特許異議申立
2023-701341
制御装置
- 審判番号
- 2023-701341
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-169507
- 登録番号
- 7296436
- 請求日
- 2023年12月20日
- 審決日
- 2024年10月17日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】伊藤 英輔
- 【権利者代理人】橋本 宏之
- 【権利者代理人】古都 智
- 【権利者代理人】鎌田 康一郎
- 【異議申立人】田中 亜実
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 間中 耕治
- 審判官 竹下 和志
- 分類
- P1651.537-YAA(F23G) / P1651.121-YAA(F23G) / P1651.113-YAA(F23G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7296436号発明「制御装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7296436号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[2~4]、5について訂正することを認める。
特許第7296436号の請求項1~4に係る特許を維持する。
特許第7296436号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7296436号の請求項1~5に係る特許は、令和3年10月15日の出願であって、令和5年6月14日にその特許権の設定登録がされ、同年6月22日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年12月20日 :特許異議申立人 田中 亜実(以下「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 4月11日付け:取消理由通知
同年 6月 5日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
なお、申立人に対して、期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、申立人からの応答はなかった。
第2 本件訂正の適否
1.一群の請求項2~4について
(1)訂正の内容
令和6年6月5日の訂正の請求(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
ア 訂正事項1
訂正前の請求項2に「前記情報は、前記被焼却物の性状に関する情報を含む、請求項1に記載の制御装置。」とあるのを、「前記予測用情報は、前記被焼却物の性状に関する情報を含む、請求項1に記載の制御装置。」に訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項3及び4も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
訂正前の請求項3に「前記情報は、前記焼却設備のホッパ内での前記被焼却物の堆積状態を示す堆積状態情報を含む、請求項1または請求項2に記載の制御装置。」とあるのを、「前記予測用情報は、前記焼却設備のホッパ内での前記被焼却物の堆積状態を示す堆積状態情報を含む、請求項1または請求項2に記載の制御装置。」に訂正する。
(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)
(2)訂正の適否
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項2における「前記情報」が「前記予測用情報」であることを明確にすると同時に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であること
訂正事項1は、訂正前の請求項1に「前記情報取得部により取得された前記情報を含む予測用情報」と記載されるとともに、【0023】に「水分計測器15の検出結果」は、「『ごみGの性状に関する情報』の一例であり」と記載され、【0051】に「ごみGの水分に関する値と、上記相関関係情報とに基づき、ごみ発熱量の推定値を算出する。」と記載されている。
そして、この「ごみ発熱量の推定値」は、【0069】の「調整処理部PU」を経て【0082】において「将来時点における主蒸気流量の予測値を導出する」際に用いられるものであるから、「予測用情報」であるといえる。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項2における「前記情報」について「予測用」であることを直列的に付加するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2
(ア) 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項3における「前記情報」が「前記予測用情報」であることを明確にすると同時に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であること
訂正事項2は、訂正前の請求項1に「前記情報取得部により取得された前記情報を含む予測用情報」と記載されるとともに、【0027】に「赤外カメラ22の撮像結果」は、「『ホッパ11内でのごみGの堆積状態を示す堆積状態情報』の一例である。」と記載され、【0061】及び【0063】~【0065】に記載された「画像変換部」及び「ごみ層高さ検出部」を経て、【0068】に「ごみ高さ検出部127により算出されたごみ層高さを示す情報」及び「ごみGの供給状態の特徴量と、上記相関関係情報とに基づき、フィーダ12からのごみGの供給量の推定値を算出する。」と記載されている。
そして、この「ごみGの供給量の推定値」は、【0069】の「調整処理部PU」を経て【0082】において「将来時点における主蒸気流量の予測値を導出する」際に用いられるものであるから、「予測用情報」であるといえる。
よって、訂正事項2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項3における「前記情報」について「予測用」であることを直列的に付加するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 一群の請求項について
訂正前の請求項2~4について、請求項3~4は、請求項2を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項2~4に対応する訂正後の請求項2~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2.請求項5について
(1)訂正の内容
訂正事項3は、請求項5を削除するものである。
(2)訂正の適否
訂正事項3は、請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3は、請求項5を削除するものであるから、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてする訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
3.まとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項に適合するから、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[2~4]、5について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
焼却設備内の処理空間へ供給される前の被焼却物に関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得された前記情報を含む予測用情報に基づき、前記焼却設備のボイラで生成される主蒸気流量を予測する蒸気流量予測部と、
前記蒸気流量予測部により予測された前記主蒸気流量に基づき燃焼制御を行う制御部と、
を備え、
前記焼却設備は、前記処理空間へ供給される前の前記被焼却物が堆積されるホッパと、前記ホッパの内部に堆積した前記被焼却物を前記処理空間に向けて押し出すフィーダとを有し、
前記予測用情報は、前記焼却設備のホッパから前記処理空間への前記被焼却物の供給状態を示す供給状態情報を含み、前記供給状態情報は、前記フィーダのストローク長と前記フィーダの移動速度とのうち少なくとも一方を示す情報を含む、
制御装置。
【請求項2】
前記予測用情報は、前記被焼却物の性状に関する情報を含む、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記予測用情報は、前記焼却設備のホッパ内での前記被焼却物の堆積状態を示す堆積状態情報を含む、
請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記堆積状態情報は、前記焼却設備における前記被焼却物の搬送方向の下流側から、前記処理空間の火炎を透過して前記ホッパの出口部が撮像された赤外画像を含む、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
(削除)
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
当審が令和6年4月11日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項2及び請求項3の「前記情報」は、不明確である。
理由2(進歩性)
本件特許の請求項5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第2号証:特開2017-180963号公報
甲第4号証:特開2017-96517号公報
第5 当審の判断
1.理由1(明確性)について
本件訂正により、訂正後の請求項2及び請求項3の「前記情報」は、それぞれ「前記予測用情報」に訂正されたから、請求項2及び請求項3が直接的又は間接的に引用する請求項1の「予測用情報」であることが明確となった。
よって、請求項2及び請求項3は、明確であるから、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものではない。
2.理由2(進歩性)について
本件訂正により、請求項5は削除されたから、理由2は解消した。
第6 取消理由通知で採用しなかった理由について
申立人は、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当すること、または甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張する。
また、本件発明2は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、本件発明3、4は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨を主張するので、以下に検討する。
1.証拠の方法
甲第1号証:特開2001-99413号公報
甲第2号証:特開2017-180963号公報
甲第3号証:特開2021-143768号公報
甲第4号証:特開2017-96517号公報
以下、甲第1号証~甲第4号証を、それぞれ「甲1」~「甲4」という。
2.甲号証に記載された事項
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 甲1の記載内容
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,焼却炉の制御方法及びその装置に係り,詳しくは,可燃物燃焼時の廃熱を利用して発生させた蒸気から熱エネルギーを回収する熱回収型の焼却炉において,ボイラドラム圧力,流量などを要素とする制御ベクトルを,給塵ロータ回転速度,蒸気弁開度などを操作して制御する焼却炉の制御方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年,地球環境問題が深刻化する中,未利用エネルギーの有効活用が叫ばれており,流動床式焼却炉のような都市ごみ焼却炉においても,ごみなどの可燃物を燃焼させた際に生じる廃熱を用いてボイラで蒸気を発生させエネルギーを回収する熱回収型の焼却炉の開発研究が精力的に行われている。このような熱回収型の焼却炉では,ボイラから発生する蒸気を如何に安定して回収するかが操業上重要である。過去,蒸気系においては,PID補償器によって,蒸気弁や給塵ロータを操作し,ボイラドラム圧力や蒸気流量を制御する構成を用いることが多かった。しかしながら,これら複数の操作量と制御量との間には干渉が存在し,また,一部にむだ時間も存在することから,これらの系に対しては,多変数モデル予測制御を用いるのが有効であり,本発明者はこれまで多変数モデル予測制御を用いた制御システムを構築してきた(特開平10-318503号公報等を参照)。例えば,ボイラドラム圧力,蒸気流量等の複数の制御量を要素とする制御ベクトルの挙動を予測するモデルを作成するために,実炉にて同定実験を行い,部分空間法により同定したモデルを式変形すると,kを現サンプル時点,z-1を遅延演算子としたとき,給塵ロータ回転速度,蒸気弁開度などの複数の操作量を要素とする操作ベクトルと上記制御ベクトルとの関係は,次式(8)により表すことができる。
yM1(k+i)=yM1(k)
+Ai (z-1)ΔyM1(k)+Bi (z-1)Δu1 (k+i) (8)
ただし,kは現時点,u1 は操作ベクトル,yM1は操作ベクトルu1 を用いた制御ベクトルの予測値(第1の予測値),Ai (z-1),Bi (z-1)はz-1に関する多項式行列,j=0,1,2,…,Δは前時刻に対する変量の偏差ベクトル,すなわち差分演算子である。ここで,給塵ロータの回転速度と,蒸気弁開度を操作量としたときのボイラドラム圧力の時間的推移について,上記モデル式(8)による計算値と実測値とを比較した比較例を図5に示す。図5から理解される通り,上記モデル式(8)は,ボイラドラム圧力,ひいては制御ベクトルのおおよそ挙動を表現することができる。」
(イ)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで,多種多様な都市ごみを処理する都市ごみ焼却炉や,これらの都市ごみなどを乾燥させて固形化したごみ固形化燃料,いわゆるRDF(Refuse Derived fuel) を処理する処理炉などの焼却炉においては,前記操作ベクトルを変化させていないにもかかわらず,ごみ質の変動などに伴って突発的に給塵量がばらつく場合があり,その影響を考慮する必要がある。しかしながら,一般的な1入力1出力の制御系はもちろん,前記したモデル式(8)に基づく多変数モデル予測制御系においても,実際の給塵量のばらつきが反映されていないため,制御量の挙動の表現精度に限界があった。本発明は,このような従来の技術における課題を解決するために,焼却炉の制御方法及びその装置を改良し,少なくとも可燃物の炉内への投入操作量を含む1つ以上の操作量を要素とする操作ベクトルに応じた第1のモデルを用いて求めた制御ベクトルの第1の予測値に基づいて,前記操作ベクトルに所定サンプル時間後までに変動がある場合の,前記操作ベクトルの変動分に起因した前記制御ベクトルの第1の変動予測値を求め,少なくとも炉内に投入された可燃物の投入量に対応した予測補正量を要素とする予測補正ベクトルに応じた第2のモデルを用いて求めた前記制御ベクトルの第2の予測値に基づいて,前記操作ベクトルに前記所定サンプル時間後までに変動がない場合の前記制御ベクトルの第2の変動予測値を求め,前記制御ベクトルの実測値,前記第1の変動予測値,及び前記第2の変動予測値に基づいて,前記制御ベクトルの予測値を求め,前記制御ベクトルの予測値に基づいて前記制御を行うことにより,実際の給塵量にばらつきがある場合でも,精度の良い安定した制御を行うことができる焼却炉の制御方法及びその装置を提供するものである。」
(ウ)「【0008】
【発明の実施の形態】以下,添付図面を参照して,本発明の実施の形態につき説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明の具体的な一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。ここに,図1は本発明の実施の形態に係る焼却炉の制御方法が適用可能な焼却炉の制御装置の概略構成を示す図である。本発明の実施の形態に係る焼却炉の制御方法は,可燃物燃焼時の廃熱を利用して発生させた蒸気から熱エネルギーを回収する焼却炉について,少なくとも可燃物の炉内への投入操作量を含む複数の操作量を要素とする操作ベクトルに基づいて,複数の制御量を要素とする制御ベクトルを予測演算する第1のモデルを用いて制御を行う点で従来のものと同様である。一方,本発明の実施の形態に係る焼却炉の制御方法は,前記第1のモデルによる前記制御ベクトルの第1の予測値に基づいて,前記操作ベクトルに所定サンプル時間後までに変動がある場合の,前記操作ベクトルの変動分に起因した前記制御ベクトルの第1の変動予測値を演算し,少なくとも炉内に投入された可燃物の投入量に対応した予測補正量を要素とする予測補正ベクトルに基づいて,前記制御ベクトルを予測演算する第2のモデルによる,前記制御ベクトルの第2の予測値に基づいて,前記操作ベクトルに前記所定サンプル時間後までに変動がない場合の前記制御ベクトルの第2の変動予測値を演算し,前記制御ベクトルの実測値,前記第1の変動予測値,及び前記第2の変動予測値に基づいて,前記制御ベクトルの予測値を演算し,前記制御ベクトルの予測値に基づいて前記制御を行う点で従来のものと異なる。
【0009】本発明の実施の形態に係る焼却炉の制御方法は,例えば図1に示すような焼却炉の制御装置によって具体化される。図1において,ごみ等の可燃物は,給塵ロータ1により炉内に投入され,砂層2内に落下する。砂層2には,一次空気が複数部位から送り込まれており,それによって砂が流動するとともに,前記投入された可燃物が砂層2内で一次燃焼し,発生したガスはフリーボード3に流れてゆく。フリーボード3には,2次空気が送り込まれ,CO等の未燃ガスが完全燃焼させられ,排ガスは排ガス出口4に送られる。その際,廃熱ボイラ5では,排ガスの熱エネルギーによって飽和蒸気が発生する。廃熱ボイラ5で発生した発生蒸気は,図示しないタービン等のエネルギー変換手段へと送られる。その蒸気の流量は蒸気弁6により調整され,該蒸気のボイラドラム圧力,流量はそれぞれ圧力計7,流量計8により測定される。前記圧力計7,流量計8の出力値は,コンピュータ等の演算手段を用いたモデル予測制御器10に供給される。前記モデル予測制御器10は,例えば給塵ロータ1の回転速度,及び蒸気弁6の弁開度を操作し,ボイラドラム圧力,及び蒸気流量を予測制御するものであって,図2に示す如く,少なくとも可燃物の炉内への投入操作量を含む複数の操作量を要素とする操作ベクトルu1 に基づいて,複数の制御量を要素とする制御ベクトルを予測演算する第1の予測演算手段101と,前記第1の予測演算手段101による制御ベクトルの第1の予測値yM1に基づいて,前記操作ベクトルu1 に所定サンプル時間後までに変動がある場合の,前記操作ベクトルu1 の変動分Δu1 に起因した制御ベクトルyp の第1の変動予測値y1 を演算する第1の変動予測値演算手段102と,少なくとも炉内に投入された可燃物の投入量に対応した炉内酸素濃度(予測補正量)を要素とする予測補正ベクトルu2 に基づいて,前記制御ベクトルを予測演算する第2の予測演算手段103と,前記第2の予測演算手段103による前記制御ベクトルの第2の予測値yM2に基づいて,前記操作ベクトルu1 に前記所定サンプル時間後までに変動がない場合の制御ベクトルの第2の変動予測値y2 を演算する第2の変動予測値演算手段104と,前記制御ベクトルの実測値y,前記第1の変動予測値y1 ,及び前記第2の変動予測値y2 に基づいて,前記制御ベクトルの予測値yp を演算する予測演算手段105とを具備する。
【0010】前記モデル予測制御器10において,第1の予測演算手段101で用いられるモデル(第1のモデルに相当)が,ボイラドラム圧力,及び蒸気流量を要素とする制御ベクトルの第1の予測値yM1を予測するための上式(8)(請求項2,5における式(1)と同じ式)である。ただし,上式(8)では,炉内への実際の給塵量(投入量)が反映されない。これは,平均的にみたときには給塵ロータ1の回転速度は実際のごみ投入量に比例するものの,ごみ投入量を短周期的にみたときには,前記給塵ロータ1の回転速度が一定であっても,極端な場合「ごみ切れ」や「どか落ち」などの変動が起こりうるからであり,上式(8)に従った制御ベクトルの予測精度には限界がある。前記モデル予測制御器10では,これを補うために,炉内酸素濃度を測定する炉内酸素計9が接続されている。炉内酸素濃度は,炉内に実際に投入された可燃物の投入量と相関(対応)があって,炉内に投入された可燃物の実際の投入量が変動したときに,制御ベクトルに用いられるボイラドラム圧力や蒸気流量と比べて,その値の変動が検出されるまでに必要な時間が短い。このため,前記「ごみ切れ」や「どか落ち」などのごみ投入量の短周期的な変動がある場合でも,該炉内酸素計9により測定された炉内酸素濃度(予測補正量の一例)を要素とする予測補正ベクトルu2 に基づいて,制御ベクトルを予測すれば,制御ベクトルの予測精度を向上させることが可能である。上式(8)を同定する際に,給塵ロータ1の回転速度の代わりに,炉内酸素計9の出力値を用いると,次式(9)(請求項2,5における式(4)と同じ式)であらわされるモデル(第2のモデル)を得ることができる。前記第2の予測演算手段103は,次式(9)で表されるモデルを用いて制御量の演算を行うものである。
yM2(k+i)=yM2(k)
+Gi (z-1)ΔyM2(k)+Hi (z-1)Δu2 (k+i) (9)
ただし,u2 は予測補正ベクトル,yM2は予測補正ベクトルu2 を用いた制御ベクトルの第2の予測値,Gi (z-1),Hi (z-1)は遅延演算子z-1に関する多項式行列である。ここで,炉内酸素計9から出力された炉内酸度濃度の他,蒸気弁開度を予測補正ベクトルu2 の要素としたときのボイラドラム圧力の時間推移について,前記モデル式(9)による計算値と実測値とを比較した比較例を図3に示す。図3から理解される通り,前記モデル式(9)は,ボイラドラム圧力,ひいては制御ベクトルを精度良く表現することができる。
【0011】ところで,モデル予測制御アルゴリズムにおける予測式の構造は,一般に次式(10)(請求項2,5における式(7)と同じ式)により表現することができる。
yp (k+i)=y(k)+y1(k+i)+y2(k+i) (10)
ただし,ypは現時点からiサンプル後の制御ベクトルの予測値,yは制御ベクトルの実測値,y1 は現時点からiサンプル後までに操作ベクトルu1 に変動があった場合に,操作ベクトルu1 の変動分に起因する制御ベクトルの予測変動値(第1の変動予測値),y2 は現時点からiサンプル後までに操作量u1 に変動がない場合の制御ベクトルの予測変動値(第2の変動予測値)である。そこで,上式(8)を用いてy1 を計算し,上式(9)を用いてy2 を計算することにより,制御量の予測値yp を求めることを考える。つまり,j=0,1,2,…に対し,次式(11)及び(12)(請求項2,5における式(2),(3)と同じ式)によりy1 を与え,
y1 (k+i)=yM1(k+i)-yM1(k) (11)
ΔyM1(k-j)=0,Δu1 (k-j-1)=0 (12)
次式(13)及び(14)(請求項2,5における式(5),(6)と同じ式)によりy2 を与え,
y2 (k+i)=yM2(k+i)-yM2(k) (13)
Δu2 (k+j)=0 (14)
上式(10)の制御ベクトルの予測値yp を求める。上式(8),(11),及び(12)を用いて,第1の変動予測値y1 を求めるのが,第1の変動予測演算手段102であり,上式(9),(13),及び(14)を用いて,第2の変動予測値y2 を求めるのが,第2の変動予測演算手段104である。前記第1の変動予測演算手段102及び第2の変動予測演算手段によりそれぞれ求められた変動予測値y1 ,y2 は,予測演算手段105に供給される。前記予測演算手段105では,供給された制御ベクトルの実測値y,前記第1の変動予測値y1 ,及び前記第2の変動予測値y2 に基づき,上式(10)に従って,前記制御ベクトルの予測値yp が演算される。そして,上式(10)について,一般的なモデル予測制御アルゴリズムと同様に,目標軌道yR と予測値yp が,未来の一定区間においてできるだけ一致するような偏差入力Δu1 (k)が,最小自乗法や2次計画法を用いて求められる。このようにして求めた偏差入力Δu1 (k)に従って,前記予測モデル制御器10は,前記操作ベクトルu1 を操作し制御を行う。」
(エ)「【図1】
[図:0001418227000001.jpg]
」
(オ)「【図2】
[図:0001418227000002.jpg]
」
イ 甲1の記載内容から認められること
(ア)段落【0009】及び【図1】の記載から、甲1に記載された焼却炉は、給塵ローダ1が設けられた箇所に、焼却炉内に供給される前の可燃物が堆積され、給塵ローダ1によって堆積された可燃物が炉内に向けて供給されることが理解できる。
(イ)段落【0009】には、「前記モデル予測制御器10は,例えば給塵ロータ1の回転速度,及び蒸気弁6の弁開度を操作し,ボイラドラム圧力,及び蒸気流量を予測制御する」ことが記載されているから、「モデル予測制御器10」により操作される操作ベクトルu1は、「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」であり、「モデル予測制御器10」が予測制御する制御ベクトルyは、「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」であることが理解できる。
(ウ)段落【0011】には、「前記予測演算手段105では,供給された制御ベクトルの実測値y,前記第1の変動予測値y1 ,及び前記第2の変動予測値y2 に基づき,上式(10)に従って,前記制御ベクトルの予測値yp が演算される。そして,上式(10)について,一般的なモデル予測制御アルゴリズムと同様に,目標軌道yR と予測値yp が,未来の一定区間においてできるだけ一致するような偏差入力Δu1 (k)が,最小自乗法や2次計画法を用いて求められる。このようにして求めた偏差入力Δu1 (k)に従って,前記予測モデル制御器10は,前記操作ベクトルu1 を操作し制御を行う。」と記載されている。
してみると、「予測モデル制御器10」は、「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の予測値ypと目標値yRとの差が小さくなるように、最小自乗法などで「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」である操作ベクトルの偏差入力Δu1(k)を求めて、焼却炉における「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」を決定していることが理解できる。
(エ)段落【0011】には、以下の式(10)が記載されている。
「 yp (k+i)=y(k)+y1 (k+i)+y2 (k+i) (10)
ただし,yp は現時点からiサンプル後の制御ベクトルの予測値,yは制御ベクトルの実測値,y1 は現時点からiサンプル後までに操作ベクトルu1 に変動があった場合に,操作ベクトルu1 の変動分に起因する制御ベクトルの予測変動値(第1の変動予測値),y2 は現時点からiサンプル後までに操作量u1 に変動がない場合の制御ベクトルの予測変動値(第2の変動予測値)である。」
ここで、「現時点からiサンプル後」の値とは、未来の値を意味しているものと解される。
してみると、式(10)は、未来における制御ベクトルの予測値yp(k+i)を、現在の制御ベクトルの実測値y(k)と、未来の制御ベクトルの第1の変動予測値y1(k+i)と未来の制御ベクトルの第2の変動予測値y2(k+i)から求めるものであることが理解できる。
(オ)未来の制御ベクトルの第1の変動予測値y1(k+i)と未来の制御ベクトルの第2の変動予測値y2(k+i)は、式(8)と式(11)、式(9)と式(13)から、以下のように求められる。
「 y1 (k+i)=Ai (z-1)ΔyM1(k)+Bi (z-1)Δu1 (k+i)」
「 y2 (k+i)=Gi (z-1)ΔyM2(k)+Hi (z-1)Δu2 (k+i)」
ここで、段落【0010】には、u2が「給塵ロータ1の回転速度の代わりに、炉内温度計9の出力値」を用いた「予測補正ベクトル」であり、yM2が「予測補正ベクトルu2を用いた制御ベクトルの第2の予測値」とされているから、y2(k+i)は、未来の制御ベクトルの補正値であることが理解できる。
(カ) 上記(エ)及び(オ)から、式(10)における未来における制御ベクトルの予測値yp(k+i)は、計測した現在の制御ベクトルy(k)、未来における操作ベクトルの差分Δu1(k+i)と現在の制御ベクトルの差分ΔyM1(k)とから求められる未来における制御ベクトルの変動予測値y1(k+i)、未来における制御ベクトルの補正値y2(k+i)、とから予測していることが理解できる。
ウ 甲1発明
上記ア、イから、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
<甲1発明>
計測した現在の「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」y(k)、未来における「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」の差分Δu1(k+i)と現在における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の差分ΔyM1(k)とから求められる未来における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の変動予測値y1(k+i)、未来の制御ベクトルの補正値y2(k+i)、とから未来における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の予測値yp(k+i)を予測する予測演算手段105と、
未来における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の予測値yp(k+i)と目標値yRとの差が小さくなるように最小自乗法などで「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」の偏差入力Δu1(k)を求めて、焼却炉における「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」を決定する予測モデル制御器10であって、
焼却炉は、給塵ローダ1が設けられた箇所に、焼却炉内に供給される前の可燃物が堆積され、給塵ローダ1によって堆積された可燃物が炉内に向けて供給され、
未来における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の予測値yp(k+i)の予測に用いられる情報は、未来における「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」の差分Δu1(k+i)を含む、
予測モデル制御器10。
(2)甲2に記載された事項
ア 甲2の記載内容
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物の性状としての水分率を計測しその計測値に応じて廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉に関する。」
(イ)「【0010】
本発明は、かかる事情に鑑み、燃焼室へ送入される直前の廃棄物の水分率を把握して、適正な運転条件で廃棄物焼却炉を運転制御することを可能とする廃棄物焼却炉を提供することを課題とする。」
(ウ)「【0018】
廃棄物焼却炉1は、火格子11の下方に設けられた複数の空気供給系12から燃焼用空気を受け、上記火格子11の上方に形成される燃焼室13で火格子11上の廃棄物Pを焼却するようになっている。火格子11は右方に向けた送り速度で上記廃棄物Pを送っている。上記火格子11の左端上方位置には給塵装置14、例えばプッシャーがごみを火格子11上に送り出すように設けられている。該給塵装置14の上方にはシュート15が上方に延びており、その上端に投入口としてのホッパ16が設けられている。廃棄物焼却炉1の炉外には、ごみピット17が配置されている。そして、その上方には、ごみクレーン18が設けられていて、ごみピット17から廃棄物Pを取り出して上記ホッパ16へ投下するようになっている。
【0019】
上記シュート15内に形成されている廃棄物Pの層は、既述のように、その圧密度から低圧密度の高層部域Aと高圧密度の低層部域Bとの二層に大別される。高層部域Aでは廃棄物がばらばらに粗く積み重なっている状態であり低圧密度であるが、低層部域Bでは該低層部域Bの廃棄物の自重に加えて上記高層部域Aの廃棄物の重量をも受けるので、廃棄物の空隙に細かい廃棄物が入り込み空隙が充填され高圧密度となっている。水分率は高圧密度の低層部域Bでの方が低圧密度の高層部域Aよりも高い。
【0020】
低層部域Bは、多くの場合、廃棄物層の上面から3mの深さ位置よりも下方の域である。このことは下記の検討により確認されている。都市ごみ等一般廃棄物では2.5kPa以上の圧力がかかると、廃棄物の空隙に細かい廃棄物が充填され嵩密度が高くなり、加圧される圧力が高くなるにつれ嵩密度が高くなり5kPa以上の圧力下では嵩密度の増加はなく一定となる。一方、一般廃棄物の無加圧下での嵩密度は150~200kg/m3であり、高さが3mの堆積廃棄物の底部での廃棄物自重による圧力は5kPaになる。これらのことから、廃棄物層の上面から3mの深さ位置よりも下方の域が高圧密度の低層部域であることを確認した。
【0021】
上記空気供給系12での空気吹込み量、火格子11の送り速度、給塵装置14の送り出し速度は可変となっている。」
(エ)「【0023】
本実施形態では、上記シュート15内の廃棄物Pの静電容量を計測する静電容量計20が設けられている。該静電容量計20は、検出要素20A(例えば電極)を有していて、該検出要素20Aは上記シュート15の低層部域Bにおける側壁の内面に取り付けられている。かくして、静電容量計20は、シュート15内の低層部域Bでの検出要素20A近傍に存在する高圧密度の廃棄物Pの静電容量を検出する。
【0024】
上記静電容量計20は、水分率算定器21に接続されている。この水分率算定器21では、予め保有しているごみの静電容量の値と水分率の値との関係から、上記静電容量計20で計測された静電容量の値から対応する水分率の値を算定できるようになっている。具体的には、水分率算定器21には、廃棄物の静電容量と廃棄物の水分率との関係を予め計測して明らかにした関係データベースが保持されており、静電容量計20から送られてきた廃棄物Pの静電容量の計測値を、上記関係データベースにおける静電容量と水分率との関係と照合して計測された廃棄物の水分率を算定する。」
(オ)「【0026】
上記水分率算定器21は制御装置22に接続されており、この制御装置22は、上記シュート15内の低層部域Bの高圧密度の廃棄物Pについて水分率算定器21より受けた水分率の値から、予め保持している対応関係にもとづき、正確な廃棄物の発熱量を推定し、それに応じて安定的な廃棄物の焼却が行われるように、予め保持している制御フローにもとづき、空気供給系12、火格子11、給塵装置14へ指令信号を送り、空気供給系12での空気吹込み量、火格子11の送り速度、給塵装置14の送り出し速度等の各操作量を制御するようになっている。
【0027】
このように本実施形態では、上記低層部域Bの廃棄物P、すなわち燃焼室13へ送入される直前の廃棄物Pについて算定された水分率にもとづいて、各操作量を制御するようになっているので、廃棄物焼却炉の運転条件を最適に制御できる。」
(カ)「【図1】
[図:0001418227000003.jpg]
」
イ 甲2記載事項
上記アの摘記事項から、甲2には、以下の技術事項が記載されている(以下、「甲2記載事項」という。)
(甲2記載事項)
給塵装置14、例えばプッシャーがごみを火格子11上に送り出すように設けられ、該給塵装置14の上方にはシュート15が上方に延びており、その上端に投入口としてのホッパ16が設けられている廃棄物焼却炉1において、
推定した廃棄物の発熱量に応じて、予め保持している制御フローにもとづき空気供給系12、火格子11、給塵装置14へ指令信号を送り、空気供給系12での空気吹込み量、火格子11の送り速度、給塵装置14の送り出し速度等の各操作量を制御すること。
(3)甲3に記載された事項
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物焼却装置及び廃棄物焼却方法に関する。」
イ「【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、廃棄物層の正確な燃え切り点位置を決定して、操作端の操作量を適切に制御できる廃棄物焼却装置および廃棄物焼却方法を提供することを課題とする。」
ウ「【0029】
このような基本構成である焼却炉1は、本実施形態では、廃棄物の燃焼を安定させるための焼却炉1の操作条件の制御対象である操作端として、廃棄物投入口3から投入された廃棄物を火格子6へ送り出す給塵機5、燃焼室2内で廃棄物を下流側へ送る火格子6、火格子6の下方から燃焼用一次空気Pを炉内へ供給する燃焼用一次空気吹込手段(具体的には後述の加熱装置11およびダンパ12a~12c等)を備える。焼却炉1には、これらの操作端を制御するのに必要な情報の取得のために、上流側での受床4a上の廃棄物及び火格子6上の廃棄物を撮像するステレオカメラ装置13が設けられている。ステレオカメラ装置13には、後述の層表面検出手段14、燃え切り点位置決定手段15及び廃棄物体積決定手段16が接続されている。さらに、廃棄物体積決定手段16には、焼却炉1の操作端における操業条件を制御する制御装置17が接続されている。本実施形態では、焼却炉1、ステレオカメラ装置13、層表面検出手段14、燃え切り点位置決定手段15、廃棄物体積決定手段16及び制御装置17によって、廃棄物焼却装置が構成されている。」
エ「【0032】
燃焼室2の下流側の側壁2aには、図2(B)に見られるように、ステレオカメラ装置13が配設されている。ステレオカメラ装置13は、本実施形態では、炉幅方向(図1,図2(A)は紙面に直角な方向)で離間した位置に配された赤外線カメラ13a,13bを有している。ステレオカメラ装置13は、燃焼室2の側壁2aに設けられた監視窓に近接して炉外に配設されてもよいし、水冷構造を有して炉内に配設されてもよい。ステレオカメラ装置13の各赤外線カメラ13a,13bは、炉の上下方向そして炉幅方向(紙面に対して直角方向)に拡がる撮像視野を有している。各赤外線カメラ13a,13bは、その撮像視野の範囲が受床4a上と火格子6上の廃棄物を含むように設定されており、この廃棄物を撮像することによりサーモグラフィ情報を熱画像情報として取得する。なお、廃棄物から放射される赤外線の波長は、空間における高温ガスそして火炎から放射される赤外線の波長とは異なるので、赤外線カメラ13a,13bでは、測定する赤外線波長を適切に選定することにより、撮像視野内に火炎が存在していても廃棄物のみについての熱画像情報を得ることができる。」
オ「【0035】
層表面検出手段14は、赤外線カメラ13a,13bにより撮像された廃棄物層の熱画像から、廃棄物層表面での輝度値を検出し、さらに、検出した輝度値にもとづいて廃棄物層の層表面の形状を検出する。燃え切り点位置決定手段15は、層表面検出手段14により検出された廃棄物層表面の形状から廃棄物層の層高さを求める。通常、廃棄物層の層表
面の形状は、移動方向yにおいてのみならず、炉幅方向xにおいても一定でない。本実施形態では、燃え切り点位置決定手段15は、移動方向yの任意位置における炉幅方向xでの層高さの平均値を、その任意位置での層高さとして求める。」
カ「【0047】
また、層表面検出手段14により検出された、受床4a上に堆積した廃棄物の層表面の形状にもとづいて、落下壁19より下流側にせり出した廃棄物のせり出し量(図2(A)にて「δ」で示されている)を決定(算出)する廃棄物せり出し量決定手段(図示せず)を設けて、この廃棄物のせり出し量も考慮して操作端の操作量を制御するようにしてもよい。」
(4)甲4に記載された事項
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の燃焼制御方法およびこれを適用した燃焼制御装置に関し、特に、多種多様な廃棄物に対して適用可能な燃焼制御方法および燃焼制御装置に関する。」
イ「【0007】
本発明に係る廃棄物の燃焼制御方法は、所定量の廃棄物を燃焼処理するプロセスにおいて、以下の手順に基づき焼却炉の燃焼制御を行うことを特徴とする。
(1)燃焼排ガス中の実測の成分濃度から、廃棄物の発熱量を推算する。
(2)算出された廃棄物発熱量を基に、ボイラ蒸発量を推算する。
(3)推定されたボイラ蒸発量を基に、焼却炉に投入される廃棄物,燃焼空気および助燃材の供給量を制御する。
【0008】
廃熱ボイラを有する焼却炉では、廃棄物燃焼により発生する燃焼熱量と、燃焼排ガス熱量を吸収する廃熱ボイラより発生するボイラ蒸発量は比例関係にあり、このボイラ蒸発量を指針に自動燃焼制御が構築されてきた。本発明者は、さらに検証過程において、実測のボイラ蒸発量ではなく、現在の燃焼状態を示す情報を基にボイラ蒸発量を推算し、かかる推定値をごみ送り速度制御,燃焼空気量の制御に適用すれば、より安定した燃焼制御が実現できるとの知見を得た。本発明は、燃焼している廃棄物の発熱量に係る情報をリアルタイムに精度よく連続して取得し、これを用いて現在の燃焼状態に対して時間遅れのない廃棄物の燃焼制御を行うことを可能にした。」
ウ「【0014】
【0014】
<本発明に係る廃棄物の燃焼制御方法>
本発明に係る廃棄物の燃焼制御方法(以下「本方法」ということがある)は、所定量の廃棄物を燃焼処理するプロセスにおいて、以下の手順に基づき焼却炉の燃焼制御を行うことを特徴とする。燃焼している廃棄物の発熱量に係る情報をリアルタイムに精度よく連続して取得し、これを用いて現在の燃焼状態に対して時間遅れのない廃棄物の燃焼制御を行うことができる。
(1)燃焼排ガス中の実測の成分濃度から、廃棄物の発熱量を推算する。
(2)算出された廃棄物発熱量を基に、ボイラ蒸発量を推算する。
(3)推定されたボイラ蒸発量を基に、焼却炉に投入される廃棄物,燃焼空気および助燃材の供給量を制御する。
以下、本発明に係る廃棄物の燃焼制御方法および燃焼制御装置の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。」
3.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「計測した現在の「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」y(k)、未来における「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」の差分Δu1(k+i)と現在における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の差分ΔyM1(k)」は、「未来における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の予測値yp(k+i)」を予測するために用いられる情報であるから、本件発明1の「予測用情報」に相当する。
甲1発明の「未来における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の変動予測値y1(k+i)、未来の制御ベクトルの補正値y2(k+i)、とから未来における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の予測値yp(k+i)を予測」することは、上記予測用情報や補正値に基づいて「蒸気流量」を予測するのであるから。本件発明1の「予測用情報に基づき、前記焼却設備のボイラで生成される主蒸気流量を予測する」ことに相当する。
甲1発明の「予測演算手段105」は、本件発明1の「蒸気流量予測部」に相当する。
甲1発明の「未来における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の予測値yp(k+i)と目標値yRとの差が小さくなるように最小自乗法などで「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」の偏差入力Δu1(k)を求めて、焼却炉における「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」を決定する」ことは、本件発明1の「予測された前記主蒸気流量に基づき燃焼制御を行う」ことに相当する。
甲1発明の「予測モデル制御器10」は、本件発明1の「制御部」に相当する。
甲1発明の「焼却炉」、「焼却炉内」、「可燃物」は、本件発明1の「焼却設備」、「処理空間」、「被焼却物」に相当する。
甲1発明の「焼却炉内に供給される前の可燃物が堆積され」ることは、本件発明1の「処理空間へ供給される前の前記被焼却物が堆積される」ことに相当する。
してみると、甲1発明は、本件発明1の「ホッパ」に相当する構成を備えるといえる。
甲1発明の「給塵ローダ1によって堆積された可燃物が炉内に向けて供給され」ることと、本件発明1の「前記ホッパの内部に堆積した前記被焼却物を前記処理空間に向けて押し出すフィーダとを、有」することとは、甲1発明が本件発明1の「ホッパ」に相当する構成を備えるのであるから、「前記ホッパの内部に堆積した前記被焼却物を前記処理空間に供給する供給機構を、有」することの限りにおいて一致する。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
<一致点>
予測用情報に基づき、前記焼却設備のボイラで生成される主蒸気流量を予測する蒸気流量予測部と、
前記蒸気流量予測部により予測された前記主蒸気流量に基づき燃焼制御を行う制御部と、
を備え、
前記焼却設備は、前記処理空間へ供給される前の前記被焼却物が堆積されるホッパと、前記ホッパの内部に堆積した前記被焼却物を前記処理空間に供給する供給機構を有しする、
制御装置。
<相違点1>
本件発明1は、「焼却設備内の処理空間へ供給される前の被焼却物に関する情報を取得する情報取得部」を有するのに対して、甲1発明では、情報取得部を有しない点。
<相違点2>
供給機構に関して、本件発明1は、被焼却物を「押し出すフィーダ」であるのに対して、甲1発明は、「給塵ローダ1」である点。
<相違点3>
本件発明1は、予測用情報が「前記情報取得部により取得された前記情報を含む」ものであり、「前記予測用情報は、前記焼却設備のホッパから前記処理空間への前記被焼却物の供給状態を示す供給状態情報を含み、前記供給状態情報は、前記フィーダのストローク長と前記フィーダの移動速度とのうち少なくとも一方を示す情報を含む」のに対して、甲1発明は、「未来における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の予測値yp(k+i)の予測に用いられる情報は、未来における「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」の差分Δu1(k+i)を含む」点。
してみると、本件発明1は、甲1発明ではないことが明らかだから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
次に、本件発明1が甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否かについて検討する。
事案に鑑み、相違点3について検討する。
甲2記載事項は、「給塵装置14、例えばプッシャーがごみを火格子11上に送り出すように設けられ」ており、「推定した廃棄物の発熱量」に応じて「給塵装置14の送り出し速度等の各操作量を制御する」ものであるが、「廃棄物の発熱量」やボイラが発生する蒸気流量の推定に「前記焼却設備のホッパから前記処理空間への前記被焼却物の供給状態を示す供給状態情報を含み、前記供給状態情報は、前記フィーダのストローク長と前記フィーダの移動速度とのうち少なくとも一方を示す情報」を用いるものではない。
また、甲3及び甲4においても、「前記焼却設備のホッパから前記処理空間への前記被焼却物の供給状態を示す供給状態情報を含み、前記供給状態情報は、前記フィーダのストローク長と前記フィーダの移動速度とのうち少なくとも一方を示す情報」を用いて廃棄物の発熱量やボイラが発生する蒸気流量を推定することは、なんら記載も示唆もされていない。したがって、甲1に甲2ないし甲4を適用しても、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項にはならない。
さらに、甲1発明は、「計測した現在の「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」y(k)、未来における「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」の差分Δu1(k+i)と現在における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の差分ΔyM1(k)とから求められる未来における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の変動予測値y1(k+i)」から「未来における「ボイラドラム圧力及び蒸気流量」の予測値yp(k+i)を予測する」ものであって、技術常識を参酌しても、甲1発明における「未来における「給塵ロータ1の回転速度及び蒸気弁6の弁開度」の差分Δu1(k+i)」を、本件発明1の「前記予測用情報は、前記焼却設備のホッパから前記処理空間への前記被焼却物の供給状態を示す供給状態情報を含み、前記供給状態情報は、前記フィーダのストローク長と前記フィーダの移動速度とのうち少なくとも一方を示す情報」を「前記情報取得部により取得された前記情報」として計測して置き換える動機付けがないといわざるを得ない。
また、本件発明1は、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を備えることにより、「主蒸気流量に対して影響を与えるホッパ11から処理空間Vへの被焼却物Gの供給状態を反映させて主蒸気流量を予測することができる。これにより、主蒸気流量をさらに高い精度で予測することができる」という顕著な効果を奏するものである。
してみると、相違点1、2について論じるまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、「予測用情報が「前記情報取得部により取得された前記情報を含む」ものであり、「前記予測用情報は、前記焼却設備のホッパから前記処理空間への前記被焼却物の供給状態を示す供給状態情報を含み、前記供給状態情報は、前記フィーダのストローク長と前記フィーダの移動速度とのうち少なくとも一方を示す情報を含む」ことを発明特定事項に含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明、甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
4.小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明1~4は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないから、申立人の主張を採用することはできない。
第7 まとめ
したがって、請求項1~4に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項5に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより申立人による特許異議の申立てについて、請求項5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701341