特許異議申立
2021-700868
ポリオレフィン系樹脂発泡体シート
- 審判番号
- 2021-700868
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-557508
- 登録番号
- 6845349
- 請求日
- 2021年09月09日
- 審決日
- 2022年06月23日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】田口 昌浩
- 【権利者代理人】虎山 滋郎
- 【異議申立人】東レ 株式会社
- 【異議申立人代理人】伴 俊光
- 【異議申立人代理人】細田 浩一
- 【異議申立人】石井 豪
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 大島 祥吾
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6845349号発明「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6845349号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-8]について訂正することを認める。
特許第6845349号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6845349号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)9月27日(優先権主張 平成30年9月28日)を国際出願日とする特許出願であって、令和3年3月1日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和3年9月9日に特許異議申立人 東レ株式会社(以下、「特許異議申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされるとともに、同年同月15日に特許異議申立人 石井 豪(以下、「特許異議申立人B」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年12月3日付けで取消理由が通知され、令和4年2月2日に特許権者 積水化学工業株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに意見書の提出がされ、同年同月9日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年3月9日に特許異議申立人Bより意見書の提出がされたものの、特許異議申立人Aからは、何ら応答がなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
・訂正事項
特許請求の範囲の請求項1に、「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート。」とあるのを、「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート(但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く。)。」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし8も同様に訂正する。
なお、請求項1ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項に係る請求項1の訂正は、請求項1に係る「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」から「但し、25%圧縮強度が、40kPa以下」であるものを除くものである。
したがって、訂正事項に係る請求項1の訂正は、「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」を減縮するもの、すなわち、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし8も同様である。
3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-8]について訂正することを認める。
第3 本件特許
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
面密度が5g/m2以上400g/m2以下であり、見かけ密度が40kg/m3以下であり、昇温速度10℃/分、測定温度200~550℃を全測定温度領域とした熱重量-質量分析において、以下の条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満足するポリオレフィン系樹脂発泡体シート(但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く。)。
条件(1):質量電荷比m/zが55の燃焼ガスPの全測定温度領域における発生量のピーク面積値に対する、燃焼ガスPの測定温度200~364℃までの発生量のピーク面積値の割合で定義される燃焼ガス発生比率Xが25%以下
条件(2):質量電荷比m/zが69の燃焼ガスQの全測定温度領域における発生量のピーク面積値に対する、燃焼ガスQの測定温度200~364℃までの発生量のピーク面積値の割合で定義される燃焼ガス発生比率Yが25%以下
【請求項2】
厚みが15mm以下である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡体シートを構成するポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂の併用である、請求項3に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項5】
難燃剤を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項6】
前記難燃剤が、リン系難燃剤及びハロゲン系難燃剤の少なくとも1種である、請求項5に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項7】
前記リン系難燃剤が、リン酸塩、ポリリン酸塩、及びリン系スピロ化合物から選ばれる1種以上である、請求項6に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項8】
前記ハロゲン系難燃剤が、臭素系難燃剤である、請求項6又は7に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。」
第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について
特許異議申立人A及び特許異議申立人Bが特許異議申立書において、請求項1ないし8に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、それぞれ次のとおりである。
1 特許異議申立人Aが申し立てた特許異議申立理由の要旨
特許異議申立人Aが申し立てた請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨(下記(1)~(6))及び証拠方法(同(7))は、次のとおりである。
(1) 申立理由A-1(新規性) 本件特許の請求項1ないし3、5、6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2) 申立理由A-2(新規性) 本件特許の請求項1ないし3、5、6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3) 申立理由A-3(新規性) 本件特許の請求項1ないし3及び5ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(4) 申立理由A-4(新規性) 本件特許の請求項1ないし6及8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(5) 申立理由A-5(新規性) 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(6) 申立理由A-6(新規性) 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(7) 証拠方法
甲A1号証:特開2014-152218号公報
甲A2号証:特開2017-145367号公報
甲A3号証:特開2007-231216号公報
甲A4号証:特開2011-173941号公報
甲A5号証:特開2011-52044号公報
甲A6号証:特開2014-105329号公報
甲A7号証:実験成績証明書
甲A8号証:特開2005-60603号公報
甲A9号証:本件特許に係る早期審査に関する事情説明書
甲A10号証:プラスチックフォームハンドブック、日刊工業新聞社、
昭和48年2月28日初版発行、p.365-367
なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載にしたがった。
2 特許異議申立人Bが申し立てた特許異議申立理由の要旨
特許異議申立人Bが申し立てた請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨(下記(1)~(15))及び証拠方法(同(16))は、次のとおりである。
(1) 申立理由B1-1(新規性) 本件特許の請求項1ないし3、5、6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2) 申立理由B1-2(新規性) 本件特許の請求項1ないし3、5、6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3) 申立理由B1-3(新規性) 本件特許の請求項1ないし3、5、6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(4) 申立理由B1-4(新規性) 本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(5) 申立理由B1-5(新規性) 本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(6) 申立理由B1-6(新規性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(7) 申立理由B2-1(進歩性) 本件特許の請求項1ないし3及び5ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(8) 申立理由B2-2(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(9) 申立理由B2-3(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(10) 申立理由B2-4(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(11) 申立理由B2-5(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(12) 申立理由B2-6(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、
同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(13) 申立理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし8についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(14) 申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし8についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由3及び申立理由4は、概略次のとおりである。
本件特許の明細書の実施例3のシートと、本件特許と同一の出願人が同日に出願し、公開された甲第11号証における実施例5のシートとは、シートの仕様(厚み、密度、25%圧縮強度、ゲル分率)が全て同一であり、難燃性のデータも同一であるが、両者の含有する難燃剤の量のみが著しく異なる。本件特許の明細書の比較例1のシートと、本件特許と同一の出願人が同日に出願し、公開された甲第11号証における比較例1のシートとは、原料及び製造方法が同一であり、難燃性のデータも同一であるが、シートの仕様(厚み、密度、25%圧縮強度)のみが著しく異なる。
かかる状況を把握した当業者であれば、本件特許の明細書における実験データの真偽に関して疑義が生じる。
また、本件特許の明細書の段落【0064】には、熱重量-質量分析についての記載があるが、一般に、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を「酸素非存在下」熱重量-質量分析(イオン化方法は電子イオン化)した際には、m/z55及び69のピークが観測され、それがC4H7+及びC5H9+によるものであると当業者は認識する。逆に、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂を「酸素存在下」熱重量-質量分析した際には、観測されるものはほぼすべてがm/z44のCO2であると当業者は認識する。(これらの認識につき、要すれば、甲第B12号証、甲第B13号証377頁Fig.12を参照。)
しかしながら、本件特許の明細書には、ポリオレフィン系樹脂を「酸素存在下」の(He/O2=4/1 体積比)導入下で発生した“燃焼ガス”において、質量電解比m/zが55または69のピークが観測された旨が記載されている。酸素存在下でポリオレフィン系樹脂を熱分解させた場合に、質量電荷比m/zが55または69のピークが観測されるとは考え難い。
してみると、本件特許の明細書にかかる記載に接した当業者であれば、本件特許の明細書のデータが事実であるとは到底認識できない。
以上のとおり、当業者であれば、本件特許の明細書における実験データの真偽に関して疑義が生じ、かつ、本件特許の明細書のデータが事実であるとは到底認識できないため、公開代償に値する発明自体が本件明細書に記載されているとは認識しない(なお、明細書の記載が真実である旨の立証責任は特許権者にある。)。
よって、本件発明1~8は発明の詳細な説明に記載されたものではないし、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は当業者が本件発明1~8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでもない。
(15) 申立理由B5(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし8についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由B5は、概略次のとおりである。
(申立理由B5-1)
熱重量-質量分析におけるm/zのピーク面積は、イオン化方法が特定されない限りは、一義的に定まることはないと考える。
そうすると、特許請求の範囲に、熱重量-質量分析におけるm/zのピーク面積に関する事項を規定する場合には、質量分析にイオン化方法が規定されることが必要と解される。
しかしながら、本件発明1にはその規定が無く、また、明細書を子細に見ても、質量分析のイオン化方法についての記載が存在しない。
してみると、質量分析のイオン化方法が規定されていない本件発明1の熱重量-質量分析についての規定では、特許請求の範囲が一義的に定まるとはいえない。
よって、本件発明1に係る発明は不明確である。本件発明2~8に係る発明についても同様である。
(申立理由B5-2)
本件発明1には「質量電荷比m/zが55の燃焼ガスP」及び「質量電荷比m/zが69の燃焼ガスQ」との記載がある。
しかしながら、上述したとおり、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を熱重量-質量分析得(イオン化方法は電子イオン化)した際のm/z55及び69のピークはC4H7+及びC5H9+によるものである。そして、C4H7+及びC5H9+は、酸化を伴う燃焼に由来するものではなく、熱分解に由来するものであることは明らかである。
そうすると、「質量電荷比m/zが55の燃焼ガスP」及び「質量電荷比m/zが69の燃焼ガスQ」なるものは、一体何を規定しているのかが不明確である。
よって、本件発明1に係る発明は不明確である。本件発明2~8に係る発明についても同様である。
(16) 証拠方法
甲B1号証:特開昭56-116727号公報
甲B2号証:特開昭57-115432号公報
甲B3号証:特開平3-287637号公報
甲B4号証:特開平8-92406号公報
甲B5号証:特開2002-128933号公報
甲B6号証:特開2011-1739411号公報
甲B7号証:特開平9-48870号公報
甲B8号証:特開平9-272179号公報
甲B9号証:特開平11-209497号公報
甲B10号証:特表2015-525252号公報
甲B11号証:特許第6845348号公報
甲B12号証:「No.466 TG-MSによる熱分解反応の速度論解析」、株式会社東レリサーチセンター、2021年3月4日、(URL)https://cs2.toray.co.jp/news/trc/news_rd01.nsf/0/50620B45A92A06C4925867F00049223?open
甲B13号証:TG-MS Studies on Polystyrene, Its Derivatives, and Polyolefins, Jian Ping CHEN, Kimio ISA, Toshiyuki KODAIRA, Tetsuya SENDA、Journal of the Mass Spectrometry Society ofJapan、1999年、47巻6号、p.371-381
なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載にしたがった。
第5 令和3年12月3日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要
当審が令和3年12月3日付けで特許権者に通知した取消理由通知における取消理由の概要は、次のとおりである。なお、特許異議申立理由のうち、申立理由A1-1ないしA1-6、B1-1ないしB1-6、B2-1ないしB2-6及びB5-1は、取消理由に包含される。
取消理由1-1(新規性) 本件特許の請求項1ないし3、5、6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由1-2(新規性) 本件特許の請求項1ないし3、5、6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由1-3(新規性) 本件特許の請求項1ないし3及び5ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由1-4(新規性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A4号証(甲B6号証)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由1-5(新規性) 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由1-6(新規性) 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由1-7(新規性) 本件特許の請求項1ないし3、5、6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由1-8(新規性) 本件特許の請求項1ないし3、5、6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由1-9(新規性) 本件特許の請求項1ないし3、5、6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由1-10(新規性) 本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由1-11(新規性) 本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-1(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-2(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-3(進歩性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-4(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A4号証(甲B6号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-5(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-6(進歩性) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-7(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-8(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-9(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-10(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-11(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由3(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし8についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由3の具体的理由は次のとおりである。
本件発明1では、熱重量-質量分析の結果に基づく特定がなされているが、熱重量-質量分析におけるm/zのピーク面積は、イオン化方法が特定されない限りは、一義的に定まることはないと考える。
そうすると、特許請求の範囲に、熱重量-質量分析におけるm/zのピーク面積に関する事項を規定する場合には、質量分析にイオン化方法が規定されることが必要と解される。
しかしながら、本件発明1にはその規定が無く、また、本件特許の明細書の記載を子細に見ても、質量分析のイオン化方法についての記載が存在しない。
してみると、質量分析のイオン化方法が規定されていない本件発明1の熱重量-質量分析についての規定では、特許請求の範囲が一義的に定まるとはいえない。
よって、本件発明1に係る発明は不明確である。本件発明2~8に係る発明についても同様である。
第6 当審の判断
1 令和3年12月3日付けで特許権者に通知した取消理由通知における取消理由についての判断
(1) 取消理由1-1(甲A1号証を根拠とする新規性)及び取消理由2-1(甲A1号証を主引例とする進歩性)について
ア 甲A1号証の記載事項
甲A1号証には、「発泡体」に関し、次の記載がある。(なお、下線は各証拠において付されていたものに加え、合議体が付したものもある。以下同様。)
「【請求項1】
オレフィン系樹脂、臭素含有難燃剤、天然鉱物、及び三酸化アンチモンを含む発泡体。
【請求項2】
天然鉱物及び三酸化アンチモンの質量比が、3:1~1:3であることを特徴とする、請求項1記載の発泡体。
【請求項3】
天然鉱物は、SiO2、Al2O3、及びFe2O3を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の発泡体。
【請求項4】
臭素含有難燃剤が、エチレンビスペンタブロモジフェニル及び/又はエチレンビステトラブロモフタルイミドである、請求項1~3のいずれかに記載の発泡体。」
「【0001】
本発明は、難燃性能に優れたオレフィン系樹脂を用いた発泡体に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、三酸化アンチモンは、発泡剤の分解開始温度を低くし、分解速度を早める効果がある。このため製造条件のバラツキによって意図せぬ発泡剤の分解が発生し、発泡体の厚さ、密度が不均一になったり、急激な発泡に樹脂が追従できず発泡体が切れる等、製造条件が狭い範囲に限定されていた。
【0005】
また、アンチモンはレアメタルの一つであり、近年安定した調達が困難になりつつある。そのため、アンチモンの使用量を低減することが求められている。
【0006】
そこで本発明では、従来技術の課題を解決し、難燃性能の優れたオレフィン系樹脂を含む発泡体を安定して製造し提供することを目的とする。」
「【0011】
本発明の発泡体において、オレフィン系樹脂の含有量に特に制限はなく、オレフィン系樹脂を含有することが重要である。発泡体中のオレフィン系樹脂の含有量に関して、オレフィン系樹脂の持つ特性、成形加工性ならびに外観美麗性の点から、発泡前シート(発泡前シートとは、発泡工程を経る前のシートを意味する。)の全成分中の樹脂分100質量%において、オレフィン系樹脂を70質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。また、優れた難燃性と機械特性を有する発泡体を得るために、発泡前シートの全成分中の樹脂分は60質量%以上95%質量%以下とすることが好ましい。
さらに、本発明の特徴を著しく損なわない範囲であれば、本発明の発泡体中に、他の様々な熱可塑性樹脂を必要な特性に応じて、1種類もしくは2種類以上混合して含有させてもよい。
【0012】
なお、成形加工性及び耐熱性に優れた発泡体を得るために、本発明の発泡体においては、オレフィン系樹脂として下記のポリプロピレン系樹脂(A)およびポリエチレン系樹脂(B)を原料として併用することが好ましい。そしてこのポリプロピレン系樹脂(A)とポリエチレン系樹脂(B)との含有割合に特に制限は無いが、質量比(ポリプロピレン系樹脂(A)の質量:ポリエチレン系樹脂(B)の質量)で4:6~9:1の範囲とすることが好適に用いられる。
【0013】
このポリプロピレン系樹脂(A)としては、ポリプロピレン系樹脂(A)100質量%中のエチレン含有率が1~5質量%、融点が135~155℃、MFRが0.5~5.0のランダムポリプロピレン、及び/又は、ポリプロピレン系樹脂(A)100質量%中のエチレン含有率が5~10質量%、融点が150~165℃、MFRが1.0~7.0のブロックポリプロピレンが特に好ましく用いられる。」
「【実施例】
【0021】
実施例、比較例で用いた評価方法は以下の通りである。
・・・
【0023】
・・・
実施例1
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m3):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010、エチレンビスペンタブロモジフェニル):3.9質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX-501):1.3質量部、および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):15質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて150℃で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:2.0mmのポリエチレン系樹脂シートを作製した。このシートに加速電圧800kV、15kGyの電子線を両面から照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡した。その発泡体を50℃の水で冷却、発泡体表面を水洗して乾燥させ、厚さ:4.0mm、みかけ密度:33kg/m3、ゲル分率:25%の発泡体の長尺ロールを得た。この発泡体の評価を表1に示す。
実施例2
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX BT-93、エチレンビステトラブロモフタルイミド):6.0質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX-501):1.5質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):15質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.1質量部を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表1に示す。
【0024】
・・・
比較例2
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010):3.9質量部、三酸化アンチモン(日本精鉱製PATOX-K):1.3質量部、および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):15質量部を用い、実施例1と同様に発泡体を得た。この発泡体の評価を表2に示す。」
「【0025】
【表1】
[図:0001388382000001.jpg]
【0026】
【表2】
[図:0001388382000002.jpg]
」
イ 甲A1号証に記載された発明
甲A1号証の記載、特に実施例1、2及び比較例2の記載を中心に整理すると、甲A1号証には次の発明が記載されていると認める。
「オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m3):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010、エチレンビスペンタブロモジフェニル):3.9質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX-501):1.3質量部、および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):15質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて150℃で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:2.0mmのポリエチレン系樹脂シートを作製し、このシートに加速電圧800kV、15kGyの電子線を両面から照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡させ、その発泡体を50℃の水で冷却、発泡体表面を水洗して乾燥させ得られた、厚さ:4.0mm、みかけ密度:33kg/m3、ゲル分率:25%の発泡体の長尺ロール。」(以下、「甲A1実施例1発明」という。)
「オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m3):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX BT-93、エチレンビステトラブロモフタルイミド):6.0質量部、天然鉱物と三酸化アンチモンとの混合物(日本精鉱製STOX-501):1.5質量部、および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):15質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.1質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて150℃で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:2.0mmのポリエチレン系樹脂シートを作製し、このシートに加速電圧800kV、15kGyの電子線を両面から照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡させ、その発泡体を50℃の水で冷却、発泡体表面を水洗して乾燥させ得られた、厚さ:6.0mm、みかけ密度:33kg/m3、ゲル分率:23%の発泡体の長尺ロール。」(以下、「甲A1実施例2発明」という。)
「オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m3):100質量部、臭素含有難燃剤(アルベマール製SAYTEX 8010、エチレンビスペンタブロモジフェニル):3.9質量部、三酸化アンチモン(日本精鉱製PATOX-K):1.3質量部、および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):15質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて150℃で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:2.0mmのポリエチレン系樹脂シートを作製し、このシートに加速電圧800kV、15kGyの電子線を両面から照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡させ、その発泡体を50℃の水で冷却、発泡体表面を水洗して乾燥させ得られた、厚さ:4.0mm、みかけ密度:33kg/m3、ゲル分率:25%の発泡体の長尺ロール。」(以下、「甲A1比較例2発明」という。)
ウ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲A1実施例1発明とを対比する。
甲A1実施例1発明の「発泡体の長尺ロール」は「ポリエチレン系樹脂シート」を加熱発泡させたものであるから、本件発明1の「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」に相当する。
そして、甲A1実施例1発明の発泡体の長尺ロールはその性状が、厚さ:4.0mm、みかけ密度:33kg/m3であるから、見かけ密度は0.033g/cm3であり、面密度は33×1000g×0.004m=132g/m2と算出され、本件特許発明1の「面密度が5g/m2以上400g/m2以下」であり、「見かけ密度が40kg/m3以下」であるとの特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「面密度が5g/m2以上400g/m2以下であり、見かけ密度が40kg/m3以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡体シート。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点A1-1)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「測定温度200~550℃を全測定温度領域とした熱重量-質量分析において、以下の条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満足する」(合議体注:条件(1)及び(2)の記載は省略する。以下同様。)と特定されるところ、甲A1実施例1発明にはそのような特定がない点。
(相違点A1-2)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く」と特定されるのに対し、甲A1実施例1発明にはそのような特定はない点。
事案に鑑み、まず相違点A1-2について検討する。
甲A7号証の実験結果(表7の発泡体1)によると、甲A1号証の実施例1(すなわち、甲A1実施例1発明)として得られる発泡体の25%圧縮強度は、30kPaである。
すると、本件発明1と甲A1実施例1発明は、25%圧縮強度の点で異なるものであるから、本件発明1は甲A1実施例1発明ではない。
また、甲A1実施例1発明において、25%圧縮強度を変更する動機付けもない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A1実施例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲A1実施例2発明、甲A1比較例2発明についても、甲A1実施例1発明と同様に判断される。
以下、甲A1実施例1発明、甲A1実施例2発明、甲A1比較例2発明を総称し、「甲A1発明」として検討を進める。
(イ) 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件発明1と甲A1発明は同一ではなく、甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし8についても同様に、甲A1発明と同一ではなく、甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 取消理由1-1及び取消理由2-1についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由1-1及び取消理由2-1は、その理由がない。
(2) 取消理由1-2(甲A2号証を根拠とする新規性)及び取消理由2-2(甲A2号証を主引例とする進歩性)について
ア 甲A2号証に記載された発明
甲A2号証の記載、特に実施例1、4及び比較例3の記載を中心に整理すると、甲A2号証には次の発明が記載されていると認める。
「オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m3):100質量部、難燃剤A:芳香族ホスホン酸エステル(丸菱油化工業製、製品名:ノンネン73)5質量部および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):10質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.5質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて150℃で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:1.5mmのポリエチレン系樹脂シートを作製し、このシートに加速電圧800kV、15kGyの電子線を両面から照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡させ、その発泡体を50℃の水で冷却、発泡体表面を水洗して乾燥させ得られた、厚さ:3.0mm、みかけ密度:33kg/m3の発泡体の長尺ロール。」(以下、「甲A2実施例1発明」という。)
「オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m3):100質量部、難燃剤A:エチレンビスペンタブロモジフェニル:アルベマール製、製品名:SAYTEX 8010)14質量部および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):14質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.5質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて150℃で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:1.7mmのポリエチレン系樹脂シートを作製し、このシートに加速電圧800kV、15kGyの電子線を両面から照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡させ、その発泡体を50℃の水で冷却、発泡体表面を水洗して乾燥させ得られた、厚さ:4.1mm、みかけ密度:26kg/m3の発泡体の長尺ロール。」(以下、「甲A2実施例4発明」という。)」
「オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m3):100質量部、難燃剤B:エチレンビスペンタブロモジフェニル(アルベマール製、製品名:SAYTEX 8010)2.5質量部、難燃助剤:三酸化アンチモン(日本精鉱製PATOX-K)1.0質量部、および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):10質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.5質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて150℃で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:1.5mmのポリエチレン系樹脂シートを作製し、このシートに加速電圧800kV、15kGyの電子線を両面から照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡した。その発泡体を50℃の水で冷却、発泡体表面を水洗して乾燥させ得られた、厚さ:3.0mm、みかけ密度:33kg/m3の発泡体の長尺ロール。」(以下、「甲A2比較例3発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲A2実施例1発明とを対比する。
甲A2実施例1発明の「発泡体の長尺ロール」は「ポリエチレン系樹脂シート」を加熱発泡させたものであるから、本件発明1の「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」に相当する。
そして、甲A2実施例1発明の発泡体の長尺ロールはその性状が、厚さ:3.0mm、みかけ密度:33kg/m3であるから、面密度は33×1000g×0.003cm=99g/m2と算出され、本件発明1の「面密度が5g/m2以上400g/m2以下」であり、「見かけ密度が40kg/m3以下」であるとの特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「面密度が5g/m2以上400g/m2以下であり、見かけ密度が40kg/m3以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡体シート。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点A2-1)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「測定温度200~550℃を全測定温度領域とした熱重量-質量分析において、以下の条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満足する」と特定されるところ、甲A2実施例1発明にはそのような特定がない点。
(相違点A2-2)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く」と特定されるのに対し、甲A2実施例1発明にはそのような特定はない点。
事案に鑑み、まず相違点A2-2について検討する。
甲A7号証の実験結果(表7の発泡体4)によると、甲A2号証の実施例1(すなわち、甲A2実施例1発明)として得られる発泡体の25%圧縮強度は、40kPaである。
すると、本件発明1と甲A2実施例1発明は、25%圧縮強度の点で異なるものであるから、本件発明1は甲A2実施例1発明ではない。
また、甲A2実施例1発明において、25%圧縮強度を変更する動機付けもない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A2実施例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲A2実施例4発明、甲A2比較例3発明についても、甲A2実施例1発明と同様に判断される。
以下、甲A2実施例1発明、甲A2実施例4発明、甲A2比較例3発明を総称し、「甲A2発明」として検討を進める。
(イ) 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件発明1と甲A2発明は同一ではなく、甲A2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし8についても同様に、甲A2発明と同一ではなく、甲A2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 取消理由1-2及び取消理由2-2についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由1-2及び取消理由2-2は、その理由がない。
(3) 取消理由1-3(甲A3号証を根拠とする新規性)及び取消理由2-3(甲A3号証を主引例とする進歩性)について
ア 甲A3号証に記載された発明
甲A3号証の記載、特に実施例1及び比較例1の記載を中心に整理すると、甲A3号証には次の発明が記載されていると認める。
「密度925kg/m3、MFR=2.3のポリエチレン100部、非ハロゲン系難燃剤として、FP2000(旭電化製) 30重量部、アクリル変性したポリテトラフルオロエチレンを20重量%マスターバッチしたものとしてメタブレン(登録商標)(三菱レイヨン製、マスターバッチ中のポリテトラフルオロエチレンの含有量は4重量%)を2重量部、酸化防止剤として、イルガノックス(登録商標)1010(チバスペシャリティケミカルズ製)を0.5重量部、熱分解型発泡剤としてアゾジカルボンアミド(大塚化学製)15重量部をヘンシェルミキサーにて均一に混合し、シリンダー前半部分を160~170℃の温度に、後半部分を130~140℃の温度に設定したスクリュー径60mmφの2軸押出機を用い、スクリュー回転数18rpmでTダイから押し出し、厚さ2.1mmの長尺の発泡性シートを作成し、
このシートに加速電圧650Kvで、50kGyに相当する線量を両面から照射して架橋させ、次いで、このシートを225℃に設定したソルト浴に連続的に投入し加熱するとともに、ソルト面に接触していない面を赤外線ヒーターで加熱させることで得られた、厚み4.3mm、密度33kg/m3であるシート状の発泡体。」(以下、「甲A3実施例1発明」という。)
「密度925kg/m3、MFR=2.3のポリエチレン100部、非ハロゲン系難燃剤として、FP2000(旭電化製) 30重量部、酸化防止剤として、イルガノックス(登録商標)1010(チバスペシャリティケミカルズ製)を0.5重量部、熱分解型発泡剤としてアゾジカルボンアミド(大塚化学製)15重量部をヘンシェルミキサーにて均一に混合し、シリンダー前半部分を160~170℃の温度に、後半部分を130~140℃の温度に設定したスクリュー径60mmφの2軸押出機を用い、スクリュー回転数18rpmでTダイから押し出し、厚さ2.1mmの長尺の発泡性シートを作成し、
このシートに加速電圧650Kvで、50kGyに相当する線量を両面から照射して架橋させ、次いで、このシートを225℃に設定したソルト浴に連続的に投入し加熱するとともに、ソルト面に接触していない面を赤外線ヒーターで加熱させることで得られた、厚み3.5mm、密度32kg/m3であるシート状の発泡体。」(以下、「甲A3比較例1発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件特許発明1と甲A3実施例1発明とを対比する。
甲A3実施例1発明の「シート状の発泡体」は「ポリエチレン」を主たる原料として作製されたものであるから、本件発明1の「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」に相当する。
そして、甲A3実施例1発明のシート状の発泡体はその性状が、厚み4.3mm、密度33kg/m3であるから、面密度は33×1000g×0.0043cm=141.9g/m2と算出され、本件発明1の「面密度が5g/m2以上400g/m2以下」であり、「見かけ密度が40kg/m3以下」であるとの特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「面密度が5g/m2以上400g/m2以下であり、見かけ密度が40kg/m3以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡体シート。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点A3-1)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「測定温度200~550℃を全測定温度領域とした熱重量-質量分析において、以下の条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満足する」と特定されるところ、甲A3実施例1発明にはそのような特定がない点。
(相違点A3-2)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く」と特定されるのに対し、甲A3実施例1発明にはそのような特定はない点。
事案に鑑み、まず相違点A3-2について検討する。
甲A7号証の実験結果(表7の発泡体7)によると、甲A3号証の実施例1(すなわち、甲A3実施例1発明)として得られる発泡体の25%圧縮強度は、33kPaである。
すると、本件発明1と甲A3実施例1発明は、25%圧縮強度の点で異なるものであるから、本件発明1は甲A3実施例1発明ではない。
また、甲A3実施例1発明において、25%圧縮強度を変更する動機付けもない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A3実施例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲A3比較例1発明についても、甲A3実施例1発明と同様に判断される。
以下、甲A3実施例1発明及び甲A3比較例1発明を総称し、「甲A3発明」として検討を進める。
(イ) 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件発明1と甲A3発明は同一ではなく、甲A3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし8についても同様に、甲A3発明と同一ではなく、甲A3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 取消理由1-3及び取消理由2-3についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由1-3及び取消理由2-3は、その理由がない。
(4)取消理由1-4(甲A4号証(甲B6号証でもある。以下略す。)を根拠とする新規性)及び取消理由2-4(甲A4号証を主引例とする進歩性)について
ア 甲A4号証に記載された発明
甲A4号証の記載、特に実施例2、7の記載を中心に整理すると、甲A4号証には次の発明が記載されていると認める。
「ポリオレフィン系樹脂(a)として、エチレン-プロピレン共重合体a-1(MFR=1.9g/10min、エチレン含有量=3%)60質量部、線状低密度ポリエチレン樹脂(MFR=9.0g/10min)40質量部、トリアゾール系化合物(b)として、(3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール)0.5質量部、難燃剤(c)として、ホスフィン酸アルミニウム18質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成製 パンスレン)19質量部、ジビニルベンゼン5質量部を添加して、170℃にて溶融混練し、シート状態に押出成型し、この発泡性シートに50kGyの電子線を照射して樹脂成分を架橋させ、220℃の横型亜硝酸ナトリウム塩浴上にて発泡させ、その発泡体の表面を純水で水洗して乾燥させて得られた、厚み5.2mm、密度40kg/m3、のポリオレフィン系樹脂架橋発泡体。」(以下、「甲A4実施例2発明」という。)
「ポリオレフィン系樹脂(a)として、線状低密度ポリエチレン樹脂(MFR=9.0g/10min)50質量部、低密度ポリエチレン(MFR=3.5g/10min)50質量部、トリアゾール系化合物(b)として、(3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール)0.5質量部、難燃剤(c)として、エチレンビスペンタブロモジフェニル12質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成製 パンスレン)17質量部を添加して、170℃にて溶融混練し、シート状態に押出成型し、この発泡性シートに50kGyの電子線を照射して樹脂成分を架橋させ、220℃の横型亜硝酸ナトリウム塩浴上にて発泡させ、その発泡体の表面を純水で水洗して乾燥させて得られた、厚み5.2mm、密度34kg/m3、のポリオレフィン系樹脂架橋発泡体。」(以下、「甲A4実施例7発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲A4実施例7発明とを対比する。
甲A4実施例7発明の「ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体」はシート状態に押出成型し、得られた「発泡性シート」を発泡させることで作製されたものであるから、本件発明1の「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」に相当する。
そして、甲A4実施例7発明のポリオレフィン系樹脂架橋発泡体はその性状が、厚み5.2mm、密度34kg/m3であるから、面密度は34×1000g×0.0052cm=176.8g/m2と算出され、本件発明1の「面密度が5g/m2以上400g/m2以下」であり、「見かけ密度が40kg/m3以下」であるとの特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「面密度が5g/m2以上400g/m2以下であり、見かけ密度が40kg/m3以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡体シート。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点A4-1)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「測定温度200~550℃を全測定温度領域とした熱重量-質量分析において、以下の条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満足する」と特定されるところ、甲A4実施例7発明にはそのような特定がない点。
(相違点A4-2)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く」と特定されるのに対し、甲A4実施例7発明にはそのような特定はない点。
事案に鑑み、まず相違点A4-2について検討する。
甲A7号証の実験結果(表7の発泡体10)によると、甲A4号証の実施例7(すなわち、甲A4実施例7発明)として得られる発泡体の25%圧縮強度は、35kPaである。
すると、本件発明1と甲A4実施例7発明は、25%圧縮強度の点で異なるものであるから、本件発明1は甲A4実施例7発明ではない。
また、甲A4実施例7発明において、25%圧縮強度を変更する動機付けもない。
なお、特許異議申立人Bは、要するに、見かけ密度が高いものは、25%圧縮強度も大きくなるはずであり、25%圧縮強度が40kPaを超えるものも含まれる旨主張するが、そもそも、甲A4実施例7発明において、25%圧縮強度を変更する動機がないことは上記検討のとおりである。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A4実施例7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲A4実施例2発明についても、甲A4実施例7発明と同様に判断される。
以下、甲A4実施例2発明、甲A4実施例7発明を総称し、「甲A4発明」として検討を進める。
(イ) 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件発明1と甲A4発明は同一ではなく、甲A4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし8についても同様に、甲A4発明と同一ではなく、甲A4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 取消理由1-4及び取消理由2-4についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由1-4及び取消理由2-4は、その理由がない。
(5) 取消理由1-5(甲A5号証を根拠とする新規性)及び取消理由2-5(甲A5号証を主引例とする進歩性)について
ア 甲A5号証に記載された発明
甲A5号証の記載、特に実施例1、2の記載を中心に整理すると、甲A5号証には次の発明が記載されていると認める。
「ポリオレフィン系樹脂(1)として線状低密度ポリエチレン(MFR:2g/10min、融点:123℃、密度0.934g/cm3)50質量%、ポリオレフィン系樹脂(2)として低密度ポリエチレン(MFR:6g/10min、融点:118℃、密度:0.925g/cm3)50質量%とを混合し、上記ポリオレフィン系樹脂の総量を100質量部とした場合に、更に発泡剤としてアゾジカルボンアミド(大塚化学製ユニフォームAZ)を17質量部、熱安定剤としてフェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティーズ社製イルガノックス1010)を0.5質量部とをヘンシェルミキサーにて混合し、60φ押出機に投入、シリンダー内温度が150℃となるように温調した状態で、溶融・混練したのち4mmにシート成形を行ったものを一旦巻き上げ、更にこのポリオレフィン系樹脂発泡シートを電子線照射機を用いて、800kV、面A側の照射線量が62kGy、面B側の照射線量が35kGyとなるように両側から電離性放射線を照射せしめた後、ソルト塩浴上(塩浴温度230℃)で発泡させ得られた、厚さ8mm、見かけ密度0.020g/cm3の発泡体。」(以下、「甲A5実施例1発明」という。)
「ポリオレフィン系樹脂(1)として線状低密度ポリエチレン(MFR:2g/10min、融点:123℃、密度0.934g/cm3)50質量%、ポリオレフィン系樹脂(2)として低密度ポリエチレン(MFR:6g/10min、融点:118℃、密度:0.925g/cm3)50質量%とを混合し、上記ポリオレフィン系樹脂の総量を100質量部とした場合に、更に発泡剤としてアゾジカルボンアミド(大塚化学製ユニフォームAZ)を15質量部、熱安定剤としてフェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティーズ社製イルガノックス1010)を0.5質量部とをヘンシェルミキサーにて混合し、60φ押出機に投入、シリンダー内温度が150℃となるように温調した状態で、溶融・混練したのち4mmにシート成形を行ったものを一旦巻き上げ、更にこのポリオレフィン系樹脂発泡シートを電子線照射機を用いて、800kV、面A側の照射線量が62kGy、面B側の照射線量が35kGyとなるように両側から電離性放射線を照射せしめた後、ソルト塩浴上(塩浴温度230℃)で発泡させ得られた、厚さ7.5mm、見かけ密度0.032g/cm3の発泡体。」(以下、「甲A5実施例2発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件特許発明1と甲A5実施例1発明とを対比する。
甲A5実施例1発明の「発泡体」は、「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」を発泡させ得られたものであるから、本件特許発明1の「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」に相当する。
そして、甲A5実施例1発明の「発泡体」はその性状が、厚さ8mm、見かけ密度0.020g/cm3であるから、見かけ密度は、35kg/m3であり、面密度は35×1000g×0.008m=280g/m2と算出され、本件特許発明1の「面密度が5g/m2以上400g/m2以下」であり、「見かけ密度が40kg/m3以下」であるとの特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「面密度が5g/m2以上400g/m2以下であり、見かけ密度が40kg/m3以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡体シート。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点A5-1)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「測定温度200~550℃を全測定温度領域とした熱重量-質量分析において、以下の条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満足する」と特定されるところ、甲A5実施例1発明にはそのような特定がない点。
(相違点A5-2)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く」と特定されるのに対し、甲A5実施例1発明にはそのような特定はない点。
事案に鑑み、まず相違点A5-2について検討する。
甲A5号証の表2には、甲A5号証の実施例1(すなわち、甲A5実施例1発明)として得られる発泡体の25%圧縮強度が、8kPaと記載されている。
すると、本件発明1と甲A5実施例1発明は、25%圧縮強度の点で異なるものであるから、本件発明1は甲A5実施例1発明ではない。
また、甲A5実施例1発明において、25%圧縮強度を変更する動機付けもない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A5実施例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲A5実施例2発明についても、甲A5実施例1発明と同様に判断される。
以下、甲A5実施例1発明及び甲A5実施例2発明を総称し、「甲A5発明」として検討を進める。
(イ) 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件発明1と甲A5発明は同一ではなく、甲A5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし8についても同様に、甲A5発明と同一ではなく、甲A5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 取消理由1-5及び取消理由2-5についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由1-5及び取消理由2-5は、その理由がない。
(6) 取消理由1-6(甲A6号証を根拠とする新規性)及び取消理由2-6(甲A6号証を主引例とする進歩性)について
ア 甲A6号証に記載された発明
甲A6号証の記載、特に実施例1、2、3の記載を中心に整理すると、甲A6号証には次の発明が記載されていると認める。
「ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(MFR:6.7~9.3g/10min、融点:118℃、密度:0.922~0.926g/cm3)100質量部に、アゾジカルボンアミドを30質量部(分解温度200℃、発生ガス速度40ml/min)、熱安定剤としてフェノール系酸化防止剤を0.1質量部とをヘンシェルミキサーにて混合し、60φ押出機に投入、シリンダー内温度が150℃となるように温調した状態で、溶融・混練したのち厚さ4mmにシート成形を行ったものを一旦巻き上げ、このポリオレフィン系樹脂発泡シートを電子線照射機を用いて、電離性放射線を照射せしめた後、ソルト塩浴上(塩浴温度230℃)で発泡させ得られた、発泡体厚さ10mm、発泡体密度14kg/m3の発泡体」(以下、「甲A6実施例1発明」という。)
「ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(MFR:6.7~9.3g/10min、融点:118℃、密度:0.922~0.926g/cm3)70質量部、線状低密度ポリエチレン(MFR:6.7~9.3g/10min、融点:123℃、密度:0.923~0.927g/cm3)30質量部に、アゾジカルボンアミドを30質量部(分解温度200℃、発生ガス速度40ml/min)、熱安定剤としてフェノール系酸化防止剤を0.1質量部とをヘンシェルミキサーにて混合し、60φ押出機に投入、シリンダー内温度が150℃となるように温調した状態で、溶融・混練したのち厚さ4mmにシート成形を行ったものを一旦巻き上げ、このポリオレフィン系樹脂発泡シートを電子線照射機を用いて、電離性放射線を照射せしめた後、ソルト塩浴上(塩浴温度230℃)で発泡させ得られた、発泡体厚さ9.7mm、発泡体密度15kg/m3の発泡体」
(以下、「甲A6実施例2発明」という。)
「エチレン-酢酸ビニル共重合体(MFR:1.5g/10min、融点:90℃、密度:0.936g/cm3、酢酸ビニル含有率:15%)100質量部に、アゾジカルボンアミドを30質量部(分解温度200℃、発生ガス速度40ml/min)、熱安定剤としてフェノール系酸化防止剤を0.1質量部とをヘンシェルミキサーにて混合し、60φ押出機に投入、シリンダー内温度が150℃となるように温調した状態で、溶融・混練したのち厚さ4mmにシート成形を行ったものを一旦巻き上げ、このポリオレフィン系樹脂発泡シートを電子線照射機を用いて、電離性放射線を照射せしめた後、ソルト塩浴上(塩浴温度230℃)で発泡させ得られた、発泡体厚さ9.8mm、発泡体密度14kg/m3の発泡体」(以下、「甲A6実施例3発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
甲A6実施例1発明の「発泡体」は、「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」を発泡させ得られたものであるから、本件発明1の「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」に相当する。
そして、甲A6実施例1発明の「発泡体」はその性状が、厚さ10mm、密度14kg/m3であるから、見かけ密度は、14kg/m3であり、面密度は14×1000g×0.01m=140g/m2と算出され、本件発明1の「面密度が5g/m2以上400g/m2以下」であり、「見かけ密度が40kg/m3以下」であるとの特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「面密度が5g/m2以上400g/m2以下であり、見かけ密度が40kg/m3以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡体シート。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点A6-1)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「測定温度200~550℃を全測定温度領域とした熱重量-質量分析において、以下の条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満足する」と特定されるところ、甲A6実施例1発明にはそのような特定がない点。
(相違点A6-2)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く」と特定されるのに対し、甲A6実施例1発明にはそのような特定はない点。
事案に鑑み、まず相違点A6-2について検討する。
甲A6号証の表2には、甲A6号証の実施例1(すなわち、甲A6実施例1発明)として得られる発泡体の50%圧縮硬さ(50%圧縮強度)が、30kPaと記載されている。そして、技術常識上、圧縮率が50%よりも小さい25%圧縮強度は、50%圧縮強度よりも大きい値とはならないことから、甲A6実施例1発明の25%圧縮強度は30kPaを超えないものといえる。
すると、本件発明1と甲A6実施例1発明は、25%圧縮強度の点で異なるものであるから、本件発明1は甲A6実施例1発明ではない。
また、甲A6実施例1発明において、25%圧縮強度を変更する動機付けもない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A6実施例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲A6実施例2発明、甲A6実施例3発明についても、甲A6実施例1発明と同様に判断される。
以下、甲A6実施例1発明ないし甲A6実施例3発明を総称し、「甲A6発明」として検討を進める。
(イ) 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件発明1と甲A6発明は同一ではなく、甲A6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし8についても同様に、甲A6発明と同一ではなく、甲A6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 取消理由1-6及び取消理由2-6についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由1-6及び取消理由2-6は、その理由がない。
(7)取消理由1-7(甲B1号証を根拠とする新規性)及び取消理由2-7(甲B1号証を主引例とする進歩性)について
ア 甲B1号証の記載事項
甲B1号証には、「低煙難燃性発泡体の製造方法」に関し、次の記載がある。
「2.特許請求の範囲
酢酸ビニル含有量50~80重量%の酢酸ビニル-エチレン共重合体単独もしくはこれに他の樹脂を配合した樹脂分100重量部に対して、水和金属酸化物50~300重量部、ハロゲン系難燃剤5~40重量部、及び発泡剤からなる組成物に、架橋剤を添加しこれを加熱して架橋発泡せしめるか、又は該組成物に電離性放射線を照射して架橋した後加熱発泡せしめることにより、低煙難燃性発泡体の製造方法。」(第1頁左下欄第4ないし13行)
「3.発明の詳細な説明
本発明は難燃性にしてかつ低煙性を有するプラスチック発泡体の製造方法に関するものである。」(第1頁左下欄第14ないし17行)
「本発明は、これらの欠点を改善せんとして鋭意研究を行った結果、可撓性、耐水性、熱加工性、耐候性などの点でポリエチレン発泡体のもつすぐれた特徴を保持すると共に「不燃材料」となる上で、最も大きな要件である上記時間温度面積(tdθ)と発煙係数(CA)との規定値を満足する新規発泡体の製造方法を提供するものである。即ち、本発明に、酢酸ビニル含有量50~80重量%の酢酸ビニル-エチレン共重合体単独もしくはこれに他の樹脂を配合した樹脂分100重量部に対して、水和金属酸化物粉末50~300重量部、ハロゲン系難燃剤5~40重量部、及び発泡剤からなる組成物に、更に架橋剤及び必要により架橋助剤を添加し混練成形したのち加熱して架橋発泡せしめるか、又は該組成物を混練成形したのち放射線照射した後加熱発泡せしめることにより、密度0.1~0.01g/cm3を有する低煙性かつ難燃性の無機物高充てん樹脂発泡体の製造方法、である。」(第2頁左上欄第7行ないし同頁右上欄第5行)
「次に、本発明方法の構成について詳細に説明する。
本発明におけるポリマー成分は酢酸ビニル含有量が50~80重量%の酢酸ビニル-エチレン共重合体単独もしくはこれに他の樹脂をブレンドしたものである。その分子量は190℃におけるメルトインデックスで0.01~300の巾広い範囲のものが使える。また通常、その共重合体の密度は1.0g/cm3以上1.2g/cm3以下である。なお、酢酸ビニル含有量が55~70%でメルトインデックスポリマー成分は酢酸ビニル-エチレン共重合体のみで構成されることもあるが、他の熱可塑性ポリマーを補助的にブレンドすることが好ましく、例えば、ポリエチレン、酢酸ビニル含有量が40%以下の結晶性のエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体等の一種もしくは二種以上をポリマー成分中の50重量%未満好ましくは10~40重量%の範囲でブレンドする。その理由は、前記の酢酸ビニル-エチレン共重合体は非結晶性であるため、水和金属酸化物を多量に添加配合しても、極めて柔軟でかつ粘着性に富むため、ペレット化やシート状物のハンドリングに難点がある。上記のように、他の結晶性ポリマーをブレンドするとこの点が著しく改善される効果があるのである。
そして、特に、酢酸ビニル含有量15~30重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体20~40重量%とエチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体5~30重量%の範囲内で前記酢酸ビニル-エチレン共重合体にブレンドする時発泡性能が特に改善されるのでこのような3元系ポリマーとすることが最も望ましい。
本発明にて使用する無機物は加熱により脱水して難燃化作用を示す水和金属酸化物を使用するものであり、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハードクレー、タルク、マイカ、カオリンクレー、アスベスト、含水ケイ酸カルシウム、アタパルジャイト等である。これらは単独で用いられる場合だけでなく、2種以上の水和金属酸化物を併用する場合や水和金属酸化物以外の無機物粉末や木粉、モミガラ等の有機物粉末を併用することもある。
これらは通常、微粉末状態で用いるが繊維状態でも用いられる。繊維形態にて使用されるものは、例えば、エトリンガイト、ドーソナイト等である。微粉末の平均粒子径は、発泡倍率の点から、0.01~20μの範囲のものが好ましく、0.05~10μのものが最も好ましい。
またこれら無機物の添加量は、ポリマー成分100重量部に対して50~300重量部、好ましくは70~130重量部の範囲である。この上限値を越えると十分な倍率の発泡体とならず、また下限値に満たないと無機物添加の効果が発揮されず、発煙性と燃焼熱を低くすることができない。なお、本発明方法では、水和金属酸化物として特に水酸化アルミニウムを用いた場合、ポリマー成分の酢酸ビニル-エチレン共重合体との組み合わせによる相剰効果が発揮され、すぐれた難燃性を呈するので、水酸化アルミニウムが最も好ましいものである。
本発明にて使用される難燃剤としては、ハロゲン化芳香族系、ハロゲン化脂肪族・芳香族系及びハロゲン化脂環系等のハロゲン系難燃剤を使用するものであり、例えば、デカブロムディフェニールオキサイド、ヘキサブロムベンゼン、ファイヤーガード3000(帝人化成株式会社製品)、CITEX BT-93(米国CITIES SER-VICE COMPANY社製品)、デクロランプラス25(Hooker社製品)等である。その添加量はポリマー成分100重量部に対して5~40重量部、好ましくは10~30重量部である。特に、ブロム系難燃剤がすぐれており、デカブロムヂィフェニールオキサイド、ファイヤーガード3000、CITEX BT-93等中でもCITEX BT-93が最も効果的である。
また、これらの難燃剤に、難燃助剤として、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、赤リン等を併用してもよい。
これら難燃剤の添加量はポリマー成分100重量部に対して5~50重量部好ましくは10~30重量部である。
ハロゲン系難燃剤を添加すると一般的には難燃性が向上するが、発煙量が著しく増大してCA≦30にすることは不可能である。然しながら上記の如く水和金属酸化物を添加することにより発煙量を抑制し、前記の発煙係数(CA)をCA≦30にすることが可能となるのである。このように、水和金属酸化物とハロゲン系難燃剤とを併用することにより、はじめてCAとtdθを容易に低減せしめることができるのである。
また、発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド、重炭酸ソーダ、ジニトロンペンタメチレンテトラミン、p,p'-オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド等の化学分解型発泡剤を用いる。発泡剤の添加量をかえることにより発泡体の密度を巾広く制御できる。通常10~50重量部添加する。発泡体密度は通常0.1~0.02g/cm3の範囲である。
本発明においてはポリマーを架橋する手段として、化学架橋剤を用いる方法又は電離性放射線を照射する方法がある。化学架橋剤としては、通常用いられる各種のものを使用でき、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等である。その他いわゆるシラン架橋剤を用いることもできる。また電離性放射線としては、電子線、γ線、X線、中性子線があるが電子線が最も好ましく用いられる。好適照射線量は1~5Mradの範囲である。
更に、本発明としては架橋効率を高めるため、多官能性モノマー等の架橋助剤を適宜併用することがある。例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリアリールインシアヌレート等である。
その他、必要に応じて各種の添加剤、例えば酸化防止剤、着色剤、カーボンブラック、滑剤等の加工助剤、無機物の表面処理剤等を使用することがある。」(第2頁右下欄第15行ないし第4頁右上欄末行)
「本発明方法にて、建設省告示第1828号にて規定される試験にて「不燃材料」に規定されうる断熱鉄板用長尺発泡体シートを製造する場合には、発泡体の密度と発泡体シートの厚みに厳しい制約を加える必要がある。断熱性能の点から厚みは自から制限され通常3mm以下では意味がない。また厚さは組成と発泡倍率にもよるが、実験の結果では密度0.07~0.03g/cm3の本発明発泡体で3~6mmの厚みの発泡シート、より好ましくは0.06~0.03g/cm3の密度で厚さ3~5mmの発泡体シートを適用する必要があると判明している。」(第4頁右下欄第1ないし12行)
「次に本発明の実施例について説明する。(以下部とあるは何れも重量部を示す。)
実施例(1)~(5),比較例(1)~(2)
酢酸ビニル含有量61重量%、密度1.05g/cm3、メルトインデックス30~50の酢酸ビニル-エチレン共重合体(大日本インキ株式会社製品、エバスレン450-P)100重量部(以下部と略記する。)、水酸化アルミニウム微粉末(昭和電工株式会社製品、ハイジライトH-42M)100部、発泡剤アゾジカルボンアミド(永和化成株式会社製品、ヴィニホールAC#1L)23部、表面処理剤としてイソプロピル-トリ(イソステアロイル)チタネート(米国Kenrich Petrochemical社製品、KEN - REACT TTS)3部、架橋剤としてジクミルパーオキサイド(三井石油化学株式会社製品)2部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製品)0.5部及び第1表に示したように、ブロム系難燃剤(帝人化成株式会社製品、ファイヤーガード3000)0~40部、難燃助剤として三酸化アンチモン0~20部の割合からなる組成物を、小型実験用バンバリーミキサーにて120℃の温度にて十分に混練し、厚さ2mmのシートにプレス成形した。このシートを200℃の空気恒温槽に15分間おきとり出したところ高倍率に発泡したシートが得られた。これをスライサーにて厚さ約4mmにスライスして、片面のみに表皮を有する試料を得た。この発泡体試片を22cm×22cmのサイズに切断し、同サイズの厚さ3mmの亜鉛鉄板に加熱貼合した。
斯くしてえた試料片をJISA-1321-1975に規定する方法により表面試験を行い、燃焼時の発熱量の指標となる時間温度面積(tdθ)と発煙量の指標となる発煙係数(CA)とが、不燃材料として規定する数値即ちtdθ=0,CA>30をみたしているか否かを測定した。その結果は第1表に示す通りである。
なお発泡体の密度及び厚さについても該表に併記した。
[図:0001388382000003.jpg]
」
(第4頁右下欄第13行ないし第5頁左下欄末行)
「実施例(6)~(8)
ハイジライトM(水酸化アルミニウム)の添加量を80部(実施例6)、100部(実施例7)及130部(実施例8)にとした以外はすべて実施例(1)と同様にして発泡体を製造し、その片面に厚さ3mmの亜鉛鉄板に加熱貼着したものについて難燃性を測定した。
その結果は何れもtdθ=0,CA<30の値を有し、不燃材料として十分使用可能であることを示した。
実施例(9)~(12)
第2表に示す組成にジクミルパーオキサイド3部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.3部、イソプロピル-トリイソステアロイルチタネート3部及びステアリン酸亜鉛1部を夫々添加した組成物を実施例(1)と同様の方法により発泡体を製造し、その片面に厚さ3mmの亜鉛鉄板を加熱貼着したものについてJISA-1321-1975の方法に基き難燃性を測定した。
その結果に第2表に併記した通りであり、tdθ=0,CA<30の値を有し、不燃材料として十分使用可能であることを示した。
[図:0001388382000004.jpg]
」
(第5頁右下欄第8行ないし第6頁右上欄末行)
イ 甲B1号証に記載された発明
甲B1号証の記載、特に実施例3、4及び11の記載を中心に整理すると、甲B1号証には次の発明が記載されていると認める。
「酢酸ビニル含有量61重量%、密度1.05g/cm3、メルトインデックス30~50の酢酸ビニル-エチレン共重合体(大日本インキ株式会社製品、エバスレン450-P)100重量部(以下部と略記する。)、水酸化アルミニウム微粉末(昭和電工株式会社製品、ハイジライトH-42M)80部、発泡剤アゾジカルボンアミド(永和化成株式会社製品、ヴィニホールAC#1L)23部、表面処理剤としてイソプロピル-トリ(イソステアロイル)チタネート(米国Kenrich Petrochemical社製品、KEN - REACT TTS)3部、架橋剤としてジクミルパーオキサイド(三井石油化学株式会社製品)2部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製品)0.5部、ブロム系難燃剤(帝人化成株式会社製品、ファイヤーガード3000)20部、難燃助剤として三酸化アンチモン7部からなる組成物を、小型実験用バンバリーミキサーにて120℃の温度にて十分に混練し、厚さ2mmのシートにプレス成形し、このシートを200℃の空気恒温槽に15分間おきとり出し得られた、厚さ4.2mm、密度0.035g/cm3の発泡したシート。」(以下、「甲B1実施例3発明」という。)
「酢酸ビニル含有量61重量%、密度1.05g/cm3、メルトインデックス30~50の酢酸ビニル-エチレン共重合体(大日本インキ株式会社製品、エバスレン450-P)100重量部(以下部と略記する。)、水酸化アルミニウム微粉末(昭和電工株式会社製品、ハイジライトH-42M)100部、発泡剤アゾジカルボンアミド(永和化成株式会社製品、ヴィニホールAC#1L)23部、表面処理剤としてイソプロピル-トリ(イソステアロイル)チタネート(米国Kenrich Petrochemical社製品、KEN - REACT TTS)3部、架橋剤としてジクミルパーオキサイド(三井石油化学株式会社製品)2部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製品)0.5部、ブロム系難燃剤(帝人化成株式会社製品、ファイヤーガード3000)20部、難燃助剤として三酸化アンチモン7部からなる組成物を、小型実験用バンバリーミキサーにて120℃の温度にて十分に混練し、厚さ2mmのシートにプレス成形し、このシートを200℃の空気恒温槽に15分間おきとり出し得られた、厚さ4.0mm、密度0.038g/cm3の発泡したシート。」(以下、「甲B1実施例4発明」という。)
「酢酸ビニル含有量61重量%、密度1.05g/cm3、メルトインデックス30~50の酢酸ビニル-エチレン共重合体(大日本インキ株式会社製品、エバスレン450-P)100重量部(以下部と略記する。)、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体(日本ゼオン株式会社製品、グラフトマーR-5)50部、水酸化アルミニウム微粉末(昭和電工株式会社製品、ハイジライトH-42M)100部、発泡剤アゾジカルボンアミド(永和化成株式会社製品、ヴィニホールAC#1L)44部、表面処理剤としてイソプロピル-トリイソステアロイルチタネート(米国Kenrich Petrochemical社製品、KEN - REACT TTS)3部、架橋剤としてジクミルパーオキサイド(三井石油化学株式会社製品)3部、架橋助剤とトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製品)0.3部、難燃剤(CITIES SER-VICE COMPANY社製品、CITEX BT-93)30部、難燃助剤として三酸化アンチモン21部、ステアリン酸亜鉛1部からなる組成物を、小型実験用バンバリーミキサーにて120℃の温度にて十分に混練し、厚さ2mmのシートにプレス成形し、このシートを200℃の空気恒温槽に15分間おきとり出し得られた、厚さ4.5mm、密度0.035g/cm3の発泡したシート。」(以下、「甲B1実施例11発明」という。)
ウ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲B1実施例3発明とを対比する。
甲B1実施例3発明の「発泡したシート」は、「酢酸ビニル-エチレン共重合体」を原料とし作製されたものであるから、本件発明1の「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」に相当する。
そして、甲B1実施例3発明の発泡したシートはその性状が、厚さ4.2mm、密度0.035g/cm3であるから、見かけ密度は35kg/m3であり、面密度は35×1000g×0.0042m=147g/m2と算出され、本件発明1の「面密度が5g/m2以上400g/m2以下」であり、「見かけ密度が40kg/m3以下」であるとの特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「面密度が5g/m2以上400g/m2以下であり、見かけ密度が40kg/m3以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡体シート。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点B1-1)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「測定温度200~550℃を全測定温度領域とした熱重量-質量分析において、以下の条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満足する」と特定されるところ、甲B1実施例3発明にはそのような特定がない点。
(相違点B1-2)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く」と特定されるのに対し、甲B1実施例3発明にはそのような特定はない点。
事案に鑑み、まず相違点B1-2について検討する。
甲B1実施例3発明には25%圧縮強度についての記載がないし、また、甲B1実施例3発明の25%圧縮強度が「40kPa以下」であると推認することもできない。してみれば、相違点B1-2は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲B1実施例3発明ではない。
そして、甲B1号証には、25%圧縮強度について何ら記載も示唆もないから、甲B1実施例3発明において、25%圧縮強度を変更する動機付けもない。
なお、特許異議申立人Bは、甲B1号証に記載された「発泡したシート」は、可撓性に優れたものであるから、25%圧縮強度も40kPaを超える蓋然性が高い旨主張するが、「可撓性に優れる」ことをもって、25%圧縮強度が40kPaを超えるものと推認する理由もないから、当該主張はその理由がない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B1実施例3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲B1実施例4発明、甲B1実施例11発明についても、甲B1実施例3発明と同様に判断される。
以下、甲B1実施例3発明、甲B1実施例4発明及び甲B1実施例11発明を総称し、「甲B1発明」として検討を進める。
(イ) 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件発明1と甲B1発明は同一ではなく、甲B1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし8についても同様に、甲B1発明と同一ではなく、甲B1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 取消理由1-7及び取消理由2-7についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由1-7及び取消理由2-7は、その理由がない。
(8) 取消理由1-6(甲B2号証を根拠とする新規性)及び取消理由2-6(甲B2号証を主引例とする進歩性)について
ア 甲B2号証に記載された発明
甲B2号証の記載、特に実施例10、20、21、24、25及び比較例13ないし15の記載を中心に整理すると、甲B2号証には次の発明が記載されていると認める。
「酢酸ビニル含有量61%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(犬日本インキ化学工業株式会社製品:エバスレン450-P)と酢酸ビニル含有量25%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(三井ポリケミカル株式会社製品:エバフレツク360)とのブレンド比を種々かえた樹脂成分100部に対して、水酸化アルミニウム粉末(昭和電工株式会社製品:ハイジライトH-42M)100部、チタネート系カップリング剤(Kenrich Petrochemical社製品:KEN-REACT TTS)3部、アゾジカルボンアミド(永和化成株式会社製品:ヴイニホールAC♯IL)25部、難燃剤デカブロモデイフエニールエーテル(東洋ソーダ株式会社製品:EB-10FP)25部、三酸化アンチモン(日本精鉱株式会社製品)12.5部、架橋剤ジクミルパーオキサイド(三井石油化学株式会社製品)及び多官能性モノマ-としてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製品:A-TMPT)の所定量、ステアリン酸力ルシウム1部からなる組成にて、混練成形して厚さ2mmの発泡シートを得、この発泡性シートを、温度30℃相対湿度80%の恒温、恒湿条件下にて3日間安定化処理した後脱湿処理して220℃の熱風恒温槽にて6分間加熱して発泡処理して得られた発泡体。」(以下、「甲B2実施例10発明」という。)
「酸ビニル含有量25%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(三井ポリケミカル株式会社製品:EVAFLEX360)40部と酸ビニル含有量61%、密度1.05g/cm3 メルトインデックス30~50の酢酸ビニル-エチレン共重合体(大日本インキ株式会社製品エバスレン450-P)60部、水酸化アルミニウム微粉末(昭和電工株式会社製品、ハイジライトH-42M)100部、発泡剤アゾジカルボンアミド(永和化成株式会社製品、ヴイニホールAC#IL)27部、表面処理剤としてイソプロピル-トリ(イソステアロイル)チタネート(米国Kenrich Petrochemical社製品、KEN-REACT TTS)3部、架橋剤としてジクミルパーオキサイド(三井石油化学株式会社)1.5部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリアクリレ-ト(新中村化学株式会社製品)0.7部、ブロム系難燃剤(松永化学株式会社製品、EBR-700)25部、難燃助剤として三酸化アンチモン12部及びステアリン酸カルシウム1部の割合からなる組成物を、小型実験用バンバリーミキサーにて110℃の温度にて十分に混練しペレット化し、次いで、40mm押出機を用いて厚さ2mmのシートに成形し、このシートを120℃の熱風恒温槽で20分間熱処理し、ひきつづき220℃の空気恒温槽に6分間おき得られた、発泡体密度39.3g/l、発泡倍率38.4の発泡したシート。」(以下、「甲B2実施例20発明」という。)
「酸ビニル含有量25%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(三井ポリケミカル株式会社製品:EVAFLEX360)40部と酸ビニル含有量61%、密度1.05g/cm3 メルトインデックス30~50の酢酸ビニル-エチレン共重合体(大日本インキ株式会社製品エバスレン450-P)60部、水酸化アルミニウム微粉末(昭和電工株式会社製品、ハイジライトH-42M)100部、発泡剤アゾジカルボンアミド(永和化成株式会社製品、ヴイニホールAC#IL)30部、表面処理剤としてイソプロピル-トリ(イソステアロイル)チタネート(米国Kenrich Petrochemical社製品、KEN-REACT TTS)3部、架橋剤としてジクミルパーオキサイド(三井石油化学株式会社)1.5部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリアクリレ-ト(新中村化学株式会社製品)0.7部、ブロム系難燃剤(松永化学株式会社製品、EBR-700)25部、難燃助剤として三酸化アンチモン12部及びステアリン酸カルシウム1部の割合からなる組成物を、小型実験用バンバリーミキサーにて110℃の温度にて十分に混練しペレット化し、次いで、40mm押出機を用いて厚さ2mmのシートに成形し、このシートを120℃の熱風恒温槽で20分間熱処理し、ひきつづき220℃の空気恒温槽に6分間おき得られた、発泡体密度36.1g/l、発泡倍率41.8の発泡したシート。」(以下、「甲B2実施例21発明」という。)
「酸ビニル含有量25%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(三井ポリケミカル株式会社製品:EVAFLEX360)40部と酢酸ビニル含有量61%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(大日本インキ化学工業株式会社製品:EVATHLENE450-P)を60部含む樹脂成分100部に対して、水酸化アルミニウム微粉末(昭和電工株式会社製品、ハイジライトH-42M)60部、発泡剤アゾジカルボンアミド(永和化成株式会社製品;ヴイニホールAC♯IL)25部、表面処理剤としてイソプロピル-トリ(イソステアロイル)チタネート(米国Kenrich Petrochemical社製品、KEN-REACT TTS)1.8部、架橋剤ジクミルパーオキサイド(三井石油化学株式会社製品)1.5部及び多官能モノマ-としてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製品:A-TMPT)を0.75部だけ添加し、難燃剤としてデカブロモデイフエニールエーテル(東洋ソーダ株式会社製品:DBDEと略す)25部、酸化アンチモン12.5部、さらにステアリン酸カルシウム(試薬)1部の割合からなる混合物を、BRABENDER PLA-STOGRAPHを用いて混練しホツトプレスにてシート成形した後、シリカゲル乾燥剤入りデシケーター中に3日間置き脱湿し、その後、熱風恒温槽を用い、220℃×6分の加熱を加えて得た、発泡体密度が0.0356g/cm3の発泡体。」(以下、「甲B2実施例24発明」という。)
「酸ビニル含有量25%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(三井ポリケミカル株式会社製品:EVAFLEX360)40部と酢酸ビニル含有量61%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(大日本インキ化学工業株式会社製品:EVATHLENE450-P)を60部含む樹脂成分100部に対して、水酸化アルミニウム微粉末(昭和電工株式会社製品、ハイジライトH-42M)80部、発泡剤アゾジカルボンアミド(永和化成株式会社製品;ヴイニホールAC♯IL)25部、表面処理剤としてイソプロピル-トリ(イソステアロイル)チタネート(米国Kenrich Petrochemical社製品、KEN-REACT TTS)2.4部、架橋剤ジクミルパーオキサイド(三井石油化学株式会社製品)1.5部及び多官能モノマ-としてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製品:A-TMPT)を0.75部だけ添加し、難燃剤としてデカブロモデイフエニールエーテル(東洋ソーダ株式会社製品:DBDEと略す)25部、酸化アンチモン12.5部、さらにステアリン酸カルシウム(試薬)1部の割合からなる混合物を、BRABENDER PLA-STOGRAPHを用いて混練しホツトプレスにてシート成形した後、シリカゲル乾燥剤入りデシケーター中に3日間置き脱湿し、その後、熱風恒温槽を用い、220℃×6分の加熱を加えて得た、発泡体密度が0.0389g/cm3の発泡体。」(以下、「甲B2実施例25発明」という。)
「酸ビニル含有量25%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(三井ポリケミカル株式会社製品:EVAFLEX360)40部と酢酸ビニル含有量61%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(大日本インキ化学工業株式会社製品:EVATHLENE450-P)を60部含む樹脂成分100部に対して、発泡剤アゾジカルボンアミド(永和化成株式会社製品;ヴイニホールAC♯IL)25部、架橋剤ジクミルパーオキサイド(三井石油化学株式会社製品)1.5部及び多官能モノマ-としてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製品:A-TMPT)を0.75部だけ添加し、難燃剤としてデカブロモデイフエニールエーテル(東洋ソーダ株式会社製品:DBDEと略す)25部、酸化アンチモン12.5部、さらにステアリン酸カルシウム(試薬)1部の割合からなる混合物を、BRABENDER PLA-STOGRAPHを用いて混練しホツトプレスにてシート成形した後、シリカゲル乾燥剤入りデシケーター中に3日間置き脱湿し、その後、熱風恒温槽を用い、220℃×6分の加熱を加えて得た、発泡体密度が0.0294g/cm3の発泡体。」(以下、「甲B2比較例13発明」という。)
「酸ビニル含有量25%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(三井ポリケミカル株式会社製品:EVAFLEX360)40部と酢酸ビニル含有量61%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(大日本インキ化学工業株式会社製品:EVATHLENE450-P)を60部含む樹脂成分100部に対して、水酸化アルミニウム粉末(昭和電工株式会社製品:ハイジライト H-42M)20部、発泡剤アゾジカルボンアミド(永和化成株式会社製品;ヴイニホールAC♯IL)25部、表面処理剤としてイソプロピル-トリ(イソステアロイル)チタネート(米国Kenrich Petrochemical社製品、KEN-REACT TTS)0.6部、架橋剤ジクミルパーオキサイド(三井石油化学株式会社製品)1.5部及び多官能モノマ-としてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製品:A-TMPT)を0.75部だけ添加し、難燃剤としてデカブロモデイフエニールエーテル(東洋ソーダ株式会社製品:DBDEと略す)25部、酸化アンチモン12.5部、さらにチタネート系カップリング剤(Ken Rich Petrochemical社製品:KEN-REACT TTS)0.6部とステアリン酸カルシウム(試薬)1部の割合からなる混合物を、BRABENDER PLA-STOGRAPHを用いて混練しホツトプレスにてシート成形した後、シリカゲル乾燥剤入りデシケーター中に3日間置き脱湿し、その後、熱風恒温槽を用い、220℃×6分の加熱を加えて得た、発泡体密度が0.0314g/cm3の発泡体。」(以下、「甲B2比較例14発明」という。)
「酸ビニル含有量25%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(三井ポリケミカル株式会社製品:EVAFLEX360)40部と酢酸ビニル含有量61%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(大日本インキ化学工業株式会社製品:EVATHLENE450-P)を60部含む樹脂成分100部に対して、水酸化アルミニウム粉末(昭和電工株式会社製品:ハイジライト H-42M)40部、発泡剤アゾジカルボンアミド(永和化成株式会社製品;ヴイニホールAC♯IL)25部、
表面処理剤としてイソプロピル-トリ(イソステアロイル)チタネート(米国Kenrich Petrochemical社製品、KEN-REACT TTS)1.2部、架橋剤ジクミルパーオキサイド(三井石油化学株式会社製品)1.5部及び多官能モノマ-としてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製品:A-TMPT)を0.75部だけ添加し、難燃剤としてデカブロモデイフエニールエーテル(東洋ソーダ株式会社製品:DBDEと略す)25部、酸化アンチモン12.5部、さらにチタネート系カップリング剤(Ken Rich Petrochemical社製品:KEN-REACT TTS)1.2部とステアリン酸カルシウム(試薬)1部の割合からなる混合物を、BRABENDER PLA-STOGRAPHを用いて混練しホツトプレスにてシート成形した後、シリカゲル乾燥剤入りデシケーター中に3日間置き脱湿し、その後、熱風恒温槽を用い、220℃×6分の加熱を加えて得た、発泡体密度が0.0329g/cm3の発泡体。」(以下、「甲B2比較例15発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲B2実施例20発明とを対比する。
甲B2実施例20発明の「発泡体」は、「エチレン-酢酸ビニル共重合体」を原料とし、発泡性シートとした後、加熱発泡により作製されたものであるから、本件発明1の「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」に相当する。
そして、甲B2実施例20発明の発泡体はその性状が、密度0.0393g/cm3であり、他の例と同様に厚さ2mmの発泡性シートを38.4倍に発泡させたものであるから、見かけ密度は39.3kg/cm3であり、厚みは、発泡性シートが均一に発泡した場合、3√(38.4)×2mmでおよそ6.75mmと算出される。してみると、面密度は39.3×1000g×0.00675m≒265.3g/m2と算出され、本件発明1の「面密度が5g/m2以上400g/m2以下」であり、「見かけ密度が40kg/m3以下」であるとの特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「面密度が5g/m2以上400g/m2以下であり、見かけ密度が40kg/m3以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡体シー ト。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点B2-1)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「測定温度200~550℃を全測定温度領域とした熱重量-質量分析において、以下の条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満足する」と特定されるところ、甲B2実施例20発明にはそのような特定がない点。
(相違点B2-2)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く」と特定されるのに対し、甲B2実施例20発明にはそのような特定はない点。
事案に鑑み、まず相違点B2-2について検討する。
甲B2実施例20発明には25%圧縮強度についての記載がないし、また、甲B2実施例20発明の25%圧縮強度が「40kPa以下」であると推認することもできない。してみれば、相違点B2-2は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲B2実施例20発明ではない。
そして、甲B2号証には、25%圧縮強度について何ら記載も示唆もないから、甲B2実施例20発明において、25%圧縮強度を変更する動機付けもない。
なお、特許異議申立人Bは、要するに、甲B2号証に記載された「発泡体」の機械的特性からみて、25%圧縮強度も40kPaを超える蓋然性が高い旨主張するが、25%圧縮強度が40kPaを超えるものと推認する具体的な根拠もないから、当該主張は採用できない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B2実施例20発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲B2実施例10発明、甲B2実施例21発明、甲B2実施例24発明、甲B2実施例25発明、甲B2比較例13発明ないし甲B2比較例15発明についても、甲B2実施例20発明と同様に判断される。
以下、甲B2実施例10発明、甲B2実施例20発明、甲B2実施例21発明、甲B2実施例24発明、甲B2実施例25発明及び甲B2比較例13発明ないし甲B2比較例15発明を総称し、「甲B2発明」として検討を進める。
(イ) 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件発明1と甲B2発明は同一ではなく、甲B2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし8についても同様に、甲B2発明と同一ではなく、甲B2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 取消理由1-8及び取消理由2-8についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由1-8及び取消理由2-8は、その理由がない。
(9) 取消理由1-9(甲B3号証を根拠とする新規性)及び取消理由2-9(甲B3号証を主引例とする進歩性)について
ア 甲B3号証に記載された発明
甲B3号証の記載、特に実施例1、3及び比較例の記載を中心に整理すると、甲B3号証には次の発明が記載されていると認める。
「密度0.905g/cm3及びMI 10g/minの超低密度ポリエチレンVLDPE(住友化学製のエクセレン VL 700)100重量部、水酸化アルミニウム微粉末(昭和軽金属製のハイジライト H-42M)50重量部、アゾジカルボンアミド25重量部、デカブロムジフェニルエーテル20重量部、三酸化アンチモン5重量部及びフェノール系抗酸化剤1重量部から成る組成物を、100~125℃に温度調節されたミキシングロールで混練し、120℃で厚さ1.5mmのシートにプレス成形し、このシートを電子線加速機を用いて吸収線量が5Mradになるように照射し、次いで、このシートを230℃に温度調節された熱風乾燥機に入れて発泡させ得られた、厚み5.51mm、発泡体の密度0.031g/cm3の発泡体シート。」(以下、「甲B3実施例1発明」という。)
「密度0.905g/cm3及びMI 10g/minの超低密度ポリエチレンVLDPE(住友化学製のエクセレン VL 700)100重量部、水酸化アルミニウム微粉末(昭和軽金属製のハイジライト H-42M)80重量部、アゾジカルボンアミド25重量部、デカブロムジフェニルエーテル20重量部、三酸化アンチモン5重量部及びフェノール系抗酸化剤1重量部から成る組成物を、100~125℃に温度調節されたミキシングロールで混練し、120℃で厚さ1.5mmのシートにプレス成形し、このシートを電子線加速機を用いて吸収線量が5Mradになるように照射し、次いで、このシートを230℃に温度調節された熱風乾燥機に入れて発泡させ得られた、厚み4.2mm、発泡体の密度0.035g/cm3の発泡体シート。」(以下、「甲B3実施例3発明」という。)
「エチレン-酢酸ビニル共重合体VEA(酢酸ビニルVA含量20%、三井ポリケミカル製のエバフレックス460)100重量部、水酸化アルミニウム微粉末(昭和軽金属製のハイジライト H-42M)80重量部、アゾジカルボンアミド25重量部、デカブロムジフェニルエーテル20重量部、三酸化アンチモン5重量部及びフェノール系抗酸化剤1重量部から成る組成物を、100~125℃に温度調節されたミキシングロールで混練し、120℃で厚さ1.5mmのシートにプレス成形し、このシートを電子線加速機を用いて吸収線量が5Mradになるように照射し、次いで、このシートを230℃に温度調節された熱風乾燥機に入れて発泡させ得られた、厚み4.2mm、発泡体の密度0.035g/cm3の発泡体シート。」(以下、「甲B3比較例発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲B3実施例1発明とを対比する。
甲B3実施例1発明の「発泡体シート」は、「超低密度ポリエチレン」を原料とし、作製されたものであるから、本件発明1の「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」に相当する。
そして、甲B3実施例1発明の発泡体シートはその性状が、厚み5.51mm、発泡体の密度0.031g/cm3であるから、見かけ密度は31kg/m3であり、面密度は31×1000g×0.00551m≒170.8g/m2と算出され、本件発明1の「面密度が5g/m2以上400g/m2以下」であり、「見かけ密度が40kg/m3以下」であるとの特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「面密度が5g/m2以上400g/m2以下であり、見かけ密度が40kg/m3以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡体シー ト。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点B3-1)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「測定温度200~550℃を全測定温度領域とした熱重量-質量分析において、以下の条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満足する」と特定されるところ、甲B3実施例1発明にはそのような特定がない点。
(相違点B3-2)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く」と特定されるのに対し、甲B3実施例1発明にはそのような特定はない点。
事案に鑑み、まず相違点B3-2について検討する。
甲B3実施例1発明には25%圧縮強度についての記載がないし、また、甲B3実施例1発明の25%圧縮強度が「40kPa以下」であると推認することもできない。してみれば、相違点B3-2は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲B3実施例1発明ではない。
そして、甲B3号証には、25%圧縮強度について何ら記載も示唆もないから、甲B3実施例1発明において、25%圧縮強度を変更する動機付けもない。
なお、特許異議申立人Bは、要するに、甲B3号証に記載された「発泡体シート」は強度を維持したものであって、かつ、25%圧縮強度が40kPaを超えるものは、本件優先日において普通に知られたものであるから、甲B3実施例1発明において、25%圧縮強度も40kPaを超えるものとする、すなわち、相違点B3-2に係る本件発明1の特定事項を満たすものとすることは当業者にとって容易になし得ることである旨主張するが、上記検討のとおり、甲B3号証には25%圧縮強度に着目することを示唆する記載もないから、当該主張は採用できない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B3実施例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲B3実施例3発明、甲B3比較例発明についても、甲B3実施例1発明と同様に判断される。
以下、甲B3実施例1発明、甲B3実施例3発明及び甲B2比較例発明を総称し、「甲B3発明」として検討を進める。
(イ) 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件発明1と甲B3発明は同一ではなく、甲B3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし8についても同様に、甲B3発明と同一ではなく、甲B3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 取消理由1-9及び取消理由2-9についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由1-9及び取消理由2-9は、その理由がない。
(10) 取消理由1-10(甲B4号証を根拠とする新規性)及び取消理由2-10(甲B4号証を主引例とする進歩性)について
ア 甲B4号証に記載された発明
甲B4号証の記載、特に実施例12の記載を中心に整理すると、甲B4号証には次の発明が記載されていると認める。
「ポリプロピレン系樹脂(MI=0.5、mp=150℃、ランダム)70重量部、ポリエチレン系樹脂(MI=2.0、mp=120℃、密度=0.920g/cm3)30重量部、ジビニルベンゼン3重量部、アゾジカルボンアミド10重量部、難燃剤として、エチレンビスペンタブロモジフェニル10重量部、及び三酸化アンチモン2.5重量部を均一に混合し、直径100mmφ、L/D=21の異方向2軸押出機を用いて、樹脂温度180℃で押し出してシートを得、このシートに3Mradの電子線を照射して架橋させた後、290℃の熱風オーブン中に入れて発泡させ得られた、厚み2.5mm、発泡倍率25倍の発泡体。」
(以下、「甲B4実施例12発明」という。)
なお、実施例1ないし9についてもそれぞれ、実施例12と同様に、「甲B4実施例1発明」ないし「甲B4実施例9発明」が記載されていると認める。
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲B4実施例12発明とを対比する。
甲B4実施例12発明の「発泡体」は、「ポリプロピレン系樹脂」と「ポリエチレン系樹脂」を原料とし、シートに成形し、加熱発泡させることで作製されたものであるから、本件発明1の「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」に相当する。
してみると、両者は、「ポリオレフィン系樹脂発泡シート」で一致し、次の点で相違する。
(相違点B4-1)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「面密度が5g/m2以上400g/m2以下であり、見かけ密度が40kg/m3以下」である旨特定されるところ、甲B4実施例12発明にはそのような特定がない点。
(相違点B4-2)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「測定温度200~550℃を全測定温度領域とした熱重量-質量分析において、以下の条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満足する」と特定されるところ、甲B4実施例12発明にはそのような特定がない点。
(相違点B4-3)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く」と特定されるのに対し、甲B4実施例12発明にはそのような特定はない点。
事案に鑑み、まず相違点B4-3について検討する。
甲B4実施例12発明には25%圧縮強度についての記載がないし、また、甲B4実施例12発明の25%圧縮強度が「40kPa以下」であると推認することもできない。してみれば、相違点B4-3は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲B4実施例12発明ではない。
そして、甲B4号証には、25%圧縮強度について何ら記載も示唆もないから、甲B4実施例12発明において、25%圧縮強度を変更する動機付けもない。
なお、特許異議申立人Bは、要するに、25%圧縮強度が40kPaを超えるものは、本件優先日において普通に知られたものであるから、甲B4実施例12発明において、25%圧縮強度も40kPaを超えるものとする、すなわち、相違点B4-3に係る本件発明1の特定事項を満たすものとすることは当業者にとって容易になし得ることである旨主張するが、上記検討のとおり、甲B4号証には25%圧縮強度に着目することを示唆する記載もないから、当該主張は採用できない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B4実施例12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲B4実施例1発明ないし甲B4実施例9発明についても、甲B4実施例12発明と同様である。
以下、甲B4実施例1発明ないし甲B4実施例9発明及び甲B4実施例12発明を総称し、「甲B4発明」として検討を進める。
(イ) 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件発明1と甲B4発明は同一ではなく、甲B4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし8についても同様に、甲B4発明と同一ではなく、甲B4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 取消理由1-10及び取消理由2-10についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由1-10及び取消理由2-10は、その理由がない。
(11) 取消理由1-11(甲B5号証を根拠とする新規性)及び取消理由2-11(甲B5号証を主引例とする進歩性)について
ア 甲B5号証に記載された発明
甲B5号証の記載、特に実施例1の記載を中心に整理すると、甲B10号証には次の発明が記載されていると認める。
「ポリプロピレン樹脂(MI:2.8、融点:150℃)80重量部、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(MI:3.0、密度:0.930)20重量部、架橋助剤として1、9-ノナンジオールジメタクリレート2.0重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1.0重量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド12重量部、さらに酸化防止剤として2.6―ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.3重量部、ジラウリルチオプロピオネート0.3重量部、金属害防止剤としてメチルベンゾトリアゾール0.5重量部、難燃剤として1、2-ビス(ペンタブロモフェニル)エタン1.67重量部、平均粒子径0.5μmの三酸化アンチモン0.33重量部を、2軸押出機を用いて、190℃で溶融混練押出し厚さ1.3mmの連続シートを得、得られたシートに加速電圧700kvで電子線を2.0Mrad照射して架橋させ、さらに、その連続シートを熱風及び赤外線ヒーターを備えた縦型発泡熱風発泡炉で250℃に加熱し連続的に発泡させて得られた、厚み2.52mmの発泡体。」(以下、「甲B5実施例1発明」という。)
なお、実施例2ないし6についてもそれぞれ、実施例1と同様に、「甲B5実施例2発明」ないし「甲B5実施例6発明」が記載されていると認める。
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲B5実施例1発明とを対比する。
甲B5実施例1発明の「発泡体」は、「ポリプロピレン樹脂」と「ポリエチレン樹脂」を原料とし、シートに成形し、加熱発泡させることで作製されたものであるから、本件発明1の「ポリオレフィン系樹脂発泡体シート」に相当する。
してみると、両者は、「ポリオレフィン系樹脂発泡シート」で一致し、次の点で相違する。
(相違点B5-1)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「面密度が5g/m2以上400g/m2以下であり、見かけ密度が40kg/m3以下」である旨特定されるところ、甲B5実施例1発明にはそのような特定がない点。
(相違点B5-2)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「測定温度200~550℃を全測定温度領域とした熱重量-質量分析において、以下の条件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満足する」と特定されるところ、甲B5実施例1発明にはそのような特定がない点。
(相違点B5-3)
本件発明1のポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、「但し、25%圧縮強度が、40kPa以下であるものを除く」と特定されるのに対し、甲B5実施例1発明にはそのような特定はない点。
事案に鑑み、まず相違点B5-3について検討する。
甲B5実施例1発明には25%圧縮強度についての記載がないし、また、甲B5実施例1発明の25%圧縮強度が「40kPa以下」であると推認することもできない。してみれば、相違点B5-3は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲B5実施例1発明ではない。
そして、甲B5号証には、25%圧縮強度について何ら記載も示唆もないから、甲B5実施例1発明において、25%圧縮強度を変更する動機付けもない。
なお、特許異議申立人Bは、要するに、甲B5号証の実施例におけるアゾジカルボンアミドの配合量を、甲B5号証の【0014】の記載にしたがって20重量部にすれば、本件の実施例と酷似するものとなるものであって、かつ、本件の実施例・比較例は25%圧縮強度が40kPaを超えているのであるから、甲B5号証に記載された発明も、25%圧縮強度が40kPaを超えるものを含む蓋然性が高い旨主張する。
しかしながら、上記検討のとおり、甲B5号証には、そもそも25%圧縮強度に着目することを示唆する記載もないし、仮に甲B5号証の実施例においてアゾジカルボンアミドの配合量を20重量部としても、本件特許の明細書の実施例として記載されたものと全く同じになるわけでもないため、当該主張は採用できない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B5実施例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、甲B5実施例2発明ないし甲B5実施例6発明についても、甲B5実施例1発明と同様に判断される。
以下、甲B5実施例1発明ないし甲B5実施例6発明を総称し、「甲B5発明」として検討を進める。
(イ) 本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件発明1と甲B5発明は同一ではなく、甲B5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の全ての特定事項を含む本件発明2ないし8についても同様に、甲B5発明と同一ではなく、甲B5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 取消理由1-11及び取消理由2-11についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由1-11及び取消理由2-11は、その理由がない。
(12) 取消理由3(明確性要件)について
本件特許の明細書の【0064】には、
「<熱重量-質量分析>
各実施例及び比較例の発泡体シートを試料として、熱重量-質量分析(TG-MS分析)を以下のとおり行い、燃焼ガス発生比率X及び燃焼ガス発生比率Yを求めた。上記以外の測定条件は、以下のとおりとした。
(条件)
装置:NETZSCH社製のSTA449F1及びQMS403
試料:25mg
TG測定条件:40℃で試料室を真空脱気させた後、再度エアー(He/O2=4/1 体積比)で常圧まで戻してから50ml/minで試料室に導入しながら10℃/minの昇温速度で550℃まで昇温させて、550℃で10分間保持した。
MS測定:SCANモード
トランスファーライン温度:280℃
インレットシステム温度:250℃
上記の条件で測定して得られたデータの解析をNETZSCH社製「Proteus Thermal Analysis」を使用し実施した。燃焼ガス発生比率を求めるため、横軸を温度、第一縦軸(または右縦軸)をTG/%、第二縦軸(または左縦軸)をイオン強度としてグラフを記載した。質量電荷比m/zが55または69をグラフに記載した際の200℃から550℃までの全ピーク面積に対する温度200℃から364℃までのピーク面積の比から燃焼ガス発生比率を算出した。ベースラインタイプは200℃から364℃までのピーク面積を求める際は左起点正接を用い、200℃から550℃までの全ピーク面積値の際は直線を用いた。」
と記載されている。
ここで、熱重量-質量分析に用いられている装置である「NETZSCH社製のSTA449F1及びQMS403」について、特許権者が意見書とともに提出した参考資料1及び2によると、「EI法」すなわち電子衝撃イオン源を用いた方法で測定する機器であるとされる。
してみれば、本件特許の質量分析のイオン化方法が「EI法」であると当業者は認識できる。
なお、特許異議申立人Bは意見書において、本件特許の明細書に「EI法」の記載がないことなどをあげつつ縷々主張するが、上述のとおり、本件特許の明細書には、用いる装置が明確に記載されており、かつ、当該装置のイオン化方法が自ずと導かれるものであるから、特許異議申立人Bの主張は上記判断に影響を与えない。
よって、取消理由3は、その理由がない。
2 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、申立理由B3、B4及びB5-2であるので、以下順に検討する。
(1) 申立理由B3及びB4について
特許異議申立人Bは、要するに、甲B11号証、甲B12号証、甲B13号証を参照しつつ、本件明細書の実施例のデータに疑義があるから、本件発明1ないし8は、実施可能要件を満たさないものであるし、サポート要件を満たすものではない旨主張する。
しかしながら、本件特許の明細書には、本件発明1ないし8について、発泡体シートを構成する材料についての記載(【0022】ないし【0051】、発泡体シートの製造方法についての記載(【0052】ないし【0057】)、測定方法についての記載(【0062】ないし【0068】)があり、具体的な実施例についての記載もあるから、これらの記載をもとに、本件発明1ないし8を実施できないとはいえない。
また、本件発明は、「軽量性を維持しつつ、高い難燃性を有するポリオレフィン系樹脂発泡体シートを提供すること」(【0005】)を課題とするものであるところ、本件特許の明細書の【0010】ないし【0018】や実施例の記載から見て、特定の面密度、特定の見かけ密度、特定の熱重量-質量分析における条件をともに満たすことで、本件発明の課題を解決するものであると理解することができる。
そして、本件発明1ないし8は、上述の特定の面密度、特定の見かけ密度、特定の熱重量-質量分析における条件をともに満たすものであるから、本件発明の課題を解決するものであると認識できるから、本件発明1ないし8はサポート要件を満たすものといえる。
特許異議申立人Bの上記主張は、上記判断に何ら影響しない。
よって、申立理由B3及びB4はいずれも、その理由がない。
(2) 申立理由B5-2について
本件発明1には「質量電荷比m/zが55の燃焼ガスP」及び「質量電荷比m/zが69の燃焼ガスQ」との特定事項があるが、「質量電荷比m/zが55の燃焼ガスP」及び「質量電荷比m/zが69の燃焼ガスQ」はそれぞれ「燃焼ガス」であることを特定するにすぎず、それぞれの「燃焼ガス」の由来を問うものではないことは明らかである。
よって、申立理由5-2の理由により、本件発明1が明確ではないということはできない。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件発明2ないし8についても同様である。
以上のとおりであるから、申立理由5-2には、その理由がない。
第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立人Aが特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び特許異議申立人Bが特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700868