特許異議申立
2023-700686
焼却炉および焼却炉の制御方法
- 審判番号
- 2023-700686
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-096574
- 登録番号
- 7199305
- 請求日
- 2023年07月04日
- 審決日
- 2023年10月05日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日立造船株式会社
- 【権利者代理人】松阪 正弘
- 【権利者代理人】田中 勉
- 【権利者代理人】井田 正道
- 【異議申立人】笹井 栄治
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 竹下 和志
- 審判官 岩▲崎▼ 則昌
- 分類
- P1651.121-Y (F23G) / P1651.537-Y (F23G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7199305号発明「焼却炉および焼却炉の制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7199305号の請求項1-13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の概要
特許第7199305号の請求項1-13に係る特許についての出願は、令和元年5月23日に特許出願され、令和4年12月22日にその特許権の設定登録がされ、令和5年1月5日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和5年7月4日に特許異議申立人 笹井栄治(以下、「特許異議申立人」という。)により、請求項1-13に係る特許についての特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明
特許第7199305号の請求項1-13に係る発明(以下、それぞれを「本件特許発明1」-「本件特許発明13」という。)は、特許第7199305号の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
焼却炉であって、
前側から後側に向かって配列される複数の火格子部を有する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室から連続し、前記一次燃焼室から排出される排ガスが流れる二次燃焼室と、
前記複数の火格子部を介して前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する火格子部ガス供給部と、
前記一次燃焼室において前記複数の火格子部よりも上方に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部と、
前記二次燃焼室に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記二次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する二次燃焼室ガス供給部と、
所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御するとともに、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる制御部と、
を備え 、
前記複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって乾燥火格子部、燃焼火格子部および後燃焼火格子部が順に配列され、
前記一次燃焼室が、前記二次燃焼室の下端から前記後側に広がって前記燃焼火格子部の少なくとも一部の上方を覆う天井部をさらに有し、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、前記天井部または前記後側の壁部に設けられ、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、
下段ノズルと、
前記下段ノズルよりも上方に位置する上段ノズルと、
を含むことを特徴とする焼却炉。
【請求項2】
請求項1に記載の焼却炉であって 、
前記二次燃焼室ガス供給部の前記ノズル部が、前記前側から前記後側に向かう方向に前記燃焼用ガスを噴出するノズルを含むことを特徴とする焼却炉。
【請求項3】
焼却炉であって、
前側から後側に向かって配列される複数の火格子部を有する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室から連続し、前記一次燃焼室から排出される排ガスが流れる二次燃焼室と、
前記複数の火格子部を介して前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する火格子部ガス供給部と、
前記一次燃焼室において前記複数の火格子部よりも上方に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部と、
前記二次燃焼室に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記二次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する二次燃焼室ガス供給部と、
所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御するとともに、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる制御部と、
を備え、
前記複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって乾燥火格子部、燃焼火格子部および後燃焼火格子部が順に配列され、
前記一次燃焼室が、前記二次燃焼室の下端から前記前側または前記後側の一方側に広がって前記燃焼火格子部の少なくとも一部の上方を覆う天井部をさらに有し、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、前記天井部または前記一方側の壁部に設けられ、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、
再循環排ガスを含むガスを前記燃焼用ガスとして噴出する第1ノズルと、
前記第1ノズルが噴出するガスよりも酸素濃度が高いガスを前記燃焼用ガスとして噴出する第2ノズルと、
を含み、
前記制御部が、前記第2ノズルにおけるガス流速を前記第1ノズルよりも優先的に変更することにより、前記中間ガス供給部における前記燃焼用ガスの供給量を制御することを特徴とする焼却炉。
【請求項4】
焼却炉であって、
前側から後側に向かって配列される複数の火格子部を有する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室から連続し、前記一次燃焼室から排出される排ガスが流れる二次燃焼室と、
前記複数の火格子部を介して前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する火格子部ガス供給部と、
前記一次燃焼室において前記複数の火格子部よりも上方に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部と、
前記二次燃焼室に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記二次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する二次燃焼室ガス供給部と、
所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御するとともに、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる制御部と、
を備え、
前記複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって乾燥火格子部、燃焼火格子部および後燃焼火格子部が順に配列され、
前記一次燃焼室が、前記二次燃焼室の下端から前記前側または前記後側の一方側に広がって前記燃焼火格子部の少なくとも一部の上方を覆う天井部をさらに有し、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、前記天井部または前記一方側の壁部に設けられ、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、
前記燃焼用ガスを噴出口から噴出する第1ノズルと、
前記第1ノズルよりも大きい噴出口から前記燃焼用ガスを噴出する第2ノズルと、
を含み、
前記制御部が、前記第2ノズルにおけるガス流速を前記第1ノズルよりも優先的に変更することにより、前記中間ガス供給部における前記燃焼用ガスの供給量を制御することを特徴とする焼却炉。
【請求項5】
焼却炉であって、
前側から後側に向かって配列される複数の火格子部を有する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室から連続し、前記一次燃焼室から排出される排ガスが流れる二次燃焼室と、
前記複数の火格子部を介して前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する火格子部ガス供給部と、
前記一次燃焼室において前記複数の火格子部よりも上方に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部と、
前記二次燃焼室に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記二次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する二次燃焼室ガス供給部と、
所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御するとともに、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる制御部と、
を備え、
前記複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって乾燥火格子部、燃焼火格子部および後燃焼火格子部が順に配列され、
前記一次燃焼室が、前記二次燃焼室の下端から前記前側または前記後側の一方側に広がって前記燃焼火格子部の少なくとも一部の上方を覆う天井部をさらに有し、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、前記天井部または前記一方側の壁部に設けられ、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、
前記燃焼用ガスを噴出口から噴出する第1ノズルと、
前記第1ノズルよりも小さい噴出口から前記燃焼用ガスを噴出する第2ノズルと、
を含み、
前記制御部が、前記第2ノズルにおけるガス流速を前記第1ノズルよりも優先的に変更することにより、前記中間ガス供給部における前記燃焼用ガスの供給量を制御することを特徴とする焼却炉。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1つに記載の焼却炉であって、
前記一方側が前記後側であり、
前記二次燃焼室ガス供給部の前記ノズル部が、前記前側から前記後側に向かう方向に前記燃焼用ガスを噴出するノズルを含むことを特徴とする焼却炉。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の焼却炉であって、
前記制御部が、前記一次燃焼室内における空気比が所定範囲内となるように、前記火格子部ガス供給部における前記燃焼用ガスの供給量に基づいて前記中間ガス供給部における前記燃焼用ガスの供給量を制御することを特徴とする焼却炉。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の焼却炉であって、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、水平方向または水平方向よりも上方に向かって前記燃焼用ガスを噴出することを特徴とする焼却炉。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の焼却炉であって、
前記二次燃焼室ガス供給部の前記ノズル部が、前記二次燃焼室における前記排ガスの流路に沿って設けられる複数のノズルを含むことを特徴とする焼却炉。
【請求項10】
焼却炉の制御方法であって、
前記焼却炉が、
前側から後側に向かって配列される複数の火格子部を有する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室から連続し、前記一次燃焼室から排出される排ガスが流れる二次燃焼室と、
前記複数の火格子部を介して前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する火格子部ガス供給部と、
前記一次燃焼室において前記複数の火格子部よりも上方に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部と、
前記二次燃焼室に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記二次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する二次燃焼室ガス供給部と、
を備え、
前記複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって乾燥火格子部、燃焼火格子部および後燃焼火格子部が順に配列され、
前記一次燃焼室が、前記二次燃焼室の下端から前記後側に広がって前記燃焼火格子部の少なくとも一部の上方を覆う天井部をさらに有し、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、前記天井部または前記後側の壁部に設けられ、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、
下段ノズルと、
前記下段ノズルよりも上方に位置する上段ノズルと、
を含み、
前記焼却炉の制御方法が、
a)所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御する工程と、
b)前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる工程と、
を備えることを特徴とする焼却炉の制御方法。
【請求項11】
焼却炉の制御方法であって、
前記焼却炉が、
前側から後側に向かって配列される複数の火格子部を有する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室から連続し、前記一次燃焼室から排出される排ガスが流れる二次燃焼室と、
前記複数の火格子部を介して前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する火格子部ガス供給部と、
前記一次燃焼室において前記複数の火格子部よりも上方に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部と、
前記二次燃焼室に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記二次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する二次燃焼室ガス供給部と、
を備え、
前記複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって乾燥火格子部、燃焼火格子部および後燃焼火格子部が順に配列され、
前記一次燃焼室が、前記二次燃焼室の下端から前記前側または前記後側の一方側に広がって前記燃焼火格子部の少なくとも一部の上方を覆う天井部をさらに有し、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、前記天井部または前記一方側の壁部に設けられ、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、
再循環排ガスを含むガスを前記燃焼用ガスとして噴出する第1ノズルと、
前記第1ノズルが噴出するガスよりも酸素濃度が高いガスを前記燃焼用ガスとして噴出する第2ノズルと、
を含み、
前記焼却炉の制御方法が、
a)所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御する工程と、
b)前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる工程と、
を備え、
前記b)工程において、前記第2ノズルにおけるガス流速を前記第1ノズルよりも優先的に変更することにより、前記中間ガス供給部における前記燃焼用ガスの供給量が制御されることを特徴とする焼却炉の制御方法。
【請求項12】
焼却炉の制御方法であって、
前記焼却炉が、
前側から後側に向かって配列される複数の火格子部を有する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室から連続し、前記一次燃焼室から排出される排ガスが流れる二次燃焼室と、
前記複数の火格子部を介して前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する火格子部ガス供給部と、
前記一次燃焼室において前記複数の火格子部よりも上方に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部と、
前記二次燃焼室に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記二次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する二次燃焼室ガス供給部と、
を備え、
前記複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって乾燥火格子部、燃焼火格子部および後燃焼火格子部が順に配列され、
前記一次燃焼室が、前記二次燃焼室の下端から前記前側または前記後側の一方側に広がって前記燃焼火格子部の少なくとも一部の上方を覆う天井部をさらに有し、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、前記天井部または前記一方側の壁部に設けられ、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、
前記燃焼用ガスを噴出口から噴出する第1ノズルと、
前記第1ノズルよりも大きい噴出口から前記燃焼用ガスを噴出する第2ノズルと、
を含み、
前記焼却炉の制御方法が、
a)所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御する工程と、
b)前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる工程と、
を備え、
前記b)工程において、前記第2ノズルにおけるガス流速を前記第1ノズルよりも優先的に変更することにより、前記中間ガス供給部における前記燃焼用ガスの供給量が制御されることを特徴とする焼却炉の制御方法。
【請求項13】
焼却炉の制御方法であって、
前記焼却炉が、
前側から後側に向かって配列される複数の火格子部を有する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室から連続し、前記一次燃焼室から排出される排ガスが流れる二次燃焼室と、
前記複数の火格子部を介して前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する火格子部ガス供給部と、
前記一次燃焼室において前記複数の火格子部よりも上方に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部と、
前記二次燃焼室に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記二次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する二次燃焼室ガス供給部と、
を備え、
前記複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって乾燥火格子部、燃焼火格子部および後燃焼火格子部が順に配列され、
前記一次燃焼室が、前記二次燃焼室の下端から前記前側または前記後側の一方側に広がって前記燃焼火格子部の少なくとも一部の上方を覆う天井部をさらに有し、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、前記天井部または前記一方側の壁部に設けられ、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、
前記燃焼用ガスを噴出口から噴出する第1ノズルと、
前記第1ノズルよりも小さい噴出口から前記燃焼用ガスを噴出する第2ノズルと、
を含み、
前記焼却炉の制御方法が、
a)所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御する工程と、
b)前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる工程と、
を備え、
前記b)工程において、前記第2ノズルにおけるガス流速を前記第1ノズルよりも優先的に変更することにより、前記中間ガス供給部における前記燃焼用ガスの供給量が制御されることを特徴とする焼却炉の制御方法。」
第3 特許異議申立ての概要
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証-甲第5号証(以下、それぞれを「甲1」-「甲5」という。)を提出し、概略、次の取消理由(以下、特許異議申立人が主張する理由を、それぞれ「取消理由1」-「取消理由3」という。)を主張している。
<甲号証一覧>
甲1:特表2014-513786号公報
甲2:特開2013-213652号公報
甲3:特開2017-096517号公報
甲4:特開2001-182922号公報
甲5:国際公開第2013/147030号
1 取消理由1(特許法第29条第2項)
・請求項1-2、7-10
本件特許発明1-2、7-10は、甲1に記載された発明と、甲2及び甲3から導出される従来周知の技術とに基いて、当業者が容易に想到できたものである。
・請求項3、6、11
本件特許発明3、6、11は、甲1に記載された発明と、甲4に記載された技術的事項と、甲2及び甲3から導出される従来周知の技術とに基いて、当業者が容易に想到できたものである。
したがって、本件特許発明1-3、6-11は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 取消理由2(特許法第29条第2項)
・請求項4-5、12-13
本件特許発明4-5、12-13は、甲5に記載された発明と、甲4に記載された技術的事項と、甲2及び甲3から導出される従来周知の技術とに基いて、当業者が容易に想到できたものである。
したがって、本件特許発明4-5、12-13は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
3 取消理由3(特許法第36条第6項第1号)
本件特許発明1-13は、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり、サポート要件に違反する。
したがって、本件特許発明1-13は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
第4 甲1-甲5について
1 甲1について
(1)甲1の記載
甲1には、「焼却炉の排ガスの完全燃焼を最適化する方法」に関して、以下の記載事項及び図示事項がある(下線は、当審によるものである。以下同様。)。
ア「【0015】
本発明に従う方法は、燃焼される固形物質を、一次燃焼空間をなす燃焼室内に取入口を介して導入する段階と、一次空気を吸気し、一次燃焼空間内の、燃焼火格子上を運搬される燃焼床を形成する固形物質を燃焼する段階と、燃焼された固形物質を、運搬方向に関して取入口とは反対側に配置された取出口を介して一次燃焼空間から排出する段階の、各段階を含んでいる。
【0016】
固形物質の燃焼の間に放出された一次燃焼ガスは、二次空気が吸気されて、二次燃焼空間をなす二次燃焼室で燃焼される。二次燃焼室は、燃焼ガスの流れ方向に関して燃焼室の下流に(言い換えれば、燃焼室の上方に)配置されている。
【0017】
一次燃焼ガスを含む排ガスは、二次燃焼空間に入る前に(言い換えれば、流れ方向に関して上流側で、したがって、この燃焼空間の下方で)、混合ゾーンで均質化される。この均質化は、ノズルを介して導入される流体によって生じる。」
イ「【0033】
本発明のさらに好ましい実施形態では、流体は、二次燃焼空間の下流に後続するゾーンから還流された排煙を含んでいる。一般的な廃物焼却炉の構成では、排煙の還流は、好ましくは、蒸気発生器と煙道との間のゾーンから実施される。導入される排煙の量は、吸気された一次空気の量の約5%から約35%であり、好ましくは、約20%である。排煙とは別に、あるいは、排煙に加えて、任意の適切な他の流体、特に、空気、窒素等の不活性ガス、水蒸気、または、これらの混合ガス、を使用することもできる。」
ウ「【0044】
図1に示すように、燃焼される固形物質2は、供給ホッパー2に注入され、そこから取入口6を介して燃焼室8に導入される。この導入には、一般的には、投入用タペットが用いられる。燃焼室8は、側壁10を含み、側壁10は、上方に向かって先細りとなるように形成された一次燃焼空間12を囲むものである。
【0045】
固形物質2は、燃焼床14を形成して(供給)燃焼火格子16上を運搬される。燃焼火格子を通って一次空気が流れ、固形物質は、この処理の間に燃焼される。この際、乾燥ゾーン、着火ゾーン、燃焼ゾーン、及び、灰燃焼ゾーンは、運搬方向Fに沿って連続して設けられる。その後、燃焼された固形物質は、取入口16の反対側に配置された取出口18から排出され、次いで、スラグ運搬装置のスラグ除去器を介して送られる。図示された実施形態において、一次空気は、個々の下部熱風室20a、20b、20c、20dを介して分配され、下部熱風室の各々には、個別の一次空気ライン22a、22b、22c、22dを介して供給される。
【0046】
ノズル24a、24b、24c(図1に矢印で示す)は、燃焼室の側壁10に配置され、燃焼室8に流体を導入するために使用される。これらのノズルは、ノズルからの流体の射出速度が、40m/sから120m/sとなるように構成されている。
【0047】
図示された実施形態では、ノズル24aは、燃焼室8の取入口側の領域8’に配置され、詳しくは、側壁10の、取入口に対向し、傾斜して上方に延びる部分10’に配置されている。また、ノズル24b、24cは、取出口側の領域8’’に配置されている。その際、側壁の、傾斜して上方に延びる部分10’’に1個のノズル24bが配置され、端面25を形成して垂直に延びる部分10’’’に1個のノズルが配置されている。但し、本発明の目的に適合する任意の他の個数及び配置構成のノズルを使用するものであってもよい。」
エ「【0049】
この排ガスは、燃焼室8に後続し、二次燃焼空間27をなす二次燃焼室28に流れ込む。そして、二次空気が吸気され、排ガスは、二次燃焼室で燃焼される。このため、二次燃焼室28の側壁30には、二次空気を導入するためのノズル32a、32bが設けられている。」
オ「【図1】
[図:0001403691000001.jpg]
」
(2)上記(1)から認められること
ア 上記(1)イの段落【0033】の記載事項から、甲1は、焼却炉を実施形態として開示するものである。
イ 燃焼室8が有する燃焼火格子16について、上記(1)ウの段落【0045】の記載事項及び図1の図示から、固形物質2が運搬される運搬方向Fの上流を前方、下流を後側ということができる。そして、前側から後側に向かって、燃焼火格子16には、乾燥ゾーン、着火ゾーン、燃焼ゾーン及び灰燃焼ゾーンが設けられることが認められる。
ウ 上記(1)エの段落【0049】の記載事項及び図1の図示から、二次燃焼室28が燃焼室8に連続して設けられ、燃焼室8から排出される排ガスが二次燃焼室28に流れ込むことが認められる。
エ 上記(1)ウの段落【0045】の記載事項及び図1の図示から、一次空気が、燃焼火格子16の下部に設けられた個々の下部熱風室20a、20b、20c、20dを介して分配され、下部熱風室の各々には、個別の一次空気ライン22a、22b、22c、22dを介して供給されており、上記イの認定事項から、一次空気ライン22a、22b、22c、22dが、燃焼火格子16の乾燥ゾーン、着火ゾーン、燃焼ゾーン及び灰燃焼ゾーンを介して燃焼室8内に空気を供給するものと認められる。
オ 上記(1)ウの段落【0046】の記載事項及び図1の図示から、燃焼室8内には、燃焼火格子16の上方に、ノズル24a、24b、24cが配置され、ノズル24a、24b、24cから燃焼室8に流体を供給するものと認められる。また、上記(1)アの段落【0017】及びイの段落【0033】の記載事項から、この流体は、二次燃焼空間の下流に後続するゾーンから還流された排煙を含み、任意に空気等が加えられるものと認められる。
カ 上記(1)エの段落【0049】の記載事項及び図1の図示から、二次燃焼室28には、ノズル32a、32bが配置され、このノズル32a、32bから二次燃焼室28内に二次空気が導入されるものと認められる。
キ 上記(1)ウの段落【0047】の記載事項及び図1の図示から、燃焼室8が二次燃焼室28の下端から後側に広がって、下部熱風室20c、20dの上部に位置する燃焼火格子16の少なくとも一部の上方を覆う側壁10の部分10’’を備えることが認められる。
ク 図1の図示から、ノズル24a、24b、24cが、側壁10の部分10’’及び側壁10の部分10’’’に設けられ、ノズル24bが、ノズル24cよりも上方に位置しているものと認められる。
(3)甲1発明
上記(1)及び(2)から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「焼却炉であって、
前側から後側に向かって配列される燃焼火格子16に設けられる乾燥ゾーン、着火ゾーン、燃焼ゾーン、及び、灰燃焼ゾーンを有する燃焼室8と、
前記燃焼室8から連続し、 前記燃焼室8から排出される排ガスが流れる二次燃焼室28と、
前記燃焼火格子16の乾燥ゾーン、着火ゾーン、燃焼ゾーン、及び、灰燃焼ゾーンを介して前記燃焼室8内に空気を供給する一次空気ライン22a、22b、22c、22dと、
前記燃焼室8において前記燃焼火格子16よりも上方に配置され、前記燃焼室8に流体を供給するノズル24a、24b、24cと、
前記二次燃焼室28に配置され、前記二次燃焼室28内に空気を導入するノズル32a、32bと、
を備え、
前記燃焼室8が、前記二次燃焼室28の下端から前記後側に広がって、下部熱風室20c、20dの上部に位置する前記燃焼火格子16の少なくとも一部の上方を覆う側壁10の部分10’’をさらに有し、
前記ノズル24a、24b、24cが、前記側壁10の部分10’’及び前記側壁10の部分10’’’に設けられ、
前記ノズル24bが前記ノズル24cよりも上方に位置している焼却炉。」
2 甲2について
(1)甲2の記載
甲2には、「廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法」に関して、以下の記載事項及び図示事項がある。
ア「【0091】
<高温ガスの調製>
高温ガス吹込口13から吹き込まれる高温ガスBの温度は、100~400℃の範囲とすることが好ましく、200℃程度とすることがより好ましい。100℃未満の温度のガスを吹き込むと炉内温度が低下し、燃焼が不安定となりCOが増加する。400℃を超えるガスを吹き込むと燃焼室内における火炎温度が著しく高温になり,クリンカの生成が助長されるなど問題が生じる。
【0092】
また,高温ガスBの含有する酸素濃度は5~30体積%程度,望ましくは5~15体積%とすることが好ましい。これにより、上述の効果がより効果的に発揮され、排ガスの低NOx化、低CO化がより促進される。
【0093】
前記のガス温度及び酸素濃度となるような高温ガスBとしては、二次燃焼領域10から下流側での排ガスの一部を返送した返送排ガス、返送排ガスと空気の混合ガス、空気、酸素を含有するガス及び酸素富化空気のうち少なくとも一つを用いることが好適である。返送排ガスは、廃棄物焼却炉から排出される排ガスを除塵、中和処理した排ガス、すなわち,バグフィルタから排出される排ガスの一部を返送して用いるものである。返送排ガス、返送排ガスと空気の混合ガス、空気、酸素を含有するガス及び酸素富化空気のうち少なくとも一つを必要に応じて廃熱ボイラで発生させた蒸気により加熱して、温度と酸素濃度が上記所定の条件を満たすような高温ガスとして主燃焼室内に吹き込む。
【0094】
このように、高温ガスを調製する際の返送排ガスと空気の混合割合や、返送排ガス、返送排ガスと空気の混合ガス等の加熱条件などを調整して、高温ガスの温度、酸素濃度を所望の範囲とする。」
イ「【0109】
<低空気比燃焼を実現するための酸素量比配分>
本実施形態の廃棄物焼却炉において、低空気比燃焼を実現するための吹き込むガスの空気酸素量比配分について説明する。
【0110】
廃棄物の燃焼に必要な単位時間当たりの理論酸素量に対する、火格子下から燃焼室内に吹込まれる燃焼用一次空気Aにより供給される単位時間当りの酸素量の比Q1と、燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹込まれる高温ガスBにより供給される単位時間当りの酸素量の比Q2と、二次燃焼領域に吹込まれる二次燃焼用ガスCにより供給される単位時間当りの酸素量の比Q3とは、下記式(1)及び(2)、より好ましくは下記式(3)及び(4)を満足するように、それぞれのガスを吹込むことが好ましい。下記式(3)及び(4)を満足するように、それぞれのガスを吹き込む比率を制御することにより、焼却炉全体へ供給する空気量を空気比1.3以下のより低い低空気比での燃焼を実現できる。
【0111】
式(1)
Q1:Q2:Q3=0.75~1.10:0.05~0.40:0.10~0.40
式(2)
0≦Q1+Q2+Q3≦1.5
式(3)
Q1:Q2:Q3=0.80~1.00:0.10~0.30:0.10~0.30
式(4)
1≦Q1+Q2+Q3≦1.3
ここで、前記廃棄物の燃焼に必要な単位時間当りの理論酸素量は、燃焼室内に投入される廃棄物の性状及び成分等から決定される廃棄物の単位質量当りの燃焼に必要な酸素量(Nm3/kg)と、焼却炉における廃棄物の焼却処理速度(kg/hr)との積(Nm3/hr)により決定される。
【0112】
また、前記Q1は、火格子5の下から燃焼室2内に供給される一次燃焼用空気Aにより供給される単位時間当りの酸素量の比であり、前記一次燃焼用空気Aの流量を増減させることにより調整する。また、Q2は、燃焼室2内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹込まれる高温ガスBの流量を増減させることにより調整される。また、Q3は、二次燃焼領域に吹込まれる二次燃焼用ガスCの流量を増減させることにより調整される。
【0113】
なお、以下において、Q1+Q2+Q3をλと記載する。
【0114】
前記Q1,Q2,Q3を上式の範囲とすることにより、廃棄物焼却炉において低酸素比燃焼(1.0≦λ≦1.5)(すなわち、低空気比燃焼に相当する)を行った場合においても、COやNOx等の有害ガスの発生量が低減でき、焼却炉から排出される排ガス総量を大幅に低減できる。」
ウ「【図1】
[図:0001403691000002.jpg]
」
(2)甲2に記載された技術的事項
上記(1)アの段落【0092】及び【0094】並びにイの段落【0109】及び【0110】の記載事項から、甲2には、次の技術的事項(以下、「甲2に記載された技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「焼却炉において、燃焼室での低空気比燃焼を実現するための吹き込むガスの空気酸素量比配分について、火格子下から吹き込まれる燃焼用一次空気Aと、燃焼室内の燃焼開始領域から主燃焼領域までの間の任意の領域に吹込まれる高温ガスBと、二次燃焼領域に吹込まれる二次燃焼用ガスCからの供給量を制御すること。」
3 甲3について
(1)甲3の記載
甲3には、「廃棄物の燃焼制御方法およびこれを適用した燃焼制御装置」に関して、以下の記載事項及び図示事項がある。
ア「【0032】
<本発明に係る燃焼制御装置>
本発明に係る燃焼制御装置(以下「本装置」ということがある)は、少なくとも、廃棄物の供給量測定部,燃焼空気の供給量測定部および排ガス中の酸素,二酸化炭素および水分の成分濃度測定部を有し、上記算出された廃棄物発熱量または推算発熱量A~Cのいずれかを用いて、焼却炉に投入される廃棄物,燃焼空気および助燃材の供給量を制御することを特徴とする。具体的には、例えば図2に例示する焼却炉を含む廃棄物処理装置(以下「本処理装置」ということがある)に備えられた廃棄物の供給量測定部,燃焼空気の供給量測定部および成分濃度測定部例から構成される。
【0033】
本処理装置には、廃棄物Wが貯留される貯留ピット1,貯留ピット1内の廃棄物Wが移送手段1a(例えばクレーン等)によって投入されるホッパ2,およびホッパ2に投入された廃棄物Wが廃棄物供給装置4によって給送されるストーカ3が設けられる。ストーカ3は、往復移動駆動されて廃棄物Wを炉本体10に送給する。炉本体10には、ストーカ3の上部に設けられた一次燃焼ゾーン10A,さらにその上部の二次燃焼ゾーン10B,ストーカ3および一次燃焼ゾーン10Aに一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給装置5,二次燃焼ゾーン10Bに二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給装置6,塵灰Dを排出する灰排出部7,および炉内の排ガスEを排出する排ガス排出部8が設けられる。
ストーカ3に送られた廃棄物Wは、一次燃焼ゾーン10Aにおいて、燃焼により生じる高温燃焼ガスによって乾燥され、一次燃焼空気によって、部分燃焼され、さらに完全燃焼される。燃焼によって発生するガスは、水分(H2O,廃棄物W中に含まれていた水分の蒸発による水蒸気を含む)、乾留によって生じる炭化水素ガス(HC)、不完全燃焼によって生じる一酸化炭素(CO)や完全燃焼による二酸化炭素(CO2)等である。一次燃焼ゾーン10Aでの未燃物または不完全燃焼物は、二次燃焼ゾーン10Bにおいて、その下部,中部,上部に供給される二次燃焼空気によって、完全燃焼される。燃焼によって発生した塵灰Dは、灰排出部7から排出され、炉内の排ガスEは、排ガス排出部8から排出される。なお、高温条件での燃焼において発生する窒素酸化物(NOx)や廃棄物W中に含まれる塩素や硫黄等を起源とする塩素化合物や硫黄酸化物(SOx)等は微量であり、発熱量に与える影響が少ないことから、ここでは直接的には触れない。
【0034】
(a)廃棄物の供給量測定部
ホッパ2に投入される廃棄物Wの量と質を測定するセンサ部として、廃棄物投入重量検出センサ12とレーザ距離計13とが設けられている。レーザ距離計13により、廃棄物Wの表面までの距離を測定して、投入される廃棄物Wの体積を測定する。廃棄物投入重量検出センサ12は、廃棄物Wの重量を測定する。廃棄物Wの体積と重量を検出することによって、廃棄物Wの比重の変化を所定時間間隔で検出することができる。既述のように、廃棄物Wの比重が分かれば、廃棄物Wの質(水分量等)を予測することができる。
【0035】
(b)燃焼空気の供給量測定部
燃焼空気は、一次燃焼ゾーン10Aにおいては、ストーカ3に載置され移送される廃棄物Wの最適な燃焼状態を形成されるように、一次燃焼空気供給装置5から複数段に分けて供給される。例えば、乾燥ステップ,燃焼ステップおよび後燃焼ステップの順に、各ステップにおける廃棄物Wの量(容積)や表面温度および燃焼ガスの流量等をモニタしながら、それぞれの燃焼空気の供給量が制御される。さらに、二次燃焼ゾーン10Bにおいては、一次燃焼ゾーン10Aにおいて未燃または不完全燃焼した成分の完全燃焼とともに、排ガスEの冷却処理あるいは希釈処理を行うために、二次燃焼空気供給装置6から複数段に分けて供給される。例えば、二次燃焼ゾーン10Bの上部および下部(さらに中部)から、排ガス中の成分濃度(詳細は後述)や温度および排ガスEの流量等をモニタしながら、それぞれの燃焼空気の供給量が制御される。ここで、燃焼空気の供給量とは、一次燃焼空気供給装置5および二次燃焼空気供給装置6の各段に設けられた流量計(図示せず)によって測定された、これらの総流量をいう。該流量計として、例えば流量制御機能付流量計を用いることができる。また、本処理装置の構成例においては、一次燃焼ゾーン10Aに、ガス流れ方向に関するセンサ部として、ガス流速計17が設けられ、温度分布に関するプロセスデータを検出するセンサ部として、赤外線放射温度計18が設けられ、炉本体10の終端には、燃焼に伴うエネルギーに相当する蒸発量を測定するセンサとして、蒸気流量を測定する蒸気流量計19が設けられる。」
イ「【図2】
[図:0001403691000003.jpg]
」
(2)甲3に記載された技術的事項
上記(1)アの段落【0032】及び段落【0035】の記載事項並びに図2の図示から、甲3には、次の技術的事項(以下、「甲3に記載された技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「焼却炉の燃焼制御に関して、一次燃焼ゾーン10Aにおいては、乾燥ステップ、燃焼ステップ及び後燃焼ステップの順に、各ステップにおける廃棄物Wの量(容積)や表面温度および燃焼ガスの流量等をモニタしながら、一次燃焼空気供給装置5から供給する燃焼空気の供給量を制御し、二次燃焼ゾーン10Bにおいては、二次燃焼ゾーン10Bの上部から、排ガス中の成分濃度や温度および排ガスEの流量等をモニタしながら、二次燃焼空気供給装置6から供給する燃焼空気の供給量を制御すること。」
4 甲4について
(1)甲4の記載
甲4には、「ごみ焼却炉における二次燃焼用空気吹き込み方法および装置」に関して、以下の記載事項及び図示事項がある。
ア「【0022】まず、この第1実施形態のごみ焼却炉のシステムについて説明すると、ごみ焼却炉20は、ホッパ21から投入されたごみ22が、給塵装置23によって炉内に送り込まれ、火格子装置24のごみ送り量とごみの下から送り込まれる燃焼空気装置25の燃焼空気、及び炉壁の吹き出し口10から供給される二次燃焼空気装置12の二次燃焼用空気によって運転される。炉内で燃焼した排ガスは、炉出口26で二次燃焼用空気と攪拌、燃焼が行われ、排ガス中の未燃成分が燃焼し、ボイラ27で熱交換され、排ガス処理装置28で除塵、有害物質が除去され、クリーンとなった空気は煙突29から大気へ放出される。そして通常、供給されるごみ質やごみ性状の変化による燃焼変動を自動燃焼制御装置30によって安定化させるようになっている。
【0023】二次燃焼空気装置12からの二次燃焼用空気を吹き出し口10へ搬送する配管系は、ここでは図3のように断面積が異なる3本の矩形管1,2,3の集合体31からなり、かつこれら矩形管1,2,3は、矩形管1を矩形管2,3によって両側から挟むような形でサンドイッチ状に接合されている。そして、これら集合体31が、図2のように炉の左右両壁に設けた吹き込み口10,10にそれぞれ3組ずつ併設されている。さらに、これら集合体31は、各組の矩形管1相互が連結管1Aにより、各組の矩形管2相互が連結管2Aにより、各組の矩形管3相互が連結管3Aにより、それぞれ連結され、各連結管1A,2A,3Aが、それぞれ独立したバルブ13,14,15を介して二次燃焼空気装置12に接続されている。
【0024】各組の矩形管1,2,3のいずれから二次燃焼用空気を吐出させるかは、バルブ制御装置11で決定されるようになっている。バルブ制御装置11は、二次燃焼空気装置12から流量信号を受け取り、流量に応じて各バルブ13,14,15を選択的に開閉制御するものである。
【0025】次に、これを更に詳述しながらこの第1実施形態装置を用いてごみ焼却炉20に二次燃焼用空気を吹き込む方法について図1乃至図3に基づき説明する。ベルヌーイの定理から下式(1)に示すように圧力pは、密度ρと流速v(m/h)の二乗に比例する。ここで、密度を一定と仮定し、空気量F(m3/h)、管の断面積S(m2)、とすると、下式(1)の関係は下式(2)のようになる。
p∝ρv2 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(1)
p∝ρ(F/S)2‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(2)
式(2)の関係から、例えば空気量Fが半分に減ると圧力は1/4となる。このとき、断面積も流量に応じて半分の断面積となれば、同じ圧力を維持することができる。従って、複数の管を組合せ、流量が少なくなった場合、使用する管の本数を減らし、全体として管(風路)の断面積を小さくすることで、吐出圧力を低下させることなく流量を変更することができる。
【0026】炉内に供給する二次燃焼用空気は、各集合体31を介して、炉壁に設けた各吹き込み口10,10から供給する。このとき、二次燃焼用空気量が多い場合は、各集合体31それぞれの矩形管1,2,3の全てから、二次燃焼用空気を供給する。炉内のごみの性状や燃焼状態によって排ガスの発生量が減少し、これに伴って二次燃焼用空気量を減らした場合には、例えば矩形管2からの空気の供給は停止し、矩形管1,3から供給する。さらに、二次燃焼用空気量を減らした場合には、矩形管2,3からの空気の供給は停止し、矩形管1のみから供給する。このように、二次燃焼用空気量の増減に応じて使用する矩形管の本数を変更することで、常に炉内への二次燃焼用空気量の吐出圧力を一定(例えば高い圧力)に維持しながら流量を変更することができ、排ガス中のダイオキシン類等の未燃ガスの発生を抑制することができる。」
イ「【図1】
[図:0001403691000004.jpg]
」
ウ「【図3】
[図:0001403691000005.jpg]
」
(2)上記(1)から認められること
上記(1)アの段落【0022】、【0023】及び【0026】の記載事項並びに図1及び図3の図示から、ごみ焼却炉20内に、各集合体31を介して、炉壁に設けた各吹き込み口10から二次燃焼用空気が供給され、集合体31は、断面積が異なる3本の矩形管1、2、3からなるものと認められる。そして、二次燃焼用空気量の増減に応じて燃焼用空気を供給するために使用する矩形管1、2、3の本数を変更することで、常に炉内への二次燃焼用空気量の吐出圧力を一定(例えば高い圧力)に維持しながら流量を変更し、排ガス中のダイオキシン類等の未燃ガスの発生を抑制するものと認められる。
(3)甲4に記載された技術的事項
上記(2)から、甲4には、次の技術的事項(以下、「甲4に記載された技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「二次燃焼用空気量の増減に応じて使用する矩形管1、2、3の本数を変更することで、常に炉内への二次燃焼用空気量の吐出圧力を一定に維持しながら流量を変更すること。」
5 甲5について
(1)甲5の記載
甲5には、「焼却炉における燃焼運転方法」に関して、以下の記載事項及び図示事項がある。
ア「[0019] (実施の形態1)
図1は、都市ごみ等のごみを焼却するための焼却炉を示す概略構成図である。
[0020] 焼却炉(1)は、一次空気が供給される下部の一次燃焼室(2)と、二次空気が供給される上部の二次燃焼室(3)とが連絡する様式になっている。
[0021] 一次燃焼室(2)の底部には、複数の火格子(4)が設置されている。一次燃焼室(2)内には、投入ホッパ(5)を介して焼却処理すべきごみが炉内に搬入される。したがって、図に示す一次燃焼室(2)の左側は、焼却処理すべきごみが供給される側であり、図面中炉内左側の火格子(4)は乾燥用の火格子として使用される。
[0022] 各火格子(4)には、送風機(6)を介してその下方から燃焼用一次空気が供給されるようになっている。
[0023] また、一次燃焼室(2)の上方において、乾燥用の左側の火格子(4)の上方に位置する天井壁(7)、および一次燃焼室(2)内のごみ供給方向に対して後流側の後壁(8)に、複数箇所にわたってノズル(図示せず)が設けられている。一次燃焼室(2)内には、このノズルを介して、二次燃焼室(3)から排出された排気ガスが再循環排ガスとして供給されるようになっている。このノズルは、一次燃焼室(2)内に向けて任意の角度で再循環排ガスを供給することができるようになっているが、本発明の方法では、下記に説明するように、炉底の火格子(4)に直接当たらないようにかつ燃焼によって生じたガスを引き寄せるように供給するようにされる。」
イ「[0031] [表4]
[図:0001403691000006.jpg]
(実施例2)
実施例2は、一次燃焼室容積を増加させ、一次燃焼室の乾燥段上部天井壁および後壁から再循環排ガスを供給した場合である。実施例2の一次燃焼室形状に関する計算条件を表5に、再循環排ガスに関する計算条件を表6に示し、再循環排ガスの供給位置を図6に示す。
[0032] [表5]
[図:0001403691000007.jpg]
[0033] [表6]
[図:0001403691000008.jpg]
」
ウ「[図1]
[図:0001403691000009.jpg]
」
エ「[図6]
[図:0001403691000010.jpg]
」
(2)上記(1)から認められること
ア 上記(1)アの段落[0019]の記載事項から、甲5の実施形態は焼却炉である。
イ 上記(1)アの段落[0023]の「ごみ供給方向に対して後流側の後壁(8)」という記載事項及び図1の図示から、一次燃焼室(2)の左側のごみが供給される側を前側、ごみの供給方向に対して後流側を後側ということができる。また、図1の図示から、一次燃焼室(2)には、上記前側から上記後側に向かって、火格子(4)が複数設けられていることが看取される。
ウ 上記(1)アの段落[0020]の記載事項及び図1の図示から、二次燃焼室(3)が一次燃焼室(2)に連絡して設けられる態様では、一次燃焼室(2)から排出される排ガスは、焼却炉の技術常識から、二次燃焼室(3)に流れ、二次燃焼室(3)を介して図1における右上の方向に排気されると考えられる。
エ 上記(1)アの段落[0022]の記載事項及び図1の図示から、送風機(6)が、燃焼用一次空気を、火格子(4)を介して一次燃焼室(2)内に供給するものと認められる。
オ 上記(1)アの段落[0023]の「一次燃焼室(2)の上方において、乾燥用の左側の火格子(4)の上方に位置する天井壁(7)、および一次燃焼室(2)内のごみ供給方向に対して後流側の後壁(8)に、複数箇所にわたってノズル(図示せず)が設けられている。一次燃焼室(2)内には、このノズルを介して、二次燃焼室(3)から排出された排気ガスが再循環排ガスとして供給されるようになっている。」という記載事項から、「火格子(4)の上方である天井壁(7)にノズルを配置しているものと認められる。
また、図6に図示される「排ガス」の供給箇所を示す矢印は、図1から見て取れる火格子(4)の位置を併せると、火格子(4)よりも上方にあると認められる。そうすると、後壁(8)に設けた「排ガス」を供給するノズルは、少なくとも複数の火格子(4)よりも上方に位置するものと認められる。
カ 上記図6の図示から、一次燃焼室(2)から二次燃焼室(3)へと至る箇所において、空気が導入されていることが看取されるから、当該箇所において、空気を導入するための手段が設けられているといえる。
キ 上記(1)アの段落[0023]の記載事項及び図1の図示から、一次燃焼室(2)が、二次燃焼室(3)の下端から前側に広がって複数の火格子(4)の一部の上方を覆う天井壁(7)を備えることが認められるとともに、図1の図示から、二次燃焼室(3)の下端から後側に広がって複数の火格子(4)の一部の上方を覆う天井壁状の部材を備えることが看取される。
ク 上記(1)イの段落[0031]の「(実施例2)」についての記載事項及び図6の図示から、再循環排ガスを供給するノズルは、図6に示される「排ガス」の供給位置に設けられるものと認められ、また、段落[0033]の[表6]の実施例2-2についての記載事項から、乾燥段上部天井壁(7)に設けられるノズルと、後壁(8)に設けられるノズルとについて、異なる径(80A及び100A)のノズルを用いて、再循環排ガスを供給するものと認められる。
(3)甲5発明
上記(1)及び(2)から、甲5には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。
「焼却炉であって、
前側から後側に向かって配列される複数の火格子(4)を有する一次燃焼室(2)と、
前記一次燃焼室(2)から連続し、前記一次燃焼室(2)から排出される排ガスが流れる二次燃焼室(3)と、
前記複数の火格子(4)を介して前記一次燃焼室(2)内に燃焼用一次空気を供給する送風機(6)と、
前記一次燃焼室(2)において前記複数の火格子(4)よりも上方に配置され、前記一次燃焼室(2)に再循環排ガスを供給するノズルと、
前記一次燃焼室(2)から前記二次燃焼室(3)へと至る箇所において、空気を導入する手段と、
を備え、
前記複数の火格子(4)において、前記前側から前記後側に向かって、複数の火格子(4)が順に配列され、
前記一次燃焼室(2)が、前記二次燃焼室(3)の下端から前記前側に広がって前記複数の火格子(4)の一部の上方を覆う天井壁(7)と、前記二次燃焼室(3)の下端から前記後側に広がって前記複数の火格子(4)の一部の上方を覆う天井壁状の部材とをさらに有し、
前記再循環排ガスを供給する前記ノズルが、前記天井壁(7)及び前記後側の後壁(8)に設けられ、
乾燥段上部天井壁に設けられるノズルと、後壁に設けられるノズルとについて、異なる径(80A及び100A)のノズルを用いて、再循環排ガスを供給すること、
を含む焼却炉。」
第5 当審の判断
1 取消理由1(特許法第29条第2項)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明における「焼却炉」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「焼却炉」に相当する。以下同様に、「燃焼火格子16」は「複数の火格子部」に、「燃焼室8」は「一次燃焼室」に、「二次燃焼室28」は「二次燃焼室」に、「燃焼室8内に空気を供給する一次空気ライン22a、22b、22c、22d」は「一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する火格子部ガス供給部」に、「側壁10の部分10’’’」は「後側の壁部」に相当する。
また、上記第4の1(1)イの段落【0033】に記載された事項から、甲1発明の「燃焼室8において前記燃焼火格子16よりも上方に配置され、前記燃焼室8に流体を供給するノズル24a、24b、24c」は、本件特許発明1の「一次燃焼室において前記複数の火格子部よりも上方に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部」に相当する。
また、甲1発明の「二次燃焼室28に配置され、前記二次燃焼室28内に空気を導入するノズル32a、32b」は、本件特許発明1の「二次燃焼室に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記二次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する二次燃焼室ガス供給部」に相当する。
また、甲1発明の「燃焼火格子16」は、上記第4の1(2)イの認定事項から、前側から後側に向かって「乾燥ゾーン、着火ゾーン、燃焼ゾーン、及び、灰燃焼ゾーン」が設けられるものであり、「乾燥ゾーン」、「着火ゾーン、燃焼ゾーン」及び「灰燃焼ゾーン」のそれぞれにおける燃焼火格子16は、本件特許発明1の「乾燥火格子部」、「燃焼火格子部」及び「後燃焼火格子部」に相当する。
そうすると、甲1発明の「燃焼火格子16」において、「前側から前記後側に向かって乾燥ゾーン、着火ゾーン、燃焼ゾーン、及び、灰燃焼ゾーン」が設けられたものは、本件特許発明1の「複数の火格子部」において、「前側から前記後側に向かって乾燥火格子部、燃焼火格子部および後燃焼火格子部が順に配列され」るものに相当する。
また、甲1発明の「下部熱風室20c、20dの上部に位置する前記燃焼火格子16の少なくとも一部の上方を覆う側壁10の部分10’’」は、「下部熱風室20c、20dの上部に位置する前記燃焼火格子16」が、「燃焼ゾーン」及び「灰燃焼ゾーン」に対応すると考えられるから、本件特許発明1の燃焼火格子部の少なくとも一部の上方を覆う天井部」に相当する。
また、甲1発明の「焼却炉」において「前記ノズル24bが前記ノズル24cよりも上方に位置している」ことは、本件特許発明1の「焼却炉」が「中間ガス供給部の前記ノズル部が、下段ノズルと、前記下段ノズルよりも上方に位置する上段ノズルと、を含む」ことに相当する。
そうすると、両者は、次の一致点で一致し、次の相違点1で相違する。
[一致点]
「焼却炉であって、
前側から後側に向かって配列される複数の火格子部を有する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室から連続し、前記一次燃焼室から排出される排ガスが流れる二次燃焼室と、
前記複数の火格子部を介して前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する火格子部ガス供給部と、
前記一次燃焼室において前記複数の火格子部よりも上方に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部と、
前記二次燃焼室に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記二次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する二次燃焼室ガス供給部と、
を備え 、
前記複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって乾燥火格子部、燃焼火格子部および後燃焼火格子部が順に配列され、
前記一次燃焼室が、前記二次燃焼室の下端から前記後側に広がって前記燃焼火格子部の少なくとも一部の上方を覆う天井部をさらに有し、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、前記天井部または前記後側の壁部に設けられ、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、
下段ノズルと、
前記下段ノズルよりも上方に位置する上段ノズルと、
を含む焼却炉。」
[相違点1]
本件特許発明1では、「所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御するとともに、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる制御部」(以下、「相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項」という。)を備えているのに対して、甲1発明では、このような制御部を備えていない点。
上記相違点1について検討する。
上記第4の2(3)の甲2に記載された技術的事項及び上記第4の3(2)の甲3に記載された技術的事項から、「焼却炉において、一次燃焼室に対して火格子下部から供給する酸素量と、一次燃焼室の下流に連続して設けられる二次燃焼室に対して供給する酸素量とを制御する」という技術が抽出できる。
しかしながら、当該技術は、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項と、少なくとも、「前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる」ことを含まない点で異なる。
そうすると、仮に、甲2-甲3に記載された技術的事項から抽出される技術が周知技術であり、かつ、甲1発明に適用する動機があるとしても、当該適用されたものは、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項である「所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御するとともに、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる制御部」にはならない。
また、甲1-甲5のいずれにも、この相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項についての記載はなく、示唆もない。
ここで、特許第7199305号の願書に添付された明細書の段落【0056】には、「これに対し、図1の焼却炉1では、制御部10の制御により、火格子部ガス供給部5における燃焼用ガスの供給量が減少する場合に、中間ガス供給部6における燃焼用ガスの供給量が増加する。これにより、一次燃焼室3において高い燃焼効率を維持し、一次燃焼室3から二次燃焼室4に流入する排ガスにおいて未燃ガスの濃度を低くすることができる。その結果、比較例の焼却炉のように、二次燃焼室4へと到達した未燃ガスが一気に燃焼することを抑制することができ、二次燃焼室4から排出される排ガスにおけるNOx濃度の上昇を抑制することができる。また、火格子部ガス供給部5における燃焼用ガスの供給量が増加する場合に、中間ガス供給部6における燃焼用ガスの供給量が減少する。これにより、一次燃焼室3から二次燃焼室4に流入する排ガスの流量が過度に大きくなることを防止することが可能となる。」という記載がある。
そして、この記載から、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項は、火格子部ガス供給部5における燃焼用ガスの供給量が減少する場合に、中間ガス供給部6における燃焼用ガスの供給量を増加させて、一次燃焼室3から二次燃焼室4に流入する排ガスにおいて未燃ガスの濃度を低くし、二次燃焼室4へと到達した未燃ガスが一気に燃焼することを抑制することができ、二次燃焼室4から排出される排ガスにおけるNOx濃度の上昇を抑制することができるとともに、火格子部ガス供給部5における燃焼用ガスの供給量が増加する場合に、中間ガス供給部6における燃焼用ガスの供給量を減少させて、一次燃焼室3から二次燃焼室4に流入する排ガスの流量が過度に大きくなることを防止することが可能となるという本件特許発明1に特有の効果を奏すると理解できる。
そうすると、本件特許発明1は、甲1発明と、甲2-甲3に記載された技術的事項から抽出される技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書(3(4)イ(イ)○1-2(当審注:「○1」は○の中に数字の1を意味する。以下同様。))の「相違点1の容易想到性」において、次の主張をしている。
(主張ア) 「はじめに、構成要件1Fには、格別な技術的意義が認められないことを説明しておく。
構成要件1Fは、「所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて」、「前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御するとともに」、「前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量」を制御し、「前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる制御部」である。
構成要件1Fの技術的意義に関して、明細書の段落【0055】~【0056】に以下の記載がある。
「【0055】
ここで、中間ガス供給部6における燃焼用ガスの供給量が、火格子部ガス供給部5における燃焼用ガスの供給量とは独立して制御される比較例の焼却炉について述べる。比較例の焼却炉では、一次燃焼室3に投入されるごみのごみ質が高く、ボイラ発生蒸気量が大きくなることにより、火格子部ガス供給部5における燃焼用ガスの供給量が減少する場合に、一次燃焼室3から二次燃焼室4に流入する排ガスにおいて未燃ガスの濃度が高くなる。この場合、二次燃焼室ガス供給部7のノズル郡71から噴出される空気により、二次燃焼室4へと到達した未燃ガスが一気に燃焼し、ノズル部71(特に、前下段ノズル712および後下段ノズル714)の近傍において高温域が形成される。その結果、二次燃焼室4から排出される排ガスにおけるNOx濃度が上昇してしまう。
【0056】
これに対し、図1の焼却炉1では、制御部100の制御により、火格子部ガス供給部5における燃焼用ガスの供給量が減少する場合に、中間ガス供給部6における燃焼用ガスの供給量が増加する。一次燃焼室3において高い燃焼効率を維持し、一次燃焼室3から二次燃焼室4に流入する排ガスにおいて未燃ガスの濃度を低くすることができる。その結果、比較例の焼却炉のように、二次燃焼室4へと到達した未燃ガスが一気に燃焼することを抑制することができ、二次燃焼室4から排出される排ガスにおけるNOx濃度の上昇を抑制することができる。また、火格子部ガス供給部5における燃焼用ガスの供給量が増加する場合に、中間ガス供給部6における燃焼用ガスの供給量が減少する。これにより、一次燃焼室3から二次燃焼室4に流入する排ガスの流量が過度に大きくなることを防止することが可能となる。」
これらの記載から、「一次燃焼室3に投入されるごみのごみ質」が高くなり「ボイラ発生蒸気量」に基づいて「前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合」に、「前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ」、「未燃ガスの濃度を低くする」ことが理解できるが、構成要件Fは、どのような場合に「前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する」かを特定していないので、前記段落【0055】~【0056】に記載される制御を特定するものではなく、結局、構成要件1Fには、格別な技術的意義は認められない。」
(主張イ) 「一方、甲第2号証(特開2013-213652号公報)の段落【0093】~【0094】、甲第3号証(特開2017-096517号公報)の段落【0035】に記載されるように、一次燃焼室の燃焼状態を最適にするために、燃焼空気を供給する各一次燃焼空気供給装置の空気の供給量すなわち酸素の供給量を制御することは周知慣用技術である。よって、甲1発明において、前記周知慣用技術を適用して、燃焼室8に燃焼空気を供給する、「一次空気ライン22a、22b、22c、22d」の空気(酸素)量を制御するとともに、「ノズル24a、24b、24c」の空気(酸素)量も制御することは、当業者が容易に想到できたことであり、その際「一次空気ライン22a、22b、22c、22d」の空気(酸素)量が増減少する場合に「ノズル24a、24b、24c」の空気(酸素)量を増減させ、空気(酸素)の濃度を一定に保つようにすることも適宜成し得たことであるから、甲1発明に構成要件1Fの制御部を付加することは当業者が容易に想到できたことである。」
そこで、これら主張について検討する。
はじめに、主張アについて検討する。主張アにおいて、特許異議申立人は、本件特許の明細書の段落【0055】及び【0056】の記載事項のみを根拠に技術的意義がない旨主張する。しかしながら、本件特許の出願前の技術水準を示す証拠の提出はなく、本件特許の出願前の技術水準に基づく構成要件1Fの技術的意義の評価がない以上、本件特許の明細書の段落【0055】及び【0056】の記載事項のみから構成要件1Fに技術的意義がないとはいえない。そうすると、特許異議申立人が提出した証拠から、構成要件1Fに技術的意義がないと解することはできない。
したがって、主張アに係る特許異議申立人の主張は、採用できない。
次に、主張イについて検討する。相違点1の検討で述べたとおり、甲2及び甲3から抽出される技術は、構成要件1Fと全ての点で一致するものではない。その理解において、甲2及び甲3から抽出される技術は、構成要件1Fと異なる技術である。そうすると、仮に甲2及び甲3から抽出される技術が周知技術であり、甲1発明に適用する動機があったとしても、甲1発明に甲2及び甲3から抽出される技術を適用したものは、構成要件1Fを満たすものとはならない。また、特許異議申立人が主張するとおり、「一次燃焼室の燃焼状態を最適にするために、燃焼空気を供給する各一次燃焼空気供給装置の空気の供給量すなわち酸素の供給量を制御すること」が甲2及び甲3から導出できる周知慣用技術であったとしても、当該技術は構成要件1Fと全ての点で一致するものではないから、甲1発明に当該周知慣用技術を適用したとしても、構成要件1Fを満たすものとはならない。
ここで、主張アに係る特許異議申立人の主張が採用できるものとしてさらに検討を進める。この場合、構成要件1Fが技術的意義を有さないという判断の上に、甲2及び甲3から抽出される技術又は特許異議申立人が主張する周知慣用技術の適用を試みることになる。しかしながら、この様な動機付けは、いわゆる2段階容易論にあたるから許されない。仮に、技術的意義がないことにより2段階容易論にあたらないとしても、甲2及び甲3から抽出される技術又は当該周知慣用技術が構成要件1Fと完全に一致するものとはならないから、結論として、構成要件1Fを導くことはできない。
よって、主張イに係る特許異議申立人の主張は、採用できない。
したがって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。
(3)本件特許発明2、7-9について
本件特許発明2、7-9は、本件特許発明1の発明特定事項を全て有し、本件特許発明2、7-9のそれぞれで新たに特定される発明特定事項を備えるものであるから、本件特許発明2、7-9は、甲1発明との対比において述べた上記相違点1を含む。
そして、上記相違点1についての検討は、本件特許発明1と同様である。
したがって、本件特許発明2、7-9は、甲1発明と、甲2-甲3に記載された技術的事項から抽出される技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件特許発明10について
本件特許の請求項10の記載は、本件特許発明1の「焼却炉」に関する発明を、「制御方法」としたものであり、以下の発明特定事項を含むものである。
「前記焼却炉の制御方法が、
a)所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御する工程と、
b)前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる工程と、
を備える」(以下、「制御方法に係る発明特定事項」という。)
そして、上記制御方法に係る発明特定事項は、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項と同様に、甲1-甲5のいずれにも開示されていない。
したがって、本件特許発明10は、甲1発明と、甲2-甲3に記載された技術的事項から抽出される技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件特許発明3、6、11について
本件特許発明3、6は、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項と同じ発明特定事項を含むものである。
また、本件特許発明11は、上記制御方法に係る発明特定事項と同じ発明特定事項を含むものである。
そして、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項及び上記制御方法に係る発明特定事項は、甲1-甲5のいずれにも開示されていない。
したがって、本件特許発明3、6、11は、甲1発明、甲4に記載された技術的事項及び甲2-甲3に記載された技術的事項から抽出される技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1-3、6-11は、甲1発明及び甲2-甲4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 取消理由2(特許法第29条第2項)について
(1)本件特許発明4について
本件特許発明4と甲5発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲5発明における「焼却炉」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本件特許発明4における「焼却炉」に相当する。以下同様に、「火格子(4)」は「火格子部」に、「一次燃焼室(2)」は「一次燃焼室」に、「二次燃焼室(3)」は「二次燃焼室」に、「燃焼用一次空気を供給する送風機(6)」は「一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する火格子部ガス供給部」に相当する。
また、甲5発明の「再循環排ガスを供給するノズル」は、本件特許発明4の「酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部」に相当するから、甲5発明の「一次燃焼室(2)において前記複数の火格子(4)よりも上方に配置され、前記一次燃焼室(2)に再循環排ガスを供給するノズル」は、本件特許発明4の「一次燃焼室において前記複数の火格子部よりも上方に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部」に相当する。
また、甲5発明の「一次燃焼室(2)から二次燃焼室(3)へと至る箇所において、空気を導入する手段」は、本件特許発明4の「二次燃焼室に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記二次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する二次燃焼室ガス供給部」に相当する。
また、甲5発明の「複数の火格子(4)において、前記前側から前記後側に向かって、複数の火格子(4)が順に配列され」ることは、本件特許発明4の「複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって乾燥火格子部、燃焼火格子部および後燃焼火格子部が順に配列され」ることと、「複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって複数の火格子部が順に配列され」るものの限りにおいて一致する。
また、甲5発明の「一次燃焼室(2)が、前記二次燃焼室(3)の下端から前記前側に広がって前記複数の火格子(4)の一部の上方を覆う天井壁(7)と、前記二次燃焼室(3)の下端から前記後側に広がって前記複数の火格子(4)の一部の上方を覆う天井壁状の部材とをさらに有」することは、本件特許発明4の「前記一次燃焼室が、前記二次燃焼室の下端から前記前側または前記後側の一方側に広がって前記燃焼火格子部の少なくとも一部の上方を覆う天井部をさらに有」することに相当する。
また、甲5発明の「再循環排ガスを供給する前記ノズルが、前記天井壁(7)及び前記後側の後壁(8)に設けられ」ることは、本件特許発明4の「中間ガス供給部の前記ノズル部が、前記天井部または前記一方側の壁部に設けられ」ることに相当する。
また、甲5発明の「乾燥段上部天井壁に設けられるノズルと、後壁に設けられるノズルとについて、異なる径(80A及び100A)のノズルを用いて、再循環排ガスを供給すること」は、本件特許発明4の「中間ガス供給部の前記ノズル部が、前記燃焼用ガスを噴出口から噴出する第1ノズルと、前記第1ノズルよりも大きい噴出口から前記燃焼用ガスを噴出する第2ノズルと、を含み」に相当する。
そうすると、両者は、次の一致点で一致し、次の相違点2-3で相違する。
[一致点]
「焼却炉であって、
前側から後側に向かって配列される複数の火格子部を有する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室から連続し、前記一次燃焼室から排出される排ガスが流れる二次燃焼室と、
前記複数の火格子部を介して前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する火格子部ガス供給部と、
前記一次燃焼室において前記複数の火格子部よりも上方に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記一次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する中間ガス供給部と、
前記二次燃焼室に配置されるノズル部を有し、前記ノズル部から前記二次燃焼室内に酸素を含む燃焼用ガスを供給する二次燃焼室ガス供給部と、
前記複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって複数の火格子部が順に配列され、
前記一次燃焼室が、前記二次燃焼室の下端から前記前側または前記後側の一方側に広がって前記燃焼火格子部の少なくとも一部の上方を覆う天井部をさらに有し、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、前記天井部または前記一方側の壁部に設けられ、
前記中間ガス供給部の前記ノズル部が、
前記燃焼用ガスを噴出口から噴出する第1ノズルと、
前記第1ノズルよりも大きい噴出口から前記燃焼用ガスを噴出する第2ノズルと、
を含む焼却炉。」
[相違点2]
本件特許発明4では、「所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御するとともに、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる制御部」を備え、この「制御部」が、「前記第2ノズルにおけるガス流速を前記第1ノズルよりも優先的に変更することにより、前記中間ガス供給部における前記燃焼用ガスの供給量を制御する」ものである(以下、「相違点2に係る発明特定事項」という。)のに対して、甲5発明では、このような制御部を備えていない点。
[相違点3]
「複数の火格子部において、前記前側から前記後側に向かって複数の火格子部が順に配列され」ることについて、本件特許発明4では、「乾燥火格子部、燃焼火格子部および後燃焼火格子部が順に配列され」るのに対して、甲5発明では、火格子部がどのようなものであるか不明である点。
事案に鑑み、上記相違点2について検討すると、「所定のセンサを用いて得られる測定値に基づいて前記火格子部ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を制御するとともに、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ、前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が増加する場合に前記中間ガス供給部における前記酸素供給量を減少させる制御部」は、上記1(1)における相違点1の判断で示したとおり、甲2及び甲3から導出できる技術ではない。そうすると、甲5発明に対して、甲2-甲3から導出される従来周知の技術を適用しても、相違点2に係る本件特許発明4の発明特定事項にはならない。
さらに、相違点2に係る本件特許発明4の発明特定事項は、甲2-甲4のいずれにも記載されておらず、示唆もない。
したがって、その余の点を検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲5発明及び甲2-甲4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書(3(4)ウ(イ)○1-1)の「相違点の容易想到性」の「相違点1(構成要件4F)の容易想到性」において、次の主張をしている。
(主張ウ) 「上記「イ 取消理由1(甲1発明に基づく進歩性違反)」の「(イ)本件発明と甲1発明との対比」の「○1 本件発明1」において説明したおとり、構成要件4Fには、格別な技術的意義が認められない。」
(主張エ) 「一方、甲第2号証(特開2013-213652号公報)の段落【0093】~【0094】、甲第3号証(特開2017-096517号公報)の段落【0035】に記載されるように、一次燃焼室の燃焼状態を最適にするために、燃焼空気を供給する各一次燃焼空気供給装置の空気の供給量すなわち酸素の供給量を制御することは周知慣用技術である。
よって、甲5発明において、前記周知慣用技術を適用して、一次燃焼室(2)に供給される一次空気の空気(酸素)量を制御するとともに、再循環排ガス供給部のノズルから供給される酸素を含む再循環排ガスの再循環比率を制御することは、当業者が容易に想到できたことであり、その際一次空気の空気(酸素)量が増減少する場合に、酸素を含む再循環排ガスの再循環比率を増減させ、酸素の濃度を一定に保つようにすることも適宜成し得たことであるから、甲4発明に構成要件4Fの制御部を付加することは当業者が容易に想到できたことである。」
そこで、これら主張について検討する。
はじめに、主張ウについて検討するに、1(2)で述べた理由と同様の理由により、特許異議申立人が提出した証拠からは、構成要件4Fに技術的意義がないと解することはできない。
よって、主張ウに係る特許異議申立人の主張は、採用できない。
次に、主張エについて検討するに、甲2及び甲3から抽出できる技術は、構成要件4Fと異なる技術である。仮に甲2及び甲3から抽出できる技術が周知技術であり、甲5発明に適用する動機があったとしても、甲5発明に甲2及び甲3から抽出できる技術を適用したものは、構成要件4Fを満たすものとはならない。
さらに、構成要件4Fが技術的意義を有さないという判断の上に、甲2及び甲3から抽出できる技術又は特許異議申立人が主張する周知慣用技術の適用を試みるという動機付けは、いわゆる2段階容易論にあたるから許されない。仮に、技術的意義がないことにより2段階容易論にあたらないとしても、甲2及び甲3から抽出できる技術又は当該周知慣用技術が構成要件4Fと完全に一致するものとはならないから、結論として、構成要件4Fを導くことはできない。
よって、主張エに係る特許異議申立人の主張は、採用できない。
したがって、特許異議申立人の主張は、採用できない。
(3)本件特許発明5について
本件特許の請求項5の記載は、甲5発明との対比において上記相違点2に係る発明特定事項と同じ発明特定事項を含むものである。
そして、上記相違点2に係る発明特定事項は、上記(1)で示したとおり、甲1-甲5のいずれにも開示されていない。
したがって、本件特許発明5は、甲5発明、甲4に記載された技術的事項及び甲2-3に記載された技術的事項から抽出される技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件特許発明12-13について
本件特許の請求項12-13の記載は、上記1(4)で示した制御方法に係る発明特定事項を含むものである。
そして、上記制御方法に係る発明特定事項は、上記1(4)で示したとおり、甲1-甲5のいずれにも開示されていない。
したがって、本件特許発明12-13は、甲5発明、甲4に記載された技術的事項及び甲2-3に記載された技術的事項から抽出される技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明4、5、12、13は、甲5発明、甲2-甲4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 取消理由3(特許法第36条第6項第1号)について
(1)当審の判断
特許法第36条第6項第1号は、特許請求の範囲の記載に際し、発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えて記載してはならない旨を規定したものであり、その趣旨は、発明の詳細な説明に記載していない発明について特許請求の範囲に記載することになれば、公開されていない発明について独占的、排他的な権利を請求することになって妥当でないため、これを防止することにあるものと解される。
そうすると、特許請求の範囲の記載が同号所定の要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであると解するのが相当である。
ここで、本件特許発明1の「前記中間ガス供給部の前記ノズル部」について、特許第7199305号の願書に添付した明細書には、次の記載がある。
ア 本件特許発明1-13の解決しようとする課題について、「ところで、焼却炉では、火格子部を介して一次燃焼室内に供給する空気の供給量を、ボイラにおける発生蒸気量等に応じて増減する制御が行われる。このような制御において、一次燃焼室に投入されるごみのごみ質が高く(例えば、単位重量当たりの発生熱量が高く)、発生蒸気量が大きくなる場合には、火格子部を介して供給される空気の量が減少され、一次燃焼室から二次燃焼室に流入する排ガスにおいて未燃ガスの濃度が高くなる。この場合、二次燃焼室に配置されたノズル部から噴出される空気により、二次燃焼室へと到達した未燃ガスが一気に燃焼し、当該ノズル部近傍において高温域が形成される。その結果、二次燃焼室から排出される排ガスにおけるNOx濃度が上昇してしまう。」(段落【0005】)と記載されている。
イ 上記課題の解決のために、「制御部10の制御により、火格子部ガス供給部5における燃焼用ガスの供給量が減少する場合に、中間ガス供給部6における燃焼用ガスの供給量が増加する。これにより、一次燃焼室3において高い燃焼効率を維持し、一次燃焼室3から二次燃焼室4に流入する排ガスにおいて未燃ガスの濃度を低くすることができる。その結果、比較例の焼却炉のように、二次燃焼室4へと到達した未燃ガスが一気に燃焼することを抑制することができ、二次燃焼室4から排出される排ガスにおけるNOx濃度の上昇を抑制することができる。」(段落【0056】)と記載されている。
そうすると、「前記中間ガス供給部の前記ノズル部」がどのような箇所にあるかを具体的に特定せずとも、「火格子部ガス供給部5における燃焼用ガスの供給量が減少する場合に、中間ガス供給部6における燃焼用ガスの供給量が増加する」ように制御すると、未燃ガスの濃度が高くなり、二次燃焼室に配置されたノズル部から噴出される空気により、二次燃焼室へと到達した未燃ガスが一気に燃焼し、当該ノズル部近傍において高温域が形成され、二次燃焼室から排出される排ガスにおけるNOx濃度が上昇してしまうという課題を解決し得ると当業者は、認識できる。
そして、「火格子部ガス供給部5における燃焼用ガスの供給量が減少する場合に、中間ガス供給部6における燃焼用ガスの供給量が増加する」ように制御するという課題解決手段は、本件特許発明1、3-5、10-13の「前記火格子部ガス供給部における前記酸素供給量が減少する場合に前記中間ガス供給部における前記一次燃焼室内への酸素供給量を増加させ」という発明特定事項に対応するから、上記課題解決手段は、本件特許発明1、3-5、10-13の発明特定事項に反映されている。
また、本件特許発明2、6-9は、本件特許発明1を直接あるいは間接的に引用しているから、同様に、上記課題解決手段は、本件特許発明2、6-9の発明特定事項に反映されているといえる。
以上のことから、本件特許発明1-13の「前記中間ガス供給部の前記ノズル部」は、特許第7199305号の願書に添付された明細書の記載から導き出せるものである。
したがって、本件特許発明1-13は、特許第7199305号の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載したものである。
(2)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書(3(4)エの「取消理由3(サポート要件)」)において、「本件発明1乃至本件発明13の「前記中間ガス供給部の前記ノズル部」は、明細書の段落【0034】によれば、「後燃焼火格子部33の近傍に存在するガスの大部分がノズル部61に引き寄せられ」、「後天井部37と後燃焼火格子部33との間の空間において、当該ガスに含まれる未燃ガスが燃焼し」、「ノズル部61から噴出された燃焼用ガスの流れに運ばれて後天井部37に沿って二次燃焼室4へと導かれる。」という作用効果を奏すべきものである。
しかしながら、本件発明1乃至本件発明13の「前記中間ガス供給部の前記ノズル部」は、「前記天井部または前記後側の壁部に設けられ」としか特定されていないので、「前記天井部」及び「前記後側の壁部」の任意の位置に設けられるものが含まれており、例えば、下記に図示した赤い部分にノズルを設けた場合は、本件発明の上記作用効果を奏さないことは明らかである。」と主張する。
しかしながら、上述のとおり、「中間ガス供給部のノズル部」の具体的な位置を特定せずとも、「火格子部ガス供給部5における燃焼用ガスの供給量が減少する場合に、中間ガス供給部6における燃焼用ガスの供給量が増加する」ように制御すると、本件特許発明1-13の解決しようとする課題として把握される「未燃ガスの濃度が高くなり、二次燃焼室に配置されたノズル部から噴出される空気により、二次燃焼室へと到達した未燃ガスが一気に燃焼し、当該ノズル部近傍において高温域が形成され、二次燃焼室から排出される排ガスにおけるNOx濃度が上昇してしまうという」事項を、解決することができると当業者は、理解し得るものといえるから、後燃焼火格子部33の近傍に存在するガスの大部分をノズル部61に引き寄せることに関するものに限定して解釈することはできない。
そして、上記課題の解決手段は、上述のとおり本件特許発明1-13の発明特定事項に反映されている。
よって、特許異議申立人の主張は、採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由及び証拠によっては、本件特許発明1-13を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1-13を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700686