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特許異議申立

2022-701022

水中油型乳化日焼け止め化粧料

審判番号
2022-701022
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-039484
登録番号
7057066
請求日
2022年10月17日
審決日
2023年06月23日
公報発行日
2023年09月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社 資生堂
  • 【権利者代理人】内田 直人
  • 【異議申立人】山下 桂
審判長/審判官
  • 審判長 木村 敏康
  • 審判官 阪野 誠司
  • 審判官 関 美祝
分類
P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7057066号発明「水中油型乳化日焼け止め化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7057066号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第7057066号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7057066号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成29年3月2日に出願され、令和4年4月11日にその特許権の設定登録がされ、同年同月19日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~6に係る発明の特許に対し、同年10月17日に特許異議申立人 山下 桂(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て以後の手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年 1月30日付 取消理由通知 同年 4月 4日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 同月17日付 訂正請求があった旨の通知 同年 5月18日 意見書の提出(申立人) 第2 訂正の適否 1 請求の趣旨及び訂正の内容 令和5年4月4日に提出された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は、「特許第7057066号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1からなるものである。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1の「前記油性の紫外線吸収剤が油相に配合され、前記(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(a4)エチルヘキシルトリアゾン、及び(B)極性油の合計配合量が45質量%以下である」との記載を、「前記油性の紫外線吸収剤が油相に配合され、油溶性紫外線吸収剤の合計配合量が0.5~19.5質量%であり、前記(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(a4)エチルヘキシルトリアゾン、及び(B)極性油の合計配合量が45質量%以下である」に訂正する(下線は、訂正箇所を示す。)。 (請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~6についても同様に訂正する。) (2)一群の請求項について 訂正前の請求項2~6は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項1によって訂正される訂正前の請求項1に連動して訂正されるから、訂正前の請求項1~6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものであるので、本件訂正は一群の請求項について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載に「油溶性紫外線吸収剤の合計配合量が0.5~19.5質量%であり、」という発明特定事項を追加するものであり、訂正前の請求項1の「水中油型乳化化粧料」について、本件特許明細書の「(a2)、(a3)及び(a4)を含む油溶性紫外線吸収剤の合計配合量は、0.5~19.5質量%とするのが好ましく、より好ましくは1~15質量%である。」との記載(【0019】)に基づいて、油溶性紫外線吸収剤の合計配合量を限定するものである。 そうしてみれば、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項全体との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 なお、本件特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、本件訂正に関して、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正後の請求項1~6に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。また、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)。 【請求項1】 (A)(a1)スルホン酸基含有水溶性紫外線吸収剤、 並びに、 (a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、 (a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び、 (a4)エチルヘキシルトリアゾンを含有する油性の紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤、 (B)極性油、 (C)高級アルコール、及び、 (D)非イオン性界面活性剤を含み、 メトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンを含まず、 前記油性の紫外線吸収剤が油相に配合され、 油溶性紫外線吸収剤の合計配合量が0.5~19.5質量%であり、 前記(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(a4)エチルヘキシルトリアゾン、及び(B)極性油の合計配合量が45質量%以下であることを特徴とする水中油型乳化化粧料。 【請求項2】 前記(B)極性油の配合量の、(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び(a4)エチルヘキシルトリアゾンの合計配合量に対する比率[(B)/(a2+a3+a4)]が0.6以上である、請求項1に記載の乳化化粧料。 【請求項3】 (A)紫外線吸収剤が、(a1)フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び(a4)エチルヘキシルトリアゾンのみからなる、請求項1に記載の乳化化粧料。 【請求項4】 (B)極性油が、IOB=0.1~0.5のエステル油からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の乳化化粧料。 【請求項5】 (C)高級アルコールが、ステアリルアルコールとベヘニルアルコールとの組み合わせからなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の乳化化粧料。 【請求項6】 日焼け止め化粧料である、請求項1から5のいずれか一項に記載の乳化化粧料。 第4 特許異議申立理由及び取消理由について 1 特許異議申立理由の概要 申立人が、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~6に係る特許に対して申し立てていた特許異議の申立理由は、概略、以下の(1)~(3)のとおりであって、申立人は、特許異議申立書に添付して、証拠方法として、下記(4)の甲第1~15号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲15」という。)を提出した。 (1)申立理由1(新規性欠如) 本件訂正前の請求項1、2、4及び6に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1、2、4及び6に係る特許は、同法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号により、取り消すべきものである。 (2)申立理由2(進歩性欠如) ア 理由2-1 本件訂正前の請求項1、2、4及び6に係る発明は、甲1に記載された発明、甲1の記載及び本件特許出願時の周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、4及び6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号により、取り消されるべきものである。 イ 理由2-2 本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、甲1に記載された発明、甲1~14の記載及び本件特許出願時の周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号により、取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(サポート要件違反) 本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、以下の理由アにより、発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1~6に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであり、同法113条4号により、取り消されるべきものである。 (理由ア) 本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、(a1)~(a4)以外の紫外線吸収剤を含んでもよいところ、当該発明の解決しようとする課題のうち「乳化安定性及び使用感」は紫外線吸収剤の種類や配合量により大きく変動することは甲5、甲10及び甲15に示すとおりであり、紫外線吸収剤が(a1)~(a4)のみからなる水中油型乳化化粧料が実施例として示されていても、本件発明の全範囲において、上記発明の課題を解決できるかどうかは、本件特許明細書の記載及び出願時の技術常識を考慮しても不明である。特に、本件発明は、(a2)~(a4)以外の25℃において固体の難溶性の紫外線吸収剤を含むあらゆる水中油型乳化化粧料を包含し、そのようなものが上記発明の課題を解決できるかどうか不明である。 (4)甲号証 甲1:欧州特許出願公開第3093004号明細書(及びその翻訳文) 甲2:特開2007-31336号公報 甲3:特開2017-132723号公報(本願出願後に公開された文献) 甲4:特開2015-189762号公報 甲5:国際公開第2010/121759号(甲5の翻訳文として特表2012-524115号公報を添付) 甲6:特開2014-205644号公報 甲7:特開2014-240382号公報 甲8:特開2010-229067号公報 甲9:特開2007-320917号公報 甲10:国際公開第2007/122822号 甲11:特開2012-193138号公報 甲12:特開2015-124176号公報 甲13:化粧品原料カタログ、2019年5月改訂版発行、BASFジャパン株式会社(本願出願後に公開された文献) 甲14:AMISOFT(R)HS-11Pのパンフレット(合議体注:(R)は○にR)、2016年2月29日改訂版発行、Ajinomoto Co.(及びその抄訳) 甲15:特開2012-31125号公報 2 令和5年1月30日付け取消理由通知で通知した取消理由の概要 本件訂正前の請求項1、2及び4~6に係る発明について、令和5年1月30日付け取消理由通知で通知した取消理由1及び2は、それぞれ、上記1の特許異議の申立理由1(新規性欠如)及び申立理由2(進歩性欠如)を理由とするものであり、概略は、以下のとおりである。 (1)取消理由1(甲1に基づく新規性欠如) 本件特許の請求項1、2、4及び6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号により、取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1、2及び4~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号により、取り消されるべきものである。 (3)引用例等 甲1~15(上記1(4)と同じ) 第5 取消理由通知で通知した取消理由について 1 取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)について (1)甲1に記載された事項 甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審合議体による。)。 甲1a 「べたつきを抑えたオクトクリレンフリーの日焼け止め」(発明の名称) 甲1b 「特許請求の範囲 1. a)4-(tert.-ブチル)-4’-メトキシジベンゾイルメタン、 b)2,4,6-トリス-[アニリノ-(p-カルボ-2’-エチル-1’-ヘキシルオキシ)]-1,3,5-トリアジン(INCI:エチルヘキシルトリアゾン)、 c)2,4-ビス-{[4-(2-エチル-ヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(INCI:ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン)、および、 d)2-エチルヘキシル2-ヒドロキシ安息香酸(INCI:サリチル酸エチルヘキシル)と3,3,5-トリメチルシクロヘキシル2-ヒドロキシ安息香酸(INCI:ホモサレート)の化合物の群から選択される1つまたは複数のサリチル酸塩 からなるUVフィルタコンビネーションを含む、化粧用の配合剤。 2.前記配合剤が、3-(4-メチルベンジリデン)-カンファー、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(INCI:オキシベンソン)、およびエチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリラート(INCI:オクトクリレン)を含まず、すなわちこれらの内容物質フリーであることを特徴とする、請求項1に記載の化粧用の配合剤。 ・・・ 5.配合剤が2-フェニルベンゾイミダゾール-5-スルホン酸塩を含むことを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の化粧用の配合剤。 6.前記配合剤がO/Wエマルションの形態で存在することを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の化粧用の配合剤。」 甲1c 「[0005]化粧用の日焼け止め剤は、特にそのUVフィルタ含有物に基づき、ある程度の粘着性を多くの場合に有しており、このような粘着性は、特に海浜で使用された場合、塗り込まれた皮膚部分で砂の付着を生じることにつながる。・・・ [0006]したがって本発明の課題は、砂付着性が低滅された(防砂性の)日焼け止め剤を開発することにあった。特に、特別に砂付着性が低く、高い日焼け止め指数(SPF50およびこれ以上)を有する日焼け止め剤を開発することが意図された。 [0007]これに加えて化粧用の日焼け止め剤は、粘着性/砂付着性のほか、多くのUVフィルタが配合剤に特別に良く溶けるわけではないという問題も有する。・・・こうした問題を解決するために、過去においては、液体状のUV-B-フィルタであるオクトクリレンがUVフィルタや溶剤として利用されていた。 ・・・ [0009]しかし先行技術の欠点は、オクトクリレンの使用が、認可官庁による承認があるにもかかわらず完全に異論の余地がないわけではなく、いくつかの消費者雑誌(たとえばエコテスト)での評価では、製品の採点で「低評価」につながるという状況にある。・・・消費者のあいだにはこの種の内容物質を含む配合剤を回避したいという要望がある。 [0010]したがって本発明の課題は、先行技術の欠点を取り除き、UVフィルタが安定的に溶けて4-(tert.-ブチル)-4’-メトキシジベンゾイルメタンの光化学的な分解が抑制される、日焼け止め指数の高い砂のつかない日焼け止め剤を開発することにあった。理想的には、オクトクリレンが溶剤や安定剤として使用されることなく、課題が解決されるのがよい。」 甲1d 「[0012]このとき本発明に基づく配合剤により、すでに配合剤の20重量%よりも少ないUVフィルタの総量で、50よりも大きい/これに等しい日焼け止め指数を実現できるという知見も、当業者にとって容易に推考可能ではなかった。 ・・・ [0014]本発明によると、配合剤におけるサリチル酸塩d)の総量が、配合剤の総重量に対して3から15重量%の量であると好ましい。 ・・・ [0016]本発明によると、本発明による配合剤が4-(tert.-ブチル)-4’-メトキシジベンゾイルメタンを配合剤の総重量に対して3から5重量%の量で含んでいると好ましい。 [0017]本発明によると、本発明による配合剤が2,4,6-トリス-[アニリノ-(p-カルボ-2’-エチル-1’-ヘキシルオキシ)]-1,3,5-トリアジン(INCI:エチルヘキシルトリアゾン)を配合剤の総重量に対して2から5重量%の量で含んでいると好ましい。 [0018]本発明によると、本発明による配合剤が2,4-ビス-{[4-(2-エチル-ヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(INCI:ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン)を配合剤の総重量に対して2から5重量%の量で含んでいると好ましい。 ・・・ [0022]配合物がこれら両方のサリチル酸塩を含んでいるとき、本発明によるとそれぞれ配合剤の総重量に対して、2-エチルヘキシル2-ヒドロキシ安息香酸(INCI:サリチル酸エチルヘキシル)を2から5重量%の濃度で使用し、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル2-ヒドロキシ安息香酸(INCI:ホモサレート)を2から10重量%の濃度で使用するのが好ましい。 ・・・ [0027]本発明によると、本発明による配合剤がエマルションまたは分散液の形態で、好ましくはエマルションの形態で、特別に好ましくはO/Wエマルションの形態で、存在していると好ましい。 [0028]本発明による配合剤がO/Wエマルションの形態で存在する場合、本発明によるとこの配合剤は、クエン酸ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル(自己乳化型)、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ポリグリセリル-3-ジステアリン酸メチルグリコース、セテアリル硫酸ナトリウム、セチルリン酸カリウム、ポリグリセリル-10ステアリン酸、ステアロイルグルタミン酸ナトリウムの化合物の群から選択される1つまたは複数のO/W乳化剤を有することを特徴とするのが好ましい。 ・・・ [0039]本発明による配合剤の水相は通常の化粧用の補助物質を含むことができるのが好ましく、これはたとえばアルコール、特にC数の少ないアルコール、好ましくはエタノールおよび/またはイソプロパノールまたはC数の少ないポリオールならびにこれらのエーテル、好ましくはプロピレングリコール、グリセリン、電解質、セルフタナー、ならびに特に1つまたは複数の増粘剤であり、これは好ましくは二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、多糖ないしその誘導体、たとえばヒアルロン酸、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの群から選択することができ、特別に好ましくはポリアクリレートの群から選択することができ、好ましくはいわゆるカーボポールの群に属するポリアクリレートであり、たとえばタイプ980、981、1382、2984、5984のそれぞれ単独での、または組み合せでの、カーボポールである。本発明に基づくさらに別の好ましい増粘剤は、INCI名称アクリレーツ/C10-30アクリル酸アルキルクロスポリマー(たとえばNOVEON社のPemulen TR 1、Pemulen TR 2、Carbopol 1328)ならびAristoflex AVC(INCI:アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VPコポリマー)を含む増粘剤である。 [0040]このとき本発明によると、配合剤がキサンタンガム、アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋ポリマー、および/またはビニルピロリドン/へキサデセン-コポリマーを含んでいると好ましい。」 甲1e 「比較実験 [0052]下記の製剤を調製し、次の手法を用いて砂付着性を決定した。 [図:0001401665000001.jpg] ・・・ [0057]・・・すべての量の記載、割合、およびパーセントの割合は、別段の断りがない限り、配合量の重量および総量ないし総重量に対するものである。・・・」 (2)甲1に記載された発明 ア 甲1には、べたつきを抑えたオクトクリレンフリーの化粧用の日焼け止め剤について記載されており(甲1a~甲1c)、実際に、砂付着性を判定する実験において、オクトクリレンを含まず、甲1の特許請求の範囲(甲1b)で特定される成分を含む製剤が砂付着性を低減することが示されている(甲1eの表の「Nanocto:278m」)。 イ 甲1eの表に示された製剤「Nanocto:278m」は、(ア)水相を構成する成分が60重量%程度含まれていること(「水」46.75+「水+三ナトリウムEDTA」1.00+「グリセリン+水」7.50+「水+水酸化ナトリウム」0.40+「変性アルコール+水」4.00=59.65)、(イ)甲1において、水相の増粘剤として例示されている(甲1dの[0039]~[0040])、「キサンタンガム」及び「アクリレーツ/C10-30アクリル酸アルキルクロスポリマー」が含まれていること、並びに(ウ)甲1において、O/W乳化剤として例示されている(甲1dの[0028])、「ステアリン酸グリセリル」及び「ステアロイルグルタミン酸ナトリウム」が含まれていることから、当該製剤「Nanocto:278m」は、O/Wエマルションの形態で存在していると認められる。 ウ そうしてみると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(下線は、本件発明との対比に際しての便宜のために付した。)。 「以下の成分を含む、O/Wエマルションの形態で存在している、化粧用の日焼け止め剤(単位は、重量%)。 ステアリル酸グリセリル 0.50 水 46.75 アジピン酸ジブチル 3.00 水+三ナトリウムEDTA 1.00 フェノキシエタノール 0.50 ブチルメトキシジベンゾイルメタン 4.00 フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸 1.00 VP/ヘキサデセンコポリマー 0.50 グリセリン+水 7.50 水+水酸化ナトリウム 0.40 変性アルコール+水 4.00 サリチル酸エチルヘキシル 4.00 キサンタンガム 0.40 エチルヘキシルトリアゾン 2.00 ジメチルシリル化シリカ 1.00 ステアリルアルコール 1.00 アクリレーツ/C10-30アクリル酸アルキルクロスポリマー 0.10 エチルヘキシルグリセリン 0.15 C18-38ヒドロキシステアロイルステアリン酸アルキル 1.00 ホモサレート 4.00 ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 4.00 ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン 1.50 ジカプリル酸/ジカプリン酸ブチレングリコール 4.00 ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2.00 ステアロイルグルタミン酸ナトリウム 0.30 1,2-ヘキサンジオール 0.40 C12-15安息香酸アルキル 5.00 合計 100.00 」 (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明を対比する。 (ア)「(A)紫外線吸収剤」について 甲1発明における「フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸」は、本件特許明細書において、本件発明1の「(a1)スルホン酸基含有水溶性紫外線吸収剤」として例示され(【0013】)、実施例にも用いられている化合物である(【0044】及び【0045】)。それゆえ、甲1発明における「フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸」は、本件発明1の「(a1)スルホン酸基含有水溶性紫外線吸収剤」に相当する。 また、甲1発明に含まれる「ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」、「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」及び「エチルヘキシルトリアゾン」は、それぞれ、本件発明1の「(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」、「(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」及び「(a4)エチルヘキシルトリアゾン」であるから、甲1発明は、本件発明1の「(a1)・・・水溶性紫外線吸収剤、並びに、(a2)・・・、(a3)・・・、及び、(a4)・・・を含有する油性の紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤」を含むものといえる。 (イ)「(B)極性油」について 甲1発明の「C12-15安息香酸アルキル」は、甲2には、「極性油分」であることが記載されているから(【0010】)、本件発明1の「(B)極性油」に相当する。 (ウ)「(C)高級アルコール」について 甲1発明の「ステアリルアルコール」は、本件特許明細書において、「(C)高級アルコール」として例示され(【0025】)、実施例にも用いられている化合物であるから(【0044】及び【0045】)、本件発明1の「(C)高級アルコール」に相当する。 (エ)「(D)非イオン性界面活性剤」について 甲1発明の「ステアリン酸グリセリル」は、甲12には、「非イオン性界面活性剤」であることが記載されているから(【0060】)、本件発明1の「(D)非イオン性界面活性剤」に相当する。 (オ)甲1発明は、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンを含んでいない。 また、甲1発明において、「ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」、「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」及び「エチルヘキシルトリアゾン」と「C12-15安息香酸アルキル」の合計量は、13.0重量%(=4.00+2.00+2.00+5.00)であり、本件発明1で規定する「(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(a4)エチルヘキシルトリアゾン、及び(B)極性油の合計配合量が45質量%以下である」の範囲内である(なお、重量%と質量%とが同じ比率を意味していることは、本件特許出願時の技術常識である。)。 (カ)一方、甲1発明に含まれる「油浴性紫外線吸収剤」といえる各成分の配合量は、以下のとおりである。 「ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」:4.00重量% 「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」:2.00重量% 「エチルヘキシルトリアゾン」:2.00重量% 「ブチルメトキシジベンゾイルメタン」:4.00重量% 「サリチル酸エチルヘキシル」:4.00重量% 「ホモサレート」:4.00重量% 「ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン」:1.50重量% そうしてみれば、甲1発明の「油浴性紫外線吸収剤の合計配合量」は、本件発明1の(a2)~(a4)成分に相当する「ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」、「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」及び「エチルヘキシルトリアゾン」の配合量(8.0重量%(=4.00+2.00+2.00)である。)に、「ブチルメトキシジベンゾイルメタン」(4.00重量%)、「サリチル酸エチルヘキシル」(4.00重量%)、「ホモサレート」(4.00重量%)及び「ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン」(1.50重量%)を加えた、21.5重量%(=8.00+4.00+4.00+4.00+1.50)である。この値は、本件発明1で特定した範囲(0.5~19.5質量%)から外れるから、「油浴性紫外線吸収剤の合計配合量」は、両発明の実質的な相違点となる。 (キ)そして、本件発明1は、「日焼け止め効果を有する通常の化粧料や医薬部外品に配合可能な他の任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる」(本件特許明細書の【0031】)から、甲1発明が、上記(ア)~(エ)に挙げた成分以外の成分を含むことは、両発明の相違点とはならない。 また、甲1発明は、「O/Wエマルションの形態で存在している、化粧用の日焼け止め剤」であり、本件発明1の「水中油型乳化化粧料」に相当する。 (ク)以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「(A)(a1)スルホン酸基含有水溶性紫外線吸収剤、並びに、 (a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、 (a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び、 (a4)エチルヘキシルトリアゾンを含有する油性の紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤、 (B)極性油、 (C)高級アルコール、及び、 (D)非イオン性界面活性剤を含み、 メトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンを含まず、 前記(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(a4)エチルヘキシルトリアゾン、及び(B)極性油の合計配合量が45質量%以下である水中油型乳化化粧料。」である点 <相違点1> 本件発明1が「前記油性の紫外線吸収剤が油相に配合され」ることが特定されるのに対して、甲1発明は、油性の紫外線吸収剤が油相に配合されるかどうかが明らかでない点 <相違点2> 「油溶性紫外線吸収剤の合計配合量」について、本件発明1が「0.5~19.5質量%」であるのに対して、甲1発明は、21.50質量%である点 イ 相違点2は、実質的な相違点であり、相違点1を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明とはいえない。 (4)本件発明2、4及び6について 本件発明2、4及び6は、それぞれ、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、4及び6に係る発明であり、本件発明1を更に技術的に限定して特定したものであるから、甲1発明に対して、本件発明1と同じ相違点を有する。 それゆえ、本件発明1と同様の理由により、本件発明2、4及び6は、甲1に記載された発明とはいえない。 (5)小括 以上のとおり、本件発明1、2、4及び6は、甲1に記載された発明ではないから、特許法29条1項3号に該当するとはいえず、取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)は、理由がない。 2 取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明を対比すると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、上記1(3)ア(ク)のとおりである。 イ 事案に鑑み、まず相違点2について検討する。 甲1には、「配合剤の20重量%よりも少ないUVフィルタの総量で、50よりも大きい/これに等しい日焼け止め指数を実現できる」と記載されている(甲1dの[0012])。また、甲1発明に含まれる「油溶性紫外線吸収剤」といえる各成分の好ましい配合量について、以下のように記載されている(甲1dの[0014]~[0022])。 「ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」:2~5重量% 「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」:記載なし 「エチルヘキシルトリアゾン」:2~5重量% 「ブチルメトキシジベンゾイルメタン」:3~5重量% 「サリチル酸エチルヘキシル」:2~5重量% 「ホモサレート」:2~10重量% 「ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン」:記載なし 上記記載によれば、甲1には、甲1発明において、UVフィルタの総量を20重量%より少ない量にする動機付けとなり得る記載があり、また、各成分の配合量を好ましい配合量の範囲内で変更することができることが記載されているといえる。 しかしながら、甲1をみても、甲1発明において、油溶性紫外線吸収剤の合計量の21.5重量%を20重量%よりも少ない量にする際に、本件発明1の必須成分に相当する成分(上記成分のうち、上から三番目までの成分)を含み、かつ全体の配合量を本件発明1で特定する「0.5~19.5質量%」とすることの動機付けとなる記載は見当たらない。 むしろ、甲1に記載の「べたつきを抑えたオクトクリレンフリーの化粧用の日焼け止め剤」として必須の成分(甲1bの請求項1)を残し、必須とされていない成分、例えば、「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」(本件発明1の(a3)成分)を含まないようにすることが自然であるから、甲1発明の油浴性紫外線吸収剤の合計配合量を減らした上で、本件発明1とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 ウ また、本件発明1の効果について、本件特許明細書の実施例には、本件発明1で特定する「油浴性紫外線吸収剤の合計配合量が0.5~19.5質量%」の範囲内の3~13質量%の乳化化粧料が示され、乳化安定性、使用感及び塗布後のつやが優れていることが示されており、この効果は、甲1~14をみても、当業者が予測し得ない有利な効果といえる。 エ これにつき、申立人は、令和5年5月18日付け意見書において、上述の甲1の[0012]の記載を指摘し、「甲1発明において、所望の高い日焼け止め指数を実現するにあたり、UVフィルタの総量を20重量%よりも少ない量とし、その結果、油浴性紫外線吸収剤の合計配合量を訂正発明1の範囲とすることは当業者が適宜なし得ることに過ぎない。実際に、甲1の実施例1~5には、油浴性紫外線吸収剤の合計配合量が0.5~19.5質量%の範囲にある組成物も開示されて(いる)」と主張する。 しかしながら、上述のように、甲1発明において、本件発明1で必須とする成分を含んだ上で、UVフィルタの総量を20重量%より少なくすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。また、甲1の実施例1~5は、本件発明1の(a3)成分が含まれていないものであり、甲1発明において、単にUVフィルタの総量を20重量%より少なくしようとしても、本件発明1にはならないということの証左となるものである。 よって、申立人の主張は受け入れられない。 オ 以上のとおり、相違点2は当業者が容易に想到し得たとはいえないから、相違点1を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1~14の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえない。 (2)本件発明2及び4~6について 本件発明2及び4~6は、それぞれ、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2及び4~6に係る発明であり、本件発明1を更に技術的に限定して特定したものであるから、甲1発明に対して、本件発明1と同じ相違点を有する。 それゆえ、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び4~6は、甲1に記載された発明及び甲1~14の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明1、2及び4~6は、特許法29条2項の規定に違反してされたものとはいえないから、取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)は理由がない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立理由のうち、取消理由通知に採用しなかった理由は、以下のとおりである。 1 申立理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)のうち本件発明3に係るもの 2 申立理由3(サポート要件違反) 以下に、当審合議体の判断を述べる。 1 申立理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)のうち本件発明3に係るものについて (1)本件発明3と甲1発明とを対比すると、本件発明3と甲1発明とは、上記第5の1(3)ア(ク)で述べたとおりの一致点及び相違点を有し、さらに、以下の相違点を有する。 <相違点3> 本件発明3が「(A)紫外線吸収剤が、(a1)フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び(a4)エチルヘキシルトリアゾンのみからなる」のに対して、甲1発明は、さらに、紫外線吸収剤として、「ブチルメトキシベンゾイルメタン」、「サリチル酸エチルヘキシル」、「ホモサレート」などを含む点 (2)上記相違点3について検討すると、甲1発明に含まれている「ブチルメトキシベンゾイルメタン」、「サリチル酸エチルヘキシル」及び「ホモサレート」の各成分は、甲1に記載の「べたつきを抑えたオクトクリレンフリーの化粧用の日焼け止め剤」として必須の成分であり(甲1bの請求項1)、これらの成分を除くことは、「砂付着性が低滅された(防砂性の)日焼け止め剤」を提供するという甲1発明の課題(甲1c)を解決できなくなくなるため、阻害要因がある。 それゆえ、当業者は、甲1発明から、これらの成分を除くことは容易に想到し得ない。 (3)さらに、相違点2についても、上記第5の2で述べたように、当業者が容易に想到し得ないから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1に記載された発明及び甲1~14の記載に基いて、当業者が容易に発明することができたものといえない。 (4)よって、本件発明3に係る申立理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)は、理由がない。 2 申立理由3(サポート要件違反)について (1)特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)本件特許請求の範囲及び本件特許明細書には、以下の記載がある(下線は、当審合議体による。)。 a 特許請求の範囲の記載 上記第3のとおり。 b 技術分野、背景技術、及び発明が解決しようとする課題について 「【技術分野】 【0001】 本発明は、水中油型乳化化粧料に関する。より詳細には、従来汎用されていた液状紫外線吸収剤であるメトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンを含まず、なおかつ油分量が少なくても乳化安定性に優れ、高い紫外線防御効果を示す水中油型乳化化粧料に関する。 【背景技術】 【0002】 紫外線防御効果を示す水中油型乳化化粧料、例えば日焼け止め化粧料においては、従来から、UVA領域からUVB領域に亘る紫外線を有効に遮蔽するため、油性の紫外線吸収剤及び粉末状の紫外線散乱剤を適宜組み合わせて配合されていた。しかし、油性の紫外線吸収剤を多く配合するとべたついた感触を与え、紫外線散乱剤の配合量が多いと粉っぽい使用感となり皮膚が不自然に白くなる等の問題があった。 【0003】 特許文献1には、特定の4種類の紫外線吸収剤を配合することにより、紫外線散乱剤を配合しない又は配合量を抑制しても高いSPF(Sun Protection Factor)が達成できたことが記載されている。 【0004】 一方、紫外線吸収剤として汎用されているオクチルメトキシシンナメート(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル)やオクトクリレンに刺激性があることが指摘され、それらに代えて特定の紫外線散乱剤(ルチル型結晶酸化チタン等)を配合して紫外線防御効果を確保する日焼け止め化粧料も提案されている(特許文献2)。 【0005】 しかしながら、前記の液状紫外線吸収剤は、それら自身が紫外線吸収能を持つのみならず、共配合される固形又は難溶性の紫外線吸収剤の良溶媒としても作用している(例えば、特許文献3参照)。従って、これらの液状紫外線吸収剤を配合しない場合は、他の紫外線吸収剤の析出や不安定化を防止するために、溶媒となる極性油を増量せざるを得ず、その結果としてべたつきを生じるといった問題があった。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 よって本発明における課題は、液状紫外線吸収剤であるメトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンを配合せず、なおかつ極性油の配合量を抑制しても、高い紫外線防御能を発揮するのみならず、乳化安定性及び使用感に優れた水中油型乳化化粧料を提供することである。」 c 課題を解決するための手段、及び効果について 「【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、紫外線吸収剤として特定の水溶性吸収剤と油性固形吸収剤とを組み合わせて配合し、さらに乳化系にαゲル構造を導入することによって、高い紫外線防御能を示しながら安定性及び使用性に優れた水中油型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0009】 すなわち、本発明は、 (A)(a1)スルホン酸基含有水溶性紫外線吸収剤、 (a2)ビスエチル ヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、 (a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び、 (a4)エチルヘキシルトリアゾンを含む紫外線吸収剤、 (B)極性油、 (C)高級アルコール、及び、 (D)非イオン性界面活性剤を含み、 前記(a2)ビスエチル ヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(a4)エチルヘキシルトリアゾン、及び(B)極性油の合計配合量が45質量%以下であることを特徴とする水中油型乳化化粧料を提供する。 【発明の効果】 【0010】 本発明の水中油型乳化化粧料は、液状紫外線吸収剤であるメトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンを配合せず、なおかつ極性油の配合量を抑制しても、乳化安定性に優れ、高い紫外線防御効果を示すとともに、刺激が無く使用感触が良好である。」 d 発明を実施するための形態について 「【0011】 本発明の水中油型乳化化粧料(以下、単に「乳化化粧料」ともいう)は、紫外線吸収剤(A成分)を含有する。本発明における紫外線吸収剤は、スルホン酸基含有水溶性紫外線吸収剤(a1成分)、ビスエチル ヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(a2成分)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(a3成分)、及びエチルヘキシルトリアゾン(a4成分)を必須成分として含む。 ・・・ 【0019】 本発明の乳化化粧料における紫外線吸収剤は、上記(a1)~(a4)の紫外線吸収剤のみから構成されていてもよいが、それらに加えて、水溶性又は油溶性の他の紫外線吸収剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合してもよい。他の紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体等を挙げることができる。ただし、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンは配合しない。 なお、(a2)、(a3)及び(a4)を含む油溶性紫外線吸収剤の合計配合量は、0.5~19.5質量%とするのが好ましく、より好ましくは1~15質量%である。」 e 実施例について 「【実施例】 【0038】 以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される組成物全量に対する質量%で示す。 【0039】 以下の表1(乳液)及び表2(クリーム)に掲げた処方で水中油型乳化日焼け止め化粧料を調製した。各例の日焼け止め化粧料(試料)について、以下の項目(1)~(4)について、下記の基準に従って評価した。 【0040】 (1)乳化安定性 ・・・ 【0041】 (2)紫外線防御能(吸光度) ・・・ 【0042】 (3)使用感 専門パネルによる実使用試験を実施し、みずみずしさ及びべたつきの無さの観点から使用感を以下の基準で評価した。 ・・・ 【0043】 (4)塗布後のつや 専門パネルによる実使用試験を実施し、塗布後の肌のつやを以下の基準で評価した。 ・・・ 【0044】 【表1】 [図:0001401665000002.jpg] 【0045】 【表2】 [図:0001401665000003.jpg] 【0046】 表1及び表2に示した結果から明らかなように、本願特許請求の範囲の請求項1から6に記載した要件を全て満たす実施例1~3及び5~8は、乳液あるいはクリームのいずれであっても安定性に優れ、顕著な紫外線防御能を発揮するとともに、使用感も良好で、塗布後の肌につやを与える効果に優れていた。但し、(B)/(a2+a3+a4)の比率が0.6未満であり、極性油の配合量が6質量%未満である実施例4は、短期間であれば安定な乳化状態を維持して実用上問題無いが低温では経時的に析出を生じることがあり、肌へのつや付与効果も普通レベルで問題は無いが顕著なつや向上はみられなかった。 【0047】 一方、油性成分(a2+a3+a4+B)の配合量が45質量%を超える比較例1は、乳化はできるものの、高温経時で不安定化した。また、αゲルを形成する成分(高級アルコール及び非イオン性界面活性剤)を含まず、水中油型乳化化粧料に汎用されている高分子乳化剤((アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー)で乳化を試みた例(比較例2及び3)では、室温経時で分離し安定な乳化物を得ることができなかった。」 (3)本件発明の課題は、本件特許明細書の記載(記載b)から、「液状紫外線吸収剤であるメトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンを配合せず、なおかつ極性油の配合量を抑制しても、高い紫外線防御能を発揮するのみならず、乳化安定性及び使用感に優れた水中油型乳化化粧料を提供すること」と認められる。 (4)上記課題を解決するために、本件発明は、「紫外線吸収剤として特定の水溶性吸収剤と油性固形吸収剤とを組み合わせて配合し、さらに乳化系にαゲル構造を導入することによって、高い紫外線防御能を示しながら安定性及び使用性に優れた水中油型乳化化粧料が得られること」を見出したことによって完成したものである(記載c)。そして、実施例において、本件発明で特定した要件を全て満たす実施例が「乳液あるいはクリームのいずれであっても安定性に優れ、顕著な紫外線防御能を発揮するとともに、使用感も良好で、塗布後の肌につやを与える効果に優れていた」ことが示されている(記載e)。 そうしてみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には、上記(3)の課題を解決するための手段が記載され、実際に、実施例で高い紫外線防御能を示しながら安定性及び使用感に優れた水中油型乳化化粧料が得られることも示されているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者が本件発明の課題を解決できることを認識できるといえ、本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているといえる。 (5)申立人は、上記第4の1(3)の理由アを根拠に、本件発明はサポート要件を満たさないと主張する。 理由アに関し、本件特許明細書には、「本発明の乳化化粧料における紫外線吸収剤は、上記(a1)~(a4)の紫外線吸収剤のみから構成されていてもよいが、それらに加えて、水溶性又は油溶性の他の紫外線吸収剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合してもよい。」と記載されている(記載dの【0019】。下線は当審合議体による。)。ここで、「本発明の効果」について、本件特許明細書には、「本発明の水中油型乳化化粧料は、液状紫外線吸収剤であるメトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンを配合せず、なおかつ極性油の配合量を抑制しても、乳化安定性に優れ、高い紫外線防御効果を示すとともに、刺激が無く使用感触が良好である。」と記載されているところ(記載cの【0010】)、本件発明は、(a1)~(a4)の四成分を必須成分として含むことにより、これらを含まない場合に比べて、極性油の低配合量の条件下でも乳化安定性や紫外線防御効果に優れ、本件発明の課題を解決できるとされるものであり、本件明細書には、当該必須成分を含むことで、本件発明の課題が解決できることが実施例によって裏付けられている(記載e)。してみれば、特許請求の範囲に発明特定事項として記載されていない成分が配合された場合であっても、(a1)~(a4)の必須成分を含んでさえいれば、当該必須成分を含んでいない場合に比べて、乳化安定性などの点で優れた効果が得られると当業者は認識できるから、発明特定事項とされていない成分の種類や配合量が特定されていないことを根拠に、本件発明が課題を解決できると認識できる範囲を超えているとすることに合理性があるとはいえない。 それゆえ、本件発明の課題の「乳化安定性及び使用感」を達成するための必須成分とされていない事項(その他の紫外線吸収剤の配合量など)までをも特定しなければ、本件発明の課題を解決できないと当業者は認識しない。 よって、理由アに基づく申立人の主張は受け入れられない。 (6)以上のとおり、申立理由3(サポート要件違反)は、理由がない。 第7 むすび 以上のとおり、令和5年1月30日付け取消理由通知で通知した取消理由及び特許異議申立理由によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 そして、ほかに本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701022

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