特許異議申立
2025-700511
煮出した麦茶様の異臭が低減された非アルコールビールテイスト飲料
- 審判番号
- 2025-700511
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-550275
- 登録番号
- 7581573
- 請求日
- 2025年05月12日
- 審決日
- 2025年10月03日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】麒麟麦酒株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
- 【異議申立人】清水 将博
- 審判長/審判官
- 審判長 松田 成正
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 天野 宏樹
- 分類
- P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L) / P1651.4 -Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第39条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7581573号発明「煮出した麦茶様の異臭が低減された非アルコールビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7581573号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7581573号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)10月18日を国際出願日とする出願であって、令和6年11月1日にその特許権の設定登録(請求項の数11)がされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、令和7年5月12日に特許異議申立人清水将博(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がなされたものである。
その他の手続の経緯は以下のとおりである。
令和7年 6月13日付け:手続補正指令書(方式)
同年 7月18日 :特許異議申立書の手続補正書(方式)
以下において、令和7年7月18日に提出された手続補正書(方式)により補正された申立人が提出した特許異議申立書を「申立書」という。
第2 本件発明について
本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明11」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。
「[請求項1]
2,5-ジメチルピラジンの含有量が0.1~3.5ppbであり、かつ、コハク酸の含有量が48.5~150ppmである、非アルコールビールテイスト飲料。
[請求項2]
アルコール(エタノール)濃度が0.01v/v%未満である、請求項1に記載の非アルコールビールテイスト飲料。
[請求項3]
酢酸イソアミルの含有量が1~10ppmである、請求項1または2に記載の非アルコールビールテイスト飲料。
[請求項4]
非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程、およびコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなる、方法。
[請求項5]
前記非アルコールビールテイスト飲料のアルコール(エタノール)濃度が0.01v/v%未満である、請求項4に記載の方法。
[請求項6]
非アルコールビールテイスト飲料における煮出した麦茶様の異臭を低減する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程、およびコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなる、方法。
[請求項7]
非アルコールビールテイスト飲料における蒸した芋様の異臭を低減する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程、およびコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなる、方法。
[請求項8]
非アルコールビールテイスト飲料における後味の酸味を低減する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程、およびコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなる、方法。
[請求項9]
非アルコールビールテイスト飲料における後味の刺激感を低減する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程、およびコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなる、方法。
[請求項10]
非アルコールビールテイスト飲料における味の厚みを増強する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程、およびコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなる、方法。
[請求項11]
前記非アルコールビールテイスト飲料のアルコール(エタノール)濃度が0.01v/v%未満である、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として下記2.に示す甲第1号証~甲第10号証(以下、「甲1」~「甲10」という。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。なお、特許異議申立理由の番号は当審が仮に付与した。
1.特許異議申立理由
(1)理由1(甲1に基づく新規性欠如)
本件発明1、2、4~11は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)理由2(甲1に基づく進歩性欠如)
本件発明1~11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)理由3(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~11についての特許は同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
ア アルコール濃度について
当業者は、アルコール(エタノール)濃度が0.001v/v%を超え1v/v%未満である場合に、発明の課題を解決できることを認識できない。実施例1で官能評価を行っている唯一のベース飲料サンプルのアルコール濃度は0.001v/v%である。香味の問題は低いアルコール濃度に起因することを考慮すると([0002]、[0012])、実施例1のアルコール濃度であれば、発明の課題に関連する香味(例えば、後味の酸味、後味の刺激感、味の厚み、煮出した麦茶様の異臭、蒸した芋様の異臭)の問題が生じると考えられるが、アルコール濃度が0.001v/v%を超え1v/v%未満である場合にも香味の問題が生じるのかは明らかではなく、このようなアルコール濃度の場合に、2,5-ジメチルピラジン等の化合物を添加することによって実施例1と同様の効果を得ることができるかも明らかではない。
イ 飲料サンプルに含まれる成分について
飲料サンプルの香味は、ベース飲料サンプル(脱アルコール麦汁発酵液)に添加される2,5-ジメチルピラジン等の化合物だけでなく、ベース飲料サンプルに由来の成分によって大きく変わることを、当業者であれば容易に認識し得る。実施例1で確認している効果は、特定の手順で得られた1種類のベース飲料サンプルに由来の成分の存在を前提としたものであるから、ベース飲料サンプルに由来の成分が変われば効果も変わると言える。しかしながら、表2においては2,5-ジメチルピラジン、酢酸イソアミル及びコハク酸以外の化合物の含有量は示されておらず、本件特許明細書において、他の化合物の含有量が上記の課題の解決に何ら影響しないことも記載されていない。対照的に、不揮発成分がビールテイスト飲料の香味に影響を及ぼすことは技術常識であり(甲1の[0039]、甲6の[0039])、したがって、実施例1の結果から、本件特許発明1~11に包含されるあらゆる非アルコールビールテイスト飲料について発明の課題を解決できることを当業者は認識できない。
(4)理由4(同日出願)
本件発明1、2及び4~11は、同日出願された下記の甲9の請求項1、2及び4~11に係る発明と同一であり、かつ、甲9に係る発明は特許されており協議をすることができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第39条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2.証拠方法
甲1:国際公開第2022/163522号
甲2:財団法人日本醸造協会編集発行,"醸造物の成分",平成11年12月10日,p.245-249,「第XIII章 着色物質(メラノイジン)」
甲3:特開2021-145609号公報
甲4:財団法人日本醸造協会編集発行,"醸造物の成分",平成11年12月10日,p.210-213,「第VII章 エステル」
甲5:アサヒビール株式会社,"アルコール分0.00%のビールテイスト飲料『アサヒ ゼロ』 10月24日から近畿エリア先行発売 脱アルコール製法でビールらしい“革新的なうまさ”をアルコール分0.00%で実現",アサヒビール株式会社HP,ニュースリリース,[online],2023年9月20日,インターネット<URL:https://www.asahibeer.co.jp/news/2023/0929_5.html>
甲6:特開2023-110821公報
甲7:国際公開第2022/210104号
甲8:国際公開第2022/210105号
甲9:特許第7581572号公報
甲10:石井勉,"ビール醸造技術",初版,株式会社食品産業新聞社,1999年12月28日,p.356-357,「11.2. 色度」
第4 当審の判断
当審は、申立人が申し立てたいずれの特許異議申立理由によっても、本件発明1~11についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおりである。
1.理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び理由2(甲1に基づく進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された事項
甲1には以下の事項が記載されている。なお、段落番号を含む英数字は全角とした。
(1-1)「[0001] 本発明は低アルコールビールテイスト飲料に関する。「低アルコールビールテイスト飲料」とはアルコール含有量が1%(V/V)未満であるビールテイスト飲料をいう。「低アルコールビールテイスト飲料」の意味には、実質的にアルコールを含有しない、ノンアルコールビールテイスト飲料も含まれる。また、「アルコール」という文言はエタノールを意味する。」
(1-2)「[0011] このように、低アルコールビールテイスト飲料は、アルコールを含有するビールテイスト飲料と比較した場合に、酸味感、渋味感が強く、アルコール感、醸造由来の複雑味が弱くなる傾向がある。かかる不味の要因は、麦汁発酵液からアルコール分を蒸留除去して発酵低アルコールビールテイスト飲料を得た場合に、強く発現する。
[0012] 本発明の目的は、酸味及び渋味が抑制され、アルコール感及び醸造由来の複雑味が増強された低アルコールビールテイスト飲料を提供することにある。」
(1-3)「[0064] <香気組成物の製造>
本発明で使用する香気組成物は、例えば、各香気成分を所定量配合することで製造することができる。また、好ましい一形態において、香気組成物は、前記麦汁発酵液から香気成分を気化させ、これを回収して、製造することができる。
・・・
[0068] 気化した香気成分を回収する方法としては、常法に従って冷却することで、香気成分のガスを凝結させる方法が挙げられる。凝結した液は前記特定の香気成分を特定の量で含有する香気組成物である。得られた香気組成物は、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、及び酢酸β-フェネチルなどの通常のビールに含まれる香気成分を含有してもよい。
[0069] <低アルコールビールテイスト飲料の製造>
本発明の低アルコールビールテイスト飲料は、前記香気組成物を低アルコールビールテイスト飲料に所定量配合することで、製造することができる。香気組成物が配合される低アルコールビールテイスト飲料は、発酵過程を経て製造された発酵低アルコールビールテイスト飲料であっても、発酵過程を経ないで製造された非発酵低アルコールビールテイスト飲料であってもよい。
[0070] 好ましい一形態において、アルコール感、醸造由来の複雑味を増強する観点から、香気組成物が配合される低アルコールビールテイスト飲料は、発酵低アルコールビールテイスト飲料である。中でも、麦汁発酵液からアルコール分を蒸留除去して得られた発酵低アルコールビールテイスト飲料が好ましい。
[0071] 香味バランスを最適化する観点から、更に好ましくは、香気組成物が配合される低アルコールビールテイスト飲料は、当該香気組成物を揮発させた麦汁発酵液を脱アルコール処理して得られた、低アルコールビールテイスト飲料、すなわち脱アルコール麦汁発酵液である。」
(1-4)「[0073] <実施例>
[麦汁発酵液の製造]
仕込釜に粉砕麦芽、水及びコーンスターチを投入し、70℃で糊化、100℃で液化を行った。次に仕込槽に粉砕麦芽、酵素及び温水を投入し、55℃付近でタンパク休止を行った後、仕込釜から仕込槽へ液を移送し、60℃から76℃の範囲の温度で糖化を行った。この糖化液を濾過槽であるロイターにて濾過し、その後煮沸釜に移して、ホップを添加し、60分間煮沸した。煮沸後、蒸発分の温水を追加し、ワールプール槽にて熱トルーブを除去した後、プレートクーラーを用いて10℃まで冷却し、冷麦汁を得た。この麦汁に下面発酵ビール酵母を加え、7日間10℃前後で発酵させた後、ビール酵母を除去した。タンクを移し替えて7日間熟成させた後、-1℃付近まで冷却し14日間安定化させた。その後、脱気水を加えて希釈後、珪藻土を用いて濾過し、麦汁発酵液を得た。
[0074] [香気成分の測定]
得られた麦汁発酵液の香気成分のうち、酢酸エチル、イソブタノール、酢酸イソアミル、イソアミルアルコール、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル及び酢酸β-フェネチルを測定した。測定には、ヘッドスペースGC法を用いた。ガスクロマトグラフはGC-2010(島津製作所製)、カラムはStabilwax 30m×0.32mmID(1μmFT)を使用した。分析結果を表2に示す。
[0075][表2]
[図:0001429032000001.jpg]
[0076] [酸味成分の測定]
得られた麦汁発酵液のリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸及びピログルタミン酸は、島津有機酸分析システム(SCL-10A_VP)により、測定した。具体的には、カラムにShim-pack SCR-102H(8.0mmΦ×300mm)(2本直列接続)を用いたイオン排除クロマトグラフィーにより分離し、ポストカラムpH緩衝化電気伝導度法(CCD-10A_VP)により検出した。分析結果を表3に示す。
[0077][表3]
[図:0001429032000002.jpg]
[0078] [香気組成物含有低アルコールビールテイスト飲料の製造]
上記で得られた麦汁発酵液(液温0℃)のガス圧を0.20MPaに調整した後に、液温を熱交換器にて55~65℃に調整し、90mbar付近の減圧下で脱ガスタンク内にスプレーして、炭酸ガス及び香気成分を気化させた。気化した香気成分は、約20℃に冷却することで凝結させて、香気組成物を得た。
[0079] 香気成分を気化させた麦汁発酵液を、プレートクーラーを用いて50℃付近まで加熱した。その後、90mbar付近の減圧カラム内で50℃付近に加熱した水蒸気と接触させ、揮発成分を水蒸気に吸着させ、アルコール及び揮発成分を取り除いた。その後、前記香気組成物を、脱アルコールされた麦汁発酵液に戻して、香気組成物含有低アルコールビールテイスト飲料を製造した。得られた香気組成物含有低アルコールビールテイスト飲料を試料1とした。試料1のアルコール度数は1%未満であった。
[0080] 試料1の香気成分の分析結果を表4に、酸味成分の分析結果を表5に、それぞれ示した。表5における酸味度は、表1の値を用いて計算した。
[0081][表4]
[図:0001429032000003.jpg]
[0082][表5]
[図:0001429032000004.jpg]
」
(1-5)「[0091]<参考例>
[香気成分濃度及び種類の変更]
試料1及び試料3を、比率を変えて混合することで、香気成分の濃度が異なる低アルコールビールテイスト飲料を1L製造し、それぞれ試料4~9とした。試料4~9の酸味度は、すべて1564.4ppmであった。
[0092] <ノンアルコールビールテイスト飲料の官能評価>
前記のようにして製造したノンアルコールビールテイスト飲料を官能評価に供した。評価者は、訓練されたパネリスト6名とした。評価項目は、酸味感、渋味感、アルコール感、醸造由来の複雑味とした。
[0093] 評価方法は、試料を約4℃の液温に調温し、飲用し、その際に感じられた前記項目の官能の強さを5段階で採点した。評点は、試料1の評点を3として、やや強く感じられる場合は4、強く感じられる場合は5、やや弱く感じられる場合は2、弱く感じられる場合は1とし、最後に6名の評点の平均を算出した。ビールらしい香味の評価基準は次の通りとした。
[0094] 良「A」:酸味感、渋味感の評点の平均が2.0以下で、かつアルコール感、醸造由来の複雑味の評点の平均が4.0以上
可「B」:酸味感、渋味感の評点の平均が2.0超2.5以下で、かつアルコール感、醸造由来の複雑味の評点の平均が3.5以上4.0未満
不可「C」:酸味感、渋味感の評点の平均が2.5を超えている
[0095] 試料4~9の香気成分濃度及び評価結果を表10に示した。
[0096][表10]
[図:0001429032000005.jpg]
」
(1-6)「請求の範囲]
[請求項1]
0.49ppm以上の酢酸エチルと、
0.83ppm以上のイソブタノールと、
0.065ppm以上の酢酸イソアミルと、
4.35ppm以上のイソアミルアルコールとを含む香気組成物を含む、低アルコールビールテイスト飲料。
・・・
[請求項9]
麦汁発酵液の炭酸ガス圧を0.05~0.25MPaに調整する工程;
麦汁発酵液を減圧下で噴霧することで麦汁発酵液から炭酸ガス及び香気成分を気化させる工程;
気化した香気成分を凝結させて香気組成物を得る工程;
得られた香気組成物を低アルコールビールテイスト飲料に添加する工程;
を包含する、低アルコールビールテイスト飲料の製造方法。
[請求項10]
麦汁発酵液の炭酸ガス圧を0.05~0.25MPaに調整する工程;
麦汁発酵液を減圧下で噴霧することで麦汁発酵液から炭酸ガス及び香気成分を気化させる工程;
気化した香気成分を凝結させて香気組成物を得る工程;
得られた香気組成物を低アルコールビールテイスト飲料に添加する工程;
を包含する、低アルコールビールテイスト飲料の酸味及び渋みを抑制し、アルコール感及び醸造由来の複雑味を増強する方法。」
(2)甲1に記載された発明
甲1の請求の範囲の請求項1(摘記1-6)には、「0.49ppm以上の酢酸エチルと、0.83ppm以上のイソブタノールと、0.065ppm以上の酢酸イソアミルと、4.35ppm以上のイソアミルアルコールとを含む香気組成物を含む、低アルコールビールテイスト飲料。」が記載されており、[0001](摘記1-1)には、「「低アルコールビールテイスト飲料」とはアルコール含有量が1%(V/V)未満であるビールテイスト飲料をいう」ことが記載され、[0012](摘記1-2)には、「本発明の目的は、酸味及び渋味が抑制され、アルコール感及び醸造由来の複雑味が増強された低アルコールビールテイスト飲料を提供することにある」ことが記載されている。また、「香気組成物」について、[0064]~[0071](摘記1-3)には、「本発明で使用する香気組成物は、例えば、各香気成分を所定量配合することで製造することができる。また、好ましい一形態において、香気組成物は、前記麦汁発酵液から香気成分を気化させ、これを回収して、製造することができる」こと、「本発明の低アルコールビールテイスト飲料は、前記香気組成物を低アルコールビールテイスト飲料に所定量配合することで、製造することができる」こと、及び「香味バランスを最適化する観点から、更に好ましくは、香気組成物が配合される低アルコールビールテイスト飲料は、当該香気組成物を揮発させた麦汁発酵液を脱アルコール処理して得られた、低アルコールビールテイスト飲料、すなわち脱アルコール麦汁発酵液である」ことが記載されている。さらに、請求項1に係る発明の具体例として、[0073]~[0082](摘記1-4)には、所定の製造方法により「試料1」の「香気組成物含有低アルコールビールテイスト飲料を製造した」ことが記載され、[0091]~[0096](摘記1-5)には、試料1の配合割合が100%である「試料9」について、香気成分濃度の測定及び官能評価が行われたことが記載されている。そして、[0079]には、「試料1のアルコール度数は1%未満であった」ことが記載され、[0082]の[表5]には、試料1のコハク酸の濃度が59.6ppmであったことが記載され、[0096]の[表10]には、試料9の酢酸イソアミルの濃度が0.26ppmであったこと、並びに、酸味感の評価が1.00(弱く感じられる)、渋味感の評価が1.00(弱く感じられる)、アルコール感の評価が5.00(強く感じられる)、醸造由来の複雑味の評価が5.00(強く感じられる)、及びビールらしい香味の評価がA(良「A」)であったことが記載されている。
そうすると、甲1には、試料9に基づいて以下の発明が記載されている。
「麦汁発酵液から香気成分を気化させ、これを回収して製造した香気組成物を、当該香気組成物を揮発させた麦汁発酵液を脱アルコール処理して得られた脱アルコール麦汁発酵液に所定量配合することで製造された低アルコールビールテイスト飲料であって、コハク酸の濃度が59.6ppmであり、酢酸イソアミルの濃度が0.26ppmであり、アルコール度数が1%未満である、試料9の低アルコールビールテイスト飲料。」(以下、「甲1発明」という。)
また、甲1の請求の範囲の請求項9及び10(摘記1-1)には、「麦汁発酵液の炭酸ガス圧を0.05~0.25MPaに調整する工程;麦汁発酵液を減圧下で噴霧することで麦汁発酵液から炭酸ガス及び香気成分を気化させる工程;気化した香気成分を凝結させて香気組成物を得る工程;得られた香気組成物を低アルコールビールテイスト飲料に添加する工程;を包含する、低アルコールビールテイスト飲料の製造方法。」(請求項9)及び「麦汁発酵液の炭酸ガス圧を0.05~0.25MPaに調整する工程;麦汁発酵液を減圧下で噴霧することで麦汁発酵液から炭酸ガス及び香気成分を気化させる工程;気化した香気成分を凝結させて香気組成物を得る工程;得られた香気組成物を低アルコールビールテイスト飲料に添加する工程;を包含する、低アルコールビールテイスト飲料の酸味及び渋みを抑制し、アルコール感及び醸造由来の複雑味を増強する方法。」(請求項10)が記載されているところ、上記した[0078]~[0079]及び[0096]の[表10]等に記載された試料1及び9の製造方法及び官能評価結果の記載と合わせると、甲1には以下の発明が記載されている。
「麦汁発酵液の炭酸ガス圧を0.20MPaに調整する工程;麦汁発酵液を減圧下で噴霧することで麦汁発酵液から炭酸ガス及び香気成分を気化させる工程;気化した香気成分を凝結させて香気組成物を得る工程;香気成分を気化させた麦汁発酵液からアルコール及び揮発成分を取り除く工程;及び前記香気組成物を、脱アルコールされた麦汁発酵液に戻す工程;を包含する、甲1発明の低アルコールビールテイスト飲料の製造方法。」(以下、「甲1製法発明」という。)
「麦汁発酵液の炭酸ガス圧を0.20MPaに調整する工程;麦汁発酵液を減圧下で噴霧することで麦汁発酵液から炭酸ガス及び香気成分を気化させる工程;気化した香気成分を凝結させて香気組成物を得る工程;香気成分を気化させた麦汁発酵液からアルコール及び揮発成分を取り除く工程;及び前記香気組成物を、脱アルコールされた麦汁発酵液に戻す工程;を包含する、甲1発明の低アルコールビールテイスト飲料の酸味感の評価を1.00(弱く感じられる)、渋味感の評価を1.00(弱く感じられる)、アルコール感の評価を5.00(強く感じられる)、醸造由来の複雑味の評価を5.00(強く感じられる)、及びビールらしい香味の評価をA(良「A」)とする方法。」(以下、「甲1方法発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。本件明細書の[0012]における「本発明において「非アルコールビールテイスト飲料」とは、アルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満のビールテイスト飲料を意味する。」との記載を参酌すると、甲1発明における「アルコール度数が1%未満である、試料9の低アルコールビールテイスト飲料。」は、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料。」に相当する。また、甲1発明における「コハク酸の濃度が59.6ppmであり、」は、本件発明1における「コハク酸の含有量が48.5~150ppmである、」を満たしている。
そうすると、両者は、
「コハク酸の含有量が48.5~150ppmである、非アルコールビールテイスト飲料。」
の点で一致し、
相違点1:本件発明1は「2,5-ジメチルピラジンの含有量が0.1~3.5ppbであり、」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されない点
で相違する。
そこで、相違点1について検討する。
イ 相違点1について
甲1には、「2,5-ジメチルピラジン」について何ら記載されておらず、まして、2,5-ジメチルピラジンの含有量を特定の範囲にする動機も見いだせない。さらに、他の証拠の記載を参酌しても、甲1発明における2,5-ジメチルピラジンの含有量を確定することはできないし、当業者が甲1発明において2,5-ジメチルピラジンの含有量を「0.1~3.5ppb」という特定の範囲に調整する動機があったとも認められない。そして、上記特定事項を備える本件発明1が「非アルコールビールテイスト飲料における煮出した麦茶様の異臭を低減することが可能となる」という効果を発揮することは、当業者が予測することができなかったことである。
よって、相違点1は実質的な相違点であり、かつ、甲1及び他の全ての証拠の記載を参酌しても、相違点1に係る本件発明1の特定事項は当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)新規性について
申立人は申立書の27~28頁において、「一般的なビール中の2,5-ジメチルピラジンの含有量が0.1~5.6μg/l(すなわち、0.1~5.6ppb)程度である」こと(甲2の第248~249頁)、「ピルスナータイプの市販ビール中の2,5-ジメチルピラジンの含有量が1.3ppb程度である」こと(甲3の[0042]、[0050]、[表1])、「脱アルコール処理前の麦汁発酵液中の香気成分と、脱アルコール処理されていない一般的なビールの香気成分との間で大きな違いはないため、脱アルコール処理前の麦汁発酵液中の2,5-ジメチルピラジンの含有量は、甲2(第248頁、第1表)に記載された一般的なビールの水準(0.1~5.6ppb)と同程度であると考えられる」こと、及び「低アルコールビールテイスト飲料の香気成分の含有量は、脱アルコール処理前の麦汁発酵液よりも減少しているものの・・・最大で20%・・・程度の量で存在する」から、「脱アルコール処理前の麦汁発酵液中の2,5-ジメチルピラジンの含有量が0.1~5.6ppb程度である場合、低アルコールビールテイスト飲料中の2,5-ジメチルピラジンの含有量は最大で1.12ppb・・・程度と考えられる。したがって、・・・実質的な相違点ではない。」と主張している。
しかし、甲2及び甲3に記載された2,5-ジメチルピラジンの含有量は、甲1発明の原料とされた脱アルコール処理前の麦汁発酵液とは異なるビールについての測定値であるから、甲1発明の原料とされた脱アルコール処理前の麦汁発酵液における2,5-ジメチルピラジンの含有量が甲2及び甲3に記載された含有量と同程度であったという主張は根拠がなく採用することができない。また、申立人は甲1の[表2](脱アルコール処理前)と[表4](脱アルコール処理後)の酢酸イソアミルの含有量の比較に基づき、他の化合物も同じ割合(20%)まで減少すると仮定して2,5-ジメチルピラジンの含有量を推算しているが、甲1には2,5-ジメチルピラジンについて何ら記載されていないから、甲1発明において脱アルコールされた麦汁発酵液に戻すべき「香気成分」の一つとして認識されていたとはいえず、したがって、酢酸イソアミルと同じ割合で2,5-ジメチルピラジンが戻されたという主張も根拠がなく採用することができない。さらに、仮に脱アルコール処理前の麦汁発酵液中の2,5-ジメチルピラジンの含有量が「0.1~5.6ppb程度」であり、低アルコールビールテイスト飲料中の含有量がその「最大で20%程度」であるとの前提を受け入れて計算しても、その含有量は「最大で0.02~1.12ppb」であるといえるに止まるから、必ずしも相違点1に係る「0.1~3.5ppb」であったとはいえない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
(イ)進歩性について
申立人は申立書の28~29頁において、甲1は「香気成分が減少すると、香気成分によってマスキングされていた渋味や酸味等の不快な香味が顕在化」すること、「香気成分を補うことによって、酸味及び渋味が抑制され、アルコール感及び醸造由来の複雑味が増強された低アルコールビールテイスト飲料を提供することができること」及び「香気組成物が通常のビールに含まれる香気成分を含有してもよいこと」を開示しているから、「酸味等の香味を改善するために、香気組成物の製造過程においてビールの香気成分として知られてる2,5-ジメチルピラジン等の香気成分をできるだけ回収し、必要に応じて2,5-ジメチルピラジンを更に補うことで、最終的に低アルコールビールテイスト飲料中の2,5-ジメチルピラジンの含有量を・・・一般的なビールの水準(0.1~5.6ppb程度)の範囲内で調整及び最適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない」と主張し、さらに、「当業者であれば、低アルコールビールテイスト飲料において、2,5-ジメチルピラジンのようなビールの香気成分の含有量を一般的なビールの含有量と同程度に調整することによって低アルコールビールテイスト飲料の香味を改善できることを容易に認識及び予測できる」から(甲1、甲6、甲7、甲8)、本件特許発明の効果は「当業者が予測することができたものであり、甲1発明と比較した有利な効果ではない」と主張している。
しかし、上記(ア)にも記載したとおり、甲1には2,5-ジメチルピラジンについて何ら記載されておらず、また、甲6~甲8にも2,5-ジメチルピラジンについて何ら記載されていないから、当業者が甲1発明の「香気成分」において2,5-ジメチルピラジンに着目する動機があったとはいえず、まして、当該化合物の含有量を相違点1に係る「0.1~3.5ppb」という特定の範囲に調整する動機があったとも認められない。そして、甲1及び他の全ての証拠の記載を参照しても、2,5-ジメチルピラジンの含有量を相違点1に係る特定の範囲に調整することと、「非アルコールビールテイスト飲料における煮出した麦茶様の異臭を低減すること」とを結びつける記載はなく、また、そのような作用効果が本件特許の出願前に周知の技術的事項であったとも認められないから、本件発明1の効果は当業者が予測することができなかったものである。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、本件発明1は甲1発明ではなく、かつ、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、いずれも甲1発明ではなく、かつ、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明4について
ア 本件発明4と甲1製法発明との対比
甲1製法発明を構成する各工程は、甲1発明の低アルコールビールテイスト飲料を製造する工程、すなわち、「コハク酸の濃度が59.6ppmであり、酢酸イソアミルの濃度が0.26ppmであり、アルコール度数が1%未満である、試料9の低アルコールビールテイスト飲料」を製造する工程であるから、実質的に「コハク酸の濃度を59.6ppmに調整する工程」を含むものといえる。そこで、本件発明1と甲1発明との対比を踏まえ、本件発明4と甲1製法発明とを対比すると、両者は、
「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなる、方法。」
の点で一致し、
相違点1’:本件発明4は「2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程」を含んでなると特定するのに対し、甲1製法発明はそのように特定されない点
で相違する。
そこで、相違点1’について検討する。
イ 相違点1’について
相違点1’は、実質的に相違点1と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イ及びウと同じことがいえる。よって、相違点1’は実質的な相違点であり、かつ、甲1及び他の全ての証拠の記載を参酌しても、相違点1’に係る本件発明4の特定事項は当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 本件発明4についてのまとめ
以上のことから、本件発明4は甲1製法発明ではなく、かつ、甲1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件発明5について
本件発明5は請求項4を引用し、本件発明4の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(5)で検討した本件発明4と同様の理由により、本件発明5は甲1製法発明ではなく、かつ、甲1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)本件発明6について
ア 本件発明6と甲1方法発明との対比
甲1方法発明を構成する各工程は、それらの工程によって、得られる「甲1発明の低アルコールビールテイスト飲料」、すなわち、「コハク酸の濃度が59.6ppmであり、酢酸イソアミルの濃度が0.26ppmであり、アルコール度数が1%未満である、試料9の低アルコールビールテイスト飲料」の評価を調整する工程であるから、実質的に「コハク酸の濃度を59.6ppmに調整する工程」を含むものといえる。そこで、本件発明1と甲1発明との対比を踏まえ、本件発明6と甲1方法発明とを対比すると、両者は、
「非アルコールビールテイスト飲料についての方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなる、方法。」
の点で一致し、
相違点1”:本件発明6は「2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程」を含んでなると特定するのに対し、甲1方法発明はそのように特定されない点
相違点2”:本件発明6は「非アルコールビールテイスト飲料における煮出した麦茶様の異臭を低減する方法」と特定するのに対し、甲1方法発明は「甲1発明の低アルコールビールテイスト飲料の酸味感の評価を1.00(弱く感じられる)、渋味感の評価を1.00(弱く感じられる)、アルコール感の評価を5.00(強く感じられる)、醸造由来の複雑味の評価を5.00(強く感じられる)、及びビールらしい香味の評価をA(良「A」)とする方法」である点
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
イ 相違点1”について
相違点1”は、実質的に相違点1と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イ及びウと同じことがいえる。よって、相違点1”は実質的な相違点であり、かつ、甲1及び他の全ての証拠の記載を参酌しても、相違点1”に係る本件発明6の特定事項は当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)相違点1”について
申立人は申立書の33頁において、既述の相違点1と同様に、相違点1”は実質的な相違点ではないか、又は当業者にとって容易に想到できるものである旨を主張しているが、申立人の主張を採用できないことは(3)ウに記載したとおりである。
(イ)相違点2”について
念のため、相違点2”に関する申立人の主張についても検討する。申立人は申立書の33~34頁において、「香気成分の減少(除去)は低アルコールビールテイスト飲料の香味を損ない、例えば、穀物が発酵した際に生成する不快臭(例えば、よだれ臭、いも臭、納豆臭)が目立つことは、自明の課題」であること、相違点2”に係る「煮出した麦茶様の異臭」という表現自体は、甲1、甲6~甲8に明記されていないものの、穀物に関連する臭いという観点で上記の不快臭の範疇に入る」ものであり、「「煮出した麦茶様の異臭」と、上記の不快臭との間に実質的な差異があるとは言えない」こと、及び「甲1方法発明においても、・・・2,5-ジメチルピラジン等の成分の含有量を調整することによって、結果的に煮出した麦茶様の異臭を低減していると考えられる」ことから、相違点2”は実質的な相違点ではないか、当業者であれば容易に想到できると主張している。
しかし、「煮出した麦茶様の異臭」と「穀物が発酵した際に生成する不快臭(例えば、よだれ臭、いも臭、納豆臭)」とが実質的に同じ臭いであるとまではいえないから、相違点2”は実質的な相違点である。
また、上記(3)ウ(ア)及び(イ)にも記載したとおり、甲1及び甲6~甲8のいずれにも2,5-ジメチルピラジンについて何ら記載されておらず、甲1及び他の全ての証拠の記載を参照しても、2,5-ジメチルピラジンの含有量と相違点2”に係る「非アルコールビールテイスト飲料における煮出した麦茶様の異臭を低減すること」とを結びつける記載はなく、さらに、2,5-ジメチルピラジンが上記のような異臭の低減をもたらすことが本願出願前に周知の技術的事項であったとも認められないから、当業者が、甲1方法発明において2,5-ジメチルピラジンの含有量に着目する動機はなく、その含有量を特定の範囲に調整する動機もなく、それによって「煮出した麦茶様の異臭を低減」することを動機付けられることもないといえる。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 本件発明6についてのまとめ
以上のことから、本件発明6は甲1方法発明ではなく、かつ、甲1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(8)本件発明7~10について
本件発明7~10と甲1方法発明とを対比すると、それらはいずれも、
「非アルコールビールテイスト飲料についての方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなる、方法。」
の点で一致し、少なくとも、
相違点1’’’:本件発明7~10は「2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程」を含んでなると特定するのに対し、甲1方法発明はそのように特定されない点
で相違する。
そして、相違点1’’’は、実質的に相違点1と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イ及びウと同じことがいえる。よって、相違点1’’’は実質的な相違点であり、かつ、甲1及び他の全ての証拠の記載を参酌しても、相違点1’’’に係る本件発明7~10の特定事項は当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
以上のことから、本件発明7~10は、いずれも甲1方法発明ではなく、かつ、甲1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(9)本件発明11について
本件発明11は請求項6~10のいずれか一項を引用し、本件発明6~10のいずれかの発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(7)及び(8)で検討した本件発明6~10と同様の理由により、本件発明11は甲1方法発明ではなく、かつ、甲1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(10)理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び理由2(甲1に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~11は、いずれも甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~11は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
よって、理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び理由2(甲1に基づく進歩性欠如)により本件発明1~11についての特許を取り消すことはできない。
2.理由3(サポート要件違反)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件発明の課題について
本件明細書の[0007]等の記載から見て、本件発明1~11の課題は「煮出した麦茶様の異臭が低減された非アルコールビールテイスト飲料及びその製造方法の提供、並びに非アルコールビールテイスト飲料における煮出した麦茶様の異臭を低減する方法の提供」にあるものと認められる。
(3)本件明細書の記載について
本件明細書の[0006]には、課題を解決する手段に関し、「2,5-ジメチルピラジンの濃度を調整することにより、非アルコールビールテイスト飲料における煮出した麦茶様の異臭を低減できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。」と記載され、[0009]には、「本発明によれば、非アルコールビールテイスト飲料における煮出した麦茶様の異臭を低減することが可能となる。また、本発明によれば、非アルコールビールテイスト飲料において、蒸した芋様の異臭の低減効果、後味の酸味の低減効果、後味の刺激感の低減効果、味の厚みの増強効果、および味のバランスの改善効果を得ることも可能である。」と記載されている。また、[0012]には、「本発明において「非アルコールビールテイスト飲料」とは、アルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満のビールテイスト飲料を意味する」こと、及び「アルコール(エタノール)は、アルコール入りビールテイスト飲料においてビールらしい香味の調和に寄与する成分であり、その濃度が少なくなるほどに香味上の課題が生じやすくなる」ことが記載され、[0016]~[0017]には、2,5-ジメチルピラジン、酢酸イソアミル及びコハク酸の含有量の調整方法について記載され、[0018]には、2,5-ジメチルピラジンの好ましい含有量について記載され、[0022]には、コハク酸の好ましい含有量について記載され、[0035]には、本件発明の非アルコールビールテイスト飲料の製造方法について、当該技術分野においてよく知られている一般的な方法において、いずれかの段階で2,5-ジメチルピラジンの含有量を調整することによって製造することができることが記載され、[0037]~[0041]には、2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1ppb以上に調整する工程を含む点で共通する非アルコールビールテイスト飲料における「煮出した麦茶様の異臭を低減する方法」等の各種方法の発明について記載されている。そして、[0042]~[0053]には、実施例として、発酵麦芽飲料を製造した後、アルコール除去処理を行って得たベース飲料サンプルに対し、表2(試験1~試験3)に記載の濃度となるよう2,5-ジメチルピラジン、酢酸イソアミル又はコハク酸を添加し、「煮出した麦茶様の異臭」、「蒸した芋様の異臭」、「後味の酸味」、「後味の刺激感」、「味の厚み」及び「味のバランス」の官能評価を行った結果が記載されており、[0053]には、「表2中の試験1の結果から、2,5-ジメチルピラジンは煮出した麦茶様の異臭の低減効果、蒸した芋様の異臭の低減効果、後味の酸味の低減効果、後味の刺激感の低減効果、味の厚みの増強効果、および味のバランスの改善効果を奏することが明らかとなり、特に、0.1ppb以上(例えば0.1~3.5ppb)の濃度で効果が顕著となることがわかった。次に、試験2の結果から、2,5-ジメチルピラジンに加えて、酢酸イソアミルの濃度を1~10ppmに調整すると、前記効果がより顕著になることがわかった。また、試験3の結果から、2,5-ジメチルピラジンに加えて、コハク酸の濃度を48.5~150ppmに調整すると、前記効果がより顕著になることがわかった。さらに、試験4の結果から、2,5-ジメチルピラジン、酢酸イソアミルおよびコハク酸の組み合わせの濃度調整により、前記効果がより顕著になることがわかった。」と記載されている。
(4)サポート要件についての判断
本件明細書の[0006]には、「2,5-ジメチルピラジンの濃度を調整することにより、非アルコールビールテイスト飲料における煮出した麦茶様の異臭を低減できることを見出した」と記載されており、[0018]には、2,5-ジメチルピラジンの含有量の下限値は0.1ppbとされ、上限値は特に限定されるものではないが、例えば3.5ppbとされることが記載され、[0035]には、本件発明の非アルコールビールテイスト飲料は、当技術分野においてよく知られている一般的な方法において、いずれかの段階で2,5-ジメチルピラジンの含有量を調整することによって製造することができることが記載されている。
また、実施例の官能評価結果を参照すると、試験1において、2,5-ジメチルピラジンの含有量が0.07ppbである試験区1が「煮出した麦茶様の異臭の低減効果」の官能評価において「1」(弱い)の基準とされているのに対し、2,5-ジメチルピラジンの含有量が0.1~3.5ppbの範囲である試験区2~5の評価結果は4~4.9という基準より強い評価結果となっており、これらよりも2,5-ジメチルピラジンの含有量を増やし5ppbとした試験区6の評価結果は2.2に下がったことが読み取れる。さらに、試験2の試験区2、7~10は2,5-ジメチルピラジンの含有量が0.1ppbであり、試験2の試験区5、11~14は2,5-ジメチルピラジンの含有量が3.5ppbであり、試験3の試験区2、15~18は2,5-ジメチルピラジンの含有量が0.18ppbであり、試験3の試験区5、19~22は2,5-ジメチルピラジンの含有量が3.5ppbであり、試験4の試験区23は2,5-ジメチルピラジンの含有量が0.1ppbであるところ、「煮出した麦茶様の異臭の低減効果」の官能評価は3.3~15(固定)といういずれも基準より高い評価結果であったことが読み取れる。
これらの記載に接した当業者は、非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量に応じて「煮出した麦茶様の異臭の低減効果」が増減し、特に、一般記載において好ましい範囲と記載されている0.1~3.5ppbの含有量の場合に基準より高い異臭の低減効果が得られると理解することができ、また、当該効果は特殊な製造方法に由来するものではなく、2,5-ジメチルピラジンの含有量に応じて増減する効果であることを理解することができる。
そうすると、当業者は、
「2,5-ジメチルピラジンの含有量が0.1~3.5ppbである、非アルコールビールテイスト飲料」
の範囲で発明の課題を解決できると認識することができる。本件発明1~3は、当業者が発明の課題を解決できると認識することができる上記発明をさらに限定した発明であるから、いずれも当業者が発明の課題を解決することができると認識することができるものといえる。また、本件発明4~11についても同様である。
(5)申立人の主張について
申立人は、上記第3 1.(3)のように主張しているが、以下のとおり、いずれの主張も採用することはできない。
ア アルコール濃度について
本件明細書の[0012]には、「アルコール(エタノール)は、アルコール入りビールテイスト飲料においてビールらしい香味の調和に寄与する成分であり、その濃度が少なくなるほどに香味上の課題が生じやすくなる」と記載されているから、「非アルコールビールテイスト飲料」と認識される1%(v/v)未満のビールテイスト飲料においては、実施例1と同様の香味の問題が生じると考えられる。また、[0006]における「2,5-ジメチルピラジンの濃度を調整することにより、非アルコールビールテイスト飲料における煮出した麦茶様の異臭を低減できることを見出した」との記載、[0018]、[0022]に記載された2,5-ジメチルピラジン及びコハク酸の好ましい含有量の記載及び実施例の官能評価結果の記載に接した当業者は、実施例1(アルコール濃度0.001v/v%)で確認された2,5-ジメチルピラジンの濃度を調整することによって得られる香味改善効果は、アルコール濃度が0.001v/v%を超え1v/v%未満である場合にも同様の傾向で得られると認識することができ、したがって、発明の課題を解決できると認識することができる。
イ 飲料サンプルに含まれる成分について
実施例1においては、発酵麦芽飲料を脱アルコール化した脱アルコール麦汁発酵液をベース飲料サンプルとし、2,5-ジメチルピラジンの濃度のみを変更した試験区1~6、酢酸イソアミルの濃度のみを変更した試験区2、7~10、5、11~14、コハク酸の濃度のみを変更した試験区2、15~18、5、19~22及び対照試験区23の官能評価が行われているから、それらの評価結果に接した当業者は、脱アルコール麦汁発酵液に含まれる2,5-ジメチルピラジン、酢酸イソアミル及びコハク酸以外の化合物は、2,5-ジメチルピラジン、酢酸イソアミル又はコハク酸が個別に発揮する香味改善効果を阻害するものではないと認識することができ、したがって、[0032]に例示されるような実施例1以外の非アルコールビールテイスト飲料、即ち本件発明1に相当する非アルコールビールテイスト飲料の範囲において、2,5-ジメチルピラジン、酢酸イソアミル又はコハク酸による香味改善効果が得られ、発明の課題を解決できると認識することができる。
(6)申立理由3(サポート要件違反)についてのまとめ
以上のことから、特許請求の範囲の記載は明細書のサポート要件に適合するものといえるので、本件発明1~11はいずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、申立理由3(サポート要件違反)により本件発明1~11についての特許を取り消すことはできない。
3.理由4(同日出願)について
(1)甲9に係る発明
甲9に係る出願(特願2024-550274号)は、本件特許に係る出願の出願日と同日である令和5年10月18日を国際出願日とする出願であって、その請求項1~11に係る発明(以下、それぞれ「甲9発明1」~「甲9発明11」という。)は、甲9(特許第7581572号公報)の請求項1~11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「[請求項1]
2,5-ジメチルピラジンの含有量が0.1~3.5ppbであり、コハク酸の含有量が48.5~150ppmであり、かつ、EBC色度が8.5EBC以下である、非アルコールビールテイスト飲料。
[請求項2]
アルコール(エタノール)濃度が0.01v/v%未満である、請求項1に記載の非アルコールビールテイスト飲料。
[請求項3]
酢酸エチルの含有量が3.5~60ppmである、請求項1または2に記載の非アルコールビールテイスト飲料。
[請求項4]
非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、当該方法は、前記非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程、およびコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなり、前記非アルコールビールテイスト飲料のEBC色度が8.5EBC以下である、方法。
[請求項5]
前記非アルコールビールテイスト飲料のアルコール(エタノール)濃度が0.01v/v%未満である、請求項4に記載の方法。
[請求項6]
非アルコールビールテイスト飲料における煮出した麦茶様の異臭を低減する方法であって、当該方法は、前記非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程、およびコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなり、前記非アルコールビールテイスト飲料のEBC色度が8.5EBC以下である、方法。
[請求項7]
非アルコールビールテイスト飲料における蒸した芋様の異臭を低減する方法であって、当該方法は、前記非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程、およびコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなり、前記非アルコールビールテイスト飲料のEBC色度が8.5EBC以下である、方法。
[請求項8]
非アルコールビールテイスト飲料における後味の酸味を低減する方法であって、当該方法は、前記非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程、およびコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなり、前記非アルコールビールテイスト飲料のEBC色度が8.5EBC以下である、方法。
[請求項9]
非アルコールビールテイスト飲料における後味の刺激感を低減する方法であって、当該方法は、前記非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程、およびコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなり、前記非アルコールビールテイスト飲料のEBC色度が8.5EBC以下である、方法。
[請求項10]
非アルコールビールテイスト飲料における味の厚みを増強する方法であって、当該方法は、前記非アルコールビールテイスト飲料における2,5-ジメチルピラジンの含有量を0.1~3.5ppbに調整する工程、およびコハク酸の含有量を48.5~150ppmに調整する工程を含んでなり、前記非アルコールビールテイスト飲料のEBC色度が8.5EBC以下である、方法。
[請求項11]
前記非アルコールビールテイスト飲料のアルコール(エタノール)濃度が0.01v/v%未満である、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲9発明1との対比
本件発明1と甲9発明1とを対比すると、両者は、
「2,5-ジメチルピラジンの含有量が0.1~3.5ppbであり、コハク酸の含有量が48.5~150ppmである、非アルコールビールテイスト飲料。」
の点で一致し、
相違点甲9-1:本件発明1はEBC色度について特定されないのに対し、甲9発明1は「EBC色度が8.5EBC以下」であると特定する点
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
イ 相違点甲9-1について
例えば、甲10(p.356第9行)に、「ビールの色度は、麦芽に含まれているメラノイジンとカラメルと麦汁煮沸の強度に左右される」と記載されているとおり、非アルコールビールテイスト飲料のEBC色度は、単にアルコール濃度によって決まるものではなく、また、2,5-ジメチルピラジンの含有量や、コハク酸の含有量によって決まるものでもない。さらに、相違点甲9-1に係る事項が本件特許に係る出願の出願日当時において、非アルコールビールテイスト飲料における周知技術又は慣用技術といえるものであったとも認められない。よって、相違点甲9-1は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)であるとはいえない。また、相違点甲9-1は、甲9発明1の発明特定事項を本件発明1において上位概念又は下位概念として表現したことによる差異であるとはいえない。さらに、相違点甲9-1は、単なるカテゴリー表現上の差異であるともいえない。
よって、相違点甲9-1は実質的な相違点である。
ウ 申立人の主張について
申立人は申立書の46~47頁において、「EBC色度を8.5EBC以下に調整することは周知技術であり、例えば、日本でも一般的な淡色ピルスナービールのように5.3~7.5EBC(例えば7.2EBC)のEBC色度を有するビールが知られている(甲3の[0042]、[0050]、[表1]、甲10の第356頁)。また、両者の特許明細書において、EBC色度を8.5EBC以下に調整することに技術的意義があることは記載されておらず、そのようなEBC色度の特定の有無が新たな効果を奏することは認められない。」と主張している。
しかし、甲3の請求項1には「色度が10.0~75.0°EBC」であるビールテイスト飲料の発明が記載され、[0013]には「ビールテイスト飲料の色度は、10.0°EBC以上が好ましく、・・・30.0°EBC以上がより好ましい。」と記載されており、申立人が引用する「7.2EBC」の例は「ビールらしい琥珀色」の官能評価結果が「1点」(全くビールらしい琥珀色ではない)の比較例にすぎない。また、甲10の356頁には、申立人が引用する「ドイツの淡色ピルズナービール5.3-7.5」という記載の他に、「ドルトムンド、強ラガー、エキスポート9.5-11、ウイーンとメルツェンは18-30、黒ビール45-95EBCである。」という記載、及び米国の市販各種ビールの色度(SRM)の例として「2-3」から「40+」まで12種類のEBCの例が記載されている。そうすると、甲3及び甲10の記載を参酌しても、非アルコールビールテイスト飲料のEBC色度を8.5EBC以下に調整することが、本件特許に係る出願の出願日当時において周知の技術的事項であったとは認められないから、相違点甲9-1が課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)とはいえない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
以上のことから、本件発明1は甲9発明1と同一ではない。
オ 本件発明1と甲9発明2及び4~11との対比、判断
本件発明1と甲9発明2及び4~11とを対比すると、いずれも少なくとも相違点9-1と同じ点で相違し、上記イ及びウと同様に判断される。よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲9発明2及び4~11のいずれとも同一ではない。
カ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、本件発明1は甲9発明1、2及び4~11のいずれとも同一ではない。
(3)本件発明2及び4~11について
本件発明2及び4~11と甲9発明1、2及び4~11とを対比すると、いずれの場合も少なくとも相違点9-1と同じ点で相違し、上記(2)イ及びウと同様に判断される。よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2及び4~11は甲9発明1、2及び4~11のいずれとも同一ではない。
(4)申立理由4(同日出願)についてのまとめ
以上のことから、本件発明1、2及び4~11は、いずれも甲9発明1、2及び4~11と同一ではないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、申立理由4(同日出願)により本件発明1、2及び4~11についての特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明1~11についての特許は、上記のいずれの特許異議申立理由によっても取り消すことはできない。
また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700511