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特許異議申立

2023-700998

架橋剤および架橋剤を含むポリマー組成物ならびにその架橋成形物

審判番号
2023-700998
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-550525外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7260172
請求日
2023年09月21日
審決日
2024年01月29日
公報発行日
2024年03月29日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-Y (C08L) / P1651.121-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7260172号発明「架橋剤および架橋剤を含むポリマー組成物ならびにその架橋成形物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7260172号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第7260172号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、平成30年10月26日(優先権主張 平成29年10月31日 日本国(JP))を国際出願日とする出願であって、令和5年4月10日にその特許権の設定登録(請求項の数14)がされ、特許掲載公報が同年同月18日に発行された後、その特許に対し、同年9月21日に特許異議申立人 藤央弁理士法人(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし14)がされたものである。

第2 本件発明

本件特許の請求項1ないし14の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項の番号に応じて各発明を「本件発明1」などといい、これらを併せて「本件発明」という場合がある。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

「【請求項1】
水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩中和物または
水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩二価金属イオン(Ca2+、Mg2+、またはZn++)結合物、ないしは
前記水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩のカルボン酸反応物、
続きを表示(全33行)
からなるカルボキシ基および/またはニトリル基架橋剤であって、
前記水酸基含有有機化合物が、1価または多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、水酸基含有高分子(ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、デキストリン、シクロデキストリン、オリゴ糖、グアーガム、アルギン酸、ペクチン、キサンタンガム)、糖質、またはヒドロキシ酪酸、アルドン酸、ウロン酸およびサリチル酸から選択されるヒドロキシカルボン酸、からなる群より選択される水酸基含有有機化合物(ただし、ポリエチレングリコールおよびその誘導体は除く)であり、
前記水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩は水酸基含有有機化合物の水酸基の酸素原子にアルミニウム原子が結合し、アルミニウム原子がカルボキシ基に結合していないアルミン酸錯塩であることを特徴とする、前記架橋剤。
【請求項2】
前記ヒドロキシカルボン酸がアルドン酸である、請求項1に記載の架橋剤。
【請求項3】
水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩中和物が、水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩二酸化炭素反応物であることを特徴とする、請求項1または2記載の架橋剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載の架橋剤を含むことを特徴とする、ポリマー組成物。
【請求項5】
水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩中和物が、アルミン酸錯塩を直接カルボキシ基および/またはニトリル基を含有するポリマー組成物に配合して中和されたものであることを特徴とする、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
請求項4または5記載のポリマー組成物におけるポリマーが、カルボキシ基および/またはニトリル基を含有することを特徴とする、ポリマー組成物。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一項記載のポリマー組成物におけるポリマーが、カルボキシ変性NBRラテックスまたはSBRラテックス、カルボキシ基含有クロロプレンラテックス、カルボキシ基含有ポリウレタンディスパージョン、カルボキシ基含有アクリルエマルジョン、カルボキシ基含有水性ポリエステル、またはカルボン酸変性水性樹脂であることを特徴とする、ポリマー組成物。
【請求項8】
内添サイズ剤、表面サイズ剤、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、デンプン、デキストリン、シクロデキストリン、オリゴ糖、グアーガム、アルギン酸、ペクチン、およびキサンタンガムから選ばれた1または2以上の有機化合物を含有することを特徴とする、請求項4~7のいずれか一項記載のポリマー組成物。
【請求項9】
さらに酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムまたはコロイダル水酸化マグネシウムを添加したことを特徴とする、請求項4~8のいずれか一項記載のポリマー組成物。
【請求項10】
水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩中和物が、水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩二酸化炭素反応物であることを特徴とする、請求項4~9のいずれか一項のポリマー組成物。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか一項記載のポリマー組成物を成形および架橋してなることを特徴とする、架橋成形物。
【請求項12】
請求項11記載の成形物を高塩基性塩化アルミニウム、高塩基性硝酸アルミニウム、内添サイズ剤、表面サイズ剤ないしは請求項1記載の架橋剤で表面処理したことを特徴とする、架橋成形物。
【請求項13】
表面処理に用いる架橋剤における水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩中和物が、水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩二酸化炭素反応物であることを特徴とする、請求項12に記載の架橋成形物。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載の架橋成形物がディップ成形品または紙製品であることを特徴とする、前記架橋成形物。」

第3 特許異議申立理由の概要

申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由は、おおむね次のとおりである。

1 申立理由1(甲第1号証を根拠とする新規性欠如)

本件発明1~7、10、11及び14は、本件特許の優先日前に頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 申立理由2(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如)

本件発明1~14は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

3 証拠方法

申立人は、証拠として、以下の文献等を提出する。文献の表記は、特許異議申立書の記載に基づく。以下、甲各号証の番号に応じて、甲第1号証を「甲1」などという。

(1)甲第1号証:特開2017-149925号公報

(2)甲第2号証:特開2010-59441号公報

(3)甲第3号証:社団法人日本化学会編、第4版 実験化学講座17、

無機錯体・キレート錯体、平成3年3月5日発行、丸善株式会社

(4)甲第4号証:ヒューイ 無機化学(上)第1版第3刷、

1988年7月1日、株式会社東京化学同人、

(5)甲第5号証:アルミン酸ナトリウムの安全データシート 版8、

2016年6月8日、和光純薬工業株式会社

(6)甲第6号証:特開2015-199334号公報

第4 当審の判断

当審は、以下に述べるように、申立理由1ないし2には、いずれも理由はないと判断する。

1 甲各号証の記載事項等

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(1)甲1の記載事項

甲1には、「ラテックス組成物および膜成形体」に関し、以下の事項が記載されている(下線は当審において付した。以下同様。)。

・「【請求項1】

カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスと、3価以上の金属を含む金属化合物(B)と、アルコール性水酸基含有化合物(C)と、を含有してなるラテックス組成物であって、

前記アルコール性水酸基含有化合物(C)が、糖類(c1)、糖アルコール(c2)、ヒドロキシ酸(c3)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種であり、

前記カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)100重量部に対する、前記金属化合物(B)の含有割合が0.1~1.5重量部であり、前記金属化合物(B)の含有量と、前記アルコール性水酸基含有化合物(C)の含有量とが、「金属化合物(B):アルコール性水酸基含有化合物(C)」の重量比で、1:0.1~1:50であるラテックス組成物。」

・「【0001】

本発明は、ラテックス組成物に関し、ラテックス組成物としての安定性に優れ、即時型アレルギー(Type I)に加えて遅延型アレルギー(Type IV)の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度および伸びに優れ、柔軟な風合いおよび高い応力保持率を備えるディップ成形体などの膜成形体を与えることのできるラテックス組成物、ならびに、このようなラテックス組成物を用いて得られるディップ成形体などの膜成形体に関する。」

・「【0049】

3価以上の金属を含む金属化合物(B)

本発明のラテックス組成物は、上述したカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに加えて、3価以上の金属を含む金属化合物(B)を、ラテックス中に含まれるカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)100重量部に対して、0.1~1.5重量部の範囲で含有する。本発明のラテックス組成物において、3価以上の金属を含む金属化合物(B)は、架橋剤として作用する。

・・・

【0051】

3価以上の金属を含む金属化合物(B)としては、3価以上の金属を含む化合物であればよく、特に限定されないが、アルミニウム化合物、コバルト化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物などが挙げられるが、これらのなかでも、ラテックス中に含まれるカルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)をより良好に架橋させることができるという点より、アルミニウム化合物が好ましい。

【0052】

アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、たとえば、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウム金属、硫酸アルミニウムアンモニウム、臭化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アルミニウム・イソプロポキシド、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、亜硫酸アルミニウムナトリウムなどが挙げられる。なお、これらアルミニウム化合物は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、本発明の作用効果をより顕著なものとすることができるという点より、アルミン酸ナトリウムが好ましい。」

・「【0056】

具体的には、本発明においては、架橋剤として3価以上の金属を含む金属化合物(B)を使用するに際し、このような3価以上の金属を含む金属化合物(B)に対し、アルコール性水酸基含有化合物(C)を特定の割合で配合することにより、ラテックス組成物中における、3価以上の金属を含む金属化合物(B)の分散状態を良好なものとすることができ、これにより、ラテックス組成物としての安定性を良好なものとすることができるものであり、しかも、3価以上の金属を含む金属化合物(B)とアルコール性水酸基含有化合物(C)との作用により、得られるディップ成形体などの膜成形体を、引張強度および伸びに優れることに加え、柔軟な風合いおよび高い応力保持率を備えるものとすることができるものである。」

・「【0058】

本発明で用いるアルコール性水酸基含有化合物(C)は、糖類(c1)、糖アルコール(c2)、ヒドロキシ酸(c3)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種であり、これらの中でも、得られるディップ成形体などの膜成形体を、より柔軟な風合いを備えるとともに、より高い応力保持率を備えるものとすることができるという観点より、糖アルコール(c2)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、アルコール性水酸基含有化合物(C)として、2種以上を併用する場合には、糖類(c1)および糖アルコール(c2)から選択される少なくとも1種と、ヒドロキシ酸(c3)およびヒドロキシ酸塩(c4)から選択される少なくとも1種とを組み合わせて用いることが好ましく、糖アルコール(c2)とヒドロキシ酸塩(c4)とを組み合わせて用いることがより好ましい。」

・「【0065】

また、本発明のラテックス組成物は、たとえば、カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに、3価以上の金属を含む金属化合物(B)と、アルコール性水酸基含有化合物(C)とを配合することにより得ることができる。カルボキシル基含有共役ジエン系ゴム(A)のラテックスに、3価以上の金属を含む金属化合物(B)と、アルコール性水酸基含有化合物(C)とを配合する方法としては、特に限定されないが、得られるラテックス組成物中に、3価以上の金属を含む金属化合物(B)およびアルコール性水酸基含有化合物(C)を良好に分散させることができるという点より、3価以上の金属を含む金属化合物(B)およびアルコール性水酸基含有化合物(C)を水またはアルコールに溶解し、水溶液またはアルコール溶液の状態で添加することが好ましい。」

・「【0081】

製造例1(カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1-1)のラテックスの製造)

攪拌機付きの耐圧重合反応容器に、1,3-ブタジエン63部、アクリロニトリル34部、メタクリル酸3部、連鎖移動剤としてt-ドデシルメルカプタン0.25部、脱イオン水132部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム1部、過硫酸カリウム0.3部、およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.005部を仕込み、重合温度を37℃に保持して重合を開始した。そして、重合転化率が70%になった時点で、重合温度を43℃に昇温し、継続して重合転化率が95%になるまで反応させ、その後、重合停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合反応を停止した。そして、得られた共重合体のラテックスから、未反応単量体を減圧にして留去した後、固形分濃度とpHとを調整することで、固形分濃度40重量%、pH8.0のカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1-1)のラテックスを得た。得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1-1)の組成は、1,3-ブタジエン単位63重量%、アクリロニトリル単位34重量%、メタクリル酸単位3重量%であった。

【0082】

製造例2(カルボキシル基含有スチレン-ブタジエンゴム(a2-1)のラテックスの製造)

攪拌機付き耐圧容器に、脱イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3部、t-ドデシルメルカプタン0.4部、1,3-ブタジエン63部、スチレン34部、およびメタクリル酸3部仕込み、モノマーエマルジョンを得た。これとは別の攪拌機付きの耐圧重合反応容器に、脱イオン交換水40部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部、重炭酸ソーダ0.35部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05部を仕込み、攪拌混合しながら70℃に昇温した。そして、これに過硫酸カリウム0.5部添加した後、直ちに、上記にて得られたモノマーエマルジョンの添加を開始し、攪拌混合しながら5時間かけて連続添加した。モノマーエマルジョン添加終了後、過硫酸カリウム0.2部を3重量%水溶液にて添加し、重合転化率が90%になったときに、85℃に昇温して、さらに3時間反応を継続し重合転化率が95%の時点で重合停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合反応を停止した。そして、得られた共重合体のラテックスから、未反応単量体を減圧にして留去した後、固形分濃度とpHとを調整することで、固形分濃度40重量%、pH8.0のカルボキシル基含有スチレン-ブタジエンゴム(a2-1)のラテックスを得た。得られたカルボキシル基含有スチレン-ブタジエンゴム(a2-1)の組成は、1,3-ブタジエン単位63重量%、スチレン単位34重量%、メタクリル酸単位3重量%であった。

・・・

【0084】

実施例1

ラテックス組成物の調製

製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1-1)のラテックス250部(カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1-1)換算で100部)に、アルミン酸ナトリウム0.5部、ソルビトール0.75部、グリコール酸ナトリウム0.75部を水溶させた混合水溶液を加えた。そして、これに脱イオン水を加えて、固形分濃度を30重量%に調整することで、ラテックス組成物を得た。そして、得られたラテックス組成物について、上記方法にしたがい、凝集物量(配合30分後および配合3日後)を測定した。

【0085】

ディップ成形体の製造

硝酸カルシウム30部、ノニオン性乳化剤であるポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル0.05部および水70部を混合することにより、凝固剤水溶液を調製した。次いで、この凝固剤水溶液に、予め70℃に加温したセラミック製手袋型を5秒間浸漬し、引上げた後、温度70℃、10分間の条件で乾燥して、凝固剤を手袋型に付着させた。そして、凝固剤を付着させた手袋型を、上記にて得られたラテックス組成物に10秒間浸漬し、引上げた後、50℃の温水に90秒間浸漬して、水溶性不純物を溶出させて、手袋型にディップ成形層を形成した。

次いで、ディップ成形層を形成した手袋型を、温度125℃、25分間の条件で加熱処理してディップ成形層を架橋させ、架橋したディップ成形層を手袋型から剥し、ディップ成形体(ゴム手袋)を得た。そして、得られたディップ成形体(ゴム手袋)について、上記方法にしたがって、引張強度、破断時伸び、500%伸長時の応力、および応力保持率の各測定を行った。結果を表1に示す。

【0086】

実施例2

ラテックス組成物を調製する際に、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1-1)のラテックスに代えて、製造例2で得られたカルボキシル基含有スチレン-ブタジエンゴム(a2-1)のラテックス250部(カルボキシル基含有スチレン-ブタジエンゴム(a2-1)換算で100部)を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度30重量%のラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。

・・・

【0088】

実施例4

ラテックス組成物を調製する際に、ソルビトールの配合量を1.5部に変更するとともに、グリコール酸ナトリウムを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度30重量%のラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。

【0089】

実施例5

ラテックス組成物を調製する際に、グリコール酸ナトリウムの配合量を1.5部に変更するとともに、ソルビトールを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度30重量%のラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。

・・・

【0107】

【表1】

[図:0001407856000001.jpg]

」

(2)甲1に記載された発明

甲1において、段落【0049】の「本発明のラテックス組成物において、3価以上の金属を含む金属化合物(B)は、架橋剤として作用する」との記載、同【0051】~【0052】の、甲1において「3価以上の金属を含む金属化合物(B)」として「アルミン酸ナトリウム」が好ましい旨の記載、及び、同【0065】の「ラテックス組成物中に、3価以上の金属を含む金属化合物(B)およびアルコール性水酸基含有化合物(C)を良好に分散させることができるという点より、3価以上の金属を含む金属化合物(B)およびアルコール性水酸基含有化合物(C)を水またはアルコールに溶解し、水溶液またはアルコール溶液の状態で添加することが好ましい。」との記載を踏まえ、実施例2及び4に着目すると、それぞれ以下の発明が記載されていると認める。

実施例2から

「アルミン酸ナトリウム0.5部、ソルビトール0.75部、グリコール酸ナトリウム0.75部を水溶させた混合水溶液。」(以下、「甲1A発明」という。)

実施例4から

「アルミン酸ナトリウム0.5部、ソルビトール1.5部を水溶させた混合水溶液。」(以下、「甲1B発明」という。)

(3)甲2の記載事項

甲2には、「架橋剤を含むラテックス組成物およびその架橋成形体」に関し、以下の事項が記載されている。

・「【請求項1】

カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスと、アルミニウム原子に結合し

た水酸基を二個以上含有する有機金属架橋剤とを含む、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。」

・「【0001】

本発明は、新規なカルボキシル基架橋剤および該架橋剤を含有するラテックス組成物ならびに該ラテックス組成物の架橋成形体又は該ラテックス組成物を含有する製品の架橋成形体に関する。具体的には、アルミニウム原子またはチタン原子などの金属原子に結合した2個以上の水酸基を有する有機金属化合物を架橋剤として使用したカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物およびその架橋成形体であり、クリープ耐性、耐水性、耐溶剤性、耐久性に優れた低アレルギー性ディップ製品、紙製品等に関するものである。

・・・

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

本発明の目的は、酸化亜鉛を代替しうる有機金属架橋剤を発見することである。また更なる目的は、イオウ、含イオウ加硫剤を代替し得る架橋剤を発見することである。これら架橋剤を使用することにより、耐久性、クリープ耐性、耐水性、耐溶剤性等、従来のイオウ加硫製品に匹敵する物性をもち、しかも、イオウ、含イオウ加硫物、加硫促進剤を含まない低アレルギー性架橋成形体、特に、ディップ製品を提供することにある。さらに、酸化亜鉛を含まないラテックス組成物を提供する。係るラテックス組成物を利用することにより、紙加工分野にも新たな製品を提供する。」

・「【0023】

金属原子に結合した水酸基を二個以上含有する有機金属架橋剤としては、例えば、アルミニウム原子に結合した水酸基を2個又はそれ以上含む化合物やチタン原子に結合した水酸基を2個又はそれ以上含む化合物などが挙げられる。

【0024】

好ましくは、カルボン酸のカルボキシル基にアルミニウム原子が結合し、該アルミニウム原子に結合した水酸基を2個又はそれ以上含む構造を有する化合物が挙げられる。

そのような化合物としては、以下に示すように、カルボン酸のカルボキシル基に結合したアルミニウム原子に2個の水酸基が付いたジヒドロキシアルミニウム構造を有する化合物が挙げられる。この2個の水酸基が、ポリマーのカルボキシル基を架橋する。したがって、イオウと同様、二価の架橋剤である。

【化5】

[図:0001407856000002.jpg]

(Rは飽和もしくは不飽和の脂肪族基、または芳香族基を示す。)

上記ジヒドロキシアルミニウム有機化合物は、一般にはカルボン酸のジヒドロキシアルミニウム塩として得られるが、それに限定されるものではない。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、脂環式カルボン酸等種類を問わない。また、アミノ基や水酸基などの置換基を有するカルボン酸でもよい。

具体例としては、オクチル酸(C8)ジヒドロキシアルミニウム、オクタン酸(C8)ジヒドロキシアルミニウム、カプリン酸(C10)ジヒドロキシアルミニウム、ナフテン酸ジヒドロキシアルミニウム等がある。カルボン酸には、アミノ基、水酸基等の官能基を有するカルボン酸のジヒドロキシアルミニウム塩も本発明の架橋剤として使用することができる。具体例としては、グリシンジヒドロキシアルミニウムやリジンジヒドロキシアルミニウムがある。」

(4)甲3の記載事項

甲3には、以下の事項が記載されている。

・「Taubeによると、配位子置換反応(0.1M, 25℃)が1分以内で完結するような錯体を置換活性型錯体という。一般に、アルカリ金属、アルカリ土類、希土類(III)、および低スピン型を除いた第一遷移金属(II)、Fe(III)、Cd(II)、Pb(II)、Al(III)、Ti(III)、V(III)、Ti(IV)などはほとんどすべてこの型に属する。これらの錯体は、溶液中で配位子と金属塩をまぜると、大抵の場合、ほとんど瞬間的に生成する。」(第2ページ第2~6行)

(5)甲4の記載事項

甲4には、以下の事項が記載されている。

・「Taube18)は25℃で約1分以内に反応が完結する錯体を活性と呼び,それ以上かかるものを不活性と呼ぶことを提案した.」(第547ページ下から第2~1行)

・「八面体置換の速度論と反応速度

もしどんな錯体についてもその反応速度が知られているなら,それを順番にならべて系列をつくることができるが,配位している水の交換速度に基づいて金属イオンを四つの範囲に分類しても便利である.GrayとLangford19)は次の分類を提案した(図11・5も参照).

分類I 水の交換が非常に速い.・・・

分類II 水の交換は速い.・・・

[図:0001407856000003.jpg]

分類III 水の交換は分類IやIIに比べると相対的には遅いが,絶対値は速く,一次反応速度定数は1から104s-1である.しかし,フロー法を使い,速い反応時間を流速度と関係づければ反応はまず普通の反応速度実験法で追うことができる.このグループの金属イオンとしては,ある程度LFSEにより安定化しているたいていの遷移金属3価陽イオンと非常に小さなイオン二つ,Be2+とAl3+,がある。Z2/r比は約30C2m-1より大きい.

分類IV 水の交換は遅い.不活性なのはこれに属する錯体だけである.一次反応速度定数は10-1から10-9s-1の範囲である.」

2 申立理由1及び2(甲1を根拠とする新規性・進歩性欠如)について

(1)本件発明1について

ア 甲1A発明との対比検討

(ア)甲1A発明との対比

本件発明1と甲1A発明とを対比する。

甲1A発明の「ソルビトール」は、その構造から、本件発明1の「多価アルコール」の「水酸基含有有機化合物」に相当する。

なお、甲1A発明の「グリコール酸ナトリウム」を水溶させた成分は、グリコール酸であって、本件発明1における「ヒドロキシカルボン酸」に含まれないため、本件発明1の「水酸基含有有機化合物」に該当しない。

そして、甲1A発明の「混合水溶液」は、甲1の実施例2において、「カルボキシル基含有スチレン-ブタジエンゴムのラテックス」に加えられ(【0084】、【0086】)、架橋剤成分を有する水溶液として働くことから、「カルボキシ基および/またはニトリル基」の架橋に貢献する成分として機能する「水酸基含有有機化合物」と「アルミン酸化合物」を含む限りにおいて、本件発明1の「カルボキシ基および/またはニトリル基架橋剤」に一致する。

そうすると、本件発明1と甲1A発明との一致点は、次のとおりである。

<一致点>

水酸基含有有機化合物と、アルミン酸化合物を含む、カルボキシ基および/またはニトリル基架橋剤であって、

前記水酸基含有有機化合物が、1価または多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、水酸基含有高分子(ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、デキストリン、シクロデキストリン、オリゴ糖、グアーガム、アルギン酸、ペクチン、キサンタンガム)、糖質、またはヒドロキシ酪酸、アルドン酸、ウロン酸およびサリチル酸から選択されるヒドロキシカルボン酸、からなる群より選択される水酸基含有有機化合物(ただし、ポリエチレングリコールおよびその誘導体は除く)である点

また、相違点又は一応の相違点は、次のとおりである。

<相違点>

本件発明1における架橋剤は、

「水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩中和物または
水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩二価金属イオン(Ca2+、Mg2+、またはZn ++)結合物、ないしは
前記水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩のカルボン酸反応物、
からなる」ものであって、「前記水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩は水酸基含有有機化合物の水酸基の酸素原子にアルミニウム原子が結合し、アルミニウム原子がカルボキシ基に結合していないアルミン酸錯塩である」のに対し、

甲1A発明の架橋剤は、そのようなものであるのか不明である点

(イ)相違点についての検討

a 新規性についての検討

まず、甲1A発明の混合水溶液に存在するアルミン酸化合物において、ソルビトールの水酸基の酸素原子にアルミニウム原子が結合しているか否かを検討する。

(a)甲1A発明に係る、甲1の実施例2において、その操作手順を記載する実施例1も参酌すると、実施例2では、混合水溶液の調製につき、単に「水溶させた」と記載され、温度や混合時間等の条件について具体的に示されておらず、実施例2の記載からは、甲1A発明の混合水溶液に存在するアルミン酸化合物が、ソルビトールの水酸基の酸素原子にアルミニウム原子が結合しているとはいえない。

(b)甲1の「本発明においては、…3価以上の金属を含む金属化合物(B)に対し、アルコール性水酸基含有化合物(C)を特定の割合で配合することにより、ラテックス組成物中における、3価以上の金属を含む金属化合物(B)の分散状態を良好なものとすることができ、これにより、ラテックス組成物としての安定性を良好なものとすることができる」(【0056】)との記載を参酌すると、甲1A発明の混合水溶液において、「アルコール性水酸基含有化合物(C)」は、「3価以上の金属を含む金属化合物(B)」のラテックス中の分散のために単に配合されるものであって、甲1には、「アルコール性水酸基含有化合物(C)」と「3価以上の金属を含む金属化合物(B)」とが結合する、特に「水酸基含有有機化合物の水酸基の酸素原子にアルミニウム原子が結合」することは、記載も示唆もされていない。

(c)甲3及び甲4の記載を参酌すると、甲3から、Taubeによる、配位子置換反応(0.1M, 25℃)が1分以内で完結するような錯体を置換活性型錯体といい、Al(III)がこの型に属し、この錯体は、溶液中で配位子と金属塩をまぜると、大抵の場合、ほとんど瞬間的に生成する旨が看取される。

また、甲4からも、甲3同様のTaubeによる活性の錯体の提案と共に、分類IIIに属するAl3+が、水の交換の絶対値は速く、一次反応速度は1から104s-1であることが看取され、これらから、Al(III)が水中で速やかに配位子と結合して錯体を形成することが理解できる。

しかしながら、甲3及び甲4の前記記載は、一般的な水溶液中におけるAl(III)錯体の調製について述べるに止まり、アルミン酸の水溶物におけるソルビトールの水酸基とアルミニウム原子との結合については何ら具体的な記載はないし、両性金属であるアルミニウムの錯体形成は、水溶液のpHや配位子の種類によって左右されるといえるところ、甲1と甲3及び甲4とは、水溶液のpHや配位子の種類を同等な条件にしたものではない。

そうすると、甲3及び甲4の記載を参酌しても、甲1A発明において、ソルビトールの水酸基とアルミニウム原子が結合したアルミン酸錯塩が形成されているとは直ちにはいえない。

なお、本件明細書には、「希釈した水酸基含有有機化合物液に、常温で等量の2.0モルアルミン酸ナトリウム液を撹拌しながら添加し、2時間放置して、水酸基含有有機化合物アルミン酸錯塩を合成する。」(【0024】)と記載されるように、本件発明1では、ソルビトールとアルミン酸の錯体形成に関し、常温で2時間をかけて行っており、甲3及び甲4に記載されるように瞬間的に行われる反応であるとは解されない。

(d)よって、甲1A発明において、その混合水溶液に存在するアルミン酸錯塩が、少なくともソルビトールの水酸基の酸素原子にアルミニウム原子が結合しているとはいえないから、前記相違点は、実質的な相違点といえる。

b 進歩性についての検討

前記aで述べたように、甲1は、「アルコール性水酸基含有化合物(C)」を、アルミニウム原子に配位しない「3価以上の金属を含む金属化合物(B)」を架橋剤として意図したものであるから、アルミニウム原子の配位子を、アルコール性水酸基含有化合物の水酸基に置換して、上記架橋剤の構造を変更することが動機付けられるとはいえないし、分散性向上を意図して配合した「アルコール性水酸基含有化合物(C)」をアルミニウム原子に配位させることが動機付けられるともいえない。

念のため、甲2についても検討すると、甲2は、「カルボン酸のカルボキシル基にアルミニウム原子が結合し、該アルミニウム原子に結合した水酸基を2個又はそれ以上含む構造を有する化合物」を有機金属架橋剤としたものであるから(甲2の【0024】及び【化5】)、甲2の記載を見ても、甲1発明において、水酸基含有有機化合物の水酸基の酸素原子にアルミニウム原子が結合した水酸基含有有機化合物のアルミン酸錯塩とすることが動機付けられるとはいえない。

また、甲3~6の記載を見ても、前記相違点に係る本件発明1の構成が動機付けられるとはいえない。

そして、本件発明1は、かかる発明特定事項を有することで、「アルミン酸錯塩を介して、有機化合物水酸基の酸素原子に直接アルミニウム原子が結合した架橋剤が合成できる。水酸基を有する有機化合物は極めて多数あり、多様な架橋剤が合成できる。したがって、架橋剤を使用する製品の品質要求に細かく対応する架橋剤を合成することが可能である。

また、架橋剤の合成は極めて容易であり、塩素イオンを含有しない架橋剤の合成も容易である。」(本件明細書の段落【0021】)という予測し得ない効果を奏するものである。

よって、本件発明1は、甲1A発明及び甲2~6記載の技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

c 相違点についての検討のまとめ

よって、前記相違点は、実質的な相違点であり、また、甲1A発明及び甲2~6に記載の技術的事項から当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(ウ)申立人の主張について

申立人は、特許異議申立書第29ページにおいて、上記相違点について、おおむね以下の主張をしている。

「本件特許の明細書の[0024]、[0025]によれば、ソルビトール水溶液にアルミン酸ナトリウムを常温で撹拌しながら添加し、2時間放置することによって、ソルビトールとアルミン酸との錯塩が形成されることが記載されており、この記載より、ソルビトールとアルミン酸ナトリウムとの錯塩形成反応において加熱や長時間の反応が必要ないことが理解できる。なお、このことは、令和5年1月23日付けの意見書にて、特許権者が主張している通りである。
むしろ、甲第3号証および甲第4号証の開示によれば、3価のアルミニウム化合物の錯体形成反応は、25℃で1分以内に完結するものであるため、ソルビトールとアルミン酸ナトリウムとの錯塩形成反応は即座に起こるものであることは明らかである。
そして、甲1発明の実施例4においては、「アルミン酸ナトリウム0.5重量部とソルビトール1.5重量部を水溶させた混合水溶液」を別途作製した後、別途作製した「アルミン酸ナトリウム0.5重量部とソルビトール1.5重量部を水溶させた混合水溶液」を、pH8.0のカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1-1)のラテックスに加えているものであることから、甲1発明の実施例4においても、「アルミン酸ナトリウム0.5重量部とソルビトール1.5重量部を水溶させた混合水溶液」を作製した時点で、「ソルビトール」と「アルミン酸ナトリウム」との間で錯塩が形成されているのは明らかであり、このことは、甲第3号証および甲第4号証にも開示されている通りである。」

しかしながら、本件明細書における、「ソルビトール水溶液にアルミン酸ナトリウムを常温で撹拌しながら添加し、2時間放置すること」の記載からは、2時間の放置が必要であると理解するのが妥当であり、「加熱や長時間の反応が必要ない」と理解できるものではなく、また、申立人は、ソルビトールとアルミン酸ナトリウムの反応時間に関して、具体的な証拠を提示するものではない。

そして、甲1には、上記(イ)a(a)で述べたように、温度や混合時間等の条件について示されていないし、甲3、甲4を引用した主張も、上記(イ)a(c)で述べたように、アルミニウム(III)塩の錯体生成速度について一般論を提示するにすぎず、実際にソルビトールとアルミン酸ナトリウムとの反応速度について、そのまま適用できるものともいえない。

よって、申立人の上記主張は採用することができない。

(エ)甲1A発明との対比検討のまとめ

そうすると、本件発明1は、甲1A発明とはいえないし、上記相違点によって格別顕著な効果を奏する本件発明1は、甲1A発明及び甲2~6記載の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

イ 甲1B発明との対比検討

(ア)甲1B発明との対比検討

甲1B発明は、甲1A発明に対し、架橋されるラテックスとして、「カルボキシル基含有スチレン-ブタジエンゴム」ではなく、「カルボキシル基含有ニトリルゴム」を使用する点、及び、ソルビトールの配合量を1.5部に変更するとともに、グリコール酸ナトリウムを配合しない点の2点でのみで異なるものであるから、本件発明1と甲1A発明に行ったのと同様に対比すると、一致点及び相違点は、甲1A発明に対して検討したものと実質的に相違しない。

(イ)甲1B発明との対比検討のまとめ

そうすると、本件発明1は、甲1B発明とはいえないし、上記相違点によって顕著な効果を奏する本件発明1は、甲1B発明及び甲2~6記載の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(2)本件発明2~14について

本件発明1が、甲1A発明又は甲1B発明ではなく、また、甲1A発明又は甲1B発明、及び甲2~6記載の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのは上記(1)のとおりであるから、本件発明1の特定事項をすべて有し、更に限定する本件発明2~14についても同様であって、本件発明2~7、10、11,14は、甲1A発明又は甲1B発明ではなく、また、本件発明2~14は、甲1A発明又は甲1B発明、及び甲2~6記載の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 申立理由1及び2のまとめ

よって、申立理由1及び申立理由2には理由がない。

第5 むすび

したがって、申立人の主張する特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし14に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に請求項1ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2023-700998

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