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特許異議申立

2023-700761

包装用積層体及びこれを用いた包装袋

審判番号
2023-700761
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-000916
登録番号
7211588
請求日
2023年07月24日
審決日
2024年10月01日
公報発行日
2025年01月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】福助工業株式会社
  • 【権利者代理人】稗苗 秀三
  • 【権利者代理人】小羽根 孝康
  • 【権利者代理人】藤原 清隆
  • 【異議申立人】山内 慶子
審判長/審判官
  • 審判長 田口 傑
  • 審判官 金丸 治之
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7211588号発明「包装用積層体及びこれを用いた包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7211588号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 特許第7211588号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7211588号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成31年1月8日の出願であって、令和5年1月16日にその特許権の設定登録がされ、令和5年1月24日に特許掲載公報が発行された。 本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。 令和5年 7月24日 :特許異議申立人山内慶子(以下「申立人」という。)による請求項1~3に係る特許に対する本件特許異議の申立て 令和5年10月 3日付け:取消理由通知書 令和5年11月28日 :特許権者による意見書の提出 令和6年 1月19日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和6年 3月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和6年 4月12日 :令和6年3月22日提出の訂正請求書に対する手続補正書の提出 (以下、この手続補正書で補正された令和6年3月22日に提出された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。) 令和6年 5月24日 :申立人による意見書の提出 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容 本件訂正請求は、「特許第7211588号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。」というものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記第二樹脂層は、少なくともプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有する樹脂組成物から構成されたことを特徴とする」と記載されているのを、「前記第二樹脂層は、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体のみを含有する樹脂組成物、または、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有し、かつ、前記プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有する樹脂組成物から構成されたことを特徴とする」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記第二樹脂層を構成する樹脂組成物は、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体と、エチレン-α-オレフィン共重合体とを含有することを特徴とする」と記載されているのを、「前記第二樹脂層を構成する樹脂組成物は、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有し、かつ、前記プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有することを特徴とする」に訂正する。(請求項2を引用する請求項3も同様に訂正する。) 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~3は、請求項2~3が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~3〕について請求されたものである。 3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における「第二樹脂層」の「樹脂組成物」を「樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体のみを含有する樹脂組成物、または、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有し、かつ、前記プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有する樹脂組成物から構成され」る旨を明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮したものである。すなわち、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項1は、本件特許の明細書の【0020】の「第二樹脂層4を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレンランダムコポリマーを単独使用することができる。」という記載、【0021】の「第二樹脂層4を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレンランダムコポリマーと、エチレン-α-オレフィン共重合体とを含有するようにしてもよい。エチレン-α-オレフィン共重合体については、第一樹脂層3において用いられるエチレン-α-オレフィン共重合体と同様であり、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や、超低密度ポリエチレン(ULDPE)等を挙げることができる。」という記載、【0022】の「ポリプロピレンランダムコポリマーと、エチレン-α-オレフィン共重合体との配合割合については、樹脂の伸びを考慮すれば、ポリプロピレンランダムコポリマーを樹脂組成物全体の50重量%以上とするのが好ましい。また、第二樹脂層の樹脂の均質性(樹脂層の平滑性及び透明性)を考慮すれば、ポリプロピレンランダムコポリマーを樹脂組成物全体の70重量%以上とするのがより好ましい。」という記載、【0030】の【表1】の樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体のみを含有する樹脂組成物によって第二樹脂層を構成した例であるNo.1の記載、及び【0031】の【表2】の樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有し、かつ、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有する樹脂組成物によって第二樹脂層を構成した例であるNo.6、No.7、No.9の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに減縮するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2における「第二樹脂層」の「樹脂組成物」を「樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体」及び、エチレン-α-オレフィン共重合体の下位概念である「直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有し、」かつ、「前記プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有する」旨を明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮したものである。すなわち、訂正事項2は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2は、本件特許の明細書の【0021】の「第二樹脂層4を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレンランダムコポリマーと、エチレン-α-オレフィン共重合体とを含有するようにしてもよい。エチレン-α-オレフィン共重合体については、第一樹脂層3において用いられるエチレン-α-オレフィン共重合体と同様であり、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や、超低密度ポリエチレン(ULDPE)等を挙げることができる。」という記載、【0022】の「ポリプロピレンランダムコポリマーと、エチレン-α-オレフィン共重合体との配合割合については、樹脂の伸びを考慮すれば、ポリプロピレンランダムコポリマーを樹脂組成物全体の50重量%以上とするのが好ましい。また、第二樹脂層の樹脂の均質性(樹脂層の平滑性及び透明性)を考慮すれば、ポリプロピレンランダムコポリマーを樹脂組成物全体の70重量%以上とするのがより好ましい。」という記載、及び【0031】の【表2】の樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有し、かつ、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有する樹脂組成物によって第二樹脂層を構成した例であるNo.6、No.7、No.9の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項をさらに減縮するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 4 本件訂正の適否のまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~3を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~3の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせ、周縁部をヒートシールして包装袋を形成するための包装用積層体であって、紙基材、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造を有し、前記第一樹脂層は、樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有する樹脂組成物から構成され、前記第二樹脂層は、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体のみを含有する樹脂組成物、または、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有し、かつ、前記プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有する樹脂組成物から構成されたことを特徴とする包装用積層体。 【請求項2】 前記第二樹脂層を構成する樹脂組成物は、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有し、かつ、前記プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の包装用積層体。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の包装用積層体の第二樹脂層の表面に、ポリプロピレン系フィルムを重ね合わせてその周縁部をヒートシールしてなる包装袋。」 第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、当審が令和6年1月19日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 取消理由1(新規性) 本件特許の請求項1~3に係る発明は、以下の甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~3に係る発明は、以下の甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲第2号証:特開2014-188883号公報(申立人が示した甲第2号証) 甲第3号証:特開2015-193138号公報(同甲第3号証) 甲第2号証、甲第3号証をそれぞれ「甲2」、「甲3」という。 2 当審の判断 (1)甲号証の記載及び引用発明 ア 甲2について 甲2には以下の記載がある(下線は当審で付した。)。 「【請求項1】 紙基材層2aと表面樹脂層2bの間に、少なくとも接着樹脂層2cを積層した紙基材シート2であって、表面樹脂層2bが、 (A)ポリプロピレン樹脂又は融点が100℃以上のポリエチレン樹脂を55重量%以上95重量%以下、 及び、 (B)密度が0.920g/cm3以下、かつ融点が110℃以下のポリエチレン樹脂を5重量%以上45重量%以下、 含有してなり、接着樹脂層2cが、 (C)ポリプロピレン樹脂又は融点が100℃以上のポリエチレン樹脂を55重量%以上95重量%以下、 及び、 (D)密度が0.920g/cm3以下、かつ融点が110℃以下のポリエチレン樹脂を5重量%以上45重量%以下、 含有することを特徴とする紙基材シート。」 「【0019】 1.紙基材シート及びハーフクリアパックの層構成 図1に、本発明における紙基材シート及びハーフクリアパックの断面図を示す。本発明の紙基材シートは、紙基材層2aと、特定の樹脂組成物からなる接着樹脂層2bとポリプロピレンを主体とする表面樹脂2cからなるものである。 透明フィルム1は、ポリプロピレン系基材1aの表面に熱溶着性のヒートシーラブル層1bを設けて二軸延伸した透明の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムである。 図2に、本発明におけるハーフクリアパックを示す。本発明のハーフクリアパックとは、上記紙基材シート2と、透明フィルム1が、裏面が紙基材シート2、表面が透明フィルム1となるよう重ね合わせてなり、その3つの端部(3辺)がヒートシール(3の部分)されている。 【0020】 2.紙基材シート (1)表面樹脂層2b 本発明における紙基材シート2の最表面となる表面樹脂層2bを構成する樹脂組成物としては、 (A)ポリプロピレン樹脂又は融点が100℃以上のポリエチレン樹脂を55重量%以上95重量%以下、 及び、 (B)密度が0.920g/cm3以下、かつ融点が110℃以下のポリエチレン樹脂を5重量%以上45重量%以下、 を含有してなることを特徴とする。 【0021】 (A)成分 (A)成分は、ポリプロピレン樹脂又は融点が100℃以上のポリエチレン樹脂であり、油を通さない性質(耐油性)を紙基材シートに与える成分である。 本発明でいう融点とは、JIS-K7121に準拠して示差走査熱量計を用いて測定し、DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ温度(Tm)である。 【0022】 本発明で用いられるポリプロピレン樹脂は、プロピレン単位を20~100重量%を含有するものが挙げられ、エチレン/単位及び/又はブテン単位を0~20重量%含有している必要がある。 ここでプロピレン単位及びエチレン及び/又はブテン単位はフーリエ変換赤外分析法によって計測される値である。 本発明で用いられるポリプロピレン樹脂はエチレン、ブテン以外のコモノマー成分がプロピレンと共重合されていてもよい。コモノマーとしては、炭素数5~20のα-オレフィン等が挙げられる。炭素数5~20のα-オレフィンは、例えば、1-ヘキセン、1-オクテンを例示できる。プロピレンと共重合されるα-オレフィンは1種類でも2種類以上用いてもよい。プロピレンと共重合されるコモノマーは、好ましくはエチレン、1-ブテンであり、より好ましくはエチレンである。 すなわち、ポリプロピレン樹脂は、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン及び/又はブテンとのランダム共重合体等であり、具体的には、プロピレン単独重合体、ポロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレンブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン三元ランダム共重合体等が挙げられる。このうちプロピレン・エチレンランダム共重合体が好適である。 ポリプロピレン樹脂を用いると、ハーフクリアパックの耐油性を良好とする上で好ましい。こうしたポリプロピレン樹脂は、通常融点が120℃~180℃の範囲であるものが用いられる。用いるポリプロピレン樹脂の融点が180℃を超えるものを製造するのは困難であり、120℃未満では、耐ピンホール性が劣るため、耐油性が損なわれる。 【0023】 (A)成分に用いる融点が100℃以上のポリエチレン樹脂としては、エチレンの単独重合体又はエチレンとα-オレフィンの共重合体の中から、融点が100℃以上のものを選択し用いることができる。ポリエチレンの融点が100℃未満では、耐熱性、耐ピンホール性が劣るため耐油性が損なわれる。 エチレンの単独重合体又はエチレンとαオレフィンの共重合体としては、例えば高圧法で得られる分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、その中でもメタロセン触媒により得られたメタロセン系ポリエチレン(m-LLDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)等が知られているが、通常のこうしたポリエチレン樹脂は融点が100℃以上であるものが一般的である。例としては高圧法低密度ポリエチレン、あるいは直鎖状ポリエチレン低密度ポリエチレンが挙げられるが、好ましくはメタロセン触媒から得られる直鎖状ポリエチレン低密度ポリエチレンが良い。かかるポリエチレン樹脂としては日本ポリエチレン製ハーモレックスシリーズが例として挙げられる。 「【0025】 (B)成分 本発明の(B)成分として用いる密度が0.920g/cm3以下でかつ融点が110℃未満のポリエチレン樹脂とは、ポリエチレン樹脂の中でも、いわゆる超低密度ポリエチレン又はポリエチレンエラストマーと呼ばれる領域の、融点が極めて低い特殊なグレードに属するポリエチレン樹脂であり、好ましくはエチレン・α―オレフィン共重合体である。ここで密度はJIS K-7112に従い測定したものである。 低分子量、低結晶成分を含まないため溶剤抽出成分が少なく、低臭気でかつクリーンなポリエチレン材料であるという観点より、メタロセン触媒から得られるポリエチレン樹脂が好ましい。 たとえば、日本ポリエチレン(株)製のカーネル(登録商標)シリーズの中から、密度が0.920g/cm3以下で融点が110℃以下の樹脂を選んで使用することができる。 密度は好ましくは、0.860g/cm3以上、0.920g/cm3以下であり、さらに好ましくは、0.880g/cm3以上、0.910g/cm3以下である。密度が、0.920を超えると接着樹脂層2cの接着が悪くなり、密度が0.860未満のポリエチレン樹脂の製造は極めて難しい。」 「【0029】 (2)接着樹脂層2c 本発明の紙基材シート2は、上記の紙基材層2aと表面樹脂層2bの二層の間に少なくとも接着樹脂層2cを加えた三層以上の構成とすることが必要である。 その場合に中間の樹脂層2cに用いる樹脂組成物としては、 (C)ポリプロピレン樹脂又は融点が100℃以上のポリエチレン樹脂を55重量%以上95重量%以下及び (D)密度が0.920g/cm3以下、かつ融点が110℃未満のポリエチレン樹脂5重量%以上45重量%以下を含有してなることを特徴とする。 【0030】 (C)成分 (C)成分は、(A)成分と同様のポリプロピレン樹脂又は融点が100℃以上のポリエチレン樹脂である。ただし、(C)成分として好ましいのは、紙基材層(2a)と表面樹脂層(2b)の接着性向上の観点から融点が100℃以上のポリエチレン樹脂である。好ましくはメタロセン触媒から得られる直鎖状ポリエチレン低密度ポリエチレンが良い。かかるポリエチレン樹脂としては日本ポリエチレン製ハーモレックスシリーズが例として挙げられる。 【0031】 (D)成分 (D)成分は、(B)成分と同様のポリエチレン樹脂である。 【0032】 樹脂層2c中における(C)成分及び(D)成分の混合割合は、(C)、(D)の合計量100重量%に対して、(C)55~95重量%及び(D)45~5重量%、好ましくは(C)65~95重量%及び(D)35~5重量%、さらに好ましくは(C)75~95重量%及び(D)25~5重量%である。 成分(C)の混合割合が55重量%未満であると成形性が劣りドローレゾナンスを生じるため安定した成形を行うことができない。一方、成分(C)の混合割合が95重量%を超えると、紙基材層2aへの接着強度が損なわれる。」 「【0044】 2.使用材料 使用材料 (1)紙基材シートの材料 紙基材:35gの純白紙 樹脂a:ポリプロピレン樹脂「サンアロマー社製 商品名PH943B」 樹脂b:ポリエチレン樹脂「日本ポリケム社製 ノバテックLC607K」 樹脂c:ポリエチレン樹脂「日本ポリエチレン社製 カーネルKS340T」 樹脂d:ポリエチレン樹脂「日本ポリエチレン社製 商品名NH745N」 樹脂e:ポリエチレン樹脂「日本ポリエチレン社製 カーネルKF360T」 樹脂a~eの物性については表1にまとめた。 【0045】 【表1】 [図:0001418204000001.jpg] 」 「【0057】 【表2】 [図:0001418204000002.jpg] 【0058】 実施例1~4より明らかなように、本発明の紙基材層、接着樹脂層、表面樹脂層からなる紙基材シートは、紙基材と接着樹脂層の接着性も良い。また本発明から得られるクリアパックは、紙基材シートと透明フィルムとのヒートシール性に優れ、かつ、耐カール性、耐油性に優れていることがわかる。 実施例5、6では、表面層樹脂としてポリプロピレンを含んでいないため、耐熱性、ピンホール性低下により耐油性試験時に油漏れが生じているが、実用的には問題ない。 実施例7では、接着樹脂層としてポリプロピレン樹脂と密度0.920以下のポリエチレン樹脂の組成物を用いると、紙との接着強度は少々劣るもののその他の実施例と同等の性能を示すことがわかる。 一方、比較例1では、密度0.920以下のポリエチレン樹脂の含有量が多いことにより、接着樹脂層に含まれる組成物の成形性が著しく低下したため、ドローレゾナンスが生じた。 比較例2、3では、接着樹脂層に密度0.920以下のポリエチレン樹脂を用いないことにより、紙基材層との接着強度が損なわれ、かつ、クリアパックのカールも著しく生じ、紙基材層とOPPフィルムとのシール強度も損なわれていることがわかる。 比較例4では、接着層樹脂と表面層樹脂がポリプロピレン樹脂であることにより、紙基材層との接着強度が損なわれ、OPPフィルムとのシール強度も損なわれていることがわかる。」 以上より甲2には、特に段落【0057】の【表2】の比較例2により、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 「二軸延伸ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせ、3つの端部をヒートシールしてハーフクリアパックを形成するための紙基材シートであって、紙基材層、接着樹脂層及び表面樹脂層がこの順に積層された積層構造を有し、前記接着樹脂層は、樹脂成分として日本ポリエチレン社製のNH745N(商品名)のみを含有する樹脂組成物から構成され、前記表面樹脂層は、サンアロマー社製PH943B(商品名)80重量%及び日本ポリエチレン社製のカーネル(登録商標)KF360T(商品名)20重量%を混合した樹脂組成物から構成されたことを特徴とする紙基材シート。」 イ 甲3について 甲3には、【請求項1】、【0019】~【0023】、【0026】~【0030】、【0041】~【0042】、【0051】、【図1】及び【図2】、特に段落【0051】の【表2】の比較例2により、以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。 「二軸延伸ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせ、3つの端部をヒートシールしてハーフクリアパックを形成するための紙基材シートであって、紙基材層、接着樹脂層及び表面樹脂層がこの順に積層された積層構造を有し、前記接着樹脂層は、樹脂成分として日本ポリエチレン社製のNH745N(商品名)のみを含有する樹脂組成物から構成され、前記表面樹脂層は、サンアロマー社製PH943B(商品名)10重量%及び日本ポリエチレン社製のNH745N(商品名)90重量%を混合した樹脂組成物から構成されたことを特徴とする紙基材シート。」 (2)甲2を主引用例とする新規性及び進歩性(取消理由1及び2)について ア 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と、引用発明2とを対比する。 引用発明2の「二軸延伸ポリプロピレン系フィルム」、「3つの端部(3辺)」、「ハーフクリアパック」、「紙基材シート」、「紙基材層」、「接着樹脂層」及び「表面樹脂層」はそれぞれ、本件発明1の「ポリプロピレン系フィルム」、「周縁部」、「包装袋」、「包装用積層体」、「紙基材」、「第一樹脂層」及び「第二樹脂層」に相当する。 したがって、本件発明1と引用発明2とは、 「ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせ、周縁部をヒートシールして包装袋を形成するための包装用積層体であって、紙基材、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造を有する包装用積層体。」 で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1が、「第一樹脂層は樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有する樹脂組成物から構成され」ているのに対して、引用発明2は、接着樹脂層は、樹脂成分として日本ポリエチレン社製のNH745N(商品名)のみを含有する樹脂組成物から構成されている点。 <相違点2> 本件発明1が、「前記第二樹脂層は、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体のみを含有する樹脂組成物、または、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有し、かつ、前記プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有する樹脂組成物から構成され」ているのに対して、引用発明2は、表面樹脂層は、サンアロマー社製PH943B(商品名)80重量%及び日本ポリエチレン社製のカーネル(登録商標)KF360T(商品名)20重量%を混合した樹脂組成物から構成されている点。 (イ) 判断 事案に鑑み<相違点2>から判断する。 <相違点2について> サンアロマー社製PH943B(商品名)については、本件特許でプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体として、実施例で使用している商品である(本件特許公報の段落【0028】~【0031】)。すなわち、引用発明2のサンアロマー社製PH943B(商品名)は、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体にほかならない。 一方で日本ポリエチレン社製のカーネル(登録商標)KF360T(商品名)は、甲2の【0045】の【表1】に示されているとおり、密度0.898g/cm3のポリエチレン樹脂であり、超低密度ポリエチレンである。したがって、相違点2は実質的な相違点である。 そして、当該日本ポリエチレン社製のカーネル(登録商標)KF360T(商品名)は、【0057】の【表2】において、「(B)成分」として選択されているものであるが、当該「(B)成分」については、【0025】に「本発明の(B)成分として用いる密度が0.920g/cm3以下でかつ融点が110℃未満のポリエチレン樹脂とは、ポリエチレン樹脂の中でも、いわゆる超低密度ポリエチレン又はポリエチレンエラストマーと呼ばれる領域の、融点が極めて低い特殊なグレードに属するポリエチレン樹脂であり、好ましくはエチレン・α―オレフィン共重合体である。ここで密度はJIS K-7112に従い測定したものである。」及び「密度は好ましくは、0.860g/cm3以上、0.920g/cm3以下であり、さらに好ましくは、0.880g/cm3以上、0.910g/cm3以下である。密度が、0.920を超えると接着樹脂層2cの接着が悪くなり、密度が0.860未満のポリエチレン樹脂の製造は極めて難しい。」と記載されているものである。すなわち、引用発明2の「表面樹脂層」を構成する成分((B)成分)として、超低密度ポリエチレンである「日本ポリエチレン社製のカーネル(登録商標)KF360T(商品名)」に替えて、直鎖状低密度ポリエチレンを選択することは、たとえ当業者といえども想到することはない。 したがって、引用発明2に基づいて、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (ウ) 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2ではない。 また、本件発明1は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、直接あるいは間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明であるから、上記に示したことと同様に、引用発明2ではなく、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲3を主引用例とする新規性及び進歩性(取消理由1及び2)について ア 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と、引用発明3とを対比する。 引用発明3の「二軸延伸ポリプロピレン系フィルム」、「3つの端部(3辺)」、「ハーフクリアパック」、「紙基材シート」、「紙基材層」、「接着樹脂層」及び「表面樹脂層」はそれぞれ、本件発明1の「ポリプロピレン系フィルム」、「周縁部」、「包装袋」、「包装用積層体」、「紙基材」、「第一樹脂層」及び「第二樹脂層」に相当する。 したがって、本件発明1と引用発明3とは、 「ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせ、周縁部をヒートシールして包装袋を形成するための包装用積層体であって、紙基材、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造を有する包装用積層体。」 で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1’> 本件発明1が、「第一樹脂層は樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有する樹脂組成物から構成され」ているのに対して、引用発明3は、接着樹脂層は、樹脂成分として日本ポリエチレン社製のNH745N(商品名)のみを含有する樹脂組成物から構成されている点。 <相違点3> 本件発明1が、「前記第二樹脂層は、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体のみを含有する樹脂組成物、または、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有し、かつ、前記プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有する樹脂組成物から構成され」ているのに対して、引用発明3は、表面樹脂層は、サンアロマー社製PH943B(商品名)10重量%及び日本ポリエチレン社製のNH745N(商品名)90重量%を混合した樹脂組成物から構成されている点。 (イ) 判断 事案に鑑み<相違点3>から判断する。 <相違点3について> サンアロマー社製PH943B(商品名)については、本件特許でプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体として、実施例で使用している商品である(本件特許公報の段落【0028】~【0031】)。すなわち、引用発明3のサンアロマー社製PH943B(商品名)は、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体にほかならない。そして、日本ポリエチレン社製のNH745N(商品名)は、甲3の【0042】の【表1】に示されているとおり、密度0.913g/cm3のポリエチレン樹脂であり、直鎖状低密度ポリエチレンである。 一方で、引用発明3のプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体はその比率が10重量%であり、本件発明1の70重量%以上とは相違するものである。したがって、相違点3は実質的な相違点である。 そして、当該サンアロマー社製PH943B(商品名)と、日本ポリエチレン社製のNH745N(商品名)、との比率については、甲3の【0021】~【0025】の記載を参照しても、変更を行う理由を見出すことはできない。さらにプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体(サンアロマー社製PH943B(商品名))の比率は、本件発明1が70重量%以上であるのに対し、引用発明3が10重量%であり、両者には大きな差異があり、引用発明3を知る当業者が、本件発明1の数値範囲に想到することはない。 したがって、引用発明3に基づいて、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (ウ) 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明3ではない。 また、本件発明1は、引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、直接あるいは間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明であるから、上記に示したことと同様に、引用発明3ではなく、引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について 1 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった申立理由の概要 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった申立理由の概要は次のとおりである。 申立理由3(新規性) 本件特許の請求項1~3に係る発明は、以下の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 申立理由4(進歩性) 本件特許の請求項1~3に係る発明は、以下の甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証:特開2004-130729号公報(申立人が示した甲第1号証) 甲第1号証を「甲1」という。 申立理由5(サポート要件) 第一樹脂層の樹脂組成物として「直鎖状低密度ポリエチレンのみ」を使用することが特定されている、本件特許の請求項1に係る発明の「包装用積層体」が、本件明細書の実施例において示されているシール伸度の向上効果を奏するものであると合理的に認識することはできない。「直鎖状低密度ポリエチレンのみ」に対応するものとして使用されているものは「NH645A」(日本ポリエチレン社製LLDPE)という製品名の樹脂であるが、当該「NH645A」は「直鎖状低密度ポリエチレンのみ」には該当しない蓋然性が高い。 よって、本件特許の請求項1~3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 当審の判断 (1)甲1の記載及び引用発明 甲1には、【請求項1】、【0035】~【0037】、【0040】、【0044】、【0068】の【表1】、特に【0068】の【表1】の実施例5により、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「包装の形態として三方シール袋を形成する積層体であって、基材、エチレン系樹脂からなるフィルム材(A)、プロピレン系樹脂からなるフィルム材(B)、基材がこの順に積層された積層構造を有し、前記エチレン系樹脂からなるフィルム材(A)が密度0.913g/cm3のエチレン・1-ヘキセン共重合体100重量部から構成され、前記プロピレン系樹脂からなるフィルム材(B)がプロピレン・エチレン共重合体100重量部から構成された積層体」 (2)甲1を主引用例とする新規性及び進歩性(申立理由3及び4)について ア 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と、引用発明1とを対比する。 引用発明1の「積層体」は、本件発明1の「包装用積層体」に相当するから、引用発明1の「包装の形態として三方シール袋を形成する積層体」は、本件発明1の「ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせ、周縁部をヒートシールして包装袋を形成するための包装用積層体」と、「周縁部をヒートシールして包装袋を形成するための包装用積層体」の限りにおいて一致する。 本件発明1の「第一樹脂層」は「直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有する樹脂組成物から構成され」ているものであり、「第二樹脂層」は「プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体のみ含有」または「プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有」するものであるから、引用発明1の「エチレン系樹脂からなるフィルム材(A)」及び「プロピレン系樹脂からなるフィルム材(B)」は、本件発明1の「第一樹脂層」及び「第二樹脂層」に相当する。そして、引用発明1の「基材」は、本件発明1の「紙基材」と、「基材」である限りにおいて一致するから、引用発明1の「基材、エチレン系樹脂からなるフィルム材(A)、プロピレン系樹脂からなるフィルム材(B)、基材がこの順に積層された積層構造を有し、」は、本件発明1の「紙基材、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造を有し、」と、「基材、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造を有し、」である限りにおいて一致する。 したがって、本件発明1と引用発明1とは、 「周縁部をヒートシールして包装袋を形成するための包装用積層体であって、基材、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造を有する包装用積層体。」 で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4> 「周縁部をヒートシールして包装袋を形成するための包装用積層体であって、基材、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造を有する」ことについて、本件発明1が、「ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせ、周縁部をヒートシールして包装袋を形成するための包装用積層体であって、紙基材、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造を有し」ているのに対して、引用発明1は、「基材、エチレン系樹脂からなるフィルム材(A)、プロピレン系樹脂からなるフィルム材(B)、基材がこの順に積層された積層構造を有し」ている点。 <相違点5> 本件発明1が、「第一樹脂層は、樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有する樹脂組成物から構成され」ているのに対して、引用発明1は、「エチレン系樹脂からなるフィルム材(A)」は、「密度0.913g/cm3のエチレン・1-ヘキセン共重合体100重量部から構成され」ている点。 <相違点6> 本件発明1が、「前記第二樹脂層は、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体のみを含有する樹脂組成物、または、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有し、かつ、前記プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有する樹脂組成物から構成され」ているのに対して、引用発明1は、「プロピレン系樹脂からなるフィルム材(B)」は、「プロピレン・エチレン共重合体100重量部から構成され」ている点。 (イ) 判断 <相違点4について> 本件発明1は「ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせ、周縁部をヒートシールして包装袋を形成するための包装用積層体であって、紙基材、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造を有し」ているものであるが、当該構成より判断すると包装袋を形成するに際しての積層構造は、紙基材、第一樹脂層、第二樹脂層、ポリプロピレン系フィルムがこの順に積層されたものであることは明らかである。ここで、引用発明1が「基材、エチレン系樹脂からなるフィルム材(A)、プロピレン系樹脂からなるフィルム材(B)、基材がこの順に積層された積層構造を有し」ているものであり、本件発明1の上記包装袋を形成するに際しての積層構造とは、相違するものであるから、相違点4は実質的な相違点である。 ここで、甲1の【0035】には、「積層体を構成する基材層としては、紙、アルミニウム箔、セロファン、織布、不織布、高分子重合体のフィルム、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチルペンテン-1等のオレフィン重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のビニル共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート等のフィルムを挙げることができる。」と記載されており、基材として「紙」(本件発明1の「紙基材」に相当)及び「ポリプロピレンのフィルム」(同「ポリプロピレン系フィルム」に相当)が例示されているが、多くの素材を並列に列挙されているにすぎないものである。そうすると、「基材、エチレン系樹脂からなるフィルム材(A)、プロピレン系樹脂からなるフィルム材(B)、基材がこの順に積層された積層構造を有し」するものにおいて、【0035】の記載を参酌したとしても、1番目の「基材」として「紙」を選択し、4番目の「基材」として「ポリプロピレンのフィルム」を選択することは、たとえ当業者といえども容易に想到することはない。 なお、本件特許の【0005】には、「ところで、上記構成の包装袋においては、ポリプロピレン系フィルム31と紙基材30とがシーラント層32を介して強固に接着している。」と、【0006】には、「包装袋のシール部34の内縁に沿ってシーラント層32が破断し、さらにシール部34において紙基材30の表面近くで凝集剥離が生じてポリプロピレン系フィルム31が紙基材30から剥離する。このとき、ポリプロピレン系フィルム31側には、シール部34のシーラント層34及び一部の紙基材30が付着した状態となる。」と、さらに【0007】には、「本発明においては、包装袋のポリプロピレン系フィルムと、紙基材との間に引張力が作用しても、収容物が包装袋から落ちる危険性を抑制可能な包装袋及びこれに用いる包装用積層体を提供することを目的とする。」と記載されており、包装袋を形成するに際しての積層構造における「紙基材」及び「ポリプロピレン系フィルム」が、本件発明1において必須の構成であることが明らかである。そして、本件発明1において、「ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせ、周縁部をヒートシールして包装袋を形成するための包装用積層体であって、紙基材、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造を有」することが、格別の効果を奏するものである。 (ウ) 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1ではない。 また、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、直接あるいは間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明であるから、上記に示したことと同様に、引用発明1ではなく、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立理由5(サポート要件)について ア サポート要件についての検討 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下検討する。 本件発明の解決しようとする課題は、「包装袋のポリプロピレン系フィルムと、紙基材との間に引張力が作用しても、収容物が包装袋から落ちる危険性を抑制可能な包装袋及びこれに用いる包装用積層体を提供すること」【0007】である。 そして、発明の詳細な説明の記載によると、「ポリプロピレンランダムコポリマーは、柔軟性及び靭性に優れるという特性を備えており、このような特性を備えた第二樹脂層と、密着性及びヒートシール性に優れた第一樹脂層とを積層することにより、引張力が作用しても破断することなく、伸びながら紙基材から剥離可能なシーラント層を得ることができる。」(【0019】)と記載されており、第一樹脂層の樹脂として直鎖状低密度ポリエチレンである「NH645A」(商品名)(日本ポリエチレン社製LLDPE)を100%、第二樹脂層の樹脂としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体である「PH943B」(商品名)(サンアロマー社製ポリプロピレンランダムコポリマー)を100%含有する「No.1」並びに、第一樹脂層の樹脂として直鎖状低密度ポリエチレンである「NH645A」(商品名)(日本ポリエチレン社製LLDPE)を100%、第二樹脂層の樹脂としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体である「PH943B」(商品名)(サンアロマー社製ポリプロピレンランダムコポリマー)を80%と直鎖状低密度ポリエチレンである「SP1540」(商品名)(プライムポリマー社製LLDPE)、「SP1520」(商品名)(プライムポリマー社製LLDPE)又は「SP0540」(商品名)(プライムポリマー社製LLDPE)を20%含有する「No.6」、「No.7」又は「No.9」が、MD方向の高いシール伸度を有する旨説明されている(【0025】~【0034】)。 そうすると、「前記第一樹脂層は、樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有する樹脂組成物から構成され」ること及び、「前記第二樹脂層は、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体のみを含有する樹脂組成物、または、樹脂成分としてプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有し、かつ、前記プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を樹脂組成物全体の70重量%以上含有する樹脂組成物から構成され」ることを規定する本件発明によって、上記の発明が解決しようとする課題を解決することができると認識できるものである。すなわち、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 イ 申立人の主張について 申立人は、直鎖状低密度ポリエチレンである「NH645A」(商品名)(日本ポリエチレン社製LLDPE)は、低密度に区分される密度(911~925kg/m3)のポリエチレンのみならず、低密度に区分されない密度のポリエチレンをも含有している蓋然性が高いとし、「NH645A」(商品名)(日本ポリエチレン社製LLDPE)が、本件特許の請求項1に係る発明の「樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有する樹脂組成物」には該当しない旨、主張している。 しかしながら、「NH645A」(商品名)(日本ポリエチレン社製LLDPE)が、低密度に区分されない密度のポリエチレンをも含有している蓋然性が高いとしても、上記「ポリプロピレンランダムコポリマーは、柔軟性及び靭性に優れるという特性を備えており、このような特性を備えた第二樹脂層と、密着性及びヒートシール性に優れた第一樹脂層とを積層することにより、引張力が作用しても破断することなく、伸びながら紙基材から剥離可能なシーラント層を得ることができる。」(【0019】)ことを前提として、LLDPEとして上市される「NH645A」(商品名)(日本ポリエチレン社製LLDPE)を使用して試験を行い、MD方向の高いシール伸度を有する結果となった(【0025】~【0034】)こと自体は否定することはできない。そして、当該【0019】及び実施例の結果を検討したとき、「NH645A」(商品名)(日本ポリエチレン社製LLDPE)に主に含有されると認められる「LLDPE」により、当該作用効果を奏することとなったとするのは当業者であれば妥当な判断といえる。他方で、「NH645A」(商品名)(日本ポリエチレン社製LLDPE)に含有されている蓋然性が高いとされる低密度に区分されない密度のポリエチレンが何らかの作用を及ぼすことを見出すことができているものでもない。すなわち、直鎖状低密度ポリエチレンである「NH645A」(商品名)(日本ポリエチレン社製LLDPE)が、低密度に区分される密度(911~925kg/m3)のポリエチレンのみならず、低密度に区分されない密度のポリエチレンをも含有している蓋然性が高いとしても、【0025】~【0034】の実施例において、実質的に「前記第一樹脂層は、樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレンのみを含有する樹脂組成物から構成され」る「包装用積層体」の作用効果が示されていないとはいえず、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないとすることはできない。よって、申立人の主張は、採用することはできない。 以上より、サポート要件に係る申立理由には理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1~3に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700761

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    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B、537・B32B
  • 2025-700885異議申立 / 2026-06-09 / 訂正認容金属調加飾シート及びこれを備える金属調加飾成形体
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B、537・B32B
  • 2025-700024異議申立 / 2026-05-21 / 訂正認容化粧シート、化粧材及び樹脂組成物
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B、537・B32B
  • 2024-700754異議申立 / 2026-04-28 / 訂正認容ヒートシール性積層体、包装材料用積層体、および包装材料
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B、537・B32B

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