特許異議申立
2022-701114
圃場作業機
- 審判番号
- 2022-701114
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-054508
- 登録番号
- 7068877
- 請求日
- 2022年11月15日
- 審決日
- 2023年06月08日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社クボタ
- 【権利者代理人】弁理士法人R&C
- 【異議申立人】堀内 志穂
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 北川 創
- 審判官 蔵野 いづみ
- 分類
- P1651.121-YAA(A01C) / P1651.841-YAA(A01C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7068877号発明「圃場作業機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7068877号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7068877号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7068877号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成30年3月22日に出願され、令和4年5月9日にその特許権の設定登録がされ、同月17日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。
令和4年11月15日 特許異議申立人堀内 志穂(以下「申立人」
という。)による請求項1~5に係る発明の
特許に対する特許異議の申立て
令和5年 2月 2日付け 取消理由通知
同年 3月28日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 5月18日 申立人による意見書の提出
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
令和5年3月28日に提出された訂正請求書による請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許7068877号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものであって、その訂正の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に、
「圃場に農用資材を供給する供給装置と、
植え付け用の苗が載置される苗載せ台と、前記苗載せ台の下部から苗を取り出して圃場に植え付ける複数の植付アームと、下部において圃場の田面に接地追従する整地フロートと、を有する苗植付装置と、が備えられ、
前記供給装置に、前記農用資材を圃場に供給する排出部と、前記農用資材を前記排出部に案内する搬送管路と、前記搬送管路に搬送風を供給するブロアと、前記搬送管路から搬送方向と反対の向きに分岐して、前記搬送風を分流可能な空気逃し管路と、が備えられ、
前記空気逃し管路の分岐先端部は、前記苗載せ台の下端よりも低い高さとなるように延設され、かつ、前記整地フロートの前方に配置されている圃場作業機。」
と記載されているのを、
「圃場に農用資材を供給する供給装置と、
植え付け用の苗が載置される苗載せ台と、前記苗載せ台の下部から苗を取り出して圃場に植え付ける複数の植付アームと、下部において圃場の田面に接地追従する整地フロートと、を有する苗植付装置と、が備えられ、
前記供給装置に、前記農用資材を圃場に供給する排出部と、前記農用資材を前記排出部に案内する搬送管路と、前記搬送管路に搬送風を供給するブロアと、前記搬送管路から搬送方向と反対の向きに分岐して、前記搬送風を分流可能な空気逃し管路と、が備えられ、
前記空気逃し管路の分岐先端部は、前記苗載せ台の下端よりも低い高さとなるように延設され、かつ、前記整地フロートの前方に配置され、かつ、
前記空気逃し管路の分岐先端部は、機体左右方向における前記整地フロートの幅の範囲内に配置されている圃場作業機。」に訂正する。
なお、請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。
2 訂正の適否について
(1) 訂正の目的
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1の「空気逃し管路の分岐先端部」について、「機体左右方向における前記整地フロートの幅の範囲内に配置されている」ことを特定し、限定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許の明細書の【0020】、【0041】、【0045】、【0049】、図5及び図7等の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、上記アのとおり、空気逃し管路の分岐先端部について、「機体左右方向における前記整地フロートの幅の範囲内に配置されている」ことを特定し、限定するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(4) 一群の請求項について
訂正前の請求項1~5について、請求項2~5のそれぞれは、請求項1を直接的または間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、一群の請求項である。
3 訂正のまとめ
上記2によれば、訂正事項に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを認める。
第3 本件特許に係る発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを認めるので、特許第7068877号の請求項1~5の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」~「本件訂正発明5」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
圃場に農用資材を供給する供給装置と、
植え付け用の苗が載置される苗載せ台と、前記苗載せ台の下部から苗を取り出して圃場に植え付ける複数の植付アームと、下部において圃場の田面に接地追従する整地フロートと、を有する苗植付装置と、が備えられ、
前記供給装置に、前記農用資材を圃場に供給する排出部と、前記農用資材を前記排出部に案内する搬送管路と、前記搬送管路に搬送風を供給するブロアと、前記搬送管路から搬送方向と反対の向きに分岐して、前記搬送風を分流可能な空気逃し管路と、が備えられ、
前記空気逃し管路の分岐先端部は、前記苗載せ台の下端よりも低い高さとなるように延設され、かつ、前記整地フロートの前方に配置され、かつ、
前記空気逃し管路の分岐先端部は、機体左右方向における前記整地フロートの幅の範囲内に配置されている圃場作業機。
【請求項2】
複数の前記搬送管路が、前記植付アームごとに備えられ、
夫々の前記搬送管路から分岐する前記空気逃し管路が、複数の管路を接続可能なジョイント管と接続している請求項1に記載の圃場作業機。
【請求項3】
前記ジョイント管は、前記苗植付装置と連結されるガイド部材によって支持される請求項2に記載の圃場作業機。
【請求項4】
前記複数の搬送管路における夫々の前記空気逃し管路の分岐基端部は、機体横方向において前記ジョイント管の接続箇所の位置する側に向けて傾斜する請求項2又は3に記載の圃場作業機。
【請求項5】
圃場の田面に溝を形成する作溝器が備えられ、
前記分岐先端部は前記作溝器の近傍に配置されている請求項1から4の何れか一項に記載の圃場作業機。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、合議体が特許権者に令和5年2月2日付けで通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
・請求項1~5
・引用文献等: 甲第1号証及び甲第3号証
甲第1号証:特開2003-061422号公報
甲第3号証:特開2013-055896号公報」
(以下、甲第1号証及び甲第3号証を、それぞれ甲1及び甲3という。)
第5 取消理由についての当審の判断
1 甲1
(1) 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(下線は合議体が付した。以下同様。)。
「【0009】図1~図7は、本発明を適用した施肥装置30を田植機に搭載した第1実施形態を示している。この田植機は4条植え式の乗用型田植機であり(図2参照)、当該田植機における走行機体1は、左右一対の前輪3,3と、同じく左右一対の後輪4,4とで支持されている。走行機体1における車体フレーム2の前部にはエンジン5が搭載されており、当該エンジン5の後方には、前後(走行機体1の進行方向に沿う方向)に長いミッションケース6が配置されている。」
「【0012】走行機体1の後端に配設した平行リンク機構14を介して苗植装置15が上下動可能に連結されている。当該苗植装置15は、昇降用油圧シリンダ23で昇降調節可能に構成されており、ミッションケース6に後向き突設した植付PTO軸(図示せず)から自在継手伝動軸(図示せず)等を介して動力伝達される伝動ケース96,97(第1実施形態では2つ)と、上端が走行機体1の後部に接近する前傾状に配置された苗載台17等を備えている。」
「【0014】各伝動ケース96(97)の左右両側面には、上下回転するロータリ式の苗植付機構21が配設されている。これら各苗植付機構21の植付杆22は、苗載台17の下端と圃場面との間を上下昇降しながら、当該各植付杆22の先端の植付爪で苗載台17から1株分の苗を取り出して、この苗を圃場に植え付けるように構成されている(図1及び図2参照)。
【0015】また、苗植装置15の下部には、圃場の泥面を滑走するフロート24(第1実施形態では3つ)が配設されており、苗植装置15の左右のバランスを良好に保ち、苗の植付け姿勢を安定させるようになっている。」
「【0017】図1及び図2に示すように、施肥装置30は、運転座席10の後方で左右(走行機体1の横幅方向)に並べて配置した肥料貯蔵用のホッパ31(第1実施形態では4つ)と、これら各ホッパ31の下部に設けた繰出し機構32と、当該各繰出し機構32と圃場への肥料排出口とを接続する搬送管路(詳細は後述する)とにより構成されている。」
「【0044】第1実施形態の搬送管路は、各繰出し機構32の下端に連通接続した前後長手のホースジョイント33と、これら各ホースジョイント33の前端に連通接続した左右長手で丸パイプ状のエアタンク34と、前記各ホースジョイント33の後端に連通接続して、苗植装置15における各フロート24に設けた作溝器35(図1参照)の箇所まで延びる屈曲可能なホース状の供給管101(102,103,104)等で構成されている。なお、各作溝器35には、対応する供給管101~104に連通する肥料排出口(図示せず)が設けられている。各ホースジョイント33の前端には、エアタンクに通ずる連接管71が連結されている(図4参照)。
【0045】供給管101~104の長手方向中途部には、それぞれ分岐用ジョイント105,106,107,108が介設されている(図9参照)。図9で左端に位置する分岐用ジョイント105の上端部は、左支柱98の長手方向中途部に左右外向きに突設した固定ブラケット98a,98bのうち左固定ブラケット98aに固定されており、図9で右端に位置する分岐用ジョイント108の上端部は、右支柱99の長手方向中途部に左右外向きに突設した固定ブラケット99a,99bのうち右固定ブラケット99bに固定されている。」
「【0047】そして、図9で左側に位置する2本の供給管101,102において分岐用ジョイント105,106よりも下流側の部位は、左伝動ケース96にねじ止めした固定部材122に固定されている。また、図9で右側に位置する2本の供給管103,104において分岐用ジョイント107,108よりも下流側の部位は、右伝動ケース97にねじ止めした固定部材123に固定されている。
【0048】分岐用ジョイント105~108には、斜め上方に延びる空気逃がし管が分岐形成されている。これら各空気逃がし管は、対応する分岐用ジョイント105~108の符号にaを付して示している。
【0049】図9で左端の空気逃がし管105aの上端に接続した延長管109は、略T字状のジョイント管117を介して左右長手の第1排気管113の長手方向中途部に接続されており、図9で左から2番目の空気逃がし管106aの上端に接続した延長管110は、略L字状のジョイント管118を介して第1排気管113の右端に接続されている。この第1排気管113の左端部は、走行機体1の左側面よりもさらに外側に突出しており(図2参照)、当該左端部には下向きに開口する排気口114が設けられている。
【0050】他方、図9で右端の空気逃がし管108aの上端に接続した延長管112は、略T字状のジョイント管119を介して左右長手の第2排気管115の長手方向中途部に接続されており、図9で右から2番目の空気逃がし管107aの上端に接続した延長管111は、略L字状のジョイント管120を介して第2排気管115の左端に接続されている。この第2排気管115の右端部は、走行機体1の右側面よりもさらに外側に突出しており(図2参照)、当該右端部には下向きに開口する排気口116が設けられている。
【0051】このように、第1実施形態では、走行機体1の進行方向左側(図9で左側)に位置する2本の供給管101,102における空気逃がし管105a,106aを、1つの管群として第1排気管113に連通させて、排気口114を1箇所にまとめるとともに、走行機体1の進行方向右側(図9で右側)に位置する2本の供給管103,104における空気逃がし管107a,108aを、もう1つの管群として第2排気管115に連通させて、排気口116を1箇所にまとめている。」
「【0054】他方、送風機42からの圧風(空気)は、エアタンク34及び各連接管71を経由して各ホースジョイント33に向かって吹き込む。これにより、各ホースジョイント33内に放出された肥料は、前記圧風とともに各供給管101~104を経て、対応する作溝器35から圃場における植付条の側部に放出される。」
「【図2】
[図:0001401673000001.jpg]
」
「【図9】
[図:0001401673000002.jpg]
」
(2) 認定事項
ア 【図面の簡単な説明】によれば、図2は、田植機の平面図であって、この図2から、排気口114及び116は、各々の排気口に近接する走行機体1の右側及び左側の2つのフロート24よりも、走行機体1の前側に設けられていること(以下「認定事項1」という。)、それぞれ植付杆22が設けられた4つの苗植付機構21に対応して、4つの供給管101~104が設けられていること(以下「認定事項2」という。)がみてとれる。
イ 【0047】、【0048】の記載及び図9から、分岐用ジョイント105~108には、供給管101、102、103、104の下流側から上流側に向かって、斜め上方に延びる空気逃がし管105a、106a、107a、108aが分岐形成されていること(以下「認定事項3」という。)がみてとれる。
ウ 図9から、排気口114及び116は、下方に向かって延びるように設けられていること(以下「認定事項4」という。)、分岐用ジョイント105、106の空気逃がし管105a、106aは、それぞれの基端から、それぞれの上端に接続した延長管109、110が接続されるジョイント管117、118の位置する側である左側に傾斜し、分岐用ジョイント107、108の空気逃がし管107a、108aは、それぞれの基端から、それぞれの上端に接続した延長管111、112が接続されるジョイント管120、119の位置する側である右側に傾斜していること(以下「認定事項5」という。)がみてとれる。
(3) 甲1発明
上記(1)及び(2)からみて、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
<甲1発明>
「施肥装置30を搭載し(【0009】)、
苗植装置15が上下動可能に連結され、苗植装置15は、伝動ケース96,97と苗載台17等を備え(【0012】)、各伝動ケース96(97)の左右両側面には、上下回転するロータリ式の苗植付機構21が配設され、これら各苗植付機構21の植付杆22は、苗載台17の下端と圃場面との間を上下昇降しながら、当該各植付杆22の先端の植付爪で苗載台17から1株分の苗を取り出して、この苗を圃場に植え付けるように構成され(【0014】)、苗植装置15の下部には、圃場の泥面を滑走するフロート24が配設されており(【0015】)、
施肥装置30は、運転座席10の後方で左右(走行機体1の横幅方向)に並べて配置した肥料貯蔵用のホッパ31と、これら各ホッパ31の下部に設けた繰出し機構32と、当該各繰出し機構32と圃場への肥料排出口とを接続する搬送管路とにより構成されており(【0017】)、搬送管路は、各繰出し機構32の下端に連通接続した前後長手のホースジョイント33と、これら各ホースジョイント33の前端に連通接続した左右長手で丸パイプ状のエアタンク34と、前記各ホースジョイント33の後端に連通接続して、苗植装置15における各フロート24に設けた作溝器35の箇所まで延びる屈曲可能なホース状の供給管101(102,103,104)等で構成され、各作溝器35には、対応する供給管101~104に連通する肥料排出口が設けられ、各ホースジョイント33の前端には、エアタンクに通ずる連接管71が連結され(【0044】)、供給管101~104の長手方向中途部には、それぞれ分岐用ジョイント105,106,107,108が介設され(【0045】)、分岐用ジョイント105~108には、供給管101、102、103、104の下流側から上流側に向かって、斜め上方に延びる空気逃がし管105a、106a、107a、108aが分岐形成され(【0047】、【0048】、図9、認定事項3)、左端の空気逃がし管105aの上端に接続した延長管109は、略T字状のジョイント管117を介して左右長手の第1排気管113の長手方向中途部に接続されており、左から2番目の空気逃がし管106aの上端に接続した延長管110は、略L字状のジョイント管118を介して第1排気管113の右端に接続され、この第1排気管113の左端部は、走行機体1の左側面よりもさらに外側に突出しており、当該左端部には下向きに開口する排気口114が設けられ(【0049】)、右端の空気逃がし管108aの上端に接続した延長管112は、略T字状のジョイント管119を介して左右長手の第2排気管115の長手方向中途部に接続されており、右から2番目の空気逃がし管107aの上端に接続した延長管111は、略L字状のジョイント管120を介して第2排気管115の左端に接続され、この第2排気管115の右端部は、走行機体1の右側面よりもさらに外側に突出しており、当該右端部には下向きに開口する排気口116が設けられ(【0050】)、走行機体1の進行方向左側に位置する2本の供給管101,102における空気逃がし管105a,106aを、1つの管群として第1排気管113に連通させて、排気口114を1箇所にまとめるとともに、走行機体1の進行方向右側に位置する2本の供給管103,104における空気逃がし管107a,108aを、もう1つの管群として第2排気管115に連通させて、排気口116を1箇所にまとめており(【0051】)、排気口114及び116は、下方に向かって延びるように設けられ(図9、認定事項4)、送風機42からの圧風(空気)が、エアタンク34及び各連接管71を経由して各ホースジョイント33に向かって吹き込むことにより、各ホースジョイント33内に放出された肥料は、前記圧風とともに各供給管101~104を経て、対応する作溝器35から圃場における植付条の側部に放出され(【0054】)、
排気口114及び116は、各々の排気口に近接する走行機体1の右側及び左側の2つのフロート24よりも、走行機体1の前側に設けられ(図2、認定事項1)、
それぞれ植付杆22が設けられた4つの苗植付機構21に対応して、4つの供給管101~104が設けられ(図9、認定事項2)、
分岐用ジョイント105、106の空気逃がし管105a、106aは、それぞれの基端から、それぞれの上端に接続した延長管109、110が接続されるジョイント管117、118の位置する側である左側に傾斜し、分岐用ジョイント107、108の空気逃がし管107a、108aは、それぞれの基端から、それぞれの上端に接続した延長管111、112が接続されるジョイント管120、119の位置する側である右側に傾斜している(図9、認定事項5)
田植機(【0009】)。」
2 甲3
(1) 甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。
「【0019】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の実施例に係る水田作業機の全体を示す側面図である。図2は、本発明の実施例に係る水田作業機の全体を示す平面図である。これらの図に示すように、本発明の実施例に係る水田作業機は、左右一対の操向操作及び駆動自在な前輪10,10と左右一対の駆動自在な後輪11,11とによって自走する乗用型の走行機体1の後部に、油圧シリンダ2の作動で昇降揺動するリンク機構3を介して作業部4を連結して、かつ走行機体1の運転座席13の後側に設けられたタンク21を備えた粉粒体供給装置5を設けて構成されている。」
「【0021】
作業部4について説明する。
図3は、作業部4を示す側面図である。この図及び図1,2に示すように、作業部4は、リンク機構3を構成するアッパーリンク3a及びロワーリンク3bの後端部に連結フレーム3cを介して作業部機体横方向での中間部が連結された作業部機体横方向に長い連結部材28を備えて構成された作業部機体フレーム30を備えている。連結部材28は、縦断面形状が矩形に形成された中空の鉄鋼材によって構成されている。作業部機体フレーム30は、前記連結部材28を備える他、この連結部材28の長手方向での3箇所から作業部機体後方向きに延出され、前端側が連結部材28によって連結された状態で作業部機体横方向に所定間隔を隔てて並ぶ作業部機体前後向きの3つの植付駆動ケース29を備えて構成されている。
【0022】
作業部4は、各植付駆動ケース29の後端部の両横側に1つずつ駆動自在に設けられた6つの苗植付機構18、作業部機体フレーム30の前端側の上方に下端側ほど作業部機体後方側に位置する傾斜姿勢で設けられた苗載せ台17、各植付駆動ケース29の下方に一つずつ位置する配置で作業部機体横方向に並べて作業部機体フレーム30の下方に設けられた3つの接地フロート15を備えている。各苗植付機構18は、植付駆動ケース29に駆動回転自在に支持される回転ロータ18aを備え、この回転ロータ18aが回転駆動されることにより、回転ロータ18aの両端部に分散させて設けてある一対の植付アーム18b,18bによって交互に苗載せ台17の下端部から苗を取り出し、取り出した苗を圃場面に植え付けるように苗植え運動を行なうようにロータリ式に構成されている。」
「【0029】
図3,5に示すように、6つの粉粒体供給部Kは、各粉粒体供給部Kを構成する作溝器19が1つの苗植付機構18の前方近くに位置する配置で作業部機体横方向に並んでいる。6つの粉粒体供給部Kそれぞれは、接地フロート15に支持される作溝器19と、この作溝器19を6本の搬送管27のうちの所定の1本の搬送管27に連通させる連通パイプ24とを備えて構成してある。
【0030】
図3,4,5に示すように、各作溝器19は、機体上下方向視での形状が機体後方向きに開口する溝形になるように成形された折曲げ板金で成る供給部19aと、この供給部19aの下部の前側から前方に延出する作溝部19bとを備えて構成してある。各作溝器19は、作溝部19bを接地フロート15の底部に連結ボルト19dで連結することによって接地フロート15に支持させてある。」
「【0032】
従って、粉粒体供給装置5は、作業部4によって6条植えの苗植え作業が行なわれるに伴い、6条の植付け苗それぞれの横側近くに肥料供給する施肥作業を行なう。
すなわち、粉粒体繰出し部Aがタンク21に貯留された肥料を4つの繰出し機構20によってそれぞれの送出部20aに繰出し、6つの搬送管27それぞれが、送出部20aに繰り出された肥料をブロワ22から送出部20aを介して搬送管27に供給される搬送風によって粉粒体供給部Kの連通パイプ24に供給する。6つの粉粒体供給部Kそれぞれは、搬送管27から連通パイプ24に供給された肥料をブロワ22からの搬送風によって連通パイプ24に沿わせて作溝器19の供給部19aに供給する。6つの作溝器18により、圃場面の機体横方向での6箇所に溝を形成し、形成した溝に供給部19aによって連通パイプ24からの肥料を供給していく。各作溝器18は、苗植付機構18による苗植付け箇所より機体前方側において、溝を形成して肥料供給する。作溝器19による肥料供給を行なった後の溝は、作溝器19の後方に配置して接地フロート15に設けられた埋戻し板39による泥土の押し寄せによって埋められる。」
「【0054】
図5は、6つの作溝器19それぞれにおける作溝器19と連通パイプ24とが連通する部位を示す縦断側面図である。図6は、6つの作溝器19それぞれにおける作溝器19と連通パイプ24とが連通する部位を示す正面図である。図8は、6つの作溝器19それぞれにおける作溝器19と連通パイプ24とが連通する部位を示す横断平面図である。これらの図に示すように、筒体25に第1及び第2のエア抜き風路61,62を連通させ、ブロワ22からの搬送風の一部が作溝器19の供給部19aの下端部に至るまでに第1及び第2のエア抜き風路61,62によって抜け出ることを可能にし、筒体25から作溝器19の供給部19aに流入して供給部19aから肥料供給用の溝内や圃場面に吹き出る搬送風量をブロワ22によって供給される搬送風量に比して少量にできるように構成してある。
【0055】
第1及び第2エア抜き風路61,62は、作溝器19の上方に設けたカバー63によって形成してある。」
「【0059】
図3に示すように、第1のエア抜き風路61の排気口64aは、植付け機体フレーム30を構成する連結部材28の上端28aより低い配置高さに位置するように配置してあり、第1のエア抜き風路61から搬送風と共に肥料粉末が出ても、第1のエア抜き風路61から出た肥料粉末が植付け機体フレーム30の上に落下する事態が発生しない。」
「【図3】
[図:0001401673000003.jpg]
」
(2) 甲3記載技術
上記(1)より、甲3には、次の技術的事項(以下「甲3記載技術」という。)が記載されている。
<甲3記載技術>
「苗植付機構18と、苗植え作業が行なわれるに伴い、植付け苗それぞれの横側近くに肥料供給する施肥作業を行なう粉粒体供給装置5を備える水田作業機において(【0019】、【0022】、【0032】)、
ブロワ22からの搬送風の一部が作溝器19の供給部19aの下端部に至るまでに第1及び第2のエア抜き風路61,62によって抜け出ることを可能にし(【0054】)、
第1及び第2エア抜き風路61,62は、接地フロート15に支持される作溝器19の上方に設けたカバー63によって形成され(【0029】、【0030】、【0055】)、
第1のエア抜き風路61の排気口64aを、苗載せ台17が設けられた植付け機体フレーム30を構成する連結部材28の上端28aより低い配置高さに位置するように配置することで、第1のエア抜き風路61から搬送風と共に肥料粉末が出ても、第1のエア抜き風路61から出た肥料粉末が植付け機体フレーム30の上に落下する事態が発生しないこと(【0022】、【0059】)。」
3 本件訂正発明1について
(1) 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「肥料」及び「圃場への肥料排出口とを接続する搬送管路」を備える「施肥装置30」は、それぞれ本件訂正発明1の「農用資材」及び「圃場に農用資材を供給する供給装置」に相当する。
イ 甲1発明の「苗載台17」は、本件訂正発明1の「植え付け用の苗が載置される苗載せ台」に相当する。
甲1発明の「苗載台17の下端と圃場面との間を上下昇降しながら」、「先端の植付爪で苗載台17から1株分の苗を取り出して、この苗を圃場に植え付けるように構成され」た「植付杆22」は、本件訂正発明1の「前記苗載せ台の下部から苗を取り出して圃場に植え付ける複数の植付アーム」に相当する。
甲1発明の「苗植装置15の下部に」「配設されて」いる「圃場の泥面を滑走するフロート24」は、本件訂正発明1の「下部において圃場の田面に接地追従する整地フロート」に相当する。
甲1発明の「苗植装置15」は、「苗載台17」と、「植付杆22」を備えた「苗植付機構21が配設され」た「伝動ケース96,97」を備え、「フロート24」が配設されていることから、本件訂正発明1の「植え付け用の苗が載置される苗載せ台と、前記苗載せ台の下部から苗を取り出して圃場に植え付ける複数の植付アームと、下部において圃場の田面に接地追従する整地フロートと、を有する苗植付装置」に相当する。
ウ 甲1発明の「圃場への肥料排出口」は、本件訂正発明1の「前記農用資材を圃場に供給する排出部」に相当する。
甲1発明の「搬送管路」は、肥料貯蔵用のホッパ31の下部に設けた繰出し機構32と圃場への肥料排出口とを接続するものであるから、本件訂正発明1の「前記農用資材を前記排出部に案内する搬送管路」に相当する。
甲1発明の「送風機42」は、「圧風(空気)」を「搬送管路」を構成する「エアタンク34及び各連接管71を経由して各ホースジョイント33に向かって吹き込む」ものであるから、本件訂正発明1の「前記搬送管路に搬送風を供給するブロア」に相当する。
甲1発明の「空気逃がし管105a、106a、107a、108a」は、「分岐用ジョイント105~108に」、「供給管101、102、103、104の下流側から上流側に向かって、斜め上方に延びる」ように「分岐形成され」るものであるから、本件訂正発明1の「前記搬送管路から搬送方向と反対の向きに分岐して、前記搬送風を分流可能な空気逃し管路」に相当する。
エ 甲1発明の「排気口114」及び「排気口116」は、それぞれ「空気逃がし管105a,106a」及び「空気逃がし管107a,108a」の排気口であるから、本件訂正発明1の「前記空気逃し管路の分岐先端部」に相当する。
甲1発明において、「排気口114及び116は、各々の排気口に近接する走行機体1の右側及び左側の2つのフロート24よりも、走行機体1の前側に設けられ」ることは、本件訂正発明1において、「前記空気逃し管路の分岐先端部は」、「前記整地フロートの前方に配置されている」ことに相当する。
オ 甲1発明の「田植機」は、本件訂正発明1の「圃場作業機」に相当する。
カ 上記ア~オによれば、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点1及び相違点2で相違する。
(一致点)
「圃場に農用資材を供給する供給装置と、
植え付け用の苗が載置される苗載せ台と、前記苗載せ台の下部から苗を取り出して圃場に植え付ける複数の植付アームと、下部において圃場の田面に接地追従する整地フロートと、を有する苗植付装置と、が備えられ、
前記供給装置に、前記農用資材を圃場に供給する排出部と、前記農用資材を前記排出部に案内する搬送管路と、前記搬送管路に搬送風を供給するブロアと、前記搬送管路から搬送方向と反対の向きに分岐して、前記搬送風を分流可能な空気逃し管路と、が備えられ、
前記空気逃し管路の分岐先端部は、前記整地フロートの前方に配置されている圃場作業機。」
(相違点1)
「空気逃し管路の分岐先端部」(甲1発明の「排気口114及び116」)が、本件訂正発明1では、「前記苗載せ台の下端よりも低い高さとなるように延設され」るのに対して、甲1発明では、「苗載台17」の下端よりも低い高さとなるように延設されない点。
(相違点2)
本件訂正発明1の「空気逃し管路の分岐先端部」は、「機体左右方向における前記整地フロートの幅の範囲内に配置され」ているのに対して、甲1発明の「排気口114及び116」は、それぞれ「走行機体1の左側面よりもさらに外側に突出して」いる「第1排気管113の左端部」及び「走行機体1の右側面よりもさらに外側に突出して」いる「第2排気管115の右端部」に「下向きに」「設けられ」たものであり、「走行機体1」左右方向における「苗植装置15の下部に」「配設」された「フロート24」の幅の範囲内に配置されていない点。
(2) 検討・判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲3記載技術の「第1及び第2エア抜き風路61,62」は、「接地フロート15に支持される作溝器19の上方に設けたカバー63によって形成され」ていることから、「水田作業機」の機体左右方向における「接地フロート15」の幅の範囲内に配置されたものである。
一方、甲1発明の「走行機体1の左側面よりもさらに外側に突出して」いる「第1排気管113の左端部」に「設けられ」た「下向きに開口する排気口114」及び「走行機体1の右側面よりもさらに外側に突出して」いる「第2排気管115の右端部」に「設けられ」た「下向きに開口する排気口116」は、甲1の【0058】に、
「特に、第1実施形態では、各排気口114,116が走行機体1の側方よりもさらに外側に配置されているから、走行機体1や施肥装置30等には前記肥料が付着し難くなっており、これら各装置等における錆の発生を抑制する効果がより助長されるのである。」
と記載されていることから、走行機体1や施肥装置30等に肥料が付着し難くなるように、走行機体1の側方よりもさらに外側に配置されたものである。
そうすると、甲1発明において、甲3記載技術の「第1及び第2エア抜き風路61,62」が「水田作業機」の機体左右方向における「接地フロート15」の幅の範囲内に配置されているように、「排気口114及び116」を「走行機体1」左右方向における「苗植装置15の下部に」「配設」された「フロート24」の幅の範囲内に配置することは、「排気口114及び116」が走行機体1の側方より内側に配置されることになるため、上記の「走行機体1や施肥装置30等に肥料が付着し難くなっており、これら各装置等における錆の発生を抑制する効果がより助長され」るとの効果を得ることができなくなるという阻害要因を有するものである。
仮に、甲1発明が、【0058】に記載の当該効果が得られるものに限られず、【0057】に記載の
「また、前述のように、図9で左側の空気逃がし管105a,106aに対する排気口114を1箇所にまとめるとともに、図9で右側の空気逃がし管107a,108aに対する排気口116を1箇所にまとめることにより、排気口114,116の数を供給管101?104の数よりも少なくしているから、各排出口114,116から圧風とともに排出される粉粒状の肥料が飛散する範囲を、前記先行技術の場合よりも狭くできる。これにより、走行機体1や施肥装置30等において前記肥料が付着するおそれのある箇所が少なくなり、これら各装置等における錆の発生を抑制できる。」
等の効果を得ることを目的としたものであったとしても、甲1において「排気口114及び116」の位置を変更することを動機付ける記載も示唆もない。
したがって、甲1発明において、「排気口114及び116」を、「走行機体1」左右方向における「苗植装置15の下部に」「配設」された「フロート24」の幅の範囲内に配置して、相違点2に係る本願訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲3記載技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 本件訂正発明2~本件訂正発明5について
本件訂正発明2~本件訂正発明5は、本件訂正発明1が有する構成を全て有し、さらに構成を付加したものであるから、本件訂正発明1と同様に、甲1発明及び甲3記載技術から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5 申立人の主張について
申立人は、令和5年5月18日に提出された意見書において、以下の旨を主張する。
(主張1)
「訂正により新たに生じた相違点「前記空気逃し管路の分岐先端部は、機体左右方向における前記整地フロートの幅の範囲内に配置されている」については、甲第3号証に記載されているとおり周知の技術である。
特許権者は、令和5年3月28日提出の意見書において、甲第1号証の段落「0058」の記載を引用して、甲第1号証に記載の発明が「各排気口114(114’),116をなるべく機体の外側に配置するという技術思想に基づいて、上記の課題を解決するものである。」と主張している。
しかしながら、甲第1号証の段落「0058」は、「特に、第1実施形態では、~(以下略)」との記載にあるように、機体の外側に配置された場合の作用効果を説明しているにすぎず、甲第1号証の段落「0057」には機体の外側に限定されない場合の作用効果が記載されている。すなわち、甲第1号証の記載では、機体の外側に配置されていない場合についても除外するものではなく、少なくとも、機体の外側に配置されていることに限定する技術的な理由は存在しない。そして、段落「0057」には、肥料の飛散に関する説明がされており、特許権者が令和5年3月28日提出の意見書において特許発明における作用効果として主張した内容を示唆する記載がされている。
よって、甲第1号証に記載の構成に甲第3号証に記載の構成を適用することに関する阻害要件は存在せず、甲第1号証に記載の発明に、甲第3号証に記載の技術を適用する動機付けがある。よって、本件特許発明の請求項1ないし5は、依然として、甲第1号証ないし甲第3号証に記載の発明により進歩性を有さず、取り消されるべきものである。」(1頁10行~2頁7行)
(主張2)
「なお、令和5年3月28日提出の訂正請求書において、「前記空気逃し管路の分岐先端部は、機体左右方向における前記整地フロートの幅の範囲内に配置されている」と訂正されている。
しかし、当該記載では、
(i)機体左右方向において、右端の整地フロートから左端の整地フロートまで間、
(ii)整地フロート1つずつの幅の範囲内、
のどちらとも解釈可能であり不明確である。
令和5年3月28日提出の意見書において、本件特許発明1の作用効果として「空気逃し管路に流れ込む農用資材の粉粒が、圃場の田面に吹き付けられた後、整地フロートによって上方から押さえ付けられる。」と特許権者は主張するとともに、本件特許明細書の図5、図7の記載から(ii)と解釈すべきと考える。しかし、(i)と解釈する場合は、本件特許明細書および図面に記載されていない内容を含むこととなり、新規事項の追加に該当するため、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に違反する不適法な訂正である。」(2頁8行~23行)
申立人の主張1について検討する。上記3(2)に示したように、甲1発明において、甲3記載技術を適用して、「排気口114及び116」を、「走行機体1」左右方向における「苗植装置15の下部に」「配設」された「フロート24」の幅の範囲内に配置することが、当業者が容易に想到できたこととはいえない。
仮に甲3記載技術が周知の技術であったとしても同様である。
申立人の主張2について検討する。本件訂正後の請求項1の「前記空気逃し管路の分岐先端部は、機体左右方向における前記整地フロートの幅の範囲内に配置されている」との記載は、本件特許の明細書及び図面の記載も参酌すると、その文言のとおり、「前記空気逃し管路の分岐先端部」が「機体左右方向における前記整地フロートの幅の範囲内に配置されている」ことを意味するものと解され、当該記載は明確である。
よって、当該記載について、「前記空気逃し管路の分岐先端部」が、「(i)機体左右方向において、右端の整地フロートから左端の整地フロートまで間」に配置されていることを意味すると解すべき事情もない。
したがって、本件訂正後の請求項1の上記記載は、明確であり、新規事項を追加するものではない。
以上より、申立人の主張1及び主張2は上記に示した判断を左右するものでなく、採用することができない。
第6 取消理由通知で通知しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
1 取消理由通知で通知しなかった特許異議申立理由の概要
特許異議申立理由のうち、取消理由通知で通知しなかった理由の概要は以下のとおりである。
(1)本件訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証記載の発明および甲第2号証記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件訂正前の請求項5に係る発明は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載事項および甲第3号証記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証記載の発明および周知慣用技術(甲第2号証記載事項、甲第3号証記載事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 当審の判断
甲第2号証(以下「甲2」という。)には、苗植機における肥料の散布管49とその出口49aについて記載されており、この「出口49a」及び「散布管49」は、それぞれ本件訂正発明1の「前記農用資材を圃場に供給する排出部」及び「前記農用資材を前記排出部に案内する搬送管路」に相当するものといえるが、本件訂正発明1の「前記搬送管路に搬送風を供給するブロアと、前記搬送管路から搬送方向と反対の向きに分岐して、前記搬送風を分流可能な空気逃し管路」に相当する構成については記載されておらず、当該構成を設けることを示唆する記載もない。
特許異議申立書の22頁7~8行には、
「空気逃し管路が記載されていない甲2発明では、出口49aが空気逃し管路の機能も有しており」
と記載されているが、本件訂正発明1の「空気逃し管路」は、「前記搬送管路から搬送方向と反対の向きに分岐して、前記搬送風を分流可能」であるのに対して、甲2に記載の「散布管49」及び「出口49a」は、「散布管49」(搬送管路)から搬送方向と反対の向きに分岐して、搬送風を分流可能なものではないから、甲2に記載の「散布管49」及び「出口49a」は、本願訂正発明1の「空気逃し管路」に相当するものではない。
そして、甲2は、本願訂正発明1の「空気逃し管路」についての記載がないものであるから、上記第5の4で検討した相違点2に係る本件訂正発明1の「前記空気逃し管路の分岐先端部は、機体左右方向における前記整地フロートの幅の範囲内に配置されている」との事項を示唆するものではない。
したがって、甲1発明及び甲3記載技術とともに、甲2に記載の事項を考慮しても、本件訂正発明1~本件訂正発明5は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~本件訂正発明5に係る特許は、取消理由通知、特許異議申立書に記載した理由及び証拠によっては取り消すことはできない。
さらに、本件訂正発明1~本件訂正発明5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-701114