特許異議申立
2023-700718
両面粘着テープ、車載部品固定用両面粘着テープ、及び、車載用ヘッドアップディスプレイカバー固定用両面粘着テープ
- 審判番号
- 2023-700718
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-125934
- 登録番号
- 7211723
- 請求日
- 2023年07月12日
- 審決日
- 2024年08月06日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】田口 昌浩
- 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
- 【異議申立人】石井 豪
- 審判長/審判官
- 審判長 村守 宏文
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1651.121-YAA(C09J) / P1651.536-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第7項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7211723号発明「両面粘着テープ、車載部品固定用両面粘着テープ、及び、車載用ヘッドアップディスプレイカバー固定用両面粘着テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7211723号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第7211723号の請求項1-3、5-7に係る特許を維持する。
特許第7211723号の請求項4についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、2017年(平成29年)2月22日(優先権主張 平成28年2月22日 (JP)日本国)を国際出願日とする特願2017-514589号の一部を平成30年7月2日に新たな特許出願としたものあって、令和5年1月16日に特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行され、その後、同年7月12日に特許異議申立人 石井 豪により請求項1~7に対して特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年10月31日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年12月27日に意見書の提出を行い、当審は、令和6年2月14日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、取消理由通知(決定の予告)の指定期間内である同年4月16日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年5月14日付けで特許異議申立人に通知し、特許異議申立人は、同年6月14日に意見書を提出したものである。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1~5からなる。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「前記発泡体は、示差走査熱量計により測定される結晶融解温度ピークが140℃以上であり、発泡倍率が15cm3/g以下であり、気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/TDの平均気泡径)が0.9~3であり、ホモポリプロピレン、プロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンランダム共重合体又はプロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンブロック共重合体の少なくとも1つからなるポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有する」とあるのを、「前記発泡体は、示差走査熱量計により測定される結晶融解温度ピークが140℃以上であり、発泡倍率が15cm3/g以下であり、気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/TDの平均気泡径)が0.9~3であり、ホモポリプロピレン、プロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンランダム共重合体又はプロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンブロック共重合体の少なくとも1つからなるポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有し、厚さ方向の25%圧縮強度が86~1000kPaである」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3及び5~7も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除する(請求項4の記載を引用する請求項5~7も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1、2、3又は4」とあるのを、「請求項1、2又は3」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6及び7も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1、2、3、4又は5」とあるのを、「請求項1、2、3又は5」に訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1、2、3、4又は5」とあるのを、「請求項1、2、3又は5」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「前記発泡体」について、前記発泡体は「厚さ方向の25%圧縮強度が86~1000kPaである」との構成を付加して限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「前記発泡体」について、構成を付加して限定するものであり、訂正前の請求項1にかかる発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
願書に添付した特許請求の範囲の請求項4には、「前記発泡体は、厚さ方向の25%圧縮強度が50~1000kPaであることを特徴とする請求項1、2又は 3記載の両面粘着テープ。」と記載され、願書に添付した明細書の段落0009には、「本発明の両面粘着テープは、基材の両面にアクリル粘着剤層を有する。上記基材は、発泡体からなる。」と記載され、同段落0030には、「上記発泡体は、厚さ方向の25%圧縮強度が50kPa以上、1000kPa以下であることが好ましい。上記25%圧縮強度が1000kPaを超えると、発泡体の耐反発性が低下するため好ましくない。」と記載され、訂正事項1は、厚さ方向の25%圧縮強度が50~1000kPaであるという数値範囲から50kPa以上86kPa未満を除くものであるといえるから、そのような数値範囲を除くことが新たな技術的事項を導入するものとはならない。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正事項1との整合性を図るために請求項4を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、請求項4を削除する訂正であり、訂正前の請求項4にかかる発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
請求項を削除する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、請求項4を削除する訂正である訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項4に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3~5
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項5が請求項1、2、3又は4を引用する記載であったものを、請求項1、2又は3を引用する記載として、訂正事項4は、訂正前の請求項6が請求項1、2、3、4又は5を引用する記載であったものを、請求項1、2、3又は5を引用する記載として、訂正事項5は、訂正前の請求項7が請求項1、2、3、4又は5を引用する記載であったものを、請求項1、2、3又は5を引用する記載として、訂正事項2により削除する請求項4の記載を引用しないようにする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3~5は、請求項の削除に伴い引用する請求項を整合させる訂正であり、当該訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項3~5は、請求項の削除に伴い引用する請求項を整合させる訂正であり、当該訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項5に係る訂正事項3、訂正前の請求項6に係る訂正事項4及び訂正前の請求項7に係る訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、上記訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1~7についてされたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。
(5)特許異議申立人による訂正事項1が訂正要件に適合していないことについての主張及び当審の判断
ア 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は令和6年6月14日提出の意見書において、請求項1に係る訂正は、請求項1に対して「厚さ方向の25%圧縮強度が86~1000kPa」との事項を導入するものであり、特許権者は「86」なる数値の根拠が実施例3にあり、上記訂正は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内であると主張するが、実施例3は、厚さ1000μmのポリオレフィン発泡体の原料として、エチレン-プロピレンランダム共重合体を用いたものであるところ、上記訂正は、「基材の厚みが1500μm以下(但し、200μm以上1500μm以下は除く)」の発明であって、かつ、ホモポリプロピレンやエチレン-プロピレンブロック共重合体を30重量%以上含有する発明に対しても、「厚さ方向の25%圧縮強度が86kPa」なる事項を導入したものであり、上記の訂正は、明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであると主張する。
イ 当審の判断
前記(1)ウのとおり、本件特許明細書の記載から、訂正事項1は、厚さ方向の25%圧縮強度が50~1000kPaであるという数値範囲から50kPa以上86kPa未満を除くものであるといえるから、そのような数値範囲を除くことが新たな技術的事項を導入するものとはならず、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~7に係る発明は、令和6年4月16日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」等、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
基材の両面にアクリル粘着剤層を有する両面粘着テープであって、
前記基材は、発泡体からなり、
前記基材の厚みが1500μm以下(但し、200μm以上1500μm以下は除く)であり、
前記発泡体は、示差走査熱量計により測定される結晶融解温度ピークが140℃以上であり、発泡倍率が15cm3/g以下であり、気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/TDの平均気泡径)が0.9~3であり、ホモポリプロピレン、プロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンランダム共重合体又はプロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンブロック共重合体の少なくとも1つからなるポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有し、厚さ方向の25%圧縮強度が50~1000kPaであることを特徴とする両面粘着テープ。
【請求項2】
前記発泡体は、前記ポリプロピレン系樹脂を30~90重量%含有するポリオレフィン発泡体であることを特徴とする請求項1記載の両面粘着テープ。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンランダム共重合体であることを特徴とする請求項2記載の両面粘着テープ。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
総厚みが30~2000μmであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の両面粘着テープ。
【請求項6】
請求項1、2、3又は5記載の両面粘着テープからなることを特徴とする車載部品固定用両面粘着テープ。
【請求項7】
請求項1、2、3又は5記載の両面粘着テープからなることを特徴とする車載用ヘッドアップディスプレイカバー固定用両面粘着テープ。」
第4 優先権主張、基準日について
前記第1における特願2017-514589号(以下、「原出願」という。)は特願2016-31017号(以下、「基礎出願」という。)を優先権主張の基礎とするものである。
ここで、前記第2の本件特許発明1の両面粘着テープの発泡体の気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/TDの平均気泡径)が0.9~3であることは、原出願の願書に最初に添付した明細書に記載はあるものの、基礎出願の願書に最初に添付した明細書に記載はなく、また、基礎出願に最初に添付した明細書の記載をみても、その記載から自明な事項ともいえない。
そうすると、本件特許発明1及び本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~7は、基礎出願に最初に添付した明細書に記載されていない新たな技術的事項を導入しているから、本件特許発明1~7について、優先権の効果は認められない。
したがって、後記新規性及び進歩性の判断の基準日は、原出願の出願日である平成29年2月22日である。
第5 取消理由通知に記載した取消理由について
令和5年10月31日付けで通知した取消理由及び令和6年2月14日付けで通知した取消理由の概要は、いずれも、次のとおりである。
理由(進歩性)本件特許の請求項1~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証~甲第8号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2016-183292号公報
甲第2号証:特開2015-199925号公報
甲第4号証:国際公開第2013/099755号
甲第5号証:国際公開第2015/146982号
甲第6号証:特開平6-234176号公報
甲第7号証:特開平3-113412号公報
甲第8号証:特開平9-311290号公報
第6 前記第5における理由(進歩性)について
1 甲号証について
前記第5の甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証~甲第8号証。
2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
1a「【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂と、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリエチレン系プラストマーの内の少なくとも1種とを含む樹脂組成物を発泡させて発泡体を得て、前記発泡体の厚み方向の少なくとも一方の表面をスライス加工して、スライス加工された表面に気泡を露出させて、スライス加工発泡体を得て、前記スライス加工発泡体を少なくとも一方向に延伸することにより得られており、
厚みが0.01mm以上、0.3mm以下であり、
23℃及び30kPaで圧縮したときの圧縮率が10%以上、60%以下である、ポリプロピレン系樹脂発泡シート。」
1b「【0013】
本発明の目的は、厚みが薄くても、良好な圧縮特性を有するポリプロピレン系樹脂発泡シートを提供することである。また、本発明の目的は、厚みが薄くても、良好な圧縮特性を有するポリプロピレン系樹脂発泡シートを得るポリプロピレン系樹脂発泡シートの製造方法を提供することである。また、本発明は、上記ポリプロピレン系樹脂発泡シートを用いた粘着シートを提供することも目的とする。
1c「【0069】
(A)ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーを重合させることにより得られる。(A)ポリプロピレン系樹脂は重合体である。重合体には共重合体が含まれる。(A)ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンモノマーの単独重合体、並びにプロピレンモノマーを主成分とする重合成分の共重合体が挙げられる。上記プロピレンモノマーを主成分とする重合成分の共重合体では、重合可能な重合成分100重量%中、プロピレンモノマーの含有量は50重量%以上であり、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。また、共重合の形態は、ランダムであってもよく、ブロックであってもよい。
【0070】
(A)ポリプロピレン系樹脂としては、具体的には、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムポリマー及びプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。(A)ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーの単独重合体であることが好ましく、プロピレンホモポリマーであることが好ましい。
1d「【0101】
発泡シートの一方の表面上に粘着層を配置することで、粘着シートを得ることができる。この粘着シートは、発泡シートと、発泡シートの一方の表面上に配置された粘着層とを備える。この粘着シートでは、発泡シートの他方の表面上にも、粘着層が配置されていてもよく、発泡シートの両側の表面上に粘着層が配置されてもよい。」
1e「【0103】
以下に実施例を掲げて、本発明を更に詳しく説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0104】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂(MFR:0.3g/10分、ライオンデルバゼル社製「Hostalen PP H2150」)70重量部に、熱可塑性エラストマー(MFR:0.4g/10分、JSR社製「エクセリンク3400B」)30重量部を加えて、配合樹脂組成物100重量部を調製した。
【0105】
得られた配合樹脂組成物100重量部に、気泡核剤としてのタルク(平均粒子径13μm)7重量部と、顔料(トーヨーケム社製「PPM OYA164cLK-FD」)10重量部とを混合させて、樹脂組成物を調製した。
【0106】
口径が65mmの第一押出機の先端に、口径が75mmの第二押出機を接続したタンデム型押出機を用意した。得られた樹脂組成物を、タンデム型押出機の第一押出機に供給して溶融混練した。第一押出機の途中から発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素を5.0重量部圧入して、溶融状態の樹脂組成物と二酸化炭素を均一に混合混練した上で、発泡剤を含む溶融樹脂組成物を第二押出機に連続的に供給して、溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した。
【0107】
その後、第二押出機の先端に取り付けた金型の円環ダイ(気泡生成部口径φ36mm、発泡体成形部の出口口径φ70mm)から、吐出量30kg/hr、溶融物温度177℃、円環ダイ手前での溶融物圧力11.0MPaの条件で押出発泡させることで、円筒状の発泡体を得た。円環ダイの発泡体成形部において成形された円筒状の発泡体を、冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却した。冷却された円筒状の発泡体を、マンドレル上の一点でカッターにより切開して、平均厚み2.0mmの樹脂発泡体を得た。
【0108】
得られた樹脂発泡体の両面をスプリッティングマシンによりスライス加工して、表皮を除去し、両面がスライス加工された平均厚み0.50mmのスライス加工発泡体(延伸前)を得た。
【0109】
次に、二軸延伸機を用いて、得られたスライス加工発泡体を、予熱温度100℃、延伸速度1.00m/分でMD方向に延伸倍率3.0倍で延伸し、次に予熱温度100℃、延伸速度1.00m/分でTD方向に延伸倍率3.0倍で延伸し、平均厚み0.08mmの発泡シートを得た。
【0110】
得られた発泡シートでは、破れがなく、均一に延伸されていた。また、発泡シートの表面は、溶融されておらず、表面に気泡が露出した状態が維持されていた。
・・・
【0114】
(実施例3)
ポリプロピレン樹脂(MFR:0.3g/10分、ライオンデルバゼル社製「Hostalen PP H2150」)60重量部に、熱可塑性エラストマー(MFR:0.4g/10分、JSR社製「エクセリンク3400B」)20重量部、メタロセンプラストマーであるポリエチレン(MFR:2.2g/10分、日本ポリエチレン社製「KS240T」)20重量部を加えて、配合樹脂組成物100重量部を調製した。
【0115】
得られた配合樹脂組成物を用いたこと、並びに、延伸条件を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み0.08mmの発泡シートを得た。
【0116】
得られた発泡シートでは、破れがなく、均一に延伸されていた。また、発泡シートの表面は、溶融されておらず、表面に気泡が露出した状態が維持されていた。
・・・
【0127】
(実施例7)
ポリプロピレン樹脂(MFR:0.3g/10分、プライムポリマー社製「E110G」)60重量部に、熱可塑性エラストマー(MFR:2.2g/10分、プライムポリマー社製「R110E」)20重量部、メタロセンプラストマーであるポリエチレン(MFR:2.2g/10分、日本ポリエチレン社製「KS240T」)20重量部を加えて、配合樹脂組成物100重量部を調製した。
・・・
【0194】
(評価)
(1)30kPaでの圧縮率
テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、型式:UCT-10T)及び万能試験機データ処理ソフト(ソフトブレーン社製、製品番号:UTPS-458X)を用いて、次の方法で測定された値を発泡シートの30KPaでの圧縮率とする。測定温度は23℃である。
【0195】
試験片サイズを50×50×2mmとし、試験片の厚みが2mm以上である場合には試験片をそのまま用い、試験片の厚みが2mm未満である場合には試験片を積み重ねて厚みを約2mmとする。
【0196】
試験片の幅および長さを、デジタルノギス(ミツトヨ社製、製品名:デジマチックキャリパ、型式:CD-15)を用いて1/100mmまで測定し、試験片の厚みを、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、型式:UCT?10T、ロードセル:10kN、型式:UR-1T-A-SR)を用いて試験片を圧縮し、負荷が2N/25cm2(0.8kPa)となる点の上下圧縮板間隔を1/100mmまで測定し、試験開始点とする。
【0197】
変位の原点を試験開始点、圧縮速度を1mm/分とし、初めの厚み(圧縮負荷が2N/25cm2の上下圧縮板間隔値)の80%圧縮時までの応力を圧縮応力とする。3個の試験片を測定し、次式により算出した圧縮応力の平均を発泡シートの80%までの圧縮応力(kPa)とする。
【0198】
σ80=(F80/A0)×103
σ80:圧縮応力(kPa)
F80:80%変形時の荷重(N)
A0 :試験片の初めの断面積(mm2)
【0199】
なお試験片を、JIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間以上かけて状態を調整した後、同じ標準雰囲気下で測定を行う。
【0200】
上記測定で得られた値を用いて、X軸に圧縮率(ひずみ%)、Y軸に応力(変形時の荷重kPa)をプロットし、30kPaでの圧縮率(ひずみ%)を読み取った。
【0201】
読み取った値は、上記3個の試験片の平均値である。
・・・
【0215】
示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充填した。この際、発泡シートは加熱プレス機を用い、200℃で300秒間加熱溶融させた後、0.6MPaで5回上下にプレスし、その後、さらに200秒加熱して得られた非発泡シートを用いた。窒素ガス流量20mL/minのもと、30℃から-40℃まで降温した後10分間保持し、-40℃から220℃まで昇温(1st Heating)、10分間保持後220℃から-40℃まで降温(Cooling)、10分間保持後-40℃から220℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得た。なお、全ての昇温・降温は速度10℃/minで行い、基準物質としてアルミナを用いた。
【0216】
本発明において、融点とは、装置付属の解析ソフトを用いて、2nd Heating過程にみられる融解ピークのトップの温度を読みとった値である。
・・・
【0220】
詳細及び結果を下記の表1,2に示す。
【0221】
【表1】
[図:0001416453000001.jpg]
【0222】
【表2】
[図:0001416453000002.jpg]
」
(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂組成物を含む壁により区画された複数の気泡を有するシートであり、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物が、(a)ポリオレフィン系樹脂と、(b)(b1)エラストマーおよび(b2)プラストマーとを含み、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物において、前記(a)と(b)との配合割合が質量比で90/10~10/90の範囲でありかつ前記(b1)と(b2)との配合割合が質量比で90/10~10/90の範囲であり、
0.05~0.5mmの平均厚み、2~15倍の発泡倍率、30~95%の連続気泡率および1~30%の気泡破れ率を有し、
シートの厚み方向に、樹脂部比率が第2の領域に対して相対的に多い第1の領域と、樹脂部比率が第1の領域に対して相対的に少ない第2の領域とを有し、一方のシート表面側の前記第1の領域の樹脂部比率が40~80%であり、他方のシート表面側の前記第2の領域の樹脂部比率が20~50%である、ポリオレフィン系樹脂薄層発泡シート。」
2b「【0015】
また、一般に、発泡シートでは、厚みが薄くなると機械強度が低下して、シートが切れ易くなるため、粘着加工などの二次加工ができなくなる課題がある。
【0016】
そこで、本発明は、薄型化、軽量化、小型化された電子機器用シール材、粘着テープ用基材及びウェアラブル用基材などに用いるために最適なポリオレフィン系樹脂薄層発泡シートおよびその製造方法、並びに粘着シートを提供することを課題とする。」
2c「【0125】
(1)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂は、上記のようにグレードに特に限定されず、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体などが挙げられる。なお、本発明において、(a)ポリオレフィン系樹脂は、(b1)エラストマーおよび(b2)プラストマーを含まない。
【0126】
ポリオレフィン系樹脂は、耐熱性をより一層高める点で、ポリプロピレン単独重合体またはプロピレンと他のオレフィンとの共重合体であることが好ましい。
【0127】
プロピレンと共重合する他のオレフィンとしては、例えば、エチレンの他に、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどの炭素数が4~10であるα-オレフィンが挙げられる。
【0128】
プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、エチレン成分の少ない共重合体であることが好ましく、ランダム共重合体またはブロック共重合体のいずれであってもよいが、耐熱性に優れていることから、ブロック共重合体であることが好ましい。」
2d「【0200】
ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合には、140~180℃の範囲の融点mpを有することから、加熱温度は60℃以上160℃未満の範囲であることが好ましい。」
2e「【0214】
本発明の粘着テープ用基材は、公知の接着剤および両面テープなどの接着材と組み合わせて用いることができる。」
2f「【0216】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の例示にすぎず、本発明は以下の実施例のみに限定されない。
・・・
【0244】
発泡倍率(倍)=ポリオレフィン系樹脂密度(g/cm3)/見掛け密度(g/cm3)
・・・
【0274】
(実施例1)
ポリオレフィン系樹脂としてのポリプロピレン樹脂(MFR:0.3g/10分、株式会社プライムポリマー製、製品名:E110G)60質量部に、熱可塑性エラストマー(MFR:1.5g/10分、株式会社プライムポリマー製、製品名:R110E)20質量部と、メタロセンプラストマーであるポリエチレン樹脂(MFR:2.2g/10分、日本ポリエチレン株式会社製、製品名:カーネルKS240T)20質量部とを加えて配合樹脂組成物100質量部を調製した。
【0275】
得られた配合樹脂組成物100質量部に、気泡核剤としてのタルク(平均粒子径13μm)を70質量%含有したマスターバッチ(日東粉化工業株式会社製、製品名:タルペット70P)10質量部と、顔料(トーヨーケム株式会社製、製品名:PPM OYA164cLK-FD)10質量部とを混合させてポリオレフィン系樹脂発泡用組成物を調製した。
【0276】
口径が65mmの第一押出機の先端に、口径が75mmの第二押出機を接続してなるタンデム型押出機を用意し、得られたポリオレフィン系樹脂発泡用組成物を、タンデム型押出機の第一押出機に供給して溶融混練した。第一押出機の途中から発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素を4.2質量部圧入して、溶融状態のポリオレフィン系樹脂発泡用組成物と二酸化炭素を均一に混合混練した上で、発泡剤を含む溶融樹脂組成物を第二押出機に連続的に供給して溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した。
【0277】
その後、第二押出機の先端に取り付けた金型の円環ダイ(気泡生成部口径φ36mm、金型の気泡生成部間隔0.25mm(気泡生成部の断面積:0.275cm2)、発泡体(成形部の間隔3.4mm、発泡体成形部の出口口径φ70)から、吐出量30kg/hr(押出速度V=109kg/cm2・hr)、溶融物温度176℃、円環ダイ手前での溶融物圧力11.5MPaの条件で押出発泡させることで、円筒状の発泡体を得た。円環ダイの発泡体成形部において成形された円筒状の発泡体を、冷却されているマンドレル上に添わせると共に、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却した。冷却された円筒状の発泡体を、マンドレル上の一点でカッターにより切開して、厚み2.0mmのシート状のポリオレフィン系樹脂発泡シートを得た。
【0278】
得られたポリオレフィン系樹脂発泡シートをスプリッティングマシンによりスライス加工して表皮を除去し、片面がスライス加工された厚み1.5mmのポリオレフィン系樹脂発泡シートを得た。
【0279】
次に、誘電加熱ロールを用意し、加熱温度140℃、ニップロール圧力0.5MPa、速度0.5m/minの条件で、得られたポリオレフィン系樹脂発泡シートのスライス加工された面を誘電加熱ロールとニップロールの間を通紙し、加熱プレスされた厚み0.35mmのポリオレフィン系樹脂薄層発泡シートを得た。
【0280】
得られたポリオレフィン系樹脂薄層発泡シートは、元厚みに比べ77%の圧縮率で、容易に潰すことが可能で、24時間後の厚みを観察したところ、経時での復元はなく、形状を維持していた。
・・・
【0292】
(実施例6)
両面をスライス加工して厚み0.5mmのポリオレフィン系樹脂発泡シートを得たこと、誘電加熱ロールでの加熱温度を110℃、速度1.0m/minに変更したこと以外は実施例1と同様にして、加熱プレスされた厚み0.10mmのポリオレフィン系樹脂薄層発泡シートを得た。
【0293】
得られたポリオレフィン系樹脂薄層発泡シートは、元厚みに比べ80%の圧縮率で、容易に潰すことが可能で、24時間後の厚みを観察したところ、経時での復元はなく、形状を維持していた。
・・・
【0310】
薄層発泡シートの切断面のMD方向における画像処理前および画像処理後の電子顕微鏡写真を図5に示す。
【0311】
各実施例および比較例で用いた配合樹脂組成物のポリオレフィン系樹脂、エラストマーおよびプラストマーの配合量と配合割合およびMFRを表1に示す。
【0312】
各実施例および比較例で得られた発泡シートの厚み、発泡倍率、連続気泡率、平均気泡径、25%圧縮応力および気泡破れ率、ならびに加熱温度、プレス圧力およびプレス速度の加熱プレス条件を表2に示す。
【0313】
また、各実施例および比較例で得られた薄層発泡シートの厚み、元厚みからの圧縮率、発泡倍率、連続気泡率、平均気泡径、気泡破れ率、厚み方向の気泡数、樹脂層比率ならびにシート流れ方向(MD方向)およびシート幅方向(TD方向)の引張強度および引裂強度を表3に示す。
また、各実施例および比較例で得られた薄層発泡シートの表面粗度及び光沢度を表4に示す。
また、各実施例および比較例で得られた薄層発泡シートのIP性能を表5に示す。
【0314】
【表1】
[図:0001416453000003.jpg]
・・・
【0316】
【表3】
[図:0001416453000004.jpg]
」
(3)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
4a「[請求項1]
発泡体基材の少なくとも一面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記発泡体基材中の流れ方向及び幅方向の平均気泡径が150μm以下であり、流れ方向の平均気泡径/厚さ方向の平均気泡径の比及び幅方向の平均気泡径/厚さ方向の平均気泡径の比が6以下であり、前記発泡体基材の層間強度が20N/cm以上であることを特徴とする粘着テープ。」
4b「[0019]
さらに、流れ方向と幅方向の平均気泡径の比率は特に限定されないが、流れ方向を1とした場合0.25~4倍が好ましく、より好ましくは0.33~3倍、さらに好ましくは0.6~1.5倍、特に好ましくは0.7~1.3倍である。上記比率範囲であると発泡体基材の流れ方向と幅方向の柔軟性や引張強度のばらつきが生じにくい。」
4c「[0091]
(粘着剤組成物(A)の調整)
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート93.4質量部、アクリル酸3.5質量部、酢酸ビニル3質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部、重合開始剤として2、2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部とを、酢酸エチル100質量部からなる溶剤に溶解し、70℃で12時間重合して、重量平均分子量が160万(ポリスチレン換算)のアクリル系共重合体(1)を得た。次に、アクリル系共重合体(1)100質量部に対し、荒川化学社製「スーパーエステルA100」(不均化ロジンのグリセリンエステル)9.4質量部と、ハリマ化成社製「ハリタックPCJ」(重合ロジンのペンタエリスリトールエステル)9.4質量部を添加、酢酸エチルを加えて均一に混合し、不揮発分38%の粘着剤組成物(A)を得た。
[0092]
(粘着剤組成物(B)の調整)
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート97.97質量部、アクリル酸2.0質量部、4-ヒドロキブチルアクリレート0.03質量部、重合開始剤として2、2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部とを、酢酸エチル100質量部からなる溶剤に溶解し、70℃で12時間重合して、重量平均分子量が200万(ポリスチレン換算)のアクリル系共重合体(2)を得た。次に、アクリル系共重合体(2)100質量部に対し、荒川化学社製「スーパーエステルA100」(不均化ロジンのグリセリンエステル)25質量部と、荒川化学社製「ペンセルD135」(重合ロジンのペンタエリスリトールエステル)5質量部、三井化学製FTR6100(スチレン系石油樹脂)20質量部を添加、酢酸エチルを加えて均一に混合し、不揮発分40%の粘着剤組成物(B)を得た。
[0093]
(粘着剤組成物(C)の調整)
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート44.94質量部、2-エチルヘキシルアクリレート50質量部、酢酸ビニル3質量部、アクリル酸2質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.06質量部、重合開始剤として2、2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部とを、酢酸エチル100質量部からなる溶剤に溶解し、70℃で12時間重合して、重量平均分子量が120万(ポリスチレン換算)のアクリル系共重合体(3)を得た。次に、アクリル系共重合体(4)100質量部に対し、荒川化学社製「ペンセルD135」(重合ロジン
のペンタエリスリトールエステル)10質量部を添加、酢酸エチルを加えて均一に混合し、不揮発分45%の粘着剤組成物(C)を得た。
[0094]
[実施例1]
(両面粘着テープの調整)
上記粘着剤組成物(A)100質量部に対し、日本ポリウレタン社製「コロネートL-45」(イソシアネート系架橋剤、固形分45%)を1.1質量部添加し15分攪拌後、剥離処理した厚さ75μmのPETフィルムの剥離処理面に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して、80℃で3分間乾燥し粘着剤層を形成した。粘着剤層のゲル分率は48質量%、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は-16℃であった。
[0095]
次に、黒色ポリオレフィン系発泡体(1)(厚さ:200μm、見かけ密度0.39g/cm3、25%圧縮強度:450kPa、流れ方向の引張弾性率:964N/cm2、幅方向の引張弾性率:666N/cm2、層間強度:42.4N/cm、表面をコロナ処理でぬれ指数52mN/mとした)からなる基材の両面に、前記粘着剤層を1枚ずつ貼り合わせたのち、23℃下線圧5kg/cmのロールでラミネートした。その後、40℃で48時間熟成し、厚さ300μmの両面粘着テープを得た。
[0096]
[実施例2]
粘着剤組成物(A)の乾燥後の厚さを25μmにしたこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ250μmの両面粘着テープを得た。
[0097]
[実施例3]
粘着剤組成物(A)の代わりに粘着剤組成物(B)を用い、粘着剤組成物B100質量部に対し、日本ポリウレタン社製「コロネートL-45」(イソシアネート系架橋剤、固形分45%)を1.33質量部添加したこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ300μmの両面粘着テープを得た。粘着剤層のゲル分率は37質量%、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は2℃であった。
[0098]
[実施例4]
粘着剤組成物(A)の代わりに粘着剤組成物(C)100質量部に対し、日本ポリウレタン社製「コロネートL-45」(イソシアネート系架橋剤、固形分45%)を0.93質量部添加したこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ300μmの両面粘着テープを得た。粘着剤層のゲル分率は42質量%、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は-28℃であった。
[0099]
[実施例5]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色ポリオレフィン系発泡体(2)(厚さ:200μm、見かけ密度0.36g/cm3、25%圧縮強度:388kPa、流れ方向の引張弾性率:883N/cm2、幅方向の引張弾性率:624N/cm2、層間強度:28.4N/cm、表面をコロナ処理でぬれ指数52mN/mとした)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ300μmの両面粘着テープを得た。
[0100]
[実施例6]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色ポリオレフィン系発泡体(3)(厚さ:200μm、見かけ密度0.45g/cm3、25%圧縮強度:332kPa、流れ方向の引張弾性率:1072N/cm2、幅方向の引張弾性率:675N/cm2、層間強度:27.4N/cm、表面をコロナ処理でぬれ指数52mN/mとした)に変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ300μmの両面粘着テープを得た。
[0101]
[実施例7]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色ポリオレフィン系発泡体(4)(厚さ:150μm、見かけ密度0.40g/cm3、25%圧縮強度:207kPa、流れ方向の引張弾性率:1022N/cm2、幅方向の引張弾性率:734N/cm2、層間強度:27.0N/cm、表面をコロナ処理でぬれ指数52mN/mとした)に変更したこと以外は、実施例3と同一の方法で厚さ250μmの両面粘着テープを得た。
[0102]
[実施例8]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色ポリオレフィン系発泡体(5)(厚さ:230μm、見かけ密度0.35g/cm3、25%圧縮強度:301kPa、流れ方向の引張弾性率:933N/cm2、幅方向の引張弾性率:593N/cm2、層間強度:29.4N/cm、表面をコロナ処理でぬれ指数52mN/mとした)に変更したこと以外は、実施例3と同一の方法で厚さ330μmの両面粘着テープを得た。
[0103]
[実施例9]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色ポリオレフィン系発泡体(6)(厚さ:500μm、見かけ密度0.14g/cm3、25%圧縮強度:98kPa、流れ方向の引張弾性率:411N/cm2、幅方向の引張弾性率:245N/cm2、層間強度:30.0N/cm、表面をコロナ処理でぬれ指数52mN/mとした)に変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ600μmの両面粘着テープを得た。
・・・
[0120]
[発泡体基材の厚さ方向の平均気泡径]
発泡体基材の厚さ方向の平均気泡径は、発泡体基材の流れ方向の平均気泡径測定と同じ条件でマイクロスコープによる観察を行い、得られた写真において流れ方向または幅方向の気泡径を測定した気泡について厚さ方向の気泡径を全て測定し、その平均値から平均気泡径を算出した。これを、任意の10カ所で測定し、その平均値を厚さ方向(CD)の平均気泡径とした。また、得られた厚さ方向(CD)の平均気泡径、および、上記にて得られた流れ方向(MD)、幅方向(CD)の平均気泡径に基づき、平均気泡径の比を求めた。
・・・
[0125]
[表1]
[図:0001416453000005.jpg]
」
(4)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
5a「[請求項1]
ポリオレフィン系樹脂を発泡及び架橋させることにより得られ、かつ内部に複数の気泡を有する発泡シートと、
前記発泡シートの第1の表面側に配置された第1の粘着剤層とを備え、
前記発泡シートの密度が0.5g/cm3以上、0.6g/cm3以下であり、
前記発泡シートの25%圧縮強度が380kPa以上、1000kPa以下であり、
前記発泡シートの厚み方向と直交する面方向における前記気泡の平均長径の平均短径に対する比が1.0以上、1.1以下である、粘着テープ。
・・・
[請求項5]
厚みが0.05mm以上、2mm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着テープ。」
5b「[0038]
上記発泡シートでは、上記比(平均長径/平均短径)が1.0以上、1.1以下であるか、又は、上記比(流れ方向における平均径/流れ方向及び厚み方向と直交する方向における平均径)が、0.9以上、1.1以下である。
[0039]
上記比(平均長径/平均短径)が1.0以上、1.1以下であると、気泡が楕円形状よりもより円形状に近くなり、粘着テープの衝撃吸収性が高くなる。上記比(流れ方向における平均径/流れ方向及び厚み方向と直交する方向における平均径)が0.9以上、1.1以下であると、気泡が楕円形状よりもより円形状に近くなり、流れ方向と、流れ方向及び厚み方向と直交する方向とで、粘着テープに存在する気泡の数が均一になりやすいので、粘着テープの衝撃吸収性が高くなる。」
5c「[0106]
本発明を、実施例により更に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
・・・
[0110]
<比(MDにおける平均径/CDにおける平均径)>
発泡シートの拡大写真を撮り、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製「VHX-900」)を用いてMD、CD、及びVDの気泡径を測定し、測定値を平均して平均径を算出した。算出したMD(発泡シートの押出成形時の流れ方向及)における気泡径及びCD(発泡シートの押出成形時の流れ方向及び発泡シートの厚み方向と直交する方向)における平均径から、比(MDにおける平均径/CDにおける平均径)を求めた。
[0111]
さらに、同様の方法で、発泡シートの厚み方向と直交する面方向における気泡の長径及び短径を測定し、測定値を平均して平均長径及び平均短径を算出した。算出した発泡シートの厚み方向と直交する面方向における平均長径と平均短径とから、比(平均長径/平均短径)を求めた。
[0112]
(実施例1~13及び比較例1~5)
発泡シートの作製:
ポリエチレン系樹脂(直鎖状低密度ポリエチレン、エクソンケミカル社製「Exact3027」、密度:0.900g/cm3)100重量部、アゾジカルボンアミド1.9重量部、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.2重量部及び酸化亜鉛1.8重量部を押出機に供給して、130℃で溶融混練し、長尺シート状であり、かつ厚みが0.5mmである発泡体組成物を押出した。
[0113]
次に、上記発泡体組成物の両面に、加速電圧500kVの電子線を4.5Mrad照射して、上記発泡体組成物を架橋させた。その後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで、加熱して発泡させて、気泡の平均径、平均長径及び平均短径が下記の表1に示す値となるように延伸して、下記の表1に示す厚みの発泡シートを得た。
[0114]
粘着剤溶液の調製:
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器に、ブチルアクリレート72重量部、2-エチルヘキシルアクリレート20重量部、エチルアクリレート5重量部、アクリル酸3重量部及びヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部を入れ、反応器中の混合物に酢酸エチルを更に加え、窒素置換した。その後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反
応器内に、重合開始剤であるラウロイルパーオキシド0.1重量部を添加した。70℃で5時間還流させて、アクリル共重合体の溶液を得た。
[0115]
得られたアクリル共重合体の溶液に含まれるアクリル共重合体の固形分100重量部に対して、重合ロジンエステル14重量部、テルペンフェノール10重量部、水添ロジンエステル10重量部、酢酸エチル125重量部、及びイソシアネート系架橋剤(積水フーラー社製「硬化剤 UA」)1.0重量部を添加し、攪拌して、アクリル粘着剤が酢酸エチルに溶解した粘着剤溶液を得た。
[0116]
両面粘着テープの作製:
得られた発泡シートの第1の表面に、得られた粘着剤溶液を塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、粘着剤層(厚み30μm)を形成した。粘着剤層の外表面に対して、離型処理が施され、厚み50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを貼り合わせた。
[0117]
次いで、別の離型処理が施されたPETフィルム(厚み50μm)を用意した。このPETフィルムの離型処理面に粘着剤溶液を塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、粘着剤層(厚み30μm)を形成した。この粘着剤層を発泡シートの第2の表面に貼り合わせた。これにより、離型処理が施されたPETフィルムで両面が覆われた両面粘着テープを得た。
・・・
[0126]
詳細及び結果を下記の表1に示す。
[0127]
[表1]
[図:0001416453000006.jpg]
」
(5)甲第6号証(以下、「甲6」という。)
6a「【請求項1】 見かけ密度0.02~0.2g/cm3 、120℃におけるキシレン抽出残分値20~80重量%のポリオレフィン系樹脂発泡体及び表皮材からなる積層複合体であって、上記発泡体は、少なくとも表皮材と積層される側の表面から0.8mm以内の表層部分に中心が位置している全気泡の厚さ方向の直径の平均値(a)が0.05~1mmであり、上記気泡のうち、厚さ方向の直径が平均値(a)の値の±15%の範囲内にある気泡の数が80%以上であることを特徴とする積層複合体。」
6b「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の欠点に鑑み、表層部分の強度及び柔軟性に優れたポリオレフィン系樹脂発泡体が表皮材と良好に接着している積層複合体を提供することを目的とする。」
6c「【0028】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。なお、「部」とあるのは「重量部」を意味する。
実施例1
(1)発泡体の製造
エチレン-プロピレン共重合体(エチレン含量3重量%、メルトインデックス1.5g/10分)80部、ポリエチレン(密度0.935g/cm3 、メルトインデックス7g/10分)20部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート1.5部及び1,9-ノナンジオールジメタクリレート1.5部、熱分解型発泡剤としてアゾジカルボンアミド10部、酸化防止剤として2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.3部及びジラウリルチオプロピオネート0.3部、金属害防止剤としてメチルベンゾトリアゾール0.5部を単軸押出機(池貝鉄工社製、型式:PCM-30)に供給し、温度190℃で溶融混練して押し出し、厚さ1mmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートに加速電圧400kVで電子線4Mradを照射して架橋させ、得られた架橋シートを縦型熱風発泡炉に供給し、炉内温度270℃、進入速度1.6m/秒、巻取速度8m/秒で連続的に延伸して加熱発泡させて発泡体を得た。
【0029】(2)積層複合体の製造
得られた発泡体の表面をコロナ放電処理し、2液硬化型ポリエステル系接着剤(ポリエステル:日立化成ポリマー社製、商品名:ハイボン;イソシアネート:住友バイエルウレタン社製、商品名:DesmodurR)を用い、厚さ0.65mmの塩化ビニル樹脂及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂の混合系シートと接着して積層複合体を得た。
・・・
【0047】実施例6
表6に示した所定量(部)の組成分を用い、加速電圧500kVで所定量(Mrad)の電子線を照射したこと以外は実施例1と同様にして発泡体を得、得られた発泡体を用い、実施例1と同様にして積層複合体を得た。なお、実際に用いた電子線照射量(Mrad)、縦型熱風発泡炉の炉内温度(℃)、架橋シートの進入速度(m/秒)及び発泡体の巻取速度(m/秒)を表7に示した。
【0048】
【表6】
[図:0001416453000007.jpg]
【0049】
【表7】
[図:0001416453000008.jpg]
【0050】実施例7
実施例6と同様にして得られた発泡体を用い、実施例2と同様にして積層複合体を得た。
【0051】実施例8
上記表6に示した所定量(部)の組成分を用い、上記表7に示した所定の電子線照射量(Mrad)、炉内温度(℃)、進入速度(m/秒)及び巻取速度(m/秒)の条件を用いたこと以外は実施例6と同様にして発泡体を得た。得られた発泡体を用い、実施例1と同様にして積層複合体を得た。
【0052】実施例9
実施例6と同様にして得られた架橋シートをオーブンに入れ、温度250℃で長さ方向に5 g/cm2の荷重をかけながら5分間発泡させて発泡体を得た。得られた発泡体を用い、実施例1と同様にして積層複合体を得た。
【0053】実施例10
厚さ方向に5 g/cm2の荷重をかけながら発泡させたこと以外は実施例9と同様にして発泡体を得た。得られた発泡体を用い、実施例1と同様にして積層複合体を得た。
【0054】比較例5~7
上記表7に示した所定の電子線照射量(Mrad)、炉内温度(℃)、進入速度(m/秒)及び巻取速度(m/秒)の条件を用いたこと以外は実施例6と同様にして発泡体を得た。得られた発泡体を用い、実施例1と同様にして積層複合体を得た。
【0055】比較例8
厚さ方向に40 g/cm2の荷重をかけながら発泡させたこと以外は実施例9と同様にして発泡体を得た。得られた発泡体を用い、実施例1と同様にして積層複合体を得た。
【0056】得られた発泡体の残分値(重量%)、見かけ密度(g/cm3)及び厚さ(mm)を測定し、その結果を表8及び9に示した。
【0057】
【表8】
[図:0001416453000009.jpg]
」
(6)甲第7号証(以下、「甲7」という。)
7a「2.特許請求の範囲
(1)表示手段による表示情報からの光束を光透過性を有する反射型の回折格子で反射回折させると共に該回折格子の前方視野の画像情報からの光束を該回折格子を通過させ、該表示情報を該画像情報に空間的に重畳させて双方の情報を観察するようにしたヘッドアップディスプレイ装置において、該回折格子は該表示手段面上の表示情報を縮少表示するように構成されていることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。」
7b「(発明の効果)
本発明によれば以上のように各要素を構成することにより観察位置、即ち運転者の姿勢を大幅に動かしても表示情報の全面を両眼で良好に観察することができるヘッドアップディスプレイ装置を達成することができる。
又、本発明によれば回折格子を縮少系として用いている為通常の製造工程で製造された表示部を用いると表示情報が縮少された分だけ表示情報を鮮明化して観察することができる。
この他単独のフィルムとして回折格子35を製造し、両面テープ等でフロントガラス内側に貼付けてヘッドアップディスプレイ装置を構成する場合、従来では貼付けの面精度が悪いと表示情報にボケや歪が生じてくるが、本発明によれば回折格子が凸面鏡の光学的作用をしている為面積度は多少悪くてもボケや歪を小さくすることができ、良好なる状態で観察することを可能としたヘッドアップディスプレイ装置を達成することができる。また、コンバイナに凸面鏡の働きを持たせることは、従来のハーフミラーでは不可能であり、ホログラム(回折格子)を用いてはじめて達成されるものであり、ホログラム利用の利益は非常の大きい。」第5ページ左上欄第13行~右上欄第16行
(7)甲第8号証(以下、「甲8」という。)
8a「【請求項1】光を発生する発光手段と前記光を観視者方向に向けて反射または回折するように配されたコンバイナーとを少なくとも備えた本体部と、該本体部を設置面に取り付ける基台部とから構成され、前記コンバイナーによって形成される表示像を観視者前方に視認できるようにした別置き型ヘッドアップディスプレイにおいて、前記本体部と基台部との間には磁石が介在されていて、該磁石の吸引力により本体部と基台部とが互いに保持されていることを特徴とする別置き型ヘッドアップディスプレイ。」
8b「【0002】
【従来の技術】車両内の運転手等に情報表示する方法として、ヘッドアップディスプレイ(以下HUDという)と呼ばれるものが最近用いられるようになっている。これは、液晶表示装置等の発光手段から投射された光学的情報を、ハーフミラー等からなるコンバイナーに映し、運転手が運転状態からほとんど視線を動かすことなく情報を読み取れるようにしたものである。
【0003】このHUDとしては、フロントガラスにコンバイナーを形成、情報を発生する発光手段をダッシュボード内に設置し、発光手段からの光をコンバイナーに照射し、反射させて運転者等の観視者に視認されるようにしたHUDのほか、発光手段とコンバイナーとを一つにまとめた、いわゆる別置き型のHUDが知られている。この別置き型HUDはフロントガラスにコンバイナーを形成しないので、後付けでも容易にダッシュボード上に設置してHUDの機能を得ることができ、また、容易に取り外すこともでき、さらには運転者の希望の位置に設置できるという利点がある。
・・・
【0010】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の別置き型HUDの基本的構成の側断面を示す概念図である。ここで、1は運転者等の観視者の観察位置、2はハーフミラーによるコンバイナー、3は情報を含む光、4は表示像の位置、5は表示体である透過型液晶表示素子、6は熱陰極管による光源、7は折り返しミラーであり、これらは図3に示す従来例とほぼ同じものを用いた。また、8はこれらを保持、保護する筐体たる本体部、9は基台部である。
【0011】ここで、図3に示す従来例とほぼ同じように、光源6から発した光は透過型液晶表示素子5を通過し、折り返しミラー7で反射してコンバイナー2に照射され、反射されて運転者等の観視者の観察位置1に認識される。
【0012】本体部8の基台部との接合面(底面)は仮想の点Aを中心としたほぼ球面状になっており、その底面には球面状の鉄板10が貼付されている。一方、基台部9は本体部8と別部品で、その本体部との接合面(上面)は本体部8の球面状の底面に倣った面に形成され、その面には仮想の点Aから垂直に下ろした位置となる部分とその周囲に合計5個の磁石11、12、13を埋め込まれている(図1には5個の磁石の内、3個を図示し、他の2個は図示していない。)。
【0013】基台部9は観視者の例えばダッシュボード上等の希望する位置に両面粘着テープにより固定され、さらにその上に本体部8が設置された。本体部8と基台部9とは磁石の吸引力により保持され、またこの吸引力の抗する力によって本体部8を調整、分離することもできる。また、本体部8の底面と基台部9の上面は仮想の点Aを中心とした球面で接合するようになっているので、図2に示すように観視者の目の位置に合わせて上下の角度を変えたり、左右方向の角度の調整が可能で、さらに片手で容易に調整が可能である。」
3 甲号証に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
甲1には実施例1の発泡シートとして「ポリプロピレン樹脂(MFR:0.3g/10分、ライオンデルバゼル社製「Hostalen PP H2150」)70重量部に、熱可塑性エラストマー(MFR:0.4g/10分、JSR社製「エクセリンク3400B」)30重量部を加えて、調製した配合樹脂組成物を発泡して、得た樹脂発泡体をスライス加工して、得たスライス加工発泡体を、MD方向に延伸倍率3.0倍で延伸し、TD方向に延伸倍率3.0倍で延伸して得た、示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、装置付属の解析ソフトを用いて、2nd Heating過程にみられる融解ピークのトップの温度を読みとった値である融点が170℃、平均厚みが0.08mm、30kPaでの圧縮率が30%、密度が0.09g/cm3である、発泡シート。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(摘記1e参照)。
(2)甲2に記載された発明
甲2には実施例1のポリオレフィン系樹脂薄層発泡シートと同様にして得た実施例6のポリオレフィン系樹脂薄層発泡シートとして「ポリオレフィン系樹脂としてのポリプロピレン樹脂(MFR:0.3g/10分、株式会社プライムポリマー製、製品名:E110G)60質量部に、熱可塑性エラストマー(MFR:1.5g/10分、株式会社プライムポリマー製、製品名:R110E)20質量部と、メタロセンプラストマーであるポリエチレン樹脂(MFR:2.2g/10分、日本ポリエチレン株式会社製、製品名:カーネルKS240T)20質量部とを加えて、調製した配合樹脂組成物から得た発泡体をカッターにより切開して、スライス加工して得た、ポリオレフィン系樹脂発泡シートのスライス加工された面を誘電加熱ロールとニップロールの間を通紙して、加熱プレスされた、平均厚み0.10mm、発泡倍率が4.6倍である、ポリオレフィン系樹脂薄層発泡シート。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる(摘記2f参照)。
4 対比・判断
(1)甲1発明を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「ポリプロピレン樹脂(MFR:0.3g/10分、ライオンデルバゼル社製「Hostalen PP H2150」)」、「示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、装置付属の解析ソフトを用いて、2nd Heating過程にみられる融解ピークのトップの温度を読みとった値である融点が170℃」、「平均厚みが0.08mm」及び「発泡シート」は、それぞれ、本件特許発明1の「ホモポリプロピレン、プロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンランダム共重合体又はプロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンブロック共重合体の少なくとも1つからなるポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有する」、「示差走査熱量計により測定される結晶融解温度ピークが140℃以上であり」、「厚みが1500μm以下(但し、200μm以上1500μm以下は除く)であり」及び「発泡体」に相当する。
甲1発明の「密度が0.09g/cm3である」は、発泡倍率に換算すると11.1cm3/g(1/0.09)であるから、本件特許発明1の「発泡倍率が15cm3/g以下であり」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「発泡体からなり、
厚みが1500μm以下(但し、200μm以上1500μm以下は除く)であり、
前記発泡体は、示差走査熱量計により測定される結晶融解温度ピークが140℃以上であり、発泡倍率が15cm3/g以下であり、ホモポリプロピレン、プロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンランダム共重合体又はプロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンブロック共重合体の少なくとも1つからなるポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有する。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1は、基材の両面にアクリル粘着剤層を有する両面粘着テープであって、
前記基材は、発泡体からなるのに対し、甲1発明では両面粘着テープではない点。
<相違点1-2>
発泡体が、本件特許発明1では気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/TDの平均気泡径)が0.9~3であるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。
<相違点1-3>
発泡体が、本件特許発明1では厚さ方向の25%圧縮強度が86~1000kPaであるのに対し、甲1発明では30kPaでの圧縮率が30%である点。
(イ)相違点についての検討
<相違点1-3>について
事案に鑑み、まず、<相違点1-3>について検討する。
甲1発明では30kPaでの圧縮率が30%であり、これは80%までの圧縮応力の測定値を用いて、X軸に圧縮率(ひずみ%)、Y軸に応力(変形時の荷重kPa)をプロットして読み取った値であることが記載されており(摘記1e参照)、応力とひずみの比例関係を前提に推定される値であるといえるから、圧縮率が25%となるのは25kPaであり、厚さ方向の25%圧縮強度が25kPaとなり、本件特許発明1の厚さ方向の25%圧縮強度の下限である86kPaを大きく下回る。
また、甲1には甲1発明の発泡シートは30kPaで圧縮したときの圧縮率が10%以上であればよいことが記載されており(摘記1a参照)、その場合、圧縮率が25%となるのは75kPaであり、厚さ方向の25%圧縮強度が75kPaとなり、それが上限となるから、甲1発明の発泡シートにおいて、厚さ方向の25%圧縮強度が86~1000kPaとする動機付けがあるとはいえない。
また、甲2~甲8にも、甲1発明の発泡シートにおいて、厚さ方向の25%圧縮強度が86~1000kPaとする動機付けとなる記載はない。
(ウ)本件特許発明の効果について
本件特許明細書からみて、本件特許発明1は、気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/TDの平均気泡径)が0.9~3であり、厚さ方向の25%圧縮強度が86~1000kPaであることにより、耐熱性及び耐反発性を有するという効果を奏するものであり、そのような効果は、甲1発明及び甲2~甲8から予測し得ない顕著なものであるといえる。
(エ)特許異議申立人の主張及び当審の判断について
特許異議申立人は、令和6年6月14日提出の意見書において、以下のとおり主張する。
a.特許権者は、本件特許発明1と甲1発明における、測定対象の厚み及び圧縮距離が異なる2つの試験において算出された圧力の数値を混同して意見を主張しており、特許権者の主張に無理があることは明白である。
b.甲1発明の発泡体は、25%圧縮強度以外の物性及び原料の全てが本件特許発明1の規定に合致しているから、厚み方向の25%圧縮強度のみが、訂正後の本件特許発明1の規定を満足しないと判断することは無理があり、甲4の実施例、甲5の実施例、特開2016-98259号公報の実施例、特開2016-175984号公報の実施例に基づいて、厚み方向の25%圧縮強度が86~1000kPaなる範囲に包含されるポリオレフィン発泡体は、本願出願当時の当業者にとり、ごく普通のものに過ぎなかった。
c.特許権者は、「厚さ方向の25%圧縮強度が86~1000kPa」等の構成により、表1に記載のとおり、耐反発性に優れる効果を奏すると主張するが、上記の構成は甲1発明が高い蓋然性をもって備えている事項に過ぎず、進歩性を肯定する理由にはならない。
しかし、a.については、異議申立書における申立ての理由が甲1に記載されたパラメータから推定される圧縮強度を根拠とするものであり、特許異議申立人の主張は失当である。
そして、b.については、そのような推定に基づいて甲1発明は厚さ方向の25%圧縮強度は本件特許発明1の厚さ方向の25%圧縮強度の下限である86kPaを下回るものであり、厚み方向の25%圧縮強度が86~1000kPaなる範囲に包含されるポリオレフィン発泡体は、本願出願当時の当業者にとり、ごく普通のものに過ぎなかったとしても、前記(イ)で検討したとおり、甲1発明において厚み方向の25%圧縮強度が86~1000kPaなる範囲とする動機付けがあるとはいえない。
以上から、c.については、甲1発明は「厚さ方向の25%圧縮強度が86~1000kPa」という構成を備えているとはいえず、前記(ウ)で検討したとおり、そのような構成及び気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/TDの平均気泡径)が0.9~3であることに基づいて、本件特許発明1は優れた効果を奏するといえる。
したがって、特許異議申立人の前記主張はいずれも採用できない。
(オ)小括
したがって、本件特許発明1は、<相違点1-1>及び<相違点1-2>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
(2)本件特許発明2、3、5~7
本件特許発明2、3、5~7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲1発明との<相違点1-3>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2、3、5~7は、甲1に記載された発明及び甲2~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
(2)甲2発明を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲2発明との対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「ポリオレフィン系樹脂としてのポリプロピレン樹脂(MFR:0.3g/10分、株式会社プライムポリマー製、製品名:E110G)」、「平均厚み0.10mm」及び「ポリオレフィン系樹脂薄層発泡シート」は、それぞれ、本件特許発明1の「ホモポリプロピレン、プロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンランダム共重合体又はプロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンブロック共重合体の少なくとも1つからなるポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有する」、「厚みが1500μm以下(但し、200μm以上1500μm以下は除く)であり」及び「発泡体」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、「発泡体からなり、
厚みが1500μm以下(但し、200μm以上1500μm以下は除く)であり、
前記発泡体は、ホモポリプロピレン、プロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンランダム共重合体又はプロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンブロック共重合体の少なくとも1つからなるポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有する。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。
<相違点2-1>
本件特許発明1は、基材の両面にアクリル粘着剤層を有する両面粘着テープであって、
前記基材は、発泡体からなるのに対し、甲2発明では両面粘着テープでなはい点。
<相違点2-2>
発泡体が、本件特許発明1は示差走査熱量計により測定される結晶融解温度ピークが140℃以上であるのに対し、甲2発明では示差走査熱量計により測定される結晶融解温度ピークが不明である点。
<相違点2-3>
発泡体が、本件特許発明1では発泡倍率が15cm3/g以下であるのに対し、甲2発明では発泡倍率が4.6倍である点。
<相違点2-4>
発泡体が、本件特許発明1では気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/TDの平均気泡径)が0.9~3であるのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。
<相違点2-5>
発泡体が、本件特許発明1では厚さ方向の25%圧縮強度が86~1000kPaであるのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。
(イ)相違点についての検討
<相違点2-5>について
事案に鑑み、まず、<相違点2-5>について検討する。
甲2には甲2発明のポリオレフィン系樹脂薄層発泡シートの厚さ方向の25%圧縮強度について記載も示唆もない。
また、甲1及び甲3~甲8にも甲2発明のポリオレフィン系樹脂薄層発泡シートの厚さ方向の25%圧縮強度を86~1000kPaとする動機付けとなる記載はない。
(ウ)本件特許発明の効果について
前記(1)ア(ウ)検討したのと同じ理由により、本件特許発明1により奏される効果は、甲2発明、並びに、甲1及び甲3~甲8から予測し得ない顕著なものであるといえる。
(エ)小括
したがって、本件特許発明1は、<相違点2-1>~<相違点2-4>について検討するまでもなく、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
(2)本件特許発明2、3、5~7
本件特許発明2、3、5~7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲2発明との<相違点2-5>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2、3、5~7は、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
理由1(拡大先願)請求項1~7に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第3号証に記載された発明と同一であって、この出願の発明者が先願発明1の発明者と同一でなく、この出願時に、この出願の出願人と上記発明の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、上記の請求項1~7に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
甲第3号証:特願2018-557663号(国際公開2018/116844号)
理由2(サポート要件)本件特許の請求項1~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
理由3(実施可能要件)本件特許の請求項1~7に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許発明1~7は、発泡体基材の厚みが200μm未満のもの全てに対して権利主張するものである。
しかし、本件明細書の発明の詳細な説明には、そのようなものは具体的に開示されておらず、また、例えば発泡体基材の厚みが10μm~20μm、30μmのものをどのように製造するのかについて何ら開示されていない。
さらにいうと、本件特許発明1の他の規定を満足しつつ、厚みが10μm、20μm、30μmの発泡体基材を製造し得ることが当業者に自明であった旨の、本願出願前の技術常識など存在しない。
したがって、どのような配合のポリプロピレン系樹脂組成物を、どのような方法で製造すれば、本件特許発明1の他の規定を満足しつつ、厚み10μm、20μm、30μmの発泡体基材を製造できるのかについて、本件明細書に接した当業者といえども理解することはできない。
よって、発泡体基材の厚みが200μm未満のもの全てに対して権利主張している点において、本件特許発明1~7はサポート要件を満足しないし、実施可能要件も満足しない。
本件特許発明5は総厚みが30μmの両面粘着テープや、2000μmの両面粘着テープについて権利主張するものである。
本件特許発明5の上記発明特定事項について検討する。
本件明細書の【0051】段落には、「アクリル粘着剤層の厚みの好ましい下限は10μm、好ましい上限は100μmである。上記アクリル粘着剤層の厚みがこの範囲内であると、高い粘着力と、リワーク性又は再剥離性とを両立することができる。」と記載されている。この記載に基づくと、総厚みが30μmの両面粘着テープを製造する場合には、厚み10μmのアクリル粘着剤層×2、及び、厚み10μmの発泡体基材を要することになる。
しかしながら、本件明細書の発明の詳細な説明には、厚み10はmの発泡体基材は具体的に開示されていないし、また、本件特許発明1の他の規定を満足しつつ、厚み10μmの発泡体基材を製造し得ることが当業者に自明であった旨の、本願出願前の技術常識など存在しない。
したがって、どのような配合のポリプロピレン系樹脂組成物を、どのような方法で製造すれば、本件特許発明1の他の規定を満足しつつ、厚みが10μmの発泡体基材を製造できるのかについて、本件明細書に接した当業者といえども理解することはできない。
また、厚みが200μm未満の発泡体基材を用いて総厚みが2000μmの両面粘着テープを製造する場合には、アクリル粘着剤層は、少なくとも片面900μmの厚みを要する。
しかしながら、片面900μmの厚みアクリル粘着剤層を備える両面粘着テープは、本件明細書の発明の詳細な説明に開示されておらず、しかも、本件明細書の【0051】段落に記載されたアクリル粘着剤層の上限を大幅に超えるものであるから、そのようなものが、本件特許発明が所望する効果を奏するとは到底いえない。
よって、総厚みが30μmの両面粘着テープや2000μmの両面粘着テープについて権利主張する点において、本件特許発明5はサポート要件を満足しないし、実施可能要件も満足しない。本件特許発明5を引用する本件特許発明6及び7についても同様である。
第8 前記第7の理由1(拡大先願)についての判断
1 甲号証について
前記第7 理由1の甲第3号証
2 甲第3号証(以下、「甲3」という。)の記載について
3a「[請求項1]
発泡体基材の少なくとも一方の面側に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記発泡体基材の25%圧縮強度が20~170kPaであり、23℃における伸度100%の流れ方向の引張弾性率をE1とし、120℃における伸度100%の流れ方向の引張弾性率をE2としたときの比率E2/E1が0.1以上であるか、又は23℃における伸度100%の幅方向の引張弾性率をE1’とし、120℃における伸度100%の幅方向の引張弾性率をE2’としたときの比率E2’/E1’が0.1以上であることを特徴とする粘着テープ。」
3b「[0081]
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明する。
[0082]
(アクリル重合体(a)の製造)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート80.94質量部、2-エチルヘキシルアクリレート5質量部、シクロヘキシルアクリレート10質量部、アクリル酸4質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.06質量部、及び、酢酸エチル200質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら72℃まで昇温させた。
[0083]
次に、前記混合物に、予め酢酸エチルに溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液2質量部(固形分0.1質量%)を添加し、攪拌下、72℃で4時間ホールドした後、75℃で5時間ホールドした。
次に、前記混合物を酢酸エチル98質量部で希釈し、200メッシュ金網でろ過することによって、重量平均分子量160万のアクリル重合体(a)溶液(不揮発分40質量%)を得た。
[0084]
なお、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエッションクロマトグラフ(GPC)で測定される標準ポリスチレン換算での重量平均分子量であり、以下の方法で測定した。
GPC法による分子量の測定は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8329GPC)を用いて測定される、スタンダードポリスチレン換算値である。
[0085]
サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:100μl
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流速:1.0ml/分
測定温度:40℃
本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
ガードカラム:TSKgel HXL-H
検出器:示差屈折計
スタンダードポリスチレン分子量:1万~2000万(東ソー株式会社製)
[0086]
(アクリル重合体(b)の製造)
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロートおよび窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート96.4質量部、アクリル酸3.5質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部とを、酢酸エチル100質量部からなる溶剤に溶解し、70℃で12時間重合して、重量平均分子量が80万(ポリスチレン換算)のアクリル系共重合体(b)を得た。
[0087]
(粘着剤溶剤(a)の調整)
容器に、前記アクリル重合体(a)100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂D-125(荒川化学工業株式会社製)15質量部と不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂A-125(荒川化学工業株式会社製)10質量部とを混合攪拌したのち、酢酸エチルを加えることによって固形分31質量%の粘着剤溶液を得た。
[0088]
次に、前記粘着剤溶液100質量部に対し、架橋剤としてバーノックD-40(DIC(株)製、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアネート基含有率7質量%、不揮発分40質量%)1.4質量部を添加し、均一になるよう攪拌混合した後、100メッシュ金網で濾過することによって粘着剤溶剤(a)を得た。
[0089]
(粘着剤溶剤(b)の調整)
容器に、前記アクリル重合体(b)100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂D-135(荒川化学工業株式会社製)10質量部と、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂A-100(荒川化学工業株式会社製)10質量部とを混合攪拌したのち、酢酸エチルを加えることによって固形分31質量%粘着剤溶液を得た。
[0090]
次に、前記粘着剤溶液100質量部に対し、架橋剤としてコロネートL-45(日本ポリウレタン社製、イソシアネート系架橋剤、固形分45%)を1.1質量部添加し、均一になるよう攪拌混合した後、100メッシュ金網で濾過することによって粘着剤溶剤(b)を得た。
[0091]
[実施例1]
離型ライナーの表面に、粘着剤溶剤(a)を乾燥後の粘着剤層の厚さが50μmとなるように、バーコーターを用いて前記粘着剤を塗工し、80℃で3分間乾燥させることによって粘着剤層を作製した。
[0092]
次に、前記粘着剤層を、ポリオレフィン系発泡体基材A(ポリプロピレン発泡体、厚さ300μm、見かけ密度0.129g/cm3に調整したもの)の両面に貼付し、40℃の環境下で48時間養生することによって粘着テープを作製した。
・・・
[0102]
[発泡体基材の見かけ密度]
発泡体基材の見かけ密度は、JISK6767に準じて測定した。4cm×5cmの長方形に切断した発泡体基材を用意し、その質量を測定して見かけ密度を求める。
[0103]
[発泡体基材の25%圧縮荷重]
発泡体基材の25%圧縮強度は、JISK6767に準じて測定した。25角に切断した試料を厚さ約10mmになるまで重ね合わせる。試料より大きな面積のステンレス板で試料をはさみ、23℃下で10mm/分の速度で試料を約2.5mm(もとの厚さの25%分)圧縮した時の強度を測定する。
[0104]
[発泡体基材の100%伸度の引張弾性率]
発泡体基材の引張弾性率は、JISK6767に準じて測定した。標線長さ2cm、幅1cmの発泡体基材を、テンシロン引張試験機を用い、23℃50%RHもしくは120℃の環境下において、引張速度300mm/minの測定条件で測定した。得られた測定値から、伸度100%の引張弾性率を求めた。
[0105]
[発泡体基材の最大引張弾性率]
発泡体基材の引張弾性率は、JISK6767に準じて測定した。標線長さ2cm、幅1cmの発泡体基材を、テンシロン引張試験機を用い、23℃50%RH及び120℃の環境下において、引張速度300mm/minの測定条件で測定した。得られた測定値の最大強度である。
[0106]
[発泡体基材の流れ方向及び幅方向の平均気泡径]
発泡体基材を流れ方向、幅方向とも約1cmに切断し、切断した発泡体基材の切断面中央部分をマイクロスコープ(商品名「KH-7700」、HIROX社製)で200倍に拡大したのち、発泡体基材の切断面がその基材厚さ方向の全長に亘って写真に納まるように、発泡体基材の幅方向または流れ方向の断面を写真撮影した。得られた写真において、流れ方向または幅方向の拡大前の実際の長さが2mm分の切断面に存在する気泡径を全て測定し、その平均値から平均気泡径を算出した。これを、任意の10カ所で測定し、その平均値を流れ方向(MD)、幅方向(CD)及び厚さ方向(VD)の平均気泡径とした。
[0107]
[発泡体基材の寸法変化率]
発泡体基材の寸法変化率は、ポリオレフィン樹脂発泡体を10cm角に正確に切り取り、120℃に設定したオーブンの中に24時間放置する。24時間経過後、オーブンから取り出し約60分間室温で冷却する。サンプルの寸法を測定し、以下の式に基づいて寸法変化率を算出し、下記にて評価した。
寸法変化率(%)={(オーブンに入れる前のサンプル長?オーブンから取り出した後のサンプル長)/オーブンに入れる前のサンプル長}×100
◎:寸法変化率が10%未満
○:寸法変化率が10%~20%
×:寸法変化率が20%より大きい、または原形を留めていない
[0108]
[保持力]
粘着テープの保持力は、実施例及び比較例にて作成した粘着テープを流れ方向に対して、測定用試料を20mm幅×必要長さに切断して試験片を作成する。非測定側粘着面にアルミ箔等の裏打ち材を貼付し、室温にてSUSの試験板に20mm×20mmの面積が接するように貼付する。試験板に貼付した試験片を、2Kgゴムローラーを使用して約300mm/分の速度で1往復加圧する。加圧した試験片は、23℃に約1時間静置し、静置終了後、保持力計に試験板をセットし、試験片に荷重500gを加え、120℃環境下に24時間静置する。24時間後の試験片のズレ距離を下記にて評価した。
◎:ズレ距離が2mm未満
○:ズレ距離が2mm~10mm
×:ズレ距離が10mm以上
[0109]
[反発応力]
反発応力は、25mm角に切断した粘着テープを試料より大きな面積のステンレス板に貼付して、試験片を作成した。23℃で24時間放置したサンプルと、120℃で24時間放置後、23℃に戻したサンプルとを23℃環境下で10mm/分の速度で試料を50μm圧縮した時の強度を測定する。23℃保存後の強度σ1及び120℃保存後の強度σ2の強度の比σ2/σ1を下記にて評価した。
◎:σ2/σ1=5未満
○:σ2/σ1=5~20
×:σ2/σ1=20より大きい
[0110]
[表1]
[図:0001416453000010.jpg]
」
3 甲3に記載された発明
甲3の実施例1には「攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート80.94質量部、2-エチルヘキシルアクリレート5質量部、シクロヘキシルアクリレート10質量部、アクリル酸4質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.06質量部、及び、酢酸エチル200質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら72℃まで昇温させ、次に、前記混合物に、予め酢酸エチルに溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液2質量部(固形分0.1質量%)を添加し、攪拌下、72℃で4時間ホールドした後、75℃で5時間ホールドし、次に、前記混合物を酢酸エチル98質量部で希釈し、200メッシュ金網でろ過することによって得た、重量平均分子量160万のアクリル重合体(a)溶液(不揮発分40質量%)100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂D-125(荒川化学工業株式会社製)15質量部と不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂A-125(荒川化学工業株式会社製)10質量部とを混合攪拌したのち、酢酸エチルを加えることによって得た、固形分31質量%の粘着剤溶液100質量部に対し、架橋剤としてバーノックD-40(DIC(株)製、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアネート基含有率7質量%、不揮発分40質量%)1.4質量部を添加し、均一になるよう攪拌混合した後、100メッシュ金網で濾過することによって得た、粘着剤溶剤(a)を、離型ライナーの表面に、粘着剤溶剤(a)を乾燥後の粘着剤層の厚さが50μmとなるように、バーコーターを用いて前記粘着剤を塗工し、80℃で3分間乾燥させることによって作製した粘着剤層を、ポリオレフィン系発泡体基材A(ポリプロピレン発泡体、厚さ300μm、見かけ密度0.129g/cm3に調整し、25角に切断した試料を厚さ約10mmになるまで重ね合わせ、試料より大きな面積のステンレス板で試料をはさみ、23℃下で10mm/分の速度で試料を約2.5mm(もとの厚さの25%分)圧縮した時の強度を測定した25%圧縮荷重が100kPa、平均気泡径MD263mm、CD277mm)の両面に貼付し、40℃の環境下で48時間養生することによって作製した、粘着テープ。」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
4 対比・判断
(1)本件特許発明1
ア 甲3発明との対比
甲3発明の「ポリオレフィン系発泡体基材A(ポリプロピレン発泡体、厚さ300μm、見かけ密度0.129g/cm3に調整し、25%圧縮荷重100kPa、平均気泡径MD263mm、CD277mm)」は、本件特許発明1の「基材」及び「前記基材は、発泡体からなり」に相当し、甲3発明の「ポリオレフィン系発泡体」は、ポリプロピレン樹脂からなるから、本件特許発明1の「ホモポリプロピレン、プロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンランダム共重合体又はプロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンブロック共重合体の少なくとも1つからなるポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有する」に相当し、甲3発明の「平均気泡径MD263mm、CD277mm」は、MD/CDは0.95となるから、本件特許発明1の「気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/TDの平均気泡径)が0.9~3であり」を充足し、甲3発明の「見かけ密度0.129g/cm3」は、その逆数である発泡倍率は7.8cm3/gとなり、本件特許発明1の「発泡倍率が15cm3/g以下であり」を充足し、甲3発明の「25角に切断した試料を厚さ約10mmになるまで重ね合わせ、試料より大きな面積のステンレス板で試料をはさみ、23℃下で10mm/分の速度で試料を約2.5mm(もとの厚さの25%分)圧縮した時の強度を測定した25%圧縮荷重が100kPa」は本件特許発明1の「厚さ方向の25%圧縮強度が86~1000kPaである」を充足し、甲3発明において、粘着剤層をポリオレフィン系発泡体基材Aの両面に貼付しているから、甲3発明の「攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート80.94質量部、2-エチルヘキシルアクリレート5質量部、シクロヘキシルアクリレート10質量部、アクリル酸4質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.06質量部、及び、酢酸エチル200質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら72℃まで昇温させ、次に、前記混合物に、予め酢酸エチルに溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液2質量部(固形分0.1質量%)を添加し、攪拌下、72℃で4時間ホールドした後、75℃で5時間ホールドし、次に、前記混合物を酢酸エチル98質量部で希釈し、200メッシュ金網でろ過することによって得た、重量平均分子量160万のアクリル重合体(a)溶液(不揮発分40質量%)100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂D-125(荒川化学工業株式会社製)15質量部と不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂A-125(荒川化学工業株式会社製)10質量部とを混合攪拌したのち、酢酸エチルを加えることによって得た、固形分31質量%の粘着剤溶液100質量部に対し、架橋剤としてバーノックD-40(DIC(株)製、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアネート基含有率7質量%、不揮発分40質量%)1.4質量部を添加し、均一になるよう攪拌混合した後、100メッシュ金網で濾過することによって得た、粘着剤溶剤(a)を、離型ライナーの表面に、粘着剤溶剤(a)を乾燥後の粘着剤層の厚さが50μmとなるように、バーコーターを用いて前記粘着剤を塗工し、80℃で3分間乾燥させることによって作製した、粘着剤層を、ポリオレフィン系発泡体基材A(ポリプロピレン発泡体、厚さ300μm、見かけ密度0.129g/cm3に調整し、25%圧縮荷重100kPa、平均気泡径MD263mm、CD277mm)の両面に貼付し」は本件特許発明1の「基材の両面にアクリル粘着剤層を有する」に相当する。
甲3発明の「粘着テープ」は、粘着剤層を、ポリオレフィン系発泡体基材Aの両面に貼付しているから、本件特許発明1の「両面粘着テープ」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明は「基材の両面にアクリル粘着剤層を有する両面粘着テープであって、
前記基材は、発泡体からなり、
前記発泡体は、発泡倍率が15cm3/g以下であり、気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/TDの平均気泡径)が0.9~3であり、ホモポリプロピレン、プロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンランダム共重合体又はプロピレン含有量が50重量%以上であるエチレン-プロピレンブロック共重合体の少なくとも1つからなるポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有し、厚さ方向の25%圧縮強度が86~1000kPaであることを特徴とする両面粘着テープ。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
基材の厚みが、本件特許発明1は1500μm以下(但し、200μm以上1500μm以下は除く)であるのに対し、甲3発明は300nmである点。
<相違点3-2>
発泡体が、本件特許発明1は示差走査熱量計により測定される結晶融解温度ピークが140℃以上であるのに対し、甲3発明は示差走査熱量計により測定される結晶融解温度ピークが不明である点。
イ 相違点についての検討
相違点3-1は実質的な相違点であり、この相違点は課題解決のための具体化手段における微差、すなわち、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないとはいえない。
ウ 小括
本件特許発明1は、<相違点3-2>について検討するまでもなく、甲3の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。
(2)本件特許発明2、3、5~7
本件特許発明2、3、5~7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用してさらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲3発明との<相違点3-1>と同じ相違点を有するものであり、(1)イで検討したとおり、本件特許発明2、3、5~7は、甲3の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。
第9 前記第6の理由2(サポート要件)についての判断
本件特許発明1の課題は、本件特許明細書の【0006】に記載からみて、耐熱性、耐反発性に優れ、特に車載用パネルや車載用ヘッドアップディスプレイのカバーを固定したときにでも剥離しにくい両面粘着テープ、及び、該両面粘着テープからなる車載部品固定用両面粘着テープ、車載用ヘッドアップディスプレイカバー固定用両面粘着テープを提供することにあると認める。
そして、本件特許明細書の実施例の記載からみて、本件特許発明1及び5の発明特定事項を備えれば、前記課題を解決できることが理解でき、実施例のものと発泡体基材の厚みや両面粘着テープの総厚みが異なるものは、実施例のものと比較して、耐熱性、耐反発性に劣り、車載用パネルや車載用ヘッドアップディスプレイのカバーを固定したときにでも剥離しやすいものが含まれるかもしれないが、発泡体基材の厚みが200μm未満のもの全て及び総厚みが30~2000μmのもの全てが前記課題を解決できると推認できるし、また、特許異議申立人は発泡体基材の厚みが200μm未満のもの及び総厚みが30~2000μmのものの中に前記課題を解決できないものがあることを実証しているわけでもない。
そうすると、本件特許発明1、本件特許発明5、及び、本件特許発明1又は本件特許発明5を引用する発明は、本件特許発明の課題を解決できない範囲を包含しているとまではいえない。
第10 前記第6の理由3(実施可能要件)についての判断
本件特許明細書の実施例からみて、実施例1のものの厚みを変えて発泡体基材の厚みが200μmである実施例5のものが記載されている以上、同様に厚みを変えて、発泡体基材の厚みが10μmのような200μm未満のものも製造できるといえるし、例えば、厚みが200μmを超えるものをスライス加工することによっても、発泡体基材の厚みが10μmのような200μm未満のものも製造できるといえる。
また、粘着剤層が片面900μmの厚みであるものも、基材の表面に塗布する粘着剤溶液の量を多くすれば、製造できるといえるし、そのように製造できないという技術常識もない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1、本件特許発明5、及び、本件特許発明1又は本件特許発明5を引用する発明を実施できる程度に明瞭かつ十分に記載されているといえる。
第11 特許異議申立人による令和6年6月14日提出の意見書において新たに申し立てられた特許異議申立理由
1.申立理由の概要
使用する原料が異なれば、その製品の物性が異なることは、本願出願日当時の技術常識であったといえるところ、本件明細書の発明の詳細な説明には、ホモポリプロピレン又はエチレン-プロピレンブロック共重合体を原料として用い、厚みが200μm末満(例えば10μm)であって、発泡倍率が15cm3/g以下であり、厚さ方向の25%圧縮強度が86kPaであるものは記載されておらず、その製造方法も記載されていない。そして、そのようなものを当業者が試行錯誤することなく製造できた旨の本願出願日当時の技術常識も存在しない。
よって、訂正後の本件特許発明1~3、5~7は実施可能要件を満足しない。
2.当審の判断
本件特許明細書の【0030】には、発泡体の厚さ方向の25%圧縮強度は、上記発泡体の材料、発泡倍率、厚み等により調整することができると記載されているところ、【表1】には、実施例5として厚み200μm及び厚さ方向の25%圧縮強度が161kPaであるのものが記載されており、他の実施例からみて、発泡倍率及び気泡アスペクト比を小さくすれば、厚さ方向の25%圧縮強度を小さくなることが読み取れるから、それに基づいて、厚みが200μm末満(例えば10μm)であって、発泡倍率が15cm3/g以下であり、厚さ方向の25%圧縮強度が86kPaであるものも、当業者が試行錯誤することなく製造できると推認できる。
また、特許異議申立人による前記意見書において提示された特開2016-98259号公報の実施例や比較例に記載されるもののように厚み100μm及び厚さ方向の25%圧縮強度が30~824kPaであるポリオレフィン発泡体は製造可能であるから、多少発泡倍率は異なるとしても、厚みが200μm末満(例えば10μm)であって、発泡倍率が15cm3/g以下であり、厚さ方向の25%圧縮強度が86kPaであるものも、当業者が試行錯誤することなく製造できると推認できる。
そうすると、訂正後の本件特許発明1~3、5~7は実施可能要件を満足しないとはいえない。
第12 むすび
以上のとおりであるから、令和5年10月31日付けの取消理由通知に記載した取消理由、令和6年2月14日付けの取消理由通知に記載した取消理由、令和6年6月14日提出の意見書において申し立てられた特許異議申立理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1~3、5~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~3、5~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項4は、本件訂正により削除され、この特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700718