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特許異議申立

2023-700285

無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤及び無機材料用水性接着剤

審判番号
2023-700285
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-531858
登録番号
7145219
請求日
2023年03月15日
審決日
2024年07月31日
公報発行日
2024年11月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三洋化成工業株式会社
  • 【権利者代理人】古谷 信也
  • 【異議申立人】寺澤 佳奈美
審判長/審判官
  • 審判長 村守 宏文
  • 審判官 門前 浩一
  • 審判官 光本 美奈子
分類
P1651.537-YAA(C09J) / P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7145219号発明「無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤及び無機材料用水性接着剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7145219号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第7145219号の請求項1-6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許(特許第7145219号)に係る出願は、平成30年7月24日を国際出願日とするものであって、令和4年9月21日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月30日にその特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1~6の発明に係る特許について、令和5年3月15日に寺澤 佳奈美(以下「申立人」ともいう。)による特許異議の申立てがなされたものである。 その後、当審は、令和5年9月28日付けで取消理由を通知し(発送は同年10月3日)、この取消理由通知に対し、特許権者は、その指定期間内である同年11月17日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正の内容を「本件訂正」という。)を行った。 また、当審は、同年同月28日付けで申立人に訂正請求があった旨を通知したが(発送は同年12月5日)、この通知に対し、申立人は、その指定期間内に意見書を提出しなかった。 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨 本件訂正の請求の趣旨は、「特許第7145219号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」というものである。 2 本件訂正 (1)本件訂正は、次の訂正事項1~3からなるものである。訂正箇所に当審が下線を付した。文言を削除する訂正の場合は、その前後の文字に下線を付した。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、「前記主剤(D)が、デンプン(D1)、ポリビニルアルコール(D2)、3個~20個の単糖から構成された糖(D3)及び5価以上の多価カルボン酸(D4)からなる群から選ばれる少なくとも1種である」とあるのを、「前記主剤(D)が、デンプン(D1)及びポリビニルアルコール(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1において、「前記主剤(D)と前記架橋剤(C)との組合せ[(D)/(C)]は、(D1)/(C1)、(D1)/(C5)、(D2)/(C2)、(D3)/(C3)、(D4)/(C3)、又は(D4)/(C4)である」とあるのを、「前記主剤(D)と前記架橋剤(C)との組合せ[(D)/(C)]は、(D1)/(C1)、(D1)/(C5)又は(D2)/(C2)である」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する)。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1において、「前記架橋剤(C)が、尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)、ポリアミン(C3)、アルカノールアミン(C4)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」とあるのを、「前記架橋剤(C)が、尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する)。 (2)一群の請求項について 訂正前の請求項1~6について、請求項2~6はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1~3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~6にそれぞれ対応する本件訂正後の請求項1~6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求ごとに請求されたものである。 3 訂正要件についての判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、本件訂正前の「前記主剤(D)」について、「デンプン(D1)、ポリビニルアルコール(D2)、3個~20個の単糖から構成された糖(D3)及び5価以上の多価カルボン酸(D4)からなる群から選ばれる少なくとも1種である」と特定されていたところ、その選択肢から「3個~20個の単糖から構成された糖(D3)」及び「5価以上の多価カルボン酸(D4)」を削除して「前記主剤(D)が、デンプン(D1)及びポリビニルアルコール(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である」と訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 本件特許明細書の段落【0021】には「本発明における主剤(D)は、例えば、デンプン(D1)、ポリビニルアルコール(D2)、3個~20個の単糖から構成された糖(D3)及び5価以上の多価カルボン酸(D4)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。」と記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。 また、上記アのとおり、訂正事項1は、「前記主剤(D)」の選択肢から「3個~20個の単糖から構成された糖(D3)」及び「5価以上の多価カルボン酸(D4)」を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5、6項に適合する。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、本件訂正前の「前記主剤(D)と前記架橋剤(C)との組合せ[(D)/(C)]」について、「(D1)/(C1)、(D1)/(C5)、(D2)/(C2)、(D3)/(C3)、(D4)/(C3)、又は(D4)/(C4)である」と特定されていたところ、その選択肢から「(D3)/(C3)」、「(D4)/(C3)」、及び「(D4)/(C4)」を削除して「前記主剤(D)と前記架橋剤(C)との組合せ[(D)/(C)]は、(D1)/(C1)、(D1)/(C5)又は(D2)/(C2)である」と訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 本件特許明細書の段落【0030】には「主剤(D)と架橋剤(C)との組合せ[(D)/(C)]としては、好ましいのは(D1)/(C1)、(D1)/(C3)、(D1)/(C4)、(D1)/(C5)、(D2)/(C2)、(D2)/(C5)、(D3)/(C1)、(D3)/(C3)、(D3)/(C4)、(D3)/(C5)、(D4)/(C3)、(D4)/(C4)、さらに好ましいのは(D1)/(C1)、(D2)/(C2)、(D3)/(C3)、(D4)/(C3)、(D4)/(C4)、とくに好ましいのは(D1)/(C1)、(D2)/(C2)である。」と記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。 また、上記アのとおり、訂正事項2は、「前記主剤(D)と前記架橋剤(C)との組合せ[(D)/(C)]」の選択肢から「(D3)/(C3)」、「(D4)/(C3)」、及び「(D4)/(C4)」を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5、6項に適合する。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、本件訂正前の「前記架橋剤(C)」について、「尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)、ポリアミン(C3)、アルカノールアミン(C4)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」と特定されていたところ、その選択肢から「ポリアミン(C3)」及び「アルカノールアミン(C4)」を削除して「前記架橋剤(C)が、尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」と訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 本件特許明細書の段落【0027】には「本発明における架橋剤(C)は、前記主剤(D)と反応し得る官能基を少なくとも2個有するものである。架橋剤(C)としては、例えば、尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)、ポリアミン(C3)、アルカノールアミン(C4)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。」と記載されているから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。 また、上記アのとおり、訂正事項3は、「前記架橋剤(C)」の選択肢から「ポリアミン(C3)」及び「アルカノールアミン(C4)」を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5、6項に適合する。 (4)独立特許要件について 上記第1で述べたように、本件特許異議の申立ては、本件請求項1~6に係る特許のうち請求項1~6(全請求項)に係る特許に対してなされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課される請求項はない。 (5)本件訂正の適否についての小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許の請求項1~6に係る発明は、その特許の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された以下のとおりのものである(請求項1~6に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。 「【請求項1】 無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)と、主剤(D)と、架橋剤(C)と、水とを含有してなる水性接着剤であって、前記主剤(D)が、デンプン(D1)及びポリビニルアルコール(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である無機材料用水性接着剤であって、前記耐湿性向上剤(J)が、下記(共)重合体(A1)および(共)重合体(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体(A)を含有してなる耐湿性向上剤であり、前記架橋剤(C)が、尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記主剤(D)と前記架橋剤(C)との組合せ[(D)/(C)]は、(D1)/(C1)、(D1)/(C5)又は(D2)/(C2)である、無機材料用水性接着剤: (共)重合体(A1):炭素数3~30の不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)と25℃における溶解度が10g以下/水100gである(メタ)アクリル酸エステル(a2)とを構成単量体として含み、重量平均分子量が3,000~150,000である(共)重合体、 (共)重合体(A2):前記不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含み、前記(メタ)アクリル酸エステル(a2)を構成単量体として含まず、重量平均分子量が6,000~150,000である(共)重合体。 【請求項2】 前記(a1)が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の無機材料用水性接着剤。 【請求項3】 前記(a2)が、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数2~28)エステルである請求項1又は2記載の無機材料用水性接着剤。 【請求項4】 前記(共)重合体(A1)の構成単量体中の前記(a1)と(a2)との重量比[(a1)/(a2)]が、60/40~99/1である請求項3記載の無機材料用水性接着剤。 【請求項5】 前記主剤(D)と架橋剤(C)との合計重量に基づいて、(共)重合体(A)の重量が1~25重量%である請求項1~4のいずれか記載の無機材料用水性接着剤。 【請求項6】 請求項1~5のいずれか記載の無機材料用水性接着剤の硬化物で接着された無機材料接着物。」 第4 特許異議の申立ての概要 申立人が申立てた申立理由、及び、提出した証拠は、下記のとおりである。なお、以下、各証拠(下記2の甲第1~5号証)を、その番号により、「甲1」、「甲2」などともいう。また、下記1の申立理由3、4、5、6、7は、それぞれ、甲1、甲2、甲3、甲4、甲5を主たる証拠とするものである。 1 申立理由 (1)申立理由1 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6の記載は、特許法第36条6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を充足しない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (2)申立理由2 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号の規定を充足しない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (3)申立理由3 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲1)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるか、または、当該発明に基いて本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (4)申立理由4 本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2、6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲2)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるか、または、当該発明に基いて本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (5)申立理由5 本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2、5、6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲3)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるか、または、当該発明に基いて本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (6)申立理由6 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4、6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲4)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるか、または、当該発明に基いて本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (7)申立理由7 本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2、6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲5)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるか、または、当該発明に基いて本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 証拠 甲第1号証:特開2017-226826号公報 甲第2号証:米国特許第5932689号明細書 甲第2号証の2:甲第2号証の抄訳 甲第3号証:特開2007-146315号公報 甲第4号証:特開2014-28939号公報 甲第5号証:特開2007-211161号公報 第5 取消理由に採用された証拠等の記載事項及び証拠に記載された発明 1 甲1について (1)甲1に記載されている事項 「【請求項1】 不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含む(共)重合体(A)、架橋剤(B)、および水を含有してなる水性バインダーであって、該(B)がアルカノールアミン(B1)と該(B1)以外のポリオール(B2)とを含有する鉱物繊維用水性バインダー(X)。」 「【0004】 ・・・ 本発明の目的は、上記課題を解決し、耐熱性積層体材料のガラス繊維等の鉱物繊維の接着性に優れる鉱物繊維積層体を与える水性バインダーを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含む(共)重合体(A)、架橋剤(B)、および水を含有してなる水性バインダーであって、該(B)がアルカノールアミン(B1)と該(B1)以外のポリオール(B2)とを含有する鉱物繊維用水性バインダー(X)である。」 「【実施例】 【0056】 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。 【0057】 [(共)重合体(A)の製造] <製造例1> オートクレーブに、溶媒として水260部、次亜リン酸ナトリウム57.4部を仕込み、撹拌下窒素を通気してオートクレーブ内の窒素置換を行った(気相酸素濃度400ppm以下)。窒素を吹き込みながら、100℃に昇温した後、過酸化水素水(30重量%水溶液)21.6部を水60部に溶解した水溶液と、アクリル酸(a1-1)250部を別々に同時に3時間かけて滴下し、さらに100℃で2時間撹拌して重合させ、不揮発成分が40%になるように水を加え、(共)重合体(A-1)の水溶液を得た。(A-1)はMw2,500、酸価800であった。 【0058】 <製造例2~3、8> 製造例1において、表1に従った以外は製造例1と同様に行い、(共)重合体(A-2)~(A-3)、(A-8)の水溶液を得た。 【0059】 <製造例4> ・・・ 【0060】 <製造例5> オートクレーブに、溶媒として水300部、イソプロパノール300部を仕込み、撹拌下窒素を通気してオートクレーブ内の窒素置換を行った(気相酸素濃度400ppm以下)。窒素を吹き込みながら82℃に昇温した後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)2.52部をイソプロパノール50部に溶解させた溶液と、アクリル酸(a1-1)260部とアクリル酸ブチル(a2-1)60部を同時に2時間かけて滴下し、さらに82℃で2時間撹拌して重合反応を行った。その後、100℃で2時間、減圧で脱溶剤して、次亜リン酸ナトリウム4.3部を添加した。次に不揮発分が40%になるように水を加え、(共)重合体(A-5)の水溶液を得た。(A-5)はMw12,000、酸価640あった。 【0061】 <製造例6> ・・・ 【0063】 製造例1~製造例8の結果を表1に示す。 【0064】 <実施例1~19、比較例1> 表2に示した配合組成(部)に従って各鉱物繊維用水性バインダー(X)を調製した。該バインダーを用いて下記要領で鉱物繊維積層体の試験片およびガラス繊維試験片を作成し、それぞれ後述の方法で評価した。結果を表2に示す。 【0065】 <鉱物繊維積層体の作成> タテ×ヨコ×厚みが30cm×30cm×1cm、密度が0.030g/cm3のガラス繊維積層物を、離型処理したタテ×ヨコ×深さが30cm×30cm×5cmの平板金型内に載置した。次に、付着固形分量が該積層物の重量に対して15%相当量となる水性バインダーをエアスプレーを使用して該積層物に均一噴霧した。その後、200℃の循風乾燥機で60分間熱処理(乾燥、硬化)を行い、厚み約1cm、密度0.035g/cm3の積層体(S-1)を得た。同様にして積層体(S-1)を合計5個作成した。 ・・・ 【0069】 【表1】 [図:0001416436000001.jpg] 【0070】 【表2】 [図:0001416436000002.jpg] 【0071】 表1、2の結果から、本発明の鉱物繊維用水性バインダーは、比較のものに比べて、鉱物繊維積層体の接着性に優れ、さらに柔軟性に優れることがわかる。また、鉱物繊維交点での接着性に優れている。 【産業上の利用可能性】 【0072】 本発明の鉱物繊維用水性バインダー(X)は、耐熱性積層体材料である鉱物繊維(ガラス繊維等)を接着するのに好適であり、該水性バインダーを用いた鉱物繊維積層体は、建築物や各種装置の断熱材、保温材および吸音材等として幅広い分野に適用できることから、極めて有用である。」 (2)甲1発明 上記(1)によれば、甲1の実施例18で調製された鉱物繊維用水性バインダー(X)は、表2に示されているとおり、(A-2)の水溶液90部、(A-5)の水溶液10部、ジエタノールアミン15部、ソルビトール3部、及び、水20部からなるものであり、その配合量(部)の単位は、重量部である(段落【0056】)。 また、(A-2)の水溶液、及び、(A-5)の水溶液は、それぞれ、製造例2、及び、製造例5で製造したものである(段落【0058】、【0060】、【0069】【表1】)から、(A-2)の水溶液は、アクリル酸の重合体を不揮発分として含むものであり、その不揮発分の含有割合は、40%であり、アクリル酸の重合体のMwは、10000であり、酸価は、795である。また、(A-5)の水溶液は、アクリル酸260重量部とアクリル酸ブチル60重量部の共重合体を不揮発分として含むものであり、その不揮発分の含有割合は、40%であり、共重合体のMwは、12000であり、その酸価は、640である。 以上によれば、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」ともいう。)が記載されていると認められる。 甲1発明 「(A-2)の水溶液90重量部、(A-5)の水溶液10重量部、ジエタノールアミン15重量部、ソルビトール3重量部、及び、水20重量部からなる鉱物繊維用水性バインダー(X)であって、 前記(A-2)の水溶液は、Mwが10000であり、酸価が795であるアクリル酸の重合体を不揮発分として40%含むものであり、 前記(A-5)の水溶液は、 Mwが12000であり、酸価が640であるアクリル酸260重量部とアクリル酸ブチル60重量部の共重合体を不揮発分として40%含むものである、鉱物繊維用水性バインダー(X)」 2 甲2について (1)甲2に記載されている事項 甲2は、外国語で記載されているので、当審による翻訳で示す。 「1 ホルムアルデヒドを含まない硬化性組成物であって (a)少なくとも2個のカルボン酸基、無水物基又はその塩を含むポリ酸 (b)ヒドロキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基及びそれらの混合物からなる群から選択される活性水素を含む基を少なくとも2つ有する活性水素化合物;並びに (c)シアナミド、ジシアンジアミド、1,2モノ又はジ-(C1~C6アルキル)置換-3-シアノグアニジンであって、エチル-3-シアノグアニジン、1,2-ジエチル-3-シアノグアニジンから選ばれたもの、及び、1,2モノ又はジ-(C6~C12アリル)置換-3-シアノグアニジンであって、フェニルジシアンジアミドから選ばれたもの、からなる群より選択される1種以上の化合物、並びに任意選択的に、 (d)促進剤を含み、 前記カルボン酸基、無水物基又はそれらの塩の当量数と前記活性水素基の当量数との比は、1/0.01~約1/3であり、前記カルボン酸基、無水物基又はそれらの塩は、固定塩基で35重量%未満の範囲で中和されている、硬化性組成物。」(11欄34行~12欄13行) 「(実施例1) ガラス繊維ハンドシートの作製とバインダー組成物によるシートの飽和」(7欄50~52行) 「繊維が乱されないように穏やかな流れを維持しながら、バインダー組成物を多孔漏斗で塗布した。過剰のバインダー組成物を真空除去した。1ストロークした後、シートを90度回転させ、もう1ストロークした。これを処理ガラス繊維シートと呼ぶ。次いで、処理されたガラス繊維シートを別のスクリム片に転写して、第1のスクリムヘの付着を防止した。次いで、ガラス繊維シートを190℃で3分間、高容量werner-Mathisオーブンで乾燥、硬化させた。着火時の目標損失は重量ベースで22%と0.5lb/100sq.ft.(25g/m2)であった。」(8欄13~22行) 「実施例2 ジシアンジアミド5%のバインダー組成物の調製 ポリアクリル酸(Mw=9000)[ポリ酸A]32.82g、及び、ポリアクリル酸(Mw=6000)[ポリ酸B] 59.08gに、トリエタノールアミン(TEA)5.4g、ジシアンジアミド(dicy)1.87g、18.33gの(1.0%)Dow Corningシラン[使用するガラス繊維に応じて任意に加える]、及び水165.94gを添加した。この混合物は、13.0%の活性成分(水以外の全ての成分)を含有し、pHは約3.0であり、10cpsの粘度(Brookfie1d LVF、60rpmで#1スピンドル)を有する。得られたバインダー組成物を実施例1に記載のように塗布した。」(8欄23~37行) (2)甲2発明 上記(1)によれば、甲2には、実施例2のバインダー組成物において、任意成分である「Dow Corningシラン」を含まない場合に基づいて、以下の発明(以下、「甲2発明」ともいう。)が記載されていると認められる。 甲2発明 「ポリアクリル酸(Mw=9000)[ポリ酸A]32.82g、ポリアクリル酸(Mw=6000)[ポリ酸B] 59.08g、トリエタノールアミン(TEA)5.4g、ジシアンジアミド(dicy)1.87g、及び水165.94gからなるものであり、pHは約3.0であり、10cpsの粘度(Brookfie1d LVF、60rpmで#1スピンドル)を有するバインダー組成物」 3 甲3について (1)甲3に記載されている事項 「【請求項1】 酸価が350~850mgKOH/gのアクリル系樹脂と、ジアルカノールアミンを少なくとも1種類以上含有する架橋剤と、硬化促進剤と、無機酸のアンモニウム塩とを含み、前記アクリル系樹脂中のカルボキシル基のモル数に対し、前記架橋剤中の水酸基とイミノ基との合計のモル数が、モル比で0.8~1.5であり、揮発性塩基性化合物によってpHが6.0~8.0に調整されていることを特徴とする無機繊維用水性バインダー。 【請求項2】 前記アクリル系樹脂は、重量平均分子量が1,000~15,000である請求項1に記載の無機繊維用水性バインダー 【請求項3】 前記アクリル系樹脂は、重量平均分子量が1,000~4,000であるアクリル系樹脂(A)と、重量平均分子量が8000~20,000であるアクリル系樹脂(B)との混合物である請求項1に記載の無機繊維用水性バインダー。 ・・・ 【請求項7】 請求項1~6のいずれか一つに記載の無機繊維用水性バインダーを、無機繊維に付与し、加熱硬化させて成形したことを特徴とする無機繊維断熱吸音材。」 「【実施例】 【0084】 以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。なお、以下の説明において、部、%は、特に断りのない場合は質量基準を表す。」 「【0091】 (実施例7) アクリル酸及び、メチルアクリレートからなるアクリル系樹脂(酸価640mgKOH/g、重量平均分子量2,200)80%と、スチレン及び、マレイン酸からなるアクリル系樹脂(酸価710mgKOH/g、重量平均分子量17,500)20%の混合物を水で溶解させた樹脂溶液(固形分40%)を固形分換算で100部と、架橋剤としてジエタノールアミンを40.8部と、硬化促進剤として、次亜リン酸カルシウムを6.0部とを混合(架橋剤のイミノ基と水酸基の総モル量/アクリル系樹脂のカルボキシル基のモル量=1.0)し、25%アンモニア水でpH6.5に調整した水溶性組成物を得て、さらに、シランカップリング剤としてγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン0.2部及び、硫酸アンモニウム2.0部を添加して攪拌した後、固形分が15%となるように水で希釈し、固形分40%のパラフィンワックス水分散体を4.0部添加して、実施例7の無機繊維用水性バインダーを得た。」 「【0100】 実施例1~7、比較例1~8の無機繊維用水性バインダーを用いた無機繊維断熱吸音材について、下記方法により、ホルムアルデヒド放出量、引き裂き荷重を評価した。結果を表1にまとめて記す。」 「【0111】 一方、実施例1~7の無機繊維用水性バインダーを用いた無機繊維断熱吸音材は、バインダーの硬化時にホルムアルデヒドの放出がなく、また、フェノール樹脂系バインダーを使用した比較例8の無機繊維断熱吸音材と同等又はそれ以上の引き裂き荷重を有するものであった。」 (2)甲3発明 上記(1)によれば、甲3の実施例7で得られた無機繊維用水性バインダーは、「アクリル酸及び、メチルアクリレートからなるアクリル系樹脂(酸価640mgKOH/g、重量平均分子量2,200)80%と、スチレン及び、マレイン酸からなるアクリル系樹脂(酸価710mgKOH/g、重量平均分子量17,500)20%の混合物を水で溶解させた樹脂溶液(固形分40%)を固形分換算で100部と、架橋剤としてジエタノールアミンを40.8部と、硬化促進剤として、次亜リン酸カルシウムを6.0部とを混合(架橋剤のイミノ基と水酸基の総モル量/アクリル系樹脂のカルボキシル基のモル量=1.0)し、25%アンモニア水でpH6.5に調整した水溶性組成物を得て、さらに、シランカップリング剤としてγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン0.2部及び、硫酸アンモニウム2.0部を添加して攪拌した後、固形分が15%となるように水で希釈し、固形分40%のパラフィンワックス水分散体を4.0部添加して」得たものであり、その配合量(部)の単位は、「質量基準」である(段落【0084】)。 また、実施例7で得られた無機繊維用水性バインダーは、アクリル酸及び、メチルアクリレートからなるアクリル系樹脂を80質量部(=100×0.8)、スチレン及び、マレイン酸からなるアクリル系樹脂を20質量部(=100×0.2)含んでいる。 以上によれば、甲3には、以下の発明(以下、「甲3発明」ともいう。)が記載されていると認められる。 甲3発明 「アクリル酸及び、メチルアクリレートからなるアクリル系樹脂(酸価640mgKOH/g、重量平均分子量2,200)80質量部と、スチレン及び、マレイン酸からなるアクリル系樹脂(酸価710mgKOH/g、重量平均分子量17,500)20質量部と、架橋剤としてジエタノールアミンを40.8質量部と、硬化促進剤として、次亜リン酸カルシウムを6.0質量部と、25%アンモニア水を含む、pH6.5の水溶性組成物と、 シランカップリング剤としてγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン0.2質量部、硫酸アンモニウム2.0質量部を添加して攪拌した後、固形分が15%となるように水で希釈し、固形分40%のパラフィンワックス水分散体を4.0質量部添加して得た無機繊維用水性バインダー」 第6 当審の判断 1 令和5年9月28日付けで通知した取消理由について 当審が令和5年9月28日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 なお、取消理由1は、上記第4の申立理由1に対応する。 また、取消理由2、3は、申立人が提出した甲1を主たる証拠とし請求項1~6に係る特許を対象とするもの、甲2を主たる証拠とし請求項1、2、6に係る特許を対象とするもの、及び、甲3を主たる証拠とし請求項1、2、5、6に係る特許を対象とするものであって、それぞれ、上記第4の申立理由3、4、5に対応する。 取消理由1(明確性) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を充足しない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 取消理由2(新規性) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 取消理由3(進歩性) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (1)取消理由1(明確性)について ア 取消理由1(明確性)の概要 取消理由1は、要するに、請求項1の記載が明確であるといえるためには、「5価以上の多価カルボン酸(D4)」(以下、「D4成分」ともいう。)、A1成分、及び、A2成分に該当する化合物を、相互に区別して認識できることを要するところ、本件特許明細書の記載によれば、A1成分であり、かつ、D4成分でもあるともいえる化合物や、A2成分であり、かつ、D4成分でもあるともいえる化合物が多数存在する。そして、そのような化合物について、どのような場合に当該化合物をD4成分であるとはせずA1成分とし、どのような場合に当該化合物をA1成分であるとはせずD4成分とするのか、それともこのような化合物についてはA1成分にもD4成分にも該当するとするのか、その判断基準を説明した記載が本件明細書にはないし、参酌できるような技術常識などもない。また、この点は、A2成分であり、かつ、D4成分でもあるともいえる化合物についても同様である。 したがって、請求項1の記載は、本件明細書の記載及び当業者の出願当時における技術的常識を考慮しても、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるというものである。 イ 判断 上記第2のとおり本件訂正により、本件発明1において「主剤(D)」の選択肢からD4成分が削除されたので、請求項1には、取消理由1の対象となる不明確な記載が存在しなくなった。また、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~6の記載についても同様である。 したがって、取消理由1によって本件の請求項1~6に係る発明の特許を取り消すべきものとすることはできない。 (2)取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)について ア 甲1を主たる証拠とするものについて (ア)本件発明1について a 甲1発明と本件発明1の対比 (a)本件発明1の「主剤(D)」について、本件特許明細書には「本発明における主剤(D)は、例えば、デンプン(D1)、ポリビニルアルコール(D2)、3個~20個の単糖から構成された糖(D3)及び5価以上の多価カルボン酸(D4)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。・・・多価カルボン酸(D4)としては、例えば、ポリアクリル酸(Mw1,000~5,000)が挙げられる。」(段落【0021】~【0025】)と記載されている。 甲1発明(上記第5の1(2)参照。)の「Mwが10000であり、酸価が795であるアクリル酸の重合体」は、アクリル酸(分子量72)が概ね139(=10000/72)個重合した化合物であり「5価以上の多価カルボン酸(D4)」に該当するから、本件発明1の「主剤(D)」に相当する。 (b)前記第5の5(1)の記載から、甲1発明の「ジエタノールアミン」は、架橋剤を構成する「アルカノールアミン(B1)」として添加されているものと認められるから、本件発明1の「架橋剤(C)」に相当する。 (c)「アクリル酸」は「炭素数3~30の不飽和カルボン酸(a1)」(本件明細書の段落【0007】)に該当する化合物であり、アクリル酸ブチルは「25℃における溶解度が10g以下/水100gである(メタ)アクリル酸エステル(a2)」(本件明細書の段落【0009】)に該当する化合物である。 そうすると、甲1発明の「Mwが12000であり、酸価が640であるアクリル酸260重量部とアクリル酸ブチル60重量部の共重合体」は、本件発明1の「(共)重合体(A1):炭素数3~30の不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)と25℃における溶解度が10g以下/水100gである(メタ)アクリル酸エステル(a2)とを構成単量体として含み、重量平均分子量が3,000~150,000である(共)重合体」に相当する。 また、本件発明1は「耐湿性向上剤(J)が、下記(共)重合体(A1)および(共)重合体(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体(A)を含有してなる耐湿性向上剤である」ことを発明特定事項とするものであるから、前記のとおり(共)重合体(A1)を含有する甲1発明は、「下記(共)重合体(A1)および(共)重合体(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体(A)を含有してなる耐湿性向上剤であ」る「耐湿性向上剤(J)」を含有するものである。 (d)甲1発明の「鉱物繊維用水性バインダー(X)」は、本件発明1の「無機材料用水性接着剤」に相当する。 (e)以上によれば、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「 無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)と、主剤(D)と、架橋剤(C)と、水とを含有してなる水性接着剤であって、前記耐湿性向上剤(J)が、下記(共)重合体(A1)および(共)重合体(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体(A)を含有してなる耐湿性向上剤である、無機材料用水性接着剤: (共)重合体(A1):炭素数3~30の不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)と25℃における溶解度が10g以下/水100gである(メタ)アクリル酸エステル(a2)とを構成単量体として含み、重量平均分子量が3,000~150,000である(共)重合体、 (共)重合体(A2):前記不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含み、前記(メタ)アクリル酸エステル(a2)を構成単量体として含まず、重量平均分子量が6,000~150,000である(共)重合体。」 <相違点1> 「主剤(D)」について、本件発明1は、「デンプン(D1)及びポリビニルアルコール(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である」のに対し、甲1発明は、「Mwが10000であり、酸価が795であるアクリル酸の重合体」である点 <相違点2> 「架橋剤(C)」について、本件発明1は、「尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種であ」るのに対し、甲1発明は、「ジエタノールアミン」である点 <相違点3> 「主剤(D)と前記架橋剤(C)との組合せ[(D)/(C)]」について、本件発明1は、「(D1)/(C1)、(D1)/(C5)又は(D2)/(C2)である」と特定されているのに対し、甲1発明は、そのような特定を備えていない点 b 相違点についての判断 (a)下記(b)及び(c)のとおり、相違点1及び2はいずれも実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。 (b)相違点1について 上記第5の1(1)から、甲1発明は「耐熱性積層体材料のガラス繊維等の鉱物繊維の接着性に優れる鉱物繊維積層体を与える水性バインダーを提供すること」を解決しょうとする課題とするものであり、そのための手段として、「不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含む(共)重合体(A)」を一成分として含有するものである(【0004】【0005】)と認められる。 上記【0004】【0005】及び実施例18の記載から、「Mwが10000であり、酸価が795であるアクリル酸の重合体」は、上記(共)重合体(A)として甲1発明に含まれるものと認められるところ、甲1の記載に接した当業者が、甲1発明において「Mwが10000であり、酸価が795であるアクリル酸の重合体」にかえて、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)を構成単量体として含まないデンプンやポリビニルアルコールを用いることを動機づけられるとはいえない。 また、本件特許の出願日当時、「Mwが10000であり、酸価が795であるアクリル酸の重合体」を含む「不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含む(共)重合体(A)」と、デンプンやポリビニルアルコールとを代替可能物として用いることや、鉱物線維用水性バインダーにデンプンやポリビニルアルコールを添加することが技術常識であったとも認められない。 そうすると、当業者といえども、甲1発明の「Mwが10000であり、酸価が795であるアクリル酸の重合体」にかえて、又はそれに加えて「デンプン(D1)」及び「ポリビニルアルコール(D2)」からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることを容易になし得たとはいえない。 (c)相違点2について 上記第5の1(1)から、甲1発明は「耐熱性積層体材料のガラス繊維等の鉱物繊維の接着性に優れる鉱物繊維積層体を与える水性バインダーを提供すること」を解決しょうとする課題とするものであり、そのための手段として、「アルカノールアミン(B1)」を含有する架橋剤(B)を一成分として含有するものと認められる(【0004】【0005】)。 上記【0004】【0005】及び実施例18の記載から、「ジエタノールアミン」は、架橋剤を構成するアルカノールアミン(B1)として甲1発明に含まれるものと認められるところ、甲1の記載に接した当業者が、甲1発明において「ジエタノールアミン」にかえて、アルカノールアミン構造を化学構造として含まない尿素、ホウ素化合物又は2価~4価の多価カルボン酸を用いることを動機づけられるとはいえない。 また、本件特許の出願日当時、「ジエタノールアミン」を含むアルカノールアミンと、尿素、ホウ素化合物又は2価~4価の多価カルボン酸とを代替可能物として用いることが技術常識であったとも認められない。 そうすると、当業者といえども、甲1発明の「ジエタノールアミン」を「尿素(C1)」、「ホウ素化合物(C2)」及び「2価~4価の多価カルボン酸(C5)」からなる群から選ばれる少なくとも1種に変更することを容易になし得たとはいえない。 (d)効果について 本件発明1は、「優れた接着性」、「優れた耐湿性」及び「優れた剛性」(本件明細書の段落【0006】)という顕著な効果を奏するものである。 (e)上記(b)~(d)のとおりであるから、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められない。 c 小括 上記b(a)のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明ではないから、本件発明1に係る特許を取消理由2(甲1を主たる証拠とするもの)によって取り消すべきものとすることはできない。 また、上記b(e)のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められないから、本件発明1に係る特許を取消理由3(甲1を主たる証拠とするもの)によって取り消すべきものとすることはできない。 (イ)本件発明2~6について 本件発明2~6は、本件発明1を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に該当する。 また、上記(ア)cのとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとも認められないものであって、本件発明1に係る特許を取消理由2、3によって取り消すべきものとすることはできないものである。 イ 甲2を主たる証拠とするものについて (ア)本件発明1について a 甲2発明と本件発明1の対比 (a)本件発明1の「架橋剤(C)」について、本件特許明細書には「本発明における架橋剤(C)は、前記主剤(D)と反応し得る官能基を少なくとも2個有するものである。架橋剤(C)としては、例えば、尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)、ポリアミン(C3)、アルカノールアミン(C4)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。・・・アルカノールアミン(C4)としては、例えば、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。」(段落【0027】、【0028】)と記載されている。 そうすると、甲2発明(上記第5の2(2)参照。)の「トリエタノールアミン(TEA)」は、上記「アルカノールアミン(C4)」に該当する化合物であるから、本件発明1の「架橋剤(C)」に相当する。 (b)甲2発明の「ポリアクリル酸(Mw=9000)[ポリ酸A]」は、アクリル酸が「炭素数3~30の不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)」に該当する化合物であり(本件明細書の段落【0007】)、かつ、「重量平均分子量が6,000~150,000である」を満足するから、本件発明1の「(共)重合体(A2):前記不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含み、前記(メタ)アクリル酸エステル(a2)を構成単量体として含まず、重量平均分子量が6,000~150,000である(共)重合体」に相当する。 また、甲2発明は、本件発明1の「耐湿性向上剤(J)」、「前記耐湿性向上剤(J)が、下記(共)重合体(A1)および(共)重合体(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体(A)を含有してなる耐湿性向上剤であり」を充足する。 (c)本件発明1の「主剤(D)」について、本件特許明細書には「本発明における主剤(D)は、例えば、デンプン(D1)、ポリビニルアルコール(D2)、3個~20個の単糖から構成された糖(D3)及び5価以上の多価カルボン酸(D4)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。・・・多価カルボン酸(D4)としては、例えば、ポリアクリル酸(Mw1,000~5,000)が挙げられる。」(段落【0021】~【0025】)と記載されている。 また、甲2発明の「ポリアクリル酸(Mw=6000)[ポリ酸B]」は、アクリル酸(分子量72)が概ね83(=6000/72)個重合した化合物であって、カルボキシル基を5個以上有する化合物であるから、上記「5価以上の多価カルボン酸(D4)」に相当する。 したがって、甲2発明の「ポリアクリル酸(Mw=6000)[ポリ酸B]」は、本件発明1の「主剤(D)」に相当する。 (d)甲2発明の「バインダー組成物」は、実施例2のバインダー組成物に基づいて認定した発明であり、甲2には当該組成物を「実施例1に記載のように塗布した」」(8欄23~37行)ことが記載されている。また、実施例1は、「ガラス繊維ハンドシートの作製とバインダー組成物によるシートの飽和」(7欄50~52行)に関するものである。したがって、甲2発明の「バインダー組成物」は、本件発明1の「無機材料用水性接着剤」に相当する。 (e)以上によれば、本件発明1と甲2発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「 無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)と、主剤(D)と、架橋剤(C)と、水とを含有してなる水性接着剤であって、前記耐湿性向上剤(J)が、下記(共)重合体(A1)および(共)重合体(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体(A)を含有してなる耐湿性向上剤である、無機材料用水性接着剤: (共)重合体(A1):炭素数3~30の不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)と25℃における溶解度が10g以下/水100gである(メタ)アクリル酸エステル(a2)とを構成単量体として含み、重量平均分子量が3,000~150,000である(共)重合体、 (共)重合体(A2):前記不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含み、前記(メタ)アクリル酸エステル(a2)を構成単量体として含まず、重量平均分子量が6,000~150,000である(共)重合体。」 <相違点4> 「主剤(D)」について、本件発明1は、「デンプン(D1)及びポリビニルアルコール(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である」と特定されているのに対し、甲2発明は、「ポリアクリル酸(Mw=6000)[ポリ酸B]」である点 <相違点5> 「架橋剤(C)」について、本件発明1は、「尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」と特定されているのに対し、甲2発明は、「トリエタノールアミン」である点 <相違点6> 「主剤(D)と前記架橋剤(C)との組合せ[(D)/(C)]」について、本件発明1は、「(D1)/(C1)、(D1)/(C5)又は(D2)/(C2)である」と特定されているのに対し、甲2発明は、そのような特定を備えていない点 b 相違点についての判断 (a)相違点4及び5は、下記(b)及び(c)のとおりいずれも実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2に記載された発明ではない。 (b)相違点4について 上記第5の2(1)のとおり、甲2の請求の範囲の請求項1には、「(a)少なくとも2個のカルボン酸基、無水物基又はその塩を含むポリ酸」との記載がなされており、甲2発明の「ポリアクリル酸(Mw=6000)[ポリ酸B]」はその一態様として記載されるものと認められるところ、甲2発明のポリアクリル酸(Mw=6000)[ポリ酸B]を、「(a)少なくとも2個のカルボン酸基、無水物基又はその塩を含むポリ酸」に該当しないデンプンあるいはポリビニルアルコールに置換することを当業者が容易に想到したとはいえない。 また、本件特許の出願日当時、「ポリアクリル酸(Mw=6000)[ポリ酸B]」を含む「(a)少なくとも2個のカルボン酸基、無水物基又はその塩を含むポリ酸」と、デンプンやポリビニルアルコールを代替可能物として用いることや、バインダー組成物にデンプンやポリビニルアルコールを添加することが技術常識であったともいえない。 そうすると、当業者といえども、甲2発明の「ポリアクリル酸(Mw=6000)[ポリ酸B]」にかえて、又はそれに加えて「デンプン(D1)」及び「ポリビニルアルコール(D2)」からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることを容易になし得たとはいえない。 (c)相違点5について 上記第5の2(1)から、甲2発明の「トリエタノールアミン」は、甲2の特許請求の範囲の請求項1の「(b)ヒドロキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基及びそれらの混合物からなる群から選択される活性水素を含む基を少なくとも2つ有する活性水素化合物」の一態様として記載されるものと認められるところ、甲2には「ヒドロキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基及びそれらの混合物からなる群から選択される活性水素を含む基を少なくとも2つ有する活性水素化合物」として2価~4価の多価カルボン酸等は記載されておらず、甲2発明の「トリエタノールアミン」を、尿素、ホウ素化合物あるいは2価~4価の多価カルボン酸に置換することを当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 また、本件特許の出願日当時、「トリエタノールアミン」を含む「(b)ヒドロキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基及びそれらの混合物からなる群から選択される活性水素を含む基を少なくとも2つ有する活性水素化合物」と、尿素、ホウ素化合物あるいは2価~4価の多価カルボン酸を代替可能物として用いることが技術常識であったともいえない。 そうすると、当業者といえども、甲2発明の「トリエタノールアミン」を、「尿素(C1)」、「ホウ素化合物(C2)」及び「2価~4価の多価カルボン酸(C5)」からなる群から選ばれる少なくとも1種に変更することを容易になし得たとはいえない。 (d)効果について 本件発明1は、「優れた接着性」、「優れた耐湿性」及び「優れた剛性」(本件明細書の段落【0006】)という顕著な効果を奏するものである。 (e)上記(b)~(d)のとおりであるから、相違点6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められない。 c 小括 上記b(a)のとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明ではないから、本件発明1に係る特許を取消理由2(甲2を主たる証拠とするもの)によって取り消すべきものとすることはできない。 また、上記b(e)のとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められないから、本件発明1に係る特許を取消理由3(甲2を主たる証拠とするもの)によって取り消すべきものとすることはできない。 (イ)本件発明2、6について 本件発明2、6は、本件発明1を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に該当する。 また、上記(ア)cのとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとも認められないものであって、本件発明1に係る特許を取消理由2、3によって取り消すべきものとすることはできないものである。 ウ 甲3を主たる証拠とするものについて (ア)本件発明1について a 甲3発明と本件発明1の対比 (a)本件発明1の「主剤(D)」について、本件特許明細書には「本発明における主剤(D)は、例えば、デンプン(D1)、ポリビニルアルコール(D2)、3個~20個の単糖から構成された糖(D3)及び5価以上の多価カルボン酸(D4)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。・・・多価カルボン酸(D4)としては、例えば、ポリアクリル酸(Mw1,000~5,000)が挙げられる。」(段落【0021】~【0025】)と記載されている。 また、甲3発明(上記第5の3(2)参照。)の「「アクリル酸及び、メチルアクリレートからなるアクリル系樹脂(酸価640mgKOH/g、重量平均分子量2,200)」は、その1molあたりの酸価が1408g(=640×10-3×2200)であると計算できるから、その1molあたりカルボキシル基を25個(=1408/56)有している樹脂である。 したがって、甲3発明の「アクリル酸及び、メチルアクリレートからなるアクリル系樹脂(酸価640mgKOH/g、重量平均分子量2,200)」は、上記「5価以上の多価カルボン酸(D4)」に該当するから、本件発明1の「主剤(D)」に相当する。 (b)前記第5の3(1)から、甲3発明の「ジエタノールアミン」は、架橋剤を構成する「ジアルカノールアミン」として添加されているものと認められるから、本件発明1の「架橋剤(C)」に相当する。 (c)甲3発明の「スチレン及び、マレイン酸からなるアクリル系樹脂(酸価710mgKOH/g、重量平均分子量17,500)」は、マレイン酸が「炭素数3~30の不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)」に該当する化合物であり(本件明細書の段落【0007】)、かつ、「重量平均分子量が6,000~150,000である」を満足するから、本件発明1の「(共)重合体(A2):前記不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含み、前記(メタ)アクリル酸エステル(a2)を構成単量体として含まず、重量平均分子量が6,000~150,000である(共)重合体」に相当する。 また、甲3発明は、本件発明1の「耐湿性向上剤(J)」、「前記耐湿性向上剤(J)が、下記(共)重合体(A1)および(共)重合体(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体(A)を含有してなる耐湿性向上剤であり」を充足する。 (d)甲3発明の「無機繊維用水性バインダー」は、本件発明1の「無機材料用水性接着剤」に相当する。 (e)以上によれば、本件発明1と甲3発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「 無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)と、主剤(D)と、架橋剤(C)と、水とを含有してなる水性接着剤であって、前記耐湿性向上剤(J)が、下記(共)重合体(A1)および(共)重合体(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体(A)を含有してなる耐湿性向上剤である、無機材料用水性接着剤: (共)重合体(A1):炭素数3~30の不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)と25℃における溶解度が10g以下/水100gである(メタ)アクリル酸エステル(a2)とを構成単量体として含み、重量平均分子量が3,000~150,000である(共)重合体、 (共)重合体(A2):前記不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含み、前記(メタ)アクリル酸エステル(a2)を構成単量体として含まず、重量平均分子量が6,000~150,000である(共)重合体。」 <相違点7> 「主剤(D)」について、本件発明1は、「デンプン(D1)及びポリビニルアルコール(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である」と特定されているのに対し、甲3発明は、「アクリル酸及び、メチルアクリレートからなるアクリル系樹脂(酸価640mgKOH/g、重量平均分子量2,200)」である点 <相違点8> 「架橋剤(C)」について、本件発明1は、「尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」と特定されているのに対し、甲3発明は、「ジエタノールアミン」である点 <相違点9> 「主剤(D)と前記架橋剤(C)との組合せ[(D)/(C)]」について、本件発明1は、「(D1)/(C1)、(D1)/(C5)又は(D2)/(C2)である」と特定されているのに対し、甲3発明は、そのような特定を備えていない点 b 相違点についての判断 (a)相違点7及び8は、下記(b)及び(c)のとおりいずれも実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲3に記載された発明ではない。 (b)相違点7について 上記第5の3(1)の記載から、甲3発明の「アクリル酸及び、メチルアクリレートからなるアクリル系樹脂(酸価640mgKOH/g、重量平均分子量2,200)」は、甲3の特許請求の範囲の請求項1の「酸価が350~850mgKOH/gのアクリル系樹脂」の一態様に相当するものと認められるところ、甲3発明において、「アクリル酸及び、メチルアクリレートからなるアクリル系樹脂(酸価640mgKOH/g、重量平均分子量2,200)」を、「酸価が350~850mgKOH/gのアクリル系樹脂」ではないデンプンあるいはポリビニルアルコールに置換することを当業者が容易に想到したとはいえない。 また、本件特許の出願日当時、「アクリル酸及び、メチルアクリレートからなるアクリル系樹脂(酸価640mgKOH/g、重量平均分子量2,200)」を含む「酸価が350~850mgKOH/gのアクリル系樹脂」と、デンプン又はポリビニルアルコールを代替可能物として用いることや、無機繊維用水性バインダーにデンプンやポリビニルアルコールを添加することが技術常識であったともいえない。 そうすると、当業者といえども、甲3発明の「アクリル酸及び、メチルアクリレートからなるアクリル系樹脂(酸価640mgKOH/g、重量平均分子量2,200)」にかえて、又はそれに加えて「デンプン(D1)」及び「ポリビニルアルコール(D2)」からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることを容易になし得たとはいえない。 (c)相違点8について 上記第5の3(1)の記載から、甲3発明の「ジエタノールアミン」は、甲3の特許請求の範囲の請求項1の「ジアルカノールアミン」の具体例に該当する物質であると認められるから、甲3発明において、「ジエタノールアミン」を、「ジアルカノールアミン」ではない尿素、ホウ素化合物あるいは2価~4価の多価カルボン酸に置換することを、当業者が容易に想到したとはいえない。 また、本件特許の出願日当時、「ジエタノールアミン」を含む「ジアルカノールアミン」と、尿素、ホウ素化合物あるいは2価~4価の多価カルボン酸を代替可能物として用いることが技術常識であったともいえない。 そうすると、当業者といえども、甲3発明の「ジエタノールアミン」を「尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種」に変更することを容易になし得たとはいえない。 (d)効果について 本件発明1は、「優れた接着性」、「優れた耐湿性」及び「優れた剛性」(本件明細書の段落【0006】)という顕著な効果を奏するものである。 (e)上記(b)~(d)のとおりであるから、相違点9について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められない。 c 小括 上記b(a)のとおり、本件発明1は、甲3に記載された発明ではないから、本件発明1に係る特許を取消理由2(甲3を主たる証拠とするもの)によって取り消すべきものとすることはできない。 また、上記b(e)のとおり、本件発明1は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められないから、本件発明1に係る特許を取消理由3(甲3を主たる証拠とするもの)によって取り消すべきものとすることはできない。 (イ)本件発明2、5、6について 本件発明2、5、6は、本件発明1を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に該当する。 また、上記(ア)cのとおり、本件発明1は、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとも認められないものであって、本件発明1に係る特許を取消理由2、3によって取り消すべきものとすることはできないものである。 2 取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由について 特許異議の申立理由の概要は、上記第4のとおりであり、取消理由通知で通知した取消理由は、上記第6の1のとおりであるから、取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由は、申立理由2、6、7である。 (1)申立理由2について ア 申立理由2の概要 申立理由2は、本件発明1の「5価以上の多価カルボン酸(D4)の意味する物の範囲は広範であり、また、その重量平均分子量が水接着剤の接着性に影響を与えることは明らかであるところ、実施例で確認されている4000を大きく超える場合でもその課題を解決できるとはいえない、というものである(特許異議申立書6頁8行~7頁4行)。 イ 判断 上記アによれば、申立理由2は、要するに、本件発明1には主剤(D)が5価以上の多価カルボン酸(D4)である態様が含まれているが、当該態様にはサポート要件違反があるので、本件発明1にはサポート要件違反があると主張するものである。 しかし、上記第2のとおり本件訂正により、本件発明1において主剤(D)の選択肢からD4が削除されたから、当該態様はもはや本件発明1に含まれていない。また、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~6の記載についても同様である。 そうすると、申立理由2によって本件の請求項1~6に係る発明の特許を取り消すべきものとすることはできない。 (2)申立理由6について ア 甲4に記載されている事項及び甲4に記載されている発明 甲4には以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 (メタ)アクリル酸(a)と、25℃における溶解度が2g以下/水100gで1個の不飽和基を有する、(a)以外の不飽和モノマー(b)を構成単位とする(共)重合体(A)、架橋剤(B)、並びに水を含有してなり、(A)の重量平均分子量が20,000~100,000である鉱物繊維用水性バインダー(X)。」 「【実施例】 【0070】 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。 ・・・ 【0072】 製造例1 オートクレーブに、溶媒として水176部、連鎖移動剤として1-チオグリセロール3.12部、硫酸鉄0.022部を仕込み、撹拌下窒素を通気してオートクレーブ内の窒素置換を行った(気相酸素濃度500ppm以下)。窒素を吹き込みながら、100℃に昇温した後、過酸化水素水(30重量%水溶液)7.88部を水33部に溶解した水溶液と、アクリル酸(a-1)180部とメタクリル酸メチル(b-1)3.3部を混合した溶液を別々に同時に3時間かけて滴下し、さらに100℃で2時間撹拌して重合させ、不揮発分が40%になるように水を加え、共重合体(A-1)の水溶液を得た。(A-1)はMw36,000、酸価770、MFR23g/10minであった。 ・・・ 【0074】 製造例4 オートクレーブに、溶媒として水100部、イソプロパノール70部を仕込み、撹拌下窒素を通気してオートクレーブ内の窒素置換を行った(気相酸素濃度500ppm以下)。窒素を吹き込みながら、80℃に昇温した後、過硫酸ナトリウム0.91部を水25部に溶解した水溶液、アクリル酸(a-1)101部、アクリル酸ブチル(b-4)83部を別々に同時に3時間かけて滴下し、さらに80℃で2時間撹拌して重合させた。窒素を吹き込みながら、88℃まで昇温し、イソプロパノールを留去させた後、圧力を15kPa以下、温度を50℃にしてイソプロパノールが0.5%以下になるまでさらにイソプロパノールを留去させ、不揮発分が40%になるように水を加え、(共)重合体(A-4)の水溶液を得た。(A-4)はMw94,000、酸価430、MFR1.1g/10minであった。」 「【0078】 【表1】 [図:0001416436000003.jpg] 」 「【0079】 表1における不飽和モノマー(b)の25℃における溶解度は以下の通りである。 メタクリル酸メチル (b-1):1.59g/水100g スチレン (b-2):0.03g/水100g t-ブチルアクリルアミド(b-3):0.70g/水100g アクリル酸ブチル (b-4):0.16g/水100g アクリル酸エチル (b-5):1.50g/水100g 【0080】 実施例1~16、比較例1~4 表2、3に示した配合組成(部)に従って水性バインダーを調製した。該バインダーを用いて下記の要領で鉱物繊維積層体の試験片を作成し、それぞれ後述の方法で評価した。 【0081】 <鉱物繊維積層体の作成> [1]接着性評価用積層体(S-1) タテ×ヨコ×厚みが30cm×30cm×1cm、密度が0.025g/cm3のガラス繊維積層物を、離型処理したタテ×ヨコ×深さが30cm×30cm×5cmの平板金型内に載置した。次に、付着固形分重量が該積層物の重量に対して10%相当量となる水性バインダーをエアスプレーを使用して該積層物に均一噴霧した。該噴霧積層物を220℃の循風乾燥機で45分間熱処理(乾燥、硬化、以下同じ。)を行い、厚み約1cm、密度0.028g/cm3の積層体(S-1)を得た。同様にして積層体(S-1)を合計2個作成した。」 「【0087】 【表3】 [図:0001416436000004.jpg] 」 上記によれば、甲4の実施例1、4、9の記載に基づき、以下の発明(以下、それぞれ、「甲4-1発明」、「甲4-4発明」、「甲4-9発明」ともいう。)が記載されていると認められる。 甲4-1発明 「A-1の水溶液100部、 イソプロパノールアミン14部、 水20部 からなる鉱物繊維用水性バインダー(X)であって、 上記A-1の水溶液は、アクリル酸180部とメタクリル酸メチル3.3部の共重合体であって、そのMwが36,000、酸価が770、MFRが23g/10minである共重合体を含み、その不揮発分が40%である、 鉱物繊維用水性バインダー(X)」 甲4-4発明 「A-4の水溶液100部、 イソプロパノールアミン9部、 水20部 からなる鉱物繊維用水性バインダー(X)であって、 上記A-4の水溶液は、アクリル酸101部とアクリル酸ブチル83部の共重合体であって、そのMwが94,000、酸価が430、MFRが1.1g/10minである共重合体を含み、その不揮発分が40%である、 鉱物繊維用水性バインダー(X)」 甲4-9発明 「A-1の水溶液100部、 1,6-ヘキサンジアミン16部、 水20部 からなる鉱物繊維用水性バインダー(X)であって、 上記A-1の水溶液は、アクリル酸180部とメタクリル酸メチル3.3部の共重合体であって、そのMwが36,000、酸価が770、MFRが23g/10minである共重合体を含み、その不揮発分が40%である、 鉱物繊維用水性バインダー(X)」 イ 判断 (ア)甲4に記載された発明と本件発明1の対比 甲4-1発明、甲4-4発明及び甲4-9発明(以下、まとめて「甲4発明」ともいう。)と本件発明1をまとめて対比する。 a 本件発明1の「主剤(D)」について、本件特許明細書には「本発明における主剤(D)は、例えば、デンプン(D1)、ポリビニルアルコール(D2)、3個~20個の単糖から構成された糖(D3)及び5価以上の多価カルボン酸(D4)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。・・・多価カルボン酸(D4)としては、例えば、ポリアクリル酸(Mw1,000~5,000)が挙げられる。」(段落【0021】~【0025】)と記載されている。 また、甲4-1発明及び甲4-9発明の「アクリル酸180部とメタクリル酸メチル3.3部の共重合体」は、その「Mwが36,000」であるから、その1モルあたり491個(=36000×(180/(180+3.3))/72)のアクリル酸が重合している共重合体であり、したがって、その1モルあたり491個のカルボキシル基を有する化合物である。 そうすると、甲4-1発明及び甲4-9発明の「アクリル酸180部とメタクリル酸メチル3.3部の共重合体」は、上記「5価以上の多価カルボン酸(D4)」に該当するから、本件発明1の「主剤(D)」に相当する。 また、甲4-4発明の「アクリル酸101部とアクリル酸ブチル83部の共重合体」も、上記と同様の対比により、本件発明1の「主剤(D)」に相当する。 b 前記(2)アの【表3】等の記載から、甲4-1発明及び甲4-4発明の「イソプロパノールアミン」、並びに、甲4-9発明の「1,6-ヘキサンジアミン」は、「架橋剤(B)」として添加されているものであるから、本件発明1の「架橋剤(C)」に相当する。 c 甲4-1発明は、「アクリル酸180部とメタクリル酸メチル3.3部の共重合体」、「イソプロパノールアミン」及び「水」以外の成分を含んでいないから、甲4-1発明は、本件発明1の「無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)」に対応する成分を含んでいない。 同様に、甲4-4発明及び甲4-9発明も本件発明1の「無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)」に対応する成分を含んでいない。 d 甲4発明の「鉱物繊維用水性バインダー(X)」は、本件発明1の「無機材料用水性接着剤」に相当する。 e 以上によれば、本件発明1と甲4発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「主剤(D)と、架橋剤(C)と、水とを含有してなる、無機材料用水性接着剤。」 <相違点10> 本件発明1は、「無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)」を含むとともに、無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)について、「前記耐湿性向上剤(J)が、下記(共)重合体(A1)および(共)重合体(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体(A)を含有してなる耐湿性向上剤であり」、「(共)重合体(A1):炭素数3~30の不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)と25℃における溶解度が10g以下/水100gである(メタ)アクリル酸エステル(a2)とを構成単量体として含み、重量平均分子量が3,000~150,000である(共)重合体、 (共)重合体(A2):前記不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含み、前記(メタ)アクリル酸エステル(a2)を構成単量体として含まず、重量平均分子量が6,000~150,000である(共)重合体。」と特定されているのに対し、甲4発明は、そのような特定を備えていない点 <相違点11> 「架橋剤(C)」について、本件発明1は、「尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」と特定されているのに対し、甲4-1発明及び甲4-4発明では「イソプロパノールアミン」であり、甲4-9発明では「1,6―ヘキサンジアミン」である点 <相違点12> 「主剤(D)」について、本件発明1は、「デンプン(D1)及びポリビニルアルコール(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である」と特定されているのに対し、甲4-1発明及び甲4-9発明は「アクリル酸180部とメタクリル酸メチル3.3部の共重合体」であり、甲4-4発明は「アクリル酸101部とアクリル酸ブチル83部の共重合体」である点。 <相違点13> 「主剤(D)と前記架橋剤(C)との組合せ[(D)/(C)]」について、本件発明1は、「(D1)/(C1)、(D1)/(C5)又は(D2)/(C2)である」と特定されているのに対し、甲1発明は、そのような特定を備えていない点 (イ)相違点についての判断 a 相違点10~12は、下記b~dのとおり実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲4に記載された発明ではない。 b 相違点10について 甲4には、当該鉱物繊維用水性バインダー(X)にさらに含有させることができる成分として「本発明の水性バインダー(X)には、前記(A)、(B)および水の他に、さらに必要により硬化促進剤(C1)、撥水剤(C2)、シランカップリング剤(C3)および中和剤(C4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤(C)を含有させてもよい。」(段落【0056】)と記載されており、その具体例(摘記は省略する。段落【0057】~【0061】を参照。)も例示されているが、無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤を添加することについては記載も示唆もない。 そうすると、当業者といえども、甲4に記載された発明において、さらに無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤を含有するものすることにより、相違点10に係る構成を備えるものとすることを容易になし得たとはいえない。 c 相違点11について 甲4には、「イソプロパノールアミン」や「1,6―ヘキサンジアミン」にかえて、尿素、ホウ素化合物又は2価~4価の多価カルボン酸を用いることは、記載も示唆もされておらず、甲4の記載に接した当業者が甲4に記載された発明において、尿素、ホウ素化合物又は2価~4価の多価カルボン酸を用いることを容易に想到したとはいえない。 d 相違点12について 甲4には、「アクリル酸180部とメタクリル酸メチル3.3部の共重合体」や「アクリル酸101部とアクリル酸ブチル83部の共重合体」にかえて、又はそれに加えてデンプンやポリビニルアルコールを用いることは、記載も示唆もされておらず、「アクリル酸180部とメタクリル酸メチル3.3部の共重合体」や「アクリル酸101部とアクリル酸ブチル83部の共重合体」と、デンプンやポリビニルアルコールが代替可能物として用いられることや、鉱物繊維用水性バインダーにデンプンまたはポリビニルアルコールを添加することが技術常識であったともいえない。 すると、甲4の記載に接した当業者が甲4に記載された発明において、デンプンまたはポリビニルアルコールを用いることを容易に想到したとはいえない。 e 効果について 本件発明1は、「優れた接着性」、「優れた耐湿性」及び「優れた剛性」(本件明細書の段落【0006】)という顕著な効果を奏するものである。 f 上記b~eのとおりであるから、相違点13について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められない。 (ウ)小括 上記(イ)aのとおり、本件発明1は、甲4に記載された発明ではないし、上記(イ)fのとおり、本件発明1は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとも認められないから、本件発明1に係る特許を申立理由6によって取り消すべきものとすることはできない。 また、本件発明2~4、6は、本件発明1を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に該当するところ、上記のとおり、本件発明1は、甲4に記載された発明ではないし、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとも認められないものであって、本件発明1に係る特許を申立理由6によって取り消すべきものとすることはできないものである。 (3)申立理由7について ア 甲5に記載されている事項及び甲5に記載されている発明 甲5には以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 エチレン性不飽和単量体を重合した酸価500~900mgKOH/gのポリカルボン酸類と、 アミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコールを含有する架橋剤とを含み、 前記ポリカルボン酸類中のカルボキシル基のモル数に対し、前記架橋剤中の水酸基とアミノ基とイミノ基との合計のモル数が、モル比で0.8~1.5であり、 前記ポリカルボン酸類中のカルボキシル基のモル数に対し、前記架橋剤中のアミノ基とイミノ基との合計のモル数が、モル比で0.2~0.8であることを特徴とする無機繊維断熱吸音材用水性バインダー。」 「【実施例】 【0092】 以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。なお、以下の説明において、部、%は、特に断りのない場合は質量基準を表す。 【0093】 <バインダーの硬化性評価> (実施例1) ポリカルボン酸類としてポリアクリル酸(酸価770mgKOH/g、重量平均分子量8,000)を水で溶解させた樹脂溶液(固形分45%)を固形分換算で100部と、架橋剤としてジエタノールアミンを48.0部とを混合(架橋剤のイミノ基と水酸基の総モル量/ポリカルボン酸類のカルボキシル基のモル量=1.0、架橋剤のイミノ基のモル量/ポリカルボン酸類のカルボキシル基のモル量=0.33)した水溶性組成物を固形分が50%となるように水で希釈して、実施例1の無機繊維断熱吸音材用水性バインダーを得た。 ・・・ 【0095】 (実施例3) ポリカルボン酸類としてスチレンとマレイン酸とからなるポリカルボン酸(酸価890mgKOH/g、重量平均分子量14,000)を水で溶解させた樹脂溶液(固形分40%)を固形分換算で100部と、架橋剤としてジエタノールアミンを44.4部とを混合(架橋剤の水酸基とイミノ基の総モル量/ポリカルボン酸類のカルボキシル基のモル量=0.8、架橋剤のイミノ基のモル量/ポリカルボン酸類のカルボキシル基のモル量=0.27)した水溶性組成物を固形分が50%となるように水で希釈して、実施例3の無機繊維断熱吸音材用水性バインダーを得た。」 「【0104】 (実施例7) ポリカルボン酸類としてアクリル酸及びメチルアクリレートからなるポリカルボン酸(酸価710mgKOH/g、重量平均分子量5,000)を水で溶解させた樹脂溶液(固形分50%)を固形分換算で100部と、架橋剤としてジイソプロパノールアミン53.3部と、硬化促進剤としてトリス(3‐ヒドロキシプロピル)ホスフィンを3.0部とを混合(架橋剤のイミノ基と水酸基の総モル量/ポリカルボン酸類のカルボキシル基のモル量=0.95、架橋剤のイミノ基のモル量/ポリカルボン酸類のカルボキシル基のモル量=0.32)した水溶性組成物を得て、更に、シランカップリング剤としてγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを水に溶解させて、アンモニア水でpH8.5に調整した水溶液を、アミノシランカップリング成分が0.3部になるように添加して攪拌した後、固形分が15%となるように水で希釈し、固形分40%のオレフィンワックス:粘度グレードが320mm2/sの重質オイル=1:1の水分散体5.0部を添加して、実施例7の無機繊維断熱吸音材用水性バインダーを得た。」 「【0115】 実施例4~10、比較例4~10の無機繊維断熱吸音材用水性バインダーを用いた無機繊維断熱吸音材について、下記方法により復元性、ホルムアルデヒド放出量、引き裂き荷重を評価した。結果を表1にまとめて記す。 【0116】 [復元性の評価1] 遠心法により繊維化したガラス繊維に、実施例4~10及び比較例4~10の無機繊維断熱吸音材用水性バインダーを所定の付着量になるようにそれぞれスプレーで塗布した後、吸引装置で吸引しながら有孔コンベア上に堆積して、無機繊維断熱吸音材の中間体を形成させた。前記中間体を220℃の熱風オーブン中で3分間加熱して、バインダーを硬化させ、密度16Kg/m3、厚み100mm、バインダー付着量3.0%である無機繊維断熱吸音材(グラスウール)をそれぞれ得た。そして、このグラスウールの厚みが1/8になるまで圧縮し、低密度ポリエチレン製袋に挿入した状態で、温度40℃湿度95%の環境下に放置した。1日後、14日後、28日後にそれぞれ開封して、グラスウールの復元厚みを測定し、初期の厚みとの比較を評価した。」 上記によれば、甲5の実施例1、3、7の記載に基づき、以下の発明(以下、それぞれ、「甲5-1発明」、「甲5-3発明」、「甲5-7発明」ともいう。)が記載されていると認められる。 甲5-1発明 「ポリカルボン酸類としてポリアクリル酸(酸価770mgKOH/g、重量平均分子量8,000)を水で溶解させた樹脂溶液(固形分45%)を固形分換算で100部と、 架橋剤としてジエタノールアミンを48.0部とを混合し、 固形分が50%となるように水で希釈した水溶性組成物からなる、 無機繊維断熱吸音材用水性バインダー」 甲5-3発明 「ポリカルボン酸類としてスチレンとマレイン酸とからなるポリカルボン酸(酸価890mgKOH/g、重量平均分子量14,000)を水で溶解させた樹脂溶液(固形分40%)を固形分換算で100部と、 架橋剤としてジエタノールアミンを44.4部とを混合し、 固形分が50%となるように水で希釈した水溶性組成物からなる、 無機繊維断熱吸音材用水性バインダー」 甲5-7発明 「ポリカルボン酸類としてアクリル酸及びメチルアクリレートからなるポリカルボン酸(酸価710mgKOH/g、重量平均分子量5,000)を水で溶解させた樹脂溶液(固形分50%)を固形分換算で100部と、 架橋剤としてジイソプロパノールアミン53.3部と、 硬化促進剤としてトリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンを3.0部とを混合し、 更に、シランカップリング剤としてγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを水に溶解させて、アンモニア水でpH8.5に調整した水溶液を、アミノシランカップリング成分が0.3部になるように添加して攪拌し、 固形分が15%となるように水で希釈し、 更に、固形分40%のオレフィンワックス:粘度グレードが320mm2/sの重質オイル=1:1の水分散体5.0部を添加して得た無機繊維断熱吸音材用水性バインダー」 イ 判断 (ア)甲5に記載された発明と本件発明1の対比 甲5-1発明、甲5-3発明及び甲5-7発明(以下、まとめて「甲5発明」ともいう。)と本件発明1をまとめて対比する。 a 本件発明1の「主剤(D)」について、本件特許明細書には「本発明における主剤(D)は、例えば、デンプン(D1)、ポリビニルアルコール(D2)、3個~20個の単糖から構成された糖(D3)及び5価以上の多価カルボン酸(D4)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。・・・多価カルボン酸(D4)としては、例えば、ポリアクリル酸(Mw1,000~5,000)が挙げられる。」(段落【0021】~【0025】)と記載されている。 また、甲5-1発明の「ポリアクリル酸(酸価770mgKOH/g、重量平均分子量8,000)」は、その「重量平均分子量8,000」であるから、その1モルあたり111個(=8000/72)のアクリル酸が重合している重合体であり、したがって、その1モルあたり111個のカルボキシル基を有する化合物である。 そうすると、甲5-1発明の「ポリアクリル酸(酸価770mgKOH/g、重量平均分子量8,000)」は、上記「5価以上の多価カルボン酸(D4)」に該当するから、本件発明1の「主剤(D)」に相当する。 同様に、甲5-3発明の「スチレンとマレイン酸とからなるポリカルボン酸(酸価890mgKOH/g、重量平均分子量14,000)」、及び、甲5-7発明の「アクリル酸及びメチルアクリレートからなるポリカルボン酸(酸価710mgKOH/g、重量平均分子量5,000)」も、その1モルあたり5個以上のカルボキシル基を有する化合物であって、上記「5価以上の多価カルボン酸(D4)」に該当するから、本件発明1の「主剤(D)」に相当する。 b 前記アの実施例1や実施例7の記載から、甲5-1発明及び甲5-3発明の「ジエタノールアミン」及び甲5-7発明の「ジイソプロパノールアミン」は、架橋剤として添加されるものであるから、本件発明1の「架橋剤(C)」に相当する。 c 甲5-1発明は、「ポリアクリル酸(酸価770mgKOH/g、重量平均分子量8,000)」、「ジエタノールアミン」及び「水」以外の成分を含んでいないから、甲5-1発明は、本件発明1の「無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)」に対応する成分を含んでいない。 同様に、甲5-3発明も本件発明1の「無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)」に対応する成分を含んでいない。 また、甲5-7発明の「無機繊維断熱吸音材用水性バインダー」は、「トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィン」、「γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを水に溶解させて、アンモニア水でpH8.5に調整した水溶液」、「固形分40%のオレフィンワックス:粘度グレードが320mm2/sの重質オイル=1:1の水分散体」を含んでいるが、本件発明1の「無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)」は、「下記(共)重合体(A1)および(共)重合体(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体(A)を含有してなる耐湿性向上剤であり」、「(共)重合体(A1):炭素数3~30の不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)と25℃における溶解度が10g以下/水100gである(メタ)アクリル酸エステル(a2)とを構成単量体として含み、重量平均分子量が3,000~150,000である(共)重合体、 (共)重合体(A2):前記不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含み、前記(メタ)アクリル酸エステル(a2)を構成単量体として含まず、重量平均分子量が6,000~150,000である(共)重合体。」と特定されているものであるから、これらは、いずれも、本件発明1の「無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)」に該当しない。 d 甲5発明の「無機繊維断熱吸音材用水性バインダー」は、本件発明1の「無機材料用水性接着剤」に相当する。 e 以上によれば、本件発明1と甲5発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。 「 主剤(D)と、架橋剤(C)と、水とを含有してなる、無機材料用水性接着剤。」 <相違点14> 本件発明1は、「無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)」を含むとともに、無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤(J)について、「前記耐湿性向上剤(J)が、下記(共)重合体(A1)および(共)重合体(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体(A)を含有してなる耐湿性向上剤であり」、「(共)重合体(A1):炭素数3~30の不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)と25℃における溶解度が10g以下/水100gである(メタ)アクリル酸エステル(a2)とを構成単量体として含み、重量平均分子量が3,000~150,000である(共)重合体、 (共)重合体(A2):前記不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含み、前記(メタ)アクリル酸エステル(a2)を構成単量体として含まず、重量平均分子量が6,000~150,000である(共)重合体。」と特定されているのに対し、甲5発明は、そのような特定を備えていない点 <相違点15> 「架橋剤(C)」について、本件発明1は、「尿素(C1)、ホウ素化合物(C2)及び2価~4価の多価カルボン酸(C5)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり」と特定されているのに対し、甲5-1発明及び甲5-3発明では「ジエタノールアミン」であり、甲5-7発明では「ジイソプロパノールアミン」である点 <相違点16> 「主剤(D)」について、本件発明1は、「デンプン(D1)及びポリビニルアルコール(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である」と特定されているのに対し、甲5―1発明は「ポリアクリル酸(酸価770mgKOH/g、重量平均分子量8,000)」であり、甲5-3発明では「スチレンとマレイン酸とからなるポリカルボン酸(酸価890mgKOH/g、重量平均分子量14,000)」であり、甲5-7発明では「アクリル酸及びメチルアクリレートからなるポリカルボン酸(酸価710mgKOH/g、重量平均分子量5,000)」である点 <相違点17> 「主剤(D)と前記架橋剤(C)との組合せ[(D)/(C)]」について、本件発明1は、「(D1)/(C1)、(D1)/(C5)又は(D2)/(C2)である」と特定されているのに対し、甲1発明は、そのような特定を備えていない点 (イ)相違点についての判断 a 相違点14~16は、下記b~dのとおり、いずれも実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲5に記載された発明ではない。 b 相違点14について 甲5には、無機繊維断熱吸音材用水性バインダーにさらに含有させることができる成分について「また、本発明の無機繊維断熱吸音材用水性バインダーにおいて、硬化促進剤を、前記ポリカルボン酸類と前記架橋剤との合計100質量部に対して、0.1~10質量部含有することが好ましい。」(段落【0020】)、「また、本発明の無機繊維断熱吸音材用水性バインダーにおいて、硫酸アンモニウムを、前記ポリカルボン酸類と前記架橋剤との合計100質量部に対して、0.1~5質量部含有することが好ましい。」(段落【0021】)、「また、本発明の無機繊維断熱吸音材用水性バインダーにおいて、ワックス類、あるいはワックス類及び重質オイル類の混合物より選択される1種の水分散体を、前記ポリカルボン酸類と前記架橋剤との合計100質量部に対して、固形分換算で、0.1~5質量部含有することが好ましい。」(段落【0022】)、「また、本発明の無機繊維断熱吸音材用水性バインダーにおいて、シランカップリング剤を、前記ポリカルボン酸類と前記架橋剤との合計100質量部に対して、0.1~2質量部含有することが好ましい。」(段落【0023】)と記載されているが、無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤を添加することについては記載も示唆もない。 そうすると、当業者といえども、甲5発明において、さらに無機材料用水性接着剤の耐湿性向上剤を含有するものすることにより、相違点14に係る構成を備えるものとすることを容易になし得たとはいえない。 c 相違点15について 甲5には、「ジエタノールアミン」や「ジイソプロパノールアミン」にかえて、尿素、ホウ素化合物又は2価~4価の多価カルボン酸を用いることは、記載も示唆もされておらず、甲5の記載に接した当業者が甲5に記載された発明において、尿素、ホウ素化合物又は2価~4価の多価カルボン酸を用いることを容易に想到したとはいえない。 d 相違点16について 甲5には、「ポリアクリル酸(酸価770mgKOH/g、重量平均分子量8,000)」、「スチレンとマレイン酸とからなるポリカルボン酸(酸価890mgKOH/g、重量平均分子量14,000)」又は「アクリル酸及びメチルアクリレートからなるポリカルボン酸(酸価710mgKOH/g、重量平均分子量5,000)」にかえてデンプンやポリビニルアルコールを用いることは、記載も示唆もされておらず、「ポリアクリル酸(酸価770mgKOH/g、重量平均分子量8,000)」、「スチレンとマレイン酸とからなるポリカルボン酸(酸価890mgKOH/g、重量平均分子量14,000)」又は「アクリル酸及びメチルアクリレートからなるポリカルボン酸(酸価710mgKOH/g、重量平均分子量5,000)」と、デンプンやポリビニルアルコールが代替可能物として用いられることや、無機繊維断熱吸音材水性バインダーにデンプンまたはポリビニルアルコールを添加することが技術常識であったともいえない。 すると、甲5の記載に接した当業者が甲5に記載された発明において、デンプンまたはポリビニルアルコールを用いることを容易に想到したとはいえない。 e 効果について 本件発明1は、「優れた接着性」、「優れた耐湿性」及び「優れた剛性」(本件明細書の段落【0006】)という顕著な効果を奏するものである。 f 上記b~eのとおりであるから、相違点17について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められない。 (ウ)小括 上記(イ)aのとおり、本件発明1は、甲5に記載された発明ではないし、上記(イ)fのとおり、甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められないから、本件発明1に係る特許を申立理由7によって取り消すべきものとすることはできない。 また、本件発明2、6は、本件発明1を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に該当するところ、上記のとおり、本件発明1は、甲5に記載された発明ではないし、甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとも認められないものであって、本発明1に係る特許を申立理由7によって取り消すべきものとすることはできないものである。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700285

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