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特許異議申立

2023-700707

組成物及びその製造方法並びに界面活性剤

審判番号
2023-700707
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-215133
登録番号
7202440
請求日
2023年07月11日
審決日
2024年03月07日
公報発行日
2024年06月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】第一工業製薬株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
  • 【異議申立人】神谷 高伸
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 中村 和正
  • 審判官 淺野 美奈
分類
P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7202440号発明「組成物及びその製造方法並びに界面活性剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7202440号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕、7及び8について訂正することを認める。 特許第7202440号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7202440号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、令和3年12月28日を出願日とする特許出願であって、令和4年12月27日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、令和5年1月11日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月11日に特許異議申立人 神谷 高伸(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年10月2日付けで取消理由が通知され、同年12月1日に特許権者 第一工業製薬株式会社(以下「特許権者」という。)より訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされるとともに意見書が提出され、同年同月25日に訂正請求書の手続補正書が提出され、令和6年1月12日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知がされ、同年2月19日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨 本件訂正請求における請求の趣旨は、「特許第7202440号の特許請求の範囲を本請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。) ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「カンナビノイドと、ショ糖脂肪酸エステルとを含み、 前記ショ糖脂肪酸エステルは、平均エステル化度が1.00~1.15である、組成物。」と記載されているのを、「カンナビノイドと、ショ糖脂肪酸エステルとを含み、 前記ショ糖脂肪酸エステルは、平均エステル化度が1.01~1.15である、組成物。」に訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び4ないし6についても同様に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に「前記溶媒が水性溶媒である、請求項2に記載の組成物。」と記載されているのを、「カンナビノイドと、ショ糖脂肪酸エステルと溶媒とを含み、 前記ショ糖脂肪酸エステルは、平均エステル化度が1.00~1.15である組成物であって、 前記溶媒が水とエタノールを含む水性溶媒であり、 エタノールの含有割合はカンナビノイドの全質量100質量部に対し、100質量部以上である、組成物。」に訂正する。 請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項5及び6についても同様に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7に「カンナビノイド分散用界面活性剤であって、 平均エステル化度が1.00~1.15であるショ糖脂肪酸エステルを含む、カンナビノイド分散用界面活性剤。」と記載されているのを、「カンナビノイド分散用界面活性剤であって、 平均エステル化度が1.01~1.15であるショ糖脂肪酸エステルを含む、カンナビノイド分散用界面活性剤。」に訂正する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項8に「カンナビノイドと、ショ糖脂肪酸エステルとを含む組成物の製造方法であって、 カンナビノイドと、平均エステル化度が1.00~1.15であるショ糖脂肪酸エステルとを混合する工程を備える、組成物の製造方法。」と記載されているのを、「カンナビノイドと、ショ糖脂肪酸エステルとを含む組成物の製造方法であって、 カンナビノイドと、平均エステル化度が1.00~1.15であるショ糖脂肪酸エステルと、エタノールとを混合する工程を備え、 得られる組成物のエタノールの含有割合はカンナビノイドの全質量100質重部に対し、100質量部以上である、組成物の製造方法。」に訂正する。 オ 一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし6について、請求項2ないし6はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものである。 したがって、訂正前の請求項1ないし6に対応する訂正後の請求項1ないし6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項1の訂正は、ショ糖脂肪酸エステルの平均エステル化度を「1.00~1.15」から「1.01~1.15」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1の訂正は、本件特許の明細書の【0019】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び4ないし6についても同様である。 イ 訂正事項2について 訂正事項2に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用するものであったところ、請求項1を引用しないものとした上で、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改め、さらに水性溶媒の種類と該水性溶媒に含まれるエタノールの含有割合を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項2の訂正は、本件特許の明細書の【0039】及び【0042】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項5及び6についても同様である。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3に係る請求項7の訂正は、ショ糖脂肪酸エステルの平均エステル化度を「1.00~1.15」から「1.01~1.15」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3の訂正は、本件特許の明細書の【0019】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 エ 訂正事項4について 訂正事項4に係る請求項8の訂正は、「混合する工程」において、エタノールを使用することを特定し、かつ、得られる組成物中のエタノールの含有割合を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項4の訂正は、本件特許の明細書の【0039】及び【0064】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 (3)訂正についてのまとめ 上記(2)のとおり、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕、7及び8について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕、7及び8について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明8」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、令和5年12月1日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 カンナビノイドと、ショ糖脂肪酸エステルとを含み、 前記ショ糖脂肪酸エステルは、平均エステル化度が1.01~1.15である、組成物。 【請求項2】 さらに溶媒を含む、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 カンナビノイドと、ショ糖脂肪酸エステルと溶媒とを含み、 前記ショ糖脂肪酸エステルは、平均エステル化度が1.00~1.15である組成物であって、 前記溶媒が水とエタノールを含む水性溶媒であり、 エタノールの含有割合はカンナビノイドの全質量100質量部に対し、100質量部以上である、組成物。 【請求項4】 粉末状である、請求項1に記載の組成物。 【請求項5】 前記カンナビノイドがカンナビジオールを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項6】 食品用、化粧用、飼料用、又は、医薬用である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項7】 カンナビノイド分散用界面活性剤であって、 平均エステル化度が1.01~1.15であるショ糖脂肪酸エステルを含む、カンナビノイド分散用界面活性剤。 【請求項8】 カンナビノイドと、ショ糖脂肪酸エステルとを含む組成物の製造方法であって、 カンナビノイドと、平均エステル化度が1.00~1.15であるショ糖脂肪酸エステルと、エタノールとを混合する工程を備え、 得られる組成物のエタノールの含有割合はカンナビノイドの全質量100質量部に対し、100質量部以上である、組成物の製造方法。」 第4 取消理由の概要 当審が令和5年10月2日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。 取消理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし3及び5ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和5年7月11日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし3及び5ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許発明1ないし8においては、文言上、「平均エステル化度が1.00~1.15のショ糖脂肪酸エステル」を含んでいればよく、これ以外の乳化剤や乳化状態に影響するポリオール、単糖、短鎖から中鎖アルコールを含有する態様も含まれているが、本件特許明細書の実施例において、本件特許発明の効果が示されているのは、乳化剤として「平均エステル化度が1.00~1.15のショ糖脂肪酸エステル」のみ又はこれと親水性乳化剤を併用し、かつエタノールを含有する態様のみであり、「平均エステル化度が1.00~1.15のショ糖脂肪酸エステル」と親油性乳化剤を併用する態様や、エタノールを含有していない態様、エタノールに代えてこれ以外の短鎖から中鎖アルコールを含有している態様、ポリオールや単糖を含有している態様については、本件特許発明の効果が奏されるのか、本件特許明細書の記載からは当業者でも理解できない。 よって、本件特許発明の効果が奏されるのか不明である態様を含む本件特許発明1ないし8は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 3 申立理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許発明1ないし8においては、文言上、「平均エステル化度が1.00~1.15のショ糖脂肪酸エステル」を含んでいればよく、これ以外の乳化剤や乳化状態に影響するポリオール、単糖、短鎖から中鎖アルコールを含有する態様も含まれているが、本件特許明細書の実施例において、本件特許発明の効果が示されているのは、乳化剤として「平均エステル化度が1.00~1.15のショ糖脂肪酸エステル」のみ又はこれと親水性乳化剤を併用し、かつエタノールを含有する態様のみであり、「平均エステル化度が1.00~1.15のショ糖脂肪酸エステル」と親油性乳化剤を併用する態様や、エタノールを含有していない態様、エタノールに代えてこれ以外の短鎖から中鎖アルコールを含有している態様、ポリオールや単糖を含有している態様については、本件特許発明の効果が奏されるのか、本件特許明細書の記載からは当業者でも理解できない。 よって、本件特許明細書には、本件特許発明1ないし8の全範囲において当業者が実施できるように記載されていない。 4 証拠方法 甲第1号証:欧州特許出願公開第3871510号明細書及び抄訳文 甲第2号証:特開平8-205771号公報 甲第3号証:特開2004-208555号公報 甲第4号証:特開2011-92083号公報 甲第5号証:「食品添加物 DKエステル ショ糖脂肪酸エステル」、第一工業製薬株式会社(発行)、不明(1996年以前)、写し 甲第6号証:特開2008-301814号公報 なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。 第6 当審の判断 以下に述べるように、当審が令和5年10月2日付けで特許権者に通知した取消理由通知における取消理由1及び特許異議申立書に記載した申立理由1ないし3は、いずれも理由がないものと判断される。 なお、取消理由1は、申立理由1の一部であるという事情に鑑み、まず、取消理由1及び申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)について検討し、次いで、申立理由2(サポート要件)及び申立理由3(実施可能要件)について、順次検討する。 1 取消理由1及び申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)について (1)甲第1号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、「MEDIUM CHAIN TRIGLYCERIDE BASED OIL PHASE IN WATER MICROEMULSIONS」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲第1号証については該当箇所の抄訳のみを示し、抄訳は、特許異議申立書の記載をおおむね利用した。 ・「特許請求の範囲 1. a. 中鎖トリグリセリド(MCT)ベースの油相と b. 水溶化剤組成物と、 を含む水中油型マイクロエマルジョン: 前記水溶化剤組成物は、 c. 主な溶媒として水を使用し、 d. 主な乳化剤としてスクロースエステル、 e. スクロースエステルと組み合わせた共乳化剤としてのレシチン、 f. 水と組み合わせた共溶媒としてのポリオール、 g. 乳化エネルギー障壁低減剤としての単糖、および h. 安定剤としての短鎖から中鎖アルコール で特徴づけられており、 ここで 前記水溶解剤組成物は、MCTベースの油相と結合して、MCTベースの油相が水中に分散して、d90液滴サイズが10~100nmの範囲内である水中油型マイクロエマルジョンが提供される。 2. 前記MCTベースの油相が植物由来のフルスペクトルカンナビジオール(CBD)油を含む、請求項1に記載の水中油型マイクロエマルジョン。」(第9欄7~37行、請求項1及び2) ・「典型的なエマルジョン配合物は、活性成分、乳化剤/界面活性剤、安定剤を結合するキャリア油相、及びキャリア油相が分散/乳化される溶媒/連続相から構成される。所望の特性を有するエマルジョンの生成が成功するかどうかは、エマルジョン配合物を構成する化合物の選択と濃度に大きく依存する。さらに、エマルジョン配合物は、典型的には、組成がよく知られており制御可能な、1つの特定のキャリアオイル又はキャリアオイルタイプを乳化するように調整される。特定のキャリアオイル又はキャリアオイルタイプを乳化するように設計されたそのようなエマルジョン配合物は、設計されたものとは異なるキャリアオイル又はキャリアオイルタイプを乳化することは期待されない。例えば、特別に調整されたエマルジョン配合物を使用すると、乳化されるキャリア油相の組成がすでにわずかに変化しているだけで、安定性が低下したり、短期間安定したり、完全に不安定なエマルジョンが得られる可能性がある。水中油型エマルジョンを調製するためのエマルジョン配合物の開発は、困難な作業となる場合がある。」(第2欄11~31行、段落【0004】) ・「本発明は、以下を含む水中油型マイクロエマルジョンに関する。 a.中鎖トリグリセリド(MCT)ベースの油相と b.水溶化剤組成物。 ここで、水溶化剤組成物は、主溶媒としての水、主乳化剤としてのスクロースエステル、スクロースエステルと組み合わせた共乳化剤としてのレシチン、水と組み合わせた共溶媒としてのポリオール、乳化エネルギー障壁の低減剤としての単糖、および安定剤として短鎖から中鎖アルコールを含み、前記水溶性剤組成物は、MCTベースの油相と結合して、d90が10~100nmの範囲内の液滴サイズを提供するようにMCTベースの油相が水中に分散した水中油型マイクロエマルジョンが得られる。水は、水道水でも脱イオン水でもよい。」(第3欄19~38行、段落【0009】) ・「MCTベースの油相と関連して、非イオン性乳化剤の代表であるスクロースエステルが、液滴の熱力学的に不安定な油/水界面を安定化させるための主な乳化剤として使用され、長期安定したマイクロエマルジョンの形成を可能にする重要な要素となる。スクロースエステルは油/水界面に特異的に配置され、それによって界面の安定化を引き起こす。スクロースエステルは、例えば、スクロースパルミチン酸塩、スクロースモノパルミチン酸塩、スクロースラウリン酸塩、スクロースモノラウレート、スクロースオレイン酸塩、スクロースモノオレイン酸塩、スクロースミリスチン酸塩、スクロースモノミリスチン酸塩、スクロースステアレート、スクロースモノステアレート等がある。」(第4欄2~14行、段落【0010】) ・「組成物のさらなる成分はレシチンである。レシチンは、例えば、大豆又はヒマワリに由来し、スクロースエステルと相乗的に結合して油/水界面の安定性を高める。」(第4欄20~23行、段落【0011】) ・「マイクロエマルジョンの形成におけるさらなる要因は、ポリオール、例えばプロピレングリコール、グリセロールなどの、共溶媒としての使用である。共溶媒は主溶媒である水と一緒に作用し、それによってMCTベースの油相が分散するキャリア/溶媒液体/連続相を形成する。」(第4欄24~29行、段落【0012】) ・「組成物のさらなる成分は単糖である。単糖類は、例えば、フルクトース、グルコース、又は転化シロップの形態のフルクトースとグルコースの混合物であってもよい。長期安定なマイクロエマルジョンの形成におけるその役割は、エマルジョンの形成のために克服すべきエネルギー障壁を低減することに関係する。」(第4欄30~35行、段落【0013】) ・「組成物のさらなる成分は、短鎖から中鎖のアルコールである。短鎖から中鎖のアルコールは、例えば、ソルビトール、マルチトール、又はエタノールやn-ブタノール/ブチルアルコールなどのモノ-n-アルコールである。短鎖から中鎖のアルコールは安定剤として機能する。したがって、安定化は主に、水/溶媒液体/連続相の構造/組織/粘度、ひいてはその温度誘起凝固特性に影響を与えることに関係している。例えば、水/溶媒液体/連続相の凝集状態の変化によりエマルジョンが不安定になる可能性があるため、これは重要である。」(第4欄54行~第5欄6行、段落【0014】) ・「一実施形態によれば、MCTベースの油相は、植物由来のフルスペクトルカンナビジオール(CBD)油を含む。」(第5欄23~25行、段落【0016】) ・「有利な実施形態によれば、植物由来のフルスペクトルCBDオイルは、CDBオイルの総重量の1重量%未満のテトラヒドロカンナビオール(THC)と、CDBオイルの総重量の約10重量%~70重量%の総濃度のカンナビノイドとを含む。」(第6欄23~25行、段落【0025】) ・「本発明はさらに、本明細書に開示される水中油型マイクロエマルジョンを調製する方法であって、以下のステップを含む方法に関する。 a. 開示されたマイクロエマルジョンに含まれるMCTベースの油相を提供すること、 b. 35℃以下、特に25℃未満の温度で撹拌しながら、水、ポリオール、単糖、短鎖から中鎖のアルコール、及びスクロースエステルを容器内で混合することによって第1相を提供すること、 c. MCTベースの油相とレシチンを組み合わせて第2相を提供すること、 d. 第2相を第1相に混合し、撹拌を助けて透明なマイクロエマルジョンを形成すること。」(第7欄1~19行、段落【0029】) ・「本発明はさらに、本明細書に開示される水中油型マイクロエマルジョンを希釈形態で含む食品に関し、特に、希釈形態は、食品の総重量に対する食品中のスクロースエステルの総濃度が、最大約0.001%、最大約0.01%、最大約0.1%、最大約1%である、及び/又は、食品の総重量に対する食品中のCBDの総濃度が、最大約0.001%、最大約0.01%、最大約0.1%、最大約1重量%である。」(第7欄31~40行、段落【0031】) ・「図1は、本発明の一実施形態によるマイクロエマルジョンを形成する配合物を例として示す。「レモンフレーバー Rez2020」と「CITRAL」はアロマオイル、「CBDオイル」はカンナビノイドを含む植物由来のフルスペクトラムCBDオイル、「ブチルアルコールnat」は天然の短鎖アルコールであるn-ブタノール/ブチルアルコールである。通常、マイクロエマルジョンは単純な撹拌によって調製される。」(第8欄3~10行、段落【0034】) ・「 [図:0001411324000001.jpg] 」(第8ページ、図1) イ 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証に記載された事項を、特に段落【0034】及び図1に関して整理すると、甲第1号証には次の発明(以下、順に「甲1組成物発明」、「甲1乳化剤発明」、「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1組成物発明> 「カンナビノイドを含む植物由来のフルスペクトラムCBDオイルと、ブチルアルコールnatと、脱塩水と、ショ糖パルミチン酸モノエステル及びショ糖ラウリン酸モノエステルとを含む水中油型マイクロエマルジョン。」 <甲1乳化剤発明> 「ショ糖パルミチン酸モノエステル及びショ糖ラウリン酸モノエステルを含み、カンナビノイドを含む植物由来のフルスペクトラムCBDオイルと混合される乳化剤。」 <甲1製法発明> 「甲1組成物発明の製造方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1組成物発明を対比する。 甲1組成物発明における「水中油型マイクロエマルジョン」は、「カンナビノイド」及び「ショ糖パルミチン酸モノエステル及びショ糖ラウリン酸モノエステル」を含むことから、本件特許発明1における「カンナビノイドと、ショ糖エステルとを含」む「組成物」に相当する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「カンナビノイドと、ショ糖脂肪酸エステルとを含む、組成物。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 本件特許発明1においては、「前記ショ糖脂肪酸エステルは、平均エステル化度が1.01~1.15である」と特定されているのに対して、甲1組成物発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点1について検討する。 甲1組成物発明における「ショ糖パルミチン酸モノエステル及びショ糖ラウリン酸モノエステル」は、モノエステルであるから、平均エステル化度は1.00であると認められる。 したがって、相違点1は実質的な相違点であり、本件特許発明1は甲1組成物発明ではない。 また、甲第1号証及び他の証拠には、甲1組成物発明において相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。 してみると、甲1組成物発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明1の奏する「カンナビノイドを溶媒に容易に分散させることができ、また、溶媒へ分散させても着色が起こりにくく、しかも、高温状態であってもカンナビノイドの溶媒への分散安定性を高めることができる」(本件特許明細書の【0009】)という効果は、甲1組成物発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、令和6年2月19日に提出された意見書において、「甲1組成物発明において、「ショ糖パルミチン酸モノエステル及びショ糖ラウリン酸モノエステル」に代えて、甲第1号証に記載されている「スクロースモノステアレート(ショ糖ステアリン酸モノエステル」を用いること、さらにその際に、汎用されている市販品「DKエステルSS」(モノエステル純度95%のショ糖ステアリン酸エステル)を用いることは、当業者にとって容易になし得ることである」と主張するが、甲第1ないし6号証のいずれにも、甲1組成物発明において、「DKエステルSS」を用いることの動機付けとなる記載はないし、そのようにした場合に、本件特許発明1の上記効果が得られることを予測させる記載もない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は、甲1組成物発明であるとはいえないし、甲1組成物発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2及び4について 本件特許発明2及び4は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1組成物発明であるとはいえないし、甲1組成物発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と甲1組成物発明を対比する。 甲1組成物発明における「水中油型マイクロエマルジョン」は、「カンナビノイド」、「脱塩水」及び「ショ糖パルミチン酸モノエステル及びショ糖ラウリン酸モノエステル」を含むことから、本件特許発明3における「カンナビノイドと、ショ糖脂肪酸エステルと溶媒とを含み、」「前記溶媒が水」「を含む水性溶媒であ」る「組成物」に相当する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「カンナビノイドと、ショ糖脂肪酸エステルと溶媒とを含み、 前記溶媒が水を含む水性溶媒である、組成物。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点2> 本件特許発明3においては、「前記ショ糖脂肪酸エステルは、平均エステル化度が1.00~1.15である」と特定されているのに対して、甲1組成物発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点3> 本件特許発明3においては、水性溶媒が「エタノール」を含み、「エタノールの含有割合はカンナビノイドの全質量100質量部に対し、100質量部以上である」と特定されているのに対して、甲1組成物発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑みて、相違点3について検討する。 甲1組成物発明は、エタノールを含まない。 したがって、相違点3は実質的な相違点であり、本件特許発明3は甲1組成物発明ではない。 また、甲第1号証及び他の証拠には、甲1組成物発明において相違点3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。 してみると、甲1組成物発明において、相違点3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明3の奏する「カンナビノイドを溶媒に容易に分散させることができ、また、溶媒へ分散させても着色が起こりにくく、しかも、高温状態であってもカンナビノイドの溶媒への分散安定性を高めることができる」という効果は、甲1組成物発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明3の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、令和6年2月19日に提出された意見書において、「甲1組成物発明において、ブチルアルコールに代えてエタノールを使用することは、容易になし得ることであるし、その際に配合するエタノールの量を調整することは、当業者が通常行う設計事項に過ぎない」と主張するが、甲第1ないし6号証のいずれにも、甲1組成物発明において、エタノールを使用しその含有割合を「カンナビノイドの全質量100質量部に対し、100質量部以上」とすることの動機付けとなる記載はない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲1組成物発明であるとはいえないし、甲1組成物発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件特許発明5及び6について 本件特許発明5及び6は、請求項1又は3を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1又は3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は3と同様に、甲1組成物発明であるとはいえないし、甲1組成物発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)本件特許発明7について 本件特許発明7と甲1乳化剤発明を対比すると、上記(1)と同様なことがいえるから、本件特許発明7は、甲1乳化剤発明であるとはいえないし、甲1乳化剤発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (7)本件特許発明8について 本件特許発明8と甲1製法発明を対比すると、上記(4)と同様なことがいえるから、本件特許発明8は、甲1製法発明であるとはいえないし、甲1製法発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (8)取消理由1及び申立理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1及び申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)サポート要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 本件特許の発明の詳細な説明の【0006】によると、本件特許発明1ないし8の解決しようとする課題(以下「発明の課題」という。)は、「カンナビノイドを溶媒に容易に分散させることができると共に溶媒へ分散させても着色が起こりにくく、しかも、高温状態であってもカンナビノイドの溶媒への分散安定性を高めることができる組成物及びその製造方法並びに界面活性剤を提供すること」である。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0012】、【0014】、【0019】、【0039】、【0042】、【0046】、【0051】、【0056】、【0064】には、本件特許発明1ないし8に対応する記載がある。 さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0068】ないし【0098】には本件特許発明の実施形態について説明があり、【0009】には本件特許発明による発明の効果が記載されている。 そうすると、当業者は、本件特許発明1ないし8の構成を備えることにより、発明の課題を解決できると認識できる。 したがって、本件特許発明1ないし8は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし8に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 なお、特許異議申立人は、上記第5 2のとおり主張するが、本件特許発明1ないし8がサポート要件を満たすことは上記検討のとおりであって、特許異議申立人の主張の当否はこのような判断を何ら左右しない。 (3)申立理由2(サポート要件)についてのむすび 本件特許発明1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。 3 申立理由3(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 上記第3のとおり、本件特許発明1ないし7は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 本件特許発明8は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用し、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。 そこで検討する。 (2)実施可能要件の判断 発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし8の各発明特定事項について具体的に記載され、本件特許発明1ないし8の実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。 したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし7を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明8を使用し、本件特許発明8により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえる。 よって、本件特許発明1ないし8に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。 なお、特許異議申立人は、上記第5 3のとおり主張するが、本件特許発明1ないし8が実施可能要件を満たすのは上記検討のとおりであって、特許異議申立人の主張の当否はこのような判断を何ら左右しない。 (3)申立理由3(実施可能要件)についてのむすび 本件特許発明1ないし8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。 第7 結語 以上のとおり、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700707

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