特許拒絶査定不服審判
2020-009515
レーザ印字方法
- 審判番号
- 2020-009515
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-125731
- 請求日
- 2020年07月07日
- 審決日
- 2023年01月31日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】サントリーホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人R&C
- 審判長/審判官
- 審判長 藤本 義仁
- 審判官 比嘉 翔一
- 審判官 吉村 尚
- 分類
- P18 .113-WY (B41J) / P18 .121-WY (B41J) / P18 .537-WY (B41J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016-125731「レーザ印字方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月28日出願公開、特開2017-226196、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月24日を出願日とする出願であって、令和元年11月12日付けで拒絶理由が通知され、令和2年1月14日に手続補正書及び意見書が提出され、令和2年1月22日付けで拒絶理由が通知され、同年3月12日に手続補正書及び意見書が提出され、同年3月30日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して同年7月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、令和3年6月15日付けで拒絶理由が通知され、同年8月23日に意見書が提出され、令和4年2月9日付けで拒絶理由が通知され、同年4月18日に手続補正書及び意見書が提出され、同年6月22日付けで拒絶理由が通知され、同年8月26日に意見書が提出され、同年9月27日付けで拒絶理由が通知され、同年11月30日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである(引用文献については、下記の引用文献等一覧を参照。)。
1.令和2年3月12日付け手続補正後の請求項1ないし4に係る発明は、引用文献1ないし6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
引用文献1:mini5597214,mini5597214 - 棚/カルキ抜き/水槽用の水/自作タグ/黒烏龍茶/自己満足でごめんなさい(^◇^;)/男前に憧れる のインテリア事例,2015年4月13日,<URL:https://roomclip.jp/photo/64VB>
引用文献2:特開2009-113833号公報
引用文献3:国際公開第2015/137093号
引用文献4:特開2006-82854号公報
引用文献5:特開2013-233936号公報
引用文献6:特開2008-89379号公報
第3 当審拒絶理由の概要
1.令和3年6月15日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)の概要は次のとおりである(引用文献については、下記の引用文献等一覧を参照。)。
(1)令和2年3月12日付け手続補正後の請求項1ないし4に係る発明は、引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
引用文献1:mini5597214、“mini5597214 - 棚/カルキ抜き/水槽用の水/自作タグ/黒烏龍茶/自己満足でごめんなさい(^◇^;)のインテリア事例”、[online]、2015年4月13日、[2021年6月4日検索]、インターネット<URL:https://roomclip.jp/photo/64VB>
引用文献2:特開平6-297828号公報
引用文献3:特開2006-83241号公報
引用文献4:国際公開第2015/137093号
引用文献5:特開2013-233936号公報
2.令和4年2月9日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)の概要は次のとおりである(引用文献については、下記の引用文献等一覧を参照。)。
(1)令和2年3月12日付け手続補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
(2)令和2年3月12日付け手続補正後の請求項1ないし4に係る発明は、引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
引用文献1:特開2006-83241号公報
引用文献2:特開2013-233936号公報
引用文献3:国際公開第2015/137093号
3.令和4年6月22日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由3」という。)の概要は次のとおりである。
令和4年4月18日付け手続補正後の請求項1ないし4の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
4.令和4年9月27日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由4」という。)の概要は次のとおりである。
令和4年4月18日付け手続補正後の請求項4の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第4 本願発明
1.本願発明の内容
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和4年11月30日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
黒色顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップに文字や記号を印字する印字方法であって、
前記キャップの外表面に設けられた印字領域に対して、レーザマーカから波長が532~1064nmの範囲のレーザを照射することにより前記キャップを構成する樹脂を発泡させて文字や記号を印字することを特徴とする印字方法。
【請求項2】
前記キャップは、開栓によって容器本体から取り外し可能なキャップ本体と、開栓前は前記キャップ本体と連結されており、開栓後は前記キャップ本体と切り離されて前記容器本体側に残るTEバンドと、を有し、
前記印字領域は前記TEバンドの側面にあることを特徴とする請求項1に記載の印字方法。
【請求項3】
前記キャップに、当該キャップが備えられた商品の少なくとも流通履歴を確認可能な文字や記号を印字することを特徴とする請求項1又は2に記載の印字方法。
【請求項4】
前記レーザは、YVO4レーザであること特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の印字方法。」
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
当審拒絶理由1において引用文献3として引用され、当審拒絶理由2において引用文献1として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2006-83241号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
ア.「【0014】
本発明について、以下詳細に説明する。
[1]レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物
本第1観点に係る樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、上記アクリル系樹脂(B)と、上記リン酸エステル系化合物(C)と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質(E)と、を含有し、
該ポリカーボネート樹脂(A)及び該アクリル系樹脂(B)は、これらの合計を100質量%とした場合に各々1~99質量%であり、
且つ、該リン酸エステル系化合物(C)は、該ポリカーボネート樹脂(A)と該アクリル系樹脂(B)との合計を100質量部とした場合に0.01~20質量部であることを特徴とする。」
イ.「【0116】
[2]レーザーマーキング方法
本発明のレーザーマーキング方法は、本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物からなる成形品にレーザー光を照射し、該照射により上記黒色物質(E)を消滅させ及び/又は変色させて該成形品にマーキング部を形成することを特徴とする。」
ウ.「【0123】
上記「マーキング部」は、レーザーの照射により成形体の他部と異なる色調を呈するに至った部分である。このマーキング部の形状等は限定されないが、例えば、各種文字、各種記号、各種図柄、及び、これらの結合等が挙げられる。このレーザーマーキングにより形成されたマーキング部は、印刷により形成されたマーキング部に比べて高い耐久性(耐摩耗性及び耐候性等)を発揮できる。
また、このマーキング部は発泡されていることが好ましい。これにより、コントラストに優れた識別性の高いマーキング部を得ることができる。マーキング部が発泡されている場合、樹脂組成物を構成する重合体の色にもよるが、通常、発泡部は白色を呈し、特にこの場合はその白色度が強調されることとなる。即ち、例えば、ベース色が黒色物質による黒色を呈する成形体に白色の鮮明なマーキング部を形成することができる。」
エ.「【実施例】
【0129】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。また、実施例中の「%」及び「部」は、特に断らない限り質量基準である。・・・
【0130】
1.レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物の原料成分
(1)ポリカーボネート樹脂(A)
三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製の「ノバレックス 7022PJ-LH1」(商品名)を用いた。
【0131】
(2)アクリル系樹脂(B)
アクリル系樹脂(B1)
撹拌機を備えた内容積7リットルガラス製フラスコに、イオン交換水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、tert-ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンラテックス(重量平均粒径2400Å、ゲル含率85%)30部(固形分換算)、メタクリル酸メチル12.25部、スチレン4部、及びアクリロニトリル1.25部を加え、撹拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点で、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第一鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート二水和物0.2部及びイオン交換水15部からなる活性剤水溶液、並びに、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド0.1部を添加し、1時間反応を継続した。
その後、イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、tert-ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド0.2部、メタクリル酸メチル36.75部、スチレン12部、及びアクリロニトリル3.75部からなる重合用成分を3時間に渡って連続的に添加し、重合を継続した。全ての重合用成分を添加し、更に1時間撹拌を継続した後、2,2-メチレン-ビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)0.2部を添加し重合を停止した。得られた反応生成物のラテックスに塩化カルシウム2部を添加して凝固し、次いで、水洗した後、乾燥して白色粉末状のアクリル系樹脂(B1)を得た{ゴム強化アクリル系樹脂(B-1)である}。
得られたアクリル系樹脂(B1)の重合転化率は98.5%、グラフト率は40%、アセトン可溶分の極限粘度〔η〕は0.3dl/gであった。
【0132】~【0133】<略>
【0137】
(5)黒色物質(E)
三菱化学社製のカーボンブラック「三菱カーボン#45」(商品名)を用いた。
【0138】~【0140】<略>
【0141】
(2)レーザー発色性
ロフィン・バーゼル社製のレーザーマーカー「RSM30D型」(商品名)を用い、レーザー光の波長を1064nmとして、出力31A、周波数5.5kHz、走査速度400mm/秒、アパチャーΦ2.0mmの各照射条件で、試験片表面にレーザー光を照射した。得られたマーキング部の白色発色性を目視で観察し、その結果を下記基準に従い表1に示した。
「白」;良好な白色発色が得られ、十分な識別性が得られている。
「灰」;十分に白色とはならず、灰色に認識される。
「×」;色が得られず、他部との識別が困難である。」
オ.「【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物は、車輌用部品分野、OA製品分野、情報通信機器分野、家電製品分野、包装材分野、雑貨分野及びサニタリー分野など各種分野で広く用いられる。即ち、例えば、車輌用部品分野では、スイッチ類、コネクター類、ステッカー類及びその他の内装部品類等として有用である。また、OA製品分野では、パソコン、キーボード、プリンタ及びファクシミリ等のハウジング、シャーシ、トレー、ボタン、スイッチ、表示枠及び外装ロゴ等として有用である。更に、情報通信機器分野では、携帯電話及びサーバー用製品等のハウジング、シャーシ、トレー、ボタン、スイッチ、表示枠及び外装ロゴ等として有用である。家電製品分野では、リモコン、電話機、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン等のハウジング、シャーシ、トレー、ボタン、スイッチ及び表示枠等として有用である。また、包装材分野では、包装用シート類及び包装用フィルム類等として有用である。その他、各種容器、これら容器のキャップ等、電線等の被覆材、プリント配線板あるいはそれに搭載される電子部品等の精密部品、各種パイプ、建材用フィルム、クレジットカード、ICカード等のカード類、看板、標識等の外装材等に有用である。」
(2)引用文献1の記載から認定できる事項
ア.上記「(1)イ.」の「【0123】・・・マーキング部が発泡されている場合、・・・通常、発泡部は白色を呈し、」の記載をふまえて、
上記「(1)ウ.」の「【0141】・・・試験片表面にレーザー光を照射した。得られたマーキング部の白色発色性を目視で観察し、その結果を下記基準に従い表1に示した。
「白」;良好な白色発色が得られ、十分な識別性が得られている。」との記載をみると、前記「良好な白色発色」が「得られたマーキング部」はレーザー光を照射されて発泡しているといえる。
イ.上記「(1)ウ.」の「【0141】・・・レーザー光を照射した。得られたマーキング部」の記載から、引用文献1には、実質的に、「レーザー光を照射してマーキング部を得るレ-ザーマーキング方法」が記載されていると認められる。
(3)引用発明1
上記(1)及び(2)より、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「パソコン、キーボード、プリンタ及びファクシミリ等の外装ロゴ等、携帯電話及びサーバー用製品等の外装ロゴ等、容器のキャップ等に有用なレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物であって、ポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂とカーボンブラックとを原料成分として含むレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に、レーザーマーカーを用いて波長1064nmのレーザー光を照射し、前記レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物が発泡することによって、各種文字、各種記号、各種図柄、及び、これらの結合等のマーキング部を得るレ-ザーマーキング方法。」
2.引用文献2について
(1)引用文献2記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献5として引用され、当審拒絶理由1において引用文献5として引用され、当審拒絶理由2において引用文献2として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2013-233936号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア.「【請求項10】
容器の側面の情報表示領域に情報をプリントする容器処理方法であって、
前記情報をプリントするための画像形成装置として、少なくとも一つの画素形成素子を備えたプリントヘッドと、前記画素形成素子によってプリントされる情報の印字高さを変更する印字高さ変更手段とを設け、
搬送中の容器の前記情報表示領域の高さ情報を判定するための高さ判定手段を前記画像形成装置の上流側に設け、
搬送機構によって容器を横方向に搬送する工程と、
搬送中の容器の前記情報表示領域に前記少なくとも一つの画素形成素子によって前記情報をプリントする工程とを有し、
前記情報をプリントする工程では、前記高さ判定手段によって得られた高さ情報に基づいて、前記印字高さ変更手段が前記印字高さを調整した状態でプリントが行われる容器処理方法。」
イ.「【0039】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示す容器処理装置1は、主に飲料水や清涼飲料などの飲料が充填された樹脂製の容器2の所定箇所(情報表示領域DR)に内容物の賞味期限や産地記号などの情報をプリントするために用いられる。」
ウ.「【0042】
キャップ4は、開栓によって容器本体3から外されるキャップ本体4Aと、キャップ4の開栓後も容器本体3側に残る環状のTE(tamper-evident)バンド4Bとを有し、開栓以前にはキャップ本体4AとTEバンド4Bとは複数のブリッジ状の脆弱部(不図示)によって一体的に連結されている。
【0043】
容器処理装置1は、樹脂製の容器2を横方向に搬送するコンベア5(搬送機構の一例)と、コンベア5によって搬送中の容器2の側面の情報表示領域DRに情報をプリントするインクジェット記録装置7(画像形成装置の一例)と、各部の動作を制御する制御装置50とを備える。ここでは、情報表示領域DRはキャップ4のTEバンド4Bの上下中心付近に設定されており、TEバンドの下縁部から情報表示領域DRの下端までの距離をLとしておく。」
エ.「【0046】
ここでは、高さセンサ6として、図2に例示するように、コンベア5によって搬送される容器2のキャップ4の上面に向けて可視光領域のレーザー光を照射するレーザー装置6Aとキャップ4の上面で反射されて戻ってくるレーザー光を受光する受光素子6Bとを備え、受光素子に入力された波長と内部基準の波長の差からターゲットまでの距離を算出する位相差方式のレーザー距離計などを用いることができる。」
オ.「【0068】
〈3〉図5に示す実施形態の変形例として、情報表示領域DRの高さH2に応じて選択された7個のインク吐出部8のみを用いるのではなく、上下に並置された20個以上の全てのインク吐出部8から同時にインク滴を吐出させ、その代わりに、図7に斜視図で例示するように、情報表示領域DRにプリントする文字情報に関与しないインク吐出部8から吐出したインク滴を情報表示領域DRから偏向させる偏向機構20(印字高さ変更手段の一例)を設けた形態で実施することができる。」
カ.「
[図:0001394295000001.jpg]
」
(2)引用文献2の記載から認定できる事項
ア.上記「(1)ア.」、「(1)ウ.」の【0043】、及び、「(1)オ.」から、引用文献2には、「キャップ4のTEバンド4Bの上下中心付近に設定された情報表示領域DRに文字情報をプリントする容器処理方法」が記載されているといえる。
(3)引用文献2に記載された技術的事項
上記「(1)ア.」~「(1)オ.」及び(2)より、引用文献2には、以下の技術事項(以下、「引用文献2記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「開栓によって容器本体3から外されるキャップ本体4Aと、キャップ4の開栓後も容器本体3側に残る環状のTE(tamper-evident)バンド4Bとを有する、容器2のキャップ4であって、開栓以前にはキャップ本体4AとTEバンド4Bとは複数のブリッジ状の脆弱部によって一体的に連結され、上記キャップ4のTEバンド4Bの上下中心付近に、情報表示領域DRが設定されているキャップ4の、上記情報表示領域DRに文字情報をプリントする容器処理方法。」
3.引用文献3について
(1)引用文献3記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献3として引用され、当審拒絶理由1において引用文献4として引用され、当審拒絶理由2において引用文献3として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である国際公開2015/137093号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア.「[0076]
[表1]
[図:0001394295000002.jpg]
」
(2)引用文献3の記載から認定できる事項
ア.上記「(1)ア.」の表1から、引用文献3には、YVO4レーザーの波長が532nmまたは1064nmであることが記載されていると認められる。
(3)引用文献3に記載された技術事項
上記(1)及び(2)より、引用文献3には、以下の技術事項(以下、「引用文献3記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「YVO4レーザーの波長が532nmまたは1064nmであること。」
4.引用文献4について
(1)引用文献4記載事項
原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由1において引用文献1として引用された、本願の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「mini5597214,mini5597214 - 棚/カルキ抜き/水槽用の水/自作タグ/黒烏龍茶/自己満足でごめんなさい(^◇^;)/男前に憧れる のインテリア事例,2015年4月13日,<URL:https://roomclip.jp/photo/64VB>」(以下、「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
ア.「
[図:0001394295000003.jpg]
」
(2)引用文献4の記載から認定できる事項
ア.上記「(1)ア.」から、6本のペットボトルのいずれも黒色のキャップを有することが看取できる。
イ.上記「(1)ア.」及び上記「(2)ア.」から、黒色のキャップは、キャップ下部に、拡径した部分の外表面を有することが看取できる。
ウ.上記「(1)ア.」、上記「(2)ア.」、及び、上記「(2)イ.」から、前列の2本のペットボトルの黒色のキャップのキャップ下部の拡径した部分の外表面には、文字や記号があることが看取できる。
エ.上記「(2)ウ.」の印字された文字や記号は、一般常識として、何らかの印字方法により形成されているものと認められる。
(3)引用発明4
上記(1)及び(2)より、引用文献4には、以下の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「ペットボトルの黒色のキャップであって、当該キャップ下部の拡径した部分の外表面に文字や記号が印字されている、ペットボトルの黒色のキャップ。」
5.引用文献5について
(1)引用文献5記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-113833号公報(以下、「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア.「【0007】
図1および図2は、本発明のキャップの第1の実施形態を用いた閉止装置を示すものである。
図1に示すように、キャップ1は、円板状の天板部2とその周縁から垂下した筒部3とを有するキャップ本体4と、天板部2内面に設けられた略円板状のライナー5とを備えている。
符号50は、キャップ1が装着される容器を示す。容器50としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂材料やガラスからなる容器を例示できる。
【0008】
筒部3は、スコア6(弱化ライン)によって、主部8と、ブリッジ7によって主部8に連結されたタンパーエビデンスリング部(TEリング部)9とに区画されている。
主部8の内周面には、容器50の雄ネジ52に螺合するネジ部10が形成されている。
TEリング部9の内周面には、開栓時に容器20の口元部21に係止してTEリング部9の移動を阻止する係止突起である薄板状のウィング11が設けられている。
キャップ本体4は、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなる。
【0009】
ライナー5は、ポリプロピレンとゴムをブレンドしたもの、ポリエチレン、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)などの比較的軟質の合成樹脂材料を略円板状に成形してなるもので、厚さは例えば0.1~1.0mmとすることができる。
ライナー5には、容器50の開口端部の内縁に沿う内側シール突起12が形成されている。
【0010】
図2に示すように、ライナー5の表面には、レーザー光照射により表示15が形成されている。表示15は、色や凹凸によって識別できるようになっている。
表示15は、特に限定されないが、例えば、数字、文字などの記号、図形などを表すものである。
具体的には、例えばキャンペーンへの応募などのためにインターネット上の特定サイトにアクセスする際に必要となる情報(パスワードとなる文字など)、製品管理用の情報(製造ロット、製造時間、賞味期限などを表す数字など)、真正品であることを示す情報などが考えられる。
上記特定サイトへのアクセスのための情報は、販売促進に利用できる。製品管理用の情報は、製品に問題があった場合に追跡調査が可能になるため、原因究明を容易にすることができる。真正品であることを示す情報は、偽造品の排除に効果的である。
また、図形としては、商品やメーカーのロゴマーク等が挙げられる。このほか、写真などの画像も可能である。レーザー加工の採用により、精細かつ自由な意匠の表示15を形成できる。」
イ.「【0014】
図3は、表示15を形成するのに使用できるレーザー加工装置の一例を示すものである。
このレーザー加工装置は、レーザー発生ユニット71と、第1ミラー72と、第1ミラー72の向きを制御する第1制御部73と、第2ミラー74と、第2ミラー74の向きを制御する第2制御部75と、レンズ76とを備えている。
レーザー発生ユニット71としては、YAGレーザー、CO2レーザー、COレーザー、エキシマレーザなどがある。なかでも特に、低コスト化が可能なYAGレーザーが好ましい。
【0015】
レーザー発生ユニット71から出射したレーザー光は、ミラー72、74で反射し、レンズ76を経てキャップ1のライナー5に照射される。YAGレーザーからのレーザー光の波長は例えば1064nmである。表示15は、レーザー光の照射部分が炭化や発泡により変色したり凹部となることによって形成される。
コンピュータ等の制御部73、75によってミラー72、74の向きを調整することで所望の領域にレーザー光を照射できるため、ライナー5には、あらかじめ定められた文字等からなる表示15が形成される。
ライナー5が発色剤を含む場合には、レーザー光が照射された部分に存在する発色剤がレーザー光のエネルギーを吸収するために起こる発熱により、この部分の変色が促され、明瞭な表示15が形成される。
このレーザー加工装置は、制御部73、75によってミラー72、74の向きを調整することで、表示15を容易に変更できる。また、レーザー発生ユニット71は出力調整が可能であるため、ライナー5の材料に応じた出力を選択することができる。」
ウ.「【0018】
図4および図5は、本発明のキャップの第2の実施形態を示すものである。以下の説明において、図1に示すキャップ1との共通部分については同一符号を付してその説明を省略する。
図4に示すように、キャップ21は、ライナー5が設けられていない点で、図1に示すキャップ1と異なる。
【0019】
天板部2には、容器50の口元部51に嵌入して容器50の内面に当接する内側シール突起13と、口元部51の開口端部の外縁に当接する外側シール突起14が形成されている。キャップ21は高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなる。
キャップ21には、上述の発色剤が添加されていることが好ましい。
図5に示すように、天板部2の内面には、レーザー光照射により文字等の表示15が形成されている。図示例の表示15は、内側シール突起13のやや内側に、内側シール突起13に沿って円弧状に配列された複数の数字および文字からなる。」
(2)引用文献5の記載から認定できる事項
ア.上記「(1)イ.」の【0015】の「表示15は、レーザー光の照射部分が炭化や発泡により変色したり凹部となることによって形成される。」との記載から、引用文献5には、「レーザー光の照射部分が炭化や発泡により変色したり凹部となることによる、表示15の形成方法」が記載されているといえる。
(3)引用文献5に記載された技術事項
上記(1)及び(2)より、引用文献5には、以下の2つの技術事項(以下、「引用文献5記載の技術事項1」及び「引用文献5記載の技術事項2」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献5記載の技術事項1]
「円板状の天板部2とその周縁から垂下した筒部3とを有し、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなるキャップ本体4と、天板部2内面に設けられ、ポリプロピレンとゴムをブレンドしたもの、ポリエチレン、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)などの比較的軟質の合成樹脂材料を略円板状に成形してなるライナー5とを備えたキャップ1の、前記ライナー5の表面に、波長1064nmのYAGレーザー光を照射して、レーザー光の照射部分が発泡により変色したり凹部となることにより、数字、文字などの記号、図形などを表す表示15が形成される、表示15の形成方法。」
[引用文献5記載の技術事項2]
「円板状の天板部2とその周縁から垂下した筒部3とを有し、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなるキャップ本体4を備えたキャップ21の、当該天板部2の内面に波長1064nmのYAGレーザー光を照射して表示15が形成され、当該表示15は数字および文字からなるものである、表示15の形成方法。」
6.引用文献6
(1)引用文献6記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献4として引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2006-82854号公報(以下、「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア.「【0027】
更に、当該キャップは、遮光性の機能を付与するために、黒、灰色、白等からなる不透明体のものを使用することが好ましい。
遮光性キャップは、上記の樹脂に光反射性顔料や、光吸収性顔料を単独でまたは混合して添加して製造することができる。
前記の光反射性顔料は、具体的に、チタンホワイト、アルミニウム粉、マイカ粉、硫化亜鉛、亜鉛華等の白色顔料が好ましく、中でもルチル型のチタンホワイトを用いるのが好ましい。また、その添加量としては、上記樹脂100重量部に対して、2~5重量部程度が、充分な光の散乱効果が得られるので好ましい。
前記の光吸収性顔料としては、カーボンブラック、セラミックブラック、ボーンブラック等の有色顔料が好ましく、中でも黒色顔料であるカーボンブラックを用いるのが好ましい。また、その添加量は、上記樹脂100重量部に対して、光吸収性顔料を0.0005~0.015重量部添加することが、充分な光吸収効果が得られるので好ましい。」
イ.「【0052】
(遮光性キャップ20の製造)
ポリプロピレン樹脂にカーボンブラックをマスターバッチ方式により添加して射出成形した黒色の遮光性キャップ(日本クラウンコルク製 品名;NCフラップ)を準備した。
この遮光性キャップ20は、図2に示すように、キャップ側壁部21にブリッジを介して連結された環状ピルファープルーフ裾壁23と、前記のピルファープルーフ裾壁23の内周壁面に、内方に延びる複数の可撓性を有するフラップ24が形成されて構成されている。
【0053】~【0054】<略>
【0055】
(合成樹脂製容器100の作製)
次に、上記で得られた筒状の遮光性シュリンクラベル40を自動ラベル装着装置に供給し、必要な長さに切断した。しかる後、上記で得られたPETボトルに内容物(乳飲料)を充填し、上記で得られた遮光性キャップ20を螺着して密栓した状態で、このPETボトルの外表面に上記の筒状の遮光性シュリンクラベル40嵌着し、スチームヒータで90℃、10秒間加熱したシュリンクトンネルに通して、遮光性シュリンクラベル40をPETボトル10の口部下端Xから底部の位置Yまで遮光性シュリンクラベル40で被覆した。しかる後、被覆部材30の粘着層形成部分に95℃で5秒間加熱して粘着性を持たせた状態でシュリンクラベル付き容器の底部で当該シュリンクラベルの下部と重なるようにして密着させ、接着部をすることで、本発明に係る合成樹脂製容器100を得た。
この結果、PETボトル本体10を着色することなく、また、異樹脂を混入せずに成形しても、合成樹脂製容器100全体として、可視光線、紫外光線光線(当審注:「紫外光線」の誤記と認める。)を遮断する機能を有し、内容物に変質、変色せず、内容物の保存性に優れると共に、容器回収の際、PETボトル10とラベル等を完全分離でき、また、PETボトル10の再生樹脂の用途が広範となるのでリサイクル性に優れるものであった。」
(2)引用文献6の記載から認定できる事項
ア.上記「(1)イ.」から、上記「(1)ア.」の「遮光性キャップ」は、「PETボトル」に密栓されるものであると認められる。
(3)上記(1)及び(2)より、引用文献6には、以下の技術事項(以下、「引用文献6記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「PETボトルに密栓される、黒色の不透明体の遮光性キャップであって、ポリプロピレン樹脂に、黒色顔料のカーボンブラックである光吸収性顔料を添加して製造した、遮光性キャップ。」
7.引用文献2、引用文献7、周知技術1
(1)引用文献2には、上記「2.(1)」であげた事項が記載されている。
(2)原査定の拒絶の理由において引用文献6として引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2008-89379号公報(以下、「引用文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
食品や薬品の包装容器には、製造年月日(年月や時分を含む)や賞味期限(配置期限)、製造ロットなどの表示が法律上義務づけられており、それを実現するのがインクジェットプリンタ等の印字機である。印字機は、搬送ライン(包装ラインを含む)に設置され、次々に搬送されてくる包装容器への印字を行う。印字機による印字が正しく行われているかは、包装容器の印字を読み取る検査機によってなされる。メーカや流通業者にとって、市場へ出荷後に不具合が発覚した場合の商品追跡や回収は、包装容器の上記印字内容を手がかりに行われるため、印字検査機の不良検出精度が重要である。またメーカにとっては、ライン上で検査設備の信頼性が維持されていることの確認及び記録することで、品質保証の裏付けを定量化する必要がある。このような背景から、印字検査機での不良検出を高精度に効率良く実現するべく模索されている。」
(3)上記「2.(1)イ.」、「2.(1)ウ」の【0043】、「2.(1)カ.」、及び、(2)より、引用文献2及び7には、次の周知技術(以下、「周知技術1」という。)が記載されていると認められる。
「流通履歴を示す情報をキャップ等に印字した、ペットボトル等の容器。」
8.引用文献8、引用文献1、周知技術2、周知技術3
(1)引用文献8記載事項
当審拒絶理由1において引用文献2として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平6-297828号公報(以下、「引用文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア.「【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記従来技術に鑑み、レーザーマーキング文字の色の多様化について鋭意検討した結果、有機顔料・染料の多くはレーザー光に対し安定であることに着目し、レーザーマーキング方法へのこれらの有機顔料・染料の応用について更に検討した結果、本発明を完成するに到った。即ち、本発明は熱可塑性樹脂より成形された成形品の表面にレーザー光を照射してマーキングする方法において、レーザー光を吸収し加熱されることにより変色又は脱色する添加物と、レーザー光の影響を受けにくい有機顔料・染料とを併せて含有してなる熱可塑性樹脂組成物より成形された成形品の表面にレーザー光を照射してマーキングすることを特徴とするレーザーマーキング方法、熱可塑性樹脂より成形された成形品の表面にレーザー光を照射してマーキングする方法において、レーザー光を吸収し加熱されることにより変色又は脱色する添加物を含有してなる熱可塑性樹脂組成物より成形された成形品に、レーザー光の影響を受けにくい染料により染色を施し、次いで成形品の表面にレーザー光を照射してマーキングすることを特徴とするレーザーマーキング方法、及び熱可塑性樹脂より成形された成形品の表面にレーザー光を照射してマーキングする方法において、レーザー光を吸収し加熱されることにより変色又は脱色する添加物を含有してなる熱可塑性樹脂組成物より成形された成形品の表面にレーザー光を照射してマーキングを行い、次いで該成形品に染料により染色を施すことを特徴とするレーザーマーキング方法である。」
イ.「【0009】本発明においては、前記第1~第3の方法の何れも可能であるが、特に第1の方法が好ましく、前述した特定樹脂組成物からなる成形品あるいは該樹脂組成物を印刷、塗布、多重成形等によって被覆した樹脂、セラミック、金属等の成形品に対し、その所望位置にレーザー光線を照射するだけで、容易に鮮明なマーキングが行われる。所望の形状のマーキングを行うためには、例えば、レーザー光を適当な大きさのスポットにして対象物の表面を走査する方法、レーザー光をマスクすることによって所望形状のレーザー光とし、これを対象物の表面に照射する方法等が挙げられる。使用されるレーザーの種類としては特に限定はないが、例えば炭酸ガスレーザー、ルビーレーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー、エキシマレーザー、YAG レーザー等が挙げられる。なかでも波長が1.06μmであることを特徴とするNd:YAG レーザーが好ましい。その発振形態は連続発振であってもパルス発振であっても構わないが、特に適したものはQスイッチを用いた連続発振であるスキャン式のNd:YAG レーザーである。
【0010】
【作用】本発明の作用機構は、第1の方法を例にとると次のように推測される。即ち、本発明の如く、レーザー光を吸収し加熱されることにより変色又は脱色する添加物(例えばカーボンブラック)と、レーザー光の影響を受けにくい有機顔料・染料とを併せて含有してなる熱可塑性樹脂組成物より成形された成形品もしくは該樹脂組成物によって被覆された成形品の表面にレーザー光を照射すると、レーザー光は成形品表面を透過し、樹脂中のカーボンブラックを選択的に加熱する。特に樹脂自身による吸収の少ないNd:YAG レーザーの場合、効率的に加熱される。加熱されたカーボンブラックは、まわりの樹脂を加熱溶融し、局所的に分解させると同時に、カーボンブラック自身も過度の加熱により酸化されガスとなる。そのため、レーザー光を照射した部分には、カーボンブラックの存在しない発泡領域が形成される。有機顔料・染料の色をカーボンブラックにより隠蔽された本成形品の場合、カーボンブラックの存在しない領域が形成されることにより、隠蔽されていた有機顔料・染料の色が現れ、添加した有機顔料・染料の色と同一のレーザーマーキング文字が得られる。特に、レーザー光を吸収したり、加熱により変色や脱色をしない、つまりレーザー光の影響をほとんど受けない有機顔料・染料を使用することで達成されるものであると考えられる。
【0011】~【0012】<略>
【0013】実施例3
ポリアセタール樹脂に、カーボンブラック0.05重量%を添加し、押出機で練込み、黒色系のペレットを得た。このペレットを射出成形し、7mm×5mmで厚さ3mmの黒色の平板を成形した。次に、この平板に下記条件にてマーキングを行い、白色文字を得た。その後、この平板を下記染料aを水に溶かした濃度2g/リットルの染色水溶液(水温:90℃)に10分間浸漬後、水洗したところ染料と同色(この場合はピンク)の鮮明なマーキング文字を得た。又、カーボンブラックの添加量を0.1 重量%とし、染料として下記b、cを用いて30分間浸漬処理したものについても同様に行ったところ、染料と同色(bの場合は紺色、cの場合は黄色)の鮮明なマーキング文字を得た。
【0014】尚、マーキング条件は下記の通りである。
装置: 日本電気(株)製 レーザーマーカー SL475E
レーザーの種類: Nd:YAG レーザー(Qスイッチ搭載)
マーキング方式: 一筆書き方式(スキャン方式)
マーキング部での加工パワー: 1~3W
スキャンスピード: 100 ~400mm/sec
バイトサイズ: 30~50μm
Qスイッチ周波数: 1~3kHz
又、実施例に使用した染料a~cは三菱化成(株)製の分散染料である。
a;Dianix Red AC-E
b;Dianix Blue AC-E
c;Diacelliton Fast Yellow GL」
(2)引用文献8の記載から認定できる事項
上記「(1)イ.」の【0009】の「波長が1.06μm」とは、技術常識に照らせば、引用文献1の「波長1064nm」と同程度の波長であると認められる。
(3)引用文献1記載事項
当審拒絶理由1にて引用された、引用文献1には、上記「1.(1)」であげた事項が記載されている。また、上記「1.(2)」であげた事項が記載されているものと認められる。
(4)上記「(1)イ.」の【0010】の「添加物(例えばカーボンブラック)と、レーザー光の影響を受けにくい有機顔料・染料とを併せて含有してなる熱可塑性樹脂組成物より成形された成形品」との記載、「1.(1)イ.」、及び、「1.(1)エ.」より、引用文献1及び8には、次の周知技術(以下、「周知技術2」という。)が記載されていると認められる。
[周知技術2]
「カーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。」
(5)上記(1)ないし(3)より、引用文献1及び8には、次の周知技術(以下、「周知技術3」という。)が記載されていると認められる。
[周知技術3]
「波長が1064nm程度のレーザをカーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に照射し、照射された部分が発泡して白色の文字が形成される、レーザーマーキング方法。」
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明1との対比
ア.本願発明1と、引用発明1とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明1の「カーボンブラック」及び「レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物」は、本願発明1の「黒色顔料」及び「樹脂」に相当するから、引用発明1の「カーボンブラックとを原料成分として含むレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物」は、本願発明1の「黒色顔料を含有する」「樹脂」に相当する。また、引用発明1の「レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物」は「容器のキャップ等に有用な」ものであるから、引用発明1の「レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物からなる成形品」として「容器のキャップ」が含まれることは明らかである。してみると、引用発明1の「レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物からなる成形品」としての「容器のキャップ」は、本願発明1の「黒色顔料を含有する」「樹脂製のキャップ」に相当する。
また、引用発明1の「各種文字、各種記号」「のマーキング部を得るレ-ザーマーキング方法」は、当該「レーザーマーキング」の結果、「各種文字、各種記号」が印字されるものであるから、本願発明1の「文字や記号を印字する印字方法」に相当する。
してみると、引用発明1は、本願発明1の「黒色顔料を含有する」「樹脂製のキャップ」「に文字や記号を印字する印字方法」に相当する。
(イ)引用発明1の「成形品」において、「各種文字、各種記号」「のマーキング」がなされる部分は、本願請求項1の「印字領域」に相当する。
また、引用発明1の「レーザーマーカーを用いて波長1064nmのレーザー光を照射し、前記レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物が発泡することによって、各種文字、各種記号」「のマーキング部を得る」は、上記(ア)も踏まえると、本願発明1の「レーザマーカから波長が532~1064nmの範囲のレーザを照射することにより」「樹脂を発泡させて文字や記号を印字する」に相当する。
してみると、引用発明1には、本願発明1の「印字領域に対して、レーザマーカから波長が532~1064nmの範囲のレーザを照射することにより」「樹脂を発泡させて文字や記号を印字する」に相当する構成を備えているといえる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。
[一致点]
「黒色顔料を含有する、樹脂製のキャップに文字や記号を印字する印字方法であって、
前記キャップに設けられた印字領域に対して、レーザマーカから波長が532~1064nmの範囲のレーザを照射することにより前記樹脂を発泡させて文字や記号を印字することを特徴とする印字方法。」
(エ)そして、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。
[相違点1-1]
黒色顔料を含有する樹脂製のキャップについて、本願発明1は、「ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製」のものであるのに対し、引用発明1は、「ポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂」を原料成分として含むものである点。
[相違点1-2]
キャップに設けられた印字領域が、本願発明1は、キャップの「外側表面」に設けられたものであるのに対し、引用発明1は、キャップの「外側表面」に設けられたものであるか不明である点。
イ.相違点についての判断
まず、上記相違点1-1について検討すると、引用文献1の【0004】に「優れたレーザーマーキング性を有し、ポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂とを含有しても真珠光沢を有さず、且つ、強度特性、耐熱特性及び硬度特性等の優れた特性が従来通りに保持又は向上されたレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物及びこれを用いた樹脂成形品並びにレーザーマーキング方法を提供することを目的とする。」と記載されているように、引用発明1の「レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物」は、「ポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂と」「を原料成分として含む」ことを前提とするものであるところ、これを「ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製」のものとする動機付けが存在しない。また、引用文献2及び3の記載からも、引用発明1において、上記相違点1-1に係る構成を採用することが、当業者にとって容易に想到し得たことであると認めることもできない。さらに、引用発明1において、上記相違点1-1に係る構成を採用することが、設計的事項といえる理由もない。
よって、上記相違点1-1に係る本願発明1の発明特定事項は、当業者であっても、引用発明1に基づいて容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本願発明1は、上記相違点1-1に係る構成により、黒色顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップにおいて、判読性及び耐久性に優れた印字を行うことができるという、本願明細書に記載されるとおりの作用・機能を奏するものである。
ウ.小括
以上検討したとおり、相違点1-2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
また、当審拒絶理由1、2、又は、原査定で引用された引用文献2~8を参酌しても、容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)本願発明1と引用発明4との対比
ア.本願発明1と、引用発明4とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明4の「キャップ」及び「文字や記号」は、本願発明1の「キャップ」及び「文字や記号」に相当する。
(イ)引用発明4は、「キャップ」「の外表面に文字や記号を印字されている」ものであるから、当該「外表面」における「文字や記号を印字」された領域が、本願発明1の「キャップの外表面に設けられた印字領域」に相当する。
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、本願発明1と引用発明4とは、以下の点で一致する。
[一致点]
「キャップの外表面に設けられた印字領域に対して、文字や記号を印字」
(エ)そして、本願発明1と引用発明4とは、以下の点で相違する。
[相違点4-1]
本願発明1は、キャップが「黒色顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップ」であって、当該キャップに対し「レーザマーカから波長が532~1064nmの範囲のレーザを照射することにより前記キャップを構成する樹脂を発泡させて文字や記号を印字する」「印字方法」であるのに対し、引用発明4は、「黒色のキャップ」であるものの、「黒色顔料を含有し」、「ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製」であるか不明であり、また、「印字方法」の発明ではなく、どのように印字しているか不明である点。
イ.相違点についての判断
上記相違点4-1について検討する。
(ア)引用文献5記載の技術事項1の「数字、文字などの記号、図形などを表す表示15」「の形成方法」は、「レーザー光の照射部分が発泡により変色したり凹部となることにより」「表示15」を「形成」するものであるから、「表示15」を印字するものといえる。したがって、引用文献5記載の技術事項1の「数字、文字などの記号、図形などを表す表示15」「の形成方法」は、本願発明1の「文字や記号を印字する印字方法」に相当する。
また、引用文献5記載の技術事項1の「波長1064nmのYAGレーザー光を照射」は、本願発明1の「レーザマーカから波長が532~1064nmの範囲のレーザを照射」に相当し、引用文献5記載の技術事項1の「キャップ1」が備える「合成樹脂材料を略円板状に成形してなるライナー5」は、本願発明1の「キャップを構成する樹脂」に相当し、引用文献5記載の技術事項1の「合成樹脂材料を略円板状に成形してなるライナー5」「の表面に」「レーザー光の照射部分が発泡により変色したり凹部となることにより」「数字、文字などの記号、図形などを表す表示15が形成され」ることは、本願発明1の「キャップを構成する樹脂を発泡させて文字や記号を印字する」ことに相当する。してみると、引用文献5記載の技術事項1の「波長1064nmのYAGレーザー光を照射して」「キャップ1」が備える「合成樹脂材料を略円板状に成形してなるライナー5」「の表面に」「レーザー光の照射部分が発泡により変色したり凹部となることにより」「数字、文字などの記号、図形などを表す表示15が形成される、表示15の形成方法」は、本願発明1の「レーザマーカから波長が532~1064nmの範囲のレーザを照射することにより」「キャップを構成する樹脂を発泡させて文字や記号を印字する」「印字方法」に相当する。
他方、引用文献5記載の技術事項1の「キャップ」は、「黒色顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップ」ではないところ、引用文献6には、当該「黒色顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップ」が記載されている。
ここで、引用発明4は、その課題や技術思想が不明であるところ、当該引用発明4に、引用文献5記載の技術事項1を適用する動機付けが見いだせない。
また、仮に引用発明4に、引用文献5記載の技術事項1を適用する動機付けがあったとしても、引用発明4を上記相違点4-1に係る本願発明1の発明特定事項とするためには、引用文献5記載の技術事項1を引用発明4に適用して、更に、当該引用文献5記載の技術事項1を適用した引用発明4に引用文献6記載の技術事項を適用するか、又は、引用発明4に引用文献6記載の技術事項を適用したものに対して、更に引用文献5記載の技術事項1を適用しなければならず、これは、容易の容易、いわゆる、後付けの論理となる。
よって、上記相違点4-1に係る本願発明1の発明特定事項は、当業者であっても引用発明4、引用文献5記載の技術事項1、引用文献6記載の技術事項に基づいて容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、上記相違点4-1に係る構成により、黒色顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップにおいて、判読性及び耐久性に優れた印字を行うことができるという、本願明細書に記載されるとおりの作用・機能を奏するものである。
ウ.小括
以上検討したとおり、本願発明1は、引用発明4、引用文献5、6に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
また、当審拒絶理由1、2、又は、原査定で引用された引用文献1~3、7~8を参酌しても、容易に発明をすることができたとはいえない。
2.請求項2ないし4について
本願発明2ないし4は、本願発明1を直接または間接的に引用し、本願発明1の発明特定事項をすべて含む発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし8に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第7 当審拒絶理由についての判断
1.当審拒絶理由1について
(1)上記「第3 当審拒絶理由の概要」で示した、当審拒絶理由1において引用された引用文献1~5は、それぞれ、上記「第5 引用文献、引用発明等」で示した引用文献4、8、1、3、2と同一である。
(2)上記(1)、並びに、「第5 引用文献、引用発明等」、及び、上記「第6 対比・判断」での検討を踏まえれば、本願発明1は、当業者が、当審拒絶理由1において引用された引用文献1~5に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、「第3 当審拒絶理由の概要」の当審拒絶理由1は解消した。
2.当審拒絶理由2について
(1)上記「第3 当審拒絶理由の概要」で示した、当審拒絶理由2において引用された引用文献1~3は、それぞれ、上記「第5 引用文献、引用発明等」で示した引用文献1~3と同一である。
(2)上記(1)、並びに、「第5 引用文献、引用発明等」、及び、上記「第6 対比・判断」での検討を踏まえれば、本願発明1は、当業者が、当審拒絶理由1において引用された引用文献1~3に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、「第3 当審拒絶理由の概要」の当審拒絶理由2は解消した。
3.当審拒絶理由3について
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について、当審では、令和4年6月22日付けで下記の拒絶理由を通知した。この項における請求項1ないし4は、令和4年4月18日付け手続補正後のものである。
「(1)発明の詳細な説明には、
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、商品の多様化により、ペットボトルの容器本体や、キャップには様々な着色が施される例が増えている。キャップが黒色顔料により着色された黒色のキャップである場合は、インクジェットプリンタにより黒色の文字や記号を印字したとしても判読性に劣る。
【0006】
インクジェットプリンタにより印字する文字の色を黒以外に変更することが考えられるが、黒色顔料以外の、例えば黄色顔料は印字された文字や記号の印字領域に対する定着の程度が黒色顔料によるものに比べて弱く印字欠けが発生しやすいという問題があった。
【0007】
また、商品は、ペットボトルの洗浄工程、内容物の充填工程、キャップの取付け工程、印字工程、加熱殺菌工程、梱包工程等の様々な工程を経て製造される。印字工程の後において上流側工程から下流側工程へとペットボトルを受け渡すための把持機構がキャップを把持する際に、印字した文字や記号が削り落とされてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたもので、印字された文字や記号が判読しやすく、耐久性に優れた印字方法を提供することを目的としている。
【0009】~【0019】<略>
【0020】
ここでは、容器本体3はポリエチレンテレフタレート樹脂によって形成されているが、これに限らず、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などでもよい。また、キャップ4はポリエチレン樹脂によって形成されているが、これに限らず、ポリプロピレン樹脂などでもよい。ただし、少なくとも、キャップ4は、黒色顔料を含有させた樹脂によって形成されている。
【0021】~【0027】<略>
【0028】
レーザマーカ6は、キャップ4の印字領域、つまりTEバンド4Bの側面に対して、レーザマーカから波長が1064nmのYVO4レーザを照射し、キャップ4のTEバンド4Bを構成する樹脂を発泡させることにより文字や記号を印字する。なお、1064nmという波長は例示である。発明者らは実験により、532~1064nmの範囲の波長であれば、文字や記号を良好に印字することができることを確認しているが、レーザマーカの波長が1064nmを超えると、一部印字がされない印字欠けが発生し、文字や記号を良好に印字することができないことを確認している。また、YVO4レーザが照射するレーザの波長は、半分の532nm(第二高調波)であってもよい。さらに、レーザマーカが照射するレーザは、YVO4レーザに限らず、YAGレーザのような固体レーザであってもよく、また気体レーザや半導体レーザであってもよい。いずれの場合も、レーザの波長は532~1064nmの範囲であることが好ましい。
【0029】
文字や記号としては、賞味期限や産地記号が印字される。なお、賞味期限や産地記号には、製造年月日、ロットナンバー、シリアルナンバーなどが含まれ、少なくとも商品の流通履歴を確認可能な文字や記号であればよい。
【0030】
このように印字された文字や記号は白色となり、黒色のキャップ4に対して判読性が極めて良い。この様子を、図1中のTEバンド4Bに「○○××○○○」のように示している。また、インクジェットプリンタのようにインクを印字領域に定着させるのではなく、発泡によりキャップ4の組成そのものを変化させているため、外部からの摩擦に対して、インクによる印字より強い。」
と記載されている。
上記記載から、本願発明が解決しようとする課題は、「キャップが黒色顔料により着色された黒色のキャップである場合は、インクジェットプリンタにより黒色の文字や記号を印字したとしても判読性に劣る」ところ、「黒色のキャップ4に対して判読性が極めて良」い「印字方法を提供すること」と認められ、その解決手段は、「黒色顔料を含有させた樹脂によって形成され」、当該樹脂は「ポリエチレン樹脂」又は「ポリプロピレン樹脂」である「黒色のキャップ4」の「印字領域」「に対して、レーザマーカから」「波長」が「532~1064nmの範囲」の「レーザを照射し、キャップ4」「を構成する樹脂を発泡させることにより文字や記号を印字」し、「このように印字された文字や記号は白色とな」る印字方法、であると認められる。
これに対して、請求項1には、「黒色のキャップ」に対して「印字された文字や記号が白色」となることが特定されておらず、上記「黒色のキャップ4に対して判読性が極めて良」い「印字方法を提供する」との課題を解決することができない。
したがって、請求項1の記載は、上記課題を解決できることを当業者が認識できるものとはいえず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。
(2)請求項1を引用する請求項2~4についても、上記(1)と同様の理由で発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、請求項1~4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。」
(2)上記(1)の拒絶理由についての判断
令和4年8月26日に提出された意見書において、「レーザ照射により樹脂製の基材を発色させる場合、発色の原理としては、「発泡」、「凝縮」、「炭化」、「化学変化」の4つがあり得ます。このうち、「発泡」は、照射するレーザの熱効果によって基材内で発泡させるもので、発生した気泡が基材の表面を隆起させることによって白っぽくなるため、その部分は必ず薄い基材の色になります。すなわち、黒色の基材であれば、発泡度合に応じて「グレー~白色」に発色し、その部分の視認性が向上します。
本願請求項1では、既に、「黒色顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップ」に対して、「レーザマーカから波長が532~1064nmの範囲のレーザを照射することにより前記キャップを構成する樹脂を発泡させて文字や記号を印字すること」を記載し、本願発明が「黒色顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップ」に対して、「発泡」の原理により発色させることを規定しております。本願発明において、「黒色顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップ」に対し、「波長が532~1064nmの範囲のレーザ」を照射することによって、印字された文字や記号が判読性及び耐久性に優れたものになるということは、本発明者らによって初めて見出された特徴的なものではありますが、レーザを照射して樹脂を発泡させることで、その部分の色が薄くなること自体は広く知られていることですので、本願請求項1の記載から、「黒色キャップ」に印字された文字や記号が「グレー~白色」となり判読性が良くなることが理解できます。
このため、当業者であれば、本願請求項1に係る発明が発明の課題を解決できることを十分に認識することができます」と釈明された結果、この拒絶理由は解消した。
4.当審拒絶理由4について
(1)特許法第36条第6項第2号(明確性)について、当審では、令和4年9月27日付けで下記の拒絶理由を通知した。この項における請求項4は、令和4年4月18日付け手続補正後のものである。
「請求項4には、「YVO4レーザ」との記載があるが、「YVO4レーザ」の誤記か?」
(2)上記(1)の拒絶理由についての判断
令和4年11月30日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明4において、「YVO4レーザ」との特定がされたことから、この拒絶理由は解消した。
第8 原査定についての判断
(1)上記「第2 原査定の概要」で示した、原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1~6は、それぞれ、上記「第5 引用文献、引用発明等」で示した引用文献4、5、3、6、2、7と同一である。
(2)上記(1)、並びに、「第5 引用文献、引用発明等」、及び、上記「第6 対比・判断」での検討を踏まえれば、本願発明1は、当業者が、原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1~6に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、「第2 原査定の概要」の拒絶理由は解消した。したがって、原査定を維持することはできない。
第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2020-009515