特許異議申立
2023-700824
取り付け構造、表示装置、及び、照明装置
- 審判番号
- 2023-700824
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-010880
- 登録番号
- 7220574
- 請求日
- 2023年08月10日
- 審決日
- 2024年03月12日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
- 【権利者】三菱電機照明株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
- 【異議申立人】尾田 哲之
- 審判長/審判官
- 審判長 藤井 昇
- 審判官 八木 誠
- 審判官 沼生 泰伸
- 分類
- P1651.537-YAA(F21S) / P1651.113-YAA(F21S) / P1651.121-YAA(F21S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7220574号発明「取り付け構造、表示装置、及び、照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7220574号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7220574号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7220574号の請求項1~5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成31年1月25日に出願され、令和5年2月2日にその特許権の設定登録がされ、同年2月10日に特許掲載公報が発行された。
本件特許についての特許異議申立人尾田哲之(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 8月10日 特許異議の申立て
同年10月26日付け 取消理由通知
同年12月13日 特許権者より意見書・訂正請求書の提出
令和6年 1月22日 申立人より意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年12月13日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)、(2)(なお、下線は訂正箇所である。)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記本体面は、上下方向に配置された二対以上の取付穴と、電線ケーブルを通す電源穴とを有し、
対となっている取付穴の間に前記電線ケーブルを二本通すことができる穴サイズの電源穴を上下方向に個別に形成できない場合、上下方向に隣り合う二対以上の取付穴に対応して、前記電源穴が一個設けられている取り付け構造。」
と記載されているのを、
「前記本体面は、上下方向に配置された二対以上の取付穴と、電線ケーブルを通す電源穴と、前記電線ケーブルを接続する電源端子台を設置する設置部とを有し、
一対の取付穴と前記電源穴とを1対1に対応させて前記電源穴を上下方向に二個設けることができない程に前記取付穴の上下方向の間隔が狭く、上下方向に隣り合う二対以上の取付穴に対応して、前記電源穴が一個設けられている取り付け構造。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する従属請求項2、3、5も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に
「前記本体面は、上下方向に配置された二対以上の取付穴と、電線ケーブルを通す電源穴とを有し、
前記電源穴は、上下方向に隣り合う二対以上の取付穴に対応して、一個設けられ、
前記電源穴は、三本の電線を有する電線ケーブルを二本通すことができる穴サイズを有し、
対となっている取付穴の間に前記電線ケーブルを二本通すことができる穴サイズの電源穴を上下方向に個別に形成できない場合、前記二対以上の取付穴に対応して前記電源穴が一個設けられている取り付け構造。」
と記載されているのを、
「前記本体面は、上下方向に配置された二対以上の取付穴と、電線ケーブルを通す電源穴と、前記電線ケーブルを接続する電源端子台を設置する設置部とを有し、
前記電源穴は、上下方向に隣り合う二対以上の取付穴に対応して、一個設けられ、
前記電源穴は、三本の電線を有する電線ケーブルを二本通すことができる穴サイズを有し、
一対の取付穴と前記電源穴とを1対1に対応させて前記電源穴を上下方向に二個設けることができない程に前記取付穴の上下方向の間隔が狭く、前記二対以上の取付穴に対応して前記電源穴が一個設けられている取り付け構造。」
に訂正する(請求項4の記載を引用する従属請求項5も同様に訂正する)。
(3)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~5は、請求項2、3、5が、本件訂正前の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあり、請求項5が、本件訂正前の請求項4の記載を引用する関係でもあるから、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~5〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「本体面」が有する事項として、「前記電線ケーブルを接続する電源端子台を設置する設置部」との事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正前の請求項1の「一対の取付穴」及び「電源穴」についての「対となっている取付穴の間に前記電線ケーブルを二本通すことができる穴サイズの電源穴を上下方向に個別に形成できない場合」との事項を、「一対の取付穴と前記電源穴とを1対1に対応させて前記電源穴を上下方向に二個設けることができない程に前記取付穴の上下方向の間隔が狭く」との事項に訂正するものであるから、不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。
そして、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
また、追加された「前記電線ケーブルを接続する電源端子台を設置する設置部」との事項は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の【0053】の記載に基づくものであると認められ、訂正された「一対の取付穴と前記電源穴とを1対1に対応させて前記電源穴を上下方向に二個設けることができない程に前記取付穴の上下方向の間隔が狭く」との事項は、本件明細書等の【0068】及び【0102】に基づくものと認められるから、新規事項を追加するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項4に対して、訂正事項1と実質的に同じ訂正をするものであるから、上記(1)で説示したのと同様の理由により、特許請求の範囲の減縮及び不明瞭な記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項を追加するものでもない。
3 小括
以上によれば、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
被取付部に取り付けられる本体面を有する本体を備え、
前記本体面は、上下方向に配置された二対以上の取付穴と、電線ケーブルを通す電源穴と、前記電線ケーブルを接続する電源端子台を設置する設置部とを有し、
一対の取付穴と前記電源穴とを1対1に対応させて前記電源穴を上下方向に二個設けることができない程に前記取付穴の上下方向の間隔が狭く、上下方向に隣り合う二対以上の取付穴に対応して、前記電源穴が一個設けられている取り付け構造。
【請求項2】
前記取付穴は、対となっている取付穴を二対以上有し、
前記電源穴は、二対の取付穴の間に配置されている請求項1に記載の取り付け構造。
【請求項3】
前記電源穴は、三本の電線を有する電線ケーブルを二本通すことができる穴サイズを有する請求項1又は2に記載の取り付け構造。
【請求項4】
被取付部に取り付けられる本体面を有する本体を備え、
前記本体面は、上下方向に配置された二対以上の取付穴と、電線ケーブルを通す電源穴と、前記電線ケーブルを接続する電源端子台を設置する設置部とを有し、
前記電源穴は、上下方向に隣り合う二対以上の取付穴に対応して、一個設けられ、
前記電源穴は、三本の電線を有する電線ケーブルを二本通すことができる穴サイズを有し、
一対の取付穴と前記電源穴とを1対1に対応させて前記電源穴を上下方向に二個設けることができない程に前記取付穴の上下方向の間隔が狭く、前記二対以上の取付穴に対応して前記電源穴が一個設けられている取り付け構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の取り付け構造を有する表示装置又は照明装置。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審が通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
[取消理由1](明確性)
本件特許の下記請求項に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、下記請求項に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものである。
[取消理由2](新規性)
本件特許の下記請求項に係る発明は、この出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
[取消理由3](進歩性)
本件特許の下記請求項に係る発明は、この出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、この出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
以下、申立人が提出した「甲第○号証」を、「甲○」という。また、本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、それぞれ、「本件訂正前発明1」~「本件訂正前発明5」という。
記
甲5:「施設・屋外・店舗照明 総合カタログ2018」、パナソニック株式会社、2018年4月、393-394ページ
[取消理由と請求項及び引用文献等の関係]
○取消理由1
請求項 1~5
○取消理由2、3
請求項 1~5
引用文献 甲5
1 取消理由1(明確性)
請求項1には、「対となっている取付穴の間に前記電線ケーブルを二本通すことができる穴サイズの電源穴を上下方向に個別に形成できない場合、上下方向に隣り合う二対以上の取付穴に対応して、前記電源穴が一個設けられている」(下線は当審が付与。以下同様。)と記載されているが、「取り付け構造」という物の発明である本件発明1において、上記電源穴を上下方向に個別に形成できない場合とは、どういう場合であるのか、同項の記載全体を参酌しても不明確である。
本件明細書等の【0068】及び【0102】の記載を参照すると、1対の取付穴と電源穴とを1対1に対応させて、電源穴を上下方向に2個設けることができない程に、取付穴の上下方向の間隔が狭く、上下方向に隣り合う2対の取付穴に対応して、電源穴が1個設けられることが開示されていると認められるが、請求項1の記載では、該下線部が表す事項が特定されているとは認められない。
したがって、同項の上記記載がどのようなものまで含むのか、本件明細書等をみても不明確である。
そして、そもそも、請求項1の記載では、同項の上記記載の下線部が成り立たない場合について何も言及されておらず、論理的には、同項の上記記載の下線部が成り立たない場合は、どのような構成でもよいこととなるから、同項の上記記載は、物の発明である本件発明1を不明確にするものである。
また、請求項4にも、請求項1の上記記載と同様の記載があり、不明確である。
以上によれば、請求項2、3は請求項1を直接又は間接的に引用し、請求項5は請求項1、4を直接又は間接的に引用することを勘案すると、本件訂正前発明1~5は不明確である。
2 取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)
本件訂正前発明1~4は、甲5にリニューアルプレートとして記載された発明(以下「甲5発明」という。)であり、仮に相違点があるとしても、当業者が適宜なし得る程度のものである。
本件訂正前発明5は、甲5に甲5発明を有する避難口誘導灯として記載された発明であり、仮に相違点があるとしても、当業者が適宜なし得る程度のものである。
第5 取消理由についての判断
1 取消理由1(明確性)について
本件訂正により、請求項1、4の「対となっている取付穴の間に前記電線ケーブルを二本通すことができる穴サイズの電源穴を上下方向に個別に形成できない場合」との事項は、「一対の取付穴と前記電源穴とを1対1に対応させて前記電源穴を上下方向に二個設けることができない程に前記取付穴の上下方向の間隔が狭く」との事項に訂正されたから、取消理由1は解消された。
2 取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)について
(1)引用文献の記載事項等
ア 甲5について
(ア)記載事項
甲5には、以下の事項が記載されている。
a 393ページ
[図:0001411335000001.jpg]
b 394ページ
[図:0001411335000002.jpg]
c 394ページ(上記bの図面の拡大図)
[図:0001411335000003.jpg]
(イ)認定事項
a 上記(ア)a及びbの記載によれば、リニューアルプレートは、ともに「FK11747」の品番が付いていることから、同じリニューアルプレートであると認められ、リニューアルプレートは本体を備えること、及び、リニューアルプレートの本体は、一面が壁に取り付けられることが認められる。
b 上記(ア)a及びbの記載によれば、上記(ア)cの図面の上2つの図がリニューアルプレートのカバーであり、一番下の図がリニューアルプレートの本体であると認められる。そして、上記(ア)cの一番下の図には、1つの電源穴の両側それぞれに上下方向に20mmの間隔の2つの取付穴を有し、1つの電源穴の両側にある取付穴のうち、上下方向上側にある取付穴同士は上下方向の同じ位置にあり、上下方向下側にある取付穴同士は上下方向の同じ位置にあることが看取され、間隔が20mmでは、電源穴の両側の上下方向で同じ位置にある取付穴に合わせて2つの電源穴を設けるのは、狭くて難しいと認められる。
c 上記bを踏まえると、上記(ア)cの図面によれば、リニューアルプレートの本体の一面は、上下方向に配置された2対の取付穴と、電源穴とを有すること、及び、1対の取付穴と電源穴とを1対1に対応させて、電源穴を上下方向に2個設けることができない程に、取付穴の上下方向の間隔が狭く、上下方向に配置された2対の取付穴に対応して、2対の取付穴の間に電源穴が1個設けられていることが認められる。
d 上記(ア)aの記載によれば、上記b、cも踏まえると、電源穴は、電源ケーブルを通すものであり、電源ケーブルを2本通すことができるサイズのものであることが認められる。
(ウ)甲5発明
上記(イ)を総合すると、甲5には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「一面が壁に取り付けられる本体を備え、
前記一面は、上下方向に配置された2対の取付穴と、電源ケーブルを通す電源穴とを有し、
電源穴は、電源ケーブルを2本通すことができるサイズのものであり、
1対の取付穴と電源穴とを1対1に対応させて、電源穴を上下方向に2個設けることができない程に、取付穴の上下方向の間隔が狭く、上下方向に配置された2対の取付穴に対応して、2対の取付穴の間に電源穴が1個設けられているリニューアルプレート。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 本件発明1と甲5発明とを対比すると、後者の「一面」は、前者の「本体面」に相当し、以下同様に、「壁」は「被取付部」に、「本体」は「本体」に、「2対の取付穴」は「二対以上の取付穴」に、「電源ケーブルを通す電源穴」は「電源ケーブルを通す電源穴」に、「リニューアルプレート」は「取り付け構造」に、それぞれ相当する。
b 上記aを踏まえると、後者の「一面が壁に取り付けられる本体を備え」ることは、前者の「被取付部に取り付けられる本体面を有する本体を備え」ることに、後者の「前記一面は、上下方向に配置された2対の取付穴と、電源ケーブルを通す電源穴とを有」することは、前者の「前記本体面は、上下方向に配置された二対以上の取付穴と、電線ケーブルを通す電源穴とを有」することに、それぞれ相当する。
c 後者の「電源穴は、電源ケーブルを2本通すことができるサイズのものであ」ること及び「1対の取付穴と電源穴とを1対1に対応させて、電源穴を上下方向に2個設けることができない程に、取付穴の上下方向の間隔が狭く、上下方向に配置された2対の取付穴に対応して、」「電源穴が1個設けられている」ことは、前者の「一対の取付穴と前記電源穴とを1対1に対応させて前記電源穴を上下方向に二個設けることができない程に前記取付穴の上下方向の間隔が狭く、上下方向に隣り合う二対以上の取付穴に対応して、前記電源穴が一個設けられている」ことに相当する。
d そうすると、本件発明1と甲5発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「被取付部に取り付けられる本体面を有する本体を備え、
前記本体面は、上下方向に配置された二対以上の取付穴と、電線ケーブルを通す電源穴と、を有し、
一対の取付穴と前記電源穴とを1対1に対応させて前記電源穴を上下方向に二個設けることができない程に前記取付穴の上下方向の間隔が狭く、上下方向に隣り合う二対以上の取付穴に対応して、前記電源穴が一個設けられている取り付け構造。」
<相違点1>
本件発明1では、本体面は、「前記電線ケーブルを接続する電源端子台を設置する設置部」とを有するのに対し、甲5発明では、一面は、そのような設置部を有しない点。
(イ)相違点についての判断
甲5の393ページ(上記(1)ア(ア)a)にも記載されているように、リニューアルプレートは、取り外した古い器具の跡を隠し、新しい誘導灯を取り付けるものであると認められるところ、リニューアルプレートに電線ケーブルを接続する電源端子台を設置することについては、甲5だけでなく、その他の証拠にも、記載も示唆も見いだせない。
したがって、リニューアルプレートである甲5発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、意見書(5ページ参照)において、甲3には、表示装置1の筐体7に端子台43を備えること(以下「甲3技術事項」という。)が記載されており、甲5発明と甲3に記載された表示装置1は技術分野が同一であって、甲5発明に甲3技術事項を適用することには動機付けがあるから、本件発明1、4は、甲5発明及び甲3技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかしながら、甲5発明はリニューアルプレートであり、甲3技術事項の筐体7とは異なる部材であるから、甲5発明と甲3技術事項が同じ技術分野に属するというだけでは、甲5発明に甲3技術事項を適用することには、動機付けがあるとはいえない。
また、甲5の393ページの記載(上記(1)ア(ア)a)を参照すると、リニューアルプレートは、その上に誘導灯の本体(甲3技術事項では「筐体7」)を取り付けるものであり、リニューアルプレートに端子台を設けると、誘導灯の本体を取り付ける際の妨げになることは明らかであるから、甲5発明に甲3技術事項を適用することには、阻害要因があるともいえる。
したがって、申立人の上記主張は、当を得たものとはいえず、採用できない。
(エ)小括
以上によれば、本件発明1は、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を追加したものであるから、上記アで説示したのと同様の理由により、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明4について
本件発明4と甲5発明とを対比すると、両者には、少なくとも相違点1と実質的に同じ相違点があることは明らかであるから、本件発明4も、上記アで説示したのと同様の理由により、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1又は本件発明4の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を追加したものであるから、上記ア及びウで説示したのと同様の理由により、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ まとめ
以上により、取消理由2及び3は成り立たない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の内容
申立人は、特許異議申立書(26~39ページ等参照)において、本件訂正前発明1~5について、以下の(1)及び(2)を主張する。
甲1:「品番FK21747であるリニューアルプレートの製品仕様図」、パナソニック株式会社
甲2:特開2011-134512号公報
甲3:特開2018-142522号公報
甲4:特開2012-109281号公報
(1)特許異議申立理由1(新規性)
本件訂正前発明1~4は、甲1に記載された発明であり、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(2)特許異議申立理由2(進歩性)
本件訂正前発明1~5は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明及び甲4に記載された発明、又は、甲3に記載された発明及び甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
2 特許異議申立理由についての判断
(1)特許異議申立理由1(新規性)について
甲5には、甲1に記載の品番FK21747であるリニューアルプレートも記載されていることから、甲1は、少なくとも2018年4月以前に作成されたものであると推認できる。
しかしながら、甲1には、リニューアルプレートについて甲5以上のことは実質的には記載されておらず、本件発明1~4と、甲1に品番FK21747であるリニューアルプレートとして記載された発明(以下「甲1発明」という。)とには、少なくとも相違点1と実質的に同じ相違点があることは明らかであるから、本件発明1~4は甲1発明ではない。
したがって、特許異議申立理由1は成り立たない。
(2)特許異議申立理由2(進歩性)について
ア 甲1を主引用例とする場合
上記(1)で説示したように、本件発明1~4と甲1発明とには、少なくとも相違点1と実質的に同じ相違点があるから、本件発明1~4は、上記「第5 2(2)ア」で説示したのと同様の理由により、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、本件発明5は、本件発明1又は本件発明4の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を追加したものであるから、同様に、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲2又は甲3を主引用例とする場合
(ア) 本件発明1について
本件発明1と、甲2に記載された発明(以下「甲2発明」という。)及び甲3に記載された発明(以下「甲3発明」という。)とは、申立人が特許異議申立書(それぞれ、27、28ページ)において認めているように、本件発明1では、「一対の取付穴と前記電源穴とを1対1に対応させて前記電源穴を上下方向に二個設けることができない程に前記取付穴の上下方向の間隔が狭く、上下方向に隣り合う二対以上の取付穴に対応して、前記電源穴が一個設けられている」のに対し、甲2発明及び甲3発明では、そのような構成はない点(以下、それぞれ「相違点2」、「相違点3」という。)で、少なくとも相違する。
そして、相違点2、3について検討すると、甲4には、相違点2又は相違点3に係る本件発明1の構成について、記載も示唆も見いだせないから、本件発明1は、甲2発明及び甲4に記載された発明(以下「甲4発明」という。)、又は、甲3発明及び甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、上記「第5 2(2)ア(ア)で説示したように、甲5発明は、相違点2又は相違点3に係る本件発明1の構成に相当する構成を有するものであるが、甲5には、該構成を有することにより、どのような技術的課題を解決できるのかや、どのような作用・効果を奏するのかについて記載も示唆も見いだせない。そうすると、甲2、3発明と甲5発明とには、課題や機能・作用等の共通性を見いだせないから、甲2発明又は甲3発明に甲5発明の上記構成を適用することには、動機付けがあるとは認められない。
よって、本件発明1は、甲2発明又は甲3発明、及び、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ) 本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を追加したものであるから、上記(ア)で説示したのと同様の理由により、甲2発明及び甲4発明、又は、甲3発明及び甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 本件発明4について
本件発明4と甲2発明又は甲3発明とを対比すると、少なくとも、それぞれ相違点2又は相違点3と実質的に同じ相違点があることは明らかであるから、本件発明4も、上記(ア)で説示したのと同様の理由により、甲2発明及び甲4発明、又は、甲3発明及び甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(エ) 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1又は本件発明4の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を追加したものであるから、上記(ア)及び(ウ)で説示したのと同様の理由により、甲2発明及び甲4発明、又は、甲3発明及び甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ まとめ
以上により、特許異議申立理由2も成り立たない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によって、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700824