特許異議申立
2022-700498
照射装置
- 審判番号
- 2022-700498
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-132028
- 登録番号
- 6979723
- 請求日
- 2022年06月10日
- 審決日
- 2024年03月28日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社飯田照明
- 【権利者代理人】原田 淳司
- 【権利者代理人】奥山 裕治
- 【異議申立人】清水 真美子
- 【異議申立人】インテックス 株式会社
- 【異議申立人代理人】涌井 謙一
- 【異議申立人代理人】山本 典弘
- 【異議申立人代理人】鈴木 一永
- 【異議申立人代理人】工藤 貴宏
- 【異議申立人代理人】三井 直人
- 【異議申立人】野口 操
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 藤井 昇
- 審判官 中村 則夫
- 分類
- P1651.121-YAA(H05B) / P1651.537-YAA(H05B) / P1651.113-YAA(H05B) / P1651.851-YAA(H05B) / P1651.852-YAA(H05B) / P1651.841-YAA(H05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第126条の5第9項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6979723号発明「照射装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6979723号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第6979723号の請求項1、2に係る特許を維持する。
特許第6979723号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6979723号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成28年2月29日(優先権主張 平成27年3月2日(以下「優先日」という。))に出願された特願2016-37245号の一部を令和2年8月3日に新たな特許出願としたものであって、令和3年11月18日にその特許権の設定登録がされ、同年12月15日に特許掲載公報が発行された。
この請求項1~3に係る特許について、令和4年6月10日付けで特許異議申立人 清水 真美子(以下「申立人A」という。)により、この請求項1、3に係る特許について、同年6月14日付けで特許異議申立人 インテックス株式会社(以下「申立人B」という。)により、この請求項1~3に係る特許について、同年6月14日付けで特許異議申立人 野口 操(以下「申立人C」という。)により、特許異議の申立てがされ、同年9月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年11月30日に特許権者により意見書の提出及び訂正請求がされ、令和5年1月31日に申立人Cにより、また、同年2月2日に申立人Aにより意見書の提出がされ、同年5月23日付けで取消理由(決定の予告)が通知されたものである。
そして、その指定期間内である同年7月21日に特許権者により意見書の提出及び訂正請求がされ、同年9月11日付けで申立人A、及び、申立人Cにより、それぞれ意見書の提出がされ、同年11月13日付けで、再度、取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である令和6年1月12日に特許権者により意見書の提出及び訂正請求がされ、同年2月13日に申立人Cにより、同年2月21日に申立人Aにより、それぞれ意見書の提出がされたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年1月12日の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下の訂正事項1~3のとおりである(下線部は、訂正箇所を示し、当審で付与した。)。
なお、令和4年11月30日の訂正請求による訂正及び令和5年7月21日の訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「器具本体に着脱可能であり且つ紫外線を照射する照射装置であって、前記紫外線を照射するLEDに対して、当該LEDの定格電流よりも低い電流が供給され、前記低い電流は前記定格電流に対して60%以下である照射装置。」と記載されているのを「器具本体に着脱可能であり且つ前記器具本体から受電して紫外線を照射する照射装置であって、前記紫外線を照射するLEDに対して、当該LEDの定格電流よりも低い電流が供給され、前記LEDは定格電力が1W以上であり、前記低い電流は前記定格電流に対して60%以下であり、前記照射装置の寿命は、前記低い電流が供給されることで、20,000時間が確保されている照射装置。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0024】の「<その他>の(3)」において、「、もさらに」と記載されているのを、「、さらに」に訂正する。
(4)一群の請求項について
明細書の訂正を含む本件訂正請求は、一群の請求項〔1~3〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1のうち「前記器具本体から受電して」という事項は、訂正前の請求項1の照射装置について、これが器具本体から受電することを新たに特定するものであるから、訂正前の請求項1を減縮するものである。
また、訂正事項1のうち「前記LEDは定格電力が1W以上であり」という事項は、訂正前の請求項1のLEDについて、定格電力を新たに特定するものであるから、訂正前の請求項1を減縮するものである。
さらに、訂正事項1のうち「前記照射装置の寿命は、前記低い電流が供給されることで、20,000時間が確保されている」という事項は、訂正前の請求項1の照射装置について、LEDに低い電流を供給することにより照射装置の寿命として20,000時間が確保されることを特定することで、訂正前の請求項1を減縮するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
訂正事項1のうち「前記器具本体から受電して」という事項は、明細書の段落【0009】、【0019】及び【0023】に記載されている。
また、同「前記LEDは定格電力が1W以上であり」という事項は、段落【0009】、【0018】及び【0024】に記載されている。
さらに、同「前記照射装置の寿命は、前記低い電流が供給されることで、20,000時間が確保されている」という事項は、明細書の段落【0021】及び【0024】に記載されている。
したがって、訂正事項1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アからも明らかなように、訂正事項1は、照射装置が器具本体から受電することと、LEDの定格電力と照射装置の寿命を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものでない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正前の明細書の段落【0024】に記載された「、もさらに」は、意味を成しておらず、前後の「(3)実施形態ではLEDへ供給する電流を定格電流又はそれより低い電流としているが、もさらに低い電流を供給してもよい。」の文章の内容から、「、もさらに」は、「、さらに」の誤記であることが理解できる。
このため、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
訂正事項3は、明細書の段落【0024】の「<その他>」の(3)の記載内容に基づいて誤記を訂正するものであるため、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第126条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項3による訂正は、単に明細書中の誤記を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」と、同項ただし書第2号に規定する「誤記又は誤訳の訂正」を目的とし、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
器具本体に着脱可能であり且つ前記器具本体から受電して紫外線を照射する照射装置であって、
前記紫外線を照射するLEDに対して、当該LEDの定格電流よりも低い電流が供給され、
前記LEDは定格電力が1W以上であり、
前記低い電流は前記定格電流に対して60%以下であり、
前記照射装置の寿命は、前記低い電流が供給されることで、20,000時間が確保されている
照射装置。
【請求項2】
前記器具本体はブラックライト蛍光灯が着脱可能であり、
前記照射装置は、前記器具本体に着脱可能な口金部材を備える
請求項1に記載の照射装置。」
第4 取消理由の概要
1 令和5年7月21日の訂正請求により訂正された請求項1~4に対して当審が令和5年11月13日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりのものである。
「明確性要件(特許法第36条第6項第2号)について
ア 特許請求の範囲の請求項1、3、4の「前記照射装置の寿命」とは、どのような意味なのかが明確でなく、技術的範囲が特定できない。
一般に、「照射装置」というのは、点灯回路等を含む装置であるが、この「前記照射装置の寿命」の「前記照射装置」が、そのような装置であった場合、「寿命」とはどのようなものなのか(「紫外線を照射する照射装置」において、「寿命」はどのように規定されるのか)。
なお、仮に、「前記照射装置の寿命」が、実質的に、「紫外線を照射するLEDの寿命」を意味する場合に、一般的なLEDについては、その「寿命」について、一応の規定ないし技術常識が存在するとしても(申立人Cが提出した参考資料1も参照のこと)、「紫外線を照射するLED」の「寿命」について、そのようなものは存在するのか。
イ 特許請求の範囲の請求項1、3、4の「20,000時間が確保されている」とは、どのような意味なのかが明確でなく、技術的範囲が特定できない。
一般に、「確保」とは、しっかりともちこたえることを意味するところ、上記「(前記低い電流が供給されることで)、20,000時間が確保されている」というのは、当該供給によって、照射装置の寿命が(必ず)20,000時間をもちこたえることができることを特定しているのか、それとも、照射装置の寿命が長短あるうち、20,000時間をもちこたえることができるものを特定している(すなわち、20,000時間もちこたえられるもののみが技術的範囲に含まれることを特定している)のか、あるいは、それ以外のものを特定しているのか不明である。
なお、特許明細書の段落【0021】には、「紫外線照射装置の寿命は20,000時間である。」と記載されているが、特許明細書に「寿命」に係る記載がほかに一切ないことを踏まえると、この記載から把握できるのは、“実施品である2つの特定の照射装置”については、“その寿命が20,000時間である”というだけであって、当該記載を参酌したとしても、請求項1の照射装置の寿命について、「20,000時間が確保されている」という記載の意味するところは、不明と言わざるを得ない。
したがって、請求項1、3、4の記載及び請求項1を引用する請求項2の記載は、明確でない。」
2 令和4年11月30日の訂正請求により訂正された請求項1~4に対して当審が令和5年5月23日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりのものである。
進歩性(特許法第29条第2項)
本件発明1~4は、甲1-3に記載された発明及び周知技術1~2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると、本件発明1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
記
(1)引用文献一覧
ア 主引用文献として
・甲1-3:特開2011―258533号公報
イ 周知技術1として
・甲8-1:日亜化学工業株式会社、紫外発光LED標準仕様書NCSU033B(T)(平成25年4月23日以前に公開)、1ページ
・甲17-1:特開2010-147447号公報(【0048】、【0066】)
・甲18-1:特開2015-5501号公報(【0020】、【0021】)
ウ 周知技術2として
・甲8-1:9ページ、13ページ
・甲3-3:特表2012―503332号公報(請求項6、【0025】)
・甲4-3:特開2008―135355号公報(請求項1)
・甲4-2:特開2011―141952号公報(【0022】)
・甲5-3:特許第4970624号公報(【0026】)
エ 周知技術3として
・甲11-1:ランプ仕様書、品名東芝蛍光ランプ“ブラッックライト”、形名FL10BLB、東芝ライテック株式会社、98年11月
ここで、甲〇-△は、申立人△(申立人A~Cをそれぞれ1~3で示す。)が提出した甲第○号証を表す。
第5 当審の判断
1 明確性要件(特許法第36条第6項第2号)について
(1)特許請求の範囲の請求項1の「前記照射装置の寿命」について
本件明細書や出願時の技術常識(下記参考資料3~参考資料7、参考資料11を参照のこと)に鑑みると、請求項1の「前記照射装置の寿命」というのは、光源が点灯しなくなるまでの総点灯時間又は全光束が、点灯初期に測定した値の70%に下がるまでの総点灯時間のいずれか短い時間を意味することは、当業者にとって明らかである。
したがって、上記第4の1アの取消理由には理由がない。
記
参考資料3:JIS C7617-2(2009)「直管蛍光ランプ-第2部:性能仕様」の「1.4.11B 寿命」
参考資料4:「JIS 照明器具-第3部:性能要求事項通則JIS C8105-3:2011:附属書A(規定) LED照明器具性能要求事項」の「A.3.10 LEDモジュールの寿命」
参考資料5:「JIS 一般照明用 GX16t-5 口金付直管LEDランプ-第2部:性能要求事項JIS C C8159-2」の「3.4 寿命(1ife)」
参考資料6:日亜化学工業株式会社、NCSU276A(U365/U385/U405)Presumption of Lifetime、、2014.6.11
参考資料7:日亜化学工業株式会社、NVSU233A Presumption of Lifetime、2014.8.21
参考資料11:日亜化学工業株式会社、NVSxx19C Presumption of Lifetime、NVSx(W,L)119C,NVSx(W,L)219C、2015.3.20
(2)特許請求の範囲の請求項1の「20,000時間が確保されている」について
一般に、LEDにおいて、ジャンクション温度が低い方が、LEDの寿命が長くなることは、参考資料6、7に示すように、技術常識であることに鑑みると、請求項1の「前記照射装置の寿命は、前記低い電流が供給されることで、20,000時間が確保されている」というのは、「前記低い電流」(定格電流に対して60%以下の電流)を供給することで、この寿命を少なくとも20,000時間以上とすることを規定していることは、当業者にとって明らかである。
したがって、上記第4の1イの取消理由には理由がない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人Cは、令和6年2月13日提出の意見書において、
「照射装置の寿命を装置全体の寿命とした場合
本件発明の照射装置は、本件明細書及び図面に記載があるように、点灯回路、ベース部材(ヒートシンク機能を有する)等を含むものである。すると、照射装置の寿命というからには、これらの寿命も考慮しなければならない。また、点灯回路は、その設計の工夫により、ベース部材は、そのヒートシンク機能の向上により、LEDの寿命を伸ばすことが可能である。
照射装置そのものの寿命を語るのであれば、どのような点灯回路を採用したのか、どのようなベース部材を採用したのかなどを明らかにしなければ、その寿命は明らかにならない。
本件明細書には、点灯回路やベース部材の構造を明らかにしていないのであるから、本件発明1、2において、寿命「20,000時間確保」とした根拠が不明であり、発明が明確とはいえない。
この場合も前提として当然に、LED単体やLEDモジュールの特定がなされていなければならない。」(4ページ下から9行~5ページ5行)旨を主張する。
イ しかしながら、請求項1に「器具本体に着脱可能であり且つ前記器具本体から受電して紫外線を照射する照射装置」と特定されているところ、本件発明1の照射装置というのは、この特定を満たす照射装置を意味することは明確であって、点灯装置やベース部材など照明装置を構成する具体的な部材の特定が必要であるとは認められない。また、寿命については上記(1)で示したとおりである。
したがって、申立人Cの上記主張は採用することができない。
2 進歩性(特許法第29条第2項)について
(1)甲1-3に記載された事項と発明
甲1-3には、以下の事項が記載されている。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)を備えた照明灯に関する。」
・「【0009】
したがって、本発明の課題は、LED照明灯を装着する照明器具の種類に関わらず使用可能なLED照明灯を提供することである。」
・「【0035】
図1および図2に示す通り、従来の白熱灯や蛍光灯等に代わってLEDを光源にする照明灯であり、従来使用している照明器具に従来の白熱灯や蛍光灯等の代わりに適用する照明灯である。」
・「【0064】
本発明の照明灯は、UVLED(紫外線波長LED)の搭載による殺菌機能を併せ持つ蛍光灯型LEDに適用可能である。UVLED(紫外線波長LED)を搭載することによりウイルス等の殺菌に効果をあげる。UVLED(紫外線波長LED)の直視または、紫外線を浴びることは皮膚や目に障害を引き起こす可能性がある。また、図○のように片側に照明用、片側にUVLED(紫外線波長LED)と対峙してLEDを搭載することにより紫外線を直接目に触れる、直接紫外線を浴びることが無く空気中の殺菌効果をあげることが出来る。」
・段落【0009】の記載により、LED照明灯は、照明器具に装着されることから、照明器具に着脱可能なLED照明灯であること、及び、装着する照明器具の種類に関わらず使用可能なLED照明灯であるから、照明器具から受電して光を照射するLED照明灯であることが理解できる。
・段落【0064】の記載により、UVLED(紫外線波長LED)の搭載による殺菌機能を併せ持つ蛍光灯型LEDである、LED照明灯であることが理解できる。
・図1(a)からみて、LED照明灯は口金部材を備える蛍光灯型のものであることが看て取れる。
そうすると、甲1-3には、次の発明(以下「甲1発明-3」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明-3]
「照明器具に着脱可能なLED照明灯であり、照明器具から受電して光を照射するLED照明灯であって、UVLED(紫外線波長LED)の搭載による殺菌機能を併せ持つ蛍光灯型LEDである、口金部材を備えたLED照明灯。」
(2)周知技術の認定
ア 甲8-1の1ページの、許容損失(部品の性能を維持できる温度(25°)を超えない最大の消費電力)の最大定格が3.08Wである紫外発光LEDに係る記載や、甲17-1(特開2010-147447号公報)の段落【0048】、【0066】の記載や、甲18-1(特開2015-5501号公報)の段落【0020】、【0021】の記載等からみて、「定格電力が1W以上の紫外線を照射するLED」は、本願優先日前に周知であったものと認められる(以下「周知技術1」という)。
イ 甲8-1の9ページ、13ページの、最大定格電流700mAに対する500mA(約71%)の使用や300mA(約42%)の使用に係る記載や、甲8-1の14ページ下から12行の「定格電流の10%以上でご使用されることを推奨します。」という記載、甲3-3の請求項6、段落【0025】の「定格電流の約50%未満の動作電流を送る」という記載や「青色/UV LEDチップであり得る」という記載、甲4-3の請求項1の「供給電圧は、複数の固体発光素子のそれぞれを流れる電流が、最大定格電流の1/N(Nは2以上の数)以下となる電圧に設定されている」「照明装置」という記載や、同段落【0006】の「照明用途として用いられる発光ダイオードは、1個あたりの消費電力が1W以上のハイパワーダイオードである」という記載、甲4-2の段落【0022】の「定格電流値の略14%から75%の範囲で・・・電流値を制限する方法」という記載、また、甲5-3の段落【0026】の「各LEDへの供給電流値が、定格電流値の26.6~60.0%の範囲となるように・・・電源回路を供給している」という記載等からみて、「LEDにおいて、定格電流に対して60%以下の電流を流すこと」ことや、「定格電流に対して40%以上の電流を流すこと」は、本願優先日前に周知であったものと認められる(以下「周知技術2」という)。
ウ 甲11-1にも記載されるように、「一般照明用の蛍光灯器具にそのまま使用できるブラックライト蛍光灯」は、本願優先日前に周知であったものと認められる(以下「周知技術3」という)。
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明-3との対比
(ア)本件発明1と甲1発明-3とを対比すると、後者の「照明器具」は前者の「器具本体」に相当し、以下同様に、「LED照明灯」はUVLED(紫外線波長LED)を搭載しているから「紫外線を照射する照射装置」に相当する。
上記相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
(イ)後者の「照明器具に着脱可能なLED照明灯であり、照明器具から受電して光を照射するLED照明灯であって、UVLED(紫外線波長LED)の搭載による殺菌機能を併せ持つ蛍光灯型LEDである、口金部材を備えたLED照明灯。」は、前者の「器具本体に着脱可能であり且つ前記器具本体から受電して紫外線を照射する照射装置」に相当する。
(ウ)そうすると、両者は、
「器具本体に着脱可能であり且つ前記器具本体から受電して紫外線を照射する照射装置。」
において一致し、以下の点において相違すると認められる。
<相違点1>
器具本体に着脱可能であり且つ器具本体から受電して紫外線を照射する照射装置について、本件発明1では、「前記紫外線を照射するLEDに対して、当該LEDの定格電流よりも低い電流が供給され、前記LEDは定格電力が1W以上であり、前記低い電流は前記定格電流に対して60%以下であり、前記照射装置の寿命は、前記低い電流が供給されることで、20,000時間が確保されてい」るのに対して、甲1発明-3では、そのような特定はなされていない点。
イ 相違点の判断
(ア)本件発明1の照射装置は、請求項1に特定されるように、「器具本体に着脱可能であり且つ前記器具本体から受電して紫外線を照射する」ものであって、かつまた、「前記紫外線を照射するLEDに対して、当該LEDの定格電流よりも低い電流が供給され」るものであるが、器具本体に着脱可能な照射装置において、器具本体から「受電」することと、LEDに対してその定格電流よりも低い電流が「供給」されることとの関係は、必ずしも明確でない。すなわち、請求項1の上記特定事項が、照射装置が器具本体から商用電力を受電して、照射装置においてこれをLEDの定格電流よりも低い電流にしてLEDに供給することを特定しているのか、それとも、照射装置が器具本体からLEDの定格電流よりも低い電流を受電して、これをLEDに供給することを特定しているのかは、直ちには不明と言わざるを得ない。
(イ)そこで、当該事項に関する本件明細書の記載を参酌すると、段落【0004】には、本件発明1が解決しようとする課題について、「特許文献2及び特許文献3では、紫外線照射装置としてLEDの使用が提案されているが、従来のブラックライトの代替として使用できるものは、具体的に提案されていない。一方で、LEDを高効率で使用したいとの要望もある。本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、LEDを高効率で使用できる照射装置を提供することにある。」と記載されている。これより、本件発明1が、従来のブラックライトの代替として使用できること、換言すると、これまでの器具本体をそのまま使用できる照射装置の提供を課題としていることが理解できる。また、段落【0009】には、「紫外線照射装置1は、紫外線を照射するLED3を備えるLEDモジュール5と、LEDモジュール5を搭載するためのベース部材7と、LEDモジュール5を覆うカバー部材9と、LED3を発光させるための点灯回路11と、ソケットから商用電力を受電するための口金部材13とを有する。」と記載され、さらに、段落【0018】には、「(紫外線照射装置1に設けられた)点灯回路11は、口金部材13を介して受電した商用電力を直流電力に変換してLEDモジュール5に供給する。・・・点灯回路11はLED3に対して200[mA]~400[mA]の電流を供給するように構成されている(なお、この場合のLED3の電力は、0.7[W]~2.0[W]となる。)。」と記載されている。これより、本件発明1の実施形態として開示されるのは、器具本体から照射装置が商用電力を受電して、照射装置においてこれをLEDの定格電流よりも低い電流にしてLEDに供給するものであることが理解され、また、本件明細書の全記載をみても、これ以外の態様は開示されていない。
(ウ)そうすると、上記(ア)で示した請求項1の特定事項は、前者の構成を特定していると解するのが相当である。
(エ)以上のとおりであるから、請求項1の「上記器具本体に着脱可能であり且つ前記器具本体から受電して紫外線を照射する照射装置であって、前記紫外線を照射するLEDに対して、当該LEDの定格電流よりも低い電流が供給され、」という特定事項は、上記(2)で示した周知技術1~3に開示されているとはいえない。
したがって、甲1発明-3において、相違点1に係る本件発明1の構成、特に、(器具本体に着脱自在であり且つ前記器具本体から受電して)紫外線を照射する照射装置が、「前記紫外線を照射するLEDに対して、当該LEDの定格電流よりも低い電流が供給され」るものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明1は、甲1発明-3及び上記周知技術1~3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、発明特定事項を付加して限定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、当業者が容易に発明することができたとはいえない。
(5)令和5年5月23日付け及び令和5年11月13日付けの取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
ア 新規性欠如、進歩性欠如について(申立人A~C)
申立人A~Cが提出したいずれの証拠にも、請求項1の「上記器具本体に着脱可能であり且つ前記器具本体から受電して紫外線を照射する照射装置であって、前記紫外線を照射するLEDに対して、当該LEDの定格電流よりも低い電流が供給され、」という特定事項は記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1、2は、申立人A~Cが提出したいずれの証拠に記載された発明ではなく、また、本件発明1、2は、当業者が容易に発明することができたものではない。
イ サポート要件違反について(申立人C)
申立人Cは、(ア)本件発明の効果が不明である点、(イ)本件発明において「60%以下」とあって下限がなく、40%未満の範囲において効果を奏する保証がない点、(ウ)本件発明1,2にLEDが高出力タイプとの限定がない点、及び、(エ)本件発明において、供給電流値の限定がない点を挙げて、サポート要件違反である旨の異議申立理由を主張する。
しかしながら、上記第2の1で示した本件訂正により、本件発明1は課題解決手段を反映するものになったので、上記異議申立理由には理由がない。
ウ 明確性要件について(申立人C)
(ア)申立人Cは、(ア)請求項1の記載では、単なる紫外線を照射できる照射装置に対して外部から、その定格電流に対して60%以下の電流を供給する場合が含まれ、物の発明として発明特定事項が不足している点、及び(イ)請求項1の「器具本体」がどのような役割を担っているのか不明である点を挙げて、明確性違反である旨の異議申立理由を主張する。
しかしながら、上記第2の1で示した本件訂正により本件発明1の照射装置は、「器具本体に着脱可能であり、器具本体から受電して紫外線を照射する照射装置」と特定されたので、上記異議申立理由には理由がない。
エ 分割要件違反について(申立人C)
申立人Cは、親出願の当初明細書(甲2-3)には、定格電流に対して「60%以下」との記載は存在しないことを指摘し、「40%未満」との技術的事項の導入は新規事項の追加であるから、分割要件違反である旨の異議申立理由を主張する。
しかしながら、甲2-3の段落【0024】には、「(2)実施形態では高出力タイプのLEDに対して定格電流よりも低い電流(定格電流の40(%)~60(%)である。)を供給することで、投入電流に対する光の取り出し効率(発光効率)を向上させている。」と記載され、さらに、「(3)実施形態ではLEDへ供給する電流を定格電流又はそれより低い電流としているが、もさらに低い電流を供給してもよい。」と記載されている。これらの記載からみて、定格電流の40%未満の電流を含むことは、新たな技術的事項を導入するものとは認められない。
したがって、上記異議申立理由には理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件発明1、2に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に本件発明1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人A~Cによる特許異議の申立てについて、請求項3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700498