特許異議申立
2023-700729
作業車両
- 審判番号
- 2023-700729
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-088533
- 登録番号
- 7206322
- 請求日
- 2023年07月14日
- 審決日
- 2024年10月03日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社クボタ
- 【権利者代理人】安田岡本弁理士法人
- 【異議申立人】堀内 志穂
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 一ノ瀬 覚
- 審判官 澤崎 雅彦
- 分類
- P1651.121-YAA(B62D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7206322号発明「作業車両」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7206322号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔4~8〕、9について訂正することを認める。
特許第7206322号の請求項4~9に係る特許を維持する。
特許第7206322号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7206322号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成30年1月23日に出願された特願2018-9219号の一部を、令和3年5月26日に新たな特許出願としたものであって、令和5年1月6日に特許権の設定登録がされ、同年1月17日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許異議申立人堀内志穂(以下「申立人」という。)により、請求項1、4~8に係る特許について特許異議の申立てがされた。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 7月14日 特許異議の申立て
同年12月21日付け 取消理由通知書
令和6年 2月14日 訂正請求書、意見書(特許権者)
同年 4月 5日 意見書(申立人)
同年 5月21日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 7月23日差出 訂正請求書、意見書(特許権者)
同年 8月29日 意見書(申立人)
なお、特許法第120条の5第7項の規定により、令和6年2月14日の訂正の請求は、取り下げられたものとみなす。また、同法第44条第2項の規定により、本件特許に係る出願は、特願2018-9219号の出願日である平成30年1月23日にされたものとみなす。
第2 本件訂正について
令和6年7月23日差出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、4~9について訂正することを求めるものである。
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである(なお、下線部が訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部の後側に位置している」とあるのを、「前記シャトルレバーと前記操舵切換スイッチの両者が中立位置にあるときに、前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部に対し、前記ステアリングシャフトの軸方向の上方からみて相対的に後方側に位置している」に訂正する(請求項4を直接的ないし間接的に引用する請求項5、7、8も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項2~4のいずれか1項に記載の」に訂正する(請求項5を直接的ないし間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に
「 前記操舵切換スイッチは、中立位置から上、下、前、後の方向のうち、少なくとも2方向への操作が可能であり、
前記操舵切換スイッチが、中立位置から前記2方向のうちの第一所定方向への操作がされることにより前記自動操舵の走行基準ラインの始点が設定され、
前記操舵切換スイッチが、中立位置から前記2方向のうちの第二所定方向への操作がされることにより前記自動操舵が開始される請求項1~5のいずれか1項に記載の作業車両。」
とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式請求項に改め、
「 ステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトを収容するカバーと、
前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、
前記車体の走行方向を切り替える操作を行うシャトルレバーと、
前記ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、前記自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチと、
を備え、
前記操舵切換スイッチが前記ステアリングシャフトに対して前記シャトルレバーと同一方向に配置され且つ、前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部よりも前記ステアリングハンドルの近くに配置され、
前記シャトルレバーと前記操舵切換スイッチとは共に前記ステアリングシャフトから離れる一側方に前記カバーから突出されるとともに、前記シャトルレバーの把持部と前記操舵切換スイッチの把持部とは共に前記ステアリングシャフトから離れる一側方に延びており、
前記操舵切換スイッチは、中立位置から上、下、前、後の方向のうち、少なくとも2方向への操作が可能であり、
前記操舵切換スイッチが、中立位置から前記2方向のうちの第一所定方向への操作がされることにより前記自動操舵の走行基準ラインの始点が設定され、
前記操舵切換スイッチが、中立位置から前記2方向のうちの第二所定方向への操作がされることにより前記自動操舵が開始される作業車両。」
に訂正する(請求項6を直接的ないし間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項2~6のいずれか1項に記載の」に訂正する(請求項7を引用する請求項8も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に
「 前記車体に設けられ且つ、測位衛星の信号に基づいて前記車体の位置を検出する位置検出装置と、
前記位置検出装置で検出された前記車体の位置を補正する補正スイッチと、
を備えている請求項1~6のいずれか1項に記載の作業車両。」
とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式請求項に改め、
「 ステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトを収容するとともに前記ステアリングシャフトの前方に表示装置を支持するカバーと、
前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、
前記車体の走行方向を切り替える操作を行うシャトルレバーと、
前記ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、前記自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチと、
前記車体に設けられ且つ、測位衛星の信号に基づいて前記車体の位置を検出する位置検出装置と、
前記位置検出装置で検出された前記車体の位置を補正する補正スイッチと、
を備え、
前記操舵切換スイッチが前記ステアリングシャフトに対して前記シャトルレバーと同一方向に配置され且つ、前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部よりも前記ステアリングハンドルの近くに配置され、
前記シャトルレバーと前記操舵切換スイッチとは共に前記ステアリングシャフトから離れる一側方に前記カバーから突出されるとともに、前記シャトルレバーの把持部と前記操舵切換スイッチの把持部とは共に前記ステアリングシャフトから離れる一側方に延びており、
前記補正スイッチは、前記表示装置よりも後方であって、且つ前記ステアリングシャフトに対して前記一側方とは反対側の他側方に配置されている作業車両。」
にして、新たな請求項9とする。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項2~7のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(8)一群の請求項及び別の訂正単位とする求め
本件訂正の請求は、訂正前の請求項5~8が請求項1または4を直接的ないし間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項1、4~9について請求されたものである。
また、訂正後の請求項4~9についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項4における「操舵切換スイッチの把持部」と「シャトルレバーの把持部」との位置関係を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、本件明細書の【0054】、【0065】及び本件図面の図11~14の記載からみて、新規事項を追加するものではないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3、5、7について
訂正事項3、5、7は、訂正事項1により請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなったことに伴い、引用する請求項から請求項1を除外するものであり、明瞭でない記載の釈明、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項6が請求項1~5のいずれか1項の記載を引用する記載であるところ、その請求項1を引用するものについて、訂正事項1により請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなったことに伴い、独立形式請求項とするものであり、明瞭でない記載の釈明、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。
(5)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項7が請求項1~6のいずれか1項の記載を引用する記載であるところ、その請求項1を引用するものについて、訂正事項1により請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなったことに伴い、新たな独立形式請求項とし、さらに、「カバー」が「ステアリングシャフトの前方に表示装置」を支持するものであることを限定し、かつ、「表示装置」と「ステアリングシャフト」との位置関係において「補正スイッチ」の配置位置を限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件明細書の【0049】、【0051】、【0066】、【0067】、及び本件図面の図11~13の記載からみて、新規事項を追加するものではないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 訂正事項6に対する申立人の主張について
申立人は、令和6年8月29日付けの意見書の5~7ページの「(請求項9について)」において、訂正事項6のうち「前記補正スイッチは、前記表示装置よりも後方であって、且つ前記ステアリングシャフトに対して前記一側方とは反対側の他側方に配置されている」という訂正事項は、特許請求の範囲を変更するものであり、訂正要件を満たしていない旨主張する。
しかしながら、訂正前の請求項1を引用する請求項7は「補正スイッチ」に係る事項を有するものであり、かつ、「補正スイッチ」の配置位置の特定がなかったところ(上記1(6)参照。)、上記訂正事項は当該「補正スイッチ」の配置位置を特定して限定するものであるから、特許請求の範囲を変更するものにはあたらない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
4 小括
以上のとおり、上記訂正事項による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔4~8〕、9について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項4~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明4」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項4~9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
(削除)
・・・
【請求項4】
ステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフトと、
前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、
前記車体の走行方向を切り替える操作を行うシャトルレバーと、
前記ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、前記自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチと、
を備え、
前記操舵切換スイッチが前記ステアリングシャフトに対して前記シャトルレバーと同一方向に配置され且つ、前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部よりも前記ステアリングハンドルの近くに配置されており、
前記シャトルレバーと前記操舵切換スイッチの両者が中立位置にあるときに、前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部に対し、前記ステアリングシャフトの軸方向の上方からみて相対的に後方側に位置している作業車両。
【請求項5】
前記車体の後部に設けられ且つ作業装置を連結する連結部と、
前記連結部の昇降操作を行う昇降レバーと、
を備え、
前記昇降レバーは、前記ステアリングシャフトを挟んで前記操舵切換スイッチと反対側に配置されている請求項2~4のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項6】
ステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトを収容するカバーと、
前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、
前記車体の走行方向を切り替える操作を行うシャトルレバーと、
前記ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、前記自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチと、
を備え、
前記操舵切換スイッチが前記ステアリングシャフトに対して前記シャトルレバーと同一方向に配置され且つ、前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部よりも前記ステアリングハンドルの近くに配置され、
前記シャトルレバーと前記操舵切換スイッチとは共に前記ステアリングシャフトから離れる一側方に前記カバーから突出されるとともに、前記シャトルレバーの把持部と前記操舵切換スイッチの把持部とは共に前記ステアリングシャフトから離れる一側方に延びており、
前記操舵切換スイッチは、中立位置から上、下、前、後の方向のうち、少なくとも2方向への操作が可能であり、
前記操舵切換スイッチが、中立位置から前記2方向のうちの第一所定方向への操作がされることにより前記自動操舵の走行基準ラインの始点が設定され、
前記操舵切換スイッチが、中立位置から前記2方向のうちの第二所定方向への操作がされることにより前記自動操舵が開始される作業車両。
【請求項7】
前記車体に設けられ且つ、測位衛星の信号に基づいて前記車体の位置を検出する位置検出装置と、
前記位置検出装置で検出された前記車体の位置を補正する補正スイッチと、
を備えている請求項2~6のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項8】
前記操舵切換スイッチの把持部の外端は前記シャトルレバーの把持部の外端よりも前記ステアリングハンドルの外端に近く、且つ、前記ステアリングシャフトの軸方向の上方視点において、前記操舵切換スイッチの把持部は前記ステアリングハンドルと投影面積において少なくとも一部が重なる位置に配置されている請求項2~7のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項9】
ステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトを収容するとともに前記ステアリングシャフトの前方に表示装置を支持するカバーと、
前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、
前記車体の走行方向を切り替える操作を行うシャトルレバーと、
前記ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、前記自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチと、
前記車体に設けられ且つ、測位衛星の信号に基づいて前記車体の位置を検出する位置検出装置と、
前記位置検出装置で検出された前記車体の位置を補正する補正スイッチと、
を備え、
前記操舵切換スイッチが前記ステアリングシャフトに対して前記シャトルレバーと同一方向に配置され且つ、前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部よりも前記ステアリングハンドルの近くに配置され、
前記シャトルレバーと前記操舵切換スイッチとは共に前記ステアリングシャフトから離れる一側方に前記カバーから突出されるとともに、前記シャトルレバーの把持部と前記操舵切換スイッチの把持部とは共に前記ステアリングシャフトから離れる一側方に延びており、
前記補正スイッチは、前記表示装置よりも後方であって、且つ前記ステアリングシャフトに対して前記一側方とは反対側の他側方に配置されている作業車両。」
第4 取消理由通知(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1、4~8に対し、令和6年5月21日付けの取消理由通知において、当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
(進歩性)本件の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
取消理由と請求項の関係
請求項1:引用文献1、2、5~8
請求項5:引用文献1、2、5~8
請求項6:引用文献1~3、5~8
請求項7:引用文献1~8
請求項8:引用文献1~8
引用文献一覧
引用文献1:特開2016-21893号公報(甲第1号証)
引用文献2:実用新案登録第2536144号公報(甲第10号証)
引用文献3:特開2008-67606号公報(甲第13号証)
引用文献4:特開2005-71142号公報(甲第14号証)
引用文献5:特開2011-244792号公報(甲第4号証、周知技術
を示す例示文献)
引用文献6:特開2012-157334号公報(甲第5号証、周知技術
を示す例示文献)
引用文献7:特開2003-300424号公報(甲第6号証、周知技術
を示す例示文献)
引用文献8:特開平10-70929号公報(甲第7号証、周知技術を示
す例示文献)
第5 当審の判断
1 引用文献について
(1)引用文献1
ア 認定事項
(ア)【0073】の「切替スイッチ49そのものは、先の実施形態で説明したハンドル11に設けたプッシュ式のものに限るものではない。」という記載も踏まえると、【0074】及び図12、13に示される例(以下「変形例」という。)も、切替スイッチ49に係る構成以外は、図1~7に示される実施形態と同様の構成を有するものと認定できる。
(イ)上記(ア)を踏まえると、【0017】、【0034】、【0074】及び図1~4、12、13の記載より、変形例は、ステアリングホイール11と、ステアリングホイール11を回転可能に支持するステアリング軸51と、ステアリング軸51を収容するとともにステアリング軸51の前方にメータパネル36を支持するカバーを備えることが認定できる。
(ウ)上記(ア)を踏まえると、請求項1及び【0024】より、変形例は、手動操舵によるマニュアル走行と、目標走行経路に沿った自動操舵による自動走行とを切替自在な走行機体Aを備えることが認定できる。
(エ)図1、3の記載から、主変速レバー12は、その途中まで側方外側に傾斜しつつ全体が斜め後方に延び、主変速レバー12の把持部は斜め後方に延びることが看取できる。
また、図1の記載から、主変速レバー12の把持部はステアリング軸51(ステアリングホイール11の中心軸)よりも明らかに車両後方側に位置していることが看取でき、図12、13の記載から、変形例の切替スイッチ49となる操作レバーの把持部は、ステアリング軸51よりも明らかに車両前方側に位置していることも看取できる。
そうすると、上記(ア)、(イ)も踏まえると、【0074】及び図1~4、12、13の記載より、変形例は、主変速レバー12はカバーの左側から斜め後方に突出され、切替スイッチ49となる操作レバーはステアリング軸51から離れる左方向にカバーから突出され、主変速レバー12は、その途中まで側方外側に傾斜しつつ全体が斜め後方に延び、主変速レバー12の把持部は斜め後方に延び、切替スイッチ49となる操作レバーの把持部はステアリング軸51から離れる左方向に延びており、切替スイッチ49となる操作レバーの把持部は、主変速レバー12の把持部に対し、前記ステアリング軸51の軸方向の上方からみて相対的に車両前方側に位置していることが認定できる。
イ 引用発明
(ア)引用発明1
上記アと、請求項1、【0015】~【0017】、【0024】、【0074】及び図1~7、12、13の記載より、引用文献1には、上記変形例に係る次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。
「ステアリングホイール11と、
前記ステアリングホイール11を回転可能に支持するステアリング軸51と、
前記ステアリング軸51を収容するとともに前記ステアリング軸51の前方にメータパネル36を支持するカバーと、
手動操舵によるマニュアル走行と、目標走行経路に沿った自動操舵による自動走行とを切替自在な走行機体Aと、
前記走行機体Aの走行速度を設定する主変速レバー12と、
前記ステアリングホイール11の下方の近傍位置におけるステアリング軸51側から左方向へ突出する状態に設けられた、前記マニュアル走行と前記自動走行とを切替自在な切替スイッチ49となる操作レバーと、
を備え、
前記主変速レバー12は前記カバーの左側から斜め後方に突出され、前記切替スイッチ49となる操作レバーは前記ステアリング軸51から離れる左方向に前記カバーから突出され、主変速レバー12は、その途中まで側方外側に傾斜しつつ全体が斜め後方に延び、前記主変速レバー12の把持部は斜め後方に延び、前記切替スイッチ49となる操作レバーの把持部は前記ステアリング軸51から離れる左方向に延び、
前記切替スイッチ49となる操作レバーの把持部は、前記主変速レバー12の把持部に対し、前記ステアリング軸51の軸方向の上方からみて相対的に車両前方側に位置している農作業機。」
(イ)引用発明2
引用文献1の【0041】、【0042】及び図12の記載より、引用文献1には、上記引用発明1の事項にさらに次の事項を有する発明(以下「引用発明2」という。)も記載されているものと認める。
「前記走行機体Aに設けられ、複数の測位衛星からの電波信号を受信するアンテナ45Aと、地磁気から方位を検知する磁気コンパス45Bと、走行機体Aの姿勢変化を慣性により捉えるジャイロセンサ45Cとが内蔵され、位置情報の変化を高感度で検知できる受信ユニット45を備えた」という事項。
(2)引用文献2
ア 記載事項
引用文献2には次の記載がある。
・「本考案は、建設機械等の変速制御装置に関するものである。」(1頁右欄1~2行)
・「第3-1図および第3-2図に示すように、レバーボックス10には前後進切換レバー11と、変速レバー12がピン13と14によりそれぞれ回動可能に装着されている。」(2頁右欄15~17行)
・第1図は次のとおりである。
[図:0001419315000001.jpg]
・第2図は次のとおりである。
[図:0001419315000002.jpg]
イ 引用文献2に記載された技術的事項
上記アより、引用文献2には次の技術的事項が記載されているものと認める。
「建設機械等において、2本の前後進切換レバー11、変速レバー12が共にステアリング軸4から離れる一側方にレバーボックス10から突出されるとともに、2本の前後進切換レバー11、変速レバー12の把持部は共にステアリング軸4から離れる一側方に延びている」技術的事項。
(3)引用文献3
ア 記載事項
引用文献3には次の記載がある。
・「【0001】
本発明は、旋回走行中の走行車輪の転動量に基づいて所定の作業機動作制御を行う作業車用制御装置に関するものである。」
・「【0026】
(ティーチ処理)
次に、自動植付走行における走行パターンを設定入力するためのティーチ処理について説明する。
ティーチ処理を手元操作として機体の直進走行に集中できるように、専用の十字レバーを設ける。この十字レバーは、その動作方向の説明図を図7に示すように、手前側への後傾操作をティーチの開始、奥側への前傾操作をティーチの終了、左側方操作を左トリム、右側方操作を右トリムとして構成する。
【0027】
制御部21の入出力構成は、図8の入出力信号系統図に示すように、入力側として、走行データ入力指示および自動開始用のティーチングスイッチ22、自律直進操舵制御を解除する自動切スイッチ23、設定方向微調節用の左右のトリムスイッチ24、車速センサ25、進行方位センサ9、ハンドル切れ角センサ4a等の入力信号のほか、各種のスイッチ、センサの信号を受け、・・・」
・「【0031】
次いで、自律直進操舵制御の条件(S3~S6)が満たされている場合に限って進行方位を制御(S7)する。自律直進操舵制御の条件は、植付「入」で、進行方位が一定範囲内に所定時間維持され、車速が所定値以上で、自動走行解除用の自動切スイッチ23がオンでない場合である。」
・図7は次のとおりである。
[図:0001419315000003.jpg]
イ 引用文献3に記載された技術的事項
上記アより、引用文献3には次の技術的事項が記載されているものと認める。
「作業車において、ティーチ処理を手元操作とする十字レバーを設け、手前側への後傾操作をティーチの開始、奥側への前傾操作をティーチの終了、左側方操作を左トリム、右側方操作を右トリムとして構成し、制御部21の入出力構成は、少なくとも走行データ入力指示および自動開始用のティーチングスイッチ22、自律直進操舵制御を解除する自動切スイッチ23、設定方向微調節用の左右のトリムスイッチ24を有し、自律直進操舵制御は、植付「入」で、進行方位が一定範囲内に所定時間維持され、車速が所定値以上で、自動走行解除用の自動切スイッチ23がオンでない場合を条件に行われる」技術的事項。
(4)引用文献4
ア 記載事項
引用文献4には次の記載がある。
・「【0001】
本発明は、GPS測位装置にて受信した位置情報に基づき乗用田植機、トラクタ等の作業車両の走行方向を目標走行方向に沿って走行制御する走行制御装置に関する。」
・「【0017】
図3は、乗用田植機10の方向制御手段30を示すブロック図であって、該方向制御手段30は、マイクロコンピュータで構成される走行制御部31と、ティーチング走行に引き続いて行う自動直進走行時に目標走行方向とオペレータが意図した作業目標方向とにズレが生じた場合に、前記ズレに基づく走行機体15の横方向ズレ量を修正する操作手段としての左右の微調整スイッチ32R,32Lと、自動走行時に左右一対の前輪11,11を強制的に操向させる走行制御モータ33と、を備えていると共に、前記走行制御部31は、微調整スイッチ32R,32Lによって修正された横ズレ量に基づき目標方向を修正する修正手段34を有している。また、前記走行制御部31の入力側には、4個のGPS衛星S1~S4から送信される位置情報を受信するGPS測位装置26と、ステアリングホイール17の操舵角を検出するポテンショメータによるステアリングセンサ35と、走行機体15の手動走行、ティーチング走行(手動)、及び自動走行のいずれかを選択する走行モード選択スイッチ36と、が接続されている。」
イ 引用文献4に記載された技術的事項
上記アより、引用文献4には次の技術的事項が記載されているものと認める。
「乗用田植機、トラクタ等の作業車両において、方向制御手段30は、自動直進走行時に目標走行方向とオペレータが意図した作業目標方向とにズレが生じた場合に、前記ズレに基づく走行機体15の横方向ズレ量を修正する操作手段としての左右の微調整スイッチ32R,32Lと、位置情報を受信するGPS測位装置26と、が接続されている」技術的事項。
(5)周知技術を示す引用文献5~8
ア 引用文献5
引用文献5には次の記載がある。
・「【0001】
この発明は、農作業機の技術分野に属する。」
・「【0023】
操作ボックスすなわちフロントカバー5の上部近傍には、該油圧式無段変速装置27を駆動する変速レバ-31が配置され、この変速レバ-31の前後方向の操作で油圧式無段変速装置27を駆動し機体の前進及び後進制御を司るように構成されている。・・・」
イ 引用文献6
引用文献6には次の記載がある。
・「【0001】
本発明は苗の植付けを連続的に行う田植機に関する。」
・「【0034】
図4はダッシュボードパネル5付近を略示する平面図である。ダッシュボードパネル5には、田植機の状態を表示する表示ユニット50と、進行方向及び走行速度の切替に使用する主変速レバー51と、・・・」
ウ 引用文献7
引用文献7には次の記載がある。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乗用型田植機に関する。」
・「【0063】前記主変速装置71は、前記主変速操作レバー22により、低速の植付走行用伝動状態と高速の移動走行用伝動状態と後進走行用伝動状態とに切り換え操作される前進二段後進一段のものであって、・・・」
エ 引用文献8
引用文献8には次の記載がある。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば乗用型田植機等の対地作業機に関し、・・・」
・「【0011】・・・又、主変速装置9は、主変速レバー16によって植付作業用前進第1速F1、路上走行用前進第2速F2、中立位置N、及び後進位置Rの夫々に切り換え操作自在に構
成してある。」
オ 周知技術
上記ア~エより、「作業車両において、主変速レバーを前進側の走行速度の設定のみならず、走行方向の切り替えも行うようにする」ことは、本件特許の出願前の周知技術であるといえる。
2 対比・判断
(1)本件発明5について
本件訂正の訂正事項3により、請求項5は、進歩性の取消理由を通知した本件訂正前の請求項1を引用しないものとなったため、当該取消理由により本件発明5に係る特許を取り消すことはできない。
(2)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と引用発明1を対比する。
・後者の「ステアリングホイール11」は前者の「ステアリングハンドル」に相当し、以下同様に、「ステアリング軸51」は「ステアリングシャフト」に、「カバー」は「カバー」に、「手動操舵」は「手動操舵」に、「目標走行経路」は「走行予定ライン」に、「自動操舵」は「自動操舵」に、「走行機体A」は「車体」に、「切替スイッチ49となる操作レバー」は「操舵切換スイッチ」に、「切替スイッチ49となる操作レバーの把持部」は「操舵切換スイッチの把持部」に、「農作業機」は「作業車両」に、それぞれ相当する。
上記の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
・後者の
「ステアリングホイール11と、
前記ステアリングホイール11を回転可能に支持するステアリング軸51と、
前記ステアリング軸51を収容するとともに前記ステアリング軸51の前方にメータパネル36を支持するカバーと、」
を備えることは、
前者の
「ステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトを収容するカバーと、」
を備えることに相当する。
・後者の「手動操舵」は、「ステアリングホイール11」によるものであるから、後者の
「手動操舵によるマニュアル走行と、目標走行経路に沿った自動操舵による自動走行とを切替自在な走行機体Aと、」
を備えることは、前者の
「前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、」
を備えることに相当する。
・後者の
「前記走行機体Aの走行速度を設定する主変速レバー12と、」
を備えることと、前者の
「前記車体の走行方向を切り替える操作を行うシャトルレバーと、」
を備えることとは、
「前記車体の走行に係る操作を行うレバーと、」
を備えることで共通する。
・後者の「切替スイッチ49となる操作レバー」が「前記ステアリングホイール11の下方の近傍位置におけるステアリング軸51側から左方向へ突出する状態に設けられた」ということは、切替スイッチ49となる操作レバーがステアリング軸51の周囲に配置されていることが明らかである。
そうすると、後者の
「前記ステアリングホイール11の下方の近傍位置におけるステアリング軸51側から左方向へ突出する状態に設けられた、前記マニュアル走行と前記自動走行とを切替自在な切替スイッチ49となる操作レバーと、」
を備えることは、前者の
「前記ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、前記自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチと、」
を備えることに相当する。
・後者の
「前記主変速レバー12は前記カバーの左側から斜め後方に突出され、前記切替スイッチ49となる操作レバーは前記ステアリング軸51から離れる左方向に前記カバーから突出され、主変速レバー12は、その途中まで側方外側に傾斜しつつ全体が斜め後方に延び、前記主変速レバー12の把持部は斜め後方に延び、前記切替スイッチ49となる操作レバーの把持部は前記ステアリング軸51から離れる左方向に延び」ている
ことと、前者の
「前記操舵切換スイッチが前記ステアリングシャフトに対して前記シャトルレバーと同一方向に配置され且つ、前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部よりも前記ステアリングハンドルの近くに配置され、
前記シャトルレバーと前記操舵切換スイッチとは共に前記ステアリングシャフトから離れる一側方に前記カバーから突出されるとともに、前記シャトルレバーの把持部と前記操舵切換スイッチの把持部とは共に前記ステアリングシャフトから離れる一側方に延びており」
ということとは、
「前記操舵切換スイッチが前記ステアリングシャフトに対して前記車体の走行に係る操作を行うレバーと同一方向に配置され、
前記操舵切換スイッチは前記ステアリングシャフトから離れる一側方に前記カバーから突出されるとともに、前記操舵切換スイッチの把持部は前記ステアリングシャフトから離れる一側方に延びている」
ことにおいて共通する。
以上のことから、本件発明6と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点A〕
「ステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトを収容するカバーと、
前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、
前記車体の走行に係る操作を行うレバーと、
前記ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、前記自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチと、
を備え、
前記操舵切換スイッチが前記ステアリングシャフトに対して前記車体の走行に係る操作を行うレバーと同一方向に配置され、
前記操舵切換スイッチは前記ステアリングシャフトから離れる一側方に前記カバーから突出されるとともに、前記操舵切換スイッチの把持部は前記ステアリングシャフトから離れる一側方に延びている作業車両。」
〔相違点A1〕
「車体の走行に係る操作を行うレバー」について、本件発明6が、「走行方向を切り替える」「シャトルレバー」であるのに対し、引用発明1は、「走行速度を設定する主変速レバー12」である点。
〔相違点A2〕
「レバー」の配置について、本件発明6が、「前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部よりも前記ステアリングハンドルの近くに配置され」ており、「シャトルレバー」も「前記ステアリングシャフトから離れる一側方に前記カバーから突出され」、「シャトルレバーの把持部」も「前記ステアリングシャフトから離れる一側方に延びている」のに対し、引用発明1は、「主変速レバー12」が「カバーの左側から斜め後方に突出され」るものであり、「主変速レバー12の把持部」についても、「斜め後方に延び」るものであり、また、「主変速レバー12の把持部」と「切替スイッチ49となる操作レバーの把持部」のいずれが「ステアリングホイール11」の近くに配置されているのか明らかでない点。
〔相違点A3〕
「操舵切換スイッチ」について、本件発明6が、「前記操舵切換スイッチは、中立位置から上、下、前、後の方向のうち、少なくとも2方向への操作が可能であり、前記操舵切換スイッチが、中立位置から前記2方向のうちの第一所定方向への操作がされることにより前記自動操舵の走行基準ラインの始点が設定され、前記操舵切換スイッチが、中立位置から前記2方向のうちの第二所定方向への操作がされることにより前記自動操舵が開始される」のに対して、引用発明1の「切替スイッチ49となる操作レバー」は、そのような事項を有していない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点A3について検討する。
上記1(3)イで示した引用文献3に記載された技術的事項は、「自動走行解除用の自動切スイッチ23」がオンでない場合に、「十字レバー」でティーチングスイッチ22がオンであるか否かにかかわらず、植付「入」で、進行方位が一定範囲内に所定時間維持され、車速が所定値以上で、自動走行解除用の自動切スイッチ23がオンでない場合を条件に自律直進操舵制御が開始されるものであるが、自律直進操舵制御を解除するのは、「十字レバー」とは別の「自動走行解除用の自動切スイッチ23」であることから、当該「十字レバー」は、本件発明6の「自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチ」に相当するとはいえない。
また、申立人が提出した他の証拠(上記1及び後述する第6の1参照。)を検討しても、上記相違点A3に係る本件発明6の事項を開示ないし示唆するものは見当たらない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術的事項(及び引用文献5~8に示される周知技術)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、通知した取消理由によっては、本件発明6に係る特許を取り消すことはできない。
(3)本件発明7、8について
本件発明7、8は、特許異議の申立てがされていない請求項2、3を引用する場合を除き、取消理由が通知されていない本件発明4、上記(1)で検討した本件発明5、及び、上記(2)で検討した本件発明6の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、上記(1)、(2)と同様の理由により、引用発明1及び引用文献2~4に記載された技術的事項(及び引用文献5~8に示される周知技術)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、通知した取消理由によっては、本件発明7、8に係る特許を取り消すことはできない。
(4)本件発明9について
ア 対比
本件発明9と引用発明2とを対比する。
・上記(2)アと同様の部材同士の相当関係に加え、後者の「メータパネル36」は前者の「表示装置」に相当し、以下同様に、「測位衛星」は「測位衛星」に、「位置情報の変化を高感度で検知できる受信ユニット45」は「位置検出装置」に相当する。
上記の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
・後者の
「ステアリングホイール11と、
前記ステアリングホイール11を回転可能に支持するステアリング軸51と、
前記ステアリング軸51を収容するとともに前記ステアリング軸51の前方にメータパネル36を支持するカバーと、」
を備えることは、
前者の
「ステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトを収容するとともに前記ステアリングシャフトの前方に表示装置を支持するカバーと、」
を備えることに相当する。
・後者の「手動操舵」は、「ステアリングホイール11」によるものであるから、後者の
「手動操舵によるマニュアル走行と、目標走行経路に沿った自動操舵による自動走行とを切替自在な走行機体Aと、」
を備えることは、前者の
「前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、」
を備えることに相当する。
・後者の
「前記走行機体Aの走行速度を設定する主変速レバー12と、」
を備えることと、前者の
「前記車体の走行方向を切り替える操作を行うシャトルレバーと、」
を備えることとは、
「前記車体の走行に係る操作を行うレバーと、」
を備えることで共通する。
・後者の「切替スイッチ49となる操作レバー」が「前記ステアリングホイール11の下方の近傍位置におけるステアリング軸51側から左方向へ突出する状態に設けられた」ということは、切替スイッチ49となる操作レバーがステアリング軸51の周囲に配置されていることが明らかである。
そうすると、後者の
「前記ステアリングホイール11の下方の近傍位置におけるステアリング軸51側から左方向へ突出する状態に設けられた、前記マニュアル走行と前記自動走行とを切替自在な切替スイッチ49となる操作レバーと、」
を備えることは、前者の
「前記ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、前記自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチと、」
を備えることに相当する。
・後者の
「前記走行機体Aに設けられ、複数の測位衛星からの電波信号を受信するアンテナ45Aと、地磁気から方位を検知する磁気コンパス45Bと、走行機体Aの姿勢変化を慣性により捉えるジャイロセンサ45Cとが内蔵され、位置情報の変化を高感度で検知できる受信ユニット45を備えた」
ことは、前者の
「前記車体に設けられ且つ、測位衛星の信号に基づいて前記車体の位置を検出する位置検出装置と、」
を備えたことに相当する。
・後者の
「前記主変速レバー12は前記カバーの左側から斜め後方に突出され、前記切替スイッチ49となる操作レバーは前記ステアリング軸51から離れる左方向に前記カバーから突出され、主変速レバー12は、その途中まで側方外側に傾斜しつつ全体が斜め後方に延び、前記主変速レバー12の把持部は斜め後方に延び、前記切替スイッチ49となる操作レバーの把持部は前記ステアリング軸51から離れる左方向に延び」ている
ことと、前者の
「前記操舵切換スイッチが前記ステアリングシャフトに対して前記シャトルレバーと同一方向に配置され且つ、前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部よりも前記ステアリングハンドルの近くに配置され、
前記シャトルレバーと前記操舵切換スイッチとは共に前記ステアリングシャフトから離れる一側方に前記カバーから突出されるとともに、前記シャトルレバーの把持部と前記操舵切換スイッチの把持部とは共に前記ステアリングシャフトから離れる一側方に延びており」
ということとは、
「前記操舵切換スイッチが前記ステアリングシャフトに対して前記車体の走行に係る操作を行うレバーと同一方向に配置され、
前記操舵切換スイッチは前記ステアリングシャフトから離れる一側方に前記カバーから突出されるとともに、前記操舵切換スイッチの把持部は前記ステアリングシャフトから離れる一側方に延びている」
ことにおいて共通する。
以上のことから、本件発明9と引用発明2との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点B〕
「ステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトを収容するとともに前記ステアリングシャフトの前方に表示装置を支持するカバーと、
前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、
前記車体の走行に係る操作を行うレバーと、
前記ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、前記自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチと、
前記車体に設けられ且つ、測位衛星の信号に基づいて前記車体の位置を検出する位置検出装置と、
を備え、
前記操舵切換スイッチが前記ステアリングシャフトに対して前記車体の走行に係る操作を行うレバーと同一方向に配置され、
前記操舵切換スイッチは前記ステアリングシャフトから離れる一側方に前記カバーから突出されるとともに、前記操舵切換スイッチの把持部は前記ステアリングシャフトから離れる一側方に延びている作業車両。」
〔相違点B1〕
「車体の走行に係る操作を行うレバー」について、本件発明9が「走行方向を切り替える」「シャトルレバー」であるのに対し、引用発明2は「走行速度を設定する主変速レバー12」である点。
〔相違点B2〕
「レバー」の配置について、本件発明9が「前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部よりも前記ステアリングハンドルの近くに配置され」ており、「シャトルレバー」も「前記ステアリングシャフトから離れる一側方に前記カバーから突出され」、「シャトルレバーの把持部」も「前記ステアリングシャフトから離れる一側方に延びている」のに対し、引用発明2は、「主変速レバー12」が「カバーの左側から斜め後方に突出され」るものであり、「主変速レバー12の把持部」についても、「斜め後方に延び」るものであり、また、「主変速レバー12の把持部」と「切替スイッチ49となる操作レバーの把持部」のいずれが「ステアリングホイール11」の近くに配置されているのか明らかでない点。
〔相違点B3〕
本件発明9が、「前記位置検出装置で検出された前記車体の位置を補正する補正スイッチと、」を備え、「前記補正スイッチは、前記表示装置よりも後方であって、且つ前記ステアリングシャフトに対して前記一側方とは反対側の他側方に配置されている」のに対し、引用発明2は、そのような「補正スイッチ」に係る事項を有していない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点B3について検討する。
上記1(4)イで示した引用文献4に記載された技術的事項における「左右の微調整スイッチ32R,32L」が、本件発明9の「補正スイッチ」に相当するといえる。
しかしながら、引用文献4に記載された技術的事項は、当該「左右の微調整スイッチ32R,32L」の配置位置の特定はなく、引用発明2に引用文献4に記載された技術的事項を適用したとしても、上記相違点B3に係る本件発明9の事項には至らない。
また、申立人が提出した他の証拠(上記1及び後述する第6の1参照。)を検討しても、上記相違点B3に係る本件発明9の事項を開示ないし示唆するものは見当たらない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、引用発明2及び引用文献4に記載された技術的事項(及び引用文献5~8に示される周知技術)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、通知した取消理由によっては、本件発明9に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由、及び申立人の令和6年8月29日付けの意見書の本件発明4に対する主張について
1 申立人の主張内容
取消理由通知(決定の予告)で引用した証拠以外に、申立人は特許異議申立書に添付して次の証拠を提出し、訂正前の請求項1、4~8に係る発明は、甲第1号証(引用文献1)を主たる証拠として、当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。
証拠一覧
甲第2号証 :特開2017-123803号公報
甲第3号証 :特開2012-245976号公報
甲第8号証 :特開2014-180894号公報
甲第9号証 :特開平10-250543号公報
甲第11号証:特開2002-34311号公報
甲第12号証:特開2016-71426号公報
甲第15号証:特開2005-351103号公報
また、上記意見書において、本件発明4、5は、引用文献1(甲第1号証)に記載された発明及び引用文献2(甲第10号証)に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。
2 検討
(1)本件発明6~9について
事案に鑑み、本件発明6~9について検討すると、上記のいずれの証拠にも、上記第5の2(2)イで検討した相違点A3に係る本件発明6の事項、及び上記第5の2(4)イで検討した相違点B3に係る本件発明9の事項の開示ないし示唆はなく、これら証拠を検討しても、本件発明6~9に係る特許を取り消すことはできない。
(2)本件発明4、5について
ア 引用文献2に記載された技術的事項は、「建設機械等において、2本の前後進切換レバー11、変速レバー12が共にステアリング軸4から離れる一側方にレバーボックス10から突出されるとともに、2本の前後進切換レバー11、変速レバー12の把持部は共にステアリング軸4から離れる一側方に延びている」技術的事項である(上記第5の1(2)参照。)。
そして、当該引用文献2に記載された技術的事項は、自動操舵をするものではないから、「操舵切換スイッチ」に相当する部材を有しておらず、本件発明4の「前記シャトルレバーと前記操舵切換スイッチの両者が中立位置にあるときに、前記操舵切換スイッチの把持部は、前記シャトルレバーの把持部に対し、前記ステアリングシャフトの軸方向の上方からみて相対的に後方側に位置している」事項(以下「本件発明4事項」という。)を開示ないし示唆するものではない。
イ 一方、申立人は、本件発明4に対し、引用文献2の第5図を示して、上記意見書の2ページ下から8行~下から6行において、「引用文献2には、前後進切換レバー11の把持部が変速レバー12の把持部よりもステアリングシャフト上の軸方向の上方からみて相対的に前方側に位置する構成が記載されています。」と主張する。
しかしながら、当該第5図は従来の技術に係る図面であるところ、引用文献2にはかかる従来の技術について、ステアリング軸(ステアリングシャフトに相当)の軸方向の上方からみた図面の記載はなく、また、明細書中にもステアリング軸の軸方向上方からみたときの、前後進切換レバー11の把持部と変速レバー12の把持部の前後方向の位置関係の記載はない。そして、第5図は、ステアリング軸の軸方向上方からみた各レバーの位置関係を明確に把握できる程度精緻なものとは認められないため、当該第5図の記載からは、ステアリング軸の軸方向上方からみたときに、いずれのレバーの把持部が前方側にあるのかまでは把握できない。
ウ 仮に、引用文献2に申立人が主張するとおりの技術的事項(以下「申立人技術的事項」という。)が記載されているとしても、上記アのとおり、引用文献2には「操舵切換スイッチ」に相当する部材の開示はなく、申立人技術的事項の「前後進切換レバー11」は、本件発明4の「操舵切換スイッチ」に相当するものではない。
したがって、引用発明1に申立人技術的事項を適用したとしても、本件発明4事項には至らない。
エ さらに、申立人は、上記意見書の2ページ下から6行~下から3行において、申立人技術的事項に続けて、「すなわち、同じ方向(車体左方向)に延びる2つのレバーが中立位置の時に、その把持部が前後方向に位置することは公知の構成であり、当業者にとってどのレバー(入力操作用の部材)を選択するのかは、設計事項の範囲内のものです。」と主張するが、引用発明1は、「前記切替スイッチ49となる操作レバーの把持部は、前記主変速レバー12の把持部に対し、前記ステアリング軸51の軸方向の上方からみて相対的に車両前方側に位置している」という構成を有するものであって(上記第5の1(1)イ(ア)参照。)、「切替スイッチ49となる操作レバーの把持部」(操舵切換スイッチの把持部に相当)を、あえて後方側に変更する動機付けも見当たらない。
オ そして、申立人が提出した他の証拠を検討しても、上記本件発明4事項の開示ないし示唆はなく、これら証拠を検討したとしても、本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。
また、本件発明5(請求項4を引用する場合)は、本件発明4の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、その判断についても同様である。
カ したがって、本件発明4、5に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項4~9に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件請求項4~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項1に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700729