特許異議申立
2023-700698
二酸化炭素排出量管理装置、管理方法、及び、プログラム
- 審判番号
- 2023-700698
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-105970
- 登録番号
- 7203470
- 請求日
- 2023年07月07日
- 審決日
- 2024年04月17日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社Added
- 【権利者代理人】木村 満
- 【権利者代理人】森川 泰司
- 【権利者代理人】渡邉 幸男
- 【権利者代理人】桜田 圭
- 【権利者代理人】鈴木 洋雅
- 【異議申立人】田中 重雄
- 【異議申立人】田中 理紗
- 【異議申立人】清水 俊輔
- 審判長/審判官
- 審判長 伏本 正典
- 審判官 相崎 裕恒
- 審判官 緑川 隆
- 分類
- P1651.121-YAA(G06Q) / P1651.113-YAA(G06Q) / P1651.16 -YAA(G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7203470号発明「二酸化炭素排出量管理装置、管理方法、及び、プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7203470号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、5、6について訂正することを認める。
特許第7203470号の請求項1~2、4~6に係る特許を維持する。
特許第7203470号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7203470号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和4年6月30日の特許出願(特願2022-105970号)であり、同5年1月4日に登録され、同年同月13日に特許公報が発行された。
その後、その特許について、同年7月7日に特許異議申立人田中重雄(以下「申立人A」という。)により、同年同月12日に特許異議申立人田中理沙(以下「申立人B」という。)により、同年同月13日に特許異議申立人清水俊輔(以下「申立人C」という。)より、それぞれ特許異議の申立てがされた。
その後、当審において同年12月11日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、その指定期間内に提出された同6年2月8日付の訂正請求書(以下単に「訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行った。
なお、後述する訂正の内容は、実質的な判断に影響を与えるものではなく、特許異議申立人に対して相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与える必要がない特別の事情があることから、申立人A、B及びCに意見書を提出する機会を与えなかった。
(申立人Bより、同年3月27日付けで上申書が提出され、訂正の内容にかかわらず、少なくとも取消理由が通知されていない請求項3に対し意見を述べる機会を求める旨の上申がなされているが、特許異議の申立ての期間が特許掲載公報発行の日から6月以内に制限されている趣旨に照らせば、取消理由が通知されていない請求項3に対し意見を述べる機会を与えることはできない。)
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項
本件訂正請求の訂正事項は、以下のア~エのとおりである。
ア 訂正事項1
訂正前の請求項1の「前記付加情報に基づいて抽出された前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する出力手段と、を備える」を「前記付加情報に基づいて抽出された前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する出力手段と、を備え、前記輸送ルート登録手段により登録された前記輸送ルートを複数のユーザで共有可能である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、4も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
請求項3を削除する。
ウ 訂正事項3
訂正前の請求項5の「前記付加情報に基づいて抽出された前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する」を「前記付加情報に基づいて抽出された前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力し、登録された前記輸送ルートを複数のユーザで共有可能である」に訂正する。
エ 訂正事項4
訂正前の請求項6の「前記付加情報に基づいて抽出された前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する出力手段、として機能させる」を「前記付加情報に基づいて抽出された前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する出力手段、として機能させ、前記輸送ルート登録手段により登録された前記輸送ルートを複数のユーザで共有可能である」に訂正する。
なお、訂正事項1~訂正事項2は、一群の請求項〔1-4〕に対して請求されたものである。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項3に記載されていた限定事項により請求項1及び請求項1を引用する請求項2及び請求項4を限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であり、また、同条第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
また、訂正後の請求項1が示す特許発明の技術的範囲は、訂正前請求項3のそれに含まれることが明らかであり、訂正後の請求項2及び請求項4も、同様に、訂正前請求項3のそれに含まれることが明らかであることから、特許請求の範囲を実質的に拡張し又は変更するものではないと認められ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前請求項3を削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当し、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項3及び4について
訂正事項3及び訂正事項4は、訂正前の請求項3に記載されていた限定事項によりそれぞれ請求項5及び請求項6を限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であり、また、同条第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
また、訂正後の請求項請求項5及び請求項6が示す特許発明の技術的範囲は、実質的に訂正前請求項3の内容に含まれることが明らかであることから、特許請求の範囲を実質的に拡張し又は変更するものではないと認められ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、上記訂正事項に係る請求項の特許については、それぞれ特許異議の申立てがなされているので、独立特許要件は課されない。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、5、6について訂正することを認める。
3 本件特許発明1~6
本件特許発明1~6は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
輸送ルートを登録する輸送ルート登録手段と、
前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段と、
前記輸送ルートにおける輸送実績を登録する輸送実績登録手段と、
前記算出方法指定手段により指定された前記二酸化炭素排出量算出方法と前記輸送実績登録手段により登録された前記輸送実績とに基づいて、二酸化炭素排出量を算出する算出手段と、
前記輸送実績に対して、付加情報を付加する付加手段と、
前記付加情報に基づいて抽出された前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する出力手段と、を備え、前記輸送ルート登録手段により登録された前記輸送ルートを複数のユーザで共有可能である
ことを特徴とする二酸化炭素排出量管理装置。
【請求項2】
前記出力手段は、二酸化炭素排出量に関する報告書を出力可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素排出量管理装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記二酸化炭素排出量算出方法は、燃料法、燃費法、改良トンキロ法、及び、従来トンキロ法を含み、
前記輸送実績登録手段は、前記輸送ルートにおいて指定された前記二酸化炭素排出量算出方法に応じた情報を、前記輸送実績として登録可能である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の二酸化炭素排出量管理装置。
【請求項5】
二酸化炭素排出量管理装置により実行される管理方法であって、
輸送ルートを登録し、
前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定し、
前記輸送ルートにおける輸送実績を登録し、
指定された前記二酸化炭素排出量算出方法と登録された前記輸送実績とに基づいて、二酸化炭素排出量を算出し、
前記輸送実績に対して、付加情報を付加し、
前記付加情報に基づいて抽出された前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力し、登録された前記輸送ルートを複数のユーザで共有可能である
ことを特徴とする管理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
輸送ルートを登録する輸送ルート登録手段、
前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段、
前記輸送ルートにおける輸送実績を登録する輸送実績登録手段、
前記算出方法指定手段により指定された前記二酸化炭素排出量算出方法と前記輸送実績登録手段により登録された前記輸送実績とに基づいて、二酸化炭素排出量を算出する算出手段、
前記輸送実績に対して、付加情報を付加する付加手段、
前記付加情報に基づいて抽出された前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する出力手段、
として機能させ、前記輸送ルート登録手段により登録された前記輸送ルートを複数のユーザで共有可能であることを特徴とするプログラム。」
4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、4、5及び6に係る特許に対して、当審において令和5年12月11日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件特許の請求項1、2、4、5及び6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、4、5及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引用文献
文献1(申立人Bの甲第1号証):
物流から生じるCO2排出量のディスクロージャーに関する手引き(平成24年6月、国土交通政策研究所)
文献2(申立人Aの甲第1号証):
特開2009-230740号公報
(2)当審の判断
ア 請求項1について
(以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明1」という。他の請求項についても同様。)
(ア) 文献1の記載事項及び文献1発明
(注:半角括弧書き数字は、原文の丸数字を示す。また、「CO2」の「2」は原文では下付数字である。)
a 3ページ
「1.1 手引き策定の目的と基本的な考え方
・企業が海外を含めサプライチェーンを通じてCO2排出量の把握・算定・開示を進めていくことは、グローバルに事業を展開する日本企業の責務であり、投資家等の要請に応えることでもある。
・本手引きは、これに自主的に取り組もうとする企業に対して、連結企業グループとして関与する国際物流および外国内物流に伴うCO2排出量を把握・算定・開示するための統一的手法を提示するものである。」
b 4ページ
「2.1物流CO2排出量の把握・算定対象範囲の考え方
(1)サプライチェーンにおける把握・算定対象範囲
物流に係るサプライチェーンにおけるCO2排出量の把握の範囲を、国内外区分およびGHG ProtocolのScope3を踏まえ、自社を中心に図‐1のとおり6つに区分する。
i: 調達における外国内輸送(トラック、鉄道、航空、内航海運など)
ii: 調達における国際間輸送(国際航空、外航海運)
iii: 調達における国内輸送(トラック、鉄道、航空、内航海運など)
iv: 販売における国内輸送(トラック、鉄道、航空、内航海運など)
v: 販売における国際間輸送(国際航空、外航海運)
vi: 販売における外国内輸送(トラック、鉄道、航空、内航海運など)
・・・・
(3)企業グループにおける把握・算定対象範囲
企業グループにおける把握・算定の対象範囲は、原則として親会社・子会社および関連会社全てを対象とするのが望ましい。ただし、CO2排出量の観点から重要性の乏しい子会社および関連会社は算定から除外することが許容されるべきであり、逆に財務会計上は重要性がなくとも、物流CO2排出量が軽微でない場合には算定対象とすべきである。」
c 5ページ
「(2)算定の進め方の手順
(1)物流・仕入れ・売上などの各種データから、輸送重量が把握できる範囲を確認する。
(2)把握した輸送重量を、サプライチェーンにおける物流区分のi~viに分類する。
(3)区分iii・ivについては、貨物所有権の有無に限らずに省エネ法での算定手法に従いCO2 排出量を算定する。
(4)区分i・ii・v・viについては、輸送ごとに輸送手段・発地/着地に分類する。
(5)各輸送において、燃料使用実績の把握の可否を確認する。
(6)把握可能であれば燃料法を活用し算定する。不可能であれば輸送距離について把握する。輸送距離は、実輸送距離の測定や、距離測定ツールを活用して把握する。
(7)燃費の把握の可否を確認し、把握可能であれば輸送距離と燃費から燃費法を活用して CO2 排出量を算定する。不可能であればトンキロ法の排出原単位について把握する。排出原単位は、各地域の原単位の入手や、シナリオ設定・省エネ法の原単位の活用などによって把握する。
(8)排出原単位・輸送重量・輸送距離を使い、トンキロ法でCO2排出量を算定する。
(9)各物流区分におけるCO2排出量を合算する。
(10)(1)~(9)の手順を連結企業グループ・関連会社へと拡大し、CO2排出量を算定する。
(11)全ての会社の算定結果を集計し、情報を開示する。」
d 11ページ
「3. 物流CO2排出量簡易算定ツール
3.1 ツール作成の目的
本手引きを活用して物流から生じるCO2排出量の把握・算定を行うことを支援するために、国際間および外国内の物流からのCO2排出量の算定を目的として作成した。
手引きの内容を踏まえた設計を意識し、既存の算定手法・排出原単位・距離情報を取り入れ、利用者の物流把握レベルに応じて簡便に算定できる仕組みとしている。
3.2 ツールの概要説明
本ツールは、MS Excelをベースとして「算出表」「都市名リスト」「距離データ」「名前の管理の設定変更」「トンキロ法排出原単位一覧」「区分別集計表」の6つのシートで構成されている。
基本機能として、「算出表」シートにおける入力・選択結果が「区分別集計表」シートに反映されて排出量が算定される。加えて、「算出表」「都市名リスト」「距離データ」シートの設定変更によって、個々の利用者の物流実態に合わせて輸送区間・輸送距離・トンキロ法排出原単位の設定を変更することが可能となっている。
e 11ページ((1)算出表の説明)
「(1)各シートにおける機能の説明
(1)算出表
・従来トンキロ法による算定を基本として設計。
・輸送重量を入力し、輸送手段、輸送区間(発地/着地)をプルダウンで選択することで輸送距離、CO2 排出原単位が自動的に設定され CO2 排出量を計算する仕組み。
・輸送距離、CO2排出原単位は手入力も可能であり、手入力を優先的に反映する。
・従来トンキロ法を基本として、改良トンキロ法、燃費法、燃料法での算定も可能であり、それぞれの算定結果を優先して(精緻な値を優先して)表示する設計。
詳細な説明について、図-8・図-9・図-10・図-11・図-12に示す。」
f 図-8
[図:0001423428000001.jpg]
g 図-9
[図:0001423428000002.jpg]
h 図-10
[図:0001423428000003.jpg]
i 図-11
[図:0001423428000004.jpg]
j 図-12
[図:0001423428000005.jpg]
k 14ページ((6)区分集計表の説明)
「(6)区分別集計表
・「算出表」シートにおける算定結果を物流区分(i~vi)ごとに集計して表示。
・ 輸送重量についても集計して表示している(図-18)。」
l 図-18
[図:0001423428000006.jpg]
m 以上の記載及び図示によれば、文献1には、次の発明(以下「文献1発明」という)が記載されている。
連結企業グループとして関与する国際物流および外国内物流に伴うCO2排出量を把握・算定・開示するための統一的手法を提示するものである手引きを活用して物流から生じるCO2排出量の把握・算定を行うことを支援するための物流CO2排出量簡易算定ツールであって、
この企業グループにおける把握・算定の対象範囲は、原則として親会社・子会社および関連会社全てを対象とするのが望ましいものの、CO2排出量の観点から重要性の乏しい子会社および関連会社は算定から除外することが許容されるべきであり、物流CO2排出量が軽微でない場合には算定対象とすべきであるとされており、
MS Excelをベースとして「算出表」「都市名リスト」「距離データ」「名前の管理の設定変更」「トンキロ法排出原単位一覧」「区分別集計表」の6つのシートで構成されており、
「算出表」シートにおける入力・選択結果が「区分別集計表」シートに反映されて排出量が算定され、加えて、「算出表」「都市名リスト」「距離データ」シートの設定変更によって、個々の利用者の物流実態に合わせて輸送区間・輸送距離・トンキロ法排出原単位の設定を変更することが可能となっており、
「算出表」は、従来トンキロ法による算定を基本として設計され、改良トンキロ法、燃費法、燃料法での算定も可能であって、それぞれの算定結果を優先して(精緻な値を優先して)表示する設計となっており、輸送重量の入力、コンテナ船、航空、鉄道、トラック等の輸送手段、輸送区間(発地/着地)の選択による入力によって、輸送距離、CO2排出原単位が自動的に設定されてCO2排出量が計算され、その際、輸送距離とCO2排出原単位は手入力が可能であって、手入力された値が優先的に計算に反映されるものとなっており、
「算出表」のうち、全ての算定方法において共通して入力、選択する部分では、輸送手段、輸送実績である輸送重量とコンテナ数のいずれか、発地(地域)、着地(地域)の入力ないし選択による入力が必須のものとされており、
従来トンキロ法・改良トンキロ法で入力、選択する部分では、従来トンキロ法について、その原単位が自動入力されまたはその数値が入力されて入力された数値が表示され、他の算定手法に入力があった場合原単位の表示がなくなり、改良トンキロ法について、トラック輸送においてのみ使用されるものであって、車両の最大積載量の入力及び積載率の入力により原単位の数値が表示され、
燃費法・燃料法で入力、選択する部分では、燃費法について、燃料種の選択による入力、燃費と自社貨物按分率の入力によって自動的に燃費法で計算され、燃料法について、燃料種の選択による入力、燃料使用量と自社貨物按分率の入力により自動的に燃料法で計算され、
入力・選択した結果を表示する部分では、最低限、入力ないし選択による入力が必須の部分を入力すれば算定結果は表示される仕組みであり、従来トンキロ法での算定を基本として、その他の算定方法の欄に入力があればその数値を優先して反映するものとなっており、
「区分別集計表」は「算出表」シートにおける算定結果を物流区分(i~vi)ごとに集計して表示するものである、
CO2排出量簡易算定ツール。
(イ) 文献2の記載事項
文献2の記載事項は後記5(2)アのとおりであり、文献2には、荷主別に二酸化炭素排出量を出力(【0019】【0020】)するため、配送実績情報編集処理(【0098】~【0106】)として、運行開始から1トリップ単位で荷主毎の荷物実績重量を算出して登録し、その際、荷主別の貨物計画重量(荷主計画重量)の比率である荷主按分比率を算出し、この荷主按分比率を用いて荷主毎の荷物実績重量(荷主実績重量)を算出して登録し、登録された荷主実績重量により置き換えられた荷主計画重量を利用して次のトリップ時の荷主実績重量を算出する処理を、運行終了まで繰り返して配送実績情報を編集する旨、運行実績情報(配送実績情報)から取得した「荷主コード」及び「荷物実績重量」がCO2実績情報に記憶される旨(【0093】、図11)、「荷物実績情報」を用いて配送実績CO2元データに含まれる輸送トンキロを算出する旨(【0085】)、配送実績CO2元データは、荷主コードおよび輸送トンキロ等により構成される旨(【0086】)、この配送実績CO2元データに含まれる輸送トンキロ等の情報に基づいて二酸化炭素排出量を算出するCO2算出処理を行う旨(【0091】、図9)、このCO2算出処理の算出結果に含まれるCO2実績情報に基づいて帳票が出力される旨(【0092】、図9)、が記載されている(以下「文献2記載事項」という。)。
(ウ)本件特許発明1と文献1発明との対比
a 文献1発明の「CO2排出量」は、本件特許発明の「二酸化炭素排出量」に相当し、文献1発明における「従来トンキロ法」、「改良トンキロ法」、「燃費法」及び「燃料法」は、いずれも、二酸化炭素排出量の算定の方法であるから、本件特許発明1の「二酸化炭素排出量算出方法」に相当する。そして、文献1発明の「物流CO2排出量簡易算定ツール」は、これのベースとなるMS ExcelがインストールされたPCにおいて実行されるところ、「物流CO2排出量簡易算定ツール」を実行するPCは、二酸化炭素排出量の把握や算定を支援して二酸化炭素排出量を管理するためのものといえるから、下記の相違点を除いて、本件特許発明1の「二酸化炭素排出量管理装置」に相当する。
文献1発明の「算出表」では、コンテナ船、航空、鉄道、トラック等の輸送手段、輸送実績である輸送重量とコンテナ数のいずれか、発地(地域)、着地(地域)が全ての算定方法において共通して必須のものとして入力(ないし選択による入力)がなされることで算定結果が表示されるところ、これらの必須の入力のうち、「輸送手段」、「発地(地域)」、「着地(地域)」は、これらの入力により、コンテナ船、航空、鉄道、トラック等のいずれかの輸送手段による発地(地域)から着地(地域)までの輸送ルートが登録されることから、本件特許発明の「輸送ルート」に相当するといえ、文献1発明の「算出表」は、「輸送手段」、「発地(地域)」及び「着地(地域)」の入力を受けて輸送ルートの登録機能を担う手段であることから、本件特許発明1の「輸送ルート登録手段」に相当する。
文献1発明の「算出表」では、従来トンキロ法による算定を基本とし、改良トンキロ法、燃費法、燃料法での算定も可能となっており、具体的には、登録された輸送ルート(「輸送手段」、「発地(地域)」、「着地(地域)」)について、従来トンキロ法でない「他の算定手法」についての入力があった場合、トラック輸送の車両の最大積載量の入力及び積載率の入力によって改良トンキロ法の原単位の数値が表示されたり、燃料種、燃費、自社貨物按分率の入力によって燃費法で計算されたり、燃料種、燃料使用量と自社貨物按分率が入力されることにより燃料法で計算されたりしており、登録された輸送ルートについて二酸化炭素排出量算出方法が指定されていることから、文献1発明の「算出表」は、登録された輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法の指定機能を担う手段であることから、本件特許発明1の「算出方法指定手段」に相当する。
文献1発明では、個々の利用者の物流実態に合わせて「輸送距離」の設定を変更可能であり、具体的には「算出表」において手入力された「輸送距離」が優先的に計算に反映されることから、文献1発明の「輸送距離」は、本件特許発明1の「輸送実績」に相当する。さらに、また、文献1発明は、トラック輸送の車両の最大積載量の入力及び積載率の入力によって改良トンキロ法の原単位の数値が表示されたり、燃料種、燃費、自社貨物按分率の入力によって燃費法で計算されたり、燃料種燃料使用量と自社貨物按分率が入力されることにより燃料法で計算されたりしており、登録された輸送ルートについて二酸化炭素排出量算出方法が指定されているところ、改良トンキロ法についての入力されるトラック輸送の車両の最大積載量及び積載率、燃費法について入力される燃料種、燃費、自社貨物按分率、燃料法について入力される燃料種燃料使用量と自社貨物按分率は、いずれも、「輸送実績」として「登録」されるものといえる。これらを踏まえれば、文献1発明の「算出表」は、輸送ルートの輸送実績の登録機能を担う手段であることから、本件特許発明1の「輸送実績登録手段」に相当するといえる。
文献1発明では「「算出表」シートにおける入力・選択結果が「区分別集計表」シートに反映されて排出量が算定され」ることから、前記した算出方法指定手段により指定された二酸化炭素排出量算出方法と前記した輸送実績登録手段により登録された輸送実績とに基づいて、二酸化炭素排出量が算出されており、これらを踏まえれば、文献1の「算出表」は、この二酸化炭素排出量の算出機能を担う手段であることから、本件特許発明1の「算出手段」に相当するといえる。
文献1発明では、「算出表」シートにおける入力・選択結果が「区分別集計表」シートに反映されて排出量が算定されることから、この「区分別集計表」シートと本件特許発明1の「出力手段」は、輸送実績の二酸化炭素排出量を出力するものである点で共通するといえる。
b 以上を踏まえれば、本件特許発明1と文献1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
輸送ルートを登録する輸送ルート登録手段と、
前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段と、
前記輸送ルートにおける輸送実績を登録する輸送実績登録手段と、
前記算出方法指定手段により指定された前記二酸化炭素排出量算出方法と前記輸送実績登録手段により登録された前記輸送実績とに基づいて、二酸化炭素排出量を算出する算出手段と、
前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する出力手段と、を備える
二酸化炭素排出量管理装置。
<相違点>
(相違点1)
本件特許発明1においては、「前記輸送実績に対して、付加情報を付加する付加手段」を備え、出力手段が出力する前記輸送実績の二酸化炭素排出量が「前記付加情報に基づいて抽出された」ものであるのに対し、文献1発明においては、「前記輸送実績に対して、付加情報を付加する付加手段」を備えるか否か、及び、出力手段が出力する前記輸送実績の二酸化炭素排出量が「前記付加情報に基づいて抽出された」ものであるか否かが明らかでない点
(相違点2)
本件特許発明1においては、「前記輸送ルート登録手段により登録された前記輸送ルートを複数のユーザで共有可能である」のに対し、文献1発明における「輸送ルート登録手段」は、MS Excelのシートである「算出表」であって、複数のユーザで共有可能なものでない点
(エ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
文献1発明の「物流CO2排出量簡易算定ツール」は、ベースとなるMS ExcelがインストールされたPCにおいて実行される、いわばプロトタイプにすぎないものであって、その輸送登録手段に相当する算出表は、個人での利用を想定したものであって、当該算出表に登録したものを複数のユーザで共有可能なものでなく、また、そのような設計変更を予定したものともいえない。
また、文献2を含め、申立人A、B及びCが提出したいずれの証拠も、文献1と組み合わせ可能な技術として、相違点2に係る本件特許発明1の構成を開示するものではない。
以上を踏まえれば、文献1発明及び提出された各甲号証の記載に基づいて相違点2に係る本件特許発明1の構成に想到することはできない。
してみると、本件特許発明1は、文献1発明及び文献2記載の技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 請求項2、4、5及び6について
請求項2及び請求項4は、請求項1を引用する請求項であるから、当該請求項に係る特許発明2,4は、文献1発明と対比すると上記相違点2において相違し、この点に係る本件特許発明2,4の構成に想到することができないことは、上記したとおりである。
請求項5及び請求項6に係る特許発明5、6についても、文献1発明と対比すると、上記相違点2に対応する相違点において相違し、この点に係る本件特許発明5,6の構成に想到することができないことは、上記アと同様である。
してみると、本件特許発明2、4、5及び6についても、本件特許発明1と同様、文献1発明及び文献2記載の技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件特許発明1、2、4、5及び6は、文献1発明及び文献2記載の技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求項1、2、4、5及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立理由の概要
ア 提出された証拠の整理
文献1(申立人Bの甲第1号証)
物流から生じるCO2排出量のディスクロージャーに関する手引き,国土交通政策研究所、平成24年6月
文献2(申立人Aの甲第1号証)
特開2009-230740号公報
文献3(申立人Aの甲第2号証)
特開2008-021285号公報
文献4(申立人Aの甲第3号証)
運行管理表共有による効率化輸送,Response,令和2年4月30日
文献5(申立人Aの甲第4号証、申立人Bの甲第3号証、申立人Cの甲第6号証)
ロジスティックス分野におけるCO2排出量算定方法共同ガイドラインVer.3.1,経済産業省・国土交通省,平成28年3月
文献6(申立人Aの甲第5号証)
CO2排出量関連データ交換の手引き(詳細編),経済産業省,平成20年2月
文献7(申立人Aの甲第6号証)
サプライチェーンCO2の見える化のための仕組み構築に向けた検討,INTERNET Watch,2022年5月16日
文献8(申立人Bの甲第2号証)
特開2007-207140号公報
文献9(申立人Cの甲第1号証)
ニュースリリース 日本通運、国内のCO2排出量を可視化する「エコトランス・ナビ」のサービスを開始,NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社,令和3年11月30日
文献10(申立人Cの甲第2号証)
ワンストップ・ナビ(Webサイト),日本通運株式会社,令和3年11月18日
文献11(申立人Cの甲第3号証)
ニュースリリース「CO2排出量可視化ソリューション」の提供開始について,NTTロジスコ,令和3年12月8日
文献12(申立人Cの甲第4号証)
CARBON CALCULATOR KNOW YOUR FOOTPRINT(英文記事),DHL,2016年6月6日
文献13(申立人Cの甲第5号証)
サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(Ver.2.4),環境省・経済産業省,2022年3月
文献14(申立人Cの甲第7号証)
省エネ法対応 荷主の省エネ推進の手引き第7版,資源エネルギー庁,2021年3月
文献15(申立人Cの甲第8号証)
JST抄録 輸送とロジスティックスのための将来のグローバスCO_2計算標準の推奨,2021年
文献16(申立人Cの甲第9号証)
広辞苑第7版「ルート」,2018年1月12日
文献17(申立人Cの甲第10号証)
国土交通省HP「モーダルシフトとは」
イ 申立人Aの特許異議申立理由
本件特許の請求項1、5及び6に係る発明は、文献2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明であるから、請求項1、5及び6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、本件特許の請求項1~6に係る発明は、文献2に記載された発明及び文献3~7記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ 申立人Bの特許異議申立理由
(ア)本件特許の請求項1~6に係る発明は、文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明であるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、本件特許の請求項1~6に係る発明は、文献2に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(イ)本件特許の請求項1~6に係る発明は、文献8に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
エ 申立人Cの特許異議申立理由
(ア)本件特許の請求項1~6に係る発明は、文献9に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明であるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、本件特許の請求項3~4に係る発明は、文献9に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(イ)本件特許の請求項1~6に係る発明は、文献11に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明であるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、本件特許の請求項3~4に係る発明は、文献11に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(ウ)本件特許の請求項1~3、5、6に係る発明は、文献12に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明であるから、請求項1~3、5、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、本件特許の請求項3~4に係る発明は、文献12に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(エ)本件特許の請求項1~6に係る発明は、文献10が示す、本件特許出願の日の前の他の特許出願に係る発明と同一であると推察されるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
(2)申立人Aの特許異議申立理由(上記(1)イ)について
ア 文献2の記載、文献2発明について
(ア)文献2の記載は、次のとおりである。
a
「【0006】
この発明は、上述の問題に鑑み、定量化しづらい輸送時の二酸化炭素排出量を把握できる利便性の高い二酸化炭素排出量計測システムを提供し、環境保護に貢献することを目的とする。」
「【0016】
またこの発明の態様として、前記演算手段は、前記移動距離と前記貨物重量とを乗算した輸送トンキロに、予め定められた改良トンキロ法燃料使用原単位と単位発熱量と排出係数と44/12とを乗算して二酸化炭素排出量を算出する構成とすることができる。
これにより、改良トンキロ法を用いて二酸化炭素排出量を精度良く算出することができる。」
「【0019】
またこの発明の態様として、前記車両に積載された荷物の荷主および荷物計画重量と該車両の車両識別情報とで構成される配送計画情報を取得する配送計画情報取得手段を備え、前記演算手段は、前記車両ナンバーに対応する前記車両識別情報の配送計画情報を参照し、前記車両関連情報から取得した前記貨物重量を前記配送計画情報の前記荷物計画重量に基づいて前記荷主別に按分し、荷主別に二酸化炭素排出量を出力する構成とすることができる。
【0020】
これにより、より精度の高い二酸化炭素排出量を荷主別に算出することができる。また、輸送地点端末から受信した実測値の車両総重量に基づいて貨物重量を取得し、この貨物重量を荷主別に按分した場合であれば、計画時点の荷物計画重量をそのまま用いるよりも高い精度で二酸化炭素排出量を算出できる。」
「【0025】
この発明により、上述の問題に鑑み、定量化しづらい輸送時の二酸化炭素排出量を把握できる利便性の高い二酸化炭素排出量計測システムを提供し、環境保護に貢献することができる。」
「【0035】
輸送地点間距離マスタデータは、第1輸送地点の端末ID、第2輸送地点の端末ID、および第1輸送地点から第2輸送地点までの輸送地点間距離で構成されており、全ての輸送地点の組合せが登録されている。
係数マスタデータは、改良トンキロ法燃料使用原単位、単位発熱量、排出係数、二酸化炭素排出係数等、各種係数で構成されている。このうち単位発熱量、排出係数、および二酸化炭素排出係数は、燃料種別毎に異なる値が記憶されている。
配送実績データは、輸送状況確認地点の端末ID、車両ナンバー、貨物重量、および輸送状況確認時刻等で構成されている。」
「【0052】
制御部24は、配送実績データを参照して条件に該当するデータを抽出する(ステップS12)。
制御部24は、抽出したデータに基づいて、二酸化炭素排出量を算出する(ステップS13)。このとき、制御部24は、まず、抽出したデータについて、各車両がどの輸送地点Pからどの輸送地点Pまで移動したか確認し、各車両の移動距離を輸送地点間距離マスタデータから求める。また、各車両の配送実績データの車両総重量から、各車両の車種についての車種マスタデータの車両単体重量をそれぞれ減算し、各車両の貨物重量を求める。そして、各車両について、求めた移動距離と貨物重量から輸送トンキロを求め、図3(A)で説明した改良トンキロ法の演算式を用いて二酸化炭素排出量を算出する。」
「【0062】
図6は、二酸化炭素排出量計測システム1aのシステム構成を示す構成図である。この二酸化炭素排出量計測システム1aは、実施例1の二酸化炭素排出量計測システム1の構成に加えて、車両Tに移動体端末50が搭載されている。また、輸送地点P2のように、車両重量計測部42が設けられていない(あるいは用いない)輸送地点がある。この実施例では、出発地点である輸送地点P1の輸送地点端末4にナンバープレート読取部41および車両重量計測部42が設けられており、到着地点である輸送地点P2の輸送地点端末4には車両重量計測部42が設けられていない。この場合でも、途中で荷降ししないか全てを荷降しするケースで特に問題なく荷物の重量を取得できる。」
「【0081】
移動体端末50は、車両Tの乗務員による配送開始入力143、および配送終了入力144を受け取り、走行実績データ142を作成する。この配送実績データ142は、運行年月日、車両コード、配送元地点ID、配送先地点ID、配送距離、および積荷ステータス等により構成されている。ここでの配送距離は、GPS機能によって走行経路に応じて精度よく取得される。すなわち、発地点と着地点の直線距離ではなく走行経路の距離を取得できるため、実際の走行距離が得られる。また、積荷ステータスは、積込、荷降、休憩、または手持などで構成されている。移動体端末50は、この走行実績データ142を送信する走行実績データ送信処理141を行い、インターネットまたは携帯網を通じて配送実績処理サーバ2bへ送信する。
【0082】
配送実績処理サーバ2bは、輸送地点端末4からWIM計測データ132を受信するWIM計測データ受信処理127と、移動体端末50から走行実績データ142を受信する走行実績データ受信処理128とを行い、受信したWIM計測データ132および走行実績データ142をマージするWIM-走行実績マージ処理126を実行し、運行実績情報125を作成する。このとき、車両総重量(車両計測重量)から車両単体重量を減算して貨物重量を算出し、この貨物重量に走行距離を乗算して輸送トンキロも求める。ここでの走行距離は、移動体端末50のGPS受信処理52により1秒毎に取得した位置情報から精度よく算出したものを用いる。」
「【0085】
そして、配送実績処理サーバ2bは、これらの配送計画情報113、各種定義表(71~81)、および運行実績情報125から配送実績情報を編集する配送実績情報編集処理123を実行し、配送実績情報CO2元データ121を作成する。この配送実績情報CO2元データ121を作成する際、配送実績処理サーバ2bは、配送計画情報113の荷物計画重量と実測値の車両計測重量に基づいて荷主別に算出した荷物実績重量を用いて輸送トンキロを決定する。この荷物実績重量の算出方法については後述する。
【0086】
配送実績情報CO2元データ121は、運行年月日、荷主コード、および輸送トンキロ等により構成されており、セントラルサーバ2aへ送信される。
【0087】
セントラルサーバ2aは、配送実績処理サーバ2bから配送実績情報CO2元データ121を収集するデータ収集処理104を実行する。そして、セントラルサーバ2aは、このデータ収集処理104で収集した配送実績情報CO2元データ121と、マスタデータベース108から読み出した車両定義表105、CO2排出原単位マスタ106、およびE消費原単位マスタ107とに基づいて、二酸化炭素排出量を算出するCO2算出処理103を実行する。
【0088】
ここで用いる車両定義表105は、車両定義表71(図8参照)のデータのうち車両総重量と車載冗長重量等を利用する。また、CO2排出原単位マスタ106は、輸送種別と原単位とで構成されており、E消費原単位マスタ107は、燃料種別と算出計数1~3で構成されている。
【0089】
詳述すると、CO2排出原単位マスタ106に記憶されている原単位は、図10(A)に示す改良トンキロ法燃料使用原単位である。この改良トンキロ法燃料使用原単位は、車種別に計算式が記憶されている。いずれの計算式も、変数として輸送トンキロ当たり燃料使用量(リットル)、積載率(%)、最大積載量(kg)が用いられている。
【0090】
また、E消費原単位マスタ107に記憶されている算出計数は、図10(B)に示す排出係数である。この排出係数は、ガソリン、軽油、A重油といった燃料種別毎に定められている。
【0091】
CO2算出処理103では、収集したデータをもとに、図10(C)に示す計算式を用いて、二酸化炭素排出量(CO2排出量)を算出する。詳述すると、配送実績情報CO2元データ121に含まれる輸送トンキロと、輸送種別に応じてCO2排出原単位マスタ106から得た改良トンキロ法燃料使用原単位算出法により算出した改良トンキロ法燃料使用原単位と、1/1000と、単位発熱量と、燃料種別に応じてE消費原単位マスタ107から得た排出係数と、定数44/12とを乗算することで、CO2排出量を求める。このとき、二酸化炭素排出量の計算式から排出係数と定数44/12を除くことで得られるエネルギー使用量(GJ)も算出する。
【0092】
このような演算によって図9に示すようにCO2実績情報102を取得し、セントラルサーバ2aは、帳票出力処理101を実行する。CO2実績情報102には、二酸化炭素排出量(CO2(t-CO2))、エネルギー使用量、および輸送トンキロが含まれており、これを適宜のプリンタ等によって帳票に出力する。
【0093】
図11は、上述した処理にて二酸化炭素排出量を算出するロジックを示す説明図である。
CO2実績情報102は、上述した二酸化炭素排出量(CO2(t-CO2))、エネルギー使用量、および輸送トンキロだけでなく、運行年月日、荷主コード、配送順、配送距離、製品種別、荷物実績重量、燃料種別、輸送種別、配送CO2量(トン・CO2)等も記憶されている。
このうち運行年月日、主コード、配送順、配送距離、および荷物実績重量は、運行実績情報125から取得したものである。
【0094】
また、この運行実績情報125は、車両コードにより、車両定義表105と紐付けされている。これにより、運行実績情報125の車両コードをもとに運行実績情報125から当該車両に関する情報を取得できるようになっている。
【0095】
また、車両定義表105は、燃料コード(燃料種別)によりCO2排出原単位マスタ106と紐付けされている。これにより、車両定義表105の燃料コードをもとに、当該車両に対応する原単位(CO2排出係数)を取得できるようになっている。
【0096】
積載率Aは、CO2実績情報102の貨物実績重量から車両定義表105の最大積載量を除算することで求めることができる。
改良トンキロ法燃料使用原単位Bは、この積載率Aと車両定義表105の最大積載量を入力することで求めることができる。
【0097】
二酸化炭素排出量Cは、運行実績情報125の輸送トンキロと、CO2排出原単位マスタ106のCO2排出係数と、前記改良トンキロ法燃料使用原単位Bとを入力することで算出することができる。
このように各種データを利用して、二酸化炭素排出量を算出できる。
【0098】
図12は、配送実績処理サーバ2bが配送実績情報編集処理123にて実行する荷物実績重量の算出処理のフローチャートである。この処理では、運行開始から運行終了まで1トリップ単位で荷主別に荷物の実績重量を算出する。ここで1トリップとは、ある届先から次の届先までの輸送を指し、出発地のセンタから到着地のセンタまでの間に複数存在している。」
「【0102】
配送実績処理サーバ2bは、ある地点を出発する時点の各荷物計画重量から荷主別の貨物計画重量の比率である荷主按分比率を算出する(ステップS4)。この荷主按分比率は、例えばA,B,Cの3者の荷主であれば次のような形で算出するとよい。
A荷主計画重量:B荷主計画重量:C荷主計画重量=1:2:3
【0103】
配送実績処理サーバ2bは、ステップS3で求めた差異総重量にステップS4で求めた荷主按分比率を乗じて荷主毎の差異重量を算出する(ステップS5)。
配送実績処理サーバ2bは、荷主毎の積卸区分を取得する(ステップS6)。この積卸区分は、他ITシステム7の配送計画情報113から取得する。
【0104】
配送実績処理サーバ2bは、荷主毎の荷物実績重量を算出する(ステップS7)。この荷物実績重量は、配送計画情報113の荷物計画重量に基づく荷主の計画重量からステップSS5で求めた荷主の差異重量を減算して求める。
【0105】
ここで、総計画から総実績を減算した値が正の場合、積卸区分が正であれば計画重量から差異重量を減算し、積卸区分が負であれば計画重量と差異重量を加算する。また、総計画から総実績を減算した値が負の場合、積卸区分が正であれば計画重量と差異重量を加算し、積卸区分が負であれば計画重量から差異重量を減算する。
【0106】
配送実績処理サーバ2bは、ステップS7で算出した荷物実績重量を登録する(ステップS8)。このとき、次のトリップ時の実績重量算出に利用するため、荷主計画重量を荷主実績重量に置き換える。」
「【0111】
また、配送計画情報113を用いて荷主を判別できるため、特定荷主を自動判別することができる。
また、二酸化炭素排出量だけでなく、エネルギー使用量、および輸送トンキロも出力できるため、省エネ法対応報告値を全て出力することができる。」
b 図9
[図:0001423428000007.jpg]
c 図11
[図:0001423428000008.jpg]
d 図12
[図:0001423428000009.jpg]
(イ)以上の記載によれば、文献2には、下記の文献2発明が記載されている。
(文献2発明)
全ての輸送地点の組合せについて、第1輸送地点の端末ID、第2輸送地点の端末ID、および第1輸送地点から第2輸送地点までの輸送地点間距離で構成されている輸送地点間距離マスタデータが登録されており(【0035】)、
配送実績データ142は、運行年月日、車両コード、配送元地点ID、配送先地点ID、配送距離、および積荷ステータス等により構成されており(【0081】)、
配送実績処理サーバ2bは、輸送地点端末4からWIM計測データ132を受信するWIM計測データ受信処理127と、移動体端末50から走行実績データ142を受信する走行実績データ受信処理128とを行い、受信したWIM計測データ132および走行実績データ142をマージするWIM-走行実績マージ処理126を実行し、運行実績情報125を作成するものであり(【0082】)、
セントラルサーバ2aは、配送実績処理サーバ2bから配送実績情報CO2元データ121を収集するデータ収集処理104を実行し、このデータ収集処理104で収集した配送実績情報CO2元データ121と、マスタデータベース108から読み出した車両定義表105、CO2排出原単位マスタ106、およびE消費原単位マスタ107とに基づいて、二酸化炭素排出量を算出するCO2算出処理103を実行し(【0087】)、CO2算出処理103では、収集したデータをもとに、所定の計算式を用いて、二酸化炭素排出量(CO2排出量)を算出し、その際、配送実績情報CO2元データ121に含まれる輸送トンキロと、輸送種別に応じてCO2排出原単位マスタ106から得た改良トンキロ法燃料使用原単位算出法により算出した改良トンキロ法燃料使用原単位と、1/1000と、単位発熱量と、燃料種別に応じてE消費原単位マスタ107から得た排出係数と、定数44/12とを乗算することで、CO2排出量を求め、このとき、二酸化炭素排出量の計算式から排出係数と定数44/12を除くことで得られるエネルギー使用量(GJ)も算出するものであり(【0091】)、CO2実績情報102を取得して、帳票出力処理101を実行し、このCO2実績情報102には、二酸化炭素排出量(CO2(t-CO2))、エネルギー使用量、および輸送トンキロが含まれており、これを適宜のプリンタ等によって帳票に出力するものであり(【0092】)、また、運行実績情報125は、車両コードにより、車両定義表105と紐付けされており(【0094】)、
さらに、荷主別に二酸化炭素排出量を出力(【0019】【0020】)するため、配送実績情報編集処理(【0098】~【0106】)として、運行開始から1トリップ単位で荷主毎の荷物実績重量を算出して登録し、その際、荷主別の貨物計画重量(荷主計画重量)の比率である荷主按分比率を算出し、この荷主按分比率を用いて荷主毎の荷物実績重量(荷主実績重量)を算出して登録し、登録された荷主実績重量により置き換えられた荷主計画重量を利用して次のトリップ時の荷主実績重量を算出する処理を、運行終了まで繰り返して配送実績情報を編集し、運行実績情報(配送実績情報)から取得した「荷主コード」及び「荷物実績重量」がCO2実績情報に記憶され(【0093】、図11)、「荷物実績情報」を用いて配送実績CO2元データに含まれる輸送トンキロを算出し(【0085】)、配送実績CO2元データは、荷主コードおよび輸送トンキロ等により構成され(【0086】)、この配送実績CO2元データに含まれる輸送トンキロ等の情報に基づいて二酸化炭素排出量を算出するCO2算出処理を行い(【0091】、図9)、このCO2算出処理の算出結果に含まれるCO2実績情報に基づいて帳票が出力されるものであり(【0092】、図9)、
二酸化炭素排出量だけでなく、エネルギー使用量、および輸送トンキロも出力できるため、省エネ法対応報告値を全て出力することができる(【0111】)、
システム
イ 文献4(申立人Aの甲第3号証)の記載
「物流車両の交通量を減らす実証事業を選定 東京オリンピック・パラリンピック対策 2枚目の写真・画像」、「≪画像 国土交通省≫ つばさトラック事業協同組合の「運行管理表共有による効率化輸送」等の記載とともに、下記の図が示されている。
[図:0001423428000010.jpg]
ウ 文献7(申立人Aの甲第6号証)の記載
文献7は、2022年5月16日付けのインターネット上で公開された記事であり、「Green×Digitalコンソーシアムが、サプライチェーン全体におけるカーボンニュートラルに向けた活動の一環としたまとめたレポートを公開し、CO2データの算定や共有に関するルールの方向性を示し、今後の検討スケジュールを明らかにするとともに、取り組みへの参加・協力を求めている旨」、「レポートをまとめたのは、同コンソーシアム内で、デジタル技術を活用してCO2のデータを共有できるプラットフォーム(データ共有基盤)の構築を目的とした活動を行っている「見える化ワーキンググループ」である旨」、「見える化ワーキンググループは、2021年度下期に実証実験の準備フェーズを行い、2022年7月ごろから実証フォーズとして、システムを構築して、実証実験を行う旨」、等が記載されている。
エ 判断
(ア)対比
文献2発明の「輸送地点間距離マスタデータ」、「配送実績データ」、「荷主コード」は、それぞれ本件特許発明1の「輸送ルート登録手段」、「輸送実績」、「付加情報」に相当するといえるから、本件特許発明1と文献2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
輸送ルートを登録する輸送ルート登録手段と、
前記輸送ルートにおける輸送実績を登録する輸送実績登録手段と、
前記輸送実績登録手段により登録された前記輸送実績に基づいて、二酸化炭素排出量を算出する算出手段と、
前記輸送実績に対して、付加情報を付加する付加手段と、
前記付加情報に基づいて抽出された前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する出力手段と、を備える二酸化炭素排出量管理装置。
<相違点>
(相違点1)
本件特許発明1は、「前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段」を備え、算出手段が「前記算出方法指定手段により指定された前記二酸化炭素排出量算出方法」に基づき算出するのに対し、文献2発明は、「改良トンキロ法燃料使用原単位」を使用した算出、つまり改良トンキロ方法による算出を前提としており、輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定してこれを算出に用いるものでない点
(相違点2)
本件特許発明1は、「前記輸送ルート登録手段により登録された前記輸送ルートを複数のユーザで共有可能である」のに対し、文献2発明では、その旨特定されていない点
(イ)相違点の判断
a 相違点1について
文献2発明は、改良トンキロ方法による算出を前提としたものであるから、輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定してこれを算出に用いるものへと変更することは、動機づけを欠くものである。
b 相違点2について
文献2発明は、物流会社における「省エネ法対応報告値」の出力を想定したものであり、登録した輸送ルートを他と共有することを想定したものでない。
また、申立人Aが訂正前の請求項3記載の発明の「前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段」に係る副引例として提示した文献4(申立人Aの甲第3号証)及び文献7(申立人Aの甲第6号証)の記載内容は、上記イ及びウのとおりであって、いずれも、登録した輸送ルートを他と共有することを開示するものとはいえない。
なお、文献3、文献5、文献6(いずれも摘記省略)も、このことを開示するものでない。
c 以上を踏まえれば、本件特許発明1は、文献2発明及び文献4~7記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 請求項2、4、5及び6について
請求項2及び請求項4は、請求項1を引用する請求項であるから、当該請求項に係る特許発明2、4は、文献2発明と対比すると上記相違点1及び2において相違し、この点に係る本件特許発明2、4の構成に想到することができないことは、上記したとおりである。
請求項5及び請求項6に係る特許発明5、6についても、文献2発明と対比すると、上記相違点1及び2に対応する相違点において相違し、この点に係る本件特許発明5、6の構成に想到することができないことは、上記エと同様である。
してみると、本件特許発明2、4、5及び6についても、本件特許発明1と同様、文献2発明及び文献4~7記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
カ 小括
以上によれば、本件特許の請求項1、5及び6に係る発明は、文献2に記載された発明との間に相違点が存在しており文献2に記載された発明でないことから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明でなく、同法同条1項の規定に違反したされたものでない。
また、本件特許の請求項1、2、4~6に係る発明は、文献2発明及び文献3~7記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、請求項1、2、4~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
(3)申立人Bの特許異議申立理由のうち、上記(1)ウ(ア)(文献1を主引用文献とする新規性及び進歩性の欠如)について
ア この特許異議申立理由を請求項1、2、4,5、6に係る特許についての取消理由として採用し特許権者に通知したのに対し、上記1のとおり、特許権者は訂正請求を行い、上記2,3に示した訂正後の請求項1、2、4、5及び6に係る特許について、取消理由は解消している。
すなわち、上記4に示したとおり、文献1を主引用文献とすると、文献1発明の「物流CO2排出量簡易算定ツール」は、ベースとなるMS ExcelがインストールされたPCにおいて実行される、いわばプロトタイプにすぎないものであって、その輸送登録手段に相当する算出表は、個人での利用を想定したものであり、当該算出表に登録したものを複数のユーザで共有可能なものでなく、また、そのような設計変更を予定したものともいえず、本件特許発明1、2、4、5及び6における「登録された前記輸送ルート」を「複数のユーザ」で「共有可能である」ようにする点に想到することはできないことから、訂正後の請求項1、2、4、5及び6に係る特許について、取消理由は解消している。
イ 申立人Bは、訂正前の請求項3に関連して、本件明細書の段落【0060】の記載を指摘し、「甲1発明は、連結企業グループ・関連会社におけるCO2排出量を算定し、全ての会社の算出結果を集計し、情報を開示するから、本件発明3と同様に複数のユーザで輸送ルートを共有していることは明らかである」と主張する。
しかし、文献1の記載から、連結企業グループ・関連会社算定結果に係る情報の開示が行われる旨を認定したとしても、文献1の算出表は、個人での利用を想定したものであって、結果の開示はその結果に至る算定のための算出表における登録情報の開示を意味するものでないことから、登録された輸送ルートの共有が行われているとはいえない。よって、申立人Bの主張は、採用することができない。
(4)申立人Bの特許異議申立理由のうち、上記(1)ウ(イ)(文献8を主引用文献とする新規性及び進歩性の欠如)について
ア 文献8の記載について
(ア)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、物流により車両から排出される二酸化炭素の排出量をより高い精度で算出する二酸化炭素排出量算出装置に関する。」
「【0024】
物流会社コンピュータシステム5は、荷主コンピュータシステム3および運送会社コンピュータシステム7と通信で接続されている。物流会社コンピュータシステム5は、物流管理装置9と本実施の形態の二酸化炭素排出量算出装置11とを備えている。物流管理装置9と二酸化炭素排出量算出装置11とは、別々のコンピュータで構成されてもよく、一つのコンピュータで構成されてもよい。
【0025】
図2の物流システム1において、荷主コンピュータシステム3は、物流会社コンピュータシステム5の物流管理装置9に対して発送依頼データを送り、物流管理装置9から請求書データを受信する。物流管理装置9は、発送依頼に応じた送り状データを運送会社コンピュータシステム7に送る。運送会社コンピュータシステム7は、二酸化炭素排出量算出装置11に対して、運送会社に所属する車両の実燃費を含む燃費データを定期的に送る。また、物流管理装置9から二酸化炭素排出量算出装置11へ運行データが送られる。運行データは、運送会社による運行を管理するデータであり、運行データについては後述する。二酸化炭素排出量算出装置11は、物流管理装置9から入力される運行データと、運送会社コンピュータシステム7から入力される燃費データに基づいて二酸化炭素排出量と積載率を算出する。二酸化炭素と積載率の計算結果は報告データとして荷主コンピュータシステム3へと送られる。」
「【0030】
運行データ作成部31は、発送依頼記憶部23の発送依頼データと、運行内容入力部33から入力された運行内容とに従って運行データを作成する。運行データは、運行単位の運行内容を含んだデータである。例えば、運行データ作成部31は、運行データ作成用の画面を物流管理装置9のディスプレイに表示させる。画面には、発送依頼データから得られる運行内容が予め表示される。さらに、運行内容入力部33から入力された運行内容が運行データ作成画面に表示される。運行内容入力部33はキーボード、ポインティングデバイス等の入力装置で構成されてよい。運行データ作成部31は、運行データ作成画面の内容に対応する運行データを作成して運行データ記憶部35に格納する。なお、運行データ作成機能には、適宜、自動処理機能が付加されてよい。
【0031】
図4は、運行データの好適な例を示している。運行データは、運行単位で、共通情報、荷主情報、距離情報、重量情報および担当車両データを含む。共通情報は、出荷日、輸送モード、輸送カテゴリーである。荷主情報は、各荷主に割り当てられた荷主コードである。距離情報は、運送距離に関連する情報であり、発着都市(発都市および着都市)、発拠点、着拠点である。重量は物流重量である。担当車両データは、運行を担当する担当車両のデータであり、運送会社、担当車両(車両識別データ)、車種および運行番号である。本実施の形態では、車種が許容積載量(積載可能総重量)、具体的には、積載トン数の情報を含んでいる。図示のように、運行データ記憶部35はデータベースを構成しており、運行データは運行毎の運行内容をレコードとして持ったテーブルである。本実施の形態では、各運行のデータを適宜、運行レコードという。
【0032】
送り状出力部37は、運行データを元に送り状を作成して出力する。送り状のフォーマットに、運行データから得られる運行内容が組み込まれる。送り状出力部37は、通信部によって実現され、送り状を通信で運送会社コンピュータシステム7に送る。送り状は、郵送等の他の手法で運送会社に送られてよく、送り状出力部37はプリンタ等で実現されてもよい。
【0033】
運行データ出力部39は、運行データ記憶部35に格納された図4の運行データを読み出し、読み出した運行データを二酸化炭素排出量算出装置11へ出力する。運行データは、二酸化炭素排出量算出装置11からの要求に応じて送信される。そのほか、運行データは、予め決められた時期に出力されてもよく、また、ユーザにより入力装置へ指示が入力されたときに運行データが出力されてもよい。」
「【0035】
二酸化炭素排出量算出装置11は、二酸化炭素排出量の算出に用いるデータを取得するために、拠点間距離データ記憶部51、換算係数記憶部53、燃費データ入力部55、燃費データ記憶部57、運行データ入力部59および運行データ記憶部61を有する。さらに、二酸化炭素排出量算出装置11は、月別の二酸化炭素排出量を算出する排出量算出部63と、月別の積載率を計算する積載率算出部65と、算出された月別の二酸化炭素排出量と積載率を蓄積する算出結果蓄積部67と、算出結果蓄積部67に蓄積された1年分の二酸化炭素排出量と積載率を出力する算出結果出力部69とを有する。」
「【0038】
燃費データ入力部55は、運送会社に属する車両毎の実燃費のデータを含む燃費データを入力する。図6は燃費データの例である。本実施の形態では、月別の二酸化炭素排出量を高い精度で算出するために、燃費データとしても各車両の月毎の実燃費が取得される。運送会社では、車両毎に、毎月の走行距離と給油量が記録される。走行距離を給油量で割ることにより、実燃費、すなわち、単位燃料当たりの走行距離が算出される。
【0039】
燃費データ入力部55は通信部で構成されてよく、燃費データは、運送会社コンピュータシステム7から通信で送られて燃費データ入力部55に入力されてよい。入力された燃費データは、燃費データ記憶部57に格納される。」
「【0041】
運行データ入力部59は、運行データを入力する。運行データは、図4を用いて説明した通り、物流会社における運行単位の運行内容のデータを含んでいる。そして、運行データには、運行毎の担当車両、発拠点および着拠点等のデータが含まれている。運行データ入力部59は通信部で構成され、物流管理装置9の運行データ出力部39から運行データを受信してよい。入力された運行データは運行データ記憶部61に格納される。
【0042】
また、二酸化炭素排出量算出装置11と物流管理装置9とが一つのコンピュータで実現される場合、運行データ入力部59は、物流管理装置9の運行データ記憶部35から運行データを取得する(読み出す)機能によって実現されてよい。
【0043】
排出量算出部63は、運行データ、燃費データ、拠点間距離データおよび排出量換算係数に基づき二酸化炭素排出量を算出する。排出量算出部63は、運行データ中の担当車両の実燃費と発着拠点間の実走行距離に対応する燃料消費量を排出量換算係数を用いて換算した値を、二酸化炭素排出量として求める。本実施の形態では、前述のように月別の二酸化炭素排出量が算出される。排出量算出部63については後述にて詳細に説明する。」
「【0047】
算出結果蓄積部67は、排出量算出部63および積載率算出部65により算出された月別の二酸化炭素排出量と積載率を蓄積する記憶手段である。算出結果出力部69は、排出量算出部63により算出された二酸化炭素排出量のデータを荷主に報告するために出力する構成である。算出結果出力部69は、算出結果蓄積部67に蓄積された1年分の二酸化炭素排出量と積載率を出力する。算出結果出力部69は通信部で構成され、二酸化炭素排出量および積載率が通信で荷主コンピュータシステム3に送られてよい。二酸化炭素排出量および積載率は他の形態で出力されてもよい。例えば、算出結果出力部69がプリンタで構成され、二酸化炭素排出量および積載率がプリントアウトされ、郵送等で荷主へ送られてよい。」
「【0074】
本実施の形態によれば、二酸化炭素排出量算出装置11が、物流会社の複数の拠点間の実走行距離のデータを含む拠点間距離データを記憶している。そして、二酸化炭素排出量算出装置11に運行データと燃費データが入力される。運行データおよび燃費データと、記憶されている拠点間距離データとから、各車両の実燃費と各運行の実走行距離が求められ、これら実燃費と実走行距離から、排出量換算係数を用いて、燃費法に従って二酸化炭素排出量が算出される。これにより、従来のトンキロ法よりも大幅に精度を向上できる。また、物流会社の運行データによって運送会社の各運送が管理されていることに着目し、運行データから車両と発着拠点が特定されている。運行データを利用することにより、燃費法の計算に必要な情報を容易に入手でき、精度の高い二酸化炭素排出量を容易に求められる。」
「【0077】
また、本実施の形態において、運行データには運行毎の荷主のデータが含まれており、運行データに基づいて荷主毎の二酸化排出量が算出される。これにより、各車両の運行による二酸化炭素排出量から、荷主毎の二酸化炭素排出量を算出して、荷主が報告すべき排出量を得ることができる。」
図4
[図:0001423428000011.jpg]
(イ)以上の記載によれば、文献8には、下記の文献8発明が記載されている。
(文献8発明)
物流会社における運航単位の運行内容を含に、運行単位で、出荷日、輸送モード、輸送カテゴリーである共通情報、荷主コードである荷主情報、発着都市(発都市および着都市)、発拠点、着拠点である距離情報、物流重量である重量情報および担当車両データを含む運行データが格納される運行データ記憶部61と、
運送会社に属する車両毎の実燃費のデータを含む燃費データが格納される燃費データ記憶部57と、
運行データ、燃費データ、拠点間距離データ及び排出量換算係数に基づき、燃費法に従って二酸化炭素排出量を算出する排出量算出部63と、
運行データに含まれる運行毎の荷主のデータに基づいて荷主毎の二酸化炭素排出量を算出して、算出された二酸化炭素排出量のデータを荷主に報告するために出力する算出結果出力部69と、を備え、
物流により車両から排出される二酸化炭素の排出量をより高い精度で算出する二酸化炭素排出量算出装置11。
イ 判断
(ア)対比
文献8発明の「運行データ記憶部61」、「運送会社に属する車両毎の実燃費のデータを含む燃費データ」、「荷主コードである荷主情報」は、それぞれ本件特許発明1の「輸送ルート登録手段」、「輸送実績」、「付加情報」に相当するといえるから、本件特許発明1と文献8発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
輸送ルートを登録する輸送ルート登録手段と、
前記輸送ルートにおける輸送実績を登録する輸送実績登録手段と、
前記輸送実績登録手段により登録された前記輸送実績に基づいて、二酸化炭素排出量を算出する算出手段と、
前記輸送実績に対して、付加情報を付加する付加手段と、
前記付加情報に基づいて抽出された前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する出力手段と、を備える二酸化炭素排出量管理装置。
<相違点>
(相違点1)
本件特許発明1は、「前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段」を備え、算出手段が「前記算出方法指定手段により指定された前記二酸化炭素排出量算出方法」に基づき算出するのに対し、文献8発明は、「運行データ、燃費データ、拠点間距離データ及び排出量換算係数に基づき、燃費法に従って二酸化炭素排出量を算出する」ものであって、つまり燃費法による算出を前提としており、輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定してこれを算出に用いるものでない点
(相違点2)
本件特許発明1は、「前記輸送ルート登録手段により登録された前記輸送ルートを複数のユーザで共有可能である」のに対し、文献8発明では、その旨特定されていない点
(イ)相違点の判断
a 相違点1について
文献8発明は、燃費法による算出を前提としたものであるから、輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定してこれを算出に用いるものへと変更することは、動機づけを欠くものである。
b 相違点2について
文献8発明は、輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定してこれを算出に用いるものでないことを前提として、算出された二酸化炭素排出量のデータを荷主に報告するものであり、二酸化炭素排出量算出方法が指定される登録した輸送ルートを他と共有することを想定したものでない。
この点、申立人Bは、訂正前の請求項3記載の発明の「前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段」について、運行データに含まれた運行毎の荷主のデータに基づいて荷主毎の二酸化炭素排出量を算出して、算出された二酸化炭素排出量のデータを荷主に報告するために出力するから、複数のユーザで輸送ルートを共有していることは明らかであると主張するが、文献8の記載に基づく主張でなく、採用することはできない。
なお、文献5(摘記省略)も、相違点1及び想定2に係る本件特許発明1の構成を開示するものでなく、この構成は、技術常識であるとも認められない。
c 以上を踏まえれば、本件特許発明1は、文献8発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 請求項2、4、5及び6について
請求項2及び請求項4は、請求項1を引用する請求項であるから、当該請求項に係る特許発明2、4は、文献8発明と対比すると上記相違点1及び2において相違し、この点に係る本件特許発明2、4の構成に想到することができないことは、上記したとおりである。
請求項5及び請求項6に係る特許発明5、6についても、文献8発明と対比すると、上記相違点1及び2に対応する相違点において相違し、この点に係る本件特許発明5、6の構成に想到することができないことは、上記イと同様である。
してみると、本件特許発明2、4、5及び6についても、本件特許発明1と同様、文献8発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 小括
以上によれば、本件特許の請求項1、2、4~6に係る発明は、文献8発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、請求項1、2、4~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
(5)申立人Cの特許異議申立理由のうち、上記(1)エ(ア)(文献9を主引用文献とする新規性及び進歩性の欠如)について
ア 文献9の記載について
(ア)「日本通運、国内のCO2排出量を可視化する「エコトランス・ナビ」のサービスを開始」
「【サービス概要・特徴】「エコトランス・ナビ」は、トラック輸送が物流の主体となっているお客様へ、過去の輸送データをもとに現行輸送モードを環境にやさしい鉄道・海上輸送にモーダルシフトした場合のCO2排出量削減効果をレポート化するサービスです。既に鉄道輸送や海上輸送をご利用頂いているお客様には、過去の輸送データからトラックなど他の輸送モードでの輸送を想定したCO2排出量を試算・比較し、現在の「環境貢献度」を見える化することができます。また、「エコトランス・ナビ」では、国土交通省への物流効率化法申請書、資源エネルギー省への特定荷主定期報告書などの所定書式に計算結果を記載し、公的機関への提出書類に活用できるため、お客様の事務作業を軽減します。」
「【サービス開発の背景】・・・当社は、本年10月に当社WEBサイトにおいて国内の最適輸送モードが検索できる「ワンストップ・ナビ」を開発し、輸送単位ごとに地図データと連係した正確なCO2排出量を算出するサービスを開始しました。今般開発した「エコトランス・ナビ」は、「ワンストップ・ナビ」のCO2排出量の見える化を更に進化させたサービスで、お客様の過去一定期間(月間・年間など)の輸送データをもとに、当社を利用した場合の現行輸送モードと鉄道・海上輸送モードのCO2排出量の差異を可視化し、公的機関へ提出するレポート作成を支援する提案型サービスです。・・・」
「【お客様から提供頂く輸送データ例】
集荷、配達先の住所(郵便番号があれば、より正確な距離の算定が可能)
貨物の個数
貨物の重量
現在の輸送モード」
「【作成できるレポートの例】
(合議体注:図中に概略以下の記載がある)
○○○○○○○ 御中
××××年××月××日
日本通運株式会社
○○支店
CO2排出量試算結果報告書
・・・
貴社出荷データから算出されたCO2排出量についての計算結果については、以下に記載のとおりとなります。
CO2排出量の試算結果
算出対象期間:・・・
現輸送モード:・・・
変更後輸送モード:・・・
1.現輸送モードのCO2排出量
2.変更後輸送モードのCO2排出量
3.削減効果
4.削減率
1.貴社出荷データを弊社輸送モードで輸送した場合のCO2排出量(試算値)
2.1と同等の条件(・・)にて輸送モードを変更した場合のCO2排出量(試算値)
3.1と2の差
4.1と2の差異率
今回の試算に使用している計算根拠は経済産業省・国土交通省監修「物流分野のCO2排出量に関する算定法ガイドライン」に準拠しております。・・・」
(イ)以上の記載によれば、文献9には、下記の文献9発明が記載されている。
(文献9発明)
輸送単位ごとに地図データと連係した正確なCO2排出量を算出するサービスである「ワンストップ・ナビ」のCO2排出量の見える化を更に進化させたサービスであって、トラック輸送が物流の主体となっている顧客に対し、過去の輸送データをもとに現行輸送モードを鉄道・海上輸送にモーダルシフトした場合のCO2排出量削減効果をレポート化するサービスであって、
顧客から集荷、配送先の住所等の輸送データの提供を受け、経済産業省・国土交通省監修「物流分野のCO2排出量に関する算定法ガイドライン」に準拠した計算根拠を使用して算出された、所定の算出期間における、現輸送モードのCO2排出量、変更後輸送モードのCO2排出量、削減効果、削減率を含むレポートを作成するサービスである、である「エコトランス・ナビ」のサービス。
イ 判断
(ア)対比
文献9発明の顧客から提供を受ける「集荷、配送先の住所等の輸送データ」は、本件特許発明1の「輸送ルートにおける輸送実績」に相当するといえるから、本件特許発明1と文献9発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
輸送ルートにおける輸送実績を登録する輸送実績登録手段と、
前記輸送実績登録手段により登録された前記輸送実績に基づいて、二酸化炭素排出量を算出する算出手段と、
前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する出力手段と、を備える二酸化炭素排出量管理装置。
<相違点>
(相違点1)
本件特許発明1は、「輸送ルートを登録する輸送ルート登録手段」及び「前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段」を備え、算出手段が「前記算出方法指定手段により指定された前記二酸化炭素排出量算出方法」に基づき算出するのに対し、文献9発明は、「運行データ、燃費データ、拠点間距離データ及び排出量換算係数に基づき、燃費法に従って二酸化炭素排出量を算出する」ものであって、つまり燃費法による算出を前提としており、輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定してこれを算出に用いるものでない点
(相違点2)
本件特許発明1は、「前記輸送実績に対して、付加情報を付加する付加手段」を備え、二酸化炭素排出量の出力手段が「前記付加情報に基づいて抽出された」輸送実績についての出力を行うのに対し、文献9発明は、そうではない点
(相違点3)
本件特許発明1は、「前記輸送ルート登録手段により登録された前記輸送ルートを複数のユーザで共有可能である」のに対し、文献9発明では、その旨特定されていない点
(イ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点1と相違点3について検討する。
a 相違点1について
文献9発明は、輸送実績(「集荷、配送先の住所等の輸送データ」)とは別に輸送ルートを登録するものとなっていないことから、輸送ルート毎に二酸化炭素排出量算出方法を指定するものでなく、このように変更することは、動機づけを欠くものである。
b 相違点3について
文献9発明は、輸送ルートを登録するものでも、輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定してこれを算出に用いるものでないことを前提として、算出された二酸化炭素排出量のデータを出力するものであり、二酸化炭素排出量算出方法が指定される登録した輸送ルートを他と共有することを想定したものでない。
この点、申立人Cは、訂正前の請求項3記載の発明の「前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段」について、企業がCO2排出量を算出・管理するにあたり、1ユーザしかその情報を確認できないようにするというのは想定されず、複数ユーザで共有するものを前提とすることは当然であり、設計事項にすぎない、また、他の輸送事業者や荷主等にアクセス権限を付与するかどうかも設計事項にすぎない、と主張している。
しかし、本件特許発明1の共有に係る「ユーザ」は、本件特許明細書の【0060】を参酌すれば「輸送事業者」や「荷主」であって、特定の輸送事業者や荷主の企業内のユーザでなく、また、他の輸送事業者や荷主に輸送ルートを共有するためには、そのような共有を可能とするように輸送ルートを登録する必要があり、この点は設計事項とはいえないから、申立人Cの主張は、採用することができない。
なお、文献13、文献5、文献14(摘記省略)も、相違点1及び相違点3に係る本件特許発明1の構成を開示するものでなく、この構成は、周知技術であるとも認められない。
c 以上を踏まえれば、本件特許発明1は、文献9発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 請求項2、4、5及び6について
請求項2及び請求項4は、請求項1を引用する請求項であるから、当該請求項に係る特許発明2、4は、文献9発明と対比すると上記相違点1~相違点3において相違し、このうち、相違点1及び相違点3に係る本件特許発明2、4の構成に想到することができないことは、上記したとおりである。
請求項5及び請求項6に係る特許発明5、6についても、文献9発明と対比すると、上記相違点1~相違点3に対応する相違点において相違し、このうち相違点1及び相違点3に相対応する相違点に係る本件特許発明5、6の構成に想到することができないことは、上記イと同様である。
してみると、本件特許発明2、4、5及び6についても、本件特許発明1と同様、文献9発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 小括
以上によれば、本件特許の請求項1、2、4~6に係る発明は、文献9に記載された発明との間に相違点が存在しており文献9に記載された発明でないことから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明でなく、同法同条1項の規定に違反したされたものでない。
また、本件特許の請求項1、2、4~6に係る発明は、文献9発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、請求項1、2、4~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
(6)申立人Cの特許異議申立理由のうち、上記(1)エ(イ)(文献11を主引用文献とする新規性及び進歩性の欠如)について
ア 文献11の記載について
(ア)「株式会社NTTロジスコ」の「CO2排出量可視化ソリューション」について、次の記載がある。(原文の○数字は「○1」等として示す。)
「2.ソリューション概要
(1)CO2排出量レポート
輸配送及び倉庫内での活動について、入出荷量や輸送重量等の必要データを収集し、精査をした上で配送、および拠点でのエネルギー使用に関してCO2排出量を算出し、可視化します。
○1算出基準:「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドラインVer.2.3(環境省・経済産業省)」に準拠
○2算出項目:サプライチェーン排出量のScope3の「カテゴリ4輸送、配送(上流)」に該当する、輸配送および、倉庫内のエネルギー消費における排出量を基本項目とするが、お客様のご要望により項目の調整は可能
○3レポート形式:所定様式にCO2排出量を算出して提出
○4レポート頻度:四半期毎を想定(月次、年度等のご提示にも対応)
・・・
(2)CO2排出シミュレーション
NTTロジスコでは、共同配送やモーダルシフトの推進、太陽光発電やEV車両の導入推進、梱包資材の見直し、需要予測や発注/補充の見直しによる商品廃棄の削減、ロジスティクスネットワークの再検討等、各種施策をご提案・導入して頂いた場合のCO2排出削減量のシミュレーションを行います。」
(イ)以上の記載によれば、文献11には、下記の文献11発明が記載されている。
(文献11発明)
輸配送及び倉庫内での活動について、入出荷量や輸送重量等の必要データを収集し、精査をした上で配送、および拠点でのエネルギー使用に関してCO2排出量を算出し、可視化し、
その際、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドラインVer.2.3(環境省・経済産業省)」に準拠する算出基準により、サプライチェーン排出量のScope3の「カテゴリ4輸送、配送(上流)」に該当する、輸配送および、倉庫内のエネルギー消費における排出量を基本項目とし、
四半期毎等の頻度で所定様式によりCO2排出量を算出して提出する、CO2排出量可視化ソリューションであって、モーダルシフトの推進等の施策を導入した場合のCO2排出削減量のシミュレーションを行う、CO2排出量可視化ソリューション。
イ 判断
(ア)対比
文献11発明の、「入出荷量や輸送重量等の必要データ」は、本件特許発明1の「輸送ルートにおける輸送実績」に相当するといえるから、本件特許発明1と文献11発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
輸送ルートにおける輸送実績を登録する輸送実績登録手段と、
前記輸送実績登録手段により登録された前記輸送実績に基づいて、二酸化炭素排出量を算出する算出手段と、
前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する出力手段と、を備える二酸化炭素排出量管理装置。
<相違点>
(相違点1)
本件特許発明1は、「輸送ルートを登録する輸送ルート登録手段」及び「前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段」を備え、算出手段が「前記算出方法指定手段により指定された前記二酸化炭素排出量算出方法」に基づき算出するのに対し、文献11発明は、輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定してこれを算出に用いるものでない点
(相違点2)
本件特許発明1は、「前記輸送実績に対して、付加情報を付加する付加手段」を備え、二酸化炭素排出量の出力手段が「前記付加情報に基づいて抽出された」輸送実績についての出力を行うのに対し、文献11発明は、そうではない点
(相違点3)
本件特許発明1は、「前記輸送ルート登録手段により登録された前記輸送ルートを複数のユーザで共有可能である」のに対し、文献11発明では、その旨特定されていない点
(イ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点1と相違点3について検討する。
a 相違点1について
文献11発明は、輸送実績(「入出荷量や輸送重量等の必要データ」)とは別に輸送ルートを登録するものとなっていないことから、輸送ルート毎に二酸化炭素排出量算出方法を指定するものでなく、このように変更することは、動機づけを欠くものである。
b 相違点3について
文献11発明は、輸送ルートを登録するものでも、輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定してこれを算出に用いるものでないことを前提として、算出された二酸化炭素排出量のデータを出力するものであり、二酸化炭素排出量算出方法が指定される登録した輸送ルートを他と共有することを想定したものでない。
申立人Cの、訂正前の請求項3記載の発明の「前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段」についての主張は、文献9発明についてした主張と同趣旨であり、上記(5)のイ(イ)bに示したのと同様、採用することができない。
c 以上を踏まえれば、本件特許発明1は、文献11発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 請求項2、4、5及び6について
請求項2及び請求項4は、請求項1を引用する請求項であるから、当該請求項に係る特許発明2、4は、文献11発明と対比すると上記相違点1~相違点3において相違し、このうち、相違点1及び相違点3に係る本件特許発明2、4の構成に想到することができないことは、上記したとおりである。
請求項5及び請求項6に係る特許発明5、6についても、文献11発明と対比すると、上記相違点1~相違点3に対応する相違点において相違し、このうち相違点1及び相違点3に対応する相違点に係る本件特許発明5、6の構成に想到することができないことは、上記イと同様である。
してみると、本件特許発明2、4、5及び6についても、本件特許発明1と同様、文献11発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 小括
以上によれば、本件特許の請求項1、2、4~6に係る発明は、文献11に記載された発明との間に相違点が存在しており文献11に記載された発明でないことから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明でなく、同法同条1項の規定に違反したされたものでない。
また、本件特許の請求項1、2、4~6に係る発明は、文献11発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、請求項1、2、4~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
(7)申立人Cの特許異議申立理由のうち、上記(1)エ(ウ)(文献12を主引用文献とする新規性及び進歩性の欠如)について
ア 文献12の記載について(訳は概ね申立人Cによるものであるが、一部表記を正した。)
(ア)
「カーボンカリキュレーターは、DHLの様々なツールを補完するものです。・・お客様のサプライチェーンが環境に与える影響を把握するためにご利用いただけます。」
「追跡 貨物の輸送状況を追跡し、輸送に関連するGHG排出量データを受け取る。
カーボンレポート DHLの輸送によって発生した温室効果ガス排出量に関する個別でデータレポートです。貴社全体、または貿易レーン別、顧客別、期間別、製品別にレポ-とを作成することができます。・・・」
「DHLは、ほぼすべての貨物のサイズと輸送方法について、輸送関連の排出量を予測するカーボンカリキュレータを発表した。この計算は「インテリジェントなアルゴリズム」に基づいてオンラインで行われ、顧客は無料で利用できる。
DHL Global Forwardingのグリーン戦略・カスタマーインテリジェンス担当バイスプレジデントであるカトリン・ブロスト氏は、次のように述べている:「他の多くの計算ツールは、輸送排出量と経路の大まかな見積もりしか提供しませんが、カーボンカリキュレーターは実際のロジスティクスデータを利用します。」
このデータには、最寄りの空港や港までのルート、空路や海路による主要な輸送ルート、仕向地での「ラストワンマイル」が含まれます。DHL カーボンカリキュレーターは、排出量のレベルを決定するために、DHLの炭素会計管理部門のデータを使用しています。DHLは、この計算方法について、温室効果ガスプロトコルの公認基準、欧州規格EN16258、およびグローバルロジスティクス排出協議会のガイドラインを反映していると述べています。
ドイツポストDHLグループのシェアードバリュー担当バイスプレジデントであるカタリーナ・トモフは、顧客にとってのメリットを強調しました:「直感的に操作できるカーボンカリキュレーターにより、お客様は貨物が環境に与える影響を事前に正確に把握することができます。・・・
排出量を計算するには、荷送人は荷送人と荷受人の所在地、貨物の重量と容積を入力する。その後、希望する輸送手段を選択する。これらの入力に基づき、カーボンカリキュレーターは、輸送ルートを推奨し、さらに修正することができる。これをもとに、輸送によって発生するCO2換算排出量を算出する。・・・」
(イ)以上の記載によれば、文献12には、下記の文献12発明が記載されている。
(文献12発明)
最寄りの空港や港までのルート、空路や海路による主要な輸送ルート、仕向地での「ラストワンマイル」を含む実際のロジスティクスデータを利用し、
DHLの炭素会計管理部門のデータを使用して、温室効果ガスプロトコルの公認基準、欧州規格EN16258、およびグローバルロジスティクス排出協議会のガイドラインを反映した計算方法によって決定された排出量のレベルにより、輸送によって発生するCO2換算排出量を算出し、DHLの輸送によって発生した温室効果ガス排出量に関する個別でデータレポートであるカーボンレポートを貿易レーン別、顧客別、期間別、製品別に作成することができる、DHLのカーボンカリキュレーター。
イ 判断
(ア)対比
文献12発明の、「最寄りの空港や港までのルート、空路や海路による主要な輸送ルート、仕向地での「ラストワンマイル」を含む実際のロジスティクスデータ」は、本件特許発明1の「輸送ルートにおける輸送実績」に相当するといえる。また、文献12発明では、貿易レーン別、顧客別、期間別、製品別にレポートを作成することができることから、「輸送実績」に対して「付加情報」を付加し、この「付加情報」に基づいて抽出した出力を行う点で、本件特許発明1と共通するといえる。
よって、本件特許発明1と文献12発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
輸送ルートを登録する輸送ルート登録手段と、
前記輸送ルートにおける輸送実績を登録する輸送実績登録手段と、
前記輸送実績登録手段により登録された前記輸送実績に基づいて、二酸化炭素排出量を算出する算出手段と、
前記輸送実績に対して、付加情報を付加する付加手段と、
前記付加情報に基づいて抽出された前記輸送実績の二酸化炭素排出量を出力する出力手段と、を備える二酸化炭素排出量管理装置。
<相違点>
(相違点1)
本件特許発明1は、「前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段」を備え、算出手段が「前記算出方法指定手段により指定された前記二酸化炭素排出量算出方法」に基づき算出するのに対し、文献12発明は、「運行データ、燃費データ、拠点間距離データ及び排出量換算係数に基づき、燃費法に従って二酸化炭素排出量を算出する」ものであって、つまり燃費法による算出を前提としており、輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定してこれを算出に用いるものでない点
(相違点2)
本件特許発明1は、「前記輸送ルート登録手段により登録された前記輸送ルートを複数のユーザで共有可能である」のに対し、文献12発明では、その旨特定されていない点
(イ)相違点の判断
a 相違点1について
文献12発明は、DHLの炭素会計管理部門のデータを使用して、温室効果ガスプロトコルの公認基準、欧州規格EN16258、およびグローバルロジスティクス排出協議会のガイドラインを反映した計算方法によって決定された排出量のレベルにより、輸送によって発生するCO2換算排出量を算出するものであるから、輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定してこれを算出に用いるものへと変更することは、動機づけを欠くものである。
b 相違点2について
文献12発明は、輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定してこれを算出に用いるものでないことを前提として、算出された二酸化炭素排出量のデータを荷主に報告するものであり、二酸化炭素排出量算出方法が指定される登録した輸送ルートを他と共有することを想定したものでない。
申立人Cの、訂正前の請求項3記載の発明の「前記輸送ルートにおける二酸化炭素排出量算出方法を指定する算出方法指定手段」についての主張については、文献9発明についてした主張と同趣旨であり、上記(5)のイ(イ)bに示したのと同様、採用することができない。
c 以上を踏まえれば、本件特許発明1は、文献12発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 請求項2、4、5及び6について
請求項2及び請求項4は、請求項1を引用する請求項であるから、当該請求項に係る特許発明2、4は、文献12発明と対比すると上記相違点1~相違点2において相違し、これらの相違点に係る本件特許発明2、4の構成に想到することができないことは、上記したとおりである。
請求項5及び請求項6に係る特許発明5、6についても、文献12発明と対比すると、上記相違点1~相違点2に対応する相違点において相違し、これらの相違点に対応する相違点に係る本件特許発明5、6の構成に想到することができないことは、上記イと同様である。
してみると、本件特許発明2、4、5及び6についても、本件特許発明1と同様、文献12発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 小括
以上によれば、本件特許の請求項1、2、4~6に係る発明は、文献12に記載された発明との間に相違点が存在しており文献12に記載された発明でないことから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明でなく、同法同条1項の規定に違反したされたものでない。
また、本件特許の請求項1、2、4~6に係る発明は、文献12発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、請求項1、2、4~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
(8)申立人Cの特許異議申立理由のうち、上記(1)エ(エ)(拡大先願要件の欠如)について
申立人Cの特許異議申立理由のうち、上記(1)エ(エ)(拡大先願要件の欠如)は、申立人Cが証拠として示した文献12が拡大先願の要件の判断に係る先願の出願及び出願公開の内容を示すものでないことから、申立理由として失当である。
なお、文献12に記載された出願番号(特願2022-39596号)は、令和4年3月14日の特許出願であり、出願公開がされたのは、本件異議申立に係る異義申立期間満了後である同5年9月27日である。
6 むすび
以上のとおりであるから、当審において取消理由として通知したものを含め、申立人A、B及びCによる特許異議の申立てに係る特許異議申立理由によっては、請求項1~2、4~6に係る特許を取り消すことはできず、他に請求項1~2、4~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人A、B及びCによる特許異議の申立てについて、請求項3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700698