特許異議申立
2023-700746
業務活動分析装置、業務活動分析方法、及びプログラム。
- 審判番号
- 2023-700746
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-080298
- 登録番号
- 7209766
- 請求日
- 2023年07月18日
- 審決日
- 2024年03月26日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社イトーキ
- 【権利者代理人】樋口 盛之助
- 【異議申立人】中野 雅房
- 審判長/審判官
- 審判長 伏本 正典
- 審判官 松尾 俊介
- 審判官 梶尾 誠哉
- 分類
- P1652.113-Y (G06Q) / P1652.121-Y (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第44条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7209766号発明「業務活動分析装置、業務活動分析方法、及びプログラム。」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7209766号の請求項1、9及び10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7209766号(以下、「本件特許」という。)の請求項1、9及び10に係る特許についての出願は、平成28年11月4日に出願された特願2016-216041の一部を、令和3年5月11日に特許法第44条1項の規定に基づき分割して新たな出願としたものであって、令和5年1月12日に特許権の設定登録がされ、令和5年1月20日に特許掲載公報が発行された。
そして、本件特許の請求項1、9及び10に係る特許に対して、令和5年7月18日に特許異議申立人 中野雅房(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯は、次のとおりである。
令和5年10月 4日付け:取消理由通知書
令和5年12月 4日 :特許権者による意見書の提出
令和5年12月25日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年 2月15日 :特許権者による意見書の提出
令和6年 3月14日 :申立人による上申書の提出
第2 本件特許の請求項1、9及び10に係る発明
本件特許の請求項1、9及び10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明9」及び「本件発明10」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、9及び10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
【請求項1】
業務における従業員及び/又は組織の活動を分析する業務活動分析装置であって、
分析の対象となる情報を少なくとも二以上収集する収集手段と、
少なくとも二以上の前記情報に基づく分析結果である指標情報を少なくとも二以上生成する一次分析手段と、
少なくとも二以上の前記指標情報に基づく分析結果である分析結果情報を生成する二次分析手段と、
を備え、
前記収集手段が、
前記従業員及び/又は組織の業務内容にもとづく業務情報を収集する業務情報収集手段と、
前記従業員及び/又は組織が業務に使用する設備に設けたセンシング装置から前記設備に関する情報及び/又は前記設備の利用者に関する情報を収集する設備情報収集手段と、
前記従業員が所持する個人情報取得装置から前記従業員に関する情報を収集する個人情報収集手段と、
の少なくとも一又は二以上を備え、
一の前記分析結果情報を生成するために用いた前記指標情報が、他の前記分析結果情報を生成するために用いることができるように構成した
ことを特徴とする、業務活動分析装置。
【請求項9】
コンピュータを用いて業務における従業員及び/又は組織の活動を分析する業務活動分析方法であって、
分析の対象となる情報を少なくとも二以上収集するステップと、
少なくとも二以上の前記情報に基づく分析結果である指標情報を少なくとも二以上生成するステップと、
少なくとも二以上の前記指標情報に基づく分析結果である分析結果情報を生成するステップと、
を備え、
前記分析の対象となる情報を少なくとも二以上収集するステップが、
前記従業員及び/又は組織の業務内容にもとづく業務情報を収集するステップと、
前記従業員及び/又は組織が業務に使用する設備に設けたセンシング装置から前記設備に関する情報及び/又は前記設備の利用者に関する情報を収集するステップと、
前記従業員が所持する個人情報取得装置から前記従業員に関する情報を収集するステップと、
の少なくとも一又は二以上を備え、
一の前記分析結果情報を生成するために用いた前記指標情報が、他の前記分析結果情報を生成するために用いることができるように構成した
ことを特徴とする、業務活動分析方法。
【請求項10】
コンピュータに請求項9記載の方法を実行させるプログラム。
第3 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件特許の請求項1、9及び10に係る特許に対して、当審が令和5年12月25日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件発明1、本件発明9及び本件発明10は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項3号に該当するから、本件特許の請求項1、9及び10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)本件発明1、本件発明9及び本件発明10は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1、9及び10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)よって、本件特許の請求項1、9及び10に係る特許は、取り消されるべきものである。
2 引用文献の記載
(1)甲第2号証について
ア 甲第2号証の記載事項
取消理由で通知した甲第2号証(特開2010-217939号公報)には、次のとおりの記載がある(下線は当審において付した。)。
「(前略)・・・
【0011】
本発明の目的は、ホワイトカラー業務の特徴に合致した有効な指標を定義すること、すなわち、ユーザの業務の質を考慮した指標を定義することである。
・・・(中略)・・・
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
本発明における解析システムの位置づけと機能を明らかにするため、まずビジネス顕微鏡システムについて説明する。ここで、ビジネス顕微鏡とは、人間に装着したセンサノードでその人間の状況を観測し、組織アクティビティとして人物間の関係性と現在の組織の像を図示して組織の改善に役立てるためのシステムである。また、センサノードで取得される対面検出・行動・音声等に関するデータを、総称して広く組織ダイナミクスデータと呼ぶ。
【0020】
図1(a)、図1(b)、図1(c)は一つの実施形態であるビジネス顕微鏡システムの構成要素を示す説明図であり、図示の都合上分割して示してあるが、各々図示された各処理は相互に連携して実行される。名札型センサノード(TR)から、基地局(GW)を経由し、組織ダイナミクスデータを格納するセンサネットサーバ(SS)、組織ダイナミクスデータの解析を行なうアプリケーションサーバ(AS)、閲覧者に解析結果を出力するクライアント(CL)までの一連の流れを示す。
【0021】
本システムは、名札型センサノード(TR)、基地局(GW)、組織センサネットサーバ(SS)、アプリケーションサーバ(AS)、クライアント(CL)によって構成されている。
【0022】
図1(a)に示すアプリケーションサーバ(AS)は、センシングデータを解析及び処理する。クライアント(CL)からの依頼を受けて、又は、設定された時刻に自動的に、解析アプリケーションが起動する。解析アプリケーションは、図1(b)に示すセンサネットサーバ(SS)に依頼を送って、必要なセンシングデータを取得する。さらに、解析アプリケーションは、取得したデータを解析し、解析されたデータをクライアント(CL)に返す。あるいは、解析アプリケーションは、解析されたデータをそのまま解析結果テーブル(E)に記録しておいてもよい。
【0023】
解析アプリケーションは、チーム変換処理(CT1)、積極性解析(CS)、集中時間解析(CJ)である。
【0024】
アプリケーションサーバ(AS)は、送受信部(ASSR)、記憶部(ASME)及び制御部(ASCO)を備える。
【0025】
送受信部(ASSR)は、センサネットサーバ(SS)及びクライアント(CL)との間でデータの送信及び受信を行う。具体的には、送受信部(ASSR)は、クライアント(CL)から送られてきたコマンドを受信し、センサネットサーバ(SS)にデータ取得依頼を送信する。さらに、送受信部(ASSR)は、センサネットサーバ(SS)からセンシングデータを受信し、解析したデータをクライアント(CL)に送信する。
【0026】
記憶部(ASME)は、ハードディスク、メモリ又はSDカードのような外部記録装置で構成される。記憶部(ASME)は、解析のための設定条件及び解析したデータを格納する。具体的には、記憶部(ASME)は、時間記録(D)、解析条件(ASMJ)、解析アルゴリズム(ASMA)、解析パラメータ(G)、端末情報-氏名対応表(ASMT)、解析結果テーブル(E)、一般情報テーブル(F)を格納する。
時間記録(D)は、解析を始める時刻、解析済みの時刻などが記録され、ここに記録されている時刻をもとに、解析が行なわれる。
・・・(中略)・・・
【0031】
解析結果テーブル(E)は、チーム変換処理(CT1)、積極性解析(CS)、集中時間解析(CJ)によって、解析されたデータを格納するためのデータベースである。
【0032】
一般情報テーブル(F)は、チーム変換処理(CT1)、積極性解析(CS)、集中時間解析(CJ)を行なう際に、ユーザ名やグループ名を記録しておくテーブルである。
【0033】
制御部(ASCO)は、中央処理部CPU(図示省略)を備え、データの送受信の制御及びセンシングデータの解析を実行する。具体的には、CPU(図示省略)が記憶部(ASME)に格納されたプログラムを実行することによって、通信制御(ASCC)、チーム変換処理(CT1)、積極性解析(CS)、集中時間解析(CJ)が実行される。
【0034】
通信制御(ASCC)は、有線又は無線によるセンサネットサーバ(SS)及びクライアントデータ(CL)との通信のタイミングを制御する。さらに、通信制御(ASCC)は、データの形式変換、及び、データの種類別に行き先の振り分けを実行する。
【0035】
チーム変換処理(CT1)は、積極性解析(CS)や集中時間解析(CJ)から出力した個人の指標からチームの指標に変換する処理である。
【0036】
積極性解析(CS)は、時間記録(D)に記載されている時刻になったら起動し、積極性解析(CS)を実行する。積極性解析(CS)では、1分動作検出処理(CS1A)、対面補完処理(IM)、5分対面検出処理(CS5I)、積極性処理(CSS)、積極性精度向上処理(CSK)、積極性統合処理(CST)を行ない、解析した結果を解析結果テーブル(E)に格納する。さらに、解析済みの時刻を時間記録(D)に記載する。
【0037】
集中時間解析(CJ)は、時間記録(D)に記載されている時刻になったら起動し、集中時間解析(CJ)を実行する。集中時間解析(CJ)では、1分対面検出処理(CJ1M)、対面補完処理(IM)、5分動作検出処理(CJ5A)、集中時間処理(CJJ)、集中時間精度向上処理(CJK)、集中時間統合処理(CJT)を行ない、解析した結果を解析結果テーブル(E)に格納する。さらに、解析済みの時刻を時間記録(D)に記載する。
・・・(中略)・・・
【0039】
図1(a)に示すクライアント(CL)は、クライアントユーザ(US)との接点となって、データを入出力する。クライアント(CL)は、入出力部(CLIO)、送受信部(CLSR)、記憶部(CLME)及び制御部(CLCO)を備える。
・・・(中略)・・・
【0044】
制御部(CLCO)は、CPU(図示省略)を備え、通信の制御、クライアントユーザ(US)からの解析条件の入力、及び、解析結果をクライアントユーザ(US)に提示するための描画等を実行する。具体的には、CPUは、記憶部(CLME)に格納されたプログラムを実行することによって、通信制御(CLCC)、解析条件設定(CLIS)、描画設定(CLTS)、表示(CLDP)の処理を実行する。
・・・(中略)・・・
【0048】
表示(CLDP)は、アプリケーションサーバ(AS)から取得した解析結果を描画設定情報(CLMT)に記載されている形式にもとづいて表示画面を生成する。例えば、描画設定情報(CLMT)には知識創造行動バランス表示(CL2M)等が格納されている。このとき必要であれば、表示(CLDP)は、表示されている人物の氏名等の属性も表示する。作成された表示結果は、ディスプレイ(CLOD)等の出力装置を介してクライアントユーザ(US)に提示される。ドラッグ&ドロップ等の操作によって、クライアントユーザ(US)が表示位置を微調整することもできる。
【0049】
図1(b)に示す基地局(GW)は、図1(c)に示す名札型センサノード(TR)とセンサネットサーバ(SS)を仲介する役目を持つ。無線の到達距離を考慮して、居室・職場等の領域をカバーするように複数の基地局(GW)が配置される。基地局(GW)は、送受信部(GWSR)、記憶部(GWME)、時計(GWCK)及び制御部(GWCO)を備える。
【0050】
送受信部(GWSR)は、名札型センサノード(TR)からの無線信号を受信し、センサネットサーバ(SS)への有線又は無線による送信を行う。さらに、送受信部(GWSR)は、無線を受信するためのアンテナを備える。
・・・(中略)・・・
【0060】
図1(b)に示すセンサネットサーバ(SS)は、全ての名札型センサノード(TR)から集まったデータを管理する。具体的には、センサネットサーバ(SS)は、基地局(GW)から送られてくるデータをデータベースに格納し、また、アプリケーションサーバ(AS)及びクライアント(CL)からの要求に基づいてセンシングデータを送信する。さらに、センサネットサーバ(SS)は、基地局(GW)からの制御コマンドを受信し、その制御コマンドから得られた結果を基地局(GW)に返信する。
【0061】
センサネットサーバ(SS)は、送受信部(SSSR)、記憶部(SSME)及び制御部(SSCO)を備える。時刻同期管理(GWCD)がセンサネットサーバ(SS)で実行される場合、センサネットサーバ(SS)は時計も必要とする。
・・・(中略)・・・
【0063】
記憶部(SSME)は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置によって構成され、少なくとも、パフォーマンステーブル(BB)、データ形式情報(SSMF)、データテーブル(BA)及び端末管理テーブル(SSTT)を格納する。さらに、記憶部(SSME)は、制御部(SSCO)のCPU(図示省略)によって実行されるプログラムを格納してもよい。更に、記憶部(SSME)には、端末ファームウェア登録部(TFI)において格納された名札型センサノードの更新された端末ファームウェア(SSMW)を一時的に格納する。
【0064】
パフォーマンステーブル(BB)は、名札型センサノード(TR)から又は既存のデータから入力された、組織や個人に関する評価(パフォーマンス)を、時刻データと共に記録するためのデータベースである。パフォーマンステーブル(BB)は、図2(a)のパフォーマンステーブル(BB)と同じものである。
・・・(中略)・・・
【0066】
データテーブル(BA)は、各名札型センサノード(TR)が取得したセンシングデータ、名札型センサノード(TR)の情報、及び、各名札型センサノード(TR)から送信されたセンシングデータが通過した基地局(GW)の情報等を記録しておくためのデータベースである。加速度、温度等、データの要素ごとにカラムが作成され、データが管理される。また、データの要素ごとにテーブルが作成されてもよい。どちらの場合にも、全てのデータは、取得された名札型センサノード(TR)のIDである端末情報(TRMT)と、取得された時刻に関する情報とが関連付けて管理される。
・・・(中略)・・・
【0068】
制御部(SSCO)は、中央処理部CPU(図示省略)を備え、センシングデータの送受信やデータベースへの記録・取り出しを制御する。具体的には、CPUが記憶部(SSME)に格納されたプログラムを実行することによって、通信制御(SSCC)、端末管理情報修正(SSTF)及びデータ管理(SSDA)等の処理を実行する。
・・・(中略)・・・
【0071】
データ管理(SSDA)は、記憶部(SSME)内のデータの修正・取得及び追加を管理する。例えば、データ管理(SSDA)によって、センシングデータは、タグ情報に基づいてデータの要素別にデータベースの適切なカラムに記録される。センシングデータがデータベースから読み出される際にも、時刻情報及び端末情報に基づいて必要なデータを選別し、時刻順に並べ替える等の処理が行われる。
【0072】
センサネットサーバ(SS)が、基地局(GW)を介して受け取ったデータを、データ管理(SSDA)によってパフォーマンステーブル(BB)及びデータテーブル(BA)に整理して記録することが、図2(a)における組織ダイナミクスデータ収集(B)に相当する。
【0073】
パフォーマンス入力(C)は、パフォーマンスを示す値を入力する処理である。ここで、パフォーマンスとは、何らかの基準に基づいて判定される主観的又は客観的な評価である。例えば、所定のタイミングで、名札型センサノード(TR)を装着した人物は、その時点における業務の達成度、組織に対する貢献度及び満足度等、何らかの基準に基づく主観的な評価(パフォーマンス)の値を入力する。所定のタイミングとは、例えば、数時間に一度、一日に一度、又は、会議等のイベントが終了した時点であってもよい。名札型センサノード(TR)を装着した人物は、その名札型センサノード(TR)を操作して、又は、クライアント(CL)のようなパーソナルコンピュータ(PC)を操作して、パフォーマンスの値を入力することができる。あるいは、手書きで記入された値が後にまとめてPCで入力されてもよい。本実施の形態では、図2に示すような名札型センサノードからレイティングとして人(SOCIAL)、行(INTELLECTUAL)、心(SPIRITUAL)、体(PHYSICAL)、知(EXECUTIVE)のパフォーマンスを入力できる例を示している。入力されたパフォーマンス値は、解析処理に用いられる。それぞれの問いの意味は、人は「豊かな人間関係(協力・共感)をつくれましたか」、行は「やるべきことを実行できましたか」、心は「仕事にやりがい、充実を感じましたか」、体は「体に配慮(休養・栄養・運動)できましたか」、知「新しい知(気づき、知識)を得ましたか」である。
【0074】
組織に関するパフォーマンスは、個人のパフォーマンスから算出されてもよい。売上高又はコスト等の客観的なデータ、及び、顧客のアンケート結果等の既に数値化されているデータが、パフォーマンスとして定期的に入力されてもよい。生産管理等におけるエラー発生率等のように、自動で数値が得られる場合、得られた数値が自動的にパフォーマンスの値として入力されてもよい。さらに、国民総生産(GNP)などの経済指標を入力してもかまわない。パフォーマンス入力部から入力されたパフォーマンスは、パフォーマンステーブルに格納される。
【0075】
図1(c)は、センサノードの一実施例である名札型センサノード(TR)の構成を示しており、名札型センサノード(TR)は人間の対面状況を検出するための複数の赤外線送受信部(AB)、装着者の動作を検出するための三軸加速度センサ(AC)、装着者の発話と周囲の音を検出するためのマイク(AD)、名札型センサノードの裏表検知のための照度センサ(LS1F、LS1B)、温度センサ(AE)の各種センサを搭載する。搭載するセンサは一例であり、装着者の対面状況と動作を検出するために他のセンサを使用してもよい。
・・・(中略)・・・
【0079】
センサによって検出したセンサデータ(SENSD)はセンサデータ格納制御部(SDCNT)によって、記憶部(STRG)に格納される。センサデータ(SENSD)は通信制御部(TRCC)によって送信パケットに加工され、送受信部(TRSR)によって基地局(GW)に対し送信される。
・・・(中略)・・・
【0101】
図2(a)、図2(b)、図2(c)、図2(d)、図2(e)は、一つの実施形態であるビジネス顕微鏡システムにおいて実行される処理の全体の流れを示しており、図示の都合上分割して示してあるが、各々図示された各処理は相互に連携して実行される。複数の名札型センサノード(TRA、TRB、~、TRI、TRJ)による組織ダイナミクスデータの取得(A)から、センサデータの解析である積極性解析(CS)と集中時間解析(CJ)を行ない、その解析結果を知識創造行動バランス表示(CL2M)にて可視化を行ない、可視化結果は知識創造行動バランス(HA)として表示されるという、一連の流れを示している。
・・・(中略)・・・
【0105】
加速度センサ(AC)は、名札型センサノードA(TRA)の加速度(すなわち、名札型センサノードA(TRA)を装着している人物A(図示省略)の加速度)を検出する。赤外線送受信器(AB)は、名札型センサノードA(TRA)の対面状態(すなわち、名札型センサノードA(TRA)が他の名札型センサノードと対面している状態)を検出する。なお、名札型センサノードA(TRA)が他の名札型センサノードと対面していることは、名札型センサノードA(TRA)を装着した人物Aが、他の名札型センサノードを装着した人物と対面していることを示す。マイク(AD)は、名札型センサノードA(TRA)の周囲の音、温度センサ(AE)は、名札型センサノードA(TRA)の周囲の温度を検出する。
・・・(中略)・・・
【0109】
各名札型センサノードは、常時(又は短い間隔で繰り返し)センサ類によるセンシングを実行する。そして、各名札型センサノードは、取得したデータ(センシングデータ)を、所定の間隔で無線によって送信する。データを送信する間隔は、センシング間隔と同じであってもよいし、センシング間隔より大きい間隔であってもよい。このとき送信されるデータには、センシングした時刻と、センシングした名札型センサノードの固有の識別子(ID)が付与される。データの無線送信をまとめて実行するのは、送信による電力消費を抑えることによって、人が装着したままで、名札型センサノード(TR)の使用可能状態を長時間維持するためである。また、全ての名札型センサノードにおいて同一のセンシング間隔が設定されていることが、後の解析のためには望ましい。
無線によって各名札型センサノードから送信されたデータは、組織ダイナミクスデータ収集(B)において収集され、データベースに格納される。データテーブル(BA)は名札型センサノードから得られたセンサデータを格納する。
【0110】
ユーザID(BAA)はユーザの識別子、取得時間(BAB)は名札型センサノード(TR)が受信した時刻、基地局(BAC)は名札型センサノード(TR)と通信を行った基地局、加速度センサ(BAD)は加速度センサ(AC)のセンサデータ、IRセンサ(BAE)は赤外線送受信器(AB)のセンサデータ、音センサ(BAF)はマイク(AD)のセンサデータ、温度(BAG)は温度センサ(AE)のセンサデータ、気づき(BAH)は気づき(AFB)ボタンの押下の有無、感謝(BAI)は感謝(AFC)ボタンの押下の有無、正味(BAJ)は正味(AFA)ボタンの押下の有無を示している。
・・・(中略)・・・
【0114】
積極性解析(CS)はユーザの積極的な活動の解析を行う。組織ダイナミクスデータ収集(B)のデータテーブル(BA)を入力とし、センサデータから対面時の積極的な行動の指標を求める解析を行う。積極性解析(CS)の処理全体の流れを図2(b)、図2(c)を用いて説明する。
【0115】
データテーブル(BA)に格納されているセンサデータから対面に関する特徴量を求める処理として、5分対面検出処理(CS5I)と動作に関する特徴量を求める処理として1分動作検出処理(CS1A)を行う。
【0116】
5分対面検出処理(CS5I)について説明する。対面検出の入力はデータテーブル(BA)のIRセンサ(BAE)である。ユーザ毎に誰と対面したのかを検出する。検出する際には、指定した時刻の区間毎に求めることが望ましく、5分対面検出処理(CS5I)では分析幅を5分間として指定している。
・・・(中略)・・・
【0123】
次に、1分動作検出処理(CS1A)について説明する。動作検出の入力はデータテーブル(BA)の加速度センサ(BAD)である。ユーザ毎に動作リズムを検出する。検出する際には、指定した時刻の区間毎に求めることが望ましく、1分動作検出処理(CS1A)では分析幅を1分間として指定している。動作リズムとは、加速度センサ(BAD)から動きの周波数を求めたものである。対面中には積極的な場合と消極的な場合があり、それを区別して検出する必要がある。そこで、本実施形態では、5分対面検出処理(CS5I)の分析幅より短い1分間を選択している。なお、対面中の積極、消極を区別して検出することができれば、他の分析幅を用いてもよい。
【0124】
抽出した結果を解析結果テーブル(E)の1分間毎の動作テーブル(EA1A)に格納する。ユーザを1レコードとして、1分間区切りで、時系列順に24時間分の特徴量を代入する。
・・・(中略)・・・
【0126】
次に、積極性処理(CSS)について説明する。積極性処理(CSS)は対面時の積極性を判定する処理である。入力は1日における修正後の5分間毎の対面テーブル(EA5IM)と1分間毎の動作テーブル(EA1A)である。ユーザ毎に時系列に並べて、同時刻の対面と動作を比較することにより求める。具体的には、対面している場合の動作の特徴量である動作リズムから対面時の積極性を判定する。
・・・(中略)・・・
【0135】
このように、対面中の積極的な行動の割合を算出し、一部の積極的な行動の割合に基づいて対面積極度を求めることにより、日常的な行動バランスの性質を知ることが可能となる。
【0136】
ユーザID0001の人物について具体的に説明すると、中間のグループ(CSK1I)の平均値(CSK2F)を求める。(CSK2)は対面アクティブ度をまとめたテーブルである。ユーザID(CSK2A)はユーザのID、積極性(CSK2B)は積極性の指標、対面アクティブ(CSK2C)は対面アクティブ度の指標、有効日数(CSK2D)は分析に用いた日数、全日数(CSK2E)はデータを取得した日数である。
・・・(中略)・・・
【0138】
積極性統合処理(CST)は、全ユーザの(CSK2)をまとめる処理であり、積極性テーブル(EAB)は積極性統合処理の結果を示し、解析結果テーブル(E)に格納される。ユーザID(EAA)はユーザのID、積極性(EAB)は積極性の指標、対面アクティブ(EABA)は対面アクティブ度の指標、有効日数(EABB)は分析に用いた日数、全日数(EABC)はデータを取得した日数である。この積極性テーブル(EAB)に全ユーザ分を記入後に、積極性解析(CS)が終了する。
【0139】
次に、図2(a)に示す集中時間解析(CJ)について説明する。集中時間解析(CJ)は、ユーザに集中して作業を行っているか否かを判定する。組織ダイナミクスデータ収集(B)のデータテーブル(BA)を入力とし、センサデータから集中している行動の指標を求める解析を行う。集中時間解析(CJ)の処理全体の流れを示したものが図2(d)、図2(e)である。
【0140】
データテーブル(BA)に格納されているセンサデータから対面に関する特徴量を求める処理として1分対面検出処理(CS1I)と動作に関する特徴量を求める処理として5分動作検出処理(CS5A)を実行する。
【0141】
まず、1分対面検出処理(CS1I)について説明する。対面検出の入力はデータテーブル(BA)のIRセンサ(BAE)である。ユーザ毎に誰と対面したのかを検出する。検出する際には、指定した時刻の区間毎に求めることが望ましく、1分対面検出処理(CS1I)では分析幅を1分間として指定している。対面は集中している時に他者からの割り込みを検知するために用いるため、5分動作検出処理(CS5A)の時間幅より短い1分間とした。抽出した結果を解析結果テーブル(E)の1分間毎の対面テーブル(EA1I)に格納する。ユーザを1レコードとして、1分間区切りで、時系列順に24時間分の特徴量を代入する。
・・・(中略)・・・
【0146】
次に、5分動作検出処理(CS5A)について説明する。動作が変化するときに名札型センサノードの動きが小刻みに動くため、行動が大きな値になりやすい。このような変化点を求めるのではなく、集中している時間帯の動作そのものを求めるためには、このような値をはずれ値として省く必要がある。分析幅が短いと変化点の影響を受けやすくなるため、分析時間幅を長くする。そこで、集中時間解析においては、動作の分析幅を5分間とした。1例として5分幅を用いたが、集中している時間帯の動作そのものを求めることができれば、他の分析幅でもかまわない。
【0147】
動作検出の入力はデータテーブル(BA)の加速度センサ(BAD)である。ユーザ毎に動作リズムを検出する。検出する際には、指定した時刻の区間毎に求めることが望ましく、5分動作検出処理(CS5A)では分析幅を5分間として指定している。動作リズムとは、加速度センサ(BAD)から動きの周波数を求めたものである。 抽出した結果を解析結果テーブル(E)の5分間毎の動作テーブル(EA5A)に格納する。ユーザを1レコードとして、5分間区切りで、時系列順に24時間分の特徴量を代入する。
・・・(中略)・・・
【0150】
集中時間処理(CJJ)はユーザの集中を判定する処理である。入力は1日における修正後の修正後の1分間毎の対面テーブル(EA1IM)と5分間毎の動作テーブル(EA5A)である。ユーザ毎に時系列に並べて、同時刻の対面と動作を比較することにより求める。
・・・(中略)・・・
【0162】
集中時間統合処理(CJT)は、全ユーザの(CJK2)をまとめる処理であり、集中度テーブル(EAC)は集中時間統合処理の結果を示し、解析結果テーブル(E)に格納される。ユーザID(EAA)はユーザのID、集中度(EAC)は集中時間の指標、集中時間(EACA)は集中継続時間の指標、有効日数(EACB)は分析に用いた日数、全日数(EACC)はデータを取得した日数である。
【0163】
この集中時間テーブル(EAC)に全ユーザ分を記入後に、集中時間解析(CJ)が終了する。
【0164】
上述した積極性解析(CS)及び集中時間解析(CJ)の解析結果を用いて、図2(a)に示す知識創造行動バランスを表示する処理について説明する。図2(a)に示す積極性・集中度テーブル(EA)は解析結果テーブル(E)に格納されており、積極性解析(CS)の出力である積極性テーブル(EAB)と集中時間解析(CJ)の出力である集中度テーブル(EAC)を組合したものである。積極性テーブル(EAB)と集中度テーブル(EAC)は積極性・集中度テーブル(EA)に格納する際には、同じユーザを1レコードとする。
・・・(中略)・・・
【0166】
その表示結果の1例が知識創造行動バランス(HA)である。縦軸は積極性(EAB)の対面時アクティブ度(HAA)、集中度(EAC)の集中継続時間(HAB)である。ユーザID0001のデータ(HAC)は、対面アクティブ度0.5、集中継続時間22の座標にプロットされる。
知識創造行動バランス(HA)は、知識創造行動の指標として対面アクティブ度と集中継続時間を用いて、それらのバランスを表示したものである。(HA)において右上に位置した場合には、個人作業時には長い時間集中し、コミュニケーション時には積極的であるという意味で、メリハリのある業務スタイルが出来ている理想的な状態であるといえる。一方、右下に位置している場合は個人作業には十分に時間が取れているが、コミュニケーションが受動的になっている。
・・・(中略)・・・
【0169】
また、知識創造行動バランス(HA)は、積極性(EAB)と集中度(EAC)を2次元マップ上へユーザに理解しやすい表記方法で表現することが重要であるため、これが満たされるならば、知識創造行動バランス(HA)の表示構成と異なってもかまわない。知識創造行動バランス表示(CL2M)は、知識創造行動バランス(HA)を出力した後に終了する。
【0170】
また、図2は個人別の知識創造行動バランスであったが、これは個人だけでなくチーム別へ表示することも可能である。図3は、チーム別の知識創造行動バランスを示すものである。チーム別の知識創造行動バランスは、図2(a)の積極性・集中度テーブル(EA)を用いて求める。
【0171】
チーム変換処理(CT1)は個人別の積極性・集中度テーブル(EA)をチーム別の積極性・集中度テーブル(EAM)に変換する処理である。変換には一般情報テーブル(F)のチーム/ユーザ対応表(FC)を用いるチーム/ユーザ対応表(FC)は、チームID(FBA)と、そのチームに属しているユーザを示すユーザID(FBB)が記載されている。
【0172】
個人からチームへの変換方法は、チームID(FBA)に属しているユーザID(FBB)の積極性・集中度テーブル(EA)を参照し、それぞれの平均値を求めて解析結果テーブル(E)の積極性・集中度テーブル(EAM)に格納する。個人からチームへの変換方法として、上記の処理を採用しているが、公知の処理方法を用いてもかまわない。
【0173】
積極性・集中度テーブル(EAM)は1チームを1レコードとして格納するテーブルである。テーブル形式は積極性・集中度テーブル(EA)と同じである。
【0174】
知識創造行動バランス表示(CL2M)の表示結果の1例が知識創造行動バランス(HB)である。縦軸は積極性(EAMB)の対面時アクティブ度(HBA)、集中度(EAMC)の集中継続時間(HBB)である。チーム0001ID(HBC)のデータは、対面アクティブが0.535、集中継続時間32の座標にプロットされる。
・・・(中略)・・・
【0180】
このように、組織を構成する個人あるいはチームの知識創造行動バランスを表示することにより、個人作業とコミュニケーションあるいはチーム作業とチーム同士のコミュニケーション、のバランスのよい業務スタイルを確立するために活用することができる。
・・・(後略)」
「
[図:0001409129000001.jpg]
」
「
[図:0001409129000002.jpg]
」
「
[図:0001409129000003.jpg]
」
「
[図:0001409129000004.jpg]
」
「
[図:0001409129000005.jpg]
」
イ 甲第2号証に記載されている発明
上記アより、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
(甲2発明)
ホワイトカラー業務の特徴に合致した有効な指標を定義すること、すなわち、ユーザの業務の質を考慮した指標を定義するために(【0011】)、人間に装着したセンサノードでその人間の状況を観測し、組織アクティビティとして人物間の関係性と現在の組織の像を図示して組織の改善に役立てるためのシステムであり(【0019】)、システムは、名札型センサノード(TR)、基地局(GW)、組織センサネットサーバ(SS)、アプリケーションサーバ(AS)、クライアント(CL)によって構成され(【0021】)、
名札型センサノード(TR)は、対面状態を検出する赤外線送受信器(AB)と、加速度センサ(AC)と、周囲の音を検出するマイク(AD)と、周囲の温度を検出する温度センサ(AE)を搭載し(【0075】、【0105】、図1(c))、センサによって検出したセンサデータ(SENSD)は、基地局(GW)に対し送信されるものであり(【0079】)、
基地局(GW)は、名札型センサノード(TR)とセンサネットサーバ(SS)を仲介する役目を持ち(【0049】、図1(b))、
センサネットサーバ(SS)は、全ての名札型センサノード(TR)から集まったデータを管理し(【0060】)、記憶部(SSME)、制御部(SSCO)を備え(【0061】、図1(b))、
記憶部(SSME)は、パフォーマンステーブル(BB)とデータテーブル(BA)を格納し(【0063】)、
パフォーマンステーブル(BB)は、組織や個人に関する評価(パフォーマンス)を記録するためのデータベースであり(【0064】)、パフォーマンスの値は、パーソナルコンピュータ(PC)を操作して入力することができ(【0073】)、組織に関するパフォーマンスは、個人のパフォーマンスから算出されてもよいし、売上高又はコスト等の客観的なデータ、及び、顧客のアンケート結果等の既に数値化されているデータが、パフォーマンスとして定期的に入力されてもよく、入力されたパフォーマンスは、パフォーマンステーブルに格納され(【0074】)、
データテーブル(BA)は、各名札型センサノード(TR)が取得したセンシングデータ、名札型センサノード(TR)の情報、及び、各名札型センサノード(TR)から送信されたセンシングデータが通過した基地局(GW)の情報等を記録しておくためのデータベースであり、加速度、温度等、データの要素ごとにカラムが作成され(【0066】)、ユーザID(BAA)はユーザの識別子、加速度センサ(BAD)は加速度センサ(AC)のセンサデータ、IRセンサ(BAE)は赤外線送受信器(AB)のセンサデータ、音センサ(BAF)はマイク(AD)のセンサデータ、温度(BAG)は温度センサ(AE)のセンサデータを示しており(【0110】、図2(a))、
制御部(SSCO)はデータ管理(SSDA)等の処理を実行し(【0068】)、
データ管理(SSDA)は、記憶部(SSME)内のデータの修正・取得及び追加を管理し、例えば、データ管理(SSDA)によって、センシングデータは、タグ情報に基づいてデータの要素別にデータベースの適切なカラムに記録され(【0071】)、センサネットサーバ(SS)が、基地局(GW)を介して受け取ったデータを、データ管理(SSDA)によってパフォーマンステーブル(BB)及びデータテーブル(BA)に整理して記録することが、組織ダイナミクスデータ収集(B)に相当し(【0072】)、
アプリケーションサーバ(AS)は、記憶部(ASME)、制御部(ASCO)を備え(【0024】、図1(a))、
記憶部(ASME)は、解析結果テーブル(E)、一般情報テーブル(F)を格納し(【0026】)、
解析結果テーブル(E)は、チーム変換処理(CT1)、積極性解析(CS)、集中時間解析(CJ)によって、解析されたデータを格納するためのデータベースであり(【0031】)、積極性・集中度テーブル(EA)を格納し(【0164】)、また、チーム別の積極性・集中度テーブル(EAM)を含み(【0171】、【0172】)、
積極性・集中度テーブル(EA)は、積極性テーブル(EAB)と集中度テーブル(EAC)を組合せたものであり(【0164】)、
チーム別の積極性・集中度テーブル(EAM)は、積極性・集中度テーブル(EA)と同じテーブル形式で1チームを1レコードとして格納するテーブルであり(【0173】)、
一般情報テーブル(F)は、チーム変換処理(CT1)、積極性解析(CS)、集中時間解析(CJ)を行なう際に、ユーザ名やグループ名を記録しておくテーブルであり(【0032】)、さらにチーム/ユーザ対応表(FC)を含み(【0171】)、
制御部(ASCO)によって、通信制御(ASCC)、チーム変換処理(CT1)、積極性解析(CS)、集中時間解析(CJ)が実行され(【0033】)、
チーム変換処理(CT1)は、積極性解析(CS)や集中時間解析(CJ)から出力した個人の指標からチームの指標に変換する処理であり(【0035】)、チームID(FBA)に属しているユーザID(FBB)の積極性・集中度テーブル(EA)を参照し、それぞれの平均値を求めて解析結果テーブル(E)のチーム別の積極性・集中度テーブル(EAM)に格納し(【0172】)、 積極性解析(CS)は、ユーザの積極的な活動の解析を行い、組織ダイナミクスデータ収集(B)のデータテーブル(BA)を入力とし(【0114】)、5分対面検出処理(CS5I)、1分動作検出処理(CS1A)を行い(【0036】、【0115】)、積極性テーブル(EAB)は積極性の指標で、積極性解析(CS)の出力であり(【0138】、【0164】)、
5分対面検出処理(CS5I)は、データテーブル(BA)のIRセンサ(BAE)を入力とし、ユーザ毎に誰と対面したのかを検出し(【0116】)、
1分動作検出処理(CS1A)は、データテーブル(BA)の加速度センサ(BAD)を入力とし、ユーザ毎に動作リズムを検出し(【0123】)、
集中時間解析(CJ)は、ユーザに集中して作業を行っているか否かを判定し、組織ダイナミクスデータ収集(B)のデータテーブル(BA)を入力とし(【0139】)、1分対面検出処理(CJ1M)、5分動作検出処理(CJ5A)を行い(【0037】、【0140】)、集中度テーブル(EAC)は集中時間の指標で、集中時間解析(CJ)の出力であり(【0162】、【0164】)、
1分対面検出処理(CS1I)は、データテーブル(BA)のIRセンサ(BAE)を入力とし、ユーザ毎に誰と対面したのかを検出し(【0141】)、
5分動作検出処理(CS5A)は、データテーブル(BA)の加速度センサ(BAD)を入力とし、ユーザ毎に動作リズムを検出し(【0146】、【0147】)、
クライアント(CL)は、制御部(CLCO)を備え(【0039】、図1(a))、
制御部(CLCO)は、表示(CLDP)の処理を実行し(【0044】)、
表示(CLDP)は、アプリケーションサーバ(AS)から取得した解析結果を、描画設定情報(CLMT)に記載されている知識創造行動バランス表示(CL2M)に基づいて表示画面を生成し(【0048】)、表示結果の1例である知識創造行動バランス(HA)では、縦軸を積極性(EAB)の対面時アクティブ度(HAA)、横軸を集中度(EAC)の集中継続時間(HAB)として、ユーザのデータ(HAC)がその対面アクティブ度と集中継続時間に対応した座標にプロットされ、知識創造行動バランス(HA)は対面アクティブ度と集中継続時間を用いて、それらのバランスを表示したものであり、知識創造行動バランス(HA)において右上に位置した場合には、メリハリのある業務スタイルが出来ている理想的な状態であるといえ、右下に位置している場合は個人作業には十分に時間が取れているが、コミュニケーションが受動的になっているといえ(【0166】、図2(a)、図3)、チーム別の知識創造行動バランスを表示することも可能であり、チーム別の知識創造行動バランスは、積極性・集中度テーブル(EA)を用いて求め(【0170】)、表示結果の1例が知識創造行動バランス(HB)であり、縦軸は積極性(EAMB)の対面時アクティブ度(HBA)、横軸を集中度(EAMC)の集中継続時間(HBB)とし、積極性(EAMB)とチームのデータ(HBC)がその対面アクティブ度と集中継続時間に対応した座標にプロットされる(【0174】、図3)、
システム。
3 対比及び判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明と対比すると、次のことがいえる。
(ア)甲2発明の「ユーザの業務」は、本件発明1の「業務」に相当する。
甲2発明の「ユーザ」は、ホワイトカラー業務に係るものであることを踏まえると、従業員の一種であることは自明であるから、本件発明1の「従業員」に相当する。
甲2発明の「組織」は、本件発明1の「組織」に相当する。
甲2発明の「人間の状況」及び「組織アクティビティ」は、本件発明1の「活動」に相当する。
甲2発明の「積極性解析(CS)」が積極的な活動の解析を行い積極性の指標(「積極性(EAB)」)を出力すること、「集中時間解析(CJ)」がユーザに集中して作業を行っているか否かを判定し集中時間の指標(「集中度(EAC)」)を出力することは、本件発明1の「活動を分析する」に含まれる。
甲2発明の「名札型センサノード(TR)、基地局(GW)、組織センサネットサーバ(SS)、アプリケーションサーバ(AS)、クライアント(CL)によって構成され」、上記事項を備える「システム」は、それらが一体となって目的を達成する「装置」であるから、本件発明1の「業務における従業員及び/又は組織の活動を分析する業務活動分析装置」に相当する。
(イ)甲2発明のセンサネットサーバ(SS)のデータテーブル(BA)に関して、「IRセンサ(BAE)」(赤外線送受信器(AB)のセンサデータ)と「加速度センサ(BAD)」(加速度センサ(AC)のセンサデータ)は、積極性解析(CS)及び集中時間解析(CJ)における検出処理の入力となる情報であるから、ともに本件発明1の「分析の対象となる情報」に相当する。そして、甲2発明の「IRセンサ(BAE)」と「加速度センサ(BAD)」を合わせたものは、本件発明1の「少なくとも二以上」の「分析の対象となる情報」に相当する。
そうすると、甲2発明のセンサネットサーバ(SS)の「データ管理(SSDA)」は、IRセンサ(BAE)と加速度センサ(BAD)に係るデータテーブル(BA)を含む記憶部(SSME)内のデータの修正・取得及び追加を管理するものであるから、本件発明1の「分析の対象となる情報を少なくとも二以上収集する収集手段」に相当する。
(ウ)上記(イ)で示したように、甲2発明の「IRセンサ(BAE)」と「加速度センサ(BAD)」を合わせたものは、本件発明1の「少なくとも二以上」の「分析の対象となる情報」に相当する。また、甲2発明の「積極性(EAB)」と「集中度(EAC)」は、「積極性(EAB)」は積極性の指標であり、「集中度(EAC)」は集中時間の指標であるから、ともに本件発明1の「指標情報」に相当する。そして、甲2発明の「積極性(EAB)」と「集中度(EAC)」を合わせたものは、本件発明1の「少なくとも二以上」の「指標情報」に相当する。
また、甲2発明のアプリケーションサーバ(AS)に係る「積極性解析(CS)」及び「集中時間解析(CJ)」は、二つの情報(IRセンサ(BAE)と加速度センサ(BAD))を入力することで二つの指標情報(積極性(EAB)と集中度(EAC))を生成するから、本件発明1の「少なくとも二以上の前記情報に基づく分析結果である指標情報を少なくとも二以上生成する一次分析手段」に相当する。
(エ)甲2発明の「表示(CLDP)」は、本件発明1の「二次分析手段」に相当するものではない。その理由は、次のa~cのとおりである。
a 甲2発明の「知識創造行動バランス(HA)」について
上記(ウ)で示したように、甲2発明の「積極性(EAB)」と「集中度(EAC)」を合わせたものは、本件発明1の「少なくとも二以上」の「指標情報」に相当する。また、甲2発明の「知識創造行動バランス(HA)」は、縦軸を積極性(EAB)に基づく値とし、横軸を集中度(EAC)に基づく値として、ユーザのデータ(HAC)がプロットされたものであるから、二以上の指標情報(積極性(EAB)と集中度(EAC))に基づく情報といえる。そして、「知識創造行動バランス(HA)」は、少なくとも二以上の指標情報(積極性(EAB)と集中度(EAC))に基づく「表示結果の一例」であるから、一見すると、本件発明1の「指標情報に基づく分析結果」である「分析結果情報」に相当するものであると考えられる。しかしながら、特許権者の令和6年2月15日提出の意見書における、「分析結果情報も、指標情報と同様に「情報」として表記された構成であり・・・本特許の出願時の技術常識において、コンピュータによる分析処理の入出力の対象とすることができる「情報」とは、具体的には何らかの「値」であることは当業者であれば明白である・・・「分析結果情報」も「値」として生成されると解釈するのが適切である」(第4ページ第7~第5ページ第3行)との主張、及び「「知識創造行動バランス(HA)」は、・・・バランスを表示するもの(具体的には、ユーザのデータが右上に位置した場合には「メリハリのある業務スタイルができている理想的な状態である」といえ、右下に位置している場合は「個人作業には十分に時間が取れているが、コミュニケーションが受動的になっている」といえるもの)・・・は情報処理の結果ではない。積極性(EAB)及び集中度(EAC)を見た人間が行う解釈、すなわち「人間の精神活動」である。 本件特許発明の「分析結果情報」に相当するというためには、・・・コンピュータによる分析処理の結果として生成されていなければならない」(第5ページ第8~21行)との主張を踏まえれば、甲2発明の「知識創造行動バランス(HA)」から、「メリハリのある業務スタイルが出来ている理想的な状態である」や、「個人作業には十分に時間が取れているが、コミュニケーションが受動的になっている」という状況が把握できるとしても、それらは人間が行う解釈であり、「知識創造行動バランス(HA)」自体は「コンピュータによる分析処理の結果」として生成される何らかの「値」ではない、つまり「指標情報に基づく分析結果」である「分析結果情報」ではないことから、甲2発明の「知識創造行動バランス(HA)」は、本件発明1の「分析結果情報」に相当するものではない。
よって、甲2発明の「知識創造行動バランス(HA)」と本件発明1の「少なくとも二以上の前記指標情報に基づく分析結果である分析結果情報」は、「少なくとも二以上の前記指標情報に基づく結果情報」である点で共通し、甲2発明の「知識創造行動バランス(HA)」は「指標情報に基づく分析結果」である「分析結果情報」といえない点で相違する。
b 甲2発明の「知識創造行動バランス(HB)」について
甲2発明の「知識創造行動バランス(HB)」も、積極性・集中度テーブル(EA)を用いて求められたものであり、積極性・集中度テーブル(EA)は積極性テーブル(EAB)と集中度テーブル(EAC)を組合せたものであることを踏まえると、二以上の指標情報(積極性(EAB)及び集中度(EAC))に基づく情報であるといえる。しかし、甲2発明の「知識創造行動バランス(HB)」は、二以上の指標情報(積極性(EAB)と集中度(EAC))のチーム毎の平均値が対応する座標にプロットされた「表示結果の一例」にすぎず、上記aと同様のことがいえるため、「指標情報に基づく分析結果」である「分析結果情報」に相当するものといえない。よって、甲2発明の「知識創造行動バランス(HB)」と本件発明1の「少なくとも二以上の前記指標情報に基づく分析結果である分析結果情報」は、「少なくとも二以上の前記指標情報に基づく結果情報」である点で共通し、甲2発明の「知識創造行動バランス(HB)」が「指標情報に基づく分析結果」である「分析結果情報」といえない点で相違する。
c 甲2発明の「表示(CLDP)」について
甲2発明の「知識創造行動バランス(HA)」と本件発明1の「分析結果情報」との対比、及び甲2発明の「知識創造行動バランス(HB)」と本件発明1の「分析結果情報」との対比は上記a、bに示したとおりである。また、甲2発明の「表示(CLDP)」は、「知識創造行動バランス(HA)」及び「知識創造行動バランス(HB)」の表示画面の生成に係るものである。そうすると、甲2発明の「表示(CLDP)」と本件発明1の「少なくとも二以上の前記指標情報に基づく分析結果である分析結果情報を生成する二次分析手段」は、「少なくとも二以上の前記指標情報に基づく結果情報を生成する手段」である点で共通し、甲2発明の「表示(CLDP)」は、「コンピュータによる分析処理」の結果として「値」を生成するものではないから、「指標情報に基づく分析結果」である「分析結果情報」を生成する「分析手段」といえない点で相違する。
(オ)甲2発明のパフォーマンステーブル(BB)に記録される「組織や個人に関する評価(パフォーマンス)」は、本件発明1の「前記従業員及び/又は組織の業務内容にもとづく業務情報」に相当する。
そして、甲2発明のセンサネットサーバ(SS)の「データ管理(SSDA)」が、基地局(GW)を介して受け取ったデータを「パフォーマンステーブル(B)」に整理して記録することは、「組織や個人に関する評価(パフォーマンス)」を収集しているといえるから、本件発明1の「前記従業員及び/又は組織の業務内容にもとづく業務情報を収集する業務情報収集手段」に相当する。
(カ)甲2発明の「名札型センサノード(TR)」は、人間に装着したセンサノードであり、装着された人間に係る情報を取得することは明らかであるから、本件発明1の「前記従業員が所持する個人情報取得装置」に相当する。また、甲2発明の名札型センサノード(TR)によって取得されるデータテーブル(BA)の「各名札型センサノード(TR)が取得したセンシングデータ」は、その名札型センサノード(TR)が装着された人間に関する情報であることは自明であるから、本件発明1の「従業員に関する情報」に相当する。
そして、甲2発明のセンサネットサーバ(SS)の「データ管理(SSDA)」が、基地局(GW)を介して受け取ったデータを「データテーブル(BA))」に整理して記録することは、「各名札型センサノード(TR)が取得したセンシングデータ」を収集しているといえるから、本件発明1の「前記従業員が所持する個人情報取得装置から前記従業員に関する情報を収集する個人情報収集手段」に相当する。
(キ)上記(オ)に示したように、甲2発明の「データ管理(SSDA)」が、基地局(GW)を介して受け取ったデータを「パフォーマンステーブル(BB)」に整理して記録することは、本件発明1の「業務情報収集手段」に相当する。また、上記(カ)に示したように、甲2発明の「データ管理(SSDA)」が、基地局(GW)を介して受け取ったデータを「データテーブル(BA))」に整理して記録することは、本件発明1の「個人情報収集手段」に相当する。
よって、甲2発明のセンサネットサーバ(SS)の「データ管理(SSDA)」は、基地局(GW)を介して受け取ったデータを、「パフォーマンステーブル(BB)」に整理して記録すること及び「データテーブル(BA)」に整理して記録することの二つを行うから、本件発明1の「業務情報収集手段」と「個人情報収集手段」を「備え」る「収集手段」に相当する。
(ク)上記(エ)aで示したように、甲2発明の「知識創造行動バランス(HA)」は、「指標情報に基づく分析結果」である「分析結果情報」といえない点を除き、本件発明1の(一の)「結果情報」に対応する。また、甲2発明の「積極性(EAB)」と「集中度(EAC)」を合わせたものは、上記(ウ)で示したように、本件発明1の「指標情報」に相当する。そして、甲2発明の「積極性(EAB)」及び「集中度(EAC)」は、「知識創造行動バランス(HA)」を生成するために用いられるものであるから、「分析」結果情報を生成するために用いたものではない点を除き、本件発明1の(一の)「結果情報」を「生成するために用いた」「指標情報」に対応する。
また、上記(エ)bで示したように、甲2発明の「知識創造行動バランス(HB)」は、「指標情報に基づく分析結果」である「分析結果情報」といえない点を除き、本件発明1の(他の)「結果情報」に対応する。そして、甲2発明の「知識創造行動バランス(HB)」の縦軸に係る積極性(EAMB)と横軸に係る集中度(EAMC)は、チーム別の積極性・集中度テーブル(EAM)に基づくものであることは自明であり、チーム別の積極性・集中度テーブル(EAM)は積極性・集中度テーブル(EA)を参照して格納されたものであり、積極性・集中度テーブル(EA)は、積極性テーブル(EAB)と集中度テーブル(EAC)を組合せたものであるから、結局、甲2発明の「積極性(EAB)」及び「集中度(EAC)」は、「知識創造行動バランス(HA)」と「知識創造行動バランス(HB)」の両方を生成するために用いるものといえる。
そうすると、甲2発明の「積極性(EAB)」及び「集中度(EAC)」に基づいて「知識創造行動バランス(HA)」及び「知識創造行動バランス(HB)」を生成することは、本件発明1の「一の前記分析結果情報を生成するために用いた前記指標情報が、他の前記分析結果情報を生成するために用いることができるように構成した」と、「一の前記結果情報を生成するために用いた前記指標情報が、他の前記結果情報を生成するために用いることができるように構成した」点において共通し、結果情報が「分析」結果情報ではない点で相違する。
(ケ)一点及び相違点
上記(ア)~(ク)から、本件発明1と、甲2発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
業務における従業員及び/又は組織の活動を分析する業務活動分析装置であって、
分析の対象となる情報を少なくとも二以上収集する収集手段と、
少なくとも二以上の前記情報に基づく分析結果である指標情報を少なくとも二以上生成する一次分析手段と、
少なくとも二以上の前記指標情報に基づく結果情報を生成する手段と、
を備え、
前記収集手段が、
前記従業員及び/又は組織の業務内容にもとづく業務情報を収集する業務情報収集手段と、
前記従業員が所持する個人情報取得装置から前記従業員に関する情報を収集する個人情報収集手段と、
を備え、
一の前記結果情報を生成するために用いた前記指標情報が、他の前記結果情報を生成するために用いることができるように構成した
業務活動分析装置。
[相違点1]
本件発明1は、「少なくとも一又は二以上を備え」る「収集手段」として、「前記従業員及び/又は組織が業務に使用する設備に設けたセンシング装置から前記設備に関する情報及び/又は前記設備の利用者に関する情報を収集する設備情報収集手段」を「備え」るのに対し、甲2発明は「設備情報収集手段」を「備え」ていない点。
[相違点2]
本件発明1は、「少なくとも二以上の前記指標情報に基づく分析結果である分析結果情報を生成する二次分析手段」を備えるのに対し、甲2発明の「表示(CLDP)」は、指標情報を対応する座標にプロットすることによって、表示結果である「知識創造行動バランス(HA)」及び「知識創造行動バランス(HB)」を生成するものであるが、「指標情報に基づく分析結果」である「分析結果情報」を生成する「分析手段」とはいえない点。
[相違点3]
本件発明1は、「一の前記分析結果情報を生成するために用いた前記指標情報が、他の前記分析結果情報を生成するために用いることができるように構成した」ものであるのに対し、甲2発明の結果情報は「分析」結果情報とはいえない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2及び相違点3について検討する。
まず、相違点2及び相異点3は実質的なものであるから、本件発明1は甲2発明ではない。
また、本件発明1は、「一の前記分析結果情報を生成するために用いた前記指標情報が、他の前記分析結果情報を生成するために用いることができる」構成により、一の分析結果を生成するために用いた指標情報を他の分析結果を生成するためにも用いるように構成することで、分析結果の処理を向上させるものである。それに対し、甲2発明は、上記2(1)イに示したように、「ホワイトカラー業務の特徴に合致した有効な指標を定義すること、すなわち、ユーザの業務の質を考慮した指標を定義する」ことに主眼を置いたものであり、甲2発明の「知識創造行動バランス(HA)」及び「知識創造行動バランス(HB)」をコンピュータで分析して「分析結果情報」とすることについて、甲第2号証において記載も示唆もない。よって、本件発明1は、甲2発明から当業者が容易に想到し得るものではない。
さらに、仮に甲第2号証の「知的創造行動バランス(HA)」及び「知的創造行動バランス(HB)」の生成において用いた「1分対面検出処理」や「5分動作検出処理」の結果を、甲第2号証の別の実施形態で用いることができたとしても、上記3(1)ア(エ)に示したとおり「知的創造行動バランス(HA)」及び「知的創造行動バランス(HB)」が本件発明1の「分析結果情報」に相当するものとはいえない以上、「知識創造行動タペストリ(HC)」及び「組織エネルギー流(HE)」は、「一の前記分析結果情報を生成するために用いた前記指標情報」を用いて生成された「他の前記分析結果情報」に相当するものとはいえない。
(2)本件発明9及び本件発明10について
「業務分析方法」の発明である本件発明9は、「業務分析装置」の発明である本件発明1と、実質的にカテゴリー表現が異なるのみの発明である。
また、「プログラム」の発明であり、本件発明9を引用する本件発明10も、「業務分析装置」の発明である本件発明1と、実質的にカテゴリー表現が異なるのみの発明である。
そうすると、上記(1)と同様の理由により、本件発明9及び本件発明10は、甲第2号証に記載された発明ではなく、もしくは甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得るものではない。
(3)申立人の主張について
令和6年3月14日に提出された上申書において申立人は、同年2月15日付けで特許権者から提出された意見書における主張、すなわち、「指標情報」と「分析結果情報」の異同、甲2発明の「知識創造行動バランス(HA)」は本願発明の「分析結果情報」に該当しない、及び甲2発明の「知識創造行動バランス(HB)」の指標情報は「チーム単位の積極性(EAB)及び集中度(EAC)」である、との主張について、当業者の一般的な理解にも、本願明細書の記載にも基づかない独自のものであり、また、本件発明の特許請求の範囲の記載にもない独自の限定を付加したものであるから妥当ではなく、本件特許の請求項1、9及び10に係る特許は取り消されるべきであると主張する。
しかしながら、上記(1)ア(エ)で示したとおり、甲2発明の「知識創造行動バランス(HA)」は本件発明1の「指標情報に基づく分析結果」である「分析結果情報」とはいえず、甲2発明の「知識創造行動バランス(HB)」も本件発明1の「指標情報に基づく分析結果」である「分析結果情報」とはいえない。
そして、上記(1)イで判断したとおり、本件発明1は甲2発明ではなく、また、甲2発明から当業者が容易に想到し得るものでもないから、本件特許の請求項1、9及び10に係る特許は、取り消されるべきものであるとはいえず、申立人の上記主張は、当該判断に影響を及ぼすものではない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(4)小括
したがって、令和5年12月25日付けの取消理由通知(決定の予告)により、本件特許の請求項1、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。
第4 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
本件特許の請求項1、9及び10に係る特許に対して、当審が令和5年12月25日付け取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の要旨(下記(1))と証拠方法(下記(2))は、次のとおりである。
(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性及び進歩性)
本件発明1、本件発明9及び本件発明10は、甲第1号証に開示された発明であって、特許法第29条第1項3号に該当するから、本件特許の請求項1、9及び10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、本件発明1、本件発明9及び本件発明10は、甲第1号証に開示された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1、9及び10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許の請求項1、9及び10に係る特許は、取り消されるべきものである。
(2)証拠方法
甲第1号証:(合田徳夫,人間行動ビッグデータを社会実装可能にする“ビジネス顕微鏡(R)”,生産と技術,一般社団法人生産技術振興協会,2015年,第67巻,第2号,p.46-52)(当審注:(R)は○の中にR、以下同様)
2 当審の判断
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、次の記載がある(下線は当審において付した。)。
「1.はじめに
近年、センサは小型化及び高精度化しており、今まで取得出来なかったようなデータが短期間で大量に収集出来るようになってきています。また、それらデータをコンピュータで一気に分析することで、今まで気が付かなかった知見を得ることが出来るようになってきています。いわゆる“ビッグデータ”です。
ユニークなビッグデータを扱うものとして、人集団のコミュニケーションを定量・分析するツール、“ビジネス顕微鏡(R)”が(株)日立製作所中央研究所で研究開発され、(株)日立ハイテクノロジ-ズから製品化されています。ビジネス顕微鏡(R)を用いてデータを取得・分析することで、今まで定性的にしか語られていなかった人集団内のコミュニケーションを、ネットワークとして可視化及び定量化することが出来ます。更に、ビジネス顕微鏡(R)の分析結果に従い、組織全体を活性化するための施策を打つことも可能です。意外な施策で受注率や売上を向上させるなど、ビジネス分野ではすでに多くの実績を出しています。
ビジネス分野では多くの実績のあるビジネス顕微鏡(R)ですが、人集団や組織を研究対象にしているアカデミック領域においても、新しい研究手法を確立できるポテンシャルを秘めていると思われます。特に、教育学や心理学などで使用実績が増えており、学会発表や論文などで実績を上げつつあります。
本稿では、ビジネス顕微鏡(R)について、その概要と適用事例、今後の可能性についてご紹介したいと思います。」
「2.ビジネス顕微鏡(R)の概要
ビジネス顕微鏡(R)の主要な構成要素は名札型センサ(図1)で、IDカードのように首にかけるなど、体に装着して使用します。重さは35グラム程度ですので、長時間装着していても苦にはなりません。小学生や幼稚園児に装着してもらい、登校から下校までの一日の活動データを取得した実績もあります。
名札型センサ内の主要な構成要素は、赤外線センサと加速度センサです。名札型センサの上部の黒い部分に赤外線センサが格納されていて、赤外線を出しています。ビジネス顕微鏡(R)を装着している人同士が対面すると、お互いの赤外線センサが反応し、対面相手の名札型センサのID番号を内蔵メモリに記録します。これにより、いつ誰と対面していたかがデータとして残ります。ただし、赤外線センサの反応距離は約2~3mですので、それ以上離れている場合は対面データとしては残りません。また、加速度センサでは、体の動きの3軸方向(前後、左右、上下)の加速度を内蔵メモリに記録します。この加速度データから体のリズム周波数を計算します。
赤外線センサで取得した対面データと加速度センサから計算されるリズム周波数を併せて総合的に判断することで、「自ら発言している」「相手の会話を聞いている」「対面しているだけ」などを自動で判定します。条件にもよりますが、80~90%は正確に判定できます。
多くの人に協力してもらいデータを長期間取得するための重要なポイントは、データ取得の被験者に対し、ビジネス顕微鏡(R)を使うことで余計な負担を掛けないことです。ビジネス顕微鏡(R)は、この点もよく考慮されているツールです。図2に名札型センサが50個の場合のシステム構成例を示します。名札型センサは専用クレイドルに挿し充電しますが、充電と同時に基地局パソコンへのデータ転送も自動で行います。このため、名札型センサをつけてデータを取得する被験者は、データ取得時に自分の名札型センサをクレイドルから抜き装着し、データ取得終了時に名札型センサをクレイドルに戻すだけです。
データ取得やデータ転送のために、パソコンなどのIT機器を使って何か特別な作業や操作を行う必要は全くありません。このため、小学生や幼稚園児でもデータ取得が出来るのです。」
「3.ビジネス顕微鏡(R)による行動分析
名札型センサで取得したデータを、基地局パソコンにインストールされている専用プログラムで処理すると、被験者毎に行動分析結果が出力されます。図3に主要なものを示します。
「時間の使い方」では、名札型センサの装着者の一日の活動内容が日毎に表示されます。“対面(双方向)”、“対面(ピッチャー)”、“対面(キャッチャー)”、“対面(同席)”、“デスクワーク”、“作業その他”、“外出”の7種で分類されます。双方向はお互いに会話を積極的にやりとりしていること、ピッチャーは話し手であること、キャッチャーは聞き手であることを表しています。このように、コミュニケーションの質を定量化及び分類してくれます。
「対面コミュニケーション」では、「時間の使い方」からコミュニケーションの部分だけが抜き出され、コミュニケーションが多い順に対面相手がランキングされて表示されます。双方向、ピッチャー、キャッチャーといったコミュニケーションの質を含め、その定量的な時系列変化も表示されます。
「ライフログ」では、加速度センサの各方向の加速度値や対面人数などが時系列で表示されます。
「Nステップネットワーク」では、各被験者を中心にしたネットワーク図がそれぞれ描かれます。被験者(赤)を中心に、1ステップで対面している相手(青)と2ステップで対面している相手(緑)が描かれます。
また、これらの行動分析結果を、CSVファイルで出力することも可能です。対面データと加速度センサのデータなので、CSVファイルの数値データだけを見ていると、非常に素朴なデータということが分かります。ただし、素朴なデータということは、レゴブロックのように自由に組み合わせを考え、自分が持っている仮説を説明するための指標を作ることが出来るということです。教育学などでの研究においても、CSVファイルの数値を用いて仮説検証などを行っています。
このようなデータをもとに、組織内のコミュニケーションネットワークを詳細に描いた一例が、図4になります。色がついたノードは個人を表し、その横の数字はID番号を表わします。また、ノードを結ぶ線は2人の間にコミュニケーションがあることを意味し、2人のコミュニケーション量が多いほど、線が太くなるように表されています。
組織内コミュニケーションをネットワークとして可視化できるようになると、「組織内のどこでコミュニケーションが密なのか、疎なのか」「部署間でコミュニケーションがどの程度取れているのか」など感覚的・定性的に感じていたことを、定量的に把握することが可能になります。このような効果が、ビジネス顕微鏡(R)を用いて人集団のコミュニケーションデータを取得する大きなメリットです。
・・・(後略)」
「
[図:0001409129000006.jpg]
」
「
[図:0001409129000007.jpg]
」
「
[図:0001409129000008.jpg]
」
(2)本件発明1について
申立人は、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるし、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。
しかしながら、甲第1号証に記載された事項は、上記(1)のとおりであるところ、甲第1号証には、上記第3の3(1)アの[相違点1]~[相違点3]に係る構成は記載されていないし、その構成が周知技術であるということもできない。
そうすると、本件発明1と、甲第1号証に記載された発明を対比すると、少なくとも、上記第3の3(1)アの[相違点1]~[相違点3]に係る構成で相違することとなる。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件発明9及び本件発明10について
本件発明9及び本件発明10は、本件発明1と、実質的にカテゴリー表現が異なるのみの発明である。
そうすると、上記(2)と同様の理由により、本件発明9及び本件発明10は、甲第1号証に記載された発明ではなく、もしくは甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得るものではない。
(4)小括
したがって、申立人の主張する申立理由1によっては、本件特許の請求項1、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
したがって、本件特許の請求項1、9及び10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、9及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700746