特許異議申立
2023-700783
端子及びそれを備えた二次電池並びにそれらの製造方法
- 審判番号
- 2023-700783
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-155917
- 登録番号
- 7214693
- 請求日
- 2023年07月28日
- 審決日
- 2023年10月25日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
- 【権利者代理人】安部 誠
- 【権利者代理人】大井 道子
- 【権利者代理人】山根 広昭
- 【権利者】福井鋲螺株式会社
- 【権利者代理人】安部 誠
- 【権利者代理人】大井 道子
- 【権利者代理人】山根 広昭
- 【異議申立人】日東精工 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 山田 正文
- 審判官 岩田 淳
- 分類
- P1651.537-Y (H01M) / P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7214693号発明「端子及びそれを備えた二次電池並びにそれらの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7214693号の請求項1ないし20に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7214693号の請求項1ないし20に係る特許についての出願は、令和2年9月17日に出願され、令和5年1月20日にその特許権が設定登録され、令和5年1月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年7月28日に特許異議申立人日東精工株式会社(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし20に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7214693号の請求項1ないし20の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明20」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
板状の第1導電部材と、
前記第1導電部材と電気的に接続されるフランジ部を有する第2導電部材と、
前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを機械的に固定する第1締結部および第2締結部と、
を備え、
前記第2締結部は、平面視において、前記第1締結部よりも前記フランジ部の中心側に設けられている、二次電池用端子。
【請求項2】
前記第1導電部材と前記第2導電部材とは、金属製であり、
前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを金属接合する金属接合部を備える、
請求項1に記載の二次電池用端子。
【請求項3】
前記金属接合部は、溶接接合部である、
請求項2に記載の二次電池用端子。
【請求項4】
前記金属接合部は、平面視において、前記第1締結部と前記第2締結部との間に位置している、
請求項2または3に記載の二次電池用端子。
【請求項5】
前記第1導電部材は、貫通孔を有し、
前記第2導電部材の前記フランジ部は、前記貫通孔に挿入される凸部を有し、
前記第2締結部は、前記第1導電部材の前記貫通孔に前記第2導電部材の前記凸部が挿入されて構成されている、
請求項1から4のいずれか1つに記載の二次電池用端子。
【請求項6】
前記第2締結部は、前記貫通孔の周縁部分に前記凸部の先端がかしめ加工されたかしめ部である、
請求項5に記載の二次電池用端子。
【請求項7】
前記第1導電部材は、前記第2導電部材の前記フランジ部の少なくとも一部を収容する凹部を有し、
前記第1締結部は、前記第1導電部材の前記凹部の内壁が前記第2導電部材の前記凹部に収容された部分で固定されることによって構成されている、
請求項1から6のいずれか1つに記載の二次電池用端子。
【請求項8】
前記第2導電部材の前記フランジ部は、前記第1導電部材に嵌合するくびれ部を有し、
前記第1締結部は、前記第2導電部材の前記くびれ部と前記第1導電部材とが嵌合された嵌合部である、
請求項1から7のいずれか1つに記載の二次電池用端子。
【請求項9】
前記くびれ部は、前記フランジ部の側面に連続的或いは間欠的に環状に形成されている、請求項8に記載の二次電池用端子。
【請求項10】
前記第1導電部材は、略矩形状であり、
前記第1導電部材の長辺方向において、前記第1導電部材の中心の位置と、前記第2導電部材の前記フランジ部の中心の位置とが、ずれている、
請求項1から9のいずれか1つに記載の二次電池用端子。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の二次電池用端子を備える、
二次電池。
【請求項12】
板状の第1導電部材と、第2導電部材のフランジ部とを、機械的に固定して、前記第1導電部材と前記第2導電部材とを電気的に接続する第1締結部および第2締結部を形成する締結工程を含み、
平面視において、前記第2締結部を前記第1締結部よりも前記フランジ部の中心側に設ける、
二次電池用端子の製造方法。
【請求項13】
前記締結工程では、前記第1締結部を形成した後に前記第2締結部を形成する、
請求項12に記載の二次電池用端子の製造方法。
【請求項14】
前記第1導電部材と前記第2導電部材とが、金属製であり、
前記締結工程の後に、前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを金属接合して金属接合部を形成する金属接合工程、をさらに含む、
請求項12または13に記載の二次電池用端子の製造方法。
【請求項15】
前記金属接合工程では、前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを溶接して、溶接接合部を形成する、
請求項14に記載の二次電池用端子の製造方法。
【請求項16】
前記金属接合工程では、前記第1締結部と前記第2締結部との間に、前記金属接合部を形成する、
請求項14または15に記載の二次電池用端子の製造方法。
【請求項17】
前記第1導電部材は、貫通孔を有し、
前記第2導電部材の前記フランジ部は、前記貫通孔に挿入される凸部を有し、
前記締結工程では、前記第1導電部材の前記貫通孔に前記第2導電部材の前記凸部を挿入し、前記貫通孔の周縁部分に前記凸部の先端をかしめ加工することにより、前記第2締結部を形成する、
請求項12から16のいずれか1つに記載の二次電池用端子の製造方法。
【請求項18】
前記第1導電部材は、前記第2導電部材の前記フランジ部の少なくとも一部を収容する凹部を有し、
前記締結工程では、前記凹部に前記第2導電部材の一部を挿入し、前記第2導電部材の外形に沿って前記第1導電部材の前記凹部を変形させることにより、前記凹部の内壁を前記第2導電部材で固定して、前記第1締結部を形成する、
請求項12から17のいずれか1つに記載の二次電池用端子の製造方法。
【請求項19】
前記第2導電部材の前記フランジ部は、前記第1導電部材に嵌合するくびれ部を有し、
前記締結工程では、前記第2導電部材の前記くびれ部に前記第1導電部材を嵌合して、前記第1締結部を形成する、
請求項12から18のいずれか1つに記載の二次電池用端子の製造方法。
【請求項20】
請求項12から19のいずれか1つに記載の製造方法で製造された二次電池用端子を用いる、二次電池の製造方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人の特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
1 申立理由1 特許法第36条第6項第2号(明確性)について
請求項1および12に係る発明は、明確でない。
よって、請求項1及びこれに従属する請求項2ないし11、請求項12及びこれに従属する請求項13ないし20に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 申立理由2 特許法第29条第2項(進歩性)について
本件請求項1ないし20に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2ないし4号証に記載された発明を適用することで、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項1ないし20に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
[証拠]
甲第1号証:特開2018-1209号公報
甲第2号証:特開2020-99940号公報
甲第3号証:特開2020-107464号公報
甲第4号証:特開2013-75297号公報
第4 各甲号証の記載
1 甲第1号証について
ア 記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0001】
本発明は、被接合部材を圧縮することにより、当該被接合部材を所定厚みに成形しつつ接合部材と被接合部材とを接合する金属部材の接合方法および接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用リチウム電池にあっては、電極端子に溶接等によりリード線等を取付けることから、電極端子には導電率の高い銅部材と耐食性の高いアルミ部材とを接合してなる複合部品が使用されている。通常、この種の複合部品の製造にあっては、当該複合部品の用途に適する金属材料でなる被接合部材、例えば図17(a)に示す袋穴105aを持つアルミ部材でなる平板部材105と、図17(b)に示す銅部材でなる棒状の接合部材104とをあらかじめ所定の形状に成形しておき、その後に両部材を接合する方法が用いられている。」
「【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合方法(以下、第1接合方法という)を図面に基づき説明する。図2に示すように、1は第1接合方法により製造される複合部品を外部電極として使用する用途の一例を示すリチウム電池である。このリチウム電池1は複数枚の電池パック1aを収納する電池缶1bを有し、この電池缶1bの上面には正極側外部電極端子(図示せず)と負極側外部電極端子(以下、負側外部端子という)3とが取付けられている。前記電池パック1aは上端に正、負の各電極端子1a1,1a2を有し、隣接する二つの電池パック1a,1aの一方の負電極端子1a2と他方の電池パック1aの正電極端子1a1間にはバスバー1cが接続され、複数の電池パック1a,1aが直列に接続されている。また、最後列の電池パック1aの負電極端子1a2にもバスバー1cが連接されており、このバスバー1cの端部には前述の負側外部端子3が接続されている。
【0015】
前記負側外部端子3は、図5に示すように銅部材でなる接合部材4と、この接合部材4よりも柔らかいアルミ部材でなる被接合部材5とからなっている。前記接合部材4は、被接合部材5に対して貫通していてもよいが、本実施形態では非貫通の部材について説明する。この接合部材4は、棒状の軸部4aと、外周が非円形状の一例である歯形状である段部4bと、これに連続しかつこれから突出する突部4c(図3(b)参照)とを有している。また、前記被接合部材5は前記接合部材4の段部4bおよび突部4cを覆う所定厚さの平板状をなす平板部5bを有するが、図3(a)および(図3(b)に示すように当該成形が行われる前には前述の接合部材4の段部4bおよび突部4cが嵌合可能な袋穴でなる穴部5aを有している。前記負側外部端子3は、図4(a)および図4(b)並びに図5に示すように被接合部材5の穴部5aに接合部材4の段部4bおよび突部4cを嵌合させ、この状態で被接合部材5を接合部材4の突部4cが露出しないように圧縮しながら接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その突端を外方に扁平させて接合部材4にアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませて、両部材同士を抜脱不能に密着させて接合する接合構造Sを有している。また、前記接合構造Sは言い換えれば、図1に示すように前記圧縮の際に一部が変形せずに残る突部4cを有しており、この突部4cに対して当該圧縮により変形する被接合部材5の穴部5a(図3(a)参照)の内面に形成される前記突部4cへの密着面Cを有している。これにより、前記突部4cを一部変形させたり、当該突部4cにあらかじめ突起(図示せず)を設けたりするだけで、抜け止め効果が得られて大きな軸線方向の強度が得られる。
【0016】
上記構造により、接合部材4のアンダーカット部4ccが被接合部材5の余肉の回り込む溝を形成することとなり、また突部4cの全体の塑性変形によっても、段部4bの歯形状の空隙に回り込む余肉を覆うこととなり、被接合部材5の抜け止め効果がもたらされる。また、接合部材4のアンダーカット部4ccの背面により被接合部材5の余肉がかしめられる状態となり、これら部材の密着性が向上して大きな軸線方向の強度、すなわち抜き強度が得られる。また、被接合部材5の余肉が段部4bの歯形状の空隙に回り込むことにより大きな回転方向の強度が得られるばかりか、接合個所が穴部5a内にあって非貫通状態であるので、気密性の高い接合構造が得られる。これにより、当該負側外部端子3は液体が充満されるリチウム電池1の電池缶1bのような密閉される内部に通じる個所で使用されても、液体が漏洩することはない。同時に、リード線等を溶着するスペースを十分に確保でき、しかもその耐食性も確保できる平板部5bを得ることができる。その他、被接合部材5が接合部材4よりも柔らかい部材であることから、前述の密着性をさらに向上させることができる。なお、接合部材4および被接合部材5は同一材質であっても前記密着性向上の程度は異なるが、同様の効果が得られる。」
「【0017】
前記負側外部端子3は、図1、図3および図4に示す第1接合方法により製造されている。すなわち、この第1接合方法は接合部材4の製造工程(図示せず)と、被接合部材5の製造工程(図示せず)とを有している。また、この第1接合方法は接合部材4を被接合部材5の穴部5aに嵌合させる嵌合工程と、被接合部材5の予備成形工程と、被接合部材5の成形工程とを有している。前記嵌合工程は、図4(a)に示すように接合部材4の軸部4aを受け型6内でノックアウトピン7により位置決めし、その上方から接合部材4の段部4bおよび突部4cに対して被接合部材5を前進させて、これらを嵌合させるように構成されている。この場合、被接合部材5の前進方向は、上方からに限定されるものではなく、接合部材4と被接合部材5を横方向に配置することにより水平方向からとすることもできる。
【0018】
前記被接合部材5の予備成形工程は、図4(b)に示すように接合部材4の段部4bおよび突部4cに嵌合する被接合部材5を圧縮して予備成形部5cを成形する予備成形押し型(図示せず)を有している。この予備成形押し型は、仕上げ成形前の予備形状部に対応する成形穴(図示せず)を有し、受け型6に対して前進して被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cを成形する。この時、接合部材4の段部4bおよび突部4cと被接合部材5の穴部5aの内壁との間隙に被接合部材5の余肉が回り込み、接合部材4の軸部4aを受け型6で保持した状態でこれら部材が仮接合される。これにより、被接合部材5は延性の良好な材質でないときでも、成形工程において所定厚みの平板状に成形される。この予備成形工程は、第1接合方法にあっては必須の工程ではなく、被接合部材5が延性の良好な柔らかい金属部材でなるときには、被接合部材5を嵌合工程から直接成形工程で成形してもよい。
【0019】
前記成形工程は、図1に示すように被接合部材5の予備成形部5cから所定厚さの平板部5bを成形するための成形押し型(図示せず)を有している。この成形押し型は、前記予備成形部5cに対して上方から前進して予備成形部5cを所定の厚さまたは所定厚さと所定形状とを備える平板部5bに成形する。この時、成形押し型の下死点は平板部5bの厚さ、被接合部材5の延性、接合部材4の突部4cと被接合部材5の穴部5aとの嵌合深さ、接合部材4の硬度等から接合部材4の突部4cが露出しないように考慮されている。
【0020】
上記第1接合方法において、図4(a)に示すように受け型6内で接合部材4の軸部4aがノックアウトピン7により位置決めされ、同時にその段部4bが受け型6の上面で保持される。その後、被接合部材5をその穴部5aが接合部材4の段部4bおよび突部4cに嵌合するように前進させた後に、図4(b)に示すように予備成形押し型が受け型6に対して前進し、被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cが成形される。この時、予備成形押し型が接合部材4よりも柔らかい被接合部材5を介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周をわずかに外方に扁平させてアンダーカット部4ccを形成し始める。
【0021】
前記予備成形押し型を後退させた後に、図1に示すように成形押し型が受け型6に対して所定下死点まで前進する。この成形押し型の前進にともなって、成形押し型が前記予備成形部5cを圧縮して予備成形部5cから接合部材4の突部4cが露出しないように所定厚さの平板部5bが成形される。この時、予備成形部5cを圧縮する圧縮力を利用して被接合部材5を前記接合部材4との嵌合強度を高める方向に変形させる。すなわち、前記被接合部材5の加工硬化を利用して突部4cの突端を外方に扁平させて接合部材4に十分な大きさのアンダーカット部4ccが形成され、同時にそのアンダーカット部4ccに予備成形部5cの余肉が回り込む。これにより、両部材同士を抜脱不能に接合する接合構造Sが得られる。しかも、前記平板部5bを成形する際の圧縮により穴部5aを穴径が狭まる方向に変形して、穴部5aの内面を接合部材4の突部4cの外面に密着するので、これら部材は非貫通接合状態で、すなわち接合個所の気密性を保持して接合される。前述の被接合部材5は、平板状に成形される際に、接合部材4の突部4cの形状によって、接合部材4に対して抜脱不能にも、抜脱可能にも接合可能であるが、突部4cにアンダーカット部4ccが形成されることにより、本実施形態では接合部材4に対して抜脱不能に接合される。
【0022】
また、被接合部材5が平板状に成形される際には、外周が歯形状となっている段部4bの間隙に被接合部材5の余肉が回り込んで、平板部5bの首下に大円柱段部4b1が形成されるので、十分な回転方向の強度が得られる。また、前記平板部5bの成形時に、前記成形押し型が予備成形部5cを介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周をさらに外方に扁平させる。この間、接合部材4の扁平部分がその背部で予備成形部5cの余肉をかしめるとともに、この余肉を接合部材4の段部4bと予備成形部5cとの間隙に回り込ませることができる。これは、図6(a)に示すように実際の接合部材4と被接合部材5との接合個所の拡大断面写真からも明確となっている。すなわち、図6(b)に示す従来方法に係る接合個所の拡大断面写真では、当該接合個所の所どころに間隙(境界部分の黒色部)が認められ、余肉の回りが十分でないことが窺がえる。これに対して、第1接合方法に係る接合個所には隙間が認められず、余肉は十分に回り込んで接合部材4と被接合部材5との間で高い密着性が得られていることが窺がえる。特に、図6(a)の被接合部材5にはA1070のアルミ部材を、また接合部材4には銅部材を使用し、被接合部材5を接合部材4よりも柔らかい材料とすることにより、前述の密着性が顕著に現れる。
【0023】
また、図1に示すように前記接合部材4の扁平部分の背部は予備成形部5cの余肉を接合部材4の段部4bおよび受け型6の上面との間でかしめることとなって当該余肉をさらに加工硬化させながら、接合部材4の段部4c(当審注:「4c」は「4b」の誤記と認める)および突部4cと予備成形部5cとの間隙側に押し込む。これにより、接合部材4にあらかじめ当該余肉が回り込むための溝加工等の抜け止め加工を施す必要がなく、接合部材4は単純な構造でよいばかりか、前記余肉の加工硬化と相俟って接合部材の軸線方向の強度、すなわち抜き方向の強度を高めることができる。これは、図7(a)に示すように第1接合方法に係る抜き強度が2.5N以上であるのに対して、図7(b)に示すように従来方法に係る抜き強度が2.0N以下であることから明確となっている。なお、上記説明は、第1接合方法において、接合部材4に従来技術の溝部104aを予め成形しておくことを積極的に排除するものではない。」
【図1】
[図:0001403702000001.jpg]
【図4】
[図:0001403702000002.jpg]
イ 記載された技術事項
上記摘記事項の記載より、甲第1号証には次の技術事項が記載されているといえる。
(ア)段落【0001】、【0002】の記載によれば、甲第1号証には、接合部材と被接合部材とを接合する金属部材の接合方法が記載されており、当該金属部材の接合方法は車載用リチウム電池に用いられるものと認められる。
また、段落【0014】の記載によれば、リチウム電池1の負側外部端子3は、上記金属部材の接合方法により製造される。
してみると、甲第1号証には、接合部材と被接合部材とを接合する金属部材の接合方法により製造される車載用リチウム電池の負側外部端子及び車載用リチウム電池の負側外部端子の製造方法が記載されているといえる。
(イ)段落【0015】の記載によれば、負側外部端子3は、銅部材でなる接合部材4と、この接合部材4よりも柔らかいアルミ部材でなる被接合部材5とからなっており、接合部材4は、棒状の軸部4aと、外周が非円形状の一例である歯形状である段部4bと、これに連続しかつこれから突出する突部4cとを有し、被接合部材5は接合部材4の段部4bおよび突部4cを覆う所定厚さの平板状をなす平板部5bを有するが、成形が行われる前には接合部材4の段部4bおよび突部4cが嵌合可能な袋穴でなる穴部5aを有している。
(ウ)段落【0015】の記載によれば、被接合部材5の穴部5aに接合部材4の段部4bおよび突部4cを嵌合させ、この状態で被接合部材5を圧縮しながら接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その突端を外方に扁平させて接合部材4にアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませて、両部材同士を抜脱不能に密着させて接合する。
(エ)段落【0016】の記載によれば、接合部材4のアンダーカット部4ccの背面により被接合部材5の余肉がかしめられる状態となり、これら部材の密着性が向上して大きな軸線方向の強度、すなわち抜き強度が得られ、被接合部材5の余肉が段部4bの歯形状の空隙に回り込むことにより大きな回転方向の強度が得られる。
(オ)段落【0017】の記載によれば、負側外部端子3は、第1接合方法により製造されている。
第1接合方法は接合部材4を被接合部材5の穴部5aに嵌合させる嵌合工程と、被接合部材5の予備成形工程と、被接合部材5の成形工程とを有している。
そして、嵌合工程は、接合部材4の軸部4aを受け型6内で位置決めし、その上方から接合部材4の段部4bおよび突部4cに対して被接合部材5を前進させて、これらを嵌合させるように構成されている。
(カ)段落【0018】の記載によれば、予備成形工程は、接合部材4の段部4bおよび突部4cに嵌合する被接合部材5を圧縮して予備成形部5cを成形する予備成形押し型を有し、予備成形押し型は、受け型6に対して前進して被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cを成形し、この時、接合部材4の段部4bおよび突部4cと被接合部材5の穴部5aの内壁との間隙に被接合部材5の余肉が回り込み、接合部材4の軸部4aを受け型6で保持した状態でこれら部材が仮接合される。
(キ)段落【0019】の記載によれば、成形工程は、被接合部材5の予備成形部5cから所定厚さの平板部5bを成形するための成形押し型を有し、成形押し型は、予備成形部5cを所定厚さと所定形状とを備える平板部5bに成形する。
(ク)段落【0020】の記載によれば、第1接合方法において、受け型6内で接合部材4の軸部4aが位置決めされ、同時にその段部4bが受け型6の上面で保持され、その後、被接合部材5をその穴部5aが接合部材4の段部4bおよび突部4cに嵌合するように前進させた後に、予備成形押し型が受け型6に対して前進し、被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cが成形され、この時、予備成形押し型が接合部材4よりも柔らかい被接合部材5を介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周をわずかに外方に扁平させてアンダーカット部4ccを形成し始める。
(ケ)段落【0021】の記載によれば、予備成形押し型を後退させた後に、成形押し型の前進にともなって、成形押し型が予備成形部5cを圧縮して予備成形部5cから所定厚さの平板部5bが成形され、この時、被接合部材5の加工硬化を利用して突部4cの突端を外方に扁平させて接合部材4に十分な大きさのアンダーカット部4ccが形成され、同時にそのアンダーカット部4ccに予備成形部5cの余肉が回り込み、これにより、両部材同士を抜脱不能に接合する接合構造が得られる。
(コ)段落【0022】の記載によれば、被接合部材5が平板状に成形される際には、外周が歯形状となっている段部4bの間隙に被接合部材5の余肉が回り込んで、平板部5bの首下に大円柱段部4b1が形成され、十分な回転方向の強度が得られ、また、前記平板部5bの成形時に、成形押し型が予備成形部5cを介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周をさらに外方に扁平させる。
(サ)段落【0023】の記載によれば、接合部材4の扁平部分の背部は予備成形部5cの余肉を接合部材4の段部4bおよび受け型6の上面との間でかしめることとなって当該余肉をさらに加工硬化させながら、接合部材4の段部4bおよび突部4cと予備成形部5cとの間隙側に押し込む。
ウ 記載された発明
(ア)上記「イ(ア)ないし(エ)」の記載された技術事項を総合勘案すると、甲第1号証には、車載用リチウム電池の負側外部端子として次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。
「負側外部端子3は、銅部材でなる接合部材4と、この接合部材4よりも柔らかいアルミ部材でなる被接合部材5とからなっており、
接合部材4は、棒状の軸部4aと、外周が非円形状の一例である歯形状である段部4bと、これに連続しかつこれから突出する突部4cとを有し、
被接合部材5は接合部材4の段部4bおよび突部4cを覆う所定厚さの平板状をなす平板部5bを有するが、成形が行われる前には接合部材4の段部4bおよび突部4cが嵌合可能な袋穴でなる穴部5aを有しており、
被接合部材5の穴部5aに接合部材4の段部4bおよび突部4cを嵌合させ、この状態で被接合部材5を圧縮しながら接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その突端を外方に扁平させて接合部材4にアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませて、両部材同士を抜脱不能に密着させて接合し、接合部材4のアンダーカット部4ccの背面により被接合部材5の余肉がかしめられる状態となり、これら部材の密着性が向上して大きな軸線方向の強度、すなわち抜き強度が得られ、
被接合部材5の余肉が段部4bの歯形状の空隙に回り込むことにより大きな回転方向の強度が得られる
車載用リチウム電池の負側外部端子。」
(イ)上記「イ(ア)ないし(イ)」及び「イ(オ)ないし(サ)」の記載された技術事項を総合勘案すると、甲第1号証には、車載用リチウム電池の負側外部端子の製造方法として次の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。
「第1接合方法により製造される車載用リチウム電池の負側外部端子の製造方法において、
負側外部端子3は、銅部材でなる接合部材4と、この接合部材4よりも柔らかいアルミ部材でなる被接合部材5とからなっており、接合部材4は、棒状の軸部4aと、外周が非円形状の一例である歯形状である段部4bと、これに連続しかつこれから突出する突部4cとを有し、被接合部材5は前記接合部材4の段部4bおよび突部4cを覆う所定厚さの平板状をなす平板部5bを有するが、成形が行われる前には接合部材4の段部4bおよび突部4cが嵌合可能な袋穴でなる穴部5aを有しているものであり、
第1接合方法は接合部材4を被接合部材5の穴部5aに嵌合させる嵌合工程と、被接合部材5の予備成形工程と、被接合部材5の成形工程とを有し、
嵌合工程は、接合部材4の軸部4aを受け型6内で位置決めし、その上方から接合部材4の段部4bおよび突部4cに対して被接合部材5を前進させて、これらを嵌合させるように構成され、
予備成形工程は、接合部材4の段部4bおよび突部4cに嵌合する被接合部材5を圧縮して予備成形部5cを成形する予備成形押し型を有し、予備成形押し型は、受け型6に対して前進して被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cを成形し、この時、接合部材4の段部4bおよび突部4cと被接合部材5の穴部5aの内壁との間隙に被接合部材5の余肉が回り込み、接合部材4の軸部4aを受け型6で保持した状態でこれら部材が仮接合され、
成形工程は、被接合部材5の予備成形部5cから所定厚さの平板部5bを成形するための成形押し型を有し、成形押し型は、予備成形部5cを所定厚さと所定形状とを備える平板部5bに成形するものであり、
第1接合方法において、受け型6内で接合部材4の軸部4aが位置決めされ、同時にその段部4bが受け型6の上面で保持され、その後、被接合部材5をその穴部5aが接合部材4の段部4bおよび突部4cに嵌合するように前進させた後に、予備成形押し型が受け型6に対して前進し、被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cが成形され、この時、予備成形押し型が接合部材4よりも柔らかい被接合部材5を介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周をわずかに外方に扁平させてアンダーカット部4ccを形成し始め、
予備成形押し型を後退させた後に、成形押し型の前進にともなって、成形押し型が予備成形部5cを圧縮して予備成形部5cから所定厚さの平板部5bが成形され、この時、被接合部材5の加工硬化を利用して突部4cの突端を外方に扁平させて接合部材4に十分な大きさのアンダーカット部4ccが形成され、同時にそのアンダーカット部4ccに予備成形部5cの余肉が回り込み、これにより、両部材同士を抜脱不能に接合する接合構造Sが得られ、
被接合部材5が平板状に成形される際には、外周が歯形状となっている段部4bの間隙に被接合部材5の余肉が回り込んで、平板部5bの首下に大円柱段部4b1が形成され、十分な回転方向の強度が得られ、また、前記平板部5bの成形時に、前記成形押し型が予備成形部5cを介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周をさらに外方に扁平させ、
接合部材4の扁平部分の背部は予備成形部5cの余肉を接合部材4の段部4bおよび受け型6の上面との間でかしめることとなって当該余肉をさらに加工硬化させながら、接合部材4の段部4bおよび突部4cと予備成形部5cとの間隙側に押し込む
車載用リチウム電池の負側外部端子の製造方法。」
2 甲第2号証について
ア 記載事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0001】
本発明は、金属材料でなる接合部材と被接合部材とを密着性が高くなるように一体に接合してなる金属部材の接合方法、特に一体に接合された両部材を加熱して当該両部材の各接合面に拡散層を生成し、拡散接合により固溶強化された密着性の高い接合部で接合される複合部材を製造する金属部材の接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料でなる接合部材と被接合部材とを接合して複合部材を製造する場合には、当該複合部材の用途によってはその接合個所に高度な密着性が要望されている。例えば、リチウム電池にあっては、電極端子に溶接等によりリード線等を取付けることから、電極端子には導電率の高い銅部材と耐食性の高いアルミ部材とを電気抵抗が高くならないように密着性を高めて接合した複合部材が要望されている。この種の要望に応じた金属部材の接合方法としては、特公昭59-52031号公報(以下、031号特許という)、特公昭64-4581号公報(以下、581号特許という)等に記載の拡散接合方法が最適な方法として知られているが、いずれも両部材が薄い板材であったり、一方の部材が他方の部材に被覆されるめっき被膜であったりする場合に限られている。」
「【0009】
本発明は、上記問題をすべて解決するために発明されたもので、接合部材と被接合部材とを加圧可能に、かつ両部材が加圧方向と交差する方向に延びるのを拘束しないように押し型と受け型とを配置して両部材の少なくとも一方を塑性変形させて当該両部材を一体に接合して複合部材を成形する圧延工程と、当該複合部材を加熱炉内に投入して所定温度で所定時間加熱して複合部材中の大きな延びを持つ部材と他の部材との接合部に拡散層を生成する加熱工程とを有することを特徴としている。」
イ 記載された技術事項
上記摘記事項の記載より、甲第2号証には、次の技術(以下、「甲2記載の技術」という。)が記載されているといえる。
「金属材料でなる接合部材と被接合部材とを接合して、用途がリチウム電池の電極端子である複合部材を製造する金属材料の接合方法において、
接合部材と被接合部材との少なくとも一方を塑性変形させて当該両部材を一体に接合して複合部材を成形する圧延工程と、当該複合部材を加熱炉内に投入して所定温度で所定時間加熱して複合部材中の大きな延びを持つ部材と他の部材との接合部に拡散層を生成する加熱工程とを有する」接合方法とする技術。
3 甲第3号証について
ア 記載事項
甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0025】
負極端子9には、外部導電部材15が溶接され溶接部63が形成される。外部導電部材15にはボルト部17が設けられている。ボルト部17は、外部導電部材15と、他の二次電池50の外部導電部材を電気的に接続するバスバーを固定するために用いられる。外部導電部材15と封口板2の間には樹脂製の絶縁部材19が配置される。」
「【0027】
図4及び図5に示すように、負極端子9はフランジ部9aを有する。フランジ部9aは、第1面91と、第1面91と反対側に位置する第2面92と、第1面91と第2面92を繋ぐ側面93を有する。フランジ部9aの第1面91には接続部9bが設けられている。フランジ部9aの外径は、封口板2の負極端子取り付け孔2bの内径よりも大きい。フランジ部9aの外径は、接続部9bの外径よりも大きい。接続部9bは、封口板2に設けられた負極端子取り付け孔2bに挿入されている。接続部9bの先端部が負極集電体8上にカシメされている。接続部9bには凹部9cが設けられている。フランジ部9aの第2面92に突部9dが設けられている。なお、突部9dを設けなくてもよい。
【0028】
アルミニウム又はアルミニウム合金製の外部導電部材15は、フランジ部9a上に配置されている。外部導電部材15とフランジ部9aは溶接され、溶接部63が形成されている。外部導電部材15は薄肉部15bを有し、薄肉部15bがフランジ部9aに溶接されている。外部導電部材15は貫通孔15aを有する。負極端子9の突部9dは、貫通孔15a内に配置されている。薄肉部15bは、貫通孔15aの縁部近傍に形成されている。」
【図5】
[図:0001403702000003.jpg]
図5から、溶接部63は、凸部9dとフランジ部9aとの間に設けられることが見てとれる。
イ 記載された技術事項
上記摘記事項の記載及び図面より、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲3記載の技術」という。)が記載されているといえる。
「外部導電部材15が溶接され溶接部63が形成される負極端子9において、
負極端子9はフランジ部9aを有し、フランジ部9aの第2面92に突部9dが設けられ、
外部導電部材15は、フランジ部9a上に配置されており、
溶接部63は、凸部9dとフランジ部9aとの間に設けられる」技術。
4 甲第4号証について
ア 記載事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0001】
本発明は、金属板と金属軸の結合構造、及びこれを用いた密閉型電池の電極構造に関する。」
「【0026】
図8に示すように、電池ケース21の端子配置面22に凹部24が形成され、その凹部24に、金属板1Aの少なくとも一部が収容されている。凹部24の底241及び内壁面242とこれに対向する金属板1Aの第1面2(裏面)及び側面25との間には、絶縁性の例えばゴムからなるシール部材26が介在している。
電池ケース21には、端子貫通孔27が形成されており、内部端子としての金属軸5Aの圧入端部7が、端子挿通孔27に挿通され、金属板1Aの第1面2(裏面2)の有底孔4に圧入されている。シール部材26は、端子貫通孔27を挿通した金属軸5Aを取り囲んだ状態で、金属板1Aの第1面2と電池ケース21の凹部24の底241との間に弾性的に挟持されることで、金属板1Aにおける金属軸5Aの貫通部分をシールしている。」
【図7】
[図:0001403702000004.jpg]
図7より、金属軸5Aは略矩形状の金属板1Aの中心からずれた位置に設けられることが見て取れる。
イ 記載された技術事項
上記摘記事項の記載及び図面より、甲第4号証には、次の技術(以下、「甲4記載の技術」という。)が記載されているといえる。
「内部端子としての金属軸の圧入端部が金属板の有底孔に圧入された結合構造を用いた電池の電極構造において、
金属軸は略矩形状の金属板の中心からずれた位置に設ける」技術。
第5 当審の判断
1 申立理由1(明確性)について
(1)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において概略以下のように主張している。
ア 本件の請求項1には、「前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを機械的に固定する第1締結部および第2締結部と、を備え、」と記載され、請求項12には、「板状の第1導電部材と、第2導電部材のフランジ部とを、機械的に固定して、前記第1導電部材と前記第2導電部材とを電気的に接続する第1締結部および第2締結部を形成する締結工程を含み、」と記載されている。しかしながら、当該記載では、第1締結部および第2締結部の二つの締結部が、如何にして第1導電部材と第2導電部材のフランジ部とを機械的に固定するのか不明確であるため、これら第1締結部および第2締結部を備えた二次電池用端子の構成を明確に特定できず、また、締結工程において、どのように第1締結部および第2締結部が形成されているのか不明確であるため、これら第1締結部および第2締結部を備えた二次電池用端子の製造方法について明確に特定できない。
よって、請求項1およびこれに従属する請求項2ないし請求項11に記載された発明、及び、請求項12およびこれに従属する請求項13ないし請求項20に記載された発明は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。(第7頁の「イ(ア)」及び「イ(ウ)」)
イ 本件の請求項1には、「・・・前記第2締結部は、平面視において、前記第1締結部よりも前記フランジ部の中心側に設けられている・・・」と記載され、請求項12には、「平面視において、前記第2締結部を前記第1締結部よりも前記フランジ部の中心側に設ける、」と記載されている。しかしながら、当該記載では、第2締結部および第1締結部の何を基準としてフランジ部の中心側との位置関係を特定しているのか不明確であるため、これら第1締結部および第2締結部を備えた二次電池用端子の構成を明確に特定できず、第1締結部および第2締結部を備えた二次電池用端子の製造方法について明確に特定できない。
よって、請求項1およびこれに従属する請求項2ないし請求項11に記載された発明、及び、請求項12およびこれに従属する請求項13ないし請求項20に記載された発明は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。(第7頁の「イ(イ)」及び第7ないし8頁の「イ(エ)」)
(2)当審の判断
ア 「(1)ア」の主張について
本件明細書の段落【0006】、【0007】には「板状の第1導電部材と、上記第1導電部材と電気的に接続されるフランジ部を有する第2導電部材と、上記第1導電部材と上記第2導電部材の上記フランジ部とを機械的に固定する第1締結部および第2締結部と、を備え、上記第2締結部は、平面視において、上記第1締結部よりも上記フランジ部の中心側に設けられている端子が提供され・・・フランジ部の中心からの距離が異なる2つの締結部を備えている。これにより、・・・第1導電部材と第2導電部材とが密接した状態を維持しやすくなる。そのため、第1導電部材と第2導電部材との導通接続を安定して保つことができ、導通信頼性を向上することができる。」と記載されると共に段落【0059】、【0061】には第1締結部及び第2締結部の形成方法について「力学的エネルギーによる機械的接合であれば特に限定されず、例えば、圧入、焼きばめ、かしめ、リベット、折り込み、ボルト接合等であってよい」旨記載されており、当該記載より、第1導電部材と第2導電部材との導通信頼性の向上した端子及びその製造方法を得るには、フランジ部の中心からの距離が異なる2つの締結部によって2つの導電部材を機械的に固定すれば足り、第1及び第2締結部の形成方法は機械的結合であれば特に限定されるものではないと理解できる。
してみると、本件発明1および12に、2つの締結部の締結方法や構造が特定されておらず、如何にして第1導電部材と第2導電部材のフランジ部とを機械的に固定するのか特定されていないとしても、本件発明1および12が明確でないとはいえない。
イ 「(1)イ」の主張について
申立人も認めるように、本件発明1は「前記第2締結部は、平面視において、前記第1締結部よりも前記フランジ部の中心側に設けられている」ものであり、本件発明12は「平面視において、前記第2締結部を前記第1締結部よりも前記フランジ部の中心側に設け」たものであるから、基準はフランジ部の中心であり、第2締結部は第1締結部より基準であるフランジ部の中心に近い位置にあることは明らかである。
よって、本件発明1および12は明確である。
ウ 小括
よって、申立人の主張は採用できず、請求項1ないし20に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
2 申立理由2(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
(ア)甲1発明1の「被接合部材5」は、アルミ部材でなり所定厚さの平板状をなす平板部5bを有する。ここで、アルミ部材が導電性を有するのは明らかであるから、引用発明の「被接合部材5」は本件発明1の「板状の第1導電部材」に相当する。
(イ)甲1発明1の「接合部材4」の「段部4b」は、本件発明1の「フランジ部」に相当する。そして、甲1発明1の「接合部材4」は銅部材でなり被接合部材2と抜脱不能に密着させて接合されるものであるから、被接合部材2と電気的に接続されるのは明らかである。そうしてみると、甲1発明1の「接合部材4」は、本件発明1の「前記第1導電部材と電気的に接続されるフランジ部を有する第2導電部材」に相当する。
(ウ)本件明細書の段落【0058】の「第1締結部43は、第1導電部材41と第2導電部材42のフランジ部42fとを機械的に固定する第1の締結部である。」、【0060】の「第2締結部44は、第1導電部材41と第2導電部材42のフランジ部42fとを機械的に固定する第2の締結部である。」との記載を考慮すれば、本件発明1の「前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを機械的に固定する第1締結部および第2締結部」との構成は、「前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを機械的に固定する第1締結部、および、前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを機械的に固定する第2締結部」を意味するものと認められる。
a 甲1発明1は「被接合部材5の余肉が段部4bの歯形状の空隙に回り込むことにより大きな回転方向の強度が得られる」ものであるから、甲1発明1は被接合部材5が接合部材4の段部4bの空隙に回り込み接合されたものといえ、当該被接合部材5が接合部材4の段部4bの歯形状の空隙に回り込んだ部分は、本願発明1の「前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを機械的に固定する第1締結部」に相当する。
b 甲1発明1は「被接合部材5を圧縮しながら接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その突端を外方に扁平させて接合部材4にアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませて、両部材同士を抜脱不能に密着させて接合」するものであるから、甲1発明1は接合部材4の突部4cに塑性変形により形成されるアンダーカット部4ccに被接合部材5が回り込み接合されたものといえ、当該接合部材4の突部4cに塑性変形により形成されるアンダーカット部4ccに被接合部材5が回り込んだ部分は、本件発明1と「前記第1導電部材と前記第2導電部材」「とを機械的に固定する」「第2締結部」である点で共通する。
ただし、第2締結部が、本件発明1は「前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを」固定するのに対し、甲1発明1は接合部材4の突部4cに塑性変形により形成されるアンダーカット部4ccと被接合部材5とを固定する点で相違する。
(エ)本件発明1は「前記第2締結部は、平面視において、前記第1締結部よりも前記フランジ部の中心側に設けられている」のに対して、甲1発明1はその旨特定されていない点で相違する。
(オ)甲1発明1の「車載用リチウム電池の負側外部端子」は、接合部材(本件発明1の「第2導電部材」に相当)と被接合部材(本件発明1の「第1導電部材」に相当)とを備えたものであり、また、車載用リチウム電池が充放電可能な二次電池であることは明らかであるから、本件発明1の「二次電池用端子」に相当する。
(カ)上記(ア)ないし(オ)によれば、本件発明1と甲1発明1とは、以下の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「板状の第1導電部材と、
前記第1導電部材と電気的に接続されるフランジ部を有する第2導電部材と、
前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを機械的に固定する第1締結部、および前記第1導電部材と前記第2導電部材とを機械的に固定する第2締結部と、
を備えている、二次電池用端子。」
〈相違点1〉
第2締結部が、本件発明1は「前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを」固定するのに対し、甲1発明1は接合部材4の突部4cに塑性変形により形成されるアンダーカット部4ccと被接合部材5とを固定する点。
〈相違点2〉
本件発明1は「前記第2締結部は、平面視において、前記第1締結部よりも前記フランジ部の中心側に設けられている」のに対して、甲1発明1はその旨特定されていない点。
イ 判断
相違点1について検討する。
甲1発明1は、「被接合部材5を圧縮しながら接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その突端を外方に扁平させて接合部材4にアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませて、両部材同士を抜脱不能に密着させて接合」すると共に「被接合部材5の余肉が段部4bの歯形状の空隙に回り込むことにより大きな回転方向の強度が得られる」ものである。
上記の通り、甲1発明1は段部4bの歯形状の空隙に被接合部材5の余肉が回り込むものであるところ、アンダーカット部4ccを段部4bに設けるには段部4bを塑性変形させることとなるが、段部4bを塑性変形させるとその歯形状を変形させ段部4bの歯形状の空隙に被接合部材5の余肉が回り込まなくなるおそれがある。してみると、段部4bに塑性変形によるアンダーカット部4ccを設けることには動機がなく、むしろ阻害要因がある。
したがって、甲1発明1において、段部4b(本件発明1の「フランジ部」に相当)に塑性変形によるアンダーカット部4ccを形成させ、本件発明1の相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
また、甲2ないし4記載の技術(上記「第4」「2」ないし「4」参照)は、フランジ部に2つの締結部を設ける技術ではなく、また、甲第2ないし4号証のその他の記載にも、フランジ部に2つの締結部を設けることは記載も示唆もされていない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に甲第2ないし4号証に記載された発明を適用することで当業者が容易に発明することができたものではない。
(2)本件発明2ないし11について
請求項2ないし11は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし11は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし11は甲第1号証に記載された発明に甲第2ないし4号証に記載された発明を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明12について
ア 対比
本件発明12と甲1発明2とを対比する。
(ア)甲1発明2の「被接合部材5」はアルミ部材でなり所定厚さの平板状をなす平板部5bを有するから、本件発明12の「板状の第1導電部材」に相当し、甲1発明2の「接合部材1」は銅部材でなり、その「段部4b」は、本件発明12の「第2導電部材のフランジ部」に相当する。
(イ)本件明細書の段落【0058】の「第1締結部43は、第1導電部材41と第2導電部材42のフランジ部42fとを機械的に固定する第1の締結部である。」、【0060】の「第2締結部44は、第1導電部材41と第2導電部材42のフランジ部42fとを機械的に固定する第2の締結部である。」との記載を考慮すれば、本件発明12の「板状の第1導電部材と、第2導電部材のフランジ部とを、機械的に固定して、前記第1導電部材と前記第2導電部材とを電気的に接続する第1締結部および第2締結部を形成する締結工程」との構成は、「板状の第1導電部材と、第2導電部材のフランジ部とを、機械的に固定して、前記第1導電部材と前記第2導電部材とを電気的に接続する第1締結部、および、板状の第1導電部材と、第2導電部材のフランジ部とを、機械的に固定して、前記第1導電部材と前記第2導電部材とを電気的に接続する第2締結部を形成する締結工程」を意味するものと認められる。
a 甲1発明2は、「予備成形工程は、」「被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cを成形し、この時、接合部材4の段部4bおよび突部4cと被接合部材5の穴部5aの内壁との間隙に被接合部材5の余肉が回り込み、」「成形工程は、」「予備成形部5cを所定厚さと所定形状とを備える平板部5bに成形するものであり、」「被接合部材5が平板状に成形される際には、外周が歯形状となっている段部4bの間隙に被接合部材5の余肉が回り込んで、平板部5bの首下に大円柱段部4b1が形成され、十分な回転方向の強度が得られ」るものであるから、甲1発明2は、予備成形工程及び成形工程において、接合部材4の段部4bの歯形状の間隙に被接合部材5が回り込んで接合したものといえる。そして、甲1発明2の、接合部材4の段部4bの歯形状の間隙に被接合部材5が回り込む部分は、上記(ア)の対比を考慮すれば、本願発明12の「板状の第1導電部材と、第2導電部材のフランジ部とを機械的に固定」する「第1締結部」に相当する。また、甲1発明2の接合部材4は銅部材でなり、被接合部材5はアルミ部材でなるから、甲1発明2の前記被接合部材5が接合部材4の段部4bの歯形状の間隙に回り込む部分が、接合部材4と被接合部材5とを電気的に接続しているのは明らかである。
してみると、甲1発明2の「予備成形工程」及び「成形工程」は、本件発明12の「板状の第1導電部材と、第2導電部材のフランジ部とを、機械的に固定して、前記第1導電部材と前記第2導電部材とを電気的に接続する第1締結部」「を形成する締結工程」に相当する構成を有する。
b 甲1発明2は、「予備成形工程は、」「予備成形押し型を有し、予備成形押し型は、受け型6に対して前進して被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cを成形し、この時、接合部材4の段部4bおよび突部4cと被接合部材5の穴部5aの内壁との間隙に被接合部材5の余肉が回り込み、」「成形工程は、」「成形押し型を有し、成形押し型は、予備成形部5cを所定厚さと所定形状とを備える平板部5bに成形するものであり、」「予備成形押し型が受け型6に対して前進し、被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cが成形され、この時、予備成形押し型が接合部材4よりも柔らかい被接合部材5を介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周をわずかに外方に扁平させてアンダーカット部4ccを形成し始め、予備成形押し型を後退させた後に、成形押し型の前進にともなって、成形押し型が予備成形部5cを圧縮して予備成形部5cから所定厚さの平板部5bが成形され、この時、被接合部材5の加工硬化を利用して突部4cの突端を外方に扁平させて接合部材4に十分な大きさのアンダーカット部4ccが形成され、同時にそのアンダーカット部4ccに予備成形部5cの余肉が回り込み、これにより、両部材同士を抜脱不能に接合する接合構造Sが得られ」るものであるから、甲1発明2は、予備成形工程及び成形工程において、接合部材4の突部4cに塑性変形により形成されるアンダーカット部4ccに被接合部材5を回り込ませ接合するものといえる。そして、甲1発明2の、接合部材4の突部4cに塑性変形により形成されるアンダーカット部4ccに被接合部材5を回り込ませた部分は、本願発明12とは「板状の第1導電部材と、第2導電部材」「とを機械的に固定」する「第2締結部」である点で一致する。また、甲1発明2の接合部材4は銅部材でなり、被接合部材5はアルミ部材でなるから、甲1発明2の接合部材4の突部4cに塑性変形により形成されるアンダーカット部4ccに被接合部材5を回り込ませた部分が、接合部材4と被接合部材5とを電気的に接続しているのは明らかである。
してみると、甲1発明2の「予備成形工程」及び「成形工程」は、本件発明12とは「板状の第1導電部材と、第2導電部材」「とを、機械的に固定して、前記第1導電部材と前記第2導電部材とを電気的に接続する」「第2締結部を形成する締結工程」である点で一致する構成を有する。
ただし、締結工程が、本件発明12は「前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを、機械的に固定」する「第2締結部を形成する」のに対し、甲1発明2は接合部材4の突部4cに塑性変形により形成されるアンダーカット部4ccと被接合部5とを固定する部分を形成する点で相違する。
(ウ)本件発明12は「平面視において、前記第2締結部を前記第1締結部よりも前記フランジ部の中心側に設ける」のに対して、甲1発明2はその旨特定されていない点で相違する。
(エ)甲1発明2の「車載用リチウム電池の負側外部端子の製造方法」は「予備成形工程」及び「成形工程」(本件発明12の「締結工程」に相当)を備えたものであり、また、車載用リチウム電池が充放電可能な二次電池であることは明らかであるから、本件発明12の「二次電池用端子の製造方法」に相当する。
(オ)上記(ア)ないし(エ)によれば、本件発明12と甲1発明2とは、以下の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「板状の第1導電部材と、第2導電部材のフランジ部とを、機械的に固定して、前記第1導電部材と前記第2導電部材とを電気的に接続する第1締結部、および板状の第1導電部材と、第2導電部材とを、機械的に固定して、前記第1導電部材と前記第2導電部材とを電気的に接続する第2締結部を形成する締結工程を含む、
二次電池用端子の製造方法。」
〈相違点3〉
締結工程が、本件発明12は「前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを、機械的に固定」する「第2締結部を形成する」のに対し、甲1発明2は接合部材4の突部4cに塑性変形により形成されるアンダーカット部4ccと被接合部5とを固定する部分を形成する点。
〈相違点4〉
本件発明12は「平面視において、前記第2締結部を前記第1締結部よりも前記フランジ部の中心側に設ける」のに対して、甲1発明2はその旨特定されていない点。
イ 判断
相違点3について検討する。
甲1発明2は、「予備成形押し型が接合部材4よりも柔らかい被接合部材5を介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周をわずかに外方に扁平させてアンダーカット部4ccを形成し始め、予備成形押し型を後退させた後に、成形押し型の前進にともなって、成形押し型が予備成形部5cを圧縮して予備成形部5cから所定厚さの平板部5bが成形され、この時、被接合部材5の加工硬化を利用して突部4cの突端を外方に扁平させて接合部材4に十分な大きさのアンダーカット部4ccが形成され、同時にそのアンダーカット部4ccに予備成形部5cの余肉が回り込み、これにより、両部材同士を抜脱不能に接合する接合構造Sが得られ」ると共に「被接合部材5が平板状に成形される際には、外周が歯形状となっている段部4bの間隙に被接合部材5の余肉が回り込んで、平板部5bの首下に大円柱段部4b1が形成され、十分な回転方向の強度が得られ」るものである。
上記の通り、甲1発明2は段部4bの歯形状の間隙に被接合部材5の余肉が回り込むものであるところ、アンダーカット部4ccを段部4bに設けるには段部4bを塑性変形させることとなるが、段部4bを塑性変形させるとその歯形状を変形させ段部4bの歯形状の間隙に被接合部材5の余肉が回り込まなくなるおそれがある。してみると、段部4bに塑性変形によるアンダーカット部4ccを設けることには動機がなく、むしろ阻害要因がある。
したがって、甲1発明2において、予備成形工程及び成形工程を段部4b(本件発明1の「フランジ部」に相当)に塑性変形によるアンダーカット部4ccを形成させる工程とし、本件発明12の相違点4に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
また、甲2ないし4記載の技術(上記「第4」「2」ないし「4」参照)は、フランジ部に2つの締結部を設ける技術ではなく、また、甲第2ないし4号証のその他の記載にも、フランジ部に2つの締結部を設けることは記載も示唆もされていない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、甲第1号証に記載された発明に甲第2ないし4号証に記載された発明を適用することで当業者が容易に発明することができたものではない。
(4)本件発明13ないし20について
請求項13ないし20は、請求項12を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明13ないし20は、本件発明12の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明12についての判断と同様の理由により、本件発明13ないし20は甲第1号証に記載された発明に甲第2ないし4号証に記載された発明を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)小括
よって、本件請求項1ないし20に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2ないし4号証に記載された発明を適用することで、当業者が容易に発明することができたものではなく、請求項1ないし20に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし20に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700783