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特許異議申立

2023-700810

金属印刷インキ

審判番号
2023-700810
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-109464
登録番号
7220523
請求日
2023年08月04日
審決日
2023年11月28日
公報発行日
2024年01月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】DICグラフィックス株式会社
  • 【権利者代理人】大野 孝幸
  • 【権利者代理人】小川 眞治
  • 【異議申立人】岡 幹男
審判長/審判官
  • 審判長 亀ヶ谷 明久
  • 審判官 塩見 篤史
  • 審判官 関根 裕
分類
P1651.121-Y (C09D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7220523号発明「金属印刷インキ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7220523号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7220523号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成30年6月7日の出願であって、令和5年2月2日に特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月10日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年8月4日に特許異議申立人である岡 幹男(以下「申立人」という。)により、請求項1~6に係る特許について特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明の記載 1 本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明6」といい、まとめて、「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 顔料と、重量平均分子量が40000以上150000以下であり、数平均分子量が4000以上7000以下であり、分子量分布が9以上32以下であるアルキッド樹脂を含む樹脂と、溶剤とを含み、前記顔料の含有量が10質量%以上60質量%以下であり、前記樹脂の含有量が5質量%以上70質量%以下であり、前記樹脂に占める前記アルキッド樹脂の含有量が50質量%以上であり、前記溶剤の含有量が5質量%以上60質量%以下であることを特徴とする金属印刷インキ。 【請求項2】 前記アルキッド樹脂が、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、前記多価アルコールが備える水酸基の平均官能基数が3.5以上4.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属印刷インキ。 【請求項3】 前記アルキッド樹脂が、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、前記脂肪酸の95モル%以上が、炭素原子数が8以上18以下の飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属印刷インキ。 【請求項4】 前記アルキッド樹脂が、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、前記脂肪酸のうち、カプリン酸の割合が40質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の金属印刷インキ。 【請求項5】 前記アルキッド樹脂が多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、前記脂肪酸のうち、ラウリン酸の割合が8質量%以上25質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の金属印刷インキ。 【請求項6】 前記アルキッド樹脂の油長が30以上70以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の金属印刷インキ。」 第3 申立の理由及び証拠方法 申立人は、全請求項(請求項1~6)に係る発明の特許を取り消すべきであると主張し、その理由として、後記1の申立ての理由を主張し、また、後記2の証拠方法を提出している。 また、申立ての理由1は、主たる刊行物等として甲第1号証又は甲第2号証を引用するものである。 1 申立ての理由 (1)申立ての理由1-1(甲1号証を主引用例とする場合) 本件発明1~5は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)申立ての理由1-2(甲2号証を主引用例とする場合) 本件発明1~3、6は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 証拠方法 特許異議申立人は、次の甲第1号証~甲第10号証を提出した。甲第1号証~甲第10号証を、以下「甲1」~「甲10」ともいう。 甲第1号証:特開2005-314494号公報 甲第2号証:特開2015-83637号公報 甲第3号証:特開平8-269382号公報 甲第4号証:特開2016-155906号公報 甲第5号証:熊野谿従、“高分子材料における不均ー構造の発生と制御”、生産研究、東京大学生産技術研究所、1979年3月、第31巻、第3号、p.163-171 甲第6号証:特開昭62-280219号公報 甲第7号証:特開2018-58956号公報 甲第8号証:特開平5-163453号公報 甲第9号証:三原一幸編、「解説塗料学」、増補改定版、株式会社理工出版社、1975年6月20日、p.5 甲第10号証:特開2001-279150号公報 第4 当審の判断 1 証拠の記載事項 (1) 甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 (A)1種または2種以上の脂肪酸を40~60質量%含むアルキッド樹脂、および (B)脂肪族炭化水素系溶剤を主体とし、かつ実質的に芳香族炭化水素系溶剤を含まない有機溶剤 を含み、該アルキッド樹脂(A)における脂肪酸の数平均炭素数が10~14であり、かつアルキッド樹脂の固形分濃度が30~70質量%であるレトルト食品用シームレス缶の水なし平版印刷インキ組成物。」 「【0007】 水なし平版印刷用インキに要求される特性として重要なものは、耐地汚れ性と転写性がある。耐地汚れ性とは、本来、白地であるべき箇所にインクの汚れが付着する性質であり、印刷中に版面温度が上昇しインキ自体の凝集性が低下することにより非画線部にインキが付着してしまうために生ずる現象である。 【0008】 この地汚れを防止するためには、インキのバインダー樹脂自体の凝集力を高める方法(樹脂の高分子量化や樹脂の高濃度化など)、非画線部への付着力を弱める方法(シリコーンオイルなどの添加など)が検討されている。」 「【0033】 アルキッド樹脂は、通常、多塩基酸と多価アルコールと脂肪酸とからなるが、本発明で用いるアルキッド樹脂(A)は脂肪酸として数平均炭素数10~14の脂肪酸をアルキッド樹脂中に40~60質量%(アルキッド樹脂基準)含んでいる。」 「【0035】 数平均炭素数10~14の脂肪酸を構成する脂肪酸としては、デカン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)のほか、オクタン酸(C8)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、オレイン酸(C18)、リシノール酸(C18)、レノレイン酸(C18)、エレオステアリン酸(C18)などがあげられ、これらの2種以上の混合物であってもよい。また、これらの脂肪酸の天然混合物として、ひまし油、ヤシ油、亜麻仁油、サフラワー油、脱水ひまし油、トール油脂肪酸などのうち、数平均炭素数が10~14のものが使用できる。」 「【0039】 多価アルコールとしては、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールAなどの二価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール;ペンタエリトリット、ジペンタエリトリットなどの四価アルコールなどが使用できる。」 「【0044】 本発明においては、かかるアルキッド樹脂単独でバインダー樹脂を調製してもよいが、さらに従来公知のバインダー樹脂を併用してもよい。そうした併用するバインダー樹脂としては、たとえばエポキシエステル樹脂、アクリル変性アルキッド樹脂、スチレン変性アルキッド樹脂、ロジンエステル樹脂、脂肪酸変性フェノール樹脂、マレイン酸樹脂などが例示できる。これらの他のバインダー樹脂は、アルキッド樹脂100質量部に対して20質量部以下、さらには10質量部以下、特に5質量部以下が好ましい。」 「【0052】 有機溶剤(B)の量は、アルキッド樹脂(A)を溶解し、またインキを適正な粘度に調整し得る量であり、アルキッド樹脂の種類や量、有機溶剤の種類や組合せなどによって、インキ組成物中のアルキッド樹脂濃度が30~70質量%の範囲となるように適宜選定すればよい。 【0053】 本発明のインキ組成物には、インキ組成物に通常配合される添加剤を配合することができる。たとえば、顔料、顔料分散剤、ドライヤー、酸触媒、ワックス、粘度調整剤、保存安定剤などがあげられる。」 「【0055】 顔料の配合量は、種類や目的によって異なるが、通常、10~50質量%の範囲内で選定すればよい。」 「【0059】 かくして調製したインキ組成物は、レトルト食品用シームレス缶の外周面に水なし平版印刷される。水なし平版印刷法としては従来公知の方法が制限なく採用できる。 【0060】 シームレス缶の材料は、金属材料が殆どであり、たとえばアルミニウム、スチールなどである。」 「【0064】 つぎに実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例中の「部」は質量部である。 【0065】 実施例1 (1)アルキッド樹脂の製造 表1に示す多塩基酸、多価アルコールおよび脂肪酸を配合し、常法により酸価が3mgKOHになるまでエステル化反応を行い、液状のアルキッド樹脂(A-1~A-4およびB-1)を製造した。 【0066】 表1における各成分はつぎのものである。 多塩基酸: 無水フタル酸 多価アルコール: トリメチロールプロパン ペンタエリスリトール 脂肪酸: ヤシ油(数平均炭素数13.3) デカン酸(数平均炭素数10) 亜麻仁油(数平均炭素数17.9) 【0067】 【表1】 [図:0001405836000001.jpg] 【0068】 (2)インキ組成物の調製 バインダー樹脂として上記(1)で製造した液状のアルキッド樹脂(A-1~A-4、B-1)および硬化剤入りバインダー樹脂(B-2)を用い、顔料としてフタロシアニンブルーを30部、および表2に示す有機溶剤を同表に示すように配合し、三本ロールにて練肉分散させて印刷インキ組成物を調製した。 【0069】 表2中の各成分は、つぎのものである。 B-2(硬化剤入りバインダー樹脂): バインダー樹脂B-1の35部に硬化剤としてアルキル化メラミン樹脂(三井サイテックス(株)製のサイメル238)を10部配合した樹脂 顔料: フタロシアニンブルー 溶剤B1: 脂肪族炭化水素系溶剤としてパラフィン類を23質量%、ナフテン類を77質量%含み、芳香族炭化水素系溶剤を不可避的に0.2質量%まで含む混合有機溶剤(日本石油(株)製のAF5) 溶剤B2: 脂肪族炭化水素系溶剤として1-ヘキサデセンを55質量%、1-オクタデセンを45質量%含み、芳香族炭化水素系溶剤を含まない(検出不能)混合有機溶剤(三菱化学(株)製のダイアレン168) 溶剤B3: 炭素数10~14のアルキルベンゼンからなる混合有機溶剤(日本石油(株)製のアルケンL)」 「【0080】 【表2】 [図:0001405836000002.jpg] 」 (2)甲2の記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 アルキッド樹脂を樹脂成分とする印刷インキ用ワニスであって、該ワニス中の全樹脂成分に占める前記アルキッド樹脂の存在割合が45質量%以上であり、前記アルキッド樹脂が、酸価が30mgKOH/g以下であって、かつ、酸価と水酸基価の合計が100mgKOH/g以下の範囲にあり、更に、その粘度が100~3,500Pa・sの範囲にあるものであることを特徴とする印刷インキ用ワニス。 【請求項2】 樹脂成分のアルキッド樹脂の油長が35質量%から80質量%の請求項1に記載の印刷インキ用ワニス」 「【請求項8】 請求項1~7の何れか1つに記載の印刷インキ用ワニスに、顔料を配合してなる印刷インキ。」 「【0016】 上記したアルキッド樹脂は、具体的には、ポリオールと、多価カルボン酸又はその無水物と、植物油または脂肪酸とを反応させることによって製造することができる。 【0017】 ここで用いる、ポリオールは、アルコール化合物としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール等の直鎖状アルカンジオール;ネオペンチルグリコール、2-エチルヘキシルジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチルペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4ートリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチ-2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、キシレングリコール、シクロヘキサンジメチロール、ハイドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネペンチルグリコール等の分岐アルカンジオール; 【0018】 トリシクロデカンジメチロール、ジシクロペンタジエンジアリルアルコールコポリマー、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールS、水添カテコール、水添レゾルシン、水添ハイドロキノン等の脂肪族環状ジオール;(モノまたはジまたはトリ)グリセリン、(モノまたはジまたはトリ)トリメチロ-ルエタン、(モノまたはジまたはトリ)トリメチロ-ルプロパン、(モノまたはジまたはトリ)トリメチロ-ルアルカン、(モノまたはジまたはトリ)ペンタエリスリトール、ソルビトール等の三価以上の脂肪族アルコール;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、イノシトール等の三価以上の環状アルコール等が挙げられる。 【0019】 これらのなかでも、特に、揮発性が低く、また、得られるアルキッド樹脂の分岐度が高まること、更に、入手も容易であることからグリセリン、ペンタエリスリトールが好ましい。」 「【0021】 次に、前記した植物油、即ち、不飽和基含有脂肪酸のトリグリセライドは、例えば、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、南洋油桐油(ジャトロファ)、脱水ヒマシ油などが挙げられる。その他、回収/再生された再生植物油も用いることができる。再生植物油としては、含水率を0.3重量%以下、ヨウ素価を100以上、酸価を3以下として再生処理した油が好ましい。 また、脂肪酸として、はオレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸の他、上記各種植物油由来の脂肪酸が挙げられる。 これらのなかでも、特に、色相と入手の容易さの点から大豆油を主成分とすることが好ましい。」 「【0034】 この様にして得られるアルキッド樹脂は、これにインキ用の溶剤、植物油、又は脂肪酸エステルを加えて粘度とタックの調整がなされ、ワニスとなる。ここで、アルキッド樹脂を製造する際に使用した植物油が多量に系内に残存する場合には、そのままワニスとすることもできるが、通常は溶剤又は植物油を加えて粘度を調整し、更に必要により、更にキレート剤を配合して粘度調整することができる。」 「【0036】 また、ワニス調整に使用できるインキ用の溶剤は、沸点160℃以上の溶剤であり、例えば、JX社製「1号スピンドル油」、「3号ソルベント」、「4号ソルベント」、「5号ソルベント」、「6号ソルベント」、「ナフテゾールH」、「アルケン56NT」、三菱化学(株)製「ダイヤドール13」、「ダイヤレン168」;日産化学(株)製「Fオキソコール」、「Fオキソコール180」;JX社製「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」「AFソルベント6号」「AFソルベント7号」、ISU社製DSOL溶剤、「ソルベントH」;ISU(株)製「N-パラフィンC14-C18」;出光興産(株)「スーパーゾルLA35」、「スーパーゾルLA38」;エクソン化学(株)の「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD120」、「エクソールD130」、「エクソールD160」、「エクソールD100K」、「エクソールD120K」、「エクソールD130K」、「エクソールD280」、「エクソールD300」、「エクソールD320」;マギーブラザーズ社製の「マギーソル-40」、「マギーソル-44」、「マギーソル-47」、「マギーソル-52」、「マギーソル-60」等が挙げられる。」 「【0045】 本発明の印刷インキ用ワニスは、オフセットインキ、樹脂凸版インキに使用されるが、その中でも特に熱乾燥型オフセット輪転インキ、浸透乾燥型新聞インキ、又は、酸化重合型枚葉インキのワニスとしてとりわけ有用である。特に本発明では、熱乾燥型オフセット輪転インキに用いた場合、印刷特性が良好となるのみならず、その印刷物の光沢に優れたものとなる。」 「【0050】 上記の印刷インキ用ワニスを使って作られる印刷インキ組成物中の必須成分の好ましい比率は以下のようになる。ヒートセット輪転インキ、すなわち熱乾燥型オフセット輪転インキの場合、有機又は無機顔料10~30質量%、樹脂25~35質量%、沸点160℃以上の炭化水素系溶剤が0~45質量%、植物油又は植物油エステル、植物油エーテル7~40質量%、乾燥抑制剤、汚れ防止剤、ワックス等の添加剤0~8質量%となる割合であることが好ましい。 【0051】 コールドセットインキ、すなわち浸透乾燥型新聞インキの場合、有機又は無機顔料10~30質量%、樹脂15~25質量%、溶剤が10~30質量%、植物油又は植物油エステル20~40質量%、乾燥抑制剤、汚れ防止剤、ワックス等の添加剤1~5質量%、となる割合であることが好ましい。ここで過乳化を防ぎ、画線と非画線部を分画よく印刷するためには、植物油は40%を上限とすることが好ましい。 【0052】 また、酸化重合型枚葉インキの場合、有機又は無機顔料10~30質量%、樹脂25~40質量%、溶剤が10~30質量%、植物油又は植物油エステル10~40質量%、金属ドライヤー0~3.0質量%、汚れ防止剤、ワックス等の添加剤0~10.0重量%となる割合であることが好ましい。なお、ここで金属ドライヤーは、汎用のマンガン系ドライヤー、コバルト系ドライヤーがいずれも使用できる。」 「【0056】 以下に参考例、実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれ制限されるものではない。なお、例中の部および%は、特に断りのない限り質量基準である。 また、各実施例及び比較例にて得られた樹脂及びワニスの各種性状値は以下の方法によって測定したものである。」 「【0063】 実施例4 攪拌機、温度計、脱水トラップ付還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに大豆油150部、水酸化リチウム0.06部およびペンタエリスリトール76部を仕込んで230℃で2時間アルコール交換反応を行った後に、180℃まで冷却した。ここにネオペンチルリコール37部、イソフタル酸173部を加えた後、230℃まで3時間で昇温させ、更に230℃一定温度で7時間脱水反応を行い、酸価5.0mgKOH/g、水酸基価35.0mgKOH/g、E型粘度は900Pa/sec、重量平均分子量73,000、数平均分子量5,000、油長38質量%のアルキド樹脂を得た。 (浸透乾燥型新聞インキ用のワニスの調整) 攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに、上記のアルキッド樹脂200部を仕込み、JX社製AFソルベント6号を26部仕込み240℃で2時間攪拌し浸透乾燥型新聞インキ用のワニスを得た。得られたワニスを以下「ワニス(a4)」と略記する。このワニス(a4)は、タック値12、E型粘度は200Pa・s、n-ヘキサントレランスは42ml/gであった。」 (3)甲3の記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 重量平均分子量が8万~20万であり下記で定義される白濁点が20~40%であるロジン変性フェノール樹脂をインキ中に20~40重量%含有し、かつ芳香族系炭化水素の含有率が1重量%以下でアニリン点が75~95℃、沸点が260~350℃の範囲にある石油系溶剤をインキ中に25~50重量%含有してなることを特徴とする水なし平版印刷用インキ。 白濁点(%)=樹脂(2g)/〔樹脂(2g)+溶剤(Xg)〕×100 (ただし、Xは、樹脂2gにノルマルテトラデカンを加えて加熱溶解した後、25℃に冷却した時に溶液が白濁するノルマルテトラデカンの最小量である。)」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、芳香族系の石油系溶剤による作業環境の汚染が少なく、かつ地汚れ耐性を始めとする印刷適性、及び光沢、網点再現性等の印刷効果に優れた水なし平版印刷用インキに関するものである。 【0002】 【従来の技術】現在の印刷の主流をなす平版印刷は非画線部に湿し水を供給し、これによるインキ反発性を利用し画像を形成する。近年この湿し水に関わる問題を解決する方法として、水なし平版印刷法が提案され、特に湿し水に代わってインキ反発性を示すことを目的として非画線部にシリコーンゴムを設けて印刷する方法が実用化されている。このような水なし平版印刷において従来の油性インキを用いて印刷すると非画線部での十分なインキ反発性が得られず、地汚れが発生して好ましくないことが知られている。この水なし印刷における地汚れという現象は、印刷中に印刷機の駆動部やローラーの摩擦に起因する温度上昇と湿し水を用いないことから水の蒸発による版面の冷却効果が無くなることによる版面温度の上昇によりインキ自体の凝集力が低下してしまい、本来インキを反発すべき非画線部にインキが付着するものである。この水なし印刷特有の問題を解決するために、バインダー樹脂成分を高分子量化して凝集力を上げる、シリコーンオイルを添加する、シリコーン変性樹脂を使用する、増粘剤を用い凝集力を上げる等の手法がとられてきた。しかしながら上記手法では、地汚れ耐性の改善はされるが、印刷時のインキのローラー間転移性、印刷機上での安定性等いわゆる印刷適性が劣化し良好な印刷物を得ることは難しいという事があった。」 「【0006】 【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、重量平均分子量が8万~20万であり下記で定義される白濁点が20~40%であるロジン変性フェノール樹脂をインキ中に20~40重量%含有し、かつ芳香族系炭化水素の含有率が1重量%以下でアニリン点が75~95℃、沸点が260~350℃の範囲にある石油系溶剤をインキ中に25~50重量%含有してなることを特徴とする水なし平版印刷用インキである。 白濁点(%)=樹脂(2g)/〔樹脂(2g)+溶剤(Xg)〕×100 (ただし、Xは、樹脂2gにノルマルテトラデカンを加えて加熱溶解した後、25℃に冷却した時に溶液が白濁するノルマルテトラデカンの最小量である。)なお、樹脂はノルマルテトラデカンに190~200℃で溶解させればよい。白濁点の値が小さいほど、溶解性が良い事を意味する。 【0007】本発明に用いられるロジン変性フェノール樹脂は重量平均分子量(以下、単に分子量という)が8万~20万、好ましくは8万~15万がよく、また、ノルマルテトラデカンに対する白濁点が20~40%、好ましくは30~40%がよい。分子量が8万に満たない場合は、ワニスの凝集力が不足し、従ってインキとして充分な地汚れ耐性が得られず、分子量が20万を超えるとインキとしての流動性が不充分となり、印刷機上でのインキの転移性がよくないので好ましくない。また、白濁点が20%未満の場合は、樹脂の溶解性が良すぎる為、インキのセット性が悪く好ましくない。更に白濁点が40%を超える場合には、ワニスの顔料分散性が不充分になるばかりでなく、インキとしての流動性、光沢、着肉性が悪く好ましくない。本発明に係るロジン変性フェノール樹脂はインキ中に20~40重量%好ましくは25~35重量%含有されなければならず、20重量%未満ではインキの凝集力が不足し地汚れ耐性が劣り、40重量%を超える時はインキの流動性が劣る為好ましくない。」 (4)甲4の記載事項 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 ロジン類(a)、レゾール型フェノール樹脂(b)、再生処理した植物油(c)、ジアミン類(d)を反応させてなるロジン変性フェノール樹脂(A)。」 「【請求項4】 請求項1ないし3いずれか記載のロジン変性フェノール樹脂(A)を含有することを特徴とする平版印刷インキ。」 「【0013】 高光沢でかつ、ドットゲインの少ない印刷物が得られることが可能である平版印刷インキ用樹脂およびそれを含有させた平版印刷インキの提供を目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0014】 上記課題を解決するために誠意研究した結果、以下に定める素材により作製したロジン変性フェノール樹脂を含有させた平版印刷インキは、印刷物の光沢性に優れており、さらにドットゲイン低減が可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。 【0015】 すなわち、本発明は、ロジン類(a)、レゾール型フェノール樹脂(b)、再生処理した植物油(c)、ジアミン類(d)を反応させてなるロジン変性フェノール樹脂(A)に関する。」 「【0020】 植物油を導入し、ジアミンと反応させてなるロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキを使用することで、高光沢でかつ、ドットゲインの少ない印刷物を得ることが可能となる。」 「【0036】 上記の方法によって得られたロジン変性フェノール樹脂(A)の重量平均分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(ポリスチレン換算、溶媒:テトラヒドロフラン)は5,000~300,000程度のものが好ましく、より好ましくは10,000~150,000である。5,000以上であるとインキの粘度が好適で、ミスチング等が発生し難い、300,000以下であると樹脂の溶解性が良好であるため、インキの流動性が好適で、光沢等が向上する。樹脂の溶解性については、0号ソルベントH(JX日鉱日石エネルギー社)を用い、樹脂/0号ソルベントH=2g/18gを200℃で加熱溶解させ、温度を徐々に下げ、白濁する温度を測定する。白濁する温度が低い方が樹脂と溶剤の相溶性が良好であり、30~170℃程度のものが好ましい。」 (5)甲5の記載事項 甲5には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001405836000003.jpg] 」(第167頁左欄第11~16行) 「 [図:0001405836000004.jpg] 」(第167頁 図9) (6)甲6の記載事項 甲6には、以下の事項が記載されている。 「【従来の技術】 アルキッド樹脂の製造法としては、従来より、脂肪酸、無水フタル酸、グリセリン等を反応釜に同時に仕込み、炭酸ガス雰囲気中で220乃至270℃に加熱溶融して、エステル化反応を脱水を行いながら進める脂肪酸法と、予め油脂とグリセリンをエステル交換反応させて脂肪酸モノグリセライドを作り、次いで無水フタル酸を加えてエステル化反応を行うエステル交換法の二つの製造法が公知である。」(第1頁右欄第9~18行) 「【発明が解決しようとする問題点】 然しながらこのような公知の方法で製造したアルキッド樹脂の分子量分布は、一般的にがなり広いものであった。 分子量分布の広いアルキッド樹脂を塗料に用いた場合、耐湿性に悪影響を及ぼす他、塗料の粘度が高くなり、塗装時に於ける塗料固型分が低下する等の問題点があった。 【問題点を解決するための手段】 本発明者らは、上記問題の改善について鋭意研究した結果、酸無水物、モノエポキシ基含有化合物、及びn価のアルコールを、特定の比率に配合し製造することにより、分子量分布の極めて狭いアルキッド樹脂が得られ、そして当該樹脂を塗料に用いた場合、耐湿性の向上、及び塗装時に於ける塗料固型分濃度の向上が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」(第2頁左上欄第14行~右上欄第10行) 「<比較例4乃至6> 加熱装置、攪拌機、還流冷却管、温度計、水分離機、及び窒素ガス導入管を備えた反応用フラスコに、表1に示した配合に基づき、原料を仕込み加熱する。原料が融解し、攪拌が可能となったら撹拌を開始し、反応槽温度を230℃まで3時間かけて均一な速度で昇温させ、生成する縮合水は系外に留去する。230℃に達したら、そのまま温度を一定に保ち2時間攪拌を続ける。その後、反応槽内にキシレンを添加し、溶剤存在下の縮合に切り換え反応を続ける。酸価10に達したら反応を終了し冷却する。冷却後希釈用キシレンを表1に示した量加えてアルキッド樹脂K乃至Mを製造した。それらの樹脂特性値、及び分子量分布値(Mw/Mn)を表1に示す。」(第4頁右上欄第11行~左下欄第5行) 「 [図:0001405836000005.jpg] 」(第5頁第1表) (7)甲7の記載事項 甲7には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 アルキッド樹脂を含む樹脂と、 溶剤と、 トレランス値が0.5以上8以下であり、シロキサン骨格を有する化合物と、を含むことを特徴とする金属印刷インキ。」 「【0017】 このようなアルキッド樹脂の油長は20以上60以下、酸価は0.1mgKOH/g以上25mgKOH/g以下、水酸基価は70mgKOH/g以上200mgKOH/g以下に調整されていることが好ましい。また、重量平均分子量は5000以50000以下に調整されていることが好ましい。これにより、金属印刷インキとしての印刷適性や塗膜物性に優れるとともに、後述するシロキサン骨格を含む化合物と併用する際に所望の領域に好適に凹凸を形成することができ、貯蔵安定性に優れる金属印刷インキとすることができる。」 「【0033】 印刷層を形成する方法としては、通常の2ピース缶の印刷方法である樹脂凸版を使用したドライオフセット方式や水無し平版を使用したドライオフセット方式、通常の水を使用した平版オフセット方式等によって印刷することができる。インキの膜厚は任意であるが、例えば0.3μm以上3μm以下の範囲で調整すればよい。 本発明の金属印刷インキを用いて形成される印刷層は、下地金属基材の全面に形成されてもよいし、一部のみに形成されていてもよい。本発明の金属印刷インキが印刷されない領域は、通常の金属印刷インキによって印刷層が形成されていてもよいし、下地金属基材や下地金属基材と印刷層との間に塗布される他の塗料により形成された層が露出していてもよい。」 (8)甲8の記載事項 甲8には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 水酸基を有する長鎖飽和脂肪酸を樹脂成分を基準として1~30重量%縮合せしめてなる油長20~70%の脂肪酸変性アルキッド樹脂からなる印刷インキ用樹脂。」 「【0003】金属印刷インキを金属面に印刷する印刷機としては、オフセット印刷機あるいはドライオフセット印刷機が用いられており、仕上げニスは、コーター等を用いインキ皮膜上に塗布され、130~200℃で焼付が行われていた。この一連の工程において、長油長脂肪酸変性アルキッド樹脂を使用した印刷インキは、印刷層あるいはベースの白インキが黄変し、著しく商品価値を損なうという問題点があった。黄変性を解決するために短油長アルキッド樹脂を使用すると顔料分散性が悪くなって隠蔽性が低下してしまい、耐黄変性と隠蔽性のバランスが得られなかった。」 「【0015】本発明の脂肪酸変性アルキッド樹脂の重量平均分子量は、5000~100000、更には10000~40000の範囲が好ましく、この範囲が印刷インキ適性と顔料分散性のバランスのよい樹脂が得られる。」 (9)甲9の記載事項 甲9には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001405836000006.jpg] 」(第5頁第6表) (10)甲10の記載事項 甲10には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 樹脂、顔料、及び溶剤より主として構成される印刷インキ組成物において、該樹脂成分として、油長が20~50%であり、水酸基価が50~250であるアルキッド樹脂(a)、とラクトン類(b)を反応させてなる樹脂(A)を必須成分として含有してなることを特徴とする印刷インキ組成物。」 「【0010】本発明で使用するアルキッド樹脂(a)の油成分としては、あまに油、桐油、大豆油、サフラワー油、ひまわり油、米ぬか油、(脱水)ひまし油、トール油、椰子油、パーム核油等がある。これらの油は単独または、2種以上併用して使用される。 【0011】また、本発明で使用するアルキッド樹脂(a)の脂肪酸成分としては、上述の油成分の脂肪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等がある。これらの脂肪酸は単独または、2種以上併用して使用される。さらに、これらの脂肪酸のメチルエステル化物も使用できる。」 2 証拠に記載された発明 (1) 甲1に記載された発明 ア 甲1(上記1(1)参照。)の請求項1には、「(A)1種または2種以上の脂肪酸を40~60質量%含むアルキッド樹脂、および(B)脂肪族炭化水素系溶剤を主体とし、かつ実質的に芳香族炭化水素系溶剤を含まない有機溶剤を含み、該アルキッド樹脂(A)における脂肪酸の数平均炭素数が10~14であり、かつアルキッド樹脂の固形分濃度が30~70質量%であるレトルト食品用シームレス缶の水なし平版印刷インキ組成物。」が記載されている。 イ 甲1の段落【0065】~【0067】、【表1】には、アルキッド樹脂番号A-4の製造について、「多塩基酸として無水フタル酸を162質量部、多価アルコールとしてペンタエリスリトール188.5および脂肪酸としてデカン酸を300質量部を配合し、常法により酸価が3mgKOHになるまでエステル化反応を行って製造」することが記載されており、甲1の段落【0068】~【0069】、【0080】、【表2】には、インキ組成物番号4の調製について、「アルキッド樹脂A-4を40質量部、顔料としてフタロシアニンブルーを30質量部、脂肪族炭化水素系溶剤としてパラフィン類を23質量%、ナフテン類を77質量%含み、芳香族炭化水素系溶剤を不可避的に0.2質量%まで含む混合有機溶剤である有機溶剤B1を30質量部を配合し、練肉分散させて調製」することが記載されている。 ウ すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲1発明) 「多塩基酸として無水フタル酸を162質量部、多価アルコールとしてペンタエリスリトール188.5および脂肪酸としてデカン酸を300質量部を配合し、常法により酸価が3mgKOHになるまでエステル化反応を行って製造したアルキッド樹脂A-4を40質量部、顔料としてフタロシアニンブルーを30質量部、脂肪族炭化水素系溶剤としてパラフィン類を23質量%、ナフテン類を77質量%含み、芳香族炭化水素系溶剤を不可避的に0.2質量%まで含む混合有機溶剤である有機溶剤B1を30質量部を配合し、練肉分散させて調製した、レトルト食品用シームレス缶の水なし平版印刷インキ組成物」 (2) 甲2に記載された発明 ア 甲2(上記1(2)参照。)の請求項1を引用する請求項2には、「アルキッド樹脂を樹脂成分とする印刷インキ用ワニスであって、該ワニス中の全樹脂成分に占める前記アルキッド樹脂の存在割合が45質量%以上であり、前記アルキッド樹脂が、酸価が30mgKOH/g以下であって、かつ、酸価と水酸基価の合計が100mgKOH/g以下の範囲にあり、更に、その粘度が100~3,500Pa・sの範囲にあるものであることを特徴とする印刷インキ用ワニス」であって、「樹脂成分のアルキッド樹脂の油長が35質量%から80質量%」であることが記載されている。また、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項8には、「請求項1~7の何れか1つに記載の印刷インキ用ワニスに、顔料を配合してなる印刷インキ」が記載されている。 イ 甲2の段落【0063】には、アルキッド樹脂の製造について、「大豆油150部、水酸化リチウム0.06部およびペンタエリスリトール76部を仕込んでアルコール交換反応を行った後に、ネオペンチルリコール(当審注:「ネオペンチルグリコール」の誤記と判断した。)37部、イソフタル酸173部を加えた後、脱水反応を行い、酸価5.0mgKOH/g、水酸基価35.0mgKOH/g、E型粘度900Pa/sec、重量平均分子量73,000、数平均分子量5,000、油長38質量%のアルキド樹脂を得た」こと、ワニス(a4)の調整について、「上記のアルキッド樹脂200部を仕込み、JX社製AFソルベント6号を26部仕込み、240℃で2時間攪拌し浸透乾燥型新聞インキ用のワニスを得た」ことが記載されている。ここで、同段落【0056】の記載より、「部」は質量基準である。 ウ 「浸透乾燥型新聞インキの場合、有機又は無機顔料10~30質量%、樹脂15~25質量%、溶剤が10~30質量%、植物油又は植物油エステル20~40質量%、乾燥抑制剤、汚れ防止剤、ワックス等の添加剤1~5質量%、となる割合であることが好ましい」ことが記載されている。 エ すると、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲2発明) 「大豆油150質量部、水酸化リチウム0.06質量部およびペンタエリスリトール76質量部を仕込んでアルコール交換反応を行った後に、ネオペンチルリコール(グリコールの誤記)37質量部、イソフタル酸173質量部を加えた後、脱水反応を行って得られた、酸価5.0mgKOH/g、水酸基価35.0mgKOH/g、E型粘度900Pa/sec、重量平均分子量73,000、数平均分子量5,000、油長38質量%のアルキド樹脂を200質量部とJX社製AFソルベント6号を26質量部を仕込んで240℃で2時間攪拌して得られた浸透乾燥型新聞インキ用ワニスに、顔料を配合してなる浸透乾燥型新聞インキであって、当該インキ中の必須成分の好ましい比率が、有機又は無機顔料10~30質量%、樹脂15~25質量%、溶剤が10~30質量%、植物油又は植物油エステル20~40質量%、乾燥抑制剤、汚れ防止剤、ワックス等の添加剤1~5質量%である、浸透乾燥型新聞インキ」 3 申立ての理由1-1について(甲1を主引用例とする場合) (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「顔料としてフタロシアニンブルー」、「アルキッド樹脂A-4」、「脂肪族炭化水素系溶剤としてパラフィン類を23質量%、ナフテン類を77質量%含み、芳香族炭化水素系溶剤を不可避的に0.2質量%まで含む混合有機溶剤である有機溶剤B1」はそれぞれ、本件発明1の「顔料」、「アルキッド樹脂」、「溶剤」に相当する。 甲1発明の「インキ組成物」に配合された各成分の配合量は、「アルキッド樹脂A-4を40質量部」、「フタロシアニンブルーを30質量部」、「有機溶剤B1を30質量部」であり、合計100質量部となることから、甲1発明の「フタロシアニンブルーを30質量部」、「有機溶剤B1を30質量部」はそれぞれ、本件発明1の「顔料の含有量が10質量%以上60%質量%以下」、「溶剤の含有量が5質量%以上60質量%以下」を充足する。また、甲1発明のインキ組成物に配合される樹脂はアルキッド樹脂A-4のみであるから、甲1発明の「アルキッド樹脂A-4を40質量部」は、本件発明1の「樹脂の含有量が5質量%以上70質量%以下」、「樹脂に占めるアルキッド樹脂の含有量が50質量%」のいずれも充足する。 甲1発明の「レトルト食品用シームレス缶の水なし平版印刷インキ組成物」について、甲1の段落【0060】より「シームレス缶の材料は、金属材料が殆ど」であることから、本件発明1の「金属印刷インキ」に相当する。 すると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「顔料と、アルキッド樹脂を含む樹脂と、溶剤とを含み、前記顔料の含有量が10質量%以上60質量%以下であり、前記樹脂の含有量が5質量%以上70質量%以下であり、前記樹脂に占める前記アルキッド樹脂の含有量が50質量%以上であり、前記溶剤の含有量が5質量%以上60質量%以下であることを特徴とする金属印刷インキ。」 <相違点1> 本件発明1では、アルキッド樹脂が「重量平均分子量が40000以上150000以下であり、数平均分子量が4000以上7000以下であり、分子量分布が9以上32以下である」のに対し、甲1発明では、アルキッド樹脂の重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布について特定されていない点 イ 相違点1について検討する。 甲2(上記1(2)参照。)の段落【0063】には、浸透乾燥型新聞インキ用ワニスに配合するアルキッド樹脂として、重量平均分子量73,000、数平均分子量5,000のアルキッド樹脂を用いることが記載されており、分子量分布は14.6(=73,000/5,000)となる。しかしながら、当該ワニスは浸透乾燥型新聞インキ用であり、甲1発明のレトルト食品用シームレス缶の水なし平版印刷インキ組成物とは塗布対象が著しく異なっており、レトルト食品用シームレス缶の水なし平版印刷インキ組成物への適用を示唆する記載もなく、そのような技術常識もない。 甲3(上記1(3)参照。)には、「作業環境の汚染や臭気の心配が一切なく、かつ水なし平版印刷用インキとして充分な印刷適性と印刷効果を有する印刷インキを提供する」(【0005】)ことを目的とし、「重量平均分子量が8万~20万であり・・・白濁点が20~40%であるロジン変性フェノール樹脂」(【0006】)をインキ中に含有させること、「分子量が8万に満たない場合は、ワニスの凝集力が不足し、したがってインキとして充分な地汚れ耐性が得られず」(【0007】)、好ましくないことが記載されており、甲4(上記1(4)参照。)には、「高光沢でかつ、ドットゲインの少ない印刷物が得られることが可能である平版印刷インキ用樹脂およびそれを含有させた平版印刷インキの提供を目的」(【0013】)とし、「ロジン類(a)、レゾール型フェノール樹脂(b)、再生処理した植物油(c)、ジアミン類(d)を反応させてなるロジン変性フェノール樹脂(A)」「を含有させた平版印刷インキは、印刷物の光沢性に優れており、さらにドットゲイン低減が可能なこと」(【0014】~【0015】)、「ロジン変性フェノール樹脂(A)の重量平均分子量は特に限定されないが、」「5,000~300,000程度のものが好ましく」、「5,000以上であるとインキの粘度が好適で、ミスチング等が発生しにくい」(【0036】)ことが記載されている。しかしながら、甲3、甲4に記載された樹脂はいずれもアルキッド樹脂ではなく、さらに、数平均分子量、分子量分布についての記載も示唆もない。 甲5(上記1(5)参照。)には、「アルキド樹脂は、・・・一般に分子量分布が広く、ポリスチレンを標準物質とすると103~5×105に亘っている」(第167頁左欄第14~16行)ことが記載されており、甲6(上記1(6)参照。)には、アルキッド樹脂の製造法に関し、「公知の方法で製造したアルキッド樹脂の分子量分布は、一般的にかなり広いものであった」こと、「分子量分布の広いアルキッド樹脂を塗料に用いた場合、耐湿性に悪影響を及ぼす他、塗料の粘度が高くなり、塗装時に於ける塗料固型分が低下する等の問題があった」こと、「酸無水物、モノエポキシ基含有化合物、及びn価のアルコールを、特定の比率に配合することにより、分子量分布の極めて狭いアルキッド樹脂が得られ」ること(第2頁左上欄第14行~右上欄第10行)、比較例5には、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリット、無水フタル酸、ラウリル酸を配合成分として製造したアルキッド樹脂Lの重量平均分子量が51,900、数平均分子量が2,810、分子量分布が18.5であること(第5頁第1表)が記載されている。しかしながら、甲5、6にはアルキッド樹脂の重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布のすべてについて本件発明1で特定された数値範囲を充足するものは記載されておらず、当該数値範囲に限定する動機付けとなる記載も示唆もない。 さらに、甲9(上記1(9)参照。)には、ヤシ油の構成脂肪酸の大半が飽和脂肪酸であることが開示され、甲10(上記1(10)参照。)には、アルキッド樹脂、顔料及び溶剤を主として構成される印刷インキ組成物において、アルキッド樹脂の脂肪酸成分としては、椰子油等の脂肪酸や、カプリン酸、ラウリン酸等が使用され得ることが開示されているものの、アルキッド樹脂の重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布を、本件発明1で特定された数値範囲を充足するものとする動機付けとなる記載も示唆もない。 本件発明1は、本件特許の明細書の【0015】~【0018】に記載されるように、あるキッド樹脂の重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布を所定の範囲とすることにより、画線や網点の太りを抑制し、ミスティングの抑制、高速印刷適性により優れた金属印刷インキとすることができるものとされている。 してみれば、当業者といえども、甲1発明のレトルト食品用シームレス缶の水なし平版印刷用インキ組成物に配合されているアルキッド樹脂の重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布の範囲を限定することを着想し、その範囲をそれぞれ、重量平均分子量が40000以上150000以下、数平均分子量が4000以上7000以下、分子量分布が9以上32以下に特定することは容易になし得たとはいえない。 ウ 申立人は、異議申立書の(4-3)(ア-1)において、甲1の段落【0007】、【0008】の記載に基づき、「甲1号証には、地汚れを改善するためにバインダー樹脂の高分子量化が従来検討されていたことが開示されている」ことを主張し(以下「主張1」という。)、甲3の段落【0001】、【0002】、【0006】、【0007】の記載、および、甲4の段落【0013】、【0014】、【0020】、【0036】の記載に基づき、「バインダー樹脂の高分子量化によって、地汚れやドットゲイン等を改善し得ることは、甲3号証~甲4号証にも開示されている」ことを主張し(以下「主張2」という。)、甲5の第167頁左欄第14~16行、図9の記載、これを受けて、甲6の第1頁右欄第9~18行、第2頁左上欄第14~17行、第5頁第1表の記載に基づき、「甲第5号証および甲第6号証によれば、本件特許発明の構成要件1B(当審注:異議申立書第3頁より構成要件1Bは「重量平均分子量が40000以上150000以下であり、数平均分子量が4000以上7000以下であり、分子量分布が9以上32以下であるアルキッド樹脂を含む樹脂と、」を指す)における分子量分布(Mw/Mn)の範囲は、アルキッド樹脂を、単に従来法によって合成した場合に、自ずと得られる数値範囲に過ぎない」ことを主張し(以下「主張3」という。)、甲2の【0063】の記載に基づき、「実施例4のアルキド樹脂は、樹脂平均分子量73,00、数平均分子量5,000であるから、Mw/Mnが14.6となり、構成要件1Bを具備する」こと、「甲2発明の印刷インキ用ワニスは、印刷方式が特に限定されていないため、金属材料からなるシームレス缶に好適なインキ組成物である甲1発明においても当然に参照され得る」ことを主張し(以下「主張4」という。)、これらを根拠として、「当業者は甲1発明において、適宜、甲第2号証~甲第6号証の開示を参照することにより、本件特許発明と同様の課題(たとえば地汚れ、網点の太り、ミスチングの低減)を試みるために、バインダー樹脂であるアルキッド樹脂を高分子量化して、Mw、MnおよびMw/Mnの数値範囲を最適化し、構成要件1Bの範囲に調整することについて、何ら困難ではない」と主張している(以下「主張5」という。)。 しかしながら、申立人の主張の根拠として示された主張1~主張4について検討するに、主張1に関して、甲1の段落【0009】~【0011】には、「樹脂の高分子量化は溶剤の選定が難し」いこと、「画線部へのインキの転写性も低下させてしまう」こと、「樹脂を高分子量化した場合、溶剤として芳香族炭化水素系溶剤の使用が必須となる」こと、「芳香族炭化水素系溶剤は環境への配慮から、その使用を控えることが望まれて」いることが記載されており、従来の検討においても樹脂の高分子量化には課題があり、実質的に芳香族炭化水素系溶剤を含まない甲1発明のインキ組成物においてアルキッド樹脂を高分子量化することにはむしろ阻害要因があるといえる。 主張2に関して、上記(イ)での検討のとおり、甲3、甲4に記載された樹脂はいずれもアルキッド樹脂ではなく、アルキッド樹脂の高分子量化によって、地汚れやドットゲイン等を改善し得ることが開示されているとはいえず、さらに、甲3、4には樹脂の数平均分子量、分子量分布についての記載も示唆もない。 主張3に関して、上記(イ)での検討のとおり、甲5、甲6に記載されたアルキッド樹脂の重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布のすべてについて本件発明1で特定された数値範囲を充足しておらず、また、甲6の比較例4、5のアルキッド樹脂の製造方法が甲1発明のアルキッド樹脂の製造方法と同じである根拠が示されておらず、製造に関する諸条件によって重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布が異なるものとなることは、甲6に記載された比較例4~6を見ても明らかである。 主張4に関して、上記(イ)での検討のとおり、実施例4のワニスは「浸透乾燥型新聞インキ用のワニス」であり、印刷方式が特定されている。また、甲2には他の印刷方式に用いるワニスに関する実施例が記載されているが、これらの実施例で用いられるアルキッド樹脂はいずれも、本件発明1で特定された重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布の数値範囲をすべて充足するものではない。よって、実施例4のワニスは印刷方式が特に限定されていないため、金属材料からなるシームレス缶に好適なインキ組成物である甲1発明においても当然に参照され得るとはいえない。 よって、申立人の主張1~4は採用することができず、主張1~4を根拠とした主張5も採用することができない。 エ 以上のとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲2~6、9、10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、いずれも、本件発明1を直接または間接的に引用し、さらに限定した発明であるところ、前記(1)のとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲2~6、9、10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められないものである。 そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明2~5も、本件発明1と同様の理由により、甲1発明および甲2~6、9、10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。 (3)申立ての理由1-1についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立ての理由1によって本件特許を取り消すべきものとすることはできない。 4 申立ての理由1-2について(甲2を主引用例とする場合) (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲2発明を対比すると、甲2発明の「JX社製AFソルベント6号」は、甲2の段落【0036】に、ワニス調整に使用できるインキ用の溶剤の例として記載されているから、本件発明1の「溶剤」に相当すし、甲2発明の「重量平均分子量73,000、数平均分子量5,000、油長38質量%のアルキド樹脂」は、本件発明1の「重量平均分子量が40000以上150000以下であり、数平均分子量が4000以上7000以下であり、分子量分布が9以上32以下であるアルキッド樹脂」に相当する。また、甲2発明の「浸透乾燥型新聞インキ」と本件発明1の「金属印刷インキ」は、「インキ」である点で共通している。 甲2発明の「インキ」に配合された「顔料」、「樹脂」、「溶剤」の配合量はそれぞれ、「10~30質量%」、「15~25質量%」、「10~30質量%」であるから、本件発明1の「顔料の含有量が10質量%以上60質量%以下」、「樹脂の含有量が5質量%以上70質量%以下」、「溶剤の含有量が5質量%以上60質量%以下」のいずれも充足する。 すると、本件発明1と甲2発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「顔料と、重量平均分子量が40000以上150000以下であり、数平均分子量が4000以上7000以下であり、分子量分布が9以上32以下であるアルキッド樹脂と、溶剤とを含み、前記顔料の含有量が10質量%以上60質量%以下であり、樹脂の含有量が5質量%以上70質量%以下であり、前記溶剤の含有量が5質量%以上60質量%以下である、インキ」 <相違点2> 本件発明1では、インキが「金属印刷インキ」であるのに対し、甲2発明では「浸透乾燥型新聞インキ」である点 <相違点3> 本件発明1では、インキに含有される樹脂について、「樹脂に占めるアルキッド樹脂の含有量が50質量%」であるのに対し、甲2発明では、樹脂に占めるアルキッド樹脂の含有量が特定されていない点 イ 相違点2について検討する。 甲2(上記1(2)参照。)の段落【0045】には、「本発明の印刷インキ用ワニスは、オフセットインキ、樹脂凸版インキに使用されるが、その中でも特に熱乾燥型オフセット輪転インキ、浸透乾燥型新聞インキ、又は、酸化重合型枚葉インキのワニスとしてとりわけ有用である」ことが記載されている。しかしながら、「浸透乾燥型新聞インキ用ワニス」が「浸透乾燥型新聞インキ」以外の用途に使用できることは記載されておらず、浸透乾燥型新聞インキ用ワニスが金属印刷インキに使用できるという技術常識もない。 甲1(上記1(1)参照。)の段落【0059】には「かくして調製したインキ組成物は、レトルト食品用シームレス缶の外周面に水なし平版印刷される。水なし平版印刷法としては従来公知の方法が制限なく採用できる」こと、同段落【0060】には、「シームレス缶の材料は、金属材料が殆ど」であることが記載され、甲1に記載されたインキ組成物が水なし平版印刷法による金属印刷インキに用いられる旨の記載はあるが、甲2発明の浸透乾燥型新聞インキを、金属印刷インキとして用いることができることについては、記載も示唆もない。 また、甲7(上記1(7)参照。)、甲8(上記1(8)参照。)には、「アルキッド樹脂を含む金属印刷インキ」(甲7【請求項1】、甲8【請求項1】)が記載されており、金属印刷インキの印刷方法として、「通常の2ピース缶の印刷方法である樹脂凸版を使用したドライオフセット方式や水無し平版を使用したドライオフセット方式、通常の水を使用した平版オフセット方式等によって印刷することができる」(甲7段落【0033】)こと、「金属印刷インキを金属面に印刷する印刷機としては、オフセット印刷機あるいはドライオフセット印刷機が用いられて」(甲8段落【0003】)いることが記載されている。しかしながら、甲7、8には浸透乾燥型新聞インキに用いるインキ組成物が金属印刷インキにも適している旨の記載も示唆もない。また、用途の異なる印刷インキが、それぞれのインキが利用可能な印刷方式の中に共通したものがあることを理由に、他の用途の印刷インキにも適しているという技術常識もない。 してみれば、当業者といえども、甲2発明の浸透乾燥型新聞インキを金属印刷インキとすることは容易になし得たとはいえない。 ウ 申立人は、異議申立書の(4-3)(ア-2)において、「当業者は、上記周知技術(たとえば甲1発明、甲7発明、甲8発明等)を参照し、用途が特に限定されていない甲2発明の印刷インクを、用途の一例である金属印刷用インキとして用いることにより、構成要件1H(当審注:異議申立書第11頁より構成要件1Hは「金属印刷インキ。」を指す)を具備させることについて、何ら困難ではない」と主張している(以下「主張6」という。)。 しかしながら、甲2に記載されたアルキッド樹脂のうち、本件発明1の構成要件1Bを充足するものは実施例4のワニス(a4)のみであり、その用途は「浸透乾燥型新聞インキ」であることから、インキの用途が特に限定されていないとはいえない。また、上記イでの検討のとおり、甲2発明の浸透乾燥型新聞インキに用いるインキ組成物が金属印刷インキにも適しているという記載も示唆もなく、そのような技術常識もない。 よって、申立人の主張6は採用することができない。 エ 以上のとおりであるから、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲1、7、8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。 (2)本件発明2~3、6について 本件発明2~3、6は、いずれも、本件発明1を直接または間接的に引用し、さらに限定した発明であるところ、前記(1)のとおり、本件発明1は、甲2発明及び甲1、7、8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められないものである。 そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明2~3、6も、本件発明1と同様の理由により、甲2発明及び甲1、7、8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。 (3)申立ての理由1-2についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立ての理由1-2によって本件特許を取り消すべきものとすることはできない。 第5 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700810

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