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特許異議申立

2023-700863

印刷用塗工紙

審判番号
2023-700863
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-049339
登録番号
7232787
請求日
2023年08月21日
審決日
2023年12月06日
公報発行日
2024年01月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】三菱製紙株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人 津国
  • 【異議申立人】八木 峰子
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 直欣
  • 審判官 西本 浩司
  • 審判官 ▲高▼橋 杏子
分類
P1651.113-Y (D21H) / P1651.121-Y (D21H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7232787号発明「印刷用塗工紙」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7232787号の請求項1に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7232787号の請求項1に係る特許についての出願は、令和2年3月19日の出願であって、令和5年2月22日にその特許権の設定登録がされ、令和5年3月3日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1に係る特許に対し、令和5年8月21日に特許異議申立人八木峰子(以下「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の両面に白色顔料及びバインダーを含有する塗工層とを有し、前記白色顔料が炭酸カルシウム及びカオリンを少なくとも含み、個々の塗工層においてカオリンの含有量が前記塗工層中の白色顔料100質量部に対して10質量部以上50質量部以下であり、前記バインダーが尿素燐酸エステル化澱粉及びスチレンブタジエンアクリロニトリル共重合体を少なくとも含み、ISO5636-6:2015に準じて求められる透気度(秒)を坪量で除した比透気度が36(秒/坪量)以上65(秒/坪量)以下であるマットタイプの印刷用塗工紙。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として、以下の甲第1号証~甲第8号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の理由1~2を申立てている。なお、本件特許の願書に添付した明細書を、「本件明細書」という。 1 理由1(甲1に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、又は、本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が甲1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 理由2(甲7に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、又は、本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前に当業者が甲7に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 証拠方法 甲1:特開2015-209614号公報 甲2:「PRODUCTS INFORMATION」,日本食品化工株式会社,2017年9月,p.2 甲3:特開2006-257576号公報 甲4:紙パルプ技術協会,「紙パルプ製造技術シリーズ○8 コーティング」(「○8」は、○の中に8が記載されていることを意味する),初版,紙パルプ技術協会,1993年8月17日,p.95~97 甲5:室井宗一,「高分子ラテックスの応用 紙塗工」,第1版,(株)高分子刊行会,1986年9月20日,p.54~55 甲6:高橋浩司,“総説 日本からの提案による初のISO紙パルプ試験規格-透気度試験方法/王研法-”,日本印刷学会誌,一般社団法人 日本印刷学会,平成27年6月30日,第52巻,第3号,p.245~249 甲7:特開2004-143624号公報 甲8:特開2014-109079号公報 第4 各甲号証 1 甲1に記載された発明、甲1に記載された事項 甲1の、【請求項1】、【0009】、【0039】~【0040】、【0045】から、印刷用塗工紙は原紙の両面に塗工層が設けられているといえる。 甲1の、【0031】の「白紙光沢、平滑度の観点からは粒子径2μm以下の質量累積率が90%以上の湿式重質炭酸カルシウムを使用することが好ましい。」との記載、また、【0039】~【0040】から、塗工層用塗料は、湿式重質炭酸カルシウム(商品名:カービタル90/イメリス社製)及び微細カオリンクレー(アメリカ産、平均粒子径0.4μm)を含む白色顔料、並びに、燐酸エステル化澱粉(商品名:MS#4600/日本食品化工社製)及びスチレン・ブタジエンラテックス(商品名:S2788K/JSR社製))を含むバインダーを含有しているといえる。 そして、【請求項1】、【0001】、【0014】、【0017】、【0019】、【0023】、【0031】~【0034】、【0037】~【0040】、【0045】、【0060】~【0061】【表1】の記載事項を総合し、特に、【0039】、【0045】、【0060】~【0061】【表1】に記された(実施例6)に着目すれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「フリーネス300mlCSF(カナダ標準ろ水度)に叩解した広葉樹晒しクラフトパルプ90部、フリーネス550mlCSFに叩解した針葉樹晒しクラフトパルプ10部を水中に分散してフリーネス325mlCSFのパルプスラリーを得て、当該パルプスラリーに硫酸バンド0.5部、紙力向上剤として両性ポリアクリルアマイド(商品名:ハーマイドEX234(共重合カチオンリッチ型)/ハリマ化成社製)0.3部、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP121/奥多摩工業社製)、カチオン性歩留り向上剤(商品名:ハイホールダー220/栗田工業社製)0.015部をこの順で添加し、ギャップフォーマーにて坪量45g/m2の湿紙を抄速1400m/分にて抄紙し、引続き、オンマシンで乾燥後、フィルムメタリングサイズプレス装置にて燐酸エステル化澱粉(MS#4600 日本食品化工社製)2%濃度のサイズプレス液を湿紙の両面あたり2g/m2塗布し、乾燥して原紙を得て、その後、抄紙機と一体となっているブレード塗工機によって、下記のとおり調整された塗工層用塗料を原紙の片面あたり絶乾塗工量で10g/m2ずつ原紙の両面に塗工し、乾燥後、製造ラインと一体となったソフトカレンダー4基を用いて温度180℃、線圧250kN/mで処理した、印刷用塗工紙。 <塗工層用塗料の調整> 微細カオリンクレー(アメリカ産、平均粒子径0.4μm)10部、湿式重質炭酸カルシウム(商品名:カービタル90/イメリス社製)90部を水中に分散して顔料スラリーとし、該顔料スラリーに燐酸エステル化澱粉(商品名:MS#4600/日本食品化工社製)1部、スチレン・ブタジエンラテックス(商品名:S2788K/JSR社製)6部、潤滑剤(商品名:DEF783TF/日新化学研究所社製)0.5部、印刷適性向上剤(商品名:PA6502/星光PMC社製)0.2部を添加して混合し、水で希釈して固形分濃度が68.0質量%の塗工層用塗料。」 また、甲1の【0014】、【0037】の記載事項を総合すると、甲1には以下の事項(以下「甲1記載事項」という。)が記載されている。 「オフセット印刷用塗工紙の透気抵抗度が3000~7500秒であること。」 2 甲2に記載された事項 甲2の、「工業用でん粉」の表における「コーティング」欄に「MS#4600」は「尿素リン酸エステル化でん粉」であることが記載されており、甲1の「商品名:MS#4600/日本食品化工社製)から、甲2には以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。 「日本食品化工社製の製品名称:MS#4600は、尿素リン酸エステル化でん粉であること。」 3 甲3に記載された事項 甲3の【請求項1】、【請求項2】、【0001】、【0018】~【0019】、【0024】~【0027】の記載事項を総合すると、甲3には以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されている。 「塗工層に接着剤としてスチレン/ブタジエン/アクリロ系の共重合体ラテックスを使用すること。」 4 甲4に記載された事項 甲4の第95頁の表3.33の「アクリロニトリル」についての記載、第97頁「イ) ポリマー組成の影響」の欄の記載事項を総合すると、甲4には以下の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されている。 「塗工層に、接着力の向上のために、軟質モノマーのブタジエンと硬質モノマーのスチレン,メチルメタクリレート,アクリルニトリルを主モノマーとした塗工紙用SB系ラテックスを使用すること。」 5 甲5に記載された事項 甲5の第54頁「1.2 SB系ラテックス」の記載事項から、甲5には以下の事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されている。 「紙塗工バインダーとして、スチレン(St)とブタジエン(BD)を主構成モノマーとし、アクリルニトリル(AN)をコモノマーとして組み合わせたSBラテックスを使用すること。」 6 甲6に記載された事項 甲6の249頁左欄の図5には、王研法とガーレー試験機法との測定値の関係が示されており、第245頁左欄、246頁左欄、249頁左欄等の記載事項を総合すると、甲6には以下の事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されている。 「ISO5636-6:2015による透気度試験法である王研法の測定値と、JIS P 8117:2009による透気度試験方法であるガーレー試験機法の測定値に一定の相関性がみられること。」 7 甲7に記載された発明 甲7の、【請求項1】、【0030】~【0033】から、実施例2において、印刷用塗工紙は原紙の両面に顔料塗工層が設けられているといえる。 甲7の【0030】~【0033】から、塗工層は、炭酸カルシウム(湿式重質炭酸カルシウム(商品名:カービタル90/イメリス社製))及びカオリン(カオリン(商品名UW90:エンゲルハード社製))を含む白色顔料、並びに、尿素燐酸エステル化澱粉(商品名MS#4600:日本食品化工製))及びスチレンブタジエンアクリロニトリル共重合体(SBRラテクッスA~G(旭化成工業合成品)を含むバインダーを含有しているといえる。 甲7の【請求項1】、【請求項2】、【0001】、【0012】、【0021】~【0022】、【0027】、【0030】~【0033】、【0045】【表1】の記載事項を総合し、特に、【0030】~【0033】、【0045】【表1】に記された(実施例2)に着目すれば、甲7には次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されている。 「[原紙の製造]原料としてLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)90%、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)10%の配合からなるパルプをCSF500mlまで叩解し、対原料(乾燥重量)、填料として軽質炭酸カルシウム5%、カチオン澱粉1%、嵩高剤として花王(株)製KB115(商品名)を1.0%添加し、該紙料をハイブリッドフォーマーにより抄紙し、オンマシンゲートロールコーターで酸化澱粉2g/m2(両面)を付与して得た、坪量75g/m2の塗工原紙。 [塗料の調製]カオリン(商品名UW90:エンゲルハード社製)/湿式重質炭酸カルシウム(商品名カービタル90:イメリス社製)=50重量部/50重量部からなる顔料スラリーを調製し、表1に示すモノマー組成の異なるSBRラテクッスA~G(旭化成工業合成品)の7種を用い、添加部数、補助バインダーの種類、部数を変えて#2の塗料(固形分60%)を調製した。ラテックスAはアルカリで増粘する増粘剤を含有し補助バインダーを必要としないいわゆるソールバインダーであり、補助バインダーとして尿素燐酸エステル化澱粉(商品名MS#4600:日本食品化工製)CMC(商品名セロゲンPR:第一工業製薬製)を使用。 [塗工紙の作製]上記塗工原紙にブレードコーターを用い、#2の塗料を塗工量が片面あたり10g/m2になるよう原紙F面次いでW面に塗工し、坪量95g/m2の両面塗工紙を作製し、次いで該塗工紙をソフトキャレンダーで110℃、線圧50kN/mで処理して得た、印刷用塗工紙。 【表1】 [図:0001405841000001.jpg] 」 8 甲8に記載された事項 甲8の【0001】、【0006】、【0017】の記載事項を総合すると、甲8には以下の事項(以下「甲8記載事項」という。)が記載されている。 「印刷用塗工紙の平滑度と透気抵抗度を特定の値にしてインキの浸透性を調整すること、及び、坪量が20g/m2以下であって、透気抵抗度の範囲を1500~10000秒とすることで塗工紙の品質を保つことができること。」 第5 当審の判断 1 理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)について (1)本件発明について ア 対比 本件発明と甲1発明を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲1発明の「針葉樹晒しクラフトパルプ」、「軽質炭酸カルシウム(商品名:TP121/奥多摩工業社製)」、「原紙」、「湿式重質炭酸カルシウム(商品名:カービタル90/イメリス社製)」、「微細カオリンクレー(アメリカ産、平均粒子径0.4μm)」及び「印刷用塗工紙」は、それぞれ本件発明の「パルプ」、「填料」、「基紙」、「炭酸カルシウム」、「カオリン」及び「印刷用塗工紙」に相当する。 また、甲1発明の「個々の塗工層において微細カオリンクレー(アメリカ産、平均粒子径0.4μm)10部、湿式重質炭酸カルシウム(商品名:カービタル90/イメリス社製)90部を含有」することは、本件発明の「個々の塗工層においてカオリンの含有量が塗工層中の白色顔料100質量部に対して10質量部以上50質量部以下)であ」ることを満たしている。 甲1発明の「バインダーが燐酸エステル化澱粉(商品名:MS#4600/日本食品化工社製)及びスチレン・ブタジエンラテックス(商品名:S2788K/JSR社製)を含」むことと、本件発明の「バインダーが尿素燐酸エステル化澱粉及びスチレンブタジエンアクリロニトリル共重合体を少なくとも含」むこととは、「バインダーが燐酸エステル化澱粉を少なくとも含」んでいる限りにおいて一致する。 また、甲1発明の「印刷用塗工紙」と、本件発明の「マットタイプの印刷用塗工紙」とは、「印刷用塗工紙」の限りにおいて一致する。 以上から、本件発明と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の両面に白色顔料及びバインダーを含有する塗工層とを有し、前記白色顔料が炭酸カルシウム及びカオリンを少なくとも含み、個々の塗工層においてカオリンの含有量が前記塗工層中の白色顔料100質量部に対して10質量部以上50質量部以下であり、前記バインダーが燐酸エステル化澱粉を少なくとも含む、印刷用塗工紙。」 <相違点1> 「バインダーが燐酸エステル化澱粉を少なくとも含」んでいる態様に関して、本件発明では「バインダーが尿素燐酸エステル化澱粉及びスチレンブタジエンアクリロニトリル共重合体を少なくとも含」んでいるのに対し、甲1発明では「バインダーが燐酸エステル化澱粉(商品名:MS#4600/日本食品化工社製)及びスチレン・ブタジエンラテックス(商品名:S2788K/JSR社製)を含」んでいる点。 <相違点2> 本件発明では「ISO5636-6:2015に準じて求められる透気度(秒)を坪量で除した比透気度が36(秒/坪量)以上65(秒/坪量)以下である」であるのに対し、甲1発明では、当該「比透気度」について明らかでない点。 <相違点3> 「印刷用塗工紙」に関して、本件発明では「マットタイプの印刷用塗工紙」であるのに対し、甲1発明では「印刷用塗工紙」である点。 イ 判断 事案に鑑みて、<相違点2>から検討する。 (ア)ISO5636-6:2015に準じて求められる透気度(秒)を坪量で除した比透気度について 甲1の【0060】には、以下の記載がある。 「(3)透気抵抗度 JIS P 8117:2009「紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法-ガーレー法」に準じて測定した。」 また、【0061】には、【表1】が記載されている。 「 [図:0001405841000002.jpg] 」 ここで、実施例6の印刷塗工紙についてみるに、JISP8117:2009「紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法-ガーレー法」に準じて測定された透気抵抗度が4000(秒)であることが記載されているものの、「ISO5636-6:2015に準じて求められる透気度(秒)を坪量で除した比透気度」については、記載も示唆もされておらず、ましてや「比透気度」の上限値と下限値を設定することも何ら示唆されていない。 (イ)申立人の主張について 申立人は、坪量が算出できること(申立書第30頁最終行~第31頁第5行)、並びに「甲第6号証に示すように、ISO5636-6の「透気度試験法/王研法」の測定値とJIS P 8117:2009の「紙及び板紙-透気度試験法であるガーレー法」の測定値には良い相関関係があり、測定値に大きな差がないことがわかる。・・・実質的な相違点ではない。」(申立書32頁第11~15行)なる旨を主張しているので以下検討する。 a 甲1の(実施例6)において、【0060】~【0061】、【表1】から、JIS P 8117:2009「紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法-ガーレー法」に準じて測定された透気抵抗度が4000(秒)であり、また、実施例1を前提とする実施例6(【0039】及び【0045】)から、湿紙の坪量45g/m2、サイズプレス液2g/m2、塗工層用塗料10g/m2×2(両面)であるといえることから、印刷用塗工紙の坪量は、湿紙45g/m2+サイズプレス液2g/m2+塗工層10g/m2×2(両面)=67g/m2であるといえる。 b 申立人の主張するとおり、坪量の算出は可能であるものの、上で述べたとおり、甲6は「比透気度」について、すなわち「ISO5636-6:2015に準じて求められる透気度(秒)を坪量で除した比透気度」により上下限値を特定することについて示唆するものではないから、採用するところがない。 したがって、上記<相違点2>は、甲6記載事項を参酌したとしても、実質的な相違点であり、甲1発明は本件発明ではない。 c また、上記算出された坪量を除するための比透気度について、甲6記載事項を検討すると、算出に用いる値は単に関係性を有するといったことでは足りず、換算関係が示される必要性があるところ、甲6記載事項には、「ISO5636-6 :2015による透気度試験法である王研法の測定値と、JIS P 8117:2009による透気度試験方法法であるガーレー試験機法の測定値に一定の相関性がみられること」は理解できるものの、両者の値に関する換算式等の換算関係が何ら示されておらず、また技術常識といえる他の証拠もない。 そうすると、甲1発明及び甲6記載事項に基いて、上記<相違点2>に係る本件発明の構成とすることは、容易に想到し得たものではない。 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 理由2(甲第7号証に基づく新規性・進歩性)について (1)本件発明について ア 対比 本件発明と甲7発明を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲7発明の「LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)90%、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)10%の配合からなるパルプ」、「軽質炭酸カルシウム」、「塗工原紙」、「顔料塗工層」、「湿式重質炭酸カルシウム(商品名:カービタル90/イメリス社製)」、「カオリン(商品名UW90:エンゲルハード社製)」、「尿素燐酸エステル化澱粉(商品名MS#4600:日本食品化工製)」及び「印刷用塗工紙」は、それぞれ本件発明の「パルプ」、「填料」、「基紙」、「塗工層」、「炭酸カルシウム」、「カオリン」、「尿素燐酸エステル化澱粉」及び「印刷用塗工紙」に相当する。 また、甲7発明の「カオリン(商品名UW90:エンゲルハード社製)/湿式重質炭酸カルシウム(商品名カービタル90:イメリス社製)=50重量部/50重量部」であることは、本件発明の「カオリンの含有量が塗工層中の白色顔料100質量部に対して10質量部以上50質量部以下)であ」ることを満たしている。 甲7発明の「バインダーが尿素燐酸エステル化澱粉(商品名MS#4600:日本食品化工製)及びSBRラテクッスA~G(旭化成工業合成品))を含」むことと、本件発明の「バインダーが尿素燐酸エステル化澱粉及びスチレンブタジエンアクリロニトリル共重合体を含」むこととは、「バインダーが燐酸エステル化澱粉を少なくとも含」んでいる限りにおいて一致する。 また、甲7発明の「印刷用塗工紙」と、本件発明の「マットタイプの印刷用塗工紙」とは、「印刷用塗工紙」の限りにおいて一致する。 以上から、本件発明と甲7発明とは、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「パルプ及び填料を含有する基紙と、前記基紙の両面に白色顔料及びバインダーを含有する塗工層とを有し、前記白色顔料が炭酸カルシウム及びカオリンを少なくとも含み、個々の塗工層においてカオリンの含有量が前記塗工層中の白色顔料100質量部に対して10質量部以上50質量部以下であり、前記バインダーが尿素燐酸エステル化澱粉を少なくとも含む、印刷用塗工紙。」 <相違点4> 「バインダーが燐酸エステル化澱粉を少なくとも含」んでいる態様に関して、本件発明では「バインダーが尿素燐酸エステル化澱粉及びスチレンブタジエンアクリロニトリル共重合体を少なくとも含」んでいるのに対し、甲7発明では「SBRラテクッスA~G(旭化成工業合成品)」を含んでいる点。 <相違点5> 本件発明では「ISO5636-6:2015に準じて求められる透気度(秒)を坪量で除した比透気度が36(秒/坪量)以上65(秒/坪量)以下である」であるのに対し、甲7発明では、「比透気度」について明らかでない点。 <相違点6> 「印刷用塗工紙」に関して、本件発明では「マットタイプの印刷用塗工紙」であるのに対し、甲7発明では「印刷用塗工紙」である点。 イ 判断 事案に鑑みて、<相違点5>から検討する。 甲7の、特に、実施例2の印刷塗工紙についてみるに「ISO5636-6:2015に準じて求められる透気度(秒)を坪量で除した比透気度」については、記載も示唆もされておらず、ましてや「比透気度」の上限値と下限値を設定することについて何ら示唆されていない。 したがって、上記<相違点5>は、実質的な相違点であり、甲7発明は本件発明ではない。 また、甲1記載事項(上記第4 1)及び甲8記載事項(上記第4 8)は、それぞれ「オフセット印刷用塗工紙の透気抵抗度が3000~7500秒であること。」及び「印刷用塗工紙の平滑度と透気抵抗度を特定の値にしてインキの浸透性を調整すること、及び、坪量が20100g/m2以下であって、透気抵抗度の範囲を1500~10000秒とすることで発色と塗工紙の品質を保つことができること。」であり、甲1及び甲8の他の記載を参照しても「ISO5636-6:2015に準じて求められる透気度(秒)を坪量で除した比透気度」については、記載も示唆もされていない。 申立人は、甲8記載事項及び甲1記載事項のもと「甲7発明において、インキの浸透性や印刷光沢度、耐ブリスター性などの印刷品質を達成するために透気度の範囲を一定範囲とすることは当業者が容易に想到し得る事項であり、印刷用塗工紙の坪量に応じて調整することも設計事項に過ぎない。」(申立書33頁24行~34頁6行)なる旨を主張しているが、甲8及び甲1の記載を参照しても「比透気度」及び、「比透気度」の上限値と下限値を具体的に設定する根拠が何ら示されていないことから、直ちに採用できるものではない。 以上のことから、甲7発明並びに甲8記載事項及び甲1記載事項に基いて、上記<相違点5>に係る本件発明の構成とすることは、容易に想到し得たものではない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は甲7発明ではなく、また、甲7発明並びに甲8記載事項及び甲1記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700863

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