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特許異議申立

2023-700861

改善された疎水性エアロゲル材料

審判番号
2023-700861
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-037360
登録番号
7227291
請求日
2023年08月21日
審決日
2024年04月30日
公報発行日
2024年08月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】アスペン エアロゲルズ,インコーポレイティド
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】石田 敬
  • 【権利者代理人】古賀 哲次
  • 【権利者代理人】蛯谷 厚志
  • 【権利者代理人】胡田 尚則
  • 【権利者代理人】出野 知
  • 【権利者代理人】木村 健治
  • 【異議申立人】エルジー・ケム・リミテッド
  • 【異議申立人代理人】小野 誠
  • 【異議申立人代理人】重森 一輝
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.121-YAA(C01B) / P1651.536-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B) / P1651.851-YAA(C01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第3項、特許法第120条の5第9項、特許法第2条第3項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7227291号発明「改善された疎水性エアロゲル材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7227291号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~48〕について訂正することを認める。 特許第7227291号の請求項1~2、4~48に係る特許を維持する。 特許第7227291号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7227291号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~48に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)10月2日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年10月3日 (US)アメリカ合衆国 2015年2月20日 (US)アメリカ合衆国 2015年9月25日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2017-516991号(以下、「原出願」という。)の一部を平成31年2月20日に新たな特許出願とした特願2019-27986号の一部を令和3年3月9日に新たな特許出願としたものであって、令和5年2月13日にその特許権の設定登録がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行され、その後、同年8月21日に、請求項1~48に係る特許について、特許異議申立人 エルジー・ケム・リミテッド(以下、「申立人」という。)により、甲第1~15号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、同年9月22日に、申立人より甲第2号証の関連~甲第5号証の関連及び甲第14号証の関連を添付して上申書が提出され、同年11月14日付で当審より取消理由が通知され、その指定期間内である同年12月12日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、令和6年2月28日に申立人より甲第16号証を添付して意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容及び一群の請求項 令和5年12月12日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を「特許第7227291号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~48について訂正することを求める。」とするものであって、その訂正の内容は、次のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「ここでT1-2:T3の比は、T3種に対するT1種とT2種との組み合わせの比を示し、Q2-3:Q4の比は、Q4種に対するQ2種とQ3種との組み合わせの比を示し、T1、T2、T3、Q2、Q3、及びQ4の量は、29Si NMR分析におけるT1種、T2種、T3種、Q2種、Q3種、及びQ4種にそれぞれ関連する個々の化学シフトピークの積分によって定量化される、強化エアロゲル組成物。」 と記載されていたのを、 「ここでT1-2:T3の比は、T3種に対するT1種とT2種との組み合わせの比を示し、Q2-3:Q4の比は、Q4種に対するQ2種とQ3種との組み合わせの比を示し、T1、T2、T3、Q2、Q3、及びQ4の量は、29Si NMR分析におけるT1種、T2種、T3種、Q2種、Q3種、及びQ4種にそれぞれ関連する個々の化学シフトピークの積分によって定量化され、 前記強化エアロゲル組成物が、 717cal/g以下の燃焼熱、及び 100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、750℃以上、800℃以上、又はこれらの値の任意の2つの間の自己加熱温度を有している、 強化エアロゲル組成物。」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4~48も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3) 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1の記載を請求項2~48が引用する関係にあるから、本件訂正前の請求項1~48は一群の請求項であり、訂正事項1~2に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項1~48を訂正の単位として請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件について (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における「強化エアロゲル組成物」を、本件訂正前の請求項3、本件特許明細書の段落【0034】、【0038】(下記第6の2(2)ア)の記載に基づいて、「717cal/g以下の燃焼熱、及び100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、750℃以上、800℃以上、又はこれらの値の任意の2つの間の自己加熱温度を有している」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3) 独立特許要件について 本件特許異議の申立ては本件訂正前の全ての請求項についてされているので、訂正事項1~2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~48について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるから、本件訂正により訂正された請求項1、2、4~48に係る発明(以下、「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4~48に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 シリカ系エアロゲルと、強化材料と、添加剤と、少なくとも1つの疎水結合ケイ素とを含む強化エアロゲル組成物であって、 20wt%以下の液水吸収;及び 0.01~0.5のT1-2:T3の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトル及び0.1~1.5のQ2-3:Q4の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトルのいずれか一方又は両方; を有し、 ここでT1-2:T3の比は、T3種に対するT1種とT2種との組み合わせの比を示し、Q2-3:Q4の比は、Q4種に対するQ2種とQ3種との組み合わせの比を示し、T1、T2、T3、Q2、Q3、及びQ4の量は、29SiNMR分析におけるT1種、T2種、T3種、Q2種、Q3種、及びQ4種にそれぞれ関連する個々の化学シフトピークの積分によって定量化され、 前記強化エアロゲル組成物が、 717cal/g以下の燃焼熱、及び 100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、750℃以上、800℃以上、又はこれらの値の任意の2つの間の自己加熱温度を有している、強化エアロゲル組成物。 【請求項2】 前記強化エアロゲル組成物が300℃以上の疎水性有機材料の熱分解開始点を有する、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記強化エアロゲル組成物が500℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点を有する、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項5】 前記添加剤が、マイクロ繊維、充填材、強化剤、安定剤、増粘剤、弾性化合物、乳白剤、着色化合物又は色素化合物、放射線吸収化合物、放射線反射化合物、腐食防止剤、熱伝導成分、相変換材料、pH調整剤、酸化還元調整剤、HCN緩和剤、オフガス緩和剤、導電性化合物、誘電化合物、磁性化合物、レーダー防止成分、硬化剤、収縮防止剤、煙抑制剤、火炎抑制剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項6】 前記添加剤が相転換材料である、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項7】 前記添加剤が乳白剤である、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項8】 前記添加剤が金属炭化物、金属酸化物、珪藻土、金属フェライト、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項9】 前記添加剤が、炭化ホウ素、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag2O、Bi2O3、カーボンブラック、酸化チタン、鉄チタン酸化物、酸化アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、鉄チタン酸化物、酸化クロム、SiC、TiC、WC、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項10】 前記添加剤が、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、及びこれらの混合物からなる群から選択される炭化物を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項11】 前記添加剤が炭化ケイ素を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項12】 前記強化エアロゲル組成物が、以下の性質:すなわち、ii)500℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点;iii)265cal/g~717cal/gの燃焼熱;及びiv)15mW/M・K~40mW/M・Kの熱伝導度を有する、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項13】 前記強化シリカ系エアロゲル組成物が、以下の1以上の性質:すなわち、ii)525℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点;又は、iii)265cal/g~600cal/gの燃焼熱を有する、請求項1に記載の強化シリカ系エアロゲル組成物。 【請求項14】 前記強化シリカ系エアロゲル組成物が、以下の1以上の性質:すなわち、ii)550℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点;又は、iii)265cal/g~550cal/gの燃焼熱を有する、請求項1に記載の強化シリカ系エアロゲル組成物。 【請求項15】 前記強化シリカ系エアロゲル組成物が、以下の1以上の性質:すなわち、ii)575℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点;又は、iii)265cal/g~500cal/gの燃焼熱を有する、請求項1に記載の強化シリカ系エアロゲル組成物。 【請求項16】 前記エアロゲル組成物中の疎水性有機含有量が2wt%~10wt%である、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項17】 強化材料が繊維強化材料を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項18】 前記繊維強化材料が、離散繊維、織布材料、不織布材料、綿、ウェブ、マット、フェルト、又はこれらの組み合わせの形態である、請求項17に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項19】 強化材料が繊維強化材料のシートを含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項20】 前記繊維強化材料のシートが織布材料、不織布材料、綿、ウェブ、マット、フェルト、又はこれらの組み合わせの形態である、請求項19に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項21】 強化材料が繊維強化材料以外の材料を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項22】 強化材料が繊維強化材料のシート以外の材料のシートを含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項23】 強化材料が発泡体強化材料を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項24】 強化材料が発泡体強化材料のシートを含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項25】 強化エアロゲル組成物がシートの形態である、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項26】 さらにホウ素、アルミニウム、鉄、又は炭素を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項27】 さらにアルミニウムを含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項28】 さらに鋼を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項29】 さらにステンレス鋼を含む、請求項1又は2に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項30】 強化材料がさらにホウ素、アルミニウム、鉄、又は炭素を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項31】 強化材料がさらにアルミニウムを含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項32】 前記強化エアロゲル組成物が、発泡体、繊維、アルミニウム、又はこれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項33】 前記強化エアロゲル組成物が0.40g/cm3以下の密度を有する、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項34】 前記強化エアロゲル組成物が15mW/M・K~30mW/M・Kの熱伝導度を有する、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項35】 前記強化エアロゲル組成物がエアロゲルブランケット組成物である、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項36】 前記強化エアロゲル組成物が減酸素雰囲気中にある、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項37】 前記減酸素雰囲気が、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のガスを含む、請求項36に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項38】 前記強化エアロゲル組成物が上昇した温度にある、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項39】 前記上昇した温度が少なくとも200℃である、請求項38に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項40】 前記強化エアロゲル組成物がモノリス型エアロゲル材料を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項41】 シリカ系エアロゲルが、粒状物、粒子、顆粒、ビーズ、粉体、モノリス型、又はこれらの組み合わせの形態である、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項42】 シリカ系エアロゲルが、少なくとも1種の粒状物エアロゲル材料を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。 【請求項43】 請求項1に記載の組成物を上昇した温度にさらすことを含む、方法。 【請求項44】 前記上昇した温度が少なくとも200℃である、請求項43に記載の方法。 【請求項45】 減酸素雰囲気中にある請求項1に記載の組成物を含む、システム。 【請求項46】 上昇した温度にある請求項1に記載の組成物を含む、システム。 【請求項47】 上昇した温度が少なくとも200℃である、請求項45又は46に記載のシステム。 【請求項48】 前記組成物が密閉されている、請求項45又は46に記載のシステム。」 第4 特許異議申立理由の概要 1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~48に係る発明(以下、「訂正前発明1」~「訂正前発明48」といい、まとめて「訂正前発明」ということがある。)は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~9号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前発明1~48に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである(35ページ下から5行~89ページ6行)。 2 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「T1、T2、T3、Q2、Q3、及びQ4の量」の測定条件が記載されておらず、実施例(下記第6の2(2)エ)を参照しても、CP/MAS29Si固体状態NMR分析のための具体的な条件が記載されていない。 そして、CP/MAS29Si固体状態NMR分析を再現するためには、接触時間、回転速度、遅延時間などの測定条件が特定される必要があり、また、CP/MAS29Si固体状態NMR分析に関連した一般化され確立された測定方法や測定条件はないから、CP/MAS29Si固体状態NMR分析の測定条件は、当業者が経験や技術常識に照らして理解できるものではない。 したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」を容易に再現できる程度に記載されていないから、特許法第36条第4項第1号所定の規定に適合しない(この理由では、甲第10~15号証を引用している。89ページ7行~103ページ下から3行。)。 3 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「T1、T2、T3、Q2、Q3、及びQ4の量」の測定条件が記載されておらず、実施例を参照しても、CP/MAS29Si固体状態NMR分析のための具体的な条件が記載されていないから、「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」を特定できないので、訂正前発明1は明確でない。 また、実施例の例18の結果を見ると、7%のMTESについての減酸素熱処理前試料(比較例)の「T1-2:T3の比」が0.463であり、減酸素熱処理後試料(実施例)の「T1-2:T3の比」が0.272であり、どちらも訂正前発明1の発明特定事項を満たすから、訂正前発明1は保護を受けようとする範囲が不明確であるので、明確でない。 更に、訂正前発明2~48について検討しても事情は同じであるので、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号所定の規定に適合しない(103ページ下から2行~104ページ最終行)。 4 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1) 本件特許明細書の段落【0003】(下記第6の2(2)ア)等の記載からみれば、本件特許に係る発明の課題(以下、「本件課題」という。)は、水性環境で好ましい性能を有し、好ましい燃焼及び自己加熱の性質を有し、耐久性があり扱いが容易なエアロゲル組成物を提供することにあるといえる。 ここで、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」の技術的意義が記載されていないから、訂正前発明1における「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」の発明特定事項により本件課題を解決できることを認識できる程度に記載されているとはいえない。 また、「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」を測定した実施例は例18のみであり、前記例18によれば、減酸素熱処理により「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」が減少して訂正前発明1における発明特定事項を満たした試料は、液水吸収が改善され、HOC(燃焼熱)が低減されたことを理解できるが、前記例18以外に、このことを示す例は記載されていない。 更に、例18の減酸素熱処理前試料(比較例)は、「T1-2:T3の比」が訂正前発明1における発明特定事項を満たすものの、液水吸水は訂正前発明1における発明特定事項を満たさないから、水性環境で好ましい性能を有するものとはいえないし、「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」のいずれか一方又は両方を訂正前発明1における発明特定事項を満たすものとすることで、本件課題を解決できることが本件特許の原出願の出願日当時の技術常識であったということもできないから、訂正前発明1における発明特定事項により本件課題を解決できるとはいえないので、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合しない(105ページ1行~106ページ17行)。 (2) 訂正前発明1の発明特定事項によれば、訂正前発明1は、シリカ系エアロゲルと、強化材料と、添加剤とを、例えば混合して調製した「強化エアロゲル組成物」を含むものである。 一方、例18においては、減酸素熱処理を行わないと20wt%以下の液水吸水の特性を有するものとならないから、訂正前発明1においては、減酸素熱処理などの特定の熱処理を施すことが必要である。 ところが、訂正前発明1は、減酸素熱処理などの特定の熱処理を施さない、例えば混合して調製した「強化エアロゲル組成物」を含むから、本件課題を解決しないものも含むので、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合しない(106ページ18行~110ページ14行)。 5 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2014/150310号 甲第2号証:H. El Rassy et al., "NMR and IR spectroscopy of silica aerogels with different hydrophobic characteristics", Journal of Non-Crystalline Solids, 2005年, Vol. 351, p. 1603-1610 甲第3号証:Te-Yu Wei et al., "Preparation of Monolithic Silica Aerogel of Low Thermal Conductivity by Ambient Pressure Drying", Journal of the American Ceramic Society, 2007年, Vol. 90, No. 7, p. 2003-2007 甲第4号証:A. V. RAO et al., "Hydrophobicity and physical properties of TEOS based silica aerogels using phenyltriethoxysilane as a synthesis component", JOURNAL OF MATERIALS SCIENCE, 2003年, Vol. 38, p. 4407-4413 甲第5号証:Jung-Kyun Hong et al., "Formation and Characterization of OH Free Silica Aerogel through Surface Treatment", Journal of the Korean Ceramic Society, 1996年, Vol. 33, No. 12, p. 1339-1346 甲第6号証:CABOT社の製品データシート,改定日 2011年3月30日 甲第7号証:Uzma K H Bangi et al., "A new route for preparation of sodium-silicate-based hydrophobic silica aerogels via ambient-pressure drying", SCIENCE AND TECHNOLOGY OF ADVANCED MATERIALS, 2008年, Vol. 9, p. 1-10 甲第8号証:Zhi Li et al., "Preparation of ambient pressure dried MTMS/TEOS co-precursor silica aerogel by adjusting NH4OH concentration", Materials Letters, 2014年, Vol. 129, p. 12-15 甲第9号証:S. V. Ingale et al., "Physico-chemical properties of silica aerogels prepared from TMOS/MTMS mixtures", J Porous Mater, 2011年, Vol. 18, p. 567-572 甲第10号証:イ・ヨンボク教授の陳述書,2023年5月30日 甲第11号証:特開2013-231694号公報 甲第12号証:Marco Geppi et al., "Applications of Solid-State NMR to the Study of Organic/Inorganic Multicomponent Materials", Applied Spectroscopy Reviews, 2009年, Vol. 44, p. 1-89 甲第13号証:Sergey G. Vasil'ev et al., "A Solid-State NMR Investigation of MQ Silicone Copolymers", Applied Magnetic Resonance, 2013年, Vol. 44, p. 1015-1025 甲第14号証:C. Cannas et al., "29Si CPMAS NMR and near-IR study of sol-gel microporous silica with tunable surface area", Journal of Non-Crystalline Solids, 2005年, Vol. 351, p. 3476-3482 甲第15号証:追加実験資料,イ・ヨンボク,2023年5月30日 甲第2号証の関連:ScienceDirectでWeb公開されている甲第2号証の内容の一部及びその公開情報を示す資料 甲第3号証の関連:Journal of the American Ceramic Society, Vol. 90 No. 7に含まれる論文のタイトルとその公開情報等を示す資料 甲第4号証の関連:SpringerLinkに掲載されている甲第4号証の内容の一部及びその公開情報を示す資料 甲第5号証の関連:Korean Ceramic SocietyでWeb公開されている甲第5号証の内容の一部及びその公開情報を示す資料 甲第14号証の関連:Journal of Non-Crystalline Solids, Vol. 351に含まれる論文のタイトルとその公開情報等を示す資料 甲第16号証:JIRI BRUS,"Solid-State NMR Study of Phase Separation and Order of Water Molecules and Silanol Groups in Polysiloxane Networks", Jounal of Sol-Gel Science and Technology, 2002年, Vol. 25, p. 17-28 なお、甲第2号証の関連~甲第14号証の関連は、申立人が令和5年9月22日に提出した上申書に添付されたものであり、甲第16号証は、申立人意見書に添付されたものである。 第5 取消理由の概要 1 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について 本件特許明細書の記載によれば、本件課題は、エアロゲル材料を、水性環境で好ましい性能を有し、好ましい燃焼及び自己加熱の性質をまた有する、柔軟で弾性があり自己支持性がある「強化エアロゲル組成物」とすることにあるといえる。 ところが、訂正前発明1においては、「強化エアロゲル組成物」が「強化材料」を「含」み、「20wt%以下の液水吸収」「を有」することは特定されているが、燃焼熱及び自己加熱温度は特定されていないから、前記請求項1に係る「強化エアロゲル組成物」が好ましい燃焼及び自己加熱の性質を有するものとはいえない。 してみれば、訂正前発明1の発明特定事項により本件課題を解決できるものとはいえないので、訂正前発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。 更に、訂正前発明2~48について検討しても事情は同じであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合しない。 第6 取消理由及び特許異議申立理由についての当審の判断 事案に鑑み、前記第5の取消理由及び第4の特許異議の申立て理由についてまとめて検討する。 1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について (1) 甲各号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア)甲第1号証には、以下のa~dの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 a 「1. A nonwoven insulation blanket comprising: aerogel particles; fibers; and a binder, wherein the density of aerogel particles in the upper 10% of a cross section of the blanket is within +/- 20% of the density of aerogel particles in the lowest 10% of the cross section.」(特許請求の範囲) (当審訳:エアロゲル粒子; 繊維;及び バインダーを含む不織布断熱ブランケットであって、ここで、ブランケットの断面の上部10%におけるエアロゲル粒子の密度は、前記断面の下部10%におけるエアロゲル粒子の密度の+/-20%以内である、不織布断熱ブランケット。) b 「[0003] In one aspect, a nonwoven insulation blanket is provided, the blanket comprising aerogel particles, fibers, and a binder, wherein the density of aerogel particles in the upper 10% of a cross section of the blanket is within +/- 20% of the density of aerogel particles in the lowest 10% of the cross section.・・・ ・・・ [0006] The methods described herein can be used to make an insulative aerogel blanket that can exhibit, for instance, improved thermal insulation, reduced levels of dust, lower corrosivity and a consistent, uniform construction.・・・The flocculated material can support an even distribution of the different particles from which the blanket can be made. This stable, consistent distribution of particles can provide an aerogel blanket that exhibits a uniform composition throughout.・・・」 (当審訳:「0003」 一態様では、不織布断熱ブランケットが提供され、このブランケットは、エアロゲル粒子、繊維、及びバインダーを含み、ブランケットの断面の上部10%のエアロゲル粒子の密度は、断面の下部10%のエアロゲル粒子の密度の+/-20%以内である。・・・ ・・・ [0006] 本明細書に記載された方法は、例えば、断熱性の向上、ほこりのレベルの低減、腐食性の低下、及び一貫した均一な構造を示すことができる断熱性エアロゲルブランケットを製造するために使用することができる。・・・凝集材料は、ブランケットを作ることができる異なる粒子の均一な分布をサポートすることができる。この安定した一貫した粒子分布により、全体的に均一な組成を示すエアロゲルブランケットを提供することができる。・・・) c 「[0007] The most common aerogels are formed of either alumina or silica. Silica aerogels in particular possess a number of properties that make them a good choice for thermal insulation. For instance, these aerogels are typically light and exhibit very low thermal conductivity. Silica aerogels can be made or rendered hydrophobic and these hydrophobic silica aerogels are resistant to moisture and may be useful in some insulating applications without additional treatment.・・・ ・・・ [0010] The blankets may exhibit excellent insulative properties.・・・The blankets may be hydrophobic and may absorb less than 40%, less than 30%, less than 20%, less than 10%, less than 5%, less than 3% or less than 1%, of their weight in water when tested using, for example, ASTM method C1511.・・・」 (当審訳:[0007] 最も一般的なエアロゲルは、アルミナ又はシリカで形成されている。特にシリカエアロゲルは、断熱材として優れた選択肢となる多くの特性を備えている。例えば、これらのエアロゲルは通常軽く、非常に低い熱伝導率を示す。シリカエアロゲルは疎水性にするか、又は疎水性であることができ、これらの疎水性シリカエアロゲルは耐湿性があり、追加の処理なしで一部の断熱用途に役立つ可能性がある。・・・ ・・・ [0010] ブランケットは優れた断熱特性を示す可能性がある。・・・ブランケットは疎水性であってもよく、例えば、ASTM法C1511を使用して試験した場合、その重量の40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、3%未満、又は1%未満の水を吸収する可能性がある。・・・) d 「Fibers - [0029] In one set of embodiments an aerogel blanket may include aerogel particles and one or more types of fiber. Fibers can provide strength, can reduce flammability, and can help to bind and retain aerogel particles in a blanket. Fibers may comprise, by weight, greater than 1%, greater than 3%, greater than 5% or greater than 10% of the aerogel blanket.・・・ ・・・ Additives - [0035] Opacifiers, such as infrared opacifiers, can be added to the aerogel slurry to reduce radiative heat transfer in an aerogel blanket.・・・ ・・・ [0036] In some embodiments the aerogel blanket can include a flame or fire retardant. Concentrations of fire and/or flame retardant in some embodiments may range, by weight, from 0.1% to 5.0%, 0.2% to 2.0%, and 0.3% to 1.5%.・・・Embodiments of wet laid aerogel blankets may exhibit caloric content of, for example, less than 20MJ/Kg, less than 15MJ/Kg, less than 12MJ/Kg, less than 10MJ/Kg, less than 8MJ/Kg, less than 6MJ/Kg, less than 4MJ/Kg, or less than 3MJ/Kg.」 (当審訳:繊維 - [0029] 一組の実施形態において、エアロゲルブランケットは、エアロゲル粒子及び1種以上の繊維を含むことができる。繊維は、強度を提供することができ、燃焼性を低減することができ、エアロゲル粒子をブランケットに結合して保持するのを助けることができる。繊維は、重量で、エアロゲルブランケットの1%超、3%超、5%超又は10%超、含み得る。・・・ ・・・ 添加剤 - [0035] エアロゲルブランケットにおける放射熱伝達を低減するために、赤外線不透明化剤などの不透明化剤をエアロゲルスラリーに添加することができる。・・・ ・・・ [0036] いくつかの実施形態において、エアロゲルブランケットは、難燃剤又は防火剤を含むことができる。いくつかの実施形態における難燃剤及び/又は防火剤の濃度は、重量で、0.1%~5.0%、0.2%~2.0%、及び0.3%~1.5%の範囲であり得る。・・・湿式堆積エアロゲルブランケットの実施形態は例えば、20MJ/Kg未満、15MJ/Kg未満、12MJ/Kg未満、10MJ/Kg未満、8MJ/Kg未満、6MJ/Kg未満、4MJ/Kg未満、又は3MJ/Kg未満のカロリー含有量を示すことができる。」 (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第1号証には、エアロゲル粒子;繊維;及びバインダーを含む「不織布断熱ブランケット」であって、ここで、ブランケットの断面の上部10%におけるエアロゲル粒子の密度は、前記断面の下部10%におけるエアロゲル粒子の密度の+/-20%以内である、「不織布断熱ブランケット」が記載されている。 また、前記(ア)c及びdの記載によれば、前記「不織布断熱ブランケット」においては、エアロゲルは、アルミナ又はシリカで形成されており、特にシリカエアロゲルは、断熱材として優れた選択肢となる多くの特性を備えており、シリカエアロゲルは疎水性にするか、又は疎水性であることができ、これらの疎水性シリカエアロゲルは耐湿性があり、追加の処理なしで一部の断熱用途に役立つ可能性があるものであり(段落[0007])、前記「不織布断熱ブランケット」は疎水性であってもよく、例えば、ASTM法C1511を使用して試験した場合、その重量の40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、3%未満、又は1%未満の水を吸収する可能性があるものであり(段落[0010])、前記「不織布断熱ブランケット」は、エアロゲル粒子及び1種以上の繊維を含むことができ、繊維は、強度を提供することができ、燃焼性を低減することができ、エアロゲル粒子をブランケットに結合して保持するのを助けることができるものであり(段落[0029])、前記「不織布断熱ブランケット」は、添加剤として、赤外線不透明化剤などの不透明化剤や、難燃剤又は防火剤を含むことができるものであり、20MJ/Kg未満、15MJ/Kg未満、12MJ/Kg未満、10MJ/Kg未満、8MJ/Kg未満、6MJ/Kg未満、4MJ/Kg未満、又は3MJ/Kg未満のカロリー含有量を示すことができるものである(段落[0035]、[0036])。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第1号証には、 「エアロゲル粒子; 繊維; 及びバインダーを含む不織布断熱ブランケットであって、 ブランケットの断面の上部10%におけるエアロゲル粒子の密度は、前記断面の下部10%におけるエアロゲル粒子の密度の+/-20%以内である、不織布断熱ブランケットであり、 前記不織布断熱ブランケットにおいては、エアロゲルは、アルミナ又はシリカで形成されており、特にシリカエアロゲルは、断熱材として優れた選択肢となる多くの特性を備えており、シリカエアロゲルは疎水性にするか、又は疎水性であることができ、これらの疎水性シリカエアロゲルは耐湿性があり、追加の処理なしで一部の断熱用途に役立つ可能性があるものであり、 前記不織布断熱ブランケットは疎水性であってもよく、例えば、ASTM法C1511を使用して試験した場合、その重量の40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、3%未満、又は1%未満の水を吸収する可能性があるものであり、 前記不織布断熱ブランケットは、エアロゲル粒子及び1種以上の繊維を含むことができ、繊維は、強度を提供することができ、燃焼性を低減することができ、エアロゲル粒子をブランケットに結合して保持するのを助けることができるものであり、 前記不織布断熱ブランケットは、添加剤として、赤外線不透明化剤などの不透明化剤や、難燃剤又は防火剤を含み、 20MJ/Kg未満、15MJ/Kg未満、12MJ/Kg未満、10MJ/Kg未満、8MJ/Kg未満、6MJ/Kg未満、4MJ/Kg未満、又は3MJ/Kg未満のカロリー含有量を示す、不織布断熱ブランケット。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、以下の(ア)~(カ)の記載がある。 (ア) 「Abstract Silica aerogels, prepared by the sol-gel method and dried by the CO2 supercritical method, were produced from tetramethoxysilane (TMOS) and methyltrimethoxysilane (MTMS) in different proportions, in order to change the proportions of hydrophilic and hydrophobic surface groups.・・・The relative proportion of Si-OH, Si-OCH3, or Si-CH3 groups present on the aerogel pore surface and its silica network structure were determined by 1H, 29Si and 13C nuclear magnetic resonance(NMR).」(1603ページ1行~5行) (当審訳:要約 ゾル-ゲル法によって調製され、CO2超臨界法によって乾燥されたシリカエアロゲルは、親水性表面基と疎水性表面基の比率を変えるために、異なる比率のテトラメトキシシラン(TMOS)とメチルトリメトキシシラン(MTMS)から生成された。・・・エアロゲルの細孔表面に存在するSi-OH基、Si-OCH3基、Si-CH3基の相対的な割合とシリカネットワーク構造は、1H、29Si、13C核磁気共鳴(NMR)によって決定された。) (イ) 「The hydrophobic silica aerogels were prepared with different proportions of reactants according to the procedure described in a previous paper[12].・・・ NMR spectra were collected on a BRUCKER DSX-400 spectrometer at 400 MHz.・・・These data were completed by 29Si CP-MAS NMR spectra, on samples spun at the cross-polarization magic angle at 5 kHz, with pulse interval of 5 s, a pulse duration of 3.5 μs and a contact duration between the H and the Si of 5ms. The 29Si chemical shifts were referenced to tetramethylsilane.」(1604ページ左欄13行~36行) (当審訳:疎水性シリカエアロゲルは、以前の論文[12]に記載された手順に従って、反応物の割合を変えて調製した。・・・ NMRスペクトルはBRUCKER DSX-400スペクトロメーターで400MHzで収集した。・・・これらのデータは、パルス間隔5s、パルス時間3.5μs、HとSiの接触時間5msの条件で、交差偏光マジックアングル5kHzでスピンさせたサンプルの29Si CP-MAS NMRスペクトルによって完成した。29Siの化学シフトはテトラメチルシランを基準としている。) (ウ) 「The 29Si NMR spectra (Fig.2) show an evolution of the peaks according to the molar ratio MTMS/MTMS+TMOS raging from H1 to H4 (see Table 1). The corresponding chemical shifts characterize various silicon coordination in the network according to Brinker and Kaji[16,17]. All the samples had peaks -99 ppm and -108 ppm, indicating Q3-Si (・・・) and Q4-Si (・・・)respectively. Peaks at -90 ppm, indicating Q2-Si(・・・) appeared for H1 and H2 aerogels. H2 and H3 aerogels had peaks at -63 ppm and -59 ppm corresponding respectively to T3-Si(・・・) and T2-Si(・・・). T1-Si(・・・) at -53 ppm appeared for all samples except H1 aerogels. Peaks at -45 ppm corresponding to T0-Si (・・・) appeared only for H4 aerogels (Qn : Q signals correspond to silicone atoms bonded to four oxygen atoms while n which varies between 1 and 4, is the number of silicone atoms bonded to these oxygen atoms. Tn : T signals correspond to silicone atoms bonded to three oxygen atoms while n, which varies between 0 and 3, is the number of silicone atoms bonded to these oxygen atoms.) 」(1604ページ右欄13行~36行) (当審訳:29Si NMRスペクトル(図2) は、H1からH4までのモル比MTMS/MTMS+TMOSに応じたピークの展開を示す(表1を参照)。対応する化学シフトは、BrinkerとKaji[16,17]に従って、ネットワーク内の様々なケイ素配位を特徴付ける。すべてのサンプルには-99ppmと-108ppmのピークがあり、それぞれQ3-Si(・・・)とQ4-Si(・・・)を示している。H1及びH2エアロゲルでは、Q2-Si(・・・)を示す-90ppmのピークが現れた。H2及びH3エアロゲルには、それぞれT3-Si(・・・)及びT2-Si(・・・)に対応する-63ppm及び-59ppmのピークがあった。H1エアロゲルを除くすべてのサンプルで、-53ppmのT1-Si(・・・)が出現した。T0-Siに相当する-45ppmのピークがH4エアロゲルのみに出現した(Qn:Qシグナルは4つの酸素原子に結合したシリコン原子に対応し、nは1~4の間で変化し、これらの酸素原子に結合したシリコン原子の数である。Tn:Tシグナルは3つの酸素原子に結合したシリコン原子に対応し、nは0~3の間で変化し、これらの酸素原子に結合したシリコン原子の数である。)。) (エ) 「 [図:0001413325000001.jpg] 」(1604ページ) (当審訳:表1 それぞれ0%、20%、40%、60%MTMSエアロゲルに対応した、エアロゲルH1、H2、H3、H4の合成に使用した化学製品のモル比。) (オ) 「 [図:0001413325000002.jpg] 」(1606ページ) (当審訳:図2 エアロゲルの29Si NMRスペクトル。青い線は実験シグナルに対応し、赤い線は緑、紫、灰色、紫の線で表される積分ピークの加算によって得られるシグナルに対応する。(この図の凡例における色の解釈については、この記事のウェブ版を参照されたい。)) (カ) 「5. Conclusion Silica aerogels made from mixtures of two silica precursors, TMOS and MTMS, and dried with supercritical CO2, were studied by 1H, 29Si, 13C NMR and IR absorption technics. This structural study shows that the Si-CH3 groups increase with the MTMS/MTMS+TMOS molar ratio, with an optimum molar ratio of 40% for a better surface modification.」(1609ページ1行~8行) (当審訳:5.結論 2種類のシリカ前駆体、TMOSとMTMSの混合物から作られ、超臨界CO2で乾燥されたシリカエアロゲルを、1H、29Si、13C NMR及びIR吸収法により研究した。この構造研究から、Si-CH3基はMTMS/MTMS+TMOSのモル比とともに増加し、最適なモル比は40%であることがわかった。) ウ 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、以下の(ア)~(オ)の記載がある。 (ア) 「Monolithic silica aerogels with thermal conductivity as low as 0.036 W・(m・K)-1 and porosity as high as 97% were successfully prepared by ambient pressure drying through a multiple modification approach.・・・The tetraethoxysilane (TEOS) - derived wet gel was made hydrophobic with multiple treatments of trimethylchlorosilane and dried under ambient pressure.・・・Comparisons in nuclear magnetic resonance spectroscopy and Fourier transform infrared spectroscopy for surface bonding and contact angle measurement for hydrophobicity between the no, single, and multiple surface modification (MSM) samples were conducted to reveal the difference in the extent of the resulting surface modification.」(2003ページ左欄1行~16行) (当審訳:熱伝導率が0.036W・(m・K)-1と低く、気孔率が97%と高いモノリシックシリカエアロゲルを、多重修飾アプローチによる常圧乾燥により調製することに成功した。・・・テトラエトキシシラン(TEOS)由来の湿ったゲルをトリメチルクロロシランで複数回処理して疎水性にし、常圧下で乾燥させた。・・・核磁気共鳴分光法、フーリエ変換赤外分光法による表面結合の測定、および接触角測定による疎水性の測定を、表面改質なし、単一、および多重表面改質(MSM)サンプルの間で比較し、得られた表面改質の程度の違いを明らかにした。) (イ) 「(D) NMR Analysis: The 29Si NMR spectra of the solid-state samples were determined (DSX-400, Bruker, Rheinstetten, Germany) with the cross-polarization/magic-angle spinning (CP/MAS) technique. The cross-polarization contact time was 3 ms, and the 1H 90°pulse width was 5 μm. The delay time was 2 s and the acquisition time was 0.0123 s.」(2004ページ右欄下から2行~2005ページ左欄4行) (当審訳:(D)NMR分析:固体試料の29Si NMRスペクトルは、交差分極/マジックアングルスピニング(CP/MAS)法を用いて測定した(DSX-400、Bruker、Rheinsetten、ドイツ)。交差分極接触時間は3ms、1H90°パルス幅は5μmだった。遅延時間は2s、取得時間は0.0123sだった。) (ウ) 「 [図:0001413325000003.jpg] 」(2006ページ右欄) (当審訳:図6 (a)表面改質なし製品の29Si核磁気共鳴スペクトル(NMR)、(b)多重表面改質(MSM)製品の29SiNMR、及び(c)MSM製品の13CNMR。) (エ) 「The NMR spectra for 29Si and 13C can further confirm the surface characteristics of the products. Figures 6(a) and (b) show the 29Si NMR spectra for the silica aerogels from the NSM and MSM procedures, respectively. The peaks at -103 and -110 ppm were from Q3-Si and Q4-Si and showed up in both samples.15The peak at 12 ppm came from -Si(CH3)3,15 indicating the successful treatment of the surface modification. This peak, however, showed up only for the MSM product.」(2007ページ左欄13行~21行) (当審訳:29Siと13CのNMRスペクトルから、生成物の表面特性をさらに確認することができる。図6(a)及び(b)は、それぞれNSMとMSMの手順で得られたシリカエアロゲルの29SiNMRスペクトルを示している。-103ppm及び-110ppmのピークはQ3-Si及びQ4-Siからのもので、どちらのサンプルにも見られた。1512ppmのピークは-Si(CH3)3)に由来するもので、15表面改質の処理が成功したことを示している。しかし、このピークはMSM製品にのみ現れた。) (オ) 「IV. Conclusion A MSM approach was developed to obtain monolithic silica aerogels with ambient pressure drying. The resulting silica aerogels possessed low thermal conductivity and high porosity similar to those produced with the conventional supercritical drying. The success of the approach lies in the fact that sufficient surface modification can be achieved with MSM treatment, transforming the silica surface from hydrophilic to hydrophobic for substantial reduction in moisture adsorption and thus surface tension force during the drying stage.」(2007ページ左欄下から3行~右欄7行) (当審訳:IV. 結論 常圧乾燥でモノリシックシリカエアロゲルを得るMSMアプローチを開発した。得られたシリカエアロゲルは、従来の超臨界乾燥で製造されたものと同様に、低い熱伝導率と高い気孔率を有していた。このアプローチの成功は、MSM処理によって十分な表面改質が達成され、シリカ表面を親水性から疎水性へと変化させ、乾燥段階での水分吸着、更に表面張力を大幅に減少させることができるという事実にある。) なお、甲第4~9号証の摘記は省略する。 (2) 対比・判断 ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「シリカエアロゲル」、「強度を提供することができ、燃焼性を低減することができ、エアロゲル粒子をブランケットに結合して保持するのを助けることができる」「繊維」及び「赤外線不透明化剤などの不透明化剤や、難燃剤又は防火剤」である「添加剤」は、それぞれ、本件発明1における「シリカ系エアロゲル」、「強化材料」及び「添加剤」に相当し、甲1発明における「不織布断熱ブランケット」は、本件発明1における「強化エアロゲル組成物」に相当するといえる。 また、甲1発明において、「シリカエアロゲル」が「疎水性シリカエアロゲル」であることは、本件発明1において、「強化エアロゲル組成物」が「少なくとも1つの疎水結合ケイ素」を含むことを満たすものといえ、甲1発明において、「不織布断熱ブランケット」が、「ASTM法C1511を使用して試験した場合、その重量の」「20%未満」「の水を吸収する」ことは、本件発明1において、「強化エアロゲル組成物」が「20wt%以下の液水吸収」「を有する」ことを満たすものといえる。 すると、本件発明1と甲1発明とは、 「シリカ系エアロゲルと、強化材料と、添加剤と、少なくとも1つの疎水結合ケイ素とを含む強化エアロゲル組成物であって、 20wt%以下の液水吸収を有する、強化エアロゲル組成物。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明1は、「強化エアロゲル組成物」が、「0.01~0.5のT1-2:T3の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトル及び0.1~1.5のQ2-3:Q4の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトルのいずれか一方又は両方;を有し、ここでT1-2:T3の比は、T3種に対するT1種とT2種との組み合わせの比を示し、Q2-3:Q4の比は、Q4種に対するQ2種とQ3種との組み合わせの比を示し、T1、T2、T3、Q2、Q3、及びQ4の量は、29SiNMR分析におけるT1種、T2種、T3種、Q2種、Q3種、及びQ4種にそれぞれ関連する個々の化学シフトピークの積分によって定量化される」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、前記発明特定事項を有するか否か明らかでない点。 ・相違点2:本件発明1は、「前記強化エアロゲル組成物が、717cal/g以下の燃焼熱、及び100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、750℃以上、800℃以上、又はこれらの値の任意の2つの間の自己加熱温度を有している」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「20MJ/Kg未満、15MJ/Kg未満、12MJ/Kg未満、10MJ/Kg未満、8MJ/Kg未満、6MJ/Kg未満、4MJ/Kg未満、又は3MJ/Kg未満のカロリー含有量を示す」ものである点。 イ 始めに、前記アの相違点1について検討する。 (ア) まず、前記相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第1号証の記載から、甲1発明が前記相違点1に係る発明特定事項を有するといえるものではないし、甲1発明が前記相違点1に係る発明特定事項を有することを裏付ける証拠もないから、前記相違点1は実質的な相違点である。 (イ) 次に、前記相違点1の容易想到性について検討すると、前記(1)ア(ア)bの記載によれば、甲1発明は、ブランケットの断面の上部10%のエアロゲル粒子の密度を、断面の下部10%のエアロゲル粒子の密度の+/-20%以内とすることで、全体的に均一な組成を示すエアロゲルブランケットとするものであり、そもそも、「T1-2:T3の比」や「Q2-3:Q4の比」に注目したものではないから、甲1発明を、「0.01~0.5のT1-2:T3の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトル及び0.1~1.5のQ2-3:Q4の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトルのいずれか一方又は両方」を有するものとする動機付けは存在しない。 また、前記(1)イの甲第2号証の記載によれば、甲第2号証には、ゾル-ゲル法によって調製され、CO2超臨界法によって乾燥されたシリカエアロゲルが、親水性表面基と疎水性表面基の比率を変えるために、異なる比率のテトラメトキシシラン(TMOS)とメチルトリメトキシシラン(MTMS)から生成されたこと、エアロゲルの細孔表面に存在するSi-OH基、Si-OCH3基、Si-CH3基の相対的な割合とシリカネットワーク構造は、1H、29Si、13C核磁気共鳴(NMR)によって決定されたこと(前記(1)イ(ア))、疎水性シリカエアロゲルは、以前の論文に記載された手順に従って、反応物の割合を変えて調製され、NMRスペクトルはBRUCKER DSX-400スペクトロメーターで400MHzで収集され、これらのデータは、パルス間隔5s、パルス時間3.5μs、HとSiの接触時間5msの条件で、交差偏光マジックアングル5kHzでスピンさせたサンプルの29Si CP-MAS NMRスペクトルによって完成し、29Siの化学シフトはテトラメチルシランを基準としていること(前記(1)イ(イ))、29Si NMRスペクトルは、H1からH4までのモル比MTMS/MTMS+TMOSに応じたピークの展開を示し、すべてのサンプルには-99ppmと-108ppmのピークがあり、それぞれQ3-SiとQ4-Siを示し、H1及びH2エアロゲルでは、Q2-Siを示す-90ppmのピークが現れ、H2及びH3エアロゲルには、それぞれT3-Si及びT2-Siに対応する-63ppm及び-59ppmのピークがあり、H1エアロゲルを除くすべてのサンプルで、-53ppmのT1-Siが出現し、T0-Siに相当する-45ppmのピークがH4エアロゲルのみに出現したこと(前記(1)イ(ウ))が記載され、また、それぞれ0%、20%、40%、60%MTMSエアロゲルに対応した、エアロゲルH1、H2、H3、H4の合成に使用した化学製品のモル比(前記(1)イ(エ))及び合成された前記エアロゲルH1、H2、H3、H4の29Si NMRスペクトル(前記1(1)(オ))が記載され、更に、結論として、Si-CH3基はMTMS/MTMS+TMOSのモル比とともに増加し、最適なモル比は40%であることがわかったこと(前記1(イ)オ)が記載されている。 更に、前記(1)ウの甲第3号証の記載によれば、甲第3号証には、熱伝導率が0.036W・(m・K)-1と低く、気孔率が97%と高いモノリシックシリカエアロゲルを、多重修飾アプローチによる常圧乾燥により調製することに成功したこと、前記調製は、テトラエトキシシラン(TEOS)由来の湿ったゲルをトリメチルクロロシランで複数回処理して疎水性にし、常圧下で乾燥させたものであること、核磁気共鳴分光法、フーリエ変換赤外分光法による表面結合の測定、および接触角測定による疎水性の測定を、表面改質なし、単一、および多重表面改質(MSM)サンプルの間で比較し、得られた表面改質の程度の違いを明らかにしたこと(前記(1)ウ(ア))、NMR分析において、固体試料の29Si NMRスペクトルは、交差分極/マジックアングルスピニング(CP/MAS)法を用いて測定した(DSX-400、Bruker、Rheinsetten、ドイツ)こと、交差分極接触時間は3ms、1H90°パルス幅は5μm、遅延時間は2s、取得時間は0.0123sだったこと(前記(1)ウ(イ))が記載され、また、表面改質なし製品の29Si核磁気共鳴スペクトル(NMR)、多重表面改質(MSM)製品の29SiNMR、MSM製品の13CNMR(前記(1)ウ(ウ))が記載され、前記29Siと13CのNMRスペクトルから、生成物の表面特性をさらに確認することができ、NSMとMSMの手順で得られたシリカエアロゲルの29SiNMRスペクトルにおける-103ppm及び-110ppmのピークはQ3-Si及びQ4-Siからのもので、どちらのサンプルにも見られ、12ppmのピークは-Si(CH3)3)に由来するもので、表面改質の処理が成功したことを示すが、このピークはMSM製品にのみ現れたことが記載され(前記(1)ウ(エ))、結論として、常圧乾燥でモノリシックシリカエアロゲルを得るMSMアプローチが開発され、得られたシリカエアロゲルは、従来の超臨界乾燥で製造されたものと同様に、低い熱伝導率と高い気孔率を有しており、このアプローチの成功は、MSM処理によって十分な表面改質が達成され、シリカ表面を親水性から疎水性へと変化させ、乾燥段階での水分吸着、更に表面張力を大幅に減少させることができるという事実にあることが記載されている(前記(1)ウ(オ))。 ところが、甲第2~3号証にも、シリカエアロゲルにおける「T1-2:T3の比」や「Q2-3:Q4の比」に注目して、「0.01~0.5のT1-2:T3の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトル及び0.1~1.5のQ2-3:Q4の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトルのいずれか一方又は両方」を有するものとことは記載も示唆もされていないし、摘記を省略した甲第4~9号証についてみても事情は同じであるから、甲第2~9号証の記載事項を参照したとしても、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らない。 してみれば、前記アの相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2~9号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明1と同様の発明特定事項を有する本件発明2及び4~48について検討しても事情は同じである。 (3) 申立人の主張について ア 進歩性欠如についての特許異議申立書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 (ア) 本件特許明細書には、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項の技術的意義やその効果について何ら記載されておらず、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲第2号証や甲第3号証に記載された従来のエアロゲルも既に満たしている物性であるから、甲1発明を前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである(49ページ12行~52ページ1行)。 (イ) 甲第2号証の図2(前記(1)イ(オ))をみると、エアロゲルH3及びH4のQ比は前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項におけるQ比を満たし、そのようなQ比は、当業者がエアロゲルに疎水性を付与するために疎水性有機基を導入する過程で当然に達成することになる物性であり、甲第2号証などに記載された公知のエアロゲルに内在された物性に過ぎないから、本件発明1は、甲1発明に甲第2号証に記載された事項を組み合わせて容易に発明をすることができたものである。 また、甲第3号証の図6(b)(前記(1)ウ(ウ))をみると、甲第3号証に記載された表面改質されたエアロゲルのQ比は、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項におけるQ比を満たすものであり、前記エアロゲルは、そうすることで、シリカ表面への水分吸着の程度、ひいては湿潤ゲルからの溶媒の離脱に起因する表面張力が大幅に減少し、モノリシックなエアロゲルが得られる可能性が高まるものであるから、甲1発明において、疎水性のシリカ系エアロゲル粒子として、甲第3号証に記載されている疎水性表面改質により製造された疎水性エアロゲルを用いる動機付けがあるし、そうする際の阻害要因もないから、本件発明1は、甲1発明に甲第3号証に記載された事項を組み合わせて容易に発明をすることができたものである(52ページ2行~59ページ1行)。 イ 以下、前記ア(ア)及び(イ)の主張について検討すると、前記ア(ア)及び(イ)の主張は、総じて、本件特許明細書には、前記「Q2-3:Q4の比」の技術的意義が記載されておらず、甲第2号証及び甲第3号証には、本件発明における「Q2-3:Q4の比」を満たすエアロゲルが記載されているから、前記相違点1は容易想到であることをいうものと解される。 ところが、本件特許明細書の段落【0050】~【0052】(下記2(2)イ)の記載からみれば、エアロゲル中に含有する疎水結合ケイ素の量は、NMR分光、例えば、CP/MAS29Si固体状態NMRを使用して分析することができ、エアロゲルのNMR分析は、Mタイプの疎水結合ケイ素(単官能性シリカ、例えばTMS誘導体);Dタイプの疎水結合ケイ素(二官能性シリカ、例えば、DMDS誘導体);Tタイプの疎水結合ケイ素(三官能性シリカ、例えばMTES誘導体);及びQタイプのケイ素(四官能性シリカ、例えばTEOS誘導体)の特徴づけ及び相対的な定量化を可能とするものであり、NMR分析はまた、特定タイプの疎水結合ケイ素をサブタイプに分類(例えば、Tタイプの疎水結合ケイ素をT1種、T2種、及びT3種に分類)することを可能とすることによって、エアロゲル中に含有する疎水結合ケイ素の化学結合を分析するために使用することができ(段落【0050】)、CP/MAS29SiNMR分析における疎水結合ケイ素の特徴づけは、以下の化学シフトピーク:M1(30から10ppm);D1(10から-10ppm)、D2(-10から-20ppm);T1(-30から-40ppm)、T2(-40から-50ppm)、T3(-50から-70ppm);Q2(-70から-85ppm)、Q3(-85から-95ppm)、Q4(-95から-110ppm)に基づくことができ(段落【0051】)、本件発明におけるエアロゲル材料は、約0.01~約0.5、約0.01~約0.3、又は約0.1~約0.3のT1-2:T3の比を有することができ、約0.1~2.5、約0.1~2.0、約0.1~1.5、約0.1~1.0、又は約0.5~1.0のQ2-3:Q4の比を有することができるものである(段落【0052】)。 前記記載によれば、本件発明における「T1-2:T3の比」や「Q2-3:Q4の比」は、エアロゲル中に含有する疎水結合ケイ素の量や、エアロゲル中に含有する疎水結合ケイ素の化学結合の分析結果を表すものといえ、これらは、「T1-2:T3の比」や「Q2-3:Q4の比」の技術的意義を示すものといえるから、本件特許明細書に、「Q2-3:Q4の比」の技術的意義が記載されていないとはいえない。 そして、そもそも、甲第1号証に記載された発明が「T1-2:T3の比」や「Q2-3:Q4の比」に注目したものではないこと、及び、甲第2~9号証にも、シリカエアロゲルにおける「T1-2:T3の比」や「Q2-3:Q4の比」に注目して、「0.01~0.5のT1-2:T3の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトル及び0.1~1.5のQ2-3:Q4の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトルのいずれか一方又は両方」を有するものとことは記載も示唆もされていないことは、前記(2)イ(イ)に記載したとおりであるから、仮に、甲第2号証や甲第3号証に本件発明1における「Q2-3:Q4の比」を満たすエアロゲルが記載されているとしても、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らないことに変わりはないので、申立人の前記ア(ア)及び(イ)の主張はいずれも採用できない。 (4) 小括 したがって、本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~9号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第4の1の特許異議の申立て理由は理由がない。 2 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について (1) 実施可能要件違反の判断手法 明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるか否かという観点から判断すべきものである。 そして、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 また、方法の発明について実施可能要件を満たすためには、発明の詳細な説明に、当業者が発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用できる程度の記載があることを要する。 (2) 本件特許明細書の記載事項 本件特許明細書には、以下のア~オの記載がある。 ア 「【背景技術】 【0002】 低密度のエアロゲル材料は、利用可能である最良な固体絶縁体であると広く考えられている。エアロゲルは、伝導(低い構造密度が固体骨格を通じてエネルギー伝達のための蛇行した経路(tortuouspath)をもたらす)、対流(大きな孔容積と極めて小さな孔サイズが最小の対流をもたらす)、及び放射(IR吸収又は散乱ドーパントが、エアロゲルマトリックスにわたって容易に分散する)を最小化することにより、主に絶縁体として機能する。エアロゲルは、加熱及び冷却絶縁、音響絶縁、電子誘電体、航空宇宙、エネルギー保存及び製造、並びに濾過を含む、広い範囲の用途で使用することができる。さらに、エアロゲル材料は、それらを様々な絶縁及び非絶縁用途で十分に有用にさせる、多くの他の興味深い音響的、光学的、機械的、及び化学的性質を示す。 【発明の概要】 【0003】 1つの一般的態様において、本開示は、水性環境で好ましい性能を有し、好ましい燃焼及び自己加熱の性質をまた有する、耐久性があって扱いが容易なエアロゲル組成物を提供することができる。幾つかの実施形態において、本開示は、水性環境で好ましい性能を有し、好ましい燃焼及び自己加熱の性質をまた有する、柔軟で弾性があり自己支持性がある強化エアロゲル組成物であるエアロゲル組成物を示す。 【0004】 別の一般的態様において、本開示は、シリカ系骨格を含み、以下の性質、a)0.60g/cm3以下の密度、b)50mW/M・K以下の熱伝導度、及びc)40wt%以下の液水吸収を有するエアロゲル組成物を提供することができる。・・・幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、35wt%以下、30wt%以下、25wt%以下、20wt%以下、15wt%以下、又は10wt%以下の液水吸収を有する。・・・幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、0.01~0.5のT1-2-T3シリカ種の比、及び/又は0.1~1.5のQ2-3:Q4シリカ種の比を有する。・・・幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、約1wt%~約30wt%、約1wt%~約25wt%、約1wt%~約20wt%、約1wt%~約15wt%、約1wt%~約10wt%、又は約1wt%~約5wt%の疎水性有機含有量を有する。 ・・・ 【0018】 本開示の内容の範囲内において、「強化エアロゲル組成物」という用語は、エアロゲル材料内にエアロゲル骨格の部分でない強化相を含むエアロゲル組成物を言い表す。強化相は、増加した柔軟性、弾性、適合性又は構造安定性をエアロゲル材料に提供する任意の材料であることができる。よく知られた強化材料の例としては、限定されないが、連続気泡発泡体強化材料、独立気泡発泡体強化材料、連続気泡膜、ハチの巣強化材料、ポリマー強化材料、及び繊維強化材料(例えば、離散繊維、織布材料、不織布材料、綿(battings)、ウェブ、マット、及びフェルト)が挙げられる。追加的に、繊維系強化は、1つ又は複数のその他の強化材料と組み合わせることができ、組成物の限定された好ましい部分にわたって又はその中で連続的に配向させることができる。 ・・・ 【0034】 本開示の内容の範囲内において、「燃焼熱」及び「HOC」という用語は、エアロゲル材料又は組成物の燃焼で解放される熱エネルギーの量の測定値を言い表す。・・・好ましくは、本開示のエアロゲル組成物は、約750cal/g以下、約717cal/g以下、・・・約10cal/g以下、又はこれらの値の任意の2つの間の燃焼熱を有することができる。別のエアロゲル組成物に対して燃焼熱が改善されたエアロゲル組成物は、参照エアロゲル組成物と比べて低い熱燃焼値を有する。 ・・・ 【0038】 本開示の内容の範囲内において、「自己加熱温度」という用語は、発熱反応が絶縁系、例えば、エアロゲル材料又は組成物を含む絶縁系内で特殊な測定条件下において現れる環境熱の最低温度の測定値を言い表す。本開示の内容の範囲内において、絶縁系の自己加熱温度の測定は、別段の記載がない限り、以下の手順、a)各辺で20mmの寸法を持つ幾何学的立方体である絶縁系を提供すること、b)絶縁系の中心に熱電対測定デバイスを設置すること、及びc)自己加熱発熱事象が起こるまで、絶縁系を一連の増加温度にさらすこと、に従って測定され、それは、絶縁系内で自己加熱発熱事象を示すのに十分有意な量で試料の外部さらし温度を超える、熱電対測定デバイスの温度によって示される。好ましくは、本開示のエアロゲル材料又は組成物は、約100℃以上、約150℃以上、約200℃以上、約250℃以上、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約450℃以上、約500℃以上、約550℃以上、約600℃以上、約650℃以上、約700℃以上、約750℃以上、約800℃以上、又はこれらの値の任意の2つの間の自己加熱温度を有する。別のエアロゲル材料又は組成物に対して自己加熱温度が改善されたエアロゲル材料又は組成物は、参照エアロゲル材料又は組成物に比べて高い自己加熱温度を有する。」 イ 「【0050】 エアロゲル中に含有する疎水結合ケイ素の量は、NMR分光、例えば、CP/MAS29Si固体状態NMRを使用して分析することができる。エアロゲルのNMR分析は、Mタイプの疎水結合ケイ素(単官能性シリカ、例えばTMS誘導体);Dタイプの疎水結合ケイ素(二官能性シリカ、例えば、DMDS誘導体);Tタイプの疎水結合ケイ素(三官能性シリカ、例えばMTES誘導体);及びQタイプのケイ素(四官能性シリカ、例えばTEOS誘導体)の特徴づけ及び相対的な定量化を可能とする。NMR分析はまた、特定タイプの疎水結合ケイ素をサブタイプに分類(例えば、Tタイプの疎水結合ケイ素をT1種、T2種、及びT3種に分類)することを可能とすることによって、エアロゲル中に含有する疎水結合ケイ素の化学結合を分析するために使用することができる。シリカ材料のNMR分析に関する具体的な詳細は、Geppiらによる文献「有機/無機複数成分材料の研究への固体状態NMRの適用(Applications of Solid-State NMR to the Study of Organic/Inorganic Muliticomponent Materials)」中で、具体的には7~9ページ(Appl.Spec.Rev.(2008),44-1:1-89)で確認することができ、それは、具体的に述べたページに従って、参照により本明細書に組み込まれる。 【0051】 CP/MAS29SiNMR分析における疎水結合ケイ素の特徴づけは、以下の化学シフトピーク:M1(30から10ppm);D1(10から-10ppm)、D2(-10から-20ppm);T1(-30から-40ppm)、T2(-40から-50ppm)、T3(-50から-70ppm);Q2(-70から-85ppm)、Q3(-85から-95ppm)、Q4(-95から-110ppm)に基づくことができる。これらの化学シフトピークは、おおよそでありかつ例示であり、制限される又は限定的であることが意図されない。材料内の様々なケイ素種に起因する正確な化学シフトピークは、材料の特定の化学成分に依存し、一般的に、当業者による日々の実験及び分析を通じて解釈することができる。 【0052】 本開示のエアロゲル材料は、約0.01~約0.5、約0.01~約0.3、又は約0.1~約0.3のT1-2:T3の比を有することができる。T1-2:T3の比は、T3種に対するT1種とT2種との組み合わせの比を示す。T1、T2及びT3の量は、前に規定したように、29SiNMR分析におけるT1種、T2種、又はT3種にそれぞれ関連する個々の化学シフトピークの積分によって定量化することができる。本開示のエアロゲル材料は、約0.1~2.5、約0.1~2.0、約0.1~1.5、約0.1~1.0、又は約0.5~1.0のQ2-3:Q4の比を有することができる。Q2-3:Q4の比は、Q4種に対するQ2種とQ3種との組み合わせの比を示す。Q2、Q3及びQ4の量は、前に規定したように、29SiNMR分析におけるQ2種、Q3種、又はQ4種にそれぞれ関連する個々の化学シフトピークの積分によって定量化することができる。」 ウ 「【0059】 本開示のエアロゲルは、好ましくは、ケイ素アルコキシドから形成された加水分解シリケートエステルのアルコール溶液から主に形成された無機シリカエアロゲルである。しかしながら、本開示は、全体として、当業者に公知のいかなる他のエアロゲル組成物で実施することができ、いかなる1つの前駆体材料又は前駆体材料のアマルガム混合物に限定されない。 【0060】 エアロゲルの製造は、一般的に、以下の工程、i)ゾルゲル溶液を形成すること、ii)ゾルゲル溶液からゲルを形成すること、及びiii)革新的な処理及び抽出を通じてゲル材料から溶媒を抽出して、乾燥エアロゲル材料を得ることを含む。このプロセスは、以下でより詳細に、具体的には、シリカエアロゲルのような無機エアロゲルを形成する内容において議論される。・・・ 【0061】 無機エアロゲルを形成する第1工程は、一般的に、アルコール系溶媒中での金属アルコキシド前駆体の加水分解及び縮合を通じての、ゾルゲル溶液の形成である。無機エアロゲルの形成における主な変数としては、ゾルゲル溶液中に含まれるアルコキシド前駆体のタイプ、溶媒の性質、処理温度、及びゾルゲル溶液のpH(酸又は塩基の追加によって変えることができる)、並びにゾルゲル溶液中の前駆体/溶媒/水の比が挙げられる。ゾルゲル溶液の形成におけるこれらの変数の制御は、「ゾル」状態から「ゲル」状態へのゲル材料のその後の変換の際に、ゲル骨格の成長及び凝集の制御を可能とすることができる。・・・ 【0062】 ゾルゲル溶液は、少なくとも1つのゲル前駆体を溶媒と組み合わせることによって形成される。ゾルゲル溶液を形成するのに使用するための適切な溶媒は、1~6個、好ましくは2~4個の炭素原子を持つ低級アルコールを含むが、他の溶媒を当業者に公知であるものとして使用することができる。有用な溶媒の例としては、限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。複数の溶媒をまた、所望のレベルの分散を得るために又はゲル材料の性質を最適化するために組み合わせることができる。・・・ 【0063】 水はまた、前駆体-溶媒溶液の中に存在することができる。水は、金属アルコキシド前駆体を金属ヒドロキシド前駆体に加水分解するために作用する。・・・ ・・・ 【0065】 ゾルゲル溶液は、追加の共ゲル化前駆体、並びに充填材材料及び他の添加剤を含むことができる。充填材材料及び他の添加剤を、ゲルの形成前又は形成中のあらゆる時点でゾルゲル溶液中に分散することができる。充填材材料及び他の添加剤をまた、当業者に公知な様々な技術を通じて、ゲル化後にゲル材料中に組み入れることができる。好ましくは、ゲル化前駆体、溶媒、触媒、水、充填材材料及び他の添加剤を含むゾルゲル溶液は、適切な条件下で効率的なゲル形成を可能とする均一溶液である。 【0066】 ゾルゲル溶液が形成され最適化された後、ゾルゲル中のゲル形成成分はゲル材料に変換されることができる。ゲル形成成分をゲル材料に変換するプロセスは、ゲル材料のゲル点までゲルが固体化する初期ゲル形成工程を含む。ゲル材料のゲル点は、ゲル化溶液が流れ抵抗を示す及び/又はその容積にわたって実質的に連続なポリマー骨格を形成する点として理解することができる。ゲル形成技術の範囲は当業者に公知である。例としては、限定されないが、混合物を十分な時間静止状態に維持すること、溶液のpHを調整すること、溶液の温度を調整すること、ある形態のエネルギー(紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、超音波、粒子線、電磁気)を混合物に与えること、又はそれらの組み合わせが挙げられる。 【0067】 ゲル形成成分をゲル材料に変換するプロセスはまた、液相抽出の前にエージング工程(硬化とも言い表される)を含むことができる。ゲル材料がそのゲル点に達した後のゲル材料のエージングは、ネットワーク内の架橋の数を増加せることによってゲル骨格をさらに強化することができる。ゲルエージングの時間は、得られるエアロゲル材料内の様々な性質を制御するために調整することができる。このエージング手順は、液相抽出中の潜在的な容積減少及び収縮を阻止するのに有用であることができる。エージングは、(抽出の前に)延長された時間、ゲルを静止状態で維持すること、上昇した温度でゲルを維持すること、架橋促進化合物を追加すること、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。エージングのための好ましい温度は、通常、約10℃~約100℃である。ゲル材料のエージングは、典型的に、ウェットゲル材料の液相抽出まで続く。 【0068】 ゲル形成材料をゲル材料に変換するための時間は、初期ゲル形成の時間(ゲル化開始からゲル点まで)、並びに、液相抽出前のゲル材料の任意のその後の硬化及びエージングの時間(ゲル点から液相抽出開始まで)の両方を含む。ゲル形成材料をゲル材料に変換するための全体の時間は、典型的に、約1分間~7日間、好ましくは約30時間以下、約24時間以下、約15時間以下、約10時間以下、約6時間以下、約4時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約30分間以下、又は約15分間以下である。 【0069】 得られたゲル材料は、ウェットゲル中に存在する一次反応溶媒を置き換えるために、適切な二次溶媒中で洗浄することができる。そのような二次溶媒は、1つ又は複数の脂肪族炭素原子を持つ直鎖状1価アルコール、2つ以上の炭素原子を持つ2価アルコール、分枝状アルコール、環状アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、多価アルコール、エーテル、ケトン、環状エーテル又はそれらの誘導体であることができる。 【0070】 ゲル材料が形成され処理された後、次いで、ゲルの液相は、革新的な処理及び抽出技術を含む、抽出方法を使用してウェットゲルから少なくとも部分的に抽出されて、エアロゲル材料を形成することができる。・・・ 【0071】 エアロゲルは、一般的に、液体移動相の臨界点の近く又はその上の温度及び圧力で、ゲル材料から液体移動相を除去することで形成される。・・・ ・・・ 【0074】 ウェットゲルから液相を抽出する1つの好ましい実施形態は、例えば、最初にゲルの孔ネットワーク中に存在する一次溶媒を液体二酸化炭素に実質的に交換すること、並びに、次いで、二酸化炭素の臨界温度(約31.06℃)超に、(典型的にはオートクレーブ中で)ウェットゲルを加熱すること、及び系の圧力を二酸化炭素の臨界圧力(約1070psig)超の圧力に増加させることを含む、二酸化炭素の超臨界条件を使用する。ゲル材料周辺の圧力を、ゲルから超臨界二酸化炭素流体を除去するのを容易にするためにわずかに変動させることができる。・・・ ・・・ 【0079】 乾燥エアロゲル材料又は組成物は、エアロゲル材料又は組成物の目標性質を最適化するために、さらに処理することができる。幾つかの実施形態において、乾燥エアロゲル組成物を、1つ又は複数の熱処理、例えば、熱分解にさらして、熱処理されたエアロゲル組成物を製造することができる。注意深く制御された熱処理を使用して、エアロゲル材料又は組成物の炭化水素燃料含有量を減らす又は安定化することができ、それにより、エアロゲル材料又は組成物の関連するHOC及びTd性質を改善することができる。・・・ ・・・ 【0083】 エアロゲル材料又は組成物の熱処理は、減酸素環境において起こることができる。本発明の内容の範囲内において、「減酸素環境」という用語は、10容積%以下の酸素(標準条件での周辺空気中の酸素の量未満である)の容積の濃度を含む雰囲気を言い表す。減酸素環境は、(限定されないが、)窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アルゴン、及びキセノンを含む不活性ガスの濃度が上昇された陽圧雰囲気を含むことができる。・・・本開示の好ましい実施形態において、乾燥疎水性エアロゲル組成物は、約200℃~約800℃の温度で、約1分間~約3時間の時間、約95%~約99.9%の不活性ガス(例えば、窒素)を含む減酸素雰囲気中で熱処理される。 ・・・ 【0087】 エアロゲル組成物は、より柔軟で、耐性があり、適合性がある複合体生成物を得るために、様々な繊維強化材料で繊維強化することができる。繊維強化剤を、ゲル化プロセス中のあらゆる時点でゲルに加え、ウェットな繊維状ゲル組成物を製造することができる。次いで、ウェットゲル組成物を乾燥して繊維強化エアロゲル組成物を製造することができる。繊維強化材料は、離散繊維、織布材料、不織布材料、綿、ウェブ、マット、及びフェルトの形態であることができる。繊維強化は、有機繊維状材料、無機繊維状材料、又はそれらの組み合わせから作ることができる。」 エ 「【0096】 例2 EtOH及びH2O中で酸性触媒を用いてTEOSとMTESとを共加水分解することで、ゾルを作った。ゾル材料のモル比を調整して、エアロゲル材料内において約7.0wt%の有機含有量を持つエアロゲルを得た。ゾルを60℃で4時間撹拌して、次いで、室温に冷却した。加水分解中にゾルの容積が約3%減少し、EtOHを加えてゾルをその元の容積に戻した。 【0097】 0.5MのNH4OHを、0.07~0.08g/ccの目標エアロゲル密度を持つ複合ゾルに加えた。ゾルを繊維強化相に流し込み、ゲルを得た。約1時間の硬化の後、エアロゲル材料を、3:1の流体:ゲル比で、0.8wt/容積%のNH3を含有するエタノールエージング流体中において68℃で約16時間エージングした。試験片を超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、110℃で2時間乾燥した。 【0098】 繊維強化相は、9ミクロン径の繊維を持ち、約3.8オンス/平方フィートの密度を持つ約10mm厚のシリカPD綿であった。得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与えた)。 ・・・ 【0132】 例13 例1、2、6、7、8、及び9では、各例において期待されたエアロゲル材料(3.0~5.0wt%の複合体)中に約7.0~9.0wt%の疎水性有機含有量を持つエアロゲル組成物を製造した。・・・ 【0133】 例1、2、6、7、8及び9において製造された試料、並びに、炭化ケイ素粉末を含む例4において製造された試料を、200℃~700℃の範囲の処理温度の選択値に達するまで10℃/分の温度ランプ速度で、N2下において管状炉中で熱処理した。処理時間が完了した後、炉を5℃/分の冷却ランプで冷却することができ、試料を除去した。 【0134】 処理された試料は、例2からの7%のMTES試料;例1からのNaSiO3CH3試料;例9からの7%、8%及び9%のBTESE試料;例6からの8%及び9%のPhTES試料;例7からの11%及び19%のPhTES試料;並びに例8からの7%、11%及び19%のPhTES試料を含んでいた。試料を、200℃~700℃の範囲の様々な温度下で、10秒間~1時間の範囲の時間熱処理した。475℃で10分間及び525℃で10分間処理した試料を追加の試験のために選択した。 ・・・ 【0145】 例17 表1は、例13からの処理されたエアロゲル複合体試料についての、減酸素熱処理前後の両方での燃焼熱(HOC)の測定値を示す。HOC測定は、ISO1716測定標準に一致した条件に従って行った。 【0146】 7%のMTESについての処理前試料は約600cal/gのHOCの測定値を有し、処理後試料(525℃で10分間熱処理された)は約425cal/gのHOCの測定値を有した。・・・ 【0147】 例18 図1は、例13からの7%のMTES試料についての、525℃で10分間の減酸素熱処理前後の両方でのCP/MAS29Si固体状態NMR分析を示す。 【0148】 7%のMTESについての処理前試料は約0.463のT1-2:T3比と、約1.961のQ2-3:Q4比とを示した。7%のMTESについての処理後試料は約0.272のT1-2:T3比と、約0.842のQ2-3:Q4比とを示した。重なったピークは、個々に比を得るために、統合されたピークを畳み込みを解いて得た(デコンボリューションした)。 ・・・ 【0152】 【表1】 [図:0001413325000004.jpg] 」 オ 「【図1】 [図:0001413325000005.jpg] 」 (3) 実施可能要件についての一般的な判断 ア 本件特許明細書の前記(2)ウの記載によれば、本件発明に係る「強化エアロゲル組成物」のエアロゲルは、好ましくは、ケイ素アルコキシドから形成された加水分解シリケートエステルのアルコール溶液から主に形成された無機シリカエアロゲルであって(段落【0059】)、当該「強化エアロゲル組成物」の製造方法は、一般的に、以下の工程、i)ゾルゲル溶液を形成すること、ii)ゾルゲル溶液からゲルを形成すること、及びiii)革新的な処理及び抽出を通じてゲル材料から溶媒を抽出して、乾燥エアロゲル材料を得ることを含むものである(段落【0060】)。 すなわち、無機エアロゲルを形成する第1工程は、一般的に、アルコール系溶媒中での金属アルコキシド前駆体の加水分解及び縮合を通じての、ゾルゲル溶液の形成であり、ゾルゲル溶液は、少なくとも1つのゲル前駆体を溶媒と組み合わせることによって形成されるものであり、有用な溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフランなどが挙げられるものであり、水はまた、前駆体-溶媒溶液の中に存在することができ、水は、金属アルコキシド前駆体を金属ヒドロキシド前駆体に加水分解するために作用するものであり(段落【0061】~【0063】)、ゾルゲル溶液は、追加の共ゲル化前駆体、並びに充填材材料及び他の添加剤を含むことができ、充填材材料及び他の添加剤を、ゲルの形成前又は形成中のあらゆる時点でゾルゲル溶液中に分散することができ、充填材材料及び他の添加剤をまた、当業者に公知な様々な技術を通じて、ゲル化後にゲル材料中に組み入れることができるものである(段落【0065】)。 そして、ゾルゲル溶液が形成され最適化された後、ゾルゲル中のゲル形成成分はゲル材料に変換されるものであり、ゲル形成成分をゲル材料に変換するプロセスは、ゲル材料のゲル点までゲルが固体化する初期ゲル形成工程を含むものであり、ゲル形成技術の範囲は当業者に公知であり、例としては、混合物を十分な時間静止状態に維持すること、溶液のpHを調整すること、溶液の温度を調整すること、ある形態のエネルギー(紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、超音波、粒子線、電磁気)を混合物に与えること、又はそれらの組み合わせが挙げられるものであり、ゲル形成成分をゲル材料に変換するプロセスはまた、液相抽出の前にエージング工程(硬化とも言い表される)を含むことができ、ゲル材料がそのゲル点に達した後のゲル材料のエージングは、ネットワーク内の架橋の数を増加せることによってゲル骨格をさらに強化することができるものであり、エージングのための好ましい温度は、通常、約10℃~約100℃であり、ゲル形成材料をゲル材料に変換するための時間は、初期ゲル形成の時間(ゲル化開始からゲル点まで)、並びに、液相抽出前のゲル材料の任意のその後の硬化及びエージングの時間(ゲル点から液相抽出開始まで)の両方を含み、ゲル形成材料をゲル材料に変換するための全体の時間は、典型的に、約1分間~7日間であるものである(段落【0066】~【0068】)。 次に、得られたゲル材料は、ウェットゲル中に存在する一次反応溶媒を置き換えるために、適切な二次溶媒中で洗浄することができ、そのような二次溶媒は、1つ又は複数の脂肪族炭素原子を持つ直鎖状1価アルコール、2つ以上の炭素原子を持つ2価アルコール、分枝状アルコール、環状アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、多価アルコール、エーテル、ケトン、環状エーテル又はそれらの誘導体であることができるものであり、ゲル材料が形成され処理された後、次いで、ゲルの液相は、革新的な処理及び抽出技術を含む、抽出方法を使用してウェットゲルから少なくとも部分的に抽出されて、エアロゲル材料を形成することができるものであり、エアロゲルは、一般的に、液体移動相の臨界点の近く又はその上の温度及び圧力で、ゲル材料から液体移動相を除去することで形成されるものであり、ウェットゲルから液相を抽出する1つの好ましい実施形態は、最初にゲルの孔ネットワーク中に存在する一次溶媒を液体二酸化炭素に実質的に交換すること、並びに、次いで、二酸化炭素の臨界温度(約31.06℃)超に、(典型的にはオートクレーブ中で)ウェットゲルを加熱すること、及び系の圧力を二酸化炭素の臨界圧力(約1070psig)超の圧力に増加させることを含む、二酸化炭素の超臨界条件を使用するものである(段落【0069】~【0071】、【0074】)。 そして、乾燥エアロゲル材料又は組成物は、エアロゲル材料又は組成物の目標性質を最適化するために、更に処理することができ、幾つかの実施形態において、乾燥エアロゲル組成物を、1つ又は複数の熱処理、例えば、熱分解にさらして、熱処理されたエアロゲル組成物を製造することができるものであり、エアロゲル材料又は組成物の熱処理は、減酸素環境において起こることができるものであり、「減酸素環境」という用語は、10容積%以下の酸素(標準条件での周辺空気中の酸素の量未満である)の容積の濃度を含む雰囲気を言い表すものであり、好ましい実施形態において、乾燥疎水性エアロゲル組成物は、約200℃~約800℃の温度で、約1分間~約3時間の時間、約95%~約99.9%の不活性ガス(例えば、窒素)を含む減酸素雰囲気中で熱処理されるものである(段落【0079】、【0083】)。 更に、エアロゲル組成物は、より柔軟で、耐性があり、適合性がある複合体生成物を得るために、様々な繊維強化材料で繊維強化することができ、繊維強化剤を、ゲル化プロセス中のあらゆる時点でゲルに加え、ウェットな繊維状ゲル組成物を製造することができ、次いで、ウェットゲル組成物を乾燥して繊維強化エアロゲル組成物を製造することができるものである(段落【0087】)。 イ そして、本件特許明細書の前記(2)エ及びオの実施例2及び13に由来する実施例17及び18における7%のMTESに係る「強化エアロゲル組成物」(以下、「実施例組成物」という。)の製造方法は、前記実施例2及び実施例13の記載からみれば、前記アの製造方法にのっとったものといえ、そのようにして製造された前記「実施例組成物」は、減酸素熱処理後の「液水吸収」が0.0wt%であり(段落【0152】【表1】)、「T1-2:T3の比」が約0.272であり、「Q2-3:Q4の比」が約0.842であり(段落【0148】)、「HOC」すなわち「燃焼熱」(前記(2)ア段落【0034】)が約425cal/gであり(段落【0146】)、これらは、本件発明1において、「20wt%以下の液水吸収;及び0.01~0.5のT1-2:T3の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトル及び0.1~1.5のQ2-3:Q4の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトルのいずれか一方又は両方」及び「717cal/g以下の燃焼熱」を有することを満たすものである。 ここで、前記「実施例組成物」の「自己加熱温度」は明らかでないが、前記「実施例組成物」の製造方法が前記アの製造方法にのっとったものといえることと、前記「実施例組成物」の「液水吸収」、「T1-2:T3の比」、「Q2-3:Q4の比」及び「燃焼熱」がいずれも本件発明1の発明特定事項を満たすことからみれば、前記「自己加熱温度」も本件発明1の発明特定事項を満たすことが推認される。 また、そうでないとしても、本件特許明細書の段落【0038】(前記(2)ア)の記載によれば、「自己加熱温度」は、発熱反応が絶縁系、例えば、エアロゲル材料又は組成物を含む絶縁系内で特殊な測定条件下において現れる環境熱の最低温度の測定値を言い表すものであり、絶縁系の「自己加熱温度」の測定は、以下の手順、a)各辺で20mmの寸法を持つ幾何学的立方体である絶縁系を提供すること、b)絶縁系の中心に熱電対測定デバイスを設置すること、c)自己加熱発熱事象が起こるまで、絶縁系を一連の増加温度にさらすこと、に従って測定され、それは、絶縁系内で自己加熱発熱事象を示すのに十分有意な量で試料の外部さらし温度を超える、熱電対測定デバイスの温度によって示されるものである。 そして、前記記載によれば、当業者は、「強化エアロゲル組成物」の「自己加熱温度」を測定する手順を理解することができるから、製造した前記「実施例組成物」の「自己加熱温度」を前記手順にのっとって測定するとともに、前記アの製造方法を参酌することで、「自己加熱温度」が本件発明1の発明特定事項を満たす「強化エアロゲル組成物」を、過度の試行錯誤を要することなく製造することができるといえる。 ウ 前記イによれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本件発明1に係る「強化エアロゲル組成物」を過度の試行錯誤を要することなく製造することができるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、その物を生産することができる程度の記載があるといえる。 そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合するといえる。 更に、本件発明2及び4~48について検討しても事情は同じである。 (4) 申立人の主張について ア 始めに、前記第4の2の申立人の主張について検討すると、前記(2)イ(段落【0050】)の本件特許明細書の記載によれば、シリカ材料のNMR分析に関する具体的な詳細は、Geppiらによる文献「有機/無機複数成分材料の研究への固体状態NMRの適用(Applications of Solid-State NMR to the Study of Organic/Inorganic Muliticomponent Materials)」中で、具体的には7~9ページ(Appl.Spec.Rev.(2008),44-1:1-89)で確認することができ、それは、具体的に述べたページに従って、参照により本明細書に組み込まれるものとされている。 そして、前記Geppiらによる文献は甲第12号証であるから、甲第12号証をみると、以下の記載がある。 「Silicon-29 29Si is probably the most exploited nucleus for the investigation of organic-inorganic interfaces in OIMM. This is due to both its massive presence at the interface and its good SSNMR accessibility. As reported in Table 1, its relative receptivity is about twice as much as that of 13C. Moreover, its chemical shift anisotropy is usually moderate, and it can be almost completely averaged out at MAS frequencies accessible on most commercial spectrometers. The most common use of 29Si lD spectra in the investigation of organic-inorganic interfaces is the qualitative characterization of their chemical structure, but quantitative information can also be obtained, as it will be exemplified in the following. ・・・In Figure 1, 29Si CP/MAS spectra of nanocomposite films are reported, in which signals arising from Q, T, D, and M silicon sites can be observed and the corresponding chemical structures are shown. From the above, it is quite clear that a 29Si 1D high-resolution SSNMR spectrum can be a very direct and almost unparalleled source of information for characterizing the chemical structure of the organic-inorganic interface, as demonstrated by the huge amount of relevant papers in the literature. The obtained information is often very useful for characterizing an innovative material, for elucidating the results of a preparation method, and, when possible, for trying to establish correlations between molecular properties of the interface and observable "macroscopic" properties of the materials. Some examples of applications to many different kinds of OIMM are listed in the following. 29Si 1D spectra have been used for characterizing the interface by Brus (22) in organically modified polysiloxane networks prepared by sol-gel co-condensation; ・・・ and by Armelao et al. (45) in Zr- and Hf-containing silica-based hybrid materials. Applications to systems where elements different from carbon, proton, and silicon are in the second coordination sphere of silicon atoms were also reported. For instance, Templin et al. (46) observed that the formation of Si-O-Al bonds for T silicon atoms was associated to a chemical shift increase with respect to the corresponding Si-O-Si sites. A chemical shift increase was also observed by Alonso et al. (47) for T silicon atoms forming Si-O-Ge bonds, while a decrease was observed by Hoebbel et al. (48) associated to the formation of Si-O-Ti bonds.」(7ページ12行~9ページ35行) (当審訳:29Siは、おそらくOIMMにおける有機無機界面の研究に最も利用されている核種であろう。その理由は、界面に大量に存在することと、SSNMRでアクセスしやすいことである。表1で報告されているように、相対的な受容性は13Cの約2倍である。さらに、その化学シフトの異方性は通常中程度であり、ほとんどの市販分光計で利用可能なMAS周波数でほぼ完全に平均化することができる。有機-無機界面の研究における29Si 1Dスペクトルの最も一般的な利用法は、その化学構造の定性的な特性評価であるが、以下に例示するように、定量的な情報を得ることもできる。 ・・・図1には、ナノコンポジット膜の29Si CP/MASスペクトルが報告されており、Q、T、D、Mのシリコンサイトから生じるシグナルが観察され、対応する化学構造が示されている。以上のことから、29Siの1次元高分解能SSNMRスペクトルが、有機-無機界面の化学構造を特徴付けるための非常に直接的でほとんど比類のない情報源となり得ることは、文献に掲載された膨大な量の関連論文からも明らかである。得られた情報は、革新的な材料の特性を明らかにしたり、調製法の結果を解明したり、可能であれば界面の分子特性と材料の観察可能な "巨視的 "特性との相関関係を確立しようとする場合に、しばしば非常に有用である。 さまざまな種類のOIMMへの応用例を以下に挙げる。29Si 1Dスペクトルは、ゾル-ゲル共縮合によって調製された有機変性ポリシロキサンネットワークにおけるBrus(22)、・・・及びZr-及びHf-を含むシリカベースのハイブリッド材料におけるArmelaoら(45)により、界面の特性評価に使用されてきた。また、炭素、プロトン、ケイ素とは異なる元素がケイ素原子の第2配位圏にある系への応用も報告された。例えば、Templinら(46)は、Tケイ素原子に対してSi-O-Al結合が形成されると、対応するSi-O-Siサイトに対して化学シフトが増加することを観測した。Alonsoら(47)は、Si-O-Ge結合を形成するTケイ素原子の化学シフトの増加も観測しており、Hoebbelら(48)は、Si-O-Ti結合の形成に伴う化学シフトの減少を観測している。) 前記記載によれば、29Siは、おそらく有機無機界面の研究に最も利用されている核種であって、有機-無機界面の研究における29Si 1Dスペクトルの最も一般的な利用法は、その化学構造の定性的な特性評価であるが、定量的な情報を得ることもできるものである。 そして、29Siの1次元高分解能SSNMRスペクトルが、有機-無機界面の化学構造を特徴付けるための非常に直接的でほとんど比類のない情報源となり得ることは、文献に掲載された膨大な量の関連論文からも明らかであり、得られた情報は、革新的な材料の特性を明らかにしたり、調製法の結果を解明したり、可能であれば界面の分子特性と材料の観察可能な "巨視的 "特性との相関関係を確立しようとする場合に、しばしば非常に有用であるものであり、従来、29Si 1Dスペクトルは、ゾル-ゲル共縮合によって調製された有機変性ポリシロキサンネットワークなどの様々な材料の界面の特性評価に数多く応用されてきたものである。 してみれば、CP/MAS29Si固体状態NMR分析のための具体的な条件は、従来から数多く採用されてきた、当業者が通常設定し得る条件として理解できるといえるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、CP/MAS29Si固体状態NMR分析のための具体的な条件が記載されていないとしても、当業者が本件発明1の「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」を再現するに際して、過度の試行錯誤を強いられるとはいえない。 イ 前記アによれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に記載されているといえるから、前記第4の2の主張は採用できない。 ウ 次に、実施可能要件についての申立人意見書における申立人の主張について検討すると、その内容は、概略、以下のとおりである。 (ア) 本件特許明細書には、例2(前記(2)エ)からの7%のMTES試料(すなわち「実施例組成物」)の減酸素熱処理後の試料について「自己加熱温度」を測定したことは記載されておらず、本件発明1の発明特定事項を全て満たす「強化エアロゲル組成物」が具体的に記載されていないから、本件特許明細書の記載は、当業者が本件発明1に係る「強化エアロゲル組成物」を製造できるように記載されたものではない。 また、本件特許明細書には、「添加剤」を含む「強化エアロゲル組成物」の実施例が記載されておらず、本件発明1の発明特定事項を全て満たす「強化エアロゲル組成物」が具体的に記載されていないから、本件特許明細書の記載は、当業者が本件発明1に係る「強化エアロゲル組成物」を製造できるように記載されたものではないので、本件特許明細書の記載は実施可能要件を満たさない(15ページ19行~20ページ10行)。 (イ) 「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」を測定するにあたって、CP/MAS29Si固体状態NMR分析を行う場合、接触時間等が異なれば測定値が異なることは、甲第10、12~14、16号証の記載からみれば技術常識であるのに、本件特許明細書には、CP/MAS29Si固体状態NMR分析を行う場合の接触時間等の測定条件が記載されていないから、本件特許明細書の記載は、当業者が本件発明1に係る「強化エアロゲル組成物」を製造できるように記載されたものではないので、本件特許明細書の記載は実施可能要件を満たさない(20ページ11行~29ページ4行)。 エ 以下、前記ウの主張について検討する。 (ア) 始めに、前記ウ(ア)の主張について検討すると、本件特許明細書に、「自己加熱温度」及び「添加剤」について本件発明1の発明特定事項を全て満たす具体例が記載されていないとしても、前記(3)イに記載したのと同様の理由により、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「自己加熱温度」及び「添加剤」について本件発明1の発明特定事項を満たす「強化エアロゲル組成物」を、過度の試行錯誤を要することなく製造することができるといえるから、前記ウ(ア)の主張は採用できない。 (イ) 次に、前記ウ(イ)の主張について検討すると,前記ウ(イ)の主張は、本件特許明細書にはCP/MAS29Si固体状態NMR分析を行う場合の接触時間等の測定条件が記載されていないことをいうものである点で前記第4の2の主張と同じものであり、甲第12号証の記載によれば、当業者であれば、CP/MAS29Si固体状態NMR分析を行う場合の典型的な接触時間等の測定条件を認識できるといえるから、採用できない。 (ウ) したがって、前記ウの主張はいずれも採用できない。 (5) 小括 よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号所定の規定(実施可能要件)に適合するといえるから、前記第4の2の特許異議の申立て理由は理由がない。 3 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について (1) 明確性要件違反の判断手法 特許請求の範囲の記載が、明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるので、以下、この観点に立って検討する。 (2) 明確性要件についての判断 ア 前記第4の3の申立人の主張について検討すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、参照により本明細書に組み込まれるものとされている甲第12号証の記載によれば、CP/MAS29Si固体状態NMR分析のための具体的な条件は、従来から数多く採用されてきた、当業者が通常設定し得る条件として理解できるといえることは、前記2(4)アに記載したとおりである。 すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、「T1、T2、T3、Q2、Q3、及びQ4の量」の測定条件が記載されておらず、実施例にCP/MAS29Si固体状態NMR分析のための具体的な条件が記載されていないとしても、「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」を特定することができるから、本件発明1は明確であるといえる。 イ また、本件発明1においては、「T1-2:T3の比」が「0.01~0.5」「の比を含む」と特定されているのであるから、本件特許明細書の実施例の例18において、7%のMTESについての減酸素熱処理前試料(比較例)の「T1-2:T3の比」が0.463であり、減酸素熱処理後試料(実施例)の「T1-2:T3の比」が0.272であり、どちらも本件発明1の発明特定事項を満たすとしても、このことは、本件発明1の「T1-2:T3の比」の明確性に直接影響を与えるものではなく、本件発明1の保護を受けようとする範囲は明確であるといえる。 ウ 前記ア及びイによれば、本件発明1は明確であるといえるから、前記第4の3の申立人の主張は採用できない。 更に、本件発明2及び4~48について検討しても事情は同じであるので、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合するといえる。 (3) 申立人意見書における申立人の主張について ア 明確性要件についての申立人意見書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 (ア) 本件発明1の「自己加熱温度」の発明特定事項によれば、100℃以上の「自己加熱温度」を有する「強化エアロゲル組成物」も、800℃以上の「自己加熱温度」を有する「強化エアロゲル組成物」も、100℃~150℃の「自己加熱温度」を有する「強化エアロゲル組成物」も、100℃~800℃の「自己加熱温度」を有する「強化エアロゲル組成物」も、750℃~800℃の「自己加熱温度」を有する「強化エアロゲル組成物」も、本件発明1の発明特定事項に含まれることとなり、発明の外延が不明確であるから、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない(29ページ5行~25行)。 (イ) CP/MAS29Si固体状態NMR分析により「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」を測定する方法が明らかでないから、「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」が明らかでないので、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない(29ページ2630ページ最終行)。 イ 以下、前記アの主張について検討する。 (ア) 始めに、前記ア(ア)の主張について検討すると、本件発明1の「自己加熱温度」は数値で特定されており、特段の矛盾も齟齬も存在しない。 そして、係る発明特定事項によれば、前記「自己加熱温度」において特定される温度の範囲は明確であるから、発明の外延が不明確であるとはいえないので、前記ア(ア)の主張は採用できない。 (イ) 次に、前記ア(イ)の主張について検討すると、前記主張は、「T1、T2、T3、Q2、Q3、及びQ4の量」の測定条件が明らかでなく、CP/MAS29Si固体状態NMR分析のための具体的な条件が明らかでないことをいうものである点で、前記第4の3の主張と同じものであるから、前記(2)アに記載したのと同様の理由により採用できない。 (ウ) したがって、前記アの主張はいずれも採用できない。 (4) 小括 よって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号所定の規定(明確性要件)に適合するといえるから、前記第4の3の特許異議の申立て理由は理由がない。 4 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1) サポート要件違反の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2) サポート要件についての一般的な判断 ア 本件特許明細書の記載によれば、本件発明は、1つの一般的態様において、水性環境で好ましい性能を有し、好ましい燃焼及び自己加熱の性質をまた有する、耐久性があって扱いが容易なエアロゲル組成物を提供することを課題(以下、「本件課題」という。)とするものといえる(前記2(2)ア(段落【0003】)。 そして、本件発明は、シリカ系骨格を含むエアロゲル組成物であって、幾つかの実施形態において、35wt%以下、30wt%以下、25wt%以下、20wt%以下、15wt%以下、又は10wt%以下の液水吸収を有するものであり、また、幾つかの実施形態において、エアロゲル組成物は、0.01~0.5のT1-2-T3シリカ種の比、及び/又は0.1~1.5のQ2-3:Q4シリカ種の比を有するものであり(前記2(2)ア(段落【0004】)、本件発明におけるT1-2:T3の比やQ2-3:Q4の比は、エアロゲル中に含有する疎水結合ケイ素の量や、エアロゲル中に含有する疎水結合ケイ素の化学結合の分析結果を表すものといえることは、前記1(3)イに記載したとおりである。 このことからみれば、本件発明は、液水吸収が20wt%以下であり、0.01~0.5のT1-2-T3シリカ種の比、及び/又は0.1~1.5のQ2-3:Q4シリカ種の比を有する、といった要件を満たすことで、疎水結合ケイ素を含み、水性環境で好ましい性能を有するものといえる。 また、本件発明は、717cal/g以下の燃焼熱を有し、約100℃以上、約150℃以上、約200℃以上、約250℃以上、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約450℃以上、約500℃以上、約550℃以上、約600℃以上、約650℃以上、約700℃以上、約750℃以上、約800℃以上、又はこれらの値の任意の2つの間の自己加熱温度を有することが好ましいものであり(前記2(2)ア(段落【0034】、【0038】)これにより、好ましい燃焼及び自己加熱の性質を有するものといえる。 更に、本件発明における「強化エアロゲル組成物」という用語は、エアロゲル材料内にエアロゲル骨格の部分でない強化相を含むエアロゲル組成物を言い表すものであり、強化相は、増加した柔軟性、弾性、適合性又は構造安定性をエアロゲル材料に提供する任意の材料であることができ、よく知られた強化材料の例としては、連続気泡発泡体強化材料、独立気泡発泡体強化材料、連続気泡膜、ハチの巣強化材料、ポリマー強化材料、及び繊維強化材料(例えば、離散繊維、織布材料、不織布材料、綿(battings)、ウェブ、マット、及びフェルト)が挙げられるものである(前記2(2)ア(段落【0018】)。 すると、本件発明は、強化材料を含むものとすることで、耐久性があって扱いが容易なエアロゲル組成物となるものといえる。 イ 前記アによれば、本件発明は、シリカ系骨格を含むエアロゲル組成物であって、液水吸収が20wt%以下であり、0.01~0.5のT1-2-T3シリカ種の比、及び/又は0.1~1.5のQ2-3:Q4シリカ種の比を有する、といった要件を満たし、717cal/g以下の燃焼熱を有し、約100℃以上、約150℃以上、約200℃以上、約250℃以上、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約450℃以上、約500℃以上、約550℃以上、約600℃以上、約650℃以上、約700℃以上、約750℃以上、約800℃以上、又はこれらの値の任意の2つの間の自己加熱温度を有し、更に、強化材料を含むものとすることで、水性環境で好ましい性能を有し、好ましい燃焼及び自己加熱の性質をまた有し、耐久性があって扱いが容易なエアロゲル組成物とすることができ、本件課題を解決できるものといえる。 そして、そのようなエアロゲル組成物は、本件発明1の発明特定事項を満たす「強化エアロゲル組成物」といえるから、本件発明1は、その発明特定事項により、本件課題を解決できるものといえる。 そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するといえる。 更に、本件発明2及び4~48について検討しても事情は同じである。 (3) 取消理由について 本件発明1においては「燃焼熱」及び「自己加熱温度」が特定されているから、本件発明1に係る「強化エアロゲル組成物」は、好ましい燃焼及び自己加熱の性質を有するものといえるので、本件課題を解決できるものといえる。 そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明といえるのであり、更に、本件発明2及び4~48について検討しても事情は同じであるから、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するので、前記第5の1の取消理由は理由がない。 (4) 申立人の主張について ア 始めに、前記第4の4(1)の主張について検討すると、前記1(3)イに記載したのと同様の理由により、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」の技術的意義が記載されていないとはいえないし、前記(2)イに記載したのと同様の理由により、本件発明1における「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」の発明特定事項により、本件発明の課題を解決できることを認識できるといえる。 また、「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」を測定した実施例は例18のみであり、例18の減酸素熱処理前試料(比較例)は、「T1-2:T3の比」が本件発明1における発明特定事項を満たすものの、液水吸水は本件発明1における発明特定事項を満たさず、更に、「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」のいずれか一方又は両方を本件発明1における発明特定事項を満たすものとすることで、本件課題を解決できることが本件特許の原出願の出願日当時の技術常識であったということができないとしても、前記(2)イに記載したのと同様の理由により、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえることに変わりはないから、前記第4の4(1)の主張は採用できない。 イ 次に、前記第4の4(2)の主張について検討すると、本件特許明細書の記載によれば、本件発明における「強化エアロゲル組成物」という用語は、エアロゲル材料内にエアロゲル骨格の部分でない強化相を含むエアロゲル組成物を言い表すものであって(前記第6の2(2)ア(段落【0018】))、前記「強化エアロゲル組成物」は、i)ゾルゲル溶液を形成すること、ii)ゾルゲル溶液からゲルを形成すること、及びiii)革新的な処理及び抽出を通じてゲル材料から溶媒を抽出して、乾燥エアロゲル材料を得ることを含み、更に、エアロゲル材料又は組成物の目標性質を最適化するため、1つ又は複数の熱処理を行う製造方法により製造されるものである(前記第6の2(2)ウ(段落【0060】、【0079】)。 そして、そのような製造方法により製造される本件発明に係る「強化エアロゲル組成物」が、シリカ系エアロゲルと、強化材料と、添加剤とを混合して調製した「強化エアロゲル組成物」を含むものと解するのは不合理である。 更に、本件発明1は、そもそも「20wt%以下の液水吸収」「を有」するものであるから、実施例の例18が、減酸素熱処理を行わないと20wt%以下の液水吸収の特性を有するものとならないとしても、本件発明1が、発明の詳細な説明の記載された発明で、発明の詳細な説明の記載及びその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえることに変わりはないので、前記第4の4(2)の主張も採用できない。 ウ 更に、サポート要件についての申立人意見書における申立人の主張について検討すると、その内容は、概略、以下のとおりである。 (ア) 本件特許明細書には、実施例で製造した「強化エアロゲル組成物」の「自己加熱温度」を測定したことは記載されておらず、「強化エアロゲル組成物」がどの程度の「自己加熱温度」を有していれば本件課題を解決できるのかも記載されていない。 また、本件発明1の「自己加熱温度」についての発明特定事項は極めて広範囲であり、発明の外延が曖昧であるから、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができないので、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない(1ページ下から3行~14ページ3行)。 (イ) 本件特許明細書においては、「T1-2:T3の比」及び「Q2-3:Q4の比」を満足する「強化エアロゲル組成物」として、例13からの7%のMTES試料(前記2(2)エ)が記載されているに過ぎず、例2からの7%のMTES試料(前記2(2)エ)の「自己加熱温度」は測定されておらず、更に、例2からの7%のMTES試料は「添加剤」を含まない。 そうすると、本件特許明細書には、本件発明1の発明特定事項を満たす実施例が記載されていないから、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができないので、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない(14ページ4行~15ページ18行)。 エ 以下、前記ウの主張について検討する。 (ア) 始めに、前記ウ(ア)の主張について検討すると、本件発明は、約100℃以上、約150℃以上、約200℃以上、約250℃以上、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約450℃以上、約500℃以上、約550℃以上、約600℃以上、約650℃以上、約700℃以上、約750℃以上、約800℃以上、又はこれらの値の任意の2つの間の自己加熱温度を有することにより、好ましい自己加熱の性質を有するものといえることは、前記(2)アに記載したとおりであるから、本件特許明細書には、本件課題を解決できる「自己加熱温度」が記載されているといえる。 また、本件発明1の「自己加熱温度」において特定される温度の範囲は明確であり、発明の外延が不明確であるとはいえないことは、前記3(3)イ(ア)に記載したとおりである。 そうすると、本件特許明細書に、実施例で製造した「強化エアロゲル組成物」の「自己加熱温度」を測定したことが記載されていないとしても、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができることに変わりはないから、前記ウ(ア)の主張は採用できない。 (イ) 次に、前記ウ(イ)の主張について検討すると、本件特許明細書に、本件発明1の発明特定事項を満たす実施例が記載されていないとしても、前記(2)イに記載したとおり、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえることに変わりはないので、前記ウ(イ)の主張も採用できない。 (ウ) したがって、前記ウの主張はいずれも採用できない。 (5) 小括 よって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号所定の規定(サポート要件)に適合するといえるから、前記第4の4の特許異議の申立て理由は理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議の申立て理由及び当審が通知した取消理由によっては、本件発明1、2及び4~48に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに本件発明1、2及び4~48に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正により請求項3は削除されたから、請求項3に係る特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700861

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