特許異議申立
2023-700703
照明制御システム
- 審判番号
- 2023-700703
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-047685
- 登録番号
- 7200768
- 請求日
- 2023年07月10日
- 審決日
- 2024年06月13日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
- 【権利者】三菱電機照明株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
- 【異議申立人】笠原 ケイ子
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 則夫
- 審判官 澤崎 雅彦
- 審判官 横溝 顕範
- 分類
- P1652.111-YAA(H05B) / P1652.113-YAA(H05B) / P1652.121-YAA(H05B) / P1652.537-YAA(H05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7200768号発明「照明制御システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7200768号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4~9〕について訂正することを認める。
特許第7200768号の請求項1~6、8、9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7200768号の請求項1~9に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成31年3月14日に出願され、令和4年12月26日にその特許権の設定登録がされ、令和5年1月10日に特許掲載公報が発行された。
本件特許についての特許異議申立人笠原ケイ子(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 7月10日 特許異議の申立て(請求項1~9)
同年 8月 3日 一部異議の取下げ(取下げに係る請求項 請
求項7)
同年10月19日付け 取消理由通知
同年12月25日差出 特許権者より意見書・訂正請求書
なお、申立人は、訂正請求があった旨の通知に対し、その指定期間内に意見書の提出をしなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年12月25日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(4)のとおりである(下線は、訂正箇所を示すため、当審で付与したものである。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「前記通信機器は、少なくとも1つの設定情報が記憶された第2メモリを有し、前記少なくとも1つの設定情報のうち前記ネットワーク端末の通信プロトコルに対応する前記第2設定情報を前記コントローラに送信する」
との記載を、
「前記通信機器は、複数の設定情報が記憶された第2メモリを有し、前記複数の設定情報のうち前記ネットワーク端末の通信プロトコルに対応する前記第2設定情報を前記コントローラに送信する」
に訂正する。
請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4、8、9も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5の
「前記コントローラは、前記照明器具についての情報を前記通信機器に送信し、
前記通信機器は、前記照明器具についての情報に応じて前記設定指令を前記コントローラに送信する」
との記載を、
「前記コントローラは、前記照明器具についての情報を前記通信機器に送信し、
前記ネットワーク端末は、前記照明器具の消費電力が規定値よりも大きい場合に、前記設定指令を送信し、
前記通信機器は、前記照明器具についての情報に応じて前記設定指令を前記コントローラに送信する」に訂正する。
請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6、8、9も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7の
「前記第2設定情報は、シーン番号と、前記シーン番号に対応する調光指令値と、を含み、
前記設定指令は、前記シーン番号を含み、
前記コントローラは、前記設定指令を受信すると前記シーン番号に対応する前記調光指令値に基づき前記照明器具を制御することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の照明制御システム。」
との記載を、
「照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、前記第1設定情報に基づき前記照明器具を制御し、前記照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると前記第2設定情報を前記第1メモリに記憶するコントローラと、
前記第2設定情報を前記コントローラに送信する通信機器と、
を備え、
前記通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から前記第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、前記設定指令を前記コントローラに送信し、
前記コントローラは、前記設定指令を受信すると前記第1設定情報に基づいた制御を前記第2設定情報に基づいた制御に切り替え、
前記通信機器は、少なくとも1つの設定情報が記憶された第2メモリを有し、前記少なくとも1つの設定情報のうち前記ネットワーク端末の通信プロトコルに対応する前記第2設定情報を前記コントローラに送信し、
前記第2設定情報は、シーン番号と、前記シーン番号に対応する調光指令値と、を含み、
前記設定指令は、前記シーン番号を含み、
前記コントローラは、前記設定指令を受信すると前記シーン番号に対応する前記調光指令値に基づき前記照明器具を制御することを特徴とする照明制御システム。」
に訂正する。
請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、9も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0006】の
「第1の開示に係る照明制御システムは、照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御し、該照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると該第2設定情報を該第1メモリに記憶するコントローラと、該第2設定情報を該コントローラに送信する通信機器と、を備え、該通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から該第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、該設定指令を該コントローラに送信し、該コントローラは、該設定指令を受信すると該第1設定情報に基づいた制御を該第2設定情報に基づいた制御に切り替え、該通信機器は、少なくとも1つの設定情報が記憶された第2メモリを有し、該少なくとも1つの設定情報のうち該ネットワーク端末の通信プロトコルに対応する該第2設定情報を該コントローラに送信する。
第2の開示に係る照明制御システムは、照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御し、該照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると該第2設定情報を該第1メモリに記憶するコントローラと、該第2設定情報を該コントローラに送信する通信機器と、を備え、該通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から該第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、該設定指令を該コントローラに送信し、該コントローラは、該設定指令を受信すると該第1設定情報に基づいた制御を該第2設定情報に基づいた制御に切り替え、該設定指令には制御時間情報が含まれ、該コントローラは、該設定指令を受信すると該制御時間情報に対応する時間だけ該第2設定情報に基づいて該照明器具を制御した後、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御する。
第3の開示に係る照明制御システムは、照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御し、該照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると該第2設定情報を該第1メモリに記憶するコントローラと、該第2設定情報を該コントローラに送信する通信機器と、を備え、該通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から該第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、該設定指令を該コントローラに送信し、該コントローラは、該設定指令を受信すると該第1設定情報に基づいた制御を該第2設定情報に基づいた制御に切り替え、該通信機器は、該ネットワーク端末またはリモコン設定器から解除指令を受信すると、該解除指令を該コントローラに送信し、該コントローラは、該解除指令を受信すると、該第2設定情報に基づいた制御を終了し、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御する。
第4の開示に係る照明制御システムは、照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御し、該照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると該第2設定情報を該第1メモリに記憶するコントローラと、該第2設定情報を該コントローラに送信する通信機器と、を備え、該通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から該第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、該設定指令を該コントローラに送信し、該コントローラは、該設定指令を受信すると該第1設定情報に基づいた制御を該第2設定情報に基づいた制御に切り替え、該コントローラは、該照明器具についての情報を該通信機器に送信し、該通信機器は、該照明器具についての情報に応じて該設定指令を該コントローラに送信する。」
との記載を、
「第1の開示に係る照明制御システムは、照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御し、該照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると該第2設定情報を該第1メモリに記憶するコントローラと、該第2設定情報を該コントローラに送信する通信機器と、を備え、該通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から該第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、該設定指令を該コントローラに送信し、該コントローラは、該設定指令を受信すると該第1設定情報に基づいた制御を該第2設定情報に基づいた制御に切り替え、該通信機器は、複数の設定情報が記憶された第2メモリを有し、該複数の設定情報のうち該ネットワーク端末の通信プロトコルに対応する該第2設定情報を該コントローラに送信する。
第2の開示に係る照明制御システムは、照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御し、該照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると該第2設定情報を該第1メモリに記憶するコントローラと、該第2設定情報を該コントローラに送信する通信機器と、を備え、該通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から該第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、該設定指令を該コントローラに送信し、該コントローラは、該設定指令を受信すると該第1設定情報に基づいた制御を該第2設定情報に基づいた制御に切り替え、該設定指令には制御時間情報が含まれ、該コントローラは、該設定指令を受信すると該制御時間情報に対応する時間だけ該第2設定情報に基づいて該照明器具を制御した後、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御する。
第3の開示に係る照明制御システムは、照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御し、該照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると該第2設定情報を該第1メモリに記憶するコントローラと、該第2設定情報を該コントローラに送信する通信機器と、を備え、該通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から該第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、該設定指令を該コントローラに送信し、該コントローラは、該設定指令を受信すると該第1設定情報に基づいた制御を該第2設定情報に基づいた制御に切り替え、該通信機器は、該ネットワーク端末またはリモコン設定器から解除指令を受信すると、該解除指令を該コントローラに送信し、該コントローラは、該解除指令を受信すると、該第2設定情報に基づいた制御を終了し、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御する。
第4の開示に係る照明制御システムは、照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御し、該照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると該第2設定情報を該第1メモリに記憶するコントローラと、該第2設定情報を該コントローラに送信する通信機器と、を備え、該通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から該第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、該設定指令を該コントローラに送信し、該コントローラは、該設定指令を受信すると該第1設定情報に基づいた制御を該第2設定情報に基づいた制御に切り替え、該コントローラは、該照明器具についての情報を該通信機器に送信し、該ネットワーク端末は、該照明器具の消費電力が規定値よりも大きい場合に、該設定指令を送信し、該通信機器は、該照明器具についての情報に応じて該設定指令を該コントローラに送信する。
第5の開示に係る照明制御システムは、照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、該第1設定情報に基づき該照明器具を制御し、該照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると該第2設定情報を該第1メモリに記憶するコントローラと、該第2設定情報を該コントローラに送信する通信機器と、を備え、該通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から該第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、該設定指令を該コントローラに送信し、該コントローラは、該設定指令を受信すると該第1設定情報に基づいた制御を該第2設定情報に基づいた制御に切り替え、該通信機器は、少なくとも1つの設定情報が記憶された第2メモリを有し、該少なくとも1つの設定情報のうち該ネットワーク端末の通信プロトコルに対応する該第2設定情報を該コントローラに送信し、該第2設定情報は、シーン番号と、該シーン番号に対応する調光指令値と、を含み、該設定指令は、該シーン番号を含み、該コントローラは、該設定指令を受信すると該シーン番号に対応する該調光指令値に基づき該照明器具を制御する。」
に訂正する。
(5)一群の請求項
本件訂正前の請求項1、4、7~9は、請求項4、7~9が、本件訂正前の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項である。
本件訂正前の請求項5~9は、請求項6~9が、本件訂正前の請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項である。
本件訂正前の請求項7~9は、請求項8、9が、本件訂正前の請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項である。
以上の3つの一群の請求項は、共通の請求項7~9を有するから、これらの一群の請求項は組み合わされて1つの一群の請求項となる。
よって、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1、4~9〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否等
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、第2メモリに記憶された設定情報の個数に関して、「少なくとも1つ」との個数から2つ以上を意味する「複数」との個数に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、第2メモリに記憶された設定情報の個数を「複数」とすることは、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の段落【0072】に記載されていると認められるから、訂正事項1は新規事項を追加するものではない。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項5において、ネットワーク端末が設定指令を送信する状況に関して、「前記ネットワーク端末は、前記照明器具の消費電力が規定値よりも大きい場合に、前記設定指令を送信し、」との事項を追加してその状況を具体化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、ネットワーク端末が設定指令を送信する状況を、「前記ネットワーク端末は、前記照明器具の消費電力が規定値よりも大きい場合に、前記設定指令を送信し、」とすることは、本件明細書等の段落【0054】に記載されていると認められるから、訂正事項2は新規事項を追加するものではない。
また、訂正事項2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1~6のいずれかを引用する記載であったものを、引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とする訂正である。
また、訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項1~3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項4で訂正された内容と訂正後の請求項1、5、7の記載内容とに実質的な差異はないから、上記(1)~(3)で示したように、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、訂正事項4に係る請求項は請求項1、5、7及びこれらを引用する請求項4、6、8、9であり、本件訂正はその全てについて請求されている。
(5)小括
以上によれば、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3、4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4~6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4~9〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、前記第1設定情報に基づき前記照明器具を制御し、前記照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると前記第2設定情報を前記第1メモリに記憶するコントローラと、
前記第2設定情報を前記コントローラに送信する通信機器と、
を備え、
前記通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から前記第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、前記設定指令を前記コントローラに送信し、
前記コントローラは、前記設定指令を受信すると前記第1設定情報に基づいた制御を前記第2設定情報に基づいた制御に切り替え、
前記通信機器は、複数の設定情報が記憶された第2メモリを有し、前記複数の設定情報のうち前記ネットワーク端末の通信プロトコルに対応する前記第2設定情報を前記コントローラに送信することを特徴とする照明制御システム。
【請求項2】
照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、前記第1設定情報に基づき前記照明器具を制御し、前記照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると前記第2設定情報を前記第1メモリに記憶するコントローラと、
前記第2設定情報を前記コントローラに送信する通信機器と、
を備え、
前記通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から前記第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、前記設定指令を前記コントローラに送信し、
前記コントローラは、前記設定指令を受信すると前記第1設定情報に基づいた制御を前記第2設定情報に基づいた制御に切り替え、
前記設定指令には制御時間情報が含まれ、
前記コントローラは、前記設定指令を受信すると前記制御時間情報に対応する時間だけ前記第2設定情報に基づいて前記照明器具を制御した後、前記第1設定情報に基づき前記照明器具を制御することを特徴とする照明制御システム。
【請求項3】
照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、前記第1設定情報に基づき前記照明器具を制御し、前記照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると前記第2設定情報を前記第1メモリに記憶するコントローラと、
前記第2設定情報を前記コントローラに送信する通信機器と、
を備え、
前記通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から前記第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、前記設定指令を前記コントローラに送信し、
前記コントローラは、前記設定指令を受信すると前記第1設定情報に基づいた制御を前記第2設定情報に基づいた制御に切り替え、
前記通信機器は、前記ネットワーク端末またはリモコン設定器から解除指令を受信すると、前記解除指令を前記コントローラに送信し、
前記コントローラは、前記解除指令を受信すると、前記第2設定情報に基づいた制御を終了し、前記第1設定情報に基づき前記照明器具を制御することを特徴とする照明制御システム。
【請求項4】
前記第2設定情報は前記第1設定情報よりも前記照明器具の目標調光率または目標照度が低いことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の照明制御システム。
【請求項5】
照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、前記第1設定情報に基づき前記照明器具を制御し、前記照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると前記第2設定情報を前記第1メモリに記憶するコントローラと、
前記第2設定情報を前記コントローラに送信する通信機器と、
を備え、
前記通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から前記第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、前記設定指令を前記コントローラに送信し、
前記コントローラは、前記設定指令を受信すると前記第1設定情報に基づいた制御を前記第2設定情報に基づいた制御に切り替え、
前記コントローラは、前記照明器具についての情報を前記通信機器に送信し、前記ネットワーク端末は、前記照明器具の消費電力が規定値よりも大きい場合に、前記設定指令を送信し、
前記通信機器は、前記照明器具についての情報に応じて前記設定指令を前記コントローラに送信することを特徴とする照明制御システム。
【請求項6】
前記照明器具についての情報は、前記照明器具の調光率、前記照明器具の消費電力または前記コントローラに接続される照明器具の数を含むことを特徴とする請求項5に記載の照明制御システム。
【請求項7】
照明器具の調光指令値を含む第1設定情報が記憶された第1メモリを有し、前記第1設定情報に基づき前記照明器具を制御し、前記照明器具の調光指令値を含む第2設定情報を受信すると前記第2設定情報を前記第1メモリに記憶するコントローラと、
前記第2設定情報を前記コントローラに送信する通信機器と、
を備え、
前記通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から前記第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、前記設定指令を前記コントローラに送信し、
前記コントローラは、前記設定指令を受信すると前記第1設定情報に基づいた制御を前記第2設定情報に基づいた制御に切り替え、
前記通信機器は、少なくとも1つの設定情報が記憶された第2メモリを有し、前記少なくとも1つの設定情報のうち前記ネットワーク端末の通信プロトコルに対応する前記第2設定情報を前記コントローラに送信し、
前記第2設定情報は、シーン番号と、前記シーン番号に対応する調光指令値と、を含み、
前記設定指令は、前記シーン番号を含み、
前記コントローラは、前記設定指令を受信すると前記シーン番号に対応する前記調光指令値に基づき前記照明器具を制御することを特徴とする照明制御システム。
【請求項8】
前記ネットワーク端末は、パーソナルコンピュータであることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の照明制御システム。
【請求項9】
前記ネットワーク端末は、サーバであることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の照明制御システム。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~6、8、9に係る特許に対して、当審が通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
[取消理由1](新規性)
本件特許の下記請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
[取消理由2](進歩性)
本件特許の下記請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、この出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
(以下、申立人が提出した「甲第1号証」を「甲1」という。)
[引用文献]
甲1:特開平6-196267号公報
[取消理由と請求項及び引用文献との関係]
取消理由:1、2
請求項 :1、4~6
引用文献:甲1
取消理由:2
請求項 :8、9
引用文献:甲1
第5 取消理由1、2についての判断
1 引用発明
(1)甲1の認定事項
甲1について、以下のことが認定できる。
ア 段落【0008】の「制御端末器2-1,2-2には、例えば、蛍光灯等の照明負荷5-1,5-2が接続され」との記載、段落【0010】の「制御端末器2-1、2-2には、調光用のボリュームVRが接続されており、マニュアル操作による調光の場合には、制御端末器2-1、2-2は、このボリュームのデータを取り込み保持して調光制御に用いる」との記載、段落【0012】の「図3には、制御端末器2の詳細な構成が示されている。・・・プロセッサ31には更に、制御データ等が記憶されるメモリ33が接続され、このメモリ33内のプログラム及びデータを用いてプロセッサ31は各部を制御する。調光制御部36、37には照明負荷が接続される。」との記載及び段落【0014】の「この判定による照明指示情報(調光レベルを含む制御データ)を該当の制御端末器2のアドレスと共に伝送路4へ出力して調光制御を行う。」との記載から、制御端末器2-1、2-2は、照明負荷5-1、5-2のボリュームのデータ又は調光レベルを含む制御データが記憶されたメモリ33を有し、制御データに基づき照明負荷5-1、5-2を制御していると認められる。
イ 上記ア及び段落【0013】の「制御端末器2は、制御データの到来を待ちながら、メモリ33に記憶されている制御データを用いて照明制御している。制御データが到来すると、これを用いてメモリ33の書き換えを行い、このメモリ33内の新たな制御データを用いて照明制御を行う。」との記載から、制御端末器2-1、2-2は、照明負荷5-1、5-2の調光レベルを含む新たな制御データが到来すると、これをメモリ33に記憶するものであると認められる。
ウ 上記ア及びイ並びに段落【0013】の「主操作盤1は、センサ端末器10や監視端末器3等が保持しているデータを定期的なポーリングにより収集し、この収集したデータに基づき制御データを作るなどしてメモリ113に格納し、上記制御端末器2に対して制御データを送る必要の有無を検出し、必要があればアドレスを付して伝送する。」との記載から、主操作盤1は、照明負荷5-1、5-2の調光レベルを含む新たな制御データを制御端末器2-1、2-2に送信するものであると認められる。
エ 上記ア~ウ、段落【0008】の「監視端末器3はスイッチ6-1~6-2が操作されると、当該スイッチのアドレス及び自端末のアドレスを伝送路4を介して主操作盤1に送信する。主操作盤1は、・・・、監視端末器3から送られてくるアドレスに基づきメモリテーブルを検索し、照明状態と制御すべき制御端末器及び照明負荷のアドレスとからなる制御データを伝送路4へ送信する。対応する制御端末器は自端末と同一のアドレスである場合に制御データを取込み対応のアドレスを持つ照明負荷に対し対応の照明状態を現出させる。」との記載及び段落【0010】の「主操作盤1には、全制御端末器2-1、2-2が用いている制御データを記憶するメモリ(照明状態テーブル18)が備えられている。また、主操作盤1には、照明負荷のエリア毎の照明状態を得て、前記照明状態テーブル18の情報の書き換えを行うテーブル管理手段17と、前記照明負荷5-1、5-2についてエリア毎に点灯/消灯を指示するスイッチ手段であるスイッチ6-1、6-2による点灯/消灯の指示を受けて、前記照明状態テーブル18の少なくとも隣接するエリアの照明状態情報に基づき、該当エリアの照明負荷に対し、直ちに点灯/消灯を実行するか順次に調光レベルを変更して点灯/消灯へ至るのかを判定すると共に、この判定による照明指示情報を制御端末器2-1、2-2へ与えて調光制御を行う順次調光制御手段16が備えられている。」との記載並びにスイッチ6-1~6-2が点灯/消灯を指示するスイッチ手段であり、監視端末器3から主操作盤1へはスイッチ6-1~6-2により指示される照明状態の情報も送信されていることが当業者にとって明らかであることを踏まえると、主操作盤1は、監視端末器3から、操作されたスイッチ6-1~6-2のアドレス、照明状態及び監視端末器3のアドレスが送信されると、照明状態と制御すべき制御端末器及び照明負荷のアドレスとからなる制御データを制御端末器2-1、2-2に送信するものであると認められる。
オ 上記ア~エ並びに段落【0008】の「主操作盤1は、・・・、監視端末器3から送られてくるアドレスに基づきメモリテーブルを検索し、照明状態と制御すべき制御端末器及び照明負荷のアドレスとからなる制御データを伝送路4へ送信する。対応する制御端末器は自端末と同一のアドレスである場合に制御データを取込み対応のアドレスを持つ照明負荷に対し対応の照明状態を現出させる。」との記載及び段落【0013】の「制御端末器2は、制御データの到来を待ちながら、メモリ33に記憶されている制御データを用いて照明制御している。制御データが到来すると、これを用いてメモリ33の書き換えを行い、このメモリ33内の新たな制御データを用いて照明制御を行う。」との記載から、制御端末器2-1、2-2は、主操作盤1から照明状態と制御すべき制御端末器及び照明負荷のアドレスとからなる制御データが到来すると、これを用いてメモリ33の書き換えを行い、このメモリ33内の新たな制御データを用いて照明制御を行うものであると認められる。
カ 段落【0011】の「図2に、主操作盤1の具体的構成を示す。伝送路4に接続され、信号を送受、データのフォーマット化、フォーマット化されたデータの分離等を行う伝送路インタフェース111に、プロセッサ112が接続されている。プロセッサ112にはROM、RAM等からなり、このプロセッサ112が用いるプログラム及びデータが記憶されるメモリ113が接続されている。・・・メモリ113には、各制御端末器2に対応していずれの照明負荷に対しどのような照明状態を現出するかを示す制御データが記憶された照明状態テーブル18の他、各種のメモリテーブル、レジスタ、フラグが含まれている。」との記載及び段落【0016】の「上記において、例えば、参照エリアのいずれにおいても点灯されておらず、人がいないような場合には、ステップ511へ進み、直ちに点灯/消灯するように該当制御端末器5へ制御データを送出し(511)、照明状態情報を照明状態テーブル18の該当エリアに書き込んで(512)エンドとなる。」との記載並びに図2より、主操作盤1は、少なくとも照明負荷を点灯/消灯するための制御データが記憶されたメモリ113を有するものと認められる。
キ 段落【0008】の「図1には、本発明の実施例に係る照明制御システムが示されている。この照明制御システムでは、主操作盤1と制御端末器2-1,2-2、監視端末器3とが伝送路4により接続されている。・・・また、制御端末器2-1,2-2、監視端末器3、照明負荷5-1、5-2、スイッチ6-1~6-2のそれぞれにアドレスが付与されており、監視端末器3はスイッチ6-1~6-2が操作されると、当該スイッチのアドレス及び自端末のアドレスを伝送路4を介して主操作盤1に送信する。主操作盤1は、例えば、マイクロコンピュータ等により構成され、監視端末器及びそのスイッチのアドレスに対応させて制御端末器とその照明負荷のアドレスと照明状態(全調光、段階調光の所定調光度等)とが記憶されたメモリテーブルを備えており、監視端末器3から送られてくるアドレスに基づきメモリテーブルを検索し、照明状態と制御すべき制御端末器及び照明負荷のアドレスとからなる制御データを伝送路4へ送信する。対応する制御端末器は自端末と同一のアドレスである場合に制御データを取込み対応のアドレスを持つ照明負荷に対し対応の照明状態を現出させる。」との記載から、主操作盤1が制御端末器2-1、2-2及び監視端末器3と伝送路4により接続され、制御データ等の通信を行っていることから、主操作盤1が何らかの通信プロトコルを用いて制御端末器2-1、2-2及び監視端末器3と通信していることは、当業者にとって明らかである。
また、上記エ及びカで示した点を踏まえれば、主操作盤1は、メモリ113を有し、スイッチ6-1~6-2が操作されたことにより照明負荷を点灯/消灯する指示がされた場合には、メモリ113に記憶された制御データのうち前記指示に対応する制御データを制御端末器2-1、2-2に送信するものであると認められる。
そうすると、主操作盤1は、メモリ113を有し、スイッチ6-1~6-2が操作されたことにより照明負荷を点灯/消灯する指示が監視端末器3から通信プロトコルを用いてされた場合には、メモリ113に記憶された制御データのうち前記指示に対応する制御データを制御端末器2-1、2-2へと送信するもの、つまり、主操作盤1は、メモリ113を有し、メモリ113に記憶された少なくとも照明負荷を点灯/消灯するための制御データのうち監視端末器3の通信プロトコルに対応する制御データを制御端末器2-1、2-2に送信するものであると認められる。
ク 段落【0010】の「制御端末器2-1、2-2には、調光用のボリュームVRが接続されており、マニュアル操作による調光の場合には、制御端末器2-1、2-2は、このボリュームのデータを取り込み保持して調光制御に用いると共に、主操作盤1へ送信して、自装置の状態を通知しておく。従って、各制御端末器2-1、2-2には、自装置の照明制御を行うための制御データを記憶するメモリが備えられ、主操作盤1には、全制御端末器2-1、2-2が用いている制御データを記憶するメモリ(照明状態テーブル18)が備えられている。」との記載から、制御端末器2-1、2-2は、ボリュームのデータを主操作盤1へ送信するものであると認められる。
ケ 上記ア~カ並びに段落【0010】の「主操作盤1には、全制御端末器2-1、2-2が用いている制御データを記憶するメモリ(照明状態テーブル18)が備えられている。また、主操作盤1には、照明負荷のエリア毎の照明状態を得て、前記照明状態テーブル18の情報の書き換えを行うテーブル管理手段17と、前記照明負荷5-1、5-2についてエリア毎に点灯/消灯を指示するスイッチ手段であるスイッチ6-1、6-2による点灯/消灯の指示を受けて、前記照明状態テーブル18の少なくとも隣接するエリアの照明状態情報に基づき、該当エリアの照明負荷に対し、直ちに点灯/消灯を実行するか順次に調光レベルを変更して点灯/消灯へ至るのかを判定すると共に、この判定による照明指示情報を制御端末器2-1、2-2へ与えて調光制御を行う順次調光制御手段16が備えられている。」との記載、段落【0011】の「メモリ113には、各制御端末器2に対応していずれの照明負荷に対しどのような照明状態を現出するかを示す制御データが記憶された照明状態テーブル18の他、各種のメモリテーブル、レジスタ、フラグが含まれている。」との記載、段落【0015】の「上記各手段による制御は、実際には、主操作盤1のプロッセサ112がメモリ113内の図5に示されるフローチャートのプログラムを用いて動作することにより行われるので、これを説明する。プロセッサ112は、伝送路4を介して監視端末器3からスイッチ6による所定エリアの照明負荷に対するオン/オフの制御がなされたか否かを検出している(501)。ここで、所定エリアの照明負荷に対するオン/オフの制御がなされると、当該オン/オフ制御に係る対象のエリアから、図4に示される参照エリアテーブル23を用いて参照エリアを検索する(502)。検索の結果得た参照エリアについて照明状態テーブル18を参照して照明状態情報を得て、例えば、1つのエリアでも点灯状態であるという条件、或いは、所定の調光レベル以上で照明されているという条件等の、予め与えられている条件に合致しているかを検出することにより、順次調光制御が必要か否かを検出する(504)。」との記載及び段落【0016】の「上記において、例えば、参照エリアのいずれにおいても点灯されておらず、人がいないような場合には、ステップ511へ進み、直ちに点灯/消灯するように該当制御端末器5へ制御データを送出し(511)、照明状態情報を照明状態テーブル18の該当エリアに書き込んで(512)エンドとなる。・・・」との記載から、主操作盤1は、所定エリアの照明負荷に対するオン/オフの制御がなされると、参照エリアについてメモリ113に含まれる照明状態テーブル18を参照して照明状態情報を得て、例えば、参照エリアのいずれにおいても点灯されておらず、人がいないような場合には、直ちに点灯/消灯するように該当制御端末器2-1、2-2へ制御データを送出するものと認められる。
(2)甲1発明
甲1の段落【0008】、【0010】~【0014】、【0016】、図1~3及び上記(1)ア~ケから、甲1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。なお、括弧内には、主な参照箇所を示した。)。
「照明負荷5-1、5-2のボリュームのデータ又は調光レベルを含む制御データが記憶されたメモリ33を有し、制御データに基づき照明負荷5-1、5-2を制御し、照明負荷5-1、5-2の調光レベルを含む新たな制御データが到来すると、これをメモリ33に記憶する制御端末器2-1、2-2(段落【0008】、【0010】、【0012】~【0014】、図1、3及び上記(1)ア、イ)と、
照明負荷5-1、5-2の調光レベルを含む新たな制御データを制御端末器2-1、2-2に送信する主操作盤1(段落【0013】及び上記(1)ウ)と、
を備え、
主操作盤1は、監視端末器3から、操作されたスイッチ6-1~6-2のアドレス、照明状態及び監視端末器3のアドレスが送信されると、照明状態と制御すべき制御端末器及び照明負荷のアドレスとからなる制御データを制御端末器2-1、2-2に送信し(段落【0008】、【0010】及び上記(1)エ)、
制御端末器2-1、2-2は、主操作盤1から照明状態と制御すべき制御端末器及び照明負荷のアドレスとからなる制御データが到来すると、これを用いてメモリ33の書き換えを行い、このメモリ33内の新たな制御データを用いて照明制御を行い(段落【0008】、【0013】及び上記(1)オ)、
主操作盤1は、メモリ113を有し、メモリ113に記憶された少なくとも照明負荷を点灯/消灯するための制御データのうち監視端末器3の通信プロトコルに対応する制御データを制御端末器2-1、2-2に送信し(段落【0008】、【0011】、【0016】、図1、2及び上記(1)カ、キ)、
制御端末器2-1、2-2は、ボリュームのデータを主操作盤1へ送信し(段落【0010】及び上記(1)ク)、
主操作盤1は、所定エリアの照明負荷に対するオン/オフの制御がなされると、参照エリアについてメモリ113に含まれる照明状態テーブル18を参照して照明状態情報を得て、例えば、参照エリアのいずれにおいても点灯されておらず、人がいないような場合には、直ちに点灯/消灯するように該当制御端末器2-1、2-2へ制御データを送出する(段落【0010】、【0011】、【0015】、【0016】及び上記(1)ケ)照明制御システム。」
2 対比・判断
(1)本件発明1
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも両者は次の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1では、通信機器の有する第2メモリに記憶された設定情報が「複数」であるのに対して、甲1発明では、当該構成についての特定がない点。
相違点1について検討する。
甲1の段落【0011】の「・・・メモリ113には、各制御端末器2に対応していずれの照明負荷に対しどのような照明状態を現出するかを示す制御データが記憶された照明状態テーブル18の他、各種のメモリテーブル、レジスタ、フラグが含まれている。」との記載、及び、段落【0016】の「・・・例えば、参照エリアのいずれにおいても点灯されておらず、人がいないような場合には、ステップ511へ進み、直ちに点灯/消灯するように該当制御端末器5へ制御データを送出し(511)、照明状態情報を照明状態テーブル18の該当エリアに書き込んで(512)エンドとなる。これに対し、順次調光制御が必要であることが検出されると、・・・所定(変化により照度変化が人に気にならぬ程度ずつ)だけ調光レベルを変化させるように制御データを送出し、これに基づく照明状態を照明状態テーブル18へ・・・書き込み(508)、・・・、ステップ507からステップ510を繰り返す。順次調光制御の終了の場合には、照明状態情報を照明状態テーブル18の該当エリアに書き込んで、・・・エンドとなる。」との記載から理解されるように、主操作盤1の有するメモリ113に含まれる照明状態テーブル18には、制御の過程で送出された新たな制御データが随時書き込まれる。
そうすると、主操作盤1の有するメモリ113に記憶された制御データは常に1つであると認められる。
また、甲1には、制御データを記憶する照明状態テーブル18をメモリ113上に複数含めておくことや、照明状態テーブル18の中で制御データを複数記憶しておくことが、記載も示唆もされていない。
したがって、相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明ではない。
また、甲1発明は、制御の過程で送出された新たな制御データによって随時制御するものであるから、制御データを複数記憶する必要がないし、制御データを複数記憶することを示す他の証拠もない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明4
請求項1の記載を引用する本件発明4は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加したものである。
したがって、本件発明4は、上記(1)で説示した理由と同様の理由により、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明5
本件発明5と甲1発明とを対比すると、少なくとも両者は次の点で相違する。
[相違点2]
本件発明5では、ネットワーク端末が設定指令を送信する状況に関して、「前記ネットワーク端末は、前記照明器具の消費電力が規定値よりも大きい場合に、前記設定指令を送信」するのに対して、甲1発明では、当該構成についての特定がない点。
相違点2について検討する。
甲1には、監視端末器3(ネットワーク端末)が「照明器具の消費電力」を参照して何らかの制御を実施することについて記載も示唆もない。
したがって、相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明5は、甲1発明ではない。
また、照明器具の消費電力が規定値よりも大きい場合に設定指令を送信することを示す他の証拠もない。
したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明5は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明6
請求項5の記載を引用する本件発明6は、本件発明5の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加したものである。
したがって、本件発明6は、上記(3)で説示した理由と同様の理由により、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明8、9
請求項1又は請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明8、9は、本件発明1又は本件発明5の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加したものである。
したがって、本件発明8、9は、上記(1)又は(3)で説示した理由と同様の理由により、甲1発明でなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 小括
以上により、取消理由1、2は成り立たない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(以下、本件訂正前の請求項1、4~6、8、9に係る発明をそれぞれ「本件訂正前発明1」等という。)
1 申立理由の内容
申立人は、上記第5で判断した取消理由1、2のほかに、特許異議申立書において、本件訂正前発明1、4~6、8、9及び本件発明2,3について、以下の(1)~(4)を主張していると認められる。
(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前発明1、4~6、8、9及び本件発明2,3は甲1によって公然知られた発明(以下「甲1公知発明」という。)であり、請求項1~6、8、9に係る特許は特許法第29条第1項第1号の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(新規性)
本件発明2、3は甲1に記載された発明であり、請求項2、3に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件訂正前発明1、5及び本件発明2,3は発明の詳細な説明に記載したものでなく、請求項1~3、5に係る特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(明確性要件)
本件訂正前発明1、5及び本件発明2,3は明確ではなく、請求項1~3、5に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
2 申立理由についての判断
(1)申立理由1、2(新規性)について
(1-1)請求項1、4~6、8、9の新規性について
本件発明1、5と甲1発明との間に実質的な相違点があることは、上記第5で示したとおりであり、これは甲1発明と同じ発明である甲1公知発明についても同様である。
したがって、本件発明1、5及び請求項1、5の記載を引用する本件発明4、6,8、9は甲1公知発明ではない。
(1-2)請求項2の新規性について
本件発明2と甲1発明とを対比すると、少なくとも両者は次の点で相違する。
[相違点3]
本件発明2では、「前記設定指令には制御時間情報が含まれ、前記コントローラは、前記設定指令を受信すると前記制御時間情報に対応する時間だけ前記第2設定情報に基づいて前記照明器具を制御した後、前記第1設定情報に基づき前記照明器具を制御する」のに対して、甲1発明では、当該構成についての特定がない点。
申立人は、甲1に記載された順次調光制御が相違点3に相当する制御である旨主張している。
しかしながら、甲1における順次調光制御は、「前記スイッチ手段による点灯/消灯の指示を受けて、前記照明状態テーブルの少なくとも隣接するエリアの照明状態情報に基づき、該当エリアの照明負荷に対し、直ちに点灯/消灯を実行するか順次に調光レベルを変更して点灯/消灯へ至るのかを判定すると共に、この判定による照明指示情報を前記調光手段へ与えて調光制御を行」い(甲1の【請求項1】の記載参照。)、その際に、「順次に調光レベルを変更して点灯/消灯へ至る制御に際し、前記タイマ手段を参照して、所定時間毎に調光レベルを所定段階ずつ変化」(甲1の【請求項2】の記載参照。)させるものであって、本件発明2における相違点3に係る制御、換言すれば、設定指令に含められた制御時間情報に対応する時間だけ第2設定情報に基づく制御を行い、その後は第1設定情報に基づく制御に戻すという制御とは異なるものである。
したがって、相違点3は実質的な相違点であり、申立人の上記主張には理由がない。
よって、本件発明2は、甲1発明ではないし、甲1公知発明でもない。
(1-3)請求項3の新規性について
本件発明3と甲1発明とを対比すると、少なくとも両者は次の点で相違する。
[相違点4]
本件発明3では、「前記通信機器は、前記ネットワーク端末またはリモコン設定器から解除指令を受信すると、前記解除指令を前記コントローラに送信し、前記コントローラは、前記解除指令を受信すると、前記第2設定情報に基づいた制御を終了し、前記第1設定情報に基づき前記照明器具を制御する」のに対して、甲1発明では、当該構成についての特定がない点。
申立人は、甲1において、「あるエリアについて順次調光制御が行われている間に、当該あるエリアの照明負荷に対するスイッチ状態が変化すると、この順次調光制御が解除されて、点灯/消灯状態となる(甲1号証の段落0010に記載の調光用のボリュームで点灯する)ように構成すること」、が相違点4に相当する制御である旨主張している。
甲1の段落【0014】~【0016】及び図4、5の記載を参酌すると、申立人が主張するような、スイッチ6による所定エリアの照明負荷に対するオン/オフの制御がなされれば(501)、当該エリアの照明負荷が「順次に調光レベルを変更して点灯/消灯へ至る」制御状態から、「直ちに点灯/消灯」され、図5に記載されたフローチャートに基づき、「直ちに点灯/消灯するように該当制御端末器5へ制御データを送出し(511)、照明状態情報を照明状態テーブル18の該当エリアに書き込」まれる(512)という状況も場合によっては想定される。
しかしながら、甲1における上記状況は、スイッチ6の操作状況に応じた新たな制御データに基づく制御が実行されているのであって、スイッチ6の操作によって最新の制御データ(第2設定情報)に基づいた制御を終了して1つ前の制御データ(第1設定情報)に基づく制御に戻しているわけではない。
したがって、甲1における上記状況は、本件発明3における相違点4に係る制御とは異なるものであるから、相違点4は実質的な相違点であり、申立人の上記主張には理由がない。
よって、本件発明3は、甲1発明ではないし、甲1公知発明でもない。
(1-4)小括
上記(1-1)~(1-3)で示したように、本件発明1~6、8、9は甲1公知発明ではなく、本件発明2、3は甲1発明でもない。
よって、申立理由1、2は成り立たない。
(2)申立理由3(サポート要件)について
申立人は、要するに、「正確に制御データを変更する」ことを本件特許に係る発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)とした上で、本件発明1~3、5は、本件課題を解決できるかについて不明であり、本件課題を解決できるものと解することができないから、本件特許の明細書における発明の詳細な説明に記載したものではないと主張している。
しかしながら、本件課題は、単に「正確に制御データを変更する」ことではなく、発明の詳細な説明の段落【0002】~【0005】の記載を参酌すれば、「制御データを変更しようとする際、データ入力を、リモコン上で、手動で行うと、誤った入力がなされるおそれがある」ことであると認められる。
また、発明の詳細な説明の段落【0053】、【0056】には、通信機器3はPC4からシーン設定指令を受信すると設定指令をコントローラ1に送信し、コントローラ1はシーン設定指令を受信すると第1設定情報に基づいた制御を第2設定情報に基づいた制御に切り替える、との構成が記載されており、当該構成によれば、制御データを第2設定情報に変更しようとする際、データ入力を、リモコン上で、手動で行う必要はないから、本件課題は解決されているといえる。
他方、本件特許の特許請求の範囲における請求項1~3、5のそれぞれには、本件課題を解決する上記構成に対応する構成として、
「前記通信機器は、ネットワーク端末またはリモコン設定器から前記第2設定情報に基づく制御を指令する設定指令を受信すると、前記設定指令を前記コントローラに送信し、
前記コントローラは、前記設定指令を受信すると前記第1設定情報に基づいた制御を前記第2設定情報に基づいた制御に切り替え、」
との構成が含まれているから、本件発明1~3、5は本件課題を解決できるものと認められる。
したがって、本件発明1~3、5は発明の詳細な説明に記載したものであり、課題を解決していることが理解できるから、請求項1~3、5に係る特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものである。
よって、申立理由3は成り立たない。
(3)申立理由4(明確性要件)について
申立人は、要するに、
ア 本件特許の明細書において、発明が解決しようとする課題の中に「手動で入力することで誤った入力がなされるおそれがある。」(明細書段落【0004】参照)等の記載があるから、本件発明の根本的な発明思想は、手動による入力を除ければ本件発明の課題は解決できる、ということであり、当該発明思想によれば、手動による入力を除くことが請求項に明記されなくても、本件発明1~3、5は実質的な「除くクレーム」を構成していると解すべき、
イ 本件特許の明細書にスケジュールで調光を制御することに関する記載があるから本件発明1~3、5の外延はスケジュールで調光を制御することである、との理解を前提に、特許請求の範囲の請求項1~3、5において「第1設定情報」が「スケジュール運転および調光運転に用いられる制御データ」であることが記載されていないため、本件発明1~3、5が明確でない、
と主張している。
しかしながら、上記アについては、請求項1~3、5には手動による入力を除くことは記載されておらず、本件発明1~3、5には、例えば、据え付け工事の際に初期設定として第2設定情報のいくつかを手動入力しておいたものや、増改築等の際に追加設定として手動入力したものなども含まれることが理解できるから(なお、本件発明1~3、5がこのような手動入力を許容するものであっても、上記(2)で示したように、本件発明の課題は解決できる。)、実質的な「除くクレーム」を構成しているとはいえない。よって、上記アの主張は採用することができない。
また、上記イについては、明細書にスケジュールで調光を制御することに関する記載があるからといって、本件発明の外延を「スケジュールで調光を制御すること」に限定して解すべき理由はないし、明確でないと主張する本件発明1~3、5における「第1設定情報」は、請求項1~3、5の記載から、照明器具の調光指令値を含むものであって、コントローラの有する第1メモリに記憶され、これに基づきコントローラが照明器具を制御するためのものであると明確に解される。よって、上記イの主張は採用することができない。
したがって、本件発明1~3、5は明確であり、請求項1~3、5に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであるから、申立人による主張は採用することができない。
よって、申立理由4は成り立たない。
第7 むすび
以上によれば、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1~6、8、9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~6、8、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700703