特許異議申立
2025-700186
照明装置
- 審判番号
- 2025-700186
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-101527
- 登録番号
- 7532924
- 請求日
- 2025年02月13日
- 審決日
- 2025年12月01日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
- 【権利者代理人】倉谷 泰孝
- 【権利者代理人】松井 重明
- 【権利者代理人】伊達 研郎
- 【権利者】三菱電機照明株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
- 【権利者代理人】倉谷 泰孝
- 【権利者代理人】松井 重明
- 【権利者代理人】伊達 研郎
- 【異議申立人】尾田 哲之
- 審判長/審判官
- 審判長 倉橋 紀夫
- 審判官 高橋 学
- 審判官 横溝 顕範
- 分類
- P1651.121-YAA(F21S) / P1651.537-YAA(F21S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7532924号発明「照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7532924号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第7532924号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7532924号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許は、令和2年6月11日に出願され、令和6年8月5日にその特許権の設定登録がされ、同年8月14日に特許掲載公報が発行された。
本件特許についての特許異議申立人尾田哲之(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年 2月13日 :特許異議の申立て(請求項1~3)
同年 5月12日付け:取消理由通知書
同年 7月 2日 :特許権者より意見書・訂正請求書の提出
同年 7月16日 :特許権者より手続補正書(方式)の提出
同年 9月 2日 :申立人より意見書の提出
第2 本件訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年7月16日に提出された手続補正書(方式)により補正された同年同月2日に提出された訂正請求書(以下、単に「訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~3について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
請求項1に
「前記所定間隔を隔てた上下方向に直交する巾方向における前記電源保持部と前記アーム支持部の間に、前記アーム主部まで連通する作業空間が形成されている照明装置。」
とあるのを
「前記所定間隔を隔てた上下方向に直交する巾方向における前記電源保持部と前記アーム支持部の間に、前記アーム主部に設けられた主部貫通孔と前記上下方向に連通する作業空間が形成されている照明装置。」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項3に
「前記アーム主部は、前記アームを被取付部に取り付けする為の主部貫通孔が設けられており、」
とあるのを
「前記アーム主部に設けられた前記主部貫通孔により、前記アームは被取付部に取り付けられ、」
に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における「作業空間」について、「前記アーム主部に設けられた主部貫通孔と前記上下方向に連通する」ものであることを具体的に特定し限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項との関係を検討すると、「照明装置1は、図11に示すように、光源ユニット10にアーム20が巾方向Xより挟持するように取り付けられた状態において、電源装置16が電源保持部15により奥行方向Yに沿ってベース部13に取り付けられることで、アーム20の主部貫通孔211が対向した状態にすることができる。よって、図11の点線Cで示すように、巾方向Xにおいて電源装置16のケース主部1631より下方向Z2側の空間もアーム20を被取付部に固定する為の作業空間にすることができ、照明装置1を大きくすることなく作業性を向上することができる。」(【0049】)(下線は当審で付した。以下同様。)の記載及び【図1】、【図11】の図示内容からすると、訂正事項1は、新たな技術事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「作業空間」について、さらに特定を加えて限定するものであるから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の請求項3において「前記アーム主部は、前記アームを被取付部に取り付けする為の主部貫通孔が設けられており、」と記載されていたところ、訂正事項1により請求項1が「前記アーム主部に設けられた主部貫通孔」と訂正されたことに伴い、請求項3の記載を整合させるために「前記アーム主部に設けられた前記主部貫通孔により、前記アームは被取付部に取り付けられ、」と訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2は、訂正事項1による請求項1の記載との整合を図るものであり、本件訂正前の請求項3と、本件訂正後の請求項3との間に実質的な差異はないから、新たな技術事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~3は、請求項2及び3が請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~3〕について請求されたものである。
4 訂正についてのむすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
板状のアーム主部と、前記アーム主部の両端側から対に突設するよう設けられたアーム支持部を有するアームと、
一方の面に発光部が取り付けられたベース部を有し、対に設けられた前記アーム支持部の間に配置されるように前記アームに取り付けられる光源ユニットと、
を備え、
前記光源ユニットは、
対に設けられた前記アーム支持部の対向する方向において前記ベース部よりも短く形成された電源装置と、
所定間隔を隔てて前記電源装置を前記ベース部に取り付ける電源保持部とを有し、
前記所定間隔を隔てた上下方向に直交する巾方向における前記電源保持部と前記アーム支持部の間に、前記アーム主部に設けられた主部貫通孔と前記上下方向に連通する作業空間が形成されている照明装置。
【請求項2】
前記電源保持部は、前記所定間隔を形成するように前記ベース部から対に立設するように設けられた保持脚部を有する請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記アーム主部に設けられた前記主部貫通孔により、前記アームは被取付部に取り付けられ、
前記主部貫通孔は、前記ベース部と対向している請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の照明装置。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~3に係る特許に対して令和7年5月12日付け取消理由通知で当審において通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
理由(進歩性)本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2019-133754号公報
甲第2号証:特開2016-100318号公報
以下「甲第○号証」を「甲○」という。
第5 取消理由についての当審の判断
1 甲1について
(1)甲1の認定事項
ア 【0012】の記載を踏まえ【図1】~【図3】をみると、アーム10の固定面部11は、板状であることが看取される。
イ 【0020】の記載を踏まえ【図2】及び【図3】をみると、発光基板70は、ヒートシンク50のベース52の一方の面に固定されていることが看取される。
ウ 【0014】「天板20は、主板部21の上面中央部に電源装置30を載せており」の記載を踏まえ【図1】~【図3】をみると、2つの支持部12が対向する方向(図でX方向)における電源装置30の長さは、天板20及びベース52の長さよりも短いことが看取される。
エ 【0016】、【0017】の記載を踏まえ【図1】~【図3】をみると、支柱枠組40は、ベース52を保持していることが看取される。
オ 【0011】~【0019】の記載を踏まえ【図1】~【図3】をみると、電源装置30、天板20及び支柱枠組40、ヒートシンク50、ベース52、発光基板70は、一体となって支持部12の間に配置固定されていることが看取される。
カ 【0012】の記載を踏まえ【図1】~【図3】をみると、固定面部11はベース52と対向していることが看取される。
(2)甲1に記載された発明
甲1の記載及び上記(1)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(なお、括弧内に主な参照箇所を示す。以下同様。)。
「板状の固定面部11と、固定面部11の両端より同一方向に延設された支持部12を有するアーム10と、(【0011】、【0012】、【図1】~【図3】、(1)ア)
ヒートシンク50のベース52の一方の面に固定された発光基板70と、(【0020】、【図1】~【図3】、(1)イ)
2つの支持部12が対向する方向における長さが、天板20及びベース52の長さよりも短い電源装置30と、(【0014】、【0015】、【図1】~【図3】、(1)ウ)
ヒートシンク50との距離を設けて設置された天板20の主板部21の上面中央部に電源装置30が固定され、天板20は支柱枠組40の上端に固定され、支柱枠組40がベース52を保持する、天板20及び支柱枠組40とを有し、(【0013】、【0014】、【0016】、【0019】、【図1】~【図3】、(1)エ)、
電源装置30、天板20及び支柱枠組40、ヒートシンク50、ベース52、発光基板70は、一体となって支持部12の間に配置固定されており、(【0011】~【0019】、【図1】~【図3】、(1)オ)
支柱枠組40は、対向する2つのH型支柱41を有し、(【0016】)
固定面部11は、天井などの被取付部に当接するものであって、吊ボルトなどの固定具が挿し込まれる固定孔11aが形成されており、固定面部11はベース52と対向している、(【0012】、【図1】~【図3】、(1)カ)
照明器具1。」
2 甲2について
(1)甲2の認定事項
ア 【0021】、【0022】の記載を踏まえ【図4】をみると、アーム16の両端部が対向する方向における電源ユニット8の長さは、底板82及びベース部30の長さよりも短いことが看取される。
イ 【0013】~【0022】の記載を踏まえ【図4】をみると、電源ユニット8、底板82、取付部131、ベース部30、LEDモジュールは、一体となってアーム16の両端部の間に配置固定されていることが看取される。
ウ 【0022】の記載を踏まえ【図4】をみると、放熱部材3の上端との間の空間を隔てた上下方向に直交する巾方向(【図4】の左右方向)における底板82及び取付部131とアーム16の両端部の間に、アーム16の中央部分まで続く隙間があることが看取される。
(2)甲2に記載された発明
甲2の記載及び上記(1)から、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「長尺の金属板が長手方向における両端で同一方向に略直角に曲げられてU字状に形成され、中央部分と両端部を備えるアーム16と、(【0020】、【図1】)
下面にLEDモジュールが固定された放熱部材3のベース部30と、(【0014】、【図1】)
アーム16の両端部が対向する方向における長さが、底板82及びベース部30の長さよりも短い電源ユニット8と、(【0021】、【0022】、【図4】、(1)ア)
放熱部材3に固定される保持部材と、(【0015】~【0018】、【図1】)
電源ユニット8のケース81は底板82を有し、(【0022】)
底板82は、放熱部材3の上端との間に空間が設けられて、保持部材のアーム取付部材13の取付部131にねじ止めされるものであり、(【0015】、【0019】、【0022】、【図4】)
電源ユニット8、底板82、取付部131、ベース部30、LEDモジュールは、一体となってアーム16の両端部の間に配置固定され、(【0013】~【0022】、【図4】、(1)イ)
放熱部材3の上端との間の空間を隔てた上下方向に直交する巾方向における底板82及び取付部131とアーム16の両端部の間に、アーム16の中央部分まで続く隙間がある、(【0022】、【図4】、(1)ウ)
照明器具。」
3 本件発明1について
(1)対比
ア 本件発明1と甲1発明を対比すると、後者の「固定面部11」は前者の「アーム主部」に相当し、以下同様に、「支持部12」は「アーム支持部」に、「アーム10」は「アーム」に、「発光基板70」は「発光部」に、「ベース52」は「ベース部」に、「電源装置30」は「電源装置」に、「照明器具1」は「照明装置」に、それぞれ相当する。
イ 後者の「固定面部11」が「板状」であることは、前者の「アーム主部」が「板状」であることに相当する。
ウ 後者の「支持部12」が「固定面部11の両端より同一方向に延設された」ものであることは、前者の「アーム支持部」が「前記アーム主部の両端側から対に突設するよう設けられた」ものであることに相当する。
エ 後者の「発光基板70」が「ヒートシンク50のベース52の一方の面に固定された」ものであることは、前者の「発光部」が「ベース部」の「一方の面に」「取り付けられた」ものであることに相当する。
オ 後者の「電源装置30」が「2つの支持部12が対向する方向における長さが、天板20及びベース52の長さよりも短い」ものであることは、前者の「電源装置」が「対に設けられた前記アーム支持部の対向する方向において前記ベース部よりも短く形成された」ものであることに相当する。
カ 後者の「天板20及び支柱枠組40」が「ヒートシンク50との距離を設けて設置された天板20の主板部21の上面中央部に電源装置30が固定され、天板20は支柱枠組40の上端に固定され、支柱枠組40がベース52を保持する」ものであることは、前者の「電源保持部」が「所定間隔を隔てて前記電源装置を前記ベース部に取り付ける」ものであることに相当するから、後者の「天板20及び支柱枠組40」は、前者の「電源保持部」に相当する。
キ 上記ア~カを踏まえると、後者の「電源装置30、天板20及び支柱枠組40、ベース52、発光基板70」は、合わせて前者の「光源ユニット」に相当するから、後者の「電源装置30、天板20及び支柱枠組40、ヒートシンク50、ベース52、発光基板70は、一体となって支持部12の間に配置固定されて」いることは、前者の「光源ユニット」が「対に設けられた前記アーム支持部の間に配置されるように前記アームに取り付けられる」ことに相当する。
ク そうすると両者は、
「板状のアーム主部と、前記アーム主部の両端側から対に突設するよう設けられたアーム支持部を有するアームと、
一方の面に発光部が取り付けられたベース部を有し、対に設けられた前記アーム支持部の間に配置されるように前記アームに取り付けられる光源ユニットと、
を備え、
前記光源ユニットは、
対に設けられた前記アーム支持部の対向する方向において前記ベース部よりも短く形成された電源装置と、
所定間隔を隔てて前記電源装置を前記ベース部に取り付ける電源保持部とを有する、
照明装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点1〕
本件発明1は、「前記所定間隔を隔てた上下方向に直交する巾方向における前記電源保持部と前記アーム支持部の間に、前記アーム主部に設けられた主部貫通孔と前記上下方向に連通する作業空間が形成されている」のに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
甲2発明の用語を本件発明1に対応させると、甲2発明の「中央部分」は本件発明1の「アーム主部」に対応し、以下同様に、「両端部」は「アーム支持部」に、「アーム16」は「アーム」に、「LEDモジュール」は「発光部」に、「ベース部30」は「ベース部」に、「電源ユニット8」は「電源装置」に、「底板82」と「取付部131」は合わせて「電源保持部」に、「放熱部材3の上端との間の空間」は「所定間隔」に、「照明器具」は「照明装置」に、それぞれ対応するから、甲2発明の「放熱部材3の上端との間の空間を隔てた上下方向に直交する巾方向における底板82及び取付部131とアーム16の両端部の間に、アーム16の中央部分まで続く隙間がある」ことは、「所定間隔を隔てた上下方向に直交する巾方向における電源保持部とアーム支持部の間に、アーム主部まで続く隙間がある」ことに整理することができる。
ここで、本件発明1は、「前記所定間隔を隔てた上下方向に直交する巾方向における前記電源保持部と前記アーム支持部の間に」ある「作業空間」が「前記アーム主部に設けられた主部貫通孔と前記上下方向に連通する」ように「形成されている」ことを特定している。
一方で、甲2には、本件発明1の「主部貫通孔」に対応する「ボルト挿通孔160,161」(【0028】、【図1】を参照。)が記載されているけれども、甲2発明の「隙間」が、「ボルト挿通孔160,161」と上下方向に連通するものであるのか否かは、定かでない。
そうすると、仮に、甲2発明の隙間に関する構成を甲1発明に適用しても、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項に到達しない。
そして、本件発明1は、相違点1に係る発明特定事項により、「照明装置1は、図11に示すように、光源ユニット10にアーム20が巾方向Xより挟持するように取り付けられた状態において、電源装置16が電源保持部15により奥行方向Yに沿ってベース部13に取り付けられることで、アーム20の主部貫通孔211が対向した状態にすることができる。よって、図11の点線Cで示すように、巾方向Xにおいて電源装置16のケース主部1631より下方向Z2側の空間もアーム20を被取付部に固定する為の作業空間にすることができ、照明装置1を大きくすることなく作業性を向上することができる。」(【0049】)という格別の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということができない。
(3)申立人の主張について
申立人は、令和7年9月2日提出の意見書(以下「意見書」という。)において、概略、以下のような主張をしている。
(意見書3~4ページ)甲2にはアーム16両端にそれぞれボルト挿通孔160,161を設けることが記載され、甲4の【図3】によると電源保持部とアーム支持部との間の空間を、当該空間の上下方向においてアーム主部の両端部が位置するように設けることは周知技術であるといえる。
そうすると、甲1、甲2及び周知技術とから、電源保持部とアーム支持部との間の空間を、当該空間の上下方向においてアーム主部の両端部に設けられたボルト挿通孔(主部貫通孔)が位置するように設けることは、当業者にとって容易に想到することができる。
甲4:特開2019-175770号公報
上記主張について検討する。
上記(2)で説示したとおり、甲2に記載された「隙間」が「ボルト挿通孔160,161」と上下方向に連通するものであるのか否かは、定かでない。
甲4に記載された設置孔71も同様に、電源部16とアーム支持部70との「隙間」が「設置孔71」と上下方向に連通するものであるのか否かは定かでないし、そもそも、電源部16とアーム支持部70との「隙間」であって、「電源保持部」とアーム支持部70との間の隙間ではない。
そうすると、甲2と甲4を総合しても、「前記所定間隔を隔てた上下方向に直交する巾方向における前記電源保持部と前記アーム支持部の間に、前記アーム主部に設けられた主部貫通孔と前記上下方向に連通する作業空間が形成されている」ことに到達しない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、甲2発明及び周知技術(甲4)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
4 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明、甲2発明及び周知技術(甲4)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
5 まとめ
以上のとおり、本件発明1~3は、甲1発明、甲2発明及び周知技術(甲4)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項に該当するものではなく、本件発明1~3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものということはできない。
したがって、取消理由によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由
申立人は、特許異議申立書において、取消理由通知において採用しなかった以下の特許異議申立理由を主張している。
理由1(進歩性)
1-1(甲3を副引例とする進歩性)
本件特許発明1は、甲1発明1と、甲3記載事項1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明2は、甲1発明2と、甲3記載事項1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明3は、甲1発明3と、甲3記載事項1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))
甲3:特開2017-21995号公報
1-2(甲4を副引例とする進歩性)
本件特許発明1は、甲1発明1と、甲4記載事項1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明2は、甲1発明2と、甲4記載事項1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明3は、甲1発明3と、甲4記載事項1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))
理由2(明確性要件)
請求項1の「作業空間」は、巾や高さが不明で僅かな空間も含まれるため、課題を解決することができるほど明確に記載されていないから、本件特許発明1~3は不明確である。
(特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号))
2 当審の判断
(1)理由1-1(甲3を副引例とする進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、上記第5の3(1)で説示したとおり、両者は、相違点1で相違する。
(イ)判断
甲3には、本件発明1の「主部貫通孔」に対応する「固定孔400」、「長孔401」が記載されているけれども、これらは、固定板40の中央に設けられているから、巾方向における保護カバー5とアーム片41との「隙間」が、「固定孔400」、「長孔401」と上下方向に連通するものでないことは明らかであるし、そもそも、保護カバー5とアーム片41との「隙間」であって、「電源保持部」とアーム片41との「隙間」ではない。
そうすると、仮に、甲3に記載された隙間に関する構成を甲1発明に適用しても、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項に到達しない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということができない。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
ウ まとめ
以上のとおり、本件発明1~3は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項に該当するものではなく、本件発明1~3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものということはできない。
したがって、理由1-1によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
(2)理由1-2(甲4を副引例とする進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、上記第5の3(1)で説示したとおり、両者は、相違点1で相違する。
(イ)判断
甲4には、本件発明1の「主部貫通孔」に対応する「設置孔71」が記載されているけれども、巾方向における電源部16とアーム支持部70との「隙間」が「設置孔71」と上下方向に連通するものであるのか否かは定かでないし、そもそも、電源部16とアーム支持部70との「隙間」であって、「電源保持部」とアーム支持部70との間の隙間ではない。
そうすると、仮に、甲4に記載された隙間に関する構成を甲1発明に適用しても、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項に到達しない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということができない。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
ウ まとめ
以上のとおり、本件発明1~3は、甲1発明及び甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項に該当するものではなく、本件発明1~3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものということはできない。
したがって、理由1-2によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
(3)理由2(明確性要件)について
ア 「作業空間」について
本件発明1の「作業空間」は、その文言から「作業」のための「空間」であることが理解できる。
さらに本件発明1は、「前記所定間隔を隔てた上下方向に直交する巾方向における前記電源保持部と前記アーム支持部の間」という発明特定事項により、「作業空間」の巾方向の位置と大きさを特定し、「前記アーム主部に設けられた主部貫通孔と前記上下方向に連通する」という発明特定事項により、「作業空間」の高さ方向の位置と大きさ及び主部貫通孔との関係を特定している。
以上を総合すれば、本件発明1の「作業空間」は、「前記所定間隔を隔てた上下方向に直交する巾方向における前記電源保持部と前記アーム支持部の間」という巾方向の位置及び大きさと、「前記アーム主部に設けられた主部貫通孔と前記上下方向に連通する」高さ方向の位置及び大きさを備えた、「作業」のための「空間」を意味することが理解できる。
そして、具体的な「作業」の内容は特定されていないものの、主部貫通孔との関係が特定されていることから、少なくとも主部貫通孔に係る作業であることは、当業者であれば理解できる。
したがって、本件発明1~3は明確である。
イ 申立人の主張について
申立人は、意見書において、概略、以下のような主張をしている。
(5ページ)本件訂正発明1の作業空間とは、作業空間の巾方向における長さが主部貫通孔の巾方向における長さと同一となる場合も含まれるから、本件訂正発明1は、課題を解決できるほど明確に記載されていない。
上記主張について検討する。
本件発明1は、具体的な「作業」の内容を特定していないものの、上記のとおり、少なくとも主部貫通孔に係る作業を行う作業空間があることが理解でき、本件発明1は明確である。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。
ウ まとめ
以上のとおり、本件発明1~3は明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、請求項1~3に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものということはできない。
したがって、理由2によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700186