特許異議申立
2023-700826
化粧材
- 審判番号
- 2023-700826
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-182699
- 登録番号
- 7223314
- 請求日
- 2023年08月10日
- 審決日
- 2024年05月10日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】山下 昭彦
- 【権利者代理人】藤枡 裕実
- 【権利者代理人】深町 圭子
- 【権利者代理人】伊藤 英生
- 【権利者代理人】後藤 直樹
- 【権利者代理人】立石 英之
- 【異議申立人】末久 真弘
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 西田 秀彦
- 審判官 古屋野 浩志
- 分類
- P1651.113-YAA(E04F) / P1651.121-YAA(E04F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7223314号発明「化粧材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7223314号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正することを認める。
特許第7223314号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7223314号の請求項1~3に係る特許は、平成30年9月27日に出願され、令和5年2月8日にその特許権の設定登録がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許について、令和5年8月10日に、特許異議申立人末久真弘(以下「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1~3に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、以下のとおりである。
令和5年12月 4日付け:取消理由通知書
令和6年 1月30日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 (以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正 請求による訂正を「本件訂正」という。)
申立人に対し、令和6年2月20日付けで特許権者より提出された訂正の請求について期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは何らの応答もなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、訂正請求書及び訂正特許請求の範囲の記載からみて、以下のとおりであると認める。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に、「前記複数の化粧材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有しており、」とあるのを、
「前記複数の化粧材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有し、前記長方形形状の伸びる方向に一定の間隔で同一の装飾を有しており、」と訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載の「複数の化粧材」について、「前記長方形形状の伸びる方向に一定の間隔で同一の装飾を有」するものに限定する訂正であるから、当該訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1に係る訂正は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、請求項2に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
ウ 新規事項の追加でないこと
本件特許の明細書の段落【0013】の「上記化粧材において、1組の建装材を構成する2種類以上の複数の化粧材は、長方形形状の伸びる方向に、一定の間隔で同一の装飾を有しており、」との記載、及び、段落【0064】の「また、3種類の化粧材101A~101Cは各々、長方形形状の伸びる方向(図面における縦方向)に、一定の間隔Pで同一の装飾を有しており、」との記載からみて、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の明細書、特許請求の範囲または図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正である。
3 訂正請求のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項により準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求は認められるから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、請求項番号に対応して「本件発明1」等といい、全体の発明を「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
1組の建装材を構成する異なる装飾を有する2種類以上の複数の化粧材であって、
前記複数の化粧材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有し、前記長方形形状の伸びる方向に一定の間隔で同一の装飾を有しており、
前記一定の間隔は、前記2種類以上の複数の化粧材において同じであり、
種類の異なる前記複数の化粧材は、少なくとも部分的に前記装飾が相互に相違し、
前記装飾は、左官加工のコテ跡調、スタッコ調、塗り壁調、木目調、石目調のいずれかであり、
前記複数の化粧材を幅方向に並列配置した場合に、幅方向に隣接する前記複数の化粧材相互の境目において、前記装飾どうしは前記境目を跨って連続するように構成された、複数の化粧材。
【請求項2】
1組の建装材を構成する異なる装飾を有する2種類以上の複数の化粧材であって、
前記複数の化粧材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有し、前記長方形形状の伸びる方向に一定の間隔で同一の装飾を有しており、
種類の異なる前記複数の化粧材は、少なくとも部分的に前記装飾が相互に相違し、
前記装飾は、左官加工のコテ跡調、スタッコ調、塗り壁調、木目調、石目調のいずれかであり、
前記複数の化粧材を幅方向に並列配置した場合に、幅方向に隣接する前記複数の化粧材相互の境目において、前記装飾どうしは前記境目を跨って連続するように構成され、
前記長方形形状の長辺を右端および左端としたとき、前記右端に接する前記装飾が相互にいずれも視覚上同一あるいは同一に近く、前記左端に接する前記装飾が相互にいずれも視覚上同一あるいは同一に近いように構成されている、複数の化粧材。
【請求項3】
1組の建装材を構成する異なる装飾を有する2種類以上の複数の化粧材であって、
前記複数の化粧材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有しており、
種類の異なる前記複数の化粧材は、少なくとも部分的に前記装飾が相互に相違し、
前記装飾は、左官加工のコテ跡調、スタッコ調、塗り壁調、木目調、石目調のいずれかであり、
前記複数の化粧材を幅方向に並列配置した場合に、幅方向に隣接する前記複数の化粧材相互の境目において、前記装飾どうしは前記境目を跨って連続するように構成され、
同一種類の前記複数の化粧材を、幅方向に隣接する前記複数の化粧材相互の前記境目において前記装飾どうしが前記境目を跨って連続するように並列配置した場合に、幅方向に隣接する前記複数の化粧材において同一となる前記装飾は、前記一方向にオフセットするように構成された、複数の化粧材。」
第4 証拠一覧、特許異議申立理由の要旨、及び取消理由通知に記載した取消理由の要旨
1 証拠一覧
申立書とともに提出された証拠は以下のとおりである。
甲第1号証:特開平9-150111号公報
2 特許異議申立理由の要旨
(1)本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明であり、又は甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件特許発明1及び3は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 取消理由通知に記載した取消理由の要旨
本件訂正前の請求項2に係る発明に対して、令和5年12月4日付け取消理由通知で通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明であり、または、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明2は、特許法第29条第1項、または、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
第5 証拠の記載
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築板の表面にカラー模様をコンピュータで制御された塗装装置で塗装する建築板の塗装方法に関するものである。」
イ「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記塗装方法では、建築板の表面全体の塗装パターンがランダムになるため、図7に示すように、複数枚の建築板1を壁面に貼り合わせたときに、建築板1の各辺の継ぎ目2で、本来連続すべき凸模様ブロックの塗装色が違ってきて不自然な仕上がりとなったり、逆に、図8に示すように、芋目地のレンガ調、タイル調の模様で塗装パターンをランダムに設定するものでは、建築板3の継ぎ目4で、本来ランダムであるべき左右の塗装パターンが似通ってきてランダム性が損なわれることがあり、違和感を生じることがある。
【0004】本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、建築板の継ぎ目部分の塗装色に違和感を生じることがなく、建築板の継ぎ目を意識させない美しい壁面に仕上げることができる建築板の塗装方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の請求項1の建築板の塗装方法は、建築板の表面にカラー模様をコンピュータで制御された塗装装置で塗装する方法であって、前記建築板の周辺部の塗装色の塗り分けのデータを予め人為的に設定して前記コンピュータのメモリに記憶し、塗装時に前記メモリに記憶されたデータに基づいて前記建築板の周辺部の塗装色を塗り分けると共に、前記建築板の周辺部以外の部分の塗装色の塗り分けのデータを、前記コンピュータによってランダムに自動作成する。この塗装方法では、コンピュータによるランダム模様自動作成機能により様々なバリエーションの塗装パターンを塗装しながら、建築板の周辺部を塗装する色の塗り分けのデータを予め人為的に設定することで、従来の塗装方法で問題となっていた建築板の継ぎ目部分における塗装色の違和感を無くすことができる。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1の実施形態を図1乃至図3に基づいて説明する。まず、製造される建築板11を図1に基づいて説明する。建築板11は、セメント系成形材料を型板(図示せず)によってプレス成形して形成したものであり、その表面に形成された凹凸模様パターンは、自然石風の大きさの異なる種々の形状の凸模様ブロック12を化粧目地13を挟んで配列した模様となっている。そして、この建築板11を壁面に複数枚貼り合わせたときに各建築板11の上下・左右の4辺部の凸模様ブロック12と化粧目地13がそれに突き合わされた他の建築板11の凸模様ブロック12と化粧目地13と連続するように当該各辺部の凸模様ブロック12と化粧目地13が形成されている。換言すれば、各建築板11の下辺の凸模様ブロック12と化粧目地13が上辺のそれに連続するように形成され、左辺の凸模様ブロック12と化粧目地13が右辺のそれに連続するように形成されている。
【0007】また、建築板11表面の塗装は、凸模様ブロック12単位で塗装色が塗り分けられ、建築板11の周辺部に位置する凸模様ブロック12については、建築板11を壁面に複数枚貼り合わせたときに建築板11の継ぎ目14(突き合わせ部分)に跨がって連続する凸模様ブロック12の塗装色が同一になるように、建築板11の周辺部の塗装色の塗り分けのデータを予め人為的に設定している。また、建築板11の周辺部以外の部分の凸模様ブロック12については、塗装色の塗り分けのデータをコンピュータ32(図2参照)の乱数発生機能によってランダムに自動作成し、様々なバリエーションの塗装パターンを塗装できるようにしている。尚、化粧目地13は凸模様ブロック12と異なる色で塗装されている。
ウ 図1 (下記「中央部分」がわかるように、例示的に4つの矢印を、当審が付加した。)
「
[図:0001413319000001.jpg]
」
上記イをふまえれば、図1から、下記の点を看取することができる。
(ア)上下の2段になっていて、各段それぞれにおいて、横方向に2枚の建築板11が位置するように壁面に貼り合わせた4枚の建築板11であって、各建築板11は、横方向に伸びる長方形状を有している点。
(イ)4枚の建築板11において、各建築板11の上辺に接する凸模様ブロック12及び化粧目地13の形状と位置、並びに、凸模様ブロック12の塗装色が同じであって、相互にいずれも視覚上同一であり、各建築板11の下辺に接する凸模様ブロック12及び化粧目地13の形状と位置、並びに、凸模様ブロック12の塗装色が同じであって、相互にいずれも視覚上同一である点。
(ウ)また、4枚の建築板11において、各建築板11の上辺及び下辺、並びに、左辺及び右辺に接していない中央部分に位置する凸模様ブロック12の塗装色が互いに異なっている点。
(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)より、甲第1号証には、次の発明(以下、それぞれ「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「上下の2段になっていて、各段それぞれにおいて、横方向に2枚の建築板11が位置するように壁面に貼り合わせた4枚の建築板11であって、
各建築板11は、横方向に伸びる長方形状を有しており、
建築板11は、セメント系成形材料を型板によってプレス成形して形成したものであり、その表面に形成された凹凸模様パターンは、自然石風の大きさの異なる種々の形状の凸模様ブロック12を化粧目地13を挟んで配列した模様となっていて、この建築板11を壁面に複数枚貼り合わせたときに各建築板11の上下・左右の4辺部の凸模様ブロック12と化粧目地13がそれに突き合わされた他の建築板11の凸模様ブロック12と化粧目地13と連続するように当該各辺部の凸模様ブロック12と化粧目地13が形成されていて、換言すれば、各建築板11の下辺の凸模様ブロック12と化粧目地13が上辺のそれに連続するように形成され、左辺の凸模様ブロック12と化粧目地13が右辺のそれに連続するように形成されており、
建築板11表面の塗装は、凸模様ブロック12単位で塗装色が塗り分けられ、
建築板11の周辺部に位置する凸模様ブロック12については、建築板11を壁面に複数枚貼り合わせたときに建築板11の継ぎ目14(突き合わせ部分)に跨がって連続する凸模様ブロック12の塗装色が同一になるように、建築板11の周辺部の塗装色の塗り分けのデータを予め人為的に設定しており、また、建築板11の周辺部以外の部分の凸模様ブロック12については、塗装色の塗り分けのデータをコンピュータ32の乱数発生機能によってランダムに自動作成し、様々なバリエーションの塗装パターンを塗装できるようにしており、
4枚の建築板11において、各建築板11の上辺に接する凸模様ブロック12及び化粧目地13の形状と位置、並びに、凸模様ブロック12の塗装色が同じであって、相互にいずれも視覚上同一であり、各建築板11の下辺に接する凸模様ブロック12及び化粧目地13の形状と位置、並びに、凸模様ブロック12の塗装色が同じであって、相互にいずれも視覚上同一であり、また、各建築板11の上辺及び下辺、並びに、左辺及び右辺に接していない中央部分に位置する凸模様ブロック12の塗装色が互いに異なっている、
4枚の建築板11。」
第6 当審の判断
1 取消理由についての判断
(1)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「表面」に「凹凸模様パターン」が形成された「建築板11」は、本件発明2の「装飾を有する」「化粧材」に相当する。
甲1発明は、「建築板11」が、4枚がまとめられ、すなわち、これらが1組みとなって「壁面に貼り合わせ」られている。
そうすると、甲1発明の「壁面に貼り合わせ」た「4枚の建築板11」が1組となったものは、本件発明2の「1組の建装材」に相当する。
甲1発明の「4枚の建築板11」は、「各建築板11の上辺及び下辺から離れた中央部分に位置する凸模様ブロック12の塗装色が互いに異なっている」ことから、装飾が互いに異なる4種類の建築板を含んでいるといえる。
そうすると、甲1発明の「各建築板11の上辺及び下辺から離れた中央部分に位置する凸模様ブロック12の塗装色が互いに異なっている」「4枚の建築板11」は、本件発明2の「異なる装飾を有する2種類以上の複数の化粧材」に相当する。
(イ)甲1発明の「各建築板11は、横方向に伸びる長方形状を有して」いることは、本件発明2の「前記複数の化粧材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有して」いることに相当する。
(ウ)上記(ア)をふまえれば、甲1発明の「4枚の建築板11」は、種類の異なる複数の化粧材であるといえる。
また、甲1発明は、「4枚の建築板11において、各建築板11の上辺に接する凸模様ブロック12及び化粧目地13の形状と位置、並びに、凸模様ブロック12の塗装色が同じであって、相互にいずれも視覚上同一であり、各建築板11の下辺に接する凸模様ブロック12及び化粧目地13の形状と位置、並びに、凸模様ブロック12の塗装色が同じであって、相互にいずれも視覚上同一であ」ることに加えて、「各建築板11の上辺及び下辺、並びに、左辺及び右辺に接していない中央部分に位置する凸模様ブロック12の塗装色が互いに異なっている」ことから、「4枚の建築板11」は、部分的に装飾が相互に相違しているといえる。
そうすると、甲1発明は、本件発明2の「種類の異なる前記複数の化粧材は、少なくとも部分的に前記装飾が相互に相違」するという構成、に相当する構成を有しているといえる。
(エ)甲1発明の「建築板11」の「表面に形成された凹凸模様パターン」が「自然石風の大きさの異なる種々の形状の凸模様ブロック12を化粧目地13を挟んで配列した模様」であることは、本願発明2の「装飾」は、「石目調」であることに相当する。
(オ)甲1発明の「横方向に伸びる長方形状」の「建築板11」が「上下」に並ぶ方向が、本件発明2の「一方向に伸びる長方形形状」を有する「化粧材」が「並列配置」される「幅方向」に相当する。
甲1発明において、「建築板11」と「他の建築板11」との「突き合わせ部分」は、「継ぎ目14」であるから、甲1発明の前記「継ぎ目14」は、本件発明2の「複数の化粧相互の境目」に相当する。
甲1発明は、「この建築板11を壁面に複数枚貼り合わせたときに各建築板11の上下・左右の4辺部の凸模様ブロック12と化粧目地13がそれに突き合わされた他の建築板11の凸模様ブロック12と化粧目地13と連続するように当該各辺部の凸模様ブロック12と化粧目地13が形成されていて、換言すれば、各建築板11の下辺の凸模様ブロック12と化粧目地13が上辺のそれに連続するように形成され、左辺の凸模様ブロック12と化粧目地13が右辺のそれに連続するように形成されて」いるから、「上下」方向に並ぶ「建築板11」と「他の建築板11」の「凹凸模様パターン」どうしは、「継ぎ目14」を跨がって連続することは、明らかである。
そうすると、甲1発明は、本件発明2の「複数の化粧材を幅方向に並列配置した場合に、幅方向に隣接する前記複数の化粧材相互の境目において、前記装飾どうしは前記境目を跨って連続するように構成され」ていること、と同様の構成を有しているといえる。
(カ)甲1発明の「各建築板11は、横方向に伸びる長方形状を有して」いることから、「建築板11」の「長方形状」の「長辺」とは、「建築板11」の「上辺」及び「下辺」であるといえる。そうすると、甲1発明の「建築板11」の「上辺」及び「下辺」は、本件発明2の「長辺」である「右端」及び「左端」にそれぞれ相当する。
上記のことをふまえると、甲1発明の「上下に位置する2枚の建築板11において、各建築板11の上辺に接する凸模様ブロック12及び化粧目地13の形状と位置、並びに、凸模様ブロック12の塗装色が同じであって、相互にいずれも視覚上同一であり、各建築板11の下辺に接する凸模様ブロック12及び化粧目地13の形状と位置、並びに、凸模様ブロック12の塗装色が同じであって、相互にいずれも視覚上同一である」ことは、本件発明2の「長方形形状の長辺を右端および左端としたとき、前記右端に接する前記装飾が相互にいずれも視覚上同一あるいは同一に近く、前記左端に接する前記装飾が相互にいずれも視覚上同一あるいは同一に近いように構成されている」ことに相当する。
なお、甲1発明の「建築板11」の「上辺」及び「下辺」を、本件発明2の「左端」及び「右端」にそれぞれ対応させたとしても、結論に変わりはない。
そうすると、本件発明2と甲1発明との、一致点及び相違点は、以下とおりである。
(一致点)
「1組の建装材を構成する異なる装飾を有する2種類以上の複数の化粧材であって、
前記複数の化粧材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有しており、
種類の異なる前記複数の化粧材は、少なくとも部分的に前記装飾が相互に相違し、
前記装飾は、石目調であり、
前記複数の化粧材を幅方向に並列配置した場合に、幅方向に隣接する前記複数の化粧材相互の境目において、前記装飾どうしは前記境目を跨って連続するように構成され、
前記長方形形状の長辺を右端および左端としたとき、前記右端に接する前記装飾が相互にいずれも視覚上同一あるいは同一に近く、前記左端に接する前記装飾が相互にいずれも視覚上同一あるいは同一に近いように構成されている、複数の化粧材。」
(相違点1)
「複数の化粧材」について、本件発明2では、「いずれも」、「長方形形状に伸びる方向に一定の間隔で同一の装飾を有し」ているのに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点。
イ 判断
(ア)新規性について
上記相違点1は、実質的な相違点である。
したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明ではない。
(イ)進歩性について
上記相違点1について検討する。
甲1発明の「建築板11の周辺部以外の部分の凸模様ブロック12」は、「塗装色の塗り分けのデータをコンピュータ32の乱数発生機能によってランダムに自動作成し、様々なバリエーションの塗装パターンを塗装できるようにし」たものであるから、いずれの「建築板11」においても、周辺部以外の部分の凸模様ブロック12について、横方向に(「一方向に」)一定の間隔で同一の装飾を有するようにする動機はない。
よって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 小括
したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由についての判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
本件発明1が本件発明2と共通する構成については、上記1(1)ア(ア)~(オ)と同様であるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「1組の建装材を構成する異なる装飾を有する2種類以上の複数の化粧材であって、
前記複数の化粧材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有し、
種類の異なる前記複数の化粧材は、少なくとも部分的に前記装飾が相互に相違し、
前記装飾は、左官加工のコテ跡調、スタッコ調、塗り壁調、木目調、石目調のいずれかであり、
前記複数の化粧材を幅方向に並列配置した場合に、幅方向に隣接する前記複数の化粧材相互の境目において、前記装飾どうしは前記境目を跨って連続するように構成された、複数の化粧材。」
(相違点2)
「複数の化粧材」について、本件発明1では、「いずれも」、「前記長方形形状の伸びる方向に一定の間隔で同一の装飾を有しており、前記一定の間隔は、前記2種類以上の複数の化粧材において同じであ」るのに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
相違点2に係る本件発明1の構成は、上記1(1)アで認定した相違点1に係る本件発明2の構成を含むものである。
そうすると、上記1(1)イで説明したことをふまえれば、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではないことは明らかである。
ウ 申立人の主張
申立人は、甲第1号証の図1を参照し、4枚の建築板11のうち、上半分及び下半分に位置する2枚の建築板11をそれぞれ1枚の建築板と見做すことにより、上下の各建築板は、「この建築板の長方形形状の伸びる方向の長さの1/2の間隔で、同一の凹凸模様パターンを有する」ものとなり、「各建築板における同一の凹凸模様パターンにおいて、凹凸模様パターンにおける各凸模様ブロックの塗装色も同一であり、建築板が長方形形状に伸びる方向に一定の間隔で同一の装飾を有することは、当業者は容易に考えることができる」とし、相違点1(上記の「相違点2」に相当)の本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものである旨主張する。
(申立書17頁5行~18頁5行)
しかしながら、甲1発明の「建築板11の周辺部以外の部分の凸模様ブロック12」は、「塗装色の塗り分けのデータをコンピュータ32の乱数発生機能によってランダムに自動作成し、様々なバリエーションの塗装パターンを塗装できるようにし」たものであるから、上半分に位置する2枚の建築板11を1枚の建築板と見做したとしても、この見做された1枚の建築板において、凹凸模様パターンにおける各凸模様ブロックの塗装色が同一であったり、建築板が長方形形状に伸びる方向に一定の間隔で同一の装飾を有していることは、想定されていない。下半分に位置する2枚の建築板11を1枚の建築板と見做した場合も同様である。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
本件発明3が本件発明2と共通する構成については、上記1(1)ア(ア)~(オ)と同様であるから、本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「1組の建装材を構成する異なる装飾を有する2種類以上の複数の化粧材であって、
前記複数の化粧材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有しており、
種類の異なる前記複数の化粧材は、少なくとも部分的に前記装飾が相互に相違し、
前記装飾は、左官加工のコテ跡調、スタッコ調、塗り壁調、木目調、石目調のいずれかであり、
前記複数の化粧材を幅方向に並列配置した場合に、幅方向に隣接する前記複数の化粧材相互の境目において、前記装飾どうしは前記境目を跨って連続するように構成された、複数の化粧材。」
(相違点3)
本件発明3は、「同一種類の前記複数の化粧材を、幅方向に隣接する前記複数の化粧材相互の前記境目において前記装飾どうしが前記境目を跨って連続するように並列配置した場合に、幅方向に隣接する前記複数の化粧材において同一となる前記装飾は、前記一方向にオフセットするように構成され」るのに対して、甲1発明は、そのような特定がされていない点。
イ 判断
上記相違点3について検討する。
甲1発明の「建築板11の周辺部以外の部分の凸模様ブロック12」は、「塗装色の塗り分けのデータをコンピュータ32の乱数発生機能によってランダムに自動作成し、様々なバリエーションの塗装パターンを塗装できるようにし」たものであるから、甲1発明において、上下に並ぶ方向に(「幅方向」に)、「装飾」が「同一種類」である「建築板11」を配置する動機はなく、そのため、「建築板11」が上下に並ぶ方向に配置される場合において、「同一」となる「装飾」が、横方向に(「一方向」に)、「オフセット」するように構成されることもない。
よって、甲1発明において、相違点3に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 申立人の主張
申立人は、甲第1号証の図1を参照し、4枚の建築板11のうち、上半分及び下半分に位置する2枚の建築板11をそれぞれ1枚の建築板と見做して得られる上下2枚の建築板において、上の建築板に対して、下の建築板を右方向に、建築板の長方形形状の長辺の長さ分、すなわち、長方形形状の長辺の長さ方向に、1/2オフセットしても、上下方向(幅方向)に隣接する建築板は、継ぎ目において、凹凸模様パターン及び塗装色が連続することは、当業者は容易に考えることができる、つまり、上述の相違点2(上記の「相違点3」に相当)の「同一種類の前記複数の化粧材を、幅方向に隣接する前記複数の化粧材相互の前記境目において前記装飾どうしが前記境目を跨って連続するように並列配置した場合に、幅方向に隣接する前記複数の化粧材において同一となる前記装飾は、前記一方向にオフセットするように構成された」との構成は、当業者が容易に想到し得るものである旨主張する。
(申立書20頁12~25行)
しかしながら、甲1発明の「建築板11の周辺部以外の部分の凸模様ブロック12」は、「塗装色の塗り分けのデータをコンピュータ32の乱数発生機能によってランダムに自動作成し、様々なバリエーションの塗装パターンを塗装できるようにし」たものであるから、上半分及び下半分に位置する2枚の建築板11をそれぞれ1枚の建築板と見做し、長方形形状の長辺の長さ方向に、1/2オフセットしても、上半分及び下半分の見做された1枚の建築板における各凸模様ブロックの塗装色は同一にはならない。
上記の点を踏まえれば、本件発明3のように、「幅方向に隣接する前記複数の化粧材において」、「装飾」が「同一」となることはなく、「一方向にオフセットするように構成さ」れることにもならない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
したがって、本件発明3は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700826