特許異議申立
2022-701018
トラクタ
- 審判番号
- 2022-701018
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-213127
- 登録番号
- 7116776
- 請求日
- 2022年10月14日
- 審決日
- 2024年02月15日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社クボタ
- 【権利者代理人】弁理士法人R&C
- 【異議申立人】伊藤 学
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 八木 誠
- 審判官 中村 則夫
- 分類
- P1652.121-YAA(B62D) / P1652.851-YAA(B62D) / P1652.857-YAA(B62D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7116776号発明「トラクタ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7116776号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
特許第7116776号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7116776号の請求項1~3に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成29年12月18日に出願した特願2017-242207号の一部を、令和2年12月23日に新たに出願したものであって、令和4年8月2日に特許権の設定登録がされ、同年8月10日に特許掲載公報が発行された。
請求項1、2に係る特許に対する、特許異議申立人伊藤学(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、以下のとおりである。
令和4年10月14日 特許異議の申立て
令和5年 4月27日付け 取消理由通知
同年 6月27日 特許権者より意見書
同年 7月 6日付け 申立人へ審尋
同年 8月 3日 申立人より回答書
同年 9月29日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年11月30日 特許権者より意見書・訂正請求書
令和6年 1月 9日 申立人より意見書
第2 本件訂正
1 本件訂正の内容
特許権者が求める訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を、令和5年11月30日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正事項は以下の(1)、(2)のとおりである(なお、下線部は訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「 操縦者が着座可能な運転座席と、
前記運転座席の前方に、且つ、側面視で前輪の中心から垂直方向上方に設けられたボンネットと、
前記運転座席の前方に設けられたステアリングホイールと、
前記運転座席の後方に設けられ、左右の縦フレーム部の上端に横フレーム部が連結するロプスと、
衛星測位情報を受信するアンテナユニットが備えられ、
前記アンテナユニットが、側面視において、前記ロプスの前記横フレーム部の上端と前記ステアリングホイールの上端とを結ぶ領域ラインより上側で、且つ、前記ステアリングホイールの上端を通る水平姿勢の水平ラインよりも下方に位置するように、且つ、当該アンテナユニットの前端部が前記前輪の中心よりも前方に位置するように、且つ、正面視において、車体左右方向における中央部に位置し、且つ、前記アンテナユニットの幅が前記ステアリングホイールの幅よりも小さくなるように配置されているトラクタ。」
と記載されているのを、
「 操縦者が着座可能な運転座席と、
前記運転座席の前方に、且つ、側面視で前輪の中心から垂直方向上方に設けられたボンネットと、
前記運転座席の前方に設けられたステアリングホイールと、
前記運転座席の後方に設けられ、左右の縦フレーム部の上端に横フレーム部が連結するロプスと、
衛星測位情報を受信するアンテナユニットが備えられ、
前記アンテナユニットが、側面視において、前記ロプスの前記横フレーム部の上端と前記ステアリングホイールの上端とを結ぶ領域ラインより上側で、且つ、前記ステアリングホイールの上端を通る水平姿勢の水平ラインよりも下方に位置するように、且つ、前記アンテナユニットの下面における後端部が前記ステアリングホイールの下端を通る水平ラインよりも上方に位置するように、且つ、当該アンテナユニットの前端部が前記前輪の中心よりも前方に位置するように、且つ、正面視において、車体左右方向における中央部に位置し、且つ、前記アンテナユニットの幅が前記ステアリングホイールの幅よりも小さくなるように配置されているトラクタ。」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、
「 前記アンテナユニットの一部、あるいは、全体が、前記ボンネットの前端より前側に張り出す位置に配置されている請求項1又は2に記載のトラクタ。」
と記載されているのを、
「 操縦者が着座可能な運転座席と、
前記運転座席の前方に、且つ、側面視で前輪の中心から垂直方向上方に設けられたボンネットと、
前記運転座席の前方に設けられたステアリングホイールと、
前記運転座席の後方に設けられ、左右の縦フレーム部の上端に横フレーム部が連結するロプスと、
衛星測位情報を受信するアンテナユニットが備えられ、
前記アンテナユニットが、側面視において、前記ロプスの前記横フレーム部の上端と前記ステアリングホイールの上端とを結ぶ領域ラインより上側で、且つ、前記ステアリングホイールの上端を通る水平姿勢の水平ラインよりも下方に位置するように、且つ、当該アンテナユニットの前端部が前記前輪の中心よりも前方に位置するように、且つ、正面視において、車体左右方向における中央部に位置し、且つ、前記アンテナユニットの幅が前記ステアリングホイールの幅よりも小さくなるように配置され、
前記アンテナユニットの一部、あるいは、全体が、前記ボンネットの前端より前側に張り出す位置に配置されているトラクタ。」
に訂正する。
(3)一群の請求項
訂正前の請求項1~3は、請求項2、3が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1~3について請求されている。
また、訂正後の請求項3については、特許権者は、当該訂正が認められるときには、請求項1、2とは別の訂正単位とすることを求めている。
2 本件訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「アンテナユニット」との事項について、「前記アンテナユニットの下面における後端部が前記ステアリングホイールの下端を通る水平ラインよりも上方に位置するように」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
イ 新規事項の有無
上記アンテナユニットについて、その形状や設置位置は、明細書や図面には明記されていないが、明細書の【0072】の「・・・図18、図19に示すように、・・・アンテナユニット32を有する測位ユニット31を、左右方向での中央位置に支持部材としての取付ブラケット34を介して取り付ける。」との記載では、上記アンテナユニットに対応するアンテナユニット32は、測位ユニット31内にあり、取付ブラケット34上に設けられると解されるから、上記「前記アンテナユニットの下面における後端部」に対応するアンテナユニット32の下面の後端部は、少なくとも、測位ユニット31内であり、かつ、取付ブラケット34の上面より上方の位置にあるものと認められる。
また、上記ステアリングホイールについて、どう構成されるのか、明細書に直接的な記載はないが、例えば、カヤバ工業株式会社、「自動車の操舵系と操安系」、株式会社山海堂、平成8年9月10日第1刷発行、14ページ1~2行に、「ステアリングホイールは図1-3のように、ハブ、スポークおよびリムで一体的に構成されている。」(図は下記参照。)と記載されるように、一般的に、「ステアリングホイール」は、リムだけでなく、スポークやハブも含むことが技術常識であり、図18には、リムだけでなく、スポークやハブも記載されていると認められることも踏まえると、上記ステアリングホイールは、リムだけでなく、スポークやハブも含むものであると認める。
[図:0001410183000001.jpg]
以上のことを踏まえて、図18を参照すると、図18は、領域ラインEL及び水平ラインHLを示す補助線も引かれ、各構成の相対位置はほぼ正確に記載されていると認められるから、ステアリングホイール24のハブの下端が、測位ユニット31内であり、かつ、取付ブラケット34の上面より上方に位置することが看取できる。
そうすると、「前記アンテナユニットの下面における後端部が前記ステアリングホイールの下端を通る水平姿勢の水平ラインよりも上方に位置するように」との事項は、【0072】~【0074】及び図18に開示されていると認められる。
以上によれば、訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。
図18
[図:0001410183000002.jpg]
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3の記載が請求項1又は2の記載を引用するものであったもののうち、請求項1を引用するものを独立形式の請求項の記載へ改めるためのものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。また、訂正事項2は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用していたものを請求項1のみを引用するものに減縮したともいえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
そして、訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、訂正前の新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
以上によれば、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、同法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とする訂正事項2により訂正される請求項3については、特許異議の申立てがされていない請求項であることから同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件が課されるが、訂正後の請求項3について、特許要件の適否について見直すべき新たな事項は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1~3に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、本件訂正後の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
操縦者が着座可能な運転座席と、
前記運転座席の前方に、且つ、側面視で前輪の中心から垂直方向上方に設けられたボンネットと、
前記運転座席の前方に設けられたステアリングホイールと、
前記運転座席の後方に設けられ、左右の縦フレーム部の上端に横フレーム部が連結するロプスと、
衛星測位情報を受信するアンテナユニットが備えられ、
前記アンテナユニットが、側面視において、前記ロプスの前記横フレーム部の上端と前記ステアリングホイールの上端とを結ぶ領域ラインより上側で、且つ、前記ステアリングホイールの上端を通る水平姿勢の水平ラインよりも下方に位置するように、且つ、前記アンテナユニットの下面における後端部が前記ステアリングホイールの下端を通る水平ラインよりも上方に位置するように、且つ、当該アンテナユニットの前端部が前記前輪の中心よりも前方に位置するように、且つ、正面視において、車体左右方向における中央部に位置し、且つ、前記アンテナユニットの幅が前記ステアリングホイールの幅よりも小さくなるように配置されているトラクタ。
【請求項2】
前記アンテナユニットは、平面視で前記ボンネットと重なる位置に配置されている請求項1に記載のトラクタ。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、2に係る特許に対して、令和5年9月29日付けで当審が通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
[取消理由]
本件特許の下記請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、この出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、当該発明に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
以下「甲第○号証」は「甲○」という。
記
[引用文献等一覧]
甲1:特開2016-71426号公報
甲4:特開2006-256509号公報
甲5:特開2000-92917号公報
甲6:特開2004-182131号公報
甲7:特開2014-42484号公報
甲8:特開2013-121330号公報
[上記取消理由における請求項と引用文献等との関係]
・請求項 1、2
・引用文献等 甲1、4~8
第5 各甲号証について
1 甲1について
(1)記載事項
甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の走行作業車における操縦補助装置に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トラクタは、畦で囲まれた圃場を周回或いは往復移動しながら耕耘や畝立等の作業を行うが、操縦を油断していると畦を乗り越えて畦の外側に在る溝や急斜面に転落する等の危険性がある。
【0005】
本発明は、走行作業車で圃場内の作業を行う際に、油断して圃場外に踏み出して転倒等の事故を起こさないように、操縦者の操縦を補助することを課題とする。」
「【0017】
このトラクタの機体1は操舵用の左右前輪2,2と推進車輪としての左右後輪3,3を有し、ボンネット4内に搭載したエンジン5の回転動力をミッションケース6内の変速装置によって適宜減速し、その回転動力を後輪3,3或いは前輪2,2と後輪3,3に伝達するように構成している。」
「【0022】
また、ステアリングハンドル24を支えるハンドルポスト25の左側上部には前記前後進切換装置9を操作する前後進切換レバー27が設けられ、この前後進切換レバー27を中立位置から前側に倒すと機体は前進し、反対に後側に引くと機体は後進するようになっている。
【0023】
ハンドルポスト25の前側にはコントローラ100を内装したフロントケース49が設けられ、このフロントケース49の上面にGPS受信機50を取り付け、ステアリングハンドル24の前下方側にスピードメータ等の情報を表示するモニタ51を設けている。」
「【0026】
サイドコンビスイッチ23は、サイドビューライト54と後部作業灯55の照度を調整する。
後部作業灯55はロブスタ57の側部と後部に設けて、機体1の後側部とロータリ耕耘装置18を照射する。この後部作業灯55もサイドビューライト54と同様にオン・オフを自動制御する。」
図1
[図:0001410183000003.jpg]
(2)甲1の記載から認められること
ア トラクタにおいて、操縦者は運転席に座って運転等の操作を行うことは、例示するまでもなく技術常識であり、【0022】、【0026】及び図1の記載も参照すると、ステアリングハンドル24とロブスタ57の間に運転席があること、及び、運転席は操縦者が着座可能であることが認められる。
イ 【0017】、【0022】、【0023】、【0026】及び図1の記載、並びに、上記アによれば、トラクタは、運転席と、ボンネット4と、ステアリングハンドル24と、ロブスタ57と、GPS受信機50を有することが認められる。
ウ 図1の記載及び上記アによれば、ボンネット4は運転席の前方に、且つ、側面視で左右前輪2,2の中心から垂直方向上方に設けられること、ステアリングハンドル24は運転席の前方に設けられること、及び、ロブスタ57は運転席の後方に設けられることが認められる。
エ 【0023】及び図1の記載によれば、GPS受信機50が、側面視において、ステアリングハンドル24の上端を通る水平ラインよりも下方に位置するように、フロントケース49の上面に取り付けられること、及び、フロントケース49は、ハンドルステアリング24より前方でボンネット4より後方に設けられることが認められる。
(3)甲1発明
上記(2)ア~エを総合すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「操縦者が着座可能な運転席と、
運転席の前方に、且つ、側面視で左右前輪2,2の中心から垂直方向上方に設けられるボンネット4と、
運転席の前方に設けられるステアリングハンドル24と、
運転席の後方に設けられるロブスタ57と、
GPS受信機50を有し、
GPS受信機50が、側面視において、ステアリングハンドル24の上端を通る水平ラインよりも下方に位置するように、ハンドルステアリング24より前方でボンネット4より後方に設けられるフロントケース49の上面に取り付けられるトラクタ。」
2 甲4について
甲4には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図2において、1は左右一対の前輪2と左右一対の後輪3とを有する2軸4輪型のトラクタであり、その車体4の後部で且つ運転席5の後方側にはロプス6が、やや後傾状に立設されて設けられている。
このロプス6は、図1~図4に示すように、左右一対の支柱部7と、この左右の支柱部7の上端側を連結する連結部8とから背面視門型状に形成されている。」
図2
[図:0001410183000004.jpg]
3 甲5について
甲5には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トラクタ等の走行車両のロプス装置とこの装置に適したピンユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、農用トラクタにおいては、転倒時の安全性を確保するためにロプス装置を設けることがあるが、その農用トラクタを屋根の低い車庫に格納したり、枝の張り出した果樹園に乗り入れたりする場合には、当該ロプス装置が却って邪魔になることがある。」
「【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1~図9は本発明の第一の実施形態を示している。図1及び図2において、農用トラクタ1は、その車体2の後部(車体2を構成するミッションケースの後部)に立設されたロプス装置3を備えている。
【0016】このロプス装置3は、左右一対の下部支柱4,4と、この各下部支柱4,4の上端部に屈曲自在に連結された上部フレーム5と、を備えている。上部フレーム5は、各下部支柱4,4の上端部に屈曲自在に連結された左右一対の上部支柱6,6と、この上部支柱6,6の上端間同士を互いに一体に連結する横枠材7と、を備えている。この上部フレーム5は、それら左右の上部支柱6,6と横枠材7とによって背面視ほぼ門型状に一体形成されている。」
図1
[図:0001410183000005.jpg]
4 甲6について
甲6には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【従来の技術】
特許文献1に開示されたトラクタのロプス装置は、その支柱をロプス下体の有する下部支柱とロプス上体の有する上部支柱とに上下2分割すると共に、上部支柱を下部支柱の上端部に横軸まわり回動自在に支持している。これにより、ロプス上体をロプス下体に対して下方屈曲姿勢とし、車庫格納時におけるロプス上体と天井等との衝突を防ぐようにしている。
・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
・・・本発明は、このような実情に鑑み、ロプス上体が上下方向に昇降自在であり且つロプス上体を少なくとも上昇させた位置で保持可能とすることで、高さ変更が容易である走行車両のロプス装置を提供することを目的とする。」
「【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1,2において、走行車両として農用トラクタ44を例示している。・・・
【0010】
・・・前記ロプス装置1は、ロプス上体5とそれを支えるロプス下体4とから構成されており、ロプス下体4は左右一対の下部支柱2から構成されている。」
図1
[図:0001410183000006.jpg]
5 甲7について
甲7には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
この発明は、薬液タンクに収容された薬液を圃場に散布する薬剤散布作業車両に関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
図1に薬液散布装置を前部に取り付けた薬液散布作業車の側面図を示し、図2には薬液散布作業装置部分の平面図を示す。なお、本明細書では薬液散布作業車の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右という。
【0019】
薬液散布作業車の車体1は、前輪12及び後輪13を軸装するアクスルハウジングをローリング自在に支持する。また、ハンドルポスト59により支持されたステアリングハンドル14の回転操作により前輪12を操向すると共にボンネット15下のエンジン(図示せず)によって伝動走行される。この車体1には操縦席17の後部から左右両側にわたって囲うように形成された薬液タンク18を車体に対し着脱自在に搭載し、この薬液タンク18内の薬液を前側に設けられる散布ブーム19へ圧送する防除ポンプ65が車体1の操縦席17の下方に設けられている。」
「【0044】
図5には、図1の薬剤散布作業車の本機コントローラと防除機コントローラの構成図を示す。
図5に示すように、薬剤散布作業車(本機)のコントローラ100と薬液タンク18と薬剤散布用ブーム43,44と薬液ホース61,66などとその流量制御弁73などから構成される防除機B(図6)のコントローラ101から本実施例のコントローラは構成され、本機のコントローラ100にはGPS受信機81が接続される。該GPS受信機81は複数のGPS衛星からの信号を受信し、本機の現在位置データとして記憶すると共に、時計回路で計測する所定時間毎に現在位置データを更新しながら移動距離を算出し、該時計回路による所定時間おきに速度、すなわち車速を本機コントローラ100にある車速算出手段5により算出する構成としている。また、本機コントローラ100には車軸の回転数から車速を検出する車速センサ6からも入力がある。
【0045】
本実施例の薬剤散布作業車では、該作業車に搭載して車速に連動して薬液を散布する防除機Bにおいて、薬液濃度と車速等により薬剤散布量を決めて防除ポンプ65の薬液吐出量を決める。なお、前記GPS受信機81はGPSからの車両速度情報と位置情報を得ることができる。」
図2
[図:0001410183000007.jpg]
6 甲8について
甲8には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
この発明は、薬液タンクに収容された薬剤を圃場に散布する薬剤散布作業車に関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
図1に薬剤散布装置を前部に取り付けた薬剤散布作業車の側面図を示し、図2には図1の薬剤散布作業車の平面図を示す。なお、本明細書では薬剤散布作業車の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右という。
【0019】
薬剤散布作業車の車体(車体フレーム)1は、前輪12及び後輪13を軸装するアクスルハウジングをローリング自在に支持する。また、ハンドルポスト59により支持されたステアリングハンドル14の回転操作により前輪12を操向すると共にボンネット15下のエンジン(図示せず)によって伝動走行される。この車体1には操縦席17の後部から左右両側にわたって囲うように形成された薬液タンク18を車体1に対し着脱自在に搭載し、この薬液タンク18内の薬液を前側に設けられる散布ブーム19へ圧送する防除ポンプ65が車体1の操縦席17の下方に設けられている。」
「【0040】
図5には、図1の薬剤散布作業車の本機コントローラと防除機コントローラの構成図を示す。
図5に示すように、薬剤散布作業車(本機)のコントローラ100と薬液タンク18と薬剤散布用ブーム43,44と薬液ホース61,66などとその流量制御弁73などから構成される防除機B(図6)のコントローラ101から本実施例のコントローラは構成され、本機のコントローラ100にはGPS受信機81が接続される。該GPS受信機81は複数のGPS衛星からの信号を受信し、本機の現在位置データとして記憶すると共に、時計回路で計測する所定時間毎に現在位置データを更新しながら移動距離を算出し、該時計回路による所定時間おきに速度、すなわち車速を本機コントローラ100にある車速算出手段5により算出する構成としている。また、本機コントローラ100には車軸の回転数から車速を検出する車速センサ6からも入力がある。
【0041】
本実施例の薬剤散布作業車では、該作業車に搭載して車速に連動して薬液を散布する防除機Bにおいて、薬液濃度と車速等により薬剤散布量を決めて防除ポンプ65の薬液吐出量を決める。なお、前記GPS受信機81はGPSからの車両速度情報と位置情報を得ることができる。」
図2
[図:0001410183000008.jpg]
第6 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「操縦者」は前者の「操縦者」に相当し、以下同様に、「運転席は「運転座席」に、「左右前輪2,2」は「前輪」に、「ボンネット4」は「ボンネット」に、「ステアリングハンドル24」は「ステアリングホイール」に、「ロブスタ57」は「ロプス」に、「GPS受信機50」は「衛星測位情報を受信するアンテナ」に、「~を有」することは「~が備」えられることに、「トラクタ」は「トラクタ」に、それぞれ相当する。
また、後者の「操縦者が着座可能な運転席」は前者の「操縦者が着座可能な運転座席」に、後者の「運転席の前方に、且つ、側面視で左右前輪2,2の中心から垂直方向上方に設けられるボンネット4」は前者の「前記運転座席の前方に、且つ、側面視で前輪の中心から垂直方向上方に設けられたボンネット」に、後者の「運転席の前方に設けられるステアリングハンドル24」は前者の「前記運転座席の前方に設けられたステアリングホイール」に、後者の「運転席の後方に設けられるロブスタ57」は前者の「前記運転座席の後方に設けられ」る「ロプス」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「GPS受信機50が、側面視において、ステアリングハンドル24の上端を通る水平ラインよりも下方に位置するように、ハンドルステアリング24より前方でボンネット4より後方に設けられるフロントケース49の上面に取り付けられる」ことは、前者の「前記アンテナユニットが、側面視において、前記ロプスの前記横フレーム部の上端と前記ステアリングホイールの上端とを結ぶ領域ラインより上側で、且つ、前記ステアリングホイールの上端を通る水平姿勢の水平ラインよりも下方に位置するように」「配置されている」ことと、「前記アンテナユニットが、側面視において、」「前記ステアリングホイールの上端を通る水平姿勢の水平ラインよりも下方に位置するように」「配置されている」点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。
<一致点>
「操縦者が着座可能な運転座席と、
前記運転座席の前方に、且つ、側面視で前輪の中心から垂直方向上方に設けられたボンネットと、
前記運転座席の前方に設けられたステアリングホイールと、
前記運転座席の後方に設けられるロプスと、
衛星測位情報を受信するアンテナユニットが備えられ、
前記アンテナユニットが、側面視において、前記ステアリングホイールの上端を通る水平姿勢の水平ラインよりも下方に位置するように配置されているトラクタ。」
<相違点1>
ロプスが、本件発明1では、左右の縦フレーム部の上端に横フレーム部が連結するのに対し、甲1発明では、具体的構成が不明である点。
<相違点2>
アンテナユニットが、本件発明1では、「側面視において、前記ロプスの前記横フレーム部の上端と前記ステアリングホイールの上端とを結ぶ領域ラインより上側で」、且つ、「前記アンテナユニットの下面における後端部が前記ステアリングホイールの下端を通る水平ラインよりも上方に位置するように、且つ、当該アンテナユニットの前端部が前記前輪の中心よりも前方に位置するように、且つ、正面視において、車体左右方向における中央部に位置し、且つ、前記アンテナユニットの幅が前記ステアリングホイールの幅よりも小さくなるように、前記ボンネットに」配置されているのに対し、甲1発明では、「フロントケース49の上面に」取り付けられるものの、ステアリングホイールとの関係や前輪との関係については特定されていない点。
(2)相違点についての判断
まず、相違点1について検討する。
トラクタにおいて、ロプスを、左右の縦フレーム部の上端に横フレーム部が連結するという構成にすることは、周知技術(例えば、甲4の【0009】、図2、甲5の【0016】、甲6の【0010】、図1等参照。以下「周知技術A」という。)であるから、甲1発明において、周知技術Aを適用して、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
次に、相違点2について検討する。
トラクタ等の農業作業車において、GPS受信機を、前輪の中心よりも前方に位置するように、且つ、正面視において、車体左右方向における中央部に位置し、且つ、GPS受信機の幅がステアリングホイールの幅よりも小さくなるように、ボンネットの上面に設けることは、周知技術(例えば、甲7の【0019】、【0044】、図2、甲8の【0019】、【0040】、図2等参照。以下「周知技術B」という。)である。
したがって、甲1発明において、周知技術Bを適用して、GPS受信機50を、左右前輪2,2の中心よりも前方に位置するように、且つ、正面視において、車体左右方向における中央部に位置し、且つ、GPS受信機50の幅がステアリングホイールの幅よりも小さくなるように、ボンネット4に設けることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎない。
次に、トラクタにおいて、ロプスはトラクタが転倒した場合でも操縦者の安全を守るものであるから、ある程度以上の高さが必要であるのは明らかであり、その高さは車庫への格納時に支障が出得るものであり(例えば、甲7の【0002】、甲8の【0002】等参照。)、甲1発明において、ロブスタ57(ロプス)の高さを高くすればするほど、ロブスタ57(ロプス)の上端とステアリングハンドル24(ステアリングホイール)の上端を結ぶラインの、ステアリングハンドル24から前方に延びた部分は、下方に行くものであるから、甲1発明において、周知技術Bを適用して、ボンネット4の上面の前方にGPS受信機50を設けると、結果として多くの場合、GPS受信機50は、ロブスタ57(ロプス)の上端とステアリングハンドル24(ステアリングホイール)の上端を結ぶラインの上側に位置することとなる。
そうすると、甲1発明において、GPS受信機を前輪の中心よりも前方に位置するようにボンネット正面に設けるとともに、ロプスをより高く設けることで、上記相違点2のうち、アンテナユニットを「側面視において、前記ロプスの前記横フレーム部の上端と前記ステアリングホイールの上端とを結ぶ領域ラインより上側で、」「且つ、前記前輪の中心よりも前方に位置する」構成(以下「前提構成」という)とする程度のことは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。
しかしながら、甲1の図1等を参照すると、ボンネット4の上面は前方に行くほど下方に下がっているので、甲1発明において、ボンネット4の上面の前方にGPS受信機50を設けると、GPS受信機50の下面における後端部は、ステアリングハンドル24の下端を通る水平ラインよりも下方に位置する蓋然性が高い。
そうすると、甲1発明において、上記前提構成を維持しつつ、GPS受信機50の下面における後端部が、ステアリングハンドル24の下端を通る水平ラインよりも上方に位置すること、すなわち、上記相違点2の「アンテナユニットの下面における後端部がステアリングホイールの下端を通る水平姿勢の水平ラインよりも上方に位置するように」構成することは難しいと認められるところ、GPS受信機50の位置やロブスタ57(ロプス)の高さを調節すること等によって、これら両方を同時に成り立たせようとすることは、甲1だけでなく他の証拠(申立人が提出した甲2(実願平5-54580号(実開平7-25609号)のマイクロフィルム)及び甲3(特開2014-98279号公報)を含む。)にも記載も示唆もないことから、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(3)申立人の主張について
申立人は、令和6年1月9日の意見書(2~3ページ)において、甲1の図1には、GPS受信機50の下面における後端部が、ステアリングハンドル24の下端を通る水平ラインよりも上方に位置することが開示され、甲2の図2にも、GPS用アンテナ11の下面における後端部が、ステアリングホイールの下端を通る水平ラインより上方に位置することが開示されていることから、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかしながら、申立人の上記主張は、上記(2)で示した前提構成を考慮したものではなく、当を得たものとはいえないから、採用できない。
(4)小括
以上によれば、本件発明1は、甲1発明及び周知技術(周知技術A、B)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の全ての構成を含み、かつ、さらに限定を加えたものであるから、上記(1)イで説示したのと同じ理由により、甲1発明及び周知技術(周知技術A、B)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)で提示した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701018