特許異議申立
2022-700721
通気式型
- 審判番号
- 2022-700721
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-529694
- 登録番号
- 7019573
- 請求日
- 2022年07月26日
- 審決日
- 2023年05月08日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】プロプライアテクト・エル.ピー.
- 【権利者代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 【権利者代理人】蔵田 昌俊
- 【権利者代理人】野河 信久
- 【権利者代理人】井上 正
- 【権利者代理人】飯野 茂
- 【権利者代理人】河野 直樹
- 【権利者代理人】金子 早苗
- 【異議申立人】佐藤 和弘
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 河原 正
- 審判官 石附 直弥
- 分類
- P1651.121-Y (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7019573号発明「通気式型」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7019573号の請求項1ないし36に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7019573号(以下「本件特許」という。)の請求項1~36に係る特許についての出願(特願2018-529694号)は、2016年(平成28年)8月30日(パリ条約に基づく優先権主張 外国庁受理 2015年8月31日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和4年2月4日にその特許権の設定登録がされ、令和4年2月15日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和4年7月26日に、特許異議申立人 佐藤 和弘から、本件特許の全請求項に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯は、以下のとおりである。
令和4年12月 7日付け: 取消理由通知書
令和5年 3月10日 : 意見書(特許権者)
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~36に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明36」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~36に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
開位置と閉位置との間で開放可能に係合可能な第1の型要素及び第2の型要素であって、前記閉位置では型空洞を規定し、前記第1の型要素と前記第2の型要素との間に第1の部分線を規定する第1の型要素及び第2の型要素と、ここで、前記第1の型要素は、第1の型部と第2の型部を備え、それらの間に前記第1の部分線の周辺に対して内部に配置されている第2の部分線を規定するために、それらは互いに対して可逆的に分離可能に構成されており、
前記第2の部分線中に配置されている少なくとも1つの通気孔と、を備える型であって、前記少なくとも1つの通気孔は、通路の中の型材料の少なくとも部分的な硬化を引き起こすために、前記型空洞中の前記型材料が前記通路には入るが、前記通路からは出ないことを可能にするように構成されている前記通路を備える型において、
(i)前記第2の部分線は、成形される部分のB-表面に対応し、
(ii)前記通路の中の型材料は、前記成形される部分のB-表面に完全に取り付けられていることを特徴とする、型。
【請求項2】
前記通路内の少なくとも部分的に硬化した型材料がリボン形状を有するように、前記通路は、実質的に長方形の断面を有する、請求項1に記載の型。
【請求項3】
前記通路は、0.002インチ(0.00508センチメートル)から0.030インチ(0.0762センチメートル)の範囲の厚さを有する、請求項1~2のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項4】
前記通路は、0.005インチ(0.0127センチメートル)から0.020インチ(0.0508センチメートル)の範囲の厚さを有する、請求項1~2のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項5】
前記通路は、0.002インチ(0.00508センチメートル)から0.030インチ(0.0762センチメートル)の範囲の厚さ、及び、6インチ(15,24センチメートル)までの幅を有する、請求項1~2のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項6】
前記通路は、0.005インチ(0.0127センチメートル)から0.020インチ(0.0508センチメートル)の範囲の厚さ、及び、6インチ(15,24センチメートル)までの幅を有する、請求項1~2のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項7】
前記第1の型部は、開中央部を規定するように実質的に環状であり、前記第2の型部は、前記開中央部に可逆的に適合するように構成されている、請求項1~6のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項8】
前記第1の型部と前記第2の型部は、互いに対して直線的に移動可能になるように構成されている、請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項9】
前記第1の型部と前記第2の型部は、互いに対して非直線的に移動可能になるように構成されている、請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項10】
前記第1の型部と前記第2の型部は、互いに対して枢動可能に移動可能になるように構成されている、請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項11】
前記第2の型部に対して前記第1の型部を移動させるように構成されている第1の動力要素をさらに備える、請求項1~10のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項12】
前記第2の型部から前記第1の型部を分離するように構成されている第1の動力要素をさらに備える、請求項1~10のうちのいずれか1項記載の型。
【請求項13】
第1の動力要素は、機械的である、請求項11~12のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項14】
第1の動力要素は、油圧式である、請求項11~12のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項15】
第1の動力要素は、空気式である、請求項11~12のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項16】
第1の動力要素は、前記型空洞から成形された要素を除去する前に、前記第1の型部と前記第2の型部を分離するように構成されている、請求項11~15のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項17】
第1の動力要素は、前記型空洞から成形された要素を除去した後に、前記第1の型部と前記第2の型部を分離するように構成されている、請求項11~15のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項18】
前記開位置と前記閉位置との間で前記第1の型要素と前記第2の型要素を解放可能に係合するように構成されている第2の動力要素をさらに備える、請求項1~17のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項19】
前記第2の動力要素は、前記第1の型部と前記第2の型部の分離より前に、前記第1の型要素と前記第2の型要素とを前記開位置に配置するように構成されている、請求項18に記載の型。
【請求項20】
前記第2の動力要素は、前記第1の型部と前記第2の型部の分離の後に、前記第1の型要素と前記第2の型要素とを前記開位置に配置するように構成されている、請求項18に記載の型。
【請求項21】
前記型の閉位置において、前記第1の部分線を密封するように構成されている密封要素をさらに備えている、請求項1~20のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項22】
前記密封要素は、前記第1の型要素上に配置されている、請求項21に記載の型。
【請求項23】
前記密封要素は、前記第2の型要素上に配置されている、請求項21に記載の型。
【請求項24】
前記密封要素は、前記第1の型要素上に配置されている第1の密封要素と、前記第2の型要素上に配置されている第2の密封要素とを備えている、請求項21に記載の型。
【請求項25】
前記密封要素は、型材料が前記第1の部分線に入ることを実質的に防ぐように構成されている、請求項21~24のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項26】
前記第2の部分線に配置されている複数の間隙を介した通気孔を備えている、請求項1~25のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項27】
前記型空洞を規定する前記第1の型要素の表面の少なくとも一部分に配置されている少なくとも1つの溝要素をさらに備えている、請求項1~26のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項28】
前記型空洞を規定する前記第1の型要素の表面の少なくとも一部分に配置されている複数の溝要素をさらに備えている、請求項1~26のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項29】
前記型空洞を規定する前記第1の型要素の表面の少なくとも一部分に配置されている複数の相互接続溝要素をさらに備えている、請求項1~26のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項30】
前記型空洞を規定する前記第1の型要素の表面の少なくとも一部分に配置されている複数の溝要素をさらに備え、前記溝要素のうちの少なくとも1つは、複数の通気孔のうちの少なくとも1つと流体連通する、請求項1~26のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項31】
前記型空洞を規定する前記第1の型要素の表面の少なくとも一部分に配置されている複数の溝要素をさらに備え、前記複数の溝要素のうちの少なくともいくつかは、複数の通気孔のうちの少なくともいくつかと流体連通する、請求項1~26のうちのいずれか1項に記載の型。
【請求項32】
開位置と閉位置との間で開放可能に係合可能な第1の型要素及び第2の型要素であって、前記閉位置では型空洞を規定し、前記第1の型要素と前記第2の型要素の周囲に配置された第1の部分線を規定する第1の型要素及び第2の型要素と、ここで、前記第1の型要素は、環状型部と中央型部とを備え、前記中央型部の周囲に第2の部分線を規定するために互いに対して可逆的に分離可能に構成されており、前記第2の部分線は、前記第1の部分線に対して内側に配置され、
前記第2の部分線中に配置されている少なくとも1つの通気孔と、を備える型であって、前記少なくとも1つの通気孔は、通路の中の型材料の少なくとも部分的な硬化を引き起こすために、前記型空洞中の前記型材料が前記通路には入るが、前記通路からは出ないことを可能にするように構成されている前記通路を備える型において、
(i)前記第2の部分線は、成形される部分のB-表面に対応し、
(ii)前記通路の中の型材料は、前記成形される部分のB-表面に完全に取り付けられていることを特徴とする、型。
【請求項33】
開位置と閉位置との間で開放可能に係合可能な第1の型要素及び第2の型要素であって、前記閉位置では型空洞を規定し、前記第1の型要素と前記第2の型要素との間に第1の部分線を規定する第1の型要素及び第2の型要素と、ここで、前記第1の型要素は、第1の型部と第2の型部を備え、それらの間に前記第1の部分線の周辺に対して内部に配置されている第2の部分線を規定するために、それらは互いに対して可逆的に分離可能に構成されており、
前記第2の部分線の中に配置されている少なくとも1つの通気孔と、を備える型であって、前記少なくとも1つの通気孔は、0.002インチ(0.00508センチメートル)から0.030インチ(0.0762センチメートル)の範囲の厚さの通路を備える型において、
(i)前記第2の部分線は、成形される部分のB-表面に対応し、
(ii)前記通路の中の型材料は、前記成形される部分のB-表面に完全に取り付けられていることを特徴とする、型。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか1項に記載の型を用いて要素を生成する方法。
【請求項35】
請求項1~33のいずれか1項に記載の型を用いて発泡要素を生成する方法。
【請求項36】
請求項1~33のいずれか1項に記載の型を用いてポリウレタン発泡要素を生成する方法。」
第3 取消理由の概要
特許権者に対して、当合議体が令和4年12月7日付け取消理由通知書により通知した取消理由の概要は、下記のとおりである。
1 理由1(新規性欠如)
請求項1、2、7、8、11、12、15、17~19、26、32、34~36に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、7、8、11、12、15、17~19、26、32、34~36に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 理由2(進歩性欠如)
請求項1~15、17~19、21~36に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~15、17~19、21~36に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(引用例等一覧)
引用例1:特開2002-307459号公報(甲1)
引用例2:特開2005-324552号公報(甲4)
引用例3:特開2003-181839号公報(甲3)
第4 理由1(新規性欠如)及び理由2(進歩性欠如)についての当合議体の判断
1 本件特許発明1について
(1) 引用例1に記載された事項
ア 引用例1の【0018】~【0034】、【0037】~【0038】、図1~図10には、発明の実施の形態として、図1に示す発泡成形型1、及び、発泡成形型1を用いて、図10に示すアンダーカット部a1を発泡成形品本体a2の片面に有する軟質の略直方体形状の発泡成形品A(例えば自動車のシートクッション等)を成形する工程について具体的に記載されている。
イ 「発泡成形型1」の「上型7のほぼ中央には、矩形の貫通口11aを有する凸部11(【0020】)が存在するところ、「上型7」は、「貫通口11a」を取り囲むように環状となっていることは明らかである。
そうすると、図6より、発泡成形型1において、「下型5」と「上型7」とが型閉じ状態にある時には、「下型5」と「上型7」が当接する環状の部分が規定されるということができる。
また、【0022】及び図6より、「上型7」及び「中型21」、及び、「下型5」は、「中型21が上型7に対して型閉じ状態」の位置で、「キャビティ3」を規定するということができる。
ウ また、図1及び図6によれば、「上型7」及び「中型21」の間の、「中型21のシール面21bと上記上型7のシール面11b」とが「当接」した環状の部分は、「下型5」と「上型7」とが型閉じ状態にある時に「下型5」と「上型7」が当接する環状の部分よりも内側に位置しているということが分かる。
さらに、図6によれば、「中型21のシール面21bと上記上型7のシール面11b」とが「当接」した環状の部分は、発泡成形品Aのアンダーカット部a1を有する側の表面の領域内に位置していることが分かる。
エ さらに、発泡成形品Aを成形する工程において、「上記ガスの型外への排出に伴って発泡原料A’がベント溝25に浸入してバリa3が生成」(【0034】)され、図9に示されるとおり、「脱型された発泡成形品Aには」、「アンダーカット部a1の周縁部にベント溝25形状に対応した3本の脚部a4を有するバリa3が内側に向かって斜め上方に突設されている」(【0038】)ところ、バリa3の形状から、「キャビティ3」中の「発泡原料A’」が、「ベント溝25」の「絞り部25c」、「分岐溝部25a」及び「合流溝部25b」の中に入る、ということができる。
また、図2より、「ベント溝25」(「絞り部25c」、「分岐溝部25a」及び「合流溝部25b」)が、実質的に長方形の断面を有することが分かる。
オ 上記ア~エより、引用例1(【0018】~【0034】、【0037】~【0038】、図1~図10等)には、「アンダーカット部a1を発泡成形品本体a2の片面に有する軟質の略直方体形状の」「自動車のシートクッション」である「発泡成形品A」を成形する「発泡成形型1」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 アンダーカット部a1を発泡成形品本体a2の片面に有する軟質の略直方体形状の自動車のシートクッションである発泡成形品Aを成形する発泡成形型1であって、
キャビティ3を有する下型5を備え、この下型5には上型7がヒンジ9により上下方向に回動自動に取り付けられ、上記上型7は、開閉駆動装置により下型5に対して回動して発泡成形型1を型開き・型閉じするようになっており、
上記上型7のほぼ中央には、矩形の貫通口11aを有する凸部11が上方に突設され、この凸部11の内周面には山形状に傾斜したシール面11bが形成され、
上記上型7の上面には支持フレーム13が橋絡され、この支持フレーム13のほぼ中央には、支持装置としての流体圧シリンダであるエアシリンダ15のシリンダ本体17が設置され、そのピストンロッド19が上記支持フレーム13の挿入孔13aを貫通して下方に延び、
上記エアシリンダ15のピストンロッド19先端(下端)には、矩形の中型21が上型7との間にアンダーカット23を有するように連結支持され、上記ピストンロッド19の伸縮作動により上記中型21が上型7に対して開閉自在になっており、上記下型5と上型7との型閉じ状態で、上記中型21が上型7に対して型閉じ状態で上記キャビティ3内に配置され、
下型5と上型7とが型閉じ状態にある時には、下型5と上型7が当接する環状の部分が規定され、
上型7及び中型21、及び、下型5は、中型21が上型7に対して型閉じ状態の位置で、キャビティ3を規定し、
該キャビティ3内で発泡ウレタン樹脂等の発泡原料A’が発泡することによってアンダーカット部a1を有する軟質の発泡成形品Aを成形するようになっており、
上記中型21の下端には、全周に亘って外側方に張り出したフランジ部21aが形成され、このフランジ部21a上方の外周には山形状に傾斜したシール面21bが形成され、この中型21のシール面21bと上記上型7のシール面11bとは、中型21を上型7に対して型閉じした状態で互いに当接するようになっており、これにより、上記中型21は、上記キャビティ3内の発泡原料A’の発泡によってそのシール面21bが上記上型7のシール面11bを押圧可能なように上記エアシリンダ15により支持され、
上型7及び中型21の間の、中型21のシール面21bと上記上型7のシール面11bとが当接した環状の部分は、下型5と上型7とが型閉じ状態にある時に下型5と上型7が当接する環状の部分よりも内側に位置し、
中型21のシール面21bと上記上型7のシール面11bとが当接した環状の部分は、発泡成形品Aのアンダーカット部a1を有する側の表面の領域内に位置し、
上記中型21のシール面21bには、上記キャビティ3と型外とを連通するベント溝25が複数形成され、これらベント溝25は、発泡原料A’がキャビティ3内で発泡する過程で発生するガスを型外に排出するためのものであり、
上記各ベント溝25は、短辺側に1箇所、長辺側に2箇所それぞれ形成され、各々キャビティ3側の3つに分岐した分岐溝部25aと、これら分岐溝部25aが1つに合流した型外側の合流溝部25bとからなり、上記分岐溝部25aのキャビティ3側の端部には溝深さを浅くすることで、発泡原料A’のベント溝25に対する流出量を適正に規制する絞り部25cが形成され、上 記ベント溝25の深さは絞り部25cを除いて0.1~0.3mm程度であり、
ベント溝25(絞り部25c、分岐溝部25a及び合流溝部25b)が、実質的に長方形の断面を有し、
以下の(工程1)~(工程4)により、発泡成形品Aを成形する、発泡成形型1。
(工程1) 発泡成形型1を型開きした状態で、発泡原料A’を下型5のキャビティ3に注入し、この段階では、エアポンプ35とエアシリンダ15の作動室31とは連通しておらず、作動室31は方向切換弁37の切換通路43によって大気に開放され、したがって、ピストン29はばね27で付勢されて上死点側に移動しており、中型21のシール面21bが上型7のシール面11bに当接して中型21が上型7に対して型閉じした状態になっており、
(工程2) 上型7をヒンジ9を支点にして下方に回動させて発泡成形型1を型閉じし、発泡成形型1が加熱され、時間の経過に伴って発泡原料A’がキャビティ3内で発泡膨張し、発泡成形品Aが成形され、この間、発泡原料A’から発生したガスがベント溝25を経て型外に排出され、また、エアシリンダ15の作動室31が大気に開放されているため、中型21は上型7側へ移動することが可能であり、中型21のシール面21bが発泡膨張する発泡原料A’の発泡圧で上型7のシール面11bに圧接され、これにより、上記シール面11b,21b間のシール性を確保して、発泡原料A’のシール面11b,21b間への浸入を防止することができ、
したがって、シール面11b,21b間へのバリ生成をなくして、その後の成形時にバリがあることによるガス排出阻害をなくして欠肉のない発泡成形品Aを得ることができ、
また、上記ガスの型外への排出に伴って発泡原料A’がベント溝25に浸入し、キャビティ3中の発泡原料A’が、ベント溝25の絞り部25c、分岐溝部25a及び合流溝部25bの中に入り、バリa3が生成するが、このバリa3は発泡成形品Aに付着した状態で発泡成形品Aと共に脱型されるため、シール面11b,21b間に残らず、
(工程3) 上型7をヒンジ9を支点にして上方に回動させて発泡成形型1を型開きし、成形された発泡成形品Aは中型21にくっついた状態で下型5のキャビティ3から取り出され、
(工程4) 方向切換弁37を開作動させ、回転スプール41を回転させて切換通路43の第1通路43aを配管33のエアシリンダ側配管部33a及びエアポンプ側配管部33bと連通させるとともに、大気開放ポート39aから遮断し、これにより、エアポンプ35からエア圧がエアポンプ側配管部33b、第1通路43a及びエアシリンダ側配管部33aを経てエアシリンダ15の作動室31に供給され、ピストン29がエア圧でばね27の付勢力に抗して下死点側に移動し、中型21のシール面21bが上型7のシール面11bから離れて中型21が上型7に対して型開きされ、この状態から作業者が発泡成形品Aのアンダーカット部a1を中型21のフランジ部21aからめくって発泡成形品Aを脱型し、脱型された発泡成形品Aには、アンダーカット部a1の周縁部にベント溝25形状に対応した3本の脚部a4を有するバリa3が内側に向かって斜め上方に突設されている。」
(2) 対比
本件特許発明1と、引用発明とを対比する。
ア 第1の型要素、第2の型要素
(ア) 引用発明の「発泡成形型1」の構成、その動作及び「発泡成形型1を用いてアンダーカット部a1を有する発泡成形品Aを成形する」(工程1)~(工程4)は、上記(1)オに記載のとおりである。
(イ) 引用発明の「キャビティ3を有する下型5」は、本件特許発明1の「第2の型要素」に相当し、引用発明の「中型21が上型7に対して開閉自在になっており、上記下型5と上型7との型閉じ状態で、上記中型21が上型7に対して型閉じ状態で」「キャビティ3内に配置され」る、「上型7」及び「中型21」は、本件特許発明1の「第1の型要素」に相当する。
同様に、引用発明の、「上型7」及び「中型21」、及び、「下型5」は、本件特許発明1の「第1の型要素及び第2の型要素」の、「開位置と閉位置との間で開放可能に係合可能な」との要件を具備する。
(ウ) 引用発明の「キャビティ3」は、本件特許発明1の「型空洞」に相当する。また、引用発明の「下型5」と「上型7」とが型閉じ状態にある時に、「下型5」と「上型7」が当接する環状の部分は、本件特許発明1の「第1の部分線」に相当する。
してみると、引用発明の「上型7」及び「中型21」、及び、「下型5」は、本件特許発明1の「第1の型要素及び第2の型要素」の、「前記閉位置では型空洞を規定し、前記第1の型要素と前記第2の型要素との間に第1の部分線を規定する」との要件を具備する。
イ 第1の型部、第2の型部
(ア) 引用発明においては、「中型21が上型7に対して開閉自在になっており」、「上記上型7のほぼ中央には、矩形の貫通口11aを有する凸部11が上方に突設され、この凸部11の内周面には山形状に傾斜したシール面11bが形成され」、「上記中型21の下端には、全周に亘って外側方に張り出したフランジ部21aが形成され、このフランジ部21a上方の外周には山形状に傾斜したシール面21bが形成され、この中型21のシール面21bと上記上型7のシール面11bとは、中型21を上型7に対して型閉じした状態で互いに当接するようになって」いる。
そうすると、引用発明の「上型7」及び「中型21」は、互いに開閉自在、すなわち可逆的に分離可能に構成されているということができる。
(イ) 上記(ア)より、引用発明の「中型21」及び「上型7」は、それぞれ本件特許発明1の「第1の型部」及び「第2の型部」に相当する。
また、引用発明においては、「上型7及び中型21の間の、中型21のシール面21bと上記上型7のシール面11bとが当接した環状の部分」は、本件特許発明1の「第2の部分線」に相当する。
そうすると、引用発明の「上型7」及び「中型21」は、本件特許発明1の「第1の型要素」の、「第1の型部と第2の型部を備え、それらの間に前記第1の部分線の周辺に対して内部に配置されている第2の部分線を規定するために、それらは互いに対して可逆的に分離可能に構成されており」との要件を具備する。
ウ 通気孔、通路
(ア) 上記イ(イ)より、引用発明の「シール面21b」に形成される「ベント溝25」は、本件特許発明1の、「前記第2の部分線中に配置されている」とされる、「通気孔」に相当する。また、引用発明の「ベント溝25」の「絞り部25c」、「分岐溝部25a」及び「合流溝部25b」は、本件特許発明1の「通路」に相当する。
そうすると、引用発明と、本件特許発明1は、「前記少なくとも1つの通気孔」は、「前記型空洞中の前記型材料が」「入る」「通路を備える」点において一致する。
エ 型
上記ア~ウより、引用発明の「発泡成形型1」は、本件特許発明1の「型」に相当する。
また、引用発明と、本件特許発明1は、「第1の型要素及び第2の型要素と」、「前記第2の部分線中に配置されている少なくとも1つの通気孔と、を備える」との要件を具備する。
(3) 一致点及び相違点
本件特許発明1と、引用発明は、
「開位置と閉位置との間で開放可能に係合可能な第1の型要素及び第2の型要素であって、前記閉位置では型空洞を規定し、前記第1の型要素と前記第2の型要素との間に第1の部分線を規定する第1の型要素及び第2の型要素と、ここで、前記第1の型要素は、第1の型部と第2の型部を備え、それらの間に前記第1の部分線の周辺に対して内部に配置されている第2の部分線を規定するために、それらは互いに対して可逆的に分離可能に構成されており、前記第2の部分線中に配置されている少なくとも1つの通気孔と、を備える型であって、前記少なくとも1つの通気孔は、前記型空洞中の前記型材料が入る通路を備える、型。」である点において一致し、以下の点で相違、あるいは一応相違する。
(相違点1-1)
「通路」が、本件特許発明1は、「通路の中の型材料の少なくとも部分的な硬化を引き起こすために、前記型空洞中の前記型材料が前記通路には入るが、前記通路からは出ないことを可能にするように構成されている」のに対して、引用発明は、そのように構成されているかどうか不明である点。
(相違点1-2)
「第2の部分線」が、本件特許発明1においては、「成形される部分のB-表面に対応し」ているのに対して、引用発明は、「中型21のシール面21bと上記上型7のシール面11bとが当接した環状の部分」(第2の部分線)が、「アンダーカット部a1を発泡成形品本体a2の片面に有する軟質の略直方体形状の自動車のシートクッションである発泡成形品A」の成形される部分(「成形される部分」)の「B-表面に対応し」ているかどうか不明である点。
(相違点1-3)
本件特許発明1においては、「(ii)前記通路の中の型材料は、前記成形される部分のB-表面に完全に取り付けられている」のに対して、引用発明は、そのようになっているかどうか不明である点。
(4) 判断
ア 新規性欠如について
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
(ア) 本件特許発明1の「B-表面」の意味について
自動車の座席の成形品に関し、例えば、「Class A Surface」,[online],WIKIPEDIA,[令和5年4月4日検索],インターネット<URL:https://en.wikipedia.org/wiki/Class_A_surface>(特に、「In automotive design application Class A surfaces are created on all visible exterior surfaces (ex; body panels, bumper, grill, lights etc.) and all visible surfaces of see-touch & feel parts in interior (ex: Dashboard, seats, door pads etc.).」等)や、特表2001-524400号公報の【0039】(特に、「・・・略・・・所望の形態の座席の底部を有する輪郭形成された表面120(座席の「B表面」として当該技術においてもまた公知である)を提供するように適合する。・・・略・・・所望の形態の座席の頂部を有する輪郭形成された表面125(座席の「A表面」として当該技術においてもまた公知である)を提供するように適合する。」等)及び図2(表面120及び表面125)等からも理解されるとおり、A-表面とは、例えば座面部の座面(上面)、側面等、自動車内部の見て触れて感じられる、可視の表面を意味し、B-表面とは、例えば座面部の底面等、見えない、触れて感じられない、可視でない表面を意味することは当業者の技術常識である。
(イ) 上記(ア)を前提として、以下では、引用発明が相違点1-2に係る構成を実質的に備えているといえるかについて検討する。
引用発明の「発泡成形型1」は、「アンダーカット部a1を」「片面に有する」「略直方体形状の自動車のシートクッションである発泡成形品A」を成型するものであるところ、当該「シートクッション」との用語は、自動車用シートの乗員が座る「座面部」について用いられる場合もあれば、「座面部」と乗員の背中を支持する「背もたれ部」とを総称して用いられる場合もある。
例えば、前者の場合については、特開2014-527842号公報の【0035】及び【0036】、特表2001-524400号公報の【0029】等の記載を、後者の場合については、特開2014-19071号公報の【0002】の「自動車等の車両に搭載される座席シートの座部や背もたれを構成するシートクッション」、特開2002-336075号公報の【0011】の「シートクッションパッドとは座面部および背もたれ部のいずれか一方または双方を含む概念として用いる」との記載を参照。
(ウ) また、背もたれ部の、後部搭乗者側(背中が当たる側とは反対側)に、折り返し形状(アンダーカット部)を設けたもの(特開平1-152017号公報の1頁右上欄1~8行、図7等)や、背もたれ部の背中が当たる側にアンダーカット部を設けたもの、あるいは座面部の着座側(上側)にアンダーカット部を設けたもの(特開2012-232701号公報の【0019】、【0031】、図1~図5等)は、周知のものである。
(エ) そうすると、引用発明の「発泡成形型1」から脱型された「アンダーカット部a1を」「片面に有する」「略直方体形状の自動車のシートクッションである発泡成形品A」が、自動車用シートの座面部であるのか、背もたれ部であるのか不明であるし、発泡成形品Aのアンダーカットa1(及びバリa3)を有する側が、座面部の着座側(上側)あるいは着座側と反対の底部側(下側)に対応するのか、背もたれ部の背中が当たる側、あるいはその反対側(後部搭乗者側)に対応するのかも不明である。
(オ) 上記(ア)~(エ)によれば、引用発明において、「中型21のシール面21bと上記上型7のシール面11bとが当接した環状の部分」(「第2の部分線」)が、「発泡成形品A」の成形される部分が、「B-表面に対応し」ているということはできない。
(カ) よって、相違点1-2は、実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用例1に記載された発明であるということはできない。
イ 進歩性欠如について
相違点1-2について検討する。
(ア) 引用発明は、「発泡原料の発泡過程で発生するガスを型外に確実に排出するとともに、上側のシール面と中型のシール面との間のシール性を確保して発泡原料の型外への漏出を確実に防止すること」を発明が解決しようとする課題(引用例1【0008】)とし、上型7及び中型21には互いに当接するシール面11b,21bをそれぞれ形成し、中型のシール面21bにキャビティ内のガスを型外に排出するベント溝25を形成し、中型21をキャビティ内の発泡原料の発泡圧によってそのシール面21bが上型のシール面11bを押圧可能なように支持装置により支持する構成とすることにより(同【0011】)、シール面間のシール性を確保し、発泡原料がシール面間に浸入せず、シール面間にバリが生成せず、その後の成形時にバリがあることによるガス排出阻害がなく、欠肉のない発泡成形品が得られ、かつ、発生するガスをベント溝から型外に確実に排出する(同【0012】~【0013】)との技術思想に基づくものであるところ、
引用例1には、上記課題を解決するための、上型7及び中型21の間の、中型21のシール面21bと上型7のシール面11bとが当接した環状の部分を、「発泡成形品A」の形成される部分のB-表面に対応させるという課題解決手段は記載も示唆もされていない。
また、異議申立人が提出した甲第2号証(特開2015-3595号公報)、甲第3号証(引用例3)及び甲第4号証(引用例4)のいずれにも、上記課題解決手段が開示も示唆もされていないし、本件優先日前に周知技術であったという証拠もない。
してみると、引用発明において、相違点1-2に係る構成とする動機付けはなく、引用発明において、相違点1-2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことということはできない。
ここで、引用例1には、「発泡成形型1」により成形される「発泡成形品A」(「シートクッション」)を、座面部とし、かつ、アンダーカットa1(及びバリa3)を有する側を、座面部の底部側となるように積極的に選択することは記載されていない。そうすると、引用発明において、「発泡成形品A」(「シートクッション」)を、座面部とし、かつ、アンダーカットa1(及びバリa3)を有する側を、座面部の底部側に対応するものとして、引用発明の「発泡成形型1」において、「発泡成形品Aのアンダーカット部a1を有する側の表面の領域内に位置」する「中型21のシール面21bと上記上型7のシール面11bとが当接した環状の部分」(「第2の部分線」)が、成形される「発泡成形品A」部分の底部側の面(下面)、すなわち「B-表面」に対応する構成とすることは、本件特許発明1を知った上での後知恵といわざるを得ない。
(イ) 本件特許発明1の効果
本件特許発明1は、本件特許発明1に係る構成を備えることにより、「仕上げられた部分の、下側又はB-表面に対応する型中の第2の部分線を効果的に生成することである。・・・略・・・従来の部分線の内部に、第2の部分線を組み込むことにより、本発明者は、第2の部分線に通気孔を置き、・・・略・・・。成形される部分は、依然として、その部分に取り付けられている型材料の1つ以上のリボンを生成するが、これらのリボンは、現在は完全に成形される部分のB-表面に置かれ、これは、一旦装飾カバーがそこに適用されると、成形される部分に取り付けられるリボンは、装飾カバーを通して見えないことを意味する。したがって、本型は、細い装飾カバーがその部分をカバーするために使用されるときでさえ取り除かれる必要がない、1つ以上のリボンを有する成形製品を生成するために使用されることができる。」(【0019】)という予測し難い優れた効果を奏するものである。
(エ) してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用例1に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということができない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、引用例1に記載された発明ではなく、また、引用例1に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
2 本件特許発明2~31
本件特許発明2~31は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。
そうすると、上記1(4)のとおり、本件特許発明1が、引用例1に記載された発明であるということはできない、あるいは、引用例1に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない以上、本件特許発明2~31は、引用例1に記載された発明であるということはできない、あるいは、引用例1に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
3 本件特許発明32~33について
本件特許発明32と、引用発明との対比は、上記1(2)と同様である。
そうすると、本件特許発明32と、引用発明とは、既に検討済みの相違点1-2において少なくとも相違する。
本件特許発明33についても同様であり、本件特許発明33と、引用発明は、既に検討済みの相違点1-2において少なくとも相違する。
してみると、上記1(4)で述べた理由と同じ理由により、本件特許発明32~33は、引用例1に記載された発明であるということはできない、あるいは、引用例1に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
4 本件特許発明34~36について
引用例1(【0018】~【0034】、【0037】~【0038】、図1~図10等、特に、【0022】の「キャビティ3内で発泡ウレタン樹脂等の発泡原料A’(図5参照)が発泡することによってアンダーカット部a1を有する軟質の発泡成形品Aを成形するようになっている。」との記載)には、引用発明(上記1(1)オ)を用いて、キャビティ3内で発泡ウレタン樹脂の発泡原料A'が発泡することによってアンダーカット部a1を有する軟質の発泡成形品Aを成形する方法の発明(以下「引用成形方法発明」という。)が記載されていると認められる。
本件特許発明34と、引用成形方法発明との対比は、上記1(2)と同様である。
そうすると、本件特許発明34と、引用成形方法発明は、既に検討済みの相違点1-2において少なくとも相違する。
本件特許発明35~36についても同様であり、本件特許発明35あるいは本件特許発明36と、引用成形方法発明は、既に検討済みの相違点1-2において少なくとも相違する。
してみると、上記1(4)で述べた理由と同じ理由により、本件特許発明34~36は、引用例1に記載された発明であるということはできない、あるいは、引用例1に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
第5 むすび
したがって、請求項1~36に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~36に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700721