特許異議申立
2023-700233
オーバープリントニス
- 審判番号
- 2023-700233
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-013594
- 登録番号
- 7129783
- 請求日
- 2023年03月01日
- 審決日
- 2023年12月27日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】DICグラフィックス株式会社
- 【権利者代理人】大野 孝幸
- 【権利者代理人】小川 眞治
- 【異議申立人】田中 理紗
- 審判長/審判官
- 審判長 亀ヶ谷 明久
- 審判官 関根 裕
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1652.113-YAA(C09D) / P1652.121-YAA(C09D) / P1652.16 -YAA(C09D) / P1652.537-YAA(C09D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第126条第6項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7129783号発明「オーバープリントニス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7129783号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7129783号の請求項4~7に係る特許を維持する。
特許第7129783号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7129783号(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成30年1月30日の出願であって、令和4年8月25日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年9月2日に特許掲載公報が発行されたものである。そして、その特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。
令和5年 3月 1日 特許異議申立書(特許異議申立人 田中 理紗
(以下「申立人」という。)による請求項1、
4~7に係る特許対する特許異議の申立て)
同年 6月21日付け 取消理由通知書
同年 7月25日 訂正請求書及び意見書(特許権者)
同年 8月 8日付け 訂正請求があった旨の通知
なお、令和5年8月8日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年7月25日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、次の(1)~(7)のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
【請求項1】を削除する。
(2)訂正事項2
【請求項2】に、「前記バインダー樹脂が、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1に記載のオーバープリントニス。」と記載されているのを、
「バインダー樹脂、前記バインダー樹脂と相溶しないビーズ、脂肪酸アマイド及び溶剤を含有するオーバープリントニスであって、前記バインダー樹脂が、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有し、前記ビーズがアクリル樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ、及びガラスビーズからなる群から選ばれる何れか1種を含有することを特徴とするオーバープリントニス。
但し、前記ビーズの屈折率が1.3以上であり、平均粒子径が0.5~40μmである。」に訂正する。
(請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~7も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
【請求項3】に、「・・・を含有する請求項1~2に記載のオーバープリントニス。」と記載されているのを、
「・・・を含有する請求項2に記載のオーバープリントニス。」に訂正する。
(4)訂正事項4
【請求項4】に、「・・・の範囲である請求項1~3の何れか1つに記載のオーバープリントニス。」と記載されているのを、
「・・・の範囲である請求項2~3の何れか1つに記載のオーバープリントニス。」に訂正する。
(5)訂正事項5
【請求項5】に、「・・・を含有する請求項1~4の何れか1つ記載のオーバープリントニス。」と記載されているのを、
「・・・を含有する請求項2~4の何れか1つ記載のオーバープリントニス。」に訂正する。
(6)訂正事項6
【請求項6】に、「・・・を含有する請求項1~5の何れか1つに記載のオーバープリントニス。」と記載されているのを、
「・・・を含有する請求項2~5の何れか1つに記載のオーバープリントニス。」に訂正する。
(7)訂正事項7
【請求項7】に、「・・・を含有する請求項1~6の何れか1つに記載のオーバープリントニス。」と記載されているのを、
「・・・を含有する請求項2~6の何れか1つに記載のオーバープリントニス。」に訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~7において、請求項2~7は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1~7は一群の請求項である。したがって、本件訂正は一群の請求項ごとにされた訂正である。
3 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合したものである。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する形式の記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかの判断
訂正事項2は、訂正前の請求項1の特定事項を請求項2に取り込むものであって、その訂正事項により新たな技術事項を導入するものではないから、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないかの判断
訂正事項2は、前記ア及びイで説明したとおり、請求項2が請求項1の記載を引用しないものとするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3~7について
訂正事項3~7は、請求項1が削除されたことに伴い、引用する複数の請求項のうちから、請求項1を除く訂正事項であるから、いずれも、特許請求の範囲の減縮ないしは明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。
したがって、訂正事項3~7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮ないしは同3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的としたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合したものである。
4 独立特許要件について
(1)独立特許要件の課されない請求項
本件訂正においては、訂正前の請求項である請求項1、4~7に対して特許異議の申立てがされているので、請求項1、4~7については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課されない。
また、訂正前の請求項2は、特許異議の申立てがされていない請求項であるが、前記3(2)で検討した請求項2に係る訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課されない。
(2)独立特許要件の課される請求項
訂正前の請求項3は、特許異議の申立てがされていない請求項であって、かつ、前記3(3)で検討した請求項3に係る訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とする訂正事項を含むものであるから、請求項3に係る発明は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件を満たす必要がある。
(3)訂正後の請求項3に係る発明についての検討
訂正後の請求項3に係る発明と、後記第5の1(1)に示す甲1発明とは、少なくとも「バインダー樹脂が、アミノ樹脂」「を含有する」との特定がされていない点で相違するが、後記第5の1(2)で検討するとおり、甲1には、バインダー樹脂にアミノ樹脂を含有させることを示唆する記載がなく、また含有させる動機付けや技術常識も存在しない。そのため、訂正後の請求項3に係る発明は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、訂正後の請求項3に係る発明と、後記第5の2(1)に示す甲5発明とは、少なくとも「バインダー樹脂が、アミノ樹脂」「を含有する」との特定がされていない点で相違するが、後記第5の2(2)で検討するとおり、この点は、実質的な相違点であるから、訂正後の請求項3に係る発明は、甲5発明と実質的に同一であるとはいえない。
また、訂正後の請求項3に係る発明と、後記第5の3(1)に示す甲2発明又は後記第5の4(1)に示す甲3発明とは、少なくとも「脂肪酸アマイド」を含有するとの特定がされていない点で相違するが、後記第5の3(2)及び後記第5の4(2)で検討するとおり、甲2又は甲3には、脂肪酸アマイドを含有させることを示唆する記載がなく、また含有させる動機付けや技術常識も存在しない。そのため、訂正後の請求項3に係る発明は、甲2発明又は甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
加えて、申立人は、訂正後の請求項3に係る発明が独立特許要件を満たしていないとする理由を示していない。
よって、訂正後の請求項3に係る発明は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件を満たすものである。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項~第7項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明等
1 本件訂正発明
本件訂正は前記第2のとおり認められたので、本件訂正後の特許請求の範囲に記載された請求項のうち、特許異議の申立ての対象である請求項1、4~7に係る発明は次のとおりのものである。
なお、請求項2、3は特許異議の申立ての対象ではないが、請求項2、3の記載を引用する形式で記載された請求項4~7に係る発明(以下、番号順に「本件訂正発明4」等といい、まとめて「本件訂正発明」ともいう。)を理解するために摘記した。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
バインダー樹脂、前記バインダー樹脂と相溶しないビーズ、脂肪酸アマイド及び溶剤を含有するオーバープリントニスであって、前記バインダー樹脂が、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有し、前記ビーズがアクリル樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ、及びガラスビーズからなる群から選ばれる何れか1種を含有することを特徴とするオーバープリントニス。
但し、前記ビーズの屈折率が1.3以上であり、平均粒子径が0.5~40μmである。
【請求項3】
前記アミノ樹脂が、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、及び尿素樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項2に記載のオーバープリントニス。
【請求項4】
前記バインダー樹脂とビーズの比率(バインダー/ビーズ)が、不揮発分換算にて質量比で50/1~1/3の範囲である請求項2~3の何れか1つに記載のオーバープリントニス。
【請求項5】
前記溶剤が、溶解度パラメータ(SP値)が8.50~15.00(cal/cm3)0.5であり、沸点が65~170℃であり、蒸発速度指数が15~500である有機溶剤を含有する請求項2~4の何れか1つ記載のオーバープリントニス。
【請求項6】
前記溶剤が、ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、及びアルコール系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項2~5の何れか1つに記載のオーバープリントニス。
【請求項7】
前記溶剤が、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール及びイソプロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項2~6の何れか1つに記載のオーバープリントニス。」
2 本件特許の明細書
本件特許の明細書には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、包装材料の表面保護や意匠性向上の為に、主に各種プラスチックフィルムやアルミ箔をラミネートした包装材料の表面を形成するために用いるオーバープリントニスに関する。」
「【0007】
本発明の課題は、熱硬化の為の焼付け乾燥工程において塗工面が収縮せず、且つビーズ脱落が無い状態を保持しつつプラスチックフィルムやアルミ箔の基材の反りが抑制できるオーバープリントニスを提供することにある。
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、特定のバインダー樹脂、及び、前記バインダー樹脂と相溶しない特定のビーズ、特定の分散助剤及び特定の溶剤を含有させたオーバープリントニスが、上記課題を達成することを見出し本発明するに至った。」
「【0045】
本発明で使用するビーズはバインダー樹脂と相溶しないことが特徴であり、前記バインダー樹脂と相溶しない少なくとも1種以上のビーズを用いる。前記ビーズを添加する事で、ニス塗布後の熱硬化の為の焼付け乾燥工程において、塗工面が収縮せずプラスチックフィルやアルミ箔の基材の反りを抑制する事が出来る。」
「【0053】
(分散助剤)
本発明のオーバープリントニスには、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、酸化ポリエチレン、ポリカルボン酸及び水添ひまし油からなる群から選ばれる1種以上の分散助剤を含有する。分散剤を含有させることにより、ビーズの分散性を向上させることがでるため、ビーズが凝集せず均一分散した塗膜を形成でき、かつ、ビーズが塗膜から脱落するのを抑制することができる。また、オーバープリントニスの保存安定性を向上できる。
【0054】
前記分散助剤としては、芳香族系、ケトン系、エステル系等の溶剤によって容易に膨潤し、少量の添加でビーズ分散性を調整することができることから、脂肪酸アミド、酸化ポリエチレンが好ましく、脂肪酸アミドがより好ましい。」
「【0067】
次に、本発明を、実施例を挙げて更に具体的に説明する。尚、本明細書では特に断りのない限り、部および%は質量基準である。実施例および比較例の塗膜組成および評価結果を表1~8に示す。尚、平均粒子径は、日立製作所製操作型電子顕微鏡S-3400Nを用いて測定した。
【0068】
(アミノ樹脂/エポキシ樹脂系:ニスベースAの調製)
アミノ樹脂Aを13部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EPICLON H-601-55(DIC株式会社製)、不揮発分55%)を42部、溶剤としてキシレン37部、イソプロピルアルコールを8部混合し、オーバープリントニスベースAを調整した。」
「【0071】
(実施例1)
(オーバープリントニス(1)の調製)
前記で調製したニスベースA 59部に、フローノンHR-2(脂肪酸アミド、共栄社化学株式会社製)1部を添加し撹拌により均一化させた後、テクポリマーMBX-8(アクリル樹脂ビーズ、平均粒子径8μm、積水化成品工業株式会社製)40部を添加し、撹拌によりオーバープリントニス(1)を作製した。
オーバープリントニス(1)を20μmのアルミ箔上に乾燥状態の塗布量が3g/m2程度となるようバーコーターで塗布し、乾燥硬化条件を180℃ 10秒とし、評価用塗工物1を作製した。」
「【0075】
(オーバープリントニス(2)~(40)及び比較用オーバープリントニス(C1)~(C4)の調整)
下記表1~5に示す各材料をそれぞれ下記表に示す割合に変更した以外は、本発明のオーバープリントニス(1)の調整と同一条件で、本発明のオーバープリントニス(2)~(40)及び比較用オーバープリントニス(C1)~(C4)を得た。
下記表1~5に、本発明の実施例1~40のオーバープリントニス(1)~(40)、比較例1~4のオーバープリントニス(C1)~(C4)の具体的な組成を示す。また、表6に、オーバープリントニス(1)~(40)、比較用オーバープリントニス(C1)~(C4)に使用した有機溶剤のSP値、沸点及び蒸発速度指数を示す。
【0076】
【表1】
[図:0001409100000001.jpg]
【0077】
【表2】
[図:0001409100000002.jpg]
【0078】
【表3】
[図:0001409100000003.jpg]
【0079】
【表4】
[図:0001409100000004.jpg]
【0080】
【表5】
[図:0001409100000005.jpg]
【0081】
【表6】
[図:0001409100000006.jpg]
【0082】
・アミノ樹脂A:メラミン・ホルムアルデヒド・アルキルモノアルコール(C1~C12)縮合物、比重1.18~1.20、遊離ホルムアルデヒド0.5%以下、不揮発分97%、溶剤メタノール2.5%、気泡粘度U~X
・EPICLON H601-55:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、不揮発分55%、溶剤トルエン20%、イソプロパノール15%、1-メトキシ-2-プロパノール7.5%
・ベッコライトM-6206-40:変性アルキド樹脂、不揮発分40%、溶剤キシレン50%、シクロヘキサノン7.5%、イソブタノール2.5%
・フローノンHR-2:脂肪族アマイド(ジアマイド及びポリアマイドの混合物)、不揮発分10%、溶剤キシレン70%、エタノール13%、メタノール7%
・オプトビーズ3500M:アミノ樹脂ビーズ、平均粒子径3.5μm、屈折率1.65、真比重1.65、日産化学(株)製
・オプトビーズ2000M:アミノ樹脂ビーズ、平均粒子径2.0μm、屈折率1.65、真比重1.65、日産化学(株)製
・エポスターS:アミノ樹脂ビーズ、平均粒子径1.0μm、屈折率1.66、真比重1.50、(株)日本触媒製
・オプトビーズ500S:アミノ樹脂ビーズ、平均粒子径0.5μm、屈折率1.65、真比重1.65、日産化学(株)製
・エポスターMA1010:アクリル樹脂ビーズ、平均粒子径10.0μm、屈折率1.66、真比重1.40、(株)日本触媒製
・テクポリマーMBX-8:アクリル樹脂ビーズ、平均粒子径8.0μm、屈折率1.49、真比重1.20、積水化成品工業(株)製
・テクポリマーMBX-5:アクリル樹脂ビーズ、平均粒子径5.0μm、屈折率1.49、真比重1.20、積水化成品工業(株)製
・テクポリマーMBX-20:アクリル樹脂ビーズ、平均粒子径20.0μm、屈折率1.49、真比重1.20、積水化成品工業(株)製
・テクポリマーSSX-103:アクリル樹脂ビーズ、平均粒子径3.0μm、屈折率1.49、真比重1.20、積水化成品工業(株)製
・テクポリマーXX-31BF:アクリル樹脂ビーズ両凸レンズ型、平均粒子径2.6μm、屈折率1.49、真比重1.20、積水化成品工業(株)製
・テクポリマーXX-67BF:アクリル樹脂ビーズ中空粒子、平均粒子径5.3μm、屈折率1.49、真比重1.20、積水化成品工業(株)製
・EMB-10:ガラスビーズ、平均粒子径5.0μm、屈折率1.55、真比重2.60、ポッターズ・バロティーニ(株)製
・EMB-20:ガラスビーズ、平均粒子径10.0μm、屈折率1.55、真比重2.60、ポッターズ・バロティーニ(株)製
・GB731:ガラスビーズ、平均粒子径32.0μm、屈折率1.55、真比重2.60、ポッターズ・バロティーニ(株)製
・サイロスフェアC1510:シリカ、平均粒子径10.0μm、屈折率1.44、冨士シリシア化学(株)製
・サイロスフェアC1504:シリカ、平均粒子径4.0μm、屈折率1.44、冨士シリシア化学(株)製
・アートパールC-100透明:架橋型ウレタンビーズ、平均粒子径50.0μm、屈折率1.51、根上工業(株)製」
【0083】
(実施例2~20)
(評価用塗工物の作製)
用いるオーバープリントニスをそれぞれ、本発明のオーバープリントニス(2)~(20)に変更した以外は、実施例1と同一条件にて、実施例2~20の評価用塗工物2~20を得た。
得られた評価を下表7に示す。
【0084】
(実施例21~25)
用いるオーバープリントニスをそれぞれ、本発明のオーバープリントニス(21)~(25)に変更し、用いる基材を50μmPETフィルムに変更し、また、乾燥硬化条件を150℃ 20秒に変更した以外は、実施例1と同一条件にて、実施例21~25の評価用塗工物21~25を得た。
得られた評価を下表7に示す。
【0085】
(実施例26~40)
(評価用塗工物の作製)
用いるオーバープリントニスをそれぞれ、本発明のオーバープリントニス(26)~(40)に変更した以外は、実施例1と同一条件にて、実施例26~40の評価用塗工物26~40を得た。
得られた評価を下表8に示す。
【0086】
(比較例1~4)
用いるオーバープリントニスをそれぞれ、比較用オーバープリントニス(C1)~(C4)に変更した以外は、実施例1と同一条件にて、比較例1~4の評価用塗工物c1~c4を得た。
得られた評価を下表8に示す。
【0087】
【表7】
[図:0001409100000007.jpg]
【0088】
【表8】
[図:0001409100000008.jpg]
【0089】
本発明のオーバープリントニスは、熱硬化の為の焼付け乾燥工程において塗工面が収縮せず、塗工外観や基材密着性を保持しつつ、プラスチックフィルムやアルミ箔の基材の反りを抑制する事が出来る。」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議の申立ての理由
申立人は、下記(1)~(6)の特許異議の申立の理由(以下「申立理由」ともいう。)を主張するとともに、証拠方法として後記3の証拠を提出した。
(1)申立理由1(新規性)
本件発明1、4~7は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記3の甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件発明1、4~7は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記3の甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(進歩性)
本件発明1、4~7は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記3の甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(進歩性)
本件発明1、4~7は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記3の甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(拡大先願)
本件発明1、4~7は、本件特許の出願日前の特許出願であって、本件特許の出願日後に公開された、後記3の甲5の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、同法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)申立理由6(サポート要件)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 取消理由
当審は、前記1の申立理由1~6のうち、申立理由1、2(甲1を主たる引用例とするもの)及び申立理由5(甲5を主たる引用例とするもの)について、理由があるとして取消理由を通知した。
(1)取消理由1(新規性)
本件発明1、4~7は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記3の甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(進歩性)
本件発明1、4~7は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記3の甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(拡大先願)
本件発明1、4~7は、本件特許の出願日前の特許出願であって、本件特許の出願日後に公開された、後記3の甲5の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、同法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 証拠方法
(1)申立人は、次の甲第1号証~甲第7号証(以下「甲1」~「甲7」ともいう。)を提出した。
甲1:特開2015-33828号公報
甲2:特開2010-248436号公報
甲3:特開2016-138181号公報
甲4:特開2016-79306号公報
甲5:特願2016-216236号(特開2018-70847号公報)
甲5の1:「改訂 ワックスの性質と応用 第2版」、幸書房、130~150頁
甲5の2:「有機化学ハンドブック」、株式会社技報堂、1427~1430頁
甲6:特開2005-120264号公報
甲7:特開2016-94548号公報
(2)また、当審において、シリカの屈折率を示す証拠として、次の参考文献1(以下「参1」ともいう。)を追加した。
参1:特開昭49-96015号公報
4 甲号証及び参考文献に記載された事項
(1)甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】
耐熱性樹脂からなる外側基材層と、内側シーラント層と、前記外側基材層と前記内側シーラント層との間に配設された金属箔層と、前記外側基材層の金属箔層側とは反対の側に形成されたマットコート層とを有し、
前記マットコート層が樹脂成分と固体微粒子と滑剤とを含み、
前記内側シーラント層が熱可塑性樹脂と滑剤とを含むことを特徴とする成形用包装材。
【請求項2】
前記マットコート層は、樹脂成分と固体微粒子と滑剤を含む樹脂組成物からなる請求項1に記載の成形用包装材
【請求項3】
前記マットコート層に含まれる樹脂成分が、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、フェノキシ樹脂のうち少なくとも1種の樹脂である請求項1または2に記載の成形用包装材。」
「【請求項7】
前記マットコート層に含まれる滑剤が高級脂肪酸アミドである請求項1~6のうちのいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項8】
前記マットコート層に含まれる固体微粒子の平均粒径が1~10μmである請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の成形用包装材。」
「【0001】
本発明は、例えば、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型のリチウムイオン二次電池のケースとして好適に用いられ、また食品の包装材、医薬品の包装材として好適に用いられる成形用包装材および成形ケースに関する。」
「【0010】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、滑り性が良く成形性および耐摩耗性に優れ、耐薬品性、耐溶剤性、印字性にも優れた成形用包装材およびその関連技術を提供するものである。」
「【0031】
[7]に記載の発明によれば、滑剤として高級脂肪酸アミドを使用することにより、マットコート層に特に高い滑り性および印字性を付与することができ、またマットコート層の耐摩耗性を高めることができる。」
「【0049】
(マットコート層)
前記マットコート層(14)は外側基材層(13)の外面に形成され、成形用包装材(1)の表面に良好な滑り性を付与して成形性を向上させるとともに、優れた耐薬品性、耐溶剤性、耐摩耗性、印字性を付与する層である。前記マットコート層(14)は樹脂成分と固体微粒子と滑剤とを含んでいる。」
「【0051】
前記マットコート層の構成成分である樹脂成分、固体微粒子および滑剤は上記の層構造に関わりなく共通であり、好ましい成分は以下のとおりである。
【0052】
前記樹脂成分として、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、フェノキシ樹脂のうち少なくとも1種の樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂は高い耐薬品性、耐溶剤性と、良好な印字性を有している。なお、一般にフッ素系樹脂は印字性に難があるが、滑剤を含ませることによって印字性が改善されるため、マットコート層用の樹脂として使用でき、フッ素系樹脂が有する優れた耐薬品性および耐溶剤性を生かすことができる。」
「【0061】
前記固体微粒子は、マットコート層(14)(17)に滑り性を付与して成形性を向上させるために添加される成分である。また、固体微粒子の添加によって、包装材同士がくっつきにくくなって取り扱いが容易になり、樹脂の光沢を抑えて落ち着いた外観を作り出す効果も得られる。
【0062】
かかる効果を奏する固体微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子のいずれでも使用でき、それらを混合して用いることもできる。ここに、無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、カーボンブラック等の1種または2種以上を使用しうるが、なかでもシリカの使用が好適である。また、有機微粒子としては、アクリル酸エステル系化合物、ポリスチレン系化合物、エポキシ系樹脂、ポリアミド系化合物、またはそれらの架橋物等の微粒子を使用しうる。
【0063】
これらの微粒子は、良好な滑り性が得られる粒径として平均粒径が1μm~10μmのものが好適に用いられ、なかでも2μm~5μmが好ましい。1μm未満の粒径の小さすぎる微粒子を用いるときは、塗布液の中に埋もれてしまい所望の特性を実現するために多量の微粒子の添加を必要とし、十分な滑り性が得られ難い。一方、10μmを超える粒径の大きい微粒子を用いるときは、粒径が塗布厚みを超えてしまい脱落し易くなる。
【0064】
また、樹脂組成物における固体微粒子の含有率は、包装材に求める滑り性の程度、添加する微粒子の粒径、種類等に応じて、0.1~60質量%の範囲で適宜に決定される。含有率が0.1質量%未満では滑り性の向上効果が小さく、ひいては成形性の向上効果を十分に得られないおそれがある。逆に60質量%を超えて過多に含有するときは、外観を損ねることが懸念される。微粒子の含有量の好ましい範囲は5~55質量%の範囲であり、特に好ましくは20~50質量%の範囲である。無機微粒子として例えばシリカを用いる場合、その粒径、含有量が前記上下限範囲にあることにより、最適な滑り性を付与できる。なお、上記の固体微粒子の含有率の好適範囲は、滑剤を含有する単層構造マットコート層(14)用の樹脂組成物と、滑剤を含まない二層構造のマットコート層(17)のベース層用(17a)の樹脂組成物とで共通である。」
「【0065】
滑剤はマットコート層(14)(17)の表面の滑り性を向上させるために添加される。滑剤の添加によって、成形用包装材(1)を成形する際には、金型との密着を防止するとともに、摺動性を高めることによって成形性を向上させ、深い加工を可能にする。また、成形したケース内に内容物を装填して製品を製造する際には、製造設備との接触時の摺動性を高めて摩擦によるマットコート層(14)(17)の剥離を防止することができる。例えば、リチウムイオン二次電池の製造過程では、ケース内への電池本体部の装填、電解液の注入、ケースの封止等が行われそれぞれの工程で成形用包装材(1)が製造設備に接触するが、接触時の摺動性を高めることで摩擦によるマットコート層(14)(17)の剥離を防止するとともに、マットコート層(14)(17)の摩耗を抑制することができる。さらに、滑剤の添加によって耐薬品性、耐溶剤性および印字性が向上する。
【0066】
前記滑剤としては、例えば、流動パラフィンなどの炭化水素系滑剤、ステアリン酸などの脂肪酸系滑剤、ステアリルアミドなどの高級脂肪酸アミド類、金属石鹸、天然ワックス、シリコーンなどが好ましい。特に高級脂肪酸アミド類が好ましく、マットコート層(14)(17)に特に高い滑り性および印字性を付与することができ、またマットコート層(14)(17)の耐摩耗性を高めることができる。高級脂肪酸アミド類の具体例としては、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリル酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等を例示できる。」
「【0094】
一方でマットコート層(14)用の材料として、樹脂成分、固体微粒子および滑剤を含むペースト状の樹脂組成物を調製しておく。
【0095】
そして、前記積層体(10)の外側基材層(13)の表面に前記樹脂組成物を塗布し、乾燥させる。樹脂組成物の塗布方法は限定されないが、例えばグラビアロール法を挙げることができる。樹脂組成物の乾燥により、マットコート層(14)が形成されるとともにマットコート層(14)が外側基材層(13)に接合されて所期する成形用包装材(1)が作製される。」
「【0108】
(マットコート層)
実施例1~7、9、10、比較例2は、フェノキシ樹脂およびウレタン樹脂を質量比1:0.8で混合して主剤樹脂とし、トリレンジイソシアネート(TDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を質量比で1:1で混合したものを硬化剤とし、主剤樹脂100質量部に対して硬化剤15質量部を配合したものを樹脂成分とした。そして、前記樹脂成分に、固体微粒子として平均粒径2μmのシリカを20質量%と、滑剤としてエチレンビスエルカ酸アミドを表1に示す含有率で含有させ、均一に分散させることによってマットコート用樹脂組成物を調製した。」
「【0117】
さらに、前記積層体(10)の外側基材層(13)の表面に、調製したマットコート層用樹脂組成物をグラビアロールにて塗布し、乾燥させてマットコート層(14)を形成した。マットコート層(14)の乾燥後の厚さは3μmである。これにより成形用包装材(1)を得た。」
「【0123】
【表1】
[図:0001409100000009.jpg]
」
(2)甲2には、次の記載がある。
「【請求項1】
バインダー樹脂、及び、アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズなる群から選ばれる、前記バインダー樹脂と相溶しない1種以上のビーズを含有することを特徴とするオーバープリントニス。」
「【0001】
本発明は、包装材料の表面を保護するとともに、光拡散性の表面を形成するために用いるオーバープリントニスに関する。」
「【0008】
本発明の課題は、光沢を有する基材表面に印刷されたバーコード上に塗工され、バーコードの読み取り精度を向上させることの出来るオーバープリントニスを提供することにある。」
「【0032】
(オーバープリントニスベースの調製)
まずバインダー樹脂として、ニカラックST-100(メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)2.7g、ニカラックMS-21(ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)1.0g、アクリット6AQ-500(アクリル樹脂、不揮発分50%、大成ファインケミカル株式会社製)9.0g、工業用硝化綿S1/8(ニトロセルロース、不揮発分70%、Bergerac NC製)13.1gを、ついで、添加剤として、エポリードNPGPO(ダイセル化学工業株式会社製)1.1g、溶剤としてメチルエチルケトン35.4g、酢酸エチル16.4g、イソプロピルアルコールを6.3g混合し、オーバープリントニスベースを調製した。」
「【0038】
(オーバープリントニス(F)の調製)
前記で調製したオーバープリントニスベース85.0gに、ビーズとして、テクポリマーMBX-8(アクリル樹脂、平均粒子径8μm、積水化成品工業株式会社製)を15.0g添加して、オーバープリントニス(F)を調製した。」
「【0048】
【表1】
[図:0001409100000010.jpg]
」
(3)甲3には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、包装材料の表面保護と意匠性向上の為に、主にアルミ箔をラミネートした包装材料の表面を形成するために用いるオーバープリントニスに関する。」
「【0008】
本発明の課題は、アルミ箔等の光沢を有する基材表面に印刷されたバーコード上にオーバープリントニスを塗工した後に、エンボスシール加工した際、バーコードの読み取りエラーを抑制出来るオーバープリントニスを提供することにある。」
「【0027】
本発明のオーバープリントニスには、他に必要に応じて、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、泡消剤、沈降防止剤、シランカップリング剤、硬化剤等の添加剤を含有させることが出来る。
【0028】
本発明のオーバープリントニスに使用する溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルを挙げることができる。」
「【0034】
(セルロース/アクリル/アミノ樹脂系:ニスベースAの調製)
まずバインダー樹脂として、ニカラックST-100(メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)2.7g、ニカラックMS-21(ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)1.0g、アクリット6AQ-500(アクリル樹脂、不揮発分50%、大成ファインケミカル株式会社製)9.0g、工業用硝化綿DLX 5-8(ニトロセルロース、不揮発分70%、Nobel NC製)13.1gを、ついで、添加剤として、エポリードNPGPO(ダイセル化学工業株式会社製)1.1g、溶剤としてメチルエチルケトン35.4g、酢酸エチル16.4g、イソプロピルアルコールを6.3g混合し、オーバープリントニスベースAを調製した。」
「【0037】
(実施例1:オーバープリントニス実施例1の調製)
前記で調製したニスベースA 75.0gに、ビーズ大として、テクポリマーMBX-5(アクリル樹脂ビーズ、平均粒子径5μm、積水化成品工業株式会社製)を12.5g、ビーズ小として、オプトビーズ2000M(アミノ樹脂ビーズ、平均粒子径2μm、日産化学株式会社製)を12.5g添加して、オーバープリントニス実施例1を調製した。」
「【0043】
【表1】
[図:0001409100000011.jpg]
」
(4)甲4には、次の記載がある。
「【請求項1】
ポリアミド樹脂、セルロース誘導体、キレート架橋剤及び有機溶剤を含有することを特徴とする表刷り用オーバープリントニス組成物。」
「【0001】
本発明は、高速印刷適性、耐塩ビブロッキング性及び光沢に優れるグラビア印刷物を得るための表刷り用オーバープリントニス組成物、グラビア印刷方法及びグラビア印刷物に関する。」
「【0005】
本発明の課題は、高速印刷適性、ニスの接着性、耐ブロッキング性、耐塩ビブロッキング性、及び光沢に優れ、さらにアルミニウム及び印刷面に対する耐熱性や耐油性にも優れる、グラビア印刷物を得るための表刷り用オーバープリントニス組成物、グラビア印刷方法及びグラビア印刷物を提供することにある。」
「【0017】
(必要に応じて添加することができる添加剤)
さらに、本発明の表刷り用オーバープリントニス組成物には、本発明の表刷り用オーバープリントニス組成物の性能が低下しない範囲で、脂肪酸アミド、ハードレジン(ダイマー酸系樹脂、マレイン酸系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、ダンマー樹脂、コーパル樹脂、塩素化ポリプロピレン、酸化ポリプロピレン等)、レベリング剤、界面活性剤、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどの既知のワックスを添加することができる。」
「【0029】
(脂肪酸アミド)
脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、変性脂肪酸アミド等が挙げられ、テーブルクロスに用いられる軟質塩化ビニルシートへの耐ブロッキング性から、変性脂肪酸アミドを使用することが好ましい。
脂肪酸アミドの含有量は、溶剤型ウレタン系印刷インキ組成物中、好ましくは0.1~3.0質量%、より好ましくは0.5~2.0質量%である。
脂肪酸アミドの含有量が0.1質量%未満であると耐ブロッキング性、接着性が低下する可能性があり、3.0質量%を超える場合は、耐塩ビブロッキング性が低下する可能性がある。」
(5)甲5には、次の記載がある。
「【請求項1】
イソシアネート基と反応可能な官能基を有するバインダー樹脂、イソシアネート系架橋剤、マット化剤、ブロッキング防止剤および有機溶剤を含有するマットコート剤であって、
前記バインダー樹脂が、少なくとも、ポリウレタン樹脂(A)および該ポリウレタン樹脂(A)以外のその他の樹脂(B)を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)と前記その他の樹脂(B)の質量比が、1:0.4~1:2であることを特徴とするマットコート剤。
【請求項2】
前記その他の樹脂(B)が、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、および(メタ)アクリル系樹脂から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載のマットコート剤。
【請求項3】
前記マット化剤が、固体粒子および/またはワックス類を含むことを特徴とする請求項1または2記載のマットコート剤。」
「【0012】
そこで、本発明は、レトルト殺菌処理の際、高温熱水に直接曝されてもプラスチックフィルム(基材フィルム)から剥離せず、かつ印刷層に対する耐ブロッキング性を有し、さらに、残留溶剤の少ないマットコート層を形成することができるマットコート剤、および当該マットコート層が設けられた積層フィルムを提供することを目的とする。」
「【0022】
<バインダー樹脂>
本発明のバインダー樹脂は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有するものであって、少なくとも、ポリウレタン樹脂(A)および該ポリウレタン樹脂(A)以外のその他の樹脂(B)を含む。前記イソシアネート基と反応可能な官能基としては、活性水素基を有するものであればよく、例えば、水酸基、アミノ基などが挙げられる。」
「【0039】
<樹脂(B)>
本発明のポリウレタン樹脂(A)以外のその他の樹脂(B)は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有するものであれば、特に制限なく使用できるが、マットコート層に、印刷層に対する良好な耐ブロッキング性を付与できる観点から、疎水性を示すものが好ましい。その他の樹脂(B)としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系共重合体などが挙げられる。」
「【0052】
<イソシアネート系架橋剤>
本発明のイソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。イソシアネート系架橋剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。」
「【0055】
<マット化剤>
本発明のマット化剤は、マットコート層の表面に微細な凹凸を形成して、光を乱反射させる材料、あるいは、マットコート層を半透明にして反射する光を弱める材料であれば、制限なく使用できるが、例えば、有機または無機の固体粒子、ワックス類などが挙げられる。マット化剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。」
「【0060】
<ブロッキング防止剤>
本発明のブロッキング防止剤は、マットコート層に耐ブロッキング性を付与する材料であり、例えば、前記マット化剤として挙げた無機の固体粒子やワックス類などが利用できる他、脂肪酸アミドが挙げられる。前記脂肪酸アミドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド、各種変性脂肪酸アミドなどが挙げられる。」
「【0062】
<有機溶剤>
本発明の有機溶剤は、上記の各成分(材料)を溶解あるいは分散させるものであれば、制限なく使用できるが、例えば、ケトン系有機溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル系有機溶剤(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチルなど)、脂肪族炭化水素系有機溶剤(n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなど)、芳香族炭化水素系有機溶剤(トルエン、キシレンなど)、脂環族炭化水素系有機溶剤(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタンなど)、アルコール系有機溶剤(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、ジオール化合物とその誘導体(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)などが挙げられる。有機溶剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。前記有機溶剤は、マットコート剤の環境負荷を低く抑える観点から、エステル系有機溶剤や、アルコール系有機溶剤の含有比率を多くすることが好ましい。」
「【0095】
実施例1
<ポリウレタン樹脂(A)の製造>
撹拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量1,000のポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンアジペート)ジオール100質量部およびイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル318質量部、イソプロピルアルコール56質量部を加えた後、イソホロンジアミン7.1質量部、アミノエチルエタノールアミン4.2質量部を加えて鎖伸長反応させ、さらにエチレンジアミン2.4質量部を加えて反応停止させて、ポリウレタン樹脂ワニス(固形分:30質量%、ポリウレタン樹脂の質量平均分子量約12,000、分子内に含まれるイソシアネート基と反応可能な官能基は1級アミノ基および水酸基、当該官能基の個数は1級アミノ基平均2個、水酸基平均4個、理論アミン価:14.0mgKOH/g、理論水酸基価14.4mgKOH/g、表1ではポリウレタン樹脂(A)と記載)を得た。
【0096】
<マットコート剤の製造>
高速攪拌装置による攪拌下、上記で得られたポリウレタン樹脂ワニス33.3質量部(固形分10質量部)に、樹脂(B)として、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(日信化学(株)社製、商品名:ソルバインA、塩化ビニル単位:酢酸ビニル単位:ビニルアルコール単位=92:3:5、数平均分子量:30,000、表1では樹脂(B)-1と記載)を4質量部と、シリカ粒子(日本アエロジル社製、商品名:アエロジル200)を6.5質量部、ポリエチレン(PE)ワックス(三井化学社製、商品名:ハイワックス200)を3.5質量部と、ラウリン酸アミド(日本化成社製、商品名:ダイヤミッドY)を1.3質量部、有機溶剤としてメチルエチルケトン:酢酸エチル:イソプロパノール=40:40:20(質量比)の混合溶剤(表1では、混合溶剤Aと記載)を48.4質量部、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(三菱化学社製、商品名:マイテック NY260A、固形分:75質量%)を酢酸エチルでイソシアネート系架橋剤の固形分が50質量%になるまで希釈したイソシアネート系架橋剤溶液を3質量部加え、実施例1のマットコート剤を製造した。」
「【0099】
実施例2~8、比較例1~6
実施例1において、マットコート剤の製造に用いたバインダー樹脂の種類と、各成分の組成比を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、マットコート剤、積層フィルム(A)および積層フィルム(B)の長尺物を製造した。なお、表1の樹脂(B)-2は、セルロース系樹脂:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基:2.5%、プロピオニル基:45.0%、水酸基:2.6%、数平均分子量:25,000、イーストマンケミカル社製、商品名:482-05)である。」
「【0105】
【表1】
[図:0001409100000012.jpg]
」
(6)甲5の1には、次の記載がある。
ア 136頁「表4.2.2 三井ハイワックスのグレードと物性」
「
[図:0001409100000013.jpg]
」
イ 148頁「3)印刷インキおよび塗料用添加剤」
「
[図:0001409100000014.jpg]
」
(7)甲5の2には、次の記載がある。
ア 1427頁「表6.8 合成樹脂の性能一覧表」
「
[図:0001409100000015.jpg]
」
イ 1430頁「表6.8 合成樹脂の性能一覧表」(続き)
「
[図:0001409100000016.jpg]
」
(8)甲6には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、有機溶剤系グラビア印刷インキに関する。」
「【0032】
また、樹脂としては、アクリル樹脂、塩ビ酢ビ共重合樹脂、硝化綿(ニトロセルロース)、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、EVA樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ブチラール樹脂などを挙げることができるが、上述したように、包装用フィルムに使用されるウレタン樹脂においては、定着性の点で優れている尿素含有のウレタン系樹脂が好ましい。」
(9)甲7には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物及びグラビア印刷方法に関し、より詳しくは、浅版化された印刷刷版を使用してグラビア印刷しても、良好な印刷濃度、印刷適性、及び、ラミネート適性を有する有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物、及び、該有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を用いたグラビア印刷方法に関する。」
「【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、顔料として有機顔料及び/又は無機顔料、バインダー樹脂として末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂、特に末端に第1級アミノ基を有するポリウレタン樹脂をある特定の組成比率で用いることにより、インキ使用量及びインキ中の揮発分を減らし、大気中への有機溶剤を削減が大幅に可能となるとともに、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。」
(10)参1には、次の記載がある。
ア 1頁左欄10~14行
「本発明は微粉状シリカを含有する塗料組成物に関し、殊に含有される微粉状シリカ成分が塗料組成物の特性たとえば、粘度、透明度を大幅に改善し、塗膜の光沢を低下させるのに役立つものであり、充填度を充分高め得る組成物に係る。」
イ 2頁左欄14~同頁右欄2行
「一般に、たとえば珪酸ソーダを酸で処理するという所謂湿式法で得られるシリカの屈折率は、大約1.437~1.440の範囲内にある。又、屈折率の大きい微粉状シリカは、たとえば塩化珪素を燃焼させるという所謂乾式法によれば容易に得ることができ、この場合、得られるものは1.452程度の屈折率を有し且つ高い透明度を有するものであるが、実際に塗料に混入して、必ずしも充分な艶消し効果を挙げ得ない場合がある。」
第5 当審の判断
1 取消理由1及び2(甲1を主引例とした新規性及び進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1(前記2(1)参照。)の【0094】~【0095】には、マットコート層は、樹脂成分、固体微粒子および滑剤を含むペースト状の樹脂組成物を調整しておき、例えばグラビアロール法で塗布し、乾燥によりマットコート層を形成するものであることが記載されている。
イ 甲1の【0108】には、「フェノキシ樹脂およびウレタン樹脂を質量比1:0.8で混合して主剤樹脂とし、トリレンジイソシアネート(TDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を質量比で1:1で混合したものを硬化剤とし、主剤樹脂100質量部に対して硬化剤15質量部を配合したものを樹脂成分とした。そして、前記樹脂成分に、固体微粒子として平均粒径2μmのシリカを20質量%と、滑剤としてエチレンビスエルカ酸アミドを表1に示す含有率で含有させ、均一に分散させることによってマットコート用樹脂組成物を調整した」ことが記載され、同【0123】の【表1】には、「実施例5」として、エチレンビスエルカ酸アミドの含有率が10000ppmのマットコート層が記載されている。
ウ そうすると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「樹脂成分、固体微粒子および滑剤を含み、例えばグラビアロール法で塗布し、乾燥によりマットコート層を形成するペースト状の樹脂組成物であって、
樹脂成分は、フェノキシ樹脂およびウレタン樹脂を質量比1:0.8で混合して主剤樹脂とし、トリレンジイソシアネート(TDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を質量比で1:1で混合したものを硬化剤とし、主剤樹脂100質量部に対して硬化剤15質量部を配合したものであり、
固体微粒子は、平均粒径2μmのシリカであり、
滑剤は、エチレンビスエルカ酸アミドであり、
前記シリカの含有率は20質量%であり、
前記滑剤の含有率は10000ppmであるペースト状の樹脂組成物」
(2)対比・判断
ア 本件訂正発明4
(ア)請求項2を引用する本件発明4についての検討
本件訂正発明4の新規性及び進歩性について検討するにあたり、本件訂正発明4を、請求項2の記載を引用しない形で書き下すと、次のようになる。
「バインダー樹脂、前記バインダー樹脂と相溶しないビーズ、脂肪酸アマイド及び溶剤を含有するオーバープリントニスであって、前記バインダー樹脂が、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有し、前記ビーズがアクリル樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ、及びガラスビーズからなる群から選ばれる何れか1種を含有し、
前記バインダー樹脂とビーズの比率(バインダー/ビーズ)が、不揮発分換算にて質量比で50/1~1/3の範囲であるオーバープリントニス。
但し、前記ビーズの屈折率が1.3以上であり、平均粒子径が0.5~40μmである。」
そこで、本件訂正発明4と甲1発明を対比すると、甲1発明の「樹脂成分」は、本件訂正発明4の「バインダー樹脂」に相当する。
甲1発明の「固体微粒子」は「平均粒径2μmのシリカ」であって、前記樹脂成分と相溶しないことは明らかであるから、本件訂正発明4の「バインダー樹脂と相溶しないビーズ」及び「ビーズがアクリル樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ、及びガラスビーズからなる群から選ばれる何れか1種を含有する」及び「ビーズの」「平均粒子径が0.5~40μmである」に相当する。
甲1発明の「滑剤」は「エチレンビスエルカ酸アミド」であるから、本件訂正発明4の「脂肪酸アマイド」に相当する。
甲1発明の「ペースト状の樹脂組成物」は、実質的に、樹脂成分、固体微粒子および滑剤からなるものであって、それらのうち、固体微粒子であるシリカの含有率は20質量%、滑剤の含有率は10000ppm(=1質量%)であるから、甲1発明の「ペースト状の樹脂組成物」における樹脂成分と固体微粒子の質量比は79/20であり、本件訂正発明4の「50/1~1/3の範囲」を充足する。
甲1発明の「ペースト状の樹脂組成物」と本件訂正発明4の「オーバープリントニス」とは、ともに、基材の表面にコート層を形成するものであるから、「コート層形成組成物」である点で共通する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「バインダー樹脂、前記バインダー樹脂と相溶しないビーズ及び脂肪酸アマイドを含有するコート層形成組成物であって、前記ビーズがアクリル樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ、及びガラスビーズからなる群から選ばれる何れか1種を含有し、
前記バインダー樹脂とビーズの比率(バインダー/ビーズ)が、不揮発分換算にて質量比で50/1~1/3の範囲であるコート層形成組成物。
但し、前記ビーズの平均粒子径が0.5~40μmである。」
<相違点1-1>
バインダー樹脂が、本件訂正発明4は「アミノ樹脂と、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有」するのに対し、甲1発明は、フェノキシ樹脂およびウレタン樹脂を含有するものであるが、アミノ樹脂を含有するものではない点。
<相違点1-2>
ビーズの屈折率が、本件訂正発明4は「1.3以上」であるのに対し、甲1発明は不明である点。
<相違点1-3>
コート層形成組成物が、本件訂正発明4は「溶剤を含有するオーバープリントニス」であるのに対し、甲1発明は溶剤を含有するか否か定かでない「ペースト状の樹脂組成物」である点。
まず、相違点1-1について検討する。バインダー樹脂にアミノ樹脂を含ませる点について、甲2(前記第4の4(2)参照。)及び甲3(前記第4の4(3)参照。)には、バインダー樹脂として、アミド樹脂を含むオーバーコートニスが記載されている。
しかしながら、甲1発明の樹脂成分について、甲1発明を認定した甲1(前記第4の4(1)参照。)の【0052】には「前記樹脂成分として、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、フェノキシ樹脂のうち少なくとも1種の樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂は高い耐薬品性、耐溶剤性と、良好な印字性を有している。」と記載されており、好ましい樹脂として、アミノ樹脂は挙げられておらず、アミノ樹脂を添加することについては、その示唆もない。
そうすると、甲1発明のバインダー樹脂にアミノ樹脂を含ませることは、甲2及び甲3の記載に触れた当業者であっても、容易になし得たことではない。
また、甲4(前記第4の4(4)参照。)の【請求項1】には「ポリアミド樹脂」及び「セルロース誘導体」を含む「表刷り用オーバープリントニス組成物」が記載され、甲6(前記第4の4(8)参照。)の【0032】には「樹脂として」「アクリル樹脂、塩ビ酢ビ共重合樹脂、硝化綿(ニトロセルロース)、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、EVA樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ブチラール樹脂など」が挙げられ、「尿素含有のウレタン系樹脂が好ましい」ことが記載され、甲7(前記第4の4(9)参照。)の【0008】には「バインダー樹脂として末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂、特に末端に第1級アミノ基を有するポリウレタン樹脂をある特定の組成比率で用いること」が記載され、参1(前記第4の4(10)参照。)には、シリカの屈折率は、大約1.437~1.440の範囲内にあることが記載されているものの、アミノ樹脂を含ませることについては記載されていない。
そして、本件訂正発明4は、その明細書(前記第3の2参照)の【0053】に「本発明のオーバープリントニスには、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、酸化ポリエチレン、ポリカルボン酸及び水添ひまし油からなる群から選ばれる1種以上の分散助剤を含有する。分散剤を含有させることにより、ビーズの分散性を向上させることがでるため、ビーズが凝集せず均一分散した塗膜を形成でき、かつ、ビーズが塗膜から脱落するのを抑制することができる。また、オーバープリントニスの保存安定性を向上できる。」と記載されるように、分散助剤として脂肪酸アミドを添加することにより、ビーズの分散性を向上させ、ビーズが凝集せず均一分散した塗膜を形成でき、かつ、ビーズが塗膜から脱落するのを抑制することができ、オーバープリントニスの保存安定性を向上させるものであるが、このような効果は、甲1発明、並びに甲1~甲4、甲6、甲7及び参1に記載された事項から予測できないものである。
してみれば、前記相違点1-2及び1-3について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲1発明、並びに甲1~甲4、甲6、甲7及び参1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)請求項3を引用する本件発明4についての検討
請求項3を引用する本件発明4は、請求項2を引用する本件発明4におけるアミノ樹脂を更に特定するものである。そうすると、前記相違点1-1の検討と同様に、請求項3を引用する本件発明4も、甲1発明、並びに甲1~甲4、甲6、甲7及び参1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件訂正発明5~7
本件訂正発明5~7は、前記アの<相違点1-1>に係る「アミノ樹脂と、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有」するとの特定事項を全て含むものであるから、前記アと同じ理由により、本件訂正発明5~7も、甲1発明並びに甲1~甲4、甲6、甲7及び参1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 取消理由3(甲5を主引例とした拡大先願)について
(1)甲5に記載された発明
甲5(前記2(5)参照。)の【0105】の【表1】の「実施例5」二着目して、同【0022】、【0052】、【0055】、【0060】、【0062】、【0096】及び【0099】を合わせ読めば、甲5には、次の発明(以下「甲5発明」ともいう。)が記載されているものと認められる。
(甲5発明)
「バインダー樹脂として、ポリウレタン樹脂(A)を10質量部、セルロース系樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名:482-05)である樹脂(B)-2を4質量部と、
架橋剤として、イソシアネート系架橋剤を1.5質量部と、
マット化剤として、シリカ粒子(日本アエロジル社製、商品名:アエロジル200)を6.5質量部、
ワックス類として、PEワックス(三井化学社製、商品名:ハイワックス200)を3.5質量部と、
ブロッキング防止剤として、ラウリン酸アミド(日本化成社製、商品名:ダイヤミッドY)を1.3質量部と、
有機溶剤として、有機溶剤(メチルエチルケトン:酢酸エチル:イソプロパノール=40:40:20(質量比)の混合溶剤)を73.2質量部と、
からなるマットコート剤」
(2)対比・判断
ア 本件訂正発明4
(ア)請求項2を引用する本件発明4についての検討
本件訂正発明4を、請求項2の記載を引用しない形に書き下したものは、前記1(2)に記載したとおりであるから、本件訂正発明4と甲5発明を対比すると、甲5発明の「バインダー樹脂」は、「ポリウレタン樹脂(A)」、「セルロース系樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名:482-05)である樹脂(B)-2」及び「イソシアネート系架橋剤」を含むものであるから、本件訂正発明4の「バインダー樹脂が、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有し」に相当する。
甲5発明の「シリカ粒子(日本アエロジル社製、商品名:アエロジル200)」及び「PEワックス(三井化学社製、商品名:ハイワックス200)」は、それぞれ、シリカの粒子及びポリオレフィン樹脂の粒子であって、「ポリウレタン樹脂(A)」及び「セルロース系樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名:482-05)である樹脂(B)-2」を「イソシアネート系架橋剤」で架橋した樹脂と相溶しないから、本件訂正発明4の「バインダー樹脂と相溶しないビーズ」及び「ビーズがアクリル樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ、及びガラスビーズからなる群から選ばれる何れか1種を含有する」に相当する。
甲5発明の「ラウリン酸アミド(日本化成社製、商品名:ダイヤミッドY)」は、本件訂正発明4の「脂肪酸アマイド」に相当する。
甲5発明の「有機溶剤(メチルエチルケトン:酢酸エチル:イソプロパノール=40:4」は、本件訂正発明4の「溶剤」に相当する。
甲5発明の「マットコート剤」は、樹脂成分として、「ポリウレタン樹脂(A)を10質量部、セルロース系樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名:482-05)である樹脂(B)-2を4質量部、イソシアネート系架橋剤を1.5質量部」の計14.5重量部含み、粒子成分として「シリカ粒子(日本アエロジル社製、商品名:アエロジル200)を6.5質量部」及び「PEワックス(三井化学社製、商品名:ハイワックス200)を3.5質量部」の計10.0重量部を含むものであるから、甲5発明の「マットコート剤」における「樹脂成分」と「粒子成分」の質量比は、14.5/10であって、本件訂正発明4の「50/1~1/3の範囲」を充足する。
甲5発明の「マットコート剤」は、本件訂正発明4の「オーバープリントニス」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「バインダー樹脂、前記バインダー樹脂と相溶しないビーズ、脂肪酸アマイド及び溶剤を含有するオーバープリントニスであって、前記ビーズがアクリル樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ、及びガラスビーズからなる群から選ばれる何れか1種を含有し、
前記バインダー樹脂とビーズの比率(バインダー/ビーズ)が、不揮発分換算にて質量比で50/1~1/3の範囲であるオーバープリントニス。」
<相違点5-1>
バインダー樹脂が、本件訂正発明4は「アミノ樹脂と、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有」するのに対し、甲5発明は、「ポリウレタン樹脂(A)」、「セルロース系樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名:482-05)である樹脂(B)-2」を含有するものであるが、アミノ樹脂を含有するものではない点。
<相違点5-2>
本件訂正発明4は「ビーズの屈折率が1.3以上であり、平均粒子径が0.5~40μmである」のに対し、甲5発明は、粒子の屈折率や平均粒子径が不明である点。
まず、相違点5-1について検討する。甲5発明の樹脂成分について、甲5発明を認定した甲5(前記第4の4(5)参照。)の【0052】に「本発明のバインダー樹脂は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有するものであって、少なくとも、ポリウレタン樹脂(A)および該ポリウレタン樹脂(A)以外のその他の樹脂(B)を含む。前記イソシアネート基と反応可能な官能基としては、活性水素基を有するものであればよく、例えば、水酸基、アミノ基などが挙げられる。」と記載され、同【0039】に「本発明のポリウレタン樹脂(A)以外のその他の樹脂(B)は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有するものであれば、特に制限なく使用できるが、マットコート層に、印刷層に対する良好な耐ブロッキング性を付与できる観点から、疎水性を示すものが好ましい。その他の樹脂(B)としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系共重合体などが挙げられる。」と記載されており、好ましい樹脂として、アミノ樹脂は挙げられていない。
そうすると、甲5-1(記第4の4(6)参照。)の記載から、甲5発明の「三井ハイワックス」のグレード名「200」は、その平均粒径が1~30μm程度であると推測され、また、甲5-2(記第4の4(7)参照。)の記載から、甲5発明の「PEワックス(三井化学社製、商品名:ハイワックス200)」の屈折率が、1.54程度であると推測されるとしても、甲5発明のバインダー樹脂として、アミノ樹脂を含むものが記載されているに等しいとまではいえないし、また、アミノ樹脂を含むようにすることが、課題解決のための具体化手段における微差であるともいえない。
してみると、前記相違点5-1は実質的な相違点であって、本件訂正発明4は甲5発明と実質同一ではないから、前記相違点5-2について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲5発明と実質的に同一であるとはいえない。
(イ)請求項3を引用する本件発明4についての検討
請求項3を引用する本件発明4は、請求項2を引用する本件発明4におけるアミノ樹脂を更に特定するものである。そうすると、前記相違点1-1の検討と同様に、請求項3を引用する本件発明4も、甲1発明、並びに甲1~甲4、甲6、甲7及び参1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件訂正発明5~7
本件訂正発明5~7は、前記アの<相違点5-1>に係る「アミノ樹脂と、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有」するとの特定事項を全て含むものであるから、前記アと同じ理由により、本件訂正発明5~7も、甲5発明と実質的に同一であるとはいえない。
3 取消理由で採用しなかった申立理由3(甲2を主引例とした進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
甲2(記第4の4(2)参照。)の段落【0048】の【表1】の「OPニス F」に着目し、同【請求項1】、【0032】及び【0038】の記載を参酌すれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲2発明)
「バインダー樹脂、及び、前記バインダー樹脂と相溶しないアクリル樹脂ビーズを含有するオーバープリントニス(F)であって、
オーバープリントニスは、バインダー樹脂として、ニカラックST-100(メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)2.7g、ニカラックMS-21(ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)1.0g、アクリット6AQ-500(アクリル樹脂、不揮発分50%、大成ファインケミカル株式会社製)9.0g、工業用硝化綿S1/8(ニトロセルロース、不揮発分70%、Bergerac NC製)13.1gを、ついで、添加剤として、エポリードNPGPO(ダイセル化学工業株式会社製)1.1g、溶剤としてメチルエチルケトン35.4g、酢酸エチル16.4g、イソプロピルアルコールを6.3g混合し、オーバープリントニスベースを調製し、
前記で調製したオーバープリントニスベース85.0gに、ビーズとして、テクポリマーMBX-8(アクリル樹脂、平均粒子径8μm、積水化成品工業株式会社製)を15.0g添加したものであり、
バインダー/ビーズは1.06である、オーバープリントニス(F)。」
(2)対比・判断
ア 本件訂正発明4
(ア)請求項2を引用する本件発明4についての検討
本件訂正発明4を、請求項2の記載を引用しない形で書き下したものは、前記1(2)に記載したとおりであるから、本件訂正発明4と甲2発明を対比すると、甲2発明の「ニカラックST-100(メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)」及び「ニカラックMS-21(ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)」は、本件訂正発明4の「アミノ樹脂」に相当する。
甲2発明の「アクリット6AQ-500(アクリル樹脂、不揮発分50%、大成ファインケミカル株式会社製)」及び「工業用硝化綿S1/8(ニトロセルロース、不揮発分70%、Bergerac NC製)」は、本件訂正発明4の「エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上」に相当する
甲2発明の「ビーズ」は「テクポリマーMBX-8(アクリル樹脂、平均粒子径8μm、積水化成品工業株式会社製)」であって、バインダー樹脂と相溶しないものであり、本件特許の明細書の【0082】の「・テクポリマーMBX-8:アクリル樹脂ビーズ、平均粒子径8.0μm、屈折率1.49、真比重1.20、積水化成品工業(株)製」との記載によれば、屈折率が1.49であるから、本件訂正発明4の「バインダー樹脂と相溶しないビーズ」及び「ビーズがアクリル樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ、及びガラスビーズからなる群から選ばれる何れか1種を含有する」及び「ビーズの屈折率が1.3以上であり、平均粒子径が0.5~40μmである」を充足する。
甲2発明の「オーバープリントニス(F)」は、バインダー/ビーズが1.06であるから、甲1発明の「ペースト状の樹脂組成物」における樹脂成分と固体微粒子の質量比は79/20であり、本件訂正発明4の「50/1~1/3の範囲」を充足する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「バインダー樹脂、前記バインダー樹脂と相溶しないビーズ及び溶剤を含有するオーバープリントニスであって、前記バインダー樹脂が、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有し、前記ビーズがアクリル樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ、及びガラスビーズからなる群から選ばれる何れか1種を含有し、
前記バインダー樹脂とビーズの比率(バインダー/ビーズ)が、不揮発分換算にて質量比で50/1~1/3の範囲であるオーバープリントニス。
但し、前記ビーズの屈折率が1.3以上であり、平均粒子径が0.5~40μmである。」
<相違点2>
本件訂正発明4は「脂肪酸アマイド」を含有するのに対し、甲2発明は含有していない点。
前記相違点2について検討する。甲2発明を認定した甲2の【0025】には、追加可能な任意成分として、「本発明のオーバープリントニスには、他に任意の成分として、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、泡消剤等の添加剤を含有させることが出来る。」と記載されているものの、脂肪酸アマイドを添加することについては、記載も示唆もない。
この点について、甲1(記第4の4(1)参照。)の【0066】には「前記滑剤としては、例えば、流動パラフィンなどの炭化水素系滑剤、ステアリン酸などの脂肪酸系滑剤、ステアリルアミドなどの高級脂肪酸アミド類、金属石鹸、天然ワックス、シリコーンなどが好ましい。特に高級脂肪酸アミド類が好ましく、マットコート層(14)(17)に特に高い滑り性および印字性を付与することができ、またマットコート層(14)(17)の耐摩耗性を高めることができる。」と記載されている。
また、甲4(記第4の4(4)参照。)の【0017】には「必要に応じて添加することができる添加剤」として「本発明の表刷り用オーバープリントニス組成物には、本発明の表刷り用オーバープリントニス組成物の性能が低下しない範囲で、脂肪酸アミド、ハードレジン(ダイマー酸系樹脂、マレイン酸系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、ダンマー樹脂、コーパル樹脂、塩素化ポリプロピレン、酸化ポリプロピレン等)、レベリング剤、界面活性剤、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどの既知のワックスを添加することができる。」と記載され、同【0029】には「脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、変性脂肪酸アミド等が挙げられ、テーブルクロスに用いられる軟質塩化ビニルシートへの耐ブロッキング性から、変性脂肪酸アミドを使用することが好ましい。」と記載されている。
しかしながら、甲2発明において、滑剤を添加する動機付けはなく、また、耐ブロッキング性を高める動機付けもないところ、数多ある添加剤の中から、特に脂肪酸アマイドを選択して添加することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
そして、本件訂正発明4は、前記1(2)アで検討したとおり、分散助剤として脂肪酸アミドを添加することにより、ビーズの分散性を向上させ、ビーズが凝集せず均一分散した塗膜を形成でき、かつ、ビーズが塗膜から脱落するのを抑制することができ、オーバープリントニスの保存安定性を向上させるものであるが、このような効果は、甲2発明、甲1及び甲4に記載された事項から予測できないものである。
してみれば、本件訂正発明4は、甲2発明、甲1及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)請求項3を引用する本件発明4についての検討
請求項3を引用する本件発明4は、請求項2を引用する本件発明4におけるアミノ樹脂を更に特定するものである。そうすると、前記相違点1-1の検討と同様に、請求項3を引用する本件発明4も、甲1発明、並びに甲1~甲4、甲6、甲7及び参1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件訂正発明5~7
本件訂正発明5~7は、前記アの<相違点2>に係る「脂肪酸アマイド」を含有するとの特定事項を全て含むものであるから、前記アと同じ理由により、本件訂正発明5~7も、甲2発明、甲1及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の29頁8行~25行において、包装材料において包装材同士の密着を防止することは、甲2発明においても当然に包含される課題であるから、甲2発明の任意成分の添加剤として、甲1に記載された高級脂肪酸アミドを配合することは、動機づけられることであって容易であるとの趣旨の主張をしている。
しかしながら、前記(2)で検討したとおり、甲2発明の任意成分の添加剤として挙げられているのは「可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、泡消剤等の添加剤」であって、「脂肪酸アマイド」を添加することについては、記載も示唆もない。
そして、甲2発明を認定した甲2の【0008】の「本発明の課題は、光沢を有する基材表面に印刷されたバーコード上に塗工され、バーコードの読み取り精度を向上させることの出来るオーバープリントニスを提供することにある。」との記載を考慮すれば、甲2発明は、バーコードの読み取り精度を向上させることを課題とした発明であるから、「脂肪酸アマイド」を添加することを動機づけることはできない。
よって、申立人の主張は採用できない。
4 取消理由で採用しなかった申立理由4(甲3を主引例とした進歩性)について
(1)甲3に記載された発明
甲3(記第4の4(3)参照。)の段落【0043】の【表1】の「実施例1」に着目し、同【0037】の記載を参酌すれば、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲3発明)
「ニスベースAを75部と、オプトビーズ2000Mを12.5部と、テクポリマーMBX-5を12.5部と含有するオーバープリントニス実施例1であって、
オーバープリントニス実施例1は、バインダー樹脂として、ニカラックST-100(メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)2.7g、ニカラックMS-21(ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)1.0g、アクリット6AQ-500(アクリル樹脂、不揮発分50%、大成ファインケミカル株式会社製)9.0g、工業用硝化綿DLX 5-8(ニトロセルロース、不揮発分70%、Nobel NC製)13.1gを、ついで、添加剤として、エポリードNPGPO(ダイセル化学工業株式会社製)1.1g、溶剤としてメチルエチルケトン35.4g、酢酸エチル16.4g、イソプロピルアルコールを6.3g混合し、セルロース/アクリル/アミノ樹脂系のオーバープリントニスベースAを調製し、
前記で調製したニスベースA 75.0gに、ビーズ大として、テクポリマーMBX-5(アクリル樹脂ビーズ、平均粒子径5μm、積水化成品工業株式会社製)を12.5g、ビーズ小として、オプトビーズ2000M(アミノ樹脂ビーズ、平均粒子径2μm、日産化学株式会社製)を12.5g添加したものである、オーバープリントニス実施例1。」
(2)対比・判断
ア 本件訂正発明4
(ア)請求項2を引用する本件発明4についての検討
本件訂正発明4を、請求項2の記載を引用しない形で書き下したものは、前記1(2)に記載したとおりであるから、本件訂正発明4と甲3発明を対比すると、甲3発明の「ニカラックST-100(メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)」及び「ニカラックMS-21(ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)」は、本件訂正発明4の「アミノ樹脂」に相当する。
甲3発明の「アクリット6AQ-500(アクリル樹脂、不揮発分50%、大成ファインケミカル株式会社製)」及び「工業用硝化綿S1/8(ニトロセルロース、不揮発分70%、Bergerac NC製)」は、本件訂正発明4の「エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上」に相当する
甲3発明の「テクポリマーMBX-5(アクリル樹脂ビーズ、平均粒子径5μm、積水化成品工業株式会社製)」及び「オプトビーズ2000M(アミノ樹脂ビーズ、平均粒子径2μm、日産化学株式会社製)」は、いずれもバインダー樹脂と相溶しないものであり、本件特許の明細書の【0082】の「・オプトビーズ2000M:アミノ樹脂ビーズ、平均粒子径2.0μm、屈折率1.65、真比重1.65、日産化学(株)製」及び「・テクポリマーMBX-5:アクリル樹脂ビーズ、平均粒子径5.0μm、屈折率1.49、真比重1.20、積水化成品工業(株)製」との記載によれば、屈折率がそれぞれ1.65及び1.49であるから、本件訂正発明4の「バインダー樹脂と相溶しないビーズ」及び「ビーズがアクリル樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ、及びガラスビーズからなる群から選ばれる何れか1種を含有する」及び「ビーズの屈折率が1.3以上であり、平均粒子径が0.5~40μmである」を充足する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「バインダー樹脂、前記バインダー樹脂と相溶しないビーズ及び溶剤を含有するオーバープリントニスであって、前記バインダー樹脂が、アミノ樹脂と、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有し、前記ビーズがアクリル樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ、及びガラスビーズからなる群から選ばれる何れか1種を含有するオーバープリントニス。
但し、前記ビーズの屈折率が1.3以上であり、平均粒子径が0.5~40μmである。」
<相違点3-1>
本件訂正発明4は「脂肪酸アマイド」を含有するのに対し、甲3発明は含有していない点。
<相違点3-2>
本件訂正発明4は「バインダー樹脂とビーズの比率(バインダー/ビーズ)が、不揮発分換算にて質量比で50/1~1/3の範囲」であるのに対し、甲3発明は、ニスベースA中の不揮発分の質量が不明なため、ビーズとの質量比も不明である点。
まず、相違点3-1について検討する。甲3発明を認定した甲3の【0027】には、追加可能な任意成分として、「本発明のオーバープリントニスには、他に必要に応じて、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、泡消剤、沈降防止剤、シランカップリング剤、硬化剤等の添加剤を含有させることが出来る。」と記載されているものの、脂肪酸アマイドを添加することについては、記載も示唆もない。
この点について、甲1(記第4の4(1)参照。)の【0066】には「前記滑剤としては、例えば、流動パラフィンなどの炭化水素系滑剤、ステアリン酸などの脂肪酸系滑剤、ステアリルアミドなどの高級脂肪酸アミド類、金属石鹸、天然ワックス、シリコーンなどが好ましい。特に高級脂肪酸アミド類が好ましく、マットコート層(14)(17)に特に高い滑り性および印字性を付与することができ、またマットコート層(14)(17)の耐摩耗性を高めることができる。」と記載されている。
また、甲4(記第4の4(4)参照。)の【0017】には「必要に応じて添加することができる添加剤」として「本発明の表刷り用オーバープリントニス組成物には、本発明の表刷り用オーバープリントニス組成物の性能が低下しない範囲で、脂肪酸アミド、ハードレジン(ダイマー酸系樹脂、マレイン酸系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、ダンマー樹脂、コーパル樹脂、塩素化ポリプロピレン、酸化ポリプロピレン等)、レベリング剤、界面活性剤、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどの既知のワックスを添加することができる。」と記載され、同【0029】には「脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、変性脂肪酸アミド等が挙げられ、テーブルクロスに用いられる軟質塩化ビニルシートへの耐ブロッキング性から、変性脂肪酸アミドを使用することが好ましい。」と記載されている。
しかしながら、甲3発明において、滑剤を添加する動機付けはなく、また、耐ブロッキング性を高める動機付けもないところ、数多ある添加剤の中から、特に脂肪酸アマイドを選択して添加することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
そして、本件訂正発明4は、前記1(2)アで検討したとおり、分散助剤として脂肪酸アミドを添加することにより、ビーズの分散性を向上させ、ビーズが凝集せず均一分散した塗膜を形成でき、かつ、ビーズが塗膜から脱落するのを抑制することができ、オーバープリントニスの保存安定性を向上させるものであるが、このような効果は、甲3発明、甲1及び甲4に記載された事項から予測できないものである。
してみれば、本件訂正発明4は、前記相違点3-2について検討するまでもなく、甲3発明、甲1及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件訂正発明5~7
本件訂正発明5~7は、前記アの<相違点3-1>に係る「脂肪酸アマイド」を含有するとの特定事項を全て含むものであるから、前記アと同じ理由により、本件訂正発明5~7も、甲3発明、甲1及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)請求項3を引用する本件発明4についての検討
請求項3を引用する本件発明4は、請求項2を引用する本件発明4におけるアミノ樹脂を更に特定するものである。そうすると、前記相違点1-1の検討と同様に、請求項3を引用する本件発明4も、甲1発明、並びに甲1~甲4、甲6、甲7及び参1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5 取消理由で採用しなかった申立理由6(サポート要件)について
(1)判断手法
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する、いわゆるサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。そこで、以下、この観点に沿って検討を進める。
(2)発明の課題
本件訂正発明の解決しようとする課題は、本件特許の明細書(前記第3の2参照。)に記載されたすべての事項からみて、「熱硬化の為の焼付け乾燥工程において塗工面が収縮せず、且つビーズ脱落が無い状態を保持しつつプラスチックフィルムやアルミ箔の基材の反りが抑制できるオーバープリントニスを提供すること」(前記第3の2の【0007】参照。)にあるものと認められる。
(3)明細書の記載及び判断
本件特許の明細書(前記第3の2参照。)の【0008】には、「特定のバインダー樹脂、及び、前記バインダー樹脂と相溶しない特定のビーズ、特定の分散助剤及び特定の溶剤を含有させたオーバープリントニスが、上記課題を達成することを見出し本発明するに至った。」と記載され、ビーズを添加する意味について、同【0045】には「前記ビーズを添加する事で、ニス塗布後の熱硬化の為の焼付け乾燥工程において、塗工面が収縮せずプラスチックフィルやアルミ箔の基材の反りを抑制する事が出来る。」と記載され、分散剤を添加する意味について、同【0053】には「分散剤を含有させることにより、ビーズの分散性を向上させることがでるため、ビーズが凝集せず均一分散した塗膜を形成でき、かつ、ビーズが塗膜から脱落するのを抑制することができる。また、オーバープリントニスの保存安定性を向上できる。」と記載されている。
そして、同【0067】~【0089】には、本件訂正発明の特定事項を満たす実施例が、ビーズを含まない比較例1や、分散剤としての脂肪酸アマイドを含まない比較例2~4に対して、塗膜外観、密着性及び反り量の少なさのいずれにも優れることが示されている。
これらの記載によれば、本件訂正発明の「オーバープリントニス」は、前記(2)の「硬化の為の焼付け乾燥工程において塗工面が収縮せず、且つビーズ脱落が無い状態を保持しつつプラスチックフィルムやアルミ箔の基材の反りが抑制できるオーバープリントニスを提供すること」との課題を解決できることを、当業者であれば認識できるものといえる。
(4)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の40頁12行~41頁8行において、ごく限られた特定のバインダー樹脂と特定のビーズとの組み合わせを示す実施例(アミノ樹脂以外の樹脂と他の樹脂とを組み合わせて使用したニスや、ポリオレフィン樹脂ビーズを使用したニスについての実験例はない)に基いて、本件発明1のすべての範囲において、所期の効果が奏されることは当業者といえども推認できないとの趣旨の主張をしている。
しかしながら、本件訂正により、本件訂正発明は「アミノ樹脂」を含むことが特定されたものとなったこと、及び、「前記ビーズを添加する事で、ニス塗布後の熱硬化の為の焼付け乾燥工程において、塗工面が収縮せずプラスチックフィルやアルミ箔の基材の反りを抑制する事が出来る。」とのビーズを添加する意味を考慮すれば、ポリオレフィン樹脂ビーズであっても課題を解決し得ることを理解できるから、申立人の主張は採用できない。
(5)まとめ
以上より、本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項4~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1は、本件訂正により削除され、当該請求項に係る特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700233