特許異議申立
2023-701215
風味付けられた食品および飲料製品
- 審判番号
- 2023-701215
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-568805
- 登録番号
- 7274866
- 請求日
- 2023年11月17日
- 審決日
- 2025年03月28日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
- 【権利者代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【権利者代理人】前川 純一
- 【権利者代理人】永島 秀郎
- 【権利者代理人】上島 類
- 【権利者代理人】遠藤 太介
- 【異議申立人】大隅 庸平
- 審判長/審判官
- 審判長 淺野 美奈
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 磯貝 香苗
- 分類
- P1651.161-YAA(A23L) / P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第113条第2号、特許法第29条の2、特許法第184条の13、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第184条の4第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
結論
結 論
特許第7274866号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕、〔6ないし10〕について訂正することを認める。
特許第7274866号の請求項1、3、6及び10に係る特許を維持する。
特許第7274866号の請求項2、4、5及び7ないし9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7274866号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、
2017年(平成29年)6月9日(優先権主張 2016年(平成28年)6月30日)を国際出願日とする出願であって、
令和 5年 5月 9日にその特許権の設定登録(請求項の数 10)がされ、
令和 5年 5月17日に特許掲載公報が発行され、
その後、当該特許に対し、
令和 5年11月17日に 大隈 庸平 (以下、「特許異議申立人」という。)が全ての請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、
令和 6年 1月26日付けで取消理由が通知され、
令和 6年 4月26日に特許権者 フイルメニッヒ ソシエテ アノニム(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされると共に意見書が提出され、
令和 6年 5月22日に特許権者から手続補正書(方式、補正対象書類:令和 6年 4月26日付け意見書)、手続補正書(方式、補正対象書類:令和 6年 4月26日付け訂正請求書)が提出され、
令和 6年 5月30日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、
令和 6年 7月 5日に特許異議申立人から意見書が提出され、
令和 6年11月21日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、
令和 7年 2月27日に特許権者から訂正請求がされると共に意見書が提出されたものである。
なお、令和 6年 4月26日にされた先の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、当審は、本件訂正請求につき、特許法第120条の5第5項ただし書きに規定する「特許異議申立人に意見を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」がある場合に該当すると判断し、改めて、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。すなわち、本件訂正請求人による訂正の内容は先の訂正請求による訂正の内容に含まれており、先の訂正請求による訂正の内容については、特許異議申立人は、既に意見書を提出する機会を与えられている。
第2 本件訂正について1 訂正の内容
令和 7年 2月27日にされた訂正請求における訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記飲料または食品に添加することを含む、方法。」と記載されているのを、
「前記飲料または食品に添加することを含み、
前記甘味料は、ステビオールグリコシドを含有する方法。」に訂正する。
請求項1を引用する請求項3も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「ヘスペレチンジヒドロカルコンを、前記飲料または食品の全質量の2質量ppm~20質量ppm」と記載されているのを、
「ヘスペレチンジヒドロカルコンを、前記飲料または食品の全質量の12質量ppm~20質量ppm」に訂正する。
請求項1を引用する請求項3も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、
「飲料または食品中の甘味料の甘味を増強する方法」と記載されているのを、
「飲料または食品中の甘味料の甘味を増強すると共に酸味を減少させる方法」に訂正する。
請求項1を引用する請求項3も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に、
「請求項2記載の方法。」と記載されているのを、
「請求項1記載の方法。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6に、
「2質量ppm~20質量ppmの量でヘスペレチンジヒドロカルコンを含む」と記載されているのを、
「12質量ppm~20質量ppmの量でヘスペレチンジヒドロカルコンを含む」に訂正する。
請求項6を引用する請求項10についても同様に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6に、
「ヘスペレチンジヒドロカルコンを含む、飲料または食品。」と記載されているのを、
「ヘスペレチンジヒドロカルコンを含み、
前記甘味料は、ステビオールグリコシドを含有する飲料または食品。」に訂正する。
請求項6を引用する請求項10についても同様に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(13)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし5に対応する訂正後の請求項1ないし5、及び、訂正前の請求項6ないし10に対応する訂正後の請求項6ないし10は、それぞれ特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1ないし3に係る請求項1の訂正について
訂正事項1ないし3に係る請求項1の訂正は、訂正事項1により甘味料が「ステビオールグリコシドを含有する」と特定するものであり、訂正事項2によりヘスペレチンジヒドロカルコンの含有量の下限値を「2質量ppm」から「12質量ppm」とするものであり、訂正事項3により、「飲料または食品中の甘味料の甘味を増強する方法」から「飲料または食品中の甘味料の甘味を増強すると共に酸味を減少させる方法」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし3に係る請求項1の訂正は、訂正事項1については本件特許明細書【0013】ないし【0015】及び【0027】、図7~9の記載からみて、訂正事項2については本件特許明細書【0015】及び【0027】、図7~9の記載からみて、訂正事項3については本件特許明細書【0027】、図9の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項1ないし3に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項1の記載を引用する請求項3の訂正についても同様である。
(2)訂正事項4、6、7及び10ないし12に係る請求項2、4、5及び7ないし9の訂正について
訂正事項4、6、7及び10ないし12に係る請求項2、4、5及び7ないし9の訂正は、請求項2、4、5及び7ないし9を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項4、6、7及び10ないし12に係る請求項2、4、5及び7ないし9の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項5に係る請求項3の訂正について
訂正事項5に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項3が請求項2を引用する記載であったところ、訂正事項2に係る請求項1の訂正により、請求項1におけるヘスペレチンジヒドロカルコンの含有量の数値範囲が、訂正前請求項2におけるヘスペレチンジヒドロカルコンの含有量の数値範囲よりもさらに減縮されたものとなり、かつ、請求項2が削除されたことに伴い、引用先請求項を請求項2から請求項1に変更するものであることから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5に係る請求項3の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項5に係る請求項3の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項8及び9に係る請求項6の訂正について
訂正事項8及び9に係る請求項6の訂正は、訂正事項8により甘味料が「ステビオールグリコシドを含有する」と特定するものであり、訂正事項9によりヘスペレチンジヒドロカルコンの含有量の下限値を「2質量ppm」から「12質量ppm」とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項8及び9に係る請求項6の訂正は、訂正事項8については本件特許明細書【0013】ないし【0015】及び【0027】、図7~9の記載からみて、訂正事項9については本件特許明細書【0015】及び【0027】、図7~9の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項8及び9に係る請求項6の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項6の記載を引用する請求項10の訂正についても同様である。
(5)独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、訂正前の全請求項1ないし10に対してされているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正請求による特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項、第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕、〔6ないし10〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
飲料または食品中の甘味料の甘味を増強すると共に酸味を減少する方法であって、ヘスペレチンジヒドロカルコンを、前記飲料または食品の全質量の12質量ppm~20質量ppmの量で前記飲料または食品に添加することを含み、
前記甘味料は、ステビオールグリコシドを含有する方法。
【請求項2】
(削除)。
【請求項3】
前記飲料または食品中に供給されるヘスペレチンジヒドロカルコンの量が、前記飲料または食品の全質量の15質量ppmである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
(削除)。
【請求項5】
(削除)。
【請求項6】
飲料または食品および甘味料の全質量の12質量ppm~20質量ppmの量でヘスペレチンジヒドロカルコンを含み、
前記甘味料は、ステビオールグリコシドを含有する飲料または食品。
【請求項7】
(削除)。
【請求項8】
(削除)。
【請求項9】
(削除)。
【請求項10】
前記飲料または食品中に供給されるヘスペレチンジヒドロカルコンの量が、前記飲料または食品の全質量の12質量ppmである、請求項6記載の飲料または食品。」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由について
令和 5年11月17日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(拡大先願)
本件特許発明1ないし10は、その優先日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2(特許法第184条の13参照)の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2項に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許発明1ないし10について、発明の詳細な説明における官能試験の条件及び図面の記載が不明瞭なため、本件特許発明1ないし10は発明の詳細な説明に記載されたものではない。
・本件特許発明1ないし10について、発明の詳細な説明には発明の全範囲にわたって課題が解決し得ることが分かるように記載されていないから、本件特許発明1ないし10は発明の詳細な説明に記載されたものではない。
4 申立理由4(実施可能要件)
本件特許の発明の詳細な説明の記載には下記の点で不備があり、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許発明1ないし10について、発明の詳細な説明における官能試験の条件及び図面の記載が不明瞭なため、発明の詳細な説明は当業者が本件特許発明1ないし10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
・本件特許発明1ないし10について、発明の詳細な説明には発明の全範囲にわたって課題が解決し得ることが分かるように記載されていないから、発明の詳細な説明の記載は当業者が本件特許発明1ないし10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
5 申立理由5(明確性)
本件特許の特許請求の範囲の記載には下記の点で不備があり、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・請求項1及び請求項6における「飲料または食品」の全質量の意義が不明であり、その結果、請求項1及び請求項6におけるヘスペレチンジヒドロカルコンの含有量の意義も不明となり、発明全体が不明確である。
6 証拠方法
甲第1号証:米国特許第3751270号
甲第2号証:国際公開第2017/186299号
甲第2の2号証:特表2019-514346号公報
甲第3号証:National Library of Medicine,COMPOUND SUMMARY Hesperetin dihydrochalcone,2005年8月8日,National Institute of Health(米国立衛生研究所,NIH),https://pubchem.ncbi.nlm.nif.gov/compound/Hesperetin-dihydrochalcon
甲第4の1号証:「ステビア甘味料について」,令和6年(2024)年6月27日出力,https://www.stevia.gr.jp/stevia/history.html
甲第4の2号証:「ステビア甘味料について」,令和6年(2024)年7月4日出力,https://www.stevia.gr.jp/stevia/history.html
甲第5号証:「ステビアの安定性」,令和6年(2024)年6月27日出力,https://www.morita-kagaku-kogyo.co.jp/about/safety.html
甲第6号証:特表2010-507376号公報
甲第1号証ないし甲第3号証は特許異議申立書に添付され、甲第4の1号証ないし甲第6号証は令和 6年 7月 5日提出の意見書に添付されたものである。
証拠の表記は特許異議申立書及び令和 6年 7月 5日提出の意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」等という。
第5 取消理由の概要
当審が 令和 6年11月21日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要はおおむね次のとおりである。
取消理由3(拡大先願)
本件特許発明1ないし3、6及び10は、その優先日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその優先日前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2(特許法第184条の13参照)の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、6及び10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 当審の判断
当審は、以下に述べるように取消理由3は理由がないと判断する。
1 先願明細書等に記載された事項等
(1)先願明細書等の記載事項
特許異議申立人が提出した国際公開第2017/186299号公報(甲2)の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、先願明細書等は外国語書面であるため、その後日本へ国内移行され翻訳文が提出された特表2019-514346号(甲2の2)に記載されている日本語翻訳文を援用し、摘記箇所については、甲2の該当箇所を示す。また、下線は当審にて付与した。
「【請求項1】 ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)(3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシ-フェニル)-1-(2,4,6-トリヒドロキシフェニル)プロパン-1-オン)
【化1】
[図:0001424554000001.jpg]
または
- ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)の塩、またはヘスペレチンジヒドロカルコン(I)の複数の塩を含むかもしくはそれらからなる混合物
または
- ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)およびヘスペレチンジヒドロカルコン(I)の塩もしくは複数の塩を含むかもしくはそれらからなる混合物
の使用であって、
(i)不快な味の物質もしくは物質の混合物、好ましくは苦いおよび/もしくは酸いおよび/もしくは渋い味の物質もしくは物質の混合物の不快な味の印象、好ましくは苦いおよび/もしくは酸いおよび/もしくは渋い味の印象、特に苦い味の物質の苦い味の印象を、遮蔽する、低下させる、もしくは抑制するための、
ならびに/または
(ii)清涼な、旨味のある、フルーティーなもしくはスパイシーな味の物質もしくは物質の混合物の、清涼な、旨味のある、フルーティーなおよびスパイシーな特徴からなる群から選択される味の印象を調整するための、使用。
【請求項2】
化合物(I)が、甘い味の物質もしくは物質の混合物または甘い味および苦い味の両方の味の物質もしくは物質の混合物の甘い味の印象をさらに同時に強化する、請求項1に記載の使用。」(特許請求の範囲 請求項1~2)
「【請求項4】
式(I)の化合物、または式(I)の化合物の塩、または式(I)の化合物の複数の塩を含むかもしくはそれらからなる混合物、または式(I)の化合物および式(I)の化合物の塩もしくは複数の塩を含むかもしくはそれらからなる混合物を含む、芳香組成物。
【請求項5】
(a)式(I)の化合物、または式(I)の化合物の塩、または式(I)の化合物の複数の塩を含むかもしくはそれらからなる混合物、または式(I)の化合物および式(I)の化合物の塩もしくは複数の塩を含むかまたはそれらからなる混合物と、
下記物質(c)および(d)からなる群から選択される少なくとも1種もしくは複数の物質、またはそれらの混合物・・・(中略)・・・
物質(c):1種もしくは複数の不快な味の物質、好ましくは苦い、酸いおよび/もしくは渋い味の物質、特に苦い味の物質、ならびに
物質(d):1種もしくは複数の甘い味の物質であり且つ不快な味の物質、特に苦い味の物質、・・・(中略)・・・とを含み・・・(中略)・・・芳香組成物であって・・・(中略)・・・請求項4に記載の芳香組成物。
【請求項6】
構成要素(a)の合計量が、ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)および/またはその塩を含まずそれ以外は同等の組成物と比較して、前記甘い味の物質の甘味を好ましくは相乗的に強化するために十分であり、
ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)および/またはその塩の合計量が、苦い、酸いおよび/または渋い味の物質の不快な味を低下させるおよび/または遮蔽するために十分である、請求項5に記載の芳香組成物。
【請求項7】
ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)および/またはその塩の合計量が、前記構成要素(h)の味の印象を調整するために十分である、請求項5または6に記載の芳香組成物。
【請求項8】
- 前記甘い味の物質(b)が、・・・(中略)・・・から選択され;
ならびに/または
- 前記不快な味の物質(c)が、キサンチンアルカロイド、キサンチン、アルカロイド、フェノールグリコシド、フラボノイドグリコシド、カルコンもしくはカルコングリコシド、加水分解性タンニン、非加水分解性タンニン、フラボン、他のポリフェノール、テルペノイドの苦い物質、ヨモギからのアブシンチン、リンドウからのアマロゲンチン、金属塩、薬学的に活性な成分:フルオロキノロン抗生物質、ベータ-ラクタム抗生物質、アンブロキソール、プロピルチオウラシル[PROP]、アスピリン(アセチルサリチル酸)、サリシン、パラセタモール(アセトアミノフェン)、イブプロフェン、ナプロキセン、アンブロキソール、グアフェネシン、オメプラゾール、パントプラゾール、デキストロモルファン、またはキニン、ビタミン、安息香酸デナトニウムもしくは他のデナトニウム塩、スクラロースオクタアセテート、尿素、不飽和脂肪酸、アミノ酸、およびペプチドからなる群から選択され;
ならびに/または
- 前記甘いおよび不快の両方の味の物質(d)が、ステビオールグリコシド・・・(中略)・・・から選択され;
ならびに/または
- 苦い味の印象を遮蔽するかもしくは低下させる前記物質(e)が、・・・(中略)・・・から選択され;
ならびに/または
- 甘い味の印象を強化するための前記物質(f)が、ヘスペレチン、・・・(中略)・・・から選択される、
請求項5から7までのいずれか1項に記載の芳香組成物。
【請求項9】
(1)滋養物のための調製物、栄養補助食品調製物、または口腔ケアもしくは快感のための調製物、
(2)化粧用の調製物、
(3)経口投与を意図される医薬調製物、
(4)(1)から(3)で言及された調製物の1種で使用するための風味づけ混合物、および
(5)(1)から(3)で言及された調製物の1種を製造するための半完成品
からなる群から選択される調製物であって、
請求項4から8までに記載の芳香組成物を含む、調製物。
【請求項10】
(1)滋養物のための調製物、栄養補助食品調製物、または口腔ケアもしくは快感のための調製物、
(2)化粧用の調製物、
(3)経口投与を意図される医薬調製物、
からなる群から選択される調製物であって、
前記調製物(1)、(2)または(3)が、その合計質量に基づいて、0.00001質量%(0.1ppm)~0.005質量%(50ppm)の(i)ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)および(ii)その塩(構成要素(a))を含む、請求項9に記載の調製物。」(特許請求の範囲 請求項4~10)
「それに加えて、ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)は、甘い味の物質の甘い味の印象の強化、好ましくは相乗的強化に有利に特によく適しており、合成で容易に入手できる。その甘い味の印象が、本発明により、好ましくは相乗的に強化され得る甘い味の物質が、糖、特にスクロース、グルコースもしくはフルクトースまたはこれらの糖類の2つもしくは全ての組合せであれば、化合物(I)の特に有利な、甘さを強化する効果が生ずる。ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)のこの特に有利な相乗的な甘さを強化する効果は、スクロースの甘い味の印象の強化を使用する例によりさらに示される(応用例3を参照されたい)。」([0055])
「(例3)
糖溶液の甘い印象の強化
甘い印象の強化を定量化するために、各場合に、5%スクロース溶液の甘さを、5%のスクロースおよび1ppm、5ppm、7ppmまたは10ppmの本発明により使用されるべきヘスペレチンジヒドロカルコン(I)を含有する検体について、熟練者の群によって比較した(等級:1[甘くない]から10[極端に甘い])。比較結果として、5%スクロースおよび10ppmまたは25ppmのデオキシヘスペレチンジヒドロカルコンを含有する検体による甘い印象の強化も含まれる。
アセスメント、すなわち、各場合における甘い印象の強化の計算(%)のために、スクロース溶液および比較のためにスクロースおよびヘスペレチンジヒドロカルコン(I)またはデオキシヘスペレチンジヒドロカルコンを含有する検体について、熟練者の群のアセスメントの平均値を使用した。
【表2】
[図:0001424554000002.jpg]
驚くべきことに、ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)を10ppmの量で使用することにより、デオキシヘスペレチンジヒドロカルコンの同じ量(10ppm)を使用して得られた甘い印象の強化と比較して、甘い印象の著しい強化が達成されることが見出された。
それに加えて、さらに驚くべきことに、ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)を5ppmの量で使用する甘い印象の強化の増大が、デオキシヘスペレチンジヒドロカルコンを10ppmの量で使用する甘い印象の強化より明らかに高いことが見出された。」([00167]~[00172])
「(例5)
甘味プロファイルの改変
7wt%スクロース水溶液の味のプロファイルを、各場合に、等価の組成およびそれに加えて1.5%スクロース(B)、5ppm、7ppmまたは20ppmヘスペレチンジヒドロカルコン(I)を有する検体について、熟練者の群(n=12)によって比較した。
【表3】
[図:0001424554000003.jpg]
上の表にまとめたように、ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)は、明確な総合的な甘い印象を増大させるだけでなく、特に甘い印象(甘い影響)の開始に正の影響を有し、糖の全体的風味および味が知覚された。したがって、感覚の性質における驚くべき改善が達成された。」([00176]~[00179])
「【表5】
[図:0001424554000004.jpg]
要素AからDを混合し、強く練る。未加工物は、例えば薄い細片の形態で直ぐに消費できるチューインガムに加工することができる。」([00188]~[00189])
「【表7】
[図:0001424554000005.jpg]
パラチニットを水と混合し、混合物を165℃で溶融し、次に115℃に冷却した。他の成分を加え、混合後鋳型中で成形し、硬化の後、鋳型から取り出し、次に個々に梱包した。
【表8】
[図:0001424554000006.jpg]
成分を決められた順に混合し、完成したケチャップを、攪拌機を使用して均質化し、瓶に注入し、滅菌する。
【表9】
[図:0001424554000007.jpg]
注:ポリデキストロースは、それ自体、低カロリー値の甘くない味の多糖である。」([00192]~[00197])
「【表11】
[図:0001424554000008.jpg]
固体の構成要素または成分は、個々に水と混合し、組み合わせ、水で100gまでにする。得られる濃縮物を、次に周囲温度で終夜熟成させる。最終的に、1部の濃縮物を5部の炭酸水と混合し、瓶に充填し、封ずる。」([00200]~[00201])
(2)先願明細書等に記載された発明
先願明細書等に記載された事項を、特許請求の範囲、特許請求の範囲の請求項1~2、請求項4~10の記載を中心に整理すると、先願明細書には次の発明(以下、「先願方法発明」、「先願物発明」という。)が記載されていると認める。
<先願方法発明>
「芳香組成物を含む(1)滋養物のための調製物、栄養補助食品調製物、または口腔ケアもしくは快感のための調製物、(3)経口投与を意図される医薬調製物、(4)(1)又は(3)で言及された調製物の1種で使用するための風味づけ混合物、および、(5)(1)又は(3)で言及された調製物の1種を製造するための半完成品からなる群から選択される調製物における、ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)(3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシ-フェニル)-1-(2,4,6-トリヒドロキシフェニル)プロパン-1-オン)
【化1】
[図:0001424554000009.jpg]
の使用であって、
化合物(I)が、(ii)清涼な、旨味のある、フルーティーなもしくはスパイシーな味の物質もしくは物質の混合物の、清涼な、旨味のある、フルーティーなおよびスパイシーな特徴からなる群から選択される味の印象を調整し、
化合物(I)が、甘い味の物質もしくは物質の混合物または甘い味および苦い味の両方の味の物質もしくは物質の混合物の甘い味の印象をさらに同時に強化するものであり、
芳香組成物は、(a)式(I)の化合物と、物質(d):1種もしくは複数の甘い味の物質であり且つ不快な味の物質、特に苦い味の物質とを含み、
甘いおよび不快の両方の味の物質(d)が、ステビオールグリコシドから選択され、
構成要素(a)の合計量が、ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)および/またはその塩を含まずそれ以外は同等の組成物と比較して、甘い味の物質の甘味を好ましくは相乗的に強化するために十分であり、
調製物が、その合計質量に基づいて、0.00001質量%(0.1ppm)~0.005質量%(50ppm)のヘスペレチンジヒドロカルコン(I)を含む、使用。」
<先願物発明>
「先願方法発明により甘い味の印象を強化された調整物。」
(3)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と先願方法発明とを対比する。
先願方法発明における「(1)滋養物のための調製物、栄養補助食品調製物、または口腔ケアもしくは快感のための調製物、(3)経口投与を意図される医薬調製物、(4)(1)又は(3)で言及された調製物の1種で使用するための風味づけ混合物、および、(5)(1)又は(3)で言及された調製物の1種を製造するための半完成品からなる群から選択される調製物」は、本件特許発明1における「飲料または食品」に相当する。
先願方法発明における「ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)(3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシ-フェニル)-1-(2,4,6-トリヒドロキシフェニル)プロパン-1-オン)
【化1】
[図:0001424554000010.jpg]
」及び「化合物(I)」は、いずれも本件特許発明1における「ヘスペレチンジヒドロカルコン」に相当する。
また、先願方法発明における「物質(d):1種もしくは複数の甘い味の物質であり且つ不快な味の物質、特に苦い味の物質」で「甘いおよび不快の両方の味の物質(d)が、ステビオールグリコシド」であることは、本件特許発明1における「甘味料は、ステビオールグリコシドを含有する」ことに相当する。
さらに、先願方法発明における「甘い味の物質もしくは物質の混合物または甘い味および苦い味の両方の味の物質もしくは物質の混合物の甘い味の印象をさらに同時に強化する」ことは、本件特許発明1における「甘味料の甘味を増強する」ことに相当する。
そうすると、本件特許発明1と先願方法発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「飲料または食品中の甘味料の甘味を増強する方法であって、ヘスペレチンジヒドロカルコンを、飲料または食品に添加することを含み、前記甘味料は、ステビオールグリコシドを含有する方法。」
<相違点2-1>
本件特許発明1は、ヘスペレチンジヒドロカルコンを飲料または食品の全質量の「12質量ppm~20質量ppm」の量で添加するとの特定を有するのに対し、先願方法発明は、「0.00001質量%(0.1ppm)~0.005質量%(50ppm)」である点。
<相違点2-2>
本件特許発明1は、飲料または食品中の甘味料の甘味を増強すると「共に酸味を減少する」との特定を有するのに対し、先願方法発明は、そのような特定がない点。
上記相違点2-1について検討する。
先願方法発明において、ヘスペレチンジヒドロカルコンの添加量は、「ヘスペレチンジヒドロカルコン(I)および/またはその塩を含まずそれ以外は同等の組成物と比較して、甘い味の物質の甘味を好ましくは相乗的に強化するために十分であ」る量とされるところ、その量を、飲料または食品の全質量の12質量ppm~20質量ppmとすることについて記載はない。したがって、相違点2-1は実質的な相違点である。
そして、先願方法発明において、ヘスペレチンジヒドロカルコンの添加量を、飲料または食品の全質量の12質量ppm~20質量ppmとすることにより、「他の風味属性に大きな影響を与えることなく」「ステビオールグリコシド」「SG95の濃度が20ppm低下したストロベリー風味の飲料の甘味強度を維持することができる」(本件特許明細書【0014】)、「12ppmのヘスペレチンジヒドロカルコンは、」「200ppmのステビオールグリコシド」「の甘味を有意に増加させる一方で、全体的な口当たりの強さを高め、かつ甘味強度を長引かせる。」(本件特許明細書【0015】)、「ヘスペレチンDCを、(ステビアSG95で甘味付けした)糖0%のトロピカルジュースに」「20ppmで投与した場合、甘味知覚の増強が示され」「酸味の減少は、ヘスペレチンDCの存在下でも認識される。」(本件特許明細書【0027】)といった新たな効果を奏するものであるから、設計上の微差でもない。
よって、本件特許発明1は先願方法発明と同一ではなく、実質同一でもない。
イ 本件特許発明2について
請求項2は削除された。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明3は先願方法発明と同一ではなく、実質同一でもない。
エ 本件特許発明4及び5について
請求項4及び5は削除された。
オ 本件特許発明6について
本件特許発明6と先願物発明とを対比すると、上記アにおいて検討したと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明6と先願物発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「ヘスペレチンジヒドロカルコンを含み、甘味料は、ステビオールグリコシドを含有する飲料または食品。」
<相違点2-3>
本件特許発明6は、ヘスペレチンジヒドロカルコンを「飲料または食品および甘味料の全質量の12質量ppm~20質量ppmの量で」含むとの特定を有するのに対し、先願物発明は、「0.00001質量%(0.1ppm)~0.005質量%(50ppm)」である点。
相違点2-3は上記アの相違点2-1と同旨であり同様に判断される。
よって、本件特許発明6は先願物発明と同一ではなく、実質同一でもない。
カ 本件特許発明10について
本件特許発明10は、請求項6を引用して特定するものであり、本件特許発明6の発明特定事項を全て有するから、本件特許発明6と同様に判断される。
よって、本件特許発明10は先願物発明と同一ではなく、実質同一でもない。
(4)取消理由3についてのまとめ
上記のとおり、本件特許発明1、3、6及び10は、特許法第29条の2(特許法第184条の13参照)の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項1、3、6及び10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1、3、6及び10に係る特許は、取消理由3によって取り消すことはできない。
第7 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した
特許異議申立理由について
取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立理由は、
・申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
・申立理由3(サポート要件)
・申立理由4(実施可能要件)
・申立理由5(明確性)である。
以下、順に検討する。
1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)主な証拠等の記載事項
ア 甲1の記載事項
甲1にはアグリコン性ジヒドロカルコン含有甘味組成物に関し、次の事項が記載されている。なお、甲1は外国語文献であるため、訳文を摘記する。
「驚くべきことに、以下に記載するタイプのある種のアグリコン性ジヒドロカルコンは、ある種の糖類と共溶解させることができ、所定の甘味付与操作において必要とされる糖類がはるかに少なくなる程度まで、前記糖類の自然な甘味を増強することができることが現在見出されている。従って、特定の糖類と共溶解した特定のアグリコン性ジヒドロカルコンの混合物からなる甘味組成物を提供することが、本発明の重要かつ主要な目的である。本発明の他の目的は、特定の糖類の天然の甘味特性を増強するプロセスを提供することである。これらおよび他の目的が本発明により達成させることは、以下の開示から明らかとなろう。」
(第1欄第61行~第2欄第7行)
「発明の概要
本発明の甘味組成物は、以下に定義するアグリコン性ジヒドロカルコンと共溶解してなる、以下に詳述する特定の糖類を含む。前記糖類の混合物も本発明の使用に適している。そのプロセスの側面において、本発明は、特定の糖類の甘味を増強する方法、および食品、飲料、経口製品などを甘味化するための方法であって、ここに開示されるタイプの糖類と、以下に詳述するアグリコン性ジヒドロカルコンのうちの1つとを、すべて適切な割合で、食品中で共溶解させることにより行われる。
多くの天然糖の甘味は、本発明の実施によるジヒドロカルコンの1種との共溶解によって増強され得ることが見出された。しかしながら、マンノース、アラビノースおよびバラクトースのようないくつかの糖の溶液の甘味は、本明細書での使用に好ましい糖の甘味を増強するのに十分な量のジヒドロカルコンでは増強されず、増強された甘味を提供するためにこれらの材料のより高い濃度を必要とする。従って、本発明の実施においては、天然の糖類であるグルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、セリビオースおよびそれらの混合物が採用される。これらの糖のうち、スクロースおよびグルコースが本明細書での使用に特に好ましい。」(第2欄第8~34行)
「より具体的には、本発明は、約0.25重量%~約95重量%の、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース及びセルビオースからなる群から選択される糖と、
式
[図:0001424554000011.jpg]
ここで、Rはメチル、エチル、イソプロピル、プロピルおよびブチルからなる群から選択されるメンバーであり、糖とジヒドロカルコン化合物との重量比は約1:10-6~1:1であり、摂取可能な極性有機液体、及び前記摂取可能な極性有機液体の少なくとも約0.1重量%を含む摂取可能な極性有機液体と水との混合物からなる群から選択される溶媒に共溶解される。」(第2欄第35~59行)
「官能評価
次のテストでは、無作為に選ばれた4人の被験者が、組成を知ることなくテスト溶液を試飲した。結果は表1のとおりである。
[図:0001424554000012.jpg]
」(第10欄第27~44行)
「実施例 I
0.2グラムのヘスペレチンジヒドロカルコンを100グラムのエチルアルコールに溶解し、10000グラムの水を加え、80グラムのスクロースを溶解する。得られた溶液は、さらに処理することなく甘味組成物として使用するのに適している。」(第11欄第11~17行)
「実施例 XIII
甘味飲料は次のように調整される:レモンオイル0.2部、ヘスペレチンジヒドロカルコン0.2部、リン酸0.1部、スクロース20部、水56.8部を共溶解する。
(第13欄第24~27行)
「実施例 XIV
加糖オレンジ濃縮果汁を以下のように調整する:濃縮オレンジ果汁から80%の水分をフラッシュ蒸発により除去し、次に甘味組成物と水100部を濃縮オレンジ果汁10部に対して甘味組成物1部の割合で添加する。」(第13欄第37~45行)
「実施例 XVI
淹れたコーヒーと紅茶を以下のように甘味化する:実施例Iに記載の甘味組成物の十分な量をそれぞれコーヒーと紅茶に加え、溶解したスクロースの最終濃度が、嗜好に応じて、淹れた飲料の重量に対して2%、またはそれ以上となるようにする。」(第13欄第56~63行)
イ 甲1に記載された発明
甲1の表1を中心に整理すると、甲1には次の事項(以下、「甲1方法発明」、「甲1物発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1方法発明>
「0.25%グルコース、5×10-5molarヘスペレチンジヒドロカルコンを0.25%エチルアルコール及び99.75%水中に共溶解して甘味を感じさせる方法。」
<甲1物発明>
「0.25%グルコース、5×10-5molarヘスペレチンジヒドロカルコンを0.25%エチルアルコール及び99.75%水中に共溶解した甘味を感じられる液体。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1方法発明とを対比する。
甲1方法発明の「グルコース」は、本件特許発明1における「甘味料」に相当する。
甲1方法発明は、グルコースとヘスペレチンジヒドロカルコンとを「共溶解」させることで「甘味を感じさせる」ものであるから、本件特許発明1の「甘味料の甘味を増強させる方法」に相当する。
また、甲1方法発明における「0.25%グルコース、5×10-5molarヘスペレチンジヒドロカルコンを0.25%エチルアルコール及び99.75%水中に共溶解し」た液体は、人が甘味を感じるものであるから、本件特許発明1における「飲料または食品」に相当する。
また、甲1方法発明におけるヘスペレチンジヒドロカルコンの含有割合は、ヘスペレチンジヒドロカルコン5×10-5mol/lであり、ヘスペレチンジヒドロカルコンの分子量は304.29g/molである(必要ならば甲3参照。)から、5×10-5×304.29=15.21質量ppmである。そうすると、甲1方法発明は、ヘスペレチンジヒドロカルコン15.2質量ppmの量で食品または飲料に添加されているから、本件特許発明1における「ヘスペレチンジヒドロカルコンを、前記飲料または食品の全質量の12質量ppm~20質量ppmの量で前記飲料または食品に添加することを含み」との特定事項を満たす。
そうすると、本件特許発明1と甲1方法発明の一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「飲料または食品中の甘味料の甘味を増強させる方法であって、ヘスペレチンジヒドロカルコンを、前記飲料または食品の全質量の12質量ppm~20質量ppmの量で前記飲料または食品に添加することを含む方法。」
<相違点1-1>
本件特許発明1は、飲料または食品中の甘味を増強すると「共に酸味を減少する方法」との特定を有するのに対し、甲1方法発明は、そのような特定がない点。
<相違点1-2>
本件特許発明1は、甘味料は「ステビオールグリコシドを含有する」との特定を有するのに対し、甲1方法発明は、そのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
甲1方法発明における甘味料はグルコースであり、グルコース以外に甘味料は含有していない。したがって、相違点1-2は実質的な相違点である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1方法発明ではない。
そして、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1方法発明において、甘味料にステビオールグリコシドを含有させることについて、動機となる記載はない。
したがって、甲1方法発明において、甘味料にステビオールグリコシドを含有させることを当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
請求項2は削除された。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1を引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明1は甲1方法発明ではなく、甲1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
エ 本件特許発明4及び5について
請求項4及び5は削除された。
オ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲1物発明とを対比すると、上記アにおいて検討したと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明6と甲1物発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「飲料または食品および甘味料の全質量の12質量ppm~20質量ppmの量でヘスペレチンジヒドロカルコンを含む飲料または食品。」
<相違点1-3>
本件特許発明6は、甘味料は「ステビオールグリコシドを含有する」との特定を有するのに対し、甲1物発明はそのような特定がない点。
上記相違点1-3について検討する。
相違点1-3は上記アの相違点1-2と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明6は甲1物発明でなく、甲1物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
カ 本件特許発明7ないし9について
請求項7ないし9は削除された。
キ 本件特許発明10について
本件特許発明10は、請求項6を引用して特定するものであり、本件特許発明6の発明特定事項を全て有するから、本件特許発明6と同様に判断される。
よって、本件特許発明10は甲1物発明ではなく、甲1物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由1についてのまとめ
上記のとおり、本件特許発明1、3、6及び10は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、6及び10に係る特許は特許法第113条第2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1、3、6及び10に係る特許は、申立理由1の理由によって取り消すことはできない。
2 申立理由3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(3)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0002】の「背景 自然界に見出される天然物および成分は、フレーバーおよび食品成分において使用され、かつフレーバーおよび食品成分としても使用されることが望ましい。また、製品の甘味知覚を向上、付与、または変更させることができる化合物も、より高いカロリーの甘味料を有する製品と同等の甘味知覚を有する低カロリーの食品および飲料を得るために望ましい。」との記載からみて、本件特許発明1ないし3、6及び10の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、製品の甘味知覚を向上、付与、または変更させ、より高いカロリーの甘味料を有する製品と同等の甘味知覚を有する低カロリーの食品および飲料を提供することであると認められる。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0003】には、飲料または食品中の甘味料の甘味を増強するために、ヘスペレチンジヒドロカルコンを製品の全質量の2質量ppm~40質量ppmの量で添加する、あるいは、製品および甘味料の全質量の2質量ppm~50質量ppmの量で含有させることが記載され、同【0013】にはさらなる実施形態において、甘味料は精製ステビア抽出物を含み、ステビア葉内で見出された高純度の9種の甘いステビオールグリコシドの組み合わせによって表されることが記載されている。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0014】には20ppmのヘスペレチンジヒドロカルコンと200ppmのステビオールグリコシドを含有するストロベリー風味のボトル入り飲料水の例が、同【0015】には12ppmのヘスペレチンジヒドロカルコンと200ppmのステビオールグリコシドを含有するストロベリー風味のボトル入り飲料水の例が記載されている。
そして、【0024】ないし【0027】には、実際に、トロピカルジュース、ストロベリー風味の水、オレンジ炭酸飲料、ステビアで甘味付けしたトロピカルジュース、ステビアで甘味付けしたストロベリー風味の水、ステビアで甘味付けしたオレンジ炭酸飲料、グレープフルーツジュース、コーヒー、ヨーグルト飲料の例において、ヘスペレチンジヒドロカルコンを添加し、甘味知覚の増強がみられること、一部の例については酸味の減少が認識されることを確認している。
そうすると、当業者は、飲料または食品にヘスペレチンジヒドロカルコンを添加することにより、甘味知覚が向上し、より高いカロリーの甘味料を有する製品と同等の甘味を有する低カロリーの飲料または食品を得ることができ、発明の課題を解決することができると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし3、6及び10は、上記発明の課題を解決することができる特定事項を全て含み、これをさらに限定するものであるから、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし3、6及び10に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。
(4)特許異議申立人の主張について
本件特許の発明の詳細な説明には官能試験の詳細な条件については記載がなく、また、図面においても一部不鮮明ではあるが、図面から、対照飲料に対し、ヘスペレチンジヒドロカルコンを添加した飲料の甘味知覚が変化していることは読み取ることができる。
また、本件特許の発明の詳細な説明【0014】、【0015】、【0027】の記載から、ステビアSG95等で甘味付けした各種飲料に対しヘスペレチンジヒドロカルコンを添加することにより甘味知覚が増強されることが理解される。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明【0026】の実施例において、SG95(ステビア)甘味料を用いた飲料例として、100%グレープフルーツジュース(市販品)、コーヒー、ヨーグルト飲料に対しヘスペレチンジヒドロカルコンを4質量ppm~20質量ppm添加して調整した具体例も記載されている。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明が発明の全範囲にわたって課題が解決し得ることが分かるように記載されていない、との特許異議申立人の主張には具体的な根拠を伴うものではなく、採用することはできない。
(5)申立理由3についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1、3、6及び10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1、3、6及び10に係る特許は、申立理由3によって取り消すことはできない。
3 申立理由4(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1及び3は、方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要し、本件特許発明6及び10は、物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
(2)実施可能要件の判断
発明の詳細な説明には、本件特許発明1、3、6及び10の各発明特定事項について、その技術的異議を含め具体的に記載されており、本件特許発明1、3、6及び10を満たす実施例についても具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1及び3を使用することができ、本件特許発明6及び10を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1、3、6及び10に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
本件特許の発明の詳細な説明の官能試験の詳細な条件については記載がない点、及び、図面における不鮮明さは、当業者が本件特許発明1、3、6及び10を実施するに際し、過度の試行錯誤を要する程度のものであるとはいえない。
よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
(4)申立理由4についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1、3、6及び10に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1、3、6及び10に係る特許は、申立理由4によって取り消すことはできない。
4 申立理由5(明確性)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1、3、6及び10の記載は、上記第3のとおりであり、それ自体に不明瞭な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明1、3、6及び10に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付された明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明瞭であるとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
請求項1の「飲料または食品の全質量」は、飲料の全質量、あるいは、食品の全質量を意味する。請求項1の「飲料または食品」は、「飲料または食品中の甘味料の甘味を増強」し、「甘味料は、ステビオールグリコシドを含有する」とあるから、「飲料または食品」には必須成分の「ステビオールグリコシド」と任意の「甘味料」が含まれる。
よって、請求項1の「飲料または食品の全質量」は、ステビオールグリコシド及び任意の甘味料も含めた飲料や食品の全質量である。
請求項6の「飲料または食品および甘味料の全質量」も、請求項1と同様に、ステビオールグリコシド及び任意の甘味料を含めた飲料や食品の全質量、を表す。
以上のとおりであるから、請求項1、3、6及び10は明瞭であり、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
(4)申立理由5についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1、3、6及び10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1、3、6及び10に係る特許は、申立理由5によって取り消すことはできない。
第8 結語
以上のとおり、本件特許発明1、3、6及び10は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、3、6及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項2、4、5及び7ないし9は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項2、4、5及び7ないし9に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。したがって、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-701215