特許異議申立
2023-700570
ポリイミド系樹脂
- 審判番号
- 2023-700570
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-192532
- 登録番号
- 7183377
- 請求日
- 2023年06月02日
- 審決日
- 2024年05月16日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友化学株式会社
- 【権利者代理人】松谷 道子
- 【権利者代理人】森住 憲一
- 【権利者代理人】梶田 真理奈
- 【異議申立人】三宅 俊男
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 藤井 勲
- 審判官 小出 直也
- 分類
- P1651.16 -YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7183377号発明「ポリイミド系樹脂」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7183377号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕、10について訂正することを認める。
特許第7183377号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7183377号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和3年11月26日に出願され、令和4年11月25日に特許権の設定登録がされ、同年12月5日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和5年6月2日に、特許異議申立人である三宅俊男(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~10)がされた。
その後の経緯は、以下のとおりである。
令和5年 9月28日付け 取消理由通知書
同年11月30日提出 意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年12月13日付け 訂正請求があった旨の通知書(申立人宛て)
令和6年 1月11日提出 意見書(申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を表し、当審が付した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記構成単位(A1)と前記構成単位(A2)との合計含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して60モル%以上であり」とあるのを、
「前記構成単位(A1)と前記構成単位(A2)との合計含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して80モル%以上であり」に訂正する。
訂正前の請求項1~9において、請求項2~9は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項10に
「前記構成単位(A1)と前記構成単位(A2)との合計含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して60モル%以上であり」とあるのを、
「前記構成単位(A1)と前記構成単位(A2)との合計含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して80モル%以上であり」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「構成単位(A1)」と「構成単位(A2)」との「合計含有量」が、「構成単位(A)」の総量に対して「60モル%以上」であるのを、「80モル%以上」であることにしたものであって、上記「構成単位(A)」の総量に対する下限を上げるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0033】には、上記「構成単位(A)」の総量に対する下限として、「80モル%以上」であることが記載されていたものである。
したがって、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項10に記載されていた「構成単位(A1)」と「構成単位(A2)」との「合計含有量」を、「構成単位(A)」の総量に対して「60モル%以上」であるのを、「80モル%以上」であることにしたものであって、上記「構成単位(A)」の総量に対する下限を上げるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件明細書の段落【0033】には、上記「構成単位(A)」の総量に対する下限として、「80モル%以上」であることが記載されていたものである。
したがって、訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 独立特許要件
訂正前の全ての請求項1~10について特許異議申立てがなされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1~9〕、10について訂正することを認める。
第3 訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正請求により訂正された請求項1~10に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりの以下のものである。
「【請求項1】
テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)とジアミン由来の構成単位(B)とを含有するポリイミド系樹脂を含むポリイミド系フィルムであって、
テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)は、エステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)及びビフェニル骨格含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A2)を含み、
ジアミン由来の構成単位(B)は、ビフェニル骨格含有ジアミン由来の構成単位(B1)を含み、
前記構成単位(A1)の含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して15~75モル%であり、
前記構成単位(A2)の含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して25~85モル%であり、
前記構成単位(A1)と前記構成単位(A2)との合計含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して80モル%以上であり、
前記構成単位(B1)の含有量は、前記構成単位(B)の総量に対して30モル%を超え、
前記構成単位(A1)は、式(a1)
【化1】
[図:0001413304000001.jpg]
[式(a1)中、
Ra1は、互いに独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアリールオキシ基を表し、
sは互いに独立に、0~3の整数を表し、
Zは、式(z1)、式(z2)、又は式(z3):
【化2】
[図:0001413304000002.jpg]
〔式(z1)~式(z3)中、Rz11~Rz14は、互いに独立に、水素原子、又はハロゲン原子を有してもよい1価の炭化水素基を表し、
Rz2は、互いに独立に、ハロゲン原子を有してもよい1価の炭化水素基を表し、
nは1~4の整数を表し、
jは、互いに独立に、0~3の整数を表し、
*は結合手を表す〕
で表される2価の有機基である]
で表されるテトラカルボン酸無水物由来の構成単位(a1)であり、
前記構成単位(B1)は、式(b1)
【化3】
[図:0001413304000003.jpg]
[式(b1)中、Rb1は、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、
pは0~4の整数を表す]
で表されるジアミン由来の構成単位(b1)であり、
前記ポリイミド系フィルムの10GHzにおける誘電正接は0.003以下である、ポリイミド系フィルム。
【請求項2】
前記構成単位(A2)は、式(a2):
【化4】
[図:0001413304000004.jpg]
[式(a2)中、Ra2は、互いに独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアリールオキシ基を表し、
tは、互いに独立に、0~3の整数を表す]
で表されるテトラカルボン酸無水物由来の構成単位(a2)である、請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項3】
前記構成単位(B)は、式(b2):
【化5】
[図:0001413304000005.jpg]
[式(b2)中、Rb2は、互いに独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアリールオキシ基を表し、Rb2に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Wは、互いに独立に、-O-、-CH2―、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-COO-、-OOC-、-SO2-、-S-、-CO-又は-N(Rc)-を表し、Rcは水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の一価の炭化水素基を表し、
mは2~4の整数を表し、
qは互いに独立に、0~4の整数を表す]
で表されるジアミン由来の構成単位(b2)をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項4】
前記構成単位(b2)中、mが3であり、Wが互いに独立に、-O-又は-C(CH3)2-である、請求項3に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項5】
前記ポリイミド系樹脂は、ガラス転移温度が200~290℃である、請求項1~4のいずれかに記載のポリイミド系フィルム。
【請求項6】
厚さは5~100μmである、請求項1~5のいずれかに記載のポリイミド系フィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のポリイミド系フィルムの片面又は両面に銅箔層を含む積層フィルム。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載のポリイミド系フィルムを含むフレキシブルプリント回路基板。
【請求項9】
テトラカルボン酸無水物由来の構成単位とジアミン由来の構成単位とを含むポリイミド樹脂前駆体溶液を基材上に塗工する工程、及び
200℃以上500℃以下の熱処理によって、ポリイミド樹脂前駆体をイミド化する工程を含む、請求項1~6のいずれかに記載のポリイミド系フィルムの製造方法。
【請求項10】
テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)とジアミン由来の構成単位(B)とを含有するポリイミド系樹脂であって、
テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)は、エステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)及びビフェニル骨格含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A2)を含み、
ジアミン由来の構成単位(B)は、ビフェニル骨格含有ジアミン由来の構成単位(B1)を含み、
前記構成単位(A1)の含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して15~75モル%であり、
前記構成単位(A2)の含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して25~85モル%であり、
前記構成単位(A1)と前記構成単位(A2)との合計含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して80モル%以上であり、
前記構成単位(B1)の含有量は、前記構成単位(B)の総量に対して30モル%を超え、
前記構成単位(A1)は、式(a1):
【化6】
[図:0001413304000006.jpg]
[式(a1)中、
Ra1は、互いに独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアリールオキシ基を表し、
sは互いに独立に、0~3の整数を表し、
Zは、式(z1)、式(z2)、又は式(z3):
【化7】
[図:0001413304000007.jpg]
〔式(z1)~式(z3)中、Rz11~Rz14は、互いに独立に、水素原子、又はハロゲン原子を有してもよい1価の炭化水素基を表し、
Rz2は、互いに独立に、ハロゲン原子を有してもよい1価の炭化水素基を表し、
nは1~4の整数を表し、
jは、互いに独立に、0~3の整数を表し、
*は結合手を表す〕
で表される2価の有機基である]
で表されるテトラカルボン酸無水物由来の構成単位(a1)であり、
前記構成単位(B1)は、式(b1):
【化8】
[図:0001413304000008.jpg]
[式(b1)中、Rb1は、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、
pは0~4の整数を表す]
で表されるジアミン由来の構成単位(b1)であり、
前記構成単位(B)は、式(b2):
【化9】
[図:0001413304000009.jpg]
[式(b2)中、Rb2は、互いに独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアリールオキシ基を表し、Rb2に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Wは、互いに独立に、-O-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-COO-、-OOC-、-SO2-、-S-、-CO-又は-N(Rc)-を表し、Rcは水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の一価の炭化水素基を表し、
mは2~4の整数を表し、
qは互いに独立に、0~4の整数を表す]
で表されるジアミン由来の構成単位(b2)をさらに含む、ポリイミド系樹脂。」
以下では、本件特許の請求項1~10に係る発明を、「本件発明1」~「本件発明10」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。
第4 特許異議申立書の申立理由及び当審が通知した取消理由
1 特許異議申立書(以下、「申立書」ということがある。)の申立理由
(1)申立理由1(甲第1号証を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件特許の出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲第4号証に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願日後に出願公開がされた甲第4号証に示される出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が本件特許の出願日前の甲第4号証に示される特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件特許の上記請求項に係る発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、本件特許の請求項1~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由3(サポート要件違反)
本件特許の請求項1~10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由の概要は以下のとおり。
本件特許の請求項1及び請求項10に係る発明において、「構成単位(A1)」、「構成単位(A2)」、及び「構成単位(B1)」を含むことが特定され、さらに請求項10に係る発明では「構成単位(B2)」を含むことが特定されたものであるところ、各々の「構成単位」には、広範な化合物が包含されているところ、実施例で発明の効果が実証されているのは、「構成単位(A1)」である式(a1)に含まれるTAHQとBP-TMEのみ、「構成単位(A2)」としてBPDAのみ、「構成単位(B1)」である式(b1)に含まれるm-Tbのみであり、請求項1及び請求項10の全範囲において、本件発明の課題を解決するかは不明である。
2 申立書とともに提出された証拠方法
申立人が、申立書に添付した証拠は、以下のとおりである。
・甲第1号証:特開2021-74894号公報
・甲第2号証:中国特許出願公開第111093323号明細書
・甲第3号証:国際公開第2018/061727号
・甲第4号証:特願2021-108961号(特開2023-6387号公報)
(以下、甲第1号証~甲第4号証をそれぞれ「甲1」~「甲4」という。)
3 当審が通知した令和5年9月28日付け取消理由通知の取消理由
当審が通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
・取消理由1(甲4に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件特許の出願前の特許出願であって、その出願後に公開がされた出願(甲4)の明細書、特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第5 当審の判断
1 申立理由2(甲4に基づく拡大先願)及び取消理由1(甲4に基づく拡大先願)について
申立理由2(甲4に基づく拡大先願)は、取消理由1と引用文献を同じくするものであるから、併せて検討する。なお、以下、甲4に係る特許出願を「先願」といい、先願の出願日における願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲を、「先願明細書等」という。
(1)先願明細書等に記載された事項及び先願明細書等に記載された発明
ア 先願明細書等に記載された事項
先願明細書等には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリアミド酸であって、下記の条件(i)~(iii);
条件(i):
全酸二無水物残基に対して、下記の式(1)で表される酸二無水物から誘導される酸二無水物残基を25mol%以上含有すること、
【化1】
[図:0001413304000010.jpg]
条件(ii):
全ジアミン残基に対して、下記の一般式(2)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を50mol%以上含有すること、
【化2】
[図:0001413304000011.jpg]
[式(2)において、Yは独立に水素、炭素数1~3の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、p及びqは独立して0~4の整数を示す。]
条件(iii):
全モノマ-成分から誘導される全モノマー残基に対し、ビフェニル骨格を有するモノマー残基の割合が65mo1%以上であること、
を満たすこと特徴とするポリアミド酸。
【請求項2】
全ジアミン残基に対して、下記の一般式(3)~(6)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を1~50mol%の範囲内で含有する請求項1に記載のポリアミド酸。
【化3】
[図:0001413304000012.jpg]
[式(3)~(6)において、Rは独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基、アルコキシ基又はアルキルチオ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-SO2-、-CH2-又は-C(CH3)2-から選ばれる2価の基を示し、連結基Xは独立に-CH2-、-O-CH2-O-、-O-C2H4-O-、-O-C3H6-O-、-O-C4H8-O-、-O-C5H10-O-、-O-CH2-C(CH3)2-CH2-O-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-又は-SO2-を示し、mは独立に1~4の整数を示し、nは独立に0~4の整数を示すが、式(5)において、連結基Aが、-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-又は-SO2-を含まない場合、nのいずれかは1以上である。]
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリアミド酸をイミド化してなるポリイミド。
【請求項4】
単層又は複数層のポリイミド層を含むポリイミドフィルムであって、
前記ポリイミド層の少なくとも1層が、請求項3に記載のポリイミドを樹脂成分の主成分として含有するものであるポリイミドフィルム。
【請求項5】
第1のポリイミドを樹脂成分の主成分として含有するポリイミド層(A)と、該ポリイミド層(A)に積層されており、前記第1のポリイミドとは異なる第2のポリイミドを樹脂成分の主成分として含有するポリイミド層(B)と、を含むポリイミドフィルムであって、
前記第1のポリイミドが、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドであって、
全酸二無水物残基中に、ピロメリット酸二無水物から誘導される残基を5mol%以上90mol%以下、分子内にケトン基(-CO-)を有する酸二無水物から誘導される残基を10mol%以上95mol%以下で含有し、且つピロメリット酸二無水物から誘導される残基と分子内にケトン基(-CO-)を有する酸二無水物から誘導される残基とを合計で80mol%以上の割合で含有しており、
全ジアミン残基中に、下記の一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導される残基を5mol%以上90mol%以下の割合で含有しており、
動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定される300℃における貯蔵弾性率E’が1.0×108Pa以上且つ350℃における貯蔵弾性率E’が1.0×107Pa以上であるポリイミドであり、
前記第2のポリイミドが、請求項3に記載のポリイミドであることを特徴とするポリイミドフィルム。
【化4】
[図:0001413304000013.jpg]
[式(A1)において、連結基X1は単結合又は-CONH-から選ばれる2価の基を示し、Yは独立に水素、炭素数1~3の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、n1は0~2の整数を示し、p及びqは独立して0~4の整数を示す。]
【請求項6】
温度24~26℃、湿度45~55%の環境下でスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定したときの10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が、0.003未満であり、熱膨張係数(CTE)が25ppm/K未満である請求項4又は5に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている金属層と、を備えた金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層が、請求項4から6のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムを含むことを特徴とする金属張積層板。
【請求項8】
絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えた回路基板であって、
前記絶縁樹脂層が、請求項4から6のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムを含むことを特徴とする回路基板。」
「【背景技術】
【0002】
近年、電気、電子機器の高性能、高機能化に伴い、情報の高速伝送化が要求されており、これらに使用される部品や部材にも高速伝送への対応が求められている。高周波信号を伝送する場合、電気信号のロスや信号の遅延時間が長くなるなどの不都合が生じ易くなることから、高周波機器に使用されるフレキシブルプリント基板(FPC;Flexible Printed Circuits)などの回路基板について、高速伝送化に対応した電気特性を有するように改善が進められている。そのため、FPC材料として使用されるポリマーについても、伝送損失を低減すべく、誘電正接を下げる検討がなされている。」
「【0007】
従って、本発明の目的は、FPC材料として要求される低熱膨張性、良好な製膜性を有し、かつ、誘電正接が十分に低いポリイミドフィルムを提供することである。」
「【0033】
式(1)で表される酸二無水物は、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無二水物)(BP-TME)として知られるものであり、分子内にビフェニル骨格と、該ビフェニル骨格に結合した2つのエステル構造(-CO-O-)を有している。ビフェニル骨格は剛直性を有し、エステル構造はポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有しているため、酸二無水物残基(1)を含有することによって、熱膨張係数の低減(低CTE化)が可能になるとともに、分子の秩序構造の向上と運動抑制により誘電正接を効果的に低下させること(低誘電正接化)が可能になる。
【0034】
本実施の形態のポリアミド酸及びポリイミドにおける酸二無水物残基(1)の含有量は、全酸二無水物残基に対して25mol%以上であり、25~100mol%の範囲内が好ましく、40~80mol%の範囲内がより好ましい。酸二無水物残基(1)の含有量が25mol%未満では、分子の秩序構造の向上と運動抑制による低誘電正接化と低CTE化の双方の効果が十分に発揮されない。なお、酸二無水物残基(1)の含有量の上限は100mol%でもよいが、任意の機能性付与を目的として他の酸二無水物を併用する場合には、その使用量に応じて式(1)で表される酸二無水物の使用量を調節できる。」
「【0039】
ジアミン残基(2)は、剛直構造を有しているため、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有している。ジアミン残基(2)を含有することによって、低吸湿性のポリイミドが得られ、分子鎖内部の水分を低減できるため、誘電正接を下げることができる。また、ジアミン残基(2)は、酸二無水物残基(1)と共通する構造としてビフェニル骨格を含むため、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用が大きくなり、しかも、モノマー由来単位の分子量を大きくできるので、イミド基濃度を低減できる。」
「【0042】
条件(iii):
全モノマー成分から誘導される全モノマー残基に対し、ビフェニル骨格を有するモノマー残基(ビフェニル骨格含有残基)の割合が65mo1%以上であること。
ここで、ビフェニル骨格とは、2つのフェニル基が単結合した骨格である。従って、ビフェニル骨格含有残基とは、例えば、ビフェニルジイル基、ビフェニルテトライル基などを挙げることができる。全モノマー成分から誘導される全モノマー残基に対し、ビフェニル骨格含有残基の割合が65mo1%以上であることによって、モノマー由来の剛直構造によりポリマー全体に秩序構造が形成されやすくなり、分子の運動抑制により誘電正接を低下させることができる。ビフェニル骨格含有残基の割合が65mo1%未満では、誘電正接が十分に低下しない。このため、例えば回路基板に使用したときに、高速伝送への適応が困難となる。かかる観点から、ビフェニル骨格含有残基の割合は、70mo1%以上であることが好ましく、80mo1%以上であることがより好ましい。」
「【0044】
(他の酸二無水物残基)
本実施の形態のポリアミド酸及びポリイミドは、上記の式(1)で表される酸二無水物から誘導される残基のほかに、発明の効果を損なわない範囲で、一般にポリイミドの原料として用いられる酸二無水物の残基を含有することができる。そのような酸二無水物残基として、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエ-テルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エ-テル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコ-ル ビスアンヒドロトリメリテ-ト等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される酸二無水物残基が挙げられる。これらの中で、特に、BPDAから誘導される酸二無水物残基(以下、「BPDA残基」ともいう。)は、剛直性を有するため、ポリマ-の秩序構造を形成しやすく、分子の運動抑制により誘電正接を低下させることができるため好ましく、ピロメリット酸二無水物から誘導される酸二無水物残基(以下、「PMDA残基」ともいう。)は、低CTE化の観点で好ましい。」
「【0051】
一般式(6)で表される芳香族ジアミンとしては、例えば2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)などを挙げることができる。」
「【0073】
(ジアミン残基)
ポリイミド層(A)を構成するジアミン残基は、全ジアミン残基中に、下記の一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含有することが好ましい。
【0074】
【化8】
[図:0001413304000014.jpg]
【0075】
一般式(A1)において、連結基X1は単結合、又は-CONH-から選ばれる2価の基を示し、Yは独立に水素、炭素数1~3の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、n1は0~2の整数を示し、p及びqは独立して0~4の整数を示す。なお、一般式(A1)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NRxRy(ここで、Rx,Ryは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
【0076】
一般式(A1)のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基の具体例としては、1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノベンズアニリド等から誘導されるジアミン残基が挙げられる。これらの中でも、誘電特性の点から2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)から誘導されるジアミン残基を好ましく挙げることができる。
【0077】
一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基は、ポリイミドの平面性と剛直性とを向上させることで、分子鎖間のスタッキング性を向上させることができる。このため、ジアミン残基の運動性を低下させることができる。この結果、ポリイミドの誘電正接を低くすることができる。また、ポリイミドの分子骨格の平面性についても高めることができるため、面方向の熱膨張係数を低くすることができる。」
「【0094】
<誘電正接>
本実施の形態のポリイミドフィルムは、例えば、回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、高周波信号の伝送時における誘電損失を低減するために、フィルム全体として、温度24~26℃、湿度45~55%の環境下でスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定したときの10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が、0.003未満であることが好ましい。回路基板の伝送損失を改善するためには、特に絶縁樹脂層の誘電正接を制御することが重要であり、10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が、0.003未満であることで、伝送損失を下げる効果が増大する。従って、ポリイミドフィルムを高周波回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合、伝送損失を効率よく低減できる。10GHzにおける誘電正接が0.003以上であると、ポリイミドフィルムを回路基板の絶縁樹脂層として適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスが大きくなるなどの不都合が生じやすくなる。」
「【0097】
<厚み>
本実施の形態のポリイミドフィルムの厚みは、特に制限はなく、例えば5~60μmの範囲内が好ましく、15~50μmの範囲内がより好ましい。多層ポリイミドフィルムの場合、ポリイミド層(A)の厚みは、例えば1~15μmの範囲内が好ましく、2~10μmの範囲内がより好ましい。ポリイミド層(B)は、絶縁樹脂層の全厚みに対して好ましくは50%超、より好ましくは60%以上の厚みを有することがよい。」
「【0118】
[回路基板]
本発明の金属張積層板は、主にFPCなどの回路基板材料として有用である。金属張積層板の金属層を常法によってパタ-ン状に加工して配線層を形成することによって、本発明の実施の一形態である回路基板を製造できる。本発明の金属張積層板の金属層が配線に加工されている回路基板も本発明の一態様となる。
すなわち、本実施の形態の回路基板は、単層又は複数層のポリイミド層を含む絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えており、絶縁樹脂層が、上記ポリイミド層(B)を含んでいればよい。また、絶縁樹脂層と配線層との接着性を高めるために、絶縁樹脂層における配線層に接する層は、ポリイミド層(A)であることがよい。」
「【実施例】
【0119】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0120】
[粘度の測定]
E型粘度計(ブルックフィ-ルド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0121】
[ガラス転移温度(Tg)及びポリイミドフィルムの非熱可塑性、熱可塑性の分類]
ガラス転移温度は、5mm×70mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:TAインスツルメント社製、商品名;RSA G2)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数1Hzで測定を行い、弾性率変化(tanδ)が最大となる温度をガラス転移温度とした。なお、DMAを用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、ガラス転移温度+30℃以内の温度域での貯蔵弾性率が1.0×108Pa未満を示すものを「熱可塑性」とし、30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、ガラス転移温度+30℃以内の温度域での貯蔵弾性率が1.0×108Pa以上を示すものを「非熱可塑性」とした。
【0122】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サ-モメカニカルアナライザ-(日立ハイテクテクノロジ-社(旧セイコ-インスツルメンツ社製)、商品名;TMA/SS6100)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から260℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
【0123】
[比誘電率及び誘電正接の測定]
ベクトルネットワ-クアナライザ(Agilent社製、商品名;E8363C)及びスプリットポスト誘電体共振器(SPDR共振器)を用いて、周波数10GHzにおけるポリイミドフィルムの比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)を測定した。
なお調湿時のDk、Dfは、測定に使用したポリイミドフィルムを温度;24~26℃、湿度;45~55%の条件下で、24時間放置した後に測定したものである。
また吸水時のDk、Dfは、測定に使用したポリイミドフィルムを純水中下で、48時間浸漬した後に取り出し、材料表面の純水をふき取った後に測定したものである。
【0124】
[銅箔の表面粗度の測定]
銅箔の表面粗度は、AFM(ブルカ-・エイエックスエス社製、商品名;DimensionIcon型SPM)、プロ-ブ(ブルカ-・エイエックスエス社製、商品名;TESPA(NCHV)、先端曲率半径10nm、ばね定数42N/m)を用いて、タッピングモ-ドで、銅箔表面の80μm×80μmの範囲で測定し、十点平均粗さ(Rzjis)を求めた。
【0125】
[ピ-ル強度の測定]
銅張積層板(銅箔/多層ポリイミド層)の銅箔を10mm間隔で樹脂の塗工方向に幅1mmに回路加工した後、幅;8cm×長さ;4cmに切断した。ピ-ル強度は、テンシロンテスタ-(東洋精機製作所社製、商品名;ストログラフVE-1D)を用いて、切断した測定サンプルのポリイミド層面を両面テ-プによりアルミ板に固定し、回路加工された銅箔を180°方向に50mm/分の速度で剥離していき、ポリイミド層から10mm剥離したときの中央値強度を求め、初期ピ-ル強度とした。
【0126】
[吸湿率の測定]
ポリイミドフィルムの試験片(幅;4cm×長さ;25cm)を2枚用意し、80℃で1時間乾燥した後に重量を測定した。重量測定後、23℃/50%RHの恒温恒湿室に入れ、24時間以上静置後に重量を測定し次式より吸湿率を求めた。
吸湿率(重量%)=[(吸湿後重量-乾燥後重量)/乾燥後重量]×100
【0127】
[吸水率の測定]
ポリイミドフィルムの試験片(幅;4cm×長さ;25cm)を1枚用意し、80℃で1時間乾燥した後に重量を測定した。重量測定後、純水中に24時間以上静置後に取り出し、フィルム表面の純水をふき取った後に重量を測定し、次式より吸水率を求めた。
吸水率(重量%)=[(吸水後重量-乾燥後重量)/乾燥後重量]×100
【0128】
[引張り弾性率]
ストログラフR-1(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、幅12.7mm×長さ127mmのポリイミドフィルムを温度23℃、相対湿度50%RHの環境下、50mm/minで引張り試験を実施し算出した。
【0129】
[発泡の有無]
得られた銅張積層板の外観を目視で観察した際に発泡が生じるか確認を実施した。
【0130】
[フィルム化の可否]
銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルムとした際に、亀裂等が入らずフィルム単体での扱いができるものを[可]、亀裂が入り容易に割れてしまうものを[不可]とした。
【0131】
[ポリイミド層の厚みの測定]
銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムを短冊状に切り出し、樹脂包埋した後、ミクロトームにてフィルム厚み方向の切断を行い約100nmの超薄切片を作製した。作製した超薄切片について、日立ハイテクテクノロジー社製SEM(SU9000)のSTEM機能を用いて、加速電圧30kVで観察を行い、ポリイミド各層の厚みを各5点測定し、その平均値を各ポリイミド層の厚みとし、各層の和を多層ポリイミドフィルムの厚みとした。
【0132】
[イミド基濃度の計算]
イミド基部を(-(CO)2-N-)とし、以下の式より算出した。
イミド基濃度(重量%)=(イミド基部分子量/ポリイミドの構造全体の分子量)×100
【0133】
[エステル基濃度の計算]
エステル基部を(-COO-)とし、以下の式より算出した。
エステル基濃度(重量%)=(エステル基部分子量/ポリイミドの構造全体の分子量)×100
【0134】
[ビフェニル骨格含有モノマー割合の計算]
ポリイミドにおける全モノマー成分のうち、ビフェニル骨格を有するモノマーが占める割合(単位;mol%)をビフェニル骨格含有モノマー割合とした。
【0135】
実施例及び参考例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
BP-TME:p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、CAS番号10340-81-5)
26DHN-TME:2,6-ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、CAS番号115383-00-1)
TAHQ:p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
m-TB:2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
PDA:p-フェニレンジアミン
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
・・・
【0142】
(合成例7)
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、14.8395gのm-TB(0.06990モル)及び1.5103gのBAPP(0.00368モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、19.3670gのBP-TME(0.03624モル)、5.3311gのBPDA(0.01812モル)及び3.9522gのPMDA(0.01812モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液Gを得た。ポリアミド酸溶液Gの溶液粘度は35,200cpsであった。
【0143】
(合成例8)
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、16.4284gのm-TB(0.07739モル)及び1.6720gのBAPP(0.00407モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、10.7204gのBP-TME(0.02006モル)、11.8038gのBPDA(0.04012モル)及び4.3754gのPMDA(0.02006モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液Hを得た。ポリアミド酸溶液Hの溶液粘度は27,900cpsであった。
・・・
【0157】
(実施例1)
銅箔1(電解銅箔、厚み;12μm、樹脂側の表面粗さRzjis;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液Aを硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を10分間で行い、イミド化を完結し、銅張積層板Aを得た。この際、フィルム表面に発泡は見られなかった。次に得られた銅張積層板Aについて、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルムAを調製した。得られたポリイミドフィルムAのポリイミドの種類、イミド基濃度、エステル基濃度、ビフェニル骨格含有モノマ-割合、発泡の有無及びフィルム化可否に関する記載を表1、フィルム物性デ-タを表1並びに表2に示す。
【0158】
(実施例2~8、比較例1、比較例2及び参考例1~13)
実施例1と同様にポリアミド酸B~Uについて、銅張積層板の作製及び銅箔をエッチング後のポリイミドフィルムについての特性について評価を実施した。得られたポリイミドフィルムのポリイミドの種類、イミド基濃度、エステル基濃度、ビフェニル骨格含有モノマ-割合、発泡の有無及びフィルム化可否に関する記載を表1、フィルム物性デ-タを表1並びに表2に示す。
なお、発泡の発生したもの、及び、フィルム化が出来なかったものについては、フィルム物性デ-タの取得はしていない。
【0159】
【表1】
[図:0001413304000015.jpg]
【0160】
【表2】
[図:0001413304000016.jpg]
」
イ 先願明細書等に記載された発明
先願明細書等の実施例における合成例7で得られたポリアミド酸液Gを用いた実施例7及び物性が示されている表1、2に着目して、ポイリミドフィルムGとして整理すると、次の発明が記載されている。
「窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、14.8395gのm-TB(0.06990モル)及び1.5103gのBAPP(0.00368モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させ、次に、19.3670gのBP-TME(0.03624モル)、5.3311gのBPDA(0.01812モル)及び3.9522gのPMDA(0.01812モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液Gを得、
銅箔1(電解銅箔、厚み;12μm、樹脂側の表面粗さRzjis;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液Gを硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去し、更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を10分間で行い、イミド化を完結し、銅張積層板Aを得、
塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去し、調製したポリイミドフィルムG(ポリイミドフィルムを温度;24~26℃、湿度;45~55%の条件下で、24時間放置した後の誘電正接が0.0027、Tgが239.6℃)。」(以下、「先願発明1」という。)
また、先願明細書等の実施例における合成例7で得られたポリアミド酸液Gを用いて、実施例7ではポリイミドフィルムGが形成されており、該ポリイミドフィルムGについて、ポリイミドとして整理すると、次の発明が記載されている。
「窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、14.8395gのm-TB(0.06990モル)及び1.5103gのBAPP(0.00368モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させ、次に、19.3670gのBP-TME(0.03624モル)、5.3311gのBPDA(0.01812モル)及び3.9522gのPMDA(0.01812モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液Gを得、
銅箔1(電解銅箔、厚み;12μm、樹脂側の表面粗さRzjis;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液Gを硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去し、更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を10分間で行い、銅張積層板A上に得られた、イミド化したポリイミド。」(以下、「先願発明2」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と先願発明1とを対比する。
a 先願発明1の「BP-TEM」は、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)であり、「ポリイミドフィルムG」が形成されたときには、「BP-TEM」由来の構成単位となるから、本件発明1の「テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)」である「エステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)」であって、「式(a1)で表されるテトラカルボン酸無水物由来の構成単位(a1)」に相当する(当審注:式(a1)は省略する。以下同様。)。
b 先願発明1の「BPDA」は、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、「ポリイミドフィルムG」が形成されたときには、「BPDA」由来の構成単位となるから、本件発明1の「テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)」である「ビフェニル骨格含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A2)」に相当する。
c 先願発明1の「m-TB」は、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニルであり、「ポリイミドフィルムG」が形成されたときには、「m-TB」由来の構成単位となるから、本件発明1の「ジアミン由来の構成単位(B)」である「ビフェニル骨格含有ジアミン由来の構成単位(B1)」であって、「式(b1)で表されるジアミン由来の構成単位(b1)」に相当する(当審注:式(b1)は省略する。以下同様。)。
d 先願発明1の「ポリイミドフィルムG」は、本件発明1の「ポリイミド系フィルム」に相当する。
e 上記a~dによると、先願発明1では、「テトラカルボン酸無水物」として「BP-TEM」及び「BPDA」、「ジアミン」として「m-TB」を用いて、重合後イミド化して「ポリイミドフィルムG」が得られるものであるから、本件発明1の「テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)とジアミン由来の構成単位(B)とを含有するポリイミド系樹脂を含むポリイミド系フィルム」に相当する。
f 先願発明1では、テトラカルボン酸無水物として「BP-TEM」(0.03624モル)、「BPDA」(0.01812モル)、及びPMDA(0.01812モル)を使用するものであり、「BP-TEM」と「BPDA」を、全テトラカルボン酸無水物中、それぞれ50モル%(=0.03624×100/(0.03624+0.01812+0.01812))、25モル%(=0.01812×100/(0.03624+0.01812+0.01812))含むことから、本件発明1の「前記構成単位(A1)の含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して15~75モル%であり、」「前記構成単位(A2)含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して25~85モル%であ」ることに相当する。
g 先願発明1では、ジアミンとして「m-TB」(0.06990モル)、「BAPP」(0.00368モル)を使用するものであり、「m-TB」を全ジアミン中、95モル%(=0.06990×100/(0.06990+0.00368))を含むことから、本件発明1の「前記構成単位(B1)の含有量は、前記構成単位(B)の総量に対して30モル%を超え」ることに相当する。
h 先願発明1である「ポリイミドフィルムG」の10GHzにおける誘電正接は0.0027であるから、本件発明1の「ポリイミド系フィルムの10GHzにおける誘電正接は0.003以下である」ことに相当する。
してみると、本件発明1と先願発明1とは、
「テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)とジアミン由来の構成単位(B)とを含有するポリイミド系樹脂を含むポリイミド系フィルムであって、
テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)は、エステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)及びビフェニル骨格含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A2)を含み、
ジアミン由来の構成単位(B)は、ビフェニル骨格含有ジアミン由来の構成単位(B1)を含み、
前記構成単位(A1)の含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して15~75モル%であり、
前記構成単位(A2)の含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して25~85モル%であり、
前記構成単位(B1)の含有量は、前記構成単位(B)の総量に対して30モル%を超え、
前記構成単位(A1)は、式(a1):
(省略)
で表されるテトラカルボン酸無水物由来の構成単位(a1)であり、
前記構成単位(B1)は、式(b1):
(省略)
で表されるジアミン由来の構成単位(b1)であり、
前記ポリイミド系フィルムの10GHzにおける誘電正接は0.003以下である、ポリイミド系フィルム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
構成単位(A)の総量に対する、構成単位(A1)と構成単位(A2)との合計含有量に関し、本件発明1が「80モル%以上」であるのに対し、先願発明1が「75モル%」である点
イ 判断
<相違点1>について検討する。
先願発明1では、テトラカルボン酸無水物の総量に対して、「BP-TME」と「BPDA」とを75モル%含有するものであって、80モル%以上含有するものでないことから、<相違点1>は実質的な相違点である。
ここで、念のため、本件発明1と先願発明1とにおける、上述の5モル%の差(=80-75)が課題解決のための具体化手段における微差であるか否か検討する。
先願発明1は、酸二無水物として、「BP-TME」を50モル%、「BPDA」を25モル%及び「PMDA」を25モル%含むものである。
そして、先願明細書等には、FPC材料として要求される低熱膨張性、良好な製膜性を有し、かつ、誘電正接が十分に低いポリイミドフィルムを提供することを目的とすること(【0007】)、「BP-TME」が分子内にビフェニル骨格と該ビフェニル骨格に結合した2つのエステル構造(-CO-O-)を有しており、ビフェニル骨格が硬直性を有し、エステル構造がポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有しているため、熱膨張係数の低減(低CTE化)が可能になるとともに、分子の秩序構造の向上と運動抑制により誘電正接を効果的に低下させること(低誘電正接化)が可能であること(【0033】)、「BPDA」及び「PMDA」は他の酸二無水物として例示され、「BPDA」から誘導される酸二無水物残基は剛直性を有するため、ポリマーの秩序構造を形成しやすく、分子の運動抑制により誘電正接を低下させることができること、「PMDA」から誘導される酸二無水物は低CTE化の観点で好ましいことが記載されている(【0044】)。
また、実施例の合成例7では、上述のとおり、酸二無水物として、「BP-TME」を50モル%、「BPDA」を25モル%及び「PMDA」を25モル%含むものであり、ジアミンと反応させてポリアミド酸溶液Gとなり、実施例7として該ポリアミド酸溶液Gからポリイミドフィルムを得て、調湿時の誘電正接が0.0027、CTEが8.4ppm/Kであること、合成例8では、酸二無水物として、「BP-TME」を25モル%、「BPDA」を50モル%及び「PMDA」を25モル%含むものであり、ジアミンと反応させてポリアミド酸溶液となり、実施例8として該ポリアミド酸溶液Hからポリイミドフィルムを得て、調湿時の誘電正接が0.0029、CTEが24.2ppm/Kであることが示されている。
これらの記載によると、先願発明1の課題である、低熱膨張性、製膜性、低誘電正接を達成するために、分子骨格に特徴を有する先願発明1の酸二無水物、つまり「BP-TME」、「BPDA」及び「PMDA」について、それらの含有割合を最適化していること、実施例から「BP-TME」、「BPDA」及び「PMDA」の含有割合が変わることで、ポリイミドフィルム中でのポリマーの秩序構造に変化が生じて、誘電正接やCTEが影響を受けることが理解できる。
そうすると、「BP-TME」、「BPDA」及び「PMDA」の含有割合を最適化するとしても、その含有割合によって、誘電正接やCTEが影響を受けるものであるから、上述の課題を達成させつつ、「BP-TME」と「BPDA」との含有量の総和を80モル%以上とするように、つまり、「PMDA」の含有割合を5モル%減らすことが、先願明細書等に記載されているに等しいともいえないから、本件発明1と先願発明1との上述の5モル%の差が、課題解決における具体化手段における微差ともいえない。
してみると、本件発明1と先願発明1とには、実質的な相違点が存在することから、本件発明1は先願発明1と同一であるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和6年1月11日提出の意見書において、以下の主張をしている。
a 先願明細書等の段落【0033】、【0044】に記載されるように、先願発明1において、全モノマー残基に対してビフェニル骨格含有残基の割合を「80モル%以上(80~100モル%)」とする場合、本件発明1において構成単位(A1)としてBP-TME由来のものを選択した場合、構成単位(A2)との合計含有量が「前記構成単位(A)の総量に対して80モル%以上」である場合に該当する。
b 本件発明1と先願発明1とは、課題とその手段が共通しており、両者の効果の点(誘電正接)もほぼ同等であり、相違点1の本件発明1の「80モル%」と先願発明1の「75%」との差は僅か「5モル%」にすぎず、このような僅かな差に基づいて発明としての同一性は否定できない。
順に検討する。
aについてであるが、先願明細書等では、全ての酸二無水物残基及び全てのジアミン残基との全モノマー残基に対するビフェニル骨格含有残基の割合を80モル%以上とすることが好ましいと記載され、先願発明1は、当該割合は85.1%(全モノマーの総量に対する、m-TB、BP-TME、BPDAの合計含有量の割合=(0.06990+0.03624+0.01812)×100/(0.06990+0.00368+0.03624+0.01812+0.01812))であって、上記の好ましい範囲を満たすところ、申立人の上記主張は、甲1における「全モノマー残基に対するビフェニル骨格含有残基の割合」と、本件発明1における、ジアミン成分を含まない「テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)の総量に対するBP-TME(ビフェニル骨格含有のエステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1))+BPDA(ビフェニル骨格含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A2))の割合」とを同一視して議論するものであり採用できない。
bについてであるが、僅か5mol%であると主張するも、上記イに示したとおり、実質的に相違するものであり、5モル%の差が課題解決のための具体化手段における微差であるともいえないから、実質的に同一であるとはいえない。
したがって、申立人の当該主張は採用できない。
(3)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明2~9は、先願発明1と同一でない。
(4)本件発明10について
ア 対比
本件発明10と先願発明2と対比する。
上記(2)アa~c、e~hと同様の相当関係を有するほかは以下のとおりである。
j 先願発明2の「BAPP」は、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンであり、「イミド化したポリイミド」が形成されたときには、「BAPP」由来の構成単位となるから、本件発明10の「ジアミン由来の構成単位(B)」である「式(b2)で表されるジアミン由来の構成単位(b2)」に相当する(当審注:式(b2)は省略する。以下同様。)。
k 先願発明2の「イミド化したポリイミド」は、本件発明10の「ポリイミド系樹脂」に相当する。
してみると、本件発明10と先願発明2とは、
「 テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)とジアミン由来の構成単位(B)とを含有するポリイミド系樹脂であって、
テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)は、エステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)及びビフェニル骨格含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A2)を含み、
ジアミン由来の構成単位(B)は、ビフェニル骨格含有ジアミン由来の構成単位(B1)を含み、
前記構成単位(A1)の含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して15~75モル%であり、
前記構成単位(A2)の含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して25~85モル%であり、
前記構成単位(B1)の含有量は、前記構成単位(B)の総量に対して30モル%を超え、
前記構成単位(A1)は、式(a1):
(省略)
で表されるテトラカルボン酸無水物由来の構成単位(a1)であり、
前記構成単位(B1)は、式(b1):
(省略)
で表されるジアミン由来の構成単位(b1)であり、
前記構成単位(B)は、式(b2):
(省略)
で表されるジアミン由来の構成単位(b2)をさらに含む、ポリイミド系樹脂。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1’>
構成単位(A)の総量に対する、構成単位(A1)と構成単位(A2)との合計含有量に関し、本件発明1が「80モル%以上」であるのに対し、先願発明1が「75モル%」である点
イ 判断
<相違点1’>について検討するも、上記(2)イに示したとおり、<相違点1’>は実質的な相違点であるから、本件発明10は先願発明2と同一であるとはいえない。
ウ 小括
上述のとおり、本件発明10は、先願明細書等に記載された発明と同一ではない。
2 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
(1)申立理由1(甲1を主引例とする進歩性欠如)について
ア 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、以下の記載がある。
「【請求項1】
非熱可塑性ポリイミド樹脂層の少なくとも一方の面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を有する多層ポリイミドフィルムであって、
前記非熱可塑性ポリイミド樹脂層が、酸二無水物とジアミンの反応物であり、前記酸二無水物中、一般式(1)の繰り返し単位を、30モル%以上含み、および/または、前記ジアミン中、一般式(2)の繰り返し単位を、30モル%以上含み、
吸水率が1.2%以下、誘電正接が0.005以下であることを特徴とする多層ポリイミドフィルム。(但し、一般式(1)及び(2)中、Xは一般式(3)中から選ばれる2価の有機基、一般式(2)中、Yはエステル基である。一般式(2)及び(3)中、R1はH、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、nは1~4の整数である。)
【化1】
[図:0001413304000017.jpg]
【化2】
[図:0001413304000018.jpg]
【化3】
[図:0001413304000019.jpg]
【請求項2】
前記非熱可塑性ポリイミドフィルムは、前記ジアミンとして炭素数36の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを含むことを特徴とする請求項1記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記非熱可塑性ポリイミドフィルムは、前記酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる酸二無水物を含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。」
「【0008】
したがって、本発明の目的は、FPCに求められる基本的な特性を損なうことなく、吸水率や誘電正接が小さく、それらの特性が均一に発現される、高周波回路基板に用いることが可能なポリイミドフィルムを提供することである。」
「【0019】
一般式(1)以外に用いることのできる酸二無水物については、特に限定されるものではないが、具体的には、・・・、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、・・・及びそれらの類似物等などが挙げられる。その中でも、・・・や3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。
【0020】
・・・
【0021】
一般式(1)以外に用いることのできる酸二無水物は、一般式(2)のジアミンを用いない場合には、0モル%~70モル%であることが好ましく、0モル%~50モル%であることがより好ましく、0モル%~30モル%であることが更に好ましい。」
「【0023】
一般式(2)以外に用いることにできるジアミンについては特に限定されるものではないが、炭素数36の脂肪族ジアミン、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、パラフェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、3,3'-ジヒドロキシ-4,4'-ジアミノ-1,1'-ビフェニル、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ヒドロキシビフェニル、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
【0024】
上記ジアミンのなかで、炭素数36の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを含むことが好ましい。
【0025】
一般式(2)以外に用いることのできるジアミンは、一般式(1)の酸二無水物を用いる場合には、0モル%~100モル%であることが好ましく、30モル%~100モル%であることがより好ましく、50モル%~100モル%であることが更に好ましい。」
「【0034】
(非熱可塑性ポリイミド樹脂層の製造方法)
本発明の非熱可塑性ポリイミド樹脂層を得るには、以下の工程
i)有機溶剤中で芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させてポリアミック酸溶液を得る工程、
ii)上記ポリアミック酸溶液を含む製膜ドープを支持体上に流延する工程、
iii)支持体上で加熱した後、支持体からゲルフィルムを引き剥がす工程、
iv)更に加熱して、残ったアミック酸をイミド化し、かつ乾燥させる工程、
を含むことが好ましい。」
「【0047】
(フレキシブル金属箔積層体)
このようにして得られる多層ポリイミドフィルムは、多層ポリイミドフィルムの少なとも片面に金属箔を設けてフレキシブル金属箔積層体とすることができる。多層ポリイミドフィルム上に金属箔を形成する手段としては、
a)上述のようにして多層ポリイミドフィルムを得た後、加熱加圧により金属箔を貼り合せてフレキシブル金属箔積層体を得る手段、
b)金属箔上に、ポリアミック酸を含有する有機溶剤溶液をキャストし、加熱により溶剤除去、イミド化を行ってフレキシブル金属箔積層体を得る手段、
c)金属箔上に、非熱可塑性ポリイミドを含有する溶融液をキャストし、冷却することによりフレキシブル金属箔積層体を得る手段、が挙げられる。
これらのうち、非熱可塑性ポリイミドに溶融性を持たせると、得られるフレキシブル金属箔積層体の半田耐熱性や加熱収縮率などが悪化する可能性があるため、a)もしくはb)の手段を用いることが好ましい。非熱可塑性ポリイミドが溶剤可溶性のものであるなら、ポリアミック酸を含有する有機溶剤溶液の代わりに非熱可塑性ポリイミドを含有する有機溶剤溶液を用いても良い。a)ならびにb)の詳細について、以下説明する。」
「【0054】
(フレキシブルプリント基板)
本発明に係るフレキシブル金属張積層体の金属層をエッチングして得られるフレキシブルプリント基板は、速い伝送速度、小さい伝送損失の高周波回路基板となる。」
「【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
なお、合成例、実施例及び比較例におけるポリイミドフィルムの誘電率、誘電正接、吸水率、フィルムの厚みの評価方法は次の通りである。
【0056】
(誘電率、誘電正接の測定)
測定装置として、空洞共振器摂動法複素誘電率評価装置((株)関東電子応用開発製)を用い、ポリイミドフィルムの誘電率および誘電正接を下記条件化で測定した。
測定周波数:10GHz
測定条件:温度22℃~24℃、湿度45%~55%
測定試料:前記測定条件下で、24時間放置した試料を使用した。
【0057】
(吸水率の測定)
50℃で30分乾燥したポリイミドフィルムを22~24℃の水に24時間浸漬した後、フィルム表面の水分を拭き取り、水浸漬前後の質量増加分から吸水率(%)を算出した。
【0058】
(フィルムの厚みの測定)
接触式厚み計Mitsutoyo社製LASERHOLOGAGEを使用してフィルムの厚みを測定した。
【0059】
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
ODA:4,4'-ジアミノジフェニルエーテル
m‐TB:2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル
BAPP:2,2‐ビス(4‐アミノフェノキシフェニル)プロパン
TPE‐R:1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPT:ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート
PDA:パラフェニレンジアミン
DDA:ダイマー酸型ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1074、炭素数;36、アミン価;205mgKOH/g、ダイマー成分の含有量;95重量%以上)
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’ ‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
TMHQ:パラフェニレンビス(トリメリテート無水物)
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
【0060】
(非熱可塑性ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の合成)
(合成例1)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF330.39g、TPE-R13.30g、m-TB7.25gを加え、攪拌しながらTMHQ15.66g及びPMDA8.20gを徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。その後、PDA3.69gを加えた後、攪拌しながらPMDA8.45gを徐々に添加し、PMDAが溶解したことを確認後、30分間攪した。最後に、0.75gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調整し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0061】
(合成例2)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF331.20g、TPE-R6.10g、m-TB6.65g、BAPP8.57gを加え、攪拌しながらBPDA19.35gを徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。その後、BAPT10.91gを加えた後、攪拌しながらPMDA7.74gを徐々に添加し、PMDAが溶解したことを確認後、30分間攪した。最後に、0.68gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調整し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0062】
(合成例3)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF340.00g、ODA11.96g、BAPT8.92gを加え、攪拌しながらTMHQ37.94gを徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。最後に、1.17gのTMHQを粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0063】
(合成例4)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMAc340.00g、ODA9.79g、BAPT8.52g、DDA4.34gを加え、攪拌しながらTMHQ36.23gを徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。最後に、1.12gのTMHQを粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0064】
(合成例5)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF340.00g、ODA24.30gを加え、攪拌しながらTMHQ34.63gを徐々に添加した。TMHQが溶解したことを目視で確認後30分間攪拌を行った。最後に、1.25gのTMHQを粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0065】
(合成例6)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF340.00g、BAPT32.53gを加え、攪拌しながらBPDA26.65gを徐々に添加した。BPDAが溶解したことを目視で確認後30分間攪拌を行った。最後に、0.82gのBPDAを粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0066】
(合成例7)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF327.90g、ODA28.72gを加え、攪拌しながら、PMDA30.34gを徐々に添加した。PMDAが溶解したことを目視で確認後30分間攪拌を行った。最後に、0.94gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調整し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0067】
(合成例8)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF340.00g、ODA24.30gを加え、攪拌しながらBPDA34.63gを徐々に添加した。BPDAが溶解したことを目視で確認後30分間攪拌を行った。最後に、1.07gのBPDAを粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0068】
(合成例9)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF329.40g、TPE-R7.34g、m-TB8.00g、BAPP10.31gを加え、攪拌しながらBPDA11.09g及びPMDA9.04gを徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。その後、PDA4.08gを加えた後、攪拌しながらPMDA9.32gを徐々に添加し、PMDAが溶解したことを確認後、30分間攪した。最後に、0.82gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調整し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0069】
(熱可塑性ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の合成)
(合成例10)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF323.04g、BAPP43.61gを加え、攪拌しながらBPDA4.69g、PMDA19.00gを徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。最後に、0.70gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調整し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が1000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0070】
(合成例11)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF299.82g、TPE-R32.18gを加え、攪拌しながらBPDA34.13g、を徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。最後に、1.69gのBAPPを固形分濃度5.0%となるようにDMFに溶解した溶液を調整し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が1000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0071】
(実施例1)
合成例1で得られた非熱可塑性ポリイミド前駆体(60g)に、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比2.48/0.75/4.27)からなる硬化剤を30.0g添加して0℃以下の温度で攪拌・脱泡し、コンマコーターを用いてアルミ箔上に流延塗布した。この樹脂膜を110℃×130秒で加熱した後、アルミ箔から自己支持性のゲル膜を引き剥がして金属製の固定枠に固定し、250℃×15秒、350℃×79秒で乾燥・イミド化させて厚み17μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの誘電率、誘電正接、並びに吸水率を表1に示す。
合成例10で得られた熱可塑性ポリイミド前駆体を固形分濃度10重量%になるまで希釈した後、上記で得られたポリイミドフィルムの片面に最終片面厚みが4μmとなるようにコンマコーターで流延塗布し、120℃で120秒乾燥した。もう片面も同様に最終厚みが4μmとなうように熱可塑性ポリイミド前駆体を塗布した後、120℃で120秒乾燥した。続いて、350℃で20秒間加熱処理を行って、総厚み25μmポリイミド積層体を得た。得られたポリイミド積層体の誘電率、誘電正接を表2に示す。
【0072】
(実施例2~実施例6)
合成例1で得られた非熱可塑性ポリイミド前駆体を合成例2~4に変更する以外は、実施例1と同様にして実施した。得られたポリイミドフィルムの誘電率、誘電正接、並びに吸水率を表1に示す。また、得られたポリイミド積層体の誘電率、誘電正接を表2に示す。
【0073】
(実施例7)
合成例10で得られた熱可塑性ポリイミド前駆体を合成例11に変更する以外は、実施例1と同様にして実施した。得られたポリイミドフィルムの誘電率、誘電正接、並びに吸水率を表1に示す。また、得られたポリイミド積層体の誘電率、誘電正接を表2に示す。
【0074】
(実施例8)
合成例1で得られた非熱可塑性ポリイミド前駆体を合成例2に変更する以外は、実施例5と同様にして実施した。得られたポリイミドフィルムの誘電率、誘電正接、並びに吸水率を表1に示す。また、得られたポリイミド積層体の誘電率、誘電正接を表2に示す。
【0075】
(比較例1~3)
合成例1で得られた非熱可塑性ポリイミド前駆体を合成例7~9に変更する以外は、実施例1と同様にして実施した。得られたポリイミドフィルムの誘電率、誘電正接、並びに吸水率を表1に示す。また、得られたポリイミド積層体の誘電率、誘電正接を表2に示す。
【0076】
【表1】
[図:0001413304000020.jpg]
【0077】
【表2】
[図:0001413304000021.jpg]
」
(イ)甲1に記載された発明
甲1の特許請求の範囲において、請求項1を引用する請求項2を、さらに引用する請求項3である多層ポリイミドフィルムに着目すると、甲1には以下の発明が記載されている。
「非熱可塑性ポリイミド樹脂層の少なくとも一方の面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を有する多層ポリイミドフィルムであって、
前記非熱可塑性ポリイミド樹脂層が、酸二無水物とジアミンの反応物であり、前記酸二無水物中、一般式(1)の繰り返し単位を、30モル%以上含み、および/または、前記ジアミン中、一般式(2)の繰り返し単位を、30モル%以上含み、
吸水率が1.2%以下、誘電正接が0.005以下であることを特徴とする多層ポリイミドフィルム(但し、一般式(1)及び(2)中、Xは一般式(3)中から選ばれる2価の有機基、一般式(2)中、Yはエステル基である。一般式(2)及び(3)中、R1はH、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、nは1~4の整数である。)であって、
【化1】
[図:0001413304000022.jpg]
【化2】
[図:0001413304000023.jpg]
【化3】
[図:0001413304000024.jpg]
前記非熱可塑性ポリイミドフィルムは、前記ジアミンとして炭素数36の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを含み、
前記非熱可塑性ポリイミドフィルムは、前記酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる酸二無水物を含むことを特徴とする多層ポリイミドフィルム。」(以下、「甲1発明」という。)
イ 甲2に記載された事項
甲2には、以下の記載がある。
「
[図:0001413304000025.jpg]
」
(当審訳:
1.回路基板の製造方法であって、前記回路基板は可撓性絶縁基材、及び前記可撓性絶縁基材の少なくとも一面に被覆された金属箔を含み、前記製造方法は以下のステップを含むことを特徴とする:
可撓性絶縁基材の少なくとも片面に表面改質処理を行い、その表面に金属イオンを吸着させることができる;
表面改質された可撓性絶縁基材の表面に金属イオンを吸着する;
金属イオンを吸着したフレキシブル絶縁基材を還元処理する;
及び還元処理された可撓性絶縁基材の表面樹脂層を除去し、続いて金属層をめっきする回路基板の製造方法。
2.前記フレキシブル絶縁基材は、吸水率が0.8%以下であり、誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.005以下であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
3.前記可撓性絶縁基材はポリイミドであり、前記ポリイミドは酸二無水物とジアミンを反応させて得られ、前記ポリイミドの繰り返し単位構造はイミド結合とエステル結合を有し、且つ各単位構造のエステル基の濃度は6%以上25%未満であり、イミド基の濃度は15%以上30%未満であり、前記ポリイミドは少なくとも一種類の各イミド基の間に三つ又は四つのベンゼン環を含む繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
4.前記ポリイミド中のフッ素原子の合有量は20%以下であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
5.前記酸二無水物はp―フェニレンビス(トリメリット酸エステル二無水物)及び/又は4,4'―ビス(1,3-ジオキソ-1,3―ジヒドロイソベンゾフラン―5-イルカルボニルオキシ)ビフェニルを含み、好ましくは、その総量は酸二無水物の総モル数の50%以上である;
前記ジアミンは2,2'―ビス(トリフルオロメチル)ジアミノビフェニル、ジアミノジフェニルエーテル、2,2'―ジメチルジアミノビフェニル、フェニレンジアミンのうちのいずれか一種又はその任意の組み合わせを含み、好ましくは、その総量はジアミンの総モル数の80%以上である;
好ましくは、酸二無水物の総量とジアミンの総量のモル比は0.995:1.005~1.005~0.995であることを特徴とする請求項3又は4に記載の製造方法。
6.回路基板はフレキシブル銅張積層板であり、前記金属イオンは銅イオンであり、前記金属層は銅層である請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。)
「
[図:0001413304000026.jpg]
」
(当審訳:
[0022] 通信速度の高速化に伴い、従来から用いられているFPCの絶縁材料であるポリイミド(PI)樹脂の誘電率(Dielectric constant:Dk)及び誘電正接(又は損失係数 Dissipation factor:Df)を低くする必要がある。また、PIは吸水率が高く、吸水の影響を受けてDk及びDfの値が変動するため、吸水率の低いPIが必要となる。これに対し、本発明者らは、PI樹脂の骨格を変更することにより、汎用PIに比べて低誘電率、低誘電正接、かつ低吸水のPIを開発したが、配線を形成する銅箔との密着性を確保することはできなかった。本発明者は、銅箔表面を粗化する方法を試みたが、溝体表面での高周波での電気信号損失を招くため、使用できなかった。さらに、本発明者らは、FPC基材(回路基板)の製法を検討し、高速通信に対応する低誘電率、低誘電正接、かつ低吸水のPIに最適な回路基板製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。)
「
[図:0001413304000027.jpg]
[図:0001413304000028.jpg]
」
(当審訳:
[0041] 酸二無水物は、第1の酸二無水物を含み、第1の酸二無水物は、2つの酸無水物基(アシルオキシカルボニル基)の間に3つ又は4つのベンゼン環を有してもよく、エステル基を有してもよい。第1の酸二無水物としては、例えば、p―フェニレンビス(トリメリット酸エステルニ無水物)(TAHQ)、4,4'―ビス(1,3-ジオキソ-1,3―ジヒドロイソベンゾフラン-5-イルカルボニルオキシ)ビフェニル(BP-TME)、2,2',3,3',5,5'―ヘキサメチル-[1,1'―ビフェニル]-4,4'―ビス(1,3-ジオキソ-1,3―ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)(TMPBP-TME,CAS番号:1042278-26-1)等が挙げられる。これらの第1の酸二無水物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、第1の酸二無水物は、TAHQ及び/又はBP-TMEである。
[0042] 酸二無水物は、第2の酸二無水物をさらに含んでもよい。第2の酸二無水物としては、例えば、3,3',4,4'―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3,3',4'―ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、エチレングリコールビストリメリット酸無水物(TMEG)等が挙げられる。これらの第2の酸二無水物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0043] 第1の酸二無水物と第2の酸二無水物とのモル比は、100:0~30:70であってもよく、100:0~50:50であることがより好ましい。
[0044] 第1の酸二無水物および第2の酸二無水物の総モル数は、酸二無水物の総モル数の90%以上であってもよい。
[0045] 一実施形態では、酸二無水物は、TAHQ、BP-TME、PMDA、BPDAのいずれか1つまたは任意の組み合わせである。酸二無水物の総量は、酸二無水物の総モル数の90%以上であってもよい。
[0046] ジアミンとしては、例えば、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ジアミノビフェ二ル(TFMB)、ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、2,2'―ジメチルジアミノビフェニル(mTBHG)、フェニレンジアミン(PPD)が挙げられる。これらのジアミンは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、これらのジアミンの総量は、ジアミンの総モル数の80%以上である。好ましくは、ジアミン中に含フッ素ジアミンを有する。)
「
[図:0001413304000029.jpg]
[図:0001413304000030.jpg]
[図:0001413304000031.jpg]
[図:0001413304000032.jpg]
[図:0001413304000033.jpg]
」
(当審訳:
[0066] ポリイミド基材の調製。
[0067] 試験方法:
吸水率:フィルムサンプルを25℃で水に24時間浸漬した後の重量と真空乾燥後の重量との差を真空乾燥後の重量で割る;
引張強度、引張伸度、引張弾性:引張試験機(A&D社製;型番TENSILONRTF1350)で測定する;
Dk(誘電率)、Df(誘電正接、Tan δ):空洞共振誘電率測定装置(日本AET社製、空桐共振器型)で測定;
CTE(線膨張係数):熱機械分析装置(日立ハイテクノロジーズグループ製造,型番 TMA7000);
ガラス転移温度(Tg)、弾性率(E'):動的粘弾性測定装置(日立ハイテクノロジ一ズグループの製造;型番DMA7100)により測定した。)
[0068] ポリイミドワニスの製造方法
ステンレス製攪拌棒を有する攪拌機、窒素導入管を備えた500mlのガラス製セパラブルフラスコに、表2に記載のジアミンを入れ、重合用有機溶媒として脱水したNMP(N-メチル-2―ピロリドン)を用意して攪拌した後、この溶液に表2に記載の酸二無水物を加え、80℃で1時間加熱してポリアミド酸を得た。各モノマーの準備割合は、ジアミン100mol%に対して、酸二無水物が100mol%であった。ワニスをドクターブレードコーティングプロセスにより塗膜を形成し、塗膜を室温から0.5h時間で200℃まで昇温して1時間保温し、次に0.5時間で350℃まで昇温して2時間保温し、次に室温まで冷却する(及び焼成条件は同じ)を成膜して、膜(ポリイミド基材)を形成した。得られたフィルムの各性能を表2に示す。
[0069] 各実施例及び比較例において、使用した原料の名称、構造式及び購入源は表1に示すとおりである:
表1、表2は省略)
ウ 甲3に記載された事項
甲3には、以下の記載がある。
「[0006] 本発明の目的は、寸法安定性が高く、かつ、低吸湿性を有するとともに、絶縁層の誘電正接を小さくすることにより、伝送損失の低減が可能で、高周波用回路基板に好適に使用することができるポリイミドフィルムを提供することである。」
「[0034] BPDAから誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「BPDA残基」ともいう。)及びTAHQから誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「TAHQ残基」ともいう。)は、ポリマーの秩序構造を形成しやすく、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させることができる。しかし、一方でBPDA残基は、ポリイミド前駆体のポリアミド酸としてのゲル膜の自己支持性を付与できるが、イミド化後のCTEを増大させるとともに、ガラス転移温度を低くして耐熱性を低下させる傾向になる。
[0035] このような観点から、第1、第2又は第3の実施の形態のポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドが、テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、BPDA残基及びTAHQ残基の合計を好ましくは30モル部以上60モル部以下の範囲内、より好ましくは40モル部以上50モル部以下の範囲内で含有するように制御する。BPDA残基及びTAHQ残基の合計が30モル部未満では、ポリマーの秩序構造の形成が不十分となって、耐吸湿性が低下したり、誘電正接の低減が不十分となり、60モル部を超えると、CTEの増加や面内リタデーション(RO)の変化量の増大のほか、耐熱性が低下したりするおそれがある。」
「[0043](ジアミン残基)
第1、第2又は第3の実施の形態において、非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が好ましい。
[0044][化7]
[図:0001413304000034.jpg]
[0045] 式(A1)において、連結基Xは単結合若しくは-COO-から選ばれる2価の基を示し、Yは独立に水素、炭素数1~3の1価の炭化水素基、若しくはアルコキシ基を示し、nは0~2の整数を示し、p及びqは独立して0~4の整数を示す。ここで、「独立に」とは、上記式(A1)において、複数の連結基A、複数の置換基Y、さらに整数p、qが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。なお、上記式(A1)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR3R4(ここで、R3,R4は、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
[0046] 一般式(A1)で表されるジアミン化合物(以下、「ジアミン(A1)」と記すことがある)は、2つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。ジアミン(A1)は、剛直構造を有しているため、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有している。そのため、ガス透過性が低く、低吸湿性のポリイミドが得られ、分子鎖内部の水分を低減できるため、誘電正接を下げることができる。ここで、連結基Xとしては、単結合が好ましい。
[0047] ジアミン(A1)としては、例えば、1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA;パラフェニレンジアミン)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート(APAB)等を挙げることができる。」
「[0192](合成例A-26)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、11.204gのm-TB(0.0528モル)及び0.670gのBAPP(0.0016モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、5.845gのPMDA(0.0268モル)及び12.281gのTAHQ(0.0268モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液A-26を得た。ポリアミド酸溶液A-26の溶液粘度は26,600cpsであった。
[0193] 次に、厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;2.1μm)に、ポリアミド酸溶液A-26を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分以内で行い、イミド化を完結した。得られた金属張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルムA-26(非熱可塑性、Tg;304℃、吸湿率;0.49重量%)を調製した。また、ポリイミドフィルムA-26を構成するポリイミドのイミド基濃度は26.9重量%であった。
[0194][実施例A-1]
厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;0.6μm)に、ポリアミド酸溶液A-1を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液A-15を硬化後の厚みが、約21μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液A-1を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分で行い、イミド化を完結した。得られた金属張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、多層ポリイミドフィルムA-1(CTE;22ppm/K、吸湿率;0.54重量%、誘電率;3.58、誘電正接;0.0031)を調整した。
・・・
[0200][実施例A-22~実施例A-23]
表5に示すポリアミド酸溶液を使用した他は、実施例A-1と同様にして、実施例A-22~実施例A-23の多層ポリイミドフィルムA-24~A-25を得た。得られた多層ポリイミドフィルムA-24~A-25のCTE、吸湿率、誘電率、誘電正接を求めた。各測定結果を表5に示す。
[0201]
[表5]
[図:0001413304000035.jpg]
」
「[0262](合成例C-1)
窒素気流下で、反応槽に、606.387重量部のm-TB(2.856モル部)及び92.779重量部のTPE-R(0.317モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、340.941重量部のPMDA(1.563モル部)及び459.892重量部のBPDA(1.563モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液C-1を調製した。ポリアミド酸溶液C-1の溶液粘度は29,100cpsであった。
[0263](合成例C-2)
窒素気流下で、反応槽に、606.387重量部のm-TB(2.856モル部)及び92.779重量部のTPE-Q(0.317モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、340.941重量部のPMDA(1.563モル部)及び459.892重量部のBPDA(1.563モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液C-2を調製した。ポリアミド酸溶液C-2の溶液粘度は32,800cpsであった。
[0264](合成例C-3)
窒素気流下で、反応槽に、616.159重量部のm-TB(2.902モル部)及び94.275重量部のTPE―R(0.322モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、415.723重量部のPMDA(1.906モル部)及び373.843重量部のBPDA(1.271モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液C-3を調製した。ポリアミド酸溶液C-3の溶液粘度は31,500cpsであった。
[0265](合成例C-4)
窒素気流下で、反応槽に、637.503重量部のm-TB(3.003モル部)及び64.882重量部のBAPP(0.158モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、339.571重量部のPMDA(1.557モル部)及び458.044重量部のBPDA(1.557モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液C-4を調製した。ポリアミド酸溶液C-4の溶液粘度は24,100cpsであった。
[0266](合成例C-5)
窒素気流下で、反応槽に、591.594重量部のm-TB(2.787モル部)及び127.109重量部のBAPP(0.310モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、332.624重量部のPMDA(1.525モル部)及び448.673重量部のBPDA(1.525モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液C-5を調製した。ポリアミド酸溶液C-5の溶液粘度は23,200cpsであった。
[0267](合成例C-6)
窒素気流下で、反応槽に、641.968重量部のm-TB(3.024モル部)及び54.830重量部のビスアニリン-M(0.159モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、341.950重量部のPMDA(1.568モル部)及び461.252重量部のBPDA(1.568モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液C-6を調製した。ポリアミド酸溶液C-6の溶液粘度は26,500cpsであった。
[0268](合成例C-7)
窒素気流下で、反応槽に、538.432重量部のm-TB(2.536モル部)及び185.359重量部のTPE-R(0.634モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、408.690重量部のPMDA(1.874モル部)及び367.519重量部のBPDA(1.249モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液C-7を調製した。ポリアミド酸溶液C-7の溶液粘度は31,100cpsであった。
[0269](合成例C-8)
窒素気流下で、反応槽に、674.489重量部のm-TB(3.177モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、273.047重量部のPMDA(1.252モル部)及び552.465重量部のBPDA(1.878モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液C-8を調製した。ポリアミド酸溶液C-8の溶液粘度は26,400cpsであった。
[0270](合成例C-9)
窒素気流下で、反応槽に、463.290重量部のm-TB(2.182モル部)及び273.414重量部のTPE-R(0.935モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、401.891重量部のPMDA(1.843モル部)及び361.405重量部のBPDA(1.228モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液C-9を調製した。ポリアミド酸溶液C-9の溶液粘度は29,000cpsであった。
・・・
[0280](合成例C-19)
窒素気流下で、反応槽に、610.050重量部のm-TB(2.874モル部)及び52.104重量部のビスアニリン-M(0.151モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、399.526重量部のNTCDA(1.490モル部)及び438.320重量部のBPDA(1.490モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液C-19を調製した。ポリアミド酸溶液C-19の溶液粘度は29,200cpsであった。
[0281](合成例C-20)
窒素気流下で、反応槽に、560.190重量部のm-TB(2.639モル部)及び33.503重量部のBAPP(0.082モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、292.237重量部のPMDA(1.340モル部)及び614.071重量部のTAHQ(1.340モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液C-20を調製した。ポリアミド酸溶液C-20の溶液粘度は26,100cpsであった。
[0282][実施例C-1]
厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;0.6μm)に、ポリアミド酸溶液C-1を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分以内で行い、イミド化を完結した。塩化第二鉄水溶液を用いて、銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルムC-1(CTE;18.1ppm/K、Tg;322℃、吸湿率;0.57重量%、HAZE;74.5%、フィルム伸度;48%、誘電率;3.42、誘電正接;0.0028)を調製した。
[0283][実施例C-2~実施例C-9及び参考例C-1~参考例C-2]
表14及び表15に示すポリアミド酸溶液を使用した他は、実施例C-1と同様にして、ポリイミドフィルムC-2~C-11を調製した。ポリイミドフィルムC-2~C-11について、CTE、Tg、吸湿率、HAZE、フィルム伸度、誘電率及び誘電正接を求めた。これらの測定結果を表14及び表15に示す。
[0284][表14]
[図:0001413304000036.jpg]
[0285][表15]
[図:0001413304000037.jpg]
」
「[0297]
[表17]
[図:0001413304000038.jpg]
」
エ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
a 甲1発明の「酸二無水物」と「ジアミン」の反応物である「非熱可塑性ポリイミド樹脂層」は、上記反応物であるポリイミド樹脂中において、「酸二無水物」、「ジアミン」はそれぞれ「酸二無水物」由来の構成単位、「ジアミン」由来の構成単位となる。そうすると、甲1発明の「酸二無水物」と「ジアミン」の反応物である「非熱可塑性ポリイミド樹脂層」は、本件発明1の「テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)」と「ジアミン由来の構成単位(B)」とを含有する「ポリイミド系樹脂を含むポリイミド系フィルム」に相当する。
b 上記aを受けて、甲1発明の上記「酸二無水物」由来の構成単位は、「一般式(1)の繰り返し単位
[図:0001413304000039.jpg]
(当審注:以下、一般式(1)は省略する。)」を含み、非熱可塑性ポリイミド樹脂層中で「一般式(1)の繰り返し単位」由来の構成単位となる。そうすると、甲1発明の「一般式(1)の繰り返し単位」由来の構成単位は、本件発明1の「エステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)」である「式(a1)で表されるテトラカルボン酸二無水物由来の構成単位(a1)
[図:0001413304000040.jpg]
(当審注:以下、式(a1)は省略する。)」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、
「 テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)とジアミン由来の構成単位(B)とを含有するポリイミド系樹脂を含むポリイミド系フィルムであって、
テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)は、エステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)を含み、
前記構成単位(A1)の含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して15~75モル%であり、
前記構成単位(A1)は、式(a1)
(省略)
で表されるテトラカルボン酸無水物由来の構成単位(a1)である、
、ポリイミド系フィルム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2>
テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)に関し、本件発明1が「エステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)及びビフェニル骨格含有テトラカルボン酸二無水物由来の構成単位(A2)を含」むのに対し、甲1発明が「一般式(1)の繰り返し単位」由来の構成単位を必須とし、「ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる」テトラカルボン酸無水物を含む点
<相違点3>
本件発明1では、「構成単位(A2)の含有量」が「構成単位(A)の総量に対して25~85モル%」であって、「構成単位(A)の総量に対する、構成単位(A1)と前記構成単位(A2)との合計含有量」が「80モル%以上」であるのに対して、甲1発明ではそのようなことが不明である点
<相違点4>
ジアミン由来の構成単位(B)及びその含有量に関し、本件発明1が「ビフェニル骨格含有ジアミン」であって、「構成単位(B)の総量に対して30モル%を超え」、「式(b1)(当審注:式(b2)は省略する。以下、同様。)」で表されるジアミン由来の構成単位(b1)であるのに対し、甲1発明が、「一般式(2)の繰り返し単位」を30モル%以上含み、「炭素数36の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノ-2,2’-メチルビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを含む」ものである点
<相違点5>
前記ポリイミド系フィルムの10GHzにおける誘電正接に関し、本件発明1が0.003以下であるのに対して、甲1発明では0.005以下である点
(イ)判断
ポリイミド系フィルムにおいて誘電正接を低くするには、そのもととなるポリイミドの構成単位の骨格により影響を受けることから、相違点2~5は密接に関係するものであり、以下に、まとめて検討する。
甲1には、酸二無水物中、一般式(1)の繰り返し単位を30モル%以上含むか、又は、ジアミン中、一般式(2)の繰り返し単位を30モル%以上含むと、低吸水性かつ低誘電正接のポリイミドを提供するできること(【0018】)が記載されているものの、実施例において製造された非熱可塑性樹脂の合成例1~9の誘電正接は0.0032~0.0156の範囲であり(【0076】の表1)、本件発明1の「0.003以下」の誘電正接を満たすものは記載されていない。
また、実施例において、m-TB(本件発明1の「構成単位(b1)」)を用いた例(合成例1、2、9)はあるものの、酸二無水物として一般式(1)の繰り返し単位(本件発明の「構成単位(a1)」)とビフェニルテトラカルボン酸二無水物(本件発明の「構成単位(A2)」)由来の繰り返し単位の両方を含むポリイミド樹脂層の具体例は記載されていない。
そこで、甲2及び甲3の記載を考慮すれば、甲1発明において、酸二無水物単位として、一般式(1)の構成単位とともにビフェニルテトラカルボン酸二無水物由来の構成単位を含み(相違点2、3)、ジアミン単位として、一般式(2)の繰り返し単位のほか、ビフェニル骨格含有ジアミン由来の構成単位を選択して(相違点4)、0.003以下の誘電正接(相違点5)とすることを当業者が容易に想到し得るかについて検討する。
甲2には、誘電正接が0.005以下のFPCの絶縁材料であるポリイミド樹脂であって(請求項2)、上記ポリイミド樹脂が第1の酸二無水物、第2の酸二無水物及びジアミンからなり(【0022】、【0041】~【0045】)、本件発明1の「構成単位(a1)」、「構成単位(A2)」、「構成単位(B1)」に対応する成分を含む実施例4,7,8,11,12では、0.0034~0.0050程度の誘電正接を示すことが記載されているところ、上記「構成単位(B1)」は本件発明1のジアミンとは同じジアミノビフェニル骨格を有するものの置換基が異なる点で相違することを踏まえたとしても、甲1発明において、酸二無水物として本件発明1の「構成単位(a1)」及び「構成単位(A1)」の組合せ、並びにジアミノビフェニル骨格を有するジアミンを選択してみたところで、せいぜい0.0034~0.0050程度のものしか得られないことを、当業者は想定するものといえる。
また、甲3には、誘電正接を小さくすることにより伝送損失の低減が可能で高周波回路基板に好適に使用できるポリイミドフィルムの提供を課題としていること(【0006】)、BPDA残基及びTAHQ残基がポリマーの秩序構造を形成しやすく、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させること(【0034】)、テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、BPDA残基及びTAHQ残基の合計を好ましくは30モル部以上60モル部以下の範囲に制御すること(【0035】)が記載され、実施例では酸二無水物として本件発明1の「構成単位(a1)」又は「構成単位(A2)」、ジアミンとして「構成単位(B1)」に対応する成分を含む例、つまり、ジアミンとして「構成単位(B1)」を用いつつ、酸二無水物として「構成単位(a1)」及び「構成単位(A2)」を併用する例がないことから、誘電正接を小さくするために、酸二無水物としてBPDA残基又はTAHQ残基が選択されることが理解できても、それらを併用し、かつ、その合計含有量を、本件発明1のように80モル%以上とする動機付けはないものである。
そうすると、甲1に記載された発明及び甲2,甲3に記載された事項に接したとしても、ジアミンとしてジアミノビフェニル単位(本件発明1の「構成単位(B1)」)を用い、酸二無水物としてTAHQ又はBP-TME(本件発明1の「構成単位(a1)」)及びBPDA(本件発明1の「構成単位(A2)」)を併用し、かつ、それらを酸二無水物の総モル数に対して80モル%以上の含有割合で用いようとする動機付けがないことに加えて、誘電正接が0.003以下であることも当業者には想定し得ないものである。
してみると、相違点2~5は、甲1に記載された発明と、甲1~甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことではない。
また、本件発明1に係る発明特定事項を有することにより、10GHzにおける誘電正接が0.003以下という優れたポリイミド系フィルムが得られるという効果については、甲1~甲3に記載された事項から当業者は予測し得ないことである。
よって、本件発明1は、甲1に記載された発明と、甲1~甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
オ 本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1を引用するものであるから、これらの発明も、上記エと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件発明10について
(ア)対比
本件発明10と甲1発明と対比する。
上記エ(ア)a、bと同様の相当関係を有するほかは以下のとおりである。
c 甲1発明の「ポリイミドフィルム」を構成する「非熱可塑性ポリイミド樹脂層」は、層状(フィルム状)の組成物であり、酸二無水物とジアミンとの反応物であることから、本件発明10の「ポリイミド系樹脂」に相当するといえる。
してみると、本件発明10と甲1発明とは、
「 テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)とジアミン由来の構成単位(B)とを含有するポリイミド系樹脂であって、
テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)は、エステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)を含み、
前記構成単位(A1)の含有量は、前記構成単位(A)の総量に対して15~75モル%であり、
前記構成単位(A1)は、式(a1):
(省略)
で表されるテトラカルボン酸無水物由来の構成単位(a1)である、
、ポリイミド系樹脂。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2’>
テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)に関し、本件発明10が「エステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)及びビフェニル骨格含有テトラカルボン酸二無水物由来の構成単位(A2)を含」むのに対し、甲1発明が「一般式(1)の繰り返し単位」由来の構成単位を必須とし、「ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる」テトラカルボン酸無水物を含む点
<相違点3’>
本件発明10では、「構成単位(A2)の含有量」が「構成単位(A)の総量に対して25~85モル%」であって、「構成単位(A)の総量に対する、構成単位(A1)と前記構成単位(A2)との合計含有量」が「80モル%以上」であるのに対して、甲1発明ではそのようなことが不明である点
<相違点4’>
ジアミン由来の構成単位(B)及びその含有量に関し、本件発明10が「ビフェニル骨格含有ジアミン」であって、「構成単位(B)の総量に対して30モル%を超え」、「式(b1)」で表されるジアミン由来の構成単位(b1)であるのに対し、甲1発明が、「一般式(2)の繰り返し単位」を30モル%以上含み、炭素数36の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノ-2,2’-メチルビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを含むである点
<相違点5’>
本件発明10が、「構成単位(B)」として「式(b2)で表されるジアミン由来の構成単位(b2)をさらに含む」のに対し、甲1発明では不明である点
(イ)判断
ポリイミドは、それの構成単位の骨格により影響を受けることから、相違点2’~5’は密接に関係するものであり、まとめて検討するも、上記エ(イ)に示したとおり、甲1に記載された発明及び甲1~甲3に記載された事項に接したとしても、ジアミンとしてジアミノビフェニル単位(本件発明10の「構成単位(B1)」)を用い、酸二無水物としてTAHQ又はBP-TME(本件発明10の「構成単位(a1)」)と、BPDA(本件発明10の「構成単位(A2)」)とを併用し、かつ、それらを酸二無水物の総モル数に対して80モル%以上の含有割合で用いようとする動機付けがないことに加えて、さらにジアミンとして「構成単位(b2)」を選択することも当業者には想定し得ないものである。
してみると、相違点2’~5’は、甲1に記載された発明と、甲1~甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことではない。
また、本件発明10に係る発明とすることにより、10GHzにおける誘電正接が0.003以下という優れた誘電正接を示すポリイミド系フィルムに適した樹脂が得られるという効果については、甲1~甲3に記載された事項から当業者は予測し得ないことである。
よって、本件発明10は、甲1に記載された発明と、甲1~甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)申立理由3(サポート要件違反)について
ア 特許法第36条第6項第1号の判断手法について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。
同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件発明の課題について
本件明細書の段落【0005】に記載されているように、「高周波帯域での伝送損失の低いCCLを形成し得る、Dfの低いポリイミド系フィルムを形成可能なポリイミド系樹脂、該ポリイミド系フィルム及びその製造方法、並びに該ポリイミド系フィルムを含む積層フィルム及びフレキシブルプリント回路基板を提供すること」が本件発明の課題であると認められる。
ウ 判断
本件発明1が、上記イに示した本件発明の課題を解決するか検討する。
本件明細書には以下の記載がある。
「【0011】
〔ポリイミド系樹脂〕
本発明のポリイミド系樹脂は、テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)(以下、単に、構成単位(A)と略すことがある)とジアミン由来の構成単位(B)(以下、単に、構成単位(B)と略すことがある)とを含有し、構成単位(A)が、エステル基含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)(以下、単に、構成単位(A1)と略すことがある)及びビフェニル骨格含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A2)(以下、単に、構成単位(A2)と略すことがある)を含み、ジアミン由来の構成単位(B)が、ビフェニル骨格含有ジアミン由来の構成単位(B1)(以下、単に、構成単位(B1)と略すことがある)を含み、前記構成単位(A1)の含有量が、前記構成単位(A)の総量に対して15~75モル%であり、前記構成単位(A2)の含有量が、前記構成単位(A)の総量に対して25~85モル%であり、前記構成単位(A1)と前記構成単位(A2)との合計含有量が、前記構成単位(A)の総量に対して60モル%以上であり、前記構成単位(B1)の含有量が、前記構成単位(B)の総量に対して30モル%を超える。
本明細書中、ポリイミドをPIと略すことがある。本発明において「由来の構成単位」とは、「由来する構成単位」を意味し、例えば「テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)」は「テトラカルボン酸無水物に由来する構成単位(A)」を意味する。
【0012】
本発明者は、PI系樹脂において、前記構成単位(A1)の含有量が15~75モル%、前記構成単位(A2)の含有量が25~85モル%、前記構成単位(A1)と前記構成単位(A2)との合計含有量が60モル%以上、及び前記構成単位(B1)の含有量が30モル%超であると、Dfの低いPI系フィルムが得られることを見出した。これは、構成単位(A1)、構成単位(A2)及び構成単位(B1)の含有量を上記範囲内とすると、PI系樹脂が分子回転が抑制された高次構造を形成しやすく、またイミド基濃度が低下しやすいことからPI系樹脂の耐吸湿性が向上しやすく、これにより得られるPI系フィルムのDfが低減しやすいためだと推定される。
【0013】
一方、前記構成単位(A1)、構成単位(A2)及びこれらの合計量、並びに構成単位(B1)の含有量の少なくともいずれかが上記の範囲外であると、得られるPI系フィルムのDfは高くなる傾向がある。」
「【0015】
(エステル基含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1))
構成単位(A)は、エステル基含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)を含む。構成単位(A)が前記構成単位(A1)を含むと、分子配向性を有するエステル結合がPI系樹脂に組み込まれるため、配向しやすく、得られるPI系フィルムのDfを低減しやすい。また、線膨張係数(以下、CTEと記載することがある)を低減しやすく、PI系フィルムの寸法安定性を高めやすい。さらに、イミド化温度が例えば350℃以下の低温であってもDfが低くなりやすいため、銅箔との積層構成でPI系樹脂前駆体塗膜を熱イミド化することにより該CCLを製造しても、銅箔表面の劣化を抑制しやすく、優れた高周波特性を有するCCLが得られやすい。
【0016】
本発明の一実施形態において、構成単位(A1)は、エステル結合を含有していれば特に制限されず、構成単位(A1)に含有されるエステル結合は1つであっても2つ以上であってもよいが、得られるPI系フィルムのDfを低減しやすい観点からは、式(a1):
【化5】
[図:0001413304000041.jpg]
[式(a1)中、Zは2価の有機基を表し、
Ra1は、互いに独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアリールオキシ基を表し、
sは互いに独立に、0~3の整数を表す]
で表されるテトラカルボン酸無水物由来の構成単位(a1)であることが好ましい。」
「【0026】
(ビフェニル骨格含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A2))
構成単位(A)は、ビフェニル骨格含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A2)を含む。構成単位(A)が前記構成単位(A2)を含むと、PI系フィルムのDfを低減しやすい。」
「【0045】
(ビフェニル骨格含有ジアミン由来の構成単位(B1))
構成単位(B)は、ビフェニル骨格含有ジアミン由来の構成単位(B1)を含む。構成単位(B)が前記構成単位(B1)を含むと、得られるPI系フィルムのDfが低減しやすい結果、PI系フィルムからなる電気回路の伝送損失を低減しやすい。また、構成単位(B)が前記構成単位(B1)を含むと、得られるPI系フィルムの屈曲耐性を向上しやすい。
【0046】
本発明の一実施形態において、構成単位(B1)は、ビフェニル骨格を含有していれば特に制限されず、構成単位(B1)に含有されるビフェニル骨格は1つであっても2つ以上であってもよい。本発明の一実施形態において、構成単位(B1)は、得られるPI系フィルムのDfを低減しやすく、屈曲耐性を向上しやすい観点からは、式(b1):
【化14】
[図:0001413304000042.jpg]
[式(b1)中、Rb1は、互いに独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアリールオキシ基を表し、
pは0~4の整数を表す]」
そして、実施例では、式(a1)で表される構成単位(a1)であるエステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)及びビフェニル骨格含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A2)を含むテトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A)、式(b1)で表される構成単位(b1)であるビフェニル骨格含有ジアミン由来の構成単位(B1)を特定の含有割合で含有してなるポリイミド系フィルムが0.003以下の誘電正接を示している。
これらの記載によると、Dfの低いポリイミド系フィルムを形成可能なポリイミド系樹脂を得るために、テトラカルボン酸二無水物由来の構成単位(A)とジアミン由来の構成単位(B)とを含有し、構成単位(A)がエステル結合含有テトラカルボン酸無水物由来の構成単位(A1)及びビフェニル骨格含有テトラカルボン酸無水物の構成単位(A2)を含み、構成単位(B)がビフェニル骨格含有ジアミン由来の構成単位(B1)を含み、構成単位(A1)、構成単位(A2)、構成単位(B1)を特定の含有割合で含み、かつ、構成単位(A1)と構成単位(A2)の合計含有量が特定量以上であるときに、すなわち、本件発明1の発明特定事項を満たすときに、ポリイミド樹脂が分子回転が抑制された高次構造を形成しやすく、またイミド基濃度が低下しやすいことからポリイミド樹脂の耐吸湿性が向上しやすく、これにより得られるポリイミド系フィルムのDfが低減しやすいことが理解できる。
そうすると、本件発明1の発明特定事項を満たすことにより、本件発明の課題を解決することが本件明細書に記載されている。
また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~9、及び同様の発明特定事項を有する本件発明10についても同様である。
エ 申立人の主張について
申立人は、本件特許の請求項1及び請求項10に係る発明において、「構成単位(A1)」、「構成単位(A2)」、及び「構成単位(B1)」を含むことが特定され、さらに請求項10に係る発明では「構成単位(B2)」を含むことが特定されたものであるところ、各々の「構成単位」には、広範な化合物が包含されているところ、実施例で発明の効果が実証されているのは、「構成単位(A1)」である式(a1)に含まれるTAHQとBP-TMEのみ、「構成単位(A2)」としてBPDAのみ、「構成単位(B1)」である式(b1)に含まれるm-Tbのみであり、請求項1及び請求項10の全範囲において、本件発明の課題を解決するかは不明であると主張している。
しかしながら、上記ウで示したように、各々の「構成単位」において、特定の結合基や骨格を有することによって、誘電正接を0.003以下とすることが本件明細書から理解できる。そして、実施例では、それぞれの構成単位の代表例が本件発明の課題を解決することが示されているにすぎないものであって、実施例で用いられた化合物以外では、本件発明の課題が解決できないとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
また、令和6年1月11日提出の意見書において、実施例で用いた構成単位以外のものの場合や、構成単位(A1)と構成単位(A2)との合計含有量が、構成単位(A)の総量に対して80モル%以上であることは特定されているものの、実施例では100ml%のときだけであるから、80モル%以上100モル%未満の場合に、本件発明の課題を解決できるか分からない旨主張している。
しかしながら、上述のとおり、本件発明の課題は、構成単位(A1)及び構成単位(A2)をはじめとした特定の骨格を有するポリイミド系樹脂とすることにより解決することが理解できた上で、本件明細書には構成単位(A1)と構成単位(A2)との合計含有量が80モル%以上であればポリイミド系フィルムのDfを低減することが記載されている(【0033】)から、80モル%以上100モル%未満であっても、本件発明の課題を解決するものと解される。
また、申立人は、本件発明の課題を解決できない可能性のあることを主張するだけであって、具体的な根拠を提示して、本件発明の課題が解決できないことを立証しているわけではない。
よって、当該主張は採用できない。
第6 むすび
請求項1~10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700570