形」され「圧延」される「混合物」と本件発明1とは、「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物を集電体上に配置し、圧縮成形して得られる成型体」である点で共通する。 ただし、混合物に関し、本件発明1は「溶剤を含まない」のに対し、引用発明2は「脱塩水」を含む点で相違する。 b 本件発明1は「前記リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。 c 上記aも踏まえれば、引用発明2の「固体リチウム二次電池の正極用混合物」は、本件発明1の「全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体」に相当する。 d よって、本件発明1と引用発明2とは、 「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物を集電体上に配置し、圧縮成形して得られる成型体である、 全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点5) 混合物に関し、本件発明1は「溶剤を含まない」のに対し、引用発明2は「脱塩水」を含む点。 (相違点6) 本件発明1は、「リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 してみると、本件発明1と引用発明2とは相違点5、6を有し、少なくとも、相違点5は実質的な相違ではないと判断し得る理由はないことから、本件発明1は引用文献2に記載された発明ではない。 (イ)小括 以上から、請求項1に係る発明は、引用文献2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、請求項1に係る特許は特許法第29条第1項に違反してされたものでない。 (2)取消理由2(進歩性)について ア 引用文献1を主引用例とした場合 (ア)本件発明1について a 請求項2にかかる発明は、請求項1を引用するものであるから、事案に鑑みて本件発明1の進歩性について検討する。 上記「(1)ア(ア)d」で述べたように、本件発明1と引用発明1とは相違点1、2において相違するから、まず相違点1について検討する。 引用発明1の「正極活物質層」は、「ポリエチレンオキサイド」「のアセトニトリル溶液に、支持塩としてLiN(CF3SO2)2を添加し、ドライポリマー電解質溶液を得」て「正極活物質、アセチレンブラック(導電材)」を「加えて混練し、NMPを加え正極合剤ペーストを得て、正極集電層の片面に塗布し、85℃で5時間真空乾燥して」「油圧プレスで圧延することにより得られる」ものである。 b ここで、「正極活物質層」に関し、引用文献1の段落【0033】に「正極層の作製方法の一例を、以下に示す。正極活物質、導電材、ドライポリマー電解質、および有機溶媒を混合して、正極合剤ペーストを調製する。正極合剤ペーストを正極集電層の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて圧延する。このようにして、正極集電層の表面に正極活物質層を形成する。乾燥は、-50℃以下に露点管理された雰囲気中にて行われる。雰囲気としては、たとえば、真空、ドライエア、窒素、アルゴン、ヘリウムが挙げられる。乾燥温度は、正極活物質が多孔質の場合、その細孔内における高沸点有機溶媒の含有量、ドライポリマー電解質の熱安定性などを考慮すると、20~200℃が好ましい。乾燥時間は、1~72時間である。」と記載され、また、ポリマー電解質溶液に関し、同段落【0037】に「ポリマー電解質溶液の調製工程では、マトリックスポリマーの有機溶媒溶液にリチウム塩を添加してポリマー電解質溶液を調製する。ドライポリマー電解質以外の成分を使用する場合、当該成分をポリマー電解質溶液に添加し、溶解または分散させるのが好ましい。・・・。有機溶媒としては、たとえば、アセトニトリルなどのニトリル類、メチルモノグライムなどのグライム類、NMPが挙げられる。」と記載されている。 c しかし、正極活物質層を形成する際、「有機溶媒」を用いない「正極活物質、導電材、ドライポリマー電解質」を含む混合物を集電層に配置し、圧延することは何等記載されておらず、また、「有機溶媒」をあえて用いず正極活物質層を形成する理由も見当たらない。 してみると、引用発明1において、「ポリエチレンオキサイド」、「LiN(CF3SO2)2」、「正極活物質、アセチレンブラック(導電材)」を含み、「アセトニトリル溶液」及び「NMP」を含まない混合物を「正極集電層」に配置し、圧延することは、当業者が容易に想到し得えたとはいえない。 よって、相違点1に係る構成は、引用発明1に基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。 d 小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (イ)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものである。 したがって、上記(ア)で検討したことと同じ理由により、本件の請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 よって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 イ 引用文献2を主引用例とした場合 (ア)本件発明1について a 請求項2、3にかかる発明は、請求項1を引用するものであるから、事案に鑑みて本件発明1の進歩性について検討する。 上記「(1)イ(ア)d」で述べたように、本件発明1と引用発明2とは相違点5、6において相違するから、まず相違点5について検討する。 引用発明2の「混合物」は、「ポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマー」、「高比表面積炭素粒子」、「LiFePO4粒子」及び「LiTFSIを含有する脱塩水」が混合され、「集電体上に押出成形」され「圧延し、強制対流乾燥オーブンに通すことによって、水を除去するために」「乾燥させ」られるものである。 b ここで、上記「押出成形」に関し、引用文献2には、以下の記載がある。下線は当審で付与した。 「【請求項1】 以下の成分: -鉄-リン酸塩系材料から選択される少なくとも1種類の活性正極材料と; -リチウム塩の存在下でイオンを伝導する少なくとも1種類の水溶性ポリマーと; -場合により、導電性を付与する少なくとも1種類の材料と、 を含む複合材料からなる正極の製造方法であって、 押出成形された複合材料を得るために、押出成形によって、前記複合材料の成分を混合する少なくとも1つの工程と、ダイから押出成形して前記複合材料を形成する少なくとも1つの工程と、前記押出成形した複合材料を圧延またはカレンダー加工することによって、集電体上の正極膜の形態にする少なくとも1つの工程と、前記集電体に塗布された前記正極膜を乾燥させる少なくとも1つの工程とを含み、 前記押出成形工程が、コニーダー、二軸スクリュー押出機、またはマルチスクリュー押出機によって、水性溶媒であって、脱塩水または蒸留水、あるいは脱塩水または蒸留水と、前記水性溶媒の全重量の最大30重量%の少なくとも1種類の水混和性溶媒との混合物からなる水性溶媒(前記水性溶媒は、前記複合材料を形成する前記成分の全重量の約3~25重量%である)の存在下、20~95℃の温度で行われることを特徴とする、製造方法。 「【0001】 本発明は、水、または水と少なくとも1つの水混和性溶媒との混合物の存在下での押出成形による、リン酸鉄、特にLiFePO4を主成分とする、正極として使用するための複合材料の製造プロセス、このプロセスを実施することによって得られる正極、ならびにその応用に関する。 ・・・。 【0003】 一般に、リチウム電池用のカソード膜の製造プロセスは、通常粉末形態である活性電極材料を、炭素もしくは黒鉛粒子、またはそれら2種類の混合物などの導電性材料、ならびにポリマーバインダーと有機溶媒中で混合して、均一ペーストを形成することに存する。次に、このペーストを集電体に塗布して薄膜を形成し、次に加熱することによって有機溶媒を蒸発させる。・・・。 【0004】 固体リチウム(LMP)電池用の正極材料の薄膜を製造する別のプロセスでは、溶媒和性ポリマーおよびリチウム塩からなる電解質を取り込む混合物が使用される。その混合物は、有機溶媒中で混合された粒子形態の活性電極材料、導電性材料、溶媒和性ポリマー、およびリチウム塩を含み、均一な電極ペーストを形成する。次にこのペーストを集電体に塗布して膜または薄膜を形成し、次に加熱することによって有機溶媒を蒸発させて、電極を形成する。・・・。 【0005】 どちらの場合も、カソードの生産に使用される混合物の粘度を低下させ、薄膜の形態で電極ペーストを集電体に塗布できるようにするために、有機溶媒が使用される。・・・。この種の電極が商業規模または連続プロセスで生産される場合、環境を汚染しないために、蒸発した有機溶媒を回収する必要がある。有機溶媒を回収するプロセスには、溶媒蒸気が環境中に漏れるのを防止する特殊な施設が必要となり、使用中に大量のこれらの溶媒の保管および取り扱いに適した設備が必要となる。 【0006】 これらのプロセスで使用される有機溶媒の代わりに、水などの無公害の溶媒を用いることが、特に国際公開第2004/045007号パンフレットですでに想定されている。・・・。したがって、国際公開第2004/045007号パンフレットに記載のプロセスは、電池の他の構成材料と組み合わせる前にリチウム塩を正極材料中に取り込む必要があるリチウム系電池を製造するために使用することはできない。 【0007】 乾式(無溶媒)押出成形によって正極を製造することも可能である。この場合、電極材料の組成物の種々の構成材料が一軸スクリューまたは二軸スクリュー押出機中に導入され、次にフラットダイから担体上に押出成形される。しかし電極材料の種々の構成材料の混合物は高粘度であり、そのため一般には、取り込みが可能である活性電極材料の内容が限定される。・・・。この点において、使用されるポリマー(ポリエーテル)が感熱性であり分解が生じるというまさにその性質のために、押出成形中に系の粘度を低下させるため温度を上昇させることは一般に不可能である。さらに、最初に得られる、一般に数百ミクロンの厚さから、目標とする用途に応じて数十ミクロンの厚さ、一般に≦65μmの厚さの電極膜を得るためには、圧延またはカレンダー加工が必要である。この圧延またはカレンダー加工工程は、粘度に関連する圧縮応力および剪断応力が大きすぎ、多くの場合集電体の破壊(アルミニウム集電体の厚さ<30μm)を引き起こすため、集電体に対して直接行うことは一般に不可能である。したがって、最初の工程で、電極材料を製造し、次に続いて、材料を集電体に組み合わせる工程である複合化工程と呼ばれる追加の工程(カソードの集電体への熱圧着接合)を行う必要がある。この「段階的」複合化の状況では、電極材料と集電体との間の界面の最適な品質を得ることは一般により困難であり、・・・。」 「【0011】 本発明によるプロセスは以下の利点を有する: -温度を上昇させる必要なしに、混合物の粘度を低下させる可塑剤として機能することにより、押出成形を容易にする添加剤として水性溶媒が使用され、それによって、感熱性ポリマーの使用に適合した低い押出成形温度(20~95℃の押出成形温度)が可能となる; -スクリュープロファイル、温度プロファイル、および供給構造のモジュール式性質によって、種々の配合物の使用、およびカソードの特性の選択/改良が可能となる; -粘度および押出成形温度が低下することで、材料を溶融させ供給材料を被覆するために乾式押出成形において通常もたらされる機械応力および熱応力が制限され;その結果、正極複合材料に酸化防止剤を加える必要が必ずしも生じない; -一般に60%を超え、好ましくは70%を超える高活性物質含有率を有しながら、多孔度は制限されたカソードを得ることができ、100μm未満、好ましくは65μm未満の厚さのカソード膜を得ることができる。 【0012】 乾式押出成形によって電極材料を製造するプロセスと比較すると、本発明によるプロセスは以下の利点を有する: -乾式押出成形によって生じる応力によって、一般に、ポリマーが分解され、それによって、さらに、最終的に電気化学を妨害しやすい汚染物質が生成され得る; -押出機器中の混合工程は、集電体上に押出成形された複合材料を圧延またはカレンダー加工する工程とインラインで行われる; -集電体上に押出成形された材料を直接圧延またはカレンダー加工することによって、凝集した高品質の界面が確実に得られる。本発明によるプロセスにより、たとえば約15ミクロンの厚さのアルミニウム基板からなる集電体上の<65μmの厚さのカソード膜の圧延またはカレンダー加工が可能となる。粘度を調節することによって、≦12μmの厚さのアルミニウム基板上のカソード膜の圧延またはカレンダー加工が可能となる; -押出成形された複合材料を形成する成分の混合物が低粘度であることにより、押出機の出口のダイがきれいになり、次いでインラインの圧延またはカレンダー加工が容易になり、安定した幅を有するカソード膜を直接得ることができる。したがって、本発明によるプロセスによって、幅が一定の膜を得るためにトリミングの必要なしに700mmを超える幅のカソードが生産可能となる。 したがって、本発明による湿式プロセスは、消費電力が少なく、機器の摩耗が少なく、ポリマーおよび電気化学に関する「混乱」が少ない。」 「【0018】 二軸スクリュー押出機では、成分に加えられる剪断応力と、分散および分配混合との組み合わせによって、均一ペーストを得る目的で種々の成分が確実に混合される。最終混合物の品質は、スクリュープロファイルを形成する要素、特にニーダー、充填量、および発生する剪断速度に実質的に依存する。同時に、水を加えることによって得られる粘度低下によって、ポリマーマトリックスに対する機械応力および熱応力を制限しながら、種々のニーダーブレードを通過するので、1種類以上の感熱性水溶性ポリマーを分解させる可能性がある自己発熱を防止することができる。」 「【0062】 使用した配列は、添付の図1に示され、長さが1.1メートルであり、10個のゾーンを含み、25mmの直径を有する二軸スクリュー押出機(1)は、重量フィーダー(2a、2b、2c)によって固体成分を供給し、液体注入ポンプ(3)によって水性溶媒(脱塩水+LiTFSI)を供給し、押出機(1)は、30mmの直径を有する再処理一軸スクリュー押出機(4)に連結され、これはフラットダイ(5)を備え、圧延ステーション(6)上に開放され、強制対流乾燥オーブン(7)で終わっている。」 c 上記bによれば、引用発明2において「押出成形」する際「脱塩水」を導入することは、必須の要件と認められ、また、上記bの段落【0007】、【0011】及び【0012】の記載からすれば、引用発明2において「乾式(無溶媒)押出成形」を採用すること、即ち、「脱塩水」を含まない「混合物」を「集電体上に押出成形」することには阻害要因があるといえる。 してみると、引用発明2において必要不可欠な構成である「脱塩水」を含まない「混合物」を「集電体上に押出成形」することは、当業者に動機付けられないことである。 よって、相違点5に係る構成は、引用発明2に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 d 小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件の請求項1に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (イ)本件発明2、3について 本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものである。 したがって、上記(ア)で検討したことと同じ理由により、本件の請求項2、3に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 よって、請求項2、3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (3)取消理由3(サポート要件)について 上記「1(3)」のとおりの記載不備の指摘に対して、本件訂正により、訂正前の請求項1に記載された「混合物」について「溶剤を含まない」との限定が付加され、さらに、訂正前の請求項1に記載された「成型体」について、該「混合物」を「集電体上に配置し、圧縮成形して得られる」との限定が付加され、本件特許明細書の段落【0059】に記載された比較例1との構成上の差異が明らかとなった。 よって、取消理由で指摘した不備な点は解消され、請求項1及び請求項1を引用する請求項2、3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。 第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(サポート要件) 請求項1ないし4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記ア、イの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ア <電極活物質成形体の構成材料の「組み合わせ」について> 本件明細書の発明の詳細な説明の【0010】ないし【0011】には多種の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」が例示され、【0012】には多種の「リチウム塩」が例示され、【0014】には「本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体に用いる電極活物質は、正極活物質であっても負極活物質であっても良い。」と記載され、【0015】には多種の「正極活物質」が例示され、【0016】には多種の「負極活物質」が例示され、【0020】には多種の「導電助剤」が例示されている。 一方、本件特許発明の解決しようとする課題を解決し得る電極活物質成形体の構成材料として【実施例】に具体的に記載されているのは、【0052】<製造例1 :高分子固体電解質の作製>に記載の 「PEG4000」 及び 「トリフルオロメタンスルホン酸リチウム」(LiCF3SO3 ) と、【0055】<実施例1:全固体リチウムイオン二次電池用電極>に記載の「リチウムイオン電池用ハードカーボン負極材」及び「導電性炭素フィラ-:カーボンナノファイバー」という組み合わせのみである。そうすると、発明の詳細な説明に例示される4つの構成材料のすべての組み合わせにおいて、本件特許発明の解決しようとする課題を解決できることは当業者であれば認識できるとはいえず、また本件出願時(本件優先日)において技術常識であったことを示す証拠もない。 しかしながら、本件特許発明1、4には「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」、「リチウム塩」、「電極活物質」及び「導電助剤」について何ら特定されていないから、発明の詳細な説明に記載されたすべての化合物及びこれらの組み合わせが含まれる。以上より、本件特許発明1、本件特許発明1を引用する本件特許発明2及び3、並びに本件特許発明4は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件出願時(本件優先日)の技術常識に照らし当該発明の解決しようとする課題を解決できないものも包含する、又は当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超え、本件特許発明1~4の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。(異議申立書12頁1行ないし13頁13行) イ <「リチウム塩」及び「高分子固体電解質」の各重量割合について> 本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0013】には「高分子固体電解質に含まれるリチウム塩の重量は、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物が有するエーテル結合中の酸素原子の重量に対して調整されるが、電池の充放電性能の観点から、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて、10~40重量%含む高分子固体電解質が好ましい。」と記載され、【0026】には「高分子固体電解質の重量割合は、電極活物質成形体の電気特性と成形強度等の観点から、高分子固体電解質と電極活物質との合計重量に基づいて1~50重量%が好ましく、5~25重量%がさらに好ましい。」と記載されている。 一方、本件特許発明の解決しようとする課題を解決し得る電極活物質成形体として【実施例】に具体的に記載されている 「リチウム塩」の上記含有割合は【0052】<製造例1:高分子固体電解質の作製>における「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物としてPEG4000(富士フィルム和光純薬株式会社、試薬)10重量部」及び「リチウム塩としてトリフルオロメタンスルホン酸リチウム (東京化成工業株式会社、試薬)3重量部」 の記載より算出される「30重量%」(=[3/30]*100)の一点だけであり、「高分子固体電解質」の上記含有割合は、【0055】「<実施例1:全固体リチウムイオン二次電池用電極>における「製造例1で作成した高分子固体電解質19重量部」及び「電極活物質としてリチウムイオン電池用ハードカーポン負極材(株式会社クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製、商品名カーボトロン(登録商標)) 60重量部」の記載より算出される「24重量%」(≒[19/(19+60)]*100) の一点だけである。そうすると、発明の詳細な説明の記載からは「リチウム塩」及び「高分子固体電解質」の上記含有割合のいずれも特異点や臨界的意義は認められず、本件特許発明1、4に記載の数値範囲のすべての範囲において当該発明の課題を解決できることは当業者であれば認識できるとはいえず、また本件出願時(本件優先日)において技術常識であったことを示す証拠もない。 以上より、本件特許発明1、本件特許発明1を引用する本件特許発明2及び3、並びに本件特許発明4は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件出願時(本件優先日)の技術常識に照らし当該発明の解決しようとする課題を解決できないものも包含する、又は当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超え、本件特許発明1~4の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。(異議申立書13頁15行ないし14頁下から6行) (2)申立理由2(新規性) 請求項3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第2号証に記載された発明であるから、特許第29条第1項第3号に該当し、請求項3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(進歩性) ア 申立理由3-1 請求項3、4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 イ 申立理由3-2 請求項4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ウ 申立理由3-3 請求項1ないし4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第3号証に記載された発明に基いて、又は、甲第3号証、甲第1号証又は甲第2号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 エ 申立理由3-4 請求項1ないし4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証に記載された発明に基いて、又は、甲第4号証、甲第1号証又は甲第2号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (4)提出された証拠 甲第1号証:特開2011-3450号公報 甲第2号証:特表2013-504846号公報 甲第3号証:特開2001-319692号公報 甲第4号証:特開2004-152654号公報 2 甲各号証の記載事項 (1)甲第1号証 甲第1号証は、令和6年1月17日付け取消理由通知において引用した引用文献1であり、甲第1号証に記載された事項は、上記「第4 2(1)ア」で述べたとおりである。 そして、甲第1号証には、上記「第4 2(1)イ」から、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「リチウムイオン二次電池である全固体型ポリマー電池用正極活物質層であって、 正極活物質層は、マトリックスポリマーであるポリエチレンオキサイド中の酸素に対する支持塩中のリチウムのモル比Bが0.03又は0.05となるように、ポリエチレンオキサイド(粘度平均分子量100000、Sigma-Aldrich社製)のアセトニトリル溶液に、支持塩としてLiN(CF3SO2)2を添加し、ドライポリマー電解質溶液を得て、正極活物質、アセチレンブラック(導電材)、および上記ドライポリマー電解質溶液を、正極活物質:アセチレンブラック:ポリエチレンオキサイド=80:10:10の重量比となるように加えて混練し、NMPを加え正極合剤ペーストを得て、正極集電層の片面に塗布し、85℃で5時間真空乾燥して形成され、油圧プレスで圧延することにより得られる、 全固体型ポリマー電池用正極活物質層。」 また、上記「第4 2(1)ア」の段落【0020】、【0062】によれば、甲第1号証には、正極活物質層を含む全固体型ポリマー電池が記載されており、上記「上記「第4 2(1)イ」を踏まえれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明a」という。)も記載されている。 「正極活物質層を含み、リチウムイオン二次電池である全固体型ポリマー電池であって、 正極活物質層は、 マトリックスポリマーであるポリエチレンオキサイド中の酸素に対する支持塩中のリチウムのモル比Bが0.03又は0.05となるように、ポリエチレンオキサイド(粘度平均分子量100000、Sigma-Aldrich社製)のアセトニトリル溶液に、支持塩としてLiN(CF3SO2)2を添加し、ドライポリマー電解質溶液を得て、正極活物質、アセチレンブラック(導電材)、および上記ドライポリマー電解質溶液を、正極活物質:アセチレンブラック:ポリエチレンオキサイド=80:10:10の重量比となるように加えて混練し、NMPを加え正極合剤ペーストを得て、正極集電層の片面に塗布し、85℃で5時間真空乾燥して形成され、油圧プレスで圧延することにより得られる、 全固体型ポリマー電池。」 さらに、上記「第4 2(1)ア」の段落【0060】ないし【0062】によれば、甲第1号証には全固体型ポリマー電池用正極活物質層の製造方法が記載されているといえ、上記「上記「第4 2(1)イ」を踏まえれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明b」という。)も記載されている。 「リチウムイオン二次電池である全固体型ポリマー電池用正極活物質層の製造方法であって、 正極活物質層は、マトリックスポリマーであるポリエチレンオキサイド中の酸素に対する支持塩中のリチウムのモル比Bが0.03又は0.05となるように、ポリエチレンオキサイド(粘度平均分子量100000、Sigma-Aldrich社製)のアセトニトリル溶液に、支持塩としてLiN(CF3SO2)2を添加し、ドライポリマー電解質溶液を得て、正極活物質、アセチレンブラック(導電材)、および上記ドライポリマー電解質溶液を、正極活物質:アセチレンブラック:ポリエチレンオキサイド=80:10:10の重量比となるように加えて混練し、NMPを加え正極合剤ペーストを得て、正極集電層の片面に塗布し、85℃で5時間真空乾燥して正極活物質層を形成し、油圧プレスで圧延することにより得られる工程を含む、 全固体型ポリマー電池用正極活物質層の製造方法。」 (2)甲第2号証 甲第2号証は、令和6年1月17日付け取消理由通知において引用した引用文献2であり、甲第2号証に記載された事項は、上記「第4 2(2)ア」で述べたとおりである。 そして、甲2号証には、上記「第4 2(2)イ」から、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。 「固体リチウム二次電池の正極用混合物であって、 リチウム塩の存在下でイオンを伝導するポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマーをフィーダー(2a)中に導入し、導電性を付与する材料である高比表面積炭素粒子をフィーダー(2b)中に導入し、活性電極材料であるLiFePO4粒子をサイドフィーダーに接続されたフィーダー(2c)中に導入し、16.4重量%のポリマー、1.3重量%の炭素粒子、および65.1重量%のLiFePO4を含有する押出成形複合材料が得られるように、重量フィーダーの供給速度を調節し、フィーダー(2a)、(2b)、および(2c)の内容物を混合した後に、10重量%の水を含有する押出成形複合材料を得るのに十分な量の30重量%のイオン伝導特性を付与するリチウム塩であるLiTFSIを含有する脱塩水を、液体注入ポンプ(3)によって導入し、押出成形を80℃の温度で行い、アルミニウム箔からなる集電体上に押出成形した混合物を圧延し、強制対流乾燥オーブンに通すことによって、水を除去するために膜を乾燥させて得られる、 正極用混合物。」 また、上記「第4 2(2)ア」の段落【0057】、【0058】によれば、引用文献2はリチウム電池が記載されており、上記「第4 2(2)イ(ア)」によれば、該リチウム電池は、固体リチウム二次電池といえる。 そして、上記「第4 2(2)イ」も踏まえれば、以下の発明(以下、「甲2発明a」という。)が記載されているといえる。 「正極用混合物を用いた正極を有する固体リチウム二次電池であって、 正極用混合物は、 リチウム塩の存在下でイオンを伝導するポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマーをフィーダー(2a)中に導入し、導電性を付与する材料である高比表面積炭素粒子をフィーダー(2b)中に導入し、活性電極材料であるLiFePO4粒子をサイドフィーダーに接続されたフィーダー(2c)中に導入し、16.4重量%のポリマー、1.3重量%の炭素粒子、および65.1重量%のLiFePO4を含有する押出成形複合材料が得られるように、重量フィーダーの供給速度を調節し、フィーダー(2a)、(2b)、および(2c)の内容物を混合した後に、10重量%の水を含有する押出成形複合材料を得るのに十分な量の30重量%のイオン伝導特性を付与するリチウム塩であるLiTFSIを含有する脱塩水を、液体注入ポンプ(3)によって導入し、押出成形を80℃の温度で行い、アルミニウム箔からなる集電体上に押出成形した混合物を圧延し、強制対流乾燥オーブンに通すことによって、水を除去するために膜を乾燥させて得られる、 固体リチウム二次電池。」 さらに、上記「第4 2(2)ア」の段落【0060】、【0063】及び【0064】に記載された実施例1に着目すれば、引用文献2には、正極用の混合物の製造方法が記載されているといえ、上記「第4 2(2)イ」も踏まえれば、以下の発明(以下、「甲2発明b」という。)が記載されているといえる。 「固体リチウム二次電池の正極用混合物の製造方法であって、 リチウム塩の存在下でイオンを伝導するポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンオキシド)コポリマーをフィーダー(2a)中に導入し、導電性を付与する材料である高比表面積炭素粒子をフィーダー(2b)中に導入し、活性電極材料であるLiFePO4粒子をサイドフィーダーに接続されたフィーダー(2c)中に導入し、16.4重量%のポリマー、1.3重量%の炭素粒子、および65.1重量%のLiFePO4を含有する押出成形複合材料が得られるように、重量フィーダーの供給速度を調節し、フィーダー(2a)、(2b)、および(2c)の内容物を混合した後に、10重量%の水を含有する押出成形複合材料を得るのに十分な量の30重量%のイオン伝導特性を付与するリチウム塩であるLiTFSIを含有する脱塩水を、液体注入ポンプ(3)によって導入し、押出成形を80℃の温度で行い、アルミニウム箔からなる集電体上に押出成形した混合物を圧延し、強制対流乾燥オーブンに通すことによって、水を除去するために膜を乾燥させて得る、 固体リチウム二次電池の正極用混合物の製造方法。」 (3)甲第3号証 ア 甲第3号証(特開2001-319692号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。) 「【請求項1】 (a)電解質、および該電解質に分散されている正極活物質微粒子と導電性微粒子からなる正極シートであって、該電解質が数平均分子量400~20,000のポリエチレンオキシドおよび該ポリエチレンオキシドに溶解したリチウム塩からなる正極シート、 (b)エチレンオキシド(29~95モル%)、重合度1~12のエチレンオキシド単位の側鎖を有するグリシジルエーテル(4~70モル%)及びアリルグリシジルエーテル(0.1~5モル%)からなる重量平均分子量が10万~200万のコポリマーにリチウム塩を溶解した高分子固体電解質の膜、および (c)リチウム、リチウム含有合金シート、またはそれらを金属箔やメッシュ等の集電体に保持した負極シートからなり、(a)(b)(c)をこの順に積層してなるリチウムポリマー電池。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は固体型リチウムポリマー電池に関するものである。 ・・・。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記の問題点を解決して小型軽量で充放電容量の大きい固体型リチウムポリマー電池を提供することにある。 ・・・。 【0008】本発明の電池は、正極シート(a)、高分子固体電解質の膜(b)および負極シート(c)からなる。高分子固体電解質の膜(b)は、正極シート(a)と負極シート(c)の間に挟まれている。」 「【0017】正極シート(a)は、正極活物質、導電性微粒子および電解質からなる。電解質に正極活物質微粒子および導電性微粒子が分散されている。 【0018】正極活物質にはLiCoO2、LixMnO2(xは0.1から0.5)、LiMn2O4、LiNiO2、V2O5、V6O13、TiS2等が使用できる。3V級の電池を組む時はLixMnO2、V2O5、V6O13がよく、4V級の電池を組む時はLiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2が良い。正極活物質は2.0~3.5Vに電圧平坦部分を有するLixMnO2(x=0.1~0.5)が特によい。 ・・・。 【0020】導電性微粒子の例は、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチエンブラック)、グラファイトなどである。 【0021】正極シート(a)において、電解質は、ポリエチレンオキシドおよびリチウム塩からなる。ポリエチレンオキシドの数平均分子量は、400~20,000、例えば500~10,000、特に1,500~5,000である。数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定したものである。 【0022】ポリエチレンオキシドは、式(1): A-O-(CH2-CH2-O)n-B (1) [式中、A及びBは、同一または異なっていてよく、有機基又は水素原子又はアルカリ金属であり、nは10~250である。]で示されるものであってよい。A及びBが有機基である場合に、その例は、炭素数1~5のアルキル基であってよい。 ・・・。 【0024】正極シート(a)における電解質において電解質塩化合物として機能するリチウム塩の例は、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2等である。 ・・・。 【0026】正極は、正極活物質と、導電性微粒子と、リチウム塩を溶解したポリエチレンオキシドを混合し、加熱軟化してアルミニウム箔上に塗着させるか、溶媒を入れてペーストを造りアルミニウム箔にコーティング後、溶媒を乾燥除去して製造することが出来る。溶媒としてはトルエン、キシレン、ベンゼン、アセトニトリル、エチレングリコール、モノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、THF等が使用可能である。目的の厚みにするため及び正極活物質密度を上げるため乾燥後プレスしてもよい。正極の厚みは、例えば、10~50μmであってよい。」 「【0034】実施例1 正極の作製 Li0.33MnO2粉末1.2g、ケッチエンブラック0.16g、数平均分子量2000(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定)のポリエチレングリコールモノメチルエーテル0.48g、LiN(CF3SO2)20.16g、の比率で採取し、乳鉢でよく混合した。80℃に加熱した板ヒーター上でアルミ箔に塗布し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融させて厚み20μmの正極シートを作製した。」 イ 上記アの記載事項より、次のことがいえる。 (ア)【請求項1】、段落【0001】、段落【0008】によれば、甲第3号証には、固体型リチウムイオンポリマー電池用の正極シートが記載されているといえ、【請求項1】、段落【0017】、【0021】によれば、正極シートは、ポリエチレンオキシドおよびリチウム塩からなる電解質と、正極活物質と、導電性粒子とからなる。 そして、段落【0006】の「充放電容量の大きい固体型リチウムポリマー電池を提供する」との記載によれば、固体型リチウムイオンポリマー電池は二次電池といえる。 してみれば、甲第3号証には、ポリエチレンオキシドおよびリチウム塩からなる電解質と、正極活物質と、導電性粒子とからなる、固体型リチウムイオンポリマー二次電池の正極シートが記載されているといえる。 (イ)段落【0034】によれば、実施例1に基づく正極シートは、Li0.33MnO2粉末1.2g、ケッチエンブラック0.16g、数平均分子量2000(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定)のポリエチレングリコールモノメチルエーテル0.48g、LiN(CF3SO2)20.16g、の比率で混合し、加熱した板ヒーター上でアルミ箔に塗布し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融させて作製される。 そして、段落【0018】によれば、「Li0.33MnO2粉末」は正極活物質であり、段落【0020】によれば、「ケッチエンブラック」は導電性微粒子であり、段落【0024】によれば、「LiN(CF3SO2)2」はリチウム塩である。 してみれば、実施例1に基づく正極シートは、正極活物質であるLi0.33MnO2粉末1.2g、導電性微粒子であるケッチエンブラック0.16g、数平均分子量2000(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定)のポリエチレングリコールモノメチルエーテル0.48g、リチウム塩であるLiN(CF3SO2)20.16g、の比率で混合し、加熱した板ヒーター上でアルミ箔に塗布し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融させて作製される。 ウ よって、上記イによれば、実施例1に着目すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。 「ポリエチレンオキシドおよびリチウム塩からなる電解質と、正極活物質と、導電性粒子とからなる、固体型リチウムイオンポリマー二次電池の正極シートであって、 正極シートは、正極活物質であるLi0.33MnO2粉末1.2g、導電性微粒子であるケッチエンブラック0.16g、数平均分子量2000(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定)のポリエチレングリコールモノメチルエーテル0.48g、リチウム塩であるLiN(CF3SO2)20.16g、の比率で混合し、加熱した板ヒーター上でアルミ箔に塗布し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融させて作製される、 正極シート。」 エ また、上記アの段落【0034】によれば、甲第3号証には、正極シートの製造方法が記載されているといえ、上記イ(ア)も踏まえれば、正極シートは、固体型リチウムイオンポリマー二次電池の正極シートである。 よって、上記イも踏まえれば、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明a」という。)も記載されている。 「ポリエチレンオキシドおよびリチウム塩からなる電解質と、正極活物質と、導電性粒子とからなる、固体型リチウムイオンポリマー二次電池の正極シートの製造方法であって、 正極活物質であるLi0.33MnO2粉末1.2g、導電性微粒子であるケッチエンブラック0.16g、数平均分子量2000(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定)のポリエチレングリコールモノメチルエーテル0.48g、リチウム塩であるLiN(CF3SO2)20.16g、の比率で混合し、加熱した板ヒーター上でアルミ箔に塗布し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融させて作製する、 正極シートの製造方法。」 (4)甲第4号証 ア 甲第4号証(特開2004-152654号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。) 「【請求項1】 ポリエーテル重合体、活物質、導電性微粒子、電解質塩化合物及び光重合開始剤から成り、前記光重合開始剤の含有量がポリエーテル重合体100重量部に対して2~30重量部である、カソード用固体電解質組成物。 ・・・。 【請求項5】 請求項1~4のいずれかに記載の固体電解質組成物を、紫外線により架橋成形して成る電池用カソードフィルム。 【請求項6】 電解質塩化合物を含有するポリエーテル重合体に、活物質、導電性微粒子及び前記ポリエーテル重合体100重量部に対して2~30重量部の光重合開始剤を配合して成形し、次いで紫外線照射により架橋することを特徴とする電池用カソードフィルムの製造方法。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、電池等のカソード用材料として用いられる固体電解質組成物、該組成物から得られる電池用カソードフィルム及びその製造方法に関する。」 「【0022】 本発明に用いる活物質は、電池のカソード用として用いられるものであればよく、コバルト酸リチウム、リチウムマンガン複合酸化物、ニッケル酸リチウム、V2O5やV6O13などの酸化バナジウム、リチウムバナジウム複合酸化物等を使用できる。活物質は通常微粒子として用い、それらの平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは0.5~30μ、より好ましくは0.6~20μである。活物質の粒子径が大きすぎると、成形体の表面平滑性が低下する場合があり、また小さすぎると分散が困難になる。活物質の配合量は、前記ポリエーテル重合体に対して重量基準で好ましくは0.1~50倍、より好ましくは0.3~20倍、特に好ましくは0.5~10倍である。活物質量が少なすぎると、カソードの電極機能が不十分になることがあり、逆に多すぎると、活物質の分散性が低下して加工困難となるおそれがある。 【0023】 本発明で用いる導電性微粒子としてはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト等が挙げられ、好ましくはケッチェンブラックが用いられる。導電性微粒子の配合量は、上記活物質100重量部あたり好ましくは1~20重量部、より好ましくは2~15重量部である。導電性微粒子の量が少なすぎるとカソードの導電性が不十分になり、逆に多すぎると分散が困難になる。 【0024】 本発明で用いる電解質塩化合物は、陽イオンを移動させ得る化合物であって、本発明に用いるポリエーテル重合体に可溶のものであれば特に限定されない。このような電解質塩化合物の具体例としては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘプタフルオロプロピルスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(テトラフルオロエタンスルホニル)イミド、ビス(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミドイオン、トリフルオロスルホンイミドイオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6-、PF6-、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、及び7,7,8,8-テトラシアノ-p-キノジメタンイオンからなる群から選ばれた陰イオンと、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、CaおよびBaからなる群から選ばれた金属の陽イオンとからなる塩が挙げられる。中でも、特に、リチウムポリマー電池のカソードに用いる場合には、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2がより好ましい。」 「【0032】 本発明の電池用カソードフィルムを好適に適用できる電池の種類は特に限定されないが、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属系電池、亜鉛-塩化銀、マグネシウム-塩化銀、マグネシウム-塩化銅等のハロゲン塩電池、ニッケル-水素電池等のプロトン伝導型電池等が挙げられる。中でも、高電圧、高エネルギーで且つイオン伝導度が固体電解質中で高いリチウム電池が好ましい。また、電池の形態としては、電解質が電解液を含まずに、高分子固体電解質のみからなる電池が最も好ましい。 ・・・。 【0037】 (4)電池のサイクル特性ポリエーテル重合体3000部にビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムを電解質塩のリチウム原子のモル数/ポリエーテル重合体の酸素原子のモル数の比が0.05となるように添加し、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタールを3部加えてよく混合して高分子固体電解質用組成物を得た。この組成物を二軸押し出し機に供給し、スクリュー温度80℃、回転数150rpm、ダイ温度155℃で押し出した。押し出されたフィルムをポリプロピレン(PP)フィルムに連続的に張り付け、紫外線照射によって架橋した。PPフィルム上の高分子固体電解質薄膜を剥離して得られた平均厚さ50μmの高分子固体電解質フィルムを各実施例、比較例で得られたカソードフィルムとリチウム金属箔で挟み込み、張り合わせることでコイン電池(CR2032)を組み立てた。充放電試験は、60℃において、4.2Vまで0.2mA/cm2で充電し、2.7Vまで0.2mA/cm2で放電する定電流充放電試験を行い、3サイクル目の放電容量を100%とするときの、30サイクル目の放電容量の割合(百分率)を調べた。この値が大きいほど放電容量減が少なく、良い結果である。」 【0038】 実施例1 n-ヘキサン中で、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びアリルグリシジルエーテルを用いて公知の方法によりシード重合を行い、エチレンオキシド単位(EO)93.5モル%、プロピレンオキシド単位(PO)2.8モル%及びアリルギリシジルエーテル単位(AGE)3.7モル%であり、重量平均分子が350,000、分子量分布が10.2であるポリエーテル重合体を得た。 【0039】 得られたポリエーテル系重合体A100部に、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム21.6部及び2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(光重合開始剤)6部を混合して得られた組成物を、二軸押出機に供給し、バレルの途中からコバルト酸リチウム336部、ケッチェンブラック14部を供給してスクリュー温度80℃、回転数150rpm、ダイ温度155℃で、平均膜厚85μmのフィルムを押し出した。押し出されたフィルムは、高圧水銀ランプにて積算光量45,000mJ/cm2の紫外線を照射して架橋させた。得られたフィルムの機械強度及びこれを用いた電池のサイクル特性を上記方法で評価した。結果を表1に記載する。」 イ 上記アの記載事項より、次のことがいえる。 (ア)【請求項5】、段落【0001】によれば、甲第4号証には、電池用カソードフィルムが記載され、また、段落【0038】には、実施例1に基づくカソードフィルムが記載されている。 さらに、【0032】に「本発明の電池用カソードフィルムを好適に適用できる電池の種類は・・・イオン伝導度が固体電解質中で高いリチウム電池が好ましい。また、電池の形態としては、電解質が電解液を含まずに、高分子固体電解質のみからなる電池が最も好ましい。」と、同段落【0037】に「PPフィルム上の高分子固体電解質薄膜を剥離して得られた平均厚さ50μmの高分子固体電解質フィルムを各実施例・・で得られたカソードフィルムとリチウム金属箔で挟み込み、張り合わせることでコイン電池(CR2032)を組み立てた。充放電試験は、・・・定電流充放電試験を行い」と記載されていることから、実施例1のカソードフィルムは、固体リチウムイオン二次電池用のカソードフィルムといえる。 よって、甲第4号証には、実施例1に基づく、固体リチウムイオン二次電池用のカソードフィルムが記載されているといえる。 (イ)段落【0038】、段落【0039】によれば、実施例1に基づく、カソードフィルムは、エチレンオキシド単位(EO)93.5モル%であるポリエーテル系重合体A100部に、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム21.6部及び2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(光重合開始剤)6部を混合して得られた組成物を、二軸押出機に供給し、途中からコバルト酸リチウム336部、ケッチェンブラック14部を供給してフィルムを押し出し、紫外線を照射して架橋させ得られる。 また、段落【0024】によれば、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムは電解質塩化合物であり、段落【0022】によれば、コバルト酸リチウムは活物質であり、段落【0023】によれば、ケッチェンブラックは導電性微粒子である。 よって、実施例1に基づく、カソードフィルムは、エチレンオキシド単位(EO)93.5モル%であるポリエーテル系重合体A100部に、電解質塩化合物であるビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム21.6部及び2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(光重合開始剤)6部を混合して得られた組成物を、二軸押出機に供給し、途中から活物質であるコバルト酸リチウム336部、導電性微粒子であるケッチェンブラック14部を供給してフィルムを押し出し、紫外線を照射して架橋させ得られるものといえる。 ウ よって、上記イによれば、実施例1に着目すると、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。 「固体リチウムイオン二次電池用のカソードフィルムであって、 カソードフィルムは、エチレンオキシド単位(EO)93.5モル%であるポリエーテル系重合体A100部に、電解質塩化合物であるビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム21.6部及び2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(光重合開始剤)6部を混合して得られた組成物を、二軸押出機に供給し、途中から活物質であるコバルト酸リチウム336部、導電性微粒子であるケッチェンブラック14部を供給してフィルムを押し出し、紫外線を照射して架橋させ得られる、 カソードフィルム。」 エ また、上記アの【請求項6】、段落【0038】によれば、甲第4号証には、カソードフィルムの製造方法が記載されているといえ、上記イ(ア)も踏まえれば、カソードフィルムは、固体型リチウムイオン二次電池のカソードフィルムである。 よって、上記イも踏まえれば、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明a」という。)も記載されている。 「固体リチウムイオン二次電池用のカソードフィルムの製造方法であって、 カソードフィルムは、エチレンオキシド単位(EO)93.5モル%であるポリエーテル系重合体A100部に、電解質塩化合物であるビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム21.6部及び2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(光重合開始剤)6部を混合して得られた組成物を、二軸押出機に供給し、途中から活物質であるコバルト酸リチウム336部、導電性微粒子であるケッチェンブラック14部を供給してフィルムを押し出し、紫外線を照射して架橋させ得る、 カソードフィルムの製造方法。」 3 取消理由において採用しなかった申立理由に対する当審の判断 (1)申立理由1(サポート要件)について ア <電極活物質成形体の構成材料の「組み合わせ」について> 本件特許明細書には、高分子固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池に用いる電極の製造方法として、活物質の粉体とポリマー電解質の粉体との混合物を含む有機溶媒を集電体に塗布、乾燥して正極、負極の集電体上に活物質層を形成する工程を含む全固体リチウムイオン二次電池の製造方法ような、スラリーから溶媒を乾燥留去して製造する方法は、厚さを均一に保つことが難しく、また乾燥時に活物質層の一部に亀裂が発生する場合がある課題が記載されている(段落【0003】、【0004】を参照)。 そして、本件特許明細書の段落【0027】の「全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体が溶剤を含まない混合物の成形体であると、溶剤の揮発に伴うひび割れの発生が起こりにくくなり好ましい。」、同段落【0036】の「本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極は、集電体に全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体を積層する方法及び集電体の上で高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形する方法等で得ることができる。」、同段落【0041】の「本発明の製造方法は、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物とリチウム塩とを含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形する工程(以下、圧縮成形工程とも言う)を含む、全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体の製造方法である。」、同段落【0046】の「圧縮成形工程において混合物に圧力を加えると、詳細は明らかではないが、高分子固体電解質の表面が軟化又は溶融することがあり得る。圧縮成形工程において加圧により軟化又は溶融した高分子固体電解質が、常圧に戻した時に再び固化することにより、高分子固体電解質が電極活物質間を結合する機能を発現させ、厚みが一定で亀裂のないだけでなく、電気特性が良好な電極活物質成形体ができていることも考えられる。」との記載によれば、当業者は、高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形することにより、電極活物質層の厚さを均一に保ち、亀裂が発生しないことが理解でき、また、同段落【0055】の「製造例1で作成した高分子固体電解質・・・と、電極活物質・・・と、導電助剤・・・とを、・・・均一混合し、・・・。次いで、・・・集電体・・・の上で前記の混合物・・・圧力をかけて成形し、・・・本発明の電極活物質成形体及び本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体と集電体とを含む全固体リチウムイオン二次電池用電極を作成した。得られた電極の外観観察を行ったところ、電極活物質層にひび割れなく平滑な表面を有することが確認できた。」との記載もこれを裏付けているといえる。 してみると、本件特許明細書の上記記載によれば、高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形することにより、上記課題を解決し得ることは当業者が十分認識し得るものと認められ、本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」、「リチウム塩」、「電極活物質」及び「導電助剤」が特定されておらず、多種の例や組み合わせが含まれるものであるからといって、本件発明1が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえない。 よって、本件発明1、4の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないものではなく、また、本件発明2、3についても、同様である。 したがって、申立人の主張は採用できない。 イ <「リチウム塩」及び「高分子固体電解質」の各重量割合について> 上記アで検討したように、本件特許明細書の上記記載によれば、高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形することにより、上記課題を解決し得ることは当業者が十分認識し得るものと認められ、本件発明1の「リチウム塩の重量割合」及び「高分子固体電解質の重量割合」の数値範囲が、実施例1以外のものが含まれるからといって、本件発明1が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえない。 よって、本件発明1、4の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないものではなく、また、本件発明2、3についても、同様である。 したがって、申立人の主張は採用できない。 (2)申立理由2(甲第2号証を主引例とした本件発明3に対する新規性)について 本件発明3と甲2発明aとを対比すると、上記「第4 3(1)イ(ア)」で述べた点を踏まえれば、本件発明3と甲2発明aとは以下の点で相違し、その余の点で一致する。 (相違点7) 混合物に関し、本件発明3は「溶剤を含まない」のに対し、甲2発明aは「脱塩水」を含む点。 (相違点8) 本件発明3は、「リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、甲2発明aはその旨特定されていない点。 してみると、本件発明3と甲2発明aとは相違点を有し、少なくとも、相違点7は実質的な相違ではないと判断し得る理由もないので、本件発明3は甲第2号証に記載された発明ではない。 したがって、請求項3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、請求項3に係る特許は特許法第29条第1項に違反してされたものでない。 (3)申立理由3(進歩性)について ア 申立理由3-1(甲第1号証を主引例とした本件発明3、4に対する進歩性)について (ア)本件発明3について a 対比 本件発明3と甲1発明aと対比すると、上記「第4 3(1)ア(ア)」で述べた点を踏まえれば、本件発明3と甲1発明aとは以下の点で相違し、その余の点で一致する (相違点9) 混合物に関し、本件発明3は「溶剤を含まない」のに対し、甲1発明aは「アセトニトリル溶液」及び「NMP」を含む点。 (相違点10) 本件発明3は、「リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、甲1発明aはその旨特定されていない点。 b 相違点に対する判断 まず、相違点9について判断する。 相違点9に係る構成は、上記相違点1に係る構成と同じであるから、上記相違点1に対する理由と同様な理由により、甲1発明aに基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。 c 小括 したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明4について a 対比 本件発明4と甲1発明bと対比すると、上記「第4 3(1)ア(ウ)」で述べた点を踏まえれば、本件発明4と甲1発明bとは以下の点で相違し、その余の点で一致する。 (相違点11) 混合物に関し、本件発明4は「溶剤を含まない」のに対し、甲1発明bは「アセトニトリル溶液」及び「NMP」を含む点。 (相違点12) 本件発明4は、「リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、甲1発明bはその旨特定されていない点。 b 相違点に対する判断 まず、相違点11について判断する。 相違点11に係る構成は、上記相違点1に係る構成と同じであるから、上記相違点1に対する理由と同様な理由により、甲1発明bに基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。 c 小括 したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)まとめ 以上から、請求項3、4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができないものではないから、請求項3、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 イ 申立理由3-2(甲第2号証を主引例とした本件発明4に対する進歩性)について (ア)対比 本件発明4と甲2発明bと対比すると、上記「第4 3(1)イ(ア)」で述べた点を踏まえれば、本件発明4と甲2発明bとは以下の点で相違し、その余の点で一致する。 (相違点13) 混合物に関し、本件発明4は「溶剤を含まない」のに対し、甲2発明bは「脱塩水」を含む点。 (相違点14) 本件発明4は、「リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、甲2発明bはその旨特定されていない点。 (イ)相違点に対する判断 まず、相違点13について判断する。 相違点13に係る構成は、上記相違点5に係る構成と同じであるから、上記相違点5に対する理由と同様な理由により、甲2発明bに基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。 (ウ)まとめ したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明4は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、請求項4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができないものではないから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 ウ 申立理由3-3(甲第3号証を主引例とした本件発明1ないし本件発明4に対する進歩性)について (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲3発明とを対比する。 (a)本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」に関し、本件特許明細書の段落【0010】に「本発明の全固体リチウム二次電池用電極活物質成形体に含まれるポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物は、ポリオキシエチレン鎖を有していれば特に制限はなく、ポリエチレンオキサイド(PEO、PEG及びポリエチレングリコールとも言うことがある)、・・・等を用いることができる。」と記載されているから、本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」は「ポリエチレンオキサイド」を含む。してみれば、甲3発明の「ポリエチレンオキシド」である「ポリエチレングリコールモノメチルエーテル」は、本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」に含まれる。 また、甲3発明の「ポリエチレンオキシド」である「ポリエチレングリコールモノメチルエーテル」と「リチウム塩であるLiN(CF3SO2)2」とからなる「電解質」は本件発明1の「高分子固体電解質」に相当する。 そして、引用発明1の「正極活物質であるLi0.33MnO2」及び「導電性微粒子であるケッチエンブラック」は、本件発明1の「電極活物質」及び「導電助剤」に相当する。 さらに、甲3発明では、「正極活物質であるLi0.33MnO2粉末」、「導電性微粒子であるケッチエンブラック」、「ポリエチレングリコールモノメチルエーテル」及び「リチウム塩であるLiN(CF3SO2)2」を混合した混合物は溶剤を含まないといえ、該混合物が「塗布」される「アルミ箔」は集電体として機能することは明らかである。 してみると、甲3発明における「ポリエチレンオキシド」である「ポリエチレングリコールモノメチルエーテル」と「リチウム塩であるLiN(CF3SO2)2」とからなる「電解質」と、「正極活物質であるLi0.33MnO2粉末」と、「導電性微粒子であるケッチエンブラック」とからなり、溶剤を含まない混合物を「アルミ箔に塗布し」、「加熱」して「ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融」させたものと本件発明1とは、「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、 溶剤を含まない混合物を集電体上に配置して得られる構造体」である点で共通する。 ただし、構造体に関し、本件発明1は、混合物を「圧縮成形して得られる成型体」であるのに対し、甲3発明は混合物を「加熱」して「ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融」させたものである点で相違する。 (b)本件発明1は「前記リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、甲3発明はその旨特定されていない点で相違する。 (c)甲3発明の「固体型リチウムイオンポリマー二次電池」は、本件発明1の「全固体リチウムイオン二次電池」に相当する。 そして、上記(a)を踏まえれば、甲3発明の「固体型リチウムイオンポリマー二次電池」における混合物を「加熱」して「ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融」させたものと本件発明1とは、「全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質構造体」である点で共通する。 ただし、電極活物質構造体に関し、本件発明1は「電極活物質成形体」であるのに対し、甲3発明は、その旨特定されていない点で相違する。 (d)よって、本件発明1と甲3発明とは、 「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を集電体上に配置して得られる構造体である、 全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質構造体。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点15) 構造体に関し、本件発明1は混合物を「圧縮成形して得られる成型体」であるのに対し、甲3発明は混合物を「加熱」して「ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融」させたものである点。 (相違点16) 本件発明1は、「リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、甲3発明はその旨特定されていない点。 (相違点17) 電極活物質構造体に関し、本件発明1は「電極活物質成形体」であるのに対し、甲3発明は、その旨特定されていない点。 b 相違点に対する判断 事案に鑑み、まず相違点16について判断する。 (ア)「リチウム塩の重量割合」について 甲3発明では、「ポリエチレングリコールモノメチルエーテル0.48g」、「リチウム塩であるLiN(CF3SO2)20.16g」であることから、「ポリエチレングリコールモノメチルエーテル」に基づく「LiN(CF3SO2)2」の重量割合は、 [LiN(CF3SO2)2の重量/ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの重量] ×100=(0.16g/0.48g)×100=33.3重量%である。 よって、甲3発明において、「LiN(CF3SO2)2」の「ポリエチレングリコールモノメチルエーテル」に対する重量割合は、本件発明1の「10~40重量%」の範囲内に含まれる。 (イ)「高分子固体電解質の重量割合」について 甲3発明では、「正極活物質であるLi0.33MnO2粉末1.2g、導電性微粒子であるケッチエンブラック0.16g、数平均分子量2000(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定)のポリエチレングリコールモノメチルエーテル0.48g、リチウム塩であるLiN(CF3SO2)20.16g、の比率で混合」される。 してみると、「ポリエチレンオキシド」である「ポリエチレングリコールモノメチルエーテル」および「リチウム塩であるLiN(CF3SO2)2」からなる電解質と正極活物質との合計重量に基づく電解質の重量割合は、 [(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びLiN(CF3SO2)2の合計重量)/(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びLiN(CF3SO2)2の合計重量+ Li0.33MnO2粉末の重量)]×100=[(0.48g+0.16g)/(0.48g+0.16g+1.2g)]×100=34.8% であり、甲3発明の電解質と正極活物質との合計重量に基づく電解質の重量割合は、本件発明1の「5~25重量%」の範囲内に含まれない。 ここで、甲第3号証の段落【0025】に「正極シート(a)において、正極活物質の量100重量部に対して、・・・、ポリエチレンオキシドの量が3~100重量部、好ましくは3~70重量部、例えば5~55重量部であってよい。リチウム塩の量が、ポリエチレンオキシド100重量部に対して、5~50重量部、例えば10~40重量部であってよい。」と記載されているものの、電解質と正極活物質との合計重量に基づく電解質の重量割合について記載されておらず、また、該電解質の重量割合を所定の範囲内に調整する理由も見当たらない。 また、甲第1号証には、甲1発明と同じ技術(以下、「甲第1号証に記載された技術」という。)が、甲第2号証には、甲2発明と同じ技術(以下、「甲第2号証に記載された技術」という。)がそれぞれ記載されているところ、各号証に記載された技術には、高分子固体電解質と電極活物質との合計重量に基づく高分子固体電解質の重量割合を所定の範囲内に調整することは何等記載されていない。 してみれば、甲第3号証に接した当業者は、「高分子固体電解質と電極活物質との合計重量」に基づく「高分子固体電解質の重量割合」を「5~25重量%」とすることを容易に想到し得たとはいえない。 よって、相違点16に係る構成は、甲第3発明、甲第1号証に記載された技術及び甲第2号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 c 小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第3号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術及び甲第2号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 d 特許異議申立人の主張について (a)特許異議申立人は、異議申立書において、概略次のように主張する。ア 甲第3号証には、「正極シート」(混合物の成型体、電極活物質成形体に相当)が記載されているところ、本件出願時(本件優先日)の技術常識を考慮すると、本件特許発明1に記載の「成型体」及び「成形体」には、所定の形状(例えば、層状、フィルム状、平板状等)に形を作るように形成されたものも含まれると認められるから、甲第3号証には、「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成型体」が記載されている。(25頁18ないし22行、40頁8ないし41頁2行) イ 本件特許発明の解決しようとする課題を解決し得る電極活物質成形体として【実施例】に具体的に記載されている「高分子固体電解質」の上記含有割合は「24重量%」の一点だけであるから、発明の詳細な説明の記載からは「高分子固体電解質」の上記含有割合の特異点や臨界的意義は認められない。そうすると、甲第3号証に記載された発明において、上記電解質の重量割合「30.6重量%」を「5~25重量%」に調整する程度のことは、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化であって、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。(43頁1ないし10行) (b)特許異議申立人の主張について検討する。 ア 主張アについて 本件訂正により、訂正前の請求項1に記載された「混合物」について「溶剤を含まない」との限定が付加され、さらに、訂正前の請求項1に記載された「成型体」について、該「混合物」を「集電体上に配置し、圧縮成形して得られる」との限定が付加されたところ、上記cで述べたように、「成型体」が混合物を「圧縮成形して得られる」ものであることは相違点15に係る構成である。 ここで、甲3発明は、「正極活物質であるLi0.33MnO2粉末」、「導電性微粒子であるケッチエンブラック」、「ポリエチレングリコールモノメチルエーテル」、「リチウム塩であるLiN(CF3SO2)2」を「混合し、加熱した板ヒーター上でアルミ箔に塗布し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融させ」るものであり、「圧縮成形して得られる」ものではない。 また、甲第3号証の段落【0026】には、「正極は、正極活物質と、導電性微粒子と、リチウム塩を溶解したポリエチレンオキシドを混合し、加熱軟化してアルミニウム箔上に塗着させるか、溶媒を入れてペーストを造りアルミニウム箔にコーティング後、溶媒を乾燥除去して製造することが出来る。溶媒としてはトルエン、キシレン、ベンゼン、アセトニトリル、エチレングリコール、モノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、THF等が使用可能である。目的の厚みにするため及び正極活物質密度を上げるため乾燥後プレスしてもよい。正極の厚みは、例えば、10~50μmであってよい。」(下線は当審が付与。)と記載されているものの、当該記載は、正極の製造方法として、「導電性微粒子と、リチウム塩を溶解したポリエチレンオキシドを混合し、加熱軟化してアルミニウム箔上に塗着させる」方法と、「溶媒を入れてペーストを造りアルミニウム箔にコーティング後、溶媒を乾燥除去」する方法を挙げ、「乾燥後」即ち、「ペースト」を用いた後者の方法において「プレス」することを示唆していると解される。 してみれば、甲第3号証には、「正極活物質であるLi0.33MnO2粉末」、「導電性微粒子であるケッチエンブラック」、「ポリエチレングリコールモノメチルエーテル」、「リチウム塩であるLiN(CF3SO2)2」を「混合し」、「加熱し」て「ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融させ」た後、「圧縮成形」することは記載されていないといえる。 さらに、甲第1号証及び甲第2号証にも、「混合物」に含まれる高分子化合物を「溶融」させた後、「圧縮成形」することは何等記載されていない。 してみれば、甲3発明に、甲第1号証に記載された技術及び甲第2号証に記載された技術を採用したとしても、混合物を「加熱し」て「ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融させ」た後、「圧縮成形」すること、即ち、相違点15に係る構成を導き出すことはできない。 よって、特許異議申立人の主張アは採用できない。 イ 主張イについて 上記b(イ)で述べたように、甲第3号証には、電解質と正極活物質との合計重量に基づく電解質の重量割合について記載されておらず、また、該電解質の重量割合を所定の範囲内に調整する理由も見当たらないから、甲第3号証に接した当業者は、「高分子固体電解質と電極活物質との合計重量」に基づく「高分子固体電解質の重量割合」を「5~25重量%」とすることを容易に想到し得たとはいえない。 よって、特許異議申立人の主張イは採用できない。 (イ)本件発明2、3について 請求項2、3は、独立請求項である請求項1を引用するものであり、本件発明2、3は、引用する本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1に対する理由と同様な理由により、本件発明2、3は、甲3発明に基づいて、又は、甲3発明、甲第1号証に記載された技術及び甲第2号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件発明4について a 対比 本件発明4と甲3発明aとを対比する。 上記(ア)aで述べた点も踏まえれば、本件発明4と甲3発明aとは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 (相違点18) 混合物を処理する工程に関し、本件発明4は混合物を「圧縮成形」する工程であるのに対し、甲3発明aは混合物を「加熱」して「ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを溶融」させる点。 (相違点19) 本件発明4は、「リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、甲3発明aはその旨特定されていない点。 (相違点20) 電極活物質構造体に関し、本件発明1は「電極活物質成形体」であるのに対し、甲3発明は、その旨特定されていない点。 b 相違点に対する判断 事案に鑑み、まず相違点19について判断する。 相違点19に係る構成は、上記相違点16に係る構成と同じであるから、相違点16に対する理由と同様な理由により、甲3発明aに基づいて、又は、甲3発明a、引用文献1に記載された技術及び引用文献2に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 c 小括 よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲3発明aに基づいて、又は、甲3発明a、引用文献1に記載された技術及び引用文献2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (エ)まとめ 以上から、本件発明1ないし4は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第3号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術及び甲第2号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 エ 申立理由3-4(甲第4号証を主とした本件発明1ないし本件発明4に対する進歩性)について (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲4発明とを対比する。 (a)本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」に関し、本件特許明細書の段落【0010】に「本発明の全固体リチウム二次電池用電極活物質成形体に含まれるポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物は、ポリオキシエチレン鎖を有していれば特に制限はなく、ポリエチレンオキサイド(PEO、PEG及びポリエチレングリコールとも言うことがある)、・・・等を用いることができる。」と記載されているから、本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」は「ポリエチレンオキサイド」を含む。してみれば、甲4発明の「エチレンオキシド単位(EO)93.5モル%であるポリエーテル系重合体A」は、本件発明1の「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物」に含まれる。 また、甲4発明の「エチレンオキシド単位(EO)93.5モル%であるポリエーテル系重合体A100部に、電解質塩化合物であるビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム21.6部」「を混合して得られた組成物」は、本件発明1の「高分子固体電解質」に相当する。 そして、甲4発明の「活物質であるコバルト酸リチウム」及び「導電性微粒子であるケッチェンブラック」は、本件発明1の「電極活物質」及び「導電助剤」に相当する。 さらに、甲4発明における、「エチレンオキシド単位(EO)93.5モル%であるポリエーテル系重合体A」「に、電解質塩化合物であるビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム」「を混合して得られた組成物」、「活物質であるコバルト酸リチウム」及び「導電性微粒子であるケッチェンブラック」を混合した混合物は溶剤を含まないといえ、「組成物」、「活物質」及び「導電性微粒子」が供給された「二軸押出機」から「押し出」された「フィルム」を「紫外線を照射して架橋させ得られた、カソードフィルム」は成型体であるといえる。 してみると、甲4発明において、「エチレンオキシド単位(EO)93.5モル%であるポリエーテル系重合体A」「に、電解質塩化合物であるビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム」「を混合して得られた組成物」、「活物質であるコバルト酸リチウム」及び「導電性微粒子であるケッチェンブラック」が供給された「二軸押出機」から「押し出」された「フィルム」を「紫外線を照射して架橋させ得られる、カソードフィルム」と本件発明1とは、「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、 溶剤を含まない混合物の成型体」である点で共通する。 ただし、成型体に関し、本件発明1は混合物を「集電体上に配置し、圧縮成形して得られる」のに対し、甲4発明は「二軸押出機」から「押し出」された「フィルム」を「紫外線を照射して架橋させ得られる」点で相違する。 (b)本件発明1は、「リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、甲4発明はその旨特定されていない点。 (c)上記(a)も踏まえれば、甲4発明の「固体リチウムイオン二次電池用のカソードフィルム」は、本件発明1の「全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体」に相当する。 (d)よって、本件発明1と甲4発明とは、 「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物の成型体である、 全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成型体。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点21) 成型体に関し、本件発明1は混合物を「集電体上に配置し、圧縮成形して得られる」のに対し、甲4発明は「二軸押出機」から「押し出」された「フィルム」を「紫外線を照射して架橋させ得られる」点。 (相違点22) 本件発明1は、「リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、甲4発明はその旨特定されていない点。 b 相違点に対する判断 事案に鑑み、まず相違点22について判断する。 (ア)「リチウム塩の重量割合」について 甲4発明では、「エチレンオキシド単位(EO)93.5モル%であるポリエーテル系重合体A100部に、電解質塩化合物であるビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム21.6部」が混合されるから、「ポリエーテル重合体」に基づく「ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム」の重量割合は、 [ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムの重量/ポリエーテル系重合体Aの重量] ×100=(21.6部/100部)×100=21.6重量%である。 よって、甲3発明において、「ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム」の「ポリエーテル系重合体A」に対する重量割合は、本件発明1の「10~40重量%」の範囲内に含まれる。 (イ)「高分子固体電解質の重量割合」について 甲4発明では、「エチレンオキシド単位(EO)93.5モル%であるポリエーテル系重合体A100部に、電解質塩化合物であるビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム21.6部」「を混合して得られた組成物」に「途中から活物質であるコバルト酸リチウム336部」を加えている。 してみると、「ポリエーテル系重合体A」および「ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム」からなる「組成物」と「活物質」との合計重量に基づく「組成物」の重量割合は、 [(ポリエーテル系重合体A及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムの合計重量)/(ポリエーテル系重合体A及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムの合計重量+活物質の重量)]×100=[(100部+21.6部)/(100部+21.6部+336部)]×100≒26.6重量% であり、甲4発明の「組成物」と「活物質」との合計重量に基づく「組成物」の重量割合は、本件発明1の「5~25重量%」の範囲内に含まれない。 ここで、甲第4号証の段落【0022】に「活物質の配合量は、前記ポリエーテル重合体に対して重量基準で好ましくは0.1~50倍、より好ましくは0.3~20倍、特に好ましくは0.5~10倍である。」、段落【0025】に「ポリエーテル重合体に対する電解質塩化合物の使用量は、(電解質塩化合物中のアルカリ金属塩のモル数)/(重合体中のエーテル酸素の総モル数)が通常0.001~5、好ましくは0.005~3、より好ましくは0.01~1となる量である。」とそれぞれ記載されているものの、組成物と活物質との合計重量に基づく組成物の重量割合について記載されておらず、また、該組成物の重量割合を所定の範囲内に調整する理由も見当たらない。 また、甲第1号証及び甲第2号証に記載された各技術には、高分子固体電解質と電極活物質との合計重量に基づく高分子固体電解質の重量割合を所定の範囲内に調整することは何等記載されていない。 してみれば、甲第4号証に接した当業者は、「高分子固体電解質と電極活物質との合計重量」に基づく「高分子固体電解質の重量割合」を「5~25重量%」とすることを容易に想到し得たとはいえない。 よって、相違点22に係る構成は、甲第4発明、甲第1号証に記載された技術及び甲第2号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 c 小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第4号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術及び甲第2号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 d 特許異議申立人の主張について (a)特許異議申立人は、異議申立書において、概略次のように主張する。ア 甲第4号証には、「電池用カソードフィルム」(混合物の成型体、電極活物質成形体に相当)が記載されているところ、本件出願時(本件優先日)の技術常識を考慮すると、本件特許発明1に記載の「成型体」及び「成形体」には、所定の形状(例えば、層状、フィルム状、平板状等)に形を作るように形成されたものも含まれると認められるから、甲第3号証には、「ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成型体」が記載されている。(25頁18ないし22行、48頁2ないし8行) イ 本件特許発明の解決しようとする課題を解決し得る電極活物質成形体として【実施例】に具体的に記載されている「高分子固体電解質」の上記含有割合は「24重量%」の一点だけであるから、発明の詳細な説明の記載からは「高分子固体電解質」の上記含有割合の特異点や臨界的意義は認められない。そうすると、甲第4号証に記載された発明において、上記電解質の重量割合「26.6重量%」を「5~25重量%」に調整する程度のことは、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化であって、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。(49頁16ないし24行) (b)特許異議申立人の主張について検討する。 ア 主張アについて 本件訂正により、訂正前の請求項1に記載された「混合物」について「溶剤を含まない」との限定が付加され、さらに、訂正前の請求項1に記載された「成型体」について、該「混合物」を「集電体上に配置し、圧縮成形して得られる」との限定が付加されたところ、上記cで述べたように、「成型体」が混合物を「集電体上に配置し、圧縮成形して得られる」ものであることは相違点21に係る構成である。 ここで、甲4発明の「カソードフィルム」は、「ポリエーテル系重合体A」に「電解質塩化合物であるビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム」「を混合して得られた組成物を、二軸押出機に供給し、途中から活物質であるコバルト酸リチウム」「、導電性微粒子であるケッチェンブラック」「を供給してフィルムを押し出し、紫外線を照射して架橋させ得られる」ものであり、「集電体上に配置し、圧縮成形して得られる」ものではない。 そして、甲第4号証の段落【0026】によれば、電池用カソードフィルムの表面精度、生産性等の観点からプレス成形法等の他の成形法よりも押出成形法を用いるのが好ましく、押出成形法によりフィルム成形を行う場合は、二軸押出機を用いたダイ押出法によるのが最も好ましいことが記載され、まして、甲第4号証には、混合物を「集電体」上に配置する記載や示唆もない。 してみると、甲第1号証に記載された技術が「正極合剤ペーストを得て、正極集電層の片面に塗布し、85℃で5時間真空乾燥して形成され、油圧プレスで圧延することにより得られる」ものであり、また、甲第2号証に記載された技術が「アルミニウム箔からなる集電体上に押出成形した混合物を圧延」するものであるとしても、甲4発明に、あえて甲第1号証に記載された技術及び甲第2号証に記載された技術を採用する動機はないといえる。 よって、甲4発明に、甲第1号証に記載された技術及び甲第2号証に記載された技術を採用し、混合物を「集電体上に配置し、圧縮成形」すること、即ち、相違点21に係る構成を当業者が容易になし得たこととはいえない。 よって、特許異議申立人の主張アは採用できない。 イ 主張イについて 上記b(イ)で述べたように、甲第4号証には、組成物と活物質との合計重量に基づく組成物の重量割合について記載されておらず、また、該組成物の重量割合を所定の範囲内に調整する理由も見当たらないから、甲第4号証に接した当業者は、「高分子固体電解質と電極活物質との合計重量」に基づく「高分子固体電解質の重量割合」を「5~25重量%」とすることを容易に想到し得たとはいえない。 よって、特許異議申立人の主張イは採用できない。 (イ)本件発明2、3について 請求項2、3は、独立請求項である請求項1を引用するものであり、本件発明2、3は、引用する本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1に対する理由と同様な理由により、本件発明2、3は、甲4発明に基づいて、又は、甲4発明、甲第1号証に記載された技術及び甲第2号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件発明4について a 対比 本件発明4と甲4発明aとを対比する。 上記(ア)aで述べた点も踏まえれば、本件発明4と甲4発明aとは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 (相違点23) 混合物を処理する工程に関し、本件発明4aは混合物を「集電体上に配置し、圧縮成形」する工程であるのに対し、甲4発明aは「二軸押出機」から「押し出」された「フィルム」を「紫外線を照射して架橋させ」る工程である点。 (相違点24) 本件発明4は、「リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である」のに対し、甲4発明aはその旨特定されていない点。 b 相違点に対する判断 事案に鑑み、まず相違点24について判断する。 相違点24に係る構成は、上記相違点22に係る構成と同じであるから、相違点22に対する理由と同様な理由により、甲4発明aに基づいて、又は、甲4発明a、引用文献1に記載された技術及び引用文献2に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 c 小括 よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲4発明aに基づいて、又は、甲4発明a、引用文献1に記載された技術及び引用文献2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (エ)まとめ 以上から、本件発明1ないし4は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第4号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術及び甲第2号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701085

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