特許異議申立
2023-701038
炊飯設備
- 審判番号
- 2023-701038
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-217996
- 登録番号
- 7250246
- 請求日
- 2023年09月28日
- 審決日
- 2025年03月27日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社サタケ
- 【異議申立人】佐藤 和弘
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 柴田 昌弘
- 審判官 加藤 友也
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7250246号発明「炊飯設備」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7250246号の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び訂正図面のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第7250246号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7250246号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成30年11月21日の出願であって、令和5年3月24日にその特許権の設定登録(請求項の数1)がされ、同年4月3日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月28日に特許異議申立人 佐藤 和弘(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1)がされ、同年11月30日付けで取消理由が通知され、令和6年2月2日に特許権者 株式会社サタケ(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月27日に特許権者から手続補正書が提出され、同年3月8日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年4月15日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年5月16日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年7月19日に特許権者から訂正請求がされ、同年8月2日に特許権者から意見書が提出され、同年同月22日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対して特許異議申立人から応答がなく、同年10月31日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年12月6日に特許権者から意見書が提出され、令和7年1月24日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年2月20日に特許権者から訂正請求がされるとともに意見書が提出されたものである。
なお、令和6年2月2日及び同年7月19日にされた訂正請求はいずれも、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、既に特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和7年2月20日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第6及び7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断し、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときといえるから、特許異議申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和7年2月20日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って順次搬送し、該搬送ライン上の浸漬、配米、炊飯及び蒸らしといった炊飯に必要な各工程を通過させながら連続的な炊飯を行うようにした炊飯設備において、
前記炊飯設備には、前記多数の炊飯釜を搬送する搬送装置が各工程間を連絡するように設けられ、
前記搬送装置の全部又は一部は、前記炊飯釜のみを搬送する炊飯釜用搬送部と、前記炊飯釜の釜蓋のみを搬送する釜蓋用搬送部とにより形成するとともに、前記炊飯釜用搬送部を上段、前記釜蓋用搬送部を下段に配設したことを特徴とする炊飯設備。」とあるのを、
「少なくとも、搬送ライン(H)に多数の炊飯釜(9)及び釜蓋(10)を洗浄する洗浄装置(2)と、原料の米を浸漬する浸漬装置(3)と、浸漬された米を前記炊飯釜(9)に配米 する配米装置(11)と、前記配米された米を炊飯する炊飯装置(4)と、炊飯装置(4)で炊飯された米を蒸らす蒸らし装置とを備え、連続的な炊飯を行うようにした炊飯設備(1)において、
前記洗浄装置(2)から前記浸漬装置(3)の米を配米する配米装置(11)に至る経路に、前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を一列状態で交互に搬送する搬送装置(30a)を設ける一方、
前記配米装置(11)の下方には、前記炊飯釜(9)のみを搬送する炊飯釜用搬送部(17)と、前記釜蓋(10)のみを搬送する釜蓋用搬送部(18)とにより形成する搬送装置(30b)を設け、前記炊飯釜用搬送部(17)を上段に、前記釜蓋用搬送部(18)を下段に配設し、
さらに、前記搬送装置(30a)の搬送終端と、前記搬送装置(30b)の搬送始端との間には、前記搬送装置(30a)により一列状態で交互に搬送されてきた前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を二つに分別し、前記釜蓋(10)のみを下降させて前記釜蓋用搬送部(18)に前記釜蓋(10)を搬送させる釜蓋下降部を設けたことを特徴とする炊飯設備(1)。」に訂正する。
(2)訂正事項2
明細書の【0007】に「上記課題を解決するため本発明の炊飯設備は、多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って順次搬送し、該搬送ライン上の浸漬、配米、炊飯及び蒸らしといった炊飯に必要な各工程を通過させながら連続的な炊飯を行うようにした炊飯設備において、
前記炊飯設備には、前記多数の炊飯釜を搬送する搬送装置が各工程間を連絡するように設けられ、前記搬送装置の全部又は一部は、前記炊飯釜のみを搬送する炊飯釜用搬送部と、前記炊飯釜の釜蓋のみを搬送する釜蓋用搬送部とにより形成するとともに、前記炊飯釜用搬送部を上段、前記釜蓋用搬送部を下段に配設するという技術的手段を講じた。」とあるのを、
「上記課題を解決するため本発明の炊飯設備は、少なくとも、搬送ライン(H)に多数の炊飯釜(9)及び釜蓋(10)を洗浄する洗浄装置(2)と、原料の米を浸漬する浸漬装置(3)と、浸漬された米を前記炊飯釜(9)に配米 する配米装置(11)と、前記配米された米を炊飯する炊飯装置(4)と、炊飯装置(4)で炊飯された米を蒸らす蒸らし装置とを備え、連続的な炊飯を行うようにした炊飯設備(1)において、
前記洗浄装置(2)から前記浸漬装置(3)の米を配米する配米装置(11)に至る経路に、前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を一列状態で交互に搬送する搬送装置(30a)を設ける一方、
前記配米装置(11)の下方には、前記炊飯釜(9)のみを搬送する炊飯釜用搬送部(17)と、前記釜蓋(10)のみを搬送する釜蓋用搬送部(18)とにより形成する搬送装置(30b)を設け、前記炊飯釜用搬送部(17)を上段に、前記釜蓋用搬送部(18)を下段に配設し、
さらに、前記搬送装置(30a)の搬送終端と、前記搬送装置(30b)の搬送始端との間には、前記搬送装置(30a)により一列状態で交互に搬送されてきた前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を二つに分別し、前記釜蓋(10)のみを下降させて前記釜蓋用搬送部(18)に前記釜蓋(10)を搬送させる釜蓋下降部を設けるという技術的手段を講じた。」に訂正する。
(3)訂正事項3
下記に示すように、図面の図3において、符号「30a」及び「30b」を引き出し線とともに付記する訂正とする。
<図面の図3>
[図:0001424551000001.jpg]
<本件訂正後の図面の図3>
[図:0001424551000002.jpg]
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)特許請求の範囲の請求項1についての訂正について
訂正事項1による特許請求の範囲の請求項1についての訂正は、訂正前の「多数の炊飯釜を搬送ラインに沿って順次搬送し、該搬送ライン上の浸漬、配米、炊飯及び蒸らしといった炊飯に必要な各工程を通過させながら連続的な炊飯を行うようにした炊飯設備」という発明特定事項における各工程がどのような装置により行われるものかを具体的に特定し、訂正前の「多数の炊飯釜を搬送する搬送装置」がどのように「炊飯釜」を搬送する装置なのかを具体的に特定し、訂正前の「炊飯釜用搬送部」及び「釜蓋用搬送部」がどのように配置されるのかを具体的に特定した上で、「釜蓋」の「下降」がどのように行われるのかを具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による特許請求の範囲の請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)明細書の【0007】についての訂正について
訂正事項2による明細書の【0007】についての訂正は、訂正事項1による訂正により特許請求の範囲の請求項1を訂正したことに伴い、発明の詳細な説明の記載と特許請求の範囲の記載との整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項2による明細書の【0007】についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)図面の図3についての訂正について
訂正事項3による図面の図3についての訂正は、訂正事項1による訂正により特許請求の範囲の請求項1を訂正したことに伴い、図面の記載と特許請求の範囲の記載との整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項3による図面の図3についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 本件訂正についてのむすび
以上のとおり、訂正事項1による特許請求の範囲の請求項1についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項2による明細書の【0007】についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。
さらに、訂正事項3による図面の図3についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。
そして、訂正事項1による特許請求の範囲の請求項1についての訂正、訂正事項2による明細書についての訂正及び訂正事項3による図面の図3についての訂正はいずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正事項1による特許請求の範囲の請求項1についての訂正は、請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第3項の規定に適合する。
また、訂正事項2による明細書の【0007】についての訂正及び訂正事項3による図面の図3についての訂正は、当該訂正に係る請求項の全て(請求項1)について訂正請求が行われており、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び訂正図面のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも、搬送ライン(H)に多数の炊飯釜(9)及び釜蓋(10)を洗浄する洗浄装置(2)と、原料の米を浸漬する浸漬装置(3)と、浸漬された米を前記炊飯釜(9)に配米する配米装置(11)と、前記配米された米を炊飯する炊飯装置(4)と、炊飯装置(4)で炊飯された米を蒸らす蒸らし装置とを備え、連続的な炊飯を行うようにした炊飯設備(1)において、
前記洗浄装置(2)から前記浸漬装置(3)の米を配米する配米装置(11)に至る経路に、前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を一列状態で交互に搬送する搬送装置(30a)を設ける一方、
前記配米装置(11)の下方には、前記炊飯釜(9)のみを搬送する炊飯釜用搬送部(17)と、前記釜蓋(10)のみを搬送する釜蓋用搬送部(18)とにより形成する搬送装置(30b)を設け、前記炊飯釜用搬送部(17)を上段に、前記釜蓋用搬送部(18)を下段に配設し、
さらに、前記搬送装置(30a)の搬送終端と、前記搬送装置(30b)の搬送始端との間には、前記搬送装置(30a)により一列状態で交互に搬送されてきた前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を二つに分別し、前記釜蓋(10)のみを下降させて前記釜蓋用搬送部(18)に前記釜蓋(10)を搬送させる釜蓋下降部を設けたことを特徴とする炊飯設備(1)。」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等
令和5年9月28日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第3号証に基づく進歩性)
本件特許発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 証拠方法
甲第1号証:特開2017-99733号公報
甲第2号証:特開2017-164254号公報
甲第3号証:特開2006-102154号公報
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由(決定の予告)の概要
令和7年1月24日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。
1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由1とおおむね同旨である。
2 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。なお、該取消理由2は申立理由2とおおむね同旨である。
第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「炊飯システム」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の証拠についても同様。
・「【0003】
この従来の炊飯システムは、例えば計量装置、浸漬ライン、添加剤供給装置、炊飯ライン、蒸らしライン、炊飯釜反転装置、炊飯釜洗浄装置等を備え、容器である炊飯釜を循環移動させながら炊飯を行うものである。
・・・(略)・・・
【0006】
しかしながら、上記従来の炊飯システムでは、例えば工場等の建物内において、1つの階、例えば1階に炊飯システム全体を設置する構成であるから、設置スペースを確保するのが困難な場合がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、設置スペースを容易に確保できる炊飯システムを提供することを目的とする。」
・「【0016】
図中の1は炊飯システムで、この炊飯システム1は、米を収納する複数の容器(米収納容器)である炊飯釜2を循環移動させながら炊飯を行う大型の炊飯設備である。
【0017】
なお、炊飯釜2は、例えば金属製のもので、上面開口を有する釜本体2aと、この釜本体2aに着脱可能に装着され釜本体2aの上面開口を閉じる蓋2bにて構成されている。
【0018】
炊飯システム1は、工場等の建物5の一の階である例えば1階に設置され、炊飯システム1の一部を構成する第1システム構成手段6と、建物5の他の階である例えば2階に設置され、炊飯システム1の残りの他部を構成する第2システム構成手段7と、第1システム構成手段6からの炊飯釜(釜本体2aに蓋2bが装着された状態の炊飯釜)2を第2システム構成手段7に向けて上方に搬送する第1搬送手段である上方搬送手段8と、第2システム構成手段7からの炊飯釜(釜本体2aに蓋2bが装着された状態の炊飯釜)2を第1システム構成手段6に向けて下方に搬送する第2搬送手段である下方搬送手段9とを備えている。」
・「【0022】
具体的には、2階の第2システム構成手段7は、炊飯システム1のうち作業者Xが注意を払う必要がない部分(釜本体2aに蓋2bが装着されて炊飯釜2が蓋装着状態となっている部分)として、所定時間の経過によって炊飯釜2内の米に水を吸収させる浸漬部13のみを構成している。
【0023】
また、1階の第1システム構成手段6は、炊飯システム1のうち、浸漬部13以外の部分、すなわち例えば洗浄部14、第1供給部15、第2供給部16、加熱炊飯部17、蒸らし部18、第3供給部19および排出部20を構成している。」
・「【0025】
まず、洗浄部14は、釜本体2aおよび蓋2bを上下に分けて搬送しながら各々の表面全体を洗浄し、特に釜本体2a内の付着物を除去する洗浄装置21を有している。洗浄装置21は、釜本体2aを搬送する釜本体搬送コンベヤ部22と、この釜本体搬送コンベヤ部22の下方に配設され、蓋2bを搬送する蓋搬送コンベヤ部23とを有している。
【0026】
第1供給部15は、洗米装置25と、この洗米装置25にて洗米された米を炊飯釜(釜本体2aから蓋2bが取り外された蓋外し状態の炊飯釜)2、換言すると釜本体2aに供給する米供給装置26と、浸漬用の水(浸漬水)を釜本体2aに供給する浸漬水供給装置27と、所定量の米(洗米)および所定量の浸漬用の水が収納された釜本体2aに蓋2bを装着する蓋装着装置28とを有している。」
・「
[図:0001424551000003.jpg]
」
・「
[図:0001424551000004.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された「炊飯システム1」における「洗浄部14」、「浸漬部13」、「第1供給部15」、「加熱炊飯部17」及び「蒸らし部18」で「洗浄工程」、「浸漬工程」、「配米工程」、「炊飯工程」及び「蒸らし工程」が行われていること及びこれらの工程が連続的に行われていることは当業者に明らかであり、これらを踏まえて、甲1に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「複数の炊飯釜2を循環移動させ、洗浄、浸漬、配米、炊飯及び蒸らし等の各工程を通過させながら連続的な炊飯を行うようにした炊飯システム1において、
炊飯システム1には、複数の炊飯釜2を搬送する釜本体搬送コンベヤ部22、蓋搬送コンベヤ部23、上方搬送手段8及び下方搬送手段9等が各工程間を連絡するように設けられ、
釜本体搬送コンベヤ部22、蓋搬送コンベヤ部23、上方搬送手段8及び下方搬送手段9等の一部は、炊飯釜2の釜本体2aのみを搬送する釜本体搬送コンベヤ部22と、
炊飯釜2の蓋2bのみを搬送する蓋搬送コンベヤ部23とにより形成され、
洗浄部14において、釜本体搬送コンベヤ部22を上段に、蓋搬送コンベヤ部23を下段に配設した、
炊飯システム1。」
(2)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「一釜式炊飯設備」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0001】
本発明は、炊飯工場、学校、病院等で用いられる一釜式炊飯設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記一釜式炊飯設備は、複数の炊飯釜を搬送コンベアで搬送しながら炊飯を行うものであり、特許文献1のものが知られている。」
・「【0005】
ところで、前記炊飯設備は、前記炊飯コンベア上における各工程において、常時、蓋が炊飯釜に装着されているわけではなく、例えば、炊飯工程前の添加物等の供給工程や、炊飯工程後の酢の投入工程のように、炊飯釜から蓋が外される工程が存在する。蓋が外された炊飯釜は、該炊飯釜を個別に管理する情報を何も持たない状態となるので、前記炊飯設備では、前記供給工程や投入工程の後、蓋を炊飯釜に再装着する際に、前記炊飯釜自体の情報を確認する手段がなく、本来装着すべき蓋とは異なる蓋が装着されるおそれがある。このため、各炊飯釜の管理が正しく行えなくなるおそれがある。例えば、白飯を炊飯する白飯用炊飯釜に、酢飯を炊飯する酢飯用炊飯釜の蓋が誤って装着されると、その白飯用炊飯釜に酢が投入されることになり、酢が投入された白飯は不良品となるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点にかんがみて、炊飯釜本体にマーカを取り付けて各炊飯釜の管理を正しく行うことが可能な一釜式炊飯設備を提供することを技術的課題とする。」
・「【0011】
【図1】炊飯設備の概略平面図
【図2】洗浄装置及び浸漬装置の概略側面図
【図3】炊飯設備及び蒸らし装置の概略側面図
【図4】位置決め装置の概略斜視図
【図5】丸釜の側面図
【図6】丸釜の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る 一釜式炊飯設備100の概略平面図を示す。図2は洗浄装置10及び浸漬装置20の概略側面図であり、図3は炊飯装置70及び蒸らし装置71の概略側面図であって、各装置は省略して示してある。なお、各装置は搬送コンベア23上に配設されており、該搬送コンベア23により炊飯釜1が順次搬送される。
【0013】
図1~図3に示すように、本発明の実施の形態において一釜式炊飯設備100は、炊飯釜1や釜蓋2を洗浄する洗浄装置10と、米粒に浸漬水を吸水させる浸漬装置20と、前記浸漬装置20で浸漬水を吸水した米粒を水切りした後、炊飯釜1に配米する配米装置30と、炊飯水を加水する加水装置31と、前記炊飯釜1に食油や調味料を投入する調味料投入装置40と、前記炊飯釜1に釜蓋2を被せる蓋被せ装置60と、前記炊飯釜1を加熱し炊飯する炊飯装置70と、炊飯後の炊飯釜1を搬送しながら蒸らしを行う蒸らし装置71と、蒸らし後の米飯に酢を散布可能な酢散布装置80と、炊飯釜1を反転させて米飯を取り出す反転装置90と、炊飯釜に取り付けたマーカの位置を所定の位置に設定する位置決め装置91を備える。」
・「【0025】
位置決め装置91bでマーカの位置を再設定した炊飯釜1は、酢散布装置80に搬送され、酢散布が必要な炊飯釜1に酢が散布される。そして、蓋取装置81で蓋が取り外され、反転装置90で反転されて炊飯釜1内の飯米が取り出される。反転装置90では反転、撹拌、ほぐし冷却などが行われ、取り出された飯米は製品として次工程に搬送される。
【0026】
反転装置90に飯米が投入された後の炊飯釜1は、洗浄装置20で洗浄され、そして位置決め装置91aに搬送されて最初からの炊飯工程が繰り返される。
【0027】
以上の一釜式炊飯設備100は、炊飯釜1内に供給する米粒、炊飯水、具材及び調味液の量を入力する入力部(図示せず)と、この入力部が接続された制御部(図示せず)と、この制御部により総合的に制御される配米装置30、加水装置31、浸漬装置20、調味料投入装置40、炊飯装置70、蒸らし装置71、反転装置90、洗浄部10、位置決め装置91及び読取装置93がそれぞれ接続してある。」
・「
[図:0001424551000005.jpg]
」
・「
[図:0001424551000006.jpg]
」
イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された「一釜式炊飯設備100」における「洗浄装置10」、「浸漬装置20」、「配米装置30」、「炊飯装置70」及び「蒸らし装置71」で「洗浄工程」、「浸漬工程」、「配米工程」、「炊飯工程」及び「蒸らし工程」が行われていること及びこれらの工程が連続的に行われていることは当業者に明らかである。
甲2の【0012】、【0013】、【0025】及び【0026】によると、甲2に記載された「一釜式炊飯設備100」において、「位置決め装置91」から「蓋被せ装置60」までの間の「搬送コンベア23」には、「炊飯釜1」内に米や調味料を投入可能とするために、「釜蓋2」が取り外された「炊飯釜1」のみを搬送する搬送コンベアがあることは当業者に明らかである。
甲2の図2から、「搬送コンベア23」の一部には、途中で上下2段に形成された箇所があり、このうち、「釜蓋2」が取り外された「炊飯釜1」のみを搬送する搬送コンベアが上段に、それと同様の搬送コンベアが下段に配設されていることが看取される。
これらを踏まえて、甲2に記載された事項を整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2発明>
「複数の炊飯釜1を搬送コンベア23に沿って順次搬送し、該搬送コンベア23上の洗浄、浸漬、配米、炊飯及び蒸らし等の各工程を通過させながら連続的な炊飯を行うようにした一釜式炊飯設備100において、
一釜式炊飯設備100には、多数の炊飯釜1を搬送する搬送コンベア23が各工程間を連絡するように設けられ、
搬送コンベア23の一部には、釜蓋2が取り外された炊飯釜1のみを搬送する搬送コンベアがあり、
搬送コンベア23のうち炊飯釜1のみを搬送する搬送コンベアが上段に、それと同様の搬送コンベアが下段に配設されている、
一釜式炊飯設備100。」
2 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)対比・判断
ア 対比
本件特許発明と甲1発明を対比する。
甲1発明における「複数の炊飯釜2を循環移動させ、洗浄、浸漬、配米、炊飯及び蒸らし等の各工程を通過させながら連続的な炊飯を行うようにした炊飯システム1」は本件特許発明における「少なくとも、搬送ライン(H)に多数の炊飯釜(9)及び釜蓋(10)を洗浄する洗浄装置(2)と、原料の米を浸漬する浸漬装置(3)と、浸漬された米を前記炊飯釜(9)に配米する配米装置(11)と、前記配米された米を炊飯する炊飯装置(4)と、炊飯装置(4)で炊飯された米を蒸らす蒸らし装置とを備え、連続的な炊飯を行うようにした炊飯設備(1)」に相当する。
甲1発明における「釜本体搬送コンベヤ部22、蓋搬送コンベヤ部23、上方搬送手段8及び下方搬送手段9等」は本件特許発明における「前記洗浄装置(2)から前記浸漬装置(3)の米を配米する配米装置(11)に至る経路」に設けられた「前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を一列状態で交互に搬送する搬送装置(30a)」と、「前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を搬送する搬送装置(30a)」という限りにおいて一致する。
甲1発明における「洗浄部14において、釜本体搬送コンベヤ部22を上段に、蓋搬送コンベヤ部23を下段に配設した」は本件特許発明における「前記搬送装置(30a)の搬送終端と、前記搬送装置(30b)の搬送始端との間には、前記搬送装置(30a)により一列状態で交互に搬送されてきた前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を二つに分別し、前記釜蓋(10)のみを下降させて前記釜蓋用搬送部(18)に前記釜蓋(10)を搬送させる釜蓋下降部を設けた」と、「前記炊飯釜(9)のみを搬送する炊飯釜用搬送部(17)と、前記釜蓋(10)のみを搬送する釜蓋用搬送部(18)とにより形成する搬送装置(30b)を設け、前記炊飯釜用搬送部(17)を上段に、前記釜蓋用搬送部(18)を下段に配設した」という限りにおいて一致する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「少なくとも、搬送ライン(H)に多数の炊飯釜(9)及び釜蓋(10)を洗浄する洗浄装置(2)と、原料の米を浸漬する浸漬装置(3)と、浸漬された米を前記炊飯釜(9)に配米する配米装置(11)と、前記配米された米を炊飯する炊飯装置(4)と、炊飯装置(4)で炊飯された米を蒸らす蒸らし装置とを備え、連続的な炊飯を行うようにした炊飯設備(1)において、
前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を搬送する搬送装置(30a)を設ける一方、
前記炊飯釜(9)のみを搬送する炊飯釜用搬送部(17)と、前記釜蓋(10)のみを搬送する釜蓋用搬送部(18)とにより形成する搬送装置(30b)を設け、前記炊飯釜用搬送部(17)を上段に、前記釜蓋用搬送部(18)を下段に配設した、
炊飯設備(1)。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点1-1>
「前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を搬送する搬送装置(30a)」に関して、本件特許発明においては「前記洗浄装置(2)から前記浸漬装置(3)の米を配米する配米装置(11)に至る経路」に設けられた「前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を一列状態で交互に搬送する搬送装置(30a)」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点1-2>
「前記炊飯釜(9)のみを搬送する炊飯釜用搬送部(17)と、前記釜蓋(10)のみを搬送する釜蓋用搬送部(18)とにより形成する搬送装置(30b)」を設ける箇所が、本件特許発明においては「前記配米装置(11)の下方には」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点1-3>
「前記炊飯釜(9)のみを搬送する炊飯釜用搬送部(17)と、前記釜蓋(10)のみを搬送する釜蓋用搬送部(18)とにより形成する搬送装置(30b)を設け、前記炊飯釜用搬送部(17)を上段に、前記釜蓋用搬送部(18)を下段に配設した」に関して、本件特許発明においては「前記搬送装置(30a)の搬送終端と、前記搬送装置(30b)の搬送始端との間には、前記搬送装置(30a)により一列状態で交互に搬送されてきた前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を二つに分別し、前記釜蓋(10)のみを下降させて前記釜蓋用搬送部(18)に前記釜蓋(10)を搬送させる釜蓋下降部を設けた」と特定されているのに対し、甲1発明においては「洗浄部14において、釜本体搬送コンベヤ部22を上段に、蓋搬送コンベヤ部23を下段に配設した」と特定されている点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点1-3について判断する。
甲1発明における「洗浄部14」は、図5によると、「釜本体」を上方に移動するものであり、「釜蓋」を下方に移動するものではないから、相違点1-3は実質的な相違点である。
そして、甲1には、甲1発明において、相違点1-3に係る本件特許発明の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
よって、甲1発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-3に係る本件特許発明の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(2)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明は甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)取消理由1についてのむすび
上記のとおり、本件特許発明は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。
3 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)対比・判断
ア 対比
本件特許発明と甲2発明を対比する。
甲2発明における「複数の炊飯釜1を搬送コンベア23に沿って順次搬送し、該搬送コンベア23上の洗浄、浸漬、配米、炊飯及び蒸らし等の各工程を通過させながら連続的な炊飯を行うようにした一釜式炊飯設備100」は本件特許発明における「少なくとも、搬送ライン(H)に多数の炊飯釜(9)及び釜蓋(10)を洗浄する洗浄装置(2)と、原料の米を浸漬する浸漬装置(3)と、浸漬された米を前記炊飯釜(9)に配米する配米装置(11)と、前記配米された米を炊飯する炊飯装置(4)と、炊飯装置(4)で炊飯された米を蒸らす蒸らし装置とを備え、連続的な炊飯を行うようにした炊飯設備(1)」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「少なくとも、搬送ライン(H)に多数の炊飯釜(9)及び釜蓋(10)を洗浄する洗浄装置(2)と、原料の米を浸漬する浸漬装置(3)と、浸漬された米を前記炊飯釜(9)に配米する配米装置(11)と、前記配米された米を炊飯する炊飯装置(4)と、炊飯装置(4)で炊飯された米を蒸らす蒸らし装置とを備え、連続的な炊飯を行うようにした炊飯設備(1)。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点2>
本件特許発明においては「前記洗浄装置(2)から前記浸漬装置(3)の米を配米する配米装置(11)に至る経路に、前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を一列状態で交互に搬送する搬送装置(30a)を設ける一方、
前記配米装置(11)の下方には、前記炊飯釜(9)のみを搬送する炊飯釜用搬送部(17)と、前記釜蓋(10)のみを搬送する釜蓋用搬送部(18)とにより形成する搬送装置(30b)を設け、前記炊飯釜用搬送部(17)を上段に、前記釜蓋用搬送部(18)を下段に配設し、
さらに、前記搬送装置(30a)の搬送終端と、前記搬送装置(30b)の搬送始端との間には、前記搬送装置(30a)により一列状態で交互に搬送されてきた前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を二つに分別し、前記釜蓋(10)のみを下降させて前記釜蓋用搬送部(18)に前記釜蓋(10)を搬送させる釜蓋下降部を設けた」と特定されているのに対し、甲2発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点2について検討する。
甲2には、甲2発明における「釜蓋2」及び「釜蓋2が取り外された炊飯釜1」がどのような状態で搬送されるのか記載されておらず、当然、「釜蓋2」及び「釜蓋2が取り外された炊飯釜1」が一列状態で交互に搬送されること及び「釜蓋2」のみを下降させる釜蓋下降部が設けられていることは記載されていないから、相違点2は実質的な相違点である。
そして、甲2には、甲2発明において、相違点2に係る本件特許発明の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
よって、甲2発明において、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2に係る本件特許発明の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(2)まとめ
したがって、本件特許発明は甲2発明であるとはいえないし、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)取消理由2についてのむすび
上記のとおり、本件特許発明は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由2によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由(決定の予告)として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について
取消理由(決定の予告)として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は申立理由3(甲3に基づく進歩性)である。
以下、申立理由3について検討する。
1 甲3に記載された事項等
(1)甲3に記載された事項
甲3には、「炊飯水交換装置とそれを用いる炊飯システム」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0009】
図1は、本発明の炊飯水交換装置の一例を示す正面図である。図1において、1は本発明の炊飯水交換装置であり、2は蓋取装置、3は水抜装置、4は給水装置、5は添加材供給装置、6はナラシ装置、7は蓋着装置である。本例の炊飯水交換装置1においては、これらの装置が、搬送経路の上流側からこの順に配置されている。8はローラーコンベア、9はプラスチックコンベア、10は炊飯釜、11は炊飯釜10の蓋である。本明細書において、搬送経路の上流側とは、ローラーコンベア8やプラスチックコンベア9などの搬送装置によって、炊飯釜10が搬送されてくる上流側をいい、図1においては炊飯釜10は図中右側から左側に向かって搬送されるので、図中右側が上流側ということになる。なお、炊飯釜10を搬送する搬送装置としては、ローラーコンベア8やプラスチックコンベア9に限られるものではなく、ローラーコンベア8の代わりに、チェーンコンベアやプラスチックコンベア若しくはベルトコンベアなどを用いても良く、プラスチックコンベア9の代わりに、チェーンコンベアやローラーコンベア若しくはベルトコンベアなどを用いても良い。
【0010】
図1において、炊飯釜10が、搬送経路の上流側に配置されている図示しない浸漬ラインを経て、内部に米と浸漬水とを収容し、蓋11がされた状態で、蓋取装置2の位置まで搬送されてくると、位置検知装置12が作動して、炊飯釜10を蓋取装置2の所定位置に停止させる。炊飯釜10が蓋取装置2の所定位置に停止すると、蓋取装置2の可動部203が下降し、その下方端に取り付けられている蓋チャック204が蓋11を把持する。蓋チャック204が蓋11を把持する機構に特段の制限はなく、蓋11を持ち上げ、所定位置まで搬送することができる限りどのような機構を採用しても良い。例えば、蓋11が磁性体である場合には、蓋チャック204に電磁石を用い、電磁石が発生する磁力によって蓋11を吸着、把持するようにしても良いし、蓋チャック204の内部を真空に引き、その負圧によって蓋11を吸引し、把持するようにしても良い。蓋11の一部をつかむことにより蓋11を把持する機械的な把持機構を採用しても良いことは勿論である。
【0011】
蓋チャック204が蓋11を把持すると、可動部203は、図中矢印で示すように上昇位置(A)まで上昇し、さらに、水平方向に所定位置(B)まで移動する。その所定位置(B)で、可動部203は下降し、蓋11を蓋搬送装置13の上に載置した後、蓋チャック204による蓋11の把持を解除する。蓋搬送装置13の上に載置された蓋11は、後述する蓋着装置7へと、矢印水平方向に搬送される。蓋取装置2は、以上のような動作を繰り返し、順次搬送されてくる炊飯釜10の蓋11を自動的に取り、蓋搬送装置13へと搬送する。
【0012】
蓋11が取られ、上部が開放された炊飯釜10は、次に、水抜装置3へと搬送される。炊飯釜10が水抜装置3の所定位置まで搬送されてくると、位置検知装置12が作動して、炊飯釜10を停止させる。」
・「【0046】
以上のような水抜装置又は炊飯水交換装置は、適宜、炊飯システムに組み込みむことができる。図20に、本発明の炊飯水交換装置を組み込んだ炊飯システムの一例を示す。図において、2~7は、それぞれ先に説明した蓋取装置2、水抜装置3、給水装置4、添加材供給装置5、ナラシ装置6、蓋着装置7である。蓋着装置7によって蓋11を装着された炊飯釜10は、搬送装置によって炊飯ライン16へと搬送され、炊飯される。炊飯が終了した炊飯釜10は、次いで、蒸らしライン17へと搬送され、そこで所定時間の蒸らし工程を経たのちに、蓋取装置18に搬送され、蓋が取られる。蓋が取られた炊飯釜は、炊飯釜反転装置19で反転され、内部の炊き上がったご飯を搬送装置上に放出する。搬送装置上に放出されたご飯は、米飯撹拌装置20、冷却装置21を経て、計量装置22によって所定量ずつ出荷用容器に充填され、積み上げ装置23を経て出荷される。」
・「
[図:0001424551000007.jpg]
」
・「
[図:0001424551000008.jpg]
」
(2)甲3に記載された発明
甲3に記載された事項を整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。
<甲3発明>
「多数の炊飯釜10を搬送経路に沿って順次搬送し、該搬送経路上の浸漬、米の収容、炊飯及び蒸らしといった炊飯に必要な各工程を通過させながら連続的な炊飯を行うようにした炊飯水交換装置1を組み込んだ炊飯システムにおいて、
炊飯システムには、多数の炊飯釜10を搬送する搬送装置として、ローラコンベヤ8やプラスチックコンベヤ9等が各工程間を連絡するように設けられ、
炊飯水交換装置1は、炊飯釜10のみを搬送する部分と、炊飯釜10の蓋11のみを搬送する蓋搬送装置13とにより形成され、炊飯釜10のみを搬送する部分を下段に、蓋搬送装置13を上段に配設し、炊飯釜10のみを搬送する部分において、水抜装置3による水抜き、給水装置4による給水、添加剤供給装置5による添加剤添加、ナラシ装置6によるナラシ及び蓋着装置7による蓋着を行うようにしたものである、炊飯システム。」
2 対比・判断
(1)対比
本件特許発明と甲3発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。
<相違点3>
本件特許発明においては「前記洗浄装置(2)から前記浸漬装置(3)の米を配米する配米装置(11)に至る経路に、前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を一列状態で交互に搬送する搬送装置(30a)を設ける一方、
前記配米装置(11)の下方には、前記炊飯釜(9)のみを搬送する炊飯釜用搬送部(17)と、前記釜蓋(10)のみを搬送する釜蓋用搬送部(18)とにより形成する搬送装置(30b)を設け、前記炊飯釜用搬送部(17)を上段に、前記釜蓋用搬送部(18)を下段に配設し、
さらに、前記搬送装置(30a)の搬送終端と、前記搬送装置(30b)の搬送始端との間には、前記搬送装置(30a)により一列状態で交互に搬送されてきた前記炊飯釜(9)及び前記釜蓋(10)を二つに分別し、前記釜蓋(10)のみを下降させて前記釜蓋用搬送部(18)に前記釜蓋(10)を搬送させる釜蓋下降部を設けた」ことが特定されているのに対し、甲3発明においてはそのようには特定されていない点。
(2)判断
相違点3について検討する。
甲3発明は、「下段」で搬送される「炊飯釜10」に対して、「水抜装置3による水抜き、給水装置4による給水、添加剤供給装置5による添加剤添加、ナラシ装置6によるナラシ及び蓋着装置7による蓋着を行う」ものであるから、甲3発明において、「炊飯釜10」を「上段」に配設すると、「水抜装置3」、「給水装置4」、「添加剤供給装置5」、「ナラシ装置6」及び「蓋着装置7」も「上段」に配設することになるが、「水抜装置3」、「給水装置4」、「添加剤供給装置5」、「ナラシ装置6」及び「蓋着装置7」のような装置を「上段」に配設することは考えられない。
したがって、甲3発明において、相違点3に係る本件特許発明の発明特定事項を採用する動機付けはないし、甲3を含め他の証拠にもそのような動機付けとなる記載はない。
よって、甲3発明において、甲3及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点3に係る本件特許発明の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(3)まとめ
したがって、本件特許発明は甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 むすび
上記のとおり、本件特許発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701038