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特許異議申立

2023-700341

移動体通行管理システム、及び移動体通行管理方法

審判番号
2023-700341
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-120136
登録番号
7156749
請求日
2023年04月04日
審決日
2024年02月20日
公報発行日
2024年05月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社Octa Robotics
  • 【権利者代理人】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
  • 【異議申立人】金田 綾香
  • 【異議申立人】角田 朗
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 貴雄
  • 審判官 大山 健
  • 審判官 菊地 牧子
分類
P1651.121-YAA(G06Q) / P1651.113-YAA(G06Q) / P1651.16 -YAA(G06Q)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7156749号発明「移動体通行管理システム、及び移動体通行管理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7156749号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、9について訂正することを認める。 特許第7156749号の請求項1、3~9に係る特許を維持する。 特許第7156749号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 1 手続の経緯 特許第7156749号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和4年7月28日に出願され、令和4年10月11日にその特許権の設定登録がされ、令和4年10月19日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許について、令和5年4月4日に特許異議申立人 金田 綾香(以下「申立人1」という。)により特許異議の申立て(以下「申立1」という。)がされ、令和5年4月10日に特許異議申立人 角田 朗(以下「申立人2」という。)により特許異議の申立て(以下「申立2」という。)がされ、当審は、令和5年7月5日付けで取消理由を通知した。 特許権者は、その指定期間内である令和5年9月4日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行い、本件訂正請求に対して、申立人2は、令和5年12月11日に意見書を提出した。他方、申立人1は応答しなかった。 2 本件訂正の適否について (1)本件訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(なお、下線部は、訂正箇所について特許権者が付したものである。) ア 訂正事項1 本件訂正前の請求項1の 「自律して移動する1又は複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、 前記移動体の通行の可否に関与する1又は複数の設備と、 前記設備と接続し、外部との通信を行う設備側通信装置と、 前記設備側通信装置とは別に設けられ、前記移動体と前記設備側通信装置との通信を仲介する仲介サーバと、を備え、 前記仲介サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置との通信を全て仲介し、 前記仲介サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置との通信の可否を制御し、 前記設備側通信装置は、前記仲介サーバによって通信が許可された前記移動体について、さらに通行を許可するか否かを決定することで、前記移動体の通行の可否を制御する ことを特徴とする移動体通行管理システム。」を、本件訂正により、 「自律して移動する1又は複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、 前記移動体の通行の可否に関与する1又は複数の設備と、 前記設備と接続し、外部との通信を行う設備側通信装置と、 前記設備側通信装置とは別に設けられ、前記移動体と前記設備側通信装置との通信を仲介する仲介サーバと、 前記移動体及び前記設備に対するアカウントの発行及び認証を行う認証サーバと、を備え、 前記仲介サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置との通信を全て仲介し、 前記仲介サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置との通信の可否を制御し、 前記設備側通信装置は、前記仲介サーバによって通信が許可された前記移動体について、さらに通行を許可するか否かを決定することで、前記移動体の通行の可否を制御するものであり、 前記認証サーバは、発行したアカウントを通信権限管理データに登録し、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理し、 前記仲介サーバは、接続要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントが登録済みであれば接続を確立し、接続を確立したアカウントからチャンネル登録要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントに登録が許可されたチャンネルであればチャンネルを登録し、チャンネルと内容を含むメッセージを受信したならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、投稿が許可されたチャンネルであれば、チャンネル登録先にメッセージを転送することで、前記通信の可否を制御し、 前記設備側通信装置は、前記認証サーバが発行したアカウントに通行可否を対応付けた通行権限管理データを参照して、当該アカウントに対応する前記移動体の通行の可否を制御する ことを特徴とする移動体通行管理システム。」 に訂正する。(請求項1を引用する請求項2~8についても同様に訂正する。) イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ウ 訂正事項3 本件訂正前の請求項9の 「自律して移動する1又は複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理方法であって、 仲介サーバが、前記移動体と、前記移動体の通行の可否に関与する設備に接続した設備側通信装置との通信の可否を制御するステップと、 前記設備側通信装置が、前記仲介サーバによって通信が許可された前記移動体について、さらに通行を許可するか否かを決定することで、前記移動体の通行の可否を制御するステップと、 を含み、 前記仲介サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置との通信を全て仲介する ことを特徴とする移動体通行管理方法。」を、本件訂正により、 「自律して移動する1又は複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理方法であって、 仲介サーバが、前記移動体と、前記移動体の通行の可否に関与する設備に接続した設備側通信装置との通信の可否を制御するステップと、 前記設備側通信装置が、前記仲介サーバによって通信が許可された前記移動体について、さらに通行を許可するか否かを決定することで、前記移動体の通行の可否を制御するステップと、 を含み、 前記仲介サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置との通信を全て仲介するものであり、 前記仲介サーバは、前記移動体及び前記設備に対するアカウントの発行及び認証を行う認証サーバに対する問い合わせが可能であり、 前記認証サーバは、発行したアカウントを通信権限管理データに登録し、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理し、 前記仲介サーバは、接続要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントが登録済みであれば接続を確立し、接続を確立したアカウントからチャンネル登録要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントに登録が許可されたチャンネルであればチャンネルを登録し、チャンネルと内容を含むメッセージを受信したならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、投稿が許可されたチャンネルであれば、チャンネル登録先にメッセージを転送することで、前記通信の可否を制御し、 前記設備側通信装置は、前記認証サーバが発行したアカウントに通行可否を対応付けた通行権限管理データを参照して、当該アカウントに対応する前記移動体の通行の可否を制御する ことを特徴とする移動体通行管理方法。」 に訂正する。 エ 一群の請求項についての説明 本件訂正前の請求項1~8について、本件訂正前の請求項2~8はそれぞれ本件訂正前の請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものある。 したがって、本件訂正前の請求項1~8に対応する本件訂正後の請求項〔1~8〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正の適否 ア 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)訂正事項1 a 訂正の目的について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に本件訂正前の請求項2の発明特定事項を付加するとともに、仲介サーバによる通信可否の制御を限定したものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1のうち、「前記移動体及び前記設備に対するアカウントの発行及び認証を行う認証サーバと、を備え」る点及び「前記設備側通信装置は、前記認証サーバが発行したアカウントに通行可否を対応付けた通行権限管理データを参照して、当該アカウントに対応する前記移動体の通行の可否を制御する」との事項は、実質的に、本件訂正前の請求項2に記載されている事項である。 また、訂正事項1のうち、「前記認証サーバは、発行したアカウントを通信権限管理データに登録し、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理し、」との事項は、実質的に、本件明細書等の段落【0015】の「認証サーバ40は、ロボット30や設備等に対するアカウントの発行と認証を行う。また、認証サーバ40は、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理している。このアカウントとチャンネルに関するデータは、移動体通行管理システムにおける通信を管理する通信権限管理データ41である。」との記載から自明である。 さらに、訂正事項1のうち、「前記仲介サーバは、接続要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントが登録済みであれば接続を確立し、接続を確立したアカウントからチャンネル登録要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントに登録が許可されたチャンネルであればチャンネルを登録し、チャンネルと内容を含むメッセージを受信したならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、投稿が許可されたチャンネルであれば、チャンネル登録先にメッセージを転送することで、前記通信の可否を制御し」との事項は、本件明細書等の段落【0036】~【0038】及び図5~7(仲介サーバ10における、接続処理部11a、チャンネル処理部11b及びメッセージ転送処理部11cの処理についてのフローチャート等を参照。)に、実質的に記載されている。 したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 (イ)訂正事項2 a 訂正の目的について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正ではないこと、及び本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当せず、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (ウ)訂正事項3 a 訂正の目的について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項9に、本件訂正前の請求項2の発明特定事項を付加するとともに、仲介サーバによる通信可否の制御を限定したものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正ではないこと、及び本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、実質的に、本件訂正前の請求項9について、訂正事項1と同様の訂正を行うものであるから、訂正事項1と同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当せず、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 イ 独立特許要件 本件訂正前の全請求項(請求項1~9)について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~3について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、9について訂正することを認める。 3 本件発明 上記2のとおり、本件訂正は認められるところ、本件訂正により訂正された請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるものである。 【請求項1】 自律して移動する1又は複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、 前記移動体の通行の可否に関与する1又は複数の設備と、 前記設備と接続し、外部との通信を行う設備側通信装置と、 前記設備側通信装置とは別に設けられ、前記移動体と前記設備側通信装置との通信を仲介する仲介サーバと、 前記移動体及び前記設備に対するアカウントの発行及び認証を行う認証サーバと、を備え、 前記仲介サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置との通信を全て仲介し、 前記仲介サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置との通信の可否を制御し、 前記設備側通信装置は、前記仲介サーバによって通信が許可された前記移動体について、さらに通行を許可するか否かを決定することで、前記移動体の通行の可否を制御するものであり、 前記認証サーバは、発行したアカウントを通信権限管理データに登録し、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理し、 前記仲介サーバは、接続要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントが登録済みであれば接続を確立し、接続を確立したアカウントからチャンネル登録要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントに登録が許可されたチャンネルであればチャンネルを登録し、チャンネルと内容を含むメッセージを受信したならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、投稿が許可されたチャンネルであれば、チャンネル登録先にメッセージを転送することで、前記通信の可否を制御し、 前記設備側通信装置は、前記認証サーバが発行したアカウントに通行可否を対応付けた通行権限管理データを参照して、当該アカウントに対応する前記移動体の通行の可否を制御する ことを特徴とする移動体通行管理システム。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、 前記仲介サーバが仲介する通信を監視して、送受信されたメッセージを蓄積する監視サーバをさらに備えたことを特徴とする移動体通行管理システム。 【請求項4】 請求項3に記載の移動体通行管理システムであって、 前記監視サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置との通信の一部を選択的に監視することを特徴とする移動体通行管理システム。 【請求項5】 請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、 前記仲介サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置とが送受信するメッセージが暗号化されている場合に、送信元から受信したメッセージを復号し、復号したメッセージを再び暗号化して送信先に送信することを特徴とする移動体通行管理システム。 【請求項6】 請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、 前記設備に、エレベーター及び/又はゲートを含むことを特徴とする移動体通行管理システム。 【請求項7】 請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、 前記移動体は、複数の建物の内部と、前記複数の建物の間を移動可能であり、 前記設備は、前記複数の建物にそれぞれ設けられ、 前記仲介サーバは、前記複数の建物の設備側通信装置と前記移動体との通信を統合管理することを特徴とする移動体通行管理システム。 【請求項8】 請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、 前記仲介サーバは、メッセージを送受信するチャンネルの使用可否を制御することで、前記移動体の通行に関する通信を制御することを特徴とする移動体通行管理システム。 【請求項9】 自律して移動する1又は複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理方法であって、 仲介サーバが、前記移動体と、前記移動体の通行の可否に関与する設備に接続した設備側通信装置との通信の可否を制御するステップと、 前記設備側通信装置が、前記仲介サーバによって通信が許可された前記移動体について、さらに通行を許可するか否かを決定することで、前記移動体の通行の可否を制御するステップと、 を含み、 前記仲介サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置との通信を全て仲介するものであり、 前記仲介サーバは、前記移動体及び前記設備に対するアカウントの発行及び認証を行う認証サーバに対する問い合わせが可能であり、 前記認証サーバは、発行したアカウントを通信権限管理データに登録し、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理し、 前記仲介サーバは、接続要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントが登録済みであれば接続を確立し、接続を確立したアカウントからチャンネル登録要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントに登録が許可されたチャンネルであればチャンネルを登録し、チャンネルと内容を含むメッセージを受信したならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、投稿が許可されたチャンネルであれば、チャンネル登録先にメッセージを転送することで、前記通信の可否を制御し、 前記設備側通信装置は、前記認証サーバが発行したアカウントに通行可否を対応付けた通行権限管理データを参照して、当該アカウントに対応する前記移動体の通行の可否を制御する ことを特徴とする移動体通行管理方法。 4 取消理由通知に記載した取消理由について (1)取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~9に係る特許に対して、当審が令和5年7月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 なお、申立人1及び申立人2から提出された甲各号証を、以下では「申立1甲1」などという。ただし、申立人1及び申立人2から提出された甲第2号証は、申立人1及び申立人2の同一の文献(甲第2号証)であることから、単に「甲2」という。 ア 取消理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1、6、9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(甲2に記載された発明)であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件訂正前の請求項1、6、9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ 取消理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項2~5、7~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(甲2に記載された発明及び申立1甲4に記載された技術的事項並びに周知の技術的事項(申立2甲5))に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項2~5、7~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)証拠 甲2:国際公開第2021/177377号 申立1甲4:国際公開第2020/194395号 申立2甲5:特開2021-111858号公報 (3)甲号証の記載 ア 甲2の記載事項等 甲2には、以下の事項が記載されている。(なお、下線部は、当審で付した。以下、同様。) [0004] しかしながら、特許文献1のシステムにおいて、エレベーターなどの設備は、自律走行車などのオブジェクトが当該設備に送信した信号に基づいて制御される。ここで、当該システムにおいて、ビルなどの施設に複数の設備が設けられる場合に、当該施設において複数の機器が稼働するときに、設備および機器の組み合わせごとに通信の形式を定める必要がある。このため、設備および機器の連携が容易ではない。 [0005] 本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、施設における設備および当該施設において稼働する機器が連携しやすい通信システム、当該通信システムにおける設備サーバおよび機器サーバ、ならびに当該通信システムにおいて通信されるデータ構造を提供する。 ・・・ [0014] 通信システム1は、施設における複数の設備と複数の機器であるオブジェクトとの連携についての通信に適用されるシステムである。 ・・・ [0018] ビル設備3およびオブジェクト4は、施設において稼働する。ビル設備3およびオブジェクト4は、例えばビル2において自律的に移動するロボット、または自律的にもしくは利用者の操作によって移動するモビリティなどである。あるいは、ビル設備3およびオブジェクト4は、例えばビル2において移動する利用者が所持する無線タグまたは携帯端末などである。あるいは、ビル設備3およびオブジェクト4は、例えばエレベーター、乗客コンベア、入退管理装置、照明装置、または空調装置などの設備である。 [0019] この例において、複数のオブジェクト4pの一部は、ビル2aにおいて移動する。複数のオブジェクト4pの他の一部は、ビル2bにおいて移動する。また、複数のオブジェクト4qの一部は、ビル2aにおいて移動する。複数のオブジェクト4qの他の一部は、ビル2bにおいて移動する。オブジェクト4は、無線通信によってネットワーク5に接続される。ネットワーク5は、例えばインターネットなどである。オブジェクト4は、例えばLTE(Long Term Evolution)などの無線通信の規格によってネットワーク5に接続する。オブジェクト4は、例えば基地局6を経由してネットワーク5に接続してもよい。 [0020] 通信システム1は、1以上の設備サーバ7を備える。この例において、設備サーバ7は、ビル2aに設けられる設備サーバ7aと、ビル2bに設けられる設備サーバ7bと、を含む。ここで、設備サーバ7は、設備サーバ7aおよび設備サーバ7bなどを区別しない場合の表記である。複数の設備サーバ7の各々は、ネットワーク5に接続される。設備サーバ7aは、ビル2aにおける複数のビル設備3aの各々を制御する。設備サーバ7aは、ビル2aのファイアウォール8を介してネットワーク5に接続される。設備サーバ7bは、ビル2bにおける複数のビル設備3bの各々を制御する。設備サーバ7bは、ビル2bのファイアウォール8を介してネットワーク5に接続される。設備サーバ7は、例えば対応するビル2におけるエッジサーバである。あるいは、設備サーバ7はその一部または全部の構成がクラウド上に設けられていてもよい。この場合に、設備サーバ7は、ネットワーク5を経由してビル設備3と接続する。あるいは、設備サーバ7は、基地局6を経由してビル設備3と接続する。あるいは、設備サーバ7は、ファイアウォール8を通じてビル設備3と接続する。 [0021] 通信システム1は、機器サーバであるオブジェクトサーバ9を複数備える。この例において、複数のオブジェクトサーバ9は、互いに異なる管理者によって管理されるオブジェクトサーバ9pおよびオブジェクトサーバ9qを含む。ここで、オブジェクトサーバ9は、オブジェクトサーバ9pおよびオブジェクトサーバ9qなどを区別しない場合の表記である。オブジェクトサーバ9の管理者は、例えばオブジェクト4の製造業者、またはオブジェクト4の管理業者などである。オブジェクトサーバ9pの管理者は、例えば製造業者pである。オブジェクトサーバ9qの管理者は、例えば製造業者qである。なお、同一の管理者が複数のオブジェクトサーバ9を管理していてもよい。複数のオブジェクトサーバ9の各々は、ネットワーク5に接続される。オブジェクトサーバ9は、ネットワーク5を通じて複数のオブジェクト4の各々を制御するサーバ装置である。オブジェクトサーバ9pは、複数のオブジェクト4pの各々を制御する。オブジェクトサーバ9qは、複数のオブジェクト4qの各々を制御する。 [0022] 通信システム1において、設備サーバ7およびオブジェクトサーバ9の間でメッセージが通信される。この例において、メッセージは、MQTT(Message Queuing Telemetry Transport)プロトコルによって通信される。MQTTプロトコルにおいて、MQTTブローカーおよびMQTTクライアントの間でメッセージが通信される。MQTTブローカーは、MQTTクライアントがトピックを指定して発行(Publish)したメッセージを受信する。MQTTブローカーは、MQTTクライアントが購読(Subscribe)しているトピックのメッセージが発行される場合に、当該メッセージを当該MQTTクライアントに送信する。 [0023] 設備サーバ7とオブジェクトサーバ9とは、後述する共通のデータ形式で通信する。オブジェクトサーバ9と当該オブジェクトサーバ9により制御されるオブジェクト4は、共通のデータ形式とは異なるデータ形式で通信する。設備サーバ7と当該設備サーバ7により制御されるビル設備3は、共通のデータ形式で通信してもよいし、共通のデータ形式とは異なるデータ形式で通信してもよい。ビル設備3は設備サーバ7と直接通信する。一方、オブジェクトは設備サーバ7と直接通信することは出来ない。ビル設備3とオブジェクト4との通信はオブジェクトサーバ9を介して行われる。 ・・・ [0027] 設備サーバ7は、第1通信部10と、設備制御部11と、オブジェクト管理部12と、を備える。 [0028] 第1通信部10は、メッセージを通信する部分である。第1通信部10は、ネットワーク5を通じて複数のオブジェクトサーバ9の各々に接続される。第1通信部10は、例えばLAN(Local Area Network)などを通じて、設備サーバ7が対応するビル2における複数のビル設備3の各々に接続される。この例において、第1通信部10は、MQTTブローカーの機能を搭載する。このとき、各々のオブジェクトサーバ9は、MQTTクライアントの機能を搭載する。第1通信部10は、いずれかのオブジェクトサーバ9が発行したメッセージを受信するときに、当該メッセージに含まれる情報を設備制御部11に出力する。第1通信部10は、複数のオブジェクトサーバ9と共通のデータ形式によるメッセージを送受信する。 [0029] 設備制御部11は、メッセージが第1通信部10に受信されるときに、当該メッセージに基づいてビル設備3を制御する部分である。設備制御部11は、例えばビル設備3の種類ごとに複数設けられていてもよい。設備制御部11は、MQTTクライアントの機能を搭載していてもよい。設備制御部11は、ビル設備3の状況に応じてオブジェクト4に対するメッセージを発行する。第1通信部10は、設備制御部11が発行するメッセージのトピックを購読しているオブジェクトサーバ9に、当該メッセージを送信する。 [0030] オブジェクト管理部12は、設備サーバ7が対応するビル2において稼働するオブジェクト4を管理する部分である。オブジェクト管理部12は、MQTTクライアントの機能を搭載していてもよい。オブジェクト管理部12は、例えばオブジェクトサーバ9が購読できるトピックを管理してもよい。 [0031] オブジェクトサーバ9は、第2通信部13と、オブジェクト制御部14と、を備える。 [0032] 第2通信部13は、メッセージを通信する部分である。第2通信部13は、ネットワーク5を通じて複数の設備サーバ7の各々に接続される。第2通信部13は、ネットワーク5を通じて、オブジェクトサーバ9が制御する複数のオブジェクト4の各々に接続される。この例において、第2通信部13は、MQTTクライアントの機能を搭載する。第2通信部13は、購読しているトピックのメッセージをいずれかの設備サーバ7から受信するときに、当該メッセージに含まれる情報をオブジェクト制御部14に出力する。第2通信部13は、共通のデータ形式とは異なるデータ形式でオブジェクト4と通信する。 [0033] オブジェクト制御部14は、メッセージが第2通信部13に受信されるときに、当該メッセージに基づいてオブジェクト4を制御する部分である。オブジェクト制御部14は、機器制御部の例である。オブジェクト制御部14は、オブジェクト4の種類ごとに複数設けられていてもよい。オブジェクト制御部14は、オブジェクト4の状況に応じてビル設備3に対するメッセージを第2通信部13に発行させる。第2通信部13は、当該ビル設備3を制御する設備サーバ7の第1通信部10に対して当該メッセージを発行する。 ・・・ [0049] 図3において、初期登録およびその後の定常動作におけるシーケンス図が示される。この例において、オブジェクト4を設備サーバ7のオブジェクト管理部12に登録させる動作の例が示される。 [0050] ビル2において稼働するオブジェクト4の登録のために、オブジェクトサーバ9は、当該ビル2に対応する設備サーバ7に接続する。設備サーバ7への接続は、例えばオブジェクト4の管理者によるオブジェクトサーバ9の操作に基づいて行われる。あるいは、設備サーバ7への接続は、例えばオブジェクト4の管理者によるオブジェクト4の操作に基づいて、オブジェクトサーバ9を経由して行われてもよい。 [0051] オブジェクトサーバ9の第2通信部13は、MQTTのCONNECTメッセージを設備サーバ7の第1通信部10に送信する。設備サーバ7の第1通信部10は、MQTTのCONNACKメッセージをオブジェクトサーバ9の第2通信部13に返送する。これにより、オブジェクトサーバ9は、設備サーバ7とのMQTTによる接続が確立したことを確認する。ここで、オブジェクトサーバ9および設備サーバ7との間の通信において、ユーザ名およびパスワードによる認証が行われてもよい。 [0052] オブジェクトサーバ9の第2通信部13は、オブジェクト4の登録用のトピックを購読するように、MQTTのSUBSCRIBEメッセージをQoSレベル1で設備サーバ7の第1通信部10に送信する。設備サーバ7の第1通信部10は、MQTTのSUBACKメッセージをオブジェクトサーバ9の第2通信部13に返送する。これにより、オブジェクトサーバ9は、当該トピックの購読が許可されたことを確認する。 [0053] オブジェクトサーバ9の第2通信部13は、登録するオブジェクト4の情報をペイロードに含むMQTTのPUBLISHメッセージをQoSレベル1で設備サーバ7の第1通信部10に送信する。当該メッセージにおいて、APIとして「Registration」が指定される。当該メッセージは、例えば、トピック名に、第1レイヤ:NULL、第2レイヤ(第1情報):NULL、第3レイヤ(第2情報):O2B、および第4レイヤ:UserManagementを含み、ペイロードにAPI(第3情報):Registrationを含むように構成されたメッセージとして発行される。設備サーバ7の第1通信部10は、MQTTのPUBACKメッセージをオブジェクトサーバ9の第2通信部13に返送する。これにより、オブジェクトサーバ9は、メッセージの発行が受け付けられたことを確認する。 [0054] 設備サーバ7のオブジェクト管理部12は、第1通信部10がオブジェクトサーバ9から受信したメッセージに基づいて、オブジェクトIDの付与およびトピックヘッダの生成などのオブジェクト4の登録の処理を行う。オブジェクト管理部12は、登録の結果を第1通信部10に通知する。この例において、オブジェクト管理部12は、生成したトピックヘッダの情報をペイロードに含むMQTTのPUBLISHメッセージを、QoSレベル1のメッセージとして第1通信部10に発行する。当該メッセージにおいて、APIとして「RegistrationResult」が指定される。当該メッセージは、例えばトピック名に、第1レイヤ:NULL、第2レイヤ(第1情報):NULL、第3レイヤ(第2情報):O2B、および第4レイヤ:UserManagementを含み、ペイロードにAPI(第3情報):RegistrationResultを含むように構成されたメッセージである。 [0055] オブジェクトサーバ9の第2通信部13は、当該トピックを購読しているので、MQTTのPUBLISHメッセージとして設備サーバ7の第1通信部10から登録の結果を受信する。オブジェクトサーバ9の第2通信部13は、MQTTのPUBACKメッセージを設備サーバ7の第1通信部10に返送する。これにより、設備サーバ7は、登録の結果がオブジェクトサーバ9に通知されたことを確認する。 [0056] オブジェクトサーバ9の第2通信部13は、登録の結果において通知されたトピックヘッダを含むトピックを購読するように、MQTTのSUBSCRIBEメッセージを設備サーバ7の第1通信部10に送信する。第2通信部13は、QoSレベルが0のメッセージを購読するように、そのトピックについてのSUBSCRIBEメッセージを第1通信部10に送信する。また、第2通信部13は、QoSレベルが1のメッセージを購読するように、そのトピックについてのSUBSCRIBEメッセージを第1通信部10に送信する。すなわち、第2通信部13は、指定したバージョンにおける任意の機能種別を表すオブジェクト側へのメッセージの購読を申請する。設備サーバ7の第1通信部10は、MQTTのSUBACKメッセージをオブジェクトサーバ9の第2通信部13に返送する。これにより、オブジェクトサーバ9は、申請したトピックの購読が許可されたことを確認する。 [0057] 以上のように登録が行われた後に、オブジェクトサーバ9および設備サーバ7の間の通信は、定常動作に移行する。オブジェクトサーバ9から設備サーバ7へのメッセージは、発行者であるMQTTクライアントからMQTTブローカーへのPUBLISHメッセージとして通信される。設備サーバ7からオブジェクトサーバ9へのメッセージは、トピックの購読者であるMQTTクライアントへのMQTTブローカーからのPUBLISHメッセージとして通信される。オブジェクトサーバ9は、メッセージが対象とするオブジェクト4を、当該メッセージのトピックヘッダに基づいて特定する。 ・・・ [0070] オブジェクト4がエレベーターを利用する場合に、当該オブジェクト4が呼出し位置に到着したときに、通信システム1において図6に示されるエレベーターの呼出し処理が行われる。呼出し位置は、例えばエレベーターの乗場の位置である。呼出し処理において、オブジェクトサーバ9および設備サーバ7の間でメッセージが通信される。呼出し処理において、エレベーターは、オブジェクト4がいる階床を出発階とする乗場呼びを登録する。エレベーターの群管理装置は、登録した乗場呼びを複数のかごのいずれかに割り当てる。呼出し処理において、乗場呼びが割り当てられた応答かごは複数のかごのいずれであるかがオブジェクト4に通知される。ここで、エレベーターを利用するオブジェクト4は、施設内を移動する第1機器の例である。エレベーターを利用するオブジェクト4を制御するオブジェクトサーバ9は、第1機器サーバの例である。また、オブジェクト4の乗場呼びに応答する応答かごは、第1かごの例である。 ・・・ [0121] また、設備制御部11は、ビル設備3である入退管理装置に、第1情報に基づいて特定されるオブジェクト4を認証させるようにしてもよい。当該オブジェクト4の認証が成功する場合に、例えば当該入退管理装置が管理する電気錠の開錠などが行われる。これにより、入退域が管理される領域を有する施設においても、オブジェクト4は円滑に移動できる。なお、オブジェクトサーバ9から送信されるメッセージは、オブジェクト4の認証情報を含んでいてもよい。 [図1] [図:0001410197000001.jpg] [図3] [図:0001410197000002.jpg] イ 甲2の上記アの記載事項等から、以下の事項が理解できる。 (ア)甲2の記載から理解できる事項(申立1に基づく) a 甲2の段落[0018]~[0023]、[0027]~[0033]、[0121]及び図1等から、設備サーバ7は、ビル設備3と接続(設備サーバ7の設備制御部11、段落[0029])し、外部との通信を行う(設備サーバ7の第1通信部10、段落[0028])ものであること、及びオブジェクトサーバ9は、設備サーバ7とは別に設けられ、オブジェクト4と設備サーバ9との通信を全て仲介する(段落[0031]~[0033])ものであることが理解できる。そして、ビル設備3は、エレベータや電子錠の管理を含む入退管理装置などの設備を含み、オブジェクト4は、自律的に移動するロボットやモビリティを含むものである(段落[0018]、[0121])ことがわかる。 b 甲2の段落[0049]~[0057]及び図3等には、オブジェクトサーバ9が、オブジェクトサーバ9と設備サーバ7との間の通信接続を確立するために、まずCONNECTメッセージの送信をすること(その際、ユーザ名及びパスワードによる認証を行うことを含む)や、オブジェクト4を設備サーバ7のオブジェクト管理部12に登録するために、登録用のトピックの購読のためのSUBSCRIBEメッセージの送信、登録するオブジェクト4の情報を含むPUBLISHメッセージの送信、及び、登録の結果を受信したことを通知するPUBACKメッセージの返信をすること、さらには、トピックを購読するためにSUBSCRIBEメッセージの送信を行い、その返送を受信することで、申請したトピックの購読が許可されたことを確認することが記載され、以上の登録が行われた後に、オブジェクトサーバ9と設備サーバ7との間の通信が定常動作に移行することから、オブジェクトサーバ9はオブジェクト4と設備サーバ9との通信の可否を制御していることが理解できる。 c 甲2の段落[0121]には、設備サーバ7の設備制御部11が、オブジェクト4を認証させるようにしてもよい旨が記載されており、さらにオブジェクト4の認証が成功すると、入退管理装置が管理する電気錠の開錠が行われる旨も記載されているから、甲2には、上記bのオブジェクトサーバ9によって通信が許可されたオブジェクト4に対して、設備サーバ7が、さらにオブジェクト4を認証し、認証が成功すると電気錠を開錠すること、すなわち、設備サーバ7が、さらに入退を許可するか否かを決定することで、オブジェクト4の入退の可否を制御することが記載されているといえる。 (イ)甲2の記載から理解できる事項(申立2に基づく) a 甲2の段落[0018]~[0023]、[0027]~[0033]、[0121]及び図1等から、オブジェクト4は、自律的に移動するロボットやモビリティを含み(段落[0018])、ビル設備3の1つである入退管理装置(段落[0018])は、電子錠を管理する(段落[0121])ものであるから、電子錠は、オブジェクト4の通行の可否に関与するものであり、入退管理装置は電子錠と接続している。また、ビル設備3である入退管理装置は、設備サーバ7の設備制御部11により制御され(段落[0121])、当該設備サーバ7はクラウド上に設けられてもよい(段落[0020])ことから、ビル設備3である入退管理装置は、外部との通信を行う態様を含むといえる。そして、設備サーバ7は、その機能からみて、オブジェクト4を制御するオブジェクトサーバ9と、ビル設備3である入退管理装置との通信を全て仲介する(段落[0027]~[0030])ものであることが理解できる。 b 甲2の段落[0049]~[0057]及び図3等には、設備サーバ7が、オブジェクト4を制御するオブジェクトサーバ9と、ビル設備3である入退管理装置との間の通信接続を確立するために、まずオブジェクトサーバ9からのCONNECTメッセージに対してCONNACKメッセージを返信すること(その際、ユーザ名及びパスワードによる認証を行うことを含む)で接続を確立し、設備サーバ7のオブジェクト管理部12にてオブジェクト4を登録するために、登録用のトピックの購読を許可するSUBACKメッセージの返送、登録するオブジェクト4の情報を含むPUBLISHメッセージに対してPUBACKメッセージの返送、及び、オブジェクト管理部12でのオブジェクト4の登録の結果に関するPUBLISHメッセージの送信をすること、さらには、SUBACKメッセージの返送により、申請されたトピックの購読を許可することをオブジェクトサーバ9に通知することが記載され、以上の登録が行われた後に、設備サーバ7を介した、オブジェクト4を制御するオブジェクトサーバ9とビル設備3である入退管理装置との間の通信が定常動作に移行することから、設備サーバ7は、オブジェクト4を制御するオブジェクトサーバ9とビル設備3である入退管理装置との通信の可否を制御していることが理解できる。 c 甲2の段落[0121]には、設備サーバ7の設備制御部11は、ビル設備3である入退管理装置に、オブジェクト4を認証させるようにしてもよい旨が記載されており、さらにオブジェクト4の認証が成功すると、入退管理装置が管理する電気錠の開錠が行われる旨も記載されているから、甲2には、ビル設備3である入退管理装置が、上記bの設備サーバ7によって通信が許可されたオブジェクト4に対して、さらにオブジェクト4を認証し、認証が成功すると電気錠を開錠すること、すなわち、入退管理装置が、さらに入退を許可するか否かを決定することで、オブジェクト4の入退の可否を制御することが記載されているといえる。 ウ 甲2発明1及び甲2発明2 上記ア~イから、甲2には、申立1及び申立2に基づく、以下の甲2発明1及び甲2発明2が開示されていると認められる。(以下では、「甲2発明1」と「甲2発明2」とを合わせて、「甲2発明」という場合がある。) <甲2発明1>(申立1に基づく) 「オブジェクト4の入退を管理する通信システム1であって、 前記オブジェクト4の入退の可否に関与する入退管理装置を含むビル設備3と、 前記ビル設備3と接続し、外部との通信を行う設備サーバ7と、 前記設備サーバ7とは別に設けられ、前記オブジェクト4と前記設備サーバ7との通信を仲介するオブジェクトサーバ9と、を備え、 前記オブジェクトサーバ9は、前記オブジェクト4と前記設備サーバ7との通信を全て仲介し、 前記オブジェクトサーバ9は、前記オブジェクト4と前記設備サーバ7との通信の可否を制御し、 前記設備サーバ7は、前記オブジェクトサーバ9によって通信が許可された前記オブジェクト4について、さらに入退を許可するか否かを決定することで、前記オブジェクト4の入退の可否を制御する 通信システム1。」 <甲2発明2>(申立2に基づく) 「オブジェクト4の入退を管理する通信システム1であって、 前記オブジェクト4の入退の可否に関与する電子錠と、 前記電子錠と接続し、外部との通信を行う入退管理装置を含むビル設備3と、 前記入退管理装置を含むビル設備3とは別に設けられ、前記オブジェクト4を制御するオブジェクトサーバ9と前記入退管理装置を含むビル設備3との通信を仲介する設備サーバ7と、を備え、 前記設備サーバ7は、前記オブジェクト4を制御するオブジェクトサーバ9と前記入退管理装置を含むビル設備3との通信を全て仲介し、 前記設備サーバ7は、前記オブジェクト4を制御するオブジェクトサーバ9と前記入退管理装置を含むビル設備3との通信の可否を制御し、 前記入退管理装置を含むビル設備3は、前記設備サーバ7によって通信が許可された前記オブジェクト4について、さらに入退を許可するか否かを決定することで、前記オブジェクト4の入退の可否を制御する 通信システム1。」 エ 申立1甲4の記載事項等 [0020] 記憶装置9は、記憶部12を備える。記憶部12は、権限情報を記憶する部分である。記憶部12は、例えば識別情報と許可情報とを関連付けて記憶する。アクセス許可情報は、アクセスが許可される領域を表す情報である。 [0021] 認証装置10は、認証部13と、紐付け部14と、を備える。認証装置10は、無線通信の機能を備える。認証部13は、権限情報に基づいて認証を行う部分である。認証部13は、認証の結果を出力しうるように、電気錠3またはエレベーター2に接続される。紐付け部14は、権限情報を識別情報に紐付けて記憶する部分である。紐付け部14による紐付けは、例えば紐付け要求の信号が入力されることによって開始する。紐付け部14による紐付けは、例えば紐付け解除要求の信号が入力されることによって終了する。 [0022] 管理装置11は、受付部15と、管理部16と、を備える。受付部15は、自律移動体4への業務依頼を受け付ける部分である。管理部16は、自律移動体4が実行する業務の管理を行う部分である。 [0023] 続いて、図2を用いて、入退管理システム1の機能を説明する。 図2は、実施の形態1に係る入退管理システムにおける認証の例を示すシーケンス図である。 [0024] 依頼人8は、端末装置7を介して管理装置11の受付部15に業務依頼を送信する。業務依頼は、例えば依頼人8がいる領域への飲食物の注文である。業務依頼は、依頼人8の識別情報「ID-A」と、業務内容と、を含む。業務内容は、依頼人8がいる位置と、注文の内容と、を含む。 [0025] 受付部15は、端末装置7から受信した業務依頼を受け付ける。受付部15は、受け付けた業務依頼を管理部16に出力する。 [0026] 管理部16は、入力された業務依頼に含まれる業務内容の業務を、自律移動体4に割り当てる。管理部16は、業務が割り当てられた自律移動体4に業務内容を送信する。この例において、依頼人8の識別情報は、自律移動体4に送信されない。管理部16は、依頼人8の識別情報「ID-B」を業務が割り当てられた自律移動体4の識別情報「ID-A」に紐付ける紐付け要求を、認証装置10の紐付け部14に出力する。この例において、管理部16は、依頼人8がいる領域への入域およびエレベーター2の利用のいずれも許可されていない自律移動体4に業務を割り当てる。 [0027] 業務が割り当てられた自律移動体4の無線通信部6は、管理部16から業務内容を無線通信によって受信する。無線通信部6は、受信した業務内容を制御部5に出力する。自律移動体4は、制御部5の制御に基づいて、業務内容に従って業務を実行する。自律移動体4は、例えば注文された飲食物を格納する。自律移動体4は、依頼人8がいる領域への移動を開始する。 [0028] 認証装置10の紐付け部14は、管理部16から入力された紐付け要求を受け入れる。紐付け部14は、依頼人8の識別情報「ID-B」を、業務が割り当てられた自律移動体4の識別情報「ID-A」に紐付けて記憶する。 [0029] 自律移動体4は、依頼人8がいる領域への移動経路の途中において、認証装置10および電気錠3が設けられる扉に行き当たる。この例において、自律移動体4の識別情報「ID-A」は、当該扉を通行できる識別情報として登録されていない。自律移動体4は、無線通信部6から無線通信によって認証要求を当該認証装置10に送信する。 [0030] 認証装置10の認証部13は、認証要求を受信する。認証部13は、記憶装置9の記憶部12に権限情報を問い合わせる。例えば、認証部13は、まず認証要求に含まれる自律移動体4の識別情報「ID-A」が認証可能であるか問い合わせる。記憶部12は、識別情報「ID-A」に関連付けて記憶しているアクセス許可情報に基づいて、認証部13に通行可を回答しない。次に、認証部13は、自律移動体4の識別情報「ID-A」に紐付けられている権限情報を紐付け部14に問い合わせる。紐付け部14は、自律移動体4の識別情報「ID-A」に依頼人8の識別情報「ID-B」を紐付けている。紐付け部14は、識別情報「ID-A」に紐付けられている識別情報として「ID-B」を認証部13に出力する。認証部13は、入力された識別情報「ID-A」が認証可能であるか問い合わせる。記憶部12は、識別情報「ID-B」に関連付けて記憶しているアクセス許可情報に基づいて、認証部13に例えば通行可を回答する。認証部13は、記憶部12の回答に基づいて、自律移動体4を認証する。認証部13は、認証可を表す信号を電気錠3に出力する。 オ 申立1甲4に記載の技術的事項 上記エから、申立1甲4には、 「自律移動体4(移動体)及びアクセスが許可される領域(設備)に対する識別情報(アカウント)の発行及び認証(認証)を行う無線通信の機能を有する認証装置10(認証サーバ)を備え、認証装置10は、発行した識別情報の権限情報(通信権限)を記憶部12(通信権限管理データ)で管理し、記憶部12に基づいて権限を有する識別情報の認証を行う」 との技術的事項が開示されていると認められる。 (以下「申立1甲4に記載の技術的事項」という。また、本件発明1との対応が理解しやすいように、括弧内には、申立1甲4に記載の技術的事項の用語に対応する本件発明1の用語を付した。) 5 取消理由に対する当審の判断 (1)取消理由1(新規性)について ア 本件発明1と甲2発明1との対比、判断 (ア)対比 本件発明1と甲2発明1とを対比する。 甲2発明1の「オブジェクト4」は、その機能等に照らせば、本件発明1の「自律して移動する1又は複数の移動体」に相当し、以下同様に、「入退」は「通行」に、「通信システム1」は「移動体通行管理システム」に、「入退管理装置を含む設備3」は「1又は複数の設備」に、「設備サーバ7」は「設備側通信装置」に、「オブジェクトサーバ9」は「仲介サーバ」に、それぞれ相当する。 よって、本件発明1と甲2発明1とは以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 自律して移動する1又は複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、 前記移動体の通行の可否に関与する1又は複数の設備と、 前記設備と接続し、外部との通信を行う設備側通信装置と、 前記設備側通信装置とは別に設けられ、前記移動体と前記設備側通信装置との通信を仲介する仲介サーバと、を備え、 前記仲介サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置との通信を全て仲介し、 前記仲介サーバは、前記移動体と前記設備側通信装置との通信の可否を制御し、 前記設備側通信装置は、前記仲介サーバによって通信が許可された前記移動体について、さらに通行を許可するか否かを決定することで、前記移動体の通行の可否を制御するものである移動体通行管理システム。 <相違点> 本件発明1は、「前記移動体及び前記設備に対するアカウントの発行及び認証を行う認証サーバ」を備え、「前記認証サーバは、発行したアカウントを通信権限管理データに登録し、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理し」、「前記仲介サーバは、接続要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントが登録済みであれば接続を確立し、接続を確立したアカウントからチャンネル登録要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントに登録が許可されたチャンネルであればチャンネルを登録し、チャンネルと内容を含むメッセージを受信したならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、投稿が許可されたチャンネルであれば、チャンネル登録先にメッセージを転送することで、前記通信の可否を制御し」、「前記設備側通信装置は、前記認証サーバが発行したアカウントに通行可否を対応付けた通行権限管理データを参照して、当該アカウントに対応する前記移動体の通行の可否を制御する」のに対し、甲2発明1は、そもそも「認証サーバ」を備えていない点。 (イ)判断 上記(ア)から、本件発明1と、甲2発明1とは、上記相違点で相違するから、本件発明1は、甲2発明1であるとはいえない。 イ 本件発明1と甲2発明2との対比、判断 (ア)対比 本件発明1と甲2発明2とを対比する。 甲2発明2の「オブジェクト4」又は「オブジェクト4を制御するオブジェクトサーバ9」は、その機能等に照らせば、本件発明1の「自律して移動する1又は複数の移動体」に相当し、以下同様に、「入退」は「通行」に、「通信システム1」は「移動体通行管理システム」に、「電子錠」は「1又は複数の設備」に、「入退管理装置を含むビル設備3」は「設備側通信装置」に、「設備サーバ7」は「仲介サーバ」に、それぞれ相当する。 上記相当関係に照らせば、本件発明1と甲2発明2も、本件発明1と甲2発明1との対比で示した、一致点で一致し、相違点で相違する(上記ア(ア)を参照。)。 (イ)判断 上記(ア)から、本件発明1は、甲2発明2とも、上記ア(ア)の相違点で相違するから、本件発明1は、甲2発明2であるとはいえない。 ウ 本件発明6、9について 本件発明6は、本件発明1を引用する発明であり、本件発明6と、甲2発明とは、少なくとも、上記相違点では相違するから、本件発明6も、甲2発明であるとはいえない。 また、本件発明9は、実質的に、本件発明1の「システム」の発明に対応する「方法」の発明であり、本件発明9と、甲2発明に対応する方法の発明(以下、当該方法の発明も含めて「甲2発明」という。)とは、本件発明1と同様に、上記ア(ア)の相違点で相違するから、本件発明9も、甲2発明であるとはいえない。 エ 小括 以上から、本件発明1、6、9は、甲2発明であるとはいえず、取消理由1(新規性)により取り消すことはできない。 (2)取消理由2(進歩性)について ア 本件発明1について 本件発明1と、甲2発明(甲2発明1及び甲2発明2)とは、上記(1)ア(ア)に示した、相違点で相違するから、当該相違点に係る本件発明1が、甲2発明及び申立1甲4に記載の技術的事項並びに周知の技術的事項(申立2甲5)に基づいて、当業者が容易になし得たものであるか検討する。 申立1甲4には、上記4(3)オで示したとおり、「自律移動体4(移動体)及びアクセスが許可される領域(設備)に対する識別情報(アカウント)の発行及び認証(認証)を行う無線通信の機能を有する認証装置10(認証サーバ)を備え、認証装置10は、発行した識別情報の権限情報(通信権限)を記憶部12(通信権限管理データ)で管理し、記憶部12に基づいて権限を有する識別情報の認証を行う」(括弧内は申立1甲4に記載の技術的事項の用語に対応する本件発明1の用語)との技術的事項が開示されていると認められる。 他方、甲2には、オブジェクトサーバ9が、オブジェクトサーバ9と設備サーバ7との間の通信接続を確立するために、まずCONNECTメッセージの送信をすること(その際、ユーザ名及びパスワードによる認証を行うことを含む)や、オブジェクト4を設備サーバ7のオブジェクト管理部12に登録するために、登録用のトピックの購読のためのSUBSCRIBEメッセージの送信、登録するオブジェクト4の情報を含むPUBLISHメッセージの送信、及び、登録の結果を受信したことを通知するPUBACKメッセージの返信をすること、さらには、トピックを購読するためにSUBSCRIBEメッセージの送信を行い、その返送を受信することで、申請したトピックの購読が許可されたことを確認することが記載され、以上の登録が行われた後に、オブジェクトサーバ9と設備サーバ7との間の通信が定常動作に移行することから、オブジェクトサーバ9はオブジェクト4と設備サーバ9との通信の可否を制御することが開示されている(上記4(3)イ(ア)b及び(イ)bを参照。)。 そして、甲2には、ユーザ名及びパスワードによる認証を行うことは記載されているから、甲2発明に上記申立1甲4に記載の技術的事項を適用して、アカウント(識別情報)の発行及び認証を行う認証サーバを設けること自体は、本件訂正前の請求項2に対して取消理由を通知したように、当業者であれば容易になし得たことである。 しかしながら、甲2発明に、申立1甲4に記載の技術的事項を適用しても、相違点に係る本件発明1の構成のうち、「前記認証サーバは、発行したアカウントを通信権限管理データに登録し、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理し」、「前記仲介サーバは、接続要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントが登録済みであれば接続を確立し、接続を確立したアカウントからチャンネル登録要求を受け付けたならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、要求元のアカウントに登録が許可されたチャンネルであればチャンネルを登録し、チャンネルと内容を含むメッセージを受信したならば、前記認証サーバに問い合わせを行い、問い合わせの結果、投稿が許可されたチャンネルであれば、チャンネル登録先にメッセージを転送することで、前記通信の可否を制御し」との構成は、当業者が容易になし得たものということはできない。 すなわち、甲2及び申立1甲4には、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理するようなことは開示されていないところ、甲2発明における、通信の可否の制御を、仲介サーバが認証サーバに問い合わせを行いながら、「各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理し」、「問い合わせの結果、要求元のアカウントに登録が許可されたチャンネルであればチャンネルを登録し」、「問い合わせの結果、投稿が許可されたチャンネルであれば、チャンネル登録先にメッセージを転送する」ことで、「通信の可否を制御」するように改変することが、容易になし得ることとはいえない。 また、取消理由通知で通知した周知の技術的事項(申立2甲5)は、通信システムにおいて、送受信される通信の全部又は一部を蓄積、監視することは周知であることを示すものであるから(取消理由通知の2(2)を参照。)、当該周知の技術的事項を参酌しても、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理することが容易になし得るものではない。 したがって、本件発明1は、甲2発明及び申立1甲4に記載の技術的事項並びに周知の技術的事項(申立2甲5)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 イ 本件発明3~9について 本件発明3~8は、本件発明1を引用する発明であるから、甲2発明と少なくとも上記(1)ア(ア)の相違点で相違し、同様の理由により、甲2発明及び申立1甲4に記載の技術的事項並びに周知の技術的事項(申立2甲5)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 さらに、本件発明9は、実質的に、本件発明1の「システム」の発明に対応する「方法」の発明であるから、本件発明9も、甲2発明と少なくとも上記相違点で相違し、甲2発明及び申立1甲4に記載の技術的事項並びに周知の技術的事項(申立2甲5)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 ウ 小括 以上から、本件発明1、3~9は、甲2発明及び申立1甲4に記載の技術的事項並びに周知の技術的事項(申立2甲5)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、本件訂正後の請求項1、3~9に係る特許は、取消理由2(進歩性)により取り消すことはできない。 (3)相違点に係る本件発明1についての申立人の主張について ア 申立人2は、令和5年12月11日提出の意見書で、上記相違点に係る本件発明1における、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理することについて、概ね以下の点を主張している。 (ア)追加変更点2(「各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理」することを含む。)に関し、甲2に、設備サーバ7のオブジェクト管理部12は、オブジェクトIDの付与及びトピックヘッダの生成などのオブジェクト4の登録の処理を行うこと(段落[0054])、並びにビル2において稼働するオブジェクト4の管理とオブジェクトサーバ9が購読できるトピックの管理とを行うこと(段落[0030])が記載されており、オブジェクト4の管理を行うためには、付与したオブジェクトIDをデータとして登録(記憶)しておかなければならないことは明らかであるから、設備サーバ7のオブジェクト管理部12による上記機能は、追加変更点2において認証サーバが、発行したアカウントを通信権限管理データに登録し、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理する機能に相当する。(意見書3~4ページ) (イ)この申請したトピックの購読を設備サーバ7が許可する機能は、追加変更点4において仲介サーバがチャンネルを登録する機能に相当する。 イ しかしながら、通信分野においては、「チャンネル」とは、データの通信路を意味することが一般的である。さらに、本件明細書の段落【0016】における「監視サーバ50は、ロボット30や設備と同様にアカウントの発行を受けており、許可されたチャンネルで送受信されているメッセージを取得し、全体ログデータ51に蓄積する。」等の記載を鑑みても、「チャンネル」とはデータの通信路を意味すること、及び本件発明1においては、データの通信路が複数存在し、各アカウントが、自身に許可された通信路のみを利用できるものと理解できる。 一方、甲2に記載された「トピック」については、一般に「トピック」との用語は「1 題目。論題。2 話のタネ。話題。トピックス」(広辞苑第六版)を意味すること、及び、甲2の図2に示されたトピック名の階層構造の記載等を鑑みると、送受信するメッセージの内容に関するものであって、データそのものと考えられ、データの通信路を意味するとは認められない。したがって、トピックの購読や管理が、チャンネルの管理に相当するということはできない。 以上から、申立人2の主張は採用できない。 なお、申立人1は、(本件訂正により訂正された)本件発明1について、意見を述べていない。 (4)申立人1及び申立人2が提出したその他の証拠について 各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理することを含んで通信の可否を制御することについては、申立人1及び申立人2が提出したその他の証拠にも記載されていない。 ここで、申立人1は、特許異議申立書(38ページ)において、申立1甲6には、アクセスポイント101は、端末102および端末103に、通知された無線チャンネルでの端末間直接通信を許可する場合は、端末102および端末103に、無線チャンネルの移動を許可することが記載されている(段落【0132】)から、構成要件8B(「前記仲介サーバは、メッセージを送受信するチャンネルの使用可否を制御する」との構成を含む。)は申立1甲6に記載されている旨を主張している。 しかしながら、申立1甲6は、無線LANを用い基地局を介さない端末間での通信を行う無線通信システムに関するもの(段落【0001】)であるところ、オブジェクト4の入退を管理する通信システム1である甲2発明に適用する動機付けは見いだせないし、さらに甲2発明に申立1甲6に記載の技術的事項を適用しても、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理することを含んで通信の可否を制御すること、すなわち、相違点に係る本件発明1の構成には至らない。 したがって、本件発明1、3~9は、申立人1及び申立人2が提出したその他の証拠を参酌しても、甲2発明等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 6 取消理由通知において採用しなかった申立理由について (1)取消理由通知において採用しなかった申立人1の申立理由 取消理由通知において採用しなかった申立理由として、申立人1は、特許異議申立書において、以下の申立理由1~3を主張した。また証拠方法として、以下の申立1甲1~申立1甲10を提出した。 ア 申立理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1、6、9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された申立1甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件訂正前の請求項1、6、9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ 申立理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項2~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された申立1甲1に記載された発明等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項2~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ウ 申立理由3(拡大先願) 本件訂正前の請求項1、6、9に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた申立1甲3の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の申立1甲3に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記申立1甲3の出願人と同一でもないから、本件訂正前の請求項1、6、9に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 エ 証拠方法 申立1甲1:特開2022-83144号公報 甲2:国際公開第2021/177377号 申立1甲3:特願2021-70404号(特開2022-165164号公報) 申立1甲4:国際公開第2020/194395号 申立1甲5:特開2021-111858号公報 申立1甲6:特開2007-295541号公報 申立1甲7:「スマートシティ・ビルソリューシヨンロボット移動支援サービス」と題された、三菱電機ビルソリューションズ株式会社のパンフレット 申立1甲8:「汎用性の高いクラウドを活用したエレベーターとロボットの連携機能を開発」と題されたニュース記事が掲載された、東芝エレベータ株式会社のWebサイト 申立1甲9:「日本オーチスのエレベーターが、ZMPのロボットとのクラウド連携に成功」と題されたニュース記事が掲載された、日本オーチス・エレベータ株式会社のWebサイト 申立1甲10:「凸版印刷とZMP、ロボット管理クラウドとエレベーター制御システム間でセキュリティ通信の実証を実施」と題された、凸版印刷株式会社の報道発表資料 (なお、申立1甲7~申立1甲10については、申立人1の証拠説明書の記載に倣った。) (2)取消理由通知において採用しなかった申立人2の申立理由 取消理由通知において採用しなかった申立理由として、申立人2は、特許異議申立書において、以下の申立理由4を主張した。また、証拠方法として、以下の申立2甲1~申立2甲6を提出した。 ア 申立理由4(拡大先願) 本件訂正前の請求項1~2、6、8~9に係る発明は、本件特許出願の日前の日本語特許出願であって、本件特許出願後に国際公開がされた申立2甲1の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が申立2甲1に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が申立2甲1の出願人と同一でもないから、本件訂正前の請求項1~2、6、8~9に係る特許は、特許法第29条の2の規定(同法第184条の13参照)に違反してされたものである。 イ 証拠方法 申立2甲1:PCT/JP2021/031838号(国際公開第2023/32020号) 甲2:国際公開第2021/177377号 申立2甲3: 特開2022-83144号公報 申立2甲4: 国際公開第2020/194395号 申立2甲5: 特開2021-111858号公報 申立2甲6: 特開2007-295541号公報 (3)各申立理由についての判断 ア 申立理由1~2について 申立1甲1に基づく申立理由1~2(上記(1)ア~イの新規性及び進歩性)について検討する。 本件発明1は、本件訂正により、本件訂正前の請求項1に、本件訂正前の請求項2の発明特定事項を付加し、さらに、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理することを含んで通信の可否を制御することについて限定したものであるところ、申立人1も特許異議申立書(33ページ)で述べているとおり、申立1甲1には、本件訂正前の請求項2の構成(「認証サーバ」についての構成)に関して記載されていないから、結局、本件発明1と、申立1甲1に記載された発明とは、少なくとも、上記5(1)ア(ア)に示した相違点(本件発明1と甲2発明との相違点)で相違するものである。 そして、相違点に係る構成により、本件発明1、3~9が容易になし得るものではないことは、上記5(2)及び(4)で説示したとおりである。 したがって、本件発明1、3~9は、申立人1が主張する申立理由1~2によって取り消すことはできない。 イ 申立理由3について検討する。 申立1甲3に基づく申立理由3(上記(1)ウの拡大先願)について検討する。 本件発明1は、本件訂正により、本件訂正前の請求項1に、本件訂正前の請求項2の発明特定事項を付加し、さらに各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理することを含んで通信の可否を制御することについて限定したものであるから、申立1甲3に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。 したがって、本件発明1、3~9は、申立人1が主張する申立理由3によって取り消すことはできない。 ウ 申立理由4について検討する。 申立2甲1に基づく申立理由4(上記(2)アの拡大先願)について検討する。 申立2甲1の記載等を参酌しても、申立2甲1には、認証サーバについても、各アカウントについて使用を許可するチャンネルを管理することを含んで通信の可否を制御することについても記載されていないから、本件発明1と、申立2甲1に記載された発明とを対比すると、少なくとも、上記5(1)ア(ア)に示した相違点(本件発明1と甲2発明との相違点)で相違する。 したがって、本件発明1、3~9は、申立2甲1に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。 よって、本件発明1、3~9は、申立人2が主張する申立理由4によって取り消すことはできない。 エ 小括 以上から、申立人1及び申立人2が主張する申立理由によっては、本件発明1、3~9を取り消すことはできない。 7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人1及び申立人2が特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1、3~9に係る特許を取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1、3~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件特許の請求項2は、本件訂正により削除された。これにより、請求項2に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700341

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